説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】色ずれ補正を中間調処理前後のいずれで実施するかを選択することにより、画質劣化のない画像を形成する。
【解決手段】色ずれ量が予め決められた閾値(th)より大きいと判断したとき(S1502)、中間調処理を実施した後(S1503)、色ずれ補正処理を実行する(S1504)。色ずれ量が予め決められた閾値(th)以下であると判断したとき(S1502)、色ずれ補正処理を実施後(S1505)、中間調処理を実行する(S1506)。すなわち、色ずれ量が大きい場合、中間調処理前に色ずれ補正をする場合の、スクリーン線数を維持できないことによる画質劣化がより顕著となるため、色ずれ補正を中間調処理後に行うようにする。これにより、特に、スクリーン線数を維持できない現象を最小限に留めながら良好な画像形成処理を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関する。詳しくは、電子写真方式の現像部などに形成される画像の形成位置ずれの補正に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のカラー画像形成装置において、現像器や感光体などからなる現像部を、複数種類の色材ごとに備え、画像転写ベルトや記録媒体に順次異なる色の画像を転写する方式のカラー画像形成装置が多く提供されている。このように色材ごとに現像部を備えることにより、画像形成を高速に行うことが可能となっている。
【0003】
しかし、この方式(タンデム方式)を使用することによって画像形成に要する時間を大幅に短縮できるものの、偏向走査装置のレンズの不均一性や取り付け位置精度、偏向走査装置自体の画像形成装置本体への組み付け位置精度などに起因した問題も生じている。すなわち、感光体上の走査線に傾きや曲がりを生じ、その程度が色毎に異なることにより、各色の転写紙上の画像形成位置が異なることになる。その結果、形成されるカラー画像において各色間の形成位置ずれによる色ずれが発生し、高品位なカラー画像を得ることができないという問題がある。
【0004】
このような色ずれへの対処方法として、例えば、特許文献1には、偏向走査装置の組立工程で光学センサを用いて走査線の曲がりの大きさを測定し、レンズを機械的に回転させて走査線の曲がりを調整した後、固定する方法が記載されている。また、特許文献2には、偏向走査装置を画像形成装置本体へ組み付ける工程で光学センサを用いて走査線の傾きの大きさを測定し、偏向走査装置を機械的に傾かせて走査線の傾きを調整した上で装置本体へ組み付ける方法が記載されている。
【0005】
ここで、光学系の光路を補正するためには、光源やf―θレンズを含む光学系、光路内のミラー等を機械的に動作させ、テストトナー像の位置を合わせ込む必要がある。そのため、特許文献1や特許文献2に記載された方法では、例えば高精度な可動部材が必要となり、高コスト化を招くことになる。
【0006】
さらに、光学系の光路補正は、完了までに時間がかかるため、頻繁に補正を行うことには適さない。一方、光路長のずれは機械の昇温などにより影響を受けて変化する。そのため、ある時点で補正をおこなっても機械の昇温の影響を除去することはできないため、光学系の光路を補正することで色ずれを防止することは比較的困難なものとなる。
【0007】
これに対し、特許文献3には、光学センサを用いて走査線の傾きと曲がりの大きさを測定し、それらを相殺するようにビットマップ画像データを補正する方法が記載されている。具体的には、ビットマップデータの出力座標を変換し、また、周辺画素の階調値を調整することによって、画像として形成されるときの傾きや曲がりを形成し、装置において生じている傾きや曲がりを相殺するように画像を形成するものである。このように、本方法は、画像データを処理することで電気的に補正を行うものであることから、機械的な調整部材や組立時の調整工程が不要となる点において、特許文献1、2に記載されている方法より安価に色ずれへ対処することができる。
【0008】
また、特許文献4にも、特許文献3と同様の色ずれの補正方法が記載されている。すなわち、色処理、ハーフトーン処理等の画像処理を行い、色成分(C,M,Y,K)毎に、ビットマップメモリ上にラスターイメージデータを形成した後、各色画像データの出力座標位置を、レジストレーションずれを補正した出力座標位置に変換するとともに、この変換された各色の画像データに基づいて変調された光ビームを色信号の最小ドット単位よりも小さい量で修正することが記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2002−116394号公報
【特許文献2】特開2003−241131号公報
【特許文献3】特開2004−170755号公報
【特許文献4】特開平8−85237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3や特許文献4に記載の色ずれ補正を、画像処理過程のいずれかにおいて単純に実施しても、それによって形成される画像において返って画像品位を劣化させることがある。
【0011】
通常、色ずれ補正は、特許文献3、4のように、中間調処理後の画像データに対して実施されるが、その出力座標の変換や最小ドット単位よりも小さい量の修正に起因して、中間階調画像の網点の再現性が劣化し、モアレといった色むらを生じることがある。
【0012】
図1はこの問題を説明する図である。入力画像101は一定の濃度値(50%)を持つ画像である。この入力画像101に対して、特許文献3、4に記載のような最小ドット単位よりも小さい量の修正を伴う色ずれ補正が行われる。そして、この補正画像データに基づいて画像102が形成される。画像102の例は、同画像の右側ほど上方へ出力座標をシフトする量を多くする色ずれ補正が行われたことを示している。すなわち、この補正に基づいて形成される画像102は、右肩上がりの線を表し、左肩上がりの色ずれを相殺することを示している。この場合、最小ドット単位よりも小さい量の修正や出力座標の変換などによって中間調画像の網点の再現性が局所的に劣化し、画像濃度値とそれに対応して形成される画像濃度とのリニアな関係が維持できないことがある。その結果、入力画像101が一定の濃度値を持つ画像であるのにかかわらず、色ずれ補正された画像データに基づいて形成される画像は濃度値が一定でない画像となることがある。このような不均一な濃度値が周期的に繰り返された場合、モアレが顕在化し良好なカラー画像を得ることができない。
【0013】
一方、中間調処理の前に、色ずれ補正を実施することが考えられる。しかし、この場合は、色ずれ量によっては、スクリーンパターンの角度が大きくずれて本来処理すべきスクリーン線数を維持できないという問題点を生じる。そして、このスクリーン線数を維持できないことによる画質劣化は、上述のモアレが現れる場合と比較して、その程度がより顕著となる。
【0014】
また、エッジ検出処理や平滑化処理などのフィルタリングは、色ずれ補正の影響を受ける。一方で、フィルタリングは、一般に画像の出力解像度が高いほど高精度に行う必要がある。このことから、例えば、出力解像度が高い場合に、中間調処理が施された画像データに対して色ずれ補正が行われると、それによる出力座標の変換などによってフィルタリングの精度がそれほど上がらないことがある。
