説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】容量が小さなスタックメモリを備える場合であってもオーバーフローの発生を回避し、画像から短時間で確実に特定オブジェクトを抽出することができるラベリング処理が可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】原画像に含まれる特定オブジェクトの想定画素サイズに対応して決定される縮小率で、原画像を縮小した縮小画像を生成する縮小処理部20と、前記縮小画像を構成する画素のうち同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、前記縮小画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する縮小画像ラベリング処理部24と、前記縮小画像ラベリング処理部24で抽出された特定オブジェクトの領域を前記原画像のサイズに拡大処理して、前記原画像に含まれる特定オブジェクトとして同定するオブジェクト同定処理部26を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を構成する画素のうち同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出するラベリング処理部を備えた画像処理装置または画像処理方法に関し、特に、撮像装置で撮影された人の顔画像情報に基づいて、染み、毛穴、皺等、顔の肌の変色部位の特性情報を抽出するための画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美容外科やエステティックサロン等では、染み、毛穴の汚れ、皺等、顔の肌の状態を改善する美容施術の前後に、肌の状態がどの程度改善されたかを客観的に判断するため、撮像装置で人の顔画像を撮影し、撮影した顔画像に対して所定の画像処理を行なって、染み、毛穴の汚れ、皺等の状態を評価する必要がある。
【0003】
そのため、特許文献1では、デジタルカメラで撮影した顔全体の撮影画像データに少なくとも1個の処理領域を設定して処理領域の画像データを切り出し、切り出した処理領域の画像データを処理して皮膚のパラメータを演算するデジタルズーム肌診断装置において、撮像素子の画素数が多いデジタルカメラで出力データサイズの大きな顔全体の高解像度画像を撮影し、画像上で任意に配置を設定可能な解析線を重ねた処理領域の拡大画像と並べて、この解析線に沿った濃度分布のグラフをモニタ画面に表示し、このグラフ上で設定したしきい値に基づいて濃度分布の凹凸をカウントすることにより皮膚のパラメータを求めることを特徴とするデジタルズーム肌診断装置が提案されている。
【0004】
上述の装置では、撮影画像データから切り取った拡大画像を処理領域として、処理領域のR画像データからXY二次元の濃度分布を作成し、閾値を変化させて二値化して染みを抽出し、抽出した染みの大きさと数から染みのパラメータを演算するものであった。
【0005】
染みの大きさを演算する場合には、画像を構成する画素のうち同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、画像に含まれるオブジェクトの領域、ここでは染みの領域を抽出するラベリング処理が一般的に用いられる。
【特許文献1】特許第3530523号特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、手続きの中で再び当該手続き自身を呼び出す再帰呼び出し処理を伴なうラベリング処理を実行すると、処理時間が極めて長くなるという問題や、オブジェクトの画素サイズが大きくなるほど再帰呼び出し処理の数が増加するため、大容量のスタックメモリを準備していないと、オーバーフローが生じて処理が中断され、システムの安定性を損なうという問題があった。
【0007】
そこで、再帰呼び出し処理の数を制限すると、容量の限られたスタックメモリであっても、オーバーフローの発生を回避することができるが、特定オブジェクトの領域の大きさが正確に検出できなくなるという問題が生じる。
【0008】
また、オブジェクトの探索範囲を制限すると、その範囲を超えるオブジェクトが検出できず、同一のオブジェクトであっても複数のオブジェクトとしてカウントされるという問題も生じる。
【0009】
このような問題は、顔画像から染み等の領域サイズを検出する場合のみならず、写真撮影されたコマ画像からある特定のオブジェクトをラベリング処理により抽出する場合等、様々な局面で現れる。
【0010】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、容量が小さなスタックメモリを備える場合であってもオーバーフローの発生を回避し、画像から短時間で確実に特定オブジェクトを抽出することができるラベリング処理が可能な画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明による画像処理装置の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、原画像に含まれる特定オブジェクトの想定画素サイズに対応して決定される縮小率で、前記原画像を縮小した縮小画像を生成する縮小処理部と、前記縮小画像を構成する画素のうち同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、前記縮小画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する縮小画像ラベリング処理部と、前記縮小画像ラベリング処理部で抽出された特定オブジェクトの領域を前記原画像のサイズに拡大処理して、前記原画像に含まれる特定オブジェクトとして同定するオブジェクト同定処理部を備えている点にある。
【0012】
上述の構成によれば、原画像に含まれる特定オブジェクトが大きな領域であっても、縮小処理部によって特定オブジェクトの想定画素サイズに対応して決定される縮小率で生成された縮小画像に対して、縮小画像ラベリング処理部によってラベリング処理が実行されるため、ラベリング処理の対象画素数が減少する。その結果、縮小画像ラベリング処理部ではスタックメモリのオーバーフローの発生を招くことなく、高速にラベリング処理が実行できるようになる。そして、縮小画像ラベリング処理部により縮小画像から抽出された特定オブジェクトが、オブジェクト同定処理部により拡大処理されて、原画像に含まれる特定オブジェクトとして同定される。
