説明

画像処理装置および画像形成装置

【課題】通信路のトラブルに適切に対応して画像データの転送を良好に継続させることができる画像処理装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】コントローラーNo.1とヘッドコントローラーHCとの通信路によるデータ転送が不可となるのに対応し、コントローラーNo.2とヘッドコントローラーHCとの通信路により未転送のビデオデータ(ラインデータ(k+1)〜ラインデータ399)が転送される。このように通信路断線の発生に応じて未送信のラインデータ(k+1)〜39のみをそのまま別のコントローラーNo.2に移動させ、当該コントローラーNo.2でビデオデータの転送を継続して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、露光ヘッド制御部に転送される画像データに基づき露光ヘッドを制御して潜像担持体に潜像を形成する画像形成装置および上記画像データを作成して露光ヘッド制御部に転送する画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンターなどの画像形成装置として発光素子を列状に配置したラインヘッドにより感光体などの潜像担持体に潜像を形成するものが知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に記載の画像形成装置では、画像形成指令に含まれる画像データに対して画像処理コントローラーにより画像処理を施してビデオデータを形成する。そして、このビデオデータをヘッドコントローラー(本発明の「露光ヘッド制御部」に相当)に転送し、ヘッドコントローラーのメモリーに格納する。そして、そのメモリー内のビデオデータに基づきヘッドコントローラーがラインヘッドの発光素子を点灯制御することで、画像データに対応する潜像を潜像担持体に形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−137237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した特許文献1に記載の装置では、画像処理を行う画像処理コントローラーとラインヘッドの点灯制御を行うヘッドコントローラーとは、1対1で通信するため、両者の間で継続的な通信路の消失が発生した場合,ヘッドコントローラーにビデオデータを転送することができず、ヘッドコントローラーのメモリー上に正しくビデオデータを格納することができない。その結果、印刷結果に不具合が生じることがあった。
【0005】
この発明にかかるいくつかの態様は、通信路のトラブルに適切に対応して画像データの転送を良好に継続させることができる画像処理装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、上記目的を達成するため、画像データを画像処理する第1の処理部、および第1の処理部で画像処理された処理画像データを記憶する第1の記憶部を有する第1の画像処理部と、画像データを画像処理する第2の処理部、および第2の処理部で画像処理された処理画像データを記憶する第2の記憶部を有する第2の画像処理部と、第1の記憶部に記憶される処理画像データを送信する第1の通信部と、第2の記憶部に記憶される処理画像データを送信する第2の通信部と、第1の通信部で第1の記憶部に記憶される処理画像データが送信されないときに第1の記憶部に記憶される処理画像データを第2の記憶部に転送して第2の通信部で送信させる制御部と、を備えることを特徴としている。
【0007】
本発明の第2の態様は、上記目的を達成するため、潜像が形成される潜像担持体と、潜像担持体を露光して潜像を形成する露光ヘッドと、露光ヘッドを制御する露光ヘッド制御部と、画像データを画像処理する第1の処理部、および第1の処理部で画像処理された処理画像データを記憶する第1の記憶部を有する第1の画像処理部と、画像データを画像処理する第2の処理部、および第2の処理部で画像処理された処理画像データを記憶する第2の記憶部を有する第2の画像処理部と、第1の記憶部に記憶される処理画像データを露光ヘッド制御部に送信する第1の通信部と、第2の記憶部に記憶される処理画像データを露光ヘッド制御部に送信する第2の通信部と、第1の通信部で処理画像データが送信されないときに第1の記憶部に記憶される処理画像データを第2の記憶部に転送して第2の通信部で露光ヘッド制御部へ送信させる制御部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(画像処理装置および画像形成装置)では、画像処理された処理画像データを送信する通信路として、第1の記憶部から読み出して第1の通信部で送信する第1の通信路と、第2の記憶部から読み出して第2の通信部で送信する第2の通信路とが設けられる。そして、第1の通信部で処理画像データが送信されないときには、第1の記憶部に記憶される処理画像データが第2の記憶部に転送されて第2の通信部で送信される。このように第1の通信路による処理画像データの通信が不可となるのに対応して通信路が第2の通信路に切り替えられて処理画像データの転送が継続される。
【0009】
ここで、第1の画像処理部は、第1の処理部で画像処理された処理画像データをラインデータとして第1の記憶部に記憶させ、第1の通信部が、第1の記憶部に記憶されたラインデータを送信するように構成してもよい。
【0010】
また、第1の通信部で送信されたラインデータが受信したときに、送信されたことを示す第1の信号を出力する通信管理部を有し、第1の通信部が、第1の信号を受信した後に、第1の記憶部に記憶される次のラインデータを送信するように構成してもよい。
【0011】
また、第1の画像処理部が、第1の信号を第1の通信部が受信した時に、第1の信号をカウントして第1の記憶部に記憶されたラインデータを管理する進捗管理部を有するように構成してもよい。
【0012】
また、進捗管理部が第1の画像処理部で画像処理される画像データを識別させる識別子を記憶する識別子記憶部を有するように構成してもよい。
【0013】
さらに、通信管理部が、第1の通信部で送信されたラインデータが受信されない時、第1の信号と異なる第2の信号を出力し、第1の通信部が、第2の信号を受信すると、第1の通信部で送信されたラインデータを再送信し、制御部が、第1の通信部で送信されたラインデータの再送信から所定時間が経過しても再送信が行われなかったとき、第1の通信部で送信されないと判断するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1に示す装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】メインコントローラーに記憶される画像データの構成を模式的に示す図。
