説明

画像処理装置

【課題】コストを抑えて補正の分解能を向上させる。
【解決手段】スクリーン処理部5は、画像データの2×2画素が位置する閾値マトリクス上のアドレスを算出するアドレス算出部51と、画像のずれに応じてアドレス算出部51により算出されたアドレスを補正するアドレス補正部521、522と、同一のアドレスが付された2×2画素の閾値を副走査方向に2分割して得られた2×1画素の閾値をそれぞれ記憶し、補正されたアドレスに対応する2×1画素の閾値を出力する2つのメモリー531、532と、2つのメモリー531、532からそれぞれ出力された閾値を、画像のずれに応じて副走査方向の配置を入れ替えて出力する閾値調整部54と、出力された2×1画素の閾値を用いて、画像データの2×2画素が副走査方向に2分割された2×1画素の画素値をそれぞれ閾値処理する2つの閾値処理部551、552とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターや複写機では、用紙の歪みや搬送時の傾き、印刷ヘッド自体の傾き等によって、スキューやボウと呼ばれる画像のずれが生じることがある。このようなずれに対し、画像データを補正処理し、画像のずれと逆方向に画像をシフトすることが一般的である(例えば、特許文献1参照)。印刷を経て生じる画像のずれによって、シフトされた画像の位置が元に戻り、ずれが補正された画像が得られる。
【0003】
スクリーン処理後に上記の補正処理が行われる場合、画像のずれは補正されるが、スクリーン処理によって形成される周期的なパターンがずれて変形する。上記特許文献1によれば、周期的なパターンを形成する閾値マトリクスをシフトしてシフトにより生じるパターンのずれと画像のずれを一致させ、補正処理によって画像とともに周期的なパターンのずれを補正することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−193143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
閾値マトリクスは、閾値マトリクス内の画素の位置を示すアドレスに対応付けて閾値が設定されている。一般に1画素分の閾値に1アドレスが付されるが、2×2画素分の閾値に1アドレスを付してメモリーに保存する方法もある。1アドレスで2×2画素分の閾値を読み出せるので、2×2画素単位でスクリーン処理することができ、スクリーン処理を高速化できる。
【0006】
しかしながら、2×2画素単位でアドレスが付された場合、画像のずれに応じて閾値マトリクスをシフトしようとすると、2×2画素単位でしかシフトできない。結果、画像のずれも2×2画素単位で補正しなければならず、補正の分解能が低下する。
1画素単位でずれを補正し、補正の分解能を上げるためには1画素分の閾値に1アドレスを付してメモリーに保存すればよいが、スクリーン処理も1画素単位となるため、処理速度が低下する。2×2画素単位でスクリーン処理していたときと同じ処理速度を維持するには、2×2画素の閾値をそれぞれ保存する4つのメモリーと、2×2画素の画素値を閾値処理する4つの閾値処理部が必要となり、コストが上昇する。また、個々のメモリーにコントローラーが備え付けられるため、回路規模も拡大する。
【0007】
本発明の課題は、コストを抑えて補正の分解能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、
2×2画素単位でアドレスが付された閾値マトリクスを用いて、入力された画像データを2×2画素単位でスクリーン処理するスクリーン処理部と、
スクリーン処理された前記画像データを補正処理し、画像のずれを補正する補正処理部と、を備え、
前記スクリーン処理部は、
前記画像データの2×2画素が位置する閾値マトリクス上のアドレスを算出するアドレス算出部と、
前記画像のずれに応じて前記アドレス算出部により算出されたアドレスを補正し、画像のずれと一致するようにシフトされた閾値マトリクスのアドレスを出力するアドレス補正部と、
同一のアドレスが付された2×2画素の閾値を副走査方向に2分割して得られた2×1画素の閾値をそれぞれ記憶し、前記アドレス補正部から出力されたアドレスに対応する2×1画素の閾値を出力する2つのメモリーと、