【0015】
さらに、レンダリングなどの処理は、出力する画像が高品質を優先するか、高速かつ省メモリを優先するかによって、中間調処理された画像データかあるいは中間調処理前の画像データのいずれかに対して選択的に行うことが望ましい。この場合、色ずれ補正も、レンダリングのモードに応じて、そのモードが高品質を優先する場合には、それに対応したものであることが望ましい。
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、形成位置ずれ補正を中間調処理前後のいずれで実施するかを選択することにより、画質劣化のない画像を形成することを可能とする画像処理装置および画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そのために本発明では、画像データに対して、画像形成手段における画像形成位置を補正するための形成位置補正処理と、画像データの量子化を行うための中間調処理と、を含む処理を行う画像処理装置であって、形成される画像の画質に影響を及ぼす要素の値を取得する取得手段と、該取得された要素の値に基づいて、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前後のいずれかで行うかを判断する判断手段と、該判断に応じて、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前または後に行うよう制御する制御手段と、を具えたことを特徴とする。
【0018】
また、画像データに対して、画像形成手段における画像形成位置を補正するための形成位置補正処理と、画像データの量子化を行うための中間調処理と、を含む処理を行うための画像処理方法であって、形成される画像の画質に影響を及ぼす要素の値を取得する取得工程と、該取得された要素の値に基づいて、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前後のいずれかで行うかを判断する判断工程と、該判断に応じて、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前または後に行うよう制御する制御工程と、を有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上の構成によれば、画像形成手段における形成位置のずれ量、画像形成の解像度、中間調処理による量子化の階調数などの、形成される画像の画質に影響を及ぼす要素の値に基づいて、形成位置補正処理を中間調処理の前後のいずれかで行うかが判断される。これにより、形成位置補正処理を一律に中間調処理の前また後で行うことに起因して生じる画質劣化のない画像を形成することを可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明の実施形態に係る画像形成装置として、以下では色材がC、M、Y、Kそれぞれのトナーであるカラーレーザプリンタについて説明するが、本発明の適用はこれに限られるものでないことはいうもでもない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で、任意のカラーデジタル電子写真複写機やカラーファクシミリ装置などトナーを用いた電子写真方式の画像形成装置に適用することができる。
【0021】
(第1実施形態)
図2は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置における画像処理構成を示すブロック図である。本実施形態の画像形成装置は、同図に示すように、画像処理部201と画像形成部202を有して構成される。画像処理部201でビットマップ画像データを生成し、中間調処理などの一連の処理を行った後、画像形成部202でその画像データに基づいて記録媒体へ画像形成が行なわれる。
【0022】
画像形成部
図3は、画像形成部202の機械的構成を示す図である。同図に示すように、画像形成部202は、中間転写体(ベルト)28を用いたタンデム方式のものである。画像形成部202は、画像処理部201より出力される画像データが示す露光時間に応じて露光を制御駆動し静電潜像を形成し、この静電潜像を現像してそれぞれの色のトナー像を形成する。そして、これら各色トナー像を重ね合わせて多色トナー像を形成し、この多色トナー像を記録媒体11へ転写する。この記録媒体状の転写画像は定着処理が施される。イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のステーション毎に以下の構成を備える。
【0023】
帯電ユニットは、感光体22Y、22M、22C、22Kを帯電させるための4個の注入帯電器23Y、23M、23C、23Kを備える。各注入帯電器にはスリーブ23YS、23MS、23CS、23KSが設けられている。
【0024】
感光体22Y、22M、22C、22Kは、アルミシリンダの外周に有機光導伝層を塗布して構成し、図示しない駆動モータの駆動力が伝達されて回転することができる。駆動モータは感光体22Y、22M、22C、22Kを画像形成動作に応じて反時計周り方向に回転させる。
【0025】
露光ユニットは、感光体22Y、22M、22C、22Kへスキャナ部24Y、24M、24C、24Kより露光光を照射し、感光体の表面を選択的に露光することにより、静電潜像を形成する。
【0026】
現像ユニットは、静電潜像を可視化するために、ステーション毎にイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の現像を行う4個の現像器26Y、26M、26C、26Kを備える。そして、各現像器には、スリーブ26YS、26MS、26CS、26KSが設けられている。尚、各々の現像器26Y、26M、26C、26Kは脱着することができる。
【0027】
転写ユニットは、感光体22から中間転写体28へ単色トナー像を転写するために、中間転写体28を時計周り方向に回転させる。そして、感光体22Y、22M、22C、22Kとそれに対向して位置する一次転写ローラ27Y、27M、27C、27Kの回転に伴って、単色トナー像を転写する。
【0028】
一次転写ローラ27に適当なバイアス電圧を印加するとともに、感光体22の回転速度と中間転写体28の回転速度に差を設けることにより、効率良く単色トナー像を中間転写体28上に転写する(これを一次転写という。)。
【0029】
さらに、転写ユニットは、ステーション毎に単色トナー像を中間転写体28上に重ね合わせ、重ね合わせた多色トナー像を中間転写体28の回転に伴い、二次転写ローラ29まで搬送する。さらに記録媒体11を給紙トレイ21(a,b)から二次転写ローラ29へ狭持搬送し、記録媒体11に中間転写体28上の多色トナー像を転写する。この二次転写ローラ29に適当なバイアス電圧を印加して、静電的にトナー像を転写する(これを二次転写という)。二次転写ローラ29は、記録媒体11上に多色トナー像を転写している間、29aの位置で記録媒体11に当接し、処理後は29bの位置に離間する。
