説明

画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】ザラツキがなく、装置内部の温度変化によっても画質が劣化しない、マルチビームの飛び越し走査によるポリゴン光学系に最適であり、また倍率調整のための画素の挿入、削除が行われる画像形成装置に最適である。
【解決手段】解像度変換部350では、原画像を主、副走査方向に4倍の密度の画像に変換する。変倍部352では、アドレス生成部354で指定された画素位置に、白画素を挿入することにより画像を副走査方向にシフトさせる。副走査補正部360では、変倍処理後の画像に対して、副走査方向に1画素の膨張処理を行い、網点または網点の埋め残し部を奇数画素で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザプリンタ、デジタル複写機、ファックス等の電子写真プロセスを用いた画像形成装置に用いられる画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真プロセスを用いたレーザプリンタ、デジタル複写機などの画像形成装置の高速化、高密度化が進み、露光プロセスを実行する装置として、レーザビームによる光走査装置が採用されている。画像形成の高速化、高密度化の要求に対し、光走査装置側でポリゴンスキャナの高速化により対応すると、ポリゴンミラーの風きり音や駆動モータの駆動音などの騒音が増大するとともに、消費電力の増大や耐久性の劣化などの問題も生ずる。これに対して、光走査装置をマルチビーム化する手法は、上記した環境問題が発生せず、画像形成の高速化、高密度化を実現する方法として有効である。
【0003】
光走査装置をマルチビーム化する方式において、複数の発光点が等間隔に配列されたLDアレイを用い、さらに走査線間隔を不均一にして、飛び越し走査を行なう方式が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このような飛び越し走査を使うと、光源と被走査面間の副走査方向の横倍率が偏向角により異なっても、主走査位置による走査線間隔のばらつきと、濃度むらを低減することができ、高解像度の画像を形成することができる。
【0004】
ところで、従来、軽印刷と言われていた分野で、上記した画像形成装置が利用されているが、最近の省資源の要請から両面印刷技術が重要である。電子写真方式の両面印刷では、用紙の第1面を記録し、熱定着を行い、次に第2面を記録する方式を採るため、例えば第1面と第2面とでは、0.2%〜0.4%の倍率差が生じる。そこで、倍率調整や曲がり補正などのために画素の間引きあるいは画素の挿入技術が提案されている(例えば、特許文献2、3を参照)。
【0005】
露光系の解像度が、例えば4800dpiとすると、飛び越し走査で形成されるビームの副走査ピッチは約5.2μmとなる。レーザビームの走査幅がA3サイズとすると、約420mmの走査幅にわたって、5.2μmのピッチを維持しなければならないことになる。これは調整が難しく、調整のための工数(コスト)が増大する。
【0006】
また、装置内部の温度変化などによっても、ピッチが変化してしまうため、5.2μmを維持することが難しい。そのため、装置が稼動して温度が変化するに伴い、画像に濃度ムラが発生し、画質が安定しないという課題がある。
【0007】
さらに、ガルバノミラーによる往復走査環境における走査ピッチのムラに起因する濃度ムラの発生に関して、副走査方向に3以上の奇数個の画素を有するセルが、主走査方向に隣接して配置する方式も提案されている(例えば、特許文献4を参照)。ガルバノミラーによる走査線の粗密の発生は規則的であるため、セルを副走査方向に奇数にして、形成される網点が副走査方向に偶数であっても濃度差が解消される。
【0008】
しかしながら、この方式では、ポリゴンによる飛び越し走査光学系では、必ずしも濃度差が解消できず、また、セルを奇数にすることにより、セルのサイズ選択が制約されることにより、所望のスクリーン線数を得ることができないという課題がある。さらに、前述した、画素の間引きあるいは画素の挿入を行う場合に、この方法では濃度ムラを解消できないという課題がある。
【0009】
この他に、光量ムラ、ピッチムラを防ぐために、非等方的なディザを使う方式が提案されている(例えば、特許文献5を参照)。
開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、非等方的なディザは一般に、ざらついた印象を与えるため、出力装置の性能を選ぶ傾向があり、必ずしも電子写真プロセスの画像形成装置に適用できるものではない。
【0011】
