説明

画像処理装置、ルックアップテーブルの生成方法、印刷装置、画像処理方法および画像処理プログラム

【課題】画像データの画像処理に関する技術を提供する。
【解決手段】画像データに対して処理を行う画像処理装置であって、カラー発色領域の色を所定の印刷媒体上で再現するために用意された一つのメディアプロファイルを用いて、カラー発色領域および特殊光沢領域に対応する各々の画像データの色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換し、カラー発色領域の色を印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意されたカラー用ルックアップテーブルを用いて、調整カラー発色領域色成分値を、各インクのインク量の組み合わせであるインク量セットに変換し、特殊光沢領域の少なくとも色相を印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意された特殊光沢用ルックアップテーブルを用いて、調整特殊光沢領域色成分値をインク量セットに変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関し、詳しくは、カラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを備える印刷装置に、画像処理された印刷用の画像データを出力する画像処理装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷技術として、例えば、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)などのカラーインクと、特殊光沢色(例えば、金属光沢やパールホワイト)のインクとを用いて印刷を行う技術が知られている(例えば、特許文献1)。このような印刷を行う場合、カラーインクのみで表現される領域(以下、カラー発色領域とも呼ぶ)と、カラーインクに加え特殊光沢色を用いて表現されている領域(以下、特殊光沢領域とも呼ぶ)とでは、同じ色彩値を表す場合でも、各領域で用いるカラーインクのインク量は異なる。よって、印刷処理の1つとして行う色変換処理において用いるルックアップテーブル(以下、LUTとも呼ぶ)は、印刷対象画像のうちカラー発色領域の各色成分の階調値(以下、色成分値とも呼ぶ)を印刷装置の備えるインク量セットに変換するために用いるLUT(以下、C-LUTとも呼ぶ)と、特殊色領域の色成分値をインク量セットに変換するために用いるLUT(以下、S-LUT)との2つを用意する。
【0003】
ところで、印刷を行う場合、所定の印刷媒体上で、印刷対象画像の本来の色を再現するため、画像データに対してメディアプロファイルを用いて各色成分値を増減する変換を行う。上述した特殊光沢色のインクを用いて印刷を行う場合には、C−LUTとS−LUTの各々に対して、それぞれ各LUTの特性に合わせたメディアプロファイルを用意する必要があった。そのため、色変換処理を行う場合、2つのメディアプロファイルを記憶するために記憶領域を大幅に確保しなければならないと言う課題が指摘されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−52225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の問題を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、特殊光沢色を用いた印刷を行う際に用いるメディアプロファイルのために確保する記憶容量を少なくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
カラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に、画像処理された印刷用の画像データを出力する画像処理装置であって、基本色の組み合わせで表現されるカラー発色領域と、特殊光沢を用いて表現される特殊光沢領域とを含む印刷対象画像を表す画像データを入力する入力部と、前記カラー発色領域の色を所定の印刷媒体上で再現するために用意された一つのメディアプロファイルを用いて、前記カラー発色領域および前記特殊光沢領域に対応する各々の前記画像データの色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換するメディアプロファイル変換モジュールと、前記カラー発色領域の色を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意されたカラー用ルックアップテーブルを用いて、調整カラー発色領域色成分値を、前記各インクのインク量の組み合わせであるインク量セットに変換するカラー発色領域色変換モジュールと、前記特殊光沢領域の少なくとも色相を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意された特殊光沢用ルックアップテーブルを用いて、調整特殊光沢領域色成分値を前記インク量セットに変換する特殊光沢領域色変換モジュールと、を備える画像処理装置。
【0008】
この画像処理装置によると、カラー発色領域および特殊光沢領域に対応する各色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換する際に、1つのメディアプロファイルによって行うので、メディアプロファイルを読み込むために確保する記憶容量を少なくすることができる。さらに、印刷対象画像の特殊光沢領域の少なくとも色相を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現することができる。また、特殊光沢とは、金属光沢やパールホワイトなどの特殊な光沢の質感を意味し、特殊光沢インクとは、特殊光沢を印刷後の印刷画像において表現するために用いるインクである。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載の画像処理装置であって、前記特殊光沢領域色変換モジュールが所定の色成分値を変換した後の前記インク量セットによって表される色の色相が、前記カラー発色領域色変換モジュールが前記所定の色成分値を変換した後の前記インク量セットによって表される色の色相に近づくように、前記特殊光沢用ルックアップテーブルの各格子点に記録されるインク量セットが調整されている画像処理装置。
【0010】
この画像処理装置によると、印刷対象画像における所定の色を、カラー発色領域として印刷して再現した場合と、特殊光沢領域として印刷して再現した場合とで、色相を略等しくすることができる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または適用例2記載の画像処理装置であって、前記特殊光沢領域は、金属光沢を有するメタリック領域であり、前記特殊光沢インクは、金属光沢を有するメタリックインクである画像処理装置。
【0012】
この画像処理装置によると、カラー発色領域とメタリック領域とを含む印刷対象画像を表す画像データに対応している。
【0013】
[適用例4]
カラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて表現可能な特殊光沢画像において、該特殊光沢画像の色成分値を、前記各インクのインク量の組み合わせであるインク量セットに変換する特殊光沢用ルックアップテーブルの生成方法であって、前記カラーインクのみで表現可能なカラー画像を表す色成分値を、前記インク量セットに変換するカラー用ルックアップテーブルを用いて、所定の色成分値を第1のインク量セットに変換する工程と、同じ格子点位置に記録されている前記インク量セットにおいて前記カラーインクの総インク量が前記カラー用ルックアップテーブルよりも少ない調整用ルックアップテーブルを用いて、前記所定の色成分値を第2のインク量セットに変換する工程と、前記第1のインク量セットと前記第2のインク量セットとに基づいて、前記第2のインク量セットによって表される色の色相を、前記第1のインク量セットによって表される色の色相に近づけるように前記第2のインク量セットの各インク色のインク量を調整し、新たな第2のインク量セットを取得する工程と、前記取得した新たな第2のインク量セットによって前記調整用ルックアップテーブルを更新して前記特殊光沢用ルックアップテーブルとする工程とを備える特殊光沢用ルックアップテーブルの生成方法。
【0014】
この生成方法によって生成した特殊光沢用ルックアップテーブルと、カラー用ルックアップテーブルとは、同一の格子点位置に格納されているインク量セットによって表される色の色相を略均等にすることができる。
【0015】
[適用例5]
適用例4記載の特殊光沢用ルックアップテーブルの生成方法であって、前記新たな第2のインク量セットを取得する工程は、前記第1のインク量セットに基づいて、前記第1のインク量セットによって表される色の、明度の値L1、彩度の値C1、および色相角の値h1を算出する工程と、前記第2のインク量セットに基づいて、前記第2のインク量セットによって表される色の、明度の値L2、彩度の値C2、および色相角の値h2を算出する工程と、前記新たな第2のインク量セットによって表される色の、明度の値をLx、彩度の値をCx、色相角の値をhx、および所定の重み付け係数をw1,w2,w3としたときに、

(w1≦w3,w2≦w3)
の値が0に近づくように、前記新たな第2のインク量セットを最適化する工程とを備える特殊光沢用ルックアップテーブルの生成方法。
【0016】
この特殊光沢用ルックアップテーブルの生成方法によると、各インク量セットをL*C*h(明度、彩度、色相角)の表色系として評価して最適化を行っているので、特殊光沢用ルックアップテーブルと、カラー用ルックアップテーブルとにおける、同一の格子点位置に格納されているインク量セットによって表される色の色相を、精度良く、略均等にすることができる。
【0017】
[適用例6]
カラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置であって、基本色の組み合わせで表現されるカラー発色領域と、特殊光沢を用いて表現される特殊光沢領域とを含む印刷対象画像を表す画像データを入力する入力部と、前記カラー発色領域の色を所定の印刷媒体上で再現するために用意された一つのメディアプロファイルを用いて、前記カラー発色領域および前記特殊光沢領域に対応する各々の前記画像データの色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換するメディアプロファイル変換モジュールと、前記カラー発色領域の色を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意されたカラー用ルックアップテーブルを用いて、調整カラー発色領域色成分値を、前記各インクのインク量の組み合わせであるインク量セットに変換するカラー発色領域色変換モジュールと、前記特殊光沢領域の少なくとも色相を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意された特殊光沢用ルックアップテーブルを用いて、調整特殊光沢領域色成分値を前記インク量セットに変換する特殊光沢領域色変換モジュールと、前記カラー発色領域色変換モジュールと前記特殊光沢領域色変換モジュールとによって変換した前記各インク量セットに基づいて印刷を行う印刷部とを備える印刷装置。
【0018】
この印刷装置によると、カラー発色領域および特殊光沢領域に対応する各色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換する際に、1つのメディアプロファイルによって行うので、メディアプロファイルを読み込むために必要な記憶容量を少なくすることができる。また、印刷対象画像の特殊光沢領域の少なくとも色相を印刷装置が備えるインクのインク色で再現することができる。
【0019】
[適用例7]
カラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に出力する印刷用の画像データの画像処理方法であって、基本色の組み合わせで表現されるカラー発色領域と、特殊光沢を用いて表現される特殊光沢領域とを含む印刷対象画像を表す画像データを入力し、前記カラー発色領域の色を所定の印刷媒体上で再現するために用意された一つのメディアプロファイルを用いて、前記カラー発色領域および前記特殊光沢領域に対応する各々の前記画像データの色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換し、前記カラー発色領域の色を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意されたカラー用ルックアップテーブルを用いて、調整カラー発色領域色成分値を、前記各インクのインク量の組み合わせであるインク量セットに変換し、前記特殊光沢領域の少なくとも色相を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意された特殊光沢用ルックアップテーブルを用いて、調整特殊光沢領域色成分値を前記インク量セットに変換する画像処理方法。
【0020】
この画像処理方法によると、カラー発色領域および特殊光沢領域に対応する各色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換する際に、1つのメディアプロファイルによって行うので、メディアプロファイルを読み込むために必要な記憶容量を少なくすることができる。また、印刷対象画像の特殊光沢領域の少なくとも色相を印刷装置が備えるインクのインク色で再現することができる。
【0021】
[適用例8]
カラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に出力する印刷用の画像データを処理するための画像処理プログラムであって、基本色の組み合わせで表現されるカラー発色領域と、特殊光沢を用いて表現される特殊光沢領域とを含む印刷対象画像を表す画像データを入力する機能と、前記カラー発色領域の色を所定の印刷媒体上で再現するために用意された一つのメディアプロファイルを用いて、前記カラー発色領域および前記特殊光沢領域に対応する各々の前記画像データの色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換する機能と、前記カラー発色領域の色を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意されたカラー用ルックアップテーブルを用いて、調整カラー発色領域色成分値を、前記各インクのインク量の組み合わせであるインク量セットに変換する機能と、前記特殊光沢領域の少なくとも色相を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意された特殊光沢用ルックアップテーブルを用いて、調整特殊光沢領域色成分値を前記インク量セットに変換する機能をコンピューターに実現させる画像処理プログラム。
【0022】
