説明

画像処理装置及び画像処理プログラム

【課題】複数枚の画像を撮像して合成画像を得る場合において、複数枚の画像に位置ずれが存在する場合であっても、ダイナミックレンジを拡大させ画質を向上させることを目的とする。
【解決手段】露光量の異なる複数枚の映像信号を取得し、映像信号のそれぞれから低周波数成分を抽出して複数の低周波映像信号を生成し、この複数の低周波映像信号を合成して合成低周波映像信号を生成する。また、複数の映像信号から第一の映像信号を抽出し、抽出された第一の映像信号から高周波数成分を抽出して高周波映像信号を生成する。そして、合成低周波映像信号と高周波映像信号とを合成することにより合成映像信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号のダイナミックレンジを拡大する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子カメラに用いられるCCDイメージセンサやCMOS型イメージセンサ等種々の固体撮像素子のダイナミックレンジは、被写体の持つダイナミックレンジに比べて狭く、高輝度部においては白飛びが発生したり、低輝度部においては黒つぶれが発生したりすることがあった。このため、露光量の異なる複数枚の映像信号を1枚の映像信号に合成することで、ダイナミックレンジを拡大させた画像を生成する手法が提案されている。しかしながら、複数枚の画像を撮影して合成画像を得る場合には、撮影時にカメラぶれや被写体ぶれ等が原因で合成時の映像信号に二重像等のアーティファクトが起きるという問題があった。
特開平7−75026号公報(特許文献1)には、2枚の画像の第1の明度値および第2の明度値に対する重みを何れか一方を基準にして定めることにより、カメラの特性変化、照明強度の変動及び撮像素子上の位置ずれがある場合でも適切な広ダイナミックレンジ画像を生成させる手法が開示されている。また、特開平5−7336号公報(特許文献2)では複数枚の撮像時の経時的な位置ずれに対応して、複数の画像に対して座標変換を行った後に合成を行う手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−75026号公報
【特許文献2】特開平5−7336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1及び特許文献2のいずれの手法においても複数枚の映像信号間の複雑な位置ずれ、例えば、三次元的な動きに起因した位置ずれ等に関しては完全に位置あわせを行うことは困難である。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、複数枚の画像を撮像して合成画像を得る場合において、例えば、複数枚の画像に三次元的な動きに起因した位置ずれが存在する場合であっても、ダイナミックレンジを拡大させ画質を向上させることが可能な画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、露光量の異なる複数の映像信号を合成することでダイナミックレンジを拡大する画像処理装置であって、前記複数の映像信号のそれぞれから低周波数成分を抽出して複数の低周波映像信号を生成する低周波映像信号生成手段と、前記複数の低周波映像信号を合成し、合成低周波映像信号を生成する合成低周波信号生成手段と、前記複数の映像信号から第一の映像信号を抽出する抽出手段と、前記第一の映像信号から高周波数成分を抽出して高周波映像信号を生成する高周波映像信号生成手段と、前記合成低周波映像信号と前記高周波映像信号とを合成することにより合成映像信号を生成する画像合成手段と、を備えたことを特徴とする画像処理装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、露光量の異なる複数の映像信号を合成することでダイナミックレンジを拡大する画像処理プログラムであって、前記複数の映像信号のそれぞれから低周波数成分を抽出して複数の低周波映像信号を生成するステップと、前記複数の低周波映像信号を合成し、合成低周波映像信号を生成するステップと、前記複数の映像信号から第一の映像信号を抽出するステップと、前記第一の映像信号から高周波数成分を抽出して高周波映像信号を生成するステップと、前記合成低周波映像信号と前記高周波映像信号とを合成することにより合成映像信号を生成するステップと、をコンピュータに実行させる画像処理プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
このように、映像信号のうち位置ずれが目立ちにくい低周波数成分については複数枚の画像について画像合成処理の対象とする一方で、位置ずれの目立ちやすい高周波数成分については任意の一枚のみを画像合成処理の対象とすることで、ブレのある複数枚の映像信号に対しても二重線等のアーティファクトがないダイナミックレンジの広い合成信号を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる画像処理装置の変換部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかる画像処理装置の抽出部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかる画像処理装置の抽出部において生成されるヒストグラムの例を示す図であり、(a)、(b)、(c)は夫々一枚の映像信号に対するヒストグラムであって、(a)は映像信号が適正に露光されている場合の例を示し、(b)及び(c)は、映像信号に黒つぶれや白飛びが発生している場合の例を示す。
【図5】本発明の第1の実施形態にかかる画像処理装置の低周波数成分生成部の概略構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施形態にかかる画像処理装置における重み付け係数に関する説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態にかかる画像処理装置の画像合成部の概略構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施形態にかかる画像処理装置における画像合成処理の過程を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかる画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施形態にかかる画像処理装置の抽出部の概略構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施形態にかかる画像処理装置の高周波数成分生成部の概略構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第2の実施形態にかかる画像処理装置の低周波数成分生成部の概略構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第2の実施形態にかかる画像処理装置における画像合成処理の過程を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第3の実施形態にかかる画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の第3の実施形態にかかる画像処理装置の特徴量算出部の概略構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の第3の実施形態にかかる画像処理装置の特徴量算出に際して、重み付けを考慮する際の参考図である。
