画像処理装置およびその制御方法
【課題】 画像の形成過程も考慮し、より分散性の高いドットパターンが出力可能な画像データを生成する。
【解決手段】 記録媒体上の同一領域に対して、N回(Nは3以上の整数)記録することにより、前記記録媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、前記記録の各々に対応する記録データを生成する記録データ生成手段と、ドット分散型マトリクスを用いたディザ法により、前記記録データをハーフトーン画像データに変換するハーフトーン処理手段と、前記ハーフトーン処理手段は、同一領域におけるk回目(2≦k≦N−1)の記録までに対応する前記ハーフトーン画像データのそれぞれを累積してできるドットパターンの分散性が高くなるように、前記k回目のハーフトーン画像データを生成することを特徴とする。
【解決手段】 記録媒体上の同一領域に対して、N回(Nは3以上の整数)記録することにより、前記記録媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、前記記録の各々に対応する記録データを生成する記録データ生成手段と、ドット分散型マトリクスを用いたディザ法により、前記記録データをハーフトーン画像データに変換するハーフトーン処理手段と、前記ハーフトーン処理手段は、同一領域におけるk回目(2≦k≦N−1)の記録までに対応する前記ハーフトーン画像データのそれぞれを累積してできるドットパターンの分散性が高くなるように、前記k回目のハーフトーン画像データを生成することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数回の記録により画像を形成する画像形成装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンで処理した画像データを印刷することが一般的に行われている。パソコンで扱う画像データの階調数に比べて、画像形成装置が表現可能な画素あたりの階調数は少ない場合がある。このような場合、入力画像データの階調数を出力装置で表現可能な階調数に変換するハーフトーン処理が必要である。このハーフトーン処理の1つとして、ディザ法が知られている。このディザ法は、入力された画像データにおける画素値と閾値マトリクスにおける画素に対応した閾値とを比較し、各画素の出力値を決定する手法である。
【0003】
このディザ法は、別のハーフトーン処理の1つして知られている誤差拡散法に比べて、複雑な演算を必要としないため高速な処理が可能である。またディザ法は、出力される画像データにおけるドット配置の空間周波数が、高周波になるように設定したブルーノイズ型の閾値マトリクスを用いることにより、誤差拡散法と同等に分散性の高い画像データを生成できることが知られている。
【0004】
そこで、上記ブルーノイズ型の閾値マトリクスを用いて、画像形成装置が画像形成する際のドット形成順やドットの配置を決定する方法として特許文献1が提案されている。
【0005】
特許文献1に記載された方法よれば、記録走査に対応するそれぞれの記録データを、ブルーノイズ型の閾値マトリクスを用いてディザ処理する。これにより、各走査の分散性を向上し、画像形成装置の物理的なレジストレーションずれが生じても粒状性劣化の少ないドットパターンが形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008―067049
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された手法によれば、各走査のドットパターンはブルーノイズ特性をもつが、各走査によって累積した際のドットパターンを考慮していない。そのため、同一領域に対して複数回記録走査することにより画像を形成する画像形成装置を用いて印字すると、画像の形成過程の結果、十分な分散性が得られないことがある。例えば、4回の記録走査により画像を形成する場合について考える。特許文献1の記載の方法によれば、各4回の記録走査に対応する記録データのドット配置はそれぞれ単独ではブルーノイズ特性をもち、分散性が高い。ところが、1回目の記録走査の後、さらに2回目の記録走査が行われると、累積されたドットパターンはブルーノイズ特性にはならない。したがって、画像形成装置が印字する画像形成過程において、ドットの粗密が発生する。そのため、液滴同士の干渉や相互作用が起こり、結果的に得られる粒状性が低下してしまう。
【0008】
本発明の目的は、画像の形成過程も考慮し、より分散性の高いドットパターンが出力可能な画像データを生成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、記録媒体上の同一領域に対して、N回(Nは3以上の整数)記録するkとにより、前記記録媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、前記記録の各々に対応する記録データを生成する記録データ生成手段と、ドット分散型マトリクスを用いたディザ法により、前記記録データをハーフトーン画像データに変換するハーフトーン処理手段と、前記ハーフトーン処理手段は、同一領域におけるp回目(2≦p≦N−1)の記録までに対応する前記ハーフトーン画像データのそれぞれを累積してできるドットパターンの分散性が高くなるように、前記p回目のハーフトーン画像データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像の形成過程を経ても分散性の高いドットパターンを保ち、最終的により粒状性のよい画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像処理装置および画像形成装置の構成を示したブロック図である。
【図2】記録ヘッドの構成を示す図である。
【図3】画像処理装置1における画像処理のフローを示す図である。
【図4】色分解処理部103を示す図である。
【図5】走査番号に応じたヘッドと画像形成領域の関係を示す図である。
【図6】記録データ設定用LUTを示す図である。
【図7】記録データ設定の処理を示す図である。
【図8】対応するノズルが画像Yアドレスの領域外座標になるときを示す図である。
【図9】走査番号に応じて色分解データ切り出し位置Ycut(k)の位置を示す図である。
【図10】ハーフトーン処理部107の構成を示すブロック図である。
【図11】ハーフトーン処理部107の処理を示すフローチャートである。
【図12】制約情報バッファ1506示す図である。
【図13】閾値マトリクスとハーフトーン画像データを示す図である。
【図14】ハーフトーン画像格納バッファ108を示す図である。
【図15】ハーフトーン処理結果を示す図である。
【図16】実施例1の、ハーフトーン画像の累積パターンの周波数特性を示す図である。
【図17】記録データ設定用LUT106を示す図である。
【図18】記録データ設定の処理を示す図である。
【図19】対応するノズルが画像Yアドレスの領域外座標になるときを示す図である。
【図20】走査番号に応じて色分解データ切り出し位置Ycut(k)の位置を示す図である。
【図21】ハーフトーン処理部107の構成を示すブロック図である。
【図22】ハーフトーン処理部107の処理を示すフローチャートである。
【図23】閾値マトリクスを示す図である。
【図24】各パスのハーフトーン画像データを示す図である。
【図25】累積されたハーフトーン画像データを示す図である。
【図26】変形例におけるインク値分割率を示す図である。
【図27】ハーフトーン処理部107の構成を示すブロック図である。
【図28】ハーフトーン処理部107の処理を示すフローチャートである。
【図29】閾値マトリクスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明をその好適な実施例に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0013】
<実施例1>
図1は、実施例1に適用可能な画像処理装置、および画像形成装置の構成を示したブロック図である。図1において、画像処理装置1と画像形成装置2はインタフェース又は回路によって接続されている。画像処理装置1は例えば一般的なパーソナルコンピュータにインストールされたプリンタドライバである。その場合、以下に説明する画像処理装置1内の各部は、コンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。ただし、画像形成装置2が画像処理装置1を含む構成としてもよい。
【0014】
画像処理装置1は、入力端子101から入力された印刷対象のカラーの画像データ(以下、カラー入力画像データ)を入力画像バッファ102に格納する。カラー入力画像データは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3つの色成分により構成されている。
【0015】
色分解処理部103は、格納されたカラー入力画像データを画像形成装置2が備える色材色に対応した画像データへ分解する。この色分解処理には、色分解用ルックアップテーブル(LUT)104を参照する。本実施例における色材色は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4種類に加え、相対的にインク濃度が低い淡シアン(Lc)、淡マゼンタ(Lm)を含めた6種類である。
【0016】
記録データ設定部105は、記録データ設定用LUT106に基づいて、色分解処理部103から得られる各色材色に対応する画像データをさらに、走査毎の記録データへ変換する。本実施例における記録データは、各走査によって印字されるインク量を示すものである。
【0017】
ハーフトーン処理部107は、記録データ設定部105によって得られる各色の走査ごと記録データをディザ法により2値化し、2値データ(以下、ハーフトーン画像データ)を出力する。ハーフトーン処理部107は、各色の走査ごとのハーフトーン画像データをハーフトーン画像格納バッファ108に出力する。格納されたハーフトーン画像データは、出力端子109より画像形成装置2へ出力される。
【0018】
画像形成装置2は、画像処理装置1から受信した各色のハーフトーン画像データに基づいて、記録ヘッド201を記録媒体202に対して相対的に縦横に移動することにより、記録媒体上に画像が形成する。ここでは、記録ヘッド201はインクジェット方式のものであり、一つ以上の記録素子(ノズル)を有する。ヘッド制御部204は移動部203を制御し、記録ヘッド201を移動させる。また搬送部205は、ヘッド制御部204の制御下で、記録媒体を搬送する。
【0019】
インク色選択部206は、画像処理装置1により形成された各色に対応する走査ごとのハーフトーン画像データに基づいて、記録ヘッド201に搭載されるインクの中から、印字するハーフトーン画像データに対応するインクを選択する。
【0020】
図2は、記録ヘッド201の構成例を示す図である。本実施例では前述の通り、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4種類に加え、相対的にインク濃度が低い淡シアン(Lc)、淡マゼンタ(Lm)を含めた6種類のインクを記録ヘッド201に搭載する。
【0021】
なお、本実施例では説明を簡単にするため記録媒体を搬送する方向(主走査方向)に対して、ノズルが一列に配置された構成を示しているが、ノズルの数、配置はこの例に限られるものではない。例えば、同一濃度の同一色でも吐出量が異なるノズルを有しても良いし、同一吐出量のノズルが複数列あっても良い。さらにノズルがジグザグに配置されているような構成であっても良い。また、図2では各インク色に対応するノズルの配置順序は副走査方向に対して一列となっているが、主走査方向に一列に配置する構成であっても良い。
【0022】
次に、上述した機能構成を備えた本実施例に適用可能な画像処理装置1および画像形成処理2における処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0023】
まず、ステップS101において、多階調のカラー入力画像データが入力端子101より入力し、入力画像バッファ102に格納する。ここで入力画像データは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3つの色成分によりカラー入力画像データを生成する。
【0024】