【図4】データ転送の管理情報を示す図。
【図5】進捗管理部の構成を示すブロック図。
【図6】ACK信号およびNACK信号の構成を示す図。
【図7】図1に示す画像形成装置における画像処理動作の一例を示すシーケンス図。
【図8】本発明にかかる画像形成装置の他の実施形態を示すシーケンス図。
【図9】本発明にかかる画像形成装置の他の実施形態を示すシーケンス図。
【図10】本発明にかかる画像形成装置の別の実施形態を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1に示す装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置1は、互いに異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。そして、画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能となっている。この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCがエンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCと通信を行い、これに基づき、エンジンコントローラーECがエンジン部EGなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材RMたるシートに画像形成指令に含まれる画像データに対応する画像を形成する。以下、まずエンジン部EGの構成や機能などについて説明し、次に画像データに対する画像処理およびデータ転送を実行するための構成および機能などについて説明する。
【0016】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kは、トナー色を除けばいずれも同じ構造および機能を有している。そこで、図1では、図を見やすくするために、画像形成ステーション2Cを構成する各部品にのみ符号を付し、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kに付すべき符号については記載を省略する。また、以下の説明では、図1に付した符号を参照して画像形成ステーション2Cの構造および動作を説明するが、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kの構造および動作も、トナー色が異なることを除けば同じである。
【0017】
画像形成ステーション2Cには、シアン色のトナー像がその表面に形成される、感光体ドラム21が設けられている。感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置される。そして、感光体ドラム21の回転軸に対してACサーボモーター(図示省略)が直接接続される。このため、感光体ドラム21はACサーボモーターによりダイレクト駆動されて図1中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。
【0018】
感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21表面を所定の電位に帯電させるコロナ帯電器である帯電器22と、感光体ドラム21表面を画像信号に応じて露光することで静電潜像を形成する露光ヘッド23と、該静電潜像をトナー像として顕像化する現像ユニット24と、第1スクイーズ部25と、第2スクイーズ部26と、該トナー像を転写ユニット3の中間転写ベルト31に一次転写する一次転写ユニットと、転写後の感光体ドラム21の表面をクリーニングするクリーニングユニットと、クリーナーブレードとが、それぞれこれらの順に感光体ドラム21の回転方向D21(図1では、時計回り)に沿って配設されている。
【0019】
帯電器22は感光体ドラム21の表面に接触しないものであり、この帯電器22には、従来周知慣用のコロナ帯電器を用いることができる。コロナ帯電器にスコロトロン帯電器を用いた場合には、スコロトロン帯電器のチャージワイヤにはワイヤ電流が流されるとともに、グリッドには直流(DC)のグリッド帯電バイアスが印加される。帯電器22によるコロナ放電で感光体ドラム21が帯電されることで、感光体ドラム21の表面の電位が略均一の電位に設定される。
【0020】
露光ヘッド23は後述するようにヘッドコントローラーHCから与えられるビデオデータに基づき光ビームを発生させて光ビームにより感光体ドラム21表面を露光して画像信号に対応する静電潜像を形成するものであり、複数の発光素子と、レンズアレイとを有している。
【0021】
この露光ヘッド23により感光体ドラム21の表面に形成された静電潜像に対して現像ユニット24からトナーが付与されて、静電潜像がトナーにより現像される。なお、この画像形成装置1の現像ユニット24では、キャリア液内にトナーを概略重量比20%程度に分散させた液体現像剤を用いてトナー現像が行われる。この画像形成装置1では、従来一般的に使用されている、Isopar(商標:エクソン)をキャリア液とした低濃度(1〜2wt%)かつ低粘度の常温で揮発性を有する揮発性液体現像剤ではなく、高濃度かつ高粘度の、常温で不揮発性の樹脂中へ顔料などの着色剤を分散させた平均粒径1μmの固形粒子を、有機溶媒、シリコンオイル、鉱物油又は食用油等の液体溶媒中へ分散剤とともに添加し、トナー固形分濃度を約20%とした高粘度(30〜10000mPa・s程度)の液体現像剤が用いられる。
【0022】
第1スクイーズ部25および第2スクイーズ部26にはスクイーズローラーがそれぞれ設けられている。そして、各スクイーズローラーが回転しながら感光体ドラム21の表面と当接してトナー像の余剰キャリア液やカブリトナーを除去する。なお、本実施形態では2つのスクイーズ部25、26により余剰キャリア液やカブリトナーを除去しているが、スクイーズ部の個数や配置などはこれに限定されるものではなく、例えば1個のスクイーズ部を配置してもよい。
【0023】
