説明

画像処理装置

【課題】パターンマッチングに利用する色相を特定することで適切にパターンマッチングを遂行する。
【解決手段】画像処理装置120は、ベイヤー配列で構成される一対の画像データにおいて、各画素に未設定の色相の輝度を隣接する画素に基づいて復元する色復元部172と、輝度が復元された一対の画像データそれぞれから所定の大きさのブロックを抽出してマッチングを行い、相関性の高いブロック同士を特定するマッチング処理部176と、を備え、色復元部およびマッチング処理部は、ベイヤー配列で占有度が最も高い色相のみを対象に、それぞれ輝度の復元およびマッチングを実行する。こうして、パターンマッチングに利用する色相を特定することで適切にパターンマッチングを遂行することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像した一対の画像データに基づいてパターンマッチングを実行する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の前方に位置する車両や信号機等の障害物といった対象物を検出し、検出した対象物との衝突を回避したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つように制御する技術が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
先行車両との車間距離は、例えば、異なる位置で撮像された一対の画像データにおける対象物の視差から求めることができる。また、一対の画像データにおける対象物の視差は、画像間のパターンマッチングに基づいて導出される。パターンマッチングとしては、画像間で所定の大きさのブロック同士を比較し(マッチングし)、相関性が高いブロックを特定するといったことが一般的に行われている。また、画像の濃度ヒストグラムを用いてパターンマッチングを実行する技術も開示されている(例えば、特許文献3)。
【0004】
さらに、パターンマッチングの精度を高めるべく、パターンマッチングの前段で、撮像した画像の光学的な位置ズレを幾何学的に位置補正する技術も公開されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3349060号
【特許文献2】特開平10−283461号公報
【特許文献3】特開平5−210737号公報
【特許文献4】特許第3284190号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像を取得する手段として、例えば、格子状に配列された画素に対応する複数の受光部位(フォトダイオード)に、3原色であるRGB信号それぞれのカラーフィルタを規則的かつ排他的に配した、所謂ベイヤー配列が知られている。ベイヤー配列では、画素毎にRGBのうち1の色相しか取得されないため、通常、各画素において未設定の(欠落している)色相の輝度を、隣接する画素に基づいて補間し、色を復元する。そして、色が復元された各画素が、上述したように幾何学的に位置補正され、その後、パターンマッチングが遂行される。
【0007】
しかし、上述した色の復元は、対象となる画素の本来の色と隣接する画素の本来の色とが等しいことを前提としているため、隣接する画素の色が異なったり、そもそも対象物が異なる場合、その異なる色に基づいて色を復元してしまい偽色が生じるおそれがある。また、画素の物理的重心とその画素について復元された色重心とが異なる場合、画素の物理的重心に基づく幾何学的な位置補正によって、色重心が偏ってしまう可能性がある。
【0008】
また、夜間の走行時には、少ない入射光を効果的に取得すべく、シャッタの絞りを抑えて(シャッタを開いて)撮像するところ、検出領域内の光源の光が強すぎて任意の色相の輝度がサチレーションする(飽和する)現象が生じていた。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、パターンマッチングに利用する色相を特定することで適切にパターンマッチングを遂行可能な、画像処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の画像処理装置は、ベイヤー配列で構成される一対の画像データにおいて、各画素に未設定の色相の輝度を隣接する画素に基づいて復元する色復元部と、輝度が復元された一対の画像データそれぞれから所定の大きさのブロックを抽出してマッチングを行い、相関性の高いブロック同士を特定するマッチング処理部と、を備え、色復元部およびマッチング処理部は、ベイヤー配列で占有度が最も高い色相のみを対象に、それぞれ輝度の復元およびマッチングを実行することを特徴とする。
