説明

画像処理装置、撮像装置、及び画像処理プログラム

【課題】画像に適用される複数種類の色空間の各々の良否の程度をユーザに直感的に判断させること。
【解決手段】本発明の画像処理装置は、画像の色域を第1色域に収めるための第1変換処理を対象画像へ施して第1画像を生成すると共に、画像の色域を前記第1色域とは異なる第2色域に収めるための第2変換処理を前記対象画像へ施して第2画像を生成する変換処理部(15)と、前記変換処理部が前記対象画像から生成した前記第1画像の少なくとも一部を前記第1色域で表示部に表示させると共に、前記変換処理部が前記対象画像から生成した前記第2画像の少なくとも一部を前記第2色域で前記表示部に表示させる表示制御部(21、16)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影画像などの画像をモニタ表示用に処理する画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
電子カメラの中には、撮影画像に適用される色空間をユーザが自由に切り替えられるものがある。特に特許文献1の電子カメラは、設定中の色空間の良否をユーザが判断するために、その色空間では本来の色で表現できないような色飽和領域を見積もり、その領域の輪郭線などを電子ビューファインダ上に表示している。よって、ユーザは設定中の色空間が適切であるか否かを撮影前に判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許開2004−80737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の電子カメラでは、色飽和領域の有無やサイズについては一目瞭然であるものの、その色飽和領域の色が本来の色からどの程度外れて表現されるかについては、輪郭線内に写っている物体の実際の色からユーザが自ら推測する必要があった。
【0005】
そこで本発明は、画像に適用される複数種類の色空間の各々の良否の程度をユーザに直感的に判断させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、画像の色域を第1色域に収めるための第1変換処理を対象画像へ施して第1画像を生成すると共に、画像の色域を前記第1色域とは異なる第2色域に収めるための第2変換処理を前記対象画像へ施して第2画像を生成する変換処理部と、前記変換処理部が前記対象画像から生成した前記第1画像の少なくとも一部を前記第1色域で表示部に表示させると共に、前記変換処理部が前記対象画像から生成した前記第2画像の少なくとも一部を前記第2色域で前記表示部に表示させる表示制御部とを備える。
【0007】
本発明の撮像装置は、被写体を撮像して画像を取得する撮像部と、前記撮像部が取得した前記画像を前記対象画像として処理する本発明の画像処理装置とを備える。
【0008】
本発明の画像処理プログラムは、画像の色域を第1色域に収めるための第1変換処理を対象画像へ施して第1画像を生成すると共に、画像の色域を前記第1色域とは異なる第2色域に収めるための第2変換処理を前記対象画像へ施して第2画像を生成する変換処理手順と、前記変換処理手順で前記対象画像から生成した前記第1画像の少なくとも一部を前記第1色域で表示部に表示させると共に、前記変換処理手順で前記対象画像から生成した前記第2画像の少なくとも一部を前記第2色域で前記表示部に表示させる表示制御手順とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像に適用される複数種類の色空間の各々の良否の程度をユーザに直感的に判断させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】電子カメラの構成図。
【図2】カラーモードII、Iの説明。
【図3】撮影モードにおけるCPU21の動作フローチャート。
【図4】ステップS15−IIの説明。
【図5】ステップS15−Iの説明。
【図6】カラーモードIIの画像における特有画素の説明。
【図7】画像の分割数の例。
【図8】内部モニタ17の表示画面の例。
【図9】RAW再生モードにおけるCPU21の動作フローチャート。
【図10】内部モニタ17の表示画面の変形例。
【図11】内部モニタ17の表示画面の更なる変形例。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態として電子カメラを説明する。
【0012】
図1は、電子カメラの構成図である。図1に示すとおり電子カメラ1には、撮像素子11、信号処理回路12、バッファメモリ13、画像処理回路14、色空間変換処理回路15、表示制御回路16、内部モニタ17、圧縮・伸張回路18、カードインタフェース19、CPU21、撮像回路22、入力器23、外部接続端子24などが備えられる。このうちバッファメモリ13、画像処理回路14、色空間変換処理回路15、表示制御回路16、圧縮・伸張回路18、カードインタフェース19、CPU21は、共通のバスに接続されている。
