説明

画像処理装置

【課題】 彩度を画像の鮮やかさに合わせて自動的に最適に補正する。
【解決手段】 入力画像を色変換手段12により色データと、輝度データに分離し、それぞれのデータから彩度補正量算出手段13により彩度の補正量を算出し、彩度補正手段14にて彩度の補正を行う。彩度補正量算出手段13では彩度の低い画像に対しては彩度補正量を抑制することにより無彩色部分に過度の補正がかかるのを防止する。また画像をいくつかの領域に分割しその中で彩度レベルが最も大きい領域の彩度レベル、もしくは輪郭の多い領域の彩度レベル、もしくは肌色の多く分布する領域の彩度レベルを基に彩度補正を行い、人間の感性にあった最適な彩度補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像処理装置に関し、特にテレビジョン、スキャナ、プリンタ、デジタルスチルカメラ等において、画像の色の彩度を調整する,彩度補正を行うものに関するものである。
【0002】
【従来の技術】画像の鮮やかさを補正する彩度補正の手段として、従来、例えば特開平8−329217号公報に示された,画像の彩度変換方法および画像の彩度変換装置がある。以下にこの従来例について説明する。図9はこの従来例としての彩度変換装置のブロック図である。図9において、111は画像入力手段、112はバッファ、113は均等知覚色空間変換手段、114は彩度変換量算出手段、115は彩度変換手段、116は逆均等知覚色空間変換手段、117は画像出力手段である。
【0003】以下にその動作について説明する。処理すべき画像は画像入力手段111により入力され、バッファ112に一旦蓄積された後、彩度変換量算出手段114および均等知覚色空間変換手段113に入力される。彩度変換量算出手段114では入力画像の彩度の広がりを判断し、彩度を上げるための係数xを算出する。また、均等知覚色空間変換手段113では、入力画像データをRGB(赤、緑および青)の色空間あるいはYMC(イエロー、マゼンタおよびシアン)の色空間から均等知覚色空間(CIE1976(L* a* b* )等)に変換する。そして、彩度変換手段115により、色成分を係数xによりx倍することにより彩度を強調し、逆均等知覚色空間変換手段116にて元の色空間に変換し、画像出力手段117により彩度を強調した画像を出力する。
【0004】彩度変換量算出手段114では、係数xを算出する際に、画像の彩度が低い画像は彩度の広がりが小さいため、彩度をより強く強調するためにxの値を大きくして彩度の補正を行う。一方、彩度が高い画像では彩度の広がりが大きくなるため、それに合わせて係数xを小さくして強調量を抑えている。
【0005】彩度の広がりは各画素の彩度成分をあらわす輝度値、R+G−2Gを算出して各輝度値毎の画素数をあらわすヒストグラムを作成し、輝度値の大きい方から画素数を積算してあらかじめ設定したしきい値を超えた点の輝度値とし、これを基に図10のように彩度補正係数xを算出している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この従来の画像の彩度変換装置によれば、彩度が低い画像に対しては強い彩度強調を施してしまうため、例えば画像全体にビルが写っているような彩度の低い画像では、画像全体の彩度が低いと判断されてしまうため、過度の彩度強調がかかり、本来無彩色部分であるところに色がついてしまったり、また図11のようにビルBの前に人物Pが立っている場合などでは、人物Pに対してビルBが画面全体に占める割合が大きいため、やはり画像全体の彩度が低いと判断されてしまい、人物Pに対して過度の彩度強調がなされてしまうという問題を有していた。
【0007】この発明は、上記のような従来のものの問題を解決するためになされたもので、最適な彩度補正を行うことができる画像処理装置を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願の請求項1の発明に係る画像処理装置は、画像の彩度を画像の鮮やかさに合わせて補正する画像処置装置において、入力画像の色データおよび輝度データから彩度の補正量を算出する彩度補正量算出手段と、該彩度補正量算出手段により算出された補正量に基づき彩度の補正を行う彩度補正手段とを備え、前記彩度補正量算出手段は、入力画像の彩度成分が基準値より小さい場合には彩度成分の大きさに応じて徐々に大きくなる補正量を算出し、彩度成分が基準値より大きい場合には彩度補正量を彩度成分の大きさに応じて徐々に小さくなる補正量を算出するようにしたものである。
【0009】また、本願の請求項2の発明に係る画像処理装置は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記彩度補正量算出手段は、入力画像の彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、該彩度成分抽出手段により抽出した彩度成分から彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とを有するようにしたものである。
