説明

画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよびバーチャル顕微鏡システム

【課題】染色標本を透過光により撮像して染色標本画像を取得した場合に、撮像光学系の焦点深度内に複数の組織が存在していた場合でも、現実に即した正確な画像データが得られる画像処理装置を提供する。
【解決手段】染色標本画像の各画素の第1の特徴量を算出する特徴量算出部2501と、その算出結果に基づいて対象画素における各構成要素の構成割合を算出する構成割合算出部2503と、構成要素の第2の特徴量の基準値を記憶する基準値記憶部233と、各構成要素の第2の特徴量と前記基準値とに基づいて構成要素補正係数を算出する構成要素補正係数算出部2509と、算出された構成割合と構成要素補正係数とに基づいて対象画素補正係数を算出する対象画素補正係数算出部2511と、算出結果に基づいて対象画素の第2の特徴量を補正する特徴量補正部2513と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよびバーチャル顕微鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
被写体に固有の物理的性質を表す物理量の一つに、分光透過率スペクトルがある。分光透過率は、各波長における入射光に対する透過光の割合を表す物理量であり、照明光の変化に依存するRGB値等の色情報とは異なり、外因的影響によって値が変化しない物体固有の情報である。このため、分光透過率は、被写体自体の色を再現するための情報として様々な分野で利用されている。例えば、生体組織標本、特に病理標本を用いた病理診断の分野では、標本を撮像した画像の解析に分光特性値の一例として分光透過率が利用されている。以下、病理診断における分光透過率の利用例について、さらに詳細に説明する。
【0003】
病理診断における病理検査の一つとして、病変部位の組織を採取して顕微鏡で観察することにより、病気の診断または病変の拡大の程度を調べる組織診が知られている。この組織診は、生検(バイオプシー)とも呼ばれ、臓器摘出によって得たブロック標本や針生検によって得た病理標本を、厚さ数ミクロン程度に薄切りした後、様々な所見を得るために顕微鏡を用いて拡大観察することが広く行われている。なかでも、光学顕微鏡を用いた透過観察は、機材が比較的安価で取り扱いが容易である上、歴史的に古くから行われてきたこともあって、最も普及している観察方法の一つである。この場合、薄切りされた標本は、光を殆ど吸収および散乱せず無色透明に近いため、観察に先立って色素による染色を施すのが一般的である。
【0004】
染色手法としては、種々のものが提案されており、その総数は100種類以上にも達するが、特に病理標本に関しては、色素として青紫色のヘマトキシリンと赤色のエオジンの2つを用いるヘマトキシリン−エオジン染色(以下、「HE染色」と称す)が標準的に用いられている。
【0005】
ヘマトキシリンは、植物から採取された天然の物質であり、それ自身には染色性はない。しかし、その酸化物であるヘマチンは、好塩基性の色素であり、負に帯電した物質と結合する。細胞核に含まれるデオキシリボ核酸(DNA)は、構成要素として含むリン酸基によって負に帯電しているため、ヘマチンと結合して青紫色に染色される。なお、前述の通り、染色性を有するのはヘマトキシリンではなく、その酸化物であるヘマチンであるが、色素の名称としてはヘマトキシリンを用いるのが一般的であるため、以下それに従う。
【0006】
一方、エオジンは、好酸性の色素であり、正に帯電した物質と結合する。アミノ酸やタンパク質が正負どちらに帯電するかは、pH環境に影響を受け、酸性下では正に帯電する傾向が強くなる。このため、エオジン溶液に酢酸を加えて用いることがある。細胞質に含まれるタンパク質は、エオジンと結合して赤から薄赤に染色される。
【0007】
HE染色後の標本(染色標本)では、細胞核や骨組織等が青紫色に、細胞質や結合組織、赤血球等が赤色に染色され、容易に視認できるようになる。この結果、観察者は、細胞核等の組織を構成する要素の大きさや位置関係等を把握でき、標本の状態を形態学的に判断することが可能となる。
【0008】
染色された標本の観察は、観察者の目視によるものの他、この染色された標本をマルチバンド撮像して外部装置の表示画面に表示することによっても行われている。表示画面に表示する場合には、撮像したマルチバンド画像から標本各点の分光透過率を推定する処理や、推定した分光透過率をもとに標本を染色している色素の色素量を推定する処理等が行われ、表示用の標本のRGB画像である表示画像が合成される。
【0009】
標本のマルチバンド画像から標本各点の分光透過率を推定する手法としては、例えば、主成分分析による推定法や、ウィナー(Wiener)推定による推定法等が挙げられる。ウィナー推定は、ノイズの重畳された観測信号から原信号を推定する線形フィルタ手法の一つとして広く知られており、観測対象の統計的性質とノイズ(観測ノイズ)の特性とを考慮して誤差の最小化を行う手法である。カメラからの信号には、何らかのノイズが含まれるため、ウィナー推定は原信号を推定する手法として極めて有用である。
【0010】
以下、標本のマルチバンド画像から表示画像を合成する従来の方法について説明する。
【0011】
先ず、標本のマルチバンド画像を撮像する。例えば、16枚のバンドパスフィルタをフィルタホイールで回転させて切り替えながら、面順次方式でマルチバンド画像を撮像する。これにより、標本の各点において16バンドの画素値を有するマルチバンド画像が得られる。なお、色素は、本来、観察対象となる標本内に3次元的に分布しているが、通常の透過観察系ではそのまま3次元像として捉えることはできず、標本内を透過した照明光をカメラの撮像素子上に投影した2次元像として観察される。したがって、ここでいう各点は、投影された撮像素子の各画素に対応する標本上の点を意味している。
【0012】
ここで、撮像されたマルチバンド画像の任意の点(画素)xについて、バンドbにおける画素値g(x,b)と、対応する標本上の点の分光透過率t(x,λ)との間には、カメラの応答システムに基づく次式(1)の関係が成り立つ。
【0013】
【数1】

【0014】
式(1)において、λは波長、f(b,λ)はb番目のフィルタの分光透過率、s(λ)はカメラの分光感度特性、e(λ)は照明の分光放射特性、n(b)はバンドbにおける観測ノイズをそれぞれ表す。bはバンドを識別する通し番号であり、ここでは1≦b≦16を満たす整数値である。実際の計算では、式(1)を波長方向に離散化した次式(2)が用いられる。
G(x)=FSET(x)+N ・・・(2)
【0015】
式(2)において、波長方向のサンプル点数をD、バンド数をB(ここではB=16)とすれば、G(x)は、点xにおける画素値g(x,b)に対応するB行1列の行列である。同様に、T(x)は、t(x,λ)に対応するD行1列の行列、Fは、f(b,λ)に対応するB行D列の行列である。一方、Sは、D行D列の対角行列であり、対角要素がs(λ)に対応している。同様に、Eは、D行D列の対角行列であり、対角要素がe(λ)に対応している。Nは、n(b)に対応するB行1列の行列である。なお、式(2)では、行列を用いて複数のバンドに関する式を集約しているため、バンドを表す変数bが記述されていない。また、波長λに関する積分は、行列の積に置き換えられている。
【0016】
ここで、表記を簡単にするため、次式(3)で定義される行列Hを導入する。この行列Hはシステム行列とも呼ばれる。
H=FSE ・・・(3)
【0017】
よって、式(2)は、次式(4)に置き換えられる。
G(x)=HT(x)+N ・・・(4)
【0018】
次に、ウィナー推定を用いて、撮像したマルチバンド画像から標本各点における分光透過率を推定する。分光透過率の推定値(分光透過率データ)T^(x)は、次式(5)で計算することができる。なお、T^は、Tの上に推定値を表す記号「^(ハット)」が付いていることを示す。
【0019】
【数2】

