説明

画像取得方法および装置

【課題】特殊画像の経時変化を観察することができ、たとえばリンパ管内をICGがどのような向きに流れていったのかを知ることができる特殊画像を取得する。
【解決手段】特殊光の被観察部への照射によって被観察部から発せられた光を受光して所定の間隔で撮像された複数の特殊画像を取得し、その取得した複数の特殊画像のうちの少なくとも1つの過去の時点において撮像された過去特殊画像と過去の時点より後の時点において撮像された特殊画像との間の経時変化部の情報を取得し、過去特殊画像または後の時点に撮像された特殊画像と経時変化部の情報とに基づいて経時変化画像を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊光の被観察部への照射によって被観察部から発せられた光を受光して特殊画像を取得する画像取得方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体腔内の組織を観察する内視鏡システムが広く知られており、白色光の照射によって体腔内の被観察部を撮像して通常画像を得、この通常画像をモニタ画面上に表示する電子式内視鏡システムが広く実用化されている。
【0003】
また、上記のような内視鏡システムとして、たとえば、特許文献1においては、通常画像とともに、励起光の照射によって被観察部から発せられた自家蛍光像を撮像して自家蛍光画像を得、これらの画像をモニタ画面上に表示する蛍光内視鏡システムが提案されている。
【0004】
また、蛍光内視鏡システムとしては、たとえば、ICG(インドシアニングリーン)を予め体内に投入し、励起光を被観察部に照射して血管内のICGの蛍光を検出することによって蛍光画像を取得するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−5056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したような蛍光内視鏡システムを利用して、被観察部のリンパ管中を流れるICGの蛍光を撮像して蛍光画像を取得することも考えられるが、リンパ管内に投入されたICGが時間経過とともにどのような向きに流れているかを観察することは、癌の摘出手術などで切除する必要があるセンチネルリンパを発見する上で非常に重要なことである。また、リンパ管中を流れるICGが時間経過とともにどのように流れているかを観察することはこれからの研究材料としても非常に注目されるものである。
【0007】
しかしながら、単に所定のタイミングで撮像された蛍光画像を観察しただけでは、リンパ管内をICGがどのような向きに流れていったのかを知ることはできない。
【0008】
なお、特許文献1においては、リンパ管に投入されたICGの輝度の変化を精度よく観察するため、時系列に撮像された画像の輝度の変化率に応じて色を変えて表示することが提案されているが、特許文献1に記載の発明では、輝度が変化せずに安定して発光している場合には全て同じ色で表示されるため、ある程度長い時間撮像している蛍光画像上においてはその経時変化を観察することができない。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑み、たとえば、上述した蛍光画像のような特殊画像の経時変化を観察することができ、これによりリンパ管内をICGがどのような向きに流れていったのかを知ることができる特殊画像を取得可能な画像取得方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像取得方法は、特殊光の被観察部への照射によって被観察部から発せられた光を受光して所定の間隔で撮像された複数の特殊画像を取得し、その取得した複数の特殊画像のうちの少なくとも1つの過去の時点において撮像された過去特殊画像と過去の時点より後の時点において撮像された特殊画像との間の経時変化部の情報を取得し、過去特殊画像または後の時点に撮像された特殊画像と経時変化部の情報とに基づいて経時変化画像を取得することを特徴とする。
【0011】
