画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体
【課題】 タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、凹凸欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体を提供する。
【解決手段】 制御部12は、第1の方向、たとえばタイヤ回転方向での各画素の濃度を微分した微分値に基づいて、欠陥候補が大規模凹凸欠陥であるか否かを、凹凸の種類ごとに予め定める専用しきい値に基づいて判定する。次に、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の濃度を微分した微分値を加算した微分和に基づいて、小規模凹欠陥であるか否かを判定する。さらに、各画素を中心とする第1の方向での予め定める微分幅での微分値に基づいて、鋭角凹欠陥であるか否かを判定する。
【解決手段】 制御部12は、第1の方向、たとえばタイヤ回転方向での各画素の濃度を微分した微分値に基づいて、欠陥候補が大規模凹凸欠陥であるか否かを、凹凸の種類ごとに予め定める専用しきい値に基づいて判定する。次に、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の濃度を微分した微分値を加算した微分和に基づいて、小規模凹欠陥であるか否かを判定する。さらに、各画素を中心とする第1の方向での予め定める微分幅での微分値に基づいて、鋭角凹欠陥であるか否かを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理が行われた画像に基づいて被検査物の欠陥検査を行う画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体に関し、より詳細には、自動車用タイヤに代表される工業製品の表面に形成される凹凸欠陥を、画像処理を行うことによって検査する画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用タイヤおよびゴム製品等に代表される工業製品を対象とする画像処理装置、たとえば工業製品の検査を行う検査装置は、検査対象物をカメラなどの撮影装置によって撮影し、撮影した画像に基づいて欠陥検査を行う。
【0003】
タイヤを製造するときに、タイヤの内側に形成される欠陥のうち、直線性に特徴を有する欠陥は、表1に示すように、コード露出欠陥と凹凸欠陥とに分類することができる。
【0004】
【表1】
【0005】
コード露出欠陥には、タイヤ内部のコードが表面に露出する故障があり、また、凹凸欠陥には、内面凹あるいは内面凸と呼ばれる故障があり、それぞれ表1に示した発生原因で発生する。
【0006】
第1の従来の技術として、特許文献1に記載されるタイヤ検査装置がある。このタイヤ検査装置は、波形処理の一種であるウェーブレット変換を用いてコード露出欠陥を検出するものである。ウェーブレット変換は、時間的に特徴が変化する信号の解析を可能にする周波数解析の変換処理である。すなわち、タイヤの位置を時間に対応させて、時間と周波数とを座標軸とする平面で、固有の広がりを有するウェーブレット(小さい波)を拡大縮小そして平行移動して足し合わせることによって、入力された信号波形を表現するものである。撮影信号は、コード露出欠陥に特有の周波数を中心周波数とする数値フィルタであるアナライジングウェーブレットによってウェーブレット変換され、変換結果に基づいてコード露出欠陥の判定が行われる。
【0007】
第2の従来の技術として、濃度射影平均を前処理とする2値化処理によって、または微分画像を2値化して微小エッジを除去した後、ハフ(Hough)変換を行うことによって、凹凸の直線性を検出する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−333531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、第1の従来の技術は、コード露出欠陥を検出するためのものであり、凹凸欠陥の検出に適用することはできない。第2の従来の技術は、タイヤの種類、たとえばタイヤの径、幅、および扁平率、タイヤの表面の状態、ならびに照明の位置関係が、画像に影響を与えるので、検査の安定性に欠けるという問題がある。これは、欠陥部と背景部とを区別するために必要である明確な濃度差あるいは濃度的特徴が存在しないことが原因である。
【0010】
本発明の目的は、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、凹凸欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮影した画像の処理を行う画像処理装置で実行される画像処理方法であって、
第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出工程と、
第1の凹凸欠陥検出工程で判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出工程と、
第2の凹凸欠陥検出工程で判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める画素数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出工程とを含むことを特徴とする画像処理方法である。
【0012】
また本発明は、前記第1の凹凸欠陥検出工程は、
前記線状模様の周期を算出する第1の周期算出工程と、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する第1の濃度変換工程と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、第1の濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する第1のフーリエ展開工程と、
第1のフーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分から、第1の周波数算出工程で算出された周波数の周波数成分を除いた残余の周波数成分を逆フーリエ展開する第1の逆フーリエ展開工程と、
第1の逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素に基づいて、第1の凹凸欠陥があるか否かを判定する第1の欠陥検出工程とを含み、
第1の欠陥検出工程では、逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素について、第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分した微分値を前記第1の微分値として算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記予め定める凹凸の種類は、凹から凸に変化する種類と、凸から凹に変化する種類と、凹である種類と、凸である種類とを含むことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記第2の凹凸欠陥検出工程は、
前記線状模様の周期を算出する第2の周期算出工程と、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する第2の濃度変換工程と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、第1の濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する第2のフーリエ展開工程と、
第2のフーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分から、第2の周波数算出工程で算出された周波数で定まる上限周波数を上限とする周波数成分を逆フーリエ展開する第2の逆フーリエ展開工程と、
第2の逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素に基づいて第2の凹凸欠陥があるか否かを判定する第2の欠陥検出工程とを含み、
第2の欠陥検出工程では、逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素のうち、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める微分範囲の画素について加算した微分和に基づいて、第2の凹凸欠陥であるか否かを判定することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記対象物は、前記線状模様と前記線状模様とは異なる非欠陥模様とが形成され、
前記第2の欠陥検出工程は、画像を構成する画素のうち最大の濃度が予め定める第2のしきい値より大きい画素からなる部分の形状を、非欠陥形状であると判定することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記第2の凹凸欠陥検出工程では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記第3の凹凸欠陥検出工程は、
前記線状模様の周期を算出する第3の周期算出工程と、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する第3の濃度変換工程と、
各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて第3の微分値を算出する微分工程と、
微分工程で算出された微分値に基づいて、第3の凹凸欠陥があるか否かを判定する第3の欠陥検出工程とを含み、
第3の欠陥検出工程では、第1の方向での画素の位置を変数として、第3の濃度変換工程で変換された各画素の濃度を表す第3の関数を、予め定める判定範囲で最小自乗法を用いて放物線を表す第4の関数に近似し、近似した第4の関数の放物線の高さが予め定める第3のしきい値より高いとき、第3の凹凸欠陥であると判定することを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記第3の凹凸欠陥検出工程では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記対象物を撮影した画像を第2の方向に複数のブロックに分割し、分割したブロックごとに、第1〜第3の凹凸欠陥検出工程を処理することを特徴とする。
【0020】
また本発明は、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出手段と、
第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出手段と、
第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出手段とを含むことを特徴とする画像処理装置である。
【0021】
また本発明は、コンピュータを、
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出手段と、
第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出手段と、
第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出手段として機能させるためのプログラムである。
また本発明は、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮影した画像の処理を行う画像処理装置で画像を処理するにあたって、第1の凹凸欠陥検出工程では、第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する。第2の凹凸欠陥検出工程では、第1の凹凸欠陥検出工程で判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する。そして、第3の凹凸欠陥検出工程では、第2の凹凸欠陥検出工程で判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める画素数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する。
【0023】
したがって、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、第1〜第3の凹凸欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる。
【0024】
また本発明によれば、前記第1の凹凸欠陥検出工程は、第1の周期算出工程と、第1の濃度変換工程と、第1のフーリエ展開工程と、第1の逆フーリエ展開工程と、第1の欠陥検出工程とを含む。第1の周期算出工程では、前記線状模様の周期を算出する。第1の濃度変換工程では、各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。第1のフーリエ展開工程では、第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、第1の濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する。第1の逆フーリエ展開工程では、第1のフーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分から、第1の周波数算出工程で算出された周波数の周波数成分を除いた残余の周波数成分を逆フーリエ展開する。第1の欠陥検出工程では、第1の逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素に基づいて、第1の凹凸欠陥があるか否かを判定する。そして、第1の欠陥検出工程では、逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素について、第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分した微分値を前記第1の微分値として算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する。
したがって、第1の凹凸欠陥、たとえば大規模凹凸欠陥を検出することができる。
【0025】
また本発明によれば、前記予め定める凹凸の種類は、凹から凸に変化する第1の種類と、凸から凹に変化する第2の種類と、凹である第3の種類と、凸である第4の種類とを含むので、凹凸の種類に応じてきめ細かく大規模凹凸欠陥を検出することができる。
【0026】
また本発明によれば、前記第2の凹凸欠陥検出工程は、第2の周期算出工程と、第2の濃度変換工程と、第2のフーリエ展開工程と、第2の逆フーリエ展開工程と、第2の欠陥検出工程とを含む。第2の周期算出工程では、前記線状模様の周期を算出する。第2の濃度変換工程では、各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。第2のフーリエ展開工程では、第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、第1の濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する。第2の逆フーリエ展開工程では、第2のフーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分から、第2の周波数算出工程で算出された周波数で定まる上限周波数を上限とする周波数成分を逆フーリエ展開する。第2の欠陥検出工程では、第2の逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素に基づいて第2の凹凸欠陥があるか否かを判定する。そして、第2の欠陥検出工程では、逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素のうち、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める微分範囲の画素について加算した微分和に基づいて、第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する。したがって、第2の凹凸欠陥、たとえば小規模凹欠陥を検出することができる。
【0027】
また本発明によれば、前記対象物は、前記線状模様と前記線状模様とは異なる非欠陥模様とが形成され、前記第2の欠陥検出工程は、画像を構成する画素のうち最大の濃度が予め定める第2のしきい値より大きい画素からなる部分の形状を、非欠陥形状であると判定するので、非欠陥形状、たとえば成型切手あるいはタイヤのジョイントを小規模凹欠陥として検出することがない。
【0028】
また本発明によれば、前記第2の凹凸欠陥検出工程では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させるので、小規模凹欠陥がタイヤ回転方向に垂直な方向から傾いていても小規模凹欠陥を検出することができる。
【0029】
また本発明によれば、前記第3の凹凸欠陥検出工程は、第3の周期算出工程と、第3の濃度変換工程と、微分工程と、第3の欠陥検出工程とを含む。第3の周期算出工程では、前記線状模様の周期を算出する。第3の濃度変換工程では、各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。微分工程では、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて第3の微分値を算出する。第3の欠陥検出工程では、微分工程で算出された微分値に基づいて、第3の凹凸欠陥があるか否かを判定する。そして、第3の欠陥検出工程では、第1の方向での画素の位置を変数として、第3の濃度変換工程で変換された各画素の濃度を表す第3の関数を、予め定める判定範囲で最小自乗法を用いて放物線を表す第4の関数に近似し、近似した第4の関数の放物線の高さが予め定める第3のしきい値より高いとき、第3の凹凸欠陥であると判定する。したがって、第3の凹凸欠陥、たとえば鋭角凹欠陥を検出することができる。
【0030】
また本発明によれば、前記第3の凹凸欠陥検出工程では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させるので、鋭角凹欠陥がタイヤ回転方向に垂直な方向から傾いていても鋭角凹欠陥を検出することができる。
【0031】
また本発明によれば、前記対象物を撮影した画像を第2の方向に複数のブロックに分割し、分割したブロックごとに、第1〜第3の凹凸欠陥検出工程を処理するので、凹凸欠陥を消すこともなく、また、ノイズの影響を低減するとともに、処理時間も短縮して処理することができる。
【0032】
また本発明によれば、第1の凹凸欠陥検出手段は、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する。第2の凹凸欠陥検出手段は、第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する。そして、第3の凹凸欠陥検出手段は、第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する。
【0033】
したがって、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、第1〜第3の凹凸欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる。
【0034】
また本発明によれば、プログラムによって、コンピュータを、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出手段と、第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出手段と、第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出手段として機能させることができる。
【0035】
また本発明によれば、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態である画像処理装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】凹凸欠陥の例を示す図である。
【図3】自己相関値を説明するための図である。
【図4】相関差分値を説明するための図である。
【図5】ピーク位置およびピーク間隔を説明するための図である。
【図6】濃度射影変換を説明するための図である。
【図7】フーリエ展開の補充の仕方を説明するための図である。
【図8】専用しきい値を設定する設定画面50の一例を示す図である。
【図9】ジョイントであるか否かの判定を説明するための図である。
【図10】回転射影変換を説明するための図である。
【図11】X方向での各画素の微分値を表す波形701の一例を示す図である。
【図12】コード露出・刻印文字検出処理を説明するための図である。
【図13】内面離型剤検出処理を説明するための図である。
【図14】制御部12が実行する凹凸欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】制御部12が実行する大規模凹凸欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】制御部12が実行する大規模凹凸判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】制御部12が実行する小規模凹欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図18】制御部12が実行する小規模凹欠陥判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図19】制御部12が実行する鋭角凹欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図20】制御部12が実行する鋭角凹欠陥判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明の一実施形態である画像処理装置1の構成を示すブロック図である。画像処理装置1は、たとえばゴム、金属もしくは樹脂からなる成型品の表面検査を、画像処理を用いて検査する検査装置であり、以下、タイヤを検査する検査装置である画像処理装置1を例に説明する。本発明に係る画像処理方法は、たとえば画像処理装置1で実行される。
【0038】
画像処理装置1は、入力部11、制御部12、記憶部13および出力部14を含んで構成される。入力部11は、たとえばマウスおよびキーボードなどの入力装置、ならびに照明部および撮影部からなる撮影装置を含んで構成される。入力装置は、たとえば検査の開始および終了を指示する情報、および検査の条件などの情報を入力する装置であり、入力部11は、入力装置によって入力された情報を制御部12に送る。
【0039】
撮影装置は、タイヤの内側をライトなどの照明部によって照明し、照明光が照射されているタイヤ表面をカメラなどの撮影部によって撮影する。撮影装置は、タイヤの内側を1度に撮影することができないので、タイヤの内側の表面の位置を移動して順次撮影する。入力部11は、撮影装置によって撮影したタイヤの内側の表面の画像を制御部12に送る。
【0040】
制御部12は、たとえば中央処理装置(Central Processing Unit;略称CPU)によって構成され、記憶部13に記憶されるプログラムを実行することによって、入力部11および出力部14を制御し、本発明に係る線状欠陥検出処理を行う後述する複数の機能を実現する。記憶部13は、たとえば半導体メモリあるいはハードディスク装置などによって構成される読み書き可能な記憶装置であり、制御部12で実行されるプログラムおよび制御部12で用いられる情報を記憶する。
【0041】
出力部14は、情報を出力するディスプレイなどの表示装置あるいはプリンタなどの印刷装置によって構成され、制御部12から受け取る情報を出力する。あるいは、着脱可能な記録媒体への情報の読み書きが可能な記録再生装置、他の画像処理装置と情報の送受信を行う通信装置などを、入力装置兼出力装置とすることも可能である。制御部12は、入力部11から受け取る画像に基づいて線状欠陥の有無を判定し、判定結果に基づく検査結果を出力部14に出力する。
【0042】
入力部11の撮影装置から受け取る画像(以下「取込画像」という)は、記憶部13に記憶される。取込画像は、予め定める第1の方向であるタイヤ回転方向と、タイヤ回転方向に垂直な方向とに配列された画素から構成される。すなわち、画素は、タイヤ回転方向に互いに平行な複数のラインと、タイヤ回転方向に直交する方向に互いに平行な複数のラインとの交点に配置されている。取込画像は、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様、たとえばブラダーグルーブが形成された対象物を撮影した画像である。