【0013】
撮像素子11は、撮影レンズ22が形成した被写体像を撮像する単板式のカラー撮像素子である。撮像素子11は、ベイヤ配列のカラーフィルタアレイを有しており、十分に広い色域で撮像を行うことができる。なお、撮像素子11の撮像色域は、色空間変換処理回路15が対応可能な複数種類の色空間(下述)の全色域よりも広い。
【0014】
信号処理回路12は、撮像素子11が撮像により取得したアナログ画像信号に対してアナログ信号処理及びA/D変換処理を順次に施し、ディジタル画像信号に変換する。
【0015】
バッファメモリ13は、信号処理回路12から出力されるディジタル画像信号を順次に蓄積する。撮像素子11の1フレーム分の電荷読み出し期間に亘ってこの蓄積が行われると、バッファメモリ13には1フレーム分のディジタル画像データが蓄積されることになる。以下、1フレーム分のディジタル画像データを単に「画像」と称し、特に、撮像直後にバッファメモリ13に蓄積された画像(画像処理回路14による画像処理が施される前の画像)を「RAW画像」と称す。
【0016】
画像処理回路14は、バッファメモリ13に格納されたRAW画像に対して、デベイヤ処理(色補間処理)を含む所定の画像処理(色補間処理、エッジ強調処理、コントラスト強調処理など)を施す。なお、画像処理回路14は、必要に応じて、バッファメモリ13に格納されたRAW画像に対して表示用の間引き処理(サイズ縮小処理)を施したり、その他の特定の処理を実行したりすることもできる。
【0017】
色空間変換処理回路15は、前述した所定の画像処理後の画像に対し、その画像を所定の色空間で表現するための色空間変換処理を施す。色空間変換処理回路15が実施可能な色空間変換処理は複数種類である。ここでは、実施可能な色空間変換処理は2種類であり、一方は、AdobeRGB空間(カラーモードIIの色空間)で画像を表すための色空間変換処理(カラーモードIIの色空間変換処理)であって、他方は、sRGB空間(カラーモードIの色空間)で画像を表すための色空間変換処理(カラーモードIの色空間変換処理)であると仮定する(「Adobe」、「sRGB」はそれぞれ登録商標。)。なお、カラーモードIIの色空間変換によると、画像の各色は、図2(A)に符号AIIで示す色域内に収められ、カラーモードIの色空間変換によると、画像の各色は、図2(B)に符号Aで示す色域内に収められる。なお、図2(A)、(B)は、互いに異なる色空間の色域を共通の表色系で表したものである。
【0018】
表示制御回路16は、表示用メモリを有しており、その表示用メモリに書き込まれた画像を内部モニタ17へ送出することにより、その内部モニタ17上へ画像を表示する。なお、外部接続端子24に外部モニタが接続されている期間には、表示制御回路16による画像の送出先は、内部モニタ17ではなく外部モニタとなる。但し、以下では、外部接続端子24に外部モニタは接続されていないものと仮定する。
【0019】
内部モニタ17は、電子カメラ1の背面などに設けられ、電子カメラ1で取得された画像をユーザが外出先で確認する際などに使用されるモニタである。内部モニタ17の表示色域は、色空間変換処理回路15が対応可能な各色空間の色域、すなわち、カラーモードIIの色域AII(図2(A))及びカラーモードIの色域A(図2(B))の全てをカバーしている。なお、図2に示すとおりカラーモードIIの色域AIIはカラーモードIの色域Aの全部を包含しているので、内部モニタ17の表示色域は、カラーモードIIの色域AIIとほぼ一致していればよい。このような内部モニタ17としては、例えば、カラーモードIIに対応可能な光源(適切なスペクトル形状の光源)を有した液晶モニタが適用可能である。
【0020】
外部接続端子24は、外部モニタへ表示制御回路16を接続するための端子である。外部接続端子24が接続可能な外部モニタの表示色域は、色空間変換処理回路15が対応可能な各色空間の色域、すなわち、カラーモードIIの色域AII(図2(A))及びカラーモードIの色域A(図2(B))の全てをカバーしている。但し、図2に示すとおりカラーモードIIの色域AIIはカラーモードIの色域Aの全体を包含しているので、外部モニタ表示色域は、カラーモードIIの色域AIIとほぼ一致していればよい。なお、このような外部モニタとの接続を図る外部接続端子24としては、周知のHDMI端子などを適用することができる(なお、HDMIは登録商標)。
【0021】