【0013】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記縮小画像ラベリング処理部は、前記縮小処理部で生成された縮小率の大きな縮小画像から縮小率の小さな縮小画像の順にラベリング処理を実行し、縮小率の小さな縮小画像に対するラベリング処理時に、縮小率の大きな縮小画像で抽出された特定オブジェクト及びその周辺領域を除いてラベリング処理を実行する点にある。
【0014】
縮小処理部では、原画像に含まれる特定オブジェクトの想定画素サイズに対応した縮小率が決定されるが、当該特定オブジェクトの実際の画素サイズは様々であり、縮小率が大きすぎると縮小画像ラベリング処理部によって当該特定オブジェクトが抽出できない虞もある。
【0015】
そこで、縮小画像ラベリング処理部によって縮小率の異なる複数の縮小画像に対してラベリング処理を実行する必要が生じる場合がある。そのような場合に、縮小率の大きな縮小画像から縮小率の小さな縮小画像の順にラベリング処理を実行し、縮小率の大きな縮小画像で抽出された特定オブジェクト及びその周辺領域を除いて、縮小率の小さな縮小画像に対するラベリング処理を実行すれば、同一の特定オブジェクトに対する重複したラベリング処理が省略されるようになり、確実に特定オブジェクトが抽出でき、しかも、高速にラベリング処理を実行することが可能になる。
【0016】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記オブジェクト同定処理部で同定された特定オブジェクトの輪郭領域に対して、前記特定オブジェクトと同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、原画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する輪郭領域ラベリング処理部を備えている点にある。
【0017】
縮小画像に対するラベリング処理で抽出された特定オブジェクトを拡大処理すると、縮小時の欠落画素の影響で原画像に存在する特定オブジェクトの輪郭が正確に抽出できない場合がある。そのような場合に、オブジェクト同定処理部で同定された特定オブジェクトの輪郭領域に対して輪郭領域ラベリング処理部がラベリング処理すれば、原画像の特定オブジェクトの輪郭が正確に抽出できるようになる。この場合、輪郭領域ラベリング処理部のラベリング処理対象画素はオブジェクト同定処理部で同定された特定オブジェクトの輪郭領域に限定されるため、輪郭領域ラベリング処理部ではスタックメモリのオーバーフローの発生を招くことなく、高速にラベリング処理が実行できるようになる。
【0018】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記原画像を構成する画素のうち同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、前記原画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する原画像ラベリング処理部を備え、前記原画像に含まれる特定オブジェクトの想定画素サイズに基づいて、前記縮小処理部と前記縮小画像ラベリング処理部と前記オブジェクト同定処理部を作動させるか、前記原画像ラベリング処理部を作動させるかを切り替える切替処理部を備えている点にある。
【0019】
縮小画像に対してラベリング処理を行なう必要があるのは、原画像に含まれる特定オブジェクトの画素数が多く、スタックメモリのオーバーフロー等の不都合を招く虞のある場合である。従って、そのような不都合が発生する虞の無い場合には、切替処理部により原画像ラベリング処理部を作動させることにより、原画像から正確に特定オブジェクトを抽出できるようになり、そのような不都合が発生する虞の有る場合には、切替処理部により縮小処理部と縮小画像ラベリング処理部とオブジェクト同定処理部を作動させることにより、安定且つ高速に特定オブジェクトを抽出できるようになる。
【0020】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記特定オブジェクトが、人の顔画像に含まれる染み、毛穴、皺等の肌の変色領域である点にある。
【0021】
人の顔画像に含まれる染み、毛穴、皺等の肌の変色領域を特定オブジェクトとする場合に、第一から第三の何れかの特徴構成を備えた画像処理装置が好適に機能する。
【0022】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第四特徴構成に加えて、前記特定オブジェクトが、人の顔画像に含まれる染み、毛穴、皺等の肌の変色領域であり、前記切替処理部は、毛穴を特定オブジェクトとするときに原画像ラベリング処理部を作動させ、染みを特定オブジェクトとするときに前記縮小処理部と前記縮小画像ラベリング処理部と前記オブジェクト同定処理部を作動させるように切り替える点にある。
【0023】
本発明による画像処理方法の第一の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、原画像に含まれる特定オブジェクトの想定画素サイズに対応して決定される縮小率で、前記原画像を縮小した縮小画像を生成する縮小処理ステップと、前記縮小画像を構成する画素のうち同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、前記縮小画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する縮小画像ラベリング処理ステップと、前記縮小画像ラベリング処理ステップで抽出された特定オブジェクトの領域を前記原画像のサイズに拡大処理して、前記原画像に含まれる特定オブジェクトを同定するオブジェクト同定処理ステップを備えている点にある。
【0024】
同第二の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記縮小画像ラベリング処理ステップは、前記縮小処理ステップで生成された縮小率の大きな縮小画像から縮小率の小さな縮小画像の順にラベリング処理を実行し、縮小率の小さな縮小画像に対するラベリング処理時に、縮小率の大きな縮小画像で抽出された特定オブジェクト及びその周辺領域を除いてラベリング処理を実行する点にある。
【0025】
