説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】 スクリーン処理手段によって発生するモアレを抑制し、高画質な出力を実現する。
【解決手段】 入力画像データをスクリーン処理する画像処理装置であって、画像データをスクリーン処理する第1のスクリーン処理手段と、前記スクリーン処理された画像データと前記画像データの差分の低周波成分に基づいて補正量を算出する算出手段と、前記補正量を累積する累積手段と、前記累積手段による累積補正量を用いて、前記画像データを補正する補正手段と、前記補正手段により補正された画像データに対してスクリーン処理する第2のスクリーン処理手段とを有し、前記入力画像データに対して前記第1のスクリーン処理手段、前記算出手段、前記累積手段および前記補正手段を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン処理を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体上に画像を形成する方法において、階調再現を実現するために面積階調の手法が用いられている。面積階調とは色材の付着領域の割合を変化させることにより階調を表現する手法であり、代表的なものとしてAM(振幅変調)スクリーンとFM(周波数変調)スクリーンとが知られている。AMスクリーンは色材の付着領域の大きさ(いわゆる網点の大きさ)を変調することで階調を表現し、網点の形状、網点を配置する方向(網点角度)、周期的な網点の配置密度(線数)により特徴付けられる。一方、FMスクリーンは一定の大きさの微小な孤立ドットを擬似ランダムに配置し、ドットの密度で階調を表現する。FMスクリーンを用いるには微小ドットを安定して記録する必要がある。そこで一般に、微小ドットの再現が不安定な画像形成装置ではAMスクリーンが用いられている。
【0003】
AMスクリーンを用いた場合、出力画像においていわゆる原稿モアレが生じることがある。原稿モアレとは、入力画像が周期的に配列した網点と干渉し、入力画像における高周波成分が低周波領域に折り返すことによって生じる視認可能な周期的パターンのことである。このような原稿モアレを抑制する方法として、以下に示す二つの方法が提案されている。
【0004】
一つ目は、入力画像に対してフィルタ処理を行い、モアレの原因となる周波数成分を入力画像から除去する方法である(特許文献1)。二つ目は、AMスクリーンを用いた際に原稿モアレが発生する場合は、AMスクリーンの代わりに、微小な孤立ドットが擬似ランダムに配置されたFMスクリーンを用いる方法である(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−051536号公報
【特許文献2】特開2007−129558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の文献に開示された技術では、以下に示すような問題が生じることがある。
【0007】
特許文献1に記載された方法では、入力画像に対してローパスフィルタを用いてフィルタ処理を行い、モアレの原因となる周波数成分を入力画像から除去する。モアレの原因となる周波数成分はスクリーン周波数付近の高周波成分であり、入力画像に対してモアレの原因となる周波数成分を取り除くのに十分なローパスフィルタをかけると、全体的にぼやけた画像になってしまう。
【0008】
特許文献2のようにFMスクリーンを用いる方法では、オフセット印刷に代表される印刷装置や電子写真方式による記録装置などの、ドットの再現が不安定である画像形成装置では、出力画像にざらつきが目立つという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、原稿モアレが抑制された高品質な出力画像を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の画像処理装置は、入力画像データをスクリーン処理する画像処理装置であって、画像データをスクリーン処理する第1のスクリーン処理手段と、前記スクリーン処理された画像データと前記画像データの差分の低周波成分に基づいて補正量を算出する算出手段と、前記補正量を累積する累積手段と、前記累積手段により累積された累積補正量を用いて、前記画像データを補正する補正手段と、前記補正手段により補正された画像データに対してスクリーン処理する第2のスクリーン処理手段とを有し、前記入力画像データに対して前記第1のスクリーン処理手段、前記算出手段、前記累積手段および前記補正手段を繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原稿モアレが抑制された高品質な出力画像を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る画像処理装置及び画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る画像処理装置による画像処理方法を示すフローチャートである。