スクイーズ部25、26を通過してきたトナー像は一次転写ユニットにより中間転写ベルト31に一次転写される。この中間転写ベルト31は、その表面、より詳しくはその外周面にトナー像を一時的に担持可能な像担持体としての無端状ベルトであり、複数のローラー32、33、34および35に掛け渡されている。このうちローラー32はベルト駆動モーター(図示省略)に機械的に接続されて、中間転写ベルト31を図1の矢印方向D31に周回駆動するベルト駆動ローラーとして機能している。なお、中間転写ベルト31を掛け渡されたローラー32ないし35のうち、モーターにより駆動されるのは上記したベルト駆動ローラー32のみであり、他のローラー33、34および35は駆動部を有しない従動ローラーである。
【0024】
一次転写ユニットは一次転写バックアップローラー271を有しており、一次転写バックアップローラー271は中間転写ベルト31を挟んで感光体ドラム21と対向して配設されている。感光体ドラム21と中間転写ベルト31とが当接する一次転写位置TR1では、感光体ドラム21上のトナー像が中間転写ベルト31の外周面(一次転写位置TR1において下面)に転写される。こうして画像形成ステーション2Cにより形成されたシアン色のトナー像が中間転写ベルト31に転写される。同様に、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kでもトナー像の転写が実行されることで、各色のトナー像が中間転写ベルト31上に順次重ね合わされ、フルカラーのトナー像が形成される。一方、モノクロトナー像が形成される際には、ブラック色に対応した画像形成ステーション2Kのみにおいて、中間転写ベルト31へのトナー像転写が行われる。
【0025】
こうして中間転写ベルト31に転写されたトナー像は二次転写位置TR2に搬送される。この二次転写位置TR2では、中間転写ベルト31を巻き掛けられたローラー34に対して二次転写ローラー4が中間転写ベルト31を挟んで対向配置されており、中間転写ベルト31表面と転写ローラー4表面とが互いに当接して転写ニップNPを形成している。すなわち、ローラー34は二次転写バックアップローラーとして機能している。二次転写ローラー4の回転シャフト421は、例えばバネのような弾性部材である押圧部45によって弾性的に、かつ中間転写ベルト31に対して近接・離間移動自在に支持されている。
【0026】
二次転写位置TR2においては、中間転写ベルト31上に形成された単色あるいは複数色のトナー像が、一対のゲートローラー51から搬送経路PTに沿って搬送される記録材RMに転写される。なお、この実施形態では、液体現像剤を用いてトナー像を形成する湿式現像方式でトナー像を形成しているので、良好な転写特性を得るために、転写ニップにおいては中間転写ベルト31に対し記録材RMが高い押圧力で押圧されることが望まれる。また、液体現像剤を介在させるため、記録材RMが中間転写ベルト31に貼り付きジャムとなる可能性が高い。そこで、この画像形成装置1では、把持部を有する二次転写ローラー4が用いられている。
【0027】
二次転写ローラー4は、円筒の外周面の一部を切り欠いてなる凹部41が設けられたローラー基材42を有している。このローラー基材42では、回転軸中心に方向D4に回転自在の回転シャフト421が二次転写バックアップローラー34の回転軸と平行または略平行に配置されるとともに、押圧部45により二次転写バックアップローラー34側に付勢されて所定の荷重(この実施形態では60kgf)が付加されている。そして、図示を省略するモーターから回転駆動力が回転シャフト421に与えられると、二次転写ローラー4は回転方向D4に回転する。
【0028】
また、ローラー基材42の外周面、つまり凹部41の内部に相当する領域を除く表面領域にゴムや樹脂などの弾性層(図示省略)が形成されている。この弾性層はバックアップローラー34に巻き掛けられた中間転写ベルト31と対向して転写ニップNPを形成する。また、凹部41の内部には、記録材RMを把持するための把持部44が配設されている。この把持部44は、凹部41の内底部からローラー基材42の外周面に立設されたグリッパ支持部材と、グリッパ支持部材の先端部に対して接離自在に支持されたグリッパ部材とを有している。そして、グリッパ部材を駆動制御することで記録材RMの把持や把持開放を行うことが可能となっている。
【0029】
なお、トナー像が二次転写された記録材RMは、二次転写ローラー4から搬送経路PT上に設けられた定着ユニット7へ送出される。定着ユニット7では、記録材RMに転写されたトナー像に熱や圧力などが加えられて記録材RMへのトナー像の定着が行われる。
【0030】
次に、上記のように構成されたエンジン部EGを備えた画像形成装置1において、画像形成指令に含まれる画像データからビデオデータを得るための画像処理およびビデオデータのデータ転送を実行するための構成および機能などについて説明する。この画像形成装置1では、図2に示すように、メインコントローラーMCに対して画像形成指令が与えられ、このメインコントローラーMCのメモリー(図示省略)に画像データが記憶される。
【0031】
図3はメインコントローラーのメモリーに記憶される画像データの構成を模式的に示す図である。また、図4はデータ転送の管理情報を示す図である。この実施形態では、画像データはページデータごとに分割してメモリーに記憶される。この「ページデータ」とは画像1ページ分のラインデータからなる画像データであり、ページデータを複数個に分割したバンドデータで構成されている。また、各バンドデータは所定ライン数のラインデータからなる画像データとなっている。なお、本実施形態では、例えば図4に示すように100個のラインデータを1つのバンドデータとし、51個のバンドデータによりページデータを構成している。
【0032】
また、後述するようにデータ転送の進捗状況を管理するため、図3に示すように51個のバンドデータを識別するためにバンド識別子として「バンドNo.0」から「バンドNo.50」を設定し、また図4に示すように各「バンドNo.」に対応する管理情報として、「画像処理コントローラーNo.」、「先頭ラインNo.」、「バンド高さ」および「状況」がリスト形式でメインコントローラーMCのメモリー(図示省略)に記憶される。図4に示すこれらの管理情報のうち「画像処理コントローラーNo.」は後述するように当該バンドデータに対して画像処理を実行する画像処理コントローラーを示す番号である。また、「先頭ラインNo.」はバンドデータを構成するラインデータのうち先頭ラインを示す番号である。また、「バンド高さ」はバンドデータを構成するラインデータの数であり、本実施形態では各バンドデータとも「100」に設定されている。さらに、「状況」はデータ転送状況を示している。