【図17】本発明の第3の実施形態にかかる画像処理装置の特徴量算出部の他の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る画像処理装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置の概略構成を示したブロック図である。
【0012】
本実施形態にかかる画像処理装置は、図1に示すように、レンズ系100、絞り101、AFモータ102、カラーフィルタ103、CCD104、A/D変換部105、バッファ106、撮影制御部107、画像処理部120、圧縮部115、出力部116、制御部117、外部I/F部118を備えている。
【0013】
レンズ100系は絞り101を介して被写体の像を結像し、カラーフィルタ103を介して撮像素子であるCCD104上に像を結像するように配置されている。AFモータ102は、後述する撮影制御部107によって駆動制御され、撮影制御部107からの制御信号に基づいて、被写体に対してレンズ系100を合焦させるように駆動される。CCD104は、レンズ系100により結像された被写体の像に基づいて電気的な画像情報を生成し、この電気的な画像情報をA/D変換部105に出力する。なお、本実施形態においては、CCD104はRGB原色系の単板CCDを用いるものとして説明する。A/D変換部105では、CCD104で生成された画像情報を画像処理部120において所定の処理が可能な離散化されたデジタルデータとしての映像信号に変換し、変換された映像信号を一旦バッファ106に記憶し、バッファ106から画像処理部120へ出力する。以上の処理を繰り返すことにより複数枚の映像信号が取得される。圧縮部115は、後述する画像処理部120で所定の処理がなされた映像信号を圧縮し、出力部116へ出力する。
【0014】
撮影制御部107は、映像信号のAFエリア内のコントラスト情報を検出し、コントラストが最大となるように、もしくは、プリ撮影時に映像信号を取得せずに、例えば、図示しない外部赤外線センサを用いて主要被写体との距離を測定し、この距離に応じてAFモータ102を駆動制御する。また、撮影制御部107は、映像信号中の輝度レベルや図示しない輝度センサを用いて入射光量の調整のため絞り101およびCCD104の電子シャッター速度などを制御する。撮影制御部107による制御は本撮影における撮影回数と同じ回数だけ行われる。すなわち、上記した処理が複数回行われ、撮影された複数枚分の画像の映像信号がバッファ106に一旦記憶され、バッファ106から映像信号が一枚分ずつ順次画像処理部120へ出力される。
【0015】
制御部117は、撮影制御部117、後述する画像処理部120の信号処理部108、変換部109、抽出部110、低周波数成分生成部111、高周波数成分生成部112、画像合成部113、階調変換部114および圧縮部115と双方向に接続され、夫々を駆動制御する。外部I/F部118は、電源スイッチ、シャッターボタン、撮影時の各種モードの切り替えを行うためのインターフェースを備えている。
【0016】
画像処理部120は、信号処理部108、周波数信号生成手段としての変換部109、抽出手段としての抽出部110、低周波映像信号生成手段及び合成低周波信号生成手段としての低周波数成分生成部111、高周波映像信号生成手段としての高周波数成分生成部112、画像合成手段としての画像合成部113、及び階調変換部114を備えている。
【0017】
信号処理部108は、制御部117の制御に基づきバッファ106から入力された単板状態の映像信号を読み込み、補間処理、ホワイトバランスの調整処理、電子ズーム処理、ノイズ抑制処理等の所定の画像処理を行い、各画素RGBの三板状態の映像信号を生成し、変換部109へ出力する。さらに、以下の数1式を用いてRGB信号をYCbCr信号に変換してもよい。
【0018】
【数1】

【0019】
変換部109は、入力された映像信号を周波数変換することにより周波数成分に対応する周波数信号を生成するものであり、図2bに示すように、バッファ200,217、ROM201、係数読み込み部202、水平ハイパスフィルタ203、水平ローパスフィルタ204、ダウンサンプル部205,206,211,212,213,214、垂直ハイパスフィルタ207,209、垂直ローパスフィルタ208,210、転送部215,216を備えている。映像信号から周波数信号への変換は、フーリエ変換における処理や多重解像度変換等を用いることが出来るが、本実施形態では、多重解像度変換を用いた例を説明する。
【0020】
バッファ200は、信号処理部108から転送された映像信号を一旦記憶するものであり、記憶された映像信号を一枚分ずつ水平ハイパスフィルタ部203及び水平ローパスフィルタ部204へ夫々転送する。係数読み込み部202は、制御部117の制御によりROM201にあるフィルタリング処理に用いるハイパスおよびローパス用の係数を読み込む。ハイパスフィルタリングおよびローパスフィルタリングに用いる係数は、例えば、ラプラシアンやガウシアンを用いることができる。また、ウェーブレット変換に用いられるドベシーやハールの係数を用いてもよい。ハイパスフィルタhおよびローパスフィルタlの係数は、例えばハールの場合、以下の数2式及び数3式となる。
【0021】
【数2】

【0022】
【数3】

【0023】
上記フィルタ係数は、映像信号の水平方向および垂直方向のフィルタリングの際に用いられる。水平ハイパスフィルタ部203は、係数読み込み部202から転送されたハイパスフィルタ係数hを用いて映像信号の水平方向にフィルタhを作用させる。フィルタリング処理後の映像信号は、ダウンサンプル部205へ転送される。水平ローパスフィルタ部204も、同様にローパスフィルタ係数lを用いて映像信号の水平方向にフィルタlを作用させる。フィルタリング処理後の映像信号はダウンサンプル部206へ転送される。ダウンサンプル部205およびダウンサンプル部206はそれぞれフィルタリング処理後の映像信号を水平方向に1/2ダウンサンプリングする。ダウンサンプル部205は垂直ハイパスフィルタ部207および垂直ローパスフィルタ部208へダウンサンプル後の映像信号を転送し、ダウンサンプル部206は垂直ハイパスフィルタ部209および垂直ローパスフィルタ部210へダウンサンプル後の映像信号を転送する。
