説明

画像処理装置

【課題】画像データにおける黒文字を表す画素データの解像度を低下させることなく色変換に要する時間を短縮する。
【解決手段】3次元LUTを記憶するSDRAMと、SDRAMよりも高速アクセスが可能であり1次元LUTを記憶するCPUの内蔵SRAMと、を備える画像処理装置において、600dpiのRGBの画素データをCMYKの画素データに色変換するにあたり、グレースケールの画素データ(R=G=Bの画素データ)についてはステップS210で肯定的な判定をして解像度を保ちつつPB用1次元LUTによる色変換を行なう(ステップS230)。一方、グレースケールでない画素データについては、ステップS210で否定的な判定をして、解像度を300dpiに低下させた上で(ステップS260)3次元LUTによる色変換を行なう(ステップS270)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像処理装置としては、RGB空間のビットマップデータを3次元ルックアップテーブル(LUT)を用いてCMYK(シアン,マゼンタ,イエロー,ブラック)空間に変換し、その後CMYのデータについては低解像度化を行なうものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような処理を行なうことにより、Kのデータについては高解像度で印刷することができ、CMYのデータについては低解像度にしたことで高速に印刷することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−127438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような画像処理装置では、RGBの色空間で表された画像データについて3次元LUTを用いてCMYKの色空間への色変換を行なってからCMYの解像度を低下させている。そのため、色変換処理については解像度を低下させない場合と同じ時間を要するという問題があった。この場合、RGBの画素データの解像度を低下させてから色変換を行なうこととすれば色変換に要する時間は短縮されるが、そうするとKの画素データについても解像度が低下してしまう。Kの画素データは画像における黒文字を表す画素データとして用いられることが多く、黒文字を表す画素データは画像と比べて解像度を低下させたくないという要望がある。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、画像データにおける黒文字を表す画素データの解像度を低下させることなく色変換に要する時間を短縮する画像処理装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の第1の画像処理装置は、
所定の色空間で表される色変換前の画素データに基づく3次元データと前記所定の色空間とは異なる色空間で表される色変換後の画素データとを対応づけた3次元ルックアップテーブル(LUT)を記憶する第1記憶手段と、
前記3次元LUTのデータサイズよりも小さく前記第1記憶手段よりもアクセス速度が速い記憶領域であり、前記色変換前の画素データに基づく1次元データと前記所定の色空間とは異なる色空間で表される色変換後の画素データとを対応づけた1次元LUTを記憶する第2記憶手段と、
色変換前の画素データを含む画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データ取得手段によって取得された色変換前の画素データの色表現がグレースケールか否かにより該色変換前の画素データを前記1次元LUTを用いて色変換するか前記3次元LUTを用いて色変換するかを判定するLUT判定手段と、
前記LUT判定手段により前記1次元LUTを用いて色変換すると判定された色変換前の画素データについては、該色変換前の画素データに基づく1次元データに対応する色変換後の画素データを前記1次元LUTを用いて導出し、前記LUT判定手段により前記3次元LUTを用いて色変換すると判定された色変換前の画素データについては、該色変換前の画素データを元の解像度より低い低解像度の画素データに変換し、該低解像度の画素データに基づく3次元データに対応する色変換後の画素データを前記3次元LUTを用いて導出する変換手段と、
を備えたものである。
【0008】
この第1の画像処理装置では、色変換前の画素データを含む画像データを取得し、取得した色変換前の画素データのうち色表現がグレースケールの画素データについてはアクセス速度が速い第2記憶手段に記憶された1次元LUTを用いて色変換を行ない、色表現がグレースケールでない画素データについては元の解像度より低い低解像度の画素データに変換した後に第1記憶手段に記憶された3次元LUTを用いて色変換を行なう。これにより、グレースケールの画素データについては第2記憶手段の1次元LUTを用いることで、全ての画素データを第1記憶手段に記憶されたLUTを用いて色変換を行なう場合に比べて解像度を保ちつつ色変換に要する時間が短縮される。また、グレースケールでない画素データについては色変換前に解像度を低くすることで、色変換後に解像度を低下させる場合と比べて色変換に要する時間が短縮される。ここで、画像データにおけるグレースケールの画素データは黒文字を表す画素データを含んでいるため、グレースケールの画素データの解像度を保つことで、黒文字を表す画素データの解像度を低下させたくないという要望を満たすことができる。したがって、画像データにおける黒文字を表す画素データの解像度を低下させることなく色変換に要する時間を短縮することができる。また、1次元LUTは3次元LUTと比べてデータサイズが小さいため、高速アクセスが可能な第2記憶手段は小さい記憶領域を有していればよい。したがって3次元LUTについても第2記憶手段に記憶するような場合と比較してコストの増大を抑えることができる。
【0009】
本発明の第2の画像処理装置は、
所定の色空間で表される色変換前の画素データに基づく3次元データと前記所定の色空間とは異なる色空間で表される色変換後の画素データとを対応づけた3次元ルックアップテーブル(LUT)を記憶する第1記憶手段と、
前記3次元LUTのデータサイズよりも小さく前記第1記憶手段よりもアクセス速度が速い記憶領域であり、前記色変換前の画素データに基づく1次元データと前記所定の色空間とは異なる色空間で表される色変換後の画素データとを対応づけた1次元LUTを記憶する第2記憶手段と、
色変換前の画素データを含む画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データ取得手段によって取得された色変換前の画素データが前記画像データにおける黒文字領域内にあるか否かにより該色変換前の画素データを前記1次元LUTを用いて色変換するか前記3次元LUTを用いて色変換するかを判定するLUT判定手段と、
前記LUT判定手段により前記1次元LUTを用いて色変換すると判定された色変換前の画素データについては、該色変換前の画素データに基づく1次元データに対応する色変換後の画素データを前記1次元LUTを用いて導出し、前記LUT判定手段により前記3次元LUTを用いて色変換すると判定された色変換前の画素データについては、該色変換前の画素データを元の解像度より低い低解像度の画素データに変換し、該低解像度の画素データに基づく3次元データに対応する色変換後の画素データを前記3次元LUTを用いて導出する変換手段と、