この画像処理プログラムによると、カラー発色領域および特殊光沢領域に対応する各色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換する際に、1つのメディアプロファイルによって行うことをコンピューターに実現させるので、コンピューターは、メディアプロファイルを読み込むために必要な記憶容量を少なくすることができる。
【0023】
[適用例9]
印刷装置によってカラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷をするための画像データを、一つのメディアプロファイルによる処理を介して受け取り、画像処理を行う画像処理装置であって、前記印刷を行うための印刷対象画像は、基本色の組み合わせで表現されるカラー発色領域と、特殊光沢を用いて表現される特殊光沢領域とを含み、前記一つのメディアプロファイルは、前記カラー発色領域の色を所定の印刷媒体上で再現するために用意されており、前記カラー発色領域および前記特殊光沢領域に対応する各々の前記画像データの色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換し当該画像処理装置に出力し、前記カラー発色領域の色を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意されたカラー用ルックアップテーブルを用いて、調整カラー発色領域色成分値を、前記各インクのインク量の組み合わせであるインク量セットに変換するカラー発色領域色変換モジュールと、前記特殊光沢領域の少なくとも色相を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意された特殊光沢用ルックアップテーブルを用いて、調整特殊光沢領域色成分値を前記インク量セットに変換する特殊光沢領域色変換モジュールとを備える画像処理装置。
【0024】
この画像処理装置によると、1のメディアプロファイルで処理された調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値を適切に処理し、特殊光沢領域については、その色相を、印刷装置が備えるインクのインク色で再現できるように調整特殊光沢領域色成分値をインク量セットに変換することができる。
【0025】
[適用例10]
カラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に出力する印刷用の画像データを処理する画像処理装置であって、基本色の組み合わせで表現されるカラー発色領域と、特殊光沢を用いて表現される特殊光沢領域とを含む前記印刷対象画像を表す画像データを入力する入力部と、前記カラー発色領域の色が所定の印刷媒体上で再現されるように、前記画像データの色成分値を、調整した色成分値に変換するための一つのメディアプロファイルと、前記カラー発色領域の色が前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現されるように、前記調整した色成分値を前記インクのインク量に変換するためのカラー用ルックアップテーブルと、前記特殊光沢領域の少なくとも色相が前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現されるように、前記調整した色成分値を前記インクのインク量に変換するための特殊光沢用ルックアップテーブルとを備える画像処理装置。
【0026】
この画像処理装置によると、カラー発色領域および特殊光沢領域に対応する各色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換する際に、1つのメディアプロファイルによって行うので、メディアプロファイルのために確保する記憶容量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】印刷システム10の概略構成について説明した説明図である。
【図2】プリンター200の構成図である。
【図3】印刷処理の流れについて説明したフローチャートである。
【図4】Mt−LUT52の生成方法を説明する説明図である。
【図5】C−LUTおよび調整用Mt-LUTの特性を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
A.第1実施例:
(A1)システム構成:
図1は、本発明の第1実施例としての印刷システム10の概略構成について説明した説明図である。印刷システム10は、印刷制御装置としてのコンピューター100と、コンピューター100の制御の下で実際に画像を印刷するプリンター200とで構成されている。印刷システム10は、全体が一体となって広義の印刷装置として機能する。
【0029】
コンピューター100には、CPU20と、ROM60と、RAM62と、ハードディスク(HDD)64とを備える。また、コンピューター100は、ディスプレイ70、キーボード72、マウス74と、各ケーブルにより接続されている。コンピューター100には、所定のオペレーティングシステムがインストールされており、このオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム30、ビデオドライバー40、プリンタードライバー50が動作している。これらのプログラムの機能は、ROM60、又はRAM62、HDD64に記憶されており、CPU20が、各プログラムをこれらの記憶領域から読み出して実行することにより実現される。
【0030】
アプリケーションプログラム30は、ユーザーが画像を生成するためのプログラムである。アプリケーションプログラム30によって生成された画像(以下、印刷対象画像とも呼ぶ)の画像データを画像データORGとも呼ぶ。画像データORGは基本色の組み合わせで表現される領域(以下、カラー発色領域とも呼ぶ)と、金属光沢を用いて表現される領域(以下、メタリック領域とも呼ぶ)とを有している。ユーザーは生成する画像の任意の領域をメタリック領域として指定することができる。
【0031】
ユーザーがアプリケーションプログラム30によって印刷対象画像を生成した際には、画像データORGの各画素のデータ(以下、画素データとも呼ぶ)における色成分値は、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の表色系で記録されている。以下、ユーザーが生成した直後の画像データORGを画像データORG(0)とも呼ぶ。また、画像データORG(0)の各画素データには、当該画素がカラー発色領域に属する画素であるか、メタリック領域に属する画素であるかを示すチャネル(以下、αチャネルとも呼ぶ)が設けられている。
【0032】
アプリケーションプログラム30は、画像データORG(0)の各画素の色成分値を、ユーザーが選択した印刷標準色(例えば、ジャパンカラー)に変換するためのソースプロファイル31と、印刷対象の画像の色を印刷媒体上で再現するためのメディアプロファイル32とを、HDD64からRAM62に読み込んで備える。本実施例では、印刷標準色はユーザーが設定するが、アプリケーションプログラム30が予め設定しているとしてもよい。また、印刷標準色として、SWOP(米国における印刷標準色)や、Euro Standard Color(ヨーロッパにおける印刷標準色)を選択可能としてもよい。ソースプロファイル31は、1組の(R,G,B)の色成分値(以下、RGB値とも呼ぶ)に対して、1組の(L*,a*,b*)の値(以下、L*a*b*値とも呼ぶ)を出力する3次元ルックアップテーブルであり、RGBの表色系で表現された画像データORG(0)を、デバイスに依存しないL*a*b*の表色系の画像データORG(1)に変換しつつ、画像データORG(1)に基づいて印刷をした際に、生成された印刷画像が、予め設定された印刷標準色の色で表現されるように各L*、a*、b*の各値を決定する。