【0011】
一対の画像データを生成する撮像装置に応じて予め定められた画素毎の位置ズレ特性に基づき各画素を座標変換する座標変換部をさらに備えてもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の他の画像処理装置は、一対の画像データそれぞれから所定の大きさのブロックを抽出してマッチングを行い、相関性の高いブロック同士を特定するマッチング処理部と、明暗に関する環境情報を取得する環境情報取得部と、を備え、マッチング処理部は、環境情報取得部が所定の明るさ以下であることを示す環境情報を取得した場合、対象となる複数の色相のうち、波長が最も短い色相のみを対象にマッチングを実行することを特徴とする。
【0013】
マッチング処理部は、HIDランプおよびハロゲンランプのいずれかを光源とする対象物をマッチングの対象としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パターンマッチングに利用する色相を特定することで適切にパターンマッチングを遂行できる。したがって、視差情報を適切に導出でき、対象物との衝突を回避したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つ制御を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態による環境認識システムの接続関係を示したブロック図である。
【図2】輝度画像と距離画像を説明するための説明図である。
【図3】ベイヤー配列の一例を説明するための説明図である。
【図4】色復元処理を説明するための説明図である。
【図5】座標変換処理を説明するための説明図である。
【図6】色重心を説明するための説明図である。
【図7】画像処理装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図8】HIDランプおよびハロゲンランプの特定を説明するための説明図である。
【図9】第2の実施形態における画像処理装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
(第1の実施形態:環境認識システム100)
画像処理装置は、任意の目的を適切に達成するため撮像された画像を加工処理することを目的としている。例えば、画像処理装置を、車両周囲の環境を認識するための環境認識システムに採用した場合、画像処理装置は、撮像装置で撮像された画像を加工処理し、画像内の対象物の相対距離を特定するため、その画像の視差情報を導出する。ここでは、画像処理装置の理解を容易にするため、まず、画像処理装置を用いた一実施形態である環境認識システムを説明し、その後、画像処理装置の具体的な構成を詳述する。
【0018】
図1は、環境認識システム100の接続関係を示したブロック図である。環境認識システム100は、車両1内に設けられた、撮像装置110と、画像処理装置120と、環境認識装置130と、車両制御装置140とを含んで構成される。
【0019】
(撮像装置110)
撮像装置110は、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子を含んで構成され、カラー画像、即ち、画素単位で3つの色相(赤、緑、青)の輝度を取得する。本実施形態においては、色と輝度とを同等に扱い、同一の文章に両文言が含まれる場合、互いを、色を構成する輝度、または、輝度を有する色と読み替えることができる。ここでは、画素に対応する受光部位(フォトダイオード)にRGB信号それぞれのカラーフィルタを規則的かつ排他的に配した、ベイヤー配列によるカラー画像を得ることとする。また、撮像装置110で撮像されたカラーの画像を輝度画像と呼び、後述する距離画像と区別する。
【0020】
撮像装置110は、車両1の進行方向側において2つの撮像装置110それぞれの光軸が略平行になるように、略水平方向に離隔して配置される。撮像装置110は、車両1の前方の検出領域に存在する対象物を撮像した画像データを、例えば1/60秒毎(60fps)に連続して生成する。ここで、対象物は、車両、信号機、道路、ガードレールといった独立して存在する立体物のみならず、テールランプやウィンカー、信号機の各点灯部分等、立体物の部分として特定できる物も含む。以下の実施形態における各機能部は、このような画像データの更新を契機として各処理を遂行する。