【0033】
メインコントローラーMCは上記のようにページデータを51個のバンドデータに分割し、バンドデータ毎に第1〜第4画像処理コントローラー62A〜62Dに振り分けて転送する。なお、この実施形態では、画像データの形式を、例えばインターリーブ(interleave)形式、すなわちピクセル毎にYMCKデータがまとまっている形式の画像データとしており、トナー色毎に分けた形式の画像データとはしていない。これによって、画像処理コントローラー62A〜62Dへの転送データ量を削減するとともに、スケーラブル性を阻害しないようにしている。つまり、トナー色毎に分けた形式の画像データとすると、画像処理コントローラーが増設されたときのことを考慮して画像データを振り分けることが困難となり、スケーラブル性を阻害する可能性がある。よって、この実施形態では、トナー色毎に分けた形式の画像データとしていない。
【0034】
本実施形態では、装置本体に4個の装着部(図示省略)が設けられている。これらの装着部は、例えばコネクタを有し、画像処理コントローラーを装着するためのものであり、装着部への画像処理コントローラーの装着個数を1〜4個に変更可能となっている。すなわち、画像形成装置1に対して求める処理性能に応じて、装着部に装着する画像処理コントローラーの個数を変更することでスケーラブルな画像形成装置1を実現することが可能となっている。例えば図2では、その4個の装着部全てに画像処理コントローラーが装着されている。すなわち、4個の装着部に、それぞれ第1〜第4画像処理コントローラー62A〜62Dが装着されており、それぞれ画像処理コントローラーNo.1〜No.4に相当している。
【0035】
各画像処理コントローラー62A〜62Dは、それぞれ画像処理部621および通信モジュール622を備え、全て同一構成になっており、装着個数を増やすことにより順次性能向上が図れるようになっている。各画像処理部621は、処理部6211、メモリー6212および進捗管理部6213を有している。これらのうち処理部6211はメインコントローラーMCから転送されるバンドデータに対して所定の画像処理(色変換処理やスクリーン処理)を行い、複数のラインデータからなるビデオデータVDを生成する。こうして画像処理されたラインデータはメモリー6212に一時的に記憶され、通信モジュール622によりラインデータ単位でメモリー6212から読み出されてヘッドコントローラーHCの通信モジュール72A〜72Dに送信される。
【0036】
図5は進捗管理部の構成を示すブロック図である。進捗管理部6213はバンド識別子記憶部6213aとラインカウンタ6213bとを有している。このバンド識別子記憶部6213aはメインコントローラーMCから転送されるバンドデータの識別子(本実施形態では「バンドNo.」)を記憶する。また、ラインカウンタ6213bはメモリー6212から読み出されて通信モジュール622からヘッドコントローラーHCに正常に受信されたラインデータの数をカウントする。例えば画像処理コントローラー62Aではメモリー6212に記憶されるビデオデータVDがラインデータ単位で通信モジュール622からヘッドコントローラーHCの通信モジュール72Aに送信される。そして、通信モジュール72Aによりラインデータが正常に受信されると、ライン正常受信通知としてACK信号が通信モジュール72Aから画像処理コントローラー62Aの通信モジュール622に送られる。このACK信号に対応して画像処理コントローラー62Aの通信モジュール622は次のラインデータをメモリー6212から読み出して通信モジュール72Aに送信するとともに、ラインカウンタ6213bがラインカウンタ値を「1」だけインクリメントする。したがって、バンド識別子記憶部6213aに記憶されるバンドNo.と、ラインカウンタ6213bにカウントされたラインカウント値とを参照することで、画像処理コントローラー62AによるビデオデータVDの転送状況を正確に認識し、管理することができる。なお、この点に関しては、他の画像処理コントローラー62B〜62Dについても全く同様である。また、メインコントローラーMCは各画像処理コントローラー62A〜62Dのメモリー6212および進捗管理部6213に任意にアクセス可能となっており、メモリー6212に残っているラインデータ、ラインカウンタ6213bのラインカウンタ値およびバンド識別子記憶部6213aに記憶されるバンドNo.を読み出し、また書き込むことが可能となっている。
【0037】
なお、通信モジュールによりラインデータが正常に受信されない場合には、ライン不正受信通知としてNACK信号が通信モジュール72A〜72Dから画像処理コントローラー62A〜62Dの通信モジュール622にそれぞれ送られる。また、通信モジュール72A〜72Dは画像処理コントローラー側の通信モジュールとの通信路で断線が発生したことを検出すると、後述するヘッド制御モジュール71に断線検出を示す信号を出力する。
【0038】
図6はACK信号およびNACK信号の構成を示す図である。ACK信号は、同図(a)に示すように、先頭にラインデータを正常に受信したことを示すヘッダーが付されるとともに、それに続いてラインデータを送信してきた画像処理コントローラーの識別子が付されている。例えば上記のように識別子が0001hである画像処理コントローラー62Aの通信モジュール622からヘッドコントローラーHCの通信モジュール72Aにラインデータが正常に送信されると、「5050h」「0001h」のACK信号が通信モジュール72Aから画像処理コントローラー62Aの通信モジュール622に送信される。
【0039】
一方、NACK信号は、同図(b)に示すように、先頭にラインデータを不正に受信したことを示すヘッダーが付されるとともに、それに続いてライン受信不正が発生した画像処理コントローラーの識別子が付されている。例えば上記のように識別子が0001hである画像処理コントローラー62Aの通信モジュール622からヘッドコントローラーHCの通信モジュール72Aにラインデータが不正に送信されると、「A0A0h」「0001h」のNACK信号が送信される。また、例えば同NACK信号を通信モジュール72Bから画像処理コントローラー62Bの通信モジュール622に送信すると、画像処理コントローラー62B側において画像処理コントローラー62AとヘッドコントローラーHCとの間でラインデータの通信が不可となったことを認識することができる。また、これに応じて画像処理コントローラー62Bはその旨をメインコントローラーMCに通知する。この点に関しては、画像処理コントローラー62A〜62Dに共通する機能である。