【0033】
メディアプロファイル32は、1組のL*a*b*値に対して1組のRGB値を出力する3次元ルックアップテーブルであり、L*a*b*の表色系で表現された画像データORG(1)を、RGBの表色系で表現される画像データORG(2)に変換しつつ、ユーザーが選択した印刷媒体上(例えば白色の普通紙)で、印刷画像の色が再現されるように各R、G、Bの各値を決定する。
【0034】
プリンタードライバー50は、カラー発色領域の各画素データを、プリンター200が備えるインク色のインク量の組み合わせ(以下、インク量セットとも呼ぶ)に変換(以下、色変換とも呼ぶ)するためのLUT51(以下、C−LUT51とも呼ぶ)と、メタリック領域の各画素データを、プリンター200が備えるインク色のインク量セットに変換するためのLUT52(以下、Mt−LUT52とも呼ぶ)とを備える。これらのLUTは、CPU20がプリンタードライバー50のプログラムを起動した際に、HDD64からRAM62に読み込んで色変換に用いる。
【0035】
ここで、メディアプロファイル32と、C−LUT51およびMt−LUT52の関係について説明する。メディアプロファイル32は、C−LUT51と共に用いられることを前提に生成されたプロファイルである。すなわち、カラー発色領域に属する画素の色成分値を、当該メディアプロファイル32とC−LUT51とを介してインク量セットに変換して印刷を行うと、ユーザーが指定した印刷媒体上で、印刷対象画像の色が再現されるように、メディアプロファイル32に入力されるL*a*b*値と出力されるRGB値は対応付けて調整されている。さらに本実施例においては、メタリック領域に属する画素の色成分値も、メディアプロファイル32を利用して変換し、その後に、Mt−LUT52を介してインク量セットに色変換される。よって、Mt−LUT52は、メディアプロファイル32を利用して出力されたメタリック領域に属する画素の色成分値を、適切なインク量セットに変換できるように調整されて生成されている。Mt−LUT52の生成方法については、後で詳しく説明する。
【0036】
プリンタードライバー50は、さらに、色変換後のインク量セットに対して2値化処理を行いドットデータの生成処理(以下、ハーフトーン処理とも呼ぶ)を行うハーフトーンモジュール53と、生成したドットデータをプリンター200が印刷を実行する順に並べ替える処理を行うインターレースモジュール54を備える。
【0037】
ハーフトーンモジュール53は、プリンタードライバー50が予め用意しているディザマトリックス(図示省略)を用い、色変換されインク量セットで表現されている画像データORG(3)を、ドットの分布によって表すハーフトーン処理を行い、ドットデータを生成する。インターレースモジュール54は、生成されたドットデータのドットの並びを、プリンター200に転送すべき順序に並べ替えて、印刷データとしてプリンター200に出力すると共に、印刷開始コマンドや印刷終了コマンドなどの種々のコマンドをプリンター200に出力することで、プリンター200の制御を行う。
【0038】
図2は、プリンター200の構成図である。図2に示すように、プリンター200は、紙送りモーター235によって印刷媒体Pを搬送する機構と、キャリッジモーター230によってキャリッジ240をプラテン236の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ240に搭載された印刷ヘッド260を駆動してインクの吐出及びドット形成を行う機構と、これらの紙送りモーター235,キャリッジモーター230,印刷ヘッド260及び操作パネル225との信号のやり取りを司る制御回路220とから構成されている。
【0039】
キャリッジ240をプラテン236の軸方向に往復動させる機構は、プラテン236の軸と並行に架設され、キャリッジ240を摺動可能に保持する摺動軸233と、キャリッジモーター230との間に無端の駆動ベルト231を張設するプーリー232等から構成されている。
【0040】
キャリッジ240には、C(シアン)・M(マゼンダ)・Y(イエロー)・K(ブラック)・Lc(ライトシアン)・Lm(ライトマゼンダ)の各カラーインクに加え、金属光沢を有するメタリックインク(以下、Mtとも呼ぶ)からなる、合計7色のインクがそれぞれ収容されたインクカートリッジ241〜247が搭載されている。キャリッジ240の下部の印刷ヘッド260には、上述の各色のインクに対応する5種類のノズル列261〜267が形成されている。各ノズルにはピエゾ素子が備えられており、制御回路220がピエゾ素子の収縮運動を制御することによって、プリンター200は各インク色に対してドットを形成することが可能である。
【0041】
キャリッジ240にインクカートリッジ241〜247を上方から装着すると、各カートリッジから各ノズル列261〜267へのインクの供給が可能となる。本実施例では、インクカートリッジ241〜247は、図2に示すように、キャリッジ240の主走査方向にC,M,Y,K,Lc,Lm,Mtの順に配列されている。
【0042】
また、カラーインク(C,M,Y,K,Lc,Lm)に加え、メタリックインク(Mt)を併用して印刷(以下、Mt印刷とも呼ぶ)を行う場合には、図に示すように、カラーインクを吐出する各ノズル列261〜266の副走査方向の後半部分と、メタリックインクを吐出するノズル列267の副走査方向の前半部分とを用いて印刷を行う。このように各ノズル列を用いて、印刷媒体Pに対して、先にメタリックインク(Mt)のドットを形成し、その上にカラーインクのドットを形成することによって、種々の色合いの金属光沢を印刷画像で表現することが可能である。
【0043】
プリンター200の制御回路220は、CPUや、ROM、RAM、PIF(周辺機器インターフェース)等がバスで相互に接続されて構成されており、キャリッジモーター230及び紙送りモーター235の動作を制御することによってキャリッジ240の主走査動作及び副走査動作の制御を行う。また、PIFを介してコンピューター100から出力された印刷データを受け取ると、制御回路220が、キャリッジ240の主走査あるいは副走査の動きに合わせて、印刷データに応じた駆動信号を印刷ヘッド260に供給し、各色のヘッドを駆動することが可能となっている。コンピューター100が出力する印刷データは、色に関するデータとして、7色(C,M,Y,K,Lc,Lm,Mt)のインク色に関するデータを含んでおり、プリンター200は、この5色のインク色に関するデータを含む印刷データを受け取る。
【0044】
以上のようなハードウェア構成を有するプリンター200は、キャリッジモーター230を駆動することによって、印刷ヘッド260(各色のノズル列261〜267)を印刷媒体Pに対して主走査方向に往復動させ、また紙送りモーター235を駆動することによって、印刷媒体Pを副走査方向に移動させる。制御回路220は、キャリッジ240が往復動する動き(主走査)や、印刷媒体の紙送りの動き(副走査)に合わせて、印刷データに基づいて適切なタイミングでノズルを駆動することにより、印刷媒体P上の適切な位置に適切な色のインクドットを形成する。こうすることによって、プリンター200は印刷媒体P上に画像を印刷することが可能となっている。なお、上述の構成では、各色のインクは、プリンター200に搭載される脱着可能なカートリッジに収容されているが、プリンター200とは分離して構成されたインク収容タンクなどに収容し、当該収容タンクとプリンター200とを接続してもよい。あるいは、脱着不可能にプリンター200と一体的に構成された収容容器に収容されていてもよい。