圧縮・伸張回路18は、色空間変換後の画像に対し、所定方式のデータ圧縮処理を施す。また、圧縮・伸張回路18は、データ圧縮済みの画像に対し、同じ方式のデータ伸張処理を施すこともできる。以下、圧縮/伸張方式として周知のJPEG方式が適用されるものと仮定する。
【0022】
カードインタフェース19は、データ圧縮済みの画像(ここではJPEGファイル)や、データ圧縮されていないRAW画像(RAW画像ファイル)を、電子カメラ1に装着中のカードメモリ20へ書き込む。なお、カードメモリ20は、可搬の記憶媒体である。
【0023】
撮像回路22は、撮影レンズ22に対して駆動信号を与えることにより撮影前の焦点調節を行う。また、撮像回路22は、撮像素子11及び信号処理回路12に対して駆動信号を与えることにより両者の駆動タイミングを制御する。
【0024】
CPU21は、入力器23を介して入力されるユーザの指示と、CPU21の内部に予め書き込まれたファームウエアとに従い、以上の各部を制御する。なお、CPU21のファームウエアは、電子カメラ1に搭載された不図示の通信回路を介して適宜に更新される。
【0025】
入力器23は、電子カメラ1の上部に設けられたレリーズボタンや、電子カメラ1の背面に設けられたマルチセレクターなどの操作部材である。例えばユーザは、この入力器23を介して電子カメラ1のモードを撮影モードと再生モードの間で切り替えることができる。なお、本実施形態の再生モードの中には、JPEGファイルの画像を再生表示する再生モードと、RAW画像ファイルのRAW画像を再生表示するRAW再生モードとがある。
【0026】
ここで、以上の電子カメラ1には、カラーモードの確認機能が搭載されている。ユーザは、撮影時にこの機能を発現させるか否かを予め設定する(オン/オフする)ことができる。また、ユーザは、RAW再生時にこの機能を発現させるか否かを予め設定する(オン/オフする)ことができる。以下では、この機能がオンされているときにおける撮影モード及びRAW再生モードを順に説明する。
【0027】
図3は、撮影モードにおけるCPU21の動作フローチャートである。以下、各ステップを順に説明する。
【0028】
ステップS11:CPU21は、入力器23からの信号に基づきユーザから撮影指示が入力されたか否かを判別し、撮影指示が入力された場合にはステップS12へ移行し、撮影指示が入力されていない場合には待機する。
【0029】
ステップS12:CPU21は、撮像回路22を介して少なくとも撮像素子11及び信号処理回路12を制御することにより撮像を行い、被写体の画像を取得する。この画像はRAW画像としてバッファメモリ13へ蓄積される。
【0030】
ステップS13:CPU21は、表示用の間引き処理を実行するよう画像処理回路14へ指示する。画像処理回路14は、バッファメモリ13上のRAW画像に対して表示用の間引き処理を施すことにより、表示用画像を生成する。なお、この表示用画像は、バッファメモリ13上でRAW画像が書き込まれている領域とは異なる領域へ書き込まれ、本ステップでRAW画像が消去(上書き)されることはないものとする。
【0031】
ステップS14:CPU21は、その表示用画像に対して画像処理を実行するよう画像処理回路14へ指示する。画像処理回路14は、その表示用画像に対して前述した所定の画像処理を施すことにより表示用画像を取得すると、その表示用画像を複製することにより、互いに等しい2つの表示用画像を取得する。このうち一方は、以下のステップS15−II、S16−IIにて処理される表示用画像であって、他方は、以下のステップS15−I、S16−Iにて処理される表示用画像である。
【0032】
ステップS15−II:CPU21は、前述した2つの表示用画像の一方に対してカラーモードIIの色空間変換処理を施すよう色空間変換処理回路15へ指示する。色空間変換処理回路15は、その表示用画像の各画素に対してカラーモードIIの色空間変換処理を施す。なお、本ステップによる変換前の表示用画像の各画素は、図4の左側に模式的に示すように比較的広い色域に分布していた可能性があるが、本ステップによる変換後の表示用画像の各画素は、図4の右側に模式的に示すようにカラーモードIIの色域AIIに収まる。以下、本ステップによる変換後の表示用画像を「カラーモードIIの表示用画像」と称す。
【0033】
ステップS16−II:CPU21は、カラーモードIIの表示用画像に対し、内部モニタ用の表示前処理を施す。この表示前処理は、一般的なモニタにおいても実施されている処理であって、モニタへ表示すべき画像の信号値をモニタ用の信号値へと変換する処理(基本的には、画像の信号値をモニタ座標で表すための処理)である。但し、上述したとおり内部モニタ17の表示色域は、カラーモードIIの色域の全体をカバーしているため、この表示前処理によってカラーモードIIの表示用画像に色潰れの発生する可能性は無いとみなせる。なお、上述したとおりカラーモードIIの色空間はAdobeRGB空間なので、内部モニタ17がAdobeRGB対応モニタであった場合は、本ステップの表示前処理は省略が可能である。
