説明

画像処理装置、撮像装置および画像処理プログラム

【課題】撮影画像中のデフォーカスによる色にじみを良好に補正する。
【解決手段】、画像処理装置は、撮像系101,102により生成された互いにフォーカス状態が異なる第1の画像および第2の画像における対応画素の色情報の差から、第1の画像にデフォーカスによる色にじみが発生しているか否かを判定する判定手段110と、第1の画像に対して、該判定手段によって判定された色にじみを補正する処理を行う補正手段104とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像により生成された画像の色にじみを補正する画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置を用いた撮像によって生成された画像は、該撮像装置に設けられた撮影光学系の収差によって劣化していることが多い。特に、カラー画像において生じる色にじみの原因の1つとして、撮影光学系の軸上色収差の影響がある。
光は波長によって屈折率が異なるため、撮影光学系に入射した互いに波長が異なる光は、撮影光学系の光軸方向における互いに異なる位置に結像する。一般に、撮像装置において撮影光学系により形成された被写体像(光学像)を電子的な画像情報に変換する撮像素子は、受光面が平面であり、該受光面上に形成された光学像のみが鮮明な画像情報に変換される。このため、軸上色収差の影響がある場合には、撮像素子により得られる画像情報は、ピントがぼけた色画像成分が重ね合わさることにより生じた色にじみを含む画像となる。
軸上色収差による色にじみを補正する方法として、特許文献1にて開示された方法がある。この方法では、撮影光学系と撮像素子の相対距離を各波長の光が撮像素子上に結像するように変化させながら各波長の鮮明な画像を取得し、これら画像を合成することで軸上色収差が補正されたカラー画像を得る。
また、一般にパープルフリンジ (Purple Fringe)と呼ばれる色にじみも画像を劣化させる原因である。パープルフリンジは、軸上色収差、色の球面収差および色のコマ収差により波長ごとの点像分布が異なっているために、画像中における高輝度領域の近傍等に紫系の色にじみが発生する現象である。このようなパープルフリンジを補正する方法としては、特許文献2にて開示された方法がある。この方法では、パープルフリンジの発生領域を輝度飽和領域からの距離と特定色の彩度および色相に対する近さとから判定し、該判定した領域に所定の空間演算処理を行うことで補正を行う。これは、パープルフリンジが輝度飽和領域の近傍で生じやすいことと、紫系の特定色となり易いことを利用した方法である。
【0003】
特許文献1にて開示された方法によれば、波長ごとの合焦画像を合成することで、軸上色収差を補正して画質を向上させることができる。また、特許文献2にて開示された方法によれば、パープルフリンジの発生領域を推測して、パープルフリンジをある程度補正することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−85773号公報
【特許文献2】特開2006−115039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際には、特許文献1,2にて開示された方法では色にじみを良好に補正できない場合がある。例えば、立体被写体を撮像して得られた画像に発生する色にじみである。撮像装置は、オートフォーカス機能やマニュアルフォーカスによって被写体空間の1つの面に焦点を合わせて撮像するが、被写体が立体物である場合には画角によって被写体距離が異なる。このとき、合焦点では比較的鮮鋭に撮像されるが、非合焦点はその被写体距離に応じたぼけ状態で撮像される。このとき、色にじみについては、軸上色収差、色の球面収差および色のコマ収差が被写体距離に応じて変動することから、合焦点からの距離に応じて異なる色にじみが生じる。このような被写体距離に応じて変動する色にじみを、本明細書では「デフォーカスによる色にじみ」と称する。
特許文献1にて開示された方法では、特定距離に位置する合焦被写体についてのみ軸上色収差に起因する色にじみを補正することが可能であり、デフォーカスによる色にじみは補正できない。また、特許文献2にて開示された方法でも、合焦点における色にじみの発生傾向を利用した方法であるため、デフォーカスによる色にじみについては良好な補正効果は得られない。
【0006】
本発明は、デフォーカスによる色にじみを良好に補正できるようにした画像処理装置、撮像装置および画像処理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての画像処理装置は、撮像系により生成された互いにフォーカス状態が異なる第1の画像および第2の画像における対応画素の色に関する情報の差から、第1の画像にデフォーカスによる色にじみが発生しているか否かを判定する判定手段と、第1の画像に対して、該判定手段によって判定された色にじみを補正する処理を行う補正手段とを有することを特徴とする。
