説明

画像処理システムおよび画像処理装置

【課題】記憶装置の故障が近づいてきたことにより、データをバックアップするとき、最小限のデータだけをバックアップするようにして、バックアップ用の記憶装置の負担を減らす。
【解決手段】管理サーバ2と画像処理装置1とがネットワークを通じて通信可能に接続される。画像処理装置1は、入力されたデータをHDD25に記憶するとき、重要度をランク付けする。管理サーバ2は、画像処理装置1のHDD25を定期的に監視して、HDD情報を取得する。管理サーバ2は、HDD情報に基づいて、HDD25の故障の危険度を判断する。危険度が高くなったとき、管理サーバ2は、画像処理装置1の重要度の高いデータをHDD34にバックアップする。管理サーバ2は、画像処理装置1のHDD25の監視を続ける。故障の危険度がさらに高まると、管理サーバ2は、次に重要度の高いデータをHDD34にバックアップする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に内蔵された、データを記憶する記憶装置を管理する画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置は、コピー、プリント、ファクシミリ通信、ドキュメントファイリングといった複数の処理を行う。このような画像処理装置は、HDDなどの記憶装置を備え、入力されたデータを記憶装置に記憶する。記憶装置が故障すると、記憶しているデータが消滅してしまう。
【0003】
信頼性の高い記憶装置として、RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)が利用される。しかし、画像処理装置は、複数のHDDを搭載しなければならず、コストの上昇を招く。
【0004】
そこで、外部の記憶装置を利用して、データの消滅リスクを減らすことが特許文献1に記載されている。画像処理装置は、記憶装置の自己診断機能を利用して、記憶装置の故障を予測する。画像処理装置は、故障が近いと判断したとき、記憶装置を備えた他の画像処理装置にデータを送信する。他の画像処理装置は、受信したバックアップデータを記憶する。
【特許文献1】特開2005−303985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バックアップを行う1つの画像処理装置に、複数の画像処理装置から一度に大量のデータが送信される場合が起こり得る。例えば、同時期に複数の画像処理装置が設置された場合、ほぼ同時に複数の記憶装置が寿命に達すると、データのバックアップの必要性が生じ、大量のデータが送信される。画像処理装置では、大量のデータを受け取ると、記憶装置がオーバーフローを起こし、トラブルを起こすおそれがある。その結果、データのバックアップが行えなくなる。
【0006】
本発明は、上記に鑑み、記憶装置の故障が近づいてきたことにより、データをバックアップするとき、最小限のデータだけをバックアップするようにして、バックアップ用の記憶装置の負担を減らせる画像処理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、入力されたデータを記憶する記憶装置を備えた複数の画像処理装置と管理装置とがネットワークを通じて通信可能に接続された画像処理システムであって、画像処理装置の記憶装置とは異なる他の記憶装置が設けられたものである。管理装置は、画像処理装置の記憶装置を監視して、故障を予測し、故障の危険度が高まったとき、重要度の高いデータを他の記憶装置にバックアップする。
【0008】
記憶装置は、長期間使用していると、経年劣化等によって故障しやすくなる。管理装置は、画像処理装置の記憶装置から得られる情報に基づいて、故障の起こりやすさを表す危険度に応じて、画像処理装置のデータをバックアップする。このとき、全てのデータをバックアップするのではなく、なくなっては困る重要なデータだけをバックアップする。なお、バックアップする他の記憶装置は、管理装置に内蔵された記憶装置であってもよく、あるいはネットワークに接続された記憶装置であってもよい。画像処理装置のデータが他の記憶装置にコピーされて、記憶される。
【0009】
管理装置は、画像処理装置の故障の危険度を判断し、危険度が高まるほど重要度の高いデータから重要度の低いデータまでバックアップする。画像処理装置は、データの重要度をランク付けして、データを記憶し、管理装置は、故障の危険度のレベルを判断し、危険度のレベルに応じてバックアップするデータのランクを決める。
【0010】
時間の経過につれて、故障の危険度は高まってくる。そのため、危険度がある程度高くなったとき、まず最も重要度の高いデータをバックアップして、データを保護する。さらい危険度が高くなると、次に重要度の高いデータもバックアップする。このように、危険度の高まりに応じて、段階的にデータをバックアップしていく。
