説明

画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法

【課題】背景画像に対して移動する物体に対しても背景画像と同時に画質を向上させることのできるフレーム積分処理を実現可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、背景画像の背景移動量MBと、目標物体Oの目標移動量MOとをそれぞれ求める。そして、連続する画像フレーム101、102の一方の画像に対して背景移動量MB+目標領域に対してのみ目標移動量MO分だけずらした後、フレーム積分処理をおこなう。すなわち、背景画像のずれとともに、目標物体のずれが補正された連続した画像フレーム101、102に対してフレーム積分される。したがって、背景画像および目標物体Oの双方のS/N比の改善効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像フレームに補正処理を施して画質を向上させる画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静止画像に対して、複数フレームの各画素レベルを加算することにより、画像のS/N(Signal to Noise ratio)比を改善させて画質に含まれているノイズを低減させるフレーム積分処理が広く用いられている。図14は、従来のフレーム積分処理を示す説明図である。図14のように、動画データ1401は複数(ここでは、フレーム数をFとする)の画像フレーム1400の集合体である。
【0003】
このような動画データ1401にフレーム数分の、フレーム積分処理をおこなった場合、信号(S)はF倍になるのに対して、ランダムノイズ(N)は√F倍となる。すなわち、S/N比は、√F倍改善される。このようなフレーム積分の特性を利用して、さらに、シーン全体が移動している場合、画像の移動分を算出し、移動分だけ画像をずらしてフレーム積分してS/N比を改善する手法もある。
【0004】
図15は、従来のフレーム加算処理を示す説明図である。図15の画像フレーム1501は、シーン全体が移動するような映像を構成する1フレームである。このような場合には、連続するつぎの画像フレーム1502と比較して移動分Mのずれが生じている。したがって、画像フレーム1501を移動分M分ずらした後、画像フレーム1502とのフレーム積分をおこなう。
【0005】
上述の技術を用いたものとして、たとえば、基準画像に対してシーン全体の移動分を算出しその分ずらしてフレーム積分処理をおこなう画像処理方法や(たとえば、下記特許文献1参照。)、カメラの向きやプラットフォームの状態等の情報を使用してシーン全体の移動分を算出しその分ずらしてフレーム積分処理をおこなう目標検出処理装置が開示されている(たとえば、下記特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開平9−56707号公報
【特許文献2】特開2003−270317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のフレーム積分処理は、画像データのS/N比を改善するのに有効な処理であるが、基本的にシーン内容の変化が充分小さい画像に対してしか使用できなかった。また、上記特許文献1、2の技術の場合、シーン全体(背景)の移動分を算出している。したがって、背景に対して移動している目標物体に関してはS/N比を改善させることはできなかった。
【0008】
図16は、従来のフレーム積分処理の問題点を示す説明図である。図16のように、画像フレーム1601と、連続するつぎのフレームである画像フレーム1602とを比較すると、背景画像と、目標物体Oとの双方が移動していることがわかる。しかしながら、従来の技術では、背景画像の移動分Mは補正されるためフレーム積分によりS/N比が改善されるが、目標物体Oに関しては、かえってS/N比が劣化してしまうという問題があった。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、背景画像に対して移動する物体に対しても背景画像と同時に画質を向上させることのできる画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法は、N番目の画像フレームの背景画像と、N+1番目の画像フレームの背景画像との位置のずれを算出して、前記N+1番目の画像フレームの背景画像の移動量を求める処理と、前記N番目の画像フレームの画像全体の位置を、求められた移動量移動させて、背景位置を補正した背景補正フレームを生成する処理と、生成された背景補正フレームと、前記N+1番目の画像フレームとを比較して、双方のフレームに共通して含まれる所定の特徴を含んだ画像を目標物体として検出する処理と、検出された前記背景補正フレームに含まれる目標物体と、前記N+1番目の画像フレームに含まれる目標物体との位置のずれを算出して、前記目標物体の移動量を求める処理と、前記背景補正フレームに含まれる目標物体を、求められた移動量移動させて、前記目標物体の位置を補正した目標物体補正フレームを生成する処理と、生成された目標物体補正フレームと、前記N+1番目の画像フレームとを積分して補正画像フレームを生成する処理と、生成された補正画像フレームを出力する処理と、を含むことを要件とする。