ステップS102において、色分解処理部103は、色分解用LUT104を用いて、カラー入力画像データが示すRGBからCMYK及びLcLmの色毎に分解する。本実施例では、色分解処理後の各画素データを8ビットとして扱うが、それ以上の階調数への変換を行っても構わない。
【0025】
上述したように本実施例における記録ヘッド201は、6種類の各インクを保有する。そのため、RGBのカラー入力画像データは、CMYKLcLm各プレーンの各6プレーンの画像データへ変換される。
【0026】
図4は、色分解処理部103におけるデータの入出力を示している。入力されたR’、G’、B’各色の画像データは、色分解用LUT104を参照して次式の通りに、CMYKLcLm各色に対応する色分解後画像データへ変換される。
【0027】
C=C_LUT_3D(R’,G’,B’) ・・・(1)
M=M_LUT_3D(R’,G’,B’) ・・・(2)
Y=Y_LUT_3D(R’,G’,B’) ・・・(3)
K=K_LUT_3D(R’,G’,B’) ・・・(4)
Lc=Lc_LUT_3D(R’,G’,B’) ・・・(5)
Lm=Lm_LUT_3D(R’,G’,B’) ・・・(6)
ここで、式(1)〜(6)の右辺に定義される各関数が、色分解用LUT104の内容に該当する。色分解用LUT104はレッド、グリーン、ブルーの3入力値から、各インクの出力値を定める。本実施例では、CMYKLcLmの6種類のインクを具備する構成であるため、3入力値から6出力値を得るLUT構成となる。
【0028】
以上の処理により、本実施例における色分解処理が完了する。
【0029】
以下のステップS103からステップS109は、色ごとに処理を行う。ここでは、シアン(C)の例に説明するが、他の5種類の色材マゼンタ(M)、ブラック(K)、イエロー(Y)、淡シアン(Lc)、淡マゼンタ(Lm)に対しても同様の処理を行う。
【0030】
ステップS103において、記録データ設定部105は、走査番号k及び色分解後画像データ切り出し位置としてのY座標を示すYcut(k)を設定する。Ycut(k)は、走査番号kにおける色分解後画像データ切り出し位置であり、ノズル上端座標に相当する。なお、走査番号kの初期値は1であり、処理ループ毎に1ずつインクリメントされる。
【0031】
ここで、16個のノズル列を具備し、画像上の同一主走査記録領域に対して4回の走査で画像を形成させる4パス印字の場合を例として、色分解後画像データ切り出し位置Y座標Ycut(k)の設定法を説明する。
【0032】
一般的に4パス印字の場合、図5に示すように、走査番号の初期値(k=1)では、ノズル下端1/4のみを使用して画像形成を行い、走査番号k=2では走査番号k=1に対してノズル長さ1/4分紙送りしてから画像形成を行う。さらに走査番号k=3では走査番号k=2に対してノズル長さ1/4分紙送りしてから画像を形成する。このような画像形成および紙送りを繰り返して、最終出力画像が形成される。そのため、走査番号k=1の場合、ノズル上端座標に相当する色分解後画像データ切り出し位置Ycut=−12となる。
【0033】
上述した色分解後画像データ切り出し位置Ycut(k)を一般化すると、ノズル列数:Nzzl、パス数:Pass、走査番号:k、として次式で与えられる。
【0034】
Ycut(k)=−Nzzl+(Nzzl/Pass)×k ・・・(7)
以上のようにYcut(k)が設定されると、次に記録データ設定部105は、記録データ設定用LUT106を用いて、各色に対応する色分解処理後画像データに基づき、走査ごとの記録データを設定する(S104)。
【0035】
記録データ設定用LUT106によれば、4パスの場合、図6に示すような値が与えられる。図6は16ノズル、4パスの例を表しており、縦軸がノズル位置、横軸がDuty分割率を示す。ここでは、4ノズルごとにノズル位置3、7、11、15を設定し、各点を線形補間した16ノズル分のDuty分割率が、記録Duty設定用LUT106として保持されている。色分解後画像データを各走査に分割するための比率を分割率と呼ぶ。
【0036】
図6は、シアンに対応する色分解後画像データの分割率をD_dとすると、D_d(3)=D_d(7)=D_d(11)=D_d(15)=0.25となっている。つまり、色分解後画像データは走査ごとに均等に1/4=0.25の比率で分割される。分割率D_dのノズル位置nyに関する関数は以下のようになる。
【0037】
D_d(ny) = 0.25 ・・・(8)
「なお、(0≦ny<Nzzl)」
なお、分割率D_d(3)、点D_d(7)、点D_d(11)、点D_d(15)の数値は、以下のように設定される。
【0038】
D_d(3)+D_d(7)+D_d(11)+D_d(15)=1.0 ・・・(9)
また、記録データ設定用LUT106として保持される値は上記設定法に限られるものではなく、ノズル上端、下端部分の値で変更してもよい。また、点を細かく設定してもよいし、ノズル毎に直接指定しても良い。
【0039】
ステップS104において記録データ設定部105は、図7に示すように、記録データ設定用LUT106と色分解後画像データとを積算し、各記録データを設定する。つまり図7に示す右項のように、実際にはノズルごとの記録データが設定される。これにより走査時には、各ノズルは記録データ分に基づいたインク量を吐出して画像を形成する。
【0040】
ここで、ノズルが画像Yアドレスの領域外になるときは、記録データを0とする。例えば図8に示すように、走査番号k=1では、ノズル列上端3/4で画像Yアドレスが負になるため走査Duty値=0が代入され、ノズル列下端1/4には有意な値が代入される(1301)。
【0041】
また、色分解後画像データ切り出し位置Ycut(k)は、走査番号kによって決定される。走査番号k=1〜7の場合、各走査の記録データは図9に示すように決定される。図9は、走査番号ごとのノズル位置に対する記録データを示しており、走査番号ごとに記録データが異なっていることが分かる。記録データは、色分解後画像データと記録データ設定用LUT106との積により定まるため、紙送りしながらLUTとの積をとると、領域1(1401)の部分では、走査番号k=1〜4の4回の走査で形成される1ラスタの合計値が色分解後画像データと同じになる。同様に領域2、3、4においても、1ラスタの合計値が色分解後画像データと同じになる。
【0042】
次にステップS105において、ハーフトーン処理部107は各記録データを2値データに変換するハーフトーン処理を行う。
【0043】
本実施例におけるハーフトーン処理は、256階調で表された記録データ(8ビット)を2階調に変換する処理として、ディザ法を用いる。処理の詳細は後述する。
【0044】
ステップS107において、ハーフトーン画像格納バッファ108に蓄えられた、縦方向がノズル数(Nzzl)、横方向が画像のXサイズ(W)に相当するバンドデータが、画像出力端子109より出力される。
【0045】
ステップS108において、ハーフトーン画像データを受けた画像形成装置2では、ハーフトーン画像データに適合するインク色が選択され、印字動作が開始される。
【0046】
ステップS109において、記録ヘッド201が記録媒体に対して左から右に移動しながら、一定の駆動間隔で各ノズルを駆動して記録媒体上に画像を記録する主走査を1回行う。さらに該主走査が終了すると、主走査と垂直方向の走査である副走査が1回行なわれる。また、ステップS109において、全ての走査が終了したか否かの判定を行う。終了した場合には一連の画像形成処理が完了し、終了していない場合にはステップS103に戻る。以上により、処理の全てが終了する。
【0047】
ここで、ステップS105において行われるハーフトーン処理について、詳細に説明する。なお、説明を簡略化するため、4パス印字、シアンの走査番号k=1における記録データをハーフトーン処理する場合を例に説明する。図10は、ハーフトーン処理部107の構成を示す。また、図11はハーフトーン処理部107におけるハーフトーン処理の流れを示すフローチャートである。
【0048】
まず図11に示すステップS201において、図10に示す制約情報加算部1501で下式に示すように、シアン記録データであるC_dと、制約情報バッファ1506に格納された制約情報C_rの合計データIcを算出する。ただし、走査番号k=1の制約情報C_rは全て0である。
【0049】
Ic=C_d+C_r ・・・(10)
図12が示す制約情報バッファ1506は、縦方向がノズル数、横方向が画像のXサイズに相当するバンド状の制約情報を保持している。また制約情報バッファ1506は、色ごとの制約情報を格納している。制約情報とは、記録される画像上のアドレス(画素)にドットが形成されやすいか否かを示す値が格納され、走査番号kごとに更新される。ただし、処理開始時の走査番号k=1には、初期値として全て0が代入されている。すなわち、アドレス(X,Y)における各色の制約情報をC_r(X,Y)、Lc_r(X,Y)、M_r(X,Y)、Lm_r(X,Y)、Y_r(X,Y)、K_r(X,Y)とすると、これらは走査番号k=1のときは以下のように記述される。なお、0≦nx<画像Xサイズ、0≦ny<Nzzl(ノズル列数:この場合16)である。
【0050】
C_r(nx,ny)=0 ・・・(11)
Lc_r(nx,ny)=0 ・・・(12)
M_r(nx,ny)=0 ・・・(13)
Lm_r(nx,ny)=0 ・・・(14)
Y_r(nx,ny)=0 ・・・(15)
K_r(nx,ny)=0 ・・・(16)
そのため、実質的には走査番号k≧2の時に、制約情報バッファ1506は有意な制情報に更新されていくことになる。制約情報は、その値が小さいほど、そのアドレスにドットが形成されにくく、値が大きいほどドットが形成されやすいことを示す。具体的には、そのアドレスにドットが形成されやすい場合には正の値が、そのアドレスにドットが形成されにくい場合は負の値が格納される。制約情報の更新について、詳細は後述する。
【0051】
次にステップS202において、量子化部1503は記録データに制約情報が加算された合計値データI_cを量子化する。図13に、量子化部1503がおこなう量子化の概要を示す。量子化部1503は閾値マトリクス1502を用いて量子化する。閾値マトリクス1502には、合計値データを構成する各アドレス(画素)に対応する閾値を有している。量子化部1503は、合計データと閾値マトリクス1502とを画素ごとに比較し、ステップS203において2値化データを出力する。このときの2値化は、閾値マトリクス1502における閾値Th(0〜255)を用いて、以下のように表される。
【0052】
I_c<Thのとき、Out_c=0 ・・・(17)
Th≦I_cのとき、 Out_c=255 ・・・(18)
出力値Out_cは、ハーフトーン処理部107からの最終的な出力値であり、ハーフトーン画像データを構成するハーフトーン画素値である。本実施例における閾値マトリクス1502は、ブルーノイズ特性を持つように閾値が配列されている。また、本実施例では、量子化部1503は、走査番号ごとに同一の閾値マトリクス1502を用いる。
【0053】
ステップS204において、上述したステップS201〜S203の処理をバンド内のアドレス(0,0)〜(W−1,Nzzl−1)まで行なう。以上により全てのアドレス(画素)を表すハーフトーン画素値が決定され、ハーフトーン画像データが生成される。ここで各記録走査によって形成されるドット配置が決定される。ステップS204において、走査番号k=1でのハーフトーン処理が終了し、その結果、各色成分の1回の記録走査で形成されるハーフトーン画像データが、各色成分のハーフトーン画像格納バッファ108に格納される。図14は、走査番号k=1に対応するハーフトーン画像データを示す。ハーフトーン画像データは、ハーフトーン画像格納バッファ108に格納される。
【0054】
ステップS205において減算部1504は、記録データC_dから、ハーフトーン画像データOut_cを減算する。
【0055】
ステップS206において、重み積算部1505は減算部1504から得られるデータに対して、重み係数h(実数)を積算する。なお本実施例ではh=1.0とする。
【0056】
S(nx,ny)=(−Out_c+C_d)×h ・・・(19)
ステップS207において、LFシフト部1507は、重み積算部605が算出したデータをLF(紙送り量)だけシフトする。また、LFシフト部1508は、制約情報バッファ1506に格納された制約情報 C_r(nx,ny)をLF分シフトする。