【0030】
定着ユニットは、記録媒体11に転写された多色トナー像を記録媒体11に溶融定着させるために、記録媒体11を加熱する定着ローラ32と記録媒体11を定着ローラ32に圧接させるための加圧ローラ33を備えている。定着ローラ32と加圧ローラ33は中空状に形成され、内部にそれぞれヒータ34、35が内蔵されている。定着装置31は、多色トナー像を保持した記録媒体11を定着ローラ32とか圧ローラ33により搬送するとともに、熱および圧力を加え、トナーを記録媒体11に定着させる。
【0031】
トナー定着後の記録媒体11は、その後図示しない排出ローラによって図示しない排紙トレイに排出して画像形成動作を終了する。
【0032】
クリーニングユニット30は、中間転写体28上に残ったトナーをクリーニングする。中間転写体28上に形成された4色の多色トナー像を記録媒体11に転写した後に残った廃トナーは、クリーナ容器に蓄えられる。
【0033】
色ずれ検知センサ41は、中間転写体28へ対向する位置に配置されている。中間転写体28上に色ずれ検知用パッチを形成し、これを検知センサ41で検出する。これにより、検知センサ41によるパッチの検知タイミングに基づいて色ごとの色ずれの量を求めることができる。
【0034】
図4は、本実施形態の色ずれ検知を説明する図である。中間転写体28の上方において、走査方向に4個の色ずれ検知センサ41a、41b、41c、41dが設けられる。中間転写体28にはC、M、Y、K各色の色ずれ検知用パッチ402が形成される。そして、この中間転写体28搬送方向に移動することにより、各色の色ずれ検知用パッチ402が各センサの下方を通過させ、対応する検知用センサ41は、それぞれの検知用パッチ402を検知する。
【0035】
具体的には、検知用センサ41a、41b、41c、41dが走査方向の左、中央1、中央2、右の4箇所にそれぞれ形成された検知用パッチ402を検出するタイミングを検知する。そして、このタイミングに基づき、不図示のCPUの制御の下、走査線の傾きおよび湾曲の大きさを求める。なお、装置の構成によっては、左右2箇所のみに色ずれ検知センサ41を備えるカラー画像形成装置も有り、その場合は傾きの大きさのみを求めることができる。
【0036】
図5は、主走査線における色ずれの補正を説明する図である。図中、501は理想的な走査線を示し、感光体22の回転方向に対して垂直に走査がおこなわれる。502は感光体22の位置精度や径のずれ、および各色のスキャナ部24における光学系の位置精度に起因する、傾きおよび湾曲が発生した実際の走査線を示す。主走査方向(x方向)はレーザスキャン方向に対応し、副走査方向(y方向)は、記録媒体の搬送方向に対応する。このような走査線の傾きおよび湾曲の大きさがC、M、Y、Kの画像ステーション毎に異なる場合、中間転写体28上に全色のトナー像を転写した画像において色ずれが発生する。
【0037】
画像形成領域の走査開始位置となるポイントAを基準点(Pa)とする。理想的な走査線501と実際の走査線502との副走査方向(y方向)のずれ量(m1、m2、m3)を、主走査方向に沿った複数のポイント(B、C、D)で測定する。これらの点に対応する走査線502上の点をPb、Pc、Pdとする。
【0038】
主走査方向(X方向)を、領域1(ポイントPa−Pb間)、領域2(Pb−Pc間)、領域3(Pc−Pd間)に分割し、基準点および各ポイント間を結ぶ直線をLab、Lbc、Lcdとする。領域1における副走査方向(y方向)のずれ量の増分はm1、領域2におけるずれ量の増分はm2−m1、そして、領域3におけるずれ量の増分はm3−m2となる。そして、各領域の主走査方向に沿った領域長がそれぞれL1、L2−L1、L3−L2であるから、これら領域長と各領域の増分とによって、直線Lab、Lbc、Lcdの傾きを求めることができる。
【0039】
ずれ量の増分が正の値である場合、対応する領域における走査線は右上がりの傾き(+)を示し、ずれ量の増分が負の値である場合、対応する領域における走査線は右下がりの傾き(−)を示す。
【0040】
画像処理部201
次に、図2を参照して本実施形態の画像形成装置における画像処理部201の処理について説明する。
【0041】
図2において、画像生成部203は、不図示のコンピュータなどのホスト装置から受信する印刷データに基づいて、印刷処理が可能なビットマップ画像データを生成する。ここで印刷データは、PDL(Page Description Language)と呼ばれるページ画像データを作成するためのプリンタ記述言語が一般的であり、通常、文字やグラフィックス、イメージ等のデータの描画命令が含まれている。このような印刷データを解析しラスタライズ処理することでビットマップ画像データ生成する。
【0042】
画像生成部203で生成されるビットマップ画像データがRGB色空間画像データであり、画像形成部202への入力がYMCKの4色のトナーに対応する画像データである場合、色変換部204は色変換処理を実行する。すなわち、色変換部204は、RGB色空間画像データをルックアップテーブルの参照に補間演算を併用してCMYK色空間画像データに変換する。
【0043】
中間調処理部206は、UI操作部211より指定された所定のスクリーンパターンを用いて、入力画素のデータの階調数を削減する処理を実行する。通常、画像形成部202には、2、4、16階調など、低階調のみ入力可能であることが多い。従って、少ない階調数しか再現できない画像形成部202においても安定した中間調表現を可能とするように中間調処理部206による階調数の削減処理を行う。具体的には、中間調処理部206は、画素単位の階調表現から面積単位での階調表現に変換する擬似中間調処理を行い、ビットマップメモリ208に色毎に処理後のビットマップ画像データを蓄積する。ビットマップメモリ208は、印刷処理を行うラスターイメージデータを一旦格納するものであり、1ページ分のイメージデータを格納するページメモリ、または、複数ライン分のデータを記憶するバンドメモリにより構成することができる。
【0044】
また、画像生成部203においてビットマップ画像データが生成される際に、同時に各画素がどのような画像特性に属するのかを示す属性情報が生成される。ここで属性情報とは、それぞれの画像特性に応じたデータの種類を特定するための情報をいう。例えば、文字データ若しくはその画像特性を持ったデータからなるテキスト属性、ビットマップデータまたはその画像特性を持ったデータからなるイメージ属性、ドローデータまたはその画像特性を持ったデータからなるグラフィック属性といった属性情報がある。ビットマップ画像の各画素に対し属性情報を付加することにより、それぞれの属性の画像特性に適した画像処理を実行することができる。
【0045】
このような属性情報を利用することにより、イメージ属性とテキスト属性についてRGB色空間画像データからCMYK色空間画像データへの色変換処理を行う際、色変換部204で利用するルックアップテーブル切り替え処理ができる。
【0046】