【0011】
すなわち、管理装置は、故障の危険度が第1のレベルを超えたとき、最も重要度の高い第1のランクのデータをバックアップし、危険度が第1のレベルより高い第2のレベルを超えたとき、第1のランクのデータだけでなく、次に重要度の高い第2のランクのデータをバックアップし、危険度が第2のレベルより高い第3のレベルを超えたとき、第1のランクおよび第2のランクのデータと、これらより低いランクのデータをバックアップする。
【0012】
管理装置は、記憶装置が寿命に達したと判断したとき、画像処理装置に記憶装置の交換を報知する。故障の危険度が最も高くなったとき、寿命とされる。管理装置は、寿命であることを画像処理装置に報知して、記憶装置の交換を促す。
【0013】
管理装置は、画像処理装置の記憶装置が交換されると、当該画像処理装置のバックアップデータを新しい記憶装置にコピーする。交換により、新しい記憶装置が画像処理装置に搭載される。管理装置が、バックアップしたデータを画像処理装置にコピーすると、画像処理装置は、今までと同様に動作することができる。
【0014】
管理装置は、画像処理装置を定期的に監視して、画像処理装置が存在しないことを検出したとき、他の記憶装置に記憶されている当該画像処理装置のバックアップデータを削除する。画像処理装置が存在しなくなると、他の記憶装置に不要なデータが残る。このようなデータが削除されるので、記憶装置が容量不足になることを防止できる。
【0015】
管理装置は、画像処理装置からの指示に基づいて、当該画像処理装置のバックアップデータを削除する。重要なデータであっても、不要になる場合がある。画像処理装置が、このようなデータを削除するように指示すると、管理装置は、他の記憶装置に記憶されているバックアップデータを削除する。これによって、記憶装置の容量不足を防げる。
【0016】
画像処理装置の記憶装置は、HDDとされ、管理装置は、SMART情報を利用して、記憶装置の故障を予測する。SMARTは、HDDに搭載されている機能である。この機能を利用することにより、HDDの故障を容易に予測することができる。
【0017】
管理装置の代わりに、画像処理装置が記憶装置を監視して、データのバックアップを行ってもよい。画像処理装置は、入力されたデータを記憶する記憶装置と、データを管理する制御装置とを備え、制御装置は、記憶装置を監視して、故障を予測し、故障の危険度が高まったとき、重要度の高いデータを他の記憶装置にバックアップする。すなわち、制御装置は、故障の危険度を判断し、危険度が高くなるほど重要度の高いデータから重要度の低いデータまでを他の記憶装置に送信する。他の記憶装置は、外部に設置されたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、画像処理装置の記憶装置の故障が近づいてきたとき、重要度の高いデータを他の記憶装置にバックアップすることにより、ひとまず最小限のデータだけを保護できる。したがって、バックアップ用の記憶装置は、大量のデータをバックアップしなくてすみ、負担が減る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本実施形態の画像処理システムを図1に示す。画像処理システムは、複数の画像処理装置1と管理サーバ2とがネットワーク3で相互に通信可能に接続されたシステムである。
【0020】
各画像処理装置1は、原稿から読み取った画像データまたは外部から入力された画像データに応じて画像処理を施し、所定の記録シートに対して、多色および単色の画像を形成するMFPであり、画像形成のためのエンジン10、スキャナ11、コントローラ12を備えている。なお、各画像処理装置1は、同じ構成である。
【0021】
コントローラ12は、SoC(System On a Chip)20、RAM21、ROM22、画像処理部23、インタフェース制御部24、HDD25から構成される。
【0022】
SoC20は、マイクロプロセッサ、RAMやROM、その他の周辺デバイスを制御するコントローラを内蔵し、コントローラ12の心臓部にあたる。すなわち、SoC20は、画像処理装置1の制御装置として機能する。
【0023】
RAM21は、SoC20に接続され、画像処理を行うときのワークエリアとして使用したり、画像データを一時的に記憶するための記憶デバイスであり、DRAMなどの揮発性メモリが用いられる。ROM22は、SoC20内のマイクロプロセッサが実行するプログラムを記憶するための記憶デバイスであり、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリが用いられる。
【0024】