本発明は上記した課題に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、ザラツキがなく、装置内部の温度変化によっても画質が劣化しない、マルチビームの飛び越し走査によるポリゴン光学系に最適であり、また倍率調整のための画素の挿入、削除が行われる画像形成装置に最適な画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、副走査方向に駆動される感光体と、一定方向に回転するポリゴンにより前記感光体上を主走査方向に複数のビームを走査し、前記複数のビームは飛び越し走査による書き込み走査光学系であり、画像信号に従って露光し、電子写真プロセスにより画像を形成する画像形成装置において、前記画像の網点または網点の埋め残し部を、副走査方向に奇数個の連続した画素で構成する画像処理手段を備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
1.網点または網点の埋め残し部が、副走査方向に奇数個の連続した画素で構成されているので、飛び越し走査のピッチムラがある場合でも濃度ムラが抑制される。
2.ディザマスクのセルのサイズが奇数に限定されないので、スクリーン角やスクリーン線数の自由度に制限を与えない。また、ディザマスクが等方的でもよいので、どのような電子写真の画像形成装置に適用しても安定で高画質な印刷物を出力できる。
3.元となる入力画像を偶数倍に密度変換を行い、密度変換を行った結果に対して副走査方向に1画素の画素膨張をするようにしたので、簡単な回路構成で実現できる。
4.注目画素周辺の濃度レベルを判断し、その判断結果に基づき、網点もしくは網点の埋め残し部を選択して副走査方向に1画素膨張するようにしたので、濃度レベルに応じて、特に極低濃度部と極高濃度部において適切に濃度ムラを抑制できる。
5.注目画素周辺の濃度レベルの判断としては、副走査方向の画素の並びからその濃度レベルを判断するものであるので、簡単な構成で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の画像形成装置の構成を示す。
【図2】面発光型半導体レーザの構成を示す。
【図3】光学装置が感光体ドラムを露光する構成を示す。
【図4】飛び越し走査の走査位置を説明する図である。
【図5】制御ユニットの構成を示す。
【図6】GAVDの詳細な構成を示す。
【図7】実施例1に係る画像処理部の構成例を示す。
【図8】副走査変倍部の動作を説明する図である。
【図9】副走査変倍部の動作を説明する図である。
【図10】濃度ムラの発生を説明する図である。
【図11】実施例2に係る画像処理部の構成例を示す。
【図12】レベル判断部の構成を示す。
【図13】網点または網点の埋め残し部の画素を1画素分だけ下側に膨張させた場合の図である。
【図14】1画素を4倍の密度に変換処理した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態について図面により詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
(画像形成装置の説明)
図1は、本発明の画像形成装置の構成を示す。画像形成装置100は、ポリゴンミラー102aなどの光学要素を含む光学装置102と、感光体ドラム、帯電装置、現像装置などを含む像形成部112と、中間転写ベルトなどを含む転写部122により構成される。光学装置102は、半導体レーザとして図示しないVCSEL200(図2、図3を参照)を含んで構成される。図1に示す例では、VCSEL200から射出された光ビームは、一旦、図示しない第1シリンドリカルレンズにより集光され、ポリゴンミラー102aにより、反射ミラー102bへと偏向される。
【0017】
VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)200とは、同一チップ上に複数の光源(半導体レーザ)を格子状に配置した面発光型半導体レーザである。VCSEL200を使用した画像形成装置としては様々な技術があり、本発明の画像形成装置100の光学装置102には、これらの公知技術と同様の構成で、VCSEL200が組み込まれている。
【0018】
図2は、光学装置102に組み込まれたVCSEL200の構成を示す。VCSEL200は、図2に示すように、複数の光源ch1〜ch40(複数の発光点)が斜め格子状に配置された半導体レーザアレイを構成している。
【0019】