同第三の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記オブジェクト同定処理ステップで同定された特定オブジェクトの輪郭領域に対して、前記特定オブジェクトと同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、原画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する輪郭領域ラベリング処理ステップを備えている点にある。
【発明の効果】
【0026】
以上説明した通り、本発明によれば、容量が小さなスタックメモリを備える場合であってもオーバーフローの発生を回避し、画像から短時間で確実に特定オブジェクトを抽出することができるラベリング処理が可能な画像処理装置及び画像処理方法を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明による画像処理装置が組み込まれた画像診断システムの実施の形態を説明する。
【0028】
図1に示すように、画像診断システムは、依頼人の顔画像を撮影する撮像装置1と、撮像装置1で撮影され、電子データに変換された依頼人の顔画像を格納するハードディスク等で構成されたメモリ2と、液晶画面を備えた表示部3と、パーソナルコンピュータに本発明を具現化するアプリケーションプログラムがインストールされた画像処理装置4を備えて構成されている。
【0029】
撮像装置1は、依頼人の顔を一定姿勢に保つ顎ガイドと頭部ガイドを備えた顔保持部1aと、顔保持部1aで保持された依頼人の顔を照明する照明装置1bと、照明装置1bで照明された依頼人の顔を撮影する撮像部1cを備えている。
【0030】
画像処理装置4は、依頼人の顔画像領域に解析対象要素つまり解析対象領域を画定する解析対象領域生成部4aと、顔画像全体を構成する画素群または解析対象領域生成部4aで生成された解析対象要素を構成する画素群の画素値に基づいて、染み、毛穴の汚れ、皺等、肌の変色部位である特性情報を抽出する肌特性抽出処理部4bと、肌特性抽出処理部4bで抽出された肌の特性情報に基づいて肌状態を診断する診断処理部4cを備えている。
【0031】
撮像装置1で撮影された依頼人の顔画像は原画像としてメモリ2に格納され、画像処理装置4によってメモリ2から読み出されて表示部3に表示される。解析対象領域生成部4aにより、表示部3に表示された依頼人の顔画像の肌に、図2に示すような解析対象要素Rつまり解析対象領域が画定される。解析対象要素Rとして、具体的には、額領域R1、頬領域R2、鼻領域R3、顎領域R4が画定されるのであるが、これに限るものではなく、目尻の周辺領域等、適宜設定することができる。
【0032】
肌特性抽出処理部4bは、顔画像領域に画定された解析対象要素の構成画素データから所定範囲の肌色領域を特定し、肌色領域を構成する複数の画素の青色成分値が所定の閾値より大であるか小であるかを、ラベリング法を用いて判別し、図3(b)に示すような顔の染みd1、毛穴の汚れd2、皺d3等の発生領域を抽出する。
【0033】
後に詳述するが、ラベリング処理は、図7(a)から(c)に示すように、染み、毛穴の汚れ、皺等の抽出対象オブジェクトの夫々に対して適切に設定された閾値で解析対象要素R内の画素を二値化処理した後に、解析対象要素Rを抽出対象オブジェクトの最大サイズより大きな複数領域Ra,Rb,Rc,Rdに分割し、分割領域Ra,Rb,Rc,Rd内で閾値より下回る画素値(ここでは、二値化処理で1に設定され、図中、灰色で示されている)を有する任意の画素に特定のラベルTn(nは正整数で同一領域では同一の値となる)を付し、さらに、ラベルTnを付した画素と隣接する画素であって、同様に閾値より下回る隣接画素に同一ラベルTnを付す処理を、閾値より下回る隣接画素が無くなるまで繰り返す再帰呼び出し処理で、解析対象要素R内の全ての画素に対してラベリング処理を行なうことにより、染み、毛穴の汚れ、皺に対応した単一または複数の領域が抽出される。
【0034】
その結果、図7に示す例では、領域RaにラベルT1で示されるオブジェクトが抽出され、領域RbにラベルT2で示されるオブジェクトが抽出され、領域RcにラベルT3で示されるオブジェクトが抽出され、領域RdにラベルT4で示されるオブジェクトが抽出される。領域間に跨る領域(ラベルT3,T4で示される領域)は、その後、分割領域の境界部に存在するオブジェクトの連続性が、二値化された画素値に基づいて連続性が判断され、連続する場合には同一領域として統合される。
【0035】
ラベリング処理の過程で、対象画素毎に特定のラベルを付すか否かを判断するアルゴリズムが繰り返し実行されるため、現在実行中のアルゴリズムが対象とする画素の座標データ等、処理を実行するために必要な複数のパラメータが、パーソナルコンピュータのメモリ領域に画定されたスタック領域にスタックされながら処理が実行される。
【0036】
診断処理部4cは、肌特性抽出処理部4bで抽出された領域の面積(画素数)、形状、画素値等に基づいて、染み、毛穴の汚れ、皺の何れであるかを判別し、解析対象要素内における夫々の位置、面積、解析対象要素Rに対する面積比、画素値等でなる特性情報を生成する。
【0037】
このとき、表示部3に表示された顔画像のうち、肌特性抽出処理部4bにより抽出された変色部位の表示色を、周辺の肌領域と識別可能な色に変えて表示することにより視覚的に容易に認識できるようになる。
【0038】
例えば、800万画素の顔画像では、3×3画素から7×7画素程度の面積が毛穴に相当するため、それより画素数が大きな領域は染みまたは皺と判別でき、領域の直交方向の連続画素値のうち、小さい方の連続画素値が数画素から十数画素で、且つ、小さい方の連続画素値と大きい方の連続画素値が所定値以上であれば皺であると判別できる。
【0039】
一般に、上述した肌の特性を抽出する場合、画素を構成する赤、緑、青の各色成分のうち、青成分の値を採用することが好適である。皮膚の深層部の状況が青成分に現れるからである。従って、照明装置1bの光源に青色の透過フィルタや紫外線ランプを用いることが好ましい。
【0040】
解析対象領域生成部4aにより画定された解析対象要素R、肌特性抽出処理部4bで抽出された肌の特性情報、及び、診断処理部4cで診断された診断情報は、依頼人を特定するIDデータ、診断日、施術内容等と関連付けられてメモリ2に格納される。
【0041】
診断処理部4cは、メモリ2に格納された依頼人の過去の肌の特性情報と今回の特性情報に基づいて肌の状態が改善されているか否かの診断情報を生成する。医師、エスティシャン、美容カウンセラーは、当該診断情報に基づいてどのような施術または処方が好ましいか、どのような化粧品が好ましいか等を判断して、適切に対応する。
【0042】