を備えたものである。
【0010】
この第2の画像処理装置では、色変換前の画素データを含む画像データを取得し、取得された色変換前の画素データのうち画像データの黒文字領域内にある画素データについてはアクセス速度が速い第2記憶手段に記憶された1次元LUTを用いて色変換を行ない、画像データの黒文字領域内にない画素データについては元の解像度より低い低解像度の画素データに変換した後に第1記憶手段に記憶された3次元LUTを用いて色変換を行なう。これにより、黒文字領域内にある画素データについては第2記憶手段の1次元LUTを用いることで、全ての画素データを第1記憶手段に記憶されたLUTを用いて色変換を行なう場合に比べて解像度を保ちつつ色変換に要する時間が短縮される。また、黒文字領域内にない画素データについては色変換前に解像度を低くすることで、色変換後に解像度を低下させる場合と比べて色変換に要する時間が短縮される。したがって、画像データにおける黒文字を表す画素データの解像度を低下させることなく色変換に要する時間を短縮することができる。また、1次元LUTは3次元LUTと比べてデータサイズが小さいため、高速アクセスが可能な第2記憶手段は小さい記憶領域を有していればよい。したがって3次元LUTについても第2記憶手段に記憶するような場合と比較してコストの増大を抑えることができる。
【0011】
本発明の第3の画像処理装置は、
所定の色空間で表される色変換前の画素データに基づく3次元データと前記所定の色空間とは異なる色空間で表される色変換後の画素データとを対応づけた3次元ルックアップテーブル(LUT)を記憶する第1記憶手段と、
前記3次元LUTのデータサイズよりも小さく前記第1記憶手段よりもアクセス速度が速い記憶領域であり、前記色変換前の画素データに基づく1次元データと前記所定の色空間とは異なる色空間で表される色変換後の画素データとを対応づけた1次元LUTを記憶する第2記憶手段と、
色変換前の画素データを含む画像データを取得する画像データ取得手段と、
高品質モードを含む所定の処理モード群からユーザーが選択した処理モードを取得するモード取得手段と、
前記モード取得手段により取得された処理モードが前記高品質モードのときには、前記画像データ取得手段によって取得された色変換前の画素データが前記画像データにおける黒文字領域内にあるか否かにより、該色変換前の画素データを前記1次元LUTを用いて色変換するか前記3次元LUTを用いて色変換するかを判定し、前記モード取得手段により取得された処理モードが前記高品質モード以外の処理モードのときには、前記画像データ取得手段によって取得された色変換前の画素データの色表現がグレースケールか否かにより該色変換前の画素データを前記1次元LUTを用いて色変換するか前記3次元LUTを用いて色変換するかを判定するLUT判定手段と、
前記LUT判定手段により前記1次元LUTを用いて色変換すると判定された色変換前の画素データについては、該色変換前の画素データに基づく1次元データに対応する色変換後の画素データを前記1次元LUTを用いて導出し、前記LUT判定手段により前記3次元LUTを用いて色変換すると判定された色変換前の画素データについては、該色変換前の画素データを元の解像度より低い低解像度の画素データに変換し、該低解像度の画素データに基づく3次元データに対応する色変換後の画素データを前記3次元LUTを用いて導出する変換手段と、
を備えたものである。
【0012】
この第3の画像処理装置では、色変換前の画素データを含む画像データを取得し、高品質モードを含む所定の処理モード群からユーザーが選択した処理モードが高品質モードのときには、取得された色変換前の画素データのうち画像データの黒文字領域内にある画素データについてはアクセス速度が速い第2記憶手段に記憶された1次元LUTを用いて色変換を行ない、画像データの黒文字領域内にない画素データについては元の解像度より低い低解像度の画素データに変換した後に第1記憶手段に記憶された3次元LUTを用いて色変換を行なう。また、高品質モードを含む所定の処理モード群からユーザーが選択した処理モードが高品質モード以外の処理モードのときには、取得された色変換前の画素データのうち色表現がグレースケールの画素データについてはアクセス速度が速い第2記憶手段に記憶された1次元LUTを用いて色変換を行ない、色表現がグレースケールでない画素データについては元の解像度より低い低解像度の画素データに変換した後に第1記憶手段に記憶された3次元LUTを用いて色変換を行なう。これにより、第2記憶手段の1次元LUTを用いて色変換を行なう画素データについては、第1記憶手段に記憶されたLUTを用いて色変換を行なう場合に比べて解像度を保ちつつ色変換に要する時間が短縮される。また、第1記憶手段の3次元LUTを用いて色変換を行なう画素データについては、色変換前に解像度を低くすることで、色変換後に解像度を低下させる場合と比べて色変換に要する時間が短縮される。そして、高品質モードのときには黒文字領域内の画素データの解像度が保たれ、高品質モード以外の処理モードのときには色表現がグレースケールの画素データの解像度が保たれるため、いずれの場合も黒文字を表す画素データは解像度が保たれる。したがって、画像データにおける黒文字を表す画素データの解像度を低下させることなく色変換に要する時間を短縮することができる。また、ユーザーが高品質モードを選択したときには黒文字領域にない画素データについては色表現がグレースケールであっても解像度を低下させる。ここで、黒文字以外の画素データ(例えば写真を表す画素データ)において色表現がグレースケールの画素データと色表現がグレースケールでない画素データとの解像度が異なると画像データの表示や印刷の際の品質が低下する可能性があるが、高品質モードのときにはこのようなことを防止できる。一方、ユーザーが高品質モード以外の処理モードを選択したときには色表現がグレースケールの画素データであるか否かによって解像度を低下させないか否かを判定するため高品質モードと比べて簡易な処理で判定を行なうことができ処理時間の一層の短縮が期待できる。さらに、1次元LUTは3次元LUTと比べてデータサイズが小さいため、高速アクセスが可能な第2記憶手段は小さい記憶領域を有していればよい。したがって3次元LUTについても第2記憶手段に記憶するような場合と比較してコストの増大を抑えることができる。
【0013】