2つの前記メモリーからそれぞれ出力された閾値を、前記画像のずれに応じて副走査方向の配置を入れ替えて2つの閾値処理部にそれぞれ出力する閾値調整部と、
前記閾値調整部から出力された2×1画素の閾値を用いて、前記画像データの2×2画素が副走査方向に2分割された2×1画素の画素値をそれぞれ閾値処理する2つの閾値処理部と、
を備える画像処理装置が提供される。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、
前記アドレス補正部は、前記アドレス算出部により算出されたアドレスに補正値を加算して補正し、前記画像のずれが副走査方向の上側か下側かによって、さらにずれの回数によってアドレスに加算する補正値を切り替える請求項1に記載の画像処理装置が提供される。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、
前記閾値調整部は、前記画像のずれの回数によって2×1画素の前記閾値の副走査方向の配置を入れ替える請求項1又は2に記載の画像処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2×2画素の各画素値を、画素毎ではなく2×1画素毎に2つのメモリーと2つの閾値処理部によってスクリーン処理するので、コストを抑えることができる。また、アドレスの補正と閾値の配置の入れ替えによって副走査方向に1画素単位で閾値マトリクスをシフトさせることができる。これにより、画像のずれも副走査方向に1画素単位で補正することができ、副走査方向の補正の分解能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態に係る画像処理装置の構成図である。
【図2】閾値マトリクスの一例を示す図である。
【図3】スクリーン処理部の構成図である。
【図4】2つのメモリーに保存される2×1画素の閾値を説明する図である。
【図5】シフトが無い閾値マトリクスの閾値の配列を示す図である。
【図6】閾値の副走査方向の配置の入れ替えを説明する図である。
【図7】図5の閾値マトリクスがシフトされたときの閾値の配列を示す図である。
【図8】一定のシフト間隔でシフトされた閾値マトリクスの例を示す図である。
【図9】シフトされた閾値マトリクスにより形成された周期的なパターンの補正例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る画像処理装置の実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る画像処理装置1を示す。
画像処理装置1は、入力された画像データをスクリーン処理し、スクリーン処理後の画像データを出力する。プリンターやコピー機、MFPs(Multi-Functional Peripherals)等の印刷処理を行う印刷装置に、画像処理装置1を搭載することができる。
画像処理装置1は、図1に示すように、ずれ検出部2、記憶部3、補正制御部4、スクリーン処理部5、補正処理部6を備える。
【0015】
ずれ検出部2は、画像データの印刷処理によって用紙に印刷された画像のずれを検出する。ずれ検出のため、トンボ等の検出パターンを用いてもよい。ずれ検出部2は、用紙をスキャンして得られた画像データと元の画像データとを比較し、検出パターンの位置からずれが生じた方向とずれ量を検出する。検出された画像のずれの方向とずれ量は、補正制御部4に出力される。
【0016】
画像のずれは印刷装置によって略一定であるから、ずれ検出部2により検出された画像のずれの特性値を記憶部3に保存し、補正制御部4が記憶部3から当該特性値を読み出して利用してもよい。記憶部3は、ずれ検出部2により検出された画像のずれの方向とずれ量を特性値として記憶する。
また、ずれ検出部2により画像のずれを検出するのではなく、別途デジタイザーのような位置測定器を用いて画像のずれ量を測定してもよい。
【0017】
補正制御部4は、ずれ検出部2から出力されたずれの方向とずれ量に応じて、ずれの補正値を算出する。例えば、印刷処理後の画像にスキューが生じ、画像が緩やかに右上に傾いている場合、補正制御部4はその傾きから主走査方向に14画素単位で副走査方向に1画素ずつ下に画像をシフトさせる補正値を算出する。算出された補正値は補正処理部6に出力される。