【0045】
(A2)印刷処理:
図3は、印刷システム10においてCPU102が行う印刷処理の流れについて説明したフローチャートである。印刷処理について、図1および図3を用いて説明する。印刷処理は、ユーザーがアプリケーションプログラム30上で、印刷を指示することによって開始される。
【0046】
印刷処理が開始されると、CPU102は、アプリケーションプログラム30として、ソースプロファイル31を用いて、RGBの表色系で表現されている画像データORG(0)を、L*a*b*の表色系で表現される画像データORG(1)に変換する(図3:ステップS102)。具体的には、画像データORG(1)に基づいて画像を印刷することにより得られる印刷画像の色が、ユーザーが設定した印刷標準色で表現されるように調整されたL*a*b*値に変換する。
【0047】
ソースプロファイル31による変換後、CPU102は、メディアプロファイル32を用いて、L*a*b*の表色系で表現される画像データORG(1)を、RGBの表色系で表現される画像データORG(2)に変換する(ステップS104)。具体的には、画像データORG(2)の画像の色が、ユーザーが選択した印刷媒体上で再現されるように調整されたRGBの色成分値に変換する。
【0048】
CPU102は、メディアプロファイル32によってRGBの表色系で表現される画像データORG(2)に変換後、プリンタードライバー50の機能として画像データORG(2)を取得し(ステップS106)、各画素データのαチャネルに基づいて、処理の対象である画素(以下、注目画素とも呼ぶ)がカラー発色領域に属する画素であるか、メタリック領域に属する画素であるかを判断する(ステップS110)。注目画素がカラー発色領域の画素である場合は、CPU102は、C―LUT51によって、画素データのRGBの色成分値を、プリンター200が備えるC,M,Y,K,Lc,Lmのインク量セットに色変換する(ステップS112)。一方、ステップS110において、注目画素nがメタリック領域である場合には、CPU102は、Mt−LUT52によって、画素データのRGBの各階調値を、プリンター200が備えるC,M,Y,Kの各インクに加え、メタリックインク(Mt)を含めたインク量セットに色変換する(ステップS114)。なお、画像データORG(2)における、カラー発色領域に属する画素の画素データの色成分値が特許請求の範囲に記載の調整カラー発色領域色成分値に対応し、メタリック領域に属する画素の画素データの色成分値が特許請求の範囲に記載の調整特殊光沢領域色成分値に対応する。また、C−LUT51が特許請求の範囲に記載のカラー用ルックアップテーブルに対応し、Mt−LUT52が特許請求の範囲に記載の特殊光沢用ルックアップテーブルに対応する。
【0049】
このようにして画像データORG(2)を、プリンター200が備えるインクのインク量セットのデータ(以下、インク量データまたは画像データORG(3)とも呼ぶ)に変換後、インク量データに対してハーフトーン処理(ステップS116)、およびインターレース処理(ステップS118)を行い、プリンター200において印刷を実行させる(ステップS120)。このようにして、印刷システム10は印刷処理を行う。
【0050】
(A3)Mt−LUT52の生成方法:
次に、Mt−LUT52の生成方法およびその特性について説明する。図4は、Mt−LUT52の生成方法を説明する説明図である。Mt−LUT52は、RGBの色成分値をCMYKMtのインク量セットに変換する既存のルックアップテーブル(調整用Mt−LUT55とも呼ぶ)を最適化することで生成する。最適化を行うに際し、予め、調整用Mt−LUT55と、プリンタードライバー50に組み込むC−LUT51とを用意する。
【0051】
ここで、C−LUT51および調整用Mt−LUT55の特性について説明する。図5(A)は、C−LUT51の特性について、シアン(C)およびライトシアン(Lc)のインク量を例に説明する説明図である。図5(A)に示すように、C−LUT51は、RGBの色成分値に対して、濃色系インク(図5(A)ではシアン(C))と淡色系インク(図5(A)ではライトシアン(Lc))とを併用してインク量セットを定める。このため、画像データORG(2)のカラー発色領域に属する画素データ(RGB)が入力された場合、C−LUT51との照合により、濃色系インク(CMYK)に淡色系インク(LcLm)を加えたインク量セットに変換される。
【0052】
図5(B)は、調整用Mt−LUT55の特性について説明する説明図である。調整用Mt−LUT55は、図5(B)に示すように、RGBの階調値に対して、濃色系インク(CMYK)についてのみインク量セットを定めると共に、図5(C)に示すように、調整用Mt−LUT55における各格子点において、メタリックインク(Mt)のインク量を一律(例えば、90)に定めている。このため、仮に、画像データORG(2)のカラー発色領域に属する画素データ(RGB)が入力された場合、調整用Mt−LUT55との照合により、濃色系インク(CMYK)のインク量に変換されると共に、メタリックインク(Mt)については、同一のインク量に変換される。
【0053】
また、C−LUT51と調整用Mt−LUT55とは、RGB形式における色成分値が同じであった場合、各LUTによって変換後のカラーインクのインク量の合計量は、調整用Mt−LUT55の方が少なくなるように定められている。これは、メタリック領域はカラー発色領域と比較して、少ないカラーインクのインク量でカラー発色を達成できると言う知見によるものである(特開2010−52225号公報参照)。
【0054】
説明をMt−LUT52の生成方法(図4)に戻す。上記説明したC−LUT51と調整用Mt−LUT55を用意した後、両LUTに、所定のRGB形式の色成分値(R1,G1,B1)を入力し、インク量セットに変換する。C−LUT51からは、CMYKLcLmのカラーインクのインク量セット(以下、カラー発色領域用インク量セットIc[CMYKLcLm]とも呼ぶ)が出力される。調整用Mt−LUT55からは、CMYKのカラーインクのインク量に加え、メタリックインク(Mt)のインク量を含むインク量セット(以下、メタリック領域用インク量セットIm[CMYKMt]とも呼ぶ)が出力される。
【0055】
このようにして同じRGBの色成分値を、各LUTによってインク量セットに変換後、メタリック領域用インク量セットIm[CMYKMt]の各インク色C,M,Y,K,Mtのうち、C,M,Y,Kの各インク量を調整することにより、調整後のメタリック領域用インク量セットIm[CMYKMt]によって印刷を行った場合の印刷画像の色相が、カラー発色領域用インク量セットIc[CMYKLcLm]によって印刷を行った場合の印刷画像の色相に近づくように調整する。以下、その調整方法を以下に具体的に説明する。
【0056】
まず、C−LUT51によって出力されたカラー発色領域用インク量Icセット[CMYKLcLm]で印刷を行った場合の分光反射率を、カラー発色領域用の色予測モデルMDcを用いて予測し、予測分光反射率を取得する(図4参照)。色予測モデルMDcは、プリンター200で使用される任意のカラーインクのインク量セット(Cx,Mx,Yx,Kx,Lcx,Lmx)で印刷を行った場合の分光反射率R(λc)を、予測分光反射率Rs(λc)として予測する予測モデルである。色予測モデルMDcは、インク量空間における複数の代表点について実際にカラーパッチを印刷し、その分光反射率R(λc)を分光反射計によって測定することにより得られた分光反射率データベースを用い、セル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデル(Cellular Yule-Nielsen Spectral Neugebauer Model)による予測を行うことにより、任意のインク量セット(Cx,Mx,Yx,Kx,Lcx,Lmx)で印刷を行った場合の予測分光反射率Rs(λc)を正確に取得する。