【0043】
凹凸欠陥は、溝の深さ、長さおよび幅の組み合わせによって、大規模凹凸欠陥、小規模凹欠陥および鋭角凹欠陥の3つに分類される。大規模凹凸欠陥は、凹凸部の幅が比較的広く、タイヤ回転方向に直交する方向(以下「垂直方向」という)に長い凹凸欠陥である。小規模凹欠陥および鋭角凹欠陥は、凹凸部の幅が比較的狭く、ほぼ垂直方向に長い凹凸欠陥であるが、垂直方向に対して傾きのあるものもある。鋭角凹欠陥は、小規模凹欠陥よりも凹部の深さが深い。大規模凹凸欠陥は、予め定める第1の凹凸欠陥であり、小規模凹欠陥は、予め定める第2の凹凸欠陥であり、鋭角凹欠陥は、予め定める第3の凹凸欠陥である。
【0044】
図2は、凹凸欠陥の例を示す図である。図2(a)は、大規模凹凸欠陥201が形成された取込画像20であり、図2(b)は、小規模凹欠陥211が形成された取込画像21である。大規模凹凸欠陥201は、垂直方向の凹凸欠陥であり、小規模凹欠陥211は、垂直方向に対して傾きのある凹欠陥である。取込画像20,21には、それぞれブラダーグルーブ202,212が示されている。
【0045】
制御部12は、第1〜第3の凹凸欠陥検出処理からなる凹凸欠陥検出処理によって、凹凸欠陥を検出する。第1の凹凸欠陥検出処理は、大規模凹凸欠陥を検出する処理であり、第2の凹凸欠陥検出処理は、小規模凹欠陥を検出する処理であり、第3の凹凸欠陥検出処理は、鋭角凹欠陥を検出する処理である。
【0046】
制御部12は、記憶部13に記憶されるプログラムを実行することによって、第1〜第3の凹凸欠陥検出手段などの機能を実現する。第1の凹凸欠陥検出処理は、第1の凹凸欠陥検出手段によって実行され、第2の凹凸欠陥検出処理は、第2の凹凸欠陥検出手段によって実行され、第3の凹凸欠陥検出処理は、第3の凹凸欠陥検出手段によって実行される。
【0047】
制御部12は、先ず、第1の凹凸欠陥検出処理を実行する。第1の凹凸欠陥検出処理は、大規模凹凸欠陥を検出する処理であり、第1〜第6ステップの6つのステップで処理される。制御部12は、取込画像を、タイヤ回転方向に切断して、タイヤ回転方向に直交する方向に複数のブロックに分割し、ブロックごとに、第1〜第6ステップの処理を実行する。
【0048】
第1ステップでは、制御部12は、ブラダーグルーブ本数算出処理を行う。具体的には、制御部12は、取込画像から自己相関値を算出し、算出した自己相関値の変動周期(以下「変動間隔」ともいう)を求めることによって、ブラダーグルーブの本数を算出する。
【0049】
ブラダーグルーブのように周期的変化に特徴がある画像の場合、自己相関値も周期的に変動する。したがって、自己相関値の変動間隔を求めることによって、ブラダーグルーブの本数を算出することができる。ブラダーグルーブの本数の算出は、第1〜第5手順で算出される。制御部12は、第1手順で、自己相関値を算出し、第2手順で、相関差分値を算出し、第3手順で、相関差分値のピーク位置を検出し、第4手順で、相関差分値のピーク間隔を算出し、第5手順で、ブラダーグルーブの本数を算出する。
【0050】
第1手順では、制御部12は、取込画像内に予め定める矩形のテンプレート領域を設定し、テンプレート領域内の画素と、テンプレート領域を移動させた領域内の画素との間の自己相関値を算出する。
【0051】
図3は、自己相関値を説明するための図である。対象領域30は、取込画像のうち、自己相関値を算出する画像の矩形の領域であり、図3の縦方向であるY方向の縦寸法が「H」であり、かつ図3の横方向であるX方向の横寸法が「W」である。テンプレート領域31は、A方向の縦寸法が「HT」であり、B方向の横寸法が「WT」である。対象領域30の左上の位置をXY座標の原点とする。縦寸法および横寸法は、画素数で表される。
【0052】
制御部12は、対象領域30内の任意の位置にテンプレート領域31を設定する。テンプレート領域31の縦寸法HTは、対象領域30の縦寸法Hと一致し、テンプレート領域31の横寸法WTは、対象領域30の横寸法Wよりも小さい。次に、制御部12は、テンプレート領域31をX方向に移動させた位置に、相関値算出領域32を設定する。相関値算出領域32は、テンプレート領域31と同一の寸法であり、縦寸法が「HT」、横寸法が「WT」である。
【0053】
制御部12は、テンプレート領域31と相関値算出領域32とを重ね合わせて、各画素の相関値を算出する。テンプレート領域31内の画素の位置を、テンプレート領域31の左上の位置を原点とする相対座標系で表して、座標(i,j)とし、相関値算出領域32の左上の画素の位置をXY座標系で座標(x,y)とすると、相関値算出領域32内の画素の位置は、XY座標系で(x+i,y+j)となる。
【0054】
本実施形態では、テンプレート領域31の画素の濃度と、相関値算出領域32の画素の濃度との相関値を、正規化相関法を用いて算出する。具体的には、テンプレート領域31の座標(i,j)の画素の濃度をT(i,j)とし、相関値算出領域32の座標(x+i,y+j)の画素の濃度を、I(x+i,y)+j)とすると、相関値R(x,y)は、正規化相関法による式(1)で算出される。制御部12は、相関値算出領域32を対象領域30内でX方向に順次1画素ずつ移動させて、正規化相関値を算出する。
【0055】
【数1】
【0056】
ここで、R(x,y)は、正規化相関値(以下、単に「相関値」ともいう)であり、「IH」は、相関値算出領域32内の画素の濃度の平均値であり、「TH」は、テンプレート領域31内の画素の濃度の平均値であり、x∈{0,1,2,…,W−WT}、y∈{0,1,2,…,H−HT}、i∈{0,1,2,…,WT−1}、j∈{0,1,2,…,HT−1}である。
【0057】
式(1)に示すように、相関値R(x,y)は、各画素の濃度から濃度の平均値を引いた値の相関となっているので、取込画像の濃度が変動したとしても、相関値R(x,y)を安定して算出することができる。式(1)を展開すると、式(2)が得られる。
【0058】
【数2】
【0059】
ここで、「N」は、テンプレート領域のサイズであり、N=WT×HTである。
相関値R(x,y)は、−1≦R(x,y)≦1の範囲の値となり、R(x,y)=「1」が完全一致を示し、R(x,y)=「−1」が完全不一致、すなわち相関値算出領域32の画像がテンプレート領域31の画像の反転画像であることを示し、R(x,y)=「0」が無相関であることを示す。また、相関値R(x,y)は、整数として表現するために、たとえば「10,000」などの定数を乗じた値を、相関値として用いることがある。すなわち、−1.0〜1.0の範囲にある小数値を整数化するために1万倍している。
【0060】
また、本実施形態では、制御部12は、対象領域30内の任意の位置にテンプレート領域31を設定するが、他の実施形態では、たとえば対象領域30内のX方向中央部にテンプレート領域31を設定して、相関値を算出する構成であってもよい。
【0061】
第2手順では、制御部12は、第1手順で算出されたテンプレート領域31内の画素の自己相関値と、X方向に予め定める間隔をあける画素との自己相関値とを差分処理して相関差分値を算出する。具体的には、制御部12は、自己相関値、つまり相関値R(x,y)から、式(3)を用いて相関差分値D(x,y)を算出する。
D(x,y)=R(x+Δx,y)−R(x,y) …(3)
【0062】
ここで、差分幅Δxは、予め定める間隔であり、たとえば「5」である。相関差分値は、自己相関値よりもフラットな値であるので、算出した相関差分値を用いて、ブラダーグルーブの本数の算出を容易かつ確実に行うことができる。フラットとは、グラフで表したとき、上昇下降が明確であり、ノイズに妨げられ難いという意味である。
【0063】
図4は、相関差分値を説明するための図である。図4(a)は、入力部11の撮影装置によって撮影された取込画像35を示す図である。図4(b)は、取込画像35内のグラフ36を抜き出した図である。取込画像35内にグラフ36が示されているが、判別し難いので図4(b)に抜き出して示している。
【0064】
取込画像35には、対象領域30とテンプレート領域31とが示されている。グラフ36には、相関差分値のピーク位置の検出に用いる閾値である相関差分値閾値361、自己相関値を示す波形362、および相関差分値を示す波形363が示される。グラフ36において、横軸は、画素のX方向の位置を示し、縦軸は、自己相関値の値を示している。
【0065】
第3手順では、制御部12は、第2手順で算出された各相関差分値のピーク位置、すなわち極大位置を検出する。制御部12は、図4(b)に示したグラフ36内の相関差分値閾値361を上下方向に動的に移動させて、相関差分値の波形363が相関差分値閾値361のラインを超える位置を、相関差分値のピーク位置と判定する。第4手順では、制御部12は、第3手順で検出されたテンプレート領域内のピーク位置のうち、互いに隣接する各ピーク位置の間隔の平均値を算出する。
【0066】
図5は、ピーク位置およびピーク間隔を説明するための図である。図5(a)は、相関差分値の波形の一例であるグラフ37を示す図である。図5(b)は、グラフ37内の領域38を拡大して示す図である。
【0067】
グラフ37には、相関差分値の波形363、相関差分値閾値361、波形363の最大値381、ピーク位置382、および隣接するピーク位置の間隔であるピーク間隔Tが示されている。グラフ37の横軸は、相関差分値を算出した画素の位置Xであり、縦軸は、相関差分値Dである。相関差分値閾値361は、たとえば波形の最大値381に対する閾値の比率として閾値比率を設定することによって、「(相関差分値閾値361)=(波形の最大値381)×(閾値比率)」によって算出される。
【0068】
図5(b)には、ピーク位置382と、波形363が相関差分値閾値361を超えた位置である立上がり位置383と、波形363が相関差分値閾値361を下回った位置である立下がり位置384とが示されている。制御部12は、ピーク位置382を、「(ピーク位置382)={(立上がり位置383)+(立下がり位置384)}/2」によって算出する。さらに制御部12は、複数のピーク位置382のうち、互いに隣接するピーク位置382の間隔をそれぞれ算出してピーク間隔Tを求める。制御部12は、複数のピーク間隔Tの平均値を算出する。
【0069】
第5手順では、制御部12は、第4手順で算出したピーク間隔の平均値に基づいて、取込画像内のブラダーグルーブの合計本数を算出し、算出したブラダーグルーブの合計本数から取込画像内のブラダーグルーブの周期を算出する。
【0070】
他の実施形態では、制御部12は、第5手順での処理が終わった後、第1手順に戻り、テンプレート領域31をX方向に移動させて、新たにテンプレート領域31を設定して、再び第1〜第5手順の処理を行ってもよい。テンプレート領域31を移動させて、相関値を複数回算出するので、最初に設定したテンプレート領域31にゴミなどの異物が付着していても、新たなテンプレート領域31に異物が付着していなければ、ブラダーグルーブの本数を正確に算出することができる。したがって、制御部12は、ブラダーグルーブの本数の算出を、より確実に行うことができる。
【0071】
表2は、フーリエ周波数による対象の分類を示す表である。欠陥部には、周波数が「1〜(z−1)」Hzである凹凸欠陥がある。非欠陥部には、周波数が「1〜(z−1)」Hzであるジョイント(凸ライン)および内面離型剤垂れ、周波数が「z〜39」Hzであるブラダーグルーブ、ならびに周波数が「40〜150」Hzである散布状内面離型剤および刻印文字がある。周波数zは、ブラダーグルーフ゛の本数によって決まる値である。ブラダーグルーフ゛の本数がタイヤの種類およびカメラの角度によって異なるため、ブラダーグルーブ本数算出処理で算出した本数から予め定める本数hを引いた数をzの値とする。予め定める本数hは、たとえば「2」である。
【0072】
【表2】
【0073】
欠陥の色は黒いが、内面離型剤垂れおよび散布状内面離型剤の色は白であるので、内面離型剤垂れおよび散布状内面離型剤は、別処理で、色によって欠陥判別を行うことも可能である。
【0074】
制御部12は、すべてのブロックについて、ブラダーグルーブの本数を算出すると、算出したブラダーグルーブの本数のうち、「0」以外の最尤値、つまり最も多い本数を、算出したブラダーグルーブの本数とする。
【0075】
第2ステップでは、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換は、1つの方向のライン上の画素の濃度を、そのライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換することである。具体的には、制御部12は、タイヤ回転方向に直交する方向のラインごとに、取込画像の各画素の濃度を、各画素が含まれるライン上の画素の濃度を平均した濃度に変換する。取込画像に照明による濃度むらがある場合は、取込画像から濃度むらを除去した画像に対して濃度射影変換を行う。濃度むらの除去方法については、特に限定されない。
【0076】
図6は、濃度射影変換を説明するための図である。図6(a)は、濃度射影変換を行う対象の取込画像40の一例である。取込画像40を構成する画素のうち、白色部分を構成する画素の濃度は、黒色部分を構成する画素の濃度よりも高い値を示す。取込画像40の横方向がx方向であり、縦方向がy方向である。
【0077】
図6(b)は、取込画像40のx方向のラインごとに、画素の濃度を加算した値を示すグラフ41である。すなわち、グラフ41は、取込画像40をx方向のラインごとに、画素の濃度を加算した値を示す。グラフ41の横方向が取込画像40のx方向のラインごとに画素の濃度を加算した合計であり、縦方向が取込画像40のy方向である。平均濃度は、各画素が含まれるライン上の画素の濃度を加算した濃度を、各画素を含むライン上の画素数で除算した値である。制御部12は、各画素の濃度を、各画素が含まれるラインの平均濃度に変換する。
【0078】
濃度射影変換を行うことによって、濃度射影変換を行う方向以外の方向のノイズを緩和することができる。凹凸欠陥は、タイヤ回転方向に直交する方向の直線性に特徴を有するので、濃度射影変換を行うことによって、タイヤ回転方向に直交する方向以外の方向のノイズ、たとえばブラダーグルーブおよび内面離型剤などのノイズを緩和することができる。
【0079】
第3ステップでは、制御部12は、フーリエ展開処理を行う。具体的には、制御部12は、濃度射影変換が行われた画像に対して、予め定める第1の方向、たとえばタイヤの回転方向のラインのうちの1つのライン上の画素について、画素の位置を変数xとし、各画素の濃度を関数f(x)として、フーリエ展開する。フーリエ展開した関数をF(x)とし、濃度の関数f(x)が0≦x≦1で求められたとすると、F(x)は、式(4)によって算出される。
F(x)=a0/2+Σ{an ×cos(n×π×x/L)
+bn×sin(n×π×x/L)} …(4)
【0080】
ここで、Σは、数列の総和を表す記号であり、総和Σの範囲は、n=1から無限大までの整数であるが、実際には、nの値は、いずれかの値で打ち切る必要がある。nは、欠陥の周波数、つまり欠陥の個数であり、nの値は、良品サンプルに関するデータをどこまで展開して復元することできるかによって定められる。Lは、たとえば処理対象である1ラインの画素数が512である場合、画素数「256」である。
【0081】
また、係数anおよび係数bnは、それぞれ式(5),(6)によって求められる。
an=1/L×∫f(x)×cos(n×π×x/L)dx …(5)
bn=1/L×∫f(x)×sin(n×π×x/L)dx …(6)
ここで、∫は積分記号であり、積分∫の範囲は、−L≦x≦Lである。
【0082】
式(4)での計算は、0≦x≦1の範囲でしか行っていないので、−1≦x<0の範囲のフーリエ展開を補充する必要がある。補充の仕方は、限定されるものではなく、どのように補充してもよい。
【0083】
図7は、フーリエ展開の補充の仕方を説明するための図である。図7(a)は、0≦x≦1で、f0(x)=cxからなる関数を示すグラフ45である。cは、係数である。図7(b)は、補充するための第1の関数f1(x)を示すグラフ46である。関数f1(x)は、−1≦x<0の範囲で、f1(x)=c(x+1)であり、0≦x≦1で、f1(x)=f(x)である。図7(c)は、補充するための第2の関数f2(x)を示すグラフ47である。関数f2(x)は、−1≦x<0の範囲で、f2(x)=−cxであり、0≦x≦1で、f2(x)=f(x)である。図7(d)は、補充するための第3の関数f3(x)を示すグラフ48である。関数f3(x)は、−1≦x≦1の範囲で、f3(x)=c(x+1)である。
【0084】
式(1)の右辺が連続関数の和であり、グラフ46に示した不連続な第1の関数f1(x)の値に収束しないので、xの範囲を0≦x≦1の範囲から−1≦x≦1の範囲に変えたグラフ48に示した第3の関数f3(x)で補充することもできる。いずれの関数を用いて補充するかは特に限定されないが、図7(c)に示した第2の関数f2(x)がよく用いられる。
【0085】
制御部12は、式(5),(6)で求めた係数から振幅「2×√(an2+bn2)」を求める。√は、平方根の演算記号である。
【0086】
第4ステップでは、制御部12は、逆フーリエ展開処理を行う。具体的には、制御部12は、第1ステップで算出されたブラダーグルーブの本数から予め定める本数h、たとえば「2」を減算した本数を表す周波数「z」Hzを、除去する周波数成分の下限とし、第3ステップでフーリエ展開された周波数成分から、下限以上の周波数成分を除去し、残余の周波数成分を逆フーリエ展開する。すなわち、式(1)で求めた関数F(x)の項のうち、周波数「z」Hz以上の周波数の項を除いて逆フーリエ展開する。この逆フーリエ展開によって、ブラダーグルーブおよびブラダーグルーブよりも周波数の高い周波数成分が除去され、凹凸欠陥を残した画像を得ることができる。
【0087】
第5ステップでは、制御部12は、微分処理を行う。具体的には、制御部12は、逆フーリエ展開後の画像について、タイヤ回転方向のラインのうちの1つのラインについて、画素の位置を変数として、濃度を表す関数g(x)を微分し、各画素の位置での微分値である第1の微分値を算出する。算出した第1の微分値のうち、第1の微分値の絶対値が最大になる位置である最大絶対微分位置を求める。関数g(x)は、逆フーリエ展開後の画像の濃度を表す関数である。
【0088】
第6ステップでは、制御部12は、大規模凹凸欠陥判定処理を行う。具体的には、制御部12は、まず、関数g(x)で表される濃度の平均値を算出する。次に、制御部12は、関数g(x)で表される濃度のうち最大絶対微分位置周辺の画素の濃度と、算出した平均値とを大小比較する。
【0089】
関数g(x)で表される濃度のうち最大絶対微分位置周辺の画素の濃度と、算出した平均値との差が予め定める閾値の範囲外であるとき、最大絶対微分位置周辺の画素を欠陥候補と判定する。関数g(x)で表される濃度のうち最大絶対微分位置周辺の画素の濃度と、算出した平均値との差が予め定める閾値の範囲内であれば、欠陥候補ではないと判定する。
【0090】
制御部12は、欠陥候補があると、欠陥候補の画素の位置とその位置での微分符号とから、欠陥候補の凹凸の種類を選別する。凹凸の種類は、「凹から凸」、、「凹」および「凸」の4種類である。「凹から凸」の場合、左右の谷の大きさ、つまり底部の長さを比較し、左が大きければ、「凸」と判定する。種類としては「凸から凹」もあるが、「凸から凹」の選別は行っていない。
【0091】
制御部12は、欠陥候補については、凹凸の種類に応じて予め定められる専用しきい値によって、大規模凹凸欠陥であるか否かを判定する。欠陥候補が専用しきい値の上限または下限を超えていると、大規模凹凸欠陥であると判定する。予め定められる専用しきい値は、予め定める第1のしきい値である。
【0092】
図8は、専用しきい値を設定する設定画面50の一例を示す図である。設定画面50は、出力部14の表示装置に表示され、入力部11の入力装置によって専用しきい値を設定することができる。設定画面50に示されるしきい値のうち、矩形枠51で囲まれたしきい値が、4つの凹凸の種類に選別された欠陥候補に対する専用しきい値である。
【0093】
矩形枠51内の専用しきい値は、「凸1しきい値」、「凸2しきい値」、「凹1しきい値」、「判定対象」、「微分値判定」および「凹2微分値」がある。
【0094】
「凸1しきい値」は、濃度の上限が「+210」である。「凸2しきい値」は、濃度の下限が「−180」であり、上限が「+180」である。「凹1しきい値」は、濃度の下限が「−030」である。「判定対象」は、「微分」である。「微分値判定」は、微分幅が画素数で「20」であり、濃度の上限が「00050」である。「凹2微分値」は、「00052」である。「判定対象」は、判定に用いるグラフを微分グラフにするか、差分グラフにするかの選択を表す。この例では、微分グラフを用いるので、「判定対象」は、「微分」となっている。微分幅は、微分グラフを作成するときのパラメータであり、微分幅分のデータの平均値を微分幅分離れた箇所で比較し、その差を微分グラフの値とする。微分グラフの最大値が「微分値判定」および「凹2微分値」の上限を超えた場合にのみそれぞれの判定材料として有効としている。
【0095】
「凹から凸」に選別された欠陥候補に対する専用しきい値は、「凸1しきい値」である。「凸から凹」に選別された欠陥候補に対する専用しきい値は、「凸2しきい値」である。「凹」に選別された欠陥候補に対する専用しきい値は、「凹1しきい値」である。そして、「凹2」に選別された欠陥候補に対する専用しきい値は、「凹2微分値上限」である。
【0096】
ブロック単位ではなく、取込画像全体について、第1〜第6ステップの第1の凹凸欠陥検出処理を実行すると第2ステップの濃度射影変換処理で欠陥を消してしまう可能性がある。また、ブロック単位あるいは取込画像全体ではなく、ラインごとに、第1〜第6ステップの第1の凹凸欠陥検出処理を実行すると、長時間の処理時間を要するうえに、タイヤ表面に形成される非欠陥部によるノイズの影響を受けることがある。そこで、本実施形態では、第1〜第6ステップの第1の凹凸欠陥検出処理をブロック単位で実行している。
【0097】
制御部12は、第1の凹凸欠陥検出処理で大規模凹凸欠陥がないと判定すると、第2の凹凸欠陥検出処理を実行する。第2の凹凸欠陥検出処理は、小規模凹欠陥を検出する処理であり、第1〜第5ステップの5つのステップで処理される。制御部12は、取込画像を、タイヤ回転方向に切断して、タイヤ回転方向に直交する方向に複数のブロックに分割し、ブロックごとに、第1〜第5ステップの処理を実行する。
【0098】
第1ステップでは、制御部12は、ブラダーグルーブ本数算出処理を行う。ブラダーグルーブ本数算出処理は、大部分の処理が第1の凹凸欠陥検出処理の第1ステップでのブラダーグルーブ本数算出処理と同じであり、同じ処理については、重複を避けるために省略する。異なる処理は、最尤値を決める処理で、第1の凹凸欠陥検出処理では、「0」以外の最尤値を、算出したブラダーグルーブの本数としたが、第2の凹凸欠陥検出処理では、予め定める本数範囲、たとえば「5」〜「15」の範囲内のブラダーグルーブの本数のうち最も多い本数を、算出したブラダーグルーブの本数とする。
【0099】
第2ステップでは、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第2ステップでの濃度射影変換処理と同じであり、重複を避けるために省略する。濃度射影変換を行うことによって、濃度射影変換を行う方向以外の方向のノイズを緩和することができる。凹凸欠陥は、タイヤ回転方向に直交する方向の直線性に特徴を有するので、濃度射影変換を行うことによって、タイヤ回転方向に直交する方向以外の方向のノイズ、たとえばブラダーグルーブおよび内面離型剤などのノイズを緩和することができる。
【0100】
第3ステップでは、制御部12は、フーリエ展開処理を行う。フーリエ展開処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第3ステップでのフーリエ展開処理と同じであり、重複を避けるために省略する。
【0101】
第4ステップでは、制御部12は、逆フーリエ展開処理を行う。具体的には、制御部12は、第3ステップでフーリエ展開された周波数成分のうち、小規模凹欠陥によって決まる周波数の範囲の周波数成分を逆フーリエ展開する。小規模凹欠陥によって決まる周波数の範囲の周波数成分は、第3ステップでフーリエ展開された周波数成分から、周波数「0」Hzおよび周波数「v−1」Hz〜「2v+2」Hzの周波数成分を除いた周波数成分である。周波数vは、第1ステップで算出したブラダーグルーブの本数である。すなわち、式(1)で求めた関数F(x)の項のうち、周波数「0」Hzおよび周波数「v−1」Hz〜「2v+2」Hzの周波数成分の項を除いて逆フーリエ展開する。ブラダーグルーブの本数の周波数とフーリエ展開された項とは、1対1に対応していないので、除去する周波数成分を広めにしている。この逆フーリエ展開によって、小規模凹凸欠陥を残した画像を得ることができる。周波数「u−1」Hzは、上限周波数である。