【0057】
ステップS208において、加算部1509は、シフトされたk=1の時の制約情報C_r(nx,ny+LF)とシフトされたS(nx,ny+LF)を加算し、制約情報C_rを更新する。
【0058】
C_r(nx,ny)←C_r(nx,ny+LF)+S(nx,ny+LF) ・・・(20)
なお、ny+LF≧Nzzlのときは、C_r(nx,ny)=0とする。
【0059】
ただし、ny+LF≧Nzzlのときは、C_r(nx,ny)=0とする。すなわち、シフト後の下端LFノズル分(この場合4ノズル分)には0を代入する。
【0060】
ここで算出された制約情報C_rは、走査番号k=1の次の走査番号k=2に対応する記録データをハーフトーン処理する際に用いられる。つまり、走査番号k=mのハーフトーン画像データに基づいて生成された制約情報は、走査番号k=m+1に対応する記録データをハーフトーン処理する際に用いられる制約情報として、制約情報バッファ1506に保存される。なお、本実施例では制約情報バッファ1506に格納される値は、どのような走査番号のタイミングであっても、平均値が0となるように各値が格納されるとするが、これ以外の制約情報であってもよい。
【0061】
なお、データを紙送り量LF分だけシフトさせる理由は、次の走査番号にて形成されるハーフトーン画像データが、記録媒体上で相対的に紙送り量LF分ずれるためである。
【0062】
以上により、走査番号k=1でのハーフトーン処理が終了し、その結果、各色成分の一回の記録走査で形成されるハーフトーン画像データが、各色分のハーフトーン画像格納バッファ108に格納されることになる。
【0063】
制約情報について、その更新方法を示す式(19)および式(20)に基づいて、詳細に説明する。式(19)におけるOut_cは、走査番号k=mにおけるハーフトーン画像データである。ハーフトーン画像データに負号を付して−Out_cとし、更新前の制約情報から減算する。操作番号k=mにおけるハーフトーン画像データを減算した制約情報は、走査番号k=m+1に対応する記録データのハーフトーン処理に用いられるが、走査番号k=mにおいてドットが打たれたアドレス(画素)には走査番号k=m+1ではドットが打たれにくくなる。
【0064】
ここで、以上の処理により、ドット配置がどのようになるかをノズル数512、パス数4である場合を例に説明する。図15は、図9が示す領域1に対して走査番号1〜4の記録走査が行われた時のドット配置について示した図である。
【0065】
図15(a)は領域1に対して走査番号1の記録走査で印字するドット配置(パス番号1)である。図15(b)は走査番号1および走査番号2の記録走査により印字されたドット配置であり、パス番号1とパス番号2が累積したドット配置である。同様に(c)は、パス番号1、パス番号2、パス番号3が累積したドット配置である。また、(d)はパス番号1、パス番号2、パス番号、3パス番号4が累積したドット配置である。(d)は最終的に形成される画像のドット配置を示している。なお、(e)はパス番号2のみのドット配置、(f)はパス番号3のみのドット配置、(g)はパス番号4のみのドット配置を示している。
【0066】
図15(a)〜(d)のドット配置は、複数回の走査によって画像を形成する過程において、累積されていくドット配置である。図16(a)〜(d)は、図15(a)〜(d)それぞれに対してフーリエ解析を行った結果である。いずれの累積したドット配置もブルーノイズ特性を持つことが分かる。つまり本実施例によれば、いずれの累積したドット配置もブルーノイズ特性を持ち、分散性が高いことが分かる。
【0067】
このようになる理由は、式(19)および式(20)において算出される制約情報が、それまで形成されたハーフトーン画像データをそのまま減算したデータを制約情報として、ハーフトーン処理に用いられるためである。
【0068】
言い換えると、Nパス印字の場合、図20の領域Aなどの同一領域におけるp回目(2≦p≦N)パスのハーフトーン画像を決める際には、(p−1)回目のパスまでを累積したドットパターンを制約情報として用いる。そして、上記制約情報を用いてp回目のハーフトーン処理を行うのである。
【0069】
その結果、制約情報として用いる(p−1)回目のパスまでを累積したパターンとは異なる領域にドットが形成され、画像を累積する過程においても分散性を高めることができる。各パスの累積されたドット配置における分散性を考慮しない場合、ハーフトーン画像データの基づいて画像形成装置が印字するドット形成過程において、累積されたドット配置に粗密が発生する。そのため、液滴同士の干渉や相互作用が起こり、各パスにおけるドット配置が分散性の高い配置であっても、最終的に得られる画像の粒状性が低下してしまう。本実施例によれば、画像形成の過程に沿って、印字されていく累積されたドット配置の分散性を考慮することにより、最終的により粒状性の良好な画像を得ることができる。
【0070】
なお、本実施例では、制約情報を各走査に対応する記録データに反映したが、本実施例の手法に限られるものではない。他の手法として、制約情報をディザマトリクスに反映してもよい。このときの制約情報は、ドットが打たれないようにすべき位置に対して、ディザマトリクスの閾値が大きくなるような制約情報を持たせればよい。
【0071】
また、本実施例では4パス印字において、2〜4パス目について制約情報を用いてハーフトーン処理をすることで累積パターン(1+2、1+2+3パス、1+2+3+4パス)をブルーノイズ特性とし分散性を高めたが、すべての累積された画像において分散性が高くなるようにしなくてもよい。例えば、2〜4パス全てで制約情報を演算することは処理コスト増大につながるため、1+2+3パスが累積された画像の分散性は考慮せず、1+2パス、1+2+3+4パスの一部の累積されたパス画像が分散性が高くなるようハーフトーン処理しても効果が得られる。
【0072】
<実施例2>
上述した実施例1では、走査毎にそれまでに形成されるハーフトーン画像データを制約情報としてディザ処理に用いた。実施例2では、制約情報バッファを用いず同等の処理を実現する方法について説明する。
【0073】
なお実施例2については、ステップS104、S105以外は実施例1と同様の処理であるので、本実施例に特徴的なステップS104、S105についてのみ述べる。
【0074】
ステップS104において、記録データ設定部105は、記録データ設定用LUT106に基づき、各色分解後画像データを記録データに変換する。
【0075】
本実施例では、各色分解後画像データの分割率D_dについて、実施例1の式(8)および式(9)と同様に0.25のインク値分割率が与えられるものとする。また、本実施例でも、説明を簡略化するため、C(シアン)の場合を例に説明する。
【0076】
上述の式(8)および式(9)の分割率が設定された場合、記録データ設定用LUT106は図17のようにノズル位置と記録データ設定値との関係で設定される。
【0077】
図17は記録データ設定用LUTであり、縦軸がノズル位置、横軸が記録データ設定用LUTの値を示す。また、図17によれば、シアンの記録データ設定用LUTは、下位LUT(1601)、上位LUT(1602)の2種が設定される。下位LUTは点線(1604)および◇(1603)◆(1605)で示されたデータで、上位LUTは実線(1607)および□(1606)■(1608)で示されたデータである。また、その他の色に関しても同様に記録データ設定用LUTが設定される。
【0078】
ここで、図17に示されたシアン記録データ設定用LUT106の下位LUTであるU_C_LUT(ny)と、上位LUTであるO_C_LUT(ny)は以下の規則によって生成される。
【0079】
U_C_LUT(ny)= D_d(ny+Nzzl/4)
+D_d(ny+2×Nzzl/4)+D_d(ny+3×Nzzl/4)
・・・(21)
O_C_LUT(ny)= D_d(ny)+ D_d(ny+Nzzl/4)
+D_d(ny+2×Nzzl/4)+D_d(ny+3×Nzzl/4)
・・・(22)
なお、(0≦nx<画像Xサイズ)(0≦ny<Nzzl)
すなわち、シアンの下位LUTであるU_C_LUTの値は、
(0≦ny<4のとき) U_C_LUT(ny)=0.75
(4≦ny<8のとき) U_C_LUT(ny)=0.5
(8≦ny<12のとき) U_C_LUT(ny)=0.25
(12≦ny<16のとき) U_C_LUT(ny)=0.0
・・・(23)
シアンの上位LUTであるO_C_LUTの値は、
(0≦ny<4のとき) O_C_LUT(ny)=1.0
(4≦ny<8のとき) O_C_LUT(ny)=0.75
(8≦ny<12のとき) O_C_LUT(ny)=0.5
(12≦ny<16のとき) O_C_LUT(ny)=0.25
・・・(24)
その他の色に関しても同様に与えられる。上述の記録データLUT106
を用いて、シアンの記録データを設定する。
【0080】
本実施例では、シアンの記録データに関してはシアン下位記録データU_C_dとシアン上位記録データO_C_dの2つの記録データが設定される。この2つのシアンの記録データU_C_d、O_C_dに関しては、シアン記録データ設定用LUT106の下位LUTであるU_C_LUTと、上位LUTであるO_C_LUTから、下式のようにそれぞれ算出される。
【0081】
U_C_d(nx、ny) =
C_d(nx、ny+Ycut(k))× U_C_LUT(ny)
・・・(25)
O_C_d(nx、ny) =
C_d(nx、ny+Ycut(k))× O_C_LUT(ny)
・・・(26)
記録データの決定方法について、図18を用いて説明する。図18は、シアンの被覆率60%で、色分解後画像データCが全てのアドレス(画素)において153の場合を示す。
【0082】
上述の図18に示された色分解データが与えられたときのシアンの記録データは1701のように与えられる。ここで下位記録データU_C_dは1702、上位記録データO_C_dは1703である。
【0083】
なお、その他の色に対しては、シアンの記録データと同様の算出が行われる。
【0084】
ここで本実施例において実施例1と同様、対応するノズルが画像Yアドレスの領域外座標になるときは、記録データを0とする。例えば、走査番号k=1では、図19の1801に示すように、ノズル列上端3/4で画像Yアドレスが負になるため上位記録データ、下位記録データともに0が代入され、ノズル列下端1/4には有意な値が代入される。
【0085】
また、色分解データ切り出し位置Ycut(k)は走査番号kによって決まるため、走査番号k=1〜4の場合、記録データは図20に示すように決定される。
【0086】
図20では、紙送りしながら走査を繰り返すと、領域Aでは、走査番号k=1〜4の4回の走査で形成されることを示している。
【0087】
図20において、シアンの各走査番号のノズル位置に対する記録データ(下位記録データU_C_d、上位記録データO_C_d)が示されており、走査番号ごとに記録データが異なっていることが分かる。シアンの各記録走査に対応する記録データ(1901〜1904)は、式(25)および式(26)のように、色分解後画像データと記録データ設定用LUT106との積により定まる。
【0088】
以上、本実施例におけるステップS104の記録データ設定処理が完了する。
【0089】
ステップS104において、ハーフトーン処理部107は記録データにハーフトーン処理を施し、それぞれ2値のハーフトーン画像データに変換する。
【0090】
ハーフトーン処理は、周知のディザ法を用いることができる。以下、本実施例におけるハーフトーン処理について説明する。図21は本実施例に適用可能なハーフトーン処理部107の構成を示し、図22はハーフトーン処理のフローチャートを示す。
【0091】
ステップS301において、シアンの上位記録データO_C_dを入力する。
【0092】
ステップS302において、2値化部2002は、シアンの上位記録データO_C_dと閾値マトリクスとを比較する。図23は、2値化部2002に用いられる閾値マトリクス2001を示す。各閾値は画像データにおける画素と対応している。したがって2値化部2002は、画素ごとに上位記録データを表す画素値と、閾値マトリクスにおける閾値とを比較する。
【0093】
O_C_d < Th のとき、 Out_O_C=0 ・・・(27)
Th≦O_C_d のとき、 Out_O_C=255 ・・・(28)