解析対象領域生成部4aは、図1(b)に示すように、複数のサンプル顔画像を統計処理することにより得られた顔を構成する標準顔要素の配置情報及び標準解析対象要素の配置情報で規定された標準顔画像A(図3(a)参照)と、撮像装置で撮影された解析対象顔画像B(図3(b)参照)を、表示部3に重ね合わせて表示する(図3(c)参照)顔画像表示処理部10と、表示部3に表示された解析対象顔画像Bの特定顔要素Eの表示位置に、対応する特定標準顔要素eを移動させる標準顔要素移動処理部12と、標準顔要素移動処理部12で移動された標準解析対象要素rを、解析対象顔画像Bに対する解析対象要素Rとして解析対象顔画像Bと関連付けて記憶部2に記憶する解析対象要素生成処理部18を備えている。
【0043】
さらに、標準顔要素移動処理部12に、特定標準顔要素eを中心とする所定範囲Sに位置する他の標準顔要素e´及び標準解析対象要素rを抽出する移動要素抽出処理部14と、移動要素抽出処理部14で抽出された他の標準顔要素e´及び標準解析対象要素rを、特定標準顔要素eの移動に伴って、所定の移動関数Fに基づいて算出された移動方向及び移動距離だけ移動させる要素移動処理部16を備えている。
【0044】
標準顔要素e及び標準解析対象要素rの配置情報は、複数の基準点pと各基準点pを接続する接続線qで定義され、移動関数Fは、特定標準顔要素eの移動前の基準点p1と他の標準顔要素e´または標準解析対象要素rの基準点pとを結ぶ要素間距離L1及び特定標準顔要素eの基準点の移動距離ΔLに対して、ΔL≦L1のときに当該他の標準顔要素e´の基準点pの移動距離Lが、ΔL/L1を変数として導出され、特定標準顔要素eの移動後の基準点p2と他の標準顔要素e´または標準解析対象要素rの基準点とを結ぶ直線上で、特定標準顔要素eの移動後の基準点p2が他の標準顔要素e´または標準解析対象要素rの基準点pから離隔するときに接近させ、特定標準顔要素eの移動後の基準点p2が他の標準顔要素e´または標準解析対象要素rの基準点pに接近するときに離隔させる関数として定義されている。
【0045】
図3(a)に示す標準顔画像Aは、予め収集した多数のサンプル顔画像に対して、顔を構成する輪郭、髪の生え際、眉、目、耳、鼻、口といった顔要素の大きさや相対距離を計測し、その結果を統計処理して標準的な顔要素の大きさ、位置を算出して、算出した値に基づいて標準顔要素を配置した標準顔画像を生成し、生成した標準顔画像に対して、オペレータがマウス等のポインティングデバイスを手動操作して、肌の変色等の特性の状態を探る解析対象要素r、つまり解析対象領域を画定して得られた画像で、標準的な輪郭、髪の生え際、眉、目、耳、鼻、口といった顔要素、つまり標準顔要素eの配置情報及び標準解析対象要素rの配置情報で規定された画像である。
【0046】
ここで、配置情報は、所定のX,Y二次元座標系で基準点pが位置する座標と、接続線qの属性情報で構成され、属性情報には接続線qの両端の基準点pを特定する基準点特定情報と、接続線が直線か曲線か特定する線種情報、曲線の場合にはその曲率等の情報が含まれる。
【0047】
顔画像表示処理部10により、予めメモリ2に格納された標準顔画像Aと解析対象顔画像Bが読み出されて、図3(c)に示すように表示部3に重ね合わせて表示されるのである。
【0048】
このような標準顔要素e及び標準解析対象要素rの配置情報は、図4(a)に示すように、複数の基準点pと各基準点pを接続する接続線qで定義されている。標準顔要素移動処理部12は、オペレータにより基準点pまたは接続線qがマウスでドラッグ操作された状態で移動され、ドロップ操作されると、基準点pまたは接続線qをその位置まで移動処理する。
【0049】
図4(b)に示すように、基準点pが移動操作されると、当該基準点pのみを移動し、移動操作されなかった基準点pと移動操作された基準点pを結ぶように接続線qを変更し、図4(c)に示すように、接続線qが移動操作されると、接続線qと当該接続線qにより接続された全ての基準点pを位置関係を保った状態で移動する。
【0050】
このとき、移動要素抽出処理部14は、図4(d)に示すように、特定標準顔要素eを中心とする所定範囲Sに位置する他の標準顔要素e´及び標準解析対象要素rを、特定標準顔要素eの移動に伴なって同時に移動処理する対象として抽出する。所定範囲Sは、特定標準顔要素eの移動距離、つまり、一つの基準点のみが移動されるときには当該基準点Pの移動距離ΔL、接続線qが移動されるときには当該接続線の移動距離ΔLの関数で定めることができ、例えば、移動前の基準点の位置または接続線qの中心位置を中心として半径がN×ΔLの範囲に含まれる円領域に設定される。
【0051】
また、移動前の基準点Pの位置または接続線qの中心位置を中心として一辺の長さがN×ΔLの矩形領域に設定されるものであってもよい。ここに、Nは自然数であり、標準的には2〜3が選択されるが、対象画像の画素数により適宜変更設定するものであってもよい。
【0052】
つまり、上述した所定範囲Sが、特定標準顔要素eの移動距離ΔLに基づいて可変に設定されるのである。従って、特定標準顔要素eの移動距離ΔLが長ければそれだけ影響を受ける他の標準顔要素e´及び標準解析対象要素rが多くなり、特定標準顔要素eの移動距離ΔLが短ければそれだけ影響を受ける他の標準顔要素e´及び標準解析対象要素rが少なくなる。尚、簡易的には、上述した所定範囲Sを固定範囲とすることも可能である。
【0053】
要素移動処理部16は、移動要素抽出処理部14で抽出された他の標準顔要素e´及び標準解析対象要素rを、特定標準顔要素eの移動に伴って、上述の移動関数Fに基づいて算出された移動方向及び移動距離だけ移動させる。
【0054】
図5は、標準顔要素の眉、目(閉じた状態)、標準解析対象要素の鼻領域に対して、移動関数Fの特性を説明する図である。図5(a)に示すように、移動関数Fは、特定標準顔要素eの移動前の基準点p1と他の標準顔要素e´の基準点P(または接続線の中心位置)、または、特定標準顔要素eの移動前の基準点p1と標準解析対象要素rの基準点p(または接続線の中心位置)とを結ぶ要素間距離L1及び特定標準顔要素eの基準点の移動距離ΔLに対して、ΔL≦L1のときに当該他の標準顔要素e´の基準点pまたは標準解析対象要素rの基準点pの移動距離Lを、L=a×(ΔL/L1)+b(a,bは定数)の数式に基づいて導出し、特定標準顔要素eの移動後の基準点p2と他の標準顔要素e´または標準解析対象要素rの基準点pとを結ぶ直線上で、特定標準顔要素eの移動後の基準点p2が他の標準顔要素e´または標準解析対象要素rの基準点pから離隔するときに接近させ、特定標準顔要素eの移動後の基準点p2が他の標準顔要素e´または標準解析対象要素rの基準点pに接近するときに離隔させる関数として定義されている。尚、本実施形態では、a=1,b=0に設定しているが、解析対象画像の画素数に基づいて適宜設定すればよい。また、基準点pの移動距離LはX,Y二次元座標系でX成分及びY成分毎に演算される。