【0010】また、本願の請求項3の発明に係る画像処理装置は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記彩度補正量算出手段は、入力画像を複数の領域に分割する領域分割手段と、前記分割された複数の領域のそれぞれに対し画像データの彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、前記複数の領域毎に抽出した彩度成分から最も彩度成分の大きい領域の彩度成分をもとに画像全体の彩度を補正する彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とを有するようにしたものである。
【0011】また、本願の請求項4の発明に係る画像処理装置は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記彩度補正量算出手段は、入力画像を複数の領域に分割する領域分割手段と、前記分割された複数の領域のそれぞれに対し画像データの輪郭成分を抽出する輪郭成分抽出手段と、前記複数の領域毎に抽出した輪郭成分の平均値を算出する輪郭成分平均化手段と、前記輪郭成分の平均値が最も大きい領域の画像データの彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、前記抽出した彩度成分から画像全体の彩度を補正する彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とを有するようにしたものである。
【0012】また、本願の請求項5の発明に係る画像処理装置は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記彩度補正量算出手段は、入力画像を複数の領域に分割する領域分割手段と、前記分割された複数の領域のそれぞれに対し画像データの肌色成分を抽出する肌色成分抽出手段と、前記肌色成分が最も多く分布する領域の画像データの彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、前記抽出した彩度成分から画像全体の彩度を補正する彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とを有するようにしたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に、本願の請求項1ないし請求項5に記載された発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。
(実施の形態1)図1は、請求項1に対応する、本発明の原理的構成を示す画像処理装置のブロック図である。図1において、11は画像入力手段であり、処理すべき画像データが入力される。12は色変換手段であり、入力画像データの表色系を、輝度データおよび色データの組に変換する。13は彩度補正量算出手段であり、画像の色データをもとに彩度データを作成し、その彩度情報から彩度補正量を決定する。14は彩度補正手段であり、彩度補正量算出手段13の補正量をもとに彩度の補正を行う。15は色変換手段であり、輝度データおよび色データの組をもとの画像データの表色系に変換する。16は処理された画像データを出力する画像出力手段である。
【0014】次に、動作について説明する。画像入力手段11により、例えばビデオキャプチャーによりテレビジョン信号をキャプチャーしたデータ,スキャナからの読み取りデータ,デジタルスチルカメラからのデータ等が入力され、その入力されたデータの種類としては赤(R)、緑(G)および青(B)のデータがある。
【0015】色変換手段12では入力した画像データRGBを輝度データ(Y)と色データ(Cr、Cb)とに変換する。例えば国際無線通信諮問委員会のRec601−2では、この画像データRGBから、輝度データ(Y)と色データ(Cr、Cb)への変換は、変換式Y=0.299R+0.587*G+0.114GCr=0.713(R−Y)
Cb=0.564(B−Y)
により変換されるものとなっている。この変換式をもとに、入力画像を輝度データおよび色データに変換する。
【0016】彩度補正量算出手段13では、入力された色データ(Cr、Cb)から彩度データを算出し、その彩度レベルに基づき彩度の補正量を算出する。