【0011】
この画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法によれば、N番目の画像フレームとN+1番目の画像フレームとを比較して背景画像の移動量を補正するとともに、目標物体の移動量も補正された画像フレームによってフレーム積分をおこなうことができる。
【発明の効果】
【0012】
この画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法によれば、背景画像に対して移動する物体に対しても背景画像と同時に画質を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
(画像処理の概要)
まず、本実施の形態にかかる画像処理の概要について説明する。図1は、本実施の形態にかかる画像処理の概要を示す説明図である。図1の画像フレーム101と、画像フレーム102とは、動画を構成する連続したフレームの一例である。画像フレーム101と画像フレーム102とを比較すると、背景画像に対して目標物体Oが目標移動量MO移動しているとともに、背景画像自体も背景移動量MB移動している。
【0015】
本実施の形態の場合、背景画像の背景移動量MBと、目標物体Oの目標移動量MOとをそれぞれ求める。そして、連続する画像フレーム101、102の一方の画像に対して背景移動量MB+目標領域のみ目標移動量MO分だけずらした後、フレーム積分処理をおこなう。すなわち、背景画像のずれとともに、目標物体のずれが補正された連続した画像フレーム101、102に対してフレーム積分される。したがって、背景画像および目標物体Oの双方のS/N比の改善効果が得られる。
【0016】
このように、本実施の形態の画像処理を用いることによって、移動する目標物体に対して自動的に背景移動量と目標移動量の双方が補正されたフレームに対してフレーム積分処理が適用されるため、目標物体に対しても背景画像と同様にS/N比が改善されたフレーム積分画像を得ることができる。以下に、本実施の形態の画像処理を適用した具体的な画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法について説明する。
【0017】
なお、以下の説明では、連続するN番目の画像フレームとN+1番目の画像フレームの移動量を求めた後、前のN番目の画像フレームに対して移動量を反映させ、後のN+1番目の画像フレームと位置関係を統一させるものとする。これと反対に、求めた移動量を後のN+1番目の画像フレームに反映させN番目の画像フレームを基準に位置関係を統一させた後にフレーム積分をおこなってもよい。
【0018】
(画像処理装置のハードウェア構成)
まず、本実施の形態にかかる画像処理を適用させた画像処理装置200のハードウェア構成について説明する。図2は、画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0019】
図2において、画像処理装置200は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、磁気ディスクドライブ204と、磁気ディスク205と、光ディスクドライブ206と、光ディスク207と、ディスプレイ208と、通信I/F(インターフェース)209と、キーボード210と、マウス211と、リアルタイム画像取得装置212と、プリンタ213と、を備えている。また、各構成部はバス220によってそれぞれ接続されている。
【0020】
ここで、CPU201は、画像処理装置200の全体の制御を司る。ROM202は、ブートプログラムなどのプログラムを記憶している。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。磁気ディスクドライブ204は、CPU201の制御にしたがって磁気ディスク205に対するデータのリード/ライトを制御する。磁気ディスク205は、磁気ディスクドライブ204の制御で書き込まれたデータを記憶する。
【0021】
光ディスクドライブ206は、CPU201の制御にしたがって光ディスク207に対するデータのリード/ライトを制御する。光ディスク207は、光ディスクドライブ206の制御で書き込まれたデータを記憶したり、光ディスク207に記憶されたデータを画像処理装置200に読み取らせたりする。
【0022】