画像形成装置100は、fθレンズを使用しないポストオブジェクト型の光学装置102を構成する。ch1〜ch40からなる光ビームLは、図示した実施例では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色に対応した数、発生されていて、ポリゴンミラー102aにより偏向されたビームLは、反射ミラー102bで反射され、第2シリンドリカルレンズ102cで再度集光された後に感光体ドラム104a、106a、108a、110aを露光している。
【0020】
光ビームLの照射は、上述したように複数の光学要素を使用して行われるため、主走査方向および副走査方向のタイミングの同期がとられる。以下、主走査方向を、光ビームの走査方向として定義し、副走査方向を、主走査方向に対して直交する方向として定義する。
【0021】
感光体ドラム104a、106a、108a、110aは、アルミニウムなどの導電性ドラム上に、少なくとも電荷発生層と、電荷輸送層とを含む光導電層を備えている。光導電層は、それぞれ感光体ドラム104a、106a、108a、110aに対応して配設され、コロトロン、スコロトロン、または帯電ローラなどで構成される帯電器104b、106b、108b、110bにより表面電荷が付与される。
【0022】
各帯電器104b、106b、108b、110bにより感光体ドラム104a、106a、108a、110a上に付与された静電荷は、光ビームLにより像状露光され、静電潜像が形成される。感光体ドラム104a、106a、108a、110a上に形成された静電潜像は、現像スリーブ、現像剤供給ローラ、規制ブレードなどを含む現像器104c、106c、108c、110cにより現像され、現像剤像が形成される。
【0023】
感光体ドラム104a、106a、108a、110a上に担持された現像剤は、搬送ローラ114a、114b、114cにより矢線Aの方向に移動する中間転写ベルト114上に転写される。中間転写ベルト114は、C、M、Y、Kの現像剤を担持した状態で2次転写部へと搬送される。2次転写部は、2次転写ベルト118と、搬送ローラ118a、118bにより構成される。2次転写ベルト118は、搬送ローラ118a、118bにより矢線Bの方向に搬送される。2次転写部には、給紙カセットなどの受像材収容部128から上質紙、プラスチックシートなどの受像材124が搬送ローラ126により供給される。
【0024】
2次転写部は、2次転写バイアスを印加して、中間転写ベルト114上に担持された多色現像剤像を、2次転写ベルト118上に吸着保持された受像材124に転写する。受像材124は、2次転写ベルト118の搬送と共に定着装置120へと供給される。定着装置120は、シリコーンゴム、フッソゴムなどを含む定着ローラなどの定着部材130により構成され、受像材124と多色現像剤像とを加圧加熱し、印刷物132として画像形成装置100の外部へと出力する。多色現像剤像を転写した後の転写ベルト114は、クリーニングブレードを含むクリーニング部116により転写残現像剤が除去された後、次の像形成プロセスへと供給される。
【0025】
(ポリゴン光学系の説明)
図3は、VCSEL200を含む光学装置102が感光体ドラム104aを露光する構成を示す。VCSEL200から射出された光ビームLは、光ビーム束を整形するために使用される第1シリンドリカルレンズ202により集光され、反射ミラー204および結像レンズ206を経た後、ポリゴンミラー102aにより偏向される。ポリゴンミラー102aは、数千〜数万回転するスピンドルモータなどにより回転駆動されている。ポリゴンミラー102aで反射された光ビームLは、反射ミラー102bで反射された後、第2シリンドリカルレンズ102cにより再整形され、感光体ドラム104a上を露光する。
【0026】
また、光ビームLの副走査方向への走査開始タイミングを同期するため、反射ミラー208が配置されている。反射ミラー208は、副走査方向の走査を開始する以前で、光ビームLを、フォトダイオードなどを含む同期検出装置210へと反射させる。同期検出装置210は、当該光ビームを検出すると、副走査を開始させるために同期信号を発生させ、VCSEL200への駆動制御信号の生成処理などの処理を同期する。
【0027】
VCSEL200は、後述するGAVD310から送付されるパルス信号により駆動され、後述するように、画像データの所定の画像ビットに対応する位置に光ビームLが露光され、感光体ドラム104a上に静電潜像を形成する。
【0028】
(飛び越し走査方式の説明)
図4は、ch1〜ch40の40ビームからなる光ビームLによって、感光体上での飛び越し走査が行われる、その走査位置を説明する図である。
【0029】