【0055】
さらに、移動関数Fは、ΔL>L1のときに当該他の標準顔要素e´の基準点pの移動距離LをΔLに設定し、特定標準顔要素eの移動後の基準点p2と他の標準顔要素e´または標準解析対象要素rの基準点とを結ぶ直線上で、特定標準顔要素eの移動後の基準点p2が他の標準顔要素e´または標準解析対象要素rの基準点pから離隔するときに接近させ、特定標準顔要素eの移動後の基準点p2が他の標準顔要素e´または標準解析対象要素rの基準点pに接近するときに離隔させる関数として定義されている。つまり、図5(b)に示すように、要素移動処理部16は、ΔL>L1のときには、特定標準顔要素eの移動前の基準点p1と他の標準顔要素e´の基準点pの離間距離を保った状態で移動させる。
【0056】
ここで、ΔL≦L1のときに、基準点pまたは接続線qの移動操作量ΔLが微小な値のときには、当該基準点pまたは接続線qのみを移動させ、他の標準顔要素e´の基準点pまたは標準解析対象要素rの基準点pの位置はそのまま元の位置を維持するように移動関数Fを定義してもよい。
【0057】
例えば、顔画像の全画素数に対して予め正整数Kが設定され、移動操作された基準点pまたは接続線qの直近に位置する他の標準顔要素e´の基準点pまたは標準解析対象要素rの基準点pに対する要素間距離Lと移動距離ΔLにL1/ΔL≧K(Kは正整数)の関係があるときに、他の標準顔要素e´の基準点pまたは標準解析対象要素rの基準点pの位置を移動させることなく、そのまま元の位置を維持するように移動関数を定義するのである。
【0058】
図6に示すように、標準顔要素移動処理部12によって、標準顔画像Aの夫々の標準顔要素eが解析対象顔画像Bの対応する顔要素Eの位置に移動処理されることにより、標準顔要素eの移動処理に伴なって移動処理された標準解析対象要素rが、解析対象顔画像Bの解析対象要素Rつまり解析対象領域として画定される。
【0059】
尚、上述した解析対象顔画像Bに対する解析対象領域の画定処理以外に、解析対象領域生成部4aに描画処理部を設けて、オペレータがマウスを用いて入力した複数点を、描画処理部により接続線で接続することにより解析対象領域を画定するように構成するものであってもよい。
【0060】
このようにして、解析対象顔画像Bに画定された適切な解析対象要素Rが、当該依頼人を特定するIDデータ、診断日、施術内容等と関連付けられてメモリ2に格納される。
【0061】
そして、それ以降に新たに当該依頼人の顔を撮影した場合には、メモリ2に格納された解析対象要素Rが読み出され、当該依頼人の新たな顔画像に当該解析対象要素Rが画定される。尚、顔画像の画素数、倍率、基準座標は、当該解析対象要素Rの倍率、基準座標と整合される必要があることはいうまでもない。
【0062】
以下、本発明による画像処理装置または画像処理方法が採用される肌特性抽出処理部4bの構成及び動作について詳述する。
【0063】
図1(b)に示すように、肌特性抽出処理部4bは、原画像に含まれる特定オブジェクトの想定画素サイズに対応して決定される縮小率で、原画像を縮小した縮小画像を生成する縮小処理部20と、縮小画像を構成する画素のうち同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、縮小画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する縮小画像ラベリング処理部22と、縮小画像ラベリング処理部22で抽出された特定オブジェクトの領域を原画像のサイズに拡大処理して、原画像に含まれる特定オブジェクトとして同定するオブジェクト同定処理部24と、オブジェクト同定処理部24で同定された特定オブジェクトの輪郭領域に対して、特定オブジェクトと同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、原画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する輪郭領域ラベリング処理部26を備えている。
【0064】
さらに、肌特性抽出処理部4bは、原画像を構成する画素のうち同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、原画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する原画像ラベリング処理部28を備え、原画像に含まれる特定オブジェクトの想定画素サイズに基づいて、縮小処理部20と縮小画像ラベリング処理部22とオブジェクト同定処理部24と輪郭領域ラベリング処理部26を順に作動させるか、原画像ラベリング処理部28を作動させるかを切り替える切替処理部29を備えている。
【0065】
切替処理部29は、具体的には、画素数が少ない毛穴や皺等を特定オブジェクトとするときに原画像ラベリング処理部28を作動させ、画素数が多い染み等を特定オブジェクトとするときに縮小処理部20と縮小画像ラベリング処理部22とオブジェクト同定処理部24と輪郭領域ラベリング処理部26を順に作動させるように切り替える。
【0066】
原画像ラベリング処理部28は、毛穴を特定オブジェクトとするとき、解析対象顔画像Bとしての原画像B1の肌領域を毛穴を抽出するための青成分の閾値を下回る画素値を有する画素を1に、閾値以上の画素値を有する画素を0に設定する二値化処理を施した後に、例えば、図8(a)に示すように、10×10画素程度の画素サイズに分割して、各分割画素群に対してラベリング処理を実行する。その結果、3×3画素から7×7画素程度の毛穴領域d2が抽出される。
【0067】
しかし、図8(b)に示すように、数百画素×数百画素に及ぶ可能性がある染み領域d1を特定オブジェクトとするとき、図2に示すような、解析対象顔画像Bとしての原画像B1全体または各解析対象要素R内の肌領域を、染みを抽出するための青成分の閾値に基づいて二値化処理を施した後に、数百画素×数百画素の画素サイズに分割して、各分割画素群に対してラベリング処理を実行する場合には、スタックがオーバーフローして処理が中断される虞がある。
【0068】