【図3】シアン色分解後デューティデータに対するスクリーン処理の様子を示す図である。
【図4A】第1の実施形態に係る画像処理方法における各データを示す図である。
【図4B】第1の実施形態に係る画像処理方法における各データおよび効果を示す図である。
【図5】第1の実施形態における画像処理方法の過程で得られる画像データの画素値の分布を示す図である。
【図6】その他実施形態の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は画像データをAMスクリーンで階調表現するデータに変換するスクリーン処理を対象とする。
【0014】
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る画像処理装置101及び画像形成装置122の構成を示すブロック図である。なお、画像処理装置101は、例えば画像形成装置に対応したドライバがインストールされた一般的なパーソナルコンピュータである。画像処理装置101の各構成は、コンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現されることになる。なお、他の構成例として、例えば画像形成装置122が画像処理装置101を含む構成としてもよい。
画像処理装置101と画像形成装置122とは、インタフェース又は回路によって接続されている。
【0015】
画像処理装置101は、画像データ入力端子102より印刷対象の画像データを入力し、入力画像格納バッファ103に格納する。
【0016】
色分解処理部104は、入力画像格納バッファ103に格納された画像データを画像形成装置122が備える色材色に対応した色成分データへ色分解する。色分解処理には、色分解用ルックアップテーブル(LUT)記憶部105に記憶された色分解用ルックアップテーブルが参照される。
【0017】
入力切替部106は、色分解処理部104から出力される各色成分データ、あるいは、繰り返し判定部118を経由して与えられる原稿モアレ成分除去部112の出力データのいずれかを、原稿モアレ成分算出部107へ出力する。
【0018】
原稿モアレ成分算出部107は、色分解処理部104にて分解された各色材値、及び入力切替部106からの出力値に基づき、原稿モアレ成分を算出する。
【0019】
原稿モアレ成分除去部112は、色分解処理部104にて分解された各色材値から、原稿モアレ成分算出部107が算出した原稿モアレ成分を除去する。
【0020】
繰り返し判定部118は、原稿モアレ成分算出部107、並びに原稿モアレ成分除去部112の繰り返し回数に応じて、原稿モアレ成分の算出及び除去をさらに繰り返し行うか否かを判定する。繰り返し回数が所定の回数に達した場合は、スクリーン処理部119へと接続する。一方現在の繰り返し回数が所定の回数に達していない場合は、入力切替部106と接続する。
【0021】
スクリーン処理部119は、原稿モアレ成分除去部112から出力された各色材値に対してスクリーン処理を実行し、これをスクリーン処理後データとしてスクリーン画像格納バッファ120に格納する。ここでスクリーン処理はAMスクリーン処理のことである。スクリーン画像格納バッファ120に格納されたスクリーン処理後データは、出力端子121より画像形成装置122へ出力される。なお、原稿モアレ成分とは、原稿(入力画像)とスクリーンとの間に生じるモアレである。入力画像が周期性をもつAMスクリーンと干渉し、入力画像における高周波成分が低周波領域に折り返すことに起因する。
【0022】
画像形成装置122において、画像処理装置101から出力されたスクリーン処理後データに従って、CMYK各色の感光体ドラム123、124、125、126上に潜像画像が形成される。各色の感光体ドラム123、124、125、126上において、形成された潜像画像からトナー像が形成され、形成されたトナー像は中間転写ベルト127上に転写され、フルカラーの像が中間転写ベルト127上に形成される。この像は、転写部128において、給紙トレイ130から供給された用紙上に転写され、定着部129にて定着される。カラー像が定着された用紙は排紙トレイ131に送られる。
【0023】
次に、本実施形態に係る画像処理装置101の画像処理方法について、図2のフローチャートを用いて説明する。なお、各ステップは全画素に対して行われる。