【0020】
ここで、Wは次式(6)で表され、「ウィナー推定行列」あるいは「ウィナー推定に用いる推定オペレータ」と呼ばれる。
W=RSS(HRSS+RNN−1 ・・・(6)
ただし、():転置行列、()−1:逆行列
【0021】
式(6)において、Rssは、D行D列の行列であり、標本の分光透過率の自己相関行列を表す。また、RNNは、B行B列の行列であり、撮像に使用するカメラのノイズの自己相関行列を表す。
【0022】
このようにして分光透過率データT^(x)を推定したら、次に、このT^(x)をもとに対応する標本上の点(標本点)における色素量を推定する。推定の対象とする色素は、ヘマトキシリン、細胞質を染色したエオジン、赤血球を染色したエオジンまたは染色されていない赤血球本来の色素の3種類であり、それぞれ色素H,色素E,色素Rと略記する。なお、厳密には、染色を施さない状態であっても、赤血球はそれ自身特有の色を有しており、HE染色後は、赤血球自身の色と染色過程において変化したエオジンの色が重畳して観察される。このため、正確には両者を併せたものを色素Rと呼称する。
【0023】
一般に、光を透過する物質では、波長λ毎の入射光の強度I0(λ)と射出光の強度I(λ)との間に、次式(7)で表されるランベルト・ベール(Lambert-Beer)の法則が成り立つことが知られている。
【0024】
【数3】

【0025】
式(7)において、k(λ)は波長に依存して決まる物質固有の値、dは物質の厚さをそれぞれ表す。
【0026】
ここで、式(7)の左辺は、分光透過率t(λ)を意味している。したがって、式(7)は次式(8)に置き換えられる。
t(λ)=e−k(λ)・d ・・・(8)
【0027】
また、分光吸光度a(λ)は次式(9)で表される。
a(λ)=k(λ)・d ・・・(9)
【0028】
したがって、式(8)は次式(10)に置き換えられる。
t(λ)=e−a(λ) ・・・(10)
【0029】
ここで、HE染色された標本が、色素H,色素E,色素Rの3種類の色素で染色されている場合、ランベルト・ベールの法則により各波長λにおいて次式(11)が成立する。
【0030】
【数4】

【0031】
式(11)において、k(λ),k(λ),k(λ)は、それぞれ色素H,色素E,色素Rに対応するk(λ)を表し、例えば、標本を染色している各色素の色素スペクトル(以下、「基準色素スペクトル」と称す)である。また、d,d,dは、マルチバンド画像の各画像位置に対応する標本各点における色素H,色素E,色素Rの仮想的な厚さを表す。なお、色素は標本中に分散して存在するため、厚さという概念は正確ではないが、標本が単一の色素で染色されていると仮定した場合と比較して、どの程度の量の色素が存在しているかを表す相対的な色素量の指標となる。すなわち、d,d,dは、それぞれ色素H,色素E,色素Rの色素量を表しているといえる。なお、k(λ),k(λ),k(λ)は、色素H,色素E,色素Rを用いてそれぞれ個別に染色した標本を予め用意し、その分光透過率を分光器で測定することによって、ランベルト・ベールの法則から容易に求めることができる。
【0032】
ここで、位置xにおける分光透過率をt(x,λ)とし、分光吸光度をa(x,λ)とすると、式(9)は次式(12)に置き換えられる。
a(x,λ)=k(λ)・d+k(λ)・d+k(λ)・d ・・・(12)
【0033】
そして、式(5)を用いて推定された分光透過率T^(x)の波長λにおける推定分光透過率をt^(x,λ)、推定吸光度をa^(x,λ)とすると、式(12)は次式(13)に置き換えられる。なお、t^は、tの上に記号「^」が付いていることを示し、a^は、aの上に記号「^」が付いていることを示す。
【0034】
【数5】

【0035】
式(13)において、未知変数は、d,d,dの3つであるから、少なくとも3つの異なる波長λについて式(13)を連立させれば、これらを解くことができる。より精度を高めるために、4つ以上の異なる波長λに対して式(13)を連立させ、重回帰分析を行ってもよい。例えば、3つの波長λ,λ,λについて式(13)を連立させた場合、次式(14)のように行列表記できる。
【0036】
【数6】

【0037】
ここで、式(14)を次式(15)に置き換える。
【0038】
【数7】

【0039】
式(15)において、波長方向のサンプル点数をDとすれば、A^(x)は、a^(x,λ)に対応するD行1列の行列であり、Kは、k(λ)に対応するD行3列の行列、d(x)は、点xにおけるd,d,dに対応する3行1列の行列である。なお、A^は、Aの上に記号「^」が付いていることを示す。
【0040】
そして、式(15)に従い、最小二乗法を用いて色素量d,d,dを算出する。最小二乗法とは、単回帰式において誤差の二乗和を最小にするようにd(x)を決定する方法であり、次式(16)で算出できる。なお、式(16)において、d^(x)は、推定された色素量である。
【0041】
【数8】

【0042】
さらに、式(16)により推定された色素量d^,d^,d^を、式(12)に代入すれば、復元した分光吸光度aチルダ(x,λ)は、次式(17)で求められる。
【0043】
【数9】

【0044】
したがって、色素量推定における推定誤差e(λ)は、推定分光吸光度a^(x,λ)と復元した分光吸光度aチルダ(x,λ)とから次式(18)で求められる。以下、e(λ)を残差スペクトルと称す。
【0045】
【数10】

【0046】
また、推定分光吸光度a^(x,λ)は、式(17)および式(18)を用いて、次式(19)で表される。
【0047】
【数11】

【0048】
ランベルト・ベールの法則は、屈折や散乱が無いと仮定した場合に、半透明物体を透過する光の減衰を定式化したものである。しかし、実際の染色標本では、屈折も散乱も起こり得る。そのため、染色標本による光の減衰を、ランベルト・ベールの法則のみでモデル化すると、モデル化に伴った誤差が生じることになる。
【0049】
しかしながら、生体標本内での屈折や散乱を含めたモデルの構築は、極めて困難であり、実用上は実行不可能である。そこで、屈折や散乱の影響を含めたモデル化の誤差である残差スペクトルを加えることで、物理モデルによる不自然な色変動を引き起こさないようにすることができる。
【0050】
また、色素量d^,d^,d^が求まれば、これらを適宜修正して、標本における色素量の変化をシミュレートすることができる。この場合、染色法によって染色された色素量d^,d^は修正し、赤血球本来の色であるd^Rは修正しない。この場合の補正色素量d^ドット,d^ドットは、適当な係数α,αを用いて、次式(20)で求められる。
【0051】
【数12】