【0017】図2は、この彩度補正量算出手段13の構成を示すブロック図であり、これは本願の請求項2の発明に対応するものである。この図2の彩度補正量算出手段は、彩度データ作成手段21および彩度レベル算出手段22からなり、入力画像の彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、彩度補正係数発生手段23からなり、彩度成分抽出手段により抽出した彩度成分から彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とから構成されるものである。
【0018】まず、彩度データ作成手段21により色データCrおよびCbから彩度データSへの変換を行うものである。その変換は、変換式S=√(Cr2 +Cb2 )
を用いて行う。
【0019】次に、彩度レベル算出手段22では彩度データSから画像の彩度レベル、すなわち入力画像の鮮やかさの度合いを算出する。彩度レベルは彩度データSの平均値または最大値にて決定する。平均値にて算出する場合には彩度レベルは、(彩度レベル)=(全彩度データ)/(全画素数)
となる。
【0020】また、最大値にて算出する場合には、入力彩度データの最大値をそのまま使用するのではなくて、図3に示すように入力画像の彩度データが分布している場合、各彩度データ毎の分布数があるしきい値TH1を越え、なおかつその中の最大の彩度レベルAを最大値にすることにより、ノイズに影響されることなく彩度レベルを算出することができる。また彩度レベルの最大値からの分布の積算量があるしきい値を越える彩度レベルを最大値として算出してもよい。
【0021】そして、彩度レベルを基に彩度補正係数を彩度補正係数発生手段23にて算出する。彩度補正係数発生手段23では図4に示す彩度レベルと補正係数の関係をもとに補正係数を算出する。図4において、彩度レベルが小さい場合には元々無彩色に近い画像であるとして補正量を小さくし、また彩度レベルが大きい場合にも十分鮮やかな画像であるとして補正量を抑制するような補正係数を算出する。すなわち、彩度レベルがL2までは彩度レベルが大きくなるにつれて補正係数が大きくなるような特性をもたせ、彩度レベルがL2からL3までは彩度レベルが大きくなるにつれて補正係数が小さくなるような特性をもたせ、彩度レベルがL3以上では画像の彩度レベルが十分に大きいため、補正係数を1、即ち彩度の補正を行わないような特性をもたせている。
【0022】例えば補正係数を図4中のK1のように設定した場合、彩度レベルに対する補正係数は次式にて算出される。
(彩度レベル)<L2の場合、 (補正係数)=(彩度レベル)/L2+1 L2≦(彩度レベル)<L3の場合、 (補正係数)=(彩度レベル)/(L2−L3)
+2−L2/(L2−L3)
={(彩度レベル)−L2}/(L2−L3)+2となり、(彩度レベル)がL2からL3に向けて増加するにつれて、補正係数は最大値(この場合は2)から次第に減少する。
L3≦(彩度レベル)の場合(補正係数)=1.0また、図4中のK2に示すように補正係数を設定することにより、彩度レベルがL1より小さい場合には入力画像が無彩色に近い画像であると判断して補正係数=1.0として彩度の補正を行わないようにしてもよい。このように補正係数を設定することにより、無彩色が多い画像に対して過度の彩度補正がかかるのを防止することができる。なお彩度レベルと補正係数の関係を図4に示すように決めているが、この対応付けは、補正係数の特性が、上に凸の形状をもつものであればこれに限るものではない。また補正係数の数値例についてもこの図4の例に限るものではない。
【0023】図1の彩度補正手段14では、図2の彩度補正係数発生手段23から発生する補正係数により彩度の補正を行う。彩度の補正は色変換手段12で変換された色信号に対して補正係数を乗ずることによりこれを行う。すなわち色データCr,Cbに対して、Cr' =Cr×(補正係数)
Cb' =Cb×(補正係数)
として補正後の色データCr' およびCb' を算出することにより、彩度の補正を行う。
【0024】次に、図1の色変換手段15において、輝度データ(Y)と色データ(Cr',Cb' )から元のRGBデータに変換する。この場合の変換式は、R=Y+1.4026Cr'G=Y−0.7144Cr' −0.3444Cb'B=Y+1.7730Cb'となる。変換後の画像データは画像出力手段16にて出力される。
【0025】このように、本実施の形態1によれば、入力された画像データを輝度データと色データとに変換し、色データから彩度データを算出し、その彩度レベルに基づき、彩度レベルが小さい間は彩度レベルが大きくなるにつれて補正係数が大きくなり、彩度レベルがある値を越えてさらに大きくなるにつれて補正係数が小さくなり、画像の彩度レベルが十分大きくなると、補正係数が1、即ち彩度の補正を行わないような補正係数を算出し、色データにこの補正係数を乗ずることにより彩度補正を行い、この彩度補正された色データと輝度データを元の入力データと同じ形式の画像データに戻すことにより、無彩色が多い画像に対して過度の彩度補正がかかるのを防止でき、最適な彩度補正を行うことができる。