【0040】
ヘッドコントローラーHCは、通信モジュール72A、72B以外にさらに2個の通信モジュール72C、72Dを有しており、通信モジュール72A〜72Dはそれぞれ画像処理コントローラー62A〜62Dの通信モジュール622と双方向通信可能となっている。また、ヘッドコントローラーHCには、ヘッド制御モジュール71が設けられており、上記のように通信モジュール72A〜72Dを介して画像処理コントローラー62A〜62Dからラインデータ単位で送信されてくるビデオデータVDをページメモリー73に記憶する。また、ヘッド制御モジュール71は、エンジンコントローラーECからの制御信号に応じてページメモリー73からビデオデータVDを読み出してエンジン部EGに搭載されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色に対応した露光ヘッド23にビデオデータVDを転送する。こうして、ヘッド制御モジュール71は露光ヘッド23を制御して画像データに対応する潜像を各感光体ドラム21に形成する。なお、断線検出を示す信号が通信モジュール72A〜72Dからヘッド制御モジュール71に出力されると、それに応じてヘッド制御モジュール71は通信モジュール72A〜72Dを制御してNACK信号を出力させる。この点に関しては後で具体例を例示しながら説明する。
【0041】
次に、上記のように構成された画像形成装置1の動作について説明する。この画像形成装置1では、メインコントローラーMCに画像形成指令が与えられると、メインコントローラーMCは、エンジンコントローラーECにエンジン部EGを起動させるための制御信号を送信する。また、メインコントローラーMCは、画像形成指令に含まれるページデータを複数個のバンドデータ(本実施形態では、バンドNo.0〜バンドNo.50の51個)に分割するとともに、各バンドデータを各画像処理コントローラー62A〜62Dに振り分けて割り当てる。そして、バンドデータを受け取った画像処理コントローラー62A〜62Dは当該バンドデータに対して色変換処理やスクリーン処理などの画像処理を施してビデオデータVDを作成し、メモリー6212に記憶する。また、受信したバンドデータに対応するバンドNo.をバンド識別子記憶部6213aに記憶するとともに、ラインカウンタ6213bのカウンタ値をリセットする。
【0042】
一方、制御信号を受けたエンジンコントローラーECは、エンジン部EG各部の初期化およびウォームアップを開始する。これらが完了して画像形成動作を実行可能な状態になると、エンジンコントローラーECは、各露光ヘッド23を制御するヘッドコントローラーHCに対し、画像形成動作の開始信号を出力する。また、エンジンコントローラーECとヘッドコントローラーHCとの間では、この他に露光ヘッド23を制御するために種々の制御パラメータの送受信が行われる。
【0043】
ヘッドコントローラーHCの通信モジュール72A〜72Dは、画像処理コントローラー62A〜62Dの通信モジュール622に向けてリクエスト信号を送信する。一方、画像処理コントローラー62A〜62Dの通信モジュール622はリクエスト信号に応じてメモリー6212からラインデータ単位でビデオデータVDを読み出し、それぞれ対応する通信モジュール72A〜72Dに送信する。こうして送信された1ライン分のビデオデータVDは、通信モジュール72A〜72Dにより受信され、ページメモリー73に格納される。そして、ビデオデータVDの準備がヘッドコントローラーHC上のページメモリー73に整い、露光ヘッド23に出力できるようになると、ヘッド制御モジュール71は、エンジンコントローラーECからの要求に応じて、ビデオデータVDを順次露光ヘッド23に送信する。
【0044】
また、メインコントローラーMCは、図4に示す管理情報ならびに画像形成指令に含まれる画像のページ幅(つまりラインデータの長さ)、ページ高さ(つまり1ページ分のライン数)などを、エンジンコントローラーECを介してヘッドコントローラーHCに通知する。そして、ヘッドコントローラーHCは、ページ高さ、バンド高さと受信したラインデータのライン数とに基づき、1ページの受信完了またはバンドデータの受信完了を判断する。
【0045】
ところで、上記のようにして画像処理コントローラー62A〜62DからビデオデータVDをデータ転送している途中で画像処理コントローラー62A〜62DとヘッドコントローラーHCとの間で継続的な通信路の消失が発生することがある。例えば画像形成装置1では感光体ドラム21、帯電器22などのような高電圧部品を始め様々な電気機器が高密度に実装されているため、装置内部は電気的なノイズが発生しやすい環境となっている。このため、外因性ノイズにより通信が良好に行われず、事実上断線状態となる場合がある。また、通信モジュール622と通信モジュール72A〜72Dとを電気的に接続する接続ケーブルが物理的に外れてしまう、あるいはケーブル自体の損傷や劣化により、物理的な断線が発生することがある。このような場合、ヘッドコントローラーHCにビデオデータVDを転送することができず、ヘッドコントローラーHCのページメモリー73上に正しくビデオデータVDを格納することができなくなる。
【0046】
そこで、本実施形態では、画像処理コントローラー62A〜62Dのうち一つの画像処理コントローラーでビデオデータVDがヘッドコントローラーHCに正常に転送されないときには当該画像処理コントローラーのメモリー6212に記憶されるビデオデータを別の画像処理コントローラーのメモリー6212に転送する。そして、当該画像処理コントローラーの通信モジュール622でビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに送信する。例えば図7に示すように、バンドNo.3のバンドデータを画像処理コンロトーラーNo.1(つまり画像処理コントローラー62B)でラインNo.300〜399のビデオデータVDを転送している途中で通信路の断線が検出されると、次のように通信路を切り替えてデータ転送を完了させている。以下、図7を参照しつつ具体例にしたがって画像処理動作について説明する。
【0047】