【0102】
第5ステップでは、制御部12は、小規模凹欠陥判定処理を行う。具体的には、制御部12は、まず、逆フーリエ展開後の画像について、濃度が最大である画素の位置および濃度が最小である画素の位置を探索する。以下、逆フーリエ展開後の画像の濃度のうち、最大の濃度を「第1の最大逆F濃度」、最小の濃度を「最小逆F濃度」という。次に、制御部12は、図3に示したX方向をタイヤ回転方向としたとき、最小逆F濃度の画素からX方向の右側の予め定める判定範囲、たとえば逆F探索範囲である「120」内で最大の濃度の位置を検索する。以下、最小逆F濃度の画素からX方向の右側の予め定める判定範囲内で最大の濃度を「第2の最大逆F濃度」という。
【0103】
制御部12は、第1,第2の最大逆F濃度および最小逆F濃度に基づいて、小規模凹欠陥の有無を判定する。最小逆F濃度が予め定める最小しきい値以上であれば、小規模凹欠陥はないと判定する。次に、第1の最大逆F濃度が予め定める成型切手しきい値よりも大きいとき、成型切手であり、小規模凹欠陥ではないと判定する。さらに、第2の最大逆F濃度が予め定めるジョイントしきい値よりも大きいとき、ジョイントであり、小規模凹欠陥ではないと判定する。予め定める最小しきい値は、たとえば「−100」であり、予め定める成型切手しきい値は、たとえば「最小値×(−1.0)」であり、予め定めるジョイントしきい値は、たとえば「最小値×(−0.2)」である予め定める成型切手しきい値および予め定めるジョイントしきい値は、予め定める第2のしきい値である。
【0104】
図9は、ジョイントであるか否かの判定を説明するための図である。ジョイントは、タイヤの継ぎ目であり、タイヤ回転方向に直交する方向に形成される。図9(a)は、ジョイントが形成されたタイヤ部分の取込画像55の一例を示す図である。波形551は、図9(a)の横方向であるタイヤ回転方向の逆フーリエ展開後の画像についての濃度を示している。横方向が画素の位置であり、縦方向が濃度である。取込画像55には、ブラダーグルーブ552が示されている。
【0105】
図9(b)は、波形551を模式化して示すグラフ56である。波形561が、波形551を模式化した波形である。位置T1は、最小逆F濃度の画素の位置であり、範囲L1は、予め定める判定範囲であり、しきい値562は、予め定めるジョイントしきい値であり、濃度N1は、最小逆F濃度であり、濃度N2は、第2の最大逆F濃度である。
【0106】
図9(b)に示した例では、最小逆F濃度N1の画素の位置T1の画素からX方向の右側の予め定める判定範囲L1内の第2の最大逆F濃度N2が、予め定めるジョイントしきい値562よりも大きいので、制御部12は、この部分がジョイントであり、小規模凹欠陥ではないと判定する。
【0107】
最後に、制御部12は、最小逆F濃度の画素の位置を中心とする予め定める微分範囲で、X方向で画素の位置を変数として、逆フーリエ展開後の画像の濃度を表す関数を微分する。そして、微分した画素ごとの微分値である第2の微分値を予め定める微分範囲で加算して微分和を求め、微分和が予め定める微分しきい値以上であると、小規模凹欠陥があると判定し、微分和が予め定める微分しきい値未満であると、小規模凹欠陥はないと判定する。予め定める微分範囲は、たとえば「50」であり、予め定める微分しきい値は、たとえば「600」である。
【0108】
制御部12は、第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理で、濃度射影変換を行う傾きをタイヤ回転方向に直交する方向として実行したが、小規模凹欠陥の方向は、タイヤ回転方向に直交する方向、つまり垂直方向に一致するとは限らず、小規模凹欠陥の幅が狭くなると、厳密には垂直方向に一致せず、垂直方向に対して傾く場合がある。小規模凹欠陥の方向と、濃度射影変換を行う方向とが一致していないと、第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理では、小規模凹欠陥を検出することができない。
【0109】
そこで、制御部12は、濃度射影変換を行う方向を垂直方向に対して傾けて、第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理を実行する。この場合、フーリエ展開を行うラインの方向も同じ角度だけ傾けてフーリエ展開する。傾ける角度は、予め定める角度範囲、たとえば±5度の範囲である。濃度射影変換を行う方向を垂直方向に対して傾けて、濃度射影変換を行うことを、以下、回転射影変換という。
【0110】
図10は、回転射影変換を説明するための図である。取込画像60の横方向がタイヤ回転方向であり、取込画像60の縦方向がタイヤ回転方向に直交する方向、つまり垂直方向である。タイヤ回転方向に直交する方向をD1方向と、濃度射影変換を行う方向をD2方向とし、D1方向に対するD2方向の角度をK度とする。シフト幅W1は、取込画像60の上端部および下端部において、D1方向の画素とD2方向の画素との間の距離であり、1画素単位で表される。取込画像60のD1方向の画素数をMとすると、tanK=W1/(M/2)である。
【0111】
制御部12は、最初、シフト幅W1=0で、第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理を実行し、次に、シフト幅W1に「1」を加算して、第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理を実行し、以後、K=5になるまで、シフト幅W1に「1」を順次加算して、第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理を繰り返し実行する。角度0度〜角度−K度についても同様に計算する。D2方向のラインが、図10の横方向で隣接する2つの画素を通る場合は、画素の中心位置がD2方向のラインに最も近い画素をD2方向のライン上にある画素として回転射影変換を行う。
【0112】
第2の凹凸欠陥検出処理でも、ブロック単位ではなく、取込画像全体について、第1〜第5ステップの第2の凹凸欠陥検出処理を実行すると第2ステップの濃度射影変換処理で欠陥を消してしまう可能性がある。ブロック単位あるいは取込画像全体ではなく、ラインごとに、第1〜第5ステップの第2の凹凸欠陥検出処理を実行すると、長時間の処理時間を要するうえに、タイヤ表面に形成される非欠陥部によるノイズの影響を受けることがある。そこで、本実施形態では、第1〜第5ステップの第2の凹凸欠陥検出処理をブロック単位で実行している。
【0113】
制御部12は、第2の凹凸欠陥検出処理で小規模凹欠陥がないと判定すると、第3の凹凸欠陥検出処理を実行する。第3の凹凸欠陥検出処理は、鋭角凹欠陥を検出する処理であり、第1〜第4ステップの4つのステップで処理される。制御部12は、取込画像を、タイヤ回転方向に切断して、タイヤ回転方向に直交する方向に複数のブロックに分割し、ブロックごとに、第1〜第4ステップの処理を実行する。
【0114】
第1ステップでは、制御部12は、ブラダーグルーブ本数算出処理を行う。ブラダーグルーブ本数算出処理は、大部分の処理が第2の凹凸欠陥検出処理、つまり小規模凹欠陥を検出する処理の第1ステップでのブラダーグルーブ本数算出処理と同じであり、同じ処理については、重複を避けるために省略する。異なる処理は、ブラダーグルーブの本数を算出する際に、ブラダーグルーブの本数が「0」であるとき、ブラーグルーブはないと判定し、ブラダーグルーブの本数が「0」でないとき、ブラーグルーブがあると判定する。
【0115】
具体的には、制御部12は、すべてのブロックについて、ブラダーグルーブの本数を算出すると、算出したブラダーグルーブの本数のうち、最尤値、つまり最も多い本数を、算出したブラダーグルーブの本数とする。
ブラダーグルーブの本数が「0」であるとき、ブラーグルーブはないと判定し、ブラダーグルーブの本数が「0」でないとき、ブラーグルーブがあると判定する。
【0116】
第2ステップでは、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第2ステップでの濃度射影変換処理と同じであり、重複を避けるために省略する。濃度射影変換を行うことによって、濃度射影変換を行う方向以外の方向のノイズを緩和することができる。凹凸欠陥は、タイヤ回転方向に直交する方向の直線性に特徴を有するので、濃度射影変換を行うことによって、タイヤ回転方向に直交する方向以外の方向のノイズ、たとえばブラダーグルーブおよび内面離型剤などのノイズを緩和することができる。
【0117】
第3ステップでは、制御部12は、射影変換濃度微分処理を行う。具体的には、制御部12は、図3に示したX方向をタイヤ回転方向としたとき、X方向について、微分幅分の微分値を算出する。たとえば、微分幅を「3」画素とするとき、各画素の微分値は、式(7)によって算出される。
微分値={(中心位置の画素から後3個の画素の濃度の合計)
−(中心位置の画素から前3個の画素の濃度の合計)}/3 …(7)
【0118】
ここで、「中心位置」は、微分値を求める画素の位置であり、「中心位置の画素から後3個の画素」とは、中心位置の画素からX方向と反対方向に隣接する3つの画素のことであり、「中心位置の画素から前3個の画素」とは、中心位置の画素からX方向に隣接する3つの画素のことである。微分幅は、予め定める画素数であり、式(7)で算出される微分値は、第3の微分値である。
【0119】
第4ステップでは、制御部12は、鋭角凹欠陥判定処理を行う。具体的には、制御部12は、まず、第3ステップで求めた微分値が予め定める微分しきい値範囲B1、たとえば−「45」〜「45」の範囲内であるか否かを判定する。すべての画素の微分値が予め定める微分しきい値範囲内であれば、鋭角凹欠陥はないと判定して鋭角凹欠陥判定処理を終了する。いずれかの画素の微分値が予め定める微分しきい値範囲内でなければ、制御部12は、コード露出・刻印文字検出処理を行う。以下、微分値が予め定める微分しきい値範囲内でない画素の位置を、「NG候補位置」という。
【0120】
図11は、X方向での各画素の微分値を表す波形701の一例を示す図である。図11に示した取込画像70内に示した波形701は、予め定める微分しきい値範囲B1内でない画素があるので、鋭角凹欠陥はないと判定されず、コード露出・刻印文字検出処理が行われる。
【0121】
コード露出・刻印文字検出処理では、制御部12は、予め定める区間範囲L2内で、微分値が予め定める微分しきい値範囲B1内でない画素からなる部分(以下「ラベル部」という)がいくつあるかを算出し、ラベル部の数が予め定めるラベルしきい値、たとえば「25」以上であるとき、ラベル部が密集しているので、コード露出または刻印文字であると判定する。
【0122】
予め定める区間範囲L2をX方向に予め定める幅、たとえば1画素ずつずらしながら、予め定める微分しきい値範囲B1内でない画素を含む予め定める区間範囲L2について、ラベル部の数が予め定めるラベルしきい値以上か否かを判定する。ラベル部の数が予め定めるラベルしきい値以上でない予め定める区間範囲L2がないと、鋭角凹欠陥はないと判定して鋭角凹欠陥判定処理を終了する。ラベル部の数が予め定めるラベルしきい値以上でない予め定める区間範囲L2があると、ブラダーグルーブ検出処理を行う。
【0123】
図12は、コード露出・刻印文字検出処理を説明するための図である。図12(a)は、図11に示した取込画像70と同じであり、予め定める区間範囲L2を示している。図12(b)は、コード露出または刻印文字の場合の微分値の波形711を模式的に示したグラフ71である。波形711は、ラベル名a〜hを付した部分が、予め定める微分しきい値範囲B1内でない画素からなる部分、つまりラベル部である。波形711は、予め定める区間範囲L2でラベル名a〜hの8つのラベル部がある。波形711は、ラベル部の数が、予め定める区間範囲L2で予め定めるラベルしきい値、たとえば「25」未満であるので、コード露出または刻印文字でないものがあり、鋭角凹欠陥がある可能性があり、次のブラダーグルーブ検出処理が行われる。
【0124】
ブラダーグルーブ検出処理では、制御部12は、第1ステップでのブラダーグルーブ本数算出処理で、ブラダーグルーブがないと判定したとき、ブラダーグルーブ検出処理を行わずに、次の内面離型剤検出処理を行う。第1ステップでのブラダーグルーブ本数算出処理で、ブラダーグルーブがあると判定したとき、NG候補位置から、第1ステップでのブラダーグルーブ本数算出処理で求めたピーク間隔Tの平均値の間隔だけ離れた位置に、NG候補位置があれば、それらのNG候補位置の画素は、ブラダーグルーブの画素であると判定する。制御部12は、ブラダーグルーブの画素以外のNG候補位置がないと、鋭角凹欠陥がないと判定し、鋭角凹欠陥検出処理を終了する。ブラダーグルーブの画素以外のNG候補位置があると、次の内面離型剤検出処理を行う。
【0125】
内面離型剤検出処理では、制御部12は、放物線を用いて内面離型剤の検出を行う。具体的には、制御部12は、まず、画素の濃度の位置を変数として、濃度射影変換を行った画素の濃度を、最小自乗法で近似した放物線(以下「近似放物線」という)の関数で表す。
【0126】
NG候補位置を中心として、X方向の予め定める判定範囲L3、たとえば「−15」〜「15」の範囲において、第2ステップで求めた濃度射影変換を行った画素の濃度の平均値Pに対して、近似放物線の中央部が高く、近似放物線の両端部が低く、かつ放物線の高さが予め定める高さしきい値、たとえば「15」よりも高いとき、そのNG候補位置は、内面離型剤であり、鋭角凹欠陥ではないと判定する。平均値Pに対して、近似放物線の中央部が高くない、平均値Pに対して、近似放物線の両端部のいずれかが低くない、または放物線の高さが予め定める高さしきい値以下のとき、鋭角凹欠陥であると判定する。
【0127】
図13は、内面離型剤検出処理を説明するための図である。図13(a)は、取込画像72について濃度射影変換した画素のX方向の濃度変化を示す波形721、およびその近似放物線722を示す。波形721の中央部付近がNG候補位置である。図13(b)は、図13(a)に示した波形721のうち、最も濃度が高い画素を中心にして、予め定める判定範囲L3の近似放物線731を取り出したグラフ73を示す。近似放物線731は、予め定める判定範囲L3において、中央部tが平均値Pに対して高く、両端部s,uが平均値Pに対して低く、かつ放物線の高さが予め定める高さしきい値よりも高いので、制御部12は、内面離型剤であると判定する。放物線の高さは、「(中央部tの濃度)−{(端部sの濃度)+(端部uの濃度)}/2」である。予め定める高さしきい値は、予め定める第3のしきい値である。
【0128】
制御部12は、第1〜第4ステップによる鋭角凹欠陥検出処理で、濃度射影変換を行う傾きをタイヤ回転方向に直交する方向として実行したが、鋭角凹欠陥の方向は、タイヤ回転方向に直交する方向、つまり垂直方向に一致するとは限らず、鋭角凹欠陥の幅が狭くなったり、より鋭角的になると、厳密には垂直方向に一致せず、垂直方向に対して傾く場合がある。鋭角凹欠陥の方向と、濃度射影変換を行う方向とが一致していないと、第1〜第4ステップによる鋭角凹欠陥検出処理では、鋭角凹欠陥を検出することができない。
【0129】
そこで、制御部12は、回転射影変換を行う、すなわち、濃度射影変換を行う方向を垂直方向に対して傾けて、第1〜第4ステップによる鋭角凹欠陥検出処理を実行する。傾ける角度は、予め定める角度範囲、たとえば±5度の範囲である。
【0130】
第3の凹凸欠陥検出処理でも、ブロック単位ではなく、取込画像全体について、第1〜第4ステップの第3の凹凸欠陥検出処理を実行すると第2ステップの濃度射影変換処理で欠陥を消してしまう可能性がある。ブロック単位あるいは取込画像全体ではなく、ラインごとに、第1〜第4ステップの第3の凹凸欠陥検出処理を実行すると、長時間の処理時間を要するうえに、タイヤ表面に形成される非欠陥部によるノイズの影響を受けることがある。そこで、本実施形態では、第1〜第4ステップの第3の凹凸欠陥検出処理をブロック単位で実行している。
【0131】
図14は、制御部12が実行する凹凸欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。入力部11の入力装置から検査の開始を指示する情報が入力され、制御部12が入力部11の撮影装置から取込画像を受け取ると、ステップA1に移る。
【0132】
ステップA1では、制御部12は、大規模凹凸欠陥検出処理を行う。ステップA2では、制御部12は、大規模凹凸欠陥を検出したか否かを判定する。大規模凹凸欠陥を検出すると、ステップA8に進み、大規模凹凸欠陥を検出していないと、ステップA3に進む。ステップA3では、制御部12は、小規模凹欠陥検出処理を行う。ステップA4では、制御部12は、小規模凹欠陥を検出したか否かを判定する。小規模凹欠陥を検出すると、ステップA9に進み、小規模凹凸欠陥を検出していないと、ステップA5に進む。
【0133】
ステップA5では、制御部12は、鋭角凹欠陥検出処理を行う。ステップA6では、制御部12は、鋭角凹欠陥を検出したか否かを判定する。鋭角凹欠陥を検出すると、ステップA10に進み、鋭角凹欠陥を検出していないと、ステップA7に進む。ステップA7では、タイヤは正常であると判定し、凹凸欠陥検出処理を終了する。
【0134】
ステップA8では、制御部12は、タイヤに大規模凹凸欠陥があると判定し、凹凸欠陥検出処理を終了する。ステップA9では、制御部12は、タイヤに小規模凹欠陥があると判定し、凹凸欠陥検出処理を終了する。ステップA10では、制御部12は、タイヤに鋭角凹欠陥があると判定し、凹凸欠陥検出処理を終了する。制御部12は、凹凸欠陥検出処理を終了する前に、判定結果を出力部14に出力する。図14に示したステップA1,A2,A8は、第1の凹凸欠陥検出工程であり、図14に示したステップA3,A4,A9は、第2の凹凸欠陥検出工程であり、図14に示したステップA5,A6,A10は、第3の凹凸欠陥検出工程である。
【0135】
図15は、制御部12が実行する大規模凹凸欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。図14に示したステップA1が実行されると、ステップB1に移る。第1の周期算出工程であるステップB1では、制御部12は、ブラダーグルーブ本数算出処理を行う。ブラダーグルーブ本数算出処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第1ステップの処理である。第1の濃度変換工程であるステップB2では、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第2ステップの処理である。第1のフーリエ展開工程であるステップB3では、制御部12は、フーリエ展開処理を行う。フーリエ展開処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第3ステップの処理である。
【0136】
第1の逆フーリエ展開工程であるステップB4では、制御部12は、逆フーリエ展開処理を行う。逆フーリエ展開処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第4ステップの処理である。ステップB5では、制御部12は、第1の微分処理を行う。第1の微分処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第5ステップの処理である。ステップB6では、制御部12は、大規模凹凸欠陥判定処理を行う。大規模凹凸欠陥判定処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第6ステップの処理である。ステップB5,B6は、第1の欠陥検出工程である。
【0137】
ステップB7では、制御部12は、全ブロック終了したか否かを判定する。全ブロック終了していないと、ステップB1に戻り、全ブロック終了していると、大規模凹凸欠陥検出処理を終了する。
【0138】
図16は、制御部12が実行する大規模凹凸判定処理の処理手順を示すフローチャートである。図15に示したステップB6が実行されると、ステップC1に移る。ステップC1では、制御部12は、逆フーリエ射影濃度の平均値を算出する。逆フーリエ射影濃度は、逆フーリエ展開された画像の濃度である。
【0139】
ステップC2では、制御部12は、最大絶対微分位置周辺の逆フーリエ射影濃度の大小比較を行う。具体的には、制御部12は、最大絶対微分位置周辺の画素の濃度と、算出した平均値との差を求める。
【0140】
ステップC3では、制御部12は、正常であるか否かを判定し、正常でない場合、欠陥候補を凹凸の種類に選別する。具体的には、制御部12は、ステップC2で求めた差が予め定める閾値の範囲内にないとき、最大絶対微分位置周辺の画素を欠陥候補と判定する。欠陥候補がないとき、正常であると判定する。欠陥候補があるとき、欠陥候補の画素の位置とその位置での微分符号とから、欠陥候補の凹凸の種類を選別する。
【0141】
ステップC4では、制御部12は、判定結果が正常であるか否かを判定する。判定結果が正常であると、ステップC7に進み、判定結果が正常でないと、ステップC5に進む。ステップC5では、制御部12は、欠陥候補については、凹凸の種類に応じて予め定められる専用しきい値によって、大規模凹凸欠陥であるか否かを判定する。欠陥候補が専用しきい値の上限または下限を超えていると、大規模凹凸欠陥であると判定し、ステップC6に進み、欠陥候補が専用しきい値の上限および下限内であると、大規模凹凸欠陥でないと判定し、ステップC7に進む。
【0142】
ステップC6では、制御部12は、大規模凹凸欠陥があると判定し、大規模凹凸判定処理を終了する。ステップC7では、制御部12は、大規模凹凸欠陥はなく、正常であると判定し、大規模凹凸判定処理を終了する。
【0143】
図17は、制御部12が実行する小規模凹欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。図14に示したステップA3が実行されると、ステップD1に移る。第2の周期算出工程であるステップD1では、制御部12は、ブラダーグルーブ本数算出処理を行う。ブラダーグルーブ本数算出処理は、第2の凹凸欠陥検出処理の第1ステップの処理である。第2の濃度変換工程であるステップD2では、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換処理は、第2の凹凸欠陥検出処理の第2ステップの処理である。第2のフーリエ展開工程であるステップD3では、制御部12は、フーリエ展開処理を行う。フーリエ展開処理は、第2の凹凸欠陥検出処理の第3ステップの処理である。
【0144】
第2の逆フーリエ展開工程であるステップD4では、制御部12は、逆フーリエ展開処理を行う。逆フーリエ展開処理は、第2の凹凸欠陥検出処理の第4ステップの処理である。第2の欠陥検出工程であるステップD5では、制御部12は、小規模凹欠陥判定処理を行う。小規模凹欠陥判定処理は、第2の凹凸欠陥検出処理の第5ステップの処理である。
【0145】
ステップD6では、制御部12は、傾き範囲が終了したか否かを判定する。第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理を、回転射影変換を行って図10に示した角度K度が−5度〜5度の範囲内の角度で繰り返し実行していないとき、傾き範囲は終了していないと判定し、ステップD1に戻る。第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理を、回転射影変換を行って図10に示した角度K度が−5度〜5度の範囲内の角度で繰り返し実行したとき、傾き範囲が終了したと判定し、ステップD7に進む。
【0146】
ステップD7では、制御部12は、全ブロック終了したか否かを判定する。全ブロック終了していないと、ステップD1に戻り、全ブロック終了していると、小規模凹欠陥検出処理を終了する。
【0147】
図18は、制御部12が実行する小規模凹欠陥判定処理の処理手順を示すフローチャートである。図17に示したステップD5が実行されると、ステップE1に移る。ステップE1では、制御部12は、逆フーリエ射影濃度の最大の濃度、つまり第1の最大逆F濃度の画素の位置、および逆フーリエ射影濃度の最小の濃度、つまり最小逆F濃度の画素の位置を探索する。ステップE2では、制御部12は、最小逆F濃度の画素の右側で最大の濃度、つまり第2の最大逆F濃度の画素の位置を探索する。
【0148】
ステップE3では、制御部12は、最小逆F濃度が予め定める最小しきい値未満であるか否かを判定する。図では、「しきい値」を「閾値」と記す。最小逆F濃度が予め定める最小しきい値未満であると、ステップE9に進み、最小逆F濃度が予め定める最小しきい値以上であると、ステップE4に進む。ステップE4では、制御部12は、第1の最大逆F濃度が予め定める成型切手しきい値未満であるか否かを判定する。第1の最大逆F濃度が予め定める成型切手しきい値よりも大きいと、ステップE9に進み、第1の最大逆F濃度が予め定める成型切手しきい値以下であると、ステップE5に進む。