なお、上記画像処理装置を有する撮像装置も本発明の他の一側面を構成する。
また、本発明のさらに他の一側面としての画像処理プログラムは、コンピュータに、撮像系により生成された互いにフォーカス状態が異なる第1の画像および第2の画像を取得するステップと、第1および第2の画像における対応画素の色に関する情報の差から、第1の画像にデフォーカスによる色にじみが発生しているか否かを判定する判定ステップと、第1の画像に対して、判定ステップにて判定された色にじみを補正する処理を行う補正ステップとを含む画像処理を行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮像により生成されたカラー画像に含まれるデフォーカスによる色にじみを低減(補正)することができ、高画質な出力画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1である撮像装置の構成を示すブロック図。
【図2】実施例1における撮像処理を示すフローチャート。
【図3】実施例1における撮像の様子を示す図。
【図4】実施例1における撮影画像を示す図。
【図5】実施例1における撮影画像中の色情報を示す図。
【図6】実施例1における色収差を説明する図。
【図7】実施例1における色情報を説明する図。
【図8】実施例1における色にじみ領域の判定を説明する図。
【図9】実施例1における色にじみ量の判定を説明する図。
【図10】本発明の実施例3である画像処理装置の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
図1には、本発明の実施例1である撮像装置の構成を示している。撮影光学系101は、開口径を変化させて光量(Fナンバー)を調節する絞り101aと、ピント調整を行うために光軸方向に移動するフォーカスレンズ101bとを含む。フォーカスレンズ101bの位置は、オートフォーカス(AF)によって制御されたり、マニュアルフォーカスによって変更されたりする。撮影光学系101は、不図示の被写体からの光に光学像である被写体像を形成させる。該被写体像は、CCDセンサやCMSOセンサ等の光電変換素子より構成された撮像素子102によって電気信号に変換される。
撮像素子102から出力された電気信号(アナログ信号)は、A/Dコンバータ103によってデジタル信号に変換され、画像処理部104に入力される。画像処理部104は、入力されたデジタル信号に対して種々の信号処理を行って画像データ(撮影画像)を生成する。撮影光学系101、撮像素子102および画像処理部104は、撮像系を構成する。
また、画像処理部(画像処理装置)104は、生成した撮影画像に対して、後述するデフォーカスによる色にじみの補正処理(以下、単に色にじみ補正という)を行う。具体的には、画像処理部104は、状態検知部107から撮影光学系101の状態(撮影条件)に関する情報を取得する。そして、画像処理部104は、撮像条件に応じた色変動情報を記憶部108から選択し、画像処理部104に入力された画像に対して色にじみ補正を行う。画像処理部104は、補正手段に相当する。
次に、図2のフローチャートを用いて、本実施例の撮像装置における上述した色にじみ補正を含む撮像処理の流れを説明する。撮像処理は、図1に示したマイクロコンピュータとしてのシステムコントローラ110がコンピュータプログラムに従って実行する。ここでは、撮影光学系101を、焦点距離が可変であるズームレンズとする。
ユーザ操作による撮像開始信号が入力されると、システムコントローラ110は、そのときの撮影光学系101のズーム位置において被写体に対して合焦する位置にフォーカスレンズ101bを移動させる(ステップS1)。このフォーカス制御は、撮影光学系制御部106を通じて行う。これにより、撮像の主たる対象である主被写体の光学像(以下、主被写体像という)が、撮像素子102の受光面上に鮮明に形成される。このときのフォーカスレンズ101bの位置を第1フォーカス位置という。
次に、システムコントローラ110は、状態検知部107から撮影条件に関する情報を取得する(ステップS2)。ここにいう撮影条件とは、撮影光学系101のズーム位置、絞り値(F値)およびフォーカスレンズ101bの位置である。
次に、システムコントローラ110は、取得した撮影条件に関する情報を用いてデフォーカスによる色にじみが発生し得る被写体距離範囲を算出する。そして、該被写体距離範囲内において、第1フォーカス位置とは異なるフォーカスレンズ101bの位置である第2フォーカス位置を決定する(ステップS3)。