【0021】
(画像処理装置120)
画像処理装置120は、2つの撮像装置110それぞれから画像データを取得し、取得した一対の画像データの相関性を評価し、画像中の任意のブロック(所定数の画素を集めたもの)の両画像間の視差を含む視差情報を導出する。画像処理装置120は、一方の画像データから任意に抽出したブロック(例えば水平4画素×垂直4画素の配列)に対応するブロックを他方の画像データから検索する、所謂パターンマッチングを用いて視差を導出する。ここで、水平は、撮像した画像の画面横方向を示し、実空間上の水平に相当する。また、垂直は、撮像した画像の画面縦方向を示し、実空間上の鉛直方向に相当する。かかる相関性の評価およびパターンマッチングに関しては後ほど詳述する。
【0022】
ただし、画像処理装置120では、検出分解能単位であるブロック毎に視差を導出することはできるが、そのブロックがどのような対象物の一部であるかを認識できない。したがって、視差情報は、対象物単位ではなく、検出領域における検出分解能単位(例えばブロック単位)で独立して導出されることとなる。ここでは、このようにして導出された視差情報を画像データに対応付けた画像を距離画像という。
【0023】
図2は、輝度画像124と距離画像126を説明するための説明図である。例えば、2つの撮像装置110を通じ、検出領域122について図2(a)のような輝度画像(画像データ)124が生成されたとする。ただし、ここでは、理解を容易にするため、2つの輝度画像124の一方のみを模式的に示している。画像処理装置120は、このような輝度画像124からブロック毎の視差を求め、図2(b)のような距離画像126を形成する。距離画像126における各ブロックには、そのブロックの視差が関連付けられている。ここでは、説明の便宜上、視差が導出されたブロックを黒のドットで表している。
【0024】
(環境認識装置130)
環境認識装置130は、画像処理装置120から輝度画像124と距離画像126とを取得し、輝度画像124に基づく輝度と、距離画像126の視差情報に基づく車両(自車両)1との相対距離とを用いて検出領域122における対象物がいずれの物(車両、信号機、道路、ガードレール、テールランプ、ウィンカー、信号機の各点灯部分等)に対応するかを特定する。このとき、環境認識装置130は、距離画像126における、検出領域122内のブロック毎の視差情報を、所謂ステレオ法を用いて、相対距離を含む三次元の位置情報に変換している。ここで、ステレオ法は、三角測量法を用いることで、対象物の視差からその対象物の撮像装置110に対する相対距離を導出する方法である。
【0025】
(車両制御装置140)
車両制御装置140は、環境認識装置130で特定された対象物との衝突を回避したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つ制御を実行する。具体的に、車両制御装置140は、操舵の角度を検出する舵角センサ142や車両1の速度を検出する車速センサ144等を通じて現在の車両1の走行状態を取得し、アクチュエータ146を制御して先行車両との車間距離を安全な距離に保つ。ここで、アクチュエータ146は、ブレーキ、スロットルバルブ、舵角等を制御するために用いられる車両制御用のアクチュエータである。また、車両制御装置140は、対象物との衝突が想定される場合、運転者の前方に設置されたディスプレイ148にその旨警告表示(報知)を行うと共に、アクチュエータ146を制御して車両1を自動的に制動する。かかる車両制御装置140は、環境認識装置130と一体的に形成することもできる。
【0026】
(第1の実施形態における問題点とその解決手段)
カラー画像は様々な態様で取得できる。例えば、(1)撮像装置110への入射光をプリズムによってRGBの各色相に分割し、3つの撮像素子で色相毎に画像を取得したり、(2)RGBそれぞれの感度セルを光路方向に重畳した撮像素子でRGBに基づく画像を一度に取得したり、(3)ベイヤー配列によって画素毎に1の色相を規則的かつ排他的に取得したりすることが可能である。本実施形態では、このうち(3)ベイヤー配列を用いて画像を取得する。
【0027】