【0149】
ステップE5では、制御部12は、第2の最大逆F濃度が予め定めるジョイントしきい値未満であるか否かを判定する。第2の最大逆F濃度が予め定めるジョイントしきい値よりも大きいと、ステップE9に進み、第2の最大逆F濃度が予め定めるジョイントしきい値以下であると、ステップE6に進む。
【0150】
ステップE6では、制御部12は、最小逆F濃度の画素の位置を中心に、射影濃度変換の微分和を求める。射影濃度変換は、逆フーリエ展開後の画像の濃度のことである。ステップE7では、制御部12は、微分和が予め定める微分しきい値未満であるか否かを判定する。微分和が予め定める微分しきい値未満であると、ステップE7に進み、微分和が予め定める微分しきい値以上であると、ステップE8に進む。
【0151】
ステップE8では、制御部12は、小規模凹欠陥があると判定し、小規模凹欠陥判定処理を終了する。ステップE9では、制御部12は、小規模凹欠陥はなく、正常であると判定し、小規模凹欠陥判定処理を終了する。
【0152】
図19は、制御部12が実行する鋭角凹欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。図14に示したステップA5が実行されると、ステップF1に移る。第3の周期算出工程であるステップF1では、制御部12は、ブラダーグルーブ本数算出処理を行う。ブラダーグルーブ本数算出処理は、第3凹凸欠陥検出処理出処理の第1ステップの処理である。第3の濃度変換工程であるステップF2では、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換処理は、第3の凹凸欠陥検出処理の第2ステップの処理である。
【0153】
微分工程であるステップF3では、制御部12は、射影変換濃度微分処理を行う。射影変換濃度微分処理は、第3の凹凸欠陥検出処理の第3ステップの処理である。第3の欠陥検出工程であるステップF4では、制御部12は、鋭角凹欠陥判定処理を行う。鋭角凹欠陥判定処理は、第3の凹凸欠陥検出処理の第4ステップの処理である。
【0154】
ステップF5では、制御部12は、傾き範囲が終了したか否かを判定する。第1〜第4ステップによる鋭角凹欠陥検出処理を、回転射影変換を行って図10に示した角度K度が−5度〜5度の範囲内の角度で繰り返し実行していないとき、傾き範囲は終了していないと判定し、ステップF1に戻る。第1〜第4ステップによる鋭角凹欠陥検出処理を、回転射影変換を行って図10に示した角度K度が−5度〜5度の範囲内の角度で繰り返し実行したとき、傾き範囲が終了したと判定し、ステップF6に進む。
【0155】
ステップF6では、制御部12は、全ブロック終了したか否かを判定する。全ブロック終了していないと、ステップF1に戻り、全ブロック終了していると、鋭角凹欠陥検出処理を終了する。
【0156】
図20は、制御部12が実行する鋭角凹欠陥判定処理の処理手順を示すフローチャートである。図19に示したステップF4が実行されると、ステップG1に移る。ステップG1では、制御部12は、射影変換濃度微分処理で求めた微分値が予め定める微分しきい値範囲内であるか否かを判定する。微分値が予め定める微分しきい値範囲内であると、ステップG6に進み、微分値が予め定める微分しきい値範囲内でないと、ステップG2に進む。
【0157】
ステップG2では、制御部12は、一定範囲内の指定数以上の凹凸が有るか否かを判定する。一定範囲は、予め定める区間範囲L2であり、指定数は、予め定めるラベルしきい値であり、凹凸は、ラベル部である。したがって、ラベル部の数が予め定めるラベルしきい値以上であるとき、コード露出または刻印文字であり、一定範囲内の指定数以上の凹凸が有ると判定し、ステップG6に進む。ラベル部の数が予め定めるラベルしきい値未満であるとき、一定範囲内の指定数以上の凹凸がないと判定し、ステップG2に進む。
【0158】
ステップG3では、制御部12は、微分NG位置がブラダー間隔離れた位置にあるか否かを判定する。微分NG位置は、NG候補位置のことであり、ブラダー間隔は、ブラダーグルーブ本数算出処理で求めたピーク間隔Tの平均値の間隔である。微分NG位置がブラダー間隔離れた位置にあると、微分NG位置はブラダーグルーブであると判断して、ステップG6に進む。微分NG位置がブラダー間隔離れた位置にないと、微分NG位置はブラダーグルーブでないと判断して、ステップG2に進む。
【0159】
ステップG4では、制御部12は、放物線の高さが予め定める高さしきい値よりも高いか否かを判定する。NG候補位置での近似放物線が、予め定める判定範囲L3において、中央部が平均値に対して高く、両端部が平均値に対して低く、かつ放物線の高さが予め定める高さしきい値よりも高いとき、ステップG6に進む。NG候補位置での近似放物線の中央部が平均値に対して高くない、近似放物線の両端部のいずれかが平均値に対して低くない、または放物線の高さが予め定める高さしきい値以下のとき、ステップG2に進む。
【0160】
ステップG5では、制御部12は、鋭角凹欠陥があると判定し、鋭角凹欠陥判定処理を終了する。ステップG6では、制御部12は、鋭角凹欠陥はなく、正常であると判定し、鋭角凹欠陥判定処理を終了する。
【0161】
上述した実施形態では、制御部12が記憶部13に記憶されるプログラムを実行することによって、入力部11および出力部14を制御するとともに、上述した機能を実現するが、上述した機能を実現するためのプログラムは、記憶部13に記憶されることに限定されるものではなく、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体は、たとえば図示しない外部記憶装置としてプログラム読取装置を画像処理装置1に設け、そこに記録媒体を挿入することによって読取り可能な記録媒体であってもよいし、あるいは他の装置の記憶装置であってもよい。
【0162】
いずれの記録媒体であっても、記憶されているプログラムがコンピュータからアクセスされて実行される構成であればよい。あるいはいずれの記録媒体であっても、プログラムが読み出され、読み出されたプログラムが、記憶装置のプログラム記憶エリアに記憶されて、そのプログラムが実行される構成であってもよい。
【0163】
画像処理装置1と分離可能に構成される記録媒体は、たとえば磁気テープ/カセットテープなどのテープ系の記録媒体、フレキシブルディスク/ハードディスクなどの磁気ディスクもしくはCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)/MO(Magneto Optical disk)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disk)/CD−R(Compact
Disk Recordable)/ブルーレイディスクなどの光ディスクのディスク系の記録媒体、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)/光カードなどのカード系の記録媒体、またはマスクROM/EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)/EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)/フラッシュROMなどの半導体メモリを含む固定的にプログラムを担持する記録媒体であってもよい。
【0164】
また、画像処理装置1を通信ネットワークと接続可能に構成し、通信ネットワークを介して上記プログラムを供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、たとえば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、VAN(Value Added Network)、CATV(Community Antenna Television)通信網、仮想専用網(Virtual
Private Network)、電話回線網、移動体通信網、または衛星通信網など通信ネットワークが利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、たとえば、IEEE1394、USB(Universal Serial Bus)、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線でも、IrDA(Infrared Data Association)あるいはリモートコントロールで用いられる赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR(High
Data Rate)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網などの無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0165】
このように、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様、たとえばブラダーグルーブが形成される対象物を撮影した画像の処理を行う画像処理装置で画像を処理するにあたって、図14に示したステップA1,A2,A8では、第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する。図14に示したステップA3,A4,A9では、図14に示したステップA1,A2,A8で判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する。そして、図14に示したステップA5,A6,A10では、図14に示したステップA3,A4,A9で判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める画素数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する。
【0166】
したがって、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、第1〜第3の凹凸欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる。
【0167】
さらに、図14に示したステップA1,A2,A8は、図15に示したステップB1〜B6を含む。図15に示したステップB1では、前記線状模様、たとえばブラダーグルーブの周期を算出する。図15に示したステップB2では、各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。図15に示したステップB3では、第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、図15に示したステップB2で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する。図15に示したステップB4では、図15に示したステップB3でフーリエ展開された周波数成分から、図15に示したステップB1で算出された周波数の周波数成分を除いた残余の周波数成分を逆フーリエ展開する。図15に示したステップB5,B6では、図15に示したステップB4で逆フーリエ展開された画素に基づいて、第1の凹凸欠陥があるか否かを判定する。そして、図15に示したステップB4で逆フーリエ展開された画素について、第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分した微分値を前記第1の微分値として算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する。したがって、第1の凹凸欠陥、たとえば大規模凹凸欠陥を検出することができる。
【0168】
さらに、前記予め定める凹凸の種類は、凹から凸に変化する種類と、凸から凹に変化する種類と、凹である種類と、凸である種類とを含むので、凹凸の種類に応じてきめ細かく大規模凹凸欠陥を検出することができる。
【0169】
さらに、図14に示したステップA3,A4,A9は、図17に示したステップD1〜D5を含む。図17に示したステップD1では、前記線状模様、たとえばブラダーグルーブの周期を算出する。図17に示したステップD2では、各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。図17に示したステップD3では、第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、図17に示したステップD2で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する。図17に示したステップD4では、図17に示したステップD3でフーリエ展開された周波数成分から、図17に示したステップD1で算出された周波数で定まる上限周波数を上限とする周波数成分を逆フーリエ展開する。図17に示したステップD5では、図17に示したステップD4で逆フーリエ展開された画素に基づいて第2の凹凸欠陥があるか否かを判定する。そして、図17に示したステップD4で逆フーリエ展開された画素のうち、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める微分範囲の画素について加算した微分和に基づいて、第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する。したがって、第2の凹凸欠陥、たとえば小規模凹欠陥を検出することができる。
【0170】
さらに、前記対象物は、前記線状模様と前記線状模様とは異なる非欠陥模様とが形成され、図17に示したステップD5は、画像を構成する画素のうち最大の濃度が予め定める第2のしきい値より大きい画素からなる部分の形状を、非欠陥形状、たとえば成型切手またはジョイントであると判定するので、非欠陥形状、たとえば成型切手あるいはタイヤのジョイントを小規模凹欠陥として検出することがない。
【0171】
さらに、図14に示したステップA3,A4,A9では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させるので、小規模凹欠陥がタイヤ回転方向に垂直な方向から傾いていても小規模凹欠陥を検出することができる。
【0172】
さらに、図14に示したステップA5,A6,A10は、図19に示したステップF1〜F4を含む。図19に示したステップF1では、前記線状模様の周期を算出する。図19に示したステップF2では、各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。図19に示したステップF3では、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて第3の微分値を算出する。図19に示したステップF4では、図19に示したステップF3で算出された微分値に基づいて、第3の凹凸欠陥があるか否かを判定する。そして、第1の方向での画素の位置を変数として、図19に示したステップF3で変換された各画素の濃度を表す第3の関数を、予め定める判定範囲で最小自乗法を用いて放物線を表す第4の関数に近似し、近似した第4の関数の放物線の高さが予め定める第3のしきい値より高いとき、第3の凹凸欠陥であると判定する。したがって、第3の凹凸欠陥、たとえば鋭角凹欠陥を検出することができる。
【0173】
さらに、図14に示したステップA5,A6,A10では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させるので、鋭角凹欠陥がタイヤ回転方向に垂直な方向から傾いていても鋭角凹欠陥を検出することができる。
【0174】
さらに、前記対象物を撮影した画像を第2の方向に複数のブロックに分割し、分割したブロックごとに、第1〜第3の凹凸欠陥検出工程を処理するので、凹凸欠陥を消すこともなく、また、ノイズの影響を低減するとともに、処理時間も短縮して処理することができる。
【0175】
さらに、第1の凹凸欠陥検出手段は、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する。第2の凹凸欠陥検出手段は、第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する。そして、第3の凹凸欠陥検出手段は、第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する。
【0176】
したがって、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、第1〜第3の凹凸欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる。
【0177】
さらに、プログラムによって、コンピュータを、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出手段と、第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出手段と、第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出手段として機能させることができる。
【0178】
さらに、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体として提供することができる。
【符号の説明】
【0179】
1 画像処理装置
11 入力部
12 制御部
13 記憶部
14 出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理が行われた画像に基づいて被検査物の欠陥検査を行う画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体に関し、より詳細には、自動車用タイヤに代表される工業製品の表面に形成される凹凸欠陥を、画像処理を行うことによって検査する画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用タイヤおよびゴム製品等に代表される工業製品を対象とする画像処理装置、たとえば工業製品の検査を行う検査装置は、検査対象物をカメラなどの撮影装置によって撮影し、撮影した画像に基づいて欠陥検査を行う。
【0003】
タイヤを製造するときに、タイヤの内側に形成される欠陥のうち、直線性に特徴を有する欠陥は、表1に示すように、コード露出欠陥と凹凸欠陥とに分類することができる。
【0004】
【表1】
【0005】
コード露出欠陥には、タイヤ内部のコードが表面に露出する故障があり、また、凹凸欠陥には、内面凹あるいは内面凸と呼ばれる故障があり、それぞれ表1に示した発生原因で発生する。
【0006】
第1の従来の技術として、特許文献1に記載されるタイヤ検査装置がある。このタイヤ検査装置は、波形処理の一種であるウェーブレット変換を用いてコード露出欠陥を検出するものである。ウェーブレット変換は、時間的に特徴が変化する信号の解析を可能にする周波数解析の変換処理である。すなわち、タイヤの位置を時間に対応させて、時間と周波数とを座標軸とする平面で、固有の広がりを有するウェーブレット(小さい波)を拡大縮小そして平行移動して足し合わせることによって、入力された信号波形を表現するものである。撮影信号は、コード露出欠陥に特有の周波数を中心周波数とする数値フィルタであるアナライジングウェーブレットによってウェーブレット変換され、変換結果に基づいてコード露出欠陥の判定が行われる。
【0007】
第2の従来の技術として、濃度射影平均を前処理とする2値化処理によって、または微分画像を2値化して微小エッジを除去した後、ハフ(Hough)変換を行うことによって、凹凸の直線性を検出する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−333531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、第1の従来の技術は、コード露出欠陥を検出するためのものであり、凹凸欠陥の検出に適用することはできない。第2の従来の技術は、タイヤの種類、たとえばタイヤの径、幅、および扁平率、タイヤの表面の状態、ならびに照明の位置関係が、画像に影響を与えるので、検査の安定性に欠けるという問題がある。これは、欠陥部と背景部とを区別するために必要である明確な濃度差あるいは濃度的特徴が存在しないことが原因である。
【0010】
本発明の目的は、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、凹凸欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮影した画像の処理を行う画像処理装置で実行される画像処理方法であって、
第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出工程と、
第1の凹凸欠陥検出工程で判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出工程と、
第2の凹凸欠陥検出工程で判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める画素数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出工程とを含むことを特徴とする画像処理方法である。
【0012】
また本発明は、前記第1の凹凸欠陥検出工程は、
前記線状模様の周期を算出する第1の周期算出工程と、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する第1の濃度変換工程と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、第1の濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する第1のフーリエ展開工程と、
第1のフーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分から、第1の周波数算出工程で算出された周波数の周波数成分を除いた残余の周波数成分を逆フーリエ展開する第1の逆フーリエ展開工程と、
第1の逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素に基づいて、第1の凹凸欠陥があるか否かを判定する第1の欠陥検出工程とを含み、
第1の欠陥検出工程では、逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素について、第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分した微分値を前記第1の微分値として算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記予め定める凹凸の種類は、凹から凸に変化する種類と、凸から凹に変化する種類と、凹である種類と、凸である種類とを含むことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記第2の凹凸欠陥検出工程は、
前記線状模様の周期を算出する第2の周期算出工程と、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する第2の濃度変換工程と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、第1の濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する第2のフーリエ展開工程と、
第2のフーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分から、第2の周波数算出工程で算出された周波数で定まる上限周波数を上限とする周波数成分を逆フーリエ展開する第2の逆フーリエ展開工程と、
第2の逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素に基づいて第2の凹凸欠陥があるか否かを判定する第2の欠陥検出工程とを含み、
第2の欠陥検出工程では、逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素のうち、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める微分範囲の画素について加算した微分和に基づいて、第2の凹凸欠陥であるか否かを判定することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記対象物は、前記線状模様と前記線状模様とは異なる非欠陥模様とが形成され、
前記第2の欠陥検出工程は、画像を構成する画素のうち最大の濃度が予め定める第2のしきい値より大きい画素からなる部分の形状を、非欠陥形状であると判定することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記第2の凹凸欠陥検出工程では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記第3の凹凸欠陥検出工程は、