インタフェース制御部24は、ネットワーク3を通じてデータ通信を行う。インタフェース制御部24がネットワーク3に接続された図示しないホストコンピュータから印刷ジョブデータを受け取ると、コントローラ12のSoC20は、そのデータを解析して画像データに変換し、RAM21に一旦記憶する。また、スキャナ11で読み取られた画像データもRAM21に一旦記憶される。
【0025】
画像処理部23は、インタフェース制御部24を通じて入力された画像データに所定の画像処理を施し、RAM21に保存する。そして、画像処理部23にて画像処理された画像データは、SoC20からの出力指示に応じてRAM21から読み出されて、エンジン10に転送される。エンジン10は、記録シートに画像を印刷する。
【0026】
HDD25は、ホストコンピュータからの指示にしたがって画像データを長期に保存したり、ホストコンピュータから送信されたファイルをファイリングして保存するための記憶装置として使用される。また、スキャナ11によって読み取った画像データを保存する。
【0027】
管理サーバ2は、CPU30、チップセット31、RAM32、RAIDコントローラ33、HDD34、表示装置35、LANコントローラ36より構成される。管理サーバ2は、一般的なパーソナルコンピュータにMFPを管理するMFP管理ソフトウェアを実装することで実現することができ、各画像処理装置1を管理する管理装置とされる。
【0028】
CPU30は、プログラムによって様々な数値計算や情報処理、機器制御などを行う管理サーバにおける制御装置であり、各MFPの監視や、HDDの故障予測の判断、データバックアップなどのサーバ全体の制御を司る。
【0029】
チップセット31は、CPU30に接続され、CPU30からの命令に従って周辺装置を制御するデバイスである。RAM32は、チップセット31に接続され、CPU30が使用する様々なデータを一時的に記憶しておくための揮発性のメモリである。
【0030】
RAIDコントローラ33は、複数台のハードディスクを組み合わせて、仮想的な1台のハードディスクとして運用するRAID制御を行うデバイスである。
【0031】
HDD34は、複数台のハードディスクドライブから構成され、RAIDコントローラ33によって制御される。このHDD34が、各画像処理装置1のHDD25内のデータをバックアップ保存するために使用される大容量の記憶装置である。
【0032】
表示装置35は、MFP管理ソフトウェアの設定変更などのユーザインタフェースを表示する。LANコントローラ36は、ネットワーク3を使用した通信を制御するデバイスである。
【0033】
以後、管理サーバ2のCPU30からなる制御装置をホスト制御装置と称し、画像処理装置1のSoC20からなる制御装置をクライアント制御装置と称する。
【0034】
管理サーバ2は、各画像処理装置1の管理を行う。特に、画像処理装置1の記憶装置であるHDD25を監視し、HDD25の故障を予測する。そして、故障の危険度が高まったとき、HDD25に保存されているデータをバックアップして、データを保護する。
【0035】
管理サーバ2のホスト制御装置は、MFP管理ソフトウェアを動作させると、各画像処理装置1と通信を行い、HDD25の情報問い合わせを行う。クライアント制御装置は、HDD25からSMART情報を取得し、管理サーバ2にSMART情報に基づいて、HDD情報を返信する。
【0036】
SMART(Self−Monitoring, Analysis and ReportingTechnology)とは、HDDの障害の早期発見・故障の予測を目的としてHDDに搭載されている機能である。この機能により、各種の検査項目がリアルタイムに自己診断される。SMART情報は、各種の検査項目の状態を数値化したものである。この情報によって、HDDの経年劣化等による故障の発生時期が近づいていることを予測することができる。
【0037】
ホスト制御装置は、SMART情報に基づいて、画像処理装置1のHDD25の故障の危険度を判断する。故障の発生時期に近づくほど、故障の危険度は高くなる。危険度が高くなったとき、ホスト制御装置は、画像処理装置1のデータのバックアップを実行する。
【0038】
画像処理装置1では、クライアント制御装置は、HDD25に記憶するデータに対して、重要度のランク付けを行う。そして、クライアント制御装置は、データをバックアップするとき、重要度の高いデータから行う。
【0039】