図7は図1に示す画像形成装置における画像処理動作の一例を示すシーケンス図である。同図中の「コントローラーNo.1」、「コントローラーNo.2」はそれぞれ画像処理コントローラー62B、62Cを示している。バンドNo.3のバンドデータの割り当て先は図4に示すようにコントローラーNo.1(画像処理コントローラー62B)であり、画像処理コントローラー62Bで画像処理および画像データの送信が行われる。すなわち、バンドNo.3のバンドデータは画像処理コントローラー62Bの処理部6211に与えられ、またバンドNo.がバンド識別子記憶部6213aに記憶さるとともに、ラインカウンタ6213bのカウンタ値がリセットされる。そして、処理部6211により色変換処理やスクリーン処理などの画像処理がバンドデータに対して実行され、これにより得られる100個のラインデータがメモリー6212に記憶される。これに続いて、通信モジュール622がメモリー6212からバンドNo.3の先頭ラインデータ、つまり先頭ラインNo.が300のラインデータをヘッドコントローラーHCの通信モジュール72Bに送信する。なお、以下の説明および図7(後で説明する図8、図9)では、ラインNo.がN番であるラインデータを、「ラインデータ」+「N」で示している。
【0048】
一方、通信モジュール72Bはラインデータ300を正常に受信すると、ヘッド制御モジュール71からの制御指令に基づきACK信号を画像処理コントローラー62Bの通信モジュール622に送信する。このACK信号は前述したように通信モジュール72Bにラインデータが正常に送信されたことを示す信号である。そして、これを受けて画像処理コントローラー62Bの通信モジュール622は次のラインデータ301をメモリー6212から読み出し、ヘッドコントローラーHCの通信モジュール72Bに送信する。このように、メモリー6212に記憶されるラインデータのライン単位での送信が正常に行われたことを示すACK信号を受信する毎に、画像処理コントローラー62Bのラインカウンタ6213bがカウンタ値を「1」だけインクリメントしてカウントアップするとともに、メモリー6212に記憶される次のラインデータが送信される。
【0049】
このようにしてライン単位でのラインデータの送信を繰り返すが、例えば図7に示すようにラインデータ(k+1)の転送中に、画像処理コントローラー62Bの通信モジュール622と通信モジュール72Bとをつなぐ通信路に断線が発生すると、その旨を示す信号が通信モジュール72Bからヘッド制御モジュール71に出力される。すると、ヘッド制御モジュール71が通信モジュール72Bとは別の通信モジュール、図7の具体例では通信モジュール72Cから、コントローラーNo.1(画像処理コントローラー62B、識別子0002h)とヘッドコントローラーHCとの通信路で断線が発生したことを示すNACK信号(「A0A0h」「0002h」)がコントローラーNo.2(画像処理コントローラー62C)に送信されて上記通信路断線が通知される。さらに、これを受けたコントローラーNo.2が上記通信路断線をメインコントローラーMCに通知する。これによって、コントローラーNo.1とヘッドコントローラーHCとの通信路で断線が発生したとしても、別の通信路で上記通信路断線発生を通知することができる。
【0050】
そして、上記通信路断線発生通知を受けて、メインコントローラーMCはメモリー6212に記憶されている未送信のラインデータ、バンド識別子記憶部6213aからバンドNo.およびラインカウンタ6213bからカウンタ値を読み出し、コントローラーNo.2に対して割り込み指令を与えるとともに、未送信のラインデータ、バンドNo.およびカウンタ値をそれぞれコントローラーNo.2、つまり画像処理コントローラー62Cのメモリー6212、バンド識別子記憶部6213aおよびラインカウンタ6213bに書き込む。
【0051】
そして、コントローラーNo.2では、メインコントローラーMCからの割り込み指令に応じてラインデータ(k+1)〜ラインデータ399のデータ転送を実行する。つまり、コントローラーNo.2の通信モジュール622がメモリー6212からバンドNo.3のラインデータ(k+1)をヘッドコントローラーHCの通信モジュール72Cに送信する。そして、正常に受信されて通信モジュール72CからACK信号が画像処理コントローラー62Cの通信モジュール622に送信されると、これを受けて画像処理コントローラー62Cの通信モジュール622は次のラインデータ(k+2)をメモリー6212から読み出し、ヘッドコントローラーHCの通信モジュール72Bに送信する。このように、メモリー6212に記憶されるラインデータのライン単位での送信が正常に行われたことを示すACK信号を受信する毎に、未送信分のラインデータ(k+1)〜ラインデータ399をライン単位で送信する。こうして、未送信分のラインデータの送信が全部完了すると、割り込み処理を完了して元の処理状態に戻る。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、最大4個まで画像処理コントローラー62A〜62Dが装着可能となっており、画像形成装置1に対して要求する処理性能に応じて画像処理コントローラー62A〜62Dの個数を変更することで、スケーラブルな画像形成装置1を実現することが可能となっている。また、複数の画像処理コントローラーを設けることでビデオデータVDを通信する通信路が複数個設けられ、一部の通信路が断線して通信不能となったとしても、他の通信路を用いて通信可能となっている。例えば上記した具体例では、コントローラーNo.1とヘッドコントローラーHCとの通信路によるデータ転送が不可となるのに対応し、コントローラーNo.2とヘッドコントローラーHCとの通信路により未転送のビデオデータVD(ラインデータ(k+1)〜ラインデータ399)が転送される。このように通信路断線の発生に応じて通信路を切り替えてビデオデータVDの転送を継続して良好に行うことができる。
【0053】
また、上記のようにバンドNo.3のデータ転送中に通信路断線が発生した場合、当該バンドNo.3を別の画像処理コントローラーに割り当ててデータ転送を行うことも考えられるが、この場合、処理部6211による画像処理を再度実行する必要がある。これに対し、上記実施形態では、画像処理して得られるラインデータのうち未送信のラインデータ(k+1)〜ラインデータ399のみをそのまま別の画像処理コントローラー62Cでデータ転送しているため、より効率的なデータ転送を行うことができる。
【0054】
また、メモリー6212に記憶されるラインデータのライン単位での送信が正常に行われたことを示すACK信号を受信する毎に、次のラインデータを送信しているので、ラインデータをライン単位で良好に転送することができる。また、ACK信号を受信する毎に進捗管理部6213のラインカウンタ6213bがカウントアップしているので、バンド識別子記憶部6213aからバンドNo.およびラインカウンタ6213bからカウンタ値を読み出すことでビデオデータVDのデータ転送の進捗状況を正確に把握し、管理することができる。