【0024】
まず、ステップS201において、画像処理装置101は、多階調の画像データを入力端子102より入力し、入力画像格納バッファ103に格納する。ここで入力画像データは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3つの色成分を有する。
【0025】
次に、ステップS202において、色分解処理部104は、入力画像バッファ103に格納された多階調の画像データに対し、色分解用LUT記憶部105に記憶された色分解LUTを用いて、RGBからCMYKに変換する。本実施形態では、CMYKの各色成分データを8ビットとして扱うが、それ以上の階調数への変換を行っても構わない。
【0026】
本実施形態の画像形成装置は、CMYK4種類の色材を保有する。そのため、RGBの画像データは、CMYKの画像データへ変換される。即ち、式(1)〜式(4)のとおりに、4種類の有色色材に対応したD_c、D_m、D_y、D_k(0〜255)が生成される。
D_c=C_LUT_3D(R,G,B)・・・式(1)
D_m=M_LUT_3D(R,G,B)・・・式(2)
D_y=Y_LUT_3D(R,G,B)・・・式(3)
D_k=K_LUT_3D(R,G,B)・・・式(4)
ここで、式(1)〜式(4)の右辺に定義される各関数が、色分解用LUTの内容に該当する。色分解用LUTはレッド、グリーン、ブルーの3入力値から、各有色色材への出力値を定める。本実施形態では、CMYK4色を具備する構成であるため、3入力値から4出力値を得るLUT構成となる。以上の処理により、本実施形態における色分解処理が完了する。
【0027】
次に、ステップS203において入力切替部106は、色分解処理部104の出力データ、あるいは、繰り返し判定部118を経由して与えられる原稿モアレ成分除去部112の出力データのいずれかに切り替え、一方を原稿モアレ成分算出部107へ出力する。
【0028】
次に、ステップS204において、原稿モアレ成分算出部107は、原稿モアレ成分を算出する。以下、図1を参照しながら原稿モアレ成分算出部107の処理の詳細について説明する。
【0029】
原稿モアレ成分算出部107は、スクリーン処理部108、フィルタ処理部109、110、減算部111から構成される。図1では説明の簡単のため、シアンを処理するブロックを詳細に示し、MYKの画像データを処理する構成の詳細は省略している。
【0030】
スクリーン処理部108は、色分解処理部104にて生成された色分解後デューティデータD_c、D_m、D_y、D_kに対してAMスクリーン処理(以下、スクリーン処理)を行い、スクリーン処理後データOut_c、Out_m、Out_y、Out_kを出力する。これらスクリーン処理後データには、色分解後デューティデータとAMスクリーンとの干渉によって発生する原稿モアレが含まれている可能性がある。
【0031】
具体的な処理について以下に説明する。スクリーン処理部108には、CMYK各色の閾値テーブルTh_c、Th_m、Th_y、Th_kが格納されている。そのうちスクリーン処理部108は、スクリーン処理を行う色に対応する閾値テーブルを参照してスクリーン処理をする。具体的には、処理を行う色の色分解後デューティデータと対応する閾値テーブルとを画素毎に比較し、スクリーン処理後データを出力する。ここで説明を簡略化するため、シアンを例に挙げてスクリーン処理の概要を説明する。
【0032】
図3は、シアン色分解後デューティデータD_c301に対するスクリーン処理の様子を示している。閾値テーブルTh_c302は、画素位置に対応した閾値が格納されている。スクリーン処理部108は、各画素のシアン色分解後デューティデータD_c301に対して、画素位置に対応した閾値(0〜255)を用いて式(5)、式(6)に示される処理を行う。そして、シアンデータOut_c303が得られる。なお、Th_c302は図3に示すように印刷画像上のアドレスに対応した閾値群である。
D_c≦Th_cのとき、Out_c=0・・・式(5)
Th_c<D_cのとき、Out_c=255・・・式(6)
上記例では、シアンを例に挙げた。スクリーン処理部108は、マゼンタ、イエロー、ブラックに対しても同様にスクリーン処理を行う。これにより、スクリーン処理後データとしてシアンデータOut_c、マゼンタデータOut_m、イエローデータOut_y、ブラックデータOut_kを得る。
【0033】
次にフィルタ処理部109は、原稿モアレが含まれるスクリーン処理後データOut_c、Out_m、Out_y、Out_kに対して、式(7)〜式(10)のように所定のローパスフィルタ(以下、LPF)によるフィルタ処理を行う。これにより、スクリーン処理後データ低周波成分Out_f_c、Out_f_m、Out_f_y、Out_f_kが算出される。