前記線状模様の周期を算出する第3の周期算出工程と、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する第3の濃度変換工程と、
各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて第3の微分値を算出する微分工程と、
微分工程で算出された微分値に基づいて、第3の凹凸欠陥があるか否かを判定する第3の欠陥検出工程とを含み、
第3の欠陥検出工程では、第1の方向での画素の位置を変数として、第3の濃度変換工程で変換された各画素の濃度を表す第3の関数を、予め定める判定範囲で最小自乗法を用いて放物線を表す第4の関数に近似し、近似した第4の関数の放物線の高さが予め定める第3のしきい値より高いとき、第3の凹凸欠陥であると判定することを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記第3の凹凸欠陥検出工程では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記対象物を撮影した画像を第2の方向に複数のブロックに分割し、分割したブロックごとに、第1〜第3の凹凸欠陥検出工程を処理することを特徴とする。
【0020】
また本発明は、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出手段と、
第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出手段と、
第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出手段とを含むことを特徴とする画像処理装置である。
【0021】
また本発明は、コンピュータを、
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出手段と、
第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出手段と、
第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出手段として機能させるためのプログラムである。
また本発明は、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮影した画像の処理を行う画像処理装置で画像を処理するにあたって、第1の凹凸欠陥検出工程では、第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する。第2の凹凸欠陥検出工程では、第1の凹凸欠陥検出工程で判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する。そして、第3の凹凸欠陥検出工程では、第2の凹凸欠陥検出工程で判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める画素数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する。
【0023】
したがって、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、第1〜第3の凹凸欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる。
【0024】
また本発明によれば、前記第1の凹凸欠陥検出工程は、第1の周期算出工程と、第1の濃度変換工程と、第1のフーリエ展開工程と、第1の逆フーリエ展開工程と、第1の欠陥検出工程とを含む。第1の周期算出工程では、前記線状模様の周期を算出する。第1の濃度変換工程では、各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。第1のフーリエ展開工程では、第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、第1の濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する。第1の逆フーリエ展開工程では、第1のフーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分から、第1の周波数算出工程で算出された周波数の周波数成分を除いた残余の周波数成分を逆フーリエ展開する。第1の欠陥検出工程では、第1の逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素に基づいて、第1の凹凸欠陥があるか否かを判定する。そして、第1の欠陥検出工程では、逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素について、第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分した微分値を前記第1の微分値として算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する。
したがって、第1の凹凸欠陥、たとえば大規模凹凸欠陥を検出することができる。
【0025】
また本発明によれば、前記予め定める凹凸の種類は、凹から凸に変化する第1の種類と、凸から凹に変化する第2の種類と、凹である第3の種類と、凸である第4の種類とを含むので、凹凸の種類に応じてきめ細かく大規模凹凸欠陥を検出することができる。
【0026】
また本発明によれば、前記第2の凹凸欠陥検出工程は、第2の周期算出工程と、第2の濃度変換工程と、第2のフーリエ展開工程と、第2の逆フーリエ展開工程と、第2の欠陥検出工程とを含む。第2の周期算出工程では、前記線状模様の周期を算出する。第2の濃度変換工程では、各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。第2のフーリエ展開工程では、第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、第1の濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する。第2の逆フーリエ展開工程では、第2のフーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分から、第2の周波数算出工程で算出された周波数で定まる上限周波数を上限とする周波数成分を逆フーリエ展開する。第2の欠陥検出工程では、第2の逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素に基づいて第2の凹凸欠陥があるか否かを判定する。そして、第2の欠陥検出工程では、逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素のうち、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める微分範囲の画素について加算した微分和に基づいて、第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する。したがって、第2の凹凸欠陥、たとえば小規模凹欠陥を検出することができる。
【0027】
また本発明によれば、前記対象物は、前記線状模様と前記線状模様とは異なる非欠陥模様とが形成され、前記第2の欠陥検出工程は、画像を構成する画素のうち最大の濃度が予め定める第2のしきい値より大きい画素からなる部分の形状を、非欠陥形状であると判定するので、非欠陥形状、たとえば成型切手あるいはタイヤのジョイントを小規模凹欠陥として検出することがない。
【0028】
また本発明によれば、前記第2の凹凸欠陥検出工程では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させるので、小規模凹欠陥がタイヤ回転方向に垂直な方向から傾いていても小規模凹欠陥を検出することができる。
【0029】
また本発明によれば、前記第3の凹凸欠陥検出工程は、第3の周期算出工程と、第3の濃度変換工程と、微分工程と、第3の欠陥検出工程とを含む。第3の周期算出工程では、前記線状模様の周期を算出する。第3の濃度変換工程では、各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。微分工程では、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて第3の微分値を算出する。第3の欠陥検出工程では、微分工程で算出された微分値に基づいて、第3の凹凸欠陥があるか否かを判定する。そして、第3の欠陥検出工程では、第1の方向での画素の位置を変数として、第3の濃度変換工程で変換された各画素の濃度を表す第3の関数を、予め定める判定範囲で最小自乗法を用いて放物線を表す第4の関数に近似し、近似した第4の関数の放物線の高さが予め定める第3のしきい値より高いとき、第3の凹凸欠陥であると判定する。したがって、第3の凹凸欠陥、たとえば鋭角凹欠陥を検出することができる。
【0030】
また本発明によれば、前記第3の凹凸欠陥検出工程では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させるので、鋭角凹欠陥がタイヤ回転方向に垂直な方向から傾いていても鋭角凹欠陥を検出することができる。
【0031】
また本発明によれば、前記対象物を撮影した画像を第2の方向に複数のブロックに分割し、分割したブロックごとに、第1〜第3の凹凸欠陥検出工程を処理するので、凹凸欠陥を消すこともなく、また、ノイズの影響を低減するとともに、処理時間も短縮して処理することができる。
【0032】
また本発明によれば、第1の凹凸欠陥検出手段は、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する。第2の凹凸欠陥検出手段は、第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する。そして、第3の凹凸欠陥検出手段は、第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する。
【0033】
したがって、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、第1〜第3の凹凸欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる。
【0034】
また本発明によれば、プログラムによって、コンピュータを、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出手段と、第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出手段と、第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出手段として機能させることができる。
【0035】
また本発明によれば、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態である画像処理装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】凹凸欠陥の例を示す図である。
【図3】自己相関値を説明するための図である。
【図4】相関差分値を説明するための図である。
【図5】ピーク位置およびピーク間隔を説明するための図である。
【図6】濃度射影変換を説明するための図である。
【図7】フーリエ展開の補充の仕方を説明するための図である。
【図8】専用しきい値を設定する設定画面50の一例を示す図である。
【図9】ジョイントであるか否かの判定を説明するための図である。
【図10】回転射影変換を説明するための図である。
【図11】X方向での各画素の微分値を表す波形701の一例を示す図である。
【図12】コード露出・刻印文字検出処理を説明するための図である。
【図13】内面離型剤検出処理を説明するための図である。
【図14】制御部12が実行する凹凸欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】制御部12が実行する大規模凹凸欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】制御部12が実行する大規模凹凸判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】制御部12が実行する小規模凹欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図18】制御部12が実行する小規模凹欠陥判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図19】制御部12が実行する鋭角凹欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図20】制御部12が実行する鋭角凹欠陥判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明の一実施形態である画像処理装置1の構成を示すブロック図である。画像処理装置1は、たとえばゴム、金属もしくは樹脂からなる成型品の表面検査を、画像処理を用いて検査する検査装置であり、以下、タイヤを検査する検査装置である画像処理装置1を例に説明する。本発明に係る画像処理方法は、たとえば画像処理装置1で実行される。
【0038】
画像処理装置1は、入力部11、制御部12、記憶部13および出力部14を含んで構成される。入力部11は、たとえばマウスおよびキーボードなどの入力装置、ならびに照明部および撮影部からなる撮影装置を含んで構成される。入力装置は、たとえば検査の開始および終了を指示する情報、および検査の条件などの情報を入力する装置であり、入力部11は、入力装置によって入力された情報を制御部12に送る。
【0039】
撮影装置は、タイヤの内側をライトなどの照明部によって照明し、照明光が照射されているタイヤ表面をカメラなどの撮影部によって撮影する。撮影装置は、タイヤの内側を1度に撮影することができないので、タイヤの内側の表面の位置を移動して順次撮影する。入力部11は、撮影装置によって撮影したタイヤの内側の表面の画像を制御部12に送る。
【0040】
制御部12は、たとえば中央処理装置(Central Processing Unit;略称CPU)によって構成され、記憶部13に記憶されるプログラムを実行することによって、入力部11および出力部14を制御し、本発明に係る線状欠陥検出処理を行う後述する複数の機能を実現する。記憶部13は、たとえば半導体メモリあるいはハードディスク装置などによって構成される読み書き可能な記憶装置であり、制御部12で実行されるプログラムおよび制御部12で用いられる情報を記憶する。
【0041】
出力部14は、情報を出力するディスプレイなどの表示装置あるいはプリンタなどの印刷装置によって構成され、制御部12から受け取る情報を出力する。あるいは、着脱可能な記録媒体への情報の読み書きが可能な記録再生装置、他の画像処理装置と情報の送受信を行う通信装置などを、入力装置兼出力装置とすることも可能である。制御部12は、入力部11から受け取る画像に基づいて線状欠陥の有無を判定し、判定結果に基づく検査結果を出力部14に出力する。
【0042】
入力部11の撮影装置から受け取る画像(以下「取込画像」という)は、記憶部13に記憶される。取込画像は、予め定める第1の方向であるタイヤ回転方向と、タイヤ回転方向に垂直な方向とに配列された画素から構成される。すなわち、画素は、タイヤ回転方向に互いに平行な複数のラインと、タイヤ回転方向に直交する方向に互いに平行な複数のラインとの交点に配置されている。取込画像は、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様、たとえばブラダーグルーブが形成された対象物を撮影した画像である。
【0043】
凹凸欠陥は、溝の深さ、長さおよび幅の組み合わせによって、大規模凹凸欠陥、小規模凹欠陥および鋭角凹欠陥の3つに分類される。大規模凹凸欠陥は、凹凸部の幅が比較的広く、タイヤ回転方向に直交する方向(以下「垂直方向」という)に長い凹凸欠陥である。小規模凹欠陥および鋭角凹欠陥は、凹凸部の幅が比較的狭く、ほぼ垂直方向に長い凹凸欠陥であるが、垂直方向に対して傾きのあるものもある。鋭角凹欠陥は、小規模凹欠陥よりも凹部の深さが深い。大規模凹凸欠陥は、予め定める第1の凹凸欠陥であり、小規模凹欠陥は、予め定める第2の凹凸欠陥であり、鋭角凹欠陥は、予め定める第3の凹凸欠陥である。
【0044】
図2は、凹凸欠陥の例を示す図である。図2(a)は、大規模凹凸欠陥201が形成された取込画像20であり、図2(b)は、小規模凹欠陥211が形成された取込画像21である。大規模凹凸欠陥201は、垂直方向の凹凸欠陥であり、小規模凹欠陥211は、垂直方向に対して傾きのある凹欠陥である。取込画像20,21には、それぞれブラダーグルーブ202,212が示されている。
【0045】
制御部12は、第1〜第3の凹凸欠陥検出処理からなる凹凸欠陥検出処理によって、凹凸欠陥を検出する。第1の凹凸欠陥検出処理は、大規模凹凸欠陥を検出する処理であり、第2の凹凸欠陥検出処理は、小規模凹欠陥を検出する処理であり、第3の凹凸欠陥検出処理は、鋭角凹欠陥を検出する処理である。
【0046】
制御部12は、記憶部13に記憶されるプログラムを実行することによって、第1〜第3の凹凸欠陥検出手段などの機能を実現する。第1の凹凸欠陥検出処理は、第1の凹凸欠陥検出手段によって実行され、第2の凹凸欠陥検出処理は、第2の凹凸欠陥検出手段によって実行され、第3の凹凸欠陥検出処理は、第3の凹凸欠陥検出手段によって実行される。
【0047】
制御部12は、先ず、第1の凹凸欠陥検出処理を実行する。第1の凹凸欠陥検出処理は、大規模凹凸欠陥を検出する処理であり、第1〜第6ステップの6つのステップで処理される。制御部12は、取込画像を、タイヤ回転方向に切断して、タイヤ回転方向に直交する方向に複数のブロックに分割し、ブロックごとに、第1〜第6ステップの処理を実行する。
【0048】
第1ステップでは、制御部12は、ブラダーグルーブ本数算出処理を行う。具体的には、制御部12は、取込画像から自己相関値を算出し、算出した自己相関値の変動周期(以下「変動間隔」ともいう)を求めることによって、ブラダーグルーブの本数を算出する。
【0049】
ブラダーグルーブのように周期的変化に特徴がある画像の場合、自己相関値も周期的に変動する。したがって、自己相関値の変動間隔を求めることによって、ブラダーグルーブの本数を算出することができる。ブラダーグルーブの本数の算出は、第1〜第5手順で算出される。制御部12は、第1手順で、自己相関値を算出し、第2手順で、相関差分値を算出し、第3手順で、相関差分値のピーク位置を検出し、第4手順で、相関差分値のピーク間隔を算出し、第5手順で、ブラダーグルーブの本数を算出する。
【0050】
第1手順では、制御部12は、取込画像内に予め定める矩形のテンプレート領域を設定し、テンプレート領域内の画素と、テンプレート領域を移動させた領域内の画素との間の自己相関値を算出する。
【0051】
図3は、自己相関値を説明するための図である。対象領域30は、取込画像のうち、自己相関値を算出する画像の矩形の領域であり、図3の縦方向であるY方向の縦寸法が「H」であり、かつ図3の横方向であるX方向の横寸法が「W」である。テンプレート領域31は、A方向の縦寸法が「HT」であり、B方向の横寸法が「WT」である。対象領域30の左上の位置をXY座標の原点とする。縦寸法および横寸法は、画素数で表される。
【0052】
制御部12は、対象領域30内の任意の位置にテンプレート領域31を設定する。テンプレート領域31の縦寸法HTは、対象領域30の縦寸法Hと一致し、テンプレート領域31の横寸法WTは、対象領域30の横寸法Wよりも小さい。次に、制御部12は、テンプレート領域31をX方向に移動させた位置に、相関値算出領域32を設定する。相関値算出領域32は、テンプレート領域31と同一の寸法であり、縦寸法が「HT」、横寸法が「WT」である。
【0053】
制御部12は、テンプレート領域31と相関値算出領域32とを重ね合わせて、各画素の相関値を算出する。テンプレート領域31内の画素の位置を、テンプレート領域31の左上の位置を原点とする相対座標系で表して、座標(i,j)とし、相関値算出領域32の左上の画素の位置をXY座標系で座標(x,y)とすると、相関値算出領域32内の画素の位置は、XY座標系で(x+i,y+j)となる。
【0054】
本実施形態では、テンプレート領域31の画素の濃度と、相関値算出領域32の画素の濃度との相関値を、正規化相関法を用いて算出する。具体的には、テンプレート領域31の座標(i,j)の画素の濃度をT(i,j)とし、相関値算出領域32の座標(x+i,y+j)の画素の濃度を、I(x+i,y)+j)とすると、相関値R(x,y)は、正規化相関法による式(1)で算出される。制御部12は、相関値算出領域32を対象領域30内でX方向に順次1画素ずつ移動させて、正規化相関値を算出する。
【0055】
【数1】
【0056】
ここで、R(x,y)は、正規化相関値(以下、単に「相関値」ともいう)であり、「IH」は、相関値算出領域32内の画素の濃度の平均値であり、「TH」は、テンプレート領域31内の画素の濃度の平均値であり、x∈{0,1,2,…,W−WT}、y∈{0,1,2,…,H−HT}、i∈{0,1,2,…,WT−1}、j∈{0,1,2,…,HT−1}である。
【0057】
式(1)に示すように、相関値R(x,y)は、各画素の濃度から濃度の平均値を引いた値の相関となっているので、取込画像の濃度が変動したとしても、相関値R(x,y)を安定して算出することができる。式(1)を展開すると、式(2)が得られる。
【0058】
【数2】
【0059】
ここで、「N」は、テンプレート領域のサイズであり、N=WT×HTである。
相関値R(x,y)は、−1≦R(x,y)≦1の範囲の値となり、R(x,y)=「1」が完全一致を示し、R(x,y)=「−1」が完全不一致、すなわち相関値算出領域32の画像がテンプレート領域31の画像の反転画像であることを示し、R(x,y)=「0」が無相関であることを示す。また、相関値R(x,y)は、整数として表現するために、たとえば「10,000」などの定数を乗じた値を、相関値として用いることがある。すなわち、−1.0〜1.0の範囲にある小数値を整数化するために1万倍している。
【0060】
また、本実施形態では、制御部12は、対象領域30内の任意の位置にテンプレート領域31を設定するが、他の実施形態では、たとえば対象領域30内のX方向中央部にテンプレート領域31を設定して、相関値を算出する構成であってもよい。
【0061】
第2手順では、制御部12は、第1手順で算出されたテンプレート領域31内の画素の自己相関値と、X方向に予め定める間隔をあける画素との自己相関値とを差分処理して相関差分値を算出する。具体的には、制御部12は、自己相関値、つまり相関値R(x,y)から、式(3)を用いて相関差分値D(x,y)を算出する。
D(x,y)=R(x+Δx,y)−R(x,y) …(3)
【0062】
ここで、差分幅Δxは、予め定める間隔であり、たとえば「5」である。相関差分値は、自己相関値よりもフラットな値であるので、算出した相関差分値を用いて、ブラダーグルーブの本数の算出を容易かつ確実に行うことができる。フラットとは、グラフで表したとき、上昇下降が明確であり、ノイズに妨げられ難いという意味である。
【0063】
図4は、相関差分値を説明するための図である。図4(a)は、入力部11の撮影装置によって撮影された取込画像35を示す図である。図4(b)は、取込画像35内のグラフ36を抜き出した図である。取込画像35内にグラフ36が示されているが、判別し難いので図4(b)に抜き出して示している。
【0064】
取込画像35には、対象領域30とテンプレート領域31とが示されている。グラフ36には、相関差分値のピーク位置の検出に用いる閾値である相関差分値閾値361、自己相関値を示す波形362、および相関差分値を示す波形363が示される。グラフ36において、横軸は、画素のX方向の位置を示し、縦軸は、自己相関値の値を示している。
【0065】
第3手順では、制御部12は、第2手順で算出された各相関差分値のピーク位置、すなわち極大位置を検出する。制御部12は、図4(b)に示したグラフ36内の相関差分値閾値361を上下方向に動的に移動させて、相関差分値の波形363が相関差分値閾値361のラインを超える位置を、相関差分値のピーク位置と判定する。第4手順では、制御部12は、第3手順で検出されたテンプレート領域内のピーク位置のうち、互いに隣接する各ピーク位置の間隔の平均値を算出する。
【0066】