次に、画像処理システムにおけるデータのバックアップ処理について、図2、3にしたがって具体的に説明する。まず、管理サーバ2は、システム内の画像処理装置1の登録を行う。S1において、ホスト制御装置は、MFP管理ソフトウェアを起動して、画像処理装置1と正常に通信できるように初期登録を行う。例えば、ホスト制御装置は、ネットワーク3に接続されている画像処理装置1に登録のコマンドを一斉に送信する。画像処理装置1のクライアント制御装置は、これに応答して、機種名、IPアドレス等の識別情報を管理サーバ2に送信する。ホスト制御装置は、受信した識別情報をHDDあるいは34不揮発性メモリに記憶することにより、画像処理装置1の初期登録を行う。あるいは、管理者が、管理サーバ2を操作して、画像処理装置1の識別情報を直接入力してもよく、ホスト制御装置は、入力された識別情報に基づいて、画像処理装置1の初期登録を行う。
【0040】
正常に登録が行えると、S2において、ホスト制御装置は、最初に画像処理装置1のHDD情報の取得を行う。このHDD情報は、SMART情報の全ての項目に関する情報、あるいは一部の項目に関する情報である。同様に、他の画像処理装置1についても、初期登録後、HDD情報の取得が行われる。
【0041】
ホスト制御装置は、定期的に画像処理装置1のHDD25を監視する。すなわち、図3のS10において、前回の情報取得から1時間経過したかを判断する。S11において、1時間経過していない場合は、1時間経過するまでループする。1時間経過した場合、ホスト制御装置は、画像処理装置1からHDD情報を取得する。ここで、HDD情報には複数の項目があるが、その中から通電時間、読み込みエラー率、代替処理済の不良セクタ数、温度の各項目が選択される。
【0042】
ホスト制御装置は、HDD情報に基づいて、HDD25の故障の危険度を評価する。すなわち、これらの情報から、下記のように係数x、y、zを求める。
x=読み込みエラー率(初期値:0)+1
y=代替処理済の不良セクタ数(初期値:0)+1
z=温度(40度未満:1、40度以上50度未満:2、50度以上:3)
【0043】
次に、S12において、下記式にしたがってポイントを計算し、前回までのポイントに加算して累積ポイントを計算する。このポイントが、HDD25の故障の危険度を表す。
ポイント=(x*y*z)+(前回までの累積ポイント)
【0044】
ここで、読み込みエラー率=0、不良セクタ数=0、温度=常に40度未満で、通電時間が5年間経過した時の累積ポイントを寿命Lとする。この場合、1時間経過毎のポイントは、常にx=1、y=1、z=1となる。x*y*z=1なので、単純に通電時間数がポイントとなり、寿命L=24(時間)*365(日)*5(年)=43800ポイントとなる。1時間経過毎に計算したポイントの累積が、寿命Lのポイント数以上になると、このHDD25は寿命に達したと判断され、交換対象とされる。なお、取得したHDD情報やポイントは、HDD34あるいは他の不揮発性メモリに記憶される。
【0045】
すなわち、ホスト制御装置は、ポイントによって故障の危険度を判断する。ポイントが高くなるほど、故障の危険度が高まり、故障の発生が近づいてきたと予測することができる。ここでは、故障の危険度が段階的に判断される。寿命Lのポイントに対して、L×50%=21900ポイントが第1のレベルに設定される。L×75%=32850ポイントが第2のレベルに設定される。レベルが上がるにつれて、故障の危険度が高くなる。最高のレベルが寿命Lとされる。
【0046】
また、画像処理装置1に記憶されるデータは、重要度に応じてランク付けされる。クライアント制御装置は、重要度の高いデータをAランク、重要度が中のデータをBランク、重要度が低いデータをCランクとする。クライアント制御装置は、データをHDD25に記憶するとき、データのランクを付加して記憶する。この重要度のランクの設定は、データを入力してジョブを依頼するユーザによって行われる。なお、一時記憶のデータは、ランク付けしない。
【0047】
管理サーバ2では、ホスト制御装置は、故障の危険度の各レベルに応じて、バックアップするデータの重要度のランクを決める。危険度のレベルが高くなるほど、バックアップするデータのランクが下がる。すなわち、危険度のレベルが低いとき、重要度の高いデータがバックアップされ、危険度のレベルが高くなると、重要度の高いデータから重要度の低いデータまでバックアップされる。
【0048】
S13において、ホスト制御装置は、計算したポイントが第1のレベルに達したかを確認する。ポイントが21900ポイント未満のとき、ホスト制御装置は、故障の危険度は低いと判断して、バックアップを実施しない(S14)。その後、S10に戻って、HDDの監視が行われる。
【0049】
ポイントが第1のレベル以上のとき、S15において、ホスト制御装置は、ポイントが寿命L以上であるかを確認する。ポイントが43800ポイント未満のとき、S18において、ホスト制御装置は、ポイントが第2のレベル以上であるかを確認する。
【0050】
ポイントが32850ポイント未満のとき、ホスト制御装置は、ポイントが21900ポイント以上であるので、危険度が第1のレベルを超えて、故障の危険度が高まったと判断する。S20において、ホスト制御装置は、重要度の最も高いデータ、すなわちAランクのデータをバックアップする。ホスト制御装置は、画像処理装置1にHDD25の故障の危険度が高まったことを通知するとともに、Aランクのデータの送信を要求する。