また、中間調処理部206においても同様に属性ごとに異なったスクリーンを用いて中間調処理を施すことができる。この場合、中間調処理部206は、例えばイメージ属性である自然画像に対して階調性を優先する低線数スクリーンを適用し、テキスト属性である文字、グラフィック属性であるラインには解像度を優先する高線数スクリーンを適用するといったことが可能となる。
【0047】
色ずれ補正部205A、250Bは、本実施形態では、検出される色ずれ量に応じて、選択的に用いられる。これらの色ずれ補正部は、色ずれ補正制御部207による制御に基づいて走査線の傾きや湾曲による色ずれを補正する。色ずれ補正部205の処理の詳細は後述する。
【0048】
色ずれが補正されたビットマップ画像はパルス幅変調(PWM: Pulse Width Modulation)部209において、画像形成部202におけるスキャナ部24へ入力可能な露光時間へ変換される。
【0049】
色ずれの補正
次に、本実施形態における色ずれ補正処理の詳細を説明する。なお、本実施形態の色ずれ補正処理自体は、特許文献3に記載の処理と同様のものである。
【0050】
図2において、212は画像形成部202に搭載された色ずれ量記憶部であり、色毎に上述した領域(図5の領域1、領域2、領域3)ごとの色ずれプロファイル情報212C、212M、212Y、212Kを格納する。これらは、図5にて上述した複数のポイント(B、C、D)で測定した実際の主走査線502と、理想的な主走査線501との副走査方向のずれ量を示す色ずれプロファイル情報である。図6は、色ずれ量記憶部212に記憶されるプロファイル情報の一例を示す図である。なお、プロファイルの形式はこれに限ることはなく、走査線の傾きおよび湾曲の特性が分かるものであれば良いことはもちろんである。
【0051】
色ずれ量記憶部212に記憶される色ずれプロファイル情報212の取得方法は、いくつかの方法がある。例えば、前述した色ずれ検知センサ41a,41b,41c,41dを用いて、中間転写体28上に形成した色ずれ用検知パッチ402の検出結果から、傾きを求めることができる。また、画像形成装置の製造工程において、上記ずれ量を測定し取得する方法もある。あるいは、予め用意された色ずれ測定用チャートを画像形成装置で出力し、イメージスキャナなどで出力画像を電子情報化し、その電子化された情報からプロファイル情報を取得することなどによってもプロファイル情報を取得することができる。
【0052】
図2における色ずれ補正量演算部210は、色ずれ量記憶部212に記憶された色ずれプロファイル情報212およびエンジンプロファイル情報213に基づき、色ずれを相殺する補正量を算出して、色ずれ補正部205および色ずれ補正制御部207へ出力する。
【0053】
色ずれ補正部205による演算の具体的な内容を以下に示す。
【0054】
主走査方向の座標データをx(dot)、副走査方向の色ずれ補正量をΔy(dot)とするとき、図5における各領域1、2、3における色ずれ補正量Δyは、以下の演算式により求めることができる(画像形成解像度をr(dpi)とする)。
領域1: Δy1 =x×(m1/L1) ・・・(1)
領域2: Δy2 = m1/r+(x−(L1/r))×((m2−m1)/(L2−L1)) ・・・(2)
領域3: Δy3 = m2/r+(x−(L2/r))×((m3−m2)/(L3−L2)) ・・・(3)
【0055】
図5で示したように、L1、L2、L3は、基準点のポイントAからポイントB、C、Dまでの主走査方向に沿った長さ(単位mm)を示す。また、m1、m2、m3は各領域1、領域2、領域3の右端の点(Pb、Pc、Pd)における理想的な走査線501と、実際の走査線502とのずれ量である。
【0056】
ここで、エンジンプロファイル情報213は、用紙サイズに対応した基準点からのオフセット量情報、各色のビームの走査方向情報、記録媒体搬送速度により構成される。例えば、走査方向が異なる場合には、走査方向に応じて補正量に符号をつける必要がある。例えば、エンジンプロファイル情報213において、走査方向が往方向のときの符号は負、復方向のときの符号は正として、色ずれ補正量演算部210は補正量を算出する。また、記録媒体搬送速度(印刷速度)が異なる場合、色ずれ補正量演算部210は、印刷速度に応じて補正量を制御することができる。例えば、画像形成スピードが通常の1/2倍速の場合、走査スピードは変えず、走査動作2回のうち1回分の走査で画像出力を行い、残り1回分では画像出力を行わないように、補正量を1倍速の時の1/2にする。
【0057】
色ずれ補正量演算部210が算出した各画素の補正量に基づき、色ずれ補正部205は、ビットマップデータの補正を行う。
【0058】
色ずれ補正部205A、205Bの構成
図7は、本実施形態にかかる色ずれ補正部205A、205Bの構成を示すブロック図である。色ずれ補正は色毎(CMYK)にそれぞれの色ずれ補正部209C、209M、209Y、209Kで行われる。なお、説明の重複を避けるため、シアン(C)に関する色ずれ補正部(C)209Cを例として色ずれ補正部の内容を説明するが、他の色ずれ補正部209M、209Y、209Kについても同様の構成及び処理を実行するものとする。
【0059】
色ずれ補正部205Cは、セレクタ701、座標変換部702、ラインバッファ703、平滑化判定部704、階調値変換部705を有して構成される。ラインバッファ703は、色変換部204またはビットマップメモリ208から色ずれ補正処理前の画像データを格納するライン単位のメモリであり、補正量分の情報をライン単位で格納することが可能である。
【0060】
セレクタ701は、図15にて後述されるように、色ずれ補正制御部207の制御信号に応じて色ずれ補正部209内で色ずれ補正を実行するか否かを切り替える。座標変換部702は、主走査方向および副走査方向の座標位置データと、色ずれ補正量演算部210より得られる補正量Δyに基づき、出力画像データの再構成を行う。具体的には、座標変換部702は、補正量Δyの整数部分の補正処理、つまり1画素単位での色ずれ補正を行い、出力画像データの再構成を行う。また、階調値変換部705は、色ずれ補正量Δyの小数点以下のずれ量の補正を行う。これら座標変換部702の処理と階調値変換部705の処理を合わせた処理によって色ずれが補正される。
【0061】
座標変換部702における補正処理
図8(a)〜(c)は、座標変換部702における補正処理の詳細を説明する図である。座標変換部701は、図8(a)に示す直線近似された走査線の色ずれ量から求められる色ずれ補正量Δyの整数部分の値に応じて、ビットマップメモリ208に格納された画像データの副走査方向の座標をオフセットする。
【0062】
例えば、図8(b)に示すように、副走査方向の座標位置がnライン目のデータを再構成する場合、主走査方向の部分領域[1]では色ずれ補正量Δyは0以上1画素未満である。この場合、座標変換部702はビットマップメモリ208からnライン目のデータを読み出す。
【0063】
次に、主走査方向の部分領域[2]では色ずれ補正量Δyが1画素以上2画素未満である。この場合は、1ライン分オフセットした位置のビットマップ画像、つまりビットマップメモリ208からn+1ライン目のデータを読み出すように座標変換処理を行う。同様に部分領域[3]ではn+2ライン目、部分領域[4]ではn+3ライン目のデータを読み出すように座標変換処理を行う。