ステップS303において、シアンの上位ハーフトーン画像データOut_O_Cを出力する。ステップS304において、下位記録データを入力する。ステップS305において、2値化部2003はシアンの下位記録データU_C_dとディザマトリクス2001とを比較し、下式の通りに二値化する。
【0094】
U_C_d < Th のとき、 Out_U_C=0 ・・・(29)
Th≦U_C_d のとき、 Out_U_C=255 ・・・(30)
ステップS306において、シアンの下位ハーフトーン画像データOut_U_Cを出力する。なお、閾値マトリクス2001は、ドット配置が分散しやすいブルーノイズ特性をもつことが好ましい。また、本実施例では、閾値マトリクス2001は、各色、各走査番号に対して同じ閾値マトリクスを用いるが、異なる閾値マトリクスであってもよい。
【0095】
ステップS307において、減算器2004は、シアンの上位ハーフトーン画像データから下位ハーフトーン画像データを減算する。
【0096】
ステップS308において、減算器2004から出力されるハーフトーン画像データOut_Cを算出する。
【0097】
Out_C = Out_O_C − Out_U_C ・・・(31)
ステップS309において、上述したステップS301〜S308の処理をバンド内のアドレス(0,0)〜(W−1,Nzzl−1)まで行なうことによって、ハーフトーン画像データのドット配置が決定される。以上説明したようにステップS105におけるハーフトーン処理が終了する。
【0098】
ここで、シアンのハーフトーン画像データOut_Cについて述べる。図24は、図20に示した領域Aにおけるハーフトーン処理の演算過程を示す。また、図25は、図20に示した領域Aにおけるハーフトーン処理結果を示す。図24において、走査番号1のシアン上位記録データO_C_d(2101)に基づいて、シアン上位ハーフトーン画像データOut_O_C(2102)が求められる。また、走査番号1のシアン下位記録データU_C_d(2103)に基づいて、シアン下位ハーフトーン画像データOut_U_C(2104)が求められる。その結果、式(31)により、走査番号1に対応するハーフトーン画像データOut_C(2105)が求められる。同様に、走査番号2のシアン上位記録データO_C_d(2106)に基づいて、シアン上位ハーフトーン画像データOut_O_C(2107)が求められる。また、走査番号2のシアン下位記録データU_C_d(2108)に基づいて、シアン下位ハーフトーン画像データOut_U_C(2109)が求められる。その結果、式(31)より、走査番号2に対応するハーフトーン画像データOut_C(2110)が求められる。走査番号1に対応する上位記録データO_C_dは、走査番号2において下位記録データU_C_dになることが分かる。つまり、走査番号mに対応する上位記録データO_C_dは、走査番号m+1において下位記録データU_C_dとして入力される。
【0099】
言い換えると、Nパス印字の場合、図20の領域Aなどの同一領域におけるpパス目のハーフトーン画像データは、p回目のパスまでの累積ドットパターンと、(p−1)回目のパスまでの累積ドットパターンの差分に基づいて決定される、ということを意味する。
【0100】
この様にすると、例えば、ハーフトーン画像データOut_Cは走査番号1〜4で同じ位置にドットが極力ONにならないよう形成される。
【0101】
図25は、領域Aにおける各パスの画像データ、各パスが累積されたハーフトーン画像データ、および最終的に得られるハーフトーン画像データを示す。図25の(a)〜(d)は、4回の記録走査によって累積されていくハーフトーン画像データであり、(a)および(e)〜(g)は、各走査が画像を形成するハーフトーン画像データである。画像の形成過程において、ハーフトーン画像データに基づいてドットが累積しても、分散性が良好であることが分かる。
【0102】
以上説明したように実施例2によれば、制約情報を用いずに、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0103】
<実施例3>
上述した実施例1および2では、走査毎にディザ処理を施す際に同一の閾値マトリクスを用いた。本実施例では、使用する閾値マトリクスを適応的に変更する例を示す。これにより、実施例1のような制約情報が必要なく、かつ、実施例2のように記録データを2つ生成することなく実施例1および2と同様に効果を実現できる。なお、前述の実施例と同様の構成、処理についてはその説明を省略する。
【0104】
図27は、ハーフトーン処理部107の詳細構成を示すブロック図である。また、図28はハーフトーン処理部107におけるハーフトーン処理のフローを示す図である。
【0105】
ステップS401において、記録データC_dの、記録素子に相当するノズル領域を設定する。例えば、図9の走査番号k=4の場合を例にすると、パス番号1〜4を形成する領域のいずれかを設定する。下端であるパス番号1の領域であれば領域番号dm=1を、パス番号2の領域であればdm=2を、パス番号3の領域であればdm=3を、パス番号4の領域であればdm=4を設定する。ステップS402において、量子化部2203が使用する閾値マトリクスを選択する。本実施例では、使用する閾値マトリクスは図29が示すように、閾値マトリクスTh1〜Th_nの複数が用意されている。ここで4パス印字の場合は、少なくとも4種類の閾値マトリクスが用意される。ここで、S401において設定された領域番号dmに応じて、使用する閾値マトリクスが選択される。つまり、パス番号に応じて、使用される閾値マトリクスが異なる。ステップS403において、量子化部2203は選択された閾値マトリクスと記録データとを比較し、ステップS404において以下の通りに2値化する。
【0106】
C_d<Thのとき、Out_c=0 ・・・(32)
Th≦C_dのとき、 Out_c=255 ・・・(33)
なお、Thは選択された閾値マトリクスである。上述の閾値マトリクスは、複数の閾値マトリクスを用いてパス1〜4まで形成された際に、1+2パスが累積された画像がブルーノイズ特性をもち、1+2+3パスが累積された画像、1+2+3+4パスが累積された画像がブルーノイズ特性をもつようにあらかじめ設定されている。すなわち、上述の複数の閾値マトリクスで形成される閾値マトリクスは4種類の閾値マトリクスが統合された場合にブルーノイズになるよう、あらかじめ公知の最適化手法で最適化されている。本実施例では、シミュレーテッドアニーリングや、遺伝的アルゴリズムなど公知の手法を用いることができる。ステップS405において、上述したステップS401〜S404の処理をバンド内のアドレス(0,0)〜(W−1,Nzzl−1)まで行なうことによって、ハーフトーン画像データが出力される。以上で、本実施例に係るステップS105におけるハーフトーン処理が終了する。
【0107】
以上説明したように本実施例によれば、実施例1のような制約情報が必要なく、かつ、実施例2のように記録データを2つ生成することなく、累積されたハーフトーン画像データでブルーノイズ特性をもち、画像の形成過程を経ても分散性を上げることができる。
【0108】
<変形例>
上述の各実施例では、図6に示した通り、ノズル毎のインク値分割率として0.25の均一な分割処理を行う例を説明した。しかし、均一な分割では、紙送りのずれによって、スジが目立つことがあるため、図26のようにノズル中央部分の分割率を大きくして、スジを目立たなくする工夫が可能である。また、上述した各実施例では、所定方向に配列された複数のノズルを有する記録ヘッドをノズルの配列方向と交差する方向に記録媒体上で走査させて、記録媒体にインクを吐出することで画像を形成するインクジェット記録方式を用いた画像処理装置を説明した。しかしながら本発明は、インクジェット方式以外の他の方式に従って記録を行う記録装置(例えば熱転写方式や電子写真方式)に対しても適用できる。この場合、インク滴を吐出するノズルはドットを記録する記録素子やレーザー発光素子に対応することとなる。また、記録媒体の記録幅に対応する長さの記録ヘッドを有し、記録ヘッドに対して記録媒体を移動させて記録を行う、いわゆるフルライン型の記録装置などにも適用できる。
【0109】
本発明は、上述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給することによっても実現できる。この場合、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)がコンピュータが読み取り可能に記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することにより、上述した実施例の機能を実現する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数回の記録により画像を形成する画像形成装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンで処理した画像データを印刷することが一般的に行われている。パソコンで扱う画像データの階調数に比べて、画像形成装置が表現可能な画素あたりの階調数は少ない場合がある。このような場合、入力画像データの階調数を出力装置で表現可能な階調数に変換するハーフトーン処理が必要である。このハーフトーン処理の1つとして、ディザ法が知られている。このディザ法は、入力された画像データにおける画素値と閾値マトリクスにおける画素に対応した閾値とを比較し、各画素の出力値を決定する手法である。
【0003】
このディザ法は、別のハーフトーン処理の1つして知られている誤差拡散法に比べて、複雑な演算を必要としないため高速な処理が可能である。またディザ法は、出力される画像データにおけるドット配置の空間周波数が、高周波になるように設定したブルーノイズ型の閾値マトリクスを用いることにより、誤差拡散法と同等に分散性の高い画像データを生成できることが知られている。
【0004】
そこで、上記ブルーノイズ型の閾値マトリクスを用いて、画像形成装置が画像形成する際のドット形成順やドットの配置を決定する方法として特許文献1が提案されている。
【0005】
特許文献1に記載された方法よれば、記録走査に対応するそれぞれの記録データを、ブルーノイズ型の閾値マトリクスを用いてディザ処理する。これにより、各走査の分散性を向上し、画像形成装置の物理的なレジストレーションずれが生じても粒状性劣化の少ないドットパターンが形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008―067049
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された手法によれば、各走査のドットパターンはブルーノイズ特性をもつが、各走査によって累積した際のドットパターンを考慮していない。そのため、同一領域に対して複数回記録走査することにより画像を形成する画像形成装置を用いて印字すると、画像の形成過程の結果、十分な分散性が得られないことがある。例えば、4回の記録走査により画像を形成する場合について考える。特許文献1の記載の方法によれば、各4回の記録走査に対応する記録データのドット配置はそれぞれ単独ではブルーノイズ特性をもち、分散性が高い。ところが、1回目の記録走査の後、さらに2回目の記録走査が行われると、累積されたドットパターンはブルーノイズ特性にはならない。したがって、画像形成装置が印字する画像形成過程において、ドットの粗密が発生する。そのため、液滴同士の干渉や相互作用が起こり、結果的に得られる粒状性が低下してしまう。
【0008】
本発明の目的は、画像の形成過程も考慮し、より分散性の高いドットパターンが出力可能な画像データを生成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、記録媒体上の同一領域に対して、N回(Nは3以上の整数)記録するkとにより、前記記録媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、前記記録の各々に対応する記録データを生成する記録データ生成手段と、ドット分散型マトリクスを用いたディザ法により、前記記録データをハーフトーン画像データに変換するハーフトーン処理手段と、前記ハーフトーン処理手段は、同一領域におけるp回目(2≦p≦N−1)の記録までに対応する前記ハーフトーン画像データのそれぞれを累積してできるドットパターンの分散性が高くなるように、前記p回目のハーフトーン画像データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像の形成過程を経ても分散性の高いドットパターンを保ち、最終的により粒状性のよい画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像処理装置および画像形成装置の構成を示したブロック図である。