上述した第1〜第3のいずれかの画像処理装置において、前記変換手段による色空間変換後の画素データに基づく画像を印刷媒体に印刷出力する印刷実行手段と、前記印刷媒体がコンポジットブラックでの印刷に適した所定の印刷媒体か否かを判定する媒体判定手段と、を備え、前記第1記憶手段は、前記3次元LUTとして、RGB色空間で表される色変換前の画素データに基づく3次元データとCMY又はCMYK色空間で表される色変換後のカラーの画素データとを対応づけたLUTを記憶する手段であり、前記第2記憶手段は、前記1次元LUTとして、RGB色空間で表される色変換前の画素データに基づく1次元データとCMY又はCMYK色空間で表される色変換後のコンポジットブラック(CB)の画素データとを対応づけたCBテーブルと、RGB色空間で表される色変換前の画素データに基づく1次元データとK色空間で表される色変換後のピュアブラック(PB)の画素データとを対応づけたPBテーブルと、を記憶する手段であり、前記変換手段は、前記LUT判定手段により前記1次元LUTを用いて色変換すると判定された色変換前の画素データについては、前記媒体判定手段により前記印刷媒体がコンポジットブラックでの印刷に適していると判定されたときには、該色変換前の画素データに基づく1次元データに対応する色変換後の画素データを前記CBテーブルを用いて導出し、前記媒体判定手段により前記印刷媒体がコンポジットブラックでの印刷に適していないと判定されたときには、該色変換前の画素データに基づく1次元データに対応する色変換後の画素データを前記PBテーブルを用いて導出する手段としてもよい。これにより、1次元LUTを用いた色変換の際に、コンポジットブラックの画素データとピュアブラックの画素データのうち印刷媒体に適した画素データに色変換して印刷を行なうため、印刷した画像の品質が向上する。なお、「K色空間で表される色変換後のピュアブラック(PB)の画素データ」とは、Kの値でブラックの濃淡が特定される画素データであればよく、Kの値のみを持つ画素データだけでなく、CMYKの値を持つがC,M,Yがいずれも値0である画素データなど、K以外の値を持つ画素データも含む意である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】インクジェットプリンター10の構成の概略を示す構成図。
【図2】印刷ヘッド25の構成の概略を示す構成図。
【図3】ASIC45と印刷ヘッド25との接続関係を示す説明図。
【図4】PB用1次元LUT43aの一例を示す説明図。
【図5】CB用1次元LUT43bの一例を示す説明図。
【図6】ASIC45の機能ブロック図。
【図7】3次元LUT47の一例を示す説明図。
【図8】印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図9】高速色変換処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図10】高品質色変換処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるインクジェットプリンター10の構成の概略を示す構成図であり、図2は印刷ヘッド25の構成の概略を示す構成図であり、図3はASIC45と印刷ヘッド25との接続関係を示す説明図である。本実施形態のインクジェットプリンター10は、図1に示すように、記録紙Sに画像を印刷するプリンター機構20と、各種処理を実行するコントローラー40と、ユーザーへ情報を表示可能でありユーザーの支持を入力可能である操作パネル50と、印刷媒体である記録紙Sの種類を判別する記録紙判別センサー60と、携帯用の記憶媒体であり画像データが保存されたメモリーカードMCとの接続に用いられるカードインターフェース(I/F)70と、を備えている。コントローラー40や操作パネル50,記録紙判別センサー60,カードI/F70はバス80によって電気的に接続されている。
【0016】
プリンター機構20は、左右方向にループ状に架け渡されたベルト21により駆動されガイド22に沿って左右(主走査方向)に往復動するキャリッジ23と、このキャリッジ23に搭載されシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)(以下、適宜C,M,Y,Kとする)の各色のインクを個別に収容したインクカートリッジ24と、各インクカートリッジ24から供給された各インクに圧力をかけて記録紙Sに向かってインクを吐出する印刷ヘッド25と、背面側から供給された記録紙Sを手前側へ送り出す搬送ローラー26とを備える。印刷ヘッド25には、図2に示すように、CMYの各色のインクを個別に吐出可能なノズル32C,32M,32Yが記録紙Sの搬送方向(副走査方向)に沿って配置されたノズル群30C,30M,30Yと、ブラック(K)のインクを吐出可能なノズル32Kが副走査方向に沿って配置されたノズル群30K1,30K2とが形成されている。ここで、各ノズル群の構成について、シアン(C)のノズル群30Cを例に挙げて説明する。ノズル群30Cは、2つのノズル列C1,C2からなり、各ノズル列C1,C2にはそれぞれピッチが所定長さLとなるようにノズル32Cが配置されている。また、ノズル列C1のノズル32Cとノズル列C2のノズル32Cとは副走査方向に沿って千鳥(ジグザグ)になるよう配置され、そのピッチが所定長さLの半分の長さL/2となっている。本実施形態では、所定長さLはドットが150dpiの解像度となるように設定され、ノズル列C1によって形成されるドットとノズル列C2によって形成されるドットとが副走査方向に交互に一列に並ぶように印刷を行なうことにより、シアン(C)のドットの解像度は300dpiとなる。マゼンタ(M)のノズル群30Mおよびイエロー(Y)のノズル群30Yも同様に構成されているため、得られる解像度は300dpiとなる。また、ブラック(K)のノズル群30K1,30K2も同様にそれぞれ2つのノズル列K11,K12および2つのノズル列K21,K22からなる。さらに、ノズル群30K1のノズル32Kとノズル群30K2のノズル32Kとの副走査方向のピッチが長さL/2の半分の長さL/4となるよう配置されている。このため、ノズル群30K1によって形成されるドットとノズル群30K2によって形成されるドットとが副走査方向に交互に一列に並ぶように印刷を行なうことにより、ブラック(K)のドットの解像度は600dpiとなる。このように、印刷ヘッド25は、合計10列のノズル列を備え、CMYのドットの解像度が300dpi、Kのドットの解像度が600dpiとなるよう構成されている。即ち、CMYのノズル密度に比してKのノズル密度が高密度となっている。また、印刷ヘッド25は、各ノズルに個々に設けられた圧電素子に電圧を印加して変形させ、これにより加圧されたインクが吐出されることで記録紙Sにドットを形成している。図3では、ノズル列C1のノズル32Cにそれぞれ設けられる圧電素子をまとめて圧電素子38C1として図示し、印刷ヘッド25は、この圧電素子38C1に電圧を印可する回路として駆動回路36C1を備える。同様に、各ノズル列C2〜K22の圧電素子をまとめて圧電素子38C2〜38K22とし、これらの圧電素子38C2〜38K22に電圧を印加する回路として駆動回路36C2〜36K22を備える。なお、印刷ヘッド25は計10列のノズル列を備えるため、計10個の駆動回路36C1〜36K22を備えることになる。
【0017】
コントローラー40は、図1に示すように、CPU41などが搭載されたSOC(System On a Chip)40aと、データの読み書きが可能なSDRAM46と、各種データや各種テーブルなどを記憶したROM48と、を備えるマイクロプロセッサとして構成されている。SOC40aには、CPU41の他に、図示しないSRAMを備え印刷処理に関する各種処理を実行したりプリンター機構20を制御したりするASIC45が搭載されている。CPU41,ASIC45,SDRAM46及びROM48は、バス80によって電気的に接続されている。
【0018】
