説明

画像ファイルの出力画像調整

【課題】画像データ生成時における色空間情報を正確に出力できる画像出力装置を提供すること。
【解決手段】カラープリンタ20のCPU31は、マトリクスS演算により得られたRGB色空間の画像データに対して、ガンマ補正、並びに、マトリクス演算Mを実行する。CPU31は設定されているガンマ値を用いて映像データに対してガンマ変換処理を実行する。マトリクス演算MはRGB色空間をXYZ系色空間に変換するための演算処理である。マトリクス演算Mを実行する場合には、画像データ生成時の色空間を反映させるため、CPU31はColorSpaceタグを参照し、書き込まれている色空間に対応するマトリクス(M)を用いてマトリクス演算を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データの色空間上の変換を伴う処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な撮影画像の出力形態が印画紙への焼き付けである通常の銀塩色カメラと異なり、ディジタルスチルカメラ(DSC)、ディジタルビデオカメラ(DVC)によって撮影、または、スキャナによって取り込まれたディジタル画像データは、容易に画像処理を施すことができる。一般的に、DSC等では、撮影画像データは画像圧縮ファイル形式の一つであるJPEG形式のファイルとして保存されることが多い。このJPEG形式の画像ファイルでは、圧縮率を高くするためにYCbCrの色空間を用いて画像データを定義している。したがって、DSC等は、一旦、CCDを用いてRGB色空間にて定義された撮影画像データをYCbCr色空間に変換している。また、このときDSC等が扱うRGB色空間は、一般的に、パーソナルコンピュータで標準的に用いられているCRTモニタの色空間(例えば、sRGB:IEC61966 2−1)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−238265号公報
【特許文献2】特開平11−146182号公報
【0004】
一方、パーソナルコンピュータでは、RGB色空間が画像データの標準的な色空間として用いられているため、このようなJPEGファイルを受け取ったパーソナルコンピュータは、JPEGファイルを伸長し、画像データの色空間をYCbCr色空間からRGB色空間へ変換する。こうしてRGB色空間に変換された画像データは、前述のように、例えば、sRGB色空間データとして扱われ、モニタに表示され、あるいは、CMYK色空間へ変換された後、プリンタを介して印刷媒体上に印刷出力される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、CRT、LCD、プリンタ、プロジェクタ、テレビ受像器などといった画像処理装置、画像出力装置は、それぞれ異なる画像出力特性、例えば、色再現特性(色空間)を有しているため、DSCによって生成された画像ファイルは、上記した全ての出力装置において正しい色で出力されるとは限らなかった。例えば、画像ファイルがCRTにおける画像出力を基準にして生成された場合には、この画像ファイルをCRTよりも広い色再現領域を有するプリンタによって出力してもプリンタの色再現特性を十分に活かすことができず、適切な画像出力を得ることができないという問題があった。なお、こうした問題はDSCに限らず、DVC等の他の画像ファイル生成装置においても共通の課題である。
【0006】
その一方で、CRTモニタが表現可能なsRGB色空間特性に基づくYCbCr色空間からRGB色空間への色空間の変換処理は、広く実行されており、色空間特性を容易に変更することはできないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、画像処理装置および出力装置において画像データを正しく再現することができる画像ファイルを生成することを目的とする。また、そのような画像ファイルを用いて画像データの色彩値を正確に処理、出力できる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の第1の態様は、画像ファイル生成装置を提供する。本発明の第1の態様に係る画像ファイル生成装置は、画像データを生成する画像データ生成手段と、画像処理装置において使用される色空間の情報と、前記生成された画像データとを対応付けて格納する画像ファイルを生成する画像ファイル生成手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の態様に係る画像ファイル生成装置によれば、画像処理装置において使用される色空間の情報と、前記生成された画像データとを対応付けて格納する画像ファイルを生成するので、画像処理装置に対して用いるべき色空間の情報を与えることができる。たとえば、画像処理装置のおける色空間変換処理にて使用される色空間を指定することができる。
【0010】
本発明の第1の態様に係る画像ファイル生成装置において、前記色空間の情報は、前記画像処理装置において実行される色空間変換処理時に用いられるマトリクスの値であっても良い。かかる場合には、色空間の情報を解釈する必要なく、画像処理装置における色空間変換処理を可能にする。
【0011】
本発明の第1の態様に係る画像ファイル生成装置はさらに、
前記画像処理装置において使用される色空間の情報を指定する色空間情報指定手段と、
前記色空間情報として指定され得る複数の色空間情報を格納する色空間情報格納手段を備え、
前記色空間情報指定手段は、
前記格納されている色空間情報を表示する表示手段と、
表示されている色空間情報から1つの色空間情報を選択するための選択手段とを備えても良い。かかる構成を備える場合には、変換先色空間を容易に選択することができる。
【0012】
本発明の第1の態様に係る画像ファイル生成装置はさらに、
前記画像処理装置において使用される色空間の情報を指定する色空間情報指定手段と、
前記画像ファイルに対して画像処理を実行する画像処理装置を識別するための識別情報と、前記色空間の情報として指定され得る色空間情報との組み合わせを複数組格納する色空間情報格納手段を備え、
前記色空間指定手段は、
画像処理を実行する画像処理装置の候補を表示する表示手段と、