【0024】
垂直ハイパスフィルタ部207係数読み込み部202から転送されたハイパスフィルタ係数hを用いて映像信号の垂直方向にフィルタhを作用させる。フィルタリング処理後の映像信号は、ダウンサンプル部211へ転送される。垂直ローパスフィルタ部208も、同様にローパスフィルタ係数lを用いて映像信号の垂直方向にフィルタlを作用させる。フィルタリング処理後の映像信号は、ダウンサンプル部212へ転送される。同様に、垂直ハイパスフィルタ部209および垂直ローパスフィルタ部210もそれぞれ垂直方向にフィルタhおよびlを作用させ、ダウンサンプル部213およびダウンサンプル部214へ転送する。
【0025】
ダウンサンプル部211、ダウンサンプル部212、ダウンサンプル部213およびダウンサンプル部214は、それぞれフィルタリング処理後の映像信号を垂直方向に1/2ダウンサンプリングする。ダウンサンプル後の映像信号は転送部216へ転送される。
【0026】
ダウンサンプル部214は、転送部215へも映像信号を転送する。転送部215は制御部117の制御によりダウンサンプル後の映像信号をバッファ200へ転送する。バッファ200の映像信号、すなわち水平および垂直のローパスのフィルタを作用させた映像信号は、再び水平および垂直のフィルタリング処理が行われる。ダウンサンプル部214の映像信号は再び転送部215へ転送され同じ処理が繰り返される。
【0027】
ダウンサンプル部214から転送部215を介してバッファ200に転送する処理の回数は制御部117の制御により転送部215が制御している。この転送回数は撮影者によって映像信号の撮影のたびに決められてもよいし、事前に回数を指定してもよい。
【0028】
転送部216に転送された映像信号はバッファ217に転送されそこで一端記憶される。転送部215の転送回数が1回以上の場合、バッファ200から転送部216までの処理が再び行われ、その信号はバッファ217に記憶される。転送部215による転送処理が終了した後、バッファ217に記憶された映像信号、すなわち水平および垂直のローパスのフィルタを多重解像度的に作用させた映像信号は抽出部110及び低周波数成分生成部111に転送される。
【0029】
抽出部110は、変換部109から映像信号の周波数成分にかかる周波数信号を受信し、これに基づいて、複数枚分の映像信号から合成画像を得るために最も適した1つの映像信号を選択し、抽出するものである。このため、抽出部110は、図3に示すように、バッファ400、逆変換部401、ヒストグラム算出部402、評価値算出部403、および選択部404を備えている。
【0030】
バッファ400は、変換部109から受信した複数枚分の周波数信号を記憶する。逆変換部401は、バッファ400内の周波数信号に対してフーリエ逆変換や多重解像度逆変換等を行い、実空間における映像信号に逆変換する。ヒストグラム算出部402は、逆変換部402で逆変換された映像信号を読み込み、これに基づいて、図4に示すようにヒストグラムの算出を行う。算出されたヒストグラムの情報は、評価値算出部403へ転送される。評価値算出部403は、ヒストグラムの情報を用いて評価値の算出を行う。
【0031】
図4(a)、(b)、(c)はそれぞれ1枚の映像信号に対するヒストグラムを表している。評価値としては例えば、数4式のようにヒストグラムの分散σを用いる。
【0032】
【数4】

【0033】
ここでYjはj番目の画素の輝度値を表し、Nは映像信号の総画素数、Y(−)は輝度値の平均値を表す。ここでは輝度値を用いているが、RGB信号の場合、G信号でもよい。映像信号に黒つぶれや白飛びが発生している場合、ヒストグラムは図4(b)および(c)のようにヒストグラムの分散値、すなわち評価値は小さくなる。一方、映像信号が適正に露光されている場合は、ヒストグラムは図4(a)のようになり、ヒストグラムの分散値、すなわち評価値は大きくなる。
なお、分散の他にヒストグラムのエントロピー値を評価値として用いてもよく、ヒストグラムのエントロピーEは数5式で表される。
【0034】
【数5】

【0035】
ここで、bitは映像信号のビット数、f(Y)は輝度値Yにおける頻度を表している。ただし、頻度f(Y)は頻度の合計が1になるように正規化されている。このエントロピーは、ヒストグラムが輝度方向に対して平坦、すなわち、頻度f(Y)が常に一定の時最も大きくなる。従って、図4のヒストグラムの場合、頻度f(Y)がある程度均等に分布している図4(a)のヒストグラムのエントロピー、すなわち評価値は最も高くなる。評価値はバッファ400から転送された複数枚分の映像信号すべてに対して算出され、算出された評価値は選択部404に転送される。選択部404は評価値算出部403から転送された最も高い評価値に対応する周波数成分の信号をバッファ400から抽出し高周波数成分生成部112に転送する。
【0036】
低周波数成分生成部111は、変換部109で得られた複数枚分の周波数信号のうち低周波数成分のみを抽出し、これらを逆変換して合成する。すなわち、数枚分の周波数信号から低周波数成分のみの周波数信号を抽出し、低周波数成分のみの周波数信号についてそれぞれ実空間の映像信号に変換して、低周波数成分のみを含む映像信号である低周波映像信号を生成し、変換された低周波映像信号について加算処理を行う。また、この際、複数の低周波映像信号のそれぞれに対する合成の割合を適宜定めることができる。このため、低周波数成分生成部11は、図5に示すように、バッファ300、低周波数成分生成部301、逆変換部302、重み付け係数算出部303及び加算部304を備えている。
【0037】
バッファ300は、変換部109から転送された複数枚の周波数信号を記憶し、これを低周波数成分生成部301に転送する。低周波数成分生成部301は、バッファ300から1枚ずつ周波数信号を読み込み、読み込まれた周波数信号から、低周波数成分の抽出を行う。周波数信号が、本実施形態の変換部109のように多重解像度変換により得られた場合には、水平ローパスフィルタ部204および垂直ローパスフィルタ部210を最終的に通過した信号を周波数信号の低周波数成分として抽出する。逆変換部302は、低周波数成分生成部301から転送された低周波数成分の周波数信号をフーリエ逆変換や多重解像度逆変換等を用いて低周波数成分のみを含む実空間の低周波映像信号に変換する。この処理をバッファ300に記憶されている信号の枚数分行う。
【0038】