Out_f_c=Out_c*LPF・・・式(7)
Out_f_m=Out_m*LPF・・・式(8)
Out_f_y=Out_y*LPF・・・式(9)
Out_f_k=Out_k*LPF・・・式(10)
但し、*はコンボリューションを示す
【0034】
フィルタ処理部109で用いられるローパスフィルタは、スクリーン処理に用いられるスクリーンの周波数特性に応じたカットオフ周波数をもつ。入力画像がスクリーンと干渉することにより発生するモアレは、スクリーン周波数付近よりも低い周波数帯域に生じる。そこでLPFはスクリーン周波数よりを高い周波数帯域をカットオフするような特性を持つ。
【0035】
フィルタ処理部110は同様に、色分解後デューティデータD_c、D_m、D_y、D_kに対して、式(11)〜式(14)のように所定のLPFによるフィルタ処理を行う。これにより、色分解後デューティ低周波成分D_f_c、D_f_m、D_f_y、D_f_kが算出される。
D_f_c=D_c*LPF・・・式(11)
D_f_m=D_m*LPF・・・式(12)
D_f_y=D_y*LPF・・・式(13)
D_f_k=D_k*LPF・・・式(14)
但し、*はコンボリューションを示す
【0036】
フィルタ処理部110で用いられるLPFは、フィルタ処理部109で用いられるフィルタとほぼ同じカットオフ周波数を有する必要がある。本実施形態では同一のLPFであるが、必ずしも同一でなくても効果を成し得る。
【0037】
次に減算部111は、式(15)〜式(18)のようにスクリーン処理後データ低周波成分Out_f_c、Out_f_m、Out_f_y、Out_f_kから、色分解後デューティ低周波成分D_f_c、D_f_m、D_f_y、D_f_kを減算する。これにより得られる値P_c、P_m、P_y、P_kは、スクリーン処理を施す前のデューティデータとスクリーン処理後データとの差分の低周波成分である。原稿モアレは入力画像がスクリーンと干渉し、スクリーン処理によって入力画像データの高周波成分が低周波領域に折り返すことにより発生する。従って、スクリーン処理によって生じる誤差の低周波成分P_c、P_m、P_y、P_kは原稿モアレ成分に相当する。
P_c=(Out_f_c−D_f_c)・・・式(15)
P_m=(Out_f_m−D_f_m)・・・式(16)
P_y=(Out_f_y−D_f_y)・・・式(17)
P_k=(Out_f_k−D_f_k)・・・式(18)
以上の処理により、本実施形態における原稿モアレ成分算出処理が完了する。
【0038】
次にステップS205において、原稿モアレ成分除去部112は、原稿モアレ成分を除去する。原稿モアレ成分除去部112は、補正量算出部113、補正係数記憶部114、累積補正量加算部115、累積補正量記憶部116、補正部117から構成される。図1では簡単のため、シアンを処理するブロック以外の構成要素を省略している。
【0039】
まず、補正量算出部113は、原稿モアレ成分P_c、P_m、P_y、P_kに対して、式(19)〜式(22)のように適切な補正量を算出するため補正係数h_c、h_m、h_y、h_kを乗算する。それによって、補正量P_New_c、P_New_m、P_New_y、P_New_kを生成する。
P_New_c=h_c×P_c・・・式(19)
P_New_m=h_m×P_m・・・式(20)
P_New_y=h_y×P_y・・・式(21)
P_New_k=h_k×P_k・・・式(22)
【0040】
なお、原稿モアレ成分に乗算する補正係数h_c、h_m、h_y、h_kは、補正係数記憶部114に記憶されている。本実施形態において、補正係数h_c、h_m、h_y、h_kの値は全て1としたが、1以外の値であってもよい。例えば、CMYKの各色版について単色のサーキュラーゾーンプレートチャートを補正係数の値を振って印刷し、最もモアレが抑制できているチャートに対応する補正係数を設定してもよい。
また補正係数h_c、h_m、h_y、h_kは、式(23)〜式(26)のように、原稿モアレ成分算出部107並びに原稿モアレ成分除去部112の繰り返し回数によって減少するように変更してもよい。繰り返し回数に応じて補正量が収束するように補正係数を設定することにより、補正を安定させる効果がある。
h_c=(1−n/N)・・・式(23)
h_m=(1−n/N)・・・式(24)
h_y=(1−n/N)・・・式(25)
h_k=(1−n/N)・・・式(26)
このとき、nは現在の繰り返し回数、Nは予め設定された繰り返し回数を表す。