【0052】
式(20)の補正色素量d^ドット,d^ドットを式(12)に代入すれば、新たな分光吸光度aチルダドット(x,λ)は、次式(21)から求められる。
【0053】
【数13】

【0054】
また、残差スペクトルを含める場合、新たな分光吸光度aハットドット(x,λ)は、次式(22)から求められる。
【0055】
【数14】

【0056】
式(21)の分光吸光度aチルダドット(x,λ)または式(22)のaハットドット(x,λ)を式(10)に代入すれば、新たな分光透過率tドット(x,λ)は、次式(23)から求められる。
【0057】
【数15】

【0058】
分光吸光度aドット(x,λ)は、式(21)のaチルダドット(x,λ)または式(22)のaハットドット(x,λ)のいずれかである。
【0059】
式(23)を式(1)に代入すると、新たな画素値gドット(x,b)は、次式(24)から求めることができる。なお、次式(24)では、観測ノイズn(b)をゼロとしている。
【0060】
【数16】

【0061】
ここで、式(4)を次式(25)に置き換える。
(x)=HT(x) ・・・(25)
【0062】
式(25)において、Gドット(x)はgドット(x,b)に対応するB行1列の行列、Tドット(x)はtドット(x,λ)に対応するD行1列の行列である。これにより、色素量を仮想的に変化させた標本の画素値Gドット(x)を合成することができる。以上の手順により、染色標本の色素量を仮想的に調整することができる。
【0063】
色素量を補正する方法については、染色標本画像の染色状態を標準的に補正する方法が知られている。例えば、特許文献1には、染色標本画像の各画素を色素量に基づいて複数のクラスに分類し、各クラスの色素量を標準的な染色状態における色素量に補正することで、染色標本画像の染色状態を標準的に補正する画像処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開2009−14355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0065】
上記特許文献1に開示の画像処理装置では、染色標本画像の各画素をいずれかの組織に一意に分類している。しかしながら、染色標本を透過光により撮像する際に対象画素が受光する光は、実際には、撮像光学系の焦点深度内の複数の組織を通過している場合がある(図5参照)。そのため、上記特許文献1に開示の画像処理装置では、焦点深度内の複数の組織を通過した光を受光した画素では、いずれかの組織として分類されて、実際とは異なる画像処理が施されることになる。その結果、現実に即した正確な画像データが得られない場合がある。このような問題は、染色標本のバーチャルスライド画像を取得するバーチャル顕微鏡システムにおいても、同様に生じるものである。
【0066】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、染色標本を透過光により撮像して染色標本画像を取得した場合に、撮像光学系の焦点深度内に複数の組織が存在していた場合でも、現実に即した正確な画像データが得られる画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよびバーチャル顕微鏡システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0067】
上記目的を達成する第1の観点に係る発明は、
染色標本を撮像した染色標本画像を処理する画像処理装置において、
前記染色標本画像の各画素の第1の特徴量を算出する特徴量算出部と、
該特徴量算出部で算出された前記第1の特徴量に基づいて、対象画素における各構成要素の構成割合を算出する構成割合算出部と、
前記各構成要素の第2の特徴量の基準値を記憶する基準値記憶部と、
前記各構成要素の前記第2の特徴量と前記基準値記憶部に記憶されている前記基準値とに基づいて、前記各構成要素の前記第2の特徴量の補正係数を示す構成要素補正係数を算出する構成要素補正係数算出部と、
前記構成割合算出部で算出された前記構成割合と前記構成要素補正係数算出部で算出された前記構成要素補正係数とに基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量の補正係数を示す対象画素補正係数を算出する対象画素補正係数算出部と、
該対象画素補正係数算出部で算出された前記対象画素補正係数に基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量を補正する特徴量補正部と、
を備えることを特徴とするものである。
【0068】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る画像処理装置において、
前記構成割合算出部は、
前記染色標本画像における前記第1の特徴量の所定の特徴量空間において、対象画素と前記各構成要素との間のユークリッド距離に基づいて、前記各構成要素の構成割合を算出する、
ことを特徴とするものである請求項1に記載の画像処理装置。
【0069】
第3の観点に係る発明は、第1の観点に係る画像処理装置において、
前記構成割合算出部は、
前記染色標本画像における前記第1の特徴量の所定の特徴量空間において、対象画素と前記各構成要素との間のマハラノビス距離に基づいて、前記各構成要素の構成割合を算出する、
ことを特徴とするものである。
【0070】
第4の観点に係る発明は、第1〜3のいずれか一の観点に係る画像処理装置において、
前記第2の特徴量として前記染色標本画像の各画素における色素量を推定する色素量推定部をさらに備え、
前記基準値記憶部は、前記各構成要素の色素量基準値を記憶し、
前記構成要素補正係数算出部は、前記構成要素補正係数として、前記色素量推定部で推定された前記色素量と前記基準値記憶部に記憶されている前記色素量基準値とに基づいて、前記各構成要素の前記色素量の補正係数を算出し、
前記対象画素補正係数算出部は、前記対象画素補正係数として、前記構成割合算出部で算出された前記構成割合と前記構成要素補正係数算出部で算出された前記構成要素補正係数とに基づいて、前記対象画素の前記色素量の補正係数を算出し、
前記特徴量補正部は、前記対象画素補正係数算出部で算出された前記対象画素補正係数に基づいて前記対象画素の前記色素量を補正する、
ことを特徴とするものである。
【0071】
第5の観点に係る発明は、第4の観点に係る画像処理装置において、
前記基準値記憶部は、前記色素量基準値として、標準的な染色状態の染色標本画像における前記各構成要素の色素量を記憶する、
ことを特徴とするものである。
【0072】
第6の観点に係る発明は、第4または5の観点に係る画像処理装置において、
前記特徴量補正部で補正された前記色素量に基づいて表示用画像を作成する表示用画像作成部をさらに備える、
ことを特徴とするものである。
【0073】
第7の観点に係る発明は、第4〜6のいずれか一の観点に係る画像処理装置において、
前記染色標本画像の画素値から分光スペクトルを推定する分光スペクトル推定部をさらに備え、
前記色素量推定部は、前記分光スペクトル推定部で推定された分光スペクトルに基づいて前記染色標本画像の各画素における色素量を推定する、
ことを特徴とするものである。
【0074】
第8の観点に係る発明は、第1〜3のいずれか一の観点に係る画像処理装置において、
前記第2の特徴量は画素値であり、
前記基準値記憶部は、前記各構成要素の基準画素値を記憶し、
前記構成要素補正係数算出部は、前記構成要素補正係数として、前記各構成要素の画素値と前記基準値記憶部に記憶されている前記基準画素値とに基づいて、前記各構成要素の前記画素値の補正係数を算出し、
前記対象画素補正係数算出部は、前記対象画素補正係数として、前記構成割合算出部で算出された前記構成割合と前記構成要素補正係数算出部で算出された前記構成要素補正係数とに基づいて、前記対象画素の前記画素値の補正係数を算出し、
前記特徴量補正部は、前記対象画素補正係数算出部で算出された前記対象画素補正係数に基づいて前記対象画素の前記画素値を補正する、
ことを特徴とするものである。
【0075】
さらに、上記目的を達成する第9の観点に係る発明は、
染色標本を撮像した染色標本画像を処理する画像処理方法であって、
前記染色標本画像の各画素の第1の特徴量を算出するステップと、
算出された前記第1の特徴量に基づいて、対象画素における各構成要素の構成割合を算出するステップと、
前記各構成要素の第2の特徴量と当該第2の特徴量の基準値とに基づいて、前記各構成要素の前記第2の特徴量の補正係数を示す構成要素補正係数を算出するステップと、
算出された前記構成割合と前記構成要素補正係数とに基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量の補正係数を示す対象画素補正係数を算出するステップと、
算出された前記対象画素補正係数に基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量を補正するステップと、
を含むことを特徴とするものである。
【0076】
さらに、上記目的を達成する第10の観点に係る発明は、
染色標本を撮像した染色標本画像を処理する画像処理プログラムであって、
前記染色標本画像の各画素の第1の特徴量を算出する処理と、
算出された前記第1の特徴量に基づいて、対象画素における各構成要素の構成割合を算出する処理と、
前記各構成要素の第2の特徴量と当該第2の特徴量の基準値とに基づいて、前記各構成要素の前記第2の特徴量の補正係数を示す構成要素補正係数を算出する処理と、
算出された前記構成割合と前記構成要素補正係数とに基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量の補正係数を示す対象画素補正係数を算出する処理と、
算出された前記対象画素補正係数に基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量を補正する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【0077】
さらに、上記目的を達成する第11の観点に係る発明は、
染色標本のバーチャルスライド画像を取得するバーチャル顕微鏡システムであって、
顕微鏡を用いて前記染色標本を透過光により撮像して染色標本画像を取得する画像取得部と、
該画像取得部で取得された前記染色標本画像の各画素の第1の特徴量を算出する特徴量算出部と、
該特徴量算出部で算出された前記第1の特徴量に基づいて、対象画素における各構成要素の構成割合を算出する構成割合算出部と、
前記各構成要素の第2の特徴量の基準値を記憶する基準値記憶部と、
前記各構成要素の前記第2の特徴量と前記基準値記憶部に記憶されている前記基準値とに基づいて、前記各構成要素の前記第2の特徴量の補正係数を示す構成要素補正係数を算出する構成要素補正係数算出部と、
前記構成割合算出部で算出された前記構成割合と前記構成要素補正係数算出部で算出された前記構成要素補正係数とに基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量の補正係数を示す対象画素補正係数を算出する対象画素補正係数算出部と、
該対象画素補正係数算出部で算出された前記対象画素補正係数に基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量を補正する特徴量補正部と、を備え、