表示されている画像処理装置の候補の中から1つの画像処理装置を選択するための選択手段とを備えても良い。かかる構成を備える場合には、画像処理装置を選択することによって、画像処理装置における変換先色空間を容易に選択することができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、画像ファイル生成装置を提供する。本発明の第2の態様に係る画像ファイル生成装置は、画像データを取得する画像データ取得手段と、画像処理装置において実行される色空間変換の変換先色空間を指定する色空間指定手段と、前記指定された変換先色空間の情報と、前記取得された画像データとを対応付けて格納する画像ファイルを生成する画像ファイル生成手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の態様に係る画像ファイル生成装置によれば、画像データに対して画像処理を実行する画像処理装置において用いられる変換先色空間を指定することができる画像ファイルを生成することができる。したがって、画像ファイルを画像処理する際に、画像データに適した色空間へ画像データの色空間を変換することができる。故に、画像データを正しく再現することができると共に、より彩度の高い画像出力結果を得ることができる。
【0015】
本発明の第2の態様に係る画像ファイル生成装置において、前記変換先色空間は、少なくともその一部が前記画像データ生成時における色空間と同一、またはより広い定義領域を有する色空間であっても良い。かかる構成を備えることにより、生成時における画像データが表されている表色領域を損なうことなく色空間変換を実行することができる。
【0016】
本発明の第1または第2の態様に係る画像ファイル生成装置において、前記画像ファイル生成装置はディジタルスチルカメラであっても良い。
【0017】
本発明の第3の態様は、画像ファイルを生成するプログラムを提供する。本発明の第3の態様に係るプログラムは、画像データを生成する機能と、画像処理装置において使用される色空間の情報と、前記生成された画像データとを対応付けて格納する画像ファイルを生成する機能とをコンピュータによって実現させることを特徴とする。
【0018】
本発明の第3の態様に係るプログラムによれば、本発明の第1の態様に係る画像ファイル生成装置と同様のさようこうかを得ることができる。また、本発明の第3の態様に係るプログラムは、本発明の第1の態様に係る画像ファイル生成装置と同様にして種々の態様にて実現され得る。
【0019】
本発明の第4の態様は、画像ファイルを生成するプログラムを提供する。本発明の第4の態様に係るプログラムは、画像データを取得する機能と、画像処理装置において実行される色空間変換の変換先色空間を指定する機能と、前記指定された変換先色空間の情報と、前記生成された画像データとを対応付けて格納する画像ファイルを生成する機能とをコンピュータによって実現させることを特徴とする。
【0020】
本発明の第4の態様に係るプログラムによれば、本発明の第2の態様に係る画像ファイル生成装置と同様のさようこうかを得ることができる。また、本発明の第4の態様に係るプログラムは、本発明の第2の態様に係る画像ファイル生成装置と同様にして種々の態様にて実現され得る。
【0021】
本発明の第5の態様は、画像データと色空間情報とを含む画像ファイルに対して画像処理を実行する画像処理装置を提供する。本発明の第5の態様に係る画像処理装置は、画像ファイルを取得する画像ファイル取得手段と、前記取得した画像ファイルから前記色空間情報を検索する検索手段と、前記色空間情報が検索された場合には、前記色空間情報に基づき前記画像データの色空間を変換する色変換処理手段とを備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の第5の態様に係る画像処理装置によれば、色空間情報に基づき画像データの色空間を変換する色変換処理手段を備えるので、画像ファイルに含まれている色空間情報に基づいて、画像データの色空間を変換することができる。したがって、画像データを正確に再現することができる。
【0023】
本発明の第5の態様に係る画像処理装置において、前記色空間情報が検索されない場合には、前記色変換処理手段は、既定の色空間情報に基づいて前記画像データの色空間を変換しても良い。かかる構成を備える場合には、画像ファイルに色空間情報が含まれていない場合であっても、既定の色空間情報に基づいて画像データの色空間を変換することができる。
【0024】
本発明の第5の態様に係る画像処理装置において、前記画像ファイルに含まれている前記画像データは第1の色空間によって表現されており、前記画像ファイル取得手段は、前記取得した画像ファイルに含まれている画像データの色空間を前記第1の色空間から第2の色空間に変換し、前記色変換処理手段は、前記画像データの色空間を前記第2の色空間から第3の色空間に変換しても良い。
【0025】
本発明の第5の態様に係る画像処理装置において、前記第1の色空間はYCbCrの色空間であり、前記第2の色空間は第1のRGBの色空間であり、前記第3の色空間は、少なくともその一部が前記第1のRGBの色空間と同等、または、より広い表色領域を有する第2のRGBの色空間であっても良い。かかる構成を備えることにより、第1のRGB色空間における画像データの色再現領域を損なうことなく色空間変換を実行することができると共に、第1のRGB色空間のままの画像データを用いる場合よりも高い彩度の画像を得ることができる。
【0026】
本発明の第5の態様に係る画像処理装置において、前記第2のRGBの色空間は、少なくとも前記画像データ生成時の色空間と同等の広さを有しても良い。かかる場合には、画像データ生成時における色空間の色再現領域を活かして、色空間変換処理を実行することができる。また、前記第3の色空間はCIELABの色空間であっても良い。かかる場合には、絶対色空間の画像データが得られるため、更なる画像処理を容易に実行することができる。
【0027】
本発明の第5の態様に係る画像処理装置はさらに、前記画像処理が施された画像データを出力する出力手段を備えても良い。かかる場合には、画像データを出力することができる。
【0028】
本発明の第6の態様は、画像データと色空間情報とを含む画像ファイルに対して画像処理を実行するためのプログラムを提供する。本発明の第6の態様に係るプログラムは、画像ファイルを取得する機能と、前記取得した画像ファイルから前記色空間情報を検索する機能と、前記色空間情報が検索された場合には、前記色空間情報に基づき前記画像データの色空間を変換する機能とをコンピュータによって実現させることを特徴とする。
【0029】
本発明の第6の態様に係るプログラムによれば、本発明の第5の態様に係る画像処理装置と同様の作用効果を得ることができる。また、本発明の第6の態様に係るプログラムは、本発明の第6の態様に係る画像処理装置と同様にして種々の態様にて実現することができる。
【0030】