【0034】
ステップS15−I:CPU21は、前述した2つの表示用画像の他方に対してカラーモードIの色空間変換処理を施すよう色空間変換処理回路15へ指示する。色空間変換処理回路15は、その表示用画像の各画素に対してカラーモードIの色空間変換処理を施す。なお、本ステップによる変換前の表示用画像の各画素は、図5の左側に模式的に示すように比較的広い色域に分布していた可能性があるが、本ステップによる変換後の表示用画像の各画素は、図5の右側に模式的に示すようにカラーモードIの色域Aに収まる。以下、本ステップによる変換後の表示用画像を「カラーモードIの表示用画像」と称す。
【0035】
ステップS16−I:CPU21は、カラーモードIの表示用画像に対し、内部モニタ用の表示前処理を施す。この表示前処理は、一般的なモニタにおいても実施されている処理であって、モニタへ表示すべき画像の信号値をモニタ用の信号値へと変換する処理(基本的には、画像の信号値をモニタ座標で表すための処理)である。但し、上述したとおり内部モニタ17の表示色域は、カラーモードIの色域の全体をカバーしているため、この表示前処理によってカラーモードIの表示用画像に色潰れの発生する可能性は無いとみなせる。なお、上述したとおりカラーモードIの色空間はsRGB空間なので、内部モニタ17がAdobeRGB対応モニタであった場合は、本ステップの表示前処理は、sRGB空間の信号値をAdobeRGB空間の対応する信号値で表すための処理となる。
【0036】
本ステップ及び上述したステップS16−IIの結果、カラーモードIIの表示用画像と、カラーモードIの表示用画像とは、色域の広い共通の色座標(ここではモニタ座標)で表されることになる。よって、両画像の色比較を共通のモニタ上で行うことが可能になる。
【0037】
ステップS17:CPU21は、表示前処理後の2つの表示用画像(カラーモードIIの表示用画像及びカラーモードIの表示用画像)に基づき着目領域の決定処理を実行するよう画像処理回路14へ指示する。
【0038】
画像処理回路14は、先ず、カラーモードIIの表示用画像から、カラーモードIIに特有の色(カラーモードIでは表現できないがカラーモードIIでは表現できる色)を有した特有色画素を探索すると共に、カラーモードIの表示用画像から、カラーモードIに特有の色(カラーモードIIでは表現できないがカラーモードIでは表現できる色)を有した特有色画素を探索する。
【0039】
但し、カラーモードIの色域AはカラーモードIIの色域AIIによって完全に包含されているので、カラーモードIの表示用画像には、特有色画素は存在しないはずである。よって、本ステップにおける特有色画素の探索は、カラーモードIIについてのみ行われればよい。よって、本ステップの画像処理回路14は、カラーモードIIの特有色画素として、図6に斜線で示した色域Anoに属する画素を探索する。この色域Anoは、カラーモードIIの色域AIIのうちカラーモードIの色域Aと重複していない色域であって、この色域Anoの情報は、画像処理回路14が予め記憶しているものとする。
【0040】
なお、ここでは、特有色画素の探索元(カラーモードIIの表示用画像)はモニタ座標で表されているため、画像処理回路14は、色域Anoの情報についてもモニタ座標上の色域として記憶していることが望ましい。
【0041】
次に、画像処理回路14は、カラーモードIIの表示画像を多分割してできる複数の部分領域の中から、このような特有画素を最も多く有している部分領域を着目領域として見出す。
【0042】
なお、本ステップにおける領域分割数は、部分領域が縦長になるよう、例えば図7に示すとおり横方向に6、縦方向に3などとすることが望ましい。
【0043】
ステップS18:CPU21は、表示前処理後のカラーモードIIの表示用画像から、着目領域に対応する部分(部分画像)のデータを抽出し、表示制御回路16の表示用メモリの所定領域へそのデータを書き込む。これによって、図8の左側に示すとおり、カラーモードIIの表示用画像のうち着目領域に対応する部分画像が内部モニタ17へ拡大表示される。なお、内部モニタ17上でその部分画像の近傍には、その部分画像の抽出元画像(カラーモードIIの表示用画像)に対応するカラーモードの種類を示すマーク(「II」、「AdobeRGB」などの文字イメージ)が付与される。
【0044】
また、CPU21は、表示前処理後のカラーモードIの表示用画像から、同じ着目領域に対応する部分画像のデータを抽出し、表示制御回路16の表示用メモリの別の所定領域へそのデータを書き込む。これによって、図8の右側に示すとおり、カラーモードIの表示用画像のうち着目領域に対応する部分画像が内部モニタ17へ拡大表示される。なお、内部モニタ17上でその部分画像の近傍には、その部分画像の抽出元画像(カラーモードIの表示用画像)に対応するカラーモードの種類を示すマーク(「I」、「sRGB」などの文字イメージ)が付与される。