【0018】
補正制御部4は、画像のずれに応じて閾値マトリクスをシフトさせるシフト信号Vs[9:1] 、Vs[0]を生成し、画像のずれが生じる位置でシフト信号Vs[9:1]、Vs[0]をスクリーン処理部5に出力する。
シフト信号Vs[9:1]は9ビットのバイナリー信号である。シフト信号Vs[9:1]の最上位ビットはシフト方向を示し、シフト方向が副走査方向の上側であれば0、下側であれば1である。ここでは、便宜上、最上位ビットの0を+に、1を−に置き換えて、シフト信号Vs[9:1]を表す。シフト信号Vs[9:1]の最上位ビットより下位の8ビットはシフト量を示し、副走査方向に1画素シフトさせる毎に信号値が1ずつ加算されていく。例えば、副走査方向の上側に1画素シフトさせる場合、Vs[9:1]=+00000001が出力され、さらに上に1画素シフトさせる場合、Vs[9:1]=+00000010が出力される。副走査方向の下側にシフトさせる場合は最上位ビットが+から−に切り替えられる。
シフト信号Vs[0]は、9ビットのシフト信号Vs[9:1]のうち最下位の0ビット目が抽出された信号である。よって、シフト信号Vs[0]は0又は1である。
【0019】
スクリーン処理部5は、閾値マトリクスを用いて、入力された画像データを2×2画素単位でスクリーン処理する。
図2は、閾値マトリクスの一例を示す。
閾値マトリクスは6×4画素からなり、各画素に閾値が設定されている。図2に示すように、閾値マトリクスは主走査方向に6画素、副走査方向に4画素の単位でシフトされて、画像データの各画素と繰り返し照合される。閾値マトリクスには閾値マトリクス上の位置を示すアドレス0〜5が2×2画素単位で設定されている。つまり、2×2画素の4つの閾値に1つのアドレスが付されている。
【0020】
図3は、スクリーン処理部5の構成図である。
スクリーン処理部5は、図3に示すようにアドレス算出部51、アドレス補正部521、522、メモリー531、532、閾値調整部54、閾値処理部551、552を備えている。補正制御部4から出力されたシフト信号Vs[9:1]はアドレス補正部521、522に出力され、シフト信号Vs[0]は閾値調整部54に出力される。画像データは2×2画素単位でスクリーン処理部5に入力され、入力された2×2画素の画素値Cは閾値処理部551、552に出力される。
【0021】
アドレス算出部51は、画像データの2×2画素が位置する閾値マトリクス上のアドレスを算出し、出力する。
アドレス算出部51は、2×2画素のうち何れかの画素、例えば左上の画素の画像データ上の主走査方向及び副走査方向の位置座標(i,j)を元に、閾値マトリクス上の画素の位置座標(sai,saj)を、下記式により算出する。式中、Mは閾値マトリクスの主走査方向の画素数、Nは閾値マトリクスの副走査方向の画素数であり、図2に示される閾値マトリクスであればM=6、N=4が入力される。
sai=i%M
saj=j%N
式中、%は剰余を求める演算子である。
【0022】
アドレス算出部51は、位置座標(sai,saj)に対応するアドレスを出力する変換テーブルを備えている。変換テーブルは、例えば(sai,saj)=(0,2)にアドレス3を対応付けている。アドレス算出部51は、変換テーブルによって上記式から求めた位置座標(sai,saj)に対応するアドレスを出力する。
【0023】
例えば、図2に示される閾値マトリクスにおいて、(i,j)=(6,2)が入力された場合、アドレス算出部51は上記式から(sai,saj)=(0,2)を算出し変換テーブルによりアドレス3を得て出力する。
【0024】
アドレス補正部521、522は、画像のずれを示すシフト信号Vs[9:1]に応じてアドレス算出部51により算出されたアドレスを補正し、画像のずれに一致するようにシフトされた閾値マトリクスのアドレスを出力する。
【0025】
アドレス補正部521、522は、アドレス算出部51から出力されたアドレスに、シフト信号Vs[9:1]に応じたアドレスの補正値を加算し、アドレスを補正する。