【0055】
このように本実施形態では、感光体ドラム21が本発明の「潜像担持体」に相当する。また、ヘッドコントローラーHCが本発明の「露光ヘッド制御部」として機能し、ヘッド制御モジュールが本発明の「通信管理部」として機能し、メインコントローラーMCが本発明の「制御部」として機能している。また、通信モジュール622が本発明の「通信部」として機能している。また、ACK信号が本発明の「第1の信号」に相当し、NACK信号が本発明の「第2の信号」に相当している。さらに、ビデオデータVDが本発明の「処理画像データ」に相当する。
【0056】
ところで、上記実施形態では、通信モジュール72A〜72Dから出力される断線検出信号(図示省略)に基づきヘッド制御モジュール71は各通信路での断線発生を判断しているが、データ転送が所定時間を経過しても実行されないことをトリガーとして各通信路での断線発生を判断してもよい。例えば図8および図9に示すように、通信モジュール72A〜72DからNACK信号を出力してからの経過時間に基づき各通信路の断線発生を判断してもよい。以下、図8および図9を参照しつつ具体的な画像処理について説明する。
【0057】
図8および図9は本発明にかかる画像形成装置の他の実施形態を示すシーケンス図であり、図8は継続的な通信断が発生した場合の動作を示し、図9は瞬間的な通信断が発生した場合の動作を示している。バンドNo.3のバンドデータがコントローラーNo.1(画像処理コントローラー62B)に割り当てられると、先の実施形態と同様に、処理部6211により色変換処理やスクリーン処理などの画像処理がバンドデータに対して実行され、それによって得られる100個のラインデータがメモリー6212に記憶される。これに続いて、画像処理コントローラー62Bの通信モジュール622と通信モジュール72Bとをつなぐ通信路を介してラインデータ単位でメモリー6212から読み出されてビデオデータVDが転送される。このライン単位のデータ転送は、ACK信号が出力されている間、継続して行われるが、例えば図8に示すようにラインデータ(k+1)の転送中に、画像処理コントローラー62Bの通信モジュール622と通信モジュール72Bとをつなぐ通信路に断線が発生すると、ラインデータ(k+1)が正常に通信モジュール72Bに転送されないため、その旨を示すNACK信号(ライン受信不正通知)が通信モジュール72Bから画像処理コントローラー62Bに向けて送信される。
【0058】
ここで、画像処理コントローラー62Bの通信モジュール622と通信モジュール72Bとをつなぐ通信路が例えばケーブル自体の損傷や劣化により継続的に断線されていると、NACK信号が通信モジュール622に転送されない。この場合、当然ながら画像処理コントローラー62BからもビデオデータVDなどを転送することができない。そこで、本実施形態では、ヘッドコントローラーHCではNACK信号を送信してから所定の規定時間が経過しても画像処理コントローラー62BからビデオデータVDが正常に送信されないときには、上記通信路が継続的に断線していると判断する。この判断に基づきヘッド制御モジュール71が通信モジュール72Bとは別の通信モジュール、図8の具体例では通信モジュール72Cから、コントローラーNo.1(画像処理コントローラー62B、識別子0002h)とヘッドコントローラーHCとの通信路で断線が発生したことを示すNACK信号(「A0A0h」「0002h」)がコントローラーNo.2(画像処理コントローラー62C)に送信されて上記通信路断線が通知される。さらに、これを受けたコントローラーNo.2が上記通信路断線をメインコントローラーMCに通知する。これによって、コントローラーNo.1とヘッドコントローラーHCとの通信路で断線が発生したとしても、別の通信路で上記通信路断線発生を通知することができる。そして、上記通信路断線発生通知を受けて、先の実施形態と同様にして、未送信分のラインデータを別の通信路を用いてヘッドコントローラーHCにデータ転送する。
【0059】
また、ラインデータ(k+1)の転送時の断線が瞬間的なものである場合には、例えば図9に示すように、ラインデータ(k+1)が正常に通信モジュール72Bに転送されないことを示すNACK信号(ライン受信不正通知)は通信モジュール72Bから画像処理コントローラー62Bに転送される。この実施形態では、画像処理コントローラー62Bの通信モジュール622がNACK信号を受信すると、ラインデータ(k+1)を再転送する。そして、規定時間内にラインデータ(k+1)が正常に通信モジュール72Bに再転送されたことを確認すると、ヘッドコントローラーHCは上記通信断が瞬間的なものである判断し、画像処理コントローラー62Bのメモリー6212に残ったラインデータ(k+2)〜ラインデータ399をコントローラーNo.1とヘッドコントローラーHCとの通信路をそのまま用いて継続してデータ転送を行っている。
【0060】
以上のように、図8および図9に示す実施形態によれば、先の実施形態と同様に、コントローラーNo.1とヘッドコントローラーHCとの通信路が継続的な通信断となり、当該通信路によるデータ転送が不可となるのに対応し、コントローラーNo.2とヘッドコントローラーHCとの通信路により未転送のビデオデータVD(ラインデータ(k+1)〜ラインデータ399)が転送される。このように通信路断線の発生に応じて通信路を切り替えてビデオデータVDの転送を継続して行うことができる。また、ラインデータの再送信から所定の規定時間が経過する前にラインデータの再送信が正常に行われるときには、コントローラーNo.1とヘッドコントローラーHCとの通信路をそのまま継続してデータ転送を行うことができるため、別の画像処理コントローラーに対して割り込み処理をかける必要がなく、装置全体の処理速度が低下するのを防止することができる。
【0061】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、画像形成装置1に装着部を設け、画像処理コントローラー62A〜62Dを装着しているが、装着部を他の装置に設けてもよい。例えば図10に示すようにRIP(Raster Image Processing)サーバー100に装着部を設けて画像処理コントローラー62A〜62Dを装着可能とし、RIPサーバー100から与えられるビデオデータVDに基づき、プリンター101により画像を形成するように構成してもよい。