そこで、切替処理部29により縮小処理部20が起動される。解析対象顔画像Bとしての原画像B1に含まれる染みを特定オブジェクトとする場合に、縮小処理部20は、例えば、比較的大きな染みのサイズである10000画素(100×100画素)を想定画素サイズとして、その1/100である100画素(10×10画素)に原画像B1全体または解析対象要素Rを縮小した縮小画像B2を生成する。つまり、縮小率を1/10に設定するのである。このときの縮小処理アルゴリズムはニアレストネイバー法を用いれば十分であり高速に縮小処理ができる。尚、ニアレストネイバー法以外の縮小拡大アルゴリズムを採用するものであってもよい。
【0069】
例えば、図9(a)に示すような約2300×3500画素で構成される800万画素の原画像B1に対して、図9(b)に示すような約230×350画素の縮小画像B2を生成する。
【0070】
縮小画像ラベリング処理部22は、縮小画像B2の画素を、染みを抽出するための青成分の閾値に基づいて二値化処理を施した後に、図10(a)に示すように、10×10画素の画素サイズに分割して、各分割画素群に対して同一属性、つまり、二値化された画素が1の値を示す複数の連続画素に同一ラベルT2を付すことにより、縮小画像に含まれる特定オブジェクトの領域U2を抽出する。
【0071】
つまり、ラベリング処理の対象となる分割領域の画素数を1/100に減少させることにより、原画像B1であれば100×100画素単位でラベリング処理を実行する必要があるところを、縮小画像B2であれば10×10画素単位でラベリング処理を実行することができるようになり、メモリ容量を増加させることなくスタックのオーバーフローの発生が回避されるのである。また、ラベリング処理の対象画素数が減少することにより、高速にラベリング処理を実行することができるようにもなる。
【0072】
オブジェクト同定処理部24は、図10(b)に示すように、縮小画像ラベリング処理部22により抽出された染み領域を、当該縮小率(1/100)に基づいて、100倍に拡大処理し、原画像B1における染み領域の座標に対応付けることにより、原画像B1に含まれる特定オブジェクトU1、つまり染みの領域として同定する。
【0073】
尚、原画像における特定オブジェクトの想定画素サイズを10000画素とする場合に1/100の縮小率に設定すると、縮小画像では特定オブジェクトのサイズが1画素となり、より高速にラベリング処理できるがそれだけ誤差も増大する。縮小率を1/2に設定すると、縮小画像では特定オブジェクトのサイズが2500画素となり、精度がそれ程低下することなくラベリング処理ができるが、スタックの容量が問題になる。従って、縮小率はラベリング処理の精度とスタックの容量との観点で決定される必要がある。
【0074】
このようにして同定された原画像B1の特定オブジェクトU1は、縮小時の欠落画素の影響で原画像に存在する特定オブジェクトの輪郭が正確に抽出できない場合もあり、染みの正確な検出という点で不都合が生じる虞もある。
【0075】
そこで、輪郭領域ラベリング処理部26は、オブジェクト同定処理部24で同定された特定オブジェクトU1の輪郭領域Vに対して、特定オブジェクトU1と同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、原画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する。
【0076】
図10(c)に示すように、同定された特定オブジェクトU1のエッジ画素を中心として、例えば、左右上下に10画素の範囲を輪郭領域Vとして設定する。輪郭領域Vを設定する画素数は縮小率に応じて決定される値で、本実施形態では1/100の縮小率であるため、縦横に10画素の丸め込み誤差が発生することを考慮するものである。
【0077】
輪郭領域ラベリング処理部26は、このような輪郭領域Vを、オブジェクト同定処理部24で同定された特定オブジェクトU1の任意のエッジ画素が中心に位置するように20×20画素の複数の領域に分割して、分割領域毎にラベリング処理を実行する。このようにして、図10(d)に示すような正確な特定オブジェクトUが検出される。尚、このとき、エッジ画素から特定オブジェクトU1側に最も離れた画素からラベリング処理を実行することにより、特定オブジェクトU1と連続する画素のみを正確且つ高速にラベリングできる。
【0078】
尚、輪郭領域ラベリング処理は選択的処理として、オペレータによる選択操作に基づいて必要に応じて実行されるように構成してもよい。
【0079】
以上説明した肌特性抽出処理部4bにより、染みを抽出する際の画像処理方法の一例を、図11に示すフローチャートに基づいて概説する。
【0080】
表示部3の画面に、図12に示すように、解析対象要素Rが重畳された原画像の全体を間引き処理したモニタ画像B3の表示領域40と、縮小画像B2の表示領域41と、解析対象要素Rの一部を拡大した画像を表示する表示領域42が設定され、その右横に診断レポートの表示領域39が配置されている。
【0081】
モニタ画像B3の表示領域40の下方には、特定オブジェクトとして、染み、皺、毛穴の何れかを選択するキー30,31,32が表示され、その右側に縮小倍率設定用のキー33,34,35が配置されている。画面中央の下部には特定オブジェクト抽出処理を開始するスタートキー36、直前に入力された操作を取り消す取消キー37、画面の表示内容を印刷する印刷キー38等が配置されている。
【0082】
オペレータにより染みに対応するキー30が操作されると、切替処理部29により縮小処理部20が起動されて、画面上部のメッセージ表示欄43に、縮小倍率設定キーを操作してください、とのメッセージが表示され、縮小倍率の自動設定キー33または手動設定キー34がアクティブになる。自動設定キー33が選択されると1/10の縮小率に設定され、手動設定キー34が選択されるとキーボードから入力された数値が縮小率として設定され、縮小率表示部35に表示される。
【0083】
オペレータにより、モニタ画像B3の表示領域40に表示された解析対象要素R(R1からR4)が選択操作され、スタートキー36が操作されると、縮小処理部20は、原画像B1を設定された縮小率で縮小処理して、縮小画像B2を縮小画像表示領域41に表示する縮小処理ステップを実行する(S1)。
【0084】
縮小画像ラベリング処理部22は、選択された解析対象要素Rに対応する縮小画像領域に対して上述のラベリング処理を行ない、縮小画像B2に含まれる染みの領域U2を抽出する縮小画像ラベリング処理ステップを実行する(S2)。その結果が、縮小画像表示領域41に表示された縮小画像B2に反映され、該当する領域が他と異なる色で識別可能に表示される。
【0085】