感光体上での露光解像度は4800dpi、従って、図4の画素間の間隔(マス目)は約5.2μmとなる。ある時点での走査S1とその次のポリゴンミラー面による走査S2を説明する。まず、ポリゴンミラー面は一度に40ビームをスキャンする。ビームは40チャンネルで、中央部の20チャンネル(ch20)目と21チャンネル(ch21)目の間は近接している。その他のチャンネルの間は、1走査ラインの間隙を作って主走査方向に走査するような位置関係に構成されている。
【0030】
チャンネル20とチャンネル21との中間点aの位置が、副走査方向におけるレンズ群の中央であり、副走査方向に対称になっている。あるポリゴン面で、このような位置関係で水平走査が行われると、次の面では図中のS2で示すラインを走査し、S1のラインの21チャンネル(ch21)と22チャンネル(ch22)との隙間を、今度は1チャンネル(ch1)が走査するように構成されている。また、Y、C、Mについても同様である。このようにして、4800dpi解像度の書込みユニットが構成されている。
【0031】
このような、全体としては40ビームからなる飛び越し走査光学系であり、中央の20−21ch間が近接していることにより、8の倍数で飛び越しができる。8の倍数で処理できることは、画像処理のための回路を構成する上でも扱いやすくなる。また、光源としてVCSEL(面発光レーザーダイオード)を利用した場合に光源配置の自由度が高いという利点がある。また、通常の飛び越し走査よりも、1ch〜40ch間の副走査ビーム間隔が狭くなり、最も外側のビームが光軸よりそれ程遠ざかることがなくなるので、副走査ビームピッチのばらつき、ビームスポット径のばらつきが低減できる。また、走査レンズの有効範囲も小さくでき、光学素子の小型化も可能となる、という利点がある。
【0032】
(画像処理装置の説明)
図5は、画像形成装置100の制御ユニット300の構成を示す。制御ユニット300は、スキャナ部302と、プリンタ部308と、主制御部330として構成されている。スキャナ部302は、画像を読み取る手段として機能しており、スキャナが読み取った信号をA/D変換して黒オフセット補正、シェーディング補正、画素位置補正を行うVPU304と、取得された画像を、RGB表色系からCMYK表色系での画像データとしてデジタル変換するための画像処理を行うIPU306により構成されている。スキャナ部302が取得した読み取り画像は、デジタルデータとしてプリンタ部308へと送られる。
【0033】
プリンタ部308は、VCSEL200の駆動制御を行う制御手段として機能するGAVD(Gate Array Video Device:ビデオ処理ゲートアレイ)310と、GAVD310が生成した駆動制御信号により半導体レーザ素子を駆動させるための電流を、半導体レーザ素子に供給するLDドライバ312と、2次元的に配置された半導体レーザ素子を実装するVCSEL200により構成される。本実施例のGAVD310は、スキャナ部302から送られた画像データを、VCSEL200の射出する半導体レーザ素子の空間的なサイズに対応するように分割して高解像度化処理を実行する。
【0034】
また、スキャナ部302とプリンタ部308は、システムバス316を介して主制御部330と接続されていて、主制御部330の指令により、画像読み取りおよび画像形成が制御されている。主制御部330は、中央処理装置(以下、CPU)320と、RAM322とを含んでいる。CPU320は、インタフェース328を介してユーザからの指令を受け付け、指令に対応する処理を実行するプログラムモジュールを呼び出して、コピー、ファクシミリ、スキャナ、イメージストレージなどの処理を実行させる。さらに、主制御部330は、ROM324を含み、CPU320の初期設定データ、制御データ、プログラムなどを格納する。イメージストレージ326は、ハードディスク装置、メモリカードなどの固定または着脱自在のメモリ装置として構成され、画像形成装置100が取得した画像データを格納して、ユーザによる各種処理のために利用可能としている。
【0035】
スキャナ部302が取得した画像データについてプリンタ部308を駆動して感光体ドラム104aなどに静電潜像として画像を出力する場合、CPU320は、上質紙、プラスチックフィルムなどの受像材の主走査および副走査方向の制御を実行する。CPU320は、副走査方向のスキャンを開始させる場合、GAVD310にスタート信号を出力する。GAVD310は、スタート信号を受信すると、IPU306がスキャン処理を開始する。その後、GAVD310は、バッファメモリなどに格納した画像データを受信し、その後、受信した画像データを処理し、処理した画像データをLDドライバ312に出力する。LDドライバ312は、GAVD310から画像データを受け取ると、VCSEL200の駆動制御信号を生成する。その後、LDドライバ312は、この駆動制御信号をVCSEL200に送出することにより、VCSEL200を点灯させる。LDドライバ312は、半導体レーザ素子を、PWM制御などを使用して駆動させる。本実施例のVCSEL200は、半導体レーザ素子を40ch備えるが、VCSEL200のチャネル数はこれに限定されない。