次に、システムコントローラ110は、フォーカスレンズ101bが第1フォーカス位置にある状態で1回目の撮像を行い、画像処理部104に色にじみ補正前の第1の撮影画像(第1の画像)を生成させる(ステップS4)。この第1の撮影画像を、本実施例における色にじみ補正における基準画像とする。システムコントローラ110は、基準画像を画像処理部104に一時的に格納する。
【0012】
こうして1回目の撮像が完了すると、システムコントローラ110は、撮影光学系制御部106を介してフォーカスレンズ101bを第2フォーカス位置に移動させる(ステップS5)。
そして、システムコントローラ110は、フォーカスレンズ101bが第2フォーカス位置にある状態で2回目の撮像を行い、画像処理部104に色にじみ補正前の第2の撮影画像(第2の画像)を生成させる(ステップS6)。この第2の撮影画像を、本実施例における色にじみ補正におけるが比較画像とする。システムコントローラ110は、比較画像を画像処理部104に一時的に格納する。
以下、システムコントローラ110は、上記コンピュータプログラムの一部(または別のコンピュータプログラムであってもよい)である画像処理プログラムに従って色にじみ補正を行う。
システムコントローラ110は、画像処理部104に格納された基準画像と比較画像の対応画素ごとに色に関する情報を検出する(ステップS7)。色に関する情報は、色差、彩度および色相のうち少なくとも1つを含めばよいが、本実施例では、彩度および色相を用いる。なお、以下の説明では、色に関する情報を色情報と略記する。
彩度および色相を検出するため、RGB成分により構成される基準画像と比較画像を、輝度成分と色成分を別々に持つ色空間に変換する。変換データの色空間としては、例えば、YCbCrやCIE Lなどが適用可能である。本実施例ではCIE L色空間の場合について説明する。
CIE L色空間における色情報である彩度Cと色相θは、色度a,bによって決まる量である。基準画像の任意の座標である(x,y)における色情報を彩度C1(x,y)、色相θ1(x,y)と表記する。また、比較画像の座標(x,y)における色情報を彩度C2(x,y)、色相θ2(x,y)と表記する。基準画像中の座標(x,y)の画素と比較画像中の座標(x,y)の画素とは、互いに座標が同じ対応画素である。
【0013】
次に、システムコントローラ110は、判定手段として、色にじみ補正における第1の処理である色にじみ判定(色にじみ領域判定)を行う(ステップS8)。
ここでは、撮像時のフォーカスレンズ101bの位置が異なるためにフォーカス状態が異なる基準画像と比較画像における対応画素の色情報の変動量(つまりは色情報の差)を判定することで、デフォーカスによる色にじみが発生しているか否かを判定する。そして、この判定により、色にじみが発生している領域(色にじみ領域)を判定することができる。色にじみが発生しているか否かおよび色にじみ領域の判定は、以下の式を用いて行うことができる。Jc,Jθはそれぞれ、以下の式で定義される色情報、すなわち彩度および色相の変化量である。
Jc=C1(x,y)−C2(x,y)
Jθ=θ1(x,y)−θ2(x,y)
彩度および色相の変化量Jc,Jθが0となる場合は、フォーカス状態の違いによって色情報の変動(差)が生じていない、つまりデフォーカスによる色にじみが発生していないことを意味する。一方、彩度および色相の変化量Jc,Jθが0以外の値である場合は、デフォーカスによる色にじみが発生していることを意味する。これにより、色にじみが発生していることおよび色にじみ領域を判定することが可能となる。
【0014】
ここで、彩度および色相の変化量が0となる場合と0以外の値となる場合の例を図3〜8を用いて説明する。図3は、近点から遠点に向かって斜めに配置された被写体である黒い棒611〜615を撮像装置601で撮像している状態を示している。撮像装置601のピントは被写体613に合っている。この状態で撮像された画像を図4に示す。また、図4中の被写体613,614を含む領域(図中に矢印で示す部分)の色情報を図5に断面図として示す。
図5中の被写体613は、撮像装置601が合焦する被写体距離(合焦距離)に位置し、被写体614は合焦距離よりも遠距離に位置している。図5中の上段には、基準画像における被写体613,614を含む領域の色情報を示している。また、中段は被写体613と被写体612との間の距離を合焦距離として取得された比較画像における被写体613,614を含む領域の色情報を示している。
基準画像では、合焦距離に位置する被写体613に対してG成分が合焦している。このため、G成分のエッジのぼけが最も少なくなっている。R成分およびB成分はほぼ同じ量だけG成分に比べてぼけている。このときの結像状態を、図6を用いて説明する。