また、光ディスク207として、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto−Optical)、メモリーカードなどを採用することができる。ディスプレイ208は、カーソル、アイコンあるいはツールボックスをはじめ、文書、画像、機能情報などのデータを表示する。このディスプレイ208は、たとえば、CRT(Cathode Ray Tube)、TFT(Thin Film Transistor)液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどを採用することができる。
【0023】
通信I/F209は、通信回線を通じてインターネットなどのネットワーク214に接続され、このネットワーク214を介して他の装置に接続される。そして、通信I/F209は、ネットワーク214と内部のインターフェースを司り、外部装置からのデータの入出力を制御する。通信I/F209には、たとえば、モデムやLAN(Local Area Network)アダプタなどを採用することができる。
【0024】
キーボード210は、文字、数字、各種指示などの入力のためのキーを備え、データの入力をおこなう。また、タッチパネル式の入力パッドやテンキーなどであってもよい。マウス211は、カーソルの移動や範囲選択、あるいはウィンドウの移動やサイズの変更などをおこなう。ポインティングデバイスとして同様に機能を備えるものであれば、トラックボールやジョイスティックなどであってもよい。
【0025】
リアルタイム画像取得装置212は、ディジタルビデオカメラなどを使用し画像処理装置200内にリアルタイムに動画像を取り込むことができる。また、プリンタ213は、画像データや文書データを印刷する。プリンタ213には、たとえば、レーザプリンタやインクジェットプリンタを採用することができる。
【0026】
(画像処理装置の機能的構成)
つぎに、画像処理装置の機能的構成について説明する。図3は、画像処理装置200の機能的構成を示すブロック図である。図3において、画像処理装置200は、背景移動量算出部301と、背景補正部302と、目標物体検出部303と、目標物体移動量算出部304と、目標物体補正部305と、フレーム積分部306と、出力部307と、を含んでいる。これら各機能301〜307は、画像処理装置200の記憶部に記憶された当該機能301〜307に関するプログラムをCPUに実行させることにより、当該機能を実現することができる。
【0027】
まず、背景移動量算出部301には、N番目の画像フレームと、N+1番目の画像フレームとが入力され、N番目の画像フレームの背景画像と、N+1番目の画像フレームの背景画像との位置のずれを算出する。ここで、N番目の画像フレームの背景画像と、N+1番目の画像フレームの背景画像との位置のずれを算出するには、たとえば、2つの背景画像の差分を求める手法がある。この算出結果を、N番目の画像フレームに対するN+1番目の画像フレームの背景画像の移動量として出力する。
【0028】
背景補正部302には、N番目の画像フレームと、背景移動量算出部301によって求められた移動量とが入力され、N番目の画像フレームの画像全体の位置を入力された移動量分移動させる。移動処理が施されたN番目の画像フレームは、背景位置を補正した背景補正フレームとして出力される。
【0029】
目標物体検出部303には、背景補正部302によって生成された背景補正フレームと、N+1番目の画像フレームとが入力され、2つの画像フレームを比較し、双方のフレームに共通して含まれる所定の特徴を含んだ画像を目標物体として検出する。
【0030】
目標物体移動量算出部304には、N+1番目の画像フレームと、目標物体検出部303によって検出された目標物体とが入力され、背景補正フレームに含まれる目標物体と、N+1番目の画像フレームに含まれる目標物体との位置のずれを算出して、目標物体の移動量を求める。ここでも、背景補正フレームに含まれる目標物体と、N+1番目の画像フレームに含まれる目標物体との位置のずれを算出する一例として、2つの目標物体の差分を求めてもよい。
【0031】
目標物体補正部305には、背景補正フレームと、目標物体の移動量とが入力され、背景補正フレームに含まれる目標物体を入力された目標物体の移動量だけ移動させる。この目標物体の位置が補正された背景補正フレームは、目標物体補正フレームとして出力される。
【0032】
フレーム積分部306には、目標物体補正部305によって生成された目標物体補正フレームと、N+1番目の画像フレームとが入力され、2つの画像フレームを積分して補正画像フレームを生成する。生成された補正画像フレームは、出力部307によって外部に出力される。
【0033】
(実施例)