【0057】
カラー発色領域用インク量セットIc[CMYKLcLm]に基づいて予測分光反射率Rs(λc)を取得後、取得した予測分光反射率Rs(λc)に対応するL*(明度)、C*(彩度)、h(色相角)の各値を取得する。具体的には、予測分光反射率Rs(λc)に基づいて、3刺激値X,Y,Zを算出し、算出した3刺激値X,Y,Zを所定の変換式によって変換することにより、色彩値としてのL*a*b*値を得ることができる。そして、取得したL*a*b*値に対して表色系の変換を行い、L*C*h値(L1,C1,h1)を取得する。
【0058】
一方、色成分値(R1,G1,B1)からC−LUT51を経てL*C*h値を取得した方法と同様の方法により、階調値(R1,G1,B1)から調整用Mt−LUT55を用いて変換したメタリック領域用インク量セットIm[CMYKMt]でメタリック領域用の色予測モデルMDmを用いて予測し、予測分光反射率を取得する。色予測モデルMDmは、プリンター200で使用される任意のカラーインクおよびメタリックインクのインク量セット(Cx,Mx,Yx,Kx,Mtx)で印刷を行った場合の分光反射率R(λm)を、予測分光反射率Rs(λm)として予測する予測モデルである。色予測モデルMDmも、色予測モデルMDcと同様の方法によって生成されたモデルであり、任意のインク量セット(Cx,Mx,Yx,Kx、Mtx)で印刷を行った場合の予測分光反射率Rs(λm)を得る。その後、上記L*C*h値(L1,C1,h1)を取得した方法と同様の方法によって、予測分光反射率Rs(λm)に基づいてL*C*h値(L2,C2,h2)を取得する。
【0059】
このようにしてL*C*h値(L1,C1,h1)と、L*C*h値(L2,C2,h2)とを得ると、カラー発色領域用インク量セットIc[CMYKLcLm]によって印刷を行った場合の色相に近づくように調整されたメタリック領域用インク量セットを調整後メタリック領域用インク量セットImx[CMYKMt]と定義し、さらにこのインク量セットに対応するL*C*h値を(Lx,Cx,hx)と定義する。そして、下記式(1)におけるτの値を0(ゼロ)に近づけるL*C*h値(Lx,Cx,hx)に対する、調整後メタリック領域用インク量セットImx[CMYKMt]を算出する。
【0060】
【数1】

(w1≦w3,w2≦w3)
【0061】
式(1)におけるw1,w2,w3は重み付け係数である。本実施例においては、w1=0.5、w2=0.5、w3=1.0として算出する。すなわち、(Lx,Cx,hx)の特に色相(hx)の値をh1に近づけることに重視して調整後メタリック領域用インク量セットImx[CMYKMt]を算出することを意味する。もとより、w1,w2,w3の各値は、w1≦w3,w2≦w3の制限内で他の値を採用してもよい。具体的な算出方法としては、メタリック領域用インク量セットIm[CMYKMt]のC、M,Y,Kの各インク量を少しずつ増減させたインク量セットを、調整後メタリック領域用インク量セットImx[CMYKMt]とし、調整後メタリック領域用インク量セットImx[CMYKMt]に基づいて、色予測モデルMDmおよび表色系の変換(L*a*b*→L*C*h)を行って、L*C*h値(Lx,Cx,hx)の具体的な値を算出する。そして、算出したL*C*h値(Lx,Cx,hx)の値を式(1)に代入し、τの値を算出する。この工程を、種々にC,M,Y,Kのインク量を変化させた調整後メタリック領域用インク量セットImx[CMYKMt]の組み合わせにおいて複数回行い、もっともτの値が小さいときの調整後メタリック領域用インク量セットImx[CMYKMt]を、色成分値(R1,G1,B1)の格子点に格納するインク量セットとして調整用Mt−LUT55を更新する。
【0062】
色成分値(R1,G1,B1)について行った一連の工程を、調整用Mt−LUT55の全ての格子点に対応するRGBの値に対して行い、全ての格子点においてインク量セットを更新する。このようにして更新した後のLUTをMt−LUT52とする。このようにして生成したMt−LUT52は、各格子点に格納されているインク量セットによって表される色の色相が、同じ格子点位置(R,G,B)におけるC−LUT51に格納されているインク量セットによって表される色の色相に略等しいと言う特性を備えている。このようにしてMt−LUT52を生成する。
【0063】
以上説明したように、この印刷システム10では、画像データORGにおけるカラー発色領域およびメタリック領域に対応する各色成分値を、メディアプロファイルによって変換を行う際に、1つのメディアプロファイル(メディアプロファイル32)によって行うので、メディアプロファイルを読み込むために確保する記憶容量を少なくすることができる。
【0064】
また、Mt−LUT52の各格子点に格納されるインク量セットは、そのインク量セットによって表される色の色相が、C−LUT51における同一の格子点位置に格納されているインク量セットによって表される色の色相と略等しくなるように調整されている。従って、印刷対象画像における所定の色で表現された領域を、カラー発色領域とメタリック領域との両方で印刷した場合には、印刷画像における2つの領域において、その色相を略等しくすることができる。さらに、Mt−LUT52のインク量セットを調整することにより、メディアプロファイルはカラー発色領域用に生成された既存のメディアプロファイル32をそのまま利用することができる。
【0065】
Mt−LUT52の生成方法としては、調整用Mt−LUT55を最適化する際に、各インク量セットをL*C*hの表色系として評価して最適化を行っているので、Mt−LUT52と、C−LUT51とにおける、同一の格子点位置に格納されているインク量セットによって表される色の色相を、精度良く、略均等にすることができる。
【0066】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
(B1)変形例1:
上記実施例においては、Mt−LUT52の生成方法として、調整用Mt−LUT55を最適化する際に、各インク量セットをL*C*hの表色系として評価して最適化を行ったが、それに限ることなく、L*a*b*の表色系の色空間において、調整後メタリック領域用インク量セットImx[CMYKMt]の色相をカラー発色領域用インク量セットIc[CMYKLcLm]に近づけるように最適化を行うなど、L*C*hの表色系以外の色空間で評価および最適化を行うとしてもよい。例えば、L*a*b*の表色系の色空間で最適化を行う場合には、調整後メタリック領域用インク量セットImx[CMYKMt]の各インク量を変化させて、その変化させたインク量セットに対応するL*a*b*の点(Lx,ax,bx)を、実際にL*a*b*空間の座標にプロットする。そして、最適化の目標対象であるカラー発色領域用インク量セットIc[CMYKLcLm]に対応するL*a*b*空間における座標点に最も近い(Lx,ax,bx)の点に対応する調整後メタリック領域用インク量セットImx[CMYKMt]を採用して、調整用Mt−LUT55の更新を行う。このように、例えば、L*a*b*の表色系の色空間において調整用Mt−LUT55を最適化を行うと、Mt−LUT52の生成の工程において(図4参照)、L*C*hの表色系への表色系変換の工程を省くことができる。