図5は、ピーク位置およびピーク間隔を説明するための図である。図5(a)は、相関差分値の波形の一例であるグラフ37を示す図である。図5(b)は、グラフ37内の領域38を拡大して示す図である。
【0067】
グラフ37には、相関差分値の波形363、相関差分値閾値361、波形363の最大値381、ピーク位置382、および隣接するピーク位置の間隔であるピーク間隔Tが示されている。グラフ37の横軸は、相関差分値を算出した画素の位置Xであり、縦軸は、相関差分値Dである。相関差分値閾値361は、たとえば波形の最大値381に対する閾値の比率として閾値比率を設定することによって、「(相関差分値閾値361)=(波形の最大値381)×(閾値比率)」によって算出される。
【0068】
図5(b)には、ピーク位置382と、波形363が相関差分値閾値361を超えた位置である立上がり位置383と、波形363が相関差分値閾値361を下回った位置である立下がり位置384とが示されている。制御部12は、ピーク位置382を、「(ピーク位置382)={(立上がり位置383)+(立下がり位置384)}/2」によって算出する。さらに制御部12は、複数のピーク位置382のうち、互いに隣接するピーク位置382の間隔をそれぞれ算出してピーク間隔Tを求める。制御部12は、複数のピーク間隔Tの平均値を算出する。
【0069】
第5手順では、制御部12は、第4手順で算出したピーク間隔の平均値に基づいて、取込画像内のブラダーグルーブの合計本数を算出し、算出したブラダーグルーブの合計本数から取込画像内のブラダーグルーブの周期を算出する。
【0070】
他の実施形態では、制御部12は、第5手順での処理が終わった後、第1手順に戻り、テンプレート領域31をX方向に移動させて、新たにテンプレート領域31を設定して、再び第1〜第5手順の処理を行ってもよい。テンプレート領域31を移動させて、相関値を複数回算出するので、最初に設定したテンプレート領域31にゴミなどの異物が付着していても、新たなテンプレート領域31に異物が付着していなければ、ブラダーグルーブの本数を正確に算出することができる。したがって、制御部12は、ブラダーグルーブの本数の算出を、より確実に行うことができる。
【0071】
表2は、フーリエ周波数による対象の分類を示す表である。欠陥部には、周波数が「1〜(z−1)」Hzである凹凸欠陥がある。非欠陥部には、周波数が「1〜(z−1)」Hzであるジョイント(凸ライン)および内面離型剤垂れ、周波数が「z〜39」Hzであるブラダーグルーブ、ならびに周波数が「40〜150」Hzである散布状内面離型剤および刻印文字がある。周波数zは、ブラダーグルーフ゛の本数によって決まる値である。ブラダーグルーフ゛の本数がタイヤの種類およびカメラの角度によって異なるため、ブラダーグルーブ本数算出処理で算出した本数から予め定める本数hを引いた数をzの値とする。予め定める本数hは、たとえば「2」である。
【0072】
【表2】
【0073】
欠陥の色は黒いが、内面離型剤垂れおよび散布状内面離型剤の色は白であるので、内面離型剤垂れおよび散布状内面離型剤は、別処理で、色によって欠陥判別を行うことも可能である。
【0074】
制御部12は、すべてのブロックについて、ブラダーグルーブの本数を算出すると、算出したブラダーグルーブの本数のうち、「0」以外の最尤値、つまり最も多い本数を、算出したブラダーグルーブの本数とする。
【0075】
第2ステップでは、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換は、1つの方向のライン上の画素の濃度を、そのライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換することである。具体的には、制御部12は、タイヤ回転方向に直交する方向のラインごとに、取込画像の各画素の濃度を、各画素が含まれるライン上の画素の濃度を平均した濃度に変換する。取込画像に照明による濃度むらがある場合は、取込画像から濃度むらを除去した画像に対して濃度射影変換を行う。濃度むらの除去方法については、特に限定されない。
【0076】
図6は、濃度射影変換を説明するための図である。図6(a)は、濃度射影変換を行う対象の取込画像40の一例である。取込画像40を構成する画素のうち、白色部分を構成する画素の濃度は、黒色部分を構成する画素の濃度よりも高い値を示す。取込画像40の横方向がx方向であり、縦方向がy方向である。
【0077】
図6(b)は、取込画像40のx方向のラインごとに、画素の濃度を加算した値を示すグラフ41である。すなわち、グラフ41は、取込画像40をx方向のラインごとに、画素の濃度を加算した値を示す。グラフ41の横方向が取込画像40のx方向のラインごとに画素の濃度を加算した合計であり、縦方向が取込画像40のy方向である。平均濃度は、各画素が含まれるライン上の画素の濃度を加算した濃度を、各画素を含むライン上の画素数で除算した値である。制御部12は、各画素の濃度を、各画素が含まれるラインの平均濃度に変換する。
【0078】
濃度射影変換を行うことによって、濃度射影変換を行う方向以外の方向のノイズを緩和することができる。凹凸欠陥は、タイヤ回転方向に直交する方向の直線性に特徴を有するので、濃度射影変換を行うことによって、タイヤ回転方向に直交する方向以外の方向のノイズ、たとえばブラダーグルーブおよび内面離型剤などのノイズを緩和することができる。
【0079】
第3ステップでは、制御部12は、フーリエ展開処理を行う。具体的には、制御部12は、濃度射影変換が行われた画像に対して、予め定める第1の方向、たとえばタイヤの回転方向のラインのうちの1つのライン上の画素について、画素の位置を変数xとし、各画素の濃度を関数f(x)として、フーリエ展開する。フーリエ展開した関数をF(x)とし、濃度の関数f(x)が0≦x≦1で求められたとすると、F(x)は、式(4)によって算出される。
F(x)=a0/2+Σ{an ×cos(n×π×x/L)
+bn×sin(n×π×x/L)} …(4)
【0080】
ここで、Σは、数列の総和を表す記号であり、総和Σの範囲は、n=1から無限大までの整数であるが、実際には、nの値は、いずれかの値で打ち切る必要がある。nは、欠陥の周波数、つまり欠陥の個数であり、nの値は、良品サンプルに関するデータをどこまで展開して復元することできるかによって定められる。Lは、たとえば処理対象である1ラインの画素数が512である場合、画素数「256」である。
【0081】
また、係数anおよび係数bnは、それぞれ式(5),(6)によって求められる。
an=1/L×∫f(x)×cos(n×π×x/L)dx …(5)
bn=1/L×∫f(x)×sin(n×π×x/L)dx …(6)
ここで、∫は積分記号であり、積分∫の範囲は、−L≦x≦Lである。
【0082】
式(4)での計算は、0≦x≦1の範囲でしか行っていないので、−1≦x<0の範囲のフーリエ展開を補充する必要がある。補充の仕方は、限定されるものではなく、どのように補充してもよい。
【0083】
図7は、フーリエ展開の補充の仕方を説明するための図である。図7(a)は、0≦x≦1で、f0(x)=cxからなる関数を示すグラフ45である。cは、係数である。図7(b)は、補充するための第1の関数f1(x)を示すグラフ46である。関数f1(x)は、−1≦x<0の範囲で、f1(x)=c(x+1)であり、0≦x≦1で、f1(x)=f(x)である。図7(c)は、補充するための第2の関数f2(x)を示すグラフ47である。関数f2(x)は、−1≦x<0の範囲で、f2(x)=−cxであり、0≦x≦1で、f2(x)=f(x)である。図7(d)は、補充するための第3の関数f3(x)を示すグラフ48である。関数f3(x)は、−1≦x≦1の範囲で、f3(x)=c(x+1)である。
【0084】
式(1)の右辺が連続関数の和であり、グラフ46に示した不連続な第1の関数f1(x)の値に収束しないので、xの範囲を0≦x≦1の範囲から−1≦x≦1の範囲に変えたグラフ48に示した第3の関数f3(x)で補充することもできる。いずれの関数を用いて補充するかは特に限定されないが、図7(c)に示した第2の関数f2(x)がよく用いられる。
【0085】
制御部12は、式(5),(6)で求めた係数から振幅「2×√(an2+bn2)」を求める。√は、平方根の演算記号である。
【0086】
第4ステップでは、制御部12は、逆フーリエ展開処理を行う。具体的には、制御部12は、第1ステップで算出されたブラダーグルーブの本数から予め定める本数h、たとえば「2」を減算した本数を表す周波数「z」Hzを、除去する周波数成分の下限とし、第3ステップでフーリエ展開された周波数成分から、下限以上の周波数成分を除去し、残余の周波数成分を逆フーリエ展開する。すなわち、式(1)で求めた関数F(x)の項のうち、周波数「z」Hz以上の周波数の項を除いて逆フーリエ展開する。この逆フーリエ展開によって、ブラダーグルーブおよびブラダーグルーブよりも周波数の高い周波数成分が除去され、凹凸欠陥を残した画像を得ることができる。
【0087】
第5ステップでは、制御部12は、微分処理を行う。具体的には、制御部12は、逆フーリエ展開後の画像について、タイヤ回転方向のラインのうちの1つのラインについて、画素の位置を変数として、濃度を表す関数g(x)を微分し、各画素の位置での微分値である第1の微分値を算出する。算出した第1の微分値のうち、第1の微分値の絶対値が最大になる位置である最大絶対微分位置を求める。関数g(x)は、逆フーリエ展開後の画像の濃度を表す関数である。
【0088】
第6ステップでは、制御部12は、大規模凹凸欠陥判定処理を行う。具体的には、制御部12は、まず、関数g(x)で表される濃度の平均値を算出する。次に、制御部12は、関数g(x)で表される濃度のうち最大絶対微分位置周辺の画素の濃度と、算出した平均値とを大小比較する。
【0089】
関数g(x)で表される濃度のうち最大絶対微分位置周辺の画素の濃度と、算出した平均値との差が予め定める閾値の範囲外であるとき、最大絶対微分位置周辺の画素を欠陥候補と判定する。関数g(x)で表される濃度のうち最大絶対微分位置周辺の画素の濃度と、算出した平均値との差が予め定める閾値の範囲内であれば、欠陥候補ではないと判定する。
【0090】
制御部12は、欠陥候補があると、欠陥候補の画素の位置とその位置での微分符号とから、欠陥候補の凹凸の種類を選別する。凹凸の種類は、「凹から凸」、、「凹」および「凸」の4種類である。「凹から凸」の場合、左右の谷の大きさ、つまり底部の長さを比較し、左が大きければ、「凸」と判定する。種類としては「凸から凹」もあるが、「凸から凹」の選別は行っていない。
【0091】
制御部12は、欠陥候補については、凹凸の種類に応じて予め定められる専用しきい値によって、大規模凹凸欠陥であるか否かを判定する。欠陥候補が専用しきい値の上限または下限を超えていると、大規模凹凸欠陥であると判定する。予め定められる専用しきい値は、予め定める第1のしきい値である。
【0092】
図8は、専用しきい値を設定する設定画面50の一例を示す図である。設定画面50は、出力部14の表示装置に表示され、入力部11の入力装置によって専用しきい値を設定することができる。設定画面50に示されるしきい値のうち、矩形枠51で囲まれたしきい値が、4つの凹凸の種類に選別された欠陥候補に対する専用しきい値である。
【0093】
矩形枠51内の専用しきい値は、「凸1しきい値」、「凸2しきい値」、「凹1しきい値」、「判定対象」、「微分値判定」および「凹2微分値」がある。
【0094】
「凸1しきい値」は、濃度の上限が「+210」である。「凸2しきい値」は、濃度の下限が「−180」であり、上限が「+180」である。「凹1しきい値」は、濃度の下限が「−030」である。「判定対象」は、「微分」である。「微分値判定」は、微分幅が画素数で「20」であり、濃度の上限が「00050」である。「凹2微分値」は、「00052」である。「判定対象」は、判定に用いるグラフを微分グラフにするか、差分グラフにするかの選択を表す。この例では、微分グラフを用いるので、「判定対象」は、「微分」となっている。微分幅は、微分グラフを作成するときのパラメータであり、微分幅分のデータの平均値を微分幅分離れた箇所で比較し、その差を微分グラフの値とする。微分グラフの最大値が「微分値判定」および「凹2微分値」の上限を超えた場合にのみそれぞれの判定材料として有効としている。
【0095】
「凹から凸」に選別された欠陥候補に対する専用しきい値は、「凸1しきい値」である。「凸から凹」に選別された欠陥候補に対する専用しきい値は、「凸2しきい値」である。「凹」に選別された欠陥候補に対する専用しきい値は、「凹1しきい値」である。そして、「凹2」に選別された欠陥候補に対する専用しきい値は、「凹2微分値上限」である。
【0096】
ブロック単位ではなく、取込画像全体について、第1〜第6ステップの第1の凹凸欠陥検出処理を実行すると第2ステップの濃度射影変換処理で欠陥を消してしまう可能性がある。また、ブロック単位あるいは取込画像全体ではなく、ラインごとに、第1〜第6ステップの第1の凹凸欠陥検出処理を実行すると、長時間の処理時間を要するうえに、タイヤ表面に形成される非欠陥部によるノイズの影響を受けることがある。そこで、本実施形態では、第1〜第6ステップの第1の凹凸欠陥検出処理をブロック単位で実行している。
【0097】
制御部12は、第1の凹凸欠陥検出処理で大規模凹凸欠陥がないと判定すると、第2の凹凸欠陥検出処理を実行する。第2の凹凸欠陥検出処理は、小規模凹欠陥を検出する処理であり、第1〜第5ステップの5つのステップで処理される。制御部12は、取込画像を、タイヤ回転方向に切断して、タイヤ回転方向に直交する方向に複数のブロックに分割し、ブロックごとに、第1〜第5ステップの処理を実行する。
【0098】
第1ステップでは、制御部12は、ブラダーグルーブ本数算出処理を行う。ブラダーグルーブ本数算出処理は、大部分の処理が第1の凹凸欠陥検出処理の第1ステップでのブラダーグルーブ本数算出処理と同じであり、同じ処理については、重複を避けるために省略する。異なる処理は、最尤値を決める処理で、第1の凹凸欠陥検出処理では、「0」以外の最尤値を、算出したブラダーグルーブの本数としたが、第2の凹凸欠陥検出処理では、予め定める本数範囲、たとえば「5」〜「15」の範囲内のブラダーグルーブの本数のうち最も多い本数を、算出したブラダーグルーブの本数とする。
【0099】
第2ステップでは、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第2ステップでの濃度射影変換処理と同じであり、重複を避けるために省略する。濃度射影変換を行うことによって、濃度射影変換を行う方向以外の方向のノイズを緩和することができる。凹凸欠陥は、タイヤ回転方向に直交する方向の直線性に特徴を有するので、濃度射影変換を行うことによって、タイヤ回転方向に直交する方向以外の方向のノイズ、たとえばブラダーグルーブおよび内面離型剤などのノイズを緩和することができる。
【0100】
第3ステップでは、制御部12は、フーリエ展開処理を行う。フーリエ展開処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第3ステップでのフーリエ展開処理と同じであり、重複を避けるために省略する。
【0101】
第4ステップでは、制御部12は、逆フーリエ展開処理を行う。具体的には、制御部12は、第3ステップでフーリエ展開された周波数成分のうち、小規模凹欠陥によって決まる周波数の範囲の周波数成分を逆フーリエ展開する。小規模凹欠陥によって決まる周波数の範囲の周波数成分は、第3ステップでフーリエ展開された周波数成分から、周波数「0」Hzおよび周波数「v−1」Hz〜「2v+2」Hzの周波数成分を除いた周波数成分である。周波数vは、第1ステップで算出したブラダーグルーブの本数である。すなわち、式(1)で求めた関数F(x)の項のうち、周波数「0」Hzおよび周波数「v−1」Hz〜「2v+2」Hzの周波数成分の項を除いて逆フーリエ展開する。ブラダーグルーブの本数の周波数とフーリエ展開された項とは、1対1に対応していないので、除去する周波数成分を広めにしている。この逆フーリエ展開によって、小規模凹凸欠陥を残した画像を得ることができる。周波数「u−1」Hzは、上限周波数である。
【0102】
第5ステップでは、制御部12は、小規模凹欠陥判定処理を行う。具体的には、制御部12は、まず、逆フーリエ展開後の画像について、濃度が最大である画素の位置および濃度が最小である画素の位置を探索する。以下、逆フーリエ展開後の画像の濃度のうち、最大の濃度を「第1の最大逆F濃度」、最小の濃度を「最小逆F濃度」という。次に、制御部12は、図3に示したX方向をタイヤ回転方向としたとき、最小逆F濃度の画素からX方向の右側の予め定める判定範囲、たとえば逆F探索範囲である「120」内で最大の濃度の位置を検索する。以下、最小逆F濃度の画素からX方向の右側の予め定める判定範囲内で最大の濃度を「第2の最大逆F濃度」という。
【0103】
制御部12は、第1,第2の最大逆F濃度および最小逆F濃度に基づいて、小規模凹欠陥の有無を判定する。最小逆F濃度が予め定める最小しきい値以上であれば、小規模凹欠陥はないと判定する。次に、第1の最大逆F濃度が予め定める成型切手しきい値よりも大きいとき、成型切手であり、小規模凹欠陥ではないと判定する。さらに、第2の最大逆F濃度が予め定めるジョイントしきい値よりも大きいとき、ジョイントであり、小規模凹欠陥ではないと判定する。予め定める最小しきい値は、たとえば「−100」であり、予め定める成型切手しきい値は、たとえば「最小値×(−1.0)」であり、予め定めるジョイントしきい値は、たとえば「最小値×(−0.2)」である予め定める成型切手しきい値および予め定めるジョイントしきい値は、予め定める第2のしきい値である。
【0104】
図9は、ジョイントであるか否かの判定を説明するための図である。ジョイントは、タイヤの継ぎ目であり、タイヤ回転方向に直交する方向に形成される。図9(a)は、ジョイントが形成されたタイヤ部分の取込画像55の一例を示す図である。波形551は、図9(a)の横方向であるタイヤ回転方向の逆フーリエ展開後の画像についての濃度を示している。横方向が画素の位置であり、縦方向が濃度である。取込画像55には、ブラダーグルーブ552が示されている。
【0105】
図9(b)は、波形551を模式化して示すグラフ56である。波形561が、波形551を模式化した波形である。位置T1は、最小逆F濃度の画素の位置であり、範囲L1は、予め定める判定範囲であり、しきい値562は、予め定めるジョイントしきい値であり、濃度N1は、最小逆F濃度であり、濃度N2は、第2の最大逆F濃度である。
【0106】
図9(b)に示した例では、最小逆F濃度N1の画素の位置T1の画素からX方向の右側の予め定める判定範囲L1内の第2の最大逆F濃度N2が、予め定めるジョイントしきい値562よりも大きいので、制御部12は、この部分がジョイントであり、小規模凹欠陥ではないと判定する。
【0107】
最後に、制御部12は、最小逆F濃度の画素の位置を中心とする予め定める微分範囲で、X方向で画素の位置を変数として、逆フーリエ展開後の画像の濃度を表す関数を微分する。そして、微分した画素ごとの微分値である第2の微分値を予め定める微分範囲で加算して微分和を求め、微分和が予め定める微分しきい値以上であると、小規模凹欠陥があると判定し、微分和が予め定める微分しきい値未満であると、小規模凹欠陥はないと判定する。予め定める微分範囲は、たとえば「50」であり、予め定める微分しきい値は、たとえば「600」である。
【0108】
制御部12は、第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理で、濃度射影変換を行う傾きをタイヤ回転方向に直交する方向として実行したが、小規模凹欠陥の方向は、タイヤ回転方向に直交する方向、つまり垂直方向に一致するとは限らず、小規模凹欠陥の幅が狭くなると、厳密には垂直方向に一致せず、垂直方向に対して傾く場合がある。小規模凹欠陥の方向と、濃度射影変換を行う方向とが一致していないと、第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理では、小規模凹欠陥を検出することができない。
【0109】
そこで、制御部12は、濃度射影変換を行う方向を垂直方向に対して傾けて、第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理を実行する。この場合、フーリエ展開を行うラインの方向も同じ角度だけ傾けてフーリエ展開する。傾ける角度は、予め定める角度範囲、たとえば±5度の範囲である。濃度射影変換を行う方向を垂直方向に対して傾けて、濃度射影変換を行うことを、以下、回転射影変換という。
【0110】
図10は、回転射影変換を説明するための図である。取込画像60の横方向がタイヤ回転方向であり、取込画像60の縦方向がタイヤ回転方向に直交する方向、つまり垂直方向である。タイヤ回転方向に直交する方向をD1方向と、濃度射影変換を行う方向をD2方向とし、D1方向に対するD2方向の角度をK度とする。シフト幅W1は、取込画像60の上端部および下端部において、D1方向の画素とD2方向の画素との間の距離であり、1画素単位で表される。取込画像60のD1方向の画素数をMとすると、tanK=W1/(M/2)である。
【0111】
制御部12は、最初、シフト幅W1=0で、第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理を実行し、次に、シフト幅W1に「1」を加算して、第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理を実行し、以後、K=5になるまで、シフト幅W1に「1」を順次加算して、第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理を繰り返し実行する。角度0度〜角度−K度についても同様に計算する。D2方向のラインが、図10の横方向で隣接する2つの画素を通る場合は、画素の中心位置がD2方向のラインに最も近い画素をD2方向のライン上にある画素として回転射影変換を行う。
【0112】
第2の凹凸欠陥検出処理でも、ブロック単位ではなく、取込画像全体について、第1〜第5ステップの第2の凹凸欠陥検出処理を実行すると第2ステップの濃度射影変換処理で欠陥を消してしまう可能性がある。ブロック単位あるいは取込画像全体ではなく、ラインごとに、第1〜第5ステップの第2の凹凸欠陥検出処理を実行すると、長時間の処理時間を要するうえに、タイヤ表面に形成される非欠陥部によるノイズの影響を受けることがある。そこで、本実施形態では、第1〜第5ステップの第2の凹凸欠陥検出処理をブロック単位で実行している。
【0113】
制御部12は、第2の凹凸欠陥検出処理で小規模凹欠陥がないと判定すると、第3の凹凸欠陥検出処理を実行する。第3の凹凸欠陥検出処理は、鋭角凹欠陥を検出する処理であり、第1〜第4ステップの4つのステップで処理される。制御部12は、取込画像を、タイヤ回転方向に切断して、タイヤ回転方向に直交する方向に複数のブロックに分割し、ブロックごとに、第1〜第4ステップの処理を実行する。
【0114】
第1ステップでは、制御部12は、ブラダーグルーブ本数算出処理を行う。ブラダーグルーブ本数算出処理は、大部分の処理が第2の凹凸欠陥検出処理、つまり小規模凹欠陥を検出する処理の第1ステップでのブラダーグルーブ本数算出処理と同じであり、同じ処理については、重複を避けるために省略する。異なる処理は、ブラダーグルーブの本数を算出する際に、ブラダーグルーブの本数が「0」であるとき、ブラーグルーブはないと判定し、ブラダーグルーブの本数が「0」でないとき、ブラーグルーブがあると判定する。
【0115】
具体的には、制御部12は、すべてのブロックについて、ブラダーグルーブの本数を算出すると、算出したブラダーグルーブの本数のうち、最尤値、つまり最も多い本数を、算出したブラダーグルーブの本数とする。
ブラダーグルーブの本数が「0」であるとき、ブラーグルーブはないと判定し、ブラダーグルーブの本数が「0」でないとき、ブラーグルーブがあると判定する。
【0116】
第2ステップでは、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第2ステップでの濃度射影変換処理と同じであり、重複を避けるために省略する。濃度射影変換を行うことによって、濃度射影変換を行う方向以外の方向のノイズを緩和することができる。凹凸欠陥は、タイヤ回転方向に直交する方向の直線性に特徴を有するので、濃度射影変換を行うことによって、タイヤ回転方向に直交する方向以外の方向のノイズ、たとえばブラダーグルーブおよび内面離型剤などのノイズを緩和することができる。
【0117】
第3ステップでは、制御部12は、射影変換濃度微分処理を行う。具体的には、制御部12は、図3に示したX方向をタイヤ回転方向としたとき、X方向について、微分幅分の微分値を算出する。たとえば、微分幅を「3」画素とするとき、各画素の微分値は、式(7)によって算出される。
微分値={(中心位置の画素から後3個の画素の濃度の合計)
−(中心位置の画素から前3個の画素の濃度の合計)}/3 …(7)
【0118】