なお、本発明に係る各態様は、この他にも方法、記録媒体の形式にて実現され得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施例に係る画像出力装置を適用可能な画像データ出力システムの一例を示す説明図である。
【図2】第1実施例に係る画像出力装置が出力する画像ファイル(画像データ)を生成可能なディジタルスチルカメラの概略構成を示すブロック図である。
【図3】Exifファイル形式にて格納されている画像ファイル100の概略的な内部構造を示す説明図である。
【図4】第1実施例に係るカラープリンタ20の概略構成を示すブロック図である。
【図5】カラープリンタ20の制御回路30の内部構成を示す説明図である。
【図6】第1実施例に係るカラープリンタ20における印刷処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】第1実施例に係るカラープリンタ20における画像処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】RGB色空間上における、可視領域(VA)、sRGB(SR)、NTSC(NS)、wRGB(WR)の色空間領域を示す説明図である。
【図9】第2の実施例としてのカラープリンタ20における画像処理を示すフローチャートである。
【図10】第3の実施例としてのカラープリンタ20における画像処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る画像出力装置について以下の順序にて図面を参照しつつ、いくつかの実施例に基づいて説明する。
A.画像出力装置を含む画像データ出力システムの構成
B.画像出力装置の構成
C.画像出力装置における画像処理
D.その他の実施例
【0033】
A.画像出力装置を含む画像データ出力システムの構成:
第1実施例に係る画像処理装置を適用可能な画像データ出力システムの構成について図1および図2を参照して説明する。図1は第1実施例に係る画像出力装置を適用可能な画像データ出力システムの一例を示す説明図である。図2は第1実施例に係る画像出力装置が出力する画像ファイル(画像データ)を生成可能なディジタルスチルカメラの概略構成を示すブロック図である。
【0034】
画像データ出力システム10は、画像ファイルを生成する入力装置としてのディジタルスチルカメラ12、ディジタルスチルカメラ12にて生成された画像ファイルに基づいて画像処理を実行し、画像を出力する出力装置としてのカラープリンタ20を備えている。出力装置としては、プリンタ20の他に、CRTディスプレイ、LCDディスプレイ等のモニタ14、プロジェクタ等が用いられ得るが、以下の説明では、カラープリンタ20を出力装置として用いるものとする。
【0035】
ディジタルスチルカメラ12は、光の情報をディジタルデバイス(CCDや光電子倍増管)に結像させることにより画像を取得するカメラであり、図2に示すように光情報を収集するための光学回路121、ディジタルデバイスを制御して画像を取得するための画像取得回路122、取得したディジタル画像を加工処理するための画像処理回路123、各回路を制御する制御回路124を備えている。ディジタルスチルカメラ12は、取得した画像をディジタルデータとして記憶装置としてのメモリカードMCに保存する。ディジタルスチルカメラ12における画像データの保存形式としては、JPEG形式が一般的であるが、この他にもTIFF形式、GIF形式、BMP形式、RAW形式等の保存形式が用いられ得る。ディジタルスチルカメラ12はまた、各種機能を選択、設定するための選択・決定ボタン126を備えている。
【0036】
ディジタルスチルカメラ12にて生成された画像データは、RGB色空間にて定義される。このとき用いられるRGB色空間としては、sRGB色空間が最も一般的であるが、その他にも、sRGB色空間よりも広い色域を有するNTSC−RGB色空間が選択されても良い。RGB色空間にて表されているデータは、メモリカードに格納される際に、データを圧縮して格納するフォーマットであるJPEG形式に適した色空間特性を有するYCbCr色空間に変換される。画像データをJPEG形式にて保存する場合には、RGB色空間にて表されている画像データを、後述するマトリクスSの逆マトリクスを用いた演算を実行して画像データの色空間をRGB色空間、例えば、sRGB色空間からYCbCr色空間に変換する。なお、sRGB色空間からYCbCr色空間に変換する際には、sRGB色空間の領域外の色彩値、すなわち、色彩値として負値のデータも有効なまま変換するものとする。
【0037】
本画像データ出力システム10に用いられるディジタルスチルカメラ12は、画像データに加えて画像処理制御情報GIを画像ファイルとしてメモリカードMCに格納する。ディジタルスチルカメラ12によって生成される画像ファイルは、画像ファイルの互換性を維持するため、通常、ディジタルスチルカメラ用画像ファイルフォーマット規格(Exif)に従ったファイル構造を有している。Exifファイルの仕様は、電子情報技術産業協会(JEITA)によって定められている。
【0038】
このExifファイル形式に従うファイル形式を有する場合の画像ファイル内部の概略構造について図3を参照して説明する。図3はExifファイル形式にて格納されている画像ファイル100の概略的な内部構造を示す説明図である。なお、本実施例中におけるファイルの構造、データの構造、格納領域といった用語は、ファイルまたはデータ等が記憶装置内に格納された状態におけるファイルまたはデータのイメージを意味するものである。
【0039】
Exifファイルとしての画像ファイル100は、JPEG形式の画像データを格納するJPEG画像データ格納領域101と、格納されているJPEG画像データに関する各種付属情報を格納する付属情報格納領域102とを備えている。付属情報格納領域112には、撮影時色空間、撮影日時、露出、シャッター速度等といったJPEG画像の撮影条件に関する撮影時情報、JPEG画像データ格納領域101に格納されているJPEG画像のサムネイル画像データがTIFF形式にて格納されている。付属情報は画像データがメモリカードMCに書き込まれる際に自動的に付属情報格納領域102に格納される。また、付属情報格納領域102は、DSC製造者に解放されている未定義領域であるMakernoteデータ格納領域103を備えており、DSC製造者はMakernoteデータ格納領域103に対して任意の情報を格納させることができる。なお、当業者にとって周知であるように、Exif形式のファイルでは、各データを特定するためにタグが用いられている。
【0040】
Makernoteデータ格納領域103もまた、タグによって格納されているデータを識別できる構成を備えており、本実施例では、カラープリンタ20における画像処理を制御するための画像処理制御情報GIが格納されている。