【0045】
なお、図7に示したとおり部分領域を縦長にした場合、図8に示すとおり2つの部分画像もそれぞれ縦長になるので、これらの部分画像を左右に並べて表示すれば、横長である内部モニタ17の表示画面を有効に利用することができる。
【0046】
本ステップの結果、ユーザは、カラーモードIIの部分画像の色と、カラーモードIの部分画像の色とを、内部モニタ17上で比較できる。これによってユーザは、前述した被写体に対するカラーモードII、Iの各々の良否の程度を直感的に知ることができる。
【0047】
そして、ユーザは、カラーモードIIの良さが顕著でありその必要性が高いと判断した場合には、入力器23を操作してカラーモードIIによる保存指示を電子カメラ1へ入力する(この場合、ユーザの指定したカラーモードは、カラーモードIIとなる。)。
【0048】
一方、ユーザは、カラーモードIIの良さが顕著ではなくその必要性は低いと判断した場合には、入力器23を操作してカラーモードIによる保存指示を電子カメラ1へ入力する(この場合、ユーザの指定したカラーモードは、カラーモードIとなる。)。
【0049】
なお、カラーモードIの表示用画像上で、カラーモードIIの画像における特有色画素と同じ位置に配置された画素は、カラーモードIでは表現できないような色を本来有しており、カラーモードIの色空間変換によって色域A内の似た色に置換された画素(色飽和画素)である。よって、以下では、カラーモードIの画像上で、カラーモードIIの表示用画像における特有色画素と同じ位置に配置された画素を単に「色飽和画素」と称す。
【0050】
ステップS19:CPU21は、ユーザから保存指示が入力されたか否かを判別し、入力された場合にはステップS20へ移行し、入力されていない場合には待機する。
【0051】
ステップS20:CPU21は、保存用の画像処理を実行するよう画像処理回路14へ指示する。画像処理回路14は、バッファメモリ13上のRAW画像に対して前述した所定の画像処理を施し、保存用画像を取得する。なお、CPU21は、少なくとも、ステップS12にてバッファメモリ13にRAW画像の書き込みが行われてから本ステップの画像処理が開始されるまでの期間は、バッファメモリ13上のRAW画像の上書きを禁止する。
【0052】
ステップS21:CPU21は、ステップS20で取得した保存用画像に対して、ユーザの指定したカラーモードの色空間変換処理を施すよう色空間変換処理15へ指示する。色空間変換処理15は、CPU21から指定されたカラーモードの色空間変換処理をその保存用画像の各画素に対して施す。これによって、ユーザの指定したカラーモードの保存画像が取得される。
【0053】
ステップS22:CPU21は、ステップS21で取得した保存用画像を圧縮・伸張回路18へ与える。圧縮・伸張回路18は、その保存用画像に対してJPEG方式のデータ圧縮処理を施す。
【0054】
ステップS23:CPU21は、データ圧縮済みの保存用画像のJPEGファイルを作成すると共に、そのJPEGファイルのEXIF領域に対して、その保存用画像に適用されている色空間の種類情報を書き込んでから、カードインタフェース19に対してそのJPEGファイルと書き込み指示とを与える。なお、ユーザの指定したカラーモードがカラーモードIIであった場合は、EXIF領域に書き込まれるべき種類情報は「AdobeRGB空間」を示す情報となり、ユーザの指定したカラーモードIであった場合は、EXIF領域に書き込まれるべき種類情報は「sRGB空間」を示す情報となる。
【0055】
カードインタフェース9は、CPU21から与えられたJPEGファイルをカードメモリ20の空き領域へ書き込む。これによって、保存用画像は、ユーザの指定したカラーモードで保存されることになる。保存後、CPU21は、フローを終了する(以上、図3の説明。)。
【0056】
以上、撮影モードにおけるCPU21の動作によると、ユーザは、カラーモードII、Iの各々の良否の程度を撮影直後に内部モニタ17上で直感的に判断することができるので、保存ファイルのカラーモードを撮影直後に簡単に設定できる。
【0057】
なお、従来の電子カメラのユーザは、カラーモードの選択に迷うことも多かったので、その選択を撮影時には行わず、(後にコンピュータ上などで行うことができるよう)保存ファイルをRAW画像ファイルにすることも多かった。このためカードメモリ20の空き容量が不足しがちであった。
【0058】
しかし、本実施形態の電子カメラのユーザは、カラーモードの選択に迷わないので、カラーモードの指定を撮影時に積極的に行い、保存ファイルをコンパクトなJPEGファイルにすることができる。したがってユーザは、カードメモリ20の空き容量を節約しながら撮影を行うことができる。