CPU41は、インクジェットプリンター10における情報処理や制御を中心的に行なう装置であり、キャッシュメモリーとして内蔵されたSRAM42を備えている。このSRAM42はSDRAM46と比較して十分速いアクセス速度(例えば10倍以上など)を有しており、且つ、SDRAM46の容量(例えば数十メガバイト)に対して小さな容量(例えば4KBなど数キロバイト〜数十キロバイト)を持つ記憶領域である。SRAM42には、ピュアブラック(PB)用1次元ルックアップテーブル(LUT)43a及びコンポジットブラック(CB)用1次元LUT43bが記憶されている。図4にPB用1次元LUT43aの一例を示し、図5にCB用1次元LUT43bの一例を示す。PB用1次元LUT43aは、図4に示すように1次元の入力値0〜255(8ビット)と出力値であるKの階調値0〜255(8ビット)とを対応づけたものであり、データサイズは256×8ビット=256バイトである。このPB用1次元LUT43aにより、RGBの画素データをKのみでブラック(グレー)を表現する画素データすなわちPBの画素データに色変換することができる。また、CB用1次元LUT43bは、図5に示すように1次元の入力値0〜255(8ビット)と出力値であるCMYKの各階調値0〜255(8ビット)とを対応づけたものであり、データサイズは256×32ビット=1キロバイトである。このCB用1次元LUT43bにより、RGBの画素データをCMYKでブラック(グレー)を表現する画素データすなわちCBの画素データに色変換することができる。なお、PB用1次元LUT43a,CB用1次元LUT43bはいずれも入力値が1次元の値であるので、3次元の値すなわちRGB値を持つRGBの画素データに基づいて1次元の値を導出し、その値を入力値として色変換を行なう必要がある。1次元の値の導出については後述する。
【0019】
ASIC45は、図6に示すように、ハーフトーン処理部45aと、マイクロウィーブ処理部45bと、駆動信号送信部45cとを備えている。ハーフトーン処理部45aは、各8ビットのCMYKの画素データを各2ビットの2値化データに変換するハーフトーン処理を行なう。ハーフトーン処理は、ディザ法や誤差拡散法を用いて行なう。ディザ法は、予め設定されたディザマトリックスによって与えられる閾値と各画素の階調値との大小比較によってドットのオン/オフに2値化するものである。また、誤差拡散法は、注目画素の階調値と所定の閾値とを大小比較してドットのオン/オフに2値化し、2値化後の階調値と元の階調値との差分である誤差を注目画素の周囲の未処理画素に一定の割合で拡散するものである。このように、ハーフトーン処理では、いずれの処理を用いる場合であっても画素データのCMYK毎に処理が必要となる。マイクロウィーブ処理部45bは、ハーフトーン処理された2値化データを印刷ヘッド25がドットを形成する順番に並べ替えて1パス分のイメージデータを生成する。このとき、ノズルピッチが印刷解像度に相当する間隔よりも広い場合には、先のパスで形成されたドットのラインの間を次のパスで形成するドットのラインで埋めるいわゆるマイクロウィーブ処理が行なわれるようドットの形成順を決定する。駆動信号送信部45cは、1パス分のイメージデータから印刷ヘッド25の圧電素子38C1〜38K22に印可する電圧のパルスを駆動信号として生成し駆動回路36C1〜36K22にそれぞれ送信する。駆動信号は、図3に示すように、ASIC45から印刷ヘッド25の10個の駆動回路36C1〜36K22のそれぞれに接続された10本の送信ケーブル44(44a〜44j)を介して送信される。これらの各処理部は、処理が完了したデータをSDRAM46の図示しないデータバッファーに記憶したり、SDRAM46のデータバッファーから処理対象のデータを読み込んで処理を行なったりすることができる。なお、図示は省略したが、プリンター機構20のキャリッジ23を往復動するモーターや搬送ローラー26を駆動するモーターの制御は、ASIC45が行なう。
【0020】
SDRAM46は、上述したように例えば数十メガバイトの容量を持つ記憶領域であり、3次元LUT47が記憶されている。ここで、3次元LUT47は、3次元の入力値であるRGB色空間の画素データのRGBの階調値(8ビット×3色)を出力値であるCMYK色空間の画素データのCMYKの階調値(8ビット×4色)に色変換するためのテーブルである。この3次元LUT47は、図7に示すように、3次元のRGB空間のR軸、G軸、B軸のそれぞれをグリッド数Nd(例えば値32)で分割した格子点データを有している。なお、図では、見やすさを考慮してグリッド数を減らして表現している。この格子点データには、RGBの値に対応するCMYKの値が対応付けられている。ここで、入力値であるRGBの値が各8ビット(値0〜255)である場合にはグリッド数Ndが値256であればRGBの画素データからCMYKの画素データへの高品質な色変換が可能である。しかし、その場合には3次元LUTのデータサイズが大きくなってしまいSDRAM46に記憶できない。そこで、本実施形態ではグリッド数Ndを間引いて値32とし、格子点の間のデータは周知の立方体補完処理により色変換を行なうこととしている。グリッド数Ndが値32の場合、3次元LUT47のデータサイズは32×32×32×8ビット×4色=131キロバイトであり、SRAM42には記憶できないが、SDRAM46には記憶可能な大きさとなっている。
【0021】
操作パネル50は、ユーザーがインクジェットプリンター10に対して各種の指示を入力するためのデバイスであり、各種の指示に応じた文字や画像が表示されるカラー液晶パネルにより構成された表示部52や、各種操作を行なう際にユーザーが押下するカーソルキーや決定キーなどが配置された操作部54が設けられている。ユーザーはこの操作パネル50により、インクジェットプリンター10が後述する印刷処理を行なう際の処理モードを設定することができる。本実施形態では、写真などの画像をきれいに印刷することを優先する高品質モードと印刷処理時間の短縮を優先する高速モードとのいずれかに処理モードを設定することができる。なお、ユーザーによって設定された処理モードはSDRAM46の所定領域に記憶される。
【0022】
記録紙判別センサー60は、図示しない用紙トレイに載置された記録紙Sに光を照射し、その反射光の強度により記録紙Sの種類を判別するセンサーである。本実施形態では、記録紙Sには、CBでの印刷すなわちCMYKのインクで表現されたブラックの印刷に適した専用紙と、CBでの印刷には適さずPBでの印刷すなわちKのインクのみで表現されたブラックの印刷に適した普通紙との2種類があるものとする。なお、記録紙判別センサー60は、反射光に代えて透過光の強度により記録紙Sの種類を判別するものとしてもよいし、他の方法により記録紙Sの種類を判別するものとしてもよい。
【0023】
カードI/F70は、メモリーカードMCにデータを書き込んだりメモリーカードMCからデータを読み出したりするデバイスである。メモリーカードMCは、データの書き込み及び消去可能な不揮発性のメモリーであり、デジタルカメラなどの撮影装置により撮影された画像データや、図や写真などの画像と黒文字とを含む画像データが複数記憶されている。本実施形態では、これらの画像データはRGB色空間で表される解像度が600dpiの画素データにより構成されており、各画素データのRGB値はRGBの濃淡に応じてそれぞれ値0〜255の8ビットで表されているものとする。
【0024】
次に、こうして構成された本実施形態のインクジェットプリンター10の動作、特に、メモリーカードMCに記憶された画像データを記録紙Sに印刷する印刷処理を行なう場合の動作について説明する。図8は、コントローラー40により実行される印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、ユーザーがメモリーカードMCに記憶された画像データを選択し、選択した画像データを印刷するよう操作パネル50を介して指示したときに実行される。なお、図中の[]内の数値は画素データのビット数を示す。
