説明

画像処理装置

【課題】地表面に生じた変化を高精度に捉えることができる画像処理装置を得る。
【解決手段】取得時間の異なる同一領域を観測した複数枚のレーダ画像を格納するデータ格納部1と、複数枚のレーダ画像から2枚のレーダ画像を選択して、2枚のレーダ画像の相関分布であるコヒーレンスマップを異なる窓の大きさでそれぞれについて複数枚算出するコヒーレンス算出処理部2と、得られた解像度の異なる各コヒーレンスマップにおける注目画素のコヒーレンスの値から最尤推定処理を実施するコヒーレンス最尤推定処理手段(尤度関数算出部20及び最尤推定処理部30)と、推定されたコヒーレンスの結果を格納する出力格納部2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航空機や人工衛星に搭載したレーダを用いて、同一領域を異なる時間に複数回観測して得られたレーダ画像から、地表面に生じた微小変化を高精度に捉えるための指標として用いる複素相関(コヒーレンス)の分布を、解像度の異なる複数枚のコヒーレンスマップを用いて高精度に推定する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
取得時間の異なる複数枚のレーダ画像から地表面に生じた変化を抽出する技術の1つにCCD(Coherent Change Detection)がある。CCDでは、レーダ画像の有する輝度情報の他に位相情報をも利用した変化抽出を実施するため、変化に対する感度が輝度変化のみによる変化抽出技術と比較して高い特長がある。
【0003】
CCDにおいて変化領域を抽出するための指標として、2枚のレーダ画像間の複素相関(コヒーレンス)を用いる。このコヒーレンスは、2枚のレーダ画像において変化のない領域においては1に近い値をとり、変化のある領域においては0に近い値を示す性質がある。
【0004】
この性質を利用して、コヒーレンスの分布(コヒーレンスマップ)の強弱に基づいた閾値処理を実施して、2枚のレーダ画像間の違い(変化)を抽出する手法がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、2枚のレーダ画像間のコヒーレンスを精度よく推定するために、コヒーレンスを推定する局所領域(以下、窓と称す)を予め設定した変化形状に分割し、その類似性から注目画素と同じ属性にある画素を選択し、選択された画素により窓を再構成し、再構成された窓を用いてコヒーレンスを推定する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
さらに、2枚のレーダ画像間にコヒーレンスを精度よく推定するために、予め設定した大きさの窓を用いて推定したコヒーレンスの値を最尤推定処理することで注目画素のコヒーレンスを推定する技術がある(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−310391号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Preiss, M, Gray, D. and Stacy, N. "A change detection technique for repeat pass interferometric SAR." IEEE Geoscience and Remote Sensing Sympoium Proceesingd, 2003. IGARASS'03、 vol.2、 pp.21-25, 2003.
【非特許文献2】Touzi. R, Lopes. A, Bruniquel. J, and Vachon. P.W, "Coherence estimation for SAR imagery," IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing, vol. 37, pp.135 - 149, 1999.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
CCDによる変化抽出処理を高精度に実施する場合、2枚のレーダ画像間のコヒーレンスを高精度に得る必要があるが、2枚のレーダ画像間のコヒーレンスはアンサンブル平均により与えられるため、実際の処理においてはこれを推定する必要がある。一般的なコヒーレンスの推定方式として、注目画素とその近傍画素で構成される窓に含まれるデータから、次式(1)に示すような空間平均処理により推定する方式がある。
【0010】
【数1】

【0011】