重み付け係数算出部303は複数枚の画像の合成割合である重み付け係数αを算出する。図6は、重み付け係数の例を示すグラフである。図6のグラフは、映像信号が2枚ある場合の例であり、重み付け係数αは複数枚の低周波映像信号のうち、1枚目の低周波映像信号を入力信号I1として、この入力信号I1に対する関数として表され、低周波映像信号I2が低周波映像信号I1より露光量が少ない場合を示している。すなわち、低周波映像信号が飽和する可能性のある閾値Thより大きな信号値に対しては暗く撮像された低周波映像信号I2の重みを大きくし、閾値Th以下の信号値に対しては適正露光で撮像された低周波映像信号I1の重みを大きくする。このような重み係数を用いることによって、信号の飽和部を考慮した加算が可能となる。
【0039】
加算部304は、逆変換部302から転送された複数枚の低周波映像信号に対して、以下の数6式を用いて、重み付け係数算出部303で算出された重み付け係数に基づいて、同じ座標の信号値を合成し、合成低周波映像信号を生成し、この合成低周波映像信号を画像合成部113へ出力する。
【0040】
【数6】

【0041】
ここで、この数6式は、低周波映像信号が2枚の場合であり、I´は合成後の信号である合成低周波映像信号、I1、I2は逆変換部302から転送されたそれぞれ1枚目および2枚目の低周波映像信号を表し、(x,y)は低周波映像信号の座標を表す。I1、I2はRGB信号の各チャンネルの信号を表し、YCbCr信号でもよい。低周波映像信号が3枚以上である場合には、以下の数7式を用いて合成を行う。
【0042】
【数7】

ここで、Iは、i枚目の映像信号、βは重み付け係数を示す。
【0043】
なお、本実施形態においては、複数枚の画像に重み付けをして合成することとしたが、これに限られることはなく、複数枚の画像の合成割合を等しくし単純加算による合成とすることも出来る。
【0044】
高周波数成分生成部112は抽出部110から転送された1枚の周波数信号から高周波数成分のみを抽出し、抽出された高周波数成分のみの周波数信号に対して上述した逆変換処理を行い、高周波数成分のみを含む実空間の高周波映像信号に変換し、画像合成部113へ転送する。
【0045】
画像合成部113は、高周波数成分生成部112の高周波映像信号および低周波数成分生成部111にて合成された合成低周波映像信号に対して同じ座標の信号値を加算し、階調変換部114へ転送する。高周波映像信号はノイズが含まれている可能性があるため、ノイズ低減の後に加算処理を行うことが好ましい。このため、画像合成部113は、バッファ500,501、ノイズ低減部502および加算部503を備えている。バッファ500は、高周波数成分生成部112から転送された高周波映像信号を一旦記憶し、これをノイズ低減部502に転送する。ノイズ低減部502は、高周波映像信号に対して平滑化フィルタや、メディアンフィルタ等を用いてノイズを低減する。加算部503は、ノイズ低減後の高周波映像信号およびバッファ501から転送される合成された合成低周波映像信号との同じ座標における加算処理を行い合成映像信号を生成し、階調変換部114へ転送する。
【0046】
階調変換部114は、画像合成部113から転送された合成映像信号に対して、ガンマ変換やトーンカーブによる階調変換処理を行い、圧縮部115に転送する。
【0047】
以下、このように構成された本実施形態の画像処理装置における画像合成処理の過程について図8のフローチャートを用いて説明する。
【0048】
画像処理装置では、外部I/F部118を介してISO感度,露出などの撮影条件を設定した後,図示しないシャッターボタンを半押しにすることでプリ撮影モードに入る。そして、本撮影における撮影回数と同じ回数のプリ撮影が終了すると、外部I/F部118を介して図示しないシャッターボタンを全押しすることにより本撮影が行われる。本撮影は、撮影制御部107にて求められた合焦条件および露光条件に基づき行われ、これらの撮影時の情報は制御部117へ転送される。以下、説明の便宜上、本撮影における撮影回数を2回とし、この2回の撮影により入射光量が適正な映像信号S1と、映像信号S1に対して入射光量を半分とするなど、入射光量を異ならせた映像信号S2を得ることとして説明する。
【0049】
ステップS11では、CCD104からの映像信号をRawデータとして、ISO感度情報や映像信号サイズなどをヘッダー情報として読み込み次のステップS2に進む。ステップS12では、レンズ系100、絞り101、カラーフィルタ103、CCD104を介して撮影されたS1及びS2の映像信号が、A/D変換部105にてデジタルの映像信号へ変換されてバッファ106へ入力される。ステップS13では、信号処理部108により補間処理、ホワイトバランスの調整処理、Y/C信号生成処理、電子ズーム処理、ノイズ抑制処理等の信号処理を行い、ステップS14に進む。
【0050】
ステップS14では、変換部109により所定の信号処理がなされたS1及びS2の映像信号を多重解像度変換することでそれぞれ周波数成分の信号である周波数信号に変換し、ステップS15に進む。ステップS15では、抽出部110により、S1及びS2の2枚分の周波数信号に基づいてヒストグラムを生成するなどしていずれの映像信号が画像合成に最も適しているかの評価を行い、画像合成に最も適した1枚分の映像信号にかかる周波数信号を抽出し、この一枚の周波数信号を高周波数成分生成部112に出力する。
【0051】
ステップS17では、高周波数成分生成部112により、抽出部110から入力された映像信号S1の1枚分の周波数信号から高周波数成分の信号を抽出し、高周波数成分のみを含む実空間の映像信号に変換し、高周波数成分のみを含む高周波映像信号を生成する。そして、生成された高周波数成分のみを含むS1の高周波映像信号を画像合成部113へ出力する。
【0052】
ステップS16では、低周波数成分生成部111によりS1及びS2の周波数成分の信号から低周波数成分を抽出し、これらを夫々実空間の映像信号に変換して、低周波数成分のみを含む低周波映像信号を生成し、変換されたS1及びS2の低周波映像信号について夫々の重み付けを考慮して加算処理を行い、合成低周波映像信号を生成する。
【0053】
ステップS18では、画像合成部113によりS1の高周波映像信号および合成された合成低周波映像信号に対して加算処理、すなわち画像合成を行い合成映像信号を生成する。合成映像信号は階調変換部114へ出力され、ステップS19へ進む。ステップS19では、階調変換部114により、入力された合成映像信号に対して、所定の階調変換処理を行い、本ルーチンを終了する。なお、階調変換処理がなされた合成映像信号は圧縮部115へ出力され、圧縮部115において、JPEG圧縮等の圧縮処理を施し、出力部116へ出力される。
【0054】
このように、映像信号のうちブレが目立ちにくい低周波数成分については複数枚の画像について画像合成処理の対象とする一方で、ブレの目立ちやすい高周波数成分については任意の一枚のみを画像合成処理の対象とすることで、ブレのある複数枚の映像信号に対しても二重線等のアーティファクトがないダイナミックレンジの広い合成信号を生成することができる。