前記特徴量補正部で前記第2の特徴量が補正された画像データに基づいて、前記染色標本のバーチャルスライド画像を取得する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0078】
本発明によれば、染色標本画像の各画素のデータが、当該画素における染色標本の組織の構成割合に基づいて補正される。したがって、染色標本を透過光により撮像して染色標本画像を取得した場合、撮像光学系の焦点深度内に複数の組織が存在していた画素があっても、現実に即した正確な画像データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る画像処理装置の要部の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した画像取得部の概略構成を示す図である。
【図3】図2に示したRGBカメラの分光感度特性を示す図である。
【図4】図2に示したフィルタ部を構成する各光学フィルタの分光透過率特性を示す図である。
【図5】焦点深度内での対象標本の各種状態を示す図である。
【図6】焦点深度内での構成要素の構成割合を算出する処理を示すフローチャートである。
【図7】H単染色標本の一例の顕微鏡写真である。
【図8】図7に示したH単染色画像におけるRバンドの画素値と画素数の対数とのヒストグラムである。
【図9】図7に示したH単染色画像におけるH色素量と画素数の対数とのヒストグラムである。
【図10】対象画素の各構成要素の構成割合を算出する際に用いるユークリッド距離を説明するための模式図である。
【図11】対象画素の各構成要素の構成割合を算出する際に用いるマハラノビス距離を説明するための模式図である。
【図12】色素量の補正処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2実施の形態に係る画像処理装置の要部の機能構成を示すブロック図である。
【図14】図13に示した画像処理装置による画素値の補正処理を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第3実施の形態に係るバーチャル顕微鏡システムの要部の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下、本発明の好適実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態によって限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0081】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る画像処理装置の要部の機能構成を示すブロック図である。この画像処理装置は、顕微鏡とパーソナルコンピュータ等のコンピュータから構成されるもので、画像取得部110、入力部270、表示部290、演算部250、記憶部230、および各部を制御する制御部210を備える。
【0082】
画像取得部110は、マルチバンド画像(ここでは、6バンド画像)を取得するもので、例えば図2に示すように、RGBカメラ111と、該RGBカメラ111に結像する光の波長帯域を所定範囲に制限するためのフィルタ部113とを備える。
【0083】
RGBカメラ111は、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子等を備え、例えば図3に示すようなR(赤),G(緑),B(青)の各バンドの分光感度特性を有する。フィルタ部113は、RGBカメラ111に結像する光の波長帯域を所定範囲に制限するもので、回転式のフィルタ切り替え部1131を備える。フィルタ切り替え部1131は、R,G,Bの各バンドの透過波長領域を2分するように、それぞれ異なる分光透過率特性を有する2枚の光学フィルタ1133a,1133bを保持する。図4(a)は、一方の光学フィルタ1133aの分光透過率特性を示し、図4(b)は、他方の光学フィルタ1133bの分光透過率特性を示す。
【0084】
そして、制御部210により、先ず、例えば光学フィルタ1133aを、照明部140からRGBカメラ111に至る光路上に位置させて、照明部140により受光位置移動部130上に載置された対象標本131を照明し、その透過光を結像レンズ120および光学フィルタ1133aを経てRGBカメラ111に結像させて第1の撮像を行う。次いで、制御部210により、フィルタ切り替え部1131を回転させて、光学フィルタ1133bを照明部140からRGBカメラ111に至る光路上に位置させて、同様にして第2の撮像を行う。
【0085】
これにより、第1の撮像および第2の撮像でそれぞれ異なる3バンドの画像を得て、合計で6バンドのマルチバンド画像を得る。取得された対象標本131の画像は、記憶部230に格納される。なお、フィルタ部113に設ける光学フィルタの数は、2枚に限定されるものではなく、3枚以上の光学フィルタを用いて、さらに多くのバンドの画像を得ることも可能である。また、画像取得部110は、フィルタ部113を省略して、RGBカメラ111によりRGB画像のみを取得するように構成しもよい。
【0086】
入力部270は、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等の入力装置によって実現されるものであり、操作入力に応じた入力信号を制御部210に出力する。
【0087】
表示部290は、LCD(Liquid Crystal Display)やEL(Electro Luminescence)ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等の表示装置によって実現されるものであり、制御部210から入力される表示信号をもとに各種画面を表示する。
【0088】
演算部250は、特徴量算出部2501、構成割合算出部2503、スペクトル推定部2505、色素量推定部2507、構成要素補正係数算出部2509、対象画素補正係数算出部2511、特徴量補正部2513、および、表示用画像作成部2515を有する。この演算部250は、CPU等のハードウェアによって実現される。
【0089】
記憶部230は、画像処理装置を動作させる画像処理プログラムを記憶するプログラム記憶部231と、染色標本画像の各構成要素の第2の特徴量の基準値を記憶する基準値記憶部233とを含み、画像処理プログラムの実行中に使用されるデータ等を格納する。この記憶部230は、更新記憶可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、内蔵あるいはデータ通信端子で接続されたハードディスク、CD−ROM等の情報記憶媒体およびその読取装置等によって実現される。
【0090】
制御部210は、画像取得部110の動作を制御して対象標本131の画像を取得する画像取得制御部211を含み、入力部270から入力される入力信号や画像取得部110から入力される画像、記憶部230に格納されているプログラムやデータ等に基づいて画像処理装置を構成する各部への指示やデータの転送等を行い、全体の動作を統括的に制御する。この制御部210は、CPU等のハードウェアによって実現される。
【0091】
本実施の形態に係る画像処理装置において、図2に示したように、照明部140により対象標本131を照明し、その透過光を結像レンズ120によりRGBカメラ111に結像させる場合、RGBカメラ111の各画素が受光する光線は、結像レンズ120の焦点深度内の対象標本131の状態に応じて異なる。例えば、図5に示すように、焦点深度内で、細胞核Nのみを通過した光線の場合(I)、細胞質Cのみを通過した光線の場合(II)、あるいは、細胞核Nと細胞質Cとの両方を通過した光線の場合(III,IV)がある。なお、(III)は、細胞核Nが30%で細胞質Cが70%の場合を示し、(IV)は、逆に細胞核Nが70%で細胞質Cが30%の場合を示す。
【0092】
このように、RGBカメラ111の各画素が受光する光線は、1つの組織だけでなく、複数の組織を通過した光線の場合がある。実際に、組織には、細胞核Nや細胞質Cだけでなく、赤血球や腔等の組織があるため、照明光はこれらの組織の中の幾つかを通過してRGBカメラ111の各画素に結像されることになる。
【0093】
本実施の形態に係る画像処理装置においては、焦点深度内に複数の組織が存在する場合、その構成要素の構成割合に応じて画像データを補正する。以下、本実施の形態に係る画像処理装置が実行する処理について説明する。なお、以下に説明する処理は、記憶部230に格納された画像処理プログラムに従って制御部210により各部の動作を制御することによって実行される。
【0094】
図6は、RGBカメラ111の対象画素が受光する光について、焦点深度内で通過した構成要素の構成割合を算出する処理を示すフローチャートである。先ず、制御部210は、画像取得制御部211により画像取得部110の動作を制御して対象標本131の画像を撮影する(ステップS101)。撮影した対象標本画像は、記憶部230に格納される。
【0095】
次に、特徴量算出部2501は、撮影した対象標本画像の画素毎に第1の特徴量を算出する(ステップS103)。そして、算出した第1の特徴量の所定(任意に設定される)の特徴量空間における各構成要素の平均値uiを算出する。例えば、第1の特徴量としてR(reverse)バンドの画素値を算出する場合は、図7に示すようなH単染色標本の顕微鏡画像に基づいて、図8に示すようなRバンドの画素値と画素数の対数とのヒストグラムを取得する。そして、図8に示したヒストグラムから、例えばK-means法等のクラス分類処理により細胞核と細胞質とを分類して、それぞれのRバンドの画素値の平均値を算出する。
【0096】
ここで、K-means法は、非階層型クラスタリング手法の単純な手法であり、K平均法とも呼ばれている。K-means法は、一般に、以下の流れで実行され、クラスタの平均を用いて、データを与えられたクラスタ数K個に分類する。
(1)データの数をn、クラスタの数をKとしておく。
(2)各データに対してランダムにクラスタを割り振る。
(3)割り振ったデータをもとに各クラスタの中心を計算する。計算は通常割り当てられたデータの各要素の平均が使用される。
(4)各データと各クラスタの中心との距離を求めて、当該データを最も近い中心のクラスタに割り当て直す。
(5)上記の処理で全てのデータのクラスタの割り当てが変化しなかった場合は処理を終了する。それ以外の場合は新しく割り振られたクラスタから各クラスタの中心を再計算して上記の処理を繰り返す。
【0097】
K-means法による分類結果は、最初のクラスタのランダムな割り振りに大きく依存するので、例えば、データの最小値から最大値の範囲を均等に分割してクラスタを割り振ってもよい。これにより、結果を常に同等の値に収束させることができる。
【0098】
なお、第1の特徴量は、Rバンドの画素値に限らず、H色素量としてもよい。図9は、H単染色画像におけるH色素量と画素数の対数とのヒストグラムである。この場合の色素量の算出手順については、後述する。
【0099】
次に、構成割合算出部2503は、第1の特徴量に基づいて対象画素の各構成要素の構成割合を算出する(ステップS105)。ここでは、構成割合として、画素毎に、対象画素xと各構成要素iとの距離dist(x,i)を算出する。この距離は、例えば次式(26)に示すユークリッド距離から算出される。図10は、ユークリッド距離の模式図である。
【0100】
【数17】