【0041】
画像処理制御情報GIは、カラープリンタ20等の出力装置が有する色再現特性、画像出力特性を考慮して、最適な画像出力結果を得ることができるように画像出力条件を指定する情報である。画像処理制御情報GIとして格納される情報には、例えば、ガンマ値、ターゲットとする色空間に関するパラメータ、コントラスト、カラーバランス調整、シャープネス、色補正に関するパラメータが含まれている。ターゲットとする色空間に関するパラメータは、出力装置における画像処理時に実行される色空間、より詳細には、色空間変換マトリクスのマトリクス値を特定する。なお、色空間に関するパラメータは、画像データ生成時における色空間とは独立して任意に指定(設定)可能な色空間情報である。
【0042】
ディジタルスチルカメラ12において生成された画像ファイルGFは、例えば、ケーブルCV、コンピュータPCを介して、あるいは、ケーブルCVを介してカラープリンタ20に送出される。あるいは、ディジタルスチルカメラ12に装着されているメモリカードMCが接続されたコンピュータPCを介して、あるいは、メモリカードMCをプリンタ20に対して直接、接続することによって画像ファイルがカラープリンタ20に送出される。なお、以下の説明では、メモリカードMCがカラープリンタ20に対して直接、接続される場合に基づいて説明する。
【0043】
B.画像出力装置の構成:
図4を参照して第1実施例に係る画像出力装置、すなわち、カラープリンタ20の概略構成について説明する。図4は第1実施例に係るカラープリンタ20の概略構成を示すブロック図である。
【0044】
カラープリンタ20は、カラー画像の出力が可能なプリンタであり、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色の色インクを印刷媒体上に噴射してドットパターンを形成することによって画像を形成するインクジェット方式のプリンタであり、あるいは、カラートナーを印刷媒体上に転写・定着させて画像を形成する電子写真方式のプリンタである。色インクには、上記4色に加えて、ライトシアン(薄いシアン、LC)、ライトマゼンタ(薄いマゼンタ、LM)、ダークイエロ(暗いイエロ、DY)を用いても良い。
【0045】
カラープリンタ20は、図示するように、キャリッジ21に搭載された印字ヘッド211を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、このキャリッジ21をキャリッジモータ22によってプラテン23の軸方向に往復動させる機構と、紙送りモータ24によって印刷用紙Pを搬送する機構と、制御回路30とから構成されている。キャリッジ21をプラテン23の軸方向に往復動させる機構は、プラテン23の軸と並行に架設されたキャリッジ21を摺動可能に保持する摺動軸25と、キャリッジモータ22との間に無端の駆動ベルト26を張設するプーリ27と、キャリッジ21の原点位置を検出する位置検出センサ28等から構成されている。印刷用紙Pを搬送する機構は、プラテン23と、プラテン23を回転させる紙送りモータ24と、図示しない給紙補助ローラと、紙送りモータ24の回転をプラテン23および給紙補助ローラに伝えるギヤトレイン(図示省略)とから構成されている。
【0046】
制御回路30は、プリンタの操作パネル29と信号をやり取りしつつ、紙送りモータ24やキャリッジモータ22、印字ヘッド211の動きを適切に制御している。カラープリンタ20に供給された印刷用紙Pは、プラテン23と給紙補助ローラの間に挟み込まれるようにセットされ、プラテン23の回転角度に応じて所定量だけ送られる。
【0047】
キャリッジ21にはインクカートリッジ212とインクカートリッジ213とが装着される。インクカートリッジ212には黒(K)インクが収容され、インクカートリッジ213には他のインク、すなわち、シアン(C),マゼンタ(M),イエロ(Y)の3色インクの他に、ライトシアン(LC),ライトマゼンタ(LM),ダークイエロ(DY)の合計6色のインクが収納されている。
【0048】
次に図5を参照してカラープリンタ20の制御回路30の内部構成について説明する。図5は、カラープリンタ20の制御回路30の内部構成を示す説明図である。図示するように、制御回路30の内部には、CPU31,PROM32,RAM33,メモリカードMCからデータを取得するPCMCIAスロット34,紙送りモータ24やキャリッジモータ22等とデータのやり取りを行う周辺機器入出力部(PIO)35,タイマ36,駆動バッファ37等が設けられている。駆動バッファ37は、インク吐出用ヘッド214ないし220にドットのオン・オフ信号を供給するバッファとして使用される。これらは互いにバス38で接続され、相互にデータのやり取りが可能となっている。また、制御回路30には、所定周波数で駆動波形を出力する発振器39、および発振器39からの出力をインク吐出用ヘッド214ないし220に所定のタイミングで分配する分配出力器40も設けられている。
【0049】
制御回路30は、メモリカードMCから画像ファイル100を読み出し、画像処理制御情報GIを解析し、解析した画像処理制御情報GIに基づいて画像処理を実行する。制御回路30は、紙送りモータ24やキャリッジモータ22の動きと同期を採りながら、所定のタイミングでドットデータを駆動バッファ37に出力する。制御回路30によって実行される詳細な画像処理の流れについては、以下に説明する。
【0050】
C.画像出力装置における画像処理:
図6および図7を参照して第1の実施例に係るカラープリンタ20における画像処理について説明する。図6は第1実施例に係るカラープリンタ20における印刷処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。図7はカラープリンタ20における画像処理の流れを示すフローチャートである。
【0051】
プリンタ20の制御回路30(CPU31)は、スロット34にメモリカードMCが差し込まれると、メモリカードMCから画像ファイル100を読み出し、読み出した画像ファイル100をRAM33に一時的に格納する(ステップS100)。CPU31は読み出した画像ファイル100から画像処理制御情報GIを取得し、画像処理時における色空間を指定するColorSpaceタグを検索する(ステップS110)。CPU31は、ColorSpaceタグを検索・発見できた場合には(ステップS120:Yes)、指定された色空間情報を取得して解析する(ステップS130)。CPU31は、解析した色空間情報に基づいて後に詳述する画像処理を実行し(ステップS140)、処理された画像データをプリントアウトする(ステップS150)。