図3は、ベイヤー配列の一例を説明するための説明図である。図3(a)に示すように、ベイヤー配列は、格子状に配列された画素に規則的かつ排他的に各色相RGBを配置したものであり、いずれの色相においても、少なくとも水平方向および垂直方向の2つ隣の画素には同一の色相が配されている。ただし、色相Gは、色相Rと色相Bに対して2倍の密度(占有面積)となっている。これは、図3(b)に示した分光感度特性のように、色相Gの感度分布が高いため、輝度情報を取得しやすく、また、人間の視覚が色相Gに対して高い感度を持っているからである。
【0028】
ベイヤー配列においては、各画素からは1つの色相に関してしか輝度を得られない。そこで、欠落している他の2つの色相に関し、隣接する画素の当該色相の輝度を用いて色復元処理(補間処理)を行う。
【0029】
図4は、色復元処理を説明するための説明図である。ここでは、画像周囲に付された数字が画素の水平および垂直位置を示す。例えば、色相Rは、ベイヤー配列において図4(a)のように配されている。したがって、既に色相Rについて輝度が取得されている画素(2,1)、(2,3)、(4,1)、(4,3)の輝度は、取得した輝度a、b、c、dをそのまま利用できる。
【0030】
また、水平方向または垂直方向に、輝度が取得された2つの画素が隣接する画素(2,2)、(3,1)、(3,3)、(4,2)では、隣接する2つの画素の輝度が線形補間され、画素(2,2)の輝度=(a+b)/2、画素(3,1)の輝度=(a+c)/2、画素(3,3)の輝度=(b+d)/2、画素(4,2)の輝度=(c+d)/2となる。
【0031】
さらに、対角線方向に、輝度が取得された4つの画素が隣接する画素(3,2)では、隣接する4つの画素の輝度が線形補間され、画素(3,2)の輝度=(a+b+c+d)/4となる。ここでは、説明の便宜のため水平方向1行目および垂直方向4行目の画素の導出は省略している。このような画素の補間は、図4(b)に示すように色相Bでも適用できるため、ここでは、色相Bについての説明を省略する。
【0032】
また、色相Gは,ベイヤー配列において図4(c)のように配されている。したがって、既に色相Gについて輝度が取得されている画素(2,2)、(3,1)、(3,3)、(4,2)の輝度は、取得した輝度e、f、g、hをそのまま利用できる。また、水平方向および垂直方向に輝度が取得された4つの画素が隣接する画素(3,2)では、隣接する4つの画素の輝度が線形補間され、画素(3,2)の輝度=(e+f+g+h)/4となる。
【0033】
したがって、いずれの色相であっても、本来の色を復元するためには、水平方向または垂直方向に最大3画素の領域幅が必要である(参照画素数の最大は4画素)ことが理解できる。そうすると、電線、木(葉等)、その他の一方向に細い対象物を撮像した場合、その幅が1画素や2画素となると、適切な色への復元が困難となる。
【0034】
例えば、図4(a)において、仮に、垂直方向2行目に、水平方向の幅が1画素の対象物が位置しているとする。図4(a)の垂直方向2行目には、その対象物のR成分に関する情報が全くなく、上述した線形補間によって、他の対象物のR成分に影響を受けた偽色が生じる。同様に、図4(b)において、仮に、垂直方向3行目に、水平方向の幅が1画素の対象物が位置しているとする。図4(b)の垂直方向3行目には、その対象物のB成分に関する情報が全くなく、上述した線形補間によって、他の対象物のB成分に影響を受けた偽色が生じる。これに対して、図4(c)では、垂直方向2行目であっても、垂直方向3行目であっても、その対象物のG成分に関する情報が含まれるので、他の対象物のG成分の影響を受けたとしても、線形補間によって本来の色に近い色が復元される。
【0035】
したがって、色復元処理に、例えば、ベイヤー配列において密度の高い色相Gのみを扱うとした場合、偽色が生じにくく、色相R、Bも含めた場合と比較して、色の復元性を高めることができる。偽色が生じた場合、パターンマッチングが適切に実行されないばかりか、ミスマッチングによって誤った視差情報を導出してしまうこともある。ここでは、上記の如く色の復元性を高めることで、かかる事態を回避することが可能となる。
【0036】
そして、色復元処理が完了すると、次に、撮像装置110に応じて予め定められた画素毎の位置ズレ(歪み)特性に基づき各画素を座標変換する座標変換処理が遂行される。座標変換は、撮像装置110を通じたことにより本来の位置から歪んで取得されてしまった対象物を本来の位置に戻すための処理である。例えば、図5(a)に示す魚眼レンズを通じたような位置ズレ特性を有する映像を、水平方向や垂直方向への単純シフトやアフィン変換等を用いた回転移動により、図5(b)のような水平方向や垂直方向が直線となる画像に補正する。