図2に示すように、閾値マトリクス内の上段に0、1、2、下段に3、4、5のアドレスが位置している。よって、アドレスを3加算すれば、副走査方向に2画素シフトした位置のアドレスに変更することができる。
【0026】
アドレス補正部521、522は画像のずれに応じて閾値マトリクスがシフトされる方向が副走査方向の上側か下側か、さらにずれの回数によって、アドレスに加算する2つの補正値0と補正値3を切り替える。なお、アドレスの値域は0〜5であるので、補正値の加算によってアドレスが5を超えると、アドレス補正部521、522は6を減じる。シフト方向はシフト信号Vs[9:1]の最上位ビットによって判断することができ、ずれの回数はシフト信号Vs[9:1]の下位8ビットによって判断することができる。
【0027】
アドレス補正部521はメモリー531に出力されるアドレスを補正する。
閾値マトリクスが副走査方向上側にシフトされる場合、アドレス補正部521はずれの回数が奇数のときに補正値0と補正値3を切り替える。つまり、アドレス補正部521は、最上位ビットが+であり、下位8ビットが偶数のシフト信号Vs[9:1]が入力されたタイミングで補正値0と補正値3を切り替える。最初のシフト信号Vs[9:1]=+00000001が入力されるまでは補正値0が用いられる。アドレス補正部521は入力されたアドレスに補正値0を加算して出力する。最初のシフト信号Vs[9:1]=+00000001は奇数であるので、このシフト信号Vs[9:1]に応じて、アドレス補正部521は補正値を0から3に切り替え、入力されたアドレスに補正値3を加算する。次のシフト信号Vs[9:1]=+00000010は偶数であるので、アドレス補正部521は同じ補正値3を加算する。以降も同様に補正値が切り替えられ、シフト信号Vs[9:1]=+00000011の入力後は補正値が3から0に切り替えられて補正値0が加算され、シフト信号Vs[9:1]=+00000100の入力後は補正値0が加算される。つまり、補正値はシフト信号Vs[9:1]の入力毎に0→3→3→0の順に繰り返し切り替えられる。
【0028】
副走査方向下側に閾値マトリクスをシフトする場合、アドレス補正部521はずれの回数が偶数のときに補正値0と補正値3を切り替える。つまり、アドレス補正部521は最上位ビットが−であり、下位8ビットが奇数のシフト信号Vs[9:1]が入力されたタイミングで補正値0と補正値3を切り替える。最初のシフト信号Vs[9:1]=−00000001が入力されるまでは補正値0が用いられる。アドレス補正部521は入力されたアドレスに補正値0を加算して出力する。最初に入力されるシフト信号Vs[9:1]=−00000001は奇数であるので、アドレス補正部521は同じ補正値0をアドレスに加算する。次のシフト信号Vs[9:1]=−00000010は偶数であるので、アドレス補正部521は補正値を0から3に切り替えて補正値3をアドレスに加算する。以降も同様に補正値が切り替えられ、シフト信号Vs[9:1]=−00000011の入力後は補正値3、シフト信号Vs[9:1]=−00000100の入力後は補正値0が加算される。つまり、補正値はシフト信号Vs[9:1]の入力毎に0→0→3→3の順に繰り返し切り替えられる。
【0029】
アドレス補正部522はメモリー532に出力されるアドレスを補正する。
閾値マトリクスを副走査方向上側にシフトする場合、アドレス補正部522はずれの回数が偶数のときに補正値0と補正値3を切り替える。つまり、アドレス補正部522は最上位ビットが+であり、下位8ビットが偶数のシフト信号Vs[9:1]が入力されたタイミングで補正値0と補正値3を切り替える。これにより、補正値は最上位ビットが+のシフト信号Vs[9:1]の入力毎に0→0→3→3の順に繰り返し切り替えられる。
また、閾値マトリクスを副走査方向下側にシフトする場合、アドレス補正部522はずれの回数が奇数のときに2つの補正値を切り替える。つまり、アドレス補正部522は最上位ビットが−であり、下位8ビットが奇数のシフト信号Vs[9:1]が入力されたタイミングで補正値0と補正値3を切り替える。これにより、補正値は最上位ビットが−のシフト信号Vs[9:1]の入力毎に0→3→3→0の順に繰り返し切り替えられる。
【0030】