【0052】
CPU31は、ColorSpaceタグを検索・発見できなかった場合には(ステップS120:No)、カラープリンタ20が予めデフォルト値として保有している色空間情報、例えばsRGB色空間の情報をROM32から取得して通常の画像処理を実行する(ステップS160)。CPU31は、処理した画像データをプリントアウト(ステップS150)して本処理ルーチンを終了する。
【0053】
カラープリンタ20において実行される画像処理について図7を参照して詳細に説明する。カラープリンタ20の制御回路30(CPU31)は、読み出した画像ファイル100から画像データGDを取りだす(ステップS200)。ディジタルスチルカメラ12は、既述のように画像データをJPEG形式のファイルとして保存しており、JPEGファイルでは、圧縮率を高くするために、生成した画像データの色空間(sRGB色空間)をYCbCr色空間に変換して画像データを保存している。
【0054】
しかしながら、パーソナルコンピュータおよびプリンタ等では、通常、RGBの色空間にて表現されている画像データのみを取り扱い得るので、YCbCrの色空間にて表現されている画像データの色空間をRGB色空間に変換する必要がある。
【0055】
CPU31は、YCbCrの画像データをRGBの画像データに変換するために3×3マトリクス演算Sを実行する(ステップS210)。なお、マトリクス演算Sは、JPEG FIle Interchange Format(JFIF)の規格によって定義されている、画像データの色空間をYCbCr色空間からRGB色空間に変換するための演算式であり、以下に示す演算式である。
【0056】
【数1】

【0057】
このマトリクス演算Sを実行する際には、CPU31は変換後得られたRGB色空間の画像データが、所定のRGB色空間、たとえば、sRGB色空間の定義領域を表す第1の正の色彩値(表色値)の領域を超える第2の正の色彩値(表色値)や、RGB色空間において負の値を取る負の色彩値(表色値)を有する場合であっても、第2の正の色彩値および負の色彩値を、sRGB色空間の定義領域にクリッピング、すなわち丸める(切り捨てる)ことなく有効値として扱い、第1の正の色彩値と共にそのまま保存する。したがって、画像データが第2の正の色彩値または負の色彩値を有する場合には、データ容量は8ビットよりも大きくなる。なお、sRGB色空間を例示に用いたのは、標準的なオペレーティングシステム(OS)にて一般的に用いられている色空間だからである。
【0058】
CPU31は、こうして得られたRGB色空間の画像データに対して、ガンマ補正、並びに、マトリクス演算Mを実行する(ステップS220)。ここで実行される処理は、画像処理制御情報GIの中で指定された色空間情報、およびガンマ値に従って実行される処理である。ガンマ補正を実行する際には、CPU31は既述のパラメータの中でガンマ値を参照し、設定されているガンマ値(DSCの固有値)を用いて映像データに対してガンマ変換処理を実行する。
【0059】
マトリクス演算MはRGB色空間をXYZ色空間に変換するための演算処理である。マトリクス演算Mに用いられる3×3マトリクス(M)の各マトリクス値は、画像処理制御情報GIによって指定されるマトリクス値であり、ColorSpaceタグにて指定されたアドレスに格納されている。CPU31は、書き込まれているマトリクス値を用いてマトリクス演算Mを実行する。このとき、画像処理制御情報GIによって指定されるマトリクス値は、sRGB色空間、NTSC色空間をXYZ色空間に変換するためのマトリクスを定義するマトリクス値である。ここで、XYZ色空間を介してColorSpaceタグに記載されている色空間情報を反映させるのは、XYZ色空間が絶対色空間であり、DSC、プリンタといったデバイスに依存しないデバイス非依存性色空間だからである。色空間を変換する際に、各色空間における色彩値をXYZ色空間においてマッチングさせることにより、デバイスに依存しないカラーマッチングを行うことができる。マトリクス演算Mは以下に示す演算式である。
【0060】
【数2】

【0061】
RGB色空間上における、可視領域(VA)、sRGB(SR)、NTSC(NS)、wRGB(WR)の色空間領域(色再現領域)は図8に示すとおりである。図8から理解できるように、sRGB色空間が最も狭い色空間領域を有しており、NTSC色空間領域、およびwRGB色空間領域はsRGB色空間領域よりも広い色空間領域を有している。
【0062】
マトリクス演算M実行後に得られる画像データGDの色空間はXYZ色空間である。従来は、プリンタまたはコンピュータにおける画像処理に際して用いられる色空間はsRGBに固定されており、ディジタルスチルカメラ12の有する色空間を有効に活用することができなかった。これに対して、本実施例では、画像ファイルGFの画像処理制御情報GIによって画像処理時のターゲット色空間(マトリクス値)を指定し、指定された色空間に対応して(指定されたマトリクス値を用いて)マトリクス演算Mに用いられるマトリクス(M)を変更するプリンタ(プリンタドライバ)を用いている。したがって、ディジタルスチルカメラ12において、画像データがsRGB色空間よりも広い空間を有するNTSC−RGB色空間にて生成された場合にも、ターゲット色空間としてNTSC−RGB色空間を指定することによって、画像データが生成された色空間を有効に活用して、正しい色再現を実現することができる。
【0063】
CPU31は、任意の画質調整パラメータに基づく画像調整を実行するために、画像データGDの色空間をXYZ色空間からwRGB色空間へ変換する処理、すなわち、マトリクス演算N-1および逆ガンマ補正を実行する(ステップS230)。なお、wRGB色空間は、図8に示すとおりsRGB色空間よりも広い色空間であり、sRGB色空間では定義領域に含まれず表現されなかった第2の正の色彩値および負の色彩値も、wRGB色空間の定義領域内に含まれる表現可能な色彩値として取り扱われ得る。逆ガンマ補正を実行する際には、CPU31は既述のパラメータの中でカラープリンタ20側のガンマ値を参照し、設定されているガンマ値の逆数を用いて画像データに対して逆ガンマ変換処理を実行する。マトリクス演算N-1を実行する場合には、CPU31はROM31からwRGB色空間への変換に対応するマトリクス(N-1)を用いてマトリクス演算を実行する。マトリクス演算N-1は以下に示す演算式である。
【0064】
【数3】

【0065】
マトリクス演算N-1実行後に得られる画像データGDの色空間はwRGB色空間である。このwRGB色空間は既述のように、sRGB色空間よりも広い色空間であり、元来、ディジタルスチルカメラ12によって表現可能なRGB色空間をその定義領域内に含んでいる。