【0037】
かかる座標変換においては、座標変換後の画素の色復元も実行されるが、画素の物理的重心とその画素について復元された色重心とが異なる場合に問題が生じる。ここで、色重心は、上述した色復元処理により偏移しうる。以下、色重心の説明を行う。
【0038】
図6は、色重心を説明するための説明図である。図6(a)に破線で示した4つの画素(輝度=a、b、c、d)から実線で示した1つの画素を幾何補正により復元すると、実線で示した画素150の輝度は、距離x、yを用いて、a×(1−x)(1−y)+b×x(1−y)+c×(1−x)y+d×xyで表される。
【0039】
したがって、図6(b)のように色相Rが配され、その輝度がa、b、c、dであった場合、図6(b)の実線で示した画素152の輝度は、画素(2,2)、(3,2)、(3,3)のR成分をe、f、gとすると、(b+e+f+g)/4となる。ただし、ここでは、理解を容易にするため、図6(a)における距離x、yを0.5としている。また、上述した色復元処理により、e=(a+b)/2、f=(a+b+c+d)/4、g=(b+d)/2となる。すると、画素152への色相Rの寄与度は、a=3/16、b=9/16、c=1/16、d=3/16となる。この場合、色重心は、画素152の物理的重心(中心位置)より図面中左下に生じる。色相Bについても、色相R同様に求めると、図6(c)の如く、色重心が、画素152の物理的重心より図面中右上に生じる。かかる色重心の位置は、実線の画素152の取り方によって変化することは言うまでもない。
【0040】
ただし、色相Gの場合、図6(d)の如く、画素(3,1)、(2,2)、(1,3)、(4,2)、(3,3)、(2,4)の輝度をh、i、j、k、l、mとすると、画素152への色相Gの寄与度は、h=1/16、i=6/16、j=1/16、k=1/16、l=6/16、m=1/16となる。この場合、色重心は、画素152の物理的重心(中心位置)と等しくなる。
【0041】
したがって、座標変換を行った場合、色相R、Bについては、画素の物理的重心とその画素について復元された色重心とが異なる場合があるので、画素の物理的重心に基づく幾何学的な位置補正によって、色重心が偏ってしまうおそれがある。しかし、例えば、ベイヤー配列において市松模様の如く均等に配された色相Gのみを扱うとした場合、このような物理的重心と色重心との偏移も生じることがなく、色相R、Bも含めた場合と比較して、座標変換した後の画像の色配置も適切となる。このような色重心の偏移が生じた場合、色復元処理同様、パターンマッチングが適切に実行されないばかりか、ミスマッチングによって誤った視差情報を導出してしまうこともある。ここでは、上記の如く色の偏移を抑制することで、かかる事態を回避することが可能となる。
【0042】
したがって、座標変換処理において色相Gのみを扱うとした場合、色の復元性を高め、偏移を抑制することが可能となる。以下、対象とする色相を色相Gのみとした画像処理装置120の構成を具体的に述べる。
【0043】
(画像処理装置120)
図7は、画像処理装置120の概略的な機能を示した機能ブロック図である。図7に示すように、画像処理装置120は、I/F部160と、データ保持部162と、中央制御部164とを含んで構成される。
【0044】
I/F部160は、撮像装置110や環境認識装置130との双方向の情報交換を行うためのインターフェースである。データ保持部162は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、以下に示す各機能部の処理に必要な様々な情報を保持し、また、撮像装置110から受信した輝度画像124を一時的に保持する。
【0045】
中央制御部164は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、システムバス166を通じて、I/F部160やデータ保持部162を制御する。また、本実施形態において、中央制御部164は、感度補正部170、色復元部172、座標変換部174、マッチング処理部176、視差導出部178としても機能する。
【0046】
感度補正部170は、撮像装置110から受信した一対の画像データに、ガンマ補正、ニー処理等の所定の処理を施す。