【0059】
また、本実施形態CPU21は、カラーモードIIの画像及びカラーモードIの画像を表示する際と、カラーモードIIの画像又はカラーモードIの画像を保存する際との双方に当たって画像処理回路14及び色空間変換処理回路15を動作させるが、表示に当たっては処理の対象をRAW画像自体ではなくRAW画像のサイズ縮小版とし、保存に当たってはユーザが指定しなかった方のカラーモードの処理を省略する。
【0060】
このようにして処理の効率化を図れば、撮影後にカラーモードIIの画像及びカラーモードIの画像が表示されるまでのユーザの待ち時間は、最小限に抑えられる。
【0061】
また、本実施形態のCPU21は、カラーモードIIの画像上で特有色画素が多く含まれている領域と、カラーモードIの画像上の同じ領域(つまり色飽和画素が多く含まれている領域)とを、内部モニタ17上で強調表示する(ここでは拡大表示する)ので、カラーモードII、Iの各々の良否の程度をユーザに実感させ易い。
【0062】
図9は、RAW再生モードにおけるCPU21の動作フローチャートである。以下、各ステップを順に説明する。なお、図9において、図3に示すものと同じステップには同じ符号を付した。また、図9のフローの開始時点では、カードメモリ20には複数のRAW画像ファイルが格納されているものと仮定する。
【0063】
ステップS31:CPU21は、カードインタフェース19を介してカードメモリ20を参照し、それら複数のRAW画像ファイルの各々に個別に付加されたサムネイル画像を読み出す。そして、CPU21は、それらのサムネイル画像を並べて1枚の画像を作成し、その画像を表示制御回路16の表示用メモリへ書き込む。これによって、複数のRAW画像の一覧表示が開始される。ユーザは、その一覧表示を目視しながら入力器23を操作し、それら複数のRAW画像ファイルの中の何れか1つをJPEG圧縮すべきRAW画像ファイルとして指定する。
【0064】
ステップS32:CPU21は、ユーザからRAW画像ファイルの指定があるか否かを判別し、指定が有った場合にはステップS13’へ移行し、指定が無い場合にはそのまま待機する。
【0065】
ステップS13’:CPU21は、ユーザが指定したRAW画像ファイルを、カードインタフェース19を介してカードメモリ20から読み出し、そのRAW画像ファイルに含まれるRAW画像をバッファメモリ13上に書き込む。その後、上述したステップS13と同様に表示用画像を取得する。
【0066】
ステップS14〜S18:CPU21は、その表示用画像に対して前述した所定の画像処理を施し、カラーモードIIの表示用画像及びカラーモードIの表示用画像を取得し、カラーモードIIの表示画像とカラーモードIの表示用画像とを共通の色座標(モニタ座標)で表す。また、CPU21は、着目領域を決定し、カラーモードIIの部分画像及びカラーモードIの部分画像を内部モニタ17上に拡大表示する。
【0067】
ステップS19:CPU21は、ユーザから保存指示が入力されたか否かを判別し、入力された場合にはステップS20へ移行し、入力されていない場合にはステップS33へ移行する。
【0068】
ステップS33:CPU21は、ユーザからキャンセル指示が入力されたか否かを判別し、入力された場合にはステップS34へ移行し、入力されなかった場合にはステップS19に戻る。
【0069】
ステップS20〜S22:CPU21は、バッファメモリ13上のRAW画像に対して、所定の画像処理、ユーザの指定したカラーモードの色空間変換処理、データ圧縮処理を順に施し、データ圧縮済みの保存用画像を取得する。なお、CPU21は、少なくとも、ステップS13’にてRAW画像をバッファメモリ13上に書き込んでからステップ20の画像処理が開始されるまでの期間は、バッファメモリ13上のRAW画像の上書きを禁止する。
【0070】
ステップS23’:CPU21は、データ圧縮済みの保存用画像のJPEGファイルを作成すると共に、そのJPEGファイルのEXIF領域に対して、その保存用画像に適用された色空間の種類情報を書き込んでから、カードインタフェース19に対してそのJPEGファイルと、上書き指示とを与える。
【0071】
なお、ユーザの指定したカラーモードがカラーモードIIであった場合は、書き込まれるべき種類情報は「AdobeRGB空間」を示す情報となり、ユーザの指定したカラーモードIであった場合は、書き込まれるべき種類情報は「sRGB空間」を示す情報となる。
【0072】
カードインタフェース9は、CPU21から与えられたJPEGファイルをカードメモリ20へ書き込むと共に、ユーザの指定したRAW画像ファイルを消去する。これによって、ユーザの指定したRAW画像ファイルは、ユーザの指定したカラーモードのJPEGファイルに置き換わる。