【0041】
次に、累積補正量加算部115は、累積補正量記憶部116に記憶された累積補正量P_Sum_Old_c、P_Sum_Old_m、P_Sum_Old_y、P1_Sum_Old_kに対し、補正量P_New_c、P_New_m、P_New_y、P_New_kを加算する。
【0042】
このとき、加算後の新しい累積補正量をP_Sum_New_c、P_Sum_New_m、P_Sum_New_y、P_Sum_New_kと表すと、次式で表される。
P_Sum_New_c=P_Sum_Old_c+P_New_c・・・式(27)
P_Sum_New_m=P_Sum_Old_m+P_New_m・・・式(28)
P_Sum_New_y=P_Sum_Old_y+P_New_y・・・式(29)
P_Sum_New_k=P_Sum_Old_k+P_New_k・・・式(30)
式(27)〜式(30)で得られた加算値が新たな累積補正量として、累積補正量記憶部116に記憶される。
【0043】
さらに、補正部117は、色分解後デューティデータD_c、D_m、D_y、D_kから、新しい累積補正量P_Sum_New_c、P_Sum_New_m、P_Sum_New_y、P_Sum_New_kを減算する。このときの式は、式(31)〜式(34)のように表される。これにより、原稿モアレ成分除去後デューティデータD_New_c、D_New_m、D_New_y、D_New_kが算出される。
D_New_c=(D_c−P_Sum_New_c)・・・式(31)
D_New_m=(D_m−P_Sum_New_m)・・・式(32)
D_New_y=(D_y−P_Sum_New_y)・・・式(33)
D_New_k=(D_k−P_Sum_New_k)・・・式(34)
【0044】
以上の処理により、原稿モアレ成分除去処理が完了する。本処理については、予め設定された原稿モアレ成分算出部107並びに原稿モアレ成分除去部112の所定の繰り返し回数分だけ繰り返される。
【0045】
S203およびS204における処理が全画素に対して行われると、ステップS206に進む。ステップS206において、繰り返し判定部118は、原稿モアレ成分算出部107並びに原稿モアレ成分除去部112を再び繰り返すか否かの判定が行う。繰り返し回数を10回と設定したとする。現在の繰り返し回数が10回に達した場合は、原稿モアレ成分除去部で得られた除去後の画像データをスクリーン処理部119へ出力する。一方、現在の繰り返し回数が10回に達していない場合は、原稿モアレ成分除去部は除去後の画像データを入力切替部106へ出力し、入力切替部106は除去後の画像データが通過するように処理を切り替える。そして、原稿モアレ成分算出部107におけるスクリーン処理部108の入力として提供する。本処理部は、繰り返し回数が10回となるまで、繰り返される。
【0046】
繰り返し回数が10回に達すると、ステップS207へ処理が遷移する。スクリーン処理部119は、原稿モアレ成分除去後デューティデータD_New_c、D_New_m、D_New_y、D_New_kに対してAMスクリーン処理を行う。これにより、原稿モアレ成分除去後スクリーン処理後データOut_c、Out_m、Out_y、Out_kが生成され、スクリーン処理部119は、これをスクリーン画像格納バッファ116に格納する。
【0047】
なお、このとき用いられる色の閾値テーブルは、スクリーン処理部108で用いられたものと同一である必要がある。そして、スクリーン画像格納バッファ120に格納された原稿モアレ成分除去後スクリーン処理後データが出力端子121より画像形成装置122へ出力される。
【0048】
原稿モアレ成分算出部107、並びに原稿モアレ成分除去部112の繰り返し回数は、任意に設定することができる。原稿モアレ成分の検出並びに除去を繰り返すことにより、累積補正量が最適化されることで、より高精度に原稿モアレを除去できる。繰り返し回数を多くするほど原稿モアレの低減効果が高くなる。ユーザーのニーズに応じて、適切な繰り返し回数を設定することが可能である。
【0049】
次に、本実施形態における画像処理方法の効果について、図4を参照しながら説明する。
【0050】
図4は、ブラック単色で構成される約5mm四方の原稿チャートを、本実施形態における画像処理装置101で処理したときに生成されるブラックプレーンの画像を示している。原稿モアレ成分算出部107並びに原稿モアレ成分除去部112の繰り返し回数分は10回としている。図4(a)が繰り返し回数1回時における各画像であり、図4(b)が繰り返し回数10回時における各画像を表している。
【0051】