【0051】
画像処理装置1では、クライアント制御装置は、HDD25からAランクのデータを読み出し、管理サーバ2に送信する。ホスト制御装置は、受け取ったデータをHDD34に画像処理装置1のバックアップデータとして記憶する。この後、ホスト制御装置は、画像処理装置1のHDD25の監視を続ける。
【0052】
時間が経過していくにつれて、ポイントが徐々に増えていく。S18において、累積したポイントが第2のレベルを超えると、ホスト制御装置は、HDD25の故障の危険度がさらに高まったと判断し、次に重要度の高いデータまでバックアップする(S19)。すなわち、ホスト制御装置は、画像処理装置1にHDD25の故障の危険度がさらに高まったことを通知するとともに、AランクおよびBランクのデータの送信を要求する。
【0053】
画像処理装置1のクライアント制御装置は、HDD25からAランクおよびBランクのデータを読み出し、管理サーバ2に送信する。ホスト制御装置は、受け取ったデータをHDD34に画像処理装置1のバックアップデータとして記憶する。なお、同じデータがすでに記憶されている場合、上書きされる。この後、ホスト制御装置は、画像処理装置1のHDD25の監視を続ける。
【0054】
そして、累積したポイントが寿命L以上になると、S15において、管理サーバ2のホスト制御装置は、HDD25が寿命に達したと判断し、重要度の高いデータから重要度の低いデータまで、すなわちA、B、Cの各ランクのデータをバックアップする(S16)。ホスト制御装置は、画像処理装置1にA、B、Cの各ランクのデータの送信を要求する。画像処理装置1のクライアント制御装置は、A、B、Cの各ランクのデータの管理サーバ2に送信する。ホスト制御装置は、受け取ったデータをHDD34に記憶する。
【0055】
また、管理装置2のホスト制御装置は、表示装置35に画像処理装置1のHDD25の交換のアラートを表示するとともに、画像処理装置1にHDD25の交換のアラートを報知する。S17において、画像処理装置1のクライアント制御装置は、このアラートを操作パネルに表示する。なお、ポイントが寿命Lに達したときでも、HDD25は実際には正常に動作しているので、記憶しているデータを読み出すことができる。
【0056】
画像処理装置1のHDD25が交換されると、クライアント制御装置は、管理サーバ2にHDD25を交換したことを通知する。この代わりに、管理サーバ2のホスト制御装置が、アラートの報知後、画像処理装置1からHDD情報を取得するようにしてもよい。ホスト制御装置は、HDD情報を取得できると、HDD25が交換されたことを認識できる。
【0057】
S21において、管理サーバ2のホスト制御装置は、1時間以内にHDD25が交換されたことを確認すると、当該画像処理装置1のバックアップデータを画像処理装置1にコピーする(S22)。クライアント制御装置は、受け取ったデータを新しいHDD25に記憶する。データのコピーが完了すると、ホスト制御装置は、HDD34に記憶されている当該画像処理装置1のバックアップデータを消去する(S23)。そして、画像処理装置1では、クライアント制御装置は、表示されているアラートを消去する(S24)。以後、管理サーバ2は、再び画像処理装置1のHDD25の監視を続ける。
【0058】
なお、S21において、1時間以内にHDD25が交換されなかったとき、管理サーバ2のホスト制御装置は、再びHDD交換のアラートを画像処理装置1に報知して、交換を促す。
【0059】
ここで、具体的にデータのバックアップ処理を説明する。機種名がMX1、MX2とされた2つの画像処理装置1がある。図4に示すように、MX1の画像処理装置1のHDD25には、フォルダ毎に、複数のデータがファイルとして記憶されている。各データに対して、コピー、プリント、スキャン等のジョブの依頼時に、重要度のランクが重要度フラグとしてそれぞれ付加される。図5に示すように、MX2の画像処理装置1においても同様にデータが記憶されている。
【0060】
管理サーバ2は、2つの画像処理装置1のHDD25を監視する。ホスト制御装置は、画像処理装置1のクライアント制御装置を通じてHDD情報を取得する。ホスト制御装置は、HDD情報に基づいて、通電時間、読み込みエラー率、代替処理済の不良セクタ数、温度の選択された各項目の情報からポイントを計算し、前回のポイントに加算する。ある時点での各画像処理装置1の累積ポイントは、図6の(A)に示すようになる。この時点では、各画像処理装置1のポイントは、2000ポイント、1ポイントである。いずれも第1のレベルを超えていないので、バックアップの必要はない。このときの管理サーバ2のHDD34には、図8の(A)に示すように、バックアップデータは記憶されていない。このHDD34には、バックアップデータのフォルダが作成されている。フォルダは、重要度に応じて分けられている。