ここで、Z(y、x)はn枚目のレーダ画像の位置(y、x)が持つデータ値を示し、Zn+1(y、x)はn+1枚目のレーダ画像の位置(y、x)が持つデータ値を示す。また、lは注目画素(y、x)のコヒーレンスを算出するために用いる画素の個数であり、コヒーレンスを計算する範囲に相当する。*は複素共役を示す。コヒーレンスは、コヒーレンス算出に用いる2枚のレーダ画像が同一の軌道で取得されるという前提の下、地表面に変化がない場合に「1」に近い値をとり、地表面に変化が生じた場合には小さい値をとることが知られている。
【0012】
空間平均処理によるコヒーレンスの推定では、コヒーレンスマップの空間分解能とコヒーレンスの推定精度に相反関係があり、高精度かつ高分解能なコヒーレンスマップを得ることが困難であった。このため、高いコヒーレンスの推定精度と高いコヒーレンスマップの空間分解能を得るために、特許文献1に記載されている従来の画像処理装置では、予め地表面に生じた変化の形状を仮定し、その形状に応じてコヒーレンスを推定するための窓の形状を適応的に変化させながらコヒーレンスの推定を実施した。
【0013】
しかし、特許文献1に記載されている従来の画像処理装置では、予め地表面に生じた変化の形状を予め仮定しているため、変化の形状が複雑な形状をしている場合には、再構成される窓の形状が地表面に生じた変化の形状と対応しておらず、その結果、コヒーレンスの推定精度が低下する問題があった。
【0014】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、地表面に生じた変化を高精度に捉えることができる画像処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係る画像処理装置は、取得時間の異なる同一領域を観測した複数枚のレーダ画像を格納するデータ格納手段と、複数枚のレーダ画像から2枚のレーダ画像を選択して、2枚のレーダ画像の相関分布であるコヒーレンスマップを異なる窓の大きさでそれぞれについて複数枚算出するコヒーレンス算出処理手段と、得られた解像度の異なる各コヒーレンスマップにおける注目画素のコヒーレンスの値から最尤推定処理を実施するコヒーレンス最尤推定処理手段と、推定されたコヒーレンスの結果を格納する出力格納手段とを備える。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、複数枚の解像度の異なるレーダ画像間の複素相関分布に基づいて、注目画素の各解像度で推定されたコヒーレンスの値から最尤推定処理を実施することで、注目画素の真のコヒーレンスを高精度に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1による画像処理装置の構成を示すブロック構成図である。
【図2】異なる窓の大きさで推定した各コヒーレンスマップの概念図である。
【図3】真のコヒーレンスをDが母数である時の結合確率密度関数の概念図である。
【図4】尤度関数の説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2における画像処理装置の構成を示すブロック構成図である。
【図6】2つの異なるコヒーレンスを有する境界付近に注目画素が位置する場合の尤度関数の説明図である。
【図7】この発明の実施の形態3における画像処理装置の構成を示すブロック構成図である。
【図8】一様領域に注目画素が位置する場合に窓の組み合わせを変化させた場合の尤度関数の説明図である。
【図9】2つの異なるコヒーレンスを有する境界付近に注目画素が位置する場合に窓の組み合わせを変化させた場合の尤度関数の説明図である。
【図10】この発明の実施の形態4における画像処理装置の構成を示すブロック構成図である。
【図11】注目画素とその周囲の画素により構成させる領域のデータ取得方法について説明した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の画像処理装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0019】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による画像処理装置の構成を示すブロック構成図である。なお、この実施の形態1では、レーダ画像の一例として合成開口レーダ(Synthetic Aperture radar:SAR)により得られた地表面のSAR画像を対象に説明するが、この発明はSAR画像に限定されるものではなく、これに類するものであれば種類は問わない。また、使用するSAR画像も2枚として説明するが、複数枚のデータを用いてもよい。
【0020】