まず、図4(a)の繰り返し回数1回時における各画像について説明する。D_kは色分解処理部104から出力された色分解後デューティデータである。Out1_kは、原稿モアレ成分算出部107におけるスクリーン処理部108から出力されたスクリーン処理後データである。D_f_kは、フィルタ処理部110から出力された色分解後デューティ低周波成分である。Out1_f_kは、フィルタ処理部109から出力された原稿モアレ成分である。
【0052】
なお、D_f_kはD_kに対してフィルタ処理を掛けた画像データであり、Out1_f_kはOut1_kに対してフィルタ処理を掛けた画像データである。
【0053】
これらに対して、D1_kは、原稿モアレ成分除去部112から出力された原稿モアレ成分除去後デューティデータである。本データが2回目の原稿モアレ成分算出部107におけるスクリーン処理部108への入力となる。Out2_kは2回目の原稿モアレ成分算出部107におけるスクリーン処理部108から出力されたスクリーン処理後データである。
【0054】
図4(a)において、Out1_kは色分解後デューティデータD_kに対してスクリーン処理を掛けた画像であり、図中に元画像には存在しない横縞上の原稿モアレが視認される。一方、Out2_kは原稿モアレ成分除去後デューティデータD1_kに対してスクリーン処理を施した画像であり、Out1_kに比べ原稿モアレが視認されにくくなっている。このように、Out2__kの方がOut1_kに比べ原稿モアレが視認されにくくなる原理は、Out1_kとD1_kとを比較すると直感的に理解できる。Out1_kで視認される原稿モアレに対して、D1_kではOut1_kにおける原稿モアレの階調を反転させたパターンが視認される。すなわち、D1_kは、色分解後デューティデータD_kに対して、階調を反転させた原稿モアレパターンを足し合わせたものであるといえる。そのため、D1_kにスクリーン処理を施したOut2_kにおいては、モアレが視認されにくくなる。
【0055】
しかしながら、Out2_kは、原稿モアレが低減するものの、除去し切れていない成分が残る。
【0056】
本実施例では、原稿モアレ成分を十分に除去するため、原稿モアレ成分算出及び原稿モアレ成分除去の処理を複数回繰り返し、より原稿モアレを抑制し、高品質な画像を出力することを特徴とする。
【0057】
次に、図4(b)は、繰り返し回数10回時における各画像について説明する。D_k及びD_f_kについては、図4(a)と同様であり、説明を省略する。
【0058】
Out10_kは、繰り返し回数10回時におけるスクリーン処理部108から出力されたスクリーン処理後データである。Out10_f_kは、繰り返し回数10回時における、フィルタ処理部109から出力された原稿モアレ低周波成分である。
【0059】
D_10_kは、繰り返し回数10回時における、原稿モアレ成分除去部112から出力された原稿モアレ成分除去後デューティデータである。Out_kは、スクリーン処理部119から出力された原稿モアレ成分除去後スクリーン処理後データである。
【0060】
図4(b)における、Out10_f_kは、繰り返し回数10回目において新たに算出された原稿モアレ成分算出部である。Out1_f_kと比較し、原稿モアレ成分の程度は軽減しているのが見てとれる。このときの最終的な出力結果は、Out_kであり、Out1_k、Out2_kと比較し原稿モアレ成分が十分低減する。
【0061】
図5は、本実施例の処理過程で得られる画像データの分布を示す図である。画像データの分布とは、各画像データにおける横方向の画素値を平均し、縦方向の画素値の変化を表している。図5において、図4と同様、D_kは色分解処理部104から出力された色分解後デューティデータである。Out1_k、Out2_k、Out10_kは、それぞれ、1回目、2回目、3回目、10回目のスクリーン処理部108から出力されるスクリーン処理後データである。また、P1_New_k、P2_New_k、P3_New_k、P10_New_kは、それぞれ、1回目、2回目、3回目、10回目の検出による補正量である。さらに、P1_Sum_New_k、P2_Sum_New_k、P3_Sum_New_k、P10_Sum_New_kは、それぞれ、1回目、2回目、3回目、10回目における累積した補正量である。
【0062】