【0025】
図8の印刷処理ルーチンが開始されると、コントローラー40のCPU41は、まず、ユーザーに操作パネル50を介して指示された画像データのうち、1パス分の印刷に必要なRGBの画素データを入力する(ステップS100)。続いて、CPU41は、SDRAM46の所定領域を調べることにより処理モードが高品質モードに設定されているか否かを判定する(ステップS110)。そして、高品質モードでないと判定したとき、すなわち高速モードが設定されているときには、CPU41は高速色変換処理を実行し(ステップS120)、高品質モードであると判定したときには、CPU41は高品質色変換処理を実行する(ステップS130)。
【0026】
ここで、印刷処理ルーチンの説明を中断して、ステップS120の高速色変換処理について説明する。図9は、高速色変換処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。この高速色変換処理ルーチンが開始されると、CPU41は、まず、ステップS100で入力したRGBの各画素データのRGB値を調べ、画素データの色表現がグレースケールであるか否かを判定する(ステップS210)。具体的には、画素データのR,G,Bの値が全て等しいか否かによってグレースケールであるか否かを判定する。続いて、ステップS210で肯定的な判定をすると、記録紙判別センサー60が判別した記録紙Sの種類が普通紙であるか専用紙であるかを判定し(ステップS220)、記録紙Sが普通紙であったときには、ステップS210でグレースケールであると判定したRGBの画素データについてPB用1次元LUT43aによる色変換処理を行なってKの画素データ(PBの画素データ)を導出する(ステップS230)。具体的には、ステップS210でグレースケールであると判定した画素データのうちRの値を1次元の入力値として、入力値に対応するKの値をPB用1次元LUT43aから導出することにより色変換処理を行なう。なお、ステップS210でグレースケールであると判定した画素データはR=G=Bであるため、Rの値の代わりにGの値やBの値を入力値としてもよい。
【0027】
一方、ステップS220で記録紙Sが専用紙であったときには、ステップS210でグレースケールであると判定したRGBの画素データについてCB用1次元LUT43bによる色変換処理を行なってCMYKの画素データ(CBの画素データ)を導出する(ステップS240)。具体的には、ステップS210でグレースケールであると判定した画素データのうちRの値を1次元の入力値として、入力値に対応するCMYKの値をCB用1次元LUT43bから導出することにより色変換処理を行なう。なお、Rの値の代わりにGの値やBの値を入力値としてもよい点はステップS230と同様である。そして、導出したCMYKの画素データのうちCMYの画素データのみを抽出し、CMYの画素データについて600dpiから300dpiへの解像度変換処理を行なう(ステップS250)。この解像度変換処理は、抽出したCMYの画素データについて所定の割合で画素データを間引いたり隣接する画素データ同士の各階調値の平均値を算出して1つの画素データに置き換えたりすることにより行なう。
【0028】
また、ステップS210でグレースケールでないと判定したRGBの画素データについては、解像度を600dpiから300dpiに変換する解像度変換処理を行なう(ステップS260)。この解像度変換処理は、ステップS250の解像度変換処理と同様に、RGBの画素データについて所定の割合で画素データを間引いたり隣接する画素データ同士の各階調値の平均値を算出して1つの画素データに置き換えたりすることにより行なう。続いて、解像度変換後のRGBの画素データについて3次元LUT47による色変換処理を行なってCMYKの画素データを導出し(ステップS270)、色変換後のCMYKの画素データのうちKの値のみを抽出し、Kの値について300dpiから600dpiへの解像度変換処理を行なう(ステップS280)。この解像度変換処理は、300dpiの1つのKの画素データを、印刷時の搬送方向(図2参照)に隣接した600dpiの2つのKの画素データに変換することにより行なう。なお、解像度変換後の2つの画素データのKの値はいずれも解像度変換前の1つの画素データのKの値と同じ値とすればよい。
【0029】
そして、ステップS230又はS250,及びS280の処理を行なった後の画素データをSDRAM46に記憶して(ステップS290)、本ルーチンを終了する。
【0030】
次に、ステップS130の高品質色変換処理について説明する。図10は、高品質色変換処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。この高品質色変換処理ルーチンが開始されると、CPU41は、まず、ステップS100で入力したRGBの各画素データについて、ユーザーが印刷を指示した画像データにおける黒文字領域内にある画素データか否かを判定する黒文字領域分離処理を行なう(ステップS310)。ここで、黒文字領域分離処理について説明する。画像データにおける黒文字領域は、例えば、画像データについてエッジ領域検出,網点領域検出,白地背景領域検出,有彩/無彩領域検出により白地上の文字である文字領域の特定を行ない、有彩/無彩領域検出により文字領域についてさらに黒文字領域と色文字領域とのいずれであるかを判別することで特定することができる。このような黒文字領域の特定については、例えば特開2004−187119に記載されている。そして、ステップS100で入力したRGBの各画素データが、特定した黒文字領域内の画素データであるか否かを判定することで黒文字領域分離処理を行なう。続いて、ステップS310で黒文字領域内にあると判定されたRGBの画素データについては、RGBの各値の平均値K’を導出することにより、RGBの画素データをK’の画素データに変換する(ステップS315)。そして、記録紙判別センサー60が判別した記録紙Sの種類が普通紙であるか専用紙であるかを判定し(ステップS320)、記録紙Sが普通紙であったときには、ステップS315でK’の画素データに変換した画素データについてPB用1次元LUT43aによる色変換処理を行なってKの画素データ(PBの画素データ)を導出する(ステップS330)。具体的には、K’の画素データのK’の値を1次元の入力値として、入力値に対応するKの値をPB用1次元LUT43aから導出することにより色変換処理を行なう。
【0031】
一方、ステップS320で記録紙Sが専用紙であったときには、ステップS315でK’の画素データに変換した画素データについてCB用1次元LUT43bによる色変換処理を行なってCMYKの画素データ(CBの画素データ)を導出する(ステップS340)。具体的には、K’の画素データのK’の値を1次元の入力値として、入力値に対応するCMYKの値をCB用1次元LUT43bから導出することにより色変換処理を行なう。そして、上述した高速色変換処理のステップS250と同様にCMYの画素データについて600dpiから300dpiへの解像度変換処理を行なう(ステップS350)。
【0032】