以下、図1に従い、その構成を説明する。図1に示す実施の形態1に係る画像処理装置は、取得時間の異なる2回の同一領域の観測により得られた2枚のSAR画像を格納するデータ格納部1と、データ格納部1に格納されている2枚のSAR画像から大きさの異なるL個の窓によりそれぞれ前述した式(1)に基づいて注目画素のコヒーレンスを算出するコヒーレンス算出部10と、コヒーレンス算出部10において算出されたL個のコヒーレンスからあるコヒーレンスDを母数とする注目画素の結合確率密度関数の尤度関数を算出する尤度関数算出部20と、尤度関数算出部20において算出された注目画素のコヒーレンスを異なる大きさの窓で推定した場合に得られる結合確率密度関数の尤度関数が最大となるコヒーレンスを算出することにより注目画素の真のコヒーレンスを推定する最尤推定処理部30と、最尤推定処理部40により算出された注目画素のコヒーレンスを格納する出力格納部2とを備える。なお、尤度関数算出部20と最尤推定処理部30とにより、解像度の異なる各コヒーレンスマップにおける注目画素のコヒーレンスに値から最尤推定処理を実施するコヒーレンス最尤推定処理手段を構成する。
【0021】
次に動作について説明する。データ格納部1では、同一の観測領域に対して取得時間が異なる2回の観測を実施して得られたそれぞれの観測領域における地表面の複素データが格納されている。
【0022】
コヒーレンス算出部10では、データ格納部1に格納されている2枚のSAR画像に基づいて、注目画素とその近傍画素により構成される大きさの異なるL個の窓に含まれるデータから、2枚のSAR画像上の注目画素に関するL個のコヒーレンスd,d,・・・,dをそれぞれ式(1)に基づいて算出して得る。
【0023】
その概念図を図2に示す。図2におけるコヒーレンスマップ1は、最も小さい窓の大きさで推定したコヒーレンスマップを示しており、コヒーレンスマップ2がコヒーレンスマップ1よりも大きい窓で推定したコヒーレンスマップ、コヒーレンスマップLが最も大きい窓で推定したコヒーレンスマップである。これら1からLまでのコヒーレンスマップにおける注目画素のコヒーレンスがd,d,・・・,dである。
【0024】
なお、大きさの異なる窓により算出されるL個のコヒーレンスを予め計算し、データ格納部1に格納しておいてもよく、その場合にはこのコヒーレンス算出部10を省略することも可能である。
【0025】
尤度関数算出部20では、コヒーレンス算出部10において算出されたL個の注目画素のコヒーレンスから、注目画素の真のコヒーレンスDを母数とする結合確率密度関数p(d,d,・・・,d|D)に基づく尤度関数を算出する。なお、ここでは尤度関数による説明を実施するが、事後確率分布のように真のコヒーレンスDを母数として異なる大きさの窓で推定されたコヒーレンスの値がパラメータとなる確率密度関数であれば何を用いてもよい。
【0026】
図3は、真のコヒーレンスがDである注目画素について、2つの異なる大きさの窓でコヒーレンスを推定した場合の結合確率密度分布を等高線により示した概念図である。2つの異なる大きさの窓で推定されたコヒーレンスの値がそれぞれd,dとであるならば、真のコヒーレンスがDであるデータを異なる2つの窓の大きさで推定した場合の結合確率密度は、同図において2つのコヒーレンスの交点となる。
【0027】
このように、2つのコヒーレンスの交点に位置する結合確率密度を各Dについて算出することで、図4に示す尤度関数を得ることができる。ここで、尤度関数lik(D)=p(d,d,・・・,d|D)のように表される。なお、予め各Dおよび各窓の大きさで算出される結合確率密度関数や尤度関数を計算しておき、データベースなどに格納しておくことで尤度関数を計算することを省略することが可能となり、処理の高速化を図ることができる(図示省略)。
【0028】
尤度関数算出部20において算出した注目画素における結合確率密度関数の尤度関数は、図4に示すように真のコヒーレンスDの時に最大の尤度を有する。従って、最尤推定処理部30は、式(2)に基づいて尤度が最大となるコヒーレンスDを算出することで、注目画素における真のコヒーレンスDを高精度に推定することができる。
【0029】
【数2】

【0030】
出力格納部2は、この実施の形態1において算出された結果を格納すると共に、例えば表示部(図示省略)に表示する。
【0031】
したがって、実施の形態1によれば、複数枚の解像度の異なるレーダ画像間の複素相関分布に基づいて、注目画素の各解像度で推定されたコヒーレンスの値から最尤推定処理を実施することで、注目画素の真のコヒーレンスを高精度に得ることができ、地表面に生じた変化を高精度に捉えることができる。
【0032】
実施の形態2.