このとき、Out1_kにおいて発生する原稿モアレ成分に基づいて算出した補正量がP1_New_kであり、補正量を累積加算した結果がP1_Sum_New_kである。1回目の原稿モアレ成分の算出においては累積加算される前の累積値は0であるため、P1_New_kとP1_Sum_New_kは同一である。同様に、Out2_kにおいて発生する原稿モアレ成分を算出した結果がP2_New_kであり、原稿モアレ成分を累積加算した結果がP2_Sum_New_kである。図中に示した3回目及び10回目についても同様である。図5を見ると、原稿モアレ成分の算出と除去を繰り返すことによって、原稿モアレ成分が累積されていく様子がわかる。最終的にP10_Sum_New_kのデータを色分解後デューティデータD_kから除去することで、Out_kのように原稿モアレ成分を十分低減することが可能である。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によれば、スクリーン処理によって生じる原稿モアレを、入力画像をぼかすことなく抑制することが可能である。
【0064】
(その他実施形態)
第1の実施形態では、本発明のスクリーン処理手段として、スクリーン処理部108、119を用いた。本発明は、AMスクリーンで階調表現するデータに変換するスクリーン処理を行うものであれば、全て適用することができる。
【0065】
また、スクリーン処理された画像データと入力画像データの差分の低周波成分に基づいて補正量を算出する算出手段は、補正量算出部113に相当する。なお、第1の実施形態では、スクリーン処理された画像データとスクリーン処理する前の画像データの差分の低周波成分を、それぞれのデータにフィルタ処理を施した後に減算することにより算出される構成とした。しかしながら、スクリーン処理された画像データとスクリーン処理する前の画像データとを減算した値にフィルタ処理を施す構成としてもよい。つまり、前記スクリーン処理された画像データと入力画像データの差分の低周波成分は、原稿モアレ成分に相当する周波数成分であればよい。
【0066】
さらに、低周波成分を算出するためのフィルタ処理部109、110では、実空間においてフィルタ処理前の画像データとローパスフィルタ(LPF)とのコンボリューションを求めることによってフィルタ処理後画像を生成した。しかし、フィルタ処理は周波数空間において行うことにより処理精度を向上させることもできる。そのため、フィルタ処理部109、110における処理は、式(41)のようにすることも可能である。
I2=IDFT(DFT(I1)×DFT(LPF))・・・式(41)
ここで、I1はフィルタ処理前画像、I2はフィルタ処理後画像、DFTは離散フーリエ変換、IDFTは離散逆フーリエ変換を意味する。
【0067】
第1の実施形態では、本発明の累積手段として累積補正量加算部115を、補正手段として補正部117を用いた。
【0068】
さらに第1の実施形態では、繰り返し処理を行うため、繰り返し判定部118を用いたが、必ずしも繰り返し判定部は必要でない。例えば繰り返し判定部のない例として、図6に示すように、原稿モアレ成分算出部及び原稿モアレ成分除去部を複数設けるような形態が挙げられる。この例においての繰り返し回数は3回である。原稿モアレ成分算出部および原稿モアレ成分除去部が順列に配列され、直前の原稿モアレ成分除去部の累積補正量記憶部に記憶された累積補正量に順次補正量を追加していく。このような構成とすることで、パイプライン的な処理が可能となり、処理の高速化を計ることができる。
【0069】
また、繰り返し判定手段を構成する場合、前述の実施形態における繰り返し判定部118による判定方法には限られない。第1の実施形態における繰り返し判定部118では、原稿モアレ成分算出部、並びに原稿モアレ成分除去部の繰り返し回数によって判定した。その他の判定方法として、累積補正量の変化が所定値以下になった場合に、繰り返しを終了するような形態とすることもできる。
【0070】
また本実施形態では、全画素に対して原稿モアレ成分算出部並びに原稿モアレ成分除去部による処理をした後に、所定の回数繰り返すようにした。しかしながら、必ずしも全画素に対して原稿モアレ成分算出部および原稿モアレ成分除去部による処理を施した後に、繰り返し判定をする構成でなくてもよい。例えば、あるブロック毎に繰り返し判定を行い、原稿モアレ成分算出部および原稿モアレ成分除去部による処理を繰り返してもよい。以上の通り、スクリーン処理によって発生するモアレ成分を除去するための補正処理を繰り返し行う構成となっていれば、前述の実施形態に限られない。
【0071】
また、上述した各実施形態では、電子写真方式におけるモアレ抑制のための画像処理法を説明した。しかしながら本発明は、電子写真記録方式以外の他の方式に従って記録を行う記録装置(例えばインクジェット方式、熱転写方式、オフセット印刷方式)に対しても適用できる。
【0072】