【0061】
引き続き、管理サーバ2は、画像処理装置1のHDD25の監視を行う。MX1、MX2の通算時間が15000時間、14000時間となったとき、図6の(B)に示すように、MX1のポイントが21900ポイントとなり、第1のレベル(21900ポイント)以上となる。一方、MX2のポイントは、14500ポイントであり、第1のレベルに達していない。ホスト制御装置は、MX1のHDD25の故障の危険度が高まったと判断し、最も重要度の高いAランクのデータのバックアップを行う。図8の(B)に示すように、管理サーバ2のHDD34に、MX1のAランクのデータがバックアップされる。このデータは、重要度Aフォルダに記憶される。
【0062】
図6の(C)に示すように、MX1の通算時間が20000時間となったとき、ポイントは32850ポイントとなり、第2のレベル(32850ポイント)以上となる。また、MX2の通算時間が19000時間となったとき、ポイントは21900ポイントとなり、第1のレベル以上となる。ホスト制御装置は、両画像処理装置1のデータのバックアップを行う。MX1では、AランクおよびBランクのデータがバックアップされる。MX2では、Aランクのデータがバックアップされる。図8の(C)に示すように、管理サーバ2のHDD34の重要度Aフォルダに、MX1のAランクのデータおよびMX2のAランクのデータが記憶され、重要度Bフォルダに、MX1のBランクのデータが記憶される。
【0063】
図6の(D)に示すように、MX1の通算時間が30000時間となったとき、ポイントは42850ポイントとなり、第2のレベル以上である。また、MX2の通算時間が29000時間となったとき、ポイントは32800ポイントとなり、第2のレベル以上となる。ホスト制御装置は、両画像処理装置1のデータのバックアップを行う。MX1およびMX2のAランクおよびBランクのデータがバックアップされる。図8の(D)に示すように、管理サーバ2のHDD34の重要度Aフォルダに、MX1およびMX2のAランクのデータが記憶され、重要度Bフォルダに、MX1およびMX2のBランクのデータが記憶される。
【0064】
図7の(E)に示すように、MX1の通算時間が31000時間となったとき、ポイントは43800ポイントとなり、寿命L以上となる。また、MX2の通算時間が30000時間となったとき、ポイントは33800ポイントとなり、第2のレベル以上である。ホスト制御装置は、両画像処理装置1のデータのバックアップを行う。MX1では、Aランク、BランクおよびCランクのデータがバックアップされる。MX2では、AランクおよびBランクのデータがバックアップされる。図9の(E)に示すように、管理サーバ2のHDD34の重要度Aフォルダに、MX1およびMX2のAランクのデータが記憶され、重要度Bフォルダに、MX1およびMX2のBランクのデータが記憶され、重要度Cフォルダに、MX1のCランクのデータが記憶される。
【0065】
そして、MX1のHDD34が交換されると、管理サーバ2のHDD34にバックアップされているMX1の全てのデータが新しいHDD25にコピーされる。その後、管理サーバ2のHDD34内のMX1の全データが消去される。管理サーバ2は、MX1の新しいHDD25の監視を始める。
【0066】
図7の(F)に示すように、MX1の通算時間が1000時間となったとき、ポイントは200ポイントとなり、第1のレベル未満である。また、MX2の通算時間が39000時間となったとき、ポイントは43800ポイントとなり、寿命L以上となる。ホスト制御装置は、MX2のデータのバックアップを行う。MX1のデータはバックアップされない。MX2では、Aランク、BランクおよびCランクのデータがバックアップされる。図9の(F)に示すように、管理サーバ2のHDD34の重要度Aフォルダに、MX2のAランクのデータが記憶され、重要度Bフォルダに、MX2のBランクのデータが記憶され、重要度Cフォルダに、MX2のCランクのデータが記憶される。
【0067】
そして、MX2のHDD25が交換されると、管理サーバ2のHDD34にバックアップされているMX2の全てのデータが新しいHDD25にコピーされる。その後、管理サーバ2のHDD34内のMX2の全データが消去される。管理サーバ2は、MX2の新しいHDD25の監視を始める。
【0068】
図7の(G)に示すように、MX1、MX2の通算時間が2000時間、200時間となったとき、MX1のポイントが3500ポイント、MX2のポイントが200ポイントとなり、いずれも第1のレベルに達していない。両画像処理装置1のデータのバックアップは行われない。図9の(G)に示すように、管理サーバ2のHDD34のバックアップ用フォルダは空である。