実施の形態1においては、注目画素に対する予め設定したL個の異なる大きさの窓により推定されたコヒーレンスの値から最尤推定処理を実施して、注目画素のコヒーレンスの値を推定した。コヒーレンスを推定する窓の大きさが大きくなった場合、異なるコヒーレンスを有する領域の境界付近においては、コヒーレンスの推定結果の推定精度が低下するため、これを含んだ最尤推定処理の結果、得られる結果の精度も低下すると考えられる。
【0033】
境界付近を大きい窓の大きさで推定した場合には、2つの異なるコヒーレンスを有する領域が混在するデータについては、結合確率密度の尤度が低い値を示すと考えられる。本実施の形態2においては、この性質を利用して、尤度に対して予め設定した閾値処理を実施し、尤度が閾値以下の場合にはある窓の大きさで推定したコヒーレンスの値を注目画素のコヒーレンスとする。
【0034】
図5は、この発明の実施の形態1による画像処理装置の構成を示すブロック構成図である。なお、図1と同一もしくはそれに相当する部分は同一もしくはそれに相当する符号で示しており、詳細な説明は割愛する。
【0035】
図5に示す実施の形態2に係る画像処理装置は、図1に示す実施の形態1の構成に対し、尤度関数算出部20において算出した注目画素における異なるL個の窓により推定されたコヒーレンスの結合確率密度の尤度関数において、最大となる尤度を算出する最大尤度算出部31と、最大尤度算出部31において算出した注目画素における最大尤度と予め設定した閾値とを比較し、注目画素が異なるコヒーレンスを有する領域付近に位置する画素であるかを判定する尤度判定処理部40と、予め設定した窓の大きさで推定された注目画素におけるコヒーレンスの値を出力するコヒーレンス出力部50とをさらに備える。
【0036】
次に動作について説明する。最大尤度算出部31は、異なる窓の大きさで算出された注目画素に関するL個のコヒーレンスの結合確率密度関数に関する尤度関数において最大となる尤度を式(3)に基づいて算出する。
【0037】
【数3】

【0038】
なお、max[f(x)]は関数f(x)の最大値を算出する演算子である。
【0039】
尤度判定処理部40は、最大尤度算出部31において算出された最大尤度Likと予め設定した閾値を式(4)に基づいて比較・判定処理する。例えば、注目画素が2つの異なるコヒーレンスを有する境界付近に位置する画素である場合、推定する窓が小さい場合にはこれら2つの境界のコヒーレンスを有するデータが混在する可能性は低いが、窓の大きさを大きくなると異なるコヒーレンスを有するデータが混在するデータによりコヒーレンスを推定することになる。この場合、得られる尤度関数は、図6に示すように、一様な領域に対して本処理を実施した場合と比較して尤度が低い値を示すと考えられる。この性質を利用し、注目画素が異なる2つのコヒーレンスを有する境界付近に位置する画素であるかを判定することができる。
【0040】
【数4】

【0041】
コヒーレンス出力部50は、予め設定した窓の大きさで推定された注目画素のコヒーレンスを出力する。例えば、尤度判定処理部40にて注目画素が異なるコヒーレンスを有する領域の境界付近に位置する画素であると判定された場合には、小さい窓で推定されたコヒーレンスの値を用いることで、2つの領域のデータが混在したデータによるコヒーレンスの推定による影響を低減することが可能となる。なお、ここでは予め設定した小さい窓で推定されたコヒーレンスの値を出力するとしているが、最適なものを使用者が選択してもよいし、いくつか設定した窓の大きさで推定されたコヒーレンスの平均値などを用いてもよい。
【0042】
尤度に対して閾値処理を実施することで、異なる2つのコヒーレンスを有するデータによるコヒーレンス推定を実施することを回避することが可能となり、異なる2つのコヒーレンスを有する境界付近でのコヒーレンスの推定精度の低下を防止することが可能となる。
【0043】
実施の形態3.