【0055】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態の画像処理装置では、その画像処理部130の構成が、上述した第1の実施形態の画像処理装置における画像処理部120の構成と異なっている。すなわち、画像処理部130では、第1の実施形態のように、映像信号を周波数信号に変換することなく、映像信号から低周波数成分に該当する低周波映像信号を抽出するとともに、映像信号から低周波映像信号との差分を算出することにより高周波映像信号を抽出することで、以降の画像合成処理を行う。以下、第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付すとともにその説明を省略し、異なる構成について主に説明する。
【0056】
図9に示すように、画像処理部130は、信号処理部108、低周波映像信号生成手段としての変換部609、抽出手段としての抽出部610、合成低周波信号生成手段としての低周波数成分生成部611、高周波映像信号生成手段としての高周波数成分生成部612、画像合成手段としての画像合成部113、及び階調変換部114を備えている。
【0057】
変換部609は、信号処理部108から転送された映像信号に対して平滑化フィルタ等を用いて低周波数成分のみを含む低周波映像信号を生成し、低周波映像信号は低周波数成分生成部611及び高周波数成分生成部612へ転送する。
【0058】
抽出部610は信号処理部108から転送される複数枚の映像信号から、画像合成に際して最も適した所定の1枚を抽出するものであり、図10に示すように、バッファ400、ヒストグラム算出部402、評価値算出部403及び選択部404を備えている。なお、第1の実施形態における抽出部110の構成とは逆変換部401がない点が異なる。バッファ400は信号処理部108から転送された複数枚の映像信号を記憶する。ヒストグラム算出部402及び評価値算出部403は第1の実施形態におけるヒストグラム算出部402及び評価値算出部403と同様に、バッファ400に記憶された映像信号に基づいてヒストグラムの算出を行い、算出されたヒストグラムの情報から評価値の算出を行う。選択部404は、評価値に基づいて、バッファ400から選択された映像信号を1枚抽出する。抽出された1枚の映像信号は高周波数成分生成部612へ転送される。
【0059】
高周波数成分生成部612は、抽出部610で抽出された1枚の映像信号から低周波映像信号を差し引くことで高周波映像信号を生成するものであり、図11に示すように、バッファ700,701、及び差分信号算出部702を備えている。バッファ700は変換部609から入力される複数枚の低周波の映像信号が記憶される。バッファ701は抽出部610により入力された1枚の映像信号が記憶される。差分信号算出部702は制御部117による制御に基づいてバッファ700から抽出部610により抽出された映像信号に相当する低周波映像信号を読み出し、バッファ701の1枚の映像信号から低周波映像信号を差し引くことで、すなわち、次の数7式で表されるような各座標(x,y)における差分処理を行うことで高周波映像信号を生成する。
【0060】
【数8】

【0061】
ここで、H(x,y)は差分処理後の高周波映像信号、S1は抽出部610により入力された1枚の映像信号、T1は抽出部610により抽出された映像信号に相当する低周波映像信号を示す。生成された高周波映像信号H(x,y)は画像合成部113に出力される。
【0062】
低周波数成分生成部611は、変換部609から転送された複数の低周波映像信号を合成して合成低周波映像信号を生成する。このため、図12に示すように、バッファ800、重み付け係数算出部801及び加算部802を備えている。第1の実施形態における低周波数成分生成部111とは低周波数成分抽出部301及び逆変換部302がない点が異なる。変換部609から入力された複数枚の低周波映像信号はバッファ800に記憶される。加算部802は、バッファ800から出力される低周波映像信号に対して第1の実施形態と同様に単純加算あるいは重み付け加算を行い、低周波映像信号を合成し、合成低周波映像信号を生成する。生成された合成低周波映像信号は画像合成部113へ出力される。
【0063】
画像合成部613では、周波数成分生成部612の高周波映像信号および低周波数成分生成部611にて合成された合成低周波映像信号に対して同じ座標の信号値を加算し、階調変換部114へ転送する。なお、高周波数成分の映像信号はノイズが含まれている可能性があるため、ノイズ低減の後に加算処理を行うことが好ましい。
【0064】
以下、このように構成された本実施形態の画像処理装置における画像合成処理の過程について、図13のフローチャートを用いて説明する。
【0065】
画像処理装置では、外部I/F部118を介してISO感度,露出などの撮影条件を設定した後,図示しないシャッターボタンを半押しにすることでプリ撮影モードに入る。そして、本撮影における撮影回数と同じ回数のプリ撮影が終了すると、外部I/F部118を介して図示しないシャッターボタンを全押しすることにより本撮影が行われる。本撮影は、撮影制御部107にて求められた合焦条件および露光条件に基づき行われ、これらの撮影時の情報は制御部117へ転送される。以下、説明の便宜上、本撮影における撮影回数を2回とし、この2回の撮影により入射光量が適正な映像信号S1と、映像信号S1に対して入射光量を半分とするなど、入射光量を異ならせた映像信号S2を得ていることとして説明する。
【0066】
ステップS21では、CCD104からの映像信号をRawデータとして、ISO感度情報や映像信号サイズなどをヘッダー情報として読み込み次のステップS22に進む。ステップS22では、レンズ系100、絞り101、カラーフィルタ103、CCD104を介して撮影されたS1及びS2の映像信号が、A/D変換部105にてデジタルの映像信号へ変換されてバッファ106へ入力される。ステップS23では、信号処理部108により補間処理、ホワイトバランスの調整処理、Y/C信号生成処理、電子ズーム処理、ノイズ抑制処理等の信号処理を行い、ステップS24に進む。
【0067】
S24では、変換部609にて映像信号から低周波の映像信号を生成し、生成した低周波の映像信号を高周波数成分生成部612へ出力してステップS25に進む。ステップS25では、抽出部610により、S1及びS2の2枚分の周波数信号に基づいてヒストグラムを生成するなどしていずれの映像信号が画像合成に最も適しているかの評価を行い、画像合成に最も適したS1の1枚分の映像信号にかかる周波数信号を抽出し、この一枚の周波数信号を高周波数成分生成部612に出力する。ステップS27では、高周波数成分生成部612により、1枚の映像信号とこの1枚の映像信号に相当する低周波映像信号とから差分処理を行うことにより高周波映像信号を生成する。
【0068】