【0067】
またこの他のMt−LUT52の生成方法として、複数種類の調整後メタリック領域用インク量セットImx[CMYKMt]で実際に印刷媒体にカラーパッチの印刷を行う。また、最適化の目標対象であるカラー発色領域用インク量セットIc[CMYKLcLm]のカラーパッチの印刷を行う。そして、両カラーパッチを実際に測色し、カラー発色領域用インク量セットIc[CMYKLcLm]のカラーパッチの色相に最も近い調整後メタリック領域用インク量セットImx[CMYKMt]を採用し、調整用Mt−LUT55を最適化を行い、Mt−LUT52を生成するとしてもよい。この生成方法を採用すると、MDc色予測モデルMDc、色予測モデルMDmを用いた分光反射率の予測や、表色系変換等の工程を省くことができる。
【0068】
(B2)変形例2:
上記実施例では、特殊光沢インクとして金属光沢を有するメタリックインクを採用して説明したが、特殊光沢インクとして、パールホワイトの質感を有するパールホワイトインクや、艶を表現する透明や半透明のクリアインク等の特殊光沢インクを採用することも可能である。これらのインクを採用することで、印刷画像として、種々の質感を表現することができる。
【0069】
(B3)変化例3:
上記実施例では、Mt−LUT52の各格子点にメタリックインク(Mt)のインク量が格納されているとしたが、それに限ることなく、メタリックインクのインク量はMt−LUT52の各格子点には格納せず、予め別にメタリックインク(Mt)のインク量をさだめているとしてもよい。
【0070】
また、上記実施例では、メタリックインク(Mt)のインク量は一定としたが、可変であるとしてもよい。例えば、ユーザーがアプリケーションプログラム30を用いて、指定したメタリック領域ごとにメタリック感の強度を設定し、その強度とメタリックインクのインク量とを対応つけた1次元のルックアップテーブルを、印刷システム10が別途備えることで実現可能である。
【0071】
(B4)変形例4:
上記実施例において、CPU102がアプリケーションプログラム30およびプリンタードライバー50として行っていた機能(モジュール)の一部または全部を、コンピューター100にインストールしたソフトウェアとしてのRIP(Raster image processor)が行うとしてもよいし、コンピューター100、プリンター200に接続したハードウェアとしてのRIPが行うとしてもよい。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、上述の実施形態で示したシリアル方式のインクジェットプリンターに限らず、インクジェット式のラインプリンタや、特殊光沢色のトナーを備えるレーザープリンターにも適用できる。また、本発明は、印刷装置としての構成のほか、印刷方法、プログラム、記憶媒体等としても実現することができる。
【符号の説明】
【0073】
10…印刷システム
20…CPU
30…アプリケーションプログラム
31…ソースプロファイル
32…メディアプロファイル
40…ビデオドライバー
50…プリンタードライバー
53…ハーフトーンモジュール
54…インターレースモジュール
70…ディスプレイ
72…キーボード
74…マウス
100…コンピューター
102…CPU
200…プリンター
220…制御回路
225…操作パネル
230…キャリッジモーター
231…駆動ベルト
232…プーリー
233…摺動軸
235…モーター
236…プラテン
240…キャリッジ
241…インクカートリッジ
260…印刷ヘッド
261〜267…ノズル列
P…印刷媒体
n…注目画素
ORG,ORG(0)〜ORG(3)…画像データ
MDc…色予測モデル
MDm…色予測モデル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に、画像処理された印刷用の画像データを出力する画像処理装置であって、
基本色の組み合わせで表現されるカラー発色領域と、特殊光沢を用いて表現される特殊光沢領域とを含む印刷対象画像を表す画像データを入力する入力部と、
前記カラー発色領域の色を所定の印刷媒体上で再現するために用意された一つのメディアプロファイルを用いて、前記カラー発色領域および前記特殊光沢領域に対応する各々の前記画像データの色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換するメディアプロファイル変換モジュールと、
前記カラー発色領域の色を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意されたカラー用ルックアップテーブルを用いて、調整カラー発色領域色成分値を、前記各インクのインク量の組み合わせであるインク量セットに変換するカラー発色領域色変換モジュールと、
前記特殊光沢領域の少なくとも色相を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意された特殊光沢用ルックアップテーブルを用いて、調整特殊光沢領域色成分値を前記インク量セットに変換する特殊光沢領域色変換モジュールと、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理装置であって、
前記特殊光沢領域色変換モジュールが所定の色成分値を変換した後の前記インク量セットによって表される色の色相が、前記カラー発色領域色変換モジュールが前記所定の色成分値を変換した後の前記インク量セットによって表される色の色相に近づくように、前記特殊光沢用ルックアップテーブルの各格子点に記録されるインク量セットが調整されている
画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の画像処理装置であって、
前記特殊光沢領域は、金属光沢を有するメタリック領域であり、
前記特殊光沢インクは、金属光沢を有するメタリックインクである
画像処理装置。
【請求項4】
カラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて表現可能な特殊光沢画像において、該特殊光沢画像の色成分値を、前記各インクのインク量の組み合わせであるインク量セットに変換する特殊光沢用ルックアップテーブルの生成方法であって、
前記カラーインクのみで表現可能なカラー画像を表す色成分値を、前記インク量セットに変換するカラー用ルックアップテーブルを用いて、所定の色成分値を第1のインク量セットに変換する工程と、
同じ格子点位置に記録されている前記インク量セットにおいて前記カラーインクの総インク量が前記カラー用ルックアップテーブルよりも少ない調整用ルックアップテーブルを用いて、前記所定の色成分値を第2のインク量セットに変換する工程と、
前記第1のインク量セットと前記第2のインク量セットとに基づいて、前記第2のインク量セットによって表される色の色相を、前記第1のインク量セットによって表される色の色相に近づけるように前記第2のインク量セットの各インク色のインク量を調整し、新たな第2のインク量セットを取得する工程と、
前記取得した新たな第2のインク量セットによって前記調整用ルックアップテーブルを更新して前記特殊光沢用ルックアップテーブルとする工程と
を備える特殊光沢用ルックアップテーブルの生成方法。
【請求項5】
請求項4記載の特殊光沢用ルックアップテーブルの生成方法であって、
前記新たな第2のインク量セットを取得する工程は、
前記第1のインク量セットに基づいて、前記第1のインク量セットによって表される色の、明度の値L1、彩度の値C1、および色相角の値h1を算出する工程と、