【0064】
図8(c)は、座標変換部702により画素単位での補正を行った画像データを像担持体に露光した露光イメージを示している。各部分領域[1]〜[5]における露光イメージは、各部分領域において発生した色ずれ量(図8(a))による傾きが補正されたほぼ水平の直線となるように露光位置がオフセットされている。
【0065】
階調値変換部705における1画素未満の補正処理
次に、階調値変換部704における1画素未満の補正処理、すなわち、色ずれ補正量Δyの小数点以下のずれ量の補正処理を説明する。図9(a)〜(f)はこの処理を説明する図である。小数点以下のずれ量の補正は、注目画素に対して副走査方向に位置する前後の画素の階調値を調整することによって行う。
【0066】
図9(a)は、右上がりの傾きを有する走査線を例示している。図9(b)は階調値変換前の水平な直線のビットマップ画像を示し、図9(c)は、図9(a)に示す走査線の傾きによる色ずれを相殺するため、図9(b)のビットマップ画像を補正した画像を示している。
【0067】
階調値変換部705は、注目画素に対して、副走査方向に位置する前後の画素の階調値調整を行う。図9(d)は色ずれ補正量Δyと階調値変換をおこなうための補正係数の関係を示す階調値変換テーブルを示している。ここで、パラメータkは色ずれ補正量Δyの整数部分(小数点以下を切り捨て)を示し、1画素単位での副走査方向の補正量を表す。パラメータβとパラメータα(以下の(4)、(5)式)は、1画素未満の副走査方向の補正を行うための補正係数であり、色ずれ補正量Δyの小数点以下の情報により、副走査方向における前後の画素の階調値の分配率を示すパラメータである。
β=Δy―k ・・・(4)
α=1−β ・・・(5)
αは注目画素に対する先行画素の分配率
βは注目画素に対する後行画素の分配率
【0068】
図9(e)は、図9(d)の階調値変換テーブルの係数に従って、副走査方向に位置する前後の画素の階調値比率を調整する階調値変換を行ったビットマップ画像を示している。そして、図9(f)は、このように階調値変換されたビットマップ画像の像担持体での露光イメージを示している。この図に示すように、この露光イメージに基づいて形成される画像は、主走査ラインの傾きが相殺され、ほぼ水平な直線画像となる。
【0069】
ところで、細密画像等のパターン画像についは、画像品質の観点から1画素未満の補正を行わない方が良い。この場合は、階調値変換部705における補正処理は、図10(a)に示すように、階調値変換テーブルに関して副走査方向における前後の画素の階調値の分配率を一律にパラメータβ=0、α=1とすればよい。このパラメータの設定により、1画素未満の色ずれ補正は、色ずれ補正量演算部210の演算結果によらず無効化される。図10(b)は、色ずれ補正量Δyの整数部分のデータに基づいて、1画素単位で副走査方向に座標変換を行ったビットマップ画像を示す図であり、図10(c)は、ビットマップ画像の像担持体での露光イメージである。この露光イメージに基づいて形成される画像は、主走査ラインの傾きが相殺され、ほぼ水平な直線画像になる。
【0070】
ここで、1画素未満の色ずれ補正を行う画像と、行わない画像との判定は、平滑化判定部704が行う。平滑化判定部704における判定方法は、ラインバッファ703から得たn×mのウィンドウデータと図示しないエッジパターン記憶テーブルのエッジパターン情報とのパターンマッチング比較により検出すべき画像のエッジ検出を行う。そして、この検出に基づき、エッジ部画像であるか否かを判断する。そして、エッジ部であるときは階調値変換部705の処理を実施する。具体的には、平滑化判定部704の判定結果に基づき、図示しない階調値変換テーブル選択部は使用する階調値変換テーブル(図9(d)または図10(a))を選択する。階調値変換部705は、選択された階調値変換テーブルに基づいて、補正処理を行う。
【0071】
次に、以上説明した色ずれ補正処理を中間調処理206を行う前に実施する場合と中間調処理206後に実施する場合の、色ずれ補正が形成画像に及ぼす影響について説明する。
【0072】
中間調処理前における色ずれ補正
図11(a)〜(d)および図13(a)〜(d)は、色ずれ補正処理を実施した後に中間調処理を行った場合を説明する図であり、図11(a)〜(d)は色ずれ量が少ない場合、図13(a)〜(d)は色ずれ量が大きい場合を示している。図11(a)、図13(a)は、濃度50%の一定濃度の画像を示す。図11(a)、図13(a)の画像を、座標変換部702によって座標変換すると、図11(b)、図13(b)に示す画像が得られる。
【0073】
これらの画像に対して中間調処理を実施すると、図11(c)、図13(c)に示す画像が得られる。さらに、図11(c)、図13(c)に示す画像に基づいて、実際に像担持体での露光イメージを表す画像が図11(d)、図13(d)に示すものとなる。
【0074】
図11(d)に示すように、色ずれが少ない場合は、スクリーンパターンの角度のずれはほとんど気にならないが、図13(d)に示す色ずれが大きい場合、スクリーンパターンの角度が本来の角度と大きく異なってしまう。
【0075】
中間調処理後における色ずれ補正処理
一方、図12(a)〜(d)および図14(a)〜(d)は、中間調処理を実施した後に色ずれ補正処理を行った場合を説明する図であり、図12(a)〜(d)は色ずれ量が少ない場合、図14(a)〜(d)は色ずれ量が大きい場合をそれぞれ示している。図12(a)、図14(a)は、濃度50%の一定濃度の入力画像を示す。この図12(a)、図14(a)に示す画像対して、ある4×4の中間調パターン(スクリーンパターン)を用いて中間調処理をすると、図12(b)、図14(b)に示す画像が得られる。
【0076】
そして、図12(b)、図14(b)に示す画像に対して、座標変換部702によって座標変換が実行されると、図12(c)、図14(c)に示す画像が得られる。また、この画像に基づいて実際に像担持体で形成される露光画像が図12(d)、図14(d)に示される。これらの図に示すように、スクリーンパターンの角度が本来の角度とそれほど異ならないが、図14(d)の場合、ディザ周期性が欠落する部分が生じる。その結果、前述したように、モアレが現れる。
【0077】
以上のとおり、色ずれ補正を中間調処理前後のいずれで実施するかに応じて、特に色ずれの大きい場合に異なる画質劣化を生じる。そして、中間調処理前に色ずれ補正をする場合のスクリーン線数を維持できないことによる画質劣化は、中間調処理後に色ずれを補正する場合のモアレが現れる場合と比較して、その程度がより顕著となる。この点から、本実施形態では、色ずれ補正処理を中間調処理前後のいずれで実施するかの判断を行い、その判断を色ずれ量に基づいて行う。すなわち、色ずれ量が大きい場合、上述のように、中間調処理前に色ずれ補正をする場合の、スクリーン線数を維持できないことによる画質劣化がより顕著となるため、色ずれ補正を中間調処理後に行うようにする。
【0078】
具体的には、本実施形態では、色ずれ補正量演算部210で算出された色ずれ量を元に色ずれ補正制御部207は色ずれ補正を中間調処理の前後のいずれで実施するかを決定する。
【0079】