ステップS26では、低周波数成分生成部611によりS1及びS2の低周波映像信号の加算処理を行い、合成低周波映像信号を生成する。ステップS28では、画像合成部113によりS1の高周波映像信号および合成された合成低周波映像信号との加算処理を行うことで合成映像信号を生成し、合成された合成映像信号を階調変換部114に出力する。ステップS29で、階調変換部114が、入力された合成映像信号に対して、所定の階調変換処理を行い、本ルーチンを終了する。なお、階調変換処理がなされた合成映像信号は圧縮部115へ出力され、圧縮部115において、JPEG圧縮等の圧縮処理を施し、出力部116へ出力される。
【0069】
このように、第1の実施形態と同様に、映像信号のうちブレが目立ちにくい低周波数成分のみについては複数枚の画像について合成処理の対象とする一方で、ブレの目立ちやすい高周波数成分について任意の一枚のみを合成処理の対象とすることで、ブレのある複数枚の映像信号に対しても二重線等のアーティファクトがないダイナミックレンジの広い合成信号を生成することができる。また、低周波信号の抽出を実空間で行うことにより高速な映像信号処理が可能となる。
【0070】
〔第3の実施形態〕
以下、本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態の画像処理装置では、その画像処理部140の構成が、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態の画像処理装置における画像処理部120,130の構成と異なっている。すなわち、画像処理部140は、特徴量算出部900を備えており、この特徴量算出部900が信号処理部108により所定の信号処理がなされた映像信号の特徴量、例えば、エッジ量や周波数成分などを算出する。そして、抽出部110で、特徴量算出部900により得られた特徴量に基づいて、複数枚分の映像信号から合成画像を得るために最も適した1つの映像信号を選択し、抽出してその後の処理を行う。
【0071】
また、本実施形態は、第2の実施形態と同様に、映像信号を周波数信号に変換することなく、映像信号から低周波数成分に該当する低周波映像信号を抽出するとともに、映像信号から低周波映像信号との差分を算出することにより高周波映像信号を抽出することで、以降の画像合成処理を行う例について説明する。以下、第1の実施形態及び第2の実施形態と共通する構成については同一の符号を付すとともにその説明を省略し、異なる構成について主に説明する。
【0072】
図14に示すように、画像処理部140は、信号処理部108、特徴量抽出手段としての特徴量算出部900、低周波映像信号生成手段としての変換部909、抽出手段としての抽出部910、合成低周波信号生成手段としての低周波数成分生成部611、高周波映像信号生成手段としての高周波数成分生成部612、画像合成手段としての画像合成部113、及び階調変換部114を備えている。
【0073】
変換部909 は信号処理部108から転送された映像信号に対してローパスフィルタ等の平滑化フィルタを用いた公知のフィルタリング処理を行い、低周波数成分のみを含む低周波映像信号を生成する。生成された低周波映像信号は低周波数成分生成部611及び高周波数成分生成部612へ転送される。
【0074】
特徴量算出部900は、特徴量として複数の映像信号の各々のエッジ量を算出するものであり、図15に示すように特徴量算出部900は、バッファ290、局所領域抽出部291、エッジ量算出部292、総エッジ量算出部293及び重み付け係数算出部294を備えている。
【0075】
バッファ290は、信号処理部108から転送された映像信号を一時的に保存し、局所領域抽出部291へ映像信号を出力する。局所領域抽出部291は、バッファ290から転送された映像信号に対して任意の注目画素を中心とした局所領域、例えば7×7画素領域を局所領域として抽出する。エッジ量算出部292では、局所領域抽出部291により抽出された局所領域の信号に対して、公知のSobelフィルタを用いたフィルタリング処理を行い任意の注目画素のエッジ量を算出する。エッジ量の算出は映像信号の全画素に対して行われる。総エッジ量算出部293は、エッジ量算出部292から転送される画素毎のエッジ量を用いて映像信号全体のエッジ量を算出する。エッジ量算出には数1式における輝度信号Y又はG信号を用いてもよい。映像信号全体のエッジ量は各画素のエッジ量を単純に加算してもよいし、以下の数9式のように、重み付け係数算出部294から転送される重み付け係数を用いて加算してもよい。
【0076】
【数9】

【0077】
ここで,Oはi枚目の映像信号のエッジ量を表し、E(x,y)はi枚目の映像信号の座標(x,y)におけるエッジ量、W(I,x,y)はi枚目の映像信号の画素値Iおよび座標(x,y)における重み付け係数を表している。重み付け係数は映像信号の被写体の位置や明るさによって変化し、例えば、撮影されたシーンが図16のような場合、明るい領域を重視する場合はAの領域の重みが大きくなり,暗い領域を重視する場合,BおよびCの領域の重みが大きくなる。また、被写体である人間を重視する場合、Bの領域の重みが大きくなる。明るい領域および暗い領域の判別は映像信号の画素値の情報を用いて判別し,人間を判別には公知の顔認識の技術を使い判別を行う。総エッジ量算出部293にて算出された映像信号のエッジ量は抽出部910に転送される。
【0078】
抽出部910は信号処理部108から転送される複数枚の映像信号から、画像合成に際して最も適した所定の1枚を抽出するものであり、特徴量算出部900から転送されたエッジ量の値が一番大きい映像信号を画像合成に最も適した映像信号として抽出し、抽出した映像信号を高周波数成分生成部112に転送する。
【0079】
図16の例では、明るい領域Aを重視する場合は領域Aのエッジ量が一番大きい映像信号が抽出され,暗い領域Bおよび領域Cを重視する場合は領域Bおよび領域Cのエッジ量が一番大きい映像信号が抽出される。これらの領域が白飛びや黒つぶれしているような場合はエッジ量が小さくなるため、これらの領域が適切な明るさで撮像されている映像信号が1枚抽出される。
【0080】
特徴量算出部は、図17に示すような構成とすることもできる。図17における特徴量算出部920は、特徴量として複数の映像信号の各々の周波数成分を算出するものであり、バッファ390、分割部391、周波数算出部392、総周波数算出部393及び重み付け係数算出部394を備えている。
【0081】
バッファ390には、信号処理部108から映像信号が転送される。分割部391は、バッファ390から転送された映像信号の輝度信号を、その明るさに応じて複数のグループに分割する。映像信号に含まれる各画素は、被写体の位置等に応じて輝度信号が異なり、何れの被写体又は領域を重視するかは映像信号によって異なる。このため、輝度信号を明るさに応じて複数のグループに分割することで、例えば、グループ毎に重み付けを行ったり、後の画像合成処理に使用しない領域と使用する領域とを区別することができる。具体的には、輝度信号の複数のグループへの分割は、例えば、以下の数10式のように行う。
【0082】