図6は合焦距離(中段)、合焦距離よりも近距離(上段)および合焦距離よりも遠距離(下段)に位置する被写体から撮像素子102に入射する、互いに波長が異なるR,G,Bの光線を示している。合焦距離では、G光線は撮像素子102上にて結像して鮮明なG成分の被写体像を形成しているが、R光線およびB光線は撮像素子102上では広がりを有し、RおよびB成分の被写体像はぼけている。
また、遠距離では、R光線およびB光線は撮像素子102上にて結像して鮮明なR,B成分の被写体像を形成しているが、G光線は撮像素子102上で広がりを有し、G成分の被写体像はぼけている。さらに、近距離では、R,G,B光線のいずれも広がりを有し、特にRおよびB光線の広がりがG光線の広がりよりも大きい。
なお、図6は、撮像装置601の撮影光学系の軸上色収差を示しているが、撮影画角のうち撮影光学系の光軸から離れた位置においても撮影光学系の基本の結像特性に非対称性が発生するものの、色情報の変動については同様の現象が発生する。
さらに、図5の中段に示す比較画像では、被写体613の結像状態は、該被写体613が合焦距離に位置する場合(基準画像の場合)に比べて、合焦距離よりも遠距離に位置する場合の結像状態に近づき、G成分の被写体像のぼけが主に増大する。また、比較画像では、被写体614の結像状態は、該被写体614がさらに遠距離に位置する場合の結像状態になり、R,G成分のぼけが主に増大する。
ここで、図5中の被写体614の近傍の画素の座標1(x1,y1)と、被写体614の中心近傍の画素の座標2(x2,y2)と、被写体613の近傍の画素の座標3(x3,y3)における色情報について説明する。図7には、例として、a空間における基準画像および比較画像の座標1(x1,y1)での色情報を示す。図5から明らかなように、座標1(x1,y1)では、RGB各色のフォーカス状態の変動によるぼけ量の違いが生じている。このため、図7に示すように、彩度および色相はともに変動する。この変動は、撮影光学系101のデフォーカス特性に対応するものであり、特定距離の被写体に対してフォーカス状態の異なる2つの画像間では同様の変動が必ず生じる。同様に、画像座標3(x3,y3)においても彩度および色相がともに変動する。また、座標2(x2,y2)では、図5から明らかなように、フォーカス変動によるぼけ量の違いが生じていないため、彩度および色相はともに変動しない。
それぞれの座標における彩度および色相の変化量は、以下の式により、基準画像と比較画像の対応画素間の色情報の差を算出することで求められる。
Jc(x1,y1)=C1(x1,y1)−C2(x1,y1)
Jθ(x1,y1)=θ1(x1,y1)−θ2(x1,y1)
Jc(x2,y2)=C1(x2,y2)−C2(x2,y2)
Jθ(x2,y2)=θ1(x2,y2)−θ2(x2,y2)
図5および図7より明らかなように、彩度および色相の変化量は以下のようになる。
Jc(x1,y1)>0
Jθ(x1,y1)>0
Jc(x2,y2)=0
Jθ(x2,y2)=0
つまり、彩度の変化量Jcと色相の変化量Jθが0以外の値となる場合は、その座標でデフォーカスによる色にじみが発生していることを示し、JcとJθがいずれも0となる座標では色にじみが発生していないことを示す。このような判定を、画像全体に対して行うことで、図8に示すように、基準画像におけるデフォーカスによる色にじみが発生している領域(色にじみ領域)を判定することが可能となる。
色にじみ領域が存在する場合には、システムコントローラ110は、色にじみ補正における第2の処理としての色にじみ量推定を行う(ステップS9)。基準画像中に色にじみ領域が存在しない場合は、デフォーカスによる色にじみが生じていないとして、色にじみ補正を終了する。
【0015】
次に、色にじみ量推定について説明する。上述したように、フォーカス状態が異なる基準画像と比較画像との間でのデフォーカスによる色にじみによる色情報の変動は、撮影光学系101のデフォーカス特性に対応する。つまり、ある撮影条件下において、軸上色収差、色のコマ収差および色の球面収差が、ピントが合っている被写体距離位置(合焦基準位置)からの被写体距離のずれ量(デフォーカス量)dに応じて変動することに対応する。
図9には、本実施例の撮影光学系101における第1フォーカス位置を合焦基準位置としたときのデフォーカス量と彩度Cおよび色相θとの関係を示す。これらの関係から分かるように、デフォーカスによる色にじみが発生している領域内での色情報の変動は、デフォーカス量を変数とした関数として考えることができる。
ここで、彩度Cおよび色相θのデフォーカス量を変数とした関数として、彩度変動関数fc(d)および色相変動関数fθ(d)を定義する。これらの2つの関数を特定することができれば、基準画像における色にじみを容易に補正できる。