オブジェクト同定処理部24は、縮小画像ラベリング処理ステップで抽出された染みの領域を原画像のサイズに拡大処理して、原画像に含まれる染みとして同定するオブジェクト同定処理ステップを実行し、原画像に同定された染みの領域を他と異なる色で識別可能に表示するとともに、拡大画像表示領域42に抽出した染みおよびその周辺の拡大画像を表示する(S3)。
【0086】
輪郭領域ラベリング処理部26は、オブジェクト同定処理ステップで同定された染みの輪郭領域(図10(c)の符号V参照)に対して、当該染みと同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、原画像に含まれる染みの領域を抽出する輪郭領域ラベリング処理ステップを実行し、原画像に含まれる染みの領域を他と異なる色で識別可能に表示する(S4)。尚、このとき、輪郭領域Vを適宜複数の領域に分割して、各分割領域に対して輪郭領域ラベリング処理を行ない、その後、同一領域を統合してもよい。
【0087】
その結果、抽出された染み領域に対して、診断処理部4cによりその状態が診断され、表示領域39に診断レポートとして診断結果が表示される。
【0088】
以下に別実施形態を説明する。上述の実施形態では、特定オブジェクトである染みのサイズが想定される場合を説明したが、染みのサイズが大小様々であるときには、縮小処理部20で縮小率の異なる複数の縮小画像を生成し、縮小画像ラベリング処理部22が、各縮小画像に対してラベリング処理を実行すればよい。
【0089】
このとき、縮小画像ラベリング処理部22が、縮小処理部20で生成された縮小率の大きな縮小画像から縮小率の小さな縮小画像の順にラベリング処理を実行し、縮小率の小さな縮小画像に対するラベリング処理時に、縮小率の大きな縮小画像で抽出された特定オブジェクト及びその周辺領域を除いてラベリング処理を実行するように構成すれば、同一の特定オブジェクトに対する重複したラベリング処理が省略されるようになり、確実に特定オブジェクトが抽出でき、しかも、高速にラベリング処理を実行することが可能になる。
【0090】
上述した実施形態では、縮小処理部20が、原画像に含まれる特定オブジェクトである染みの想定画素サイズを10000画素として、縮小率を1/10に決定する例を説明したが、想定サイズ及び想定サイズに対応する縮小率はこのような値に限るものではなく、検出すべき染みのサイズに応じて適宜設定すればよい。さらに、染み以外の大きなサイズを有する特定オブジェクトを抽出する場合も同様である。
【0091】
また、上述した実施形態では、特定オブジェクトである染みが、ほぼ円形状であることを想定して縮小率を決定したが、染みまたは他の特定オブジェクトが楕円形状等の他の形状である場合には、それを考慮して縮小率を決定すればよい。例えば、楕円形状の場合には短径に基づいて縮小率を決定すればよい。また、縦横の縮小率を異なる値に設定してもよい。
【0092】
上述の場合には、ラベリング処理を実行する分割領域の縦横の画素数も異なる値に設定することにより、効率的に処理できる。
【0093】
また、画像処理装置を構成するパーソナルコンピュータの入力部を介したオペレータの設定操作により、縮小倍率の自動設定キーが選択されたときに自動選択される縮小率を可変設定できるような入力処理部を備えることも可能である。
【0094】
ラベリング処理の際の二値化閾値は、対象となる特定オブジェクトにより適宜設定される値であり、画像処理装置を構成するパーソナルコンピュータの入力部を介したオペレータの設定操作により可変設定できるような入力処理部を備えることも可能である。また、二値化閾値として上限値と下限値を設定し、上限値と下限値で規定される値を備えた画素を1、逸脱する値を備えた画素を0に設定するように構成してもよい。
【0095】
尚、上述の実施形態では、画素を構成する赤、緑、青の色成分のうち、青成分に基づいて二値化するものを説明したが、特定オブジェクトの特性によっては、他の色成分に基づいて二値化するものであってもよいし、輝度値に基づいて二値化するものであってもよい。また、原画像を撮影する際に使用された光源の波長との関係で特定の色成分または輝度の何れを二値化すべきかを決定するものであってもよい。
【0096】
上述した実施形態では、移動要素抽出処理部が特定標準顔要素を中心とする所定範囲に位置する他の標準顔要素及び標準解析対象要素を抽出するように構成するものを説明したが、移動要素抽出処理部を、特定標準顔要素と関連付けられた標準解析対象要素のみを抽出するように構成するものであってもよい。この場合、特定標準顔要素を中心とする所定範囲に位置する標準解析対象要素を抽出するように構成することにより、より自然且つ適切に解析対象要素を配置することができる。
【0097】
この場合には、各標準顔要素と標準解析対象要素が予め関連付けられている必要があり、例えば、標準顔要素の眉を額領域R1の標準解析対象要素と関連付け、標準顔要素の目を鼻領域R3及び頬領域R2の標準解析対象要素と関連付け、標準顔要素の口を顎領域R4の標準解析対象要素と関連付け、各標準顔要素及び標準解析対象要素が夫々の関連付け情報とともにメモリ2に格納しておけばよい。
【0098】
尚、移動関数及び標準解析対象要素を抽出する所定領域は上述と同様に構成すればよい。
【0099】
上述した実施形態では、特定オブジェクトが、人の顔画像に含まれる染み、毛穴、皺等の肌の変色領域である例を説明したが、本発明による画像処理装置が対象とする特定オブジェクトは、そのようなものに限定されるものではなく、任意の画像に含まれる任意のオブジェクトを抽出する場合にも適用可能である。例えば、写真画像中に存在する人物の顔を抽出する場合等にも適用できる。
【0100】
上述した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各機能ブロックの具体的構成等を適宜変更設計できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】(a)は画像診断システムの機能ブロック構成図、(b)は画像処理装置のブロック構成図
【図2】顔画像の肌に画定される解析対象要素の説明図
【図3】(a)は表示部に表示された標準顔画像の説明図、(b)は表示部に表示された解析対象顔画像の説明図、(c)は表示部に重ね合わせて表示された標準顔画像と解析対象顔画像の説明図
【図4】(a)は標準顔要素及び標準解析対象要素の配置情報の説明図、(b)はオペレータにより基準点が移動操作されるときの標準顔要素及び標準解析対象要素の移動態様の説明図、(c)はオペレータにより接続線が移動操作されるときの標準顔要素及び標準解析対象要素の移動態様の説明図、(d)は特定標準顔要素とともに移動する他の標準顔要素及び標準解析対象要素が抽出される所定範囲の説明図