【0066】
CPU31は、画像を特徴付けるための自動画像調整を実行する(ステップS240)。ここで実行される処理は、画像処理制御情報GIの中の任意に設定される画質調整情報に従って実行される処理である。自動画像調整を実行する際には、CPU31は既述のパラメータの中から明るさ、シャープネス等のパラメータ値をそれぞれ参照し、設定されているパラメータ値を用いて映像データに対して画像調整を実行する。なお、自動調整パラメータが指定されている場合には、自動調整パラメータによって指定されるパラメータ値を基本として、任意に指定されている他のパラメータ値を反映させる。
【0067】
また、画像ファイルGFの画像処理制御情報GIにてこれら画質調整情報が指定されていない場合であっても、自動調整パラメータ、例えば、撮影シーンを示すパラメータはディジタルスチルカメラ12側にて自動的に付されるため、CPU31は、自動調整パラメータ値に従って画像調整を実行する。
【0068】
CPU31は、印刷のためのwRGB色変換処理およびハーフトーン処理を実行する(ステップS250)。wRGB色変換処理では、CPU31は、ROM32内に格納されているwRGB色空間に対応したCMYK色空間への変換用ルックアップテーブル(LUT)を参照し、画像データの色空間をwRGB色空間からCMYK色空間へ変更する。すなわち、R・G・Bの階調値からなる画像データをプリンタ24で使用する、例えば、C・M・Y・K・LC・LMの各6色の階調値のデータに変換する。
【0069】
ハーフトーン処理では、色変換済みの画像データを受け取って、階調数変換処理を行う。本実施例においては、色変換後の画像データは各色毎に256階調幅を持つデータとして表現されている。これに対し、本実施例のカラープリンタ20では、「ドットを形成する」,「ドットを形成しない」のいずれかの状態しか採り得ない。すなわち、本実施例のプリンタ24は局所的には2階調しか表現し得ない。そこで、256階調を有する画像データを、カラープリンタ20が表現可能な2階調で表現された画像データに変換する。この2階調化(2値化)処理の代表的な方法として、誤差拡散法と呼ばれる方法と組織的ディザ法と呼ばれる方法とがある。
【0070】
カラープリンタ20では、色変換処理に先立って、画像データの解像度が印刷解像度よりも低い場合は、線形補間を行って隣接画像データ間に新たなデータを生成し、逆に印刷解像度よりも高い場合は、一定の割合でデータを間引くことによって、画像データの解像度を印刷解像度に変換する解像度変換処理を実行する。また、カラープリンタ20は、ドットの形成有無を表す形式に変換された画像データを、カラープリンタ20に転送すべき順序に並べ替えてるインターレス処理を実行する。
【0071】
本実施例では、カラープリンタ20において全ての画像処理を実行し、生成された画像データに従って、ドットパターンが印刷媒体上に形成されるが、画像処理の全て、または、部分をコンピュータPC上で実行するようにしても良い。この場合には、コンピュータPCのハードディスク等にインストールされている画像データ処理アプリケーションに図7を参照して説明した画像処理機能を持たせることによって実現される。ディジタルスチルカメラ12にて生成された画像ファイルGFは、ケーブルCVを介して、あるいは、メモリカードMCを介してコンピュータPCに対して提供される。コンピュータPC上では、ユーザの操作によってアプリケーションが起動され、画像ファイルGFの読み込み、画像処理制御情報GIの解析、画像データGDの変換、調整が実行される。あるいは、メモリカードMCの差込を検知することによって、またあるいは、ケーブルCVの差込を検知することによって、アプリケーションが自動的に起動し、画像ファイルGFの読み込み、画像処理制御情報GIの解析、画像データGDの変換、調整が自動的になされても良い。
【0072】
以上、説明したように第1実施例に従うディジタルスチルカメラ12によれば、プリンタ20にて実行される色変換処理にて使用すべき色空間情報を指定することができる画像ファイルを生成することができる。したがって、ディジタルスチルカメラによって用いられた色空間特性を、プリンタ20に正しく解釈させることができる。また、第1の実施例に従うカラープリンタ20における画像処理によれば、画像ファイルGFに含まれる画像処理制御情報GIに基づいて画像処理時のターゲット色空間、たとえば、色変換マトリクスのマトリクス値を設定し、画像データGDの色変換処理を実行するので、画像データの色彩を正しく再現することができる。したがって、色空間の相違に起因して生じる、ディジタルスチルカメラ12における撮影結果とカラープリンタ20における出力結果の相違を防止することができる。さらに、ディジタルスチルカメラ12の色再現特性を正しく再現することができる。
【0073】
また、カラープリンタ20は、sRGB色空間よりも広いwRGB色空間に対応したCMYK色空間変換テーブルを備えている。したがって、ディジタルスチルカメラ12によって生成された、sRGB色空間の定義領域外にも分布する画像データを有効に取り扱うことができると共に、sRGB色空間の定義領域外に分布する画像データを用いて、より高彩度の印刷結果を得ることができる。すなわち、sRGB色空間上ではその定義領域外に存在するために表現できなかった色情報を用いて、より彩度の高い印刷結果を得ることができる。
【0074】
D.その他の実施例:
カラープリンタ20における画像処理は、図9に示すように実行されても良い。図9は第2の実施例としてのカラープリンタ20における画像処理を示すフローチャートである。本実施例では、sRGB色空間からwRGB色空間への色空間特性の変更に際して、マトリクス演算Mおよびマトリクス演算N-1を一つのマトリクス演算(MN-1)(ステップS320)として、画像処理の高速化を図っている。
【0075】
また、カラープリンタ20における画像処理は、図10に示すように実行されても良い。図10は第3の実施例としてのカラープリンタ20における画像処理を示すフローチャートである。本実施例では、YCbCr色空間で表現されている画像データに対して自動画像調整を先ず実行する(ステップ410)。続いて、自動画像調整が終了した画像データに対して、マトリクスS演算(ステップS420)、マトリクスM演算(ステップS430)、マトリクスN-1演算(ステップS440)を実行して、色空間の変換を順次実行する。
【0076】