【図2】記録ヘッドの構成を示す図である。
【図3】画像処理装置1における画像処理のフローを示す図である。
【図4】色分解処理部103を示す図である。
【図5】走査番号に応じたヘッドと画像形成領域の関係を示す図である。
【図6】記録データ設定用LUTを示す図である。
【図7】記録データ設定の処理を示す図である。
【図8】対応するノズルが画像Yアドレスの領域外座標になるときを示す図である。
【図9】走査番号に応じて色分解データ切り出し位置Ycut(k)の位置を示す図である。
【図10】ハーフトーン処理部107の構成を示すブロック図である。
【図11】ハーフトーン処理部107の処理を示すフローチャートである。
【図12】制約情報バッファ1506示す図である。
【図13】閾値マトリクスとハーフトーン画像データを示す図である。
【図14】ハーフトーン画像格納バッファ108を示す図である。
【図15】ハーフトーン処理結果を示す図である。
【図16】実施例1の、ハーフトーン画像の累積パターンの周波数特性を示す図である。
【図17】記録データ設定用LUT106を示す図である。
【図18】記録データ設定の処理を示す図である。
【図19】対応するノズルが画像Yアドレスの領域外座標になるときを示す図である。
【図20】走査番号に応じて色分解データ切り出し位置Ycut(k)の位置を示す図である。
【図21】ハーフトーン処理部107の構成を示すブロック図である。
【図22】ハーフトーン処理部107の処理を示すフローチャートである。
【図23】閾値マトリクスを示す図である。
【図24】各パスのハーフトーン画像データを示す図である。
【図25】累積されたハーフトーン画像データを示す図である。
【図26】変形例におけるインク値分割率を示す図である。
【図27】ハーフトーン処理部107の構成を示すブロック図である。
【図28】ハーフトーン処理部107の処理を示すフローチャートである。
【図29】閾値マトリクスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明をその好適な実施例に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0013】
<実施例1>
図1は、実施例1に適用可能な画像処理装置、および画像形成装置の構成を示したブロック図である。図1において、画像処理装置1と画像形成装置2はインタフェース又は回路によって接続されている。画像処理装置1は例えば一般的なパーソナルコンピュータにインストールされたプリンタドライバである。その場合、以下に説明する画像処理装置1内の各部は、コンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。ただし、画像形成装置2が画像処理装置1を含む構成としてもよい。
【0014】
画像処理装置1は、入力端子101から入力された印刷対象のカラーの画像データ(以下、カラー入力画像データ)を入力画像バッファ102に格納する。カラー入力画像データは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3つの色成分により構成されている。
【0015】
色分解処理部103は、格納されたカラー入力画像データを画像形成装置2が備える色材色に対応した画像データへ分解する。この色分解処理には、色分解用ルックアップテーブル(LUT)104を参照する。本実施例における色材色は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4種類に加え、相対的にインク濃度が低い淡シアン(Lc)、淡マゼンタ(Lm)を含めた6種類である。
【0016】
記録データ設定部105は、記録データ設定用LUT106に基づいて、色分解処理部103から得られる各色材色に対応する画像データをさらに、走査毎の記録データへ変換する。本実施例における記録データは、各走査によって印字されるインク量を示すものである。
【0017】
ハーフトーン処理部107は、記録データ設定部105によって得られる各色の走査ごと記録データをディザ法により2値化し、2値データ(以下、ハーフトーン画像データ)を出力する。ハーフトーン処理部107は、各色の走査ごとのハーフトーン画像データをハーフトーン画像格納バッファ108に出力する。格納されたハーフトーン画像データは、出力端子109より画像形成装置2へ出力される。
【0018】
画像形成装置2は、画像処理装置1から受信した各色のハーフトーン画像データに基づいて、記録ヘッド201を記録媒体202に対して相対的に縦横に移動することにより、記録媒体上に画像が形成する。ここでは、記録ヘッド201はインクジェット方式のものであり、一つ以上の記録素子(ノズル)を有する。ヘッド制御部204は移動部203を制御し、記録ヘッド201を移動させる。また搬送部205は、ヘッド制御部204の制御下で、記録媒体を搬送する。
【0019】
インク色選択部206は、画像処理装置1により形成された各色に対応する走査ごとのハーフトーン画像データに基づいて、記録ヘッド201に搭載されるインクの中から、印字するハーフトーン画像データに対応するインクを選択する。
【0020】
図2は、記録ヘッド201の構成例を示す図である。本実施例では前述の通り、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4種類に加え、相対的にインク濃度が低い淡シアン(Lc)、淡マゼンタ(Lm)を含めた6種類のインクを記録ヘッド201に搭載する。
【0021】
なお、本実施例では説明を簡単にするため記録媒体を搬送する方向(主走査方向)に対して、ノズルが一列に配置された構成を示しているが、ノズルの数、配置はこの例に限られるものではない。例えば、同一濃度の同一色でも吐出量が異なるノズルを有しても良いし、同一吐出量のノズルが複数列あっても良い。さらにノズルがジグザグに配置されているような構成であっても良い。また、図2では各インク色に対応するノズルの配置順序は副走査方向に対して一列となっているが、主走査方向に一列に配置する構成であっても良い。
【0022】
次に、上述した機能構成を備えた本実施例に適用可能な画像処理装置1および画像形成処理2における処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0023】
まず、ステップS101において、多階調のカラー入力画像データが入力端子101より入力し、入力画像バッファ102に格納する。ここで入力画像データは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3つの色成分によりカラー入力画像データを生成する。
【0024】
ステップS102において、色分解処理部103は、色分解用LUT104を用いて、カラー入力画像データが示すRGBからCMYK及びLcLmの色毎に分解する。本実施例では、色分解処理後の各画素データを8ビットとして扱うが、それ以上の階調数への変換を行っても構わない。
【0025】
上述したように本実施例における記録ヘッド201は、6種類の各インクを保有する。そのため、RGBのカラー入力画像データは、CMYKLcLm各プレーンの各6プレーンの画像データへ変換される。
【0026】
図4は、色分解処理部103におけるデータの入出力を示している。入力されたR’、G’、B’各色の画像データは、色分解用LUT104を参照して次式の通りに、CMYKLcLm各色に対応する色分解後画像データへ変換される。
【0027】
C=C_LUT_3D(R’,G’,B’) ・・・(1)
M=M_LUT_3D(R’,G’,B’) ・・・(2)
Y=Y_LUT_3D(R’,G’,B’) ・・・(3)
K=K_LUT_3D(R’,G’,B’) ・・・(4)
Lc=Lc_LUT_3D(R’,G’,B’) ・・・(5)
Lm=Lm_LUT_3D(R’,G’,B’) ・・・(6)
ここで、式(1)〜(6)の右辺に定義される各関数が、色分解用LUT104の内容に該当する。色分解用LUT104はレッド、グリーン、ブルーの3入力値から、各インクの出力値を定める。本実施例では、CMYKLcLmの6種類のインクを具備する構成であるため、3入力値から6出力値を得るLUT構成となる。
【0028】
以上の処理により、本実施例における色分解処理が完了する。
【0029】
以下のステップS103からステップS109は、色ごとに処理を行う。ここでは、シアン(C)の例に説明するが、他の5種類の色材マゼンタ(M)、ブラック(K)、イエロー(Y)、淡シアン(Lc)、淡マゼンタ(Lm)に対しても同様の処理を行う。
【0030】
ステップS103において、記録データ設定部105は、走査番号k及び色分解後画像データ切り出し位置としてのY座標を示すYcut(k)を設定する。Ycut(k)は、走査番号kにおける色分解後画像データ切り出し位置であり、ノズル上端座標に相当する。なお、走査番号kの初期値は1であり、処理ループ毎に1ずつインクリメントされる。
【0031】
ここで、16個のノズル列を具備し、画像上の同一主走査記録領域に対して4回の走査で画像を形成させる4パス印字の場合を例として、色分解後画像データ切り出し位置Y座標Ycut(k)の設定法を説明する。
【0032】
一般的に4パス印字の場合、図5に示すように、走査番号の初期値(k=1)では、ノズル下端1/4のみを使用して画像形成を行い、走査番号k=2では走査番号k=1に対してノズル長さ1/4分紙送りしてから画像形成を行う。さらに走査番号k=3では走査番号k=2に対してノズル長さ1/4分紙送りしてから画像を形成する。このような画像形成および紙送りを繰り返して、最終出力画像が形成される。そのため、走査番号k=1の場合、ノズル上端座標に相当する色分解後画像データ切り出し位置Ycut=−12となる。
【0033】
上述した色分解後画像データ切り出し位置Ycut(k)を一般化すると、ノズル列数:Nzzl、パス数:Pass、走査番号:k、として次式で与えられる。
【0034】
Ycut(k)=−Nzzl+(Nzzl/Pass)×k ・・・(7)
以上のようにYcut(k)が設定されると、次に記録データ設定部105は、記録データ設定用LUT106を用いて、各色に対応する色分解処理後画像データに基づき、走査ごとの記録データを設定する(S104)。
【0035】
記録データ設定用LUT106によれば、4パスの場合、図6に示すような値が与えられる。図6は16ノズル、4パスの例を表しており、縦軸がノズル位置、横軸がDuty分割率を示す。ここでは、4ノズルごとにノズル位置3、7、11、15を設定し、各点を線形補間した16ノズル分のDuty分割率が、記録Duty設定用LUT106として保持されている。色分解後画像データを各走査に分割するための比率を分割率と呼ぶ。
【0036】
図6は、シアンに対応する色分解後画像データの分割率をD_dとすると、D_d(3)=D_d(7)=D_d(11)=D_d(15)=0.25となっている。つまり、色分解後画像データは走査ごとに均等に1/4=0.25の比率で分割される。分割率D_dのノズル位置nyに関する関数は以下のようになる。
【0037】
D_d(ny) = 0.25 ・・・(8)
「なお、(0≦ny<Nzzl)」
なお、分割率D_d(3)、点D_d(7)、点D_d(11)、点D_d(15)の数値は、以下のように設定される。
【0038】
D_d(3)+D_d(7)+D_d(11)+D_d(15)=1.0 ・・・(9)
また、記録データ設定用LUT106として保持される値は上記設定法に限られるものではなく、ノズル上端、下端部分の値で変更してもよい。また、点を細かく設定してもよいし、ノズル毎に直接指定しても良い。
【0039】
ステップS104において記録データ設定部105は、図7に示すように、記録データ設定用LUT106と色分解後画像データとを積算し、各記録データを設定する。つまり図7に示す右項のように、実際にはノズルごとの記録データが設定される。これにより走査時には、各ノズルは記録データ分に基づいたインク量を吐出して画像を形成する。