【図5】(a)はΔL≦L1のときに他の標準顔要素の基準点の移動距離及び方向を示す説明図、(b)はΔL>L1のときに他の標準顔要素及び標準解析対象要素の基準点の移動距離及び方向を示す説明図
【図6】解析対象顔画像に画定された解析対象要素の説明図
【図7】ラベリング処理の説明図
【図8】(a)は特定オブジェクトが毛穴であるときのラベリング処理の対象画素ブロック(黒丸は毛穴の画素)の説明図、(b)は特定オブジェクトが染みであるときのラベリング処理の対象画素ブロック(黒丸は毛穴の画素)の説明図
【図9】原画像と縮小画像の説明図
【図10】(a)は縮小画像に対するラベリング処理で得られた染み領域の説明図、(b)はオブジェクト同定処理で同定された染み領域の要部の説明図、(c)は輪郭領域ラベリング処理で設定される輪郭領域の要部の説明図、(d)は輪郭領域ラベリング処理の結果を示す要部の説明図
【図11】肌特性抽出処理部の動作を説明するフローチャート
【図12】表示部に表示される画面の説明図
【符号の説明】
【0102】
2:記憶部
3:表示部
4b:肌特性抽出処理部
20:縮小処理部
22:縮小画像ラベリング処理部
24:オブジェクト同定処理部
26:輪郭領域ラベリング処理部
28:原画像ラベリング処理部
29:切替処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像に含まれる特定オブジェクトの想定画素サイズに対応して決定される縮小率で、前記原画像を縮小した縮小画像を生成する縮小処理部と、
前記縮小画像を構成する画素のうち同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、前記縮小画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する縮小画像ラベリング処理部と、
前記縮小画像ラベリング処理部で抽出された特定オブジェクトの領域を前記原画像のサイズに拡大処理して、前記原画像に含まれる特定オブジェクトとして同定するオブジェクト同定処理部を備えている画像処理装置。
【請求項2】
前記縮小画像ラベリング処理部は、前記縮小処理部で生成された縮小率の大きな縮小画像から縮小率の小さな縮小画像の順にラベリング処理を実行し、縮小率の小さな縮小画像に対するラベリング処理時に、縮小率の大きな縮小画像で抽出された特定オブジェクト及びその周辺領域を除いてラベリング処理を実行する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記オブジェクト同定処理部で同定された特定オブジェクトの輪郭領域に対して、前記特定オブジェクトと同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、原画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する輪郭領域ラベリング処理部を備えている請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記原画像を構成する画素のうち同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、前記原画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する原画像ラベリング処理部を備え、
前記原画像に含まれる特定オブジェクトの想定画素サイズに基づいて、前記縮小処理部と前記縮小画像ラベリング処理部と前記オブジェクト同定処理部を作動させるか、前記原画像ラベリング処理部を作動させるかを切り替える切替処理部を備えている請求項1から3の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記特定オブジェクトが、人の顔画像に含まれる染み、毛穴、皺等の肌の変色領域である請求項1から3の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記特定オブジェクトが、人の顔画像に含まれる染み、毛穴、皺等の肌の変色領域であり、前記切替処理部は、毛穴を特定オブジェクトとするときに原画像ラベリング処理部を作動させ、染みを特定オブジェクトとするときに前記縮小処理部と前記縮小画像ラベリング処理部と前記オブジェクト同定処理部を作動させるように切り替える請求項4記載の画像処理装置。
【請求項7】
原画像に含まれる特定オブジェクトの想定画素サイズに対応して決定される縮小率で、前記原画像を縮小した縮小画像を生成する縮小処理ステップと、
前記縮小画像を構成する画素のうち同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、前記縮小画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する縮小画像ラベリング処理ステップと、
前記縮小画像ラベリング処理ステップで抽出された特定オブジェクトの領域を前記原画像のサイズに拡大処理して、前記原画像に含まれる特定オブジェクトとして同定するオブジェクト同定処理ステップを備えている画像処理方法。
【請求項8】
前記縮小画像ラベリング処理ステップは、前記縮小処理ステップで生成された縮小率の大きな縮小画像から縮小率の小さな縮小画像の順にラベリング処理を実行し、縮小率の小さな縮小画像に対するラベリング処理時に、縮小率の大きな縮小画像で抽出された特定オブジェクト及びその周辺領域を除いてラベリング処理を実行する請求項7記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記オブジェクト同定処理ステップで同定された特定オブジェクトの輪郭領域に対して、前記特定オブジェクトと同一属性を備えた複数の連続画素に同一ラベルを付すことにより、原画像に含まれる特定オブジェクトの領域を抽出する輪郭領域ラベリング処理ステップを備えている請求項7または8記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−3842(P2009−3842A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166101(P2007−166101)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】