上記各画像処理の実施例では、共に出力装置としてカラープリンタ20を用いているが、出力装置にはCRT、LCD、プロジェクタ等の表示装置を用いることもできる。かかる場合には、出力装置としての表示装置によって、例えば、図7等を用いて説明した画像処理を実行する画像処理プログラム(ディスプレイドライバ)が実行される。あるいは、CRT等がコンピュータの表示装置として機能する場合には、コンピュータ側にて画像処理プログラムが実行される。ただし、最終的に出力される画像データは、CMYK系色空間ではなくRGB色空間を有している。
【0077】
かかる場合には、カラープリンタ20を介した印刷結果がディジタルスチルカメラ12によって生成された画像データの色空間を反映できるのと同様にして、CRT等の表示装置における表示結果を画像ファイルGFによって指定することができる。したがって、画像ファイルGFの画像処理制御情報GIに、CRT等の表示装置に適したパラメータを持たせることにより、また、個々の表示装置の表示特性に最適化したパラメータを持たせることにより、ディジタルスチルカメラ12によって生成された画像データGDをより正確に表示させることができる。
【0078】
上記実施例では、画像ファイルGFをディジタルスチルカメラ20にて生成する例について説明したが、画像ファイルGFは、この他にも、ディジタルビデオカメラ(DVC)、スキャナ等の入力装置(画像ファイル生成装置)によって生成される。ディジタルビデオカメラにて生成される場合には、例えば、静止画像データと出力制御情報とを格納する画像ファイル、あるいは、MPEG形式等の動画像データと出力制御情報とを含む動画像ファイルが生成される。この動画像ファイルが用いられる場合には、動画の全部または一部のフレームに対して出力制御情報に応じた出力制御が実行される。
【0079】
以上、いくつかの実施例に基づき本発明に係る画像データ生成装置、画像データ出力装置を説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0080】
例えば、上記第1の実施例において、マトリクスS演算時に第2の正の色彩値および負の色彩値を有効とする(保持する)処理を実行することなく、マトリクスM演算時に、指定された色空間情報を反映する処理を実行しても良い。かかる場合には、画像処理に際して画像データ生成時における色空間を正しく解釈し、正しい色再現を実現することができる。したがって、入力装置、出力装置等の装置固有の色空間の影響を受けることのない、装置非依存性の色空間変換処理を実行することができる。この結果、撮影時に得られた画像データの出力結果と同様の出力結果を出力装置から得ることができる。
【0081】
また、例示した各パラメータは、あくまでも例示に過ぎず、これらのパラメータによって本願に係る発明が制限されることはない。さらに、各数式におけるマトリクスS、M、N-1の各マトリクス値は例示に過ぎず、ターゲットとする色空間、あるいは、カラープリンタ20において利用可能な色空間等によって適宜変更され得ることはいうまでもない。
【0082】
上記各実施例では、画像ファイル生成装置としてディジタルスチルカメラ12を用いて説明したが、この他にもスキャナ、ディジタルビデオカメラ等が用いられ得る。スキャナを用いる場合には、画像ファイルGFの基本情報、任意情報の指定はコンピュータPC上で実行されても良く、あるいは、スキャナ上に情報設定用に予め設定情報が割り当てられているプリセットボタン、任意設定のための表示画面および設定用ボタンを供えておき、スキャナ単独で実行可能にしてもよい。
【0083】
上記各実施例において用いた色空間はあくまでも例示であり、他の色空間を用いても構わない。いずれの場合にも、ディジタルスチルカメラ12等の画像データ生成装置にて生成された画像データが、画像データ生成装置の有する色空間を反映して出力されれば良い。
【0084】
上記第1実施例では、画像ファイルGFとしてExif形式のファイルを例にとって説明したが、本発明に係る画像ファイルの形式はこれに限られない。すなわち、出力装置によって出力されるべき画像データと、ディジタルスチルカメラ12等の画像データ生成装置において用いられた色空間に関する情報とが少なくとも含まれている画像ファイルであれば良い。このようなファイルであれば、画像データ生成装置において生成された画像データ(モニタ等を介して得られる画像表示)と出力装置における出力画像との出力画像の相違を低減することができるからである。
【0085】
なお、画像データと出力装置制御情報CIとが含まれる画像ファイルGFには、出力装置制御情報CIとを関連付ける関連付けデータを生成し、画像データと出力装置制御情報CIとをそれぞれ独立したファイルに格納し、画像処理の際に関連付けデータを参照して画像データと出力装置制御情報CIとを関連付け可能なファイルも含まれる。かかる場合には、画像データと出力装置制御情報CIとが別ファイルに格納されているものの、出力装置制御情報CIを利用する画像処理の時点では、画像データおよび出力装置制御情報CIとが一体不可分の関係にあり、実質的に同一のファイルに格納されている場合と同様に機能するからである。すなわち、少なくとも画像処理の時点において、画像データと出力装置制御情報CIとが関連付けられて用いられる態様は、本実施例における画像ファイルGFに含まれる。さらに、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、DVD−RAM等の光ディスクメディアに格納されている動画像ファイルも含まれる。
【0086】
上記第1実施例に係るカラープリンタ20はあくまで例示であり、その構成は各実施例の記載内容に限定されるものではない。カラープリンタ20は、少なくとも、画像ファイルGFの画像処理制御情報GIを解析して、記載、または、指定された色空間情報に応じて画像を出力(印刷)できればよい。
【符号の説明】
【0087】
10…画像データ出力システム
12…ディジタルスチルカメラ
121…光学回路
122…画像取得回路
123…画像処理回路
124…制御回路
126…選択・決定ボタン
14…ディスプレイ
20…カラープリンタ
21…キャリッジ
211…印字ヘッド
212…インクカートリッジ
213…インクカートリッジ
214〜220…インク吐出用ヘッド
22…キャリッジモータ
23…プラテン
24…紙送りモータ
25…摺動軸
26…駆動ベルト
27…プーリ
28…位置検出センサ
29…操作パネル
30…制御回路
31…演算処理装置(CPU)
32…プログラマブルリードオンリメモリ(PROM)
33…ランダムアクセスメモリ(RAM)
34…PCMCIAスロット
35…周辺機器入出力部(PIO)
36…タイマ
37…駆動バッファ
38…バス
39…発振器
40…分配出力器
100…画像ファイル(Exifファイル)