【0047】
色復元部172は、図4を用いて説明したように、ベイヤー配列で構成される一対の画像データにおいて、各画素に未設定の色相の輝度を、隣接する画素に基づいて線形補間等により復元する。ただし、本実施形態においては、3原色全てではなく、ベイヤー配列で占有度の高い色相Gのみ抽出し、色相Gに関する輝度が未設定の画素に対して色復元処理を施す。
【0048】
かかる構成により、偽色が生じにくく、色相R、Bも含めた場合と比較して、色の復元性を高めることができる。したがって、パターンマッチングが適切に実行されなかったり、ミスマッチングによって誤った視差情報を導出してしまうといった事態を回避し、パターンマッチングの精度を高めることが可能となる。
【0049】
また、ここでは、占有度の高い色相として色相Gを用いているが、ベイヤー配列において占有面積が多い色相であれば、いずれの色相を採用することもできる。例えばRGBの原色系のみならず、YMgCyGrの補色系でも最も占有度の高い補色を用いることが可能である。
【0050】
座標変換部174は、図5を用いて説明したように、一対の画像データを生成する撮像装置110に応じて予め定められた画素毎の位置ズレ特性に基づき各画素を座標変換し、座標変換後の画素の輝度を導出(色復元)する。かかる座標変換は、特許第3284190号等、既存の様々な技術を採用することができるので、ここではその詳細な説明を省略する。ここで、座標変換部174は、色復元部172によって色復元処理が施された色相Gのみを用いて座標変換後の色復元を行う。
【0051】
色相Gは、ベイヤー配列で市松模様の如く均等に配されているので、物理的重心と色重心との偏移も生じることがなく、色相R、Bも含めた場合と比較して、座標変換した後の画像の色配置も適切となる。したがって、パターンマッチングが適切に実行されなかったり、ミスマッチングによって誤った視差情報を導出してしまうといった事態を回避し、パターンマッチングの精度をより高めることが可能となる。
【0052】
マッチング処理部176は、輝度が復元され、かつ、位置ズレが補正された一対のデータそれぞれから所定の大きさのブロックを抽出してマッチングを行い、相関性の高いブロック同士を特定する。ただし、本実施形態においては、色相Gのみについてパターンマッチングを行う。
【0053】
このパターンマッチングとしては、2つの画像データ間において、任意の画像位置を示すブロック単位で輝度値(Y色差信号)を比較することが考えられる。例えば、輝度値の差分をとるSAD(Sum of Absolute Difference)、差分を2乗して用いるSSD(Sum of Squared intensity Difference)や、各画素の輝度値から平均値を引いた分散値の類似度をとるNCC(Normalized Cross Correlation)等の手法がある。画像処理装置120は、このようなブロック単位の視差導出処理を検出領域(例えば600画素×200画素)に映し出されている全てのブロックについて行う。ここでは、ブロックを4画素×4画素としているが、ブロック内の画素数は任意に設定することができる。
【0054】
本実施形態では、マッチング処理部176が1の色相Gを用いてパターンマッチングを行う例を挙げて説明したが、条件に応じ、従来の3原色によるパターンマッチングと切り換えて利用することで、パターンマッチングを効果的に行うことが可能となる。このときの条件は、例えば、エッジの細かさ、想定する映像、DCDX値等が想定される。例えば、全体的にエッジが細かい場合、色相Gのみによってパターンマッチングを行い、エッジが緩やかであれば、3原色によるパターンマッチングを行う。
【0055】
視差導出部178は、マッチング処理部176によって特定されたブロック同士の、画像を基準とした視差を画素単位で求め、そのブロックに関連付けさせる。かかる視差は視差情報として後段の環境認識装置130に利用される。
【0056】
以上、説明した画像処理装置120では、色相として色相Gのみを扱うことで、色の復元性を高め、色重心の偏移を抑制することが可能となる。したがって、パターンマッチングの精度をより高めることで、視差情報を適切に導出することができ、対象物との衝突を回避したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つ制御を適切に行うことが可能となる。