【0040】
ここで、ノズルが画像Yアドレスの領域外になるときは、記録データを0とする。例えば図8に示すように、走査番号k=1では、ノズル列上端3/4で画像Yアドレスが負になるため走査Duty値=0が代入され、ノズル列下端1/4には有意な値が代入される(1301)。
【0041】
また、色分解後画像データ切り出し位置Ycut(k)は、走査番号kによって決定される。走査番号k=1〜7の場合、各走査の記録データは図9に示すように決定される。図9は、走査番号ごとのノズル位置に対する記録データを示しており、走査番号ごとに記録データが異なっていることが分かる。記録データは、色分解後画像データと記録データ設定用LUT106との積により定まるため、紙送りしながらLUTとの積をとると、領域1(1401)の部分では、走査番号k=1〜4の4回の走査で形成される1ラスタの合計値が色分解後画像データと同じになる。同様に領域2、3、4においても、1ラスタの合計値が色分解後画像データと同じになる。
【0042】
次にステップS105において、ハーフトーン処理部107は各記録データを2値データに変換するハーフトーン処理を行う。
【0043】
本実施例におけるハーフトーン処理は、256階調で表された記録データ(8ビット)を2階調に変換する処理として、ディザ法を用いる。処理の詳細は後述する。
【0044】
ステップS107において、ハーフトーン画像格納バッファ108に蓄えられた、縦方向がノズル数(Nzzl)、横方向が画像のXサイズ(W)に相当するバンドデータが、画像出力端子109より出力される。
【0045】
ステップS108において、ハーフトーン画像データを受けた画像形成装置2では、ハーフトーン画像データに適合するインク色が選択され、印字動作が開始される。
【0046】
ステップS109において、記録ヘッド201が記録媒体に対して左から右に移動しながら、一定の駆動間隔で各ノズルを駆動して記録媒体上に画像を記録する主走査を1回行う。さらに該主走査が終了すると、主走査と垂直方向の走査である副走査が1回行なわれる。また、ステップS109において、全ての走査が終了したか否かの判定を行う。終了した場合には一連の画像形成処理が完了し、終了していない場合にはステップS103に戻る。以上により、処理の全てが終了する。
【0047】
ここで、ステップS105において行われるハーフトーン処理について、詳細に説明する。なお、説明を簡略化するため、4パス印字、シアンの走査番号k=1における記録データをハーフトーン処理する場合を例に説明する。図10は、ハーフトーン処理部107の構成を示す。また、図11はハーフトーン処理部107におけるハーフトーン処理の流れを示すフローチャートである。
【0048】
まず図11に示すステップS201において、図10に示す制約情報加算部1501で下式に示すように、シアン記録データであるC_dと、制約情報バッファ1506に格納された制約情報C_rの合計データIcを算出する。ただし、走査番号k=1の制約情報C_rは全て0である。
【0049】
Ic=C_d+C_r ・・・(10)
図12が示す制約情報バッファ1506は、縦方向がノズル数、横方向が画像のXサイズに相当するバンド状の制約情報を保持している。また制約情報バッファ1506は、色ごとの制約情報を格納している。制約情報とは、記録される画像上のアドレス(画素)にドットが形成されやすいか否かを示す値が格納され、走査番号kごとに更新される。ただし、処理開始時の走査番号k=1には、初期値として全て0が代入されている。すなわち、アドレス(X,Y)における各色の制約情報をC_r(X,Y)、Lc_r(X,Y)、M_r(X,Y)、Lm_r(X,Y)、Y_r(X,Y)、K_r(X,Y)とすると、これらは走査番号k=1のときは以下のように記述される。なお、0≦nx<画像Xサイズ、0≦ny<Nzzl(ノズル列数:この場合16)である。
【0050】
C_r(nx,ny)=0 ・・・(11)
Lc_r(nx,ny)=0 ・・・(12)
M_r(nx,ny)=0 ・・・(13)
Lm_r(nx,ny)=0 ・・・(14)
Y_r(nx,ny)=0 ・・・(15)
K_r(nx,ny)=0 ・・・(16)
そのため、実質的には走査番号k≧2の時に、制約情報バッファ1506は有意な制情報に更新されていくことになる。制約情報は、その値が小さいほど、そのアドレスにドットが形成されにくく、値が大きいほどドットが形成されやすいことを示す。具体的には、そのアドレスにドットが形成されやすい場合には正の値が、そのアドレスにドットが形成されにくい場合は負の値が格納される。制約情報の更新について、詳細は後述する。
【0051】
次にステップS202において、量子化部1503は記録データに制約情報が加算された合計値データI_cを量子化する。図13に、量子化部1503がおこなう量子化の概要を示す。量子化部1503は閾値マトリクス1502を用いて量子化する。閾値マトリクス1502には、合計値データを構成する各アドレス(画素)に対応する閾値を有している。量子化部1503は、合計データと閾値マトリクス1502とを画素ごとに比較し、ステップS203において2値化データを出力する。このときの2値化は、閾値マトリクス1502における閾値Th(0〜255)を用いて、以下のように表される。
【0052】
I_c<Thのとき、Out_c=0 ・・・(17)
Th≦I_cのとき、 Out_c=255 ・・・(18)
出力値Out_cは、ハーフトーン処理部107からの最終的な出力値であり、ハーフトーン画像データを構成するハーフトーン画素値である。本実施例における閾値マトリクス1502は、ブルーノイズ特性を持つように閾値が配列されている。また、本実施例では、量子化部1503は、走査番号ごとに同一の閾値マトリクス1502を用いる。
【0053】
ステップS204において、上述したステップS201〜S203の処理をバンド内のアドレス(0,0)〜(W−1,Nzzl−1)まで行なう。以上により全てのアドレス(画素)を表すハーフトーン画素値が決定され、ハーフトーン画像データが生成される。ここで各記録走査によって形成されるドット配置が決定される。ステップS204において、走査番号k=1でのハーフトーン処理が終了し、その結果、各色成分の1回の記録走査で形成されるハーフトーン画像データが、各色成分のハーフトーン画像格納バッファ108に格納される。図14は、走査番号k=1に対応するハーフトーン画像データを示す。ハーフトーン画像データは、ハーフトーン画像格納バッファ108に格納される。
【0054】
ステップS205において減算部1504は、記録データC_dから、ハーフトーン画像データOut_cを減算する。
【0055】
ステップS206において、重み積算部1505は減算部1504から得られるデータに対して、重み係数h(実数)を積算する。なお本実施例ではh=1.0とする。
【0056】
S(nx,ny)=(−Out_c+C_d)×h ・・・(19)
ステップS207において、LFシフト部1507は、重み積算部605が算出したデータをLF(紙送り量)だけシフトする。また、LFシフト部1508は、制約情報バッファ1506に格納された制約情報 C_r(nx,ny)をLF分シフトする。
【0057】
ステップS208において、加算部1509は、シフトされたk=1の時の制約情報C_r(nx,ny+LF)とシフトされたS(nx,ny+LF)を加算し、制約情報C_rを更新する。
【0058】
C_r(nx,ny)←C_r(nx,ny+LF)+S(nx,ny+LF) ・・・(20)
なお、ny+LF≧Nzzlのときは、C_r(nx,ny)=0とする。
【0059】
ただし、ny+LF≧Nzzlのときは、C_r(nx,ny)=0とする。すなわち、シフト後の下端LFノズル分(この場合4ノズル分)には0を代入する。
【0060】
ここで算出された制約情報C_rは、走査番号k=1の次の走査番号k=2に対応する記録データをハーフトーン処理する際に用いられる。つまり、走査番号k=mのハーフトーン画像データに基づいて生成された制約情報は、走査番号k=m+1に対応する記録データをハーフトーン処理する際に用いられる制約情報として、制約情報バッファ1506に保存される。なお、本実施例では制約情報バッファ1506に格納される値は、どのような走査番号のタイミングであっても、平均値が0となるように各値が格納されるとするが、これ以外の制約情報であってもよい。
【0061】
なお、データを紙送り量LF分だけシフトさせる理由は、次の走査番号にて形成されるハーフトーン画像データが、記録媒体上で相対的に紙送り量LF分ずれるためである。
【0062】
以上により、走査番号k=1でのハーフトーン処理が終了し、その結果、各色成分の一回の記録走査で形成されるハーフトーン画像データが、各色分のハーフトーン画像格納バッファ108に格納されることになる。
【0063】
制約情報について、その更新方法を示す式(19)および式(20)に基づいて、詳細に説明する。式(19)におけるOut_cは、走査番号k=mにおけるハーフトーン画像データである。ハーフトーン画像データに負号を付して−Out_cとし、更新前の制約情報から減算する。操作番号k=mにおけるハーフトーン画像データを減算した制約情報は、走査番号k=m+1に対応する記録データのハーフトーン処理に用いられるが、走査番号k=mにおいてドットが打たれたアドレス(画素)には走査番号k=m+1ではドットが打たれにくくなる。
【0064】
ここで、以上の処理により、ドット配置がどのようになるかをノズル数512、パス数4である場合を例に説明する。図15は、図9が示す領域1に対して走査番号1〜4の記録走査が行われた時のドット配置について示した図である。
【0065】
図15(a)は領域1に対して走査番号1の記録走査で印字するドット配置(パス番号1)である。図15(b)は走査番号1および走査番号2の記録走査により印字されたドット配置であり、パス番号1とパス番号2が累積したドット配置である。同様に(c)は、パス番号1、パス番号2、パス番号3が累積したドット配置である。また、(d)はパス番号1、パス番号2、パス番号、3パス番号4が累積したドット配置である。(d)は最終的に形成される画像のドット配置を示している。なお、(e)はパス番号2のみのドット配置、(f)はパス番号3のみのドット配置、(g)はパス番号4のみのドット配置を示している。
【0066】
図15(a)〜(d)のドット配置は、複数回の走査によって画像を形成する過程において、累積されていくドット配置である。図16(a)〜(d)は、図15(a)〜(d)それぞれに対してフーリエ解析を行った結果である。いずれの累積したドット配置もブルーノイズ特性を持つことが分かる。つまり本実施例によれば、いずれの累積したドット配置もブルーノイズ特性を持ち、分散性が高いことが分かる。
【0067】
このようになる理由は、式(19)および式(20)において算出される制約情報が、それまで形成されたハーフトーン画像データをそのまま減算したデータを制約情報として、ハーフトーン処理に用いられるためである。
【0068】
言い換えると、Nパス印字の場合、図20の領域Aなどの同一領域におけるp回目(2≦p≦N)パスのハーフトーン画像を決める際には、(p−1)回目のパスまでを累積したドットパターンを制約情報として用いる。そして、上記制約情報を用いてp回目のハーフトーン処理を行うのである。
【0069】
その結果、制約情報として用いる(p−1)回目のパスまでを累積したパターンとは異なる領域にドットが形成され、画像を累積する過程においても分散性を高めることができる。各パスの累積されたドット配置における分散性を考慮しない場合、ハーフトーン画像データの基づいて画像形成装置が印字するドット形成過程において、累積されたドット配置に粗密が発生する。そのため、液滴同士の干渉や相互作用が起こり、各パスにおけるドット配置が分散性の高い配置であっても、最終的に得られる画像の粒状性が低下してしまう。本実施例によれば、画像形成の過程に沿って、印字されていく累積されたドット配置の分散性を考慮することにより、最終的により粒状性の良好な画像を得ることができる。
【0070】
なお、本実施例では、制約情報を各走査に対応する記録データに反映したが、本実施例の手法に限られるものではない。他の手法として、制約情報をディザマトリクスに反映してもよい。このときの制約情報は、ドットが打たれないようにすべき位置に対して、ディザマトリクスの閾値が大きくなるような制約情報を持たせればよい。