前記第2のインク量セットに基づいて、前記第2のインク量セットによって表される色の、明度の値L2、彩度の値C2、および色相角の値h2を算出する工程と、
前記新たな第2のインク量セットによって表される色の、明度の値をLx、彩度の値をCx、色相角の値をhx、および所定の重み付け係数をw1,w2,w3としたときに、

(w1≦w3,w2≦w3)
の値が0に近づくように、前記新たな第2のインク量セットを最適化する工程と
を備える
特殊光沢用ルックアップテーブルの生成方法。
【請求項6】
カラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置であって、
基本色の組み合わせで表現されるカラー発色領域と、特殊光沢を用いて表現される特殊光沢領域とを含む印刷対象画像を表す画像データを入力する入力部と、
前記カラー発色領域の色を所定の印刷媒体上で再現するために用意された一つのメディアプロファイルを用いて、前記カラー発色領域および前記特殊光沢領域に対応する各々の前記画像データの色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換するメディアプロファイル変換モジュールと、
前記カラー発色領域の色を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意されたカラー用ルックアップテーブルを用いて、調整カラー発色領域色成分値を、前記各インクのインク量の組み合わせであるインク量セットに変換するカラー発色領域色変換モジュールと、
前記特殊光沢領域の少なくとも色相を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意された特殊光沢用ルックアップテーブルを用いて、調整特殊光沢領域色成分値を前記インク量セットに変換する特殊光沢領域色変換モジュールと、
前記カラー発色領域色変換モジュールと前記特殊光沢領域色変換モジュールとによって変換した前記各インク量セットに基づいて印刷を行う印刷部と
を備える印刷装置。
【請求項7】
カラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に出力する印刷用の画像データの画像処理方法であって、
基本色の組み合わせで表現されるカラー発色領域と、特殊光沢を用いて表現される特殊光沢領域とを含む印刷対象画像を表す画像データを入力し、
前記カラー発色領域の色を所定の印刷媒体上で再現するために用意された一つのメディアプロファイルを用いて、前記カラー発色領域および前記特殊光沢領域に対応する各々の前記画像データの色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換し、
前記カラー発色領域の色を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意されたカラー用ルックアップテーブルを用いて、調整カラー発色領域色成分値を、前記各インクのインク量の組み合わせであるインク量セットに変換し、
前記特殊光沢領域の少なくとも色相を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意された特殊光沢用ルックアップテーブルを用いて、調整特殊光沢領域色成分値を前記インク量セットに変換する
画像処理方法。
【請求項8】
カラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に出力する印刷用の画像データを処理するための画像処理プログラムであって、
基本色の組み合わせで表現されるカラー発色領域と、特殊光沢を用いて表現される特殊光沢領域とを含む印刷対象画像を表す画像データを入力する機能と、
前記カラー発色領域の色を所定の印刷媒体上で再現するために用意された一つのメディアプロファイルを用いて、前記カラー発色領域および前記特殊光沢領域に対応する各々の前記画像データの色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換する機能と、
前記カラー発色領域の色を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意されたカラー用ルックアップテーブルを用いて、調整カラー発色領域色成分値を、前記各インクのインク量の組み合わせであるインク量セットに変換する機能と、
前記特殊光沢領域の少なくとも色相を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意された特殊光沢用ルックアップテーブルを用いて、調整特殊光沢領域色成分値を前記インク量セットに変換する機能を
コンピューターに実現させる画像処理プログラム。
【請求項9】
印刷装置によってカラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷をするための画像データを、一つのメディアプロファイルによる処理を介して受け取り、画像処理を行う画像処理装置であって、
前記印刷を行うための印刷対象画像は、基本色の組み合わせで表現されるカラー発色領域と、特殊光沢を用いて表現される特殊光沢領域とを含み、前記一つのメディアプロファイルは、前記カラー発色領域の色を所定の印刷媒体上で再現するために用意されており、前記カラー発色領域および前記特殊光沢領域に対応する各々の前記画像データの色成分値を、それぞれ、調整カラー発色領域色成分値および調整特殊光沢領域色成分値に変換し当該画像処理装置に出力し、
前記カラー発色領域の色を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意されたカラー用ルックアップテーブルを用いて、調整カラー発色領域色成分値を、前記各インクのインク量の組み合わせであるインク量セットに変換するカラー発色領域色変換モジュールと、
前記特殊光沢領域の少なくとも色相を前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現するために用意された特殊光沢用ルックアップテーブルを用いて、調整特殊光沢領域色成分値を前記インク量セットに変換する特殊光沢領域色変換モジュールと
を備える画像処理装置。
【請求項10】
カラーインクと特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に出力する印刷用の画像データを処理する画像処理装置であって、
基本色の組み合わせで表現されるカラー発色領域と、特殊光沢を用いて表現される特殊光沢領域とを含む前記印刷対象画像を表す画像データを入力する入力部と、
前記カラー発色領域の色が所定の印刷媒体上で再現されるように、前記画像データの色成分値を、調整した色成分値に変換するための一つのメディアプロファイルと、
前記カラー発色領域の色が前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現されるように、前記調整した色成分値を前記インクのインク量に変換するためのカラー用ルックアップテーブルと、
前記特殊光沢領域の少なくとも色相が前記印刷装置が備えるインクのインク色で再現されるように、前記調整した色成分値を前記インクのインク量に変換するための特殊光沢用ルックアップテーブルと
を備える画像処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−222501(P2012−222501A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84471(P2011−84471)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】