【0036】
(GAVDの機能ブロック図)
図6は、GAVD310の詳細な構成を示す。GAVD310は、同期信号を受信して、IPU306から出力される画像データを格納して記憶するFIFOバッファなどのメモリ340を備えていて、IPU306から送信された画像データを先入れ/先出し方式で画像処理部342に渡している。画像処理部342は、メモリ340から画像データを読み込んで、画像データの解像度変換、半導体レーザ素子チャネルの割当て、および画像ビット(すなわち、画像データを変倍するための補正画素)の追加・削除の処理および画像データの副走査方向の補正処理を実行する。
【0037】
画像データは、主走査方向に規定される主走査ラインアドレス値および副走査方向に規定される副走査ラインアドレス値により、感光体ドラム104aに対して露光される位置が規定されている。以下、本実施例では、アドレス座標とは、画像データを主走査ラインアドレス値(Rアドレス値)および副走査ラインアドレス値(Fアドレス値)で指定した場合の特定の画像ビットを与える各アドレス値のセットとして定義する。これらのアドレス値は、アドレス生成部354(図7)によって決定される。また、これらのアドレス座標は、主走査方向および副走査方向のラインに並んだ画素(すなわち画素列)ごとに定められている。そして、副走査変倍部352(図7)はRアドレス値およびFアドレス値で指定された座標のアドレスに位置する画素に対して、画素ビットを挿入する等の変倍処理を行う。変倍された画像データは副走査補正部360(図7)により、副走査方向に補正処理が行われる。
【0038】
出力データ制御部344は、画像処理部342が生成した画像データに対応する書き込み信号となる出力データを、Fアドレス値および副走査速度から時系列的な駆動パルスに変換し、さらに同期検出装置210に対して同期信号を与えるための同期制御信号を追加して生成する。生成された駆動制御信号は、LDドライバ312に伝送され、VCSELを駆動する。また、出力データ制御部344には、同期検出装置210からの同期信号が入力され、LDドライバ312への駆動制御信号の伝送を同期させている。なお、メモリ340、画像処理部342、出力データ制御部344の処理は、PLL346により動作クロックに同期している。
【0039】
図7は、図6の画像処理部342の構成(実施例1)を示す。解像度変換部350は、メモリ340から取得した1200dpi画像データの単位画素に対して、VCSEL200による露光解像度に対応して当該画素の照射を行うレーザ素子チャネルに割当てられるように、縦横4倍の密度処理を実施する。これにより、図14に示すように、データ解像度1200dpiの1画素(a)は、副走査方向に2の倍数からなる、書き込み解像度4800dpiの4×4画素(b)に変換される。
【0040】
副走査変倍部352は、画像パスセレクタ358と、シフト保持用メモリ356とを備えている。副走査変倍部352は、アドレス生成部354からの、画像を形成するために使用するFアドレスおよびRアドレスを受け取り、処理対象となっているアドレス値が画像ビットを追加(挿入)または削除するアドレス値を含むか否かを判断する。副走査変倍部352は、画像ビットを追加・削除するアドレスについては、例えば追加フラグまたは削除フラグなどの変倍指令信号を生成し、画像パスセレクタ358およびシフト保持用メモリ356に渡す。シフト保持用メモリ356は、画像ビットをシフトさせるシフト量を格納しており、変倍指令信号をカウントし保持する。画像パスセレクタ358は、画像拡大時であって追加の変倍指令信号が設定されている場合、当該画像ビットのデータを白データに設定し、以後の画像データを1ビット分ずつシフトさせる。変倍指令信号が設定されていない場合は、シフト保持用メモリ356からのシフト量を元に、解像度変換部350からの入力データを選択し、出力する。
【0041】
本実施例で、半導体レーザとして40ch VCSEL200を使用するものとする場合、追加・削除する位置を示す信号およびシフト量を示す信号は40ch分割り当てられ、VCSEL200の駆動のために使用される。画像ビットの追加・削除の計算は、画像処理部342の専用モジュールとして構成することができ、他のモジュールの一部として構成できる。変倍命令信号をカウントする理由は、画像ビットをシフトさせる場合に、例えば、1走査目に画像ビットを追加した後、2走査目の最初に画像ビットを追加する位置を特定するためである。