本発明の画像取得装置は、特殊光を被観察部に照射する特殊光照射部と、特殊光の照射によって被観察部から発せられた光を受光して複数の特殊画像を所定の間隔で撮像する撮像部と、撮像部によって取得された複数の特殊画像のうちの少なくとも1つの過去の時点において撮像された過去特殊画像と過去の時点より後の時点において撮像された特殊画像との間の経時変化部の情報を取得し、過去特殊画像または後の時点に撮像された特殊画像と経時変化部の情報とに基づいて経時変化画像を取得する経時変化画像取得部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の画像取得装置においては、通常光を被観察部に照射する通常光照射部を設け、撮像部を、通常光の照射によって被観察部から反射された反射光を受光して複数の通常画像を所定の間隔で撮像するものとし、複数の通常画像のうち少なくとも1つの過去の時点において撮像された過去通常画像と後の時点に撮像された通常画像との間の動きの変化を示す動き特徴量を取得する動き特徴量取得部と、動き特徴量取得部によって取得された動き特徴量に基づいて、動き特徴量を取得するために用いた過去通常画像と同じ時点において撮像された過去特殊画像に対して動き補正処理を施す動き補正部とを設け、経時変化画像取得部を、動き補正処理の施された過去特殊画像と後の時点に撮像された特殊画像との間の経時変化部の情報を取得し、動き補正処理の施された過去特殊画像または後の時点に撮像された特殊画像と経時変化部の情報とに基づいて経時変化画像を取得するものとできる。
【0013】
また、過去特殊画像と後の時点に撮像された特殊画像との間の動きの変化を示す動き特徴量をそれぞれ取得する動き特徴量取得部と、動き特徴量取得部によって取得された動き特徴量に基づいて、動き特徴量を取得するために用いた過去特殊画像に対して動き補正処理を施す動き補正部とを設け、経時変化画像取得部を、動き補正処理の施された過去特殊画像と後の時点に撮像された特殊画像との間の経時変化部の情報を取得し、動き補正処理の施された過去特殊画像または後の時点に撮像された特殊画像と経時変化部の情報とに基づいて経時変化画像を取得するものとできる。
【0014】
また、過去特殊画像と後の時点に撮像された特殊画像とから被観察部に含まれる管部分を表す管画像を抽出する管画像抽出部を設け、経過変化画像取得部を、過去特殊画像の管画像と後の時点に撮像された特殊画像の管画像とに基づいて経時変化部の情報を取得し、過去特殊画像の管画像または後の時点に撮像された特殊画像の管画像と経時変化部の情報とに基づいて経時変化画像を取得するものとできる。
【0015】
また、経時変化画像取得部を、少なくとも1つの過去特殊画像と経時変化部とが互いに異なる表示形態となるように経時変化画像を生成するものとできる。
【0016】
また、経時変化画像取得部を、少なくとも1つの過去特殊画像と経時変化部に対して互いに異なる色を割り当てるものとできる。
【0017】
また、経時変化画像取得部を、少なくとも1つの過去特殊画像と経時変化部とに対して互いに異なる線種を割り当てるものとできる。
【0018】
また、光照射部を、蛍光薬剤が投入された被観察部に対して、特殊光として励起光を照射するものとし、撮像部を、励起光の照射によって被観察部から発せられた蛍光を受光して特殊画像として蛍光画像を取得するものとできる。
【0019】
また、経時変化画像取得部を、後の時点に撮像された特殊画像として最も直近に撮像された特殊画像を取得するものとできる。
【0020】
また、通常光を被観察部に照射する通常光照射部を備えたものとし、撮像部を、前記通常光の照射によって被観察部から反射された反射光を受光して複数の通常画像を所定の間隔で撮像するものとし、経時変化画像と、過去特殊画像または後の時点に撮像された特殊画像と、その過去特殊画像または後の時点に撮像された特殊画像と同時に撮像された通常画像とを重ね合わせた合成画像を生成する合成画像生成部を設けることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の画像取得方法および装置によれば、特殊光の被観察部への照射によって被観察部から発せられた光を受光して所定の間隔で撮像された複数の特殊画像を取得し、その取得した複数の特殊画像のうちの少なくとも1つの過去の時点において撮像された過去特殊画像と過去の時点より後の時点において撮像された特殊画像との間の経時変化部の情報を取得し、過去特殊画像または後の時点に撮像された特殊画像と経時変化部の情報とに基づいて経時変化画像を取得するようにしたので、この経時変化画像を観察すれば、たとえば、リンパ管内をICGがどのような向きに流れていったのかを知ることができる。
【0022】
また、上記本発明の画像取得方法および装置において、経時変化画像を取得する際、過去特殊画像が撮像されたときの被観察部の状態と後の時点の特殊画像が撮像されたときの被観察部の状態との間の変化を補正するような動き補正処理を施すようにした場合には、被観察部が拍動などによってその状態が変化したとしても、すなわち、たとえば、拍動によって観察対象のリンパ管の位置が動いてしまったとしても、この影響を受けることなく適切な経時変化画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の画像取得装置の一実施形態を用いた硬性鏡システムの概略構成図