【数10】

【0083】
ここでYmin,Ymaxは輝度信号の最小値,最大値をそれぞれ表し,Dは輝度信号の分割数、jは0−D−1の整数を表す。D個のグループに分割された信号は周波数算出部392に転送される。
【0084】
周波数算出部392は、上記D個のグループごとに公知のフーリエ変換を行い周波数信号に変換する。総周波数算出部393は重み付け係数算出部394から転送される重み付け係数を用いて、以下の数11式のように映像信号全体の周波数成分を算出する。
【0085】
【数11】

【0086】
ここで,Pはi枚目の映像信号の周波数成分を表し,Fi,j(u,v)はi枚目の映像信号のY(x,y)に対する周波数成分を表し、Wi,jはi枚目の映像信号のj番目のグループの輝度信号における重み付け係数を表している。重み付け係数は、映像信号の被写体の位置や明るさによって異ならせることができ、すなわち、先に分割したD個のグループそれぞれに対して、そのグループの明るさに応じて重み付け係数を定めることができる。次に、総周波数算出部393は、P(u,v)の絶対値を周波数空間の座標(u,v)において積分した値を抽出部910に転送する。抽出部910は特徴量算出部920から転送された積分値が一番大きい映像信号を画像合成に最も適した1枚として抽出し、抽出した映像信号を高周波数成分生成部112に転送する。
【0087】
以下、このように構成された本実施形態の画像処理装置における画像合成処理の過程について説明する。本実施形態における画像合成処理の過程は、概ね第2の実施形態における処理の過程と同様であるので、以下、第2の実施形態におけるフローチャートである図13に基づいて説明する。
【0088】
画像処理装置では、外部I/F部118を介してISO感度,露出などの撮影条件を設定した後,図示しないシャッターボタンを半押しにすることでプリ撮影モードに入る。そして、本撮影における撮影回数と同じ回数のプリ撮影が終了すると、外部I/F部118を介して図示しないシャッターボタンを全押しすることにより本撮影が行われる。本撮影は、撮影制御部107にて求められた合焦条件および露光条件に基づき行われ、これらの撮影時の情報は制御部117へ転送される。以下、説明の便宜上、本撮影における撮影回数を2回とし、この2回の撮影により入射光量が適正な映像信号S1と、映像信号S1に対して入射光量を半分とするなど、入射光量を異ならせた映像信号S2を得ることとして説明する。
【0089】
ステップS21では、CCD104からの映像信号をRawデータとして、ISO感度情報や映像信号サイズなどをヘッダー情報として読み込み次のステップS22に進む。ステップS22では、レンズ系100、絞り101、カラーフィルタ103、CCD104を介して撮影されたS1及びS2の映像信号が、A/D変換部105にてデジタルの映像信号へ変換されてバッファ106へ入力される。ステップS23では、信号処理部108により補間処理、ホワイトバランスの調整処理、Y/C信号生成処理、電子ズーム処理、ノイズ抑制処理等の信号処理を行い、ステップS24に進む。
【0090】
ステップS24では、映像信号から低周波の映像信号を生成し、生成した低周波の映像信号を高周波数成分生成部612へ出力してステップS25に進む。ステップS25では、特徴量算出部が図15に示す構成である場合には、特徴量算出部900により、信号処理部108から映像信号S1及びS2のエッジ量を算出し、算出した結果を抽出部910に出力する。抽出部910では、S1及びS2の2枚の映像信号のエッジ量のうち、何れのエッジ量が大きいかを判断する。ここで、S1がS2よりもエッジ量が大きい映像信号であったとすると、抽出部910は、エッジ量が大きい映像信号S1を画像合成に最も適した1枚分の映像信号として抽出し、この一枚の映像信号S1を高周波数成分生成部112に出力する。
【0091】
また、特徴量算出部が図17に示す構成である場合には、特徴量算出部920により、映像信号S1及びS2の周波数成分を算出し、さらにこの周波数成分の絶対値を周波数空間の座標における積分値を抽出部910に出力する。抽出部910では、S1及びS2の映像信号の積分値のうち、何れの積分値が大きいかを判断し、大きい方の映像信号を画像合成に最も適した映像信号として抽出する。すなわち、S1がS2よりも積分値が大きい映像信号であったとすると、積分値が大きい映像信号S1を画像合成に最も適した映像信号として抽出し、この映像信号S1を高周波数成分生成部112に出力する。
【0092】
ステップS27では、高周波数成分生成部612により、1枚の映像信号とこの1枚の映像信号に相当する低周波映像信号とから差分処理を行うことにより高周波映像信号を生成する。ステップS26では、低周波数成分生成部611によりS1及びS2の低周波映像信号の加算処理を行い、合成低周波映像信号を生成する。ステップS28では、画像合成部113によりS1の高周波映像信号および合成された合成低周波映像信号との加算処理を行うことで合成映像信号を生成し、合成された合成映像信号を階調変換部114に出力する。ステップS29で、階調変換部114が、入力された合成映像信号に対して、所定の階調変換処理を行い、本ルーチンを終了する。なお、階調変換処理がなされた合成映像信号は圧縮部115へ出力され、圧縮部115において、JPEG圧縮等の圧縮処理を施し、出力部116へ出力される。
【0093】
このように、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に、映像信号のうちブレが目立ちにくい低周波数成分のみについては複数枚の画像について合成処理の対象とする一方で、ブレの目立ちやすい高周波数成分について任意の一枚のみを合成処理の対象とすることで、ブレのある複数枚の映像信号に対しても二重線等のアーティファクトがないダイナミックレンジの広い合成信号を生成することができる。また、低周波信号の抽出を実空間で行うことにより高速な映像信号処理が可能となる。
【0094】
このように、映像信号のうちブレが目立ちにくい低周波数成分については複数枚の画像について画像合成処理の対象とする一方で、ブレの目立ちやすい高周波数成分については任意の一枚のみを画像合成処理の対象とすることで、ブレのある複数枚の映像信号に対しても二重線等のアーティファクトがないダイナミックレンジの広い合成信号を生成することができる。
【0095】
なお、上述した実施形態では、ハードウェアによる処理を前提としていたが、このような構成に限定される必要はない。例えば、別途ソフトウェアにて処理する構成も可能である。この場合、画像処理装置は、CPU、RAM等の主記憶装置、上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、CPUが上記記憶媒体に記録されているプログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述の画像処理装置と同様の処理を実現させる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【符号の説明】