また、ステップS310で黒文字領域内にないと判定された画素データについては、上述した高速色変換処理のステップS260,270と同様の処理を行なう(ステップS360,S370)。そして、ステップS330又はS350,及びS370の処理を行なった後の画素データをSDRAM46に記憶して(ステップS390)、本ルーチンを終了する。
【0033】
印刷処理ルーチンの説明に戻る。ステップS120の高速色変換処理又はステップS130の高品質色変換処理が終了すると、CPU41は、高速色変換処理又は高品質色変換処理でSDRAM46に記憶された色変換処理後のCMYKの画素データを処理するようASIC45にバス80を介して指示する(ステップS140)。続いて、ASIC45のハーフトーン処理部45aが、CPU41に指示されたCMYKの画素データをSDRAM46から読み出して、各8ビットのCMYKの画素データを各2ビットの2値化データに変換するハーフトーン処理を実行し(ステップS150)、ASIC45のマイクロウィーブ処理部45bが2値化データからCMYKの1パス分のイメージデータを生成する(ステップS160)。次に、ASIC45の駆動信号送信部45cが、1パス分のCMYKのイメージデータから生成した駆動信号を送信ケーブル44a〜44fを介して印刷ヘッド25の駆動回路36C1〜36K22にそれぞれ送信する(ステップS170)。そして、この駆動信号により圧電素子38C1〜38K22が駆動してノズル32C,32M,32Y,32Kがインクを吐出すると共にASIC45が各モーターを制御して、1パス分の印刷処理を実行する(ステップS180)。1パス分の印刷処理を実行すると、ユーザーに操作パネル50を介して指示された画像データの全パス分の印刷が完了したか否かを判定する(ステップS190)。ステップS190で全パス分の印刷が完了していないと判定したときにはステップS100〜S180の処理を繰り返し、次の1パス分のRGBの画素データの印刷処理を行なう。ステップS190で全パス分の印刷が完了したと判定したときには、本ルーチンを終了する。
【0034】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のSDRAM46が本発明の第1記憶手段に相当し、SRAM42が第2記憶手段に相当し、CPU41が画像データ取得手段,LUT判定手段,変換手段に相当し、操作パネル50がモード取得手段に相当し、ASIC45及びプリンター機構20が印刷実行手段に相当し、記録紙判別センサー60が媒体判定手段に相当する。
【0035】
以上詳述した本実施形態のインクジェットプリンターによれば、色変換前の600dpiのRGBの画素データを取得し、ユーザーが高品質モードを設定しているときには、高品質色変換処理を実行して、色変換前のRGBの画素データのうちステップS310で黒文字領域内にあると判定された画素データについてはアクセス速度が速いSRAM42に記憶された1次元LUTを用いて色変換を行ない、ステップS310で黒文字領域内にないと判定された画素データについてはステップS360で300dpiの低解像度の画素データに変換した後にSDRAM46に記憶された3次元LUT47を用いて色変換を行なう。また、ユーザーが高速モードを設定しているときには、高速色変換処理を実行して、色変換前のRGBの画素データのうちステップS210で色表現がグレースケールであると判定された画素データについてはアクセス速度が速いSRAM42に記憶された1次元LUTを用いて色変換を行ない、ステップS210で色表現がグレースケールでないと判定された画素データについてはステップS260で300dpiの低解像度の画素データに変換したあとにSDRAM46に記憶された3次元LUT47を用いて色変換を行なう。これにより、SRAM42に記憶された1次元LUTを用いて色変換を行なう画素データについては、SDRAM46に記憶された3次元LUT47を用いて色変換を行なう場合に比べて解像度を保ちつつ色変換に要する時間を短縮できる。また、SRAM46に記憶された3次元LUT47を用いて色変換を行なう画素データについては、色変換前に解像度を600dpiから300dpiに低下させるため、色変換後に解像度を低下させる場合と比べて色変換に要する時間が短縮される。そして、高品質モードのときには黒文字領域内のKの画素データのみ600dpiの解像度が保たれ、高速モードのときにはグレースケールのKの画素データの解像度が保たれるため、いずれの場合も黒文字を表す画素データは解像度が保たれる。したがって、画像データにおける黒文字を表す画素データの解像度を低下させることなく色変換に要する時間を短縮することができる。また、ユーザーが高品質モードを選択したときには黒文字領域にない画素データについては色表現がグレースケールであってもステップS310で否定的な判定がなされてステップS360で解像度を低下させるため、画像データ中の図や写真などにおけるグレースケールの画素データとグレースケールでない画素データとの解像度が一致する。そのため、図や写真におけるグレースケールの解像度のみが異なることによる印刷時の品質低下を防止できる。一方、ユーザーが高速モードを選択したときには、ステップS210でR=G=Bの画素データであるか否かによって解像度を低下させないか否かを判定するためステップS310の処理と比べて簡易な処理で判定を行なうことができ処理時間の一層の短縮が期待できる。さらに、1次元LUTは3次元LUT47と比べてデータサイズが小さいため、高速アクセスが可能なSRAM42は小さい記憶領域を有していればよい。したがって、CPU41の代わりに3次元LUT47も記憶できるようなSRAMを持つCPUを使用する場合と比較してコストの増大を抑えることができる。
【0036】
また、画素データを1次元LUTで色変換するにあたり、記録紙SがCBでの印刷に適した専用紙である場合にはCB用1次元LUTでの色変換を行ない、記録紙SがPBでの印刷に適した普通紙である場合にはPB用1次元LUTでの色変換を行なうため、印刷した画像の品質が向上する。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば、上述した実施形態では、ステップS220,320で記録紙Sが普通紙か専用紙かを判定し、記録紙Sが普通紙のときにはPB用1次元LUT43aで色変換を行ない記録紙Sが専用紙のときにはCB用1次元LUT43bで色変換を行なったが、記録紙Sが普通紙,専用紙以外の種類であってもよい。その場合も、記録紙SがCBでの印刷に適している所定の種類か否かを判定し、その判定結果によりいずれの1次元LUTで色変換を行なうかを決定すればよい。また、ステップS220,320の判定を行なわないものとしてもよい。その場合、SRAM42にはPB用1次元LUT43aとCB用1次元LUT43bとのいずれか一方のみ記憶しておき、ステップS210又はS310で肯定的な判定をした画素データを記録紙Sの種類に関わらずその1次元LUTで色変換するものとしてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、ユーザーが設定した処理モードが高速モードの場合にはステップS120の高速色変換処理を実行し、ユーザーが設定した処理モードが高品質モードの場合にはステップS130の高品質色変換処理を実行するものとしたが、処理モードが高品質モードのときには高品質色変換処理を実行し、高品質モードでないときには高速色変換処理を実行するものであればよい。また、ユーザーの選択にかかわらず記録紙Sが専用紙のときには高品質モードに設定され、記録紙Sが普通紙のときには高速モードに設定されるものとしてもよい。