【図2】硬質挿入部の概略構成図
【図3】撮像ユニットの概略構成図
【図4】画像処理装置および光源装置の概略構成を示すブロック図
【図5】画像処理部の概略構成を示すブロック図
【図6】過去の蛍光画像信号に動き補正を施した後、経時変化画像を生成する作用を説明するためのフローチャート
【図7】動き特徴量の取得方法を説明するためのフローチャート
【図8】特徴点の一例を示す図
【図9】マッチング演算処理の作用を説明するための図
【図10】動き補正処理を説明するための図
【図11】動き補正処理後の蛍光画像信号の矩形領域の一例を示す図
【図12】エッジ検出を用いた線分抽出処理を説明するためのフローチャート
【図13】経時変化画像の一例を示す図
【図14】経時変化画像のその他の例を示す図
【図15】分岐点を検出する方法を説明するための図
【図16】経時変化画像のその他の例を示す図
【図17】矢印の方向を決定する方法を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の画像取得装置の一実施形態を用いた硬性鏡システムについて詳細に説明する。図1は、本実施形態の硬性鏡システム1の概略構成を示す外観図である。
【0025】
本実施形態の硬性鏡システム1は、図1に示すように、白色の通常光および励起光を同時に射出する光源装置2と、光源装置2から射出された通常光および励起光を導光して被観察部に照射するとともに、通常光の照射により被観察部から反射された反射光に基づく通常像および励起光の照射により被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像を撮像する硬性鏡撮像装置10と、硬性鏡撮像装置10によって撮像された画像信号に所定の処理を施す画像処理装置3と、画像処理装置3において生成された表示制御信号に基づいて被観察部の通常画像、蛍光画像および後述する経時変化画像を表示するモニタ4とを備えている。
【0026】
硬性鏡撮像装置10は、図1に示すように、体腔内に挿入される硬質挿入部30と、硬質挿入部30によって導光された被観察部の通常像および蛍光像を撮像する撮像ユニット20とを備えている。
【0027】
また、硬性鏡撮像装置10は、図2に示すように、硬質挿入部30と撮像ユニット20とが着脱可能に接続されている。そして、硬質挿入部30は接続部材30a、挿入部材30b、ケーブル接続口30c、および照射窓30dを備えている。
【0028】
接続部材30aは、硬質挿入部30(挿入部材30b)の一端側30Xに設けられており、たとえば撮像ユニット20側に形成された開口20aに嵌め合わされることにより、撮像ユニット20と硬質挿入部30とが着脱可能に接続される。
【0029】
挿入部材30bは、腹腔内の撮影を行う際に腹腔内に挿入されるものであって、硬質な材料から形成され、たとえば、直径略5mmの円柱形状を有している。挿入部材30bの内部には、被観察部の像を結像するためのレンズ群が収容されており、他端側30Yから入射された被観察部の通常像および蛍光像はレンズ群を介して一端側30Xの撮像ユニット20側に射出される。
【0030】
挿入部材30bの側面にはケーブル接続口30cが設けられており、このケーブル接続口30cに光ケーブルLCが機械的に接続される。これにより、光源装置2と挿入部材30bとが光ケーブルLCを介して光学的に接続されることになる。
【0031】
照射窓30dは、硬質挿入部30の他端側30Yに設けられており、光ケーブルLCによって導光された通常光および励起光を被観察部に対し照射するものである。なお、挿入部材30b内にはケーブル接続口30cから照射窓30dまで通常光および励起光を導光するライトガイドが収容されており(図示せず)、照射窓30dはライトガイドによって導光された通常光および励起光を被観察部に照射するものである。
【0032】
図3は、撮像ユニット20の概略構成を示す図である。撮像ユニット20は、硬質挿入部30内のレンズ群により結像された被観察部の蛍光像を撮像して被観察部の蛍光画像信号を生成する第1の撮像系と、硬質挿入部30内のレンズ群により結像された被観察部の通常像を撮像して通常画像信号を生成する第2の撮像系とを備えている。これらの撮像系は、通常像を反射するとともに、蛍光像を透過する分光特性を有するダイクロイックプリズム21によって、互いに直交する2つの光軸に分けられている。