ここで、「中心位置」は、微分値を求める画素の位置であり、「中心位置の画素から後3個の画素」とは、中心位置の画素からX方向と反対方向に隣接する3つの画素のことであり、「中心位置の画素から前3個の画素」とは、中心位置の画素からX方向に隣接する3つの画素のことである。微分幅は、予め定める画素数であり、式(7)で算出される微分値は、第3の微分値である。
【0119】
第4ステップでは、制御部12は、鋭角凹欠陥判定処理を行う。具体的には、制御部12は、まず、第3ステップで求めた微分値が予め定める微分しきい値範囲B1、たとえば−「45」〜「45」の範囲内であるか否かを判定する。すべての画素の微分値が予め定める微分しきい値範囲内であれば、鋭角凹欠陥はないと判定して鋭角凹欠陥判定処理を終了する。いずれかの画素の微分値が予め定める微分しきい値範囲内でなければ、制御部12は、コード露出・刻印文字検出処理を行う。以下、微分値が予め定める微分しきい値範囲内でない画素の位置を、「NG候補位置」という。
【0120】
図11は、X方向での各画素の微分値を表す波形701の一例を示す図である。図11に示した取込画像70内に示した波形701は、予め定める微分しきい値範囲B1内でない画素があるので、鋭角凹欠陥はないと判定されず、コード露出・刻印文字検出処理が行われる。
【0121】
コード露出・刻印文字検出処理では、制御部12は、予め定める区間範囲L2内で、微分値が予め定める微分しきい値範囲B1内でない画素からなる部分(以下「ラベル部」という)がいくつあるかを算出し、ラベル部の数が予め定めるラベルしきい値、たとえば「25」以上であるとき、ラベル部が密集しているので、コード露出または刻印文字であると判定する。
【0122】
予め定める区間範囲L2をX方向に予め定める幅、たとえば1画素ずつずらしながら、予め定める微分しきい値範囲B1内でない画素を含む予め定める区間範囲L2について、ラベル部の数が予め定めるラベルしきい値以上か否かを判定する。ラベル部の数が予め定めるラベルしきい値以上でない予め定める区間範囲L2がないと、鋭角凹欠陥はないと判定して鋭角凹欠陥判定処理を終了する。ラベル部の数が予め定めるラベルしきい値以上でない予め定める区間範囲L2があると、ブラダーグルーブ検出処理を行う。
【0123】
図12は、コード露出・刻印文字検出処理を説明するための図である。図12(a)は、図11に示した取込画像70と同じであり、予め定める区間範囲L2を示している。図12(b)は、コード露出または刻印文字の場合の微分値の波形711を模式的に示したグラフ71である。波形711は、ラベル名a〜hを付した部分が、予め定める微分しきい値範囲B1内でない画素からなる部分、つまりラベル部である。波形711は、予め定める区間範囲L2でラベル名a〜hの8つのラベル部がある。波形711は、ラベル部の数が、予め定める区間範囲L2で予め定めるラベルしきい値、たとえば「25」未満であるので、コード露出または刻印文字でないものがあり、鋭角凹欠陥がある可能性があり、次のブラダーグルーブ検出処理が行われる。
【0124】
ブラダーグルーブ検出処理では、制御部12は、第1ステップでのブラダーグルーブ本数算出処理で、ブラダーグルーブがないと判定したとき、ブラダーグルーブ検出処理を行わずに、次の内面離型剤検出処理を行う。第1ステップでのブラダーグルーブ本数算出処理で、ブラダーグルーブがあると判定したとき、NG候補位置から、第1ステップでのブラダーグルーブ本数算出処理で求めたピーク間隔Tの平均値の間隔だけ離れた位置に、NG候補位置があれば、それらのNG候補位置の画素は、ブラダーグルーブの画素であると判定する。制御部12は、ブラダーグルーブの画素以外のNG候補位置がないと、鋭角凹欠陥がないと判定し、鋭角凹欠陥検出処理を終了する。ブラダーグルーブの画素以外のNG候補位置があると、次の内面離型剤検出処理を行う。
【0125】
内面離型剤検出処理では、制御部12は、放物線を用いて内面離型剤の検出を行う。具体的には、制御部12は、まず、画素の濃度の位置を変数として、濃度射影変換を行った画素の濃度を、最小自乗法で近似した放物線(以下「近似放物線」という)の関数で表す。
【0126】
NG候補位置を中心として、X方向の予め定める判定範囲L3、たとえば「−15」〜「15」の範囲において、第2ステップで求めた濃度射影変換を行った画素の濃度の平均値Pに対して、近似放物線の中央部が高く、近似放物線の両端部が低く、かつ放物線の高さが予め定める高さしきい値、たとえば「15」よりも高いとき、そのNG候補位置は、内面離型剤であり、鋭角凹欠陥ではないと判定する。平均値Pに対して、近似放物線の中央部が高くない、平均値Pに対して、近似放物線の両端部のいずれかが低くない、または放物線の高さが予め定める高さしきい値以下のとき、鋭角凹欠陥であると判定する。
【0127】
図13は、内面離型剤検出処理を説明するための図である。図13(a)は、取込画像72について濃度射影変換した画素のX方向の濃度変化を示す波形721、およびその近似放物線722を示す。波形721の中央部付近がNG候補位置である。図13(b)は、図13(a)に示した波形721のうち、最も濃度が高い画素を中心にして、予め定める判定範囲L3の近似放物線731を取り出したグラフ73を示す。近似放物線731は、予め定める判定範囲L3において、中央部tが平均値Pに対して高く、両端部s,uが平均値Pに対して低く、かつ放物線の高さが予め定める高さしきい値よりも高いので、制御部12は、内面離型剤であると判定する。放物線の高さは、「(中央部tの濃度)−{(端部sの濃度)+(端部uの濃度)}/2」である。予め定める高さしきい値は、予め定める第3のしきい値である。
【0128】
制御部12は、第1〜第4ステップによる鋭角凹欠陥検出処理で、濃度射影変換を行う傾きをタイヤ回転方向に直交する方向として実行したが、鋭角凹欠陥の方向は、タイヤ回転方向に直交する方向、つまり垂直方向に一致するとは限らず、鋭角凹欠陥の幅が狭くなったり、より鋭角的になると、厳密には垂直方向に一致せず、垂直方向に対して傾く場合がある。鋭角凹欠陥の方向と、濃度射影変換を行う方向とが一致していないと、第1〜第4ステップによる鋭角凹欠陥検出処理では、鋭角凹欠陥を検出することができない。
【0129】
そこで、制御部12は、回転射影変換を行う、すなわち、濃度射影変換を行う方向を垂直方向に対して傾けて、第1〜第4ステップによる鋭角凹欠陥検出処理を実行する。傾ける角度は、予め定める角度範囲、たとえば±5度の範囲である。
【0130】
第3の凹凸欠陥検出処理でも、ブロック単位ではなく、取込画像全体について、第1〜第4ステップの第3の凹凸欠陥検出処理を実行すると第2ステップの濃度射影変換処理で欠陥を消してしまう可能性がある。ブロック単位あるいは取込画像全体ではなく、ラインごとに、第1〜第4ステップの第3の凹凸欠陥検出処理を実行すると、長時間の処理時間を要するうえに、タイヤ表面に形成される非欠陥部によるノイズの影響を受けることがある。そこで、本実施形態では、第1〜第4ステップの第3の凹凸欠陥検出処理をブロック単位で実行している。
【0131】
図14は、制御部12が実行する凹凸欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。入力部11の入力装置から検査の開始を指示する情報が入力され、制御部12が入力部11の撮影装置から取込画像を受け取ると、ステップA1に移る。
【0132】
ステップA1では、制御部12は、大規模凹凸欠陥検出処理を行う。ステップA2では、制御部12は、大規模凹凸欠陥を検出したか否かを判定する。大規模凹凸欠陥を検出すると、ステップA8に進み、大規模凹凸欠陥を検出していないと、ステップA3に進む。ステップA3では、制御部12は、小規模凹欠陥検出処理を行う。ステップA4では、制御部12は、小規模凹欠陥を検出したか否かを判定する。小規模凹欠陥を検出すると、ステップA9に進み、小規模凹凸欠陥を検出していないと、ステップA5に進む。
【0133】
ステップA5では、制御部12は、鋭角凹欠陥検出処理を行う。ステップA6では、制御部12は、鋭角凹欠陥を検出したか否かを判定する。鋭角凹欠陥を検出すると、ステップA10に進み、鋭角凹欠陥を検出していないと、ステップA7に進む。ステップA7では、タイヤは正常であると判定し、凹凸欠陥検出処理を終了する。
【0134】
ステップA8では、制御部12は、タイヤに大規模凹凸欠陥があると判定し、凹凸欠陥検出処理を終了する。ステップA9では、制御部12は、タイヤに小規模凹欠陥があると判定し、凹凸欠陥検出処理を終了する。ステップA10では、制御部12は、タイヤに鋭角凹欠陥があると判定し、凹凸欠陥検出処理を終了する。制御部12は、凹凸欠陥検出処理を終了する前に、判定結果を出力部14に出力する。図14に示したステップA1,A2,A8は、第1の凹凸欠陥検出工程であり、図14に示したステップA3,A4,A9は、第2の凹凸欠陥検出工程であり、図14に示したステップA5,A6,A10は、第3の凹凸欠陥検出工程である。
【0135】
図15は、制御部12が実行する大規模凹凸欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。図14に示したステップA1が実行されると、ステップB1に移る。第1の周期算出工程であるステップB1では、制御部12は、ブラダーグルーブ本数算出処理を行う。ブラダーグルーブ本数算出処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第1ステップの処理である。第1の濃度変換工程であるステップB2では、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第2ステップの処理である。第1のフーリエ展開工程であるステップB3では、制御部12は、フーリエ展開処理を行う。フーリエ展開処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第3ステップの処理である。
【0136】
第1の逆フーリエ展開工程であるステップB4では、制御部12は、逆フーリエ展開処理を行う。逆フーリエ展開処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第4ステップの処理である。ステップB5では、制御部12は、第1の微分処理を行う。第1の微分処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第5ステップの処理である。ステップB6では、制御部12は、大規模凹凸欠陥判定処理を行う。大規模凹凸欠陥判定処理は、第1の凹凸欠陥検出処理の第6ステップの処理である。ステップB5,B6は、第1の欠陥検出工程である。
【0137】
ステップB7では、制御部12は、全ブロック終了したか否かを判定する。全ブロック終了していないと、ステップB1に戻り、全ブロック終了していると、大規模凹凸欠陥検出処理を終了する。
【0138】
図16は、制御部12が実行する大規模凹凸判定処理の処理手順を示すフローチャートである。図15に示したステップB6が実行されると、ステップC1に移る。ステップC1では、制御部12は、逆フーリエ射影濃度の平均値を算出する。逆フーリエ射影濃度は、逆フーリエ展開された画像の濃度である。
【0139】
ステップC2では、制御部12は、最大絶対微分位置周辺の逆フーリエ射影濃度の大小比較を行う。具体的には、制御部12は、最大絶対微分位置周辺の画素の濃度と、算出した平均値との差を求める。
【0140】
ステップC3では、制御部12は、正常であるか否かを判定し、正常でない場合、欠陥候補を凹凸の種類に選別する。具体的には、制御部12は、ステップC2で求めた差が予め定める閾値の範囲内にないとき、最大絶対微分位置周辺の画素を欠陥候補と判定する。欠陥候補がないとき、正常であると判定する。欠陥候補があるとき、欠陥候補の画素の位置とその位置での微分符号とから、欠陥候補の凹凸の種類を選別する。
【0141】
ステップC4では、制御部12は、判定結果が正常であるか否かを判定する。判定結果が正常であると、ステップC7に進み、判定結果が正常でないと、ステップC5に進む。ステップC5では、制御部12は、欠陥候補については、凹凸の種類に応じて予め定められる専用しきい値によって、大規模凹凸欠陥であるか否かを判定する。欠陥候補が専用しきい値の上限または下限を超えていると、大規模凹凸欠陥であると判定し、ステップC6に進み、欠陥候補が専用しきい値の上限および下限内であると、大規模凹凸欠陥でないと判定し、ステップC7に進む。
【0142】
ステップC6では、制御部12は、大規模凹凸欠陥があると判定し、大規模凹凸判定処理を終了する。ステップC7では、制御部12は、大規模凹凸欠陥はなく、正常であると判定し、大規模凹凸判定処理を終了する。
【0143】
図17は、制御部12が実行する小規模凹欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。図14に示したステップA3が実行されると、ステップD1に移る。第2の周期算出工程であるステップD1では、制御部12は、ブラダーグルーブ本数算出処理を行う。ブラダーグルーブ本数算出処理は、第2の凹凸欠陥検出処理の第1ステップの処理である。第2の濃度変換工程であるステップD2では、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換処理は、第2の凹凸欠陥検出処理の第2ステップの処理である。第2のフーリエ展開工程であるステップD3では、制御部12は、フーリエ展開処理を行う。フーリエ展開処理は、第2の凹凸欠陥検出処理の第3ステップの処理である。
【0144】
第2の逆フーリエ展開工程であるステップD4では、制御部12は、逆フーリエ展開処理を行う。逆フーリエ展開処理は、第2の凹凸欠陥検出処理の第4ステップの処理である。第2の欠陥検出工程であるステップD5では、制御部12は、小規模凹欠陥判定処理を行う。小規模凹欠陥判定処理は、第2の凹凸欠陥検出処理の第5ステップの処理である。
【0145】
ステップD6では、制御部12は、傾き範囲が終了したか否かを判定する。第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理を、回転射影変換を行って図10に示した角度K度が−5度〜5度の範囲内の角度で繰り返し実行していないとき、傾き範囲は終了していないと判定し、ステップD1に戻る。第1〜第5ステップによる小規模凹欠陥検出処理を、回転射影変換を行って図10に示した角度K度が−5度〜5度の範囲内の角度で繰り返し実行したとき、傾き範囲が終了したと判定し、ステップD7に進む。
【0146】
ステップD7では、制御部12は、全ブロック終了したか否かを判定する。全ブロック終了していないと、ステップD1に戻り、全ブロック終了していると、小規模凹欠陥検出処理を終了する。
【0147】
図18は、制御部12が実行する小規模凹欠陥判定処理の処理手順を示すフローチャートである。図17に示したステップD5が実行されると、ステップE1に移る。ステップE1では、制御部12は、逆フーリエ射影濃度の最大の濃度、つまり第1の最大逆F濃度の画素の位置、および逆フーリエ射影濃度の最小の濃度、つまり最小逆F濃度の画素の位置を探索する。ステップE2では、制御部12は、最小逆F濃度の画素の右側で最大の濃度、つまり第2の最大逆F濃度の画素の位置を探索する。
【0148】
ステップE3では、制御部12は、最小逆F濃度が予め定める最小しきい値未満であるか否かを判定する。図では、「しきい値」を「閾値」と記す。最小逆F濃度が予め定める最小しきい値未満であると、ステップE9に進み、最小逆F濃度が予め定める最小しきい値以上であると、ステップE4に進む。ステップE4では、制御部12は、第1の最大逆F濃度が予め定める成型切手しきい値未満であるか否かを判定する。第1の最大逆F濃度が予め定める成型切手しきい値よりも大きいと、ステップE9に進み、第1の最大逆F濃度が予め定める成型切手しきい値以下であると、ステップE5に進む。
【0149】
ステップE5では、制御部12は、第2の最大逆F濃度が予め定めるジョイントしきい値未満であるか否かを判定する。第2の最大逆F濃度が予め定めるジョイントしきい値よりも大きいと、ステップE9に進み、第2の最大逆F濃度が予め定めるジョイントしきい値以下であると、ステップE6に進む。
【0150】
ステップE6では、制御部12は、最小逆F濃度の画素の位置を中心に、射影濃度変換の微分和を求める。射影濃度変換は、逆フーリエ展開後の画像の濃度のことである。ステップE7では、制御部12は、微分和が予め定める微分しきい値未満であるか否かを判定する。微分和が予め定める微分しきい値未満であると、ステップE7に進み、微分和が予め定める微分しきい値以上であると、ステップE8に進む。
【0151】
ステップE8では、制御部12は、小規模凹欠陥があると判定し、小規模凹欠陥判定処理を終了する。ステップE9では、制御部12は、小規模凹欠陥はなく、正常であると判定し、小規模凹欠陥判定処理を終了する。
【0152】
図19は、制御部12が実行する鋭角凹欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。図14に示したステップA5が実行されると、ステップF1に移る。第3の周期算出工程であるステップF1では、制御部12は、ブラダーグルーブ本数算出処理を行う。ブラダーグルーブ本数算出処理は、第3凹凸欠陥検出処理出処理の第1ステップの処理である。第3の濃度変換工程であるステップF2では、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換処理は、第3の凹凸欠陥検出処理の第2ステップの処理である。
【0153】
微分工程であるステップF3では、制御部12は、射影変換濃度微分処理を行う。射影変換濃度微分処理は、第3の凹凸欠陥検出処理の第3ステップの処理である。第3の欠陥検出工程であるステップF4では、制御部12は、鋭角凹欠陥判定処理を行う。鋭角凹欠陥判定処理は、第3の凹凸欠陥検出処理の第4ステップの処理である。
【0154】
ステップF5では、制御部12は、傾き範囲が終了したか否かを判定する。第1〜第4ステップによる鋭角凹欠陥検出処理を、回転射影変換を行って図10に示した角度K度が−5度〜5度の範囲内の角度で繰り返し実行していないとき、傾き範囲は終了していないと判定し、ステップF1に戻る。第1〜第4ステップによる鋭角凹欠陥検出処理を、回転射影変換を行って図10に示した角度K度が−5度〜5度の範囲内の角度で繰り返し実行したとき、傾き範囲が終了したと判定し、ステップF6に進む。
【0155】
ステップF6では、制御部12は、全ブロック終了したか否かを判定する。全ブロック終了していないと、ステップF1に戻り、全ブロック終了していると、鋭角凹欠陥検出処理を終了する。
【0156】
図20は、制御部12が実行する鋭角凹欠陥判定処理の処理手順を示すフローチャートである。図19に示したステップF4が実行されると、ステップG1に移る。ステップG1では、制御部12は、射影変換濃度微分処理で求めた微分値が予め定める微分しきい値範囲内であるか否かを判定する。微分値が予め定める微分しきい値範囲内であると、ステップG6に進み、微分値が予め定める微分しきい値範囲内でないと、ステップG2に進む。
【0157】
ステップG2では、制御部12は、一定範囲内の指定数以上の凹凸が有るか否かを判定する。一定範囲は、予め定める区間範囲L2であり、指定数は、予め定めるラベルしきい値であり、凹凸は、ラベル部である。したがって、ラベル部の数が予め定めるラベルしきい値以上であるとき、コード露出または刻印文字であり、一定範囲内の指定数以上の凹凸が有ると判定し、ステップG6に進む。ラベル部の数が予め定めるラベルしきい値未満であるとき、一定範囲内の指定数以上の凹凸がないと判定し、ステップG2に進む。
【0158】
ステップG3では、制御部12は、微分NG位置がブラダー間隔離れた位置にあるか否かを判定する。微分NG位置は、NG候補位置のことであり、ブラダー間隔は、ブラダーグルーブ本数算出処理で求めたピーク間隔Tの平均値の間隔である。微分NG位置がブラダー間隔離れた位置にあると、微分NG位置はブラダーグルーブであると判断して、ステップG6に進む。微分NG位置がブラダー間隔離れた位置にないと、微分NG位置はブラダーグルーブでないと判断して、ステップG2に進む。
【0159】
ステップG4では、制御部12は、放物線の高さが予め定める高さしきい値よりも高いか否かを判定する。NG候補位置での近似放物線が、予め定める判定範囲L3において、中央部が平均値に対して高く、両端部が平均値に対して低く、かつ放物線の高さが予め定める高さしきい値よりも高いとき、ステップG6に進む。NG候補位置での近似放物線の中央部が平均値に対して高くない、近似放物線の両端部のいずれかが平均値に対して低くない、または放物線の高さが予め定める高さしきい値以下のとき、ステップG2に進む。
【0160】
ステップG5では、制御部12は、鋭角凹欠陥があると判定し、鋭角凹欠陥判定処理を終了する。ステップG6では、制御部12は、鋭角凹欠陥はなく、正常であると判定し、鋭角凹欠陥判定処理を終了する。
【0161】
上述した実施形態では、制御部12が記憶部13に記憶されるプログラムを実行することによって、入力部11および出力部14を制御するとともに、上述した機能を実現するが、上述した機能を実現するためのプログラムは、記憶部13に記憶されることに限定されるものではなく、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体は、たとえば図示しない外部記憶装置としてプログラム読取装置を画像処理装置1に設け、そこに記録媒体を挿入することによって読取り可能な記録媒体であってもよいし、あるいは他の装置の記憶装置であってもよい。
【0162】
いずれの記録媒体であっても、記憶されているプログラムがコンピュータからアクセスされて実行される構成であればよい。あるいはいずれの記録媒体であっても、プログラムが読み出され、読み出されたプログラムが、記憶装置のプログラム記憶エリアに記憶されて、そのプログラムが実行される構成であってもよい。
【0163】
画像処理装置1と分離可能に構成される記録媒体は、たとえば磁気テープ/カセットテープなどのテープ系の記録媒体、フレキシブルディスク/ハードディスクなどの磁気ディスクもしくはCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)/MO(Magneto Optical disk)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disk)/CD−R(Compact
Disk Recordable)/ブルーレイディスクなどの光ディスクのディスク系の記録媒体、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)/光カードなどのカード系の記録媒体、またはマスクROM/EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)/EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)/フラッシュROMなどの半導体メモリを含む固定的にプログラムを担持する記録媒体であってもよい。
【0164】
また、画像処理装置1を通信ネットワークと接続可能に構成し、通信ネットワークを介して上記プログラムを供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、たとえば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、VAN(Value Added Network)、CATV(Community Antenna Television)通信網、仮想専用網(Virtual
Private Network)、電話回線網、移動体通信網、または衛星通信網など通信ネットワークが利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、たとえば、IEEE1394、USB(Universal Serial Bus)、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線でも、IrDA(Infrared Data Association)あるいはリモートコントロールで用いられる赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR(High
Data Rate)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網などの無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0165】