【0026】(実施の形態2)次に、入力画像を複数の領域に分割し、領域毎に彩度レベルを算出して彩度の補正を行う場合について以下に説明する。これは、本願の請求項3の発明に対応するものであり、まず入力画像を図5に示すようにいくつかの領域、この図5の例では#1ないし#9の領域に分割し、各領域毎に彩度補正データを作成して彩度レベルを算出し、最も大きい彩度レベルを画像全体の彩度レベルとして彩度の補正を行うようにするものである。
【0027】入力画像が例えば図11に示すようにビルBの前に人物Pが立っているようなものの場合、画像全体にわたって彩度レベルを算出して彩度補正を行ったのでは、図5の領域#1、#2、#3、#4、#6、#7、#9に相当する領域では無彩色成分が多いため、鮮やかさを増す方向、つまり大きい彩度補正がかかってしまう。これはビルの彩度レベルに合わせた形で彩度補正がなされてしまうためである。そこで、図1の彩度補正量算出手段13を図6に示すように構成し、分割した領域毎に彩度レベルを算出し、その中で最も彩度レベルが大きい領域を基準にして画像全体の彩度補正を行うようにすると、例えば領域#5の人物を基準にした彩度補正を行うことが可能となり、最適な彩度補正ができる。
【0028】この図6の彩度補正量算出手段は、領域分割手段61からなり、入力画像を複数の領域に分割する領域分割手段と、彩度データ作成手段62および彩度レベル算出手段63からなり、分割された複数の領域のそれぞれに対し画像データの彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、彩度レベル最大値算出手段64および彩度補正係数発生手段65からなり、複数の領域毎に抽出した彩度成分から最も彩度成分の大きい領域の彩度成分をもとに画像全体の彩度を補正する彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とから構成されるものである。
【0029】まず領域分割手段61により画像を複数の領域に分割し、各領域毎の彩度データを彩度データ作成手段62にて作成し、領域毎の彩度レベルを彩度レベル算出手段63にて算出する。次に彩度レベル最大値算出手段64にて各領域毎の彩度レベルから最大の彩度レベルを算出し、その彩度レベルを基に彩度補正係数を彩度補正係数発生手段65にて算出する。
【0030】その際、彩度補正係数を従来例の図10に示すような特性を用いて決定しても過度の補正がかかることはない。これは、上述のように、画像を複数の領域に分割し、各領域毎に彩度補正データを作成して彩度レベルを算出し、最も大きい彩度レベルを画像全体の彩度レベルとして彩度の補正を行うようにしているため、画像全体のなかで彩度が低い部分が多くを占めるような画像の場合、その彩度の低い部分にひきずられて、彩度の高い部分までもが過度に補正されてしまい、元々彩度の高い部分に対して過度の彩度強調がなされてしまう,という不具合が生じることはなくなるものである。また、彩度補正係数を図4に示すような特性を用いて決定することにより、さらに最適な彩度補正を行うことができる。
【0031】このように、本実施の形態2によれば、入力画像を複数の領域に分割し、領域毎に彩度レベルを算出して、その彩度レベルの最大値を求め、この最大の彩度レベルを画像全体の彩度レベルとして彩度の補正を行うようにしているため、画像全体のなかで彩度が低い部分が多くを占めるような画像であっても、その彩度が低い部分に基づいて彩度補正係数を発生することがなくなるので、元々彩度の高い部分に対して過度の彩度強調がなされてしまうのを防止できる。
【0032】(実施の形態3)次に、入力画像を領域分割し、領域毎に輪郭成分を抽出して彩度の補正を行う場合について以下に説明する。これは、本願の請求項4の発明に対応するものであり、この場合の彩度補正量算出手段13は図7に示すような構成となる。この図7の彩度補正量算出手段は、領域分割手段71からなり、入力画像を複数の領域に分割する領域分割手段と、輪郭データ算出手段72からなり、分割された複数のそれぞれに対し画像データの輪郭成分を抽出する輪郭成分抽出手段と、輪郭データ平均値算出手段73からなり、複数の領域毎に抽出した輪郭成分の平均値を算出する輪郭成分平均化手段と、作業領域指定手段74,彩度データ作成手段75,彩度レベル算出手段76からなり、輪郭成分の平均値が最も大きい領域の画像データの彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、彩度補正係数発生手段77からなり、抽出した彩度成分から画像全体の彩度を補正する彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とから構成されるものである。