【0057】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ベイヤー配列の構成に基づいて1の色相によるマッチングを遂行した。第2の実施形態では、ベイヤー配列に拘わらず、車両1外の環境に応じて1の色相によるマッチングを遂行する。
【0058】
(第2の実施形態における問題点とその解決手段)
夜間の車両1の走行において、環境認識システム100では、検出領域122から受光できる光が全体的に少なくなるので、撮像装置110のシャッタを比較的大きく開いて、光の受光感度を高める。このとき、テールランプ、ストップランプ、ヘッドライト、ウィンカー等の自発光する光源が検出領域122に出現すると、高まった受光感度によって輝度がサチレーション(飽和)してしまう。
【0059】
このように輝度の情報がサチレーションしてしまうと、サチレーションした全ての画素が同一の輝度を示してしまうので、適切なパターンマッチングができなくなる。かかる事象を回避すべくシャッタを絞ると、上述した光源に対してパターンマッチングが可能となるかもしれないが、今度は光源以外の対象物を取得できなくなってしまう。
【0060】
ところで、テールランプ、ストップランプ、ヘッドライト、ウィンカー等、車両1には、HID(High Intensity Discharge)ランプやハロゲンランプが用いられている。第2の実施形態においては、このようなランプの特性に着目する。
【0061】
図8は、HIDランプおよびハロゲンランプの特定を説明するための説明図である。例えば、図8(a)に示した、HIDランプ(ここでは、メタルハライドランプ)の分光エネルギー分布を参照すると、色相Gや、色相Gと色相Rの間の波長で相対エネルギーが高い波長があることが分かる。一方、色相Bの相対エネルギーは低い値を示している。同様に図8(b)に示したハロゲンランプにおいても、色相Bの相対エネルギーは低く、波長が大きくなるに連れ、即ち、色相が色相G、色相Rと移行するに従って、相対エネルギーは高くなっている。
【0062】
そこで、本実施形態では、光源のうちでも相対エネルギーの弱い、色相Bのみを取得することで、サチレーションを回避する。特に、テールランプ、ストップランプ、ウィンカー等は、赤や橙のカラーフィルタがかかっているので色相Bの光が通りにくく、より色相Bの輝度が低くなり、サチレーションが回避され易くなる。
【0063】
色相Bは、シャッタを開いた状態であっても、そもそもの相対エネルギーが低いため、サチレーションし難く、輝度として有効な値を取得できる。そうすると、その色相Bによるテクスチャが生じ、適切にパターンマッチングを行うことが可能となる。
【0064】
(画像処理装置220)
図9は、第2の実施形態における画像処理装置220の概略的な機能を示した機能ブロック図である。図9に示すように、画像処理装置220は、第1の実施形態の画像処理装置120同様、I/F部160と、データ保持部162と、中央制御部164とを含んで構成される。また、中央制御部164は、感度補正部170、色復元部172、座標変換部174、マッチング処理部176、視差導出部178、環境情報取得部280としても機能する。第1の実施形態における構成要素として既に述べたI/F部160と、データ保持部162と、中央制御部164と、感度補正部170と、視差導出部178とは、実質的に機能が同一なので、重複説明を省略する。また、色復元部172、座標変換部174、マッチング処理部176に関しても、対象とする色相が色相Bであること以外は実質的に等しいので、重複説明を省略し、構成が相違する環境情報取得部280を主に説明する。
【0065】
環境情報取得部280は、車両1外の環境における明暗に関する環境情報を取得する。例えば、車両1がヘッドライトを点灯した場合、ヘッドライトが必要な程度に環境的に暗くなったと判断し、そのヘッドライトの点灯を環境情報「暗」として取得する。また、環境情報取得部280として、明度センサを設け、適当な閾値以下となったか否かによって環境情報「暗」を判断してもよい。
【0066】
マッチング処理部176は、環境情報取得部280が所定の明るさ以下であることを示す環境情報「暗」を取得した場合、対象となる複数の色相のうち、最も波長の短い色相である色相Bのみを対象にマッチングを実行する。例えば、先行車両のテールランプは色相Rの波長が多く、色相Bの波長が少ない。そのため色相Bの波長の画像のみでマッチングすると、テールランプがサチレーションせず、適切にパターンマッチングを遂行することが可能となる。すると、視差情報を適切に導出でき、対象物との衝突を回避したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つ制御を適切に行うことができる。