【0071】
また、本実施例では4パス印字において、2〜4パス目について制約情報を用いてハーフトーン処理をすることで累積パターン(1+2、1+2+3パス、1+2+3+4パス)をブルーノイズ特性とし分散性を高めたが、すべての累積された画像において分散性が高くなるようにしなくてもよい。例えば、2〜4パス全てで制約情報を演算することは処理コスト増大につながるため、1+2+3パスが累積された画像の分散性は考慮せず、1+2パス、1+2+3+4パスの一部の累積されたパス画像が分散性が高くなるようハーフトーン処理しても効果が得られる。
【0072】
<実施例2>
上述した実施例1では、走査毎にそれまでに形成されるハーフトーン画像データを制約情報としてディザ処理に用いた。実施例2では、制約情報バッファを用いず同等の処理を実現する方法について説明する。
【0073】
なお実施例2については、ステップS104、S105以外は実施例1と同様の処理であるので、本実施例に特徴的なステップS104、S105についてのみ述べる。
【0074】
ステップS104において、記録データ設定部105は、記録データ設定用LUT106に基づき、各色分解後画像データを記録データに変換する。
【0075】
本実施例では、各色分解後画像データの分割率D_dについて、実施例1の式(8)および式(9)と同様に0.25のインク値分割率が与えられるものとする。また、本実施例でも、説明を簡略化するため、C(シアン)の場合を例に説明する。
【0076】
上述の式(8)および式(9)の分割率が設定された場合、記録データ設定用LUT106は図17のようにノズル位置と記録データ設定値との関係で設定される。
【0077】
図17は記録データ設定用LUTであり、縦軸がノズル位置、横軸が記録データ設定用LUTの値を示す。また、図17によれば、シアンの記録データ設定用LUTは、下位LUT(1601)、上位LUT(1602)の2種が設定される。下位LUTは点線(1604)および◇(1603)◆(1605)で示されたデータで、上位LUTは実線(1607)および□(1606)■(1608)で示されたデータである。また、その他の色に関しても同様に記録データ設定用LUTが設定される。
【0078】
ここで、図17に示されたシアン記録データ設定用LUT106の下位LUTであるU_C_LUT(ny)と、上位LUTであるO_C_LUT(ny)は以下の規則によって生成される。
【0079】
U_C_LUT(ny)= D_d(ny+Nzzl/4)
+D_d(ny+2×Nzzl/4)+D_d(ny+3×Nzzl/4)
・・・(21)
O_C_LUT(ny)= D_d(ny)+ D_d(ny+Nzzl/4)
+D_d(ny+2×Nzzl/4)+D_d(ny+3×Nzzl/4)
・・・(22)
なお、(0≦nx<画像Xサイズ)(0≦ny<Nzzl)
すなわち、シアンの下位LUTであるU_C_LUTの値は、
(0≦ny<4のとき) U_C_LUT(ny)=0.75
(4≦ny<8のとき) U_C_LUT(ny)=0.5
(8≦ny<12のとき) U_C_LUT(ny)=0.25
(12≦ny<16のとき) U_C_LUT(ny)=0.0
・・・(23)
シアンの上位LUTであるO_C_LUTの値は、
(0≦ny<4のとき) O_C_LUT(ny)=1.0
(4≦ny<8のとき) O_C_LUT(ny)=0.75
(8≦ny<12のとき) O_C_LUT(ny)=0.5
(12≦ny<16のとき) O_C_LUT(ny)=0.25
・・・(24)
その他の色に関しても同様に与えられる。上述の記録データLUT106
を用いて、シアンの記録データを設定する。
【0080】
本実施例では、シアンの記録データに関してはシアン下位記録データU_C_dとシアン上位記録データO_C_dの2つの記録データが設定される。この2つのシアンの記録データU_C_d、O_C_dに関しては、シアン記録データ設定用LUT106の下位LUTであるU_C_LUTと、上位LUTであるO_C_LUTから、下式のようにそれぞれ算出される。
【0081】
U_C_d(nx、ny) =
C_d(nx、ny+Ycut(k))× U_C_LUT(ny)
・・・(25)
O_C_d(nx、ny) =
C_d(nx、ny+Ycut(k))× O_C_LUT(ny)
・・・(26)
記録データの決定方法について、図18を用いて説明する。図18は、シアンの被覆率60%で、色分解後画像データCが全てのアドレス(画素)において153の場合を示す。
【0082】
上述の図18に示された色分解データが与えられたときのシアンの記録データは1701のように与えられる。ここで下位記録データU_C_dは1702、上位記録データO_C_dは1703である。
【0083】
なお、その他の色に対しては、シアンの記録データと同様の算出が行われる。
【0084】
ここで本実施例において実施例1と同様、対応するノズルが画像Yアドレスの領域外座標になるときは、記録データを0とする。例えば、走査番号k=1では、図19の1801に示すように、ノズル列上端3/4で画像Yアドレスが負になるため上位記録データ、下位記録データともに0が代入され、ノズル列下端1/4には有意な値が代入される。
【0085】
また、色分解データ切り出し位置Ycut(k)は走査番号kによって決まるため、走査番号k=1〜4の場合、記録データは図20に示すように決定される。
【0086】
図20では、紙送りしながら走査を繰り返すと、領域Aでは、走査番号k=1〜4の4回の走査で形成されることを示している。
【0087】
図20において、シアンの各走査番号のノズル位置に対する記録データ(下位記録データU_C_d、上位記録データO_C_d)が示されており、走査番号ごとに記録データが異なっていることが分かる。シアンの各記録走査に対応する記録データ(1901〜1904)は、式(25)および式(26)のように、色分解後画像データと記録データ設定用LUT106との積により定まる。
【0088】
以上、本実施例におけるステップS104の記録データ設定処理が完了する。
【0089】
ステップS104において、ハーフトーン処理部107は記録データにハーフトーン処理を施し、それぞれ2値のハーフトーン画像データに変換する。
【0090】
ハーフトーン処理は、周知のディザ法を用いることができる。以下、本実施例におけるハーフトーン処理について説明する。図21は本実施例に適用可能なハーフトーン処理部107の構成を示し、図22はハーフトーン処理のフローチャートを示す。
【0091】
ステップS301において、シアンの上位記録データO_C_dを入力する。
【0092】
ステップS302において、2値化部2002は、シアンの上位記録データO_C_dと閾値マトリクスとを比較する。図23は、2値化部2002に用いられる閾値マトリクス2001を示す。各閾値は画像データにおける画素と対応している。したがって2値化部2002は、画素ごとに上位記録データを表す画素値と、閾値マトリクスにおける閾値とを比較する。
【0093】
O_C_d < Th のとき、 Out_O_C=0 ・・・(27)
Th≦O_C_d のとき、 Out_O_C=255 ・・・(28)
ステップS303において、シアンの上位ハーフトーン画像データOut_O_Cを出力する。ステップS304において、下位記録データを入力する。ステップS305において、2値化部2003はシアンの下位記録データU_C_dとディザマトリクス2001とを比較し、下式の通りに二値化する。
【0094】
U_C_d < Th のとき、 Out_U_C=0 ・・・(29)
Th≦U_C_d のとき、 Out_U_C=255 ・・・(30)
ステップS306において、シアンの下位ハーフトーン画像データOut_U_Cを出力する。なお、閾値マトリクス2001は、ドット配置が分散しやすいブルーノイズ特性をもつことが好ましい。また、本実施例では、閾値マトリクス2001は、各色、各走査番号に対して同じ閾値マトリクスを用いるが、異なる閾値マトリクスであってもよい。
【0095】
ステップS307において、減算器2004は、シアンの上位ハーフトーン画像データから下位ハーフトーン画像データを減算する。
【0096】
ステップS308において、減算器2004から出力されるハーフトーン画像データOut_Cを算出する。
【0097】
Out_C = Out_O_C − Out_U_C ・・・(31)
ステップS309において、上述したステップS301〜S308の処理をバンド内のアドレス(0,0)〜(W−1,Nzzl−1)まで行なうことによって、ハーフトーン画像データのドット配置が決定される。以上説明したようにステップS105におけるハーフトーン処理が終了する。
【0098】
ここで、シアンのハーフトーン画像データOut_Cについて述べる。図24は、図20に示した領域Aにおけるハーフトーン処理の演算過程を示す。また、図25は、図20に示した領域Aにおけるハーフトーン処理結果を示す。図24において、走査番号1のシアン上位記録データO_C_d(2101)に基づいて、シアン上位ハーフトーン画像データOut_O_C(2102)が求められる。また、走査番号1のシアン下位記録データU_C_d(2103)に基づいて、シアン下位ハーフトーン画像データOut_U_C(2104)が求められる。その結果、式(31)により、走査番号1に対応するハーフトーン画像データOut_C(2105)が求められる。同様に、走査番号2のシアン上位記録データO_C_d(2106)に基づいて、シアン上位ハーフトーン画像データOut_O_C(2107)が求められる。また、走査番号2のシアン下位記録データU_C_d(2108)に基づいて、シアン下位ハーフトーン画像データOut_U_C(2109)が求められる。その結果、式(31)より、走査番号2に対応するハーフトーン画像データOut_C(2110)が求められる。走査番号1に対応する上位記録データO_C_dは、走査番号2において下位記録データU_C_dになることが分かる。つまり、走査番号mに対応する上位記録データO_C_dは、走査番号m+1において下位記録データU_C_dとして入力される。
【0099】
言い換えると、Nパス印字の場合、図20の領域Aなどの同一領域におけるpパス目のハーフトーン画像データは、p回目のパスまでの累積ドットパターンと、(p−1)回目のパスまでの累積ドットパターンの差分に基づいて決定される、ということを意味する。
【0100】
この様にすると、例えば、ハーフトーン画像データOut_Cは走査番号1〜4で同じ位置にドットが極力ONにならないよう形成される。
【0101】
図25は、領域Aにおける各パスの画像データ、各パスが累積されたハーフトーン画像データ、および最終的に得られるハーフトーン画像データを示す。図25の(a)〜(d)は、4回の記録走査によって累積されていくハーフトーン画像データであり、(a)および(e)〜(g)は、各走査が画像を形成するハーフトーン画像データである。画像の形成過程において、ハーフトーン画像データに基づいてドットが累積しても、分散性が良好であることが分かる。
【0102】
以上説明したように実施例2によれば、制約情報を用いずに、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0103】
<実施例3>
上述した実施例1および2では、走査毎にディザ処理を施す際に同一の閾値マトリクスを用いた。本実施例では、使用する閾値マトリクスを適応的に変更する例を示す。これにより、実施例1のような制約情報が必要なく、かつ、実施例2のように記録データを2つ生成することなく実施例1および2と同様に効果を実現できる。なお、前述の実施例と同様の構成、処理についてはその説明を省略する。
【0104】
図27は、ハーフトーン処理部107の詳細構成を示すブロック図である。また、図28はハーフトーン処理部107におけるハーフトーン処理のフローを示す図である。
【0105】