図15は、不図示のCPUによる制御の下、中間調処理部206、色ずれ補正部205、色ずれ補正制御部207、色ずれ補正量演算部210によって実行される色ずれ補正処理を示すフローチャートである。
【0080】
先ず、色ずれプロファイル情報を色ずれ量記憶部212より取得し、色ずれ補正量演算部210で色ずれ量を算出する(S1501)。次に、色ずれ補正制御部207において色ずれ補正処理を中間調処理前後のどちらで実施するかを判定する(S1502)。ステップS1502で、色ずれ量が予め決められた閾値(th)より大きいと判断したとき、中間調処理を実施した後(S1503)、色ずれ補正処理を実行して(S1504)、本処理を終了する。
【0081】
一方、ステップS1502で、色ずれ量が予め決められた閾値(th)以下であると判断したとき、色ずれ補正処理を実施後(S1505)、中間調処理を実行して(S1506)、本処理を終了する。
【0082】
本実施形態によれば、色ずれ量に応じて中間調処理前に色ずれ補正処理を実施するか、中間調処理後に色ずれ補正処理を実施するかを判定する。これにより、特に、色ずれ補正時のスクリーンパターン角度がずれる現象を最小限に留めながら良好な画像形成処理を実現することができる。
【0083】
(第2実施形態)
第1実施形態では、色ずれ量に応じて、色ずれ補正を中間調処理の前後のいずれで行うかを判断した。本実施形態では、出力する解像度情報に応じて、色ずれ補正を中間調処理の前後のいずれで行うかを判断する。
【0084】
一般に、出力解像度が高くなるほど、中間調処理後の色ずれ補正処理に対して付加的な補正処理、例えばエッジ検出や平滑化処理などのフィルタリング処理の精度が高くすることが望ましい。特に、中間調領域のエッジ検出をパターンマッチング等で実施する場合の精度が問題となる。一方、中間調処理前であれば属性情報を利用してエッジ部を精度良く判断することができる。すなわち、フィルタリングは、色ずれ補正の影響を受ける。一方で、フィルタリングは、一般に画像の出力解像度が高いほど高精度に行う必要がある。このことから、例えば、出力解像度が高い場合に、中間調処理が施された画像データに対して色ずれ補正が行われると、それによる出力座標の変換などによってフィルタリングの精度がそれほど上がらないことがある。
【0085】
そこで本実施形態では、出力解像度に応じて、色ずれ補正処理を中間調処理の前後のいずれで行うかを判断し実行する。
図16は、不図示のCPUの制御の下、中間調処理部206、色ずれ補正部205A、205B、色ずれ補正制御部207、UI操作部211によって実行される色ずれ補正処理を示すフローチャートである。
【0086】
先ず、UI操作部211を介して入力される出力解像度を取得する(S1601)。次に、出力解像度が300DPIより大きいか否かを判断する(S1602)。なお、本実施形態における出力解像度は300DPI、600DPI、1200DPI、2400DPIを設定することができる。
【0087】
出力解像度が300DPIである場合、中間調処理を実施し(S1603)、その後に、色ずれ補正処理を実行して(S1604)、処理を終了する。
【0088】
一方、ステップS1602で、出力解像度が300DPIより大きいと判断したときは、色ずれ補正処理を実施し(S1605)、その後、中間調処理を実行して(S1606)、処理を終了する。
【0089】
以上の本実施形態によれば、出力解像度に応じて中間調処理前に色ずれ補正処理を実施するか、中間調処理後に色ずれ補正処理を実施するかを定めることができる。これにより、色ずれ補正を行っても出力解像度に見合った精度でエッジ検出などのフィルタリングを実行することが可能となる。
【0090】
(第3実施形態)
以上説明した画像形成システムは、高速化や省メモリ化を図るために中間調レベルでビットマップメモリに格納する方式も開発されている。例えば、高品質な出力画像を得るために中間調処理が施されていない連続階調レベルでビットマップメモリに格納し、一方、高速な出力画像を得るために中間調レベルでビットマップメモリに格納するといったことが考えられる。また、中間調レベルで格納する場合には中間調処理された1画素当たりのビット数によってメモリ容量を削減することが可能である。RGB各色8ビットの情報を格納する場合には1画素当たり24ビットとなるが、1ビットの中間調処理を実施すると、1画素当たり3ビットの情報となり1/8の省メモリ化を図ることができる。
【0091】
そこで、本実施形態は、ラスターデータに展開するレンダリング処理に係る階調数に応じて、色ずれ補正処理を中間調処理の前後のいずれで行うかを判断する。すなわち、本実施形態のレンダリング処理は、出力する画像が高品質を優先するか、高速かつ省メモリを優先するかによって、中間調処理された画像データかあるいは中間調処理前の画像データのいずれかに対して選択的に行う。そして、色ずれ補正も、レンダリングのモードに応じて、そのモードが高品質を優先する場合には、それに対応したものとする。つまり、中間調処理の前後のいずれかで行うかによって上記のモードに対応するようにする。
【0092】
なお、本実施形態のレンダリング処理は、中間調処理によって実現される階調数が4ビットの場合は、高画質を優先する連続階調(8ビット)でのレンダリング処理とする。また、中間調処理の階調数が1ビットまたは2ビットの場合は、高速や省メモリを優先する中間調レベルでのレンダリング処理を行うようにする。
【0093】
図17は、不図示のCPUによる制御の下、中間調処理部206、色ずれ補正部205A、205B、色ずれ補正制御部207、UI操作部211によって実行される色ずれ補正処理を示すフローチャートである。
【0094】
先ず、中間調処理の階調数すなわち出力階調数をUI操作部211を介して取得する(S1701)。次に、出力階調数が4ビットか否かを判断する(S1702)。この階調数が4ビットでない場合、すなわち、高速や省メモリを優先したレンダリングが行われるとして、中間調処理を実施し(S1703)、その後に、色ずれ補正処理を実行して(S1704)、本処理を終了する。このように、高速の画像形成などの優先する場合は、中間調処理によって実現される階調数が小さいことから、中間調処理の後に色ずれ補正をしてもそれほどの画質の劣化がない。このため、中間調処理の後に色ずれ補正をするようにする。
【0095】
一方、ステップS1702で、出力階調数が4ビットであると判断したときは、高画質を優先したレンダリングが行われるとして、色ずれ補正処理を実施し(S1705)、その後に、中間調処理を実行して(S1706)、処理を終了する。この場合は、高画質を優先するモードであるから、色ずれ補正による画質劣化がより小さくなる、中間調処理前の色ずれ補正とする。
【0096】
本実施形態によれば、出力階調数に応じてレンダリング処理を切り替える画像処理システムにおいて、中間調処理前に色ずれ補正処理を実施するか、中間調処理後に色ずれ補正処理を実施するかを判定する。これにより、レンダリング処理に係る画質に応じた色ずれ補正を行い、適切な補正処理を実現することできる。
【0097】
(第4実施形態)