彩度変動関数fc(d)および色相変動関数fθ(d)を特定するためには、原理的に被写体距離の情報、被写体色の情報および撮影条件に応じたフォーカス状態の変動に伴う撮影光学系101の光学性能の変動に関する情報(光学性能変動情報)が必要である。被写体距離に関しては、従来様々な測定手法が提案されているが、そのほとんどが撮影光学系以外に特殊な装置が必要である等、実施することが容易でないものであった。
そこで、本実施例では、既知のデフォーカス量だけフォーカス状態を異ならせた基準画像と比較画像との間での色情報の変動量から、被写体距離情報および被写体色情報と同等の情報を得る。
具体的には、システムコントローラ110は、まず基準画像の取得時(生成時)の撮影条件下におけるフォーカス状態の変動に伴う撮影光学系101の光学性能の変動に関する情報である光学性能変動情報を、予めこれら情報が記憶された記憶部108から取得する。光学性能変動情報は、軸上色収差、色のコマ収差および色の球面収差といった色収差の変動を示す情報である。この光学性能変動情報から、彩度変動関数fc(d)および色相変動関数fθ(d)のデフォーカス量に対する変動率が求められる。
そして、システムコントローラ110は、光学性能変動情報、基準画像と比較画像の各画素の色情報、C1,C2,θ1,θ2、被写体距離および被写体色をパラメータとして彩度変動関数fc(d)と色相変動関数fθ(d)を推定する演算を行う。すなわち、図9に示すfc(d)とfθ(d)グラフがC1,C2,θ1,θ2を通るように彩度変動関数と色相変動関数を推定する。
なお、本実施例では、基準画像と比較画像の2つの画像を用いて彩度変動関数fc(d)および色相変動関数fθ(d)を推定する場合について説明しているが、比較画像の数を増加させてより推定精度を向上させることもできる。
最後に、システムコントローラ110は、色にじみ補正の第3の処理として、彩度変動関数fc(d)および色相変動関数fθ(d)から、被写体色と色にじみ推定量とを算出する。そして、画像処理部104に、これら被写体色と色にじみ推定量とを用いて、基準画像に対してデフォーカスによる色にじみを低減するための色補正処理を行わせる(ステップS10)。
図5の下段に、色にじみ補正後の画像を示す。ここでは、G成分を基準として色にじみ補正を行っているが、R成分やB成分を基準とした色にじみ補正を行うことも可能である。
また、上述した各処理は、1画素ごとに行ってもよいし、高速化等の目的に応じて複数の画素を含む領域ごとに行ってもよい。
以上のようにして基準画像中の各画素に対する色にじみ補正が完了し、色にじみ補正後の出力画像を、図1に示す表示部105に表示したり、半導体メモリ等の記録媒体109に記録したりすることで、撮像処理が終了する。
本実施例では、撮影光学系101を撮像装置に一体的に設けた場合について説明したが、撮影光学系を含む交換レンズと該交換レンズが着脱される撮像装置本体とにより撮像装置を構成してもよい。
【実施例2】
【0016】
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例では、撮像素子102として、RGBのカラーフィルタがベイヤー配列形式で並べられた撮像素子(ベイヤー型撮像素子)を用いて撮影画像を生成する撮像装置について説明する。
ベイヤー型撮像素子の各画素から得られる信号は、RGBのいずれか1つの色成分の信号値を有している。このような信号によって形成される画像データをRAW画像データと称する。RAW画像データの各画素は、1つの色成分の信号値しか有していないため、出力画像として各画素にRGB値を持たせるために色合成処理(デモザイキング処理)を行う。色合成処理は、対象とする画素の周辺の複数の画素の信号値を用いて補間処理を行うことで、各画素にRGB値を持たせることができる。
【0017】
しかし、RAW画像データは各画素に1つの信号値しか持たないため、色情報を抽出することができない。本実施例では、基準画像および比較画像がともにRAW画像である場合の色にじみ補正について説明する。本実施例の撮像装置の構成は、図1に示したものと基本的に同じであるので、共通する構成要素には図1と同符号を付す。
【0018】
まず、システムコントローラ110は、各画素の色情報を得るため、色情報の取得対象画素の周辺の画素の信号値を用いて、取得対象画素の色に関する特徴量を抽出する。これは、上述した色合成処理によって行ってもよいし、色合成処理を必要最小限に簡易化した処理によって行ってもよい。また、色情報として、実施例1で説明した彩度や色相を用いてもよい。これ以外にも、YCbCr、XYZ、YuvおよびJChで表現される色空間のいずれかを選択して用いることができる。