【0101】
なお、上記の距離dist(x,i)は、ユークリッド距離に限らず、例えば、マハラノビス距離でもよい。この場合は、平均値uiの他に、例えば、公知の大津の方法により分散σiを算出する。そして、次式(27)に基づいてマハラノビス距離を算出する。図11は、マハラノビス距離の模式図である。
【0102】
【数18】

【0103】
次に、次式(28)に基づいて、距離dist(x,i)から構成割合rate(x,i)を算出する。
【0104】
【数19】

【0105】
これにより、各画素が受光する光線が焦点深度内で通過した構成要素の構成割合を算出できる。算出した各画素における各構成要素の構成割合rate(x,i)は、記憶部230に格納される。本実施の形態に係る画像処理装置では、各構成要素の構成割合rate(x,i)を用いて、第2の特徴量としての色素量を補正する。
【0106】
図12は、色素量の補正処理を示すフローチャートである。先ず、スペクトル推定部2505は、画素値に基づいて画素毎にスペクトルを推定する(ステップS201)。つまり、上述した式(5)により推定対象画素の画素値G(x)から対応する対象標本の標本点における分光透過率の推定値T^(x)を算出する。得られた分光透過率の推定値T^(x)は、記憶部230に格納される。式(5)を再掲する。
【0107】
【数20】

【0108】
次に、色素量推定部2507は、分光透過率の推定値T^(x)に基づいて色素量を推定する(ステップS203)。ここで、色素量推定部2507は、対象標本の染色に用いた染色方法の各色素の基準分光特性をもとに、対象標本画像の任意の点xに対応する標本点における各染色方法の色素量を推定する。具体的には、対象標本画像の点xにおける分光透過率の推定値T^(x)に基づいて、点xに対応する対象標本の標本点に固定されたそれぞれの色素量を推定する。すなわち、上述した式(16)により、dハット^H、dハット^E、dハット^Rについて解く。推定された対象標本画像の点xにおける色素量dハット^H、dハット^E、dハット^Rは、記憶部230に格納される。式(16)を再掲する。
【0109】
【数21】