上述した第1実施形態から第3実施形態ではそれぞれ、色ずれ量、出力解像度、出力階調数によって色ずれ補正処理を中間調処理の前後のいずれで実行するかを判定した。本実施形態では、第1実施形態から第3実施形態の判断を同時に実施する場合に、優先度を設けて色ずれ補正処理を中間調処理の前後のいずれで実行するかを定めるものである。
【0098】
本実施形態では、優先度を色ずれ量>出力解像度>出力階調数とする。
【0099】
図18は、不図示のCPUによる制御の下、中間調処理部206、色ずれ補正部205、色ずれ補正制御部207、色ずれ補正量演算部210、UI操作部211によって実行される色ずれ補正処理を示すフローチャートである。
【0100】
先ず、ステップS1801において、色ずれプロファイル情報を色ずれ量記憶部212より取得後、色ずれ補正量演算部210で色ずれ量を算出する。その後、色ずれ補正制御部207において色ずれ補正処理を中間調処理前後のどちらで実施するかを判断する(S1802)。ステップS1802にて色ずれ量が予め決められた閾値(th)より大きい場合、中間調処理を実施し(S1809)、その後、色ずれ補正処理を実行して(S1810)、本処理を終了する。
【0101】
ステップS1802で、色ずれ量が予め決められた閾値(th)より小さいと判断したときは、ステップS1803で、出力解像度をUI操作部211を介して取得し、出力解像度が300DPIより大きいか否かを判断する(S1804)。ステップS1804で出力解像度が300DPI以下であると判断したときは、ステップS1809へ進む。一方、ステップS1802で出力解像度が300DPIより大きいと判断したときは、ステップS1805において、出力階調数をUI操作部211より取得し、出力階調数が4ビットか否かを判断する(S1806)。
【0102】
ステップS1806で、出力階調数が4ビットでないと判断したときは、ステップS1809へ進む。一方、ステップS1806にて出力階調数が4ビットであると判断したときは、色ずれ補正処理を実施し(S1807)、その後、中間調処理を実行して(S1708)、本処理を終了する。
【0103】
本実施形態によれば、色ずれ補正処理制御において優先度で中間調処理前に色ずれ補正処理を実施するか、中間調処理後に色ずれ補正処理を実施するかを判定することが可能となり、システムの状況に応じて最適な色ずれ補正処理を実現することができる。
【0104】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、複数種類の色材を用いたカラー画像を形成する場合に本発明を適用する例について説明した。しかし、本発明の適用はこれに限られない。モノクロ画像の形成の場合、すなわち、1つの現像部を用いる場合の現像位置ずれの補正についても、同様中間調処理の前後のいずれで実行するかを上述した各実施形態のように定めることができる。
【0105】
(さらに他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態の機能を実現する、図15〜図18に示したフローチャートの手順を実現するプログラムコード、またはそれを記憶した記憶媒体によっても実現することができる。また、システムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0106】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0107】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSが実際の処理の一部または全部を行うものであってもよい。
【0108】
更に、プログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、CPUなどが実際の処理の一部または全部を行うものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】色ずれ補正の1画素未満の補正に伴う細密画像の濃度ムラを説明する図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示したカラー画像形成装置の機械的構成の断面を示す図である。
【図4】色ずれ検知のための構成を説明する図である。
【図5】主走査線における色ずれの補正を説明する図である。
【図6】色ずれ量記憶部212に記憶されるプロファイル情報の一例を示す図である。
【図7】色ずれ補正部の構成を示すブロック図である。
【図8】(a)〜(c)は、座標変換部における補正処理の内容を説明する図である。
【図9】(a)〜(f)は、階調値変換部における1画素未満の補正処理を説明する図である。
【図10】(a)〜(c)は、1画素未満の補正を行わない場合の階調値変換テーブルを示す図である。
【図11】色ずれ量が少ない場合の中間調処理前に色ずれ補正を適用したビットマップ画像を示す図である。
【図12】色ずれ量が少ない場合の中間調処理後に色ずれ補正を適用したビットマップ画像を例示する図である。
【図13】色ずれ量が大きい場合の中間調処理前に色ずれ補正を適用したビットマップ画像を例示する図である。
【図14】色ずれ量が大きい場合の中間調処理後に色ずれ補正を適用したビットマップ画像を例示する図である。
【図15】本発明の第1実施形態に係る色ずれ補正処理を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第2実施形態に係る色ずれ補正処理を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第3実施形態に係る色ずれ補正処理を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第4実施形態に係る色ずれ補正処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0110】
26 現像器
27 一次転写ローラ
28 中間転写体
41 色ずれ検知センサ
201 画像処理部
202 画像形成部
203 画像生成部
204 色変換部
205A、205B 色ずれ補正部
206 中間調処理部
207 色ずれ補正制御部
208 ビットマップメモリ
209 パルス変調部
210 色ずれ補正量演算部
211 UI操作部
212 色ずれ量記憶部
213 エンジンプロファイル
701 セレクタ
702 座標変換部
703 ラインバッファ
704 平滑化判定部
705 階調値変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対して、画像形成手段における画像形成位置を補正するための形成位置補正処理と、画像データの量子化を行うための中間調処理と、を含む処理を行う画像処理装置であって、
形成される画像の画質に影響を及ぼす要素の値を取得する取得手段と、
該取得された要素の値に基づいて、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前後のいずれかで行うかを判断する判断手段と、
該判断に応じて、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前または後に行うよう制御する制御手段と、