【0067】
なお、昼間のように環境的に十分明るければ、即ち、環境情報取得部280が環境情報「明」を示しているとき、マッチング処理部176は、3原色によるパターンマッチングを行う。
【0068】
以上、説明したように、画像処理装置220によれば、夜間の走行時に、シャッタの絞りを抑えて少ない入射光を撮像素子で効果的に取得しつつ、光源を有する対象物も適切に取得することができ、ひいては、パターンマッチングの精度をより高めることが可能となる。
【0069】
また、コンピュータを、画像処理装置120、220として機能させるプログラムや当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
例えば、上述した実施形態においては、2つの撮像装置110を用いて同時に取得した画像データを利用しているが、1つの撮像装置110を用いて時系列に対応する一対の画像データを用いることもできる。また、撮像装置110の数は1や2に限らず、3以上の複眼にも適用可能である。
【0072】
また、上述した実施形態においては、ベイヤー配列としてRGBの3原色を挙げて説明したが、RGBCの4原色、もしくは異なる5色以上の色を適用することもできる。
【0073】
さらに、上述した実施形態では、撮像装置110を介して取得した画像データのみを対象としているが、電波レーザレーダを用い、周波数フィルタを異ならせて上述した特定の色相に相当するレーザ光を取得するとしてもよい。ここで、電波レーザレーダは、検出領域122にレーザビームを投射し、このレーザビームが物体に当たって反射してくる光を受光し、その反射光を分析するものである。さらに、温度測定装置でも、温度測定素子毎の画像データに当該実施形態を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、撮像した一対の画像データに基づいてパターンマッチングを実行する画像処理装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 …車両
100 …環境認識システム
120、220 …画像処理装置
170 …感度補正部
172 …色復元部
174 …座標変換部
176 …マッチング処理部
280 …環境情報取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベイヤー配列で構成される一対の画像データにおいて、各画素に未設定の色相の輝度を隣接する画素に基づいて復元する色復元部と、
輝度が復元された一対の画像データそれぞれから所定の大きさのブロックを抽出してマッチングを行い、相関性の高いブロック同士を特定するマッチング処理部と、
を備え、
前記色復元部および前記マッチング処理部は、前記ベイヤー配列で占有度が最も高い色相のみを対象に、それぞれ輝度の復元およびマッチングを実行することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記一対の画像データを生成する撮像装置に応じて予め定められた画素毎の位置ズレ特性に基づき各画素を座標変換する座標変換部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
一対の画像データそれぞれから所定の大きさのブロックを抽出してマッチングを行い、相関性の高いブロック同士を特定するマッチング処理部と、
明暗に関する環境情報を取得する環境情報取得部と、
を備え、
前記マッチング処理部は、前記環境情報取得部が所定の明るさ以下であることを示す環境情報を取得した場合、対象となる複数の色相のうち、波長が最も短い色相のみを対象にマッチングを実行することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
前記マッチング処理部は、HIDランプおよびハロゲンランプのいずれかを光源とする対象物をマッチングの対象とすることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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