【0110】
次に、構成要素補正係数算出部2509は、構成要素補正係数として、対象標本画像における各構成要素の色素量補正係数を算出する(ステップS205)。この算出処理においては、先ず、上述の任意の特徴量空間において、対象標本画像から各構成要素の平均値uiに最も近い画素を1つ選択する。そして、選択された画素の色素量dハットを対象標本画像における対象構成要素の色素量dハット(i)とみなす。ここで、選択する画素数は1つではなく複数として、それらの色素量の平均値を対象標本画像における対象構成要素の色素量dハット(i)とみなしてもよい。
【0111】
次に、次式(29)に基づいて、各構成要素の色素量dハット(i)と、基準値記憶部233に記憶されている各構成要素の色素量基準値dstd(i)とから、各構成要素の色素量補正係数coefiを算出する。算出された色素量補正係数coefiは、記憶部230に格納される。なお、基準値記憶部233に記憶する色素量基準値dstd(i)は、例えば、標準的な染色状態の染色標本画像における各構成要素の色素量とする。
【0112】
【数22】

【0113】
次に、対象画素補正係数算出部2511は、対象画素補正係数として、次式(30)に基づいて、対象画素xの各構成要素の構成割合rate(x,i)と各構成要素の色素量補正係数coefiとに基づいて、対象画素xの色素量補正係数coef(x)を算出する(ステップS207)。算出された色素量補正係数coef(x)は、記憶部230に格納される。
【0114】
【数23】

【0115】
次に、特徴量補正部2513は、次式(31)に基づいて、対象画素xの色素量補正係数coef(x)に基づいて、対象画素xの色素量dハット(x)を補正する(ステップS209)。
【0116】
【数24】

【0117】
これにより、対象画素xが受光する光が通過した構成要素の構成割合に基づいて、色素量が補正される。補正された色素量dドット(x)は、記憶部230に格納される。
【0118】
次に、表示用画像作成部2515は、補正された色素量に基づいて表示用画像を作成する(ステップS211)。そのため、算出した補正色素量dドットH,dドットEおよびdRに基づき、補正スペクトルを合成する。そして、上述した式(21)に従って、各点xにおける新しい分光吸光度aチルダドット(x,λ)を求める。式(21)を再掲する。
【0119】
【数25】