【0033】
第1の撮像系は、被観察部において反射し、ダイクロイックプリズム21を透過した励起光をカットする励起光カットフィルタ22と、硬質挿入部30から射出され、ダイクロイックプリズム21および励起光カットフィルタ22を透過した蛍光像L1を結像する第1結像光学系23と、第1結像光学系23により結像された蛍光像L4を撮像する高感度撮像素子24とを備えている。
【0034】
第2の撮像系は、硬質挿入部30から射出され、ダイクロイックプリズム21を反射した通常像L2を結像する第2結像光学系25と、第2結像光学系25により結像された通常像L2を撮像する撮像素子26を備えている。
【0035】
高感度撮像素子24は、蛍光像L4の波長帯域の光を高感度に検出し、蛍光画像信号に変換して出力するものである。高感度撮像素子24はモノクロの撮像素子である。
【0036】
撮像素子26は、通常像の波長帯域の光を検出し、通常画像信号に変換して出力するものである。撮像素子26の撮像面には、3原色の赤(R)、緑(G)および青(B)、またはシアン(C)、マゼンダ(M)およびイエロー(Y)のカラーフィルタがベイヤー配列またはハニカム配列で設けられている。
【0037】
また、撮像ユニット20は、撮像制御ユニット27を備えている。撮像制御ユニット27は、高感度撮像素子24から出力された蛍光画像信号および撮像素子26から出力された通常画像信号に対し、CDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理を施し、ケーブル5(図1参照)を介して画像処理装置3に出力するものである。
【0038】
画像処理装置3は、図4に示すように、通常画像入力コントローラ31、蛍光画像入力コントローラ32、画像処理部33、メモリ34、ビデオ出力部35、操作部36、TG(タイミングジェネレータ)37およびCPU38を備えている。
【0039】
通常画像入力コントローラ31および蛍光画像入力コントローラ32は、所定容量のラインバッファを備えており、撮像ユニット20の撮像制御ユニット27から出力された1フレーム毎の通常画像信号および蛍光画像信号をそれぞれ一時的に記憶するものである。そして、通常画像入力コントローラ31に記憶された通常画像信号および蛍光画像入力コントローラ32に記憶された蛍光画像信号はバスを介してメモリ34に格納される。
【0040】
画像処理部33は、メモリ34から読み出された1フレーム毎の通常画像信号および蛍光画像信号が入力され、これらの画像信号に所定の画像処理を施し、バスに出力するものである。画像処理部33のより具体的な構成を図5に示す。
【0041】
画像処理部33は、図5に示すように、通常画像処理部50、現在通常画像取得部51、過去通常画像取得部52、動き特徴量取得部53、蛍光画像処理部54、現在蛍光画像取得部55、過去蛍光画像取得部56、動き補正部57、リンパ管抽出部58および経時変化画像生成部59を備えている。
【0042】
通常画像処理部50は、入力された通常画像信号に対し、通常画像に適した所定の画像処理を施して出力するものである。
【0043】
現在通常画像取得部51は、通常画像処理部50から出力された通常画像信号のうちの最も直近に出力された通常画像信号を現在通常画像信号として取得し、動き特徴量取得部53に出力するものである。現在通常画像取得部51により取得される現在通常画像信号と後述する現在蛍光画像取得部55により取得される現在蛍光画像信号とは、同じタイミングで撮像されたものである。
【0044】
過去通常画像取得部52は、通常画像処理部50から出力されたフレーム毎の通常画像信号を順次、累積して記憶するものであり、その順次記憶した複数の過去通常画像信号の中から所定のフレームの過去通常画像信号を選択して動き特徴量取得部53に出力するものである。本実施形態においては、所定の第1の時点において取得された第1の過去通常画像信号と、第1の時点よりも後の第2の時点において取得された第2の過去通常画像信号とを選択して動き特徴量取得部53に出力するものとするが、選択対象の過去通常画像信号は、後述する過去蛍光画像取得部56において選択される過去蛍光画像信号と同じタイミングで撮像されたものである。
【0045】
動き特徴量取得部53は、現在通常画像取得部51から出力された現在通常画像信号と過去通常画像取得部52から出力された過去通常画像信号とに基づいて、過去通常画像信号における被観察部の状態から現在通常画像信号における被観察部の状態までの動きの変化を示す動き特徴量を取得するものである。動き特徴量の取得方法については、後で詳述する。
【0046】