【0073】
ステップS34:CPU21は、ユーザからRAW再生モードの終了指示が入力されたか否かを判別し、入力された場合にはフローを終了し、入力されなかった場合にはステップS31へ戻る(以上、図9の説明。)。
【0074】
以上、RAW再生モードにおけるCPU21の動作によると、ユーザは、カラーモードII、Iの各々の良否の程度をRAW再生時に内部モニタ17上で直感的に判断することができるので、JPEG圧縮すべき画像のカラーモードをRAW再生時に簡単に指定できる。したがってユーザは、カードメモリ20の空き容量を必要に応じて(外出先などで)増加させることができる。
【0075】
[変形例]
なお、上記実施形態のCPU21は、カラーモードIIの部分画像と、カラーモードIの部分画像とを内部モニタ17上へ並べて表示したが、図10に示すように、カラーモードIIの全体画像と、カラーモードIの全体画像とを内部モニタ17上へオーバーラップ表示してもよい。この状態でユーザが入力器23を操作すると、オーバーラップの上側に位置する画像と、オーバーラップの下側に位置する画像とを、入れ替えることができる。
【0076】
また、カラーモードIIの全体画像が上側に位置しているときにユーザが入力器23を操作すれば、カラーモードIIによる保存指示を電子カメラ1へ入力することができ、カラーモードIの全体画像が上側に位置しているときにユーザが入力器23を操作すれば、カラーモードIによる保存指示を電子カメラ1へ入力することができる。
【0077】
また、カラーモードIIの全体画像とカラーモードIの全体画像とをオーバーラップ表示する場合は、図11に示すとおり、カラーモードIの全体画像における色飽和画素を点滅表示させてもよい。なお、カラーモードIの全体画像における色飽和画素は、カラーモードIIの全体画像における特有色画素と同じ位置に配置された画素のことである。この場合、ユーザは、オーバーラップの上側に位置する画像を入れ替えながら、カラーモードIの全体画像上の色飽和画素と、カラーモードIIの全体画像上の特有色画素とを比較することにより、カラーモードII、Iの各々の良否の程度を判断すればよい。
【0078】
また、カラーモードIの画像の色飽和画素を点滅させる代わりに、カラーモードIIの画像の特有色画素の方を点滅表示させてもよい。或いは、カラーモードIの画像の色飽和画素と、カラーモードIIの画像の特有色画素との双方を点滅表示させてもよい。
【0079】
また、上述した実施形態では、色空間変換処理回路15が対応可能な色空間の組み合わせをAdobeRGB空間及びsRGB空間の組み合わせとしたが、別の組み合わせとしてもよい。例えば、AdobeRGB空間及びesRGB空間の組み合わせなどとしてもよい。また、対応可能な色空間の種類数を3以上としてもよい。
【0080】
また、特に、上述したカラーモードIIの色空間と上述したカラーモードIの色空間とが同一の色座標上に規定された色空間同士であった場合には、カラーモードIIの表示用画像とカラーモードIの表示用画像とを共通の色座標で表すための処理(ステップS16−II、S16−I)については、省略が可能である。
【0081】
また、上述した電子カメラ1のユーザは、外出先の施設などで電子カメラ1をテレビモニタなどの大型外部モニタに接続し、電子カメラ1をRAW再生モードに設定すれば、同様の指定(JPEG圧縮すべき画像のカラーモードの指定)を大画面上で行うことができる。
【0082】
また、上述したRAW再生モード(図9)の機能は、画像を保存する機能のある、電子カメラ以外の機器に搭載されてもよい。特に、この機能は、電子フォトフレーム、プリンタなどの可搬の機器に搭載すると有効性が高い。
【符号の説明】
【0083】
1…電子カメラ、11…撮像素子、12…信号処理回路、13…バッファメモリ、14…画像処理回路、15…色空間変換処理回路、16…表示制御回路、17…内部モニタ、18…圧縮・伸張回路、19…カードインタフェース、21…CPU、22…撮像回路、入力器、24…外部接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の色域を第1色域に収めるための第1変換処理を対象画像へ施して第1画像を生成すると共に、画像の色域を前記第1色域とは異なる第2色域に収めるための第2変換処理を前記対象画像へ施して第2画像を生成する変換処理部と、
前記変換処理部が前記対象画像から生成した前記第1画像の少なくとも一部を前記第1色域で表示部に表示させると共に、前記変換処理部が前記対象画像から生成した前記第2画像の少なくとも一部を前記第2色域で前記表示部に表示させる表示制御部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記表示制御部による前記第1画像及び前記第2画像の表示後、前記第1画像及び前記第2画像の一方の選択指示を受け付ける選択受付部と、