このように、色に関する特徴量の表現方法は様々存在し、任意の表現方法で画素の色情報を表現することができる。このように本実施例にいう「色情報」は、色に関する特徴量であれば、どのような表現方法によって表される情報であってもよい。このことは、先に説明した実施例1のように、もともとの1画素がRGB値を有する場合も同じである。
システムコントローラ110は、このようにして取得した各画素の色情報を一旦保存しておく。そして、実施例1と同様に、フォーカス状態の異なる基準画像と比較画像の対応画素の色情報の変動量を判定することで、色にじみ領域を判定する。
なお、色にじみ領域の判定については、YCbCr等の色空間に対応した比較方法を用いて行ってもよい。その他、YuvのuvやLuvのuvを用いてもよい。
【0019】
次に、システムコントローラ110は、色にじみ領域について、実施例1と同様の手法により、色にじみ量を推定して色にじみを補正する。
なお、色にじみ補正として、補正対象画素の近隣の画素を用いた補完による空間演算等の手法を用いることも可能である。また、色にじみ補正量に関しては、得ようとする出力画像の画質レベルや処理の負荷量の許容値等に応じて決定すればよい。
さらに、上記各実施例にて説明した色にじみ補正をより正確に行うために、画像のエッジ部を抽出し、基準画像と比較画像のエッジ部を抽出し、該エッジ部を参照してこれら画像の座標合わせを行ってもよい。
【実施例3】
【0020】
上記各実施例では、撮像装置に、画像処理装置としての画像処理部104を内蔵した場合について説明したが、本発明はこれに限らない。
【0021】
例えば図10に示すように、撮像装置1401による撮像によって生成された画像をパーソナルコンピュータ1402に送信する。送信方法は、ケーブル方式、無線方式のいずれでもよく、インターネットやLANを介して送信してもよい。
【0022】
そして、パーソナルコンピュータ1402において、図2のフローチャートのうちステップS7〜S10の色にじみ補正処理を行ってもよい。この場合、パーソナルコンピュータが本発明にいう画像処理装置として機能する。
【0023】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
デフォーカスによる色にじみを良好に補正可能な画像処理装置や撮像装置を提供できる。
【符号の説明】
【0025】
101 撮影光学系
102 撮像素子
104 画像処理部
110 システムコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像系により生成された互いにフォーカス状態が異なる第1の画像および第2の画像における対応画素の色に関する情報の差から、前記第1の画像にデフォーカスによる色にじみが発生しているか否かを判定する判定手段と、
前記第1の画像に対して、前記判定手段によって判定された色にじみを補正する処理を行う補正手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記撮像系のフォーカス状態の変動に応じた色収差の変動を示す情報と前記第1および第2の画像における各画素の前記色に関する情報とを用いて前記色にじみの量を推定し、該推定量に基づいて前記色にじみを補正する処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
撮像により画像を生成する撮像系と、
請求項1又は2に記載の画像処理装置とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
コンピュータに、
撮像系により生成された互いにフォーカス状態が異なる第1の画像および第2の画像を取得するステップと、
前記第1および第2の画像における対応画素の色に関する情報の差から、前記第1の画像にデフォーカスによる色にじみが発生しているか否かを判定する判定ステップと、
前記第1の画像に対して、前記判定ステップにて判定された前記色にじみを補正する処理を行う補正ステップとを含む画像処理を行わせることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項5】
前記補正ステップは、前記コンピュータに、前記撮像系のフォーカス状態の変動に応じた色収差の変動を示す情報と、前記第1および第2の画像における各画素の前記色に関する情報とを用いて前記色にじみの量を推定させ、該推定量に基づいて前記色にじみを補正する処理を行わせることを特徴とする請求項1に記載の画像処理プログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−160255(P2011−160255A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21015(P2010−21015)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】