【0042】
図8、9を用いて、副走査変倍部の動作を説明する。
副走査変倍部は、図8に示すように、規則的に並んだ黒印の位置に画素(白画素)を挿入することにより、画像を全体に副走査方向にシフトする処理を行う。
【0043】
図9(a)は、4800dpiでの元画像を示す。左上から主走査方向に画素がa0、a1、a2...と並び、次の行は左から主走査方向に画素がb0、b1、b2...と並び、メモリ内に展開されている。また、主走査方向のアドレスをR0、R1、R2...で表し、副走査方向のアドレスをF0、F1、F2...で表すことにする。
【0044】
これに対して、画像を副走査方向にシフトする処理(伸ばす処理)を行う。シフトするときには画素を挿入する(逆に縮小する場合には画素を削除する)。
【0045】
図9(b)は、画像と対応付けて画素(白画素)の挿入位置を*印で示す(変倍指令信号)。この挿入位置は規則的に並んでいるので、実際にはメモリに展開せずに、ロジック回路によって主走査および副走査を与えることにより、挿入位置に該当するか否かを調べる。
【0046】
変倍のための読み出し処理を説明する。
F0について、まずR0のa0を読み出す。ここは、図9(b)のように、挿入位置に該当するので、画素データとして白を出力する。そして、図9(d)に示すように、シフト保持レジスタR0のところに「1」を書き込む。次に、R1のa1を読み出す。ここは、挿入位置に該当しないので、a1がそのまま出力される。このようにして最初の行を処理する。図9(c)のF0の行は、この処理結果を示す。
【0047】
次のF1行に処理が移る。R0について、最初の画素は、本来はb0を読み出すところであるが、R0についてはシフト保持レジスタが「1」になっているので、1つ上のF0のデータを読み出す。そのため、出力はa0になる。
【0048】
R1に移ると、ここはシフト保持レジスタが「0」になっているので、データをそのまま読み出し、出力はb1になる。図9(c)のF1の行は、この処理結果を示す。
【0049】
同様に処理を行い、F14について説明する。R0はシフト保持レジスタが「1」なので、1つ上のデータを読み出し、出力はi0になる。R1は挿入位置に該当するので、白画素を出力する。そして、図9(e)に示すように、シフト保持レジスタのR1に「1」をセットする。R2はシフト保持レジスタが「0」なので、そのままj2が出力される。
【0050】
上記した操作を繰り返すことにより、図9(c)のように、出力画像は元画像(a)と比較して、徐々に副走査方向にずれることになる。これにより、シフト操作が達成される。
【0051】
このとき、露光に使用するビームが変化するわけではないので、副走査方向にh0〜k0の画素は、図9(a)ではF12〜の4ビームであるが、図9(c)ではF13〜の4ビームとなり、網点の形成を考えた場合、使用するビームが用紙内でずれることになる。
【0052】
上記した変倍処理が実行される理由を説明する。従来技術で述べたように、両面印刷で第1面(表面)を記録し、定着した際に、用紙が副走査方向に縮むことがあり、第2面(裏面)を記録すると、表裏の印刷ずれが発生する。そこで、定着時の副走査方向の縮みを解消するために、第2面(裏面)の印刷時に、画像を副走査方向にシフトすることにより、表裏の印刷ずれを補正している。
【0053】
図7に戻り、本実施例における副走査補正部360は、副走査変倍後の画像データの下エッジ側を1画素分膨張させるための回路ブロックである。副走査方向に変倍された画像データは、1ラインディレイ部361に送られ、元データと、1ラインディレイさせたデータが合成部362においてOR合成される。これにより、画像データはその下側エッジ部が1画素分だけ膨張させられる。
【0054】
図13(a)は、4×8画素の網点を示す。図13(b)は、図13(a)の網点を1画素分だけ下側(副走査方向)に膨張させた場合の図である。このように、副走査補正部360に入力する画像データは副走査方向に偶数画素(図13(a)は8画素)となるように構成し、さらに副走査補正部360は、副走査方向に1画素分だけ膨張させることにより、副走査方向の連続した画素の数は、必ず奇数画素(図13(b)は9画素)になるように構成される。
【0055】
(+1画素膨張の作用効果の説明)
このように副走査方向に奇数画素数になるようにすることにより、副走査の飛び越しピッチムラによる画像濃度ムラが解消される理由を説明する。
【0056】
飛び越し走査の場合、例えば図4に示すように走査ラインが構成される。しかし、調整や温度変化によって、走査ビームピッチがずれを生じる。
【0057】