を具えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
複数の画像形成手段それぞれの画像形成位置の形成位置補正処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像の画質に影響を及ぼす要素の値は、前記画像形成手段において検出される形成位置のずれ量であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記ずれ量が所定値より大きいとき、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の後に行うものと判断することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像の画質に影響を及ぼす要素の値は、前記画像形成手段による画像形成の解像度であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記判断手段は、前記解像度が所定値より大きいとき、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前に行うものと判断することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画像の画質に影響を及ぼす要素の値は、前記中間調処理による量子化によって得られる階調数であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記判断手段は、前記階調数が大きいほど、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前に行うものと判断することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記階調数に応じて、レンダリング処理を前記中間調処理の前または後に行うことを特徴とする請求項7または8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記判断手段は、前記要素の値の値として、前記画像形成手段において検出される形成位置のずれ量、前記画像形成手段による画像形成の解像度、および前記中間調処理による量子化によって得られる階調数を、この順序で判断し、前記制御手段は、前記判断手段の判断に応じて、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前または後に行うよう制御することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
画像データに対して、画像形成手段における画像形成位置を補正するための形成位置補正処理と、画像データの量子化を行うための中間調処理と、を含む処理を行うための画像処理方法であって、
形成される画像の画質に影響を及ぼす要素の値を取得する取得工程と、
該取得された要素の値に基づいて、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前後のいずれかで行うかを判断する判断工程と、
該判断に応じて、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前または後に行うよう制御する制御工程と、
を有したことを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
複数の画像形成手段それぞれの画像形成位置の形成位置補正処理を行うことを特徴とする請求項11に記載の画像処理方法。
【請求項13】
前記画像の画質に影響を及ぼす要素の値は、前記画像形成手段において検出される形成位置のずれ量であることを特徴とする請求項11または12に記載の画像処理方法。
【請求項14】
前記判断工程は、前記ずれ量が所定値より大きいとき、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の後に行うものと判断することを特徴とする請求項13に記載の画像処理方法。
【請求項15】
前記画像の画質に影響を及ぼす要素の値は、前記画像形成手段による画像形成の解像度であることを特徴とする請求項11または12に記載の画像処理方法。
【請求項16】
前記判断工程は、前記解像度が所定値より大きいとき、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前に行うものと判断することを特徴とする請求項15に記載の画像処理方法。
【請求項17】
前記画像の画質に影響を及ぼす要素の値は、前記中間調処理による量子化によって得られる階調数であることを特徴とする請求項11または12に記載の画像処理方法。
【請求項18】
前記判断工程は、前記階調数が大きいほど、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前に行うものと判断することを特徴とする請求項17に記載の画像処理方法。
【請求項19】
前記制御工程は、前記階調数に応じて、レンダリング処理を前記中間調処理の前または後に行うことを特徴とする請求項17または18に記載の画像処理方法。
【請求項20】
前記判断工程は、前記要素の値の値として、前記画像形成手段において検出される形成位置のずれ量、前記画像形成手段による画像形成の解像度、および前記中間調処理による量子化によって得られる階調数を、この順序で判断し、前記制御工程は、前記判断工程の判断に応じて、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前または後に行うよう制御することを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項21】
コンピュータに読取られることにより該コンピュータを、画像データに対して、画像形成手段における画像形成位置を補正するための形成位置補正処理と、画像データの量子化を行うための中間調処理と、を含む処理を行う画像処理装置として機能させるプログラムであって、該機能は、
形成される画像の画質に影響を及ぼす要素の値を取得する取得手段と、
該取得された要素の値に基づいて、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前後のいずれかで行うかを判断する判断手段と、
該判断に応じて、前記形成位置補正処理を前記中間調処理の前または後に行うよう制御する制御手段と、
を有したことを特徴とするプログラム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図1】
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【公開番号】特開2007−300551(P2007−300551A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128509(P2006−128509)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】