つぎに、本実施の形態にかかる画像処理装置200によるフレーム補正の具体的な実施例について説明する。図4は、画像処理装置における画像フレーム補正処理部の構成を示すブロック図である。図4の各機能部401〜407は、図4に示した機能を実現する処理の実現例であり、具体的には、低解像度画像作成部401、402と、背景移動量算出部403と、画像ずらし処理部(全体)404と、目標物体検出/移動量算出部405、画像ずらし処理部(目標物体画像群のみ)406と、フレーム積分部407と、を含んでいる。
【0034】
<解像度調整処理>
一般的に画像処理装置200に入力される画像フレームには、背景画像と目標物体Oとが混在していることが多い。そして、本実施の形態のように目標物体OのS/N比の改善を目的とする場合は、目標物体Oが含まれた画像フレームの処理が必須となる。したがって背景画像と目標物体とを区別して検出するには、画像フレームに特別な処理を施す必要がある。そこで、画像処理装置200では、低解像度画像作成部401、402によって画像フレームの解像度の低下処理を実行し、目標物体Oを含まないような画像フレームに作り替える。
【0035】
図5は、画像フレームの解像度調整処理を示す説明図である。低解像度画像作成部401、402には、目標物体Oを含んだ画像フレーム501が入力される。たとえば、この画像フレーム501の解像度が640×480画素サイズとすると、この画像フレーム501の画素を10画素ごとに抽出して、画像フレーム502のように64×48画素サイズにする。
【0036】
たとえば、画像フレーム501に含まれる目標物体Oのサイズが10×10画素サイズであれば、上述の解像度の低下処理によって、画像フレーム502に含まれる目標物体Oのサイズは1×1画素サイズとなる。さらに、画像フレーム502に対して解像度低下処理を実行することによって、画像フレーム503のように目標物体Oをほとんど含まない画像となる。
【0037】
このように、低解像度画像作成部401、402では、入力された画像フレーム501に対して所定の割合で解像度を低下させる解像度低下処理を実行する。そして、解像度を低下させた画像フレーム502に対してさらに解像度低下処理を実行して目標物体Oがほとんど含まれない背景画像による画像フレーム503に作り替えることができる。ここで、図6は、N番目の画像フレームの低解像度化を示す説明図である。また、図7は、N+1番目の画像フレームの低解像度化を示す説明図である。
【0038】
図6のように、N番目の画像フレーム601は、低解像度画像作成部401によって、目標物体Oをほとんど含まない画像フレーム602に作り替えられる。また、図7のように、N+1番目の画像フレーム701は、低解像度画像作成部402によって、目標物体Oをほとんど含まない画像フレーム702に作り替えられる。低解像度画像作成部401、402によって作り替えられた画像フレーム602、702は、背景移動量算出部403に出力される。
【0039】
<背景移動量算出処理>
つぎに、背景移動量算出部403によって背景画像の移動量が算出される。図8は、背景移動量算出処理を示す説明図である。図8のように、背景移動量算出部403では、低解像度画像作成部401によって作成されたN番目の画像フレーム602と、低解像度画像作成部402によって作成されたN+1番目の画像フレーム702とを比較し、背景画像の位置のずれを算出する。背景移動量算出部403によって算出された位置のずれが連続する画像フレーム(N、N+1番目)の背景移動量MBとなる。
【0040】
<全体画像の移動量補正処理>
つぎに、画像ずらし処理部404による全体画像の移動量補正処理について説明する。画像ずらし処理部404では、背景移動量算出部403によって算出された背景移動量MBを用いてN番目の画像フレーム画像601(図6参照)の全体画像の位置を移動させる。図9は、全体画像の移動量補正を示す説明図である。図9のように、画像ずらし処理部404では、N番目の画像フレーム画像601の全体が背景移動量MB分ずらした背景補正画像901が生成される。
【0041】
<目標物体の検出・移動量算出処理>
つぎに、目標物体検出/移動量算出部405による目標物体Oの検出処理と移動量算出処理について説明する。目標物体検出/移動量算出部405には、画像ずらし処理部404によって生成されたN番目の画像フレームの背景補正画像901(図9参照)と、N+1番目の画像フレーム701(図7参照)とが入力され、双方の画像フレームに含まれる移動体である目標物体Oを検出する。
【0042】
ここで目標物体Oの検出処理について詳しく説明する。目標物体検出/移動量算出部405の目標物体抽出機能部には、不図示の分割部と、最大変化画像領域検出部と、マッチング部とが含まれている。分割部は、画像ずらし処理部404によって生成されたN番目の画像フレームの背景補正画像901と、N+1番目の画像フレーム701とを、それぞれ共通の画像領域群に分割する。そして、最大変化画像領域検出部は、分割部によって分割された画像領域群の中から画像変化量の最も大きい画像領域を検出する。最後に、マッチング部が最大変化画像領域検出部によって検出された画像領域にテンプレートマッチングをおこなうことによって、目標物体Oを検出することができる。