前記選択受付部が受け付けた前記選択指示に応じて前記第1画像及び前記第2画像の一方のデータ圧縮版を作成し、記録用画像として記録媒体へ記録させる記録制御部と
を更に備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記変換処理部は、
前記対象画像のサイズ縮小版から前記第1画像及び前記第2画像を生成し、
前記表示制御部は、
前記変換処理部が前記サイズ縮小版から生成した前記第1画像の少なくとも一部と、前記変換処理部が前記サイズ縮小版から生成した前記第2画像の少なくとも一部とを前記表示部に表示させ、
前記選択受付部は、
前記表示制御部による前記第1画像及び前記第2画像の表示後、前記第1画像及び前記第2画像の一方の選択指示を受け付け、
前記記録制御部は、
前記選択受付部が受け付けた前記選択指示に応じて前記対象画像のサイズ非縮小版から前記第1画像及び前記第2画像の一方を生成するよう前記変換処理部へ指示を与えると共に、前記変換処理部が前記サイズ非縮小版から生成した前記一方の画像のデータ圧縮版を、前記記録媒体へ記録させる
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の画像処理装置において、
前記表示制御部は、
前記第1画像及び前記第2画像の少なくとも一方に存在する色飽和画素の少なくとも一部を前記表示部上で強調させる
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置において、
前記表示制御部は、
前記第1画像及び前記第2画像の少なくとも一方のうち色飽和画素を最も多く含む領域を前記表示部上で拡大表示させる
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の画像処理装置において、
前記表示制御部は、
前記第1画像及び前記第2画像の少なくとも一方に存在する色飽和画素の少なくとも一部を前記表示部上で点滅表示させる
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
被写体を撮像して画像を取得する撮像部と、
前記撮像部が取得した前記画像を前記対象画像として処理する請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の画像処理装置と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項7に記載の撮像装置において、
前記第1画像を前記第1色域で表示可能であり、かつ前記第2画像を前記第2色域で表示可能な内部表示部を更に備えた
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の撮像装置において、
前記表示制御部は、
前記第1画像を前記第1色域で表示可能であり、かつ前記第2画像を前記第2色域で表示可能な外部表示部に対して前記表示に必要な信号を出力する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項7〜請求項9の何れか一項に記載の撮像装置において、
前記変換処理部は、
前記撮像部が取得したRAW画像を前記対象画像として処理する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
請求項7〜請求項10の何れか一項に記載の撮像装置において、
少なくとも前記変換処理部及び前記表示制御部の動作期間中には、前記撮像部が取得した前記画像は記憶部に記憶され続ける
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
画像の色域を第1色域に収めるための第1変換処理を対象画像へ施して第1画像を生成すると共に、画像の色域を前記第1色域とは異なる第2色域に収めるための第2変換処理を前記対象画像へ施して第2画像を生成する変換処理手順と、
前記変換処理手順で前記対象画像から生成した前記第1画像の少なくとも一部を前記第1色域で表示部に表示させると共に、前記変換処理手順で前記対象画像から生成した前記第2画像の少なくとも一部を前記第2色域で前記表示部に表示させる表示制御手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−49870(P2012−49870A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190830(P2010−190830)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】