副走査方向の一方向にシフトを続けた後、逆方向にシフト方向が切り替えられる場合、最上位ビットが切り替えられたシフト信号Vs[9:1]が入力される。例えば、シフト方向が上方向から下方向に切り替えられれば、最上位ビットは+から−に切り替わる。アドレス補正部521、522は、最上位ビットが切り替えられた時点で、補正値の切り替え順をそれまでと逆順にすればよい。
【0031】
上記補正値は、図2に示される閾値マトリクスに対応する補正値である。閾値マトリクスのサイズや閾値マトリクス内のアドレスの付し方が異なれば、その閾値マトリクスをシフトするためのアドレスの補正値も異なる。よって、用いられる閾値マトリクス毎にシフトのためのアドレスの補正値を求めてアドレス補正部521、522に設定すればよい。
【0032】
メモリー531、532は、閾値マトリクスに設定された閾値を閾値マトリクスのアドレスに対応付けて記憶する。メモリー531、532としては例えばRAM(Random Access Memory)等を用いることができる。
【0033】
メモリー531、532は、同一のアドレスが付された2×2画素の閾値を副走査方向に2分割して得られた2×1画素の閾値をそれぞれ記憶する。
例えば、図4に示すように、アドレス0が付された2×2画素のそれぞれに閾値が設定されている。この2×2画素が副走査方向に2分割されて得られた上下の2×1画素の閾値のうち、上に位置する2×1画素の2つの閾値はメモリー531に保存され、下に位置する2×1画素の2つの閾値はメモリー532に保存される。
【0034】
以下、メモリー531に保存された2×1画素の閾値をその閾値のアドレスの数字とUの組み合わせで示し、メモリー532に保存された2×1画素の閾値をその閾値のアドレスの数字とLの組み合わせで示す。図4において、「0U」はメモリー531に保存されたアドレス0の2×1画素の閾値を示し、「0L」はメモリー532に保存されたアドレス0の2×1画素の閾値を示している。
【0035】
メモリー531は、アドレス補正部521から出力されたアドレスに対応する2×1画素の閾値を出力する。メモリー532は、アドレス補正部522から出力されたアドレスに対応する2×1画素の閾値を出力する。
【0036】
閾値調整部54は、2つのメモリー531、532からそれぞれ出力された2×1画素の閾値を、画像のずれを示すシフト信号Vs[0]に応じて副走査方向の配置を入れ替え、閾値処理部551、552に出力する。
閾値調整部54はセレクタ541、542を備えている。セレクタ541、542は、メモリー531、532の双方から2×1画素の閾値を入力し、シフト信号Vs[0]によって何れかの2×1画素の閾値を選択する。セレクタ541は選択された2×1画素の閾値を閾値処理部551に出力し、セレクタ542は選択された2×1画素の閾値を閾値処理部552に出力する。
【0037】
シフト信号Vs[0]=0のとき、つまりずれの回数が偶数のとき、セレクタ541はメモリー531から入力された2×1画素の閾値を選択し、セレクタ542はメモリー532から入力された2×1画素の閾値を選択する。シフト信号Vs[0]=1のとき、つまりずれの回数が奇数のとき、セレクタ541はメモリー532から入力された2×1画素の閾値を選択し、セレクタ542はメモリー531から入力された2×1画素の閾値を選択する。これにより、シフト信号Vs[0]=1のとき、2×1画素の閾値の副走査方向の配置が上下入れ替えられる。
【0038】
閾値処理部551、552は、画像データの2×2画素が副走査方向に分割された2×1画素の画素値Cをそれぞれ閾値処理する。閾値処理部551は分割された上側の2×1画素の画素値Cを閾値処理し、閾値処理部552は分割された下側の2×1画素の画素値Cを閾値処理して、2値化又は多値化する。閾値処理において、閾値処理部551はセレクタ541から出力された閾値を用い、閾値処理部552はセレクタ542から出力された閾値を用いる。
【0039】