本発明は、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体(記録媒体)等として実施形態をとることが可能である。複数の機器(例えばホストコンピュータ、インターフェース機器、撮像装置、webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0073】
なお本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、システムあるいは装置に供給し、コンピュータが該供給されたプログラム実行することでも達成される。この場合、本発明を構成する手段全てにソフトウェアを用いて実行してもよいし、一部構成にのみソフトウェアを用いることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データをスクリーン処理する画像処理装置であって、
画像データをスクリーン処理する第1のスクリーン処理手段と、
前記スクリーン処理された画像データと前記画像データの差分の低周波成分に基づいて補正量を算出する算出手段と、
前記補正量を累積する累積手段と、
前記累積手段により累積された累積補正量を用いて、前記画像データを補正する補正手段と、
前記補正手段により補正された画像データに対してスクリーン処理する第2のスクリーン処理手段と
を有し、
前記入力画像データに対して前記第1のスクリーン処理手段、前記算出手段、前記累積手段および前記補正手段を繰り返す
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
さらに、前記スクリーン処理手段、前記算出手段、前記累積手段および前記補正手段をさらに繰り返すかどうかを判定する繰り返し判定手段を有する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記繰り返し判定手段は、繰り返し回数が所定の回数に達したかどうかにより判定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記繰り返し判定手段は、前記スクリーン処理された画像データと前記画像データとの差分が所定の閾値以下であるかどうかにより判定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記補正量が収束するように前記低周波成分に対して補正係数を乗算することにより前記補正量を算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記画像データをフィルタ処理する第1のフィルタ処理手段と、前記スクリーン処理された画像データをフィルタ処理する第2のフィルタ処理手段とを有し、
前記第1のフィルタ処理手段による処理結果と前記第2のフィルタ処理手段による処理結果とを減算することにより前記低周波成分を算出することを特徴とする前記請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記算出手段は、前記画像データと前記スクリーン処理された画像データとを減算した結果に対してフィルタ処理することにより、前記低周波成分を算出することを特徴とする前記請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
スクリーン処理手段、算出手段、累積手段および補正手段が複数順列に備えられていることを特徴とする前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
入力画像データをスクリーン処理する画像処理方法であって、
画像データをスクリーン処理する第1のスクリーン処理工程と、
前記スクリーン処理された画像データと前記画像データの差分の低周波成分に基づいて補正量を算出する算出工程と、
前記補正量を累積する累積工程と、
前記累積工程による累積補正量を用いて、前記画像データを補正する補正工程と、
前記補正工程により補正された画像データに対してスクリーン処理する第2のスクリーン処理工程と
を有し、
前記入力画像データに対して前記第1のスクリーン処理工程、前記算出工程、前記累積工程および前記補正工程を繰り返す
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項1から請求項8の何れか一項に記載の画像処理装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−109893(P2012−109893A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258605(P2010−258605)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】