【0096】
109 変換部
110 抽出部
111 低周波数成分生成部
112 高周波数成分生成部
113 画像合成部
292 エッジ量算出部
301 低周波数成分抽出部
302 逆変換部
303 重み付け係数算出部
304 加算部
392 周波数算出部
401 逆変換部
402 ヒストグラム算出部
403 評価値算出部
404 選択部
502 ノイズ低減部
503 加算部
609 変換部
610 抽出部
611 低周波数成分生成部
612 高周波数成分生成部
613 画像合成部
702 差分信号算出部
801 重み付け係数算出部
802 加算部
900 特徴量算出部
909 変換部
910 抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光量の異なる複数の映像信号を合成することでダイナミックレンジを拡大する画像処理装置であって、
前記複数の映像信号のそれぞれから低周波数成分を抽出して複数の低周波映像信号を生成する低周波映像信号生成手段と、
前記複数の低周波映像信号を合成し、合成低周波映像信号を生成する合成低周波信号生成手段と、
前記複数の映像信号から第一の映像信号を抽出する抽出手段と、
前記第一の映像信号から高周波数成分を抽出して高周波映像信号を生成する高周波映像信号生成手段と、
前記合成低周波映像信号と前記高周波映像信号とを合成することにより合成映像信号を生成する画像合成手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記映像信号を周波数変換することにより周波数信号を生成する周波数信号生成手段を備え、
前記低周波映像信号生成手段は、前記周波数信号から低周波数成分を抽出して低周波数信号を生成し、該低周波数信号を逆変換することにより低周波映像信号を生成するとともに、
前記高周波映像信号生成手段は、第一の映像信号に対応する前記周波数信号から高周波数成分を抽出して高周波数信号を生成し、該高周波数信号を逆変換することにより高周波映像信号を抽出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記周波数信号生成手段は、前記映像信号に対して多重解像度変換を行うことにより周波数信号を生成することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記低周波映像信号の画素値に基づいて、前記複数の低周波映像信号の合成割合である重み付け係数を算出する重み付け算出手段を備え、
前記合成低周波映像信号生成手段は、前記重み付け係数に基づいて、前記低周波映像信号を重み付けして合成を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記映像信号の特徴量を算出する特徴量算出手段を備え、
前記抽出部は、前記特徴量算出手段による算出結果に基づいて、前記第一の映像信号を抽出することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記特徴量算出手段は、
前記映像信号の画素毎にエッジ量を算出するエッジ量算出手段と、
該画素毎のエッジ量に基づいて前記映像信号全体の総エッジ量を算出する総エッジ量算出手段と、を備え、
前記抽出部は、前記総エッジ量が最大値となる前記映像信号を前記第一の映像信号として抽出することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記総エッジ量算出手段は、前記画素毎のエッジ量を前記映像信号に応じた重み付けを行って加算することにより前記映像信号全体の総エッジ量を算出することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記特徴量算出手段は、
前記映像信号の輝度信号を、輝度値に基づいて複数のグループに分割する分割手段と、
該グループに含まれる輝度信号に基づいて、該グループ毎に周波数信号を算出する周波数算出手段と、
該グループ毎の周波数信号を前記映像信号に応じた重み付けを行って加算することにより前記映像信号全体の総周波数信号を算出する総周波数算出手段と、を備え、
前記抽出部は、前記総周波数信号の値が最大値となる前記映像信号を前記第一の映像信号として抽出することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記抽出手段は、
前記複数の映像信号のそれぞれについて、映像信号を構成する各画素の輝度値の分散度合いを表すヒストグラムを算出するヒストグラム算出手段と、
前記ヒストグラムから各画素の輝度値の分散値を算出し、評価値とする評価値算出手段と、
前記評価値が最大となる映像信号を前記第一の映像信号として選択する選択手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記高周波映像信号生成手段は、前記第一の映像信号と前記低周波映像信号との差分を算出することにより、高周波映像信号を生成することを特徴とする請求項1又は請求項5乃至請求項9の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記画像合成手段は、前記合成低周波映像信号と前記高周波映像信号を加算することを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記画像合成手段が、前記高周波映像信号に対してノイズ低減処理を行うノイズ低減手段を備え、
前記合成低周波数映像信号と前記ノイズ低減手段によりノイズが低減された高周波映像信号とを加算することを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
露光量の異なる複数の映像信号を合成することでダイナミックレンジを拡大する画像処理プログラムであって、
前記複数の映像信号のそれぞれから低周波数成分を抽出して複数の低周波映像信号を生成するステップと、
前記複数の低周波映像信号を合成し、合成低周波映像信号を生成するステップと、
前記複数の映像信号から第一の映像信号を抽出するステップと、
前記第一の映像信号から高周波数成分を抽出して高周波映像信号を生成するステップと、
前記合成低周波映像信号と前記高周波映像信号とを合成することにより合成映像信号を生成するステップと、
をコンピュータに実行させる画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−220207(P2010−220207A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31645(P2010−31645)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】