101…JPEG画像データ格納領域
102…付属情報格納領域
103…Makernote格納領域
MC…メモリカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像ファイル生成装置であって、
画像データを生成する画像データ生成手段と、
画像処理装置において使用される色空間の情報と、前記生成された画像データとを対応付けて格納する画像ファイルを生成する画像ファイル生成手段とを備える画像ファイル生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像ファイル生成装置において、
前記色空間の情報は、前記画像処理装置において実行される色空間変換処理時に用いられるマトリクスの値である画像ファイル生成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像ファイル生成装置はさらに、
前記画像処理装置において使用される色空間の情報を指定する色空間情報指定手段と、
前記色空間情報として指定され得る複数の色空間情報を格納する色空間情報格納手段を備え、
前記色空間情報指定手段は、
前記格納されている色空間情報を表示する表示手段と、
表示されている色空間情報から1つの色空間情報を選択するための選択手段とを備える画像ファイル生成装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の画像ファイル生成装置はさらに、
前記画像処理装置において使用される色空間の情報を指定する色空間情報指定手段と、
前記画像ファイルに対して画像処理を実行する画像処理装置を識別するための識別情報と、前記色空間の情報として指定され得る色空間情報との組み合わせを複数組格納する色空間情報格納手段を備え、
前記色空間指定手段は、
画像処理を実行する画像処理装置の候補を表示する表示手段と、
表示されている画像処理装置の候補の中から1つの画像処理装置を選択するための選択手段とを備える画像ファイル生成装置。
【請求項5】
画像ファイル生成装置であって、
画像データを取得する画像データ取得手段と、
画像処理装置において実行される色空間変換の変換先色空間を指定する色空間指定手段と、
前記指定された変換先色空間の情報と、前記取得された画像データとを対応付けて格納する画像ファイルを生成する画像ファイル生成手段とを備える画像ファイル生成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像ファイル生成装置において、
前記変換先色空間は、少なくともその一部が前記画像データ生成時における色空間と同一、またはより広い定義領域を有する色空間である画像ファイル生成装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の画像ファイル生成装置において、
前記画像ファイル生成装置はディジタルスチルカメラであることを特徴とする画像ファイル生成装置。
【請求項8】
画像ファイルを生成するプログラムであって、
画像データを生成する機能と、
画像処理装置において使用される色空間の情報と、前記生成された画像データとを対応付けて格納する画像ファイルを生成する機能とをコンピュータによって実現させるプログラム。
【請求項9】
画像ファイルを生成するプログラムであって、
画像データを取得する機能と、
画像処理装置において実行される色空間変換の変換先色空間を指定する機能と、
前記指定された変換先色空間の情報と、前記生成された画像データとを対応付けて格納する画像ファイルを生成する機能とをコンピュータによって実現させるプログラム。
【請求項10】
画像データと色空間情報とを含む画像ファイルに対して画像処理を実行する画像処理装置であって、
画像ファイルを取得する画像ファイル取得手段と、
前記取得した画像ファイルから前記色空間情報を検索する検索手段と、
前記色空間情報が検索された場合には、前記色空間情報に基づき前記画像データの色空間を変換する色変換処理手段とを備える画像処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の画像処理装置において、
前記色空間情報が検索されない場合には、前記色変換処理手段は、既定の色空間情報に基づいて前記画像データの色空間を変換する画像処理装置。
【請求項12】
請求項10に記載の画像処理装置において、
前記画像ファイルに含まれている前記画像データは第1の色空間によって表現されており、
前記画像ファイル取得手段は、前記取得した画像ファイルに含まれている画像データの色空間を前記第1の色空間から第2の色空間に変換し、
前記色変換処理手段は、前記画像データの色空間を前記第2の色空間から第3の色空間に変換する画像処理装置。
【請求項13】
請求項12に記載の画像処理装置において、
前記第1の色空間はYCbCrの色空間であり、
前記第2の色空間は第1のRGBの色空間であり、
前記第3の色空間は、少なくともその一部が前記第1のRGBの色空間と同等、または、より広い表色領域を有する第2のRGBの色空間である画像処理装置。
【請求項14】
請求項13に記載の画像処理装置において、
前記第2のRGBの色空間は、少なくとも前記画像データ生成時の色空間と同等の広さを有する画像処理装置。
【請求項15】
請求項13に記載の画像処理装置において、
前記第3の色空間はCIELABの色空間である画像処理装置。
【請求項16】
請求項10ないし請求項15のいずれかに記載の画像処理装置はさらに、
前記画像処理が施された画像データを出力する出力手段を備える画像処理装置。
【請求項17】
画像データと色空間情報とを含む画像ファイルに対して画像処理を実行するためのプログラムであって、
画像ファイルを取得する機能と、
前記取得した画像ファイルから前記色空間情報を検索する機能と、
前記色空間情報が検索された場合には、前記色空間情報に基づき前記画像データの色空間を変換する機能とをコンピュータによって実現させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−279049(P2010−279049A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157417(P2010−157417)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2006−285628(P2006−285628)の分割
【原出願日】平成13年7月18日(2001.7.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】