【0043】
さらに、上述した検出処理を図10−1〜図10−3を用いて順番に説明する。図10−1は、目標物体の領域限定処理を示す説明図である。まず、画像フレームの中のどの領域に目標物体Oが含まれているかを抽出して処理対象を限定しなければならない。したがって、図10−1のように、画像フレームの背景補正画像901を小さな領域群に分解し、N+1番目の画像フレーム701と比較した場合に、画像の変化レベルの大きな領域を抽出する。
【0044】
図10−1の画像フレーム1001では、背景補正画像901と、N+1番目の画像フレーム701と比較した場合に変化レベルが大きく抽出される領域A、Bを太枠にしてあらわしている。このように、画像の変化レベルが大きい領域とは、すなわち連続する画像フレームに表示される移動体が含まれる領域となる。したがって、自動的に目標物体Oを含んだ領域が抽出される。
【0045】
目標物体Oが含まれる領域が抽出されると、抽出された領域に限定してテンプレートマッチングをおこなう。図10−2は、テンプレートマッチング処理を示す説明図である。図10−2のように、画像フレーム1002では、図10−1にて抽出された領域A、Bがそのままテンプレートマッチング領域Rとなる。テンプレートマッチングとは、特定のパターンを検出するための画像などを用意し、処理対象画像と比較して特定パターンと一致する箇所を検出する処理である。
【0046】
目標物体検出/移動量算出部405では、目標物体を検出するための画像が用意され、テンプレートマッチング領域Rとの比較処理がおこなわれる。なお、目標物体を検出するための画像は、あらかじめ用意してもよいし、N番目の画像フレーム601の前に画像処理が終了した他のフレーム(たとえば、N−1番目、N−2番目の画像フレームなど)から用意してもよい。
【0047】
テンプレートマッチングが終了するとマッチング結果に基づいて、目標物体Oが検出される。図10−3は、検出された目標物体Oを示す説明図である。図10−3のように、画像フレーム1003では、どの領域にどのような形状の目標物体Oが含まれているかが特定される。以上の処理によって目標物体Oの検出処理が終了する。
【0048】
目標物体検出/移動量算出部405では、目標物体Oが検出されると、つぎに、目標物体Oの移動量の算出処理がおこなわれる。図11は、目標物体移動量算出処理を示す説明図である。目標物体検出/移動量算出部405では、上述した検出処理によって、N+1番目の画像フレーム701と、背景補正画像901とに含まれる目標物体Oが検出済みである。したがって、図11のように、N+1番目の画像フレーム701と、背景補正画像901とに含まれる目標物体Oの位置のずれを算出する。目標物体検出/移動量算出部405によって算出された目標物体Oの位置のずれは、目標移動量MOとして出力される。
【0049】
<目標物体の移動量補正処理>
つぎに、画像ずらし処理部406による目標物体Oの移動量補正処理について説明する。図12は、目標物体の移動量補正を示す説明図である。画像ずらし処理部406には、背景補正画像901と、目標移動量MOとが入力される。したがって、画像ずらし処理部406は、図12のように、背景補正画像901の目標物体Oが目標移動量MO分ずらされた目標物体補正画像1201が生成される。
【0050】
<フレーム積分処理>
最後に、フレーム積分部407によるフレーム積分処理について説明する。図13は、フレーム積分処理を示す説明図である。フレーム積分部407には、背景画像、目標物体Oの双方の移動量が補正された目標物体補正画像1201と、N+1番目の画像フレーム701とが入力される。したがって、この2つの画像フレーム1301を用いて積分をおこなう。具体的には下記(1)式によって、画像フレームを構成する個々の画素が出力される。
【0051】
【数1】

【0052】
N番目の画像フレームを構成するすべての画素についての算出処理が終了すると、N番目の画像フレーム401の補正画像フレームが出力され、N番目の画像フレーム601に対する一連の画像処理が終了する。画像処理装置200は、続いて、N+1番目の画像フレーム701とN+2番目の画像フレーム(不図示)が入力されるため、N+1番目の画像フレーム701についても、N番目の画像フレーム601と同様の処理が施され、補正画像フレームとして出力される。これら一連の処理は画像処理装置200に入力された動画データが終了するか、利用者や上位システムからの終了指示が入力されるまで継続される。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態によれば、動画データを構成する連続する画像フレームを比較して背景画像の移動量を補正するとともに、目標物体の移動量を補正された画像フレームによってフレーム積分をおこなうことができる。したがって、背景画像に対して移動する物体に対しても背景画像と同時に画質を向上させることができる。