図10は、走査ラインがずれていないときと、ずれてビームピッチずれが生じた場合のドット形成を示す。丸印がビームの走査位置を示す。楕円が形成される網点を示す。
【0058】
ビームピッチが副走査方向にずれていないとき、副走査方向に4個の偶数個の結合画素で網点画像を構成すると、図10(a)の網点210で示すような副走査方向の結合となる。ところが、温度変化などで、ビームピッチがずれる。そうすると、図10のch2、3、4、5、6とch23、24、25、26、27は別のポリゴン面による走査であり、図10(b)で示すような副走査位置になるので、(a)の網点210の形成ドットは、(b)の網点212のようになる。装置内で(a)の領域と(b)の領域が存在すると、網点210と網点212のように同一の露光エネルギーであるが、副走査のサイズが異なる部分が発生し、すなわち濃度ムラが発生する。
【0059】
さらに、副走査変倍による画素挿入によって、画像の位置がずれる場合を考える。たとえば、(b)の網点212が副走査方向(図下側)に向かって1画素ずれたとすると、4画素の結合状態は(c)の網点214となる。(b)と(c)を比較すると、どちらも4ビームでの露光で同一であるが、副走査方向の長さが異なっていることがわかる。このため、トナー像は(b)に比べて(c)の方が薄くなる。つまり、副走査変倍とビームピッチずれにより、さらなる濃度ムラが発生してしまう。
【0060】
ここで、本発明においては、副走査方向に1画素膨張しているので、副走査方向の4画素の結合は、5画素の結合に変換され、そして、露光が行われる。この場合、図10(a)の露光の場合は図10(d)の網点216になる。同じく、図10(b)は図10(e)の網点218に、図10(c)は図10(f)の網点220のように露光される。
【0061】
図10(d)〜図10(f)の網点216、218、220を比較すると、どちらも5ビームでの露光で露光エネルギーは同一である。また副走査方向の長さもほぼ同一となっているのがわかる。このためトナー像はほぼ同じ濃度となるため、ビームピッチずれがあっても濃度ムラを防止することができる。
【0062】
なお、図7の構成では、合成制御信号により、副走査方向の膨張をOFFにするモードも設けている。すなわち、副走査方向を膨張することにより、濃度がやや濃くなってしまう。装置内部の調整が十分で、副走査変倍を使わないときに、濃くしたくないユーザもあり、そのような場合には、副走査方向の膨張をOFFにすることによって膨張の機能をOFFにすることもできる。
【実施例2】
【0063】
図11は、実施例2に係る画像処理部342の構成例を示す。1200dpiの入力画像は、解像度変換部350により、縦横4倍の4800dpiの画像に変換される。変換された画像に対して、副走査変倍部352は、所定の画素挿入もしくは画素削除を行う。
【0064】
変倍された画像は、副走査補正部360に入力される。副走査補正部360は、画像をいったん画像バッファ363へ保存する。このバッファの値をレベル判断部364で判断し、主走査方向の各画素ごとに、注目画素の副走査方向の画素のON、OFFの並びから、画像の階調レベルが濃い部分(所定の閾値以上)か淡い部分(所定の閾値未満)かを判断する。
【0065】
淡い部分であると判断された場合には、実施例1と同様に、黒画素(ON側)の画素を拡大するようにOR合成回路366を機能させる。これにより、ON画素の下側のエッジが拡大される。
【0066】
濃い部分であると判断された場合には、逆に画素のOFF側(白側)の画素を拡大するようにAND合成回路367を機能させる。これにより、OFF画素の下側のエッジが拡大される。そして、セレクタ368は、レベル判断部364が淡い部分と判断したときOR合成回路366の出力を選択し、濃い部分と判断したときAND合成回路367の出力を選択する。
【0067】
図12は、レベル判断部364の構成例を示す。レベル判断部364は各主走査アドレスごとに、副走査方向の画素の並びを調べて、階調レベルを判断する。副走査方向には注目画素の前後40画素分のバッファ381を持っている。このとき、注目画素が白(OFF)であるとすると、そのOFF画素の連続した数を注目レベル並び数部382でカウントする。また、副走査方向にその次に連なる注目画素と逆の(この場合ON画素)画素の連続した数を非注目レベル並び数部383でカウントする。
【0068】
そして、並び数部382と383のカウント値は、補正係数部384、385で補正が行われる。係数補正部は、並び数部382、383が白をカウントするか、黒をカウントするかで異なり、本実施例では白(OFF)の並び数の方には係数1が、黒(ON)の並び数の方には、係数3/4が適用される。黒の並び数を3/4としているのは、白と黒の並び数が同じときにも淡い部分と判断するように、淡い部分と判断する閾値を濃い側にずらしているためである。この図12の場合、レベル判断部364では、濃い部分と判断される。したがって、注目画素の下側に白1画素が付加されるように、AND合成回路367が機能する。