画素値Cの最小値が0、最大値が255であるとすると、2値化の場合、閾値処理部551、552は画素値Cが閾値より小さければ0、閾値より大きければ255の画素値を出力する。多値化の場合、閾値処理部551、552は閾値に所定値を加算して大小2つの閾値を取得する。閾値処理部551、552は画素値Cが小さい方の閾値より小さければ0、大きい方の閾値より大きければ255の画素値を出力する。画素値Cが2つの閾値の間にあれば、閾値処理部551、552は2つの閾値の1次補間関数に画素値Cを入力して得られる中間調の画素値を出力する。
【0040】
図5〜図8を参照して、上記スクリーン処理部5の閾値マトリクスのシフト方法を説明する。
上記スクリーン処理部5は、スクリーン処理時、補正制御部4から出力されるシフト信号Vs[9:1]に応じて閾値マトリクス内の閾値の配列を変え、閾値マトリクスをシフトさせる。これにより、スクリーン処理後、閾値マトリクスにより形成されるパターンのずれと画像のずれが一致する。
【0041】
図5は、シフトが無い通常の閾値マトリクスの閾値の配列を示す。
アドレス算出部51から出力されるアドレスは、図5に示すように副走査方向の0、1、4、5ラインにおいて0→1→2の順に循環し、副走査方向の2、3、6、7ラインにおいて3→4→5の順に循環する。画像のずれが無ければシフト信号Vs[9:1]の入力が無いので、アドレス補正部521、522による補正値は0であり、アドレス算出部51により算出されたアドレスは補正されずにそのまま各メモリー531、532に出力される。
【0042】
その結果、副走査方向の0、1、4、5ラインにおいて、メモリー531から出力される2×1画素の閾値は閾値0U→閾値1U→閾値2Uの順に循環し、メモリー532から出力される2×1画素の閾値は閾値0L→閾値1L→閾値2Lの順に循環する。同様に、副走査方向の2、3、6、7ラインにおいて、メモリー531から出力される2×1画素の閾値は閾値3U→閾値4U→閾値5Uの順に循環し、メモリー532から出力される2×1画素の閾値は閾値3L→閾値4L→閾値5Lの順に循環する。
【0043】
閾値調整部54にはVs[0]=0が入力されるので、メモリー531、532から出力された閾値に対し、上下の配置の入れ替えは行われず、メモリー531から出力された閾値は閾値処理部551に出力され、メモリー532から出力された閾値は閾値処理部552に出力される。
以上のようにして、図5に示される閾値の配列が得られる。
【0044】
画像のずれが有り、補正される場合、図5に示される閾値の配列が変更されて閾値マトリクスがシフトされる。
画像が緩やかに右上に傾斜するずれが生じており、主走査方向の4、5ライン目において副走査方向に1画素下に画像をシフトする補正が補正処理部6によって行われる場合、4、5ライン目の画素をスクリーン処理するタイミングに合わせて、補正制御部4からシフト信号Vs[9:1]=+00000001が出力される。このシフト信号Vs[9:1]に応じて、アドレス補正部521、アドレス補正部522によりメモリー531、532に出力されるアドレスが補正される。
【0045】
図5の主走査方向の4、5ライン目、副走査方向の0、1ライン目の2×2画素に注目すると、当該2×2画素に対しアドレス算出部51から出力されるアドレスは2である。Vs[9:1]=+00000001に応じて、アドレス補正部521により加算される補正値は3、アドレス補正部522により加算される補正値は0である。よって、アドレス補正部521からメモリー531にアドレス5が出力され、アドレス補正部522からメモリー532にアドレス2が出力される。
【0046】
メモリー531からは入力されたアドレス5に対応する2×1画素の閾値5Uが出力される。メモリー532からは入力されたアドレス2に対応する2×1画素の閾値2Lが出力される。閾値調整部54にはシフト信号Vs[0]=1が入力されるので、メモリー531、532から出力された閾値5U、2Lに対し、配置の入れ替えが行われる。その結果、図6に示すように閾値2Lが閾値処理部551に出力され、閾値5Uは閾値処理部552に出力される。
【0047】
以上のようにして閾値が出力される結果、図7に示す閾値の配列の閾値マトリクスが得られる。