このように、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様、たとえばブラダーグルーブが形成される対象物を撮影した画像の処理を行う画像処理装置で画像を処理するにあたって、図14に示したステップA1,A2,A8では、第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する。図14に示したステップA3,A4,A9では、図14に示したステップA1,A2,A8で判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する。そして、図14に示したステップA5,A6,A10では、図14に示したステップA3,A4,A9で判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める画素数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する。
【0166】
したがって、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、第1〜第3の凹凸欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる。
【0167】
さらに、図14に示したステップA1,A2,A8は、図15に示したステップB1〜B6を含む。図15に示したステップB1では、前記線状模様、たとえばブラダーグルーブの周期を算出する。図15に示したステップB2では、各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。図15に示したステップB3では、第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、図15に示したステップB2で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する。図15に示したステップB4では、図15に示したステップB3でフーリエ展開された周波数成分から、図15に示したステップB1で算出された周波数の周波数成分を除いた残余の周波数成分を逆フーリエ展開する。図15に示したステップB5,B6では、図15に示したステップB4で逆フーリエ展開された画素に基づいて、第1の凹凸欠陥があるか否かを判定する。そして、図15に示したステップB4で逆フーリエ展開された画素について、第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分した微分値を前記第1の微分値として算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する。したがって、第1の凹凸欠陥、たとえば大規模凹凸欠陥を検出することができる。
【0168】
さらに、前記予め定める凹凸の種類は、凹から凸に変化する種類と、凸から凹に変化する種類と、凹である種類と、凸である種類とを含むので、凹凸の種類に応じてきめ細かく大規模凹凸欠陥を検出することができる。
【0169】
さらに、図14に示したステップA3,A4,A9は、図17に示したステップD1〜D5を含む。図17に示したステップD1では、前記線状模様、たとえばブラダーグルーブの周期を算出する。図17に示したステップD2では、各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。図17に示したステップD3では、第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、図17に示したステップD2で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する。図17に示したステップD4では、図17に示したステップD3でフーリエ展開された周波数成分から、図17に示したステップD1で算出された周波数で定まる上限周波数を上限とする周波数成分を逆フーリエ展開する。図17に示したステップD5では、図17に示したステップD4で逆フーリエ展開された画素に基づいて第2の凹凸欠陥があるか否かを判定する。そして、図17に示したステップD4で逆フーリエ展開された画素のうち、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める微分範囲の画素について加算した微分和に基づいて、第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する。したがって、第2の凹凸欠陥、たとえば小規模凹欠陥を検出することができる。
【0170】
さらに、前記対象物は、前記線状模様と前記線状模様とは異なる非欠陥模様とが形成され、図17に示したステップD5は、画像を構成する画素のうち最大の濃度が予め定める第2のしきい値より大きい画素からなる部分の形状を、非欠陥形状、たとえば成型切手またはジョイントであると判定するので、非欠陥形状、たとえば成型切手あるいはタイヤのジョイントを小規模凹欠陥として検出することがない。
【0171】
さらに、図14に示したステップA3,A4,A9では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させるので、小規模凹欠陥がタイヤ回転方向に垂直な方向から傾いていても小規模凹欠陥を検出することができる。
【0172】
さらに、図14に示したステップA5,A6,A10は、図19に示したステップF1〜F4を含む。図19に示したステップF1では、前記線状模様の周期を算出する。図19に示したステップF2では、各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。図19に示したステップF3では、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて第3の微分値を算出する。図19に示したステップF4では、図19に示したステップF3で算出された微分値に基づいて、第3の凹凸欠陥があるか否かを判定する。そして、第1の方向での画素の位置を変数として、図19に示したステップF3で変換された各画素の濃度を表す第3の関数を、予め定める判定範囲で最小自乗法を用いて放物線を表す第4の関数に近似し、近似した第4の関数の放物線の高さが予め定める第3のしきい値より高いとき、第3の凹凸欠陥であると判定する。したがって、第3の凹凸欠陥、たとえば鋭角凹欠陥を検出することができる。
【0173】
さらに、図14に示したステップA5,A6,A10では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させるので、鋭角凹欠陥がタイヤ回転方向に垂直な方向から傾いていても鋭角凹欠陥を検出することができる。
【0174】
さらに、前記対象物を撮影した画像を第2の方向に複数のブロックに分割し、分割したブロックごとに、第1〜第3の凹凸欠陥検出工程を処理するので、凹凸欠陥を消すこともなく、また、ノイズの影響を低減するとともに、処理時間も短縮して処理することができる。
【0175】
さらに、第1の凹凸欠陥検出手段は、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する。第2の凹凸欠陥検出手段は、第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する。そして、第3の凹凸欠陥検出手段は、第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する。
【0176】
したがって、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、第1〜第3の凹凸欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる。
【0177】
さらに、プログラムによって、コンピュータを、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出手段と、第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出手段と、第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出手段として機能させることができる。
【0178】
さらに、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体として提供することができる。
【符号の説明】
【0179】
1 画像処理装置
11 入力部
12 制御部
13 記憶部
14 出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮影した画像の処理を行う画像処理装置で実行される画像処理方法であって、
第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出工程と、
第1の凹凸欠陥検出工程で判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出工程と、
第2の凹凸欠陥検出工程で判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める画素数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出工程とを含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記第1の凹凸欠陥検出工程は、
前記線状模様の周期を算出する第1の周期算出工程と、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する第1の濃度変換工程と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、第1の濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する第1のフーリエ展開工程と、
第1のフーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分から、第1の周波数算出工程で算出された周波数の周波数成分を除いた残余の周波数成分を逆フーリエ展開する第1の逆フーリエ展開工程と、
第1の逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素に基づいて、第1の凹凸欠陥があるか否かを判定する第1の欠陥検出工程とを含み、
第1の欠陥検出工程では、逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素について、第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分した微分値を前記第1の微分値として算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記予め定める凹凸の種類は、凹から凸に変化する種類と、凸から凹に変化する種類と、凹である種類と、凸である種類とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記第2の凹凸欠陥検出工程は、
前記線状模様の周期を算出する第2の周期算出工程と、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する第2の濃度変換工程と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、第1の濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する第2のフーリエ展開工程と、
第2のフーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分から、第2の周波数算出工程で算出された周波数で定まる上限周波数を上限とする周波数成分を逆フーリエ展開する第2の逆フーリエ展開工程と、
第2の逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素に基づいて第2の凹凸欠陥があるか否かを判定する第2の欠陥検出工程とを含み、
第2の欠陥検出工程では、逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素のうち、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める微分範囲の画素について加算した微分和に基づいて、第2の凹凸欠陥であるか否かを判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記対象物は、前記線状模様と前記線状模様とは異なる非欠陥模様とが形成され、
前記第2の欠陥検出工程は、画像を構成する画素のうち最大の濃度が予め定める第2のしきい値より大きい画素からなる部分の形状を、非欠陥形状であると判定することを特徴とする請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記第2の凹凸欠陥検出工程では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させることを特徴とする請求項4または5に記載の画像処理方法。
【請求項7】
前記第3の凹凸欠陥検出工程は、
前記線状模様の周期を算出する第3の周期算出工程と、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する第3の濃度変換工程と、
各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて第3の微分値を算出する微分工程と、
微分工程で算出された微分値に基づいて、第3の凹凸欠陥があるか否かを判定する第3の欠陥検出工程とを含み、
第3の欠陥検出工程では、第1の方向での画素の位置を変数として、第3の濃度変換工程で変換された各画素の濃度を表す第3の関数を、予め定める判定範囲で最小自乗法を用いて放物線を表す第4の関数に近似し、近似した第4の関数の放物線の高さが予め定める第3のしきい値より高いとき、第3の凹凸欠陥であると判定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の画像処理方法。
【請求項8】
前記第3の凹凸欠陥検出工程では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させることを特徴とする請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記対象物を撮影した画像を第2の方向に複数のブロックに分割し、分割したブロックごとに、第1〜第3の凹凸欠陥検出工程を処理することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の画像処理方法。
【請求項10】
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出手段と、
第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出手段と、
第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出手段とを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
コンピュータを、
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出手段と、
第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出手段と、
第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出手段として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項1】
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮影した画像の処理を行う画像処理装置で実行される画像処理方法であって、
第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出工程と、
第1の凹凸欠陥検出工程で判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出工程と、
第2の凹凸欠陥検出工程で判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める画素数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出工程とを含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記第1の凹凸欠陥検出工程は、
前記線状模様の周期を算出する第1の周期算出工程と、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する第1の濃度変換工程と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、第1の濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する第1のフーリエ展開工程と、
第1のフーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分から、第1の周波数算出工程で算出された周波数の周波数成分を除いた残余の周波数成分を逆フーリエ展開する第1の逆フーリエ展開工程と、
第1の逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素に基づいて、第1の凹凸欠陥があるか否かを判定する第1の欠陥検出工程とを含み、
第1の欠陥検出工程では、逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素について、第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分した微分値を前記第1の微分値として算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記予め定める凹凸の種類は、凹から凸に変化する種類と、凸から凹に変化する種類と、凹である種類と、凸である種類とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記第2の凹凸欠陥検出工程は、
前記線状模様の周期を算出する第2の周期算出工程と、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する第2の濃度変換工程と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、第1の濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する第2のフーリエ展開工程と、
第2のフーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分から、第2の周波数算出工程で算出された周波数で定まる上限周波数を上限とする周波数成分を逆フーリエ展開する第2の逆フーリエ展開工程と、
第2の逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素に基づいて第2の凹凸欠陥があるか否かを判定する第2の欠陥検出工程とを含み、
第2の欠陥検出工程では、逆フーリエ展開工程で逆フーリエ展開された画素のうち、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める微分範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める微分範囲の画素について加算した微分和に基づいて、第2の凹凸欠陥であるか否かを判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記対象物は、前記線状模様と前記線状模様とは異なる非欠陥模様とが形成され、
前記第2の欠陥検出工程は、画像を構成する画素のうち最大の濃度が予め定める第2のしきい値より大きい画素からなる部分の形状を、非欠陥形状であると判定することを特徴とする請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記第2の凹凸欠陥検出工程では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させることを特徴とする請求項4または5に記載の画像処理方法。
【請求項7】
前記第3の凹凸欠陥検出工程は、
前記線状模様の周期を算出する第3の周期算出工程と、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する第3の濃度変換工程と、
各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて第3の微分値を算出する微分工程と、
微分工程で算出された微分値に基づいて、第3の凹凸欠陥があるか否かを判定する第3の欠陥検出工程とを含み、
第3の欠陥検出工程では、第1の方向での画素の位置を変数として、第3の濃度変換工程で変換された各画素の濃度を表す第3の関数を、予め定める判定範囲で最小自乗法を用いて放物線を表す第4の関数に近似し、近似した第4の関数の放物線の高さが予め定める第3のしきい値より高いとき、第3の凹凸欠陥であると判定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の画像処理方法。
【請求項8】
前記第3の凹凸欠陥検出工程では、前記第1の方向をタイヤ回転方向に対して、予め定める角度範囲で予め定める角度ずつ変化させることを特徴とする請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記対象物を撮影した画像を第2の方向に複数のブロックに分割し、分割したブロックごとに、第1〜第3の凹凸欠陥検出工程を処理することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の画像処理方法。
【請求項10】
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出手段と、
第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出手段と、
第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出手段とを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
コンピュータを、
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと第1の方向に配列される複数の画素から構成される画像の第1の方向での画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第1の関数を微分して画素ごとの微分値である第1の微分値を算出し、算出した各画素の第1の微分値に基づいて、欠陥の候補である欠陥候補を抽出し、抽出した欠陥候補が予め定める第1の凹凸欠陥であるか否かを凹凸の種類ごとに予め定める第1のしきい値に基づいて判定する第1の凹凸欠陥検出手段と、
第1の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第1の凹凸欠陥でないと判定されたとき、画像を構成する画素のうち最小の濃度の画素の位置を中心とする第1の方向での予め定める範囲について、画素の位置を変数として各画素の濃度を表す第2の関数を微分して画素ごとの微分値である第2の微分値を算出し、算出した各画素の第2の微分値を前記予め定める範囲の画素について加算した微分和に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥とは異なる予め定める第2の凹凸欠陥であるか否かを判定する第2の凹凸欠陥検出手段と、
第2の凹凸欠陥検出手段によって判定された判定結果が第2の凹凸欠陥でないと判定されたとき、各画素を中心とする第1の方向での予め定める数の隣接する画素の濃度に基づいて算出される第3の微分値に基づいて、予め定める第1の凹凸欠陥および予め定める第2の凹凸欠陥とは異なる予め定める第3の凹凸欠陥であるか否かを判定する第3の凹凸欠陥検出手段として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図4】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図4】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−137656(P2011−137656A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296226(P2009−296226)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]