【0033】この彩度補正量算出手段には図1の色変換手段12から出た輝度データと色データの両方が入力される。色変換手段12から出力された輝度データを領域分割手段71にて領域毎に分割し、領域毎の輪郭データを輪郭データ算出手段72にて算出する。輪郭データは注目画素とその周辺画素の差の絶対値で算出する。例えば注目画素とその上,下,左,右に位置する画素で輪郭データを求める場合は、(輪郭データ)=|(注目画素データ)−(上画素データ)−(下画素データ)−(左画素データ)−(右画素データ)|となる。
【0034】次に領域毎の輪郭データの平均値を輪郭データ平均値算出回路73にて算出し、最も平均値の大きい領域を算出して彩度データを算出する領域を作業領域指定手段74にて指定する。この作業領域に従ってその範囲の彩度データを彩度データ作成手段75にて作成し、彩度レベル算出手段76にて彩度の平均値または最大値にて彩度レベルを算出し、彩度補正係数発生手段77にて彩度レベルを基に彩度の補正係数を発生させ、彩度の補正を行う。
【0035】このように、本実施の形態3によれば、輪郭成分の最も多い領域の彩度レベルを基に全体の彩度を決定することにより、最も画像のなかで目立つ輪郭の多い部分を中心に彩度の補正を行うようにしたので、見た目に最適な彩度補正を行うことができる。
【0036】その際、補正係数を従来例の図10に示すような特性を用いて決定しても過度の補正がかかることはない。これは、画像全体のなかで彩度が低い部分が多くを占めるような画像であっても、その彩度が低い部分に基づいて彩度補正係数を発生することがなくなるからである。また彩度補正係数を図4に示すような特性を用いて決定することにより、最も画像のなかで目立つ輪郭の多い部分を中心に彩度の補正を行うので、見た目に最適な彩度補正を行うことができる。
【0037】(実施の形態4)次に、入力画像を複数の領域に分割し、各領域毎に肌色成分を抽出して彩度の補正を行う場合について以下に説明する。これは本願の請求項5の発明に対応し、この時の彩度補正量算出手段13は図8に示すような構成となる。この図8の彩度補正量算出手段は、領域分割手段81からなり、入力画像を複数の領域に分割する領域分割手段と、肌色データ抽出手段82からなり、分割された複数の領域のそれぞれに対し画像データの肌色成分を抽出する肌色成分抽出手段と、肌色データ分布数算出手段83,作業領域指定手段84,彩度データ作成手段85,彩度レベル算出手段86からなり、肌色成分が最も多く分布する領域の画像データの彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、彩度補正係数発生手段87からなり、抽出した彩度成分から画像全体の彩度を補正する彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とから構成されるものである。
【0038】まず、図1の色変換手段12から出力された色データを領域分割手段81にて複数の領域に分割し、それぞれの領域毎に肌色である画素を肌色データ抽出手段82にて抽出する。肌色であるかどうかの判断は色データCrおよびCbから色相データHを求め、その色相データが、ある範囲の数値である場合にその画素を肌色と判断する。この色相データは次式にて算出される。
H=tan-1(Cr/Cb)
図12は色相と肌色の分布の関係を示す図であり、肌色はある特定の色相領域に分布している。従って色相データHがH1からH2までの値であるとき、肌色であるとして抽出を行う。このH1、H2の値としては例えばH1=110°、H2=130°とする。肌色データ分布数算出回路83では領域毎の肌色データの分布数を計測する。次に肌色データの最も分布数の多い領域を算出し、彩度データを算出する領域を作業領域指定手段84にて指定する。
【0039】この作業領域に従ってその範囲の彩度データを彩度データ作成手段85にて作成し、彩度レベル算出手段86にて彩度の平均値または最大値にて彩度レベルを算出し、彩度補正係数発生手段87にて彩度レベルを基に彩度の補正係数を発生させ、彩度の補正を行う。この場合、H1,H2の値はH1=110゜、H2=130゜である必要はなく、画像処理装置の特性に合わせて設定すればよい。このように肌色の最も多く分布している領域の彩度レベルを基に全体の彩度を決定することにより、画面のなかで中心となる人物を基準に最適な彩度の補正を行うことができる。
【0040】その際、補正係数を従来例の図10に示すような特性を用いて決定しても過度の補正がかかることはない。これは、画像全体のなかで彩度が低い部分が多くを占めるような画像であっても、画面のなかで中心となる人物を基準に彩度補正を実行できるため、その彩度が低い部分に基づいて彩度補正係数を発生することがなくなるからである。また、彩度補正係数を図4に示すような特性を用いて決定することにより、さらに最適な彩度補正を行うことができる。
【0041】