【0054】
なお、本実施の形態で説明した画像処理方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な媒体であってもよい。
【0055】
また、本実施の形態で説明した画像処理装置200は、スタンダードセルやストラクチャードASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定用途向けIC(以下、単に「ASIC」と称す。)やFPGAなどのPLD(Programmable Logic Device)によっても実現することができる。具体的には、たとえば、上述した画像処理装置200の機能(301〜307)をHDL記述によって機能定義し、そのHDL記述を論理合成してASICやPLDに与えることにより、画像処理装置200を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施の形態にかかる画像処理の概要を示す説明図である。
【図2】画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】画像処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】画像処理装置における画像フレーム補正処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】画像フレームの解像度調整処理を示す説明図である。
【図6】N番目の画像フレームの低解像度化を示す説明図である。
【図7】N+1番目の画像フレームの低解像度化を示す説明図である。
【図8】背景移動量算出処理を示す説明図である。
【図9】全体画像の移動量補正を示す説明図である。
【図10−1】目標物体の領域限定処理を示す説明図である。
【図10−2】テンプレートマッチング処理を示す説明図である。
【図10−3】検出された目標物体を示す説明図である。
【図11】目標物体移動量算出処理を示す説明図である。
【図12】目標物体の移動量補正を示す説明図である。
【図13】フレーム積分処理を示す説明図である。
【図14】従来のフレーム積分処理を示す説明図である。
【図15】従来のフレーム加算処理を示す説明図である。
【図16】従来のフレーム積分処理の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
101 画像フレーム
102 補正後画像フレーム
200 画像処理装置
201 CPU
202 ROM
203 RAM
204 磁気ディスクドライブ
205 磁気ディスク
206 光ディスクドライブ
207 光ディスク
208 ディスプレイ
209 通信I/F
210 キーボード
211 マウス
212 リアルタイム画像取得装置
213 プリンタ
214 ネットワーク(NET)
301 背景移動量算出部
302 背景補正部
303 目標物体検出部
304 目標物体移動量算出部
305 目標物体補正部
306 フレーム積分部
307 出力部
401、402 低解像度画像作成部
403 背景移動量算出部
404 画像ずらし処理部(全体)
405 目標物体検出/移動量算出部
406 画像ずらし処理部(目標物体画像群のみ)
407 フレーム積分部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N番目の画像フレームの背景画像と、N+1番目の画像フレームの背景画像との位置のずれを算出して、前記N+1番目の画像フレームの背景画像の移動量を求める背景移動量算出手段と、
前記N番目の画像フレームの画像全体の位置を、前記背景移動量算出手段によって求められた背景移動量だけ移動させて、背景位置を補正した背景補正フレームを生成する背景補正手段と、
前記背景補正手段によって生成された背景補正フレームと、前記N+1番目の画像フレームとを比較して、双方のフレームに共通して含まれる所定の特徴を含んだ画像領域を目標物体として検出する目標物体検出手段と、
前記目標物体検出手段によって検出された、前記背景補正フレームに含まれる目標物体と、前記N+1番目の画像フレームに含まれる目標物体との位置のずれを算出して、前記目標物体の移動量を求める目標物体移動量算出手段と、
前記背景補正フレームに含まれる目標物体を、前記目標物体移動量算出手段によって求められた目標物体の移動量だけ移動させて、前記目標物体の位置を補正した目標物体補正フレームを生成する目標物体補正手段と、
前記目標物体補正手段によって生成された目標物体補正フレームと、前記N+1番目の画像フレームとをフレーム積分して補正画像フレームを生成するフレーム積分手段と、