【0069】
図13は、副走査方向に網点(a)もしくは網点の埋め残し部(c)が1画素分、拡大する例を示す。淡いところにある網点(a)が副走査方向に8画素の並びであるところが、本発明の処理により、(b)に示すように、副走査方向に9画素の奇数画素の並びに膨張される。濃いところにある網点の埋め残し部(c)は、副走査方向に4画素の並びであるところが、本発明の処理により、(d)に示すように、副走査方向に5画素の奇数画素の並びに膨張される。
【0070】
本発明は、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した各実施例の機能を実現することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した各実施例の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した各実施例の機能が実現される場合も含まれる。また、本発明の実施例の機能等を実現するためのプログラムは、ネットワークを介した通信によってサーバから提供されるものでも良い。
【符号の説明】
【0071】
350 解像度変換部
352 副走査変倍部
354 アドレス生成部
356 シフト保持用メモリ
358 画像パスセレクタ
360 副走査補正部
361 1ラインディレイ
362 OR合成部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2006−215270号公報
【特許文献2】特開2009−83472号公報
【特許文献3】特許第4253843号公報
【特許文献4】特開2007−62099号公報
【特許文献5】特許第4220654号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
副走査方向に駆動される感光体と、一定方向に回転するポリゴンにより前記感光体上を主走査方向に複数のビームを走査し、前記複数のビームは飛び越し走査による書き込み走査光学系であり、画像信号に従って露光し、電子写真プロセスにより画像を形成する画像形成装置において、前記画像の網点または網点の埋め残し部を、副走査方向に奇数個の連続した画素で構成する画像処理手段を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、元となる入力画像を偶数倍に密度変換を行う密度変換手段と、前記密度変換を行った画像に対して副走査方向に1画素の画素膨張を行う膨張手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記膨張手段は、前記画像の注目画素周辺の濃度レベルを判断する判断手段と、前記判断手段の判断結果に基づき、網点もしくは網点の埋め残し部を選択して副走査方向に1画素膨張する1画素膨張手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記画像の副走査方向の画素の並びから濃度レベルを判断することを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像に対して画素の挿入、削除を行う変倍手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
副走査方向に駆動される感光体と、一定方向に回転するポリゴンにより前記感光体上を主走査方向に複数のビームを走査し、前記複数のビームは飛び越し走査による書き込み走査光学系であり、画像信号に従って露光し、電子写真プロセスにより画像を形成する画像形成方法において、前記画像の網点または網点の埋め残し部を、副走査方向に奇数個の連続した画素で構成する画像処理工程を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
請求項6記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項8】
請求項6記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−143580(P2011−143580A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4893(P2010−4893)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】