【0120】
次に、上述した式(23)に従って各点xにおける新しい分光透過率tドット(x,b)を求める。式(23)を再掲する。
【0121】
【数26】

【0122】
これを波長方向にD回繰返し、Tドット(x)を得る。Tドット(x)は、tドット(x,λ)に対応するD行1列の行列である。求めたTドット(x)は、記憶部230に格納される。
【0123】
その後、合成した分光透過率Tドット(x)に基づいて補正画像を合成する。つまり、上述した式(25)に従って各点xにおける新しい画素値Gドット(x)を求める。式(25)を再掲する。
(x)=HT(x) ・・・(25)
これにより、色素量を仮想的に変化させた標本の画素値Gドット(x)を合成することができる。以上の手順により、染色標本の色素量を仮想的に調整することができる。合成した画像は、記憶部230に格納される。
【0124】
次に、表示部290は、ステップS211で求めた合成した画像を表示する。これにより、利用者は結果画像を確認することができる。
【0125】
以上のように、本実施の形態に係る画像処理装置によれば、組織の構成割合に基づいて色素量が補正されるので、焦点深度内の複数の組織を通過した光を受光した画素においても、現実に即して色素量を補正でき、正確な画像データを得ることができる。
【0126】
(第2実施の形態)
図13は、本発明の第2実施の形態に係る画像処理装置の要部の機能構成を示すブロック図である。この画像処理装置は、第1実施の形態に示した構成において、第2の特徴量として画素値を直接補正するものである。そのため、演算部250は、特徴量算出部2501、構成割合算出部2503、構成要素補正係数算出部2521、対象画素補正係数算出部2523および特徴量補正部2525を有する。また、記憶部230は、例えば、標準的な染色状態の染色標本画像における各構成要素の基準画素値を記憶する基準値記憶部235を有する。その他の構成は第1実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0127】
以下、演算部250による処理について説明する。演算部250は、先ず、第1実施の形態で説明したように、図6に示したフローチャートに従って、取得された対象標本画像の画素毎に特徴量算出部2501により第1の特徴量を算出する。そして、算出した第1の特徴量に基づいて、構成割合算出部2503により各画素が受光する光線が焦点深度内で通過した構成要素の構成割合を算出する。その後、演算部250は、算出された各構成要素の構成割合に基づいて、第2の特徴量である対象画素の画素値を補正する。
【0128】
図14は、画素値の補正処理を示すフローチャートである。先ず、構成要素補正係数算出部2521は、構成要素補正係数として、各構成要素の画素値の平均値と、基準値記憶部235に記憶されている各構成要素の基準画素色値とに基づいて、対象画像における各構成要素の画素値補正係数を算出する(ステップS305)。この構成要素補正係数の算出処理は、例えば図12に示したステップS205による色素量補正係数算出処理において、色素量を画素値と置き換えることにより同様に実行することができる。
【0129】
次に、対象画素補正係数算出部2523は、対象画素補正係数として、構成割合算出部2503で算出された対象画素の各構成要素の構成割合と、構成要素補正係数算出部2521で算出された構成要素補正係数とに基づいて、対象画素の画素値補正係数を算出する(ステップS307)。この対象画素補正係数の算出処理は、例えば図12に示したステップS207による対象画素補正係数算出処理において、色素量を画素値と置き換えることにより同様に実行することができる。
【0130】
その後、特徴量補正部2525は、対象画素補正係数算出部2523で算出された対象画素補正係数に基づいて対象画素の画素値を補正する(ステップS309)。この対象画素の画素値補正処理は、例えば図12に示したステップS209による対象画素色素量補正処理において、色素量を画素値と置き換えることにより同様に実行することができる。
【0131】
これにより、対象画素が受光する光が通過した構成要素の構成割合に基づいて、画素値が補正される。そして、表示部290は、ステップS309で補正された画素値による画像を表示する。これにより、利用者は、結果画像を確認することができる。
【0132】
本実施の形態に係る画像処理装置によれば、第1実施の形態と同様に、組織の構成割合に基づいて第2の特徴量である画素値を直接補正するので、焦点深度内の複数の組織を通過した光を受光した画素においても、現実に即して画素値を簡単かつ迅速に補正でき、正確な画像データを得ることができる。
【0133】
(第3実施の形態)
図15は、本発明の第3実施の形態に係るバーチャル顕微鏡システムの要部の機能構成を示すブロック図である。このバーチャル顕微鏡システムは、染色標本のバーチャルスライド画像を取得するもので、顕微鏡装置200とホストシステム500とを備える。
【0134】
顕微鏡装置200は、対象標本Sが載置される電動ステージ310と、側面視略コの字状を有し、電動ステージ310を支持するとともにレボルバ360を介して対物レンズ370を保持する顕微鏡本体340と、顕微鏡本体340の底部後方に配設された光源380と、顕微鏡本体340の上部に載置された鏡筒390とを備える。また、鏡筒390には、対象標本Sの標本像を目視観察するための双眼部410と、対象標本Sの標本像を撮像するためのTVカメラ420とが取り付けられている。すなわち、顕微鏡装置200は、図1の画像取得部110に相当する。ここで、対物レンズ370の光軸方向をZ方向とし、Z方向と垂直な平面をXY平面として定義する。
【0135】
電動ステージ310は、XYZ方向に移動自在に構成されている。すなわち、電動ステージ310は、モータ321およびこのモータ321の駆動を制御するXY駆動制御部323によってXY平面内で移動自在である。XY駆動制御部323は、顕微鏡コントローラ430の制御のもと、図示しないXY位置の原点センサによって電動ステージ310のXY平面における所定の原点位置を検知し、この原点位置を基点としてモータ321の駆動量を制御することによって、対象標本S上の観察箇所を移動させる。そして、XY駆動制御部323は、観察時の電動ステージ310のX位置およびY位置を適宜顕微鏡コントローラ430に出力する。
【0136】
また、電動ステージ310は、モータ331およびこのモータ331の駆動を制御するZ駆動制御部333によってZ方向に移動自在である。Z駆動制御部333は、顕微鏡コントローラ430の制御のもと、図示しないZ位置の原点センサによって電動ステージ310のZ方向における所定の原点位置を検知し、この原点位置を基点としてモータ331の駆動量を制御することによって、所定の高さ範囲内の任意のZ位置に対象標本Sを焦準移動させる。そして、Z駆動制御部333は、観察時の電動ステージ310のZ位置を適宜顕微鏡コントローラ430に出力する。
【0137】
レボルバ360は、顕微鏡本体340に対して回転自在に保持され、対物レンズ370を対象標本Sの上方に配置する。対物レンズ370は、レボルバ360に対して倍率(観察倍率)の異なる他の対物レンズとともに交換自在に装着されており、レボルバ360の回転に応じて観察光の光路上に挿入されて対象標本Sの観察に用いる対物レンズ370が択一的に切り換えられるようになっている。
【0138】
顕微鏡本体340は、底部において対象標本Sを透過照明するための照明光学系を内設している。この照明光学系は、光源380から射出された照明光を集光するコレクタレンズ351、照明系フィルタユニット352、視野絞り353、開口絞り354、照明光の光路を対物レンズ370の光軸に沿って偏向させる折曲げミラー355、コンデンサ光学素子ユニット356、トップレンズユニット357等が、照明光の光路に沿って適所に配置されて構成される。光源380から射出された照明光は、照明光学系によって対象標本Sに照射され、その透過光が観察光として対物レンズ370に入射する。したがって、光源380および照明光学系は、図2の照明部140に相当する。
【0139】
また、顕微鏡本体340は、その上部においてフィルタユニット400を内設している。フィルタユニット400は、標本像として結像する光の波長帯域を所定範囲に制限するための2枚以上の光学フィルタ403を回転自在に保持し、この光学フィルタ403を、適宜対物レンズ370後段において観察光の光路上に挿入する。このフィルタユニット400は、図2に示したフィルタ部113に相当する。なお、ここでは、光学フィルタ403を対物レンズ370の後段に配置する場合を例示したが、これに限定されずるものではなく、光源380からTVカメラ420に至る光路上のいずれかの位置に配置することとしてよい。対物レンズ370を経た観察光は、このフィルタユニット400を経由して鏡筒390に入射する。
【0140】
鏡筒390は、フィルタユニット400を経た観察光の光路を切り換えて双眼部410またはTVカメラ420へと導くビームスプリッタ391を内設している。対象標本Sの標本像は、ビームスプリッタ391によって双眼部410内に導入され、接眼レンズ411を介して検鏡者に目視観察される。あるいはTVカメラ420によって撮像される。TVカメラ420は、標本像(詳細には対物レンズ370の視野範囲の標本像)を結像するCCDやCMOS等の撮像素子を備えて構成され、標本像を撮像し、標本像の画像データをホストシステム500に出力する。すなわち、TVカメラ420は、図2に示したRGBカメラ111に相当する。
【0141】
さらに、顕微鏡装置200は、顕微鏡コントローラ430とTVカメラコントローラ440とを備える。顕微鏡コントローラ430は、ホストシステム500の制御のもと、顕微鏡装置200を構成する各部の動作を統括的に制御する。例えば、顕微鏡コントローラ430は、レボルバ360を回転させて観察光の光路上に配置する対物レンズ370を切り換える処理や、切り換えた対物レンズ370の倍率等に応じた光源380の調光制御や各種光学素子の切り換え、あるいはXY駆動制御部323やZ駆動制御部333に対する電動ステージ310の移動指示等、対象標本Sの観察に伴う顕微鏡装置200の各部の調整を行うとともに、各部の状態を適宜ホストシステム500に通知する。
【0142】
TVカメラコントローラ440は、ホストシステム500の制御のもと、自動ゲイン制御のON/OFF切換、ゲインの設定、自動露出制御のON/OFF切換、露光時間の設定等を行ってTVカメラ420を駆動し、TVカメラ420の撮像動作を制御する。
【0143】
一方、ホストシステム500は、図1あるいは図13に示した、入力部270、表示部290、演算部250、記憶部230、装置各部を制御する制御部210を含んでいる。このホストシステム500は、CPUやビデオボード、メインメモリ(RAM)等の主記憶装置、ハードディスクや各種記憶媒体等の外部記憶装置、通信装置、表示装置や印刷装置等の出力装置、入力装置、あるいは外部入力を接続するインターフェース装置等を備えた公知のハードウェア構成で実現でき、例えばワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータを利用することができる。