さらに、このような処理モードの設定がなく、ステップS100の次に常に高速色変換処理を実行するものとしてもよいし、ステップS100の次に常に高品質色変換処理を実行するものとしてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、SDRAM46が3次元LUT47を記憶し、CPU41に内蔵されたSRAM42がPB用1次元LUT43a及びCB用1次元LUT43bを記憶しているが、3次元LUT47を記憶するものであればSDRAM46に限らずどのような記憶手段であってもよいし、3次元LUTのデータサイズよりも小さく3次元LUTを記憶する記憶手段よりもアクセス速度が速い記憶領域であり1次元LUTを記憶しているものであればSRAM42に限らずどのような記憶手段であってもよい。例えば、SRAM42はCPU41に内蔵されたキャッシュメモリーではなく外部メモリーであってもよい。ただし、CPUの内蔵メモリーは容量が小さい代わりに外部メモリーと比べてアクセス速度が速い場合が多いため、処理速度の短縮のためにはCPUの内蔵メモリーに1次元LUTを記憶することが好ましい。
【0041】
上述した実施形態では、3次元LUT47による色変換を行なうにあたり格子点の間のデータは周知の立方体補完を行なうこととしているが、例えば周知の四面体補完処理など他の補完処理を行なうものとしてもよい。また、3次元LUT47はグリッド数Ndを間引いて値32としたが、グリッド数Ndは値32でなくともよい。さらに、3次元LUTを記憶する記憶手段の容量が十分大きい場合は、グリッド数Ndを間引かずに入力値であるRGBの階調数と同じ値(例えば値256)としてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、3次元LUT47は、RGB色空間で表される画素データのRGBの階調値とCMYK色空間で表される画素データのCMYKの階調値とを対応づけたものとしたが、所定の色空間で表される色変換前の画素データに基づく3次元データと所定の色空間とは異なる色空間で表される色変換後の画素データとを対応づけたものあれば、どのようなものでもよい。例えば色空間はCMYKの色空間の代わりにCMYの色空間であってもよいし、RGB,CMYKに限らずL*a*b色空間など他のどのような色空間を対応づけたものであってもよい。階調値も8ビットに限らない。同様に、PB用1次元LUT43aは、RGB色空間で表される色変換前の画素データに基づく1次元データとK色空間で表される色変換後のピュアブラック(PB)の画素データとを対応づけたものであればよく、CB用1次元LUT43bは、RGB色空間で表される色変換前の画素データに基づく1次元データとCMY又はCMYK色空間で表される色変換後のコンポジットブラック(CB)の画素データとを対応づけたものであればよい。また、ステップS230での色変換処理に用いるPB用1次元LUTとステップS330での色変換処理に用いるPB用1次元LUTとが異なるLUTであってもよく、ステップS240での色変換処理に用いるCB用1次元LUTとステップS340での色変換処理に用いるCB用1次元LUTとが異なるLUTであってもよい。さらに、1次元LUTはPB用又はCB用でなくともよく、所定の色空間で表される色変換前の画素データに基づく1次元データと所定の色空間とは異なる色空間で表される色変換後の画素データとを対応づけたものであればよい。
【0043】
上述した実施形態では、メモリーカードMCに記憶された画像データを印刷処理するものとしたが、色変換前の画素データを含む画像データを取得して印刷処理するものであればよい。例えば、インクジェットプリンター10がスキャナー機能を有しており、スキャナー機能により読み取った画像データを印刷処理するものとしてもよい。また、パソコンなどから送信される画像データを取得するものとしてもよい。
【0044】
上述した実施形態では、ステップS210ではR=G=Bの画素データのみを色表現がグレースケールの画素データであると判定したが、RGBの全てが完全に等しい場合に限らずR,G,Bの各値の差が所定の範囲内(例えば差が値1以内など)にある画素データについてもグレースケールの画素データと判定してもよい。この場合、ステップS230,S240におけるPB用1次元LUT43a,CB用1次元LUT43bの1次元の入力値は、RGBの平均値としたり、RGBの値のうち最大値又は最小値を1次元の入力値としたりしてもよい。
【0045】
上述した実施形態では、ステップS310の黒文字領域分離処理において、黒文字領域の特定を特開2004−187119に記載された方法で行なうこととしたが、他のどのような方法により行なってもよい。例えば、画像データ中の画素データに予めその画素データが黒文字領域であるか否かを表す属性情報が付加されているものとし、その属性情報により黒文字領域内にある画素データか否かを判定するものとしてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、ステップS315でRGBの平均値K’を導出するものとしたが、平均値の代わりにRGBの値のうち最大値又は最小値を導出し、この値をステップS330,S340におけるPB用1次元LUT43a,CB用1次元LUT43bの1次元の入力値としてもよい。
【0047】
上述した実施形態では、印刷ヘッド25のKのノズル密度が高密度に形成されCMYのノズル密度が低密度に形成されるものとしたが、これに限られず同じ密度に形成されていてもよい。また、ノズル群30C,30M,30Y,30K1,30K2は、ノズル列を各2列ずつ備える構成としたが、これに限られず、各1列ずつとしてもよいし3以上の複数列備えるものなどとしてもよい。
【0048】
上述した実施形態では、インク色はシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)の4色としたが、これに限られず、ライトシアン(LC)やライトマゼンタ(LM)などを含んで5色や6色としたり、それ以上の複数色としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 インクジェットプリンター、20 プリンター機構、21 ベルト、22 ガイド、23 キャリッジ、24 インクカートリッジ、25 印刷ヘッド、26 搬送ローラー、30C,30M,30Y,30K1,30K2 ノズル群、32C,32M,32Y,32K ノズル、36C1,36C2,36M1,36M2,36Y1,36Y2,36K11,36K12,36K21,36K22 駆動回路、38C1,38C2,38M1,38M2,38Y1,38Y2,38K11,38K12,38K21,38K22 圧電素子、40 コントローラー、40a SOC、41 CPU、42 SRAM、43a PB用1次元LUT、43b CB用1次元LUT,44(44a〜44j)送信ケーブル、45 ASIC、45a ハーフトーン処理部、45b マイクロウィーブ処理部、45c 駆動信号送信部、46 SDRAM、47 3次元LUT、48 ROM、50 操作パネル、52 表示部、54 操作部、60 記録紙判別センサー、70 カードインターフェース(I/F)、80 バス、C1,C2,M1,M2,Y1,Y2,K11,K12,K21,K22 ノズル列、MC メモリーカード、S 記録紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の色空間で表される色変換前の画素データに基づく3次元データと前記所定の色空間とは異なる色空間で表される色変換後の画素データとを対応づけた3次元ルックアップテーブル(LUT)を記憶する第1記憶手段と、