ステップS401において、記録データC_dの、記録素子に相当するノズル領域を設定する。例えば、図9の走査番号k=4の場合を例にすると、パス番号1〜4を形成する領域のいずれかを設定する。下端であるパス番号1の領域であれば領域番号dm=1を、パス番号2の領域であればdm=2を、パス番号3の領域であればdm=3を、パス番号4の領域であればdm=4を設定する。ステップS402において、量子化部2203が使用する閾値マトリクスを選択する。本実施例では、使用する閾値マトリクスは図29が示すように、閾値マトリクスTh1〜Th_nの複数が用意されている。ここで4パス印字の場合は、少なくとも4種類の閾値マトリクスが用意される。ここで、S401において設定された領域番号dmに応じて、使用する閾値マトリクスが選択される。つまり、パス番号に応じて、使用される閾値マトリクスが異なる。ステップS403において、量子化部2203は選択された閾値マトリクスと記録データとを比較し、ステップS404において以下の通りに2値化する。
【0106】
C_d<Thのとき、Out_c=0 ・・・(32)
Th≦C_dのとき、 Out_c=255 ・・・(33)
なお、Thは選択された閾値マトリクスである。上述の閾値マトリクスは、複数の閾値マトリクスを用いてパス1〜4まで形成された際に、1+2パスが累積された画像がブルーノイズ特性をもち、1+2+3パスが累積された画像、1+2+3+4パスが累積された画像がブルーノイズ特性をもつようにあらかじめ設定されている。すなわち、上述の複数の閾値マトリクスで形成される閾値マトリクスは4種類の閾値マトリクスが統合された場合にブルーノイズになるよう、あらかじめ公知の最適化手法で最適化されている。本実施例では、シミュレーテッドアニーリングや、遺伝的アルゴリズムなど公知の手法を用いることができる。ステップS405において、上述したステップS401〜S404の処理をバンド内のアドレス(0,0)〜(W−1,Nzzl−1)まで行なうことによって、ハーフトーン画像データが出力される。以上で、本実施例に係るステップS105におけるハーフトーン処理が終了する。
【0107】
以上説明したように本実施例によれば、実施例1のような制約情報が必要なく、かつ、実施例2のように記録データを2つ生成することなく、累積されたハーフトーン画像データでブルーノイズ特性をもち、画像の形成過程を経ても分散性を上げることができる。
【0108】
<変形例>
上述の各実施例では、図6に示した通り、ノズル毎のインク値分割率として0.25の均一な分割処理を行う例を説明した。しかし、均一な分割では、紙送りのずれによって、スジが目立つことがあるため、図26のようにノズル中央部分の分割率を大きくして、スジを目立たなくする工夫が可能である。また、上述した各実施例では、所定方向に配列された複数のノズルを有する記録ヘッドをノズルの配列方向と交差する方向に記録媒体上で走査させて、記録媒体にインクを吐出することで画像を形成するインクジェット記録方式を用いた画像処理装置を説明した。しかしながら本発明は、インクジェット方式以外の他の方式に従って記録を行う記録装置(例えば熱転写方式や電子写真方式)に対しても適用できる。この場合、インク滴を吐出するノズルはドットを記録する記録素子やレーザー発光素子に対応することとなる。また、記録媒体の記録幅に対応する長さの記録ヘッドを有し、記録ヘッドに対して記録媒体を移動させて記録を行う、いわゆるフルライン型の記録装置などにも適用できる。
【0109】
本発明は、上述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給することによっても実現できる。この場合、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)がコンピュータが読み取り可能に記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することにより、上述した実施例の機能を実現する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上の同一領域に対して、N回(Nは3以上の整数)記録することにより、前記記録媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、
前記記録の各々に対応する記録データを生成する記録データ生成手段と、
ドット分散型マトリクスを用いたディザ法により、前記記録データをハーフトーン画像データに変換するハーフトーン処理手段と、
前記ハーフトーン処理手段は、
同一領域におけるp回目(2≦p≦N−1)の記録までに対応する前記ハーフトーン画像データのそれぞれを累積してできるドットパターンの分散性が高くなるように、前記p回目のハーフトーン画像データを生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ハーフトーン処理手段は、(p−1)回目の記録までに対応する前記ハーフトーン画像データのそれぞれを累積したドットパターンに基づいて、前記p回目のハーフトーン画像データを生成する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記(p−1)までの記録に対応するハーフトーン画像データに基づいて、制約情報を生成する制約情報生成手段を有し、
前記ハーフトーン処理手段は、前記制約情報を用いて前記p回目のハーフトーン画像データを生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ハーフトーン処理手段は、前記p回目までの記録に対応したそれぞれ記録データを累積した累積記録データに対してハーフトーン処理したハーフトーン画像データと、前記(p−1)回目までに対応するハーフトーン画像データを累積したハーフトーン画像データとの差分に基づいて、前記p回目のハーフトーン画像データを生成する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ハーフトーン処理手段は、前記画像が形成されるまでの全ての累積したドットパターンにおいて分散性が高くなるように、N回の記録それぞれに対応するハーフトーン画像データを生成することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記ハーフトーン処理手段は、前記記録データ毎に同一の閾値マトリクスを用いたディザ法を行うことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の画像処理装置
【請求項7】
前記ハーフトーン処理手段は、前記記録データ毎に異なる閾値マトリクスを用いたディザ法を行うことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の画像処理装置
【請求項8】
前記閾値マトリクスは、前記p回目の記録走査にまでに対応するハーフトーン画像データのそれぞれを累積したドットパターンが、分散性が高くなるように最適化されたマトリクスであることを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
コンピュータ装置を制御して、請求項1から請求項8の何れか一項に記載された画像処理装置の各手段として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
記録媒体上の同一領域に対して、N回(Nは3以上の整数)記録することにより、前記記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
記録データ生成手段と、ハーフトーン処理手段とを有し、
前記記録データ生成手段は、前記記録の各々に対応する記録データを生成し、
前記ハーフトーン処理手段は、ドット分散型マトリクスを用いたディザ法により、前記記録データをハーフトーン画像データに変換し、
前記ハーフトーン処理手段は、
同一領域におけるp回目(2≦p≦N−1)の記録までに対応する前記ハーフトーン画像データのそれぞれを累積してできるドットパターンの分散性が高くなるように、前記p回目のハーフトーン画像データを生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項1】
記録媒体上の同一領域に対して、N回(Nは3以上の整数)記録することにより、前記記録媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、
前記記録の各々に対応する記録データを生成する記録データ生成手段と、
ドット分散型マトリクスを用いたディザ法により、前記記録データをハーフトーン画像データに変換するハーフトーン処理手段と、
前記ハーフトーン処理手段は、
同一領域におけるp回目(2≦p≦N−1)の記録までに対応する前記ハーフトーン画像データのそれぞれを累積してできるドットパターンの分散性が高くなるように、前記p回目のハーフトーン画像データを生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ハーフトーン処理手段は、(p−1)回目の記録までに対応する前記ハーフトーン画像データのそれぞれを累積したドットパターンに基づいて、前記p回目のハーフトーン画像データを生成する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記(p−1)までの記録に対応するハーフトーン画像データに基づいて、制約情報を生成する制約情報生成手段を有し、
前記ハーフトーン処理手段は、前記制約情報を用いて前記p回目のハーフトーン画像データを生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ハーフトーン処理手段は、前記p回目までの記録に対応したそれぞれ記録データを累積した累積記録データに対してハーフトーン処理したハーフトーン画像データと、前記(p−1)回目までに対応するハーフトーン画像データを累積したハーフトーン画像データとの差分に基づいて、前記p回目のハーフトーン画像データを生成する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ハーフトーン処理手段は、前記画像が形成されるまでの全ての累積したドットパターンにおいて分散性が高くなるように、N回の記録それぞれに対応するハーフトーン画像データを生成することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記ハーフトーン処理手段は、前記記録データ毎に同一の閾値マトリクスを用いたディザ法を行うことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の画像処理装置
【請求項7】
前記ハーフトーン処理手段は、前記記録データ毎に異なる閾値マトリクスを用いたディザ法を行うことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の画像処理装置
【請求項8】
前記閾値マトリクスは、前記p回目の記録走査にまでに対応するハーフトーン画像データのそれぞれを累積したドットパターンが、分散性が高くなるように最適化されたマトリクスであることを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
コンピュータ装置を制御して、請求項1から請求項8の何れか一項に記載された画像処理装置の各手段として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
記録媒体上の同一領域に対して、N回(Nは3以上の整数)記録することにより、前記記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
記録データ生成手段と、ハーフトーン処理手段とを有し、
前記記録データ生成手段は、前記記録の各々に対応する記録データを生成し、
前記ハーフトーン処理手段は、ドット分散型マトリクスを用いたディザ法により、前記記録データをハーフトーン画像データに変換し、
前記ハーフトーン処理手段は、
同一領域におけるp回目(2≦p≦N−1)の記録までに対応する前記ハーフトーン画像データのそれぞれを累積してできるドットパターンの分散性が高くなるように、前記p回目のハーフトーン画像データを生成することを特徴とする画像処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2013−38643(P2013−38643A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173964(P2011−173964)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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