【0144】
本実施の形態に係るバーチャル顕微鏡システムは、ホストシステム500の記憶部に記憶されているVS画像生成プログラムを含む画像処理プログラムに従って、顕微鏡装置200を含む各部の動作を制御する。これにより、顕微鏡装置200のTVカメラ420によって部分的にマルチバンド撮像された対象標本Sの複数の対象標本画像を、第1実施の形態や第2実施の形態で説明したようにそれぞれ処理して、VS(Virtual Slide)画像を生成する。ここで、VS画像とは、顕微鏡装置200によってマルチバンド撮像された1枚以上の画像を繋ぎ合せて生成した画像であり、例えば高倍率の対物レンズ370を用いて対象標本Sを部分毎に撮像した複数の高解像画像を繋ぎ合せて生成された画像であって、対象標本Sの全域を映した広視野でかつ高精細のマルチバンド画像のことを言う。
【0145】
したがって、本実施の形態に係るバーチャル顕微鏡システムによれば、第1実施の形態や第2実施の形態で説明した画像処理装置と同様の効果を奏することができる。
【0146】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、第1の特徴量としてRバンドの画素値を算出し、第2の特徴量として色素量あるいは画素値を補正するようにしたが、第1の特徴量および第2の特徴量は、同じとしてもよい。また、第1の特徴量として色素量あるいは画素値を算出し、第2の特徴量としてRバンドの画素値を補正するようにしてもよい。また、上記実施の形態では、6バンドのマルチバンド画像を取得するようにしたが、4バンド以上の任意のマルチバンド画像、あるいは、RGBの3バンドの画像を取得して、特徴量を取得することもできる。
【0147】
さらに、本発明は、上述した画像処理装置やバーチャル顕微鏡システムに限らず、これらの処理を実質的に実行する画像処理方法、画像処理プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。したがって、本発明は、これらも包含するものと理解されたい。
【符号の説明】
【0148】
110 画像取得部
111 RGBカメラ
113 フィルタ部
120 結像レンズ
130 受光位置移動部
131 対象標本
140 照明部
200 顕微鏡装置
210 制御部
230 記憶部
233,235 基準値記憶部
250 演算部
270 入力部
290 表示部
500 ホストシステム
2501 特徴量算出部
2503 構成割合算出部
2505 スペクトル推定部
2507 色素量推定部
2509,2521 構成要素補正係数算出部
2511,2523 対象画素補正係数算出部
2513,2525 特徴量補正部
2515 表示用画像作成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色標本を撮像した染色標本画像を処理する画像処理装置において、
前記染色標本画像の各画素の第1の特徴量を算出する特徴量算出部と、
該特徴量算出部で算出された前記第1の特徴量に基づいて、対象画素における各構成要素の構成割合を算出する構成割合算出部と、
前記各構成要素の第2の特徴量の基準値を記憶する基準値記憶部と、
前記各構成要素の前記第2の特徴量と前記基準値記憶部に記憶されている前記基準値とに基づいて、前記各構成要素の前記第2の特徴量の補正係数を示す構成要素補正係数を算出する構成要素補正係数算出部と、
前記構成割合算出部で算出された前記構成割合と前記構成要素補正係数算出部で算出された前記構成要素補正係数とに基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量の補正係数を示す対象画素補正係数を算出する対象画素補正係数算出部と、
該対象画素補正係数算出部で算出された前記対象画素補正係数に基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量を補正する特徴量補正部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記構成割合算出部は、
前記染色標本画像における前記第1の特徴量の所定の特徴量空間において、対象画素と前記各構成要素との間のユークリッド距離に基づいて、前記各構成要素の構成割合を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記構成割合算出部は、
前記染色標本画像における前記第1の特徴量の所定の特徴量空間において、対象画素と前記各構成要素との間のマハラノビス距離に基づいて、前記各構成要素の構成割合を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2の特徴量として前記染色標本画像の各画素における色素量を推定する色素量推定部をさらに備え、
前記基準値記憶部は、前記各構成要素の色素量基準値を記憶し、
前記構成要素補正係数算出部は、前記構成要素補正係数として、前記色素量推定部で推定された前記色素量と前記基準値記憶部に記憶されている前記色素量基準値とに基づいて、前記各構成要素の前記色素量の補正係数を算出し、
前記対象画素補正係数算出部は、前記対象画素補正係数として、前記構成割合算出部で算出された前記構成割合と前記構成要素補正係数算出部で算出された前記構成要素補正係数とに基づいて、前記対象画素の前記色素量の補正係数を算出し、
前記特徴量補正部は、前記対象画素補正係数算出部で算出された前記対象画素補正係数に基づいて前記対象画素の前記色素量を補正する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記基準値記憶部は、前記色素量基準値として、標準的な染色状態の染色標本画像における前記各構成要素の色素量を記憶する、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記特徴量補正部で補正された前記色素量に基づいて表示用画像を作成する表示用画像作成部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記染色標本画像の画素値から分光スペクトルを推定する分光スペクトル推定部をさらに備え、
前記色素量推定部は、前記分光スペクトル推定部で推定された分光スペクトルに基づいて前記染色標本画像の各画素における色素量を推定する、
ことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第2の特徴量は画素値であり、
前記基準値記憶部は、前記各構成要素の基準画素値を記憶し、
前記構成要素補正係数算出部は、前記構成要素補正係数として、前記各構成要素の画素値と前記基準値記憶部に記憶されている前記基準画素値とに基づいて、前記各構成要素の前記画素値の補正係数を算出し、
前記対象画素補正係数算出部は、前記対象画素補正係数として、前記構成割合算出部で算出された前記構成割合と前記構成要素補正係数算出部で算出された前記構成要素補正係数とに基づいて、前記対象画素の前記画素値の補正係数を算出し、
前記特徴量補正部は、前記対象画素補正係数算出部で算出された前記対象画素補正係数に基づいて前記対象画素の前記画素値を補正する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
染色標本を撮像した染色標本画像を処理する画像処理方法であって、
前記染色標本画像の各画素の第1の特徴量を算出するステップと、
算出された前記第1の特徴量に基づいて、対象画素における各構成要素の構成割合を算出するステップと、
前記各構成要素の第2の特徴量と当該第2の特徴量の基準値とに基づいて、前記各構成要素の前記第2の特徴量の補正係数を示す構成要素補正係数を算出するステップと、
算出された前記構成割合と前記構成要素補正係数とに基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量の補正係数を示す対象画素補正係数を算出するステップと、
算出された前記対象画素補正係数に基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量を補正するステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
染色標本を撮像した染色標本画像を処理する画像処理プログラムであって、
前記染色標本画像の各画素の第1の特徴量を算出する処理と、
算出された前記第1の特徴量に基づいて、対象画素における各構成要素の構成割合を算出する処理と、
前記各構成要素の第2の特徴量と当該第2の特徴量の基準値とに基づいて、前記各構成要素の前記第2の特徴量の補正係数を示す構成要素補正係数を算出する処理と、
算出された前記構成割合と前記構成要素補正係数とに基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量の補正係数を示す対象画素補正係数を算出する処理と、
算出された前記対象画素補正係数に基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量を補正する処理と、
をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【請求項11】
染色標本のバーチャルスライド画像を取得するバーチャル顕微鏡システムであって、
顕微鏡を用いて前記染色標本を透過光により撮像して染色標本画像を取得する画像取得部と、
該画像取得部で取得された前記染色標本画像の各画素の第1の特徴量を算出する特徴量算出部と、
該特徴量算出部で算出された前記第1の特徴量に基づいて、対象画素における各構成要素の構成割合を算出する構成割合算出部と、
前記各構成要素の第2の特徴量の基準値を記憶する基準値記憶部と、
前記各構成要素の前記第2の特徴量と前記基準値記憶部に記憶されている前記基準値とに基づいて、前記各構成要素の前記第2の特徴量の補正係数を示す構成要素補正係数を算出する構成要素補正係数算出部と、
前記構成割合算出部で算出された前記構成割合と前記構成要素補正係数算出部で算出された前記構成要素補正係数とに基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量の補正係数を示す対象画素補正係数を算出する対象画素補正係数算出部と、
該対象画素補正係数算出部で算出された前記対象画素補正係数に基づいて、前記対象画素の前記第2の特徴量を補正する特徴量補正部と、を備え、
前記特徴量補正部で前記第2の特徴量が補正された画像データに基づいて、前記染色標本のバーチャルスライド画像を取得する、ことを特徴とするバーチャル顕微鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−117844(P2012−117844A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265532(P2010−265532)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】