主走査方向の4、5ライン、副走査方向の0、1ラインに位置する2×2画素の閾値は、画像のずれが無ければ、本来図5に示すように2×1画素の閾値2U、閾値2Lが上下に配置される。シフト信号Vs[9:1]に応じてアドレスが補正され、閾値の配値が上下で入れ替えられた結果、図7に示すように閾値2Uに代えて閾値2Lが、閾値2Lに代えて閾値5Uが配置されている。このように閾値マトリクス内の閾値の配置が変更されたことによって、図7に示すように、主走査方向の4、5ライン目以降の閾値マトリクスが副走査方向上側に1画素分シフトされている。
【0048】
図8は、一定のシフト間隔でシフトされた閾値マトリクスの例を示している。シフト間隔は、主走査方向に4画素すすむ毎に副走査方向上側に1画素シフトする間隔である。
図8に示すように、シフト信号Vs[9:1]=+00000001が出力されるまでは、アドレスの補正も行われず、閾値の上下の配置の入れ替えも無いので、閾値マトリクスの閾値の配列に変更は無い。シフト信号Vs[9:1]=+00000001が出力されてから次のシフト信号Vs=+00000010が出力されるまでは、メモリー531に出力されるアドレスが補正されて補正値3が加算されている。メモリー532に出力されるアドレスは補正されない(加算される補正値が0)。また、メモリー531、532から出力された閾値の配置が上下逆に入れ替えられている。
【0049】
シフト信号Vs[9:1]=+00000010が出力されてからシフト信号Vs[9:1]=+00000011が出力されるまでは、メモリー531だけでなく、メモリー532に対するアドレスも補正され、算出された元のアドレスに補正値3が加算されている。また、メモリー531、532から出力された閾値の上下の入れ替えが行われず、元の配置に戻っている。
【0050】
シフト信号Vs[9:1]=+00000011が出力されてから次のシフト信号Vs[9:1]=+00000100が入力されるまでは、メモリー531に対するアドレスは補正されず(加算される補正値が0)、メモリー532に対するアドレスは補正値3が加算されて補正されている。メモリー531、532から出力された閾値の配置は上下逆に入れ替えられている。
【0051】
以上のようにしてシフトされた閾値マトリクスによりスクリーン処理された画像データは、補正処理部6に出力される。
【0052】
補正処理部6は、補正制御部4から出力された補正値に応じて、スクリーン処理部5から出力された画像データを補正処理し、補正処理後の画像データを出力する。例えば、補正値が、主走査方向に14画素進む毎に副走査方向に1画素下にずらす補正値であった場合、補正処理部6は主走査方向の14画素単位で、スクリーン処理後の画像を副走査方向の1画素単位を下にシフトさせる。シフトによって画像のずれとともに、シフトされた閾値マトリクスにより形成された周期的なパターンのずれが補正される。
【0053】
図9は、閾値マトリクスにより形成されたパターンを示す。
シフトされた閾値マトリクスを用いて画像データがスクリーン処理されると、図9に示すように、副走査方向にずれが生じた周期的なパターンg1が得られる。パターンg1は、主走査方向の14画素毎に副走査方向上側に1画素ずつずれている。このパターンg1のずれは画像のずれと一致している。
【0054】
このパターンg1が補正処理部6によって補正処理されると、主走査方向の14画素単位で画像を副走査方向下側に1画素分シフトされ、図9に示すようにずれが補正されたパターンg2が得られる。補正処理によって、画像のずれとともにパターンg1のずれも補正されている。
【0055】
以上のように、本実施の形態に係る画像処理装置1は、2×2画素単位でアドレスが付された閾値マトリクスを用いて、入力された画像データを2×2画素単位でスクリーン処理するスクリーン処理部5と、スクリーン処理された画像データを補正処理し、画像のずれを補正する補正処理部6と、を備える。スクリーン処理部5は、画像データの2×2画素が位置する閾値マトリクス上のアドレスを算出するアドレス算出部51と、画像のずれに応じてアドレス算出部51により算出されたアドレスを補正し、画像のずれと一致するようにシフトされた閾値マトリクスのアドレスを出力するアドレス補正部521、522と、同一のアドレスが付された2×2画素の閾値を副走査方向に2分割して得られた2×1画素の閾値をそれぞれ記憶し、アドレス補正部521、522から出力されたアドレスに対応する2×1画素の閾値を出力する2つのメモリー531、532と、2つのメモリー531、532からそれぞれ出力された2×1画素の閾値を、画像のずれに応じて副走査方向の配置を入れ替えて2つの閾値処理部にそれぞれ出力する閾値調整部54と、閾値調整部54から出力された2×1画素の閾値を用いて、画像データの2×2画素が副走査方向に2分割された2×1画素の画素値をそれぞれ閾値処理する2つの閾値処理部551、552と、を備える。