実施の形態2においては、注目画素が異なるコヒーレンスを有する領域の境界付近に位置する画素であることの指標として尤度を用いて判定し、境界付近に位置する画素であると判定された場合には、予め設定した窓の大きさで推定されたコヒーレンスを出力することで、境界付近におけるコヒーレンスの推定精度の低下を防止した。
【0044】
しかし、注目画素が境界付近に位置する画素であるかを判定するための閾値や出力するコヒーレンスの窓の大きさなどを予め設定する場合、設定値が性能を満足する値でないと、得られる性能も十分ではない可能性がある。この発明における実施の形態3では、異なる大きさの窓で推定されたコヒーレンスの結合確率密度を異なる組み合わせで複数用意し、その中から最適なものを選択し最尤推定処理により注目画素におけるコヒーレンスを推定する。
【0045】
図7は、この発明の実施の形態3による画像処理装置の構成を示すブロック構成図である。なお、図1及び図5と同一もしくはそれに相当する部分は同一もしくはそれに相当する符号で示しており、詳細な説明は割愛する。以下、図7に示した各ブロック図の機能について説明する。
【0046】
図7に示す実施の形態3に係る画像処理装置は、図1に示す実施の形態1の構成に対し、コヒーレンス算出部10においてコヒーレンスの推定に使用されたL個の異なる窓の大きさについて、尤度関数算出部20において算出する異なる窓の大きさで推定されるコヒーレンスの結合確率密度関数及びその尤度関数の組み合わせを設定する組み合わせ選択部60と、尤度関数算出部20において算出した注目画素における異なるL個の窓により推定されたコヒーレンスの結合確率密度の尤度関数において、最大となる尤度を算出する最大尤度算出部31と、異なる大きさの窓の組み合わせで得られたそれぞれの最大尤度の中から最大となる尤度を算出する最大尤度算出処理部32とさらに備え、尤度関数算出部20及び最大尤度算出部31を窓の組み合わせの数だけ備えられる。
【0047】
次に動作について説明する。組み合わせ選択部60は、コヒーレンス算出部10において算出されたL個の大きさの異なる窓で推定されたコヒーレンスについて、尤度関数算出部20において結合確率密度関数及びその尤度関数を算出するためのS個の窓の組み合わせを設定する。例えば、組み合わせる個数を2個とした場合、L={1,2},L={3,4},L={L−1,L}という組み合わせなどがある。なお、ここでは、隣り合う2つのLを有するデータを使用したが、この組み合わせの方法についてはこれに限ったものではなく、どのような組み合わせを用いてもよい。また、組み合わせの数も2つに限定されるものではない。
【0048】
最大尤度算出処理部32は、組み合わせ選択部60で設定したS個の組み合わせに基づいて尤度関数算出部20及び最大尤度算出部31において算出された各組み合わせにおけるS個の最大尤度から最も尤度が最大となるものを算出し、最適な窓の組み合わせの尤度関数を出力する。
【0049】
図8と図9は、組み合わせる窓の大きさを順に大きくしていった場合に得られる窓の組み合わせと尤度の関係について示した概念図である。図8はコヒーレンスが一様な領域、図9は異なるコヒーレンスを有する領域の境界付近に注目画素が存在する場合を想定している。また、図8及び図9において、横軸の窓の組み合わせは、大きくなるにつれて組み合わせに用いる窓の大きさが大きくなっている。
【0050】
図8に示した一様な領域の場合、窓の大きさが大きい組み合わせから算出される尤度が小さい組み合わせで推定される尤度と比較して大きくなる傾向にある。一方、図9のような境界付近に位置する画素においては、窓の組み合わせを大きくすると、2つの領域のデータが混在しない組み合わせの最大となる窓の大きさの組み合わせのときに尤度は最大値を示し、それ以上大きくなると尤度が低下する傾向にある。従って、この尤度が最大となるような窓の組み合わせが最適な窓の組み合わせであり、これを最尤推定処理することで注目画素における真のコヒーレンスを得ることができる。
【0051】
なお、この際に尤度が最大となる真のコヒーレンスDを計算することで最尤推定処理部30を省略することが可能となる。また、最大尤度算出処理部32にて算出された最大尤度が予め設定した閾値に以下の場合に、予め設定した条件で計算されたコヒーレンスの値を出力するような実施の形態2に記載の方法と組み合わせることも可能である。
【0052】
実施の形態4.