前記3次元LUTのデータサイズよりも小さく前記第1記憶手段よりもアクセス速度が速い記憶領域であり、前記色変換前の画素データに基づく1次元データと前記所定の色空間とは異なる色空間で表される色変換後の画素データとを対応づけた1次元LUTを記憶する第2記憶手段と、
色変換前の画素データを含む画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データ取得手段によって取得された色変換前の画素データの色表現がグレースケールか否かにより該色変換前の画素データを前記1次元LUTを用いて色変換するか前記3次元LUTを用いて色変換するかを判定するLUT判定手段と、
前記LUT判定手段により前記1次元LUTを用いて色変換すると判定された色変換前の画素データについては、該色変換前の画素データに基づく1次元データに対応する色変換後の画素データを前記1次元LUTを用いて導出し、前記LUT判定手段により前記3次元LUTを用いて色変換すると判定された色変換前の画素データについては、該色変換前の画素データを元の解像度より低い低解像度の画素データに変換し、該低解像度の画素データに基づく3次元データに対応する色変換後の画素データを前記3次元LUTを用いて導出する変換手段と、
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
所定の色空間で表される色変換前の画素データに基づく3次元データと前記所定の色空間とは異なる色空間で表される色変換後の画素データとを対応づけた3次元ルックアップテーブル(LUT)を記憶する第1記憶手段と、
前記3次元LUTのデータサイズよりも小さく前記第1記憶手段よりもアクセス速度が速い記憶領域であり、前記色変換前の画素データに基づく1次元データと前記所定の色空間とは異なる色空間で表される色変換後の画素データとを対応づけた1次元LUTを記憶する第2記憶手段と、
色変換前の画素データを含む画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データ取得手段によって取得された色変換前の画素データが前記画像データにおける黒文字領域内にあるか否かにより該色変換前の画素データを前記1次元LUTを用いて色変換するか前記3次元LUTを用いて色変換するかを判定するLUT判定手段と、
前記LUT判定手段により前記1次元LUTを用いて色変換すると判定された色変換前の画素データについては、該色変換前の画素データに基づく1次元データに対応する色変換後の画素データを前記1次元LUTを用いて導出し、前記LUT判定手段により前記3次元LUTを用いて色変換すると判定された色変換前の画素データについては、該色変換前の画素データを元の解像度より低い低解像度の画素データに変換し、該低解像度の画素データに基づく3次元データに対応する色変換後の画素データを前記3次元LUTを用いて導出する変換手段と、
を備えた画像処理装置。
【請求項3】
所定の色空間で表される色変換前の画素データに基づく3次元データと前記所定の色空間とは異なる色空間で表される色変換後の画素データとを対応づけた3次元ルックアップテーブル(LUT)を記憶する第1記憶手段と、
前記3次元LUTのデータサイズよりも小さく前記第1記憶手段よりもアクセス速度が速い記憶領域であり、前記色変換前の画素データに基づく1次元データと前記所定の色空間とは異なる色空間で表される色変換後の画素データとを対応づけた1次元LUTを記憶する第2記憶手段と、
色変換前の画素データを含む画像データを取得する画像データ取得手段と、
高品質モードを含む所定の処理モード群からユーザーが選択した処理モードを取得するモード取得手段と、
前記モード取得手段により取得された処理モードが前記高品質モードのときには、前記画像データ取得手段によって取得された色変換前の画素データが前記画像データにおける黒文字領域内にあるか否かにより、該色変換前の画素データを前記1次元LUTを用いて色変換するか前記3次元LUTを用いて色変換するかを判定し、前記モード取得手段により取得された処理モードが前記高品質モード以外の処理モードのときには、前記画像データ取得手段によって取得された色変換前の画素データの色表現がグレースケールか否かにより該色変換前の画素データを前記1次元LUTを用いて色変換するか前記3次元LUTを用いて色変換するかを判定するLUT判定手段と、
前記LUT判定手段により前記1次元LUTを用いて色変換すると判定された色変換前の画素データについては、該色変換前の画素データに基づく1次元データに対応する色変換後の画素データを前記1次元LUTを用いて導出し、前記LUT判定手段により前記3次元LUTを用いて色変換すると判定された色変換前の画素データについては、該色変換前の画素データを元の解像度より低い低解像度の画素データに変換し、該低解像度の画素データに基づく3次元データに対応する色変換後の画素データを前記3次元LUTを用いて導出する変換手段と、
を備えた画像処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記変換手段による色空間変換後の画素データに基づく画像を印刷媒体に印刷出力する印刷実行手段と、
前記印刷媒体がコンポジットブラックでの印刷に適した所定の印刷媒体か否かを判定する媒体判定手段と、
を備え、
前記第1記憶手段は、前記3次元LUTとして、RGB色空間で表される色変換前の画素データに基づく3次元データとCMY又はCMYK色空間で表される色変換後のカラーの画素データとを対応づけたLUTを記憶する手段であり、
前記第2記憶手段は、前記1次元LUTとして、RGB色空間で表される色変換前の画素データに基づく1次元データとCMY又はCMYK色空間で表される色変換後のコンポジットブラック(CB)の画素データとを対応づけたCBテーブルと、RGB色空間で表される色変換前の画素データに基づく1次元データとK色空間で表される色変換後のピュアブラック(PB)の画素データとを対応づけたPBテーブルと、を記憶する手段であり、
前記変換手段は、前記LUT判定手段により前記1次元LUTを用いて色変換すると判定された色変換前の画素データについては、前記媒体判定手段により前記印刷媒体がコンポジットブラックでの印刷に適していると判定されたときには、該色変換前の画素データに基づく1次元データに対応する色変換後の画素データを前記CBテーブルを用いて導出し、前記媒体判定手段により前記印刷媒体がコンポジットブラックでの印刷に適していないと判定されたときには、該色変換前の画素データに基づく1次元データに対応する色変換後の画素データを前記PBテーブルを用いて導出する手段である、
画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−44821(P2011−44821A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190418(P2009−190418)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】