【0069】
以上のように、画像処理装置1のHDD25の故障が近いと予測されると、重要度の高いデータからバックアップされる。ひとまず必要なデータだけがバックアップされるので、バックアップ時間を短縮できる。また、管理サーバ2においては、バックアップデータを記憶する記憶装置の容量を最小限に抑えることができ、多数の画像処理装置1を管理する場合に都合がよい。
【0070】
ところで、画像処理システムにおいて、画像処理装置1が古いものから新しいものに交換されることがある。このとき、管理サーバ2に、古い画像処理装置1のバックアップデータが残ったままになる。このような場合の対策として、管理サーバ2は、存在しない画像処理装置1のバックアップデータを削除する。
【0071】
ホスト制御装置は、定期的にHDD25を監視するために画像処理装置1と通信を行う。しかし、古い画像処理装置1は存在しないので、ホスト制御装置は、通信することができない。したがって、ホスト制御装置は、この画像処理装置1が存在していないことを検出できる。そこで、ホスト制御装置は、存在しない画像処理装置1のバックアップデータをHDD34から全て消去する。これにより、HDD34の空き容量を増やすことができる。
【0072】
なお、新しく画像処理装置1が設置され、ネットワーク3に接続されたとき、管理サーバ2に画像処理装置1の初期登録が行われる。この後、管理サーバ2は、この画像処理装置1のHDD25の監視を始める。
【0073】
また、バックアップしたデータが不要になる場合がある。そこで、画像処理装置1のクライアント制御装置は、管理サーバ2にバックアップされたデータの削除を要求する。データが不要になったとき、画像処理装置1において、ユーザは、指定したデータの削除の操作を行う。クライアント制御装置は、管理サーバ2にデータ削除を指示する。管理サーバ2のホスト制御装置は、指定されたデータをHDD34から削除する。このとき、バックアップデータの全削除、フォルダ単位の削除、ファイル単位の削除のいずれかを選択できる。
【0074】
これにより、画像処理装置1において、バックアップされたデータが不要になったとき、管理サーバ2から不要なバックアップデータを削除することができる。不要なデータが管理サーバ2のHDD34に残らないので、データのバックアップによってHDD34の容量を圧迫することを防げる。
【0075】
管理サーバ2の代わりに、画像処理装置1自身がHDD25を監視して、故障を予測し、データのバックアップを行ってもよい。クライアント制御装置は、ホスト制御装置と同様にHDD情報を取得して、故障の危険度を判断する。危険度のレベルに応じて、ランク付けされたデータのうち、重要度の高いデータから管理サーバ2の記憶装置にバックアップする。上記と同様に、故障の危険度が高くなるほど、重要度の低いデータまでバックアップされる。
【0076】
このように画像処理装置1において、HDD25を監視して、バックアップの必要性を判断することにより、確実にデータをバックアップすることができる。例えば、管理サーバ2が画像処理装置1と通信できない状態が発生したとき、故障の発生を予測することができない。そのため、管理サーバ2は、HDD25の故障の発生時期が近づいたことを認識できず、データのバックアップを行わない。しかし、画像処理装置1が判断することにより、このような事態を回避でき、データをバックアップすることができ、データ管理の信頼性が高められる。なお、管理サーバ2と通信できないとき、管理サーバ2のHDD34にデータをバックアップできなくなるおそれがあるので、ネットワーク3に接続された予備の記憶装置にデータをバックアップするようにすればよい。また、バックアップ用の記憶装置は、画像処理装置1に直接接続された外部の記憶装置であってもよい。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。監視の対象となる記憶装置として、HDD以外に、DVD、CDのような光ディスクとしてもよい。バックアップデータを記憶する記憶装置として、ファイルサーバを設けてもよい。ファイルサーバはネットワークに接続され、管理サーバによって、データの読み書きが制御される。
【0078】
上記では、個々のデータ毎に重要度をランク付けしたが、画像処理装置毎に重要度を決めてもよい。特定のユーザだけが使用可能とされ、機密データを扱う画像処理装置は、重要度が高く設定される。この画像処理装置に記憶されているデータは重要度の高いデータとなる。一方、だれでも使用可能な画像処理装置は、重要度が低く設定され、この画像処理装置のデータは重要度の低いデータとされる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の画像処理システムの全体構成を示すブロック図