【発明の効果】以上のように、本願の請求項1の発明に係る画像処理装置によれば、画像の彩度を画像の鮮やかさに合わせて補正する画像処置装置において、入力画像の色データおよび輝度データから彩度の補正量を算出する彩度補正量算出手段と、該彩度補正量算出手段により算出された補正量に基づき彩度の補正を行う彩度補正手段とを備え、前記彩度補正量算出手段は、入力画像の彩度成分が基準値より小さい場合には彩度成分の大きさに応じて徐々に大きくなる補正量を算出し、彩度成分が基準値より大きい場合には彩度補正量を彩度成分の大きさに応じて徐々に小さくなる補正量を算出するようにしたので、画像の彩度を画像の鮮やかさに合わせて補正する際に、彩度の低い画像に対しては彩度補正量を抑制することができ、無彩色部分に過度の補正がかかるのを防止することができる効果がある。
【0042】また、本願の請求項2の発明に係る画像処理装置によれば、請求項1に記載の画像処理装置において、前記彩度補正量算出手段は、入力画像の彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、該彩度成分抽出手段により抽出した彩度成分から彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とを有するようにしたので、画像の彩度を画像の鮮やかさに合わせて補正する際に、彩度の低い画像に対しては彩度補正量を抑制することができ、無彩色部分に過度の補正がかかるのを防止することができる装置の具体的な構成が得られる効果がある。
【0043】また、本願の請求項3の発明に係る画像処理装置によれば、請求項1に記載の画像処理装置において、前記彩度補正量算出手段は、入力画像を複数の領域に分割する領域分割手段と、前記分割された複数の領域のそれぞれに対し画像データの彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、前記複数の領域毎に抽出した彩度成分から最も彩度成分の大きい領域の彩度成分をもとに画像全体の彩度を補正する彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とを有するようにしたので、無彩色の画像データと、有彩色の画像データとが混在している場合においても最も彩度の大きい領域での彩度情報をもとに補正量を決定することができ、最適な彩度補正を行うことができる効果がある。
【0044】また、本願の請求項4の発明に係る画像処理装置によれば、請求項1に記載の画像処理装置において、前記彩度補正量算出手段は、入力画像を複数の領域に分割する領域分割手段と、前記分割された複数の領域のそれぞれに対し画像データの輪郭成分を抽出する輪郭成分抽出手段と、前記複数の領域毎に抽出した輪郭成分の平均値を算出する輪郭成分平均化手段と、前記輪郭成分の平均値が最も大きい領域の画像データの彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、前記抽出した彩度成分から画像全体の彩度を補正する彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とを有するようにしたので、輪郭成分の多いところ、つまり画像の中心となる部分の彩度情報をもとに補正量を決めることができ、最適な彩度補正を行うことができる効果がある。
【0045】また、本願の請求項5の発明に係る画像処理装置によれば、請求項1に記載の画像処理装置において、前記彩度補正量算出手段は、入力画像を複数の領域に分割する領域分割手段と、前記分割された複数の領域のそれぞれに対し画像データの肌色成分を抽出する肌色成分抽出手段と、前記肌色成分が最も多く分布する領域の画像データの彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、前記抽出した彩度成分から画像全体の彩度を補正する彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とを有するようにしたので、画像の中で最も注目される人物の彩度情報をもとに彩度補正量を算出でき、人間の感性にあった最適な彩度補正を行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における画像処理装置の全体ブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における彩度補正量算出手段のブロック図
【図3】本発明の実施の形態1における彩度データの分布図
【図4】本発明の実施の形態1における彩度補正係数発生手段の特性図
【図5】本発明の実施の形態2における領域分割の説明図
【図6】本発明の実施の形態2における彩度補正量算出手段のブロック図
【図7】本発明の実施の形態3における彩度補正量算出手段のブロック図