【0056】
スクリーン処理を2×2画素単位で行うので、1画素単位で行うよりもスクリーン処理を高速化できる。2×2画素の閾値を1画素毎に4つのメモリーに保存して4つの閾値処理部で閾値処理するのではなく、2×1画素毎に2つのメモリー531、532に保存して2つの閾値処理部551、552で閾値処理するので、メモリーと閾値処理部の数を削減することができ、コストを抑えることができる。各メモリー531、532に保存される閾値は、2×2画素の閾値が副走査方向の1画素単位で分割された2×1画素の閾値であるので、この2×1画素の閾値の配置を上下で入れ替え、アドレスを補正することで、1画素単位で副走査方向に閾値マトリクスをシフトさせることができる。これにより、副走査方向の画像のずれを1画素単位で補正することができる。従って、スクリーン処理の高速な処理速度を維持しながら、コストを抑えて副走査方向の補正の分解能を向上させることができる。
【0057】
なお、上述した実施の形態は本発明の好適な一例であり、上記実施の形態の内容に限定されない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 画像処理装置
2 ずれ検出部
3 記憶部
4 補正制御部
5 スクリーン処理部
52 アドレス算出部
521、522 アドレス補正部
531、532 メモリー
54 閾値調整部
551、552 閾値処理部
6 補正処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2×2画素単位でアドレスが付された閾値マトリクスを用いて、入力された画像データを2×2画素単位でスクリーン処理するスクリーン処理部と、
スクリーン処理された前記画像データを補正処理し、画像のずれを補正する補正処理部と、を備え、
前記スクリーン処理部は、
前記画像データの2×2画素が位置する閾値マトリクス上のアドレスを算出するアドレス算出部と、
前記画像のずれに応じて前記アドレス算出部により算出されたアドレスを補正し、画像のずれと一致するようにシフトされた閾値マトリクスのアドレスを出力するアドレス補正部と、
同一のアドレスが付された2×2画素の閾値を副走査方向に2分割して得られた2×1画素の閾値をそれぞれ記憶し、前記アドレス補正部から出力されたアドレスに対応する2×1画素の閾値を出力する2つのメモリーと、
2つの前記メモリーからそれぞれ出力された2×1画素の閾値を、前記画像のずれに応じて副走査方向の配置を入れ替えて2つの閾値処理部にそれぞれ出力する閾値調整部と、
前記閾値調整部から出力された2×1画素の閾値を用いて、前記画像データの2×2画素が副走査方向に2分割された2×1画素の画素値をそれぞれ閾値処理する2つの閾値処理部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記アドレス補正部は、前記アドレス算出部により算出されたアドレスに補正値を加算して補正し、前記画像のずれが副走査方向の上側か下側かによって、さらにずれの回数によってアドレスに加算する補正値を切り替える請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記閾値調整部は、前記画像のずれの回数によって2×1画素の前記閾値の副走査方向の配置を入れ替える請求項1又は2に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−62633(P2013−62633A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198944(P2011−198944)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】