前記フレーム積分手段によって生成された補正画像フレームを出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
入力された画像フレームを、所定の割合で解像度を低下させる解像度の低下処理を実行する解像度調整手段を備え、
前記背景移動量算出手段は、前記解像度調整手段による解像度低下後のN番目の画像フレームと、解像度低下後のN+1番目の画像フレームとの位置のずれを算出して、前記N+1番目の画像フレームの背景画像の移動量を求めることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記解像度調整手段は、前記背景画像以外の画像が含まれなくなるまで前記解像度の低下処理を繰り返し実行することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記目標物体検出手段は、前記背景補正手段によって生成された背景補正フレームと、前記N+1番目の画像フレームとを、それぞれ共通の画像領域群に分割する分割手段と、
前記分割手段によって分割された画像領域群の中から画像変化量の最も大きい画像領域を検出する最大変化画像領域検出手段と、
前記最大変化画像領域検出手段によって検出された画像領域にテンプレートマッチングをおこなうマッチング手段と、を備え、
前記マッチング手段によるテンプレートマッチング結果を参照して前記目標物体を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項5】
コンピュータを、
N番目の画像フレームの背景画像と、N+1番目の画像フレームの背景画像との位置のずれを算出して、前記N+1番目の画像フレームの背景画像の移動量を求める背景移動量算出手段、
前記N番目の画像フレームの画像全体の位置を、前記背景移動量算出手段によって求められた移動量移動させて、背景位置を補正した背景補正フレームを生成する背景補正手段、
前記背景補正手段によって生成された背景補正フレームと、前記N+1番目の画像フレームとを比較して、双方のフレームに共通して含まれる所定の特徴を含んだ画像を目標物体として検出する目標物体検出手段、
前記目標物体検出手段によって検出された前記背景補正フレームに含まれる目標物体と、前記N+1番目の画像フレームに含まれる目標物体との位置のずれを算出して、前記目標物体の移動量を求める目標物体移動量算出手段、
前記背景補正フレームに含まれる目標物体を、前記目標物体移動量算出手段によって求められた目標物体の移動量だけ移動させて前記目標物体の位置を補正した目標物体補正フレームを生成する目標物体補正手段、
前記目標物体補正手段によって生成された目標物体補正フレームと、前記N+1番目の画像フレームとをフレーム積分して補正画像フレームを生成するフレーム積分手段、
前記フレーム積分手段によって生成された補正画像フレームを出力する出力手段、
として機能させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項6】
N番目の画像フレームの背景画像と、N+1番目の画像フレームの背景画像との位置のずれを算出して、前記N+1番目の画像フレームの背景画像の移動量を求める背景移動量算出工程と、
前記N番目の画像フレームの画像全体の位置を、前記背景移動量算出工程によって求められた背景移動量だけ移動させて、背景位置を補正した背景補正フレームを生成する背景補正工程と、
前記背景補正工程によって生成された背景補正フレームと、前記N+1番目の画像フレームとを比較して、双方のフレームに共通して含まれる所定の特徴を含んだ画像を目標物体として検出する目標物体検出工程と、
前記目標物体検出工程によって検出された前記背景補正フレームに含まれる目標物体と、前記N+1番目の画像フレームに含まれる目標物体との位置のずれを算出して、前記目標物体の移動量を求める目標物体移動量算出工程と、
前記背景補正フレームに含まれる目標物体を、前記目標物体移動量算出工程によって求められた目標物体の移動量だけ移動させて前記目標物体の位置を補正した目標物体補正フレームを生成する目標物体補正工程と、
前記目標物体補正工程によって生成された目標物体補正フレームと、前記N+1番目の画像フレームとをフレーム積分して補正画像フレームを生成するフレーム積分工程と、
前記フレーム積分工程によって生成された補正画像フレームを出力する出力工程と、
を含むことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−245159(P2009−245159A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90931(P2008−90931)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】