【0062】
図10は本発明にかかる画像形成装置の別の実施形態を示す図である。なお、上記実施形態と同一構成には同一符号を付している。この画像形成装置1Aは、データ処理を行うコントローラーを不搭載のプリンター101と、RIPサーバー100とを有している。このプリンター101は、メインコントローラーMCおよび画像処理コントローラー62A〜62Dに相当する機能に相当する機能を省略した点を除き、基本的に上記実施形態の画像形成装置1と同一である。一方、RIPサーバー100は、上記実施形態のメインコントローラーMCおよび画像処理コントローラー62A〜62Dに相当する機能を備える。すなわち、RIPサーバー100は画像処理コントローラー62A〜62Dを最大4個まで装着可能になっている。このような実施形態でも、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
また、上記実施形態では、ACK信号を受信する毎に進捗管理部6213のラインカウンタ6213bがカウントアップしてビデオデータVDのデータ転送の進捗状況を把握しているが、バンドデータの割り付けと同時にバンド高さを記憶し、その後でACK信号を受信する毎にカウントダウンしてデータ転送の進捗状況を把握するように構成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、4個の画像処理コントローラーを設けた画像形成装置に対して本発明を適用しているが、画像処理コントローラーの個数はこれに限定されるものではなく、複数個有する画像形成装置全般に適用可能である。また、本発明の適用対象は4色のトナー像を重ねてカラー画像を形成する画像形成装置に限定されるものでなく、電子写真方式の画像形成装置全般に対して本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1、1A…画像形成装置、 21…感光体ドラム(潜像担持体)、 23…露光ヘッド、 62A〜62D…画像処理コントローラー、 71…ヘッド制御モジュール(通信管理部)、 72A〜72D…通信モジュール、 621…画像処理部、 622…通信モジュール(通信部)、 6211…処理部、 6212…メモリー(記憶部)、 6213…進捗管理部、 6213a…バンド識別子記憶部、 6213b…ラインカウンタ、 HC…ヘッドコントローラー(露光ヘッド制御部)、 MC…メインコントローラー(制御部)、 VD…ビデオデータ(処理画像データ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを画像処理する第1の処理部、および前記第1の処理部で画像処理された処理画像データを記憶する第1の記憶部を有する第1の画像処理部と、
画像データを画像処理する第2の処理部、および前記第2の処理部で画像処理された処理画像データを記憶する第2の記憶部を有する第2の画像処理部と、
前記第1の記憶部に記憶される処理画像データを送信する第1の通信部と、
前記第2の記憶部に記憶される処理画像データを送信する第2の通信部と、
前記第1の通信部で前記第1の記憶部に記憶される処理画像データが送信されないときに前記第1の記憶部に記憶される処理画像データを前記第2の記憶部に転送して前記第2の通信部で送信させる制御部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の画像処理部は、前記第1の処理部で画像処理された処理画像データをラインデータとして前記第1の記憶部に記憶させ、
前記第1の通信部は、前記第1の記憶部に記憶されたラインデータを送信する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の通信部で送信されたラインデータが受信したときに、送信されたことを示す第1の信号を出力する通信管理部を有し、
前記第1の通信部は、前記第1の信号を受信した後に、前記第1の記憶部に記憶される次のラインデータを送信する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の画像処理部は、前記第1の信号を前記第1の通信部が受信した時に、前記第1の信号をカウントして前記第1の記憶部に記憶されたラインデータを管理する進捗管理部を有する請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記進捗管理部は前記第1の画像処理部で画像処理される画像データを識別させる識別子を記憶する識別子記憶部を有する請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記通信管理部は、前記第1の通信部で送信されたラインデータが受信されない時、前記第1の信号と異なる第2の信号を出力し、
前記第1の通信部は、前記第2の信号を受信すると、前記第1の通信部で送信されたラインデータを再送信し、
前記制御部は、前記第1の通信部で送信されたラインデータの再送信から所定時間が経過しても再送信が行われなかったとき、前記第1の通信部で送信されないと判断する請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項7】
潜像が形成される潜像担持体と、
前記潜像担持体を露光して前記潜像を形成する露光ヘッドと、
前記露光ヘッドを制御する露光ヘッド制御部と、
画像データを画像処理する第1の処理部、および前記第1の処理部で画像処理された処理画像データを記憶する第1の記憶部を有する第1の画像処理部と、
画像データを画像処理する第2の処理部、および前記第2の処理部で画像処理された処理画像データを記憶する第2の記憶部を有する第2の画像処理部と、
前記第1の記憶部に記憶される処理画像データを前記露光ヘッド制御部に送信する第1の通信部と、
前記第2の記憶部に記憶される処理画像データを前記露光ヘッド制御部に送信する第2の通信部と、
前記第1の通信部で処理画像データが送信されないときに前記第1の記憶部に記憶される処理画像データを前記第2の記憶部に転送して前記第2の通信部で前記露光ヘッド制御部へ送信させる制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−168014(P2011−168014A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36160(P2010−36160)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】