前述した実施の形態1から3においては、注目画素に関して異なるL個のコヒーレンスを用いて結合確率密度関数を算出し、その尤度関数から真のコヒーレンスを推定した。次に、この発明における実施の形態4では、注目画素とその周囲の画素により構成させる一定の領域に含まれる画素のデータを用いて結合確率密度関数を算出する。
【0053】
図10は、この発明の実施の形態4による画像処理装置の構成を示すブロック構成図である。なお、図1、図5、図7と同一もしくはそれに相当する部分は同一もしくはそれに相当する符号で示しており、詳細な説明は割愛する。以下、図10に示した各ブロック図の機能について説明する。
【0054】
図10に示す実施の形態4に係る画像処理装置は、図1に示す実施の形態1の構成に対し、予め設定した注目画素とその周囲の領域の大きさに含まれるデータを選択する領域選択部70をさらに備えており、尤度関数算出部20及び最尤推定処理部30による最尤推定処理は、領域選択部70により選択された領域に含まれる画素のデータを用いて実施される。
である。
【0055】
次に動作について説明する。領域選択部70は、図11に示す概念図に示すように、予め設定した注目画素とその周囲の領域に含まれる画素を選択する。これにより、一様領域においては最尤推定処理の推定精度を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1 データ格納部、2 出力格納部、10 コヒーレンス算出部、20 尤度関数算出部、30 最尤推定処理部、31 最大尤度算出部、32 最大尤度算出処理部、40 尤度判定処理部、50 コヒーレンス出力部、60 組み合わせ選択部、70 領域選択部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得時間の異なる同一領域を観測した複数枚のレーダ画像を格納するデータ格納手段と、
複数枚のレーダ画像から2枚のレーダ画像を選択して、2枚のレーダ画像の相関分布であるコヒーレンスマップを異なる窓の大きさでそれぞれについて複数枚算出するコヒーレンス算出処理手段と、
得られた解像度の異なる各コヒーレンスマップにおける注目画素のコヒーレンスの値から最尤推定処理を実施するコヒーレンス最尤推定処理手段と、
推定されたコヒーレンスの結果を格納する出力格納手段と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記コヒーレンス最尤推定処理手段は、
異なる窓の大きさで推定されるコヒーレンスの結合確率密度関数の尤度関数を算出する尤度関数算出手段と、
得られた尤度関数について尤度が最大となるコヒーレンスを算出する最尤推定算出手段と
を有する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記コヒーレンス最尤推定処理手段は、
前記尤度関数算出手段により算出された尤度関数について最大となる尤度を算出する最大尤度算出手段と、
前記最大尤度算出手段により算出された最大となる尤度を所定の閾値と比較し、注目画素が異なるコヒーレンスを有する領域に位置する画素であるか否かを判定する尤度判定処理手段と、
前記尤度判定処理手段による判定結果に応じて予め設定した条件で得られたコヒーレンスの値を出力するコヒーレンス出力手段と
をさらに有する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像処理装置において、
尤度関数を算出するための異なる窓の大きさの組み合わせを選択する組み合わせ選択部をさらに備え、
前記コヒーレンス最尤推定処理手段は、
異なる窓の大きさの組み合わせで推定されるコヒーレンスの結合確率密度関数の尤度関数を算出する複数の尤度関数算出手段と、
前記複数の尤度関数算出手段によりそれぞれ算出された尤度関数について最大となる尤度を算出する最大尤度算出手段と、
各組み合わせでの尤度の最大値を比較し最も尤度が最大となる組み合わせを選択する最大尤度算出処理手段と、
最大尤度を有する組み合わせから算出された尤度関数を用いて最尤推定処理により注目画素のコヒーレンスを推定する最尤推定処理部と
を有する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の画像処理装置において、
前記コヒーレンス算出処理手段により得られた解像度の異なる各コヒーレンスマップにおける注目画素とその周囲の近傍画素で構成される一定の領域を選択する領域選択手段をさらに備え、
前記コヒーレンス最尤推定処理手段は、前記領域選択手段により選択された領域に含まれる画素のデータを用いて最尤推定処理を実施する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
取得時間の異なる同一領域を観測した複数枚のレーダ画像から2枚のレーダ画像を選択して、2枚のレーダ画像の相関分布であるコヒーレンスマップを異なる窓の大きさでそれぞれについて複数枚算出した結果を予め格納するデータベースと、
得られた解像度の異なる各コヒーレンスマップにおける注目画素のコヒーレンスの値から最尤推定処理を実施するコヒーレンス最尤推定処理手段と、
推定されたコヒーレンスの結果を格納する出力格納処理部と
を備える画像処理装置。
【請求項7】
取得時間の異なる同一領域を観測した複数枚のレーダ画像から2枚のレーダ画像を選択して、2枚のレーダ画像の相関分布であるコヒーレンスマップを異なる窓の大きさでそれぞれについて複数枚算出し、異なる大きさの窓を用いてコヒーレンスを推定した場合のコヒーレンスの結合確率密度関数の尤度関数を予め算出した結果を格納するデータベースと、
算出された結合確率密度関数の尤度関数を用いて最尤推定処理により注目画素の真のコヒーレンスを推定する最尤推定算出手段と、
推定されたコヒーレンスの結果を格納する出力格納処理部と
を備える画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−237068(P2010−237068A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86004(P2009−86004)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】