【図2】画像処理装置の初期登録のフローチャート
【図3】バックアップ処理のフローチャート
【図4】画像処理装置に記憶されているデータの内容を示す図
【図5】他の画像処理装置に記憶されているデータの内容を示す図
【図6】故障の危険度を表すポイントの計算例を示す図
【図7】故障の危険度を表すポイントの計算例を示す図
【図8】管理サーバにおけるHDDのバックアップデータの内容を示す図
【図9】管理サーバにおけるHDDのバックアップデータの内容を示す図
【符号の説明】
【0080】
1 画像処理装置
2 管理サーバ
3 ネットワーク
12 コントローラ
20 SoC
25 HDD
30 CPU
34 HDD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデータを記憶する記憶装置を備えた複数の画像処理装置と管理装置とがネットワークを通じて通信可能に接続された画像処理システムであって、画像処理装置の記憶装置とは異なる他の記憶装置が設けられ、管理装置は、画像処理装置の記憶装置を監視して、故障を予測し、故障の危険度が高まったとき、重要度の高いデータを他の記憶装置にバックアップすることを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
管理装置は、画像処理装置の故障の危険度を判断し、危険度が高まるほど重要度の高いデータから重要度の低いデータまでバックアップすることを特徴とする請求項1記載の画像処理システム。
【請求項3】
画像処理装置は、データの重要度をランク付けして、データを記憶し、管理装置は、故障の危険度のレベルを判断し、危険度のレベルに応じてバックアップするデータのランクを決めることを特徴とする請求項2記載の画像処理システム。
【請求項4】
管理装置は、故障の危険度が第1のレベルを超えたとき、最も重要度の高い第1のランクのデータをバックアップし、危険度が第1のレベルより高い第2のレベルを超えたとき、第1のランクのデータだけでなく、次に重要度の高い第2のランクのデータをバックアップし、危険度が第2のレベルより高い第3のレベルを超えたとき、第1のランクおよび第2のランクのデータと、これらより低いランクのデータをバックアップすることを特徴とする請求項3記載の画像処理システム。
【請求項5】
管理装置は、記憶装置が寿命に達したと判断したとき、画像処理装置に記憶装置の交換を報知することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項6】
管理装置は、画像処理装置の記憶装置が交換されると、当該画像処理装置のバックアップデータを新しい記憶装置にコピーすることを特徴とする請求項5記載の画像処理システム。
【請求項7】
管理装置は、画像処理装置を定期的に監視して、画像処理装置が存在しないことを検出したとき、他の記憶装置に記憶されている当該画像処理装置のバックアップデータを削除することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項8】
管理装置は、画像処理装置からの指示に基づいて、当該画像処理装置のバックアップデータを削除することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項9】
他の記憶装置は、管理装置に設けられたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項10】
画像処理装置の記憶装置は、HDDとされ、管理装置は、SMART情報を利用して、記憶装置の故障を予測することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項11】
入力されたデータを記憶する記憶装置と、データを管理する制御装置とを備え、制御装置は、記憶装置を監視して、故障を予測し、故障の危険度が高まったとき、重要度の高いデータを他の記憶装置にバックアップすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
制御装置は、故障の危険度を判断し、危険度が高まるほど重要度の高いデータから重要度の低いデータまでを外部に設置された他の記憶装置に送信することを特徴とする請求項11記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−16530(P2010−16530A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173386(P2008−173386)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】