【図8】本発明の実施の形態4における彩度補正量算出手段のブロック図
【図9】従来の画像の彩度変換装置のブロック図
【図10】従来の画像の彩度変換方法の説明図
【図11】本発明の実施の形態1ないし4における入力画像サンプルを示す図
【図12】本発明の実施の形態4における色相と肌色分布の関係図
【符号の説明】
11 画像入力手段
12,15 色変換手段
13 彩度補正量算出手段
14 彩度補正手段
15 色変換手段
16 画像出力手段
21,62,75,85 彩度データ作成手段
22,63,76,86 彩度レベル算出手段
23,65,77,87 彩度補正係数発生手段
61,71,81 領域分割手段
64 彩度レベル最大値算出手段
72 輪郭データ算出手段
73 輪郭データ平均値算出手段
74,84 作業領域指定手段
82 肌色データ抽出手段
83 肌色データ分布数算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像の彩度を画像の鮮やかさに合わせて補正する画像処置装置において、入力画像の色データおよび輝度データから彩度の補正量を算出する彩度補正量算出手段と、該彩度補正量算出手段により算出された補正量に基づき彩度の補正を行う彩度補正手段とを備え、前記彩度補正量算出手段は、入力画像の彩度成分が基準値より小さい場合には彩度成分の大きさに応じて徐々に大きくなる補正量を算出し、彩度成分が基準値より大きい場合には彩度補正量を彩度成分の大きさに応じて徐々に小さくなる補正量を算出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】 請求項1に記載の画像処理装置において、前記彩度補正量算出手段は、入力画像の彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、該彩度成分抽出手段により抽出した彩度成分から彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とを有するものであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】 請求項1に記載の画像処理装置において、前記彩度補正量算出手段は、入力画像を複数の領域に分割する領域分割手段と、前記分割された複数の領域のそれぞれに対し画像データの彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、前記複数の領域毎に抽出した彩度成分から最も彩度成分の大きい領域の彩度成分をもとに画像全体の彩度を補正する彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とを有するものであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】 請求項1に記載の画像処理装置において、前記彩度補正量算出手段は、入力画像を複数の領域に分割する領域分割手段と、前記分割された複数の領域のそれぞれに対し画像データの輪郭成分を抽出する輪郭成分抽出手段と、前記複数の領域毎に抽出した輪郭成分の平均値を算出する輪郭成分平均化手段と、前記輪郭成分の平均値が最も大きい領域の画像データの彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、前記抽出した彩度成分から画像全体の彩度を補正する彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とを有するものであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】 請求項1に記載の画像処理装置において、前記彩度補正量算出手段は、入力画像を複数の領域に分割する領域分割手段と、前記分割された複数の領域のそれぞれに対し画像データの肌色成分を抽出する肌色成分抽出手段と、前記肌色成分が最も多く分布する領域の画像データの彩度成分を抽出する彩度成分抽出手段と、前記抽出した彩度成分から画像全体の彩度を補正する彩度補正量を演算する彩度補正量演算手段とを有するものであることを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図9】
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【公開番号】特開2000−224607(P2000−224607A)
【公開日】平成12年8月11日(2000.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−20298
【出願日】平成11年1月28日(1999.1.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】