蛍光画像処理部54は、入力された蛍光画像信号に対し、蛍光画像に適した所定の画像処理を施して出力するものである。
【0047】
現在蛍光画像取得部55は、蛍光画像処理部54から出力された蛍光画像信号のうちの最も直近に出力された蛍光画像信号を現在蛍光画像信号として取得し、動き特徴量取得部53に出力するものである。
【0048】
過去蛍光画像取得部56は、蛍光画像処理部54から出力されたフレーム毎の蛍光画像信号を順次、累積して記憶するものであり、その順次記憶した複数の過去蛍光画像信号の中から所定のフレームの過去蛍光画像信号を選択して動き補正部57に出力するものである。本実施形態においては、上述した第1の過去通常画像信号と同じタイミングで撮像された第1の過去蛍光画像信号と、上述した第2の過去通常画像信号と同じタイミングで撮像された第2の過去蛍光画像信号とを選択して動き補正部57に出力するものとするが、選択対象の過去通常画像信号および過去蛍光画像信号は、操作者が操作部36を用いて任意に選択するようにしてもよいし、予め設定された時間間隔で選択するようにしてもよい。また、全てのフレームの過去通常画像信号および過去蛍光画像信号を対象としてもよい。
【0049】
動き補正部57は、過去蛍光画像取得部56から出力された第1の過去蛍光画像信号と第2の過去蛍光画像信号とに対して、動き特徴量取得部53から出力された動き特徴量に基づいて動き補正処理を施すものである。第1の過去蛍光画像信号に対しては、第1の過去通常画像信号と現在通常画像信号とに基づいて算出された動き特徴量を用いて動き補正処理を施し、第2の過去蛍光画像信号に対しては、第2の過去通常画像信号と現在通常画像信号とに基づいて算出された動き特徴量を用いて動き補正処理を施すものである。動き補正処理については、後で詳述する。
【0050】
リンパ管抽出部58は、動き補正部57によって動き補正の施された第1および第2の過去蛍光画像信号と現在蛍光画像信号に対して、リンパ管を表す画像信号を抽出する処理を施すものである。
【0051】
経時変化画像生成部59は、第1の過去蛍光画像信号から抽出されたリンパ管を表す画像信号(以下、「第1の過去リンパ管蛍光画像信号」という)と、第2の過去蛍光画像信号から抽出されたリンパ管を表す画像信号(以下、「第2の過去リンパ管蛍光画像信号」という)と、現在蛍光画像信号から抽出されたリンパ管を表す画像信号(以下、「現在リンパ管蛍光画像信号」という)とを用いて経時変化画像信号を生成するものである。経時変化画像信号の生成方法については、後で詳述する。
【0052】
図4に戻り、ビデオ出力部35は、画像処理部33から出力された通常画像信号、蛍光画像信号および経時変化画像信号がバスを介して入力され、所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力するものである。
【0053】
操作部36は、種々の操作指示や制御パラメータなどの操作者による入力を受け付けるものである。また、TG37は、撮像ユニット20の高感度撮像素子24、撮像素子26および後述する光源装置2のLDドライバ45を駆動するための駆動パルス信号を出力するものである。また、CPU36は装置全体を制御するものである。
【0054】
光源装置2は、約400〜700nmの広帯域の波長からなる通常光(白色光)L1を射出する通常光源40と、通常光源40から射出された通常光L1を集光する集光レンズ42と、集光レンズ42によって集光された通常光L1を透過するとともに、後述する励起光L2を反射し、通常光L1および励起光L2とを光ケーブルLCの入射端に入射させるダイクロイックミラー43とを備えている。なお、通常光源40としては、たとえばキセノンランプが用いられる。また、通常光源40と集光レンズ42との間には、絞り41が設けられており、ALC(Automatic light control)48からの制御信号に基づいてその絞り量が制御される。
【0055】
また、光源装置2は、700nm〜800nmの可視から近赤外帯域の光であり、たとえば蛍光色素としてICG(インドシアニングリーン)を用いた場合には750〜790nmの近赤外光を励起光L2として射出するLD光源44と、LD光源44を駆動するLDドライバ45と、LD光源44から射出された励起光L2を集光する集光レンズ46と、集光レンズ46によって集光された励起光L2をダイクロイックミラー43に向けて反射するミラー47とを備えている。
【0056】
なお、励起光L2としては、広帯域の波長からなる通常光よりも狭帯域の波長が用いられる。そして、励起光L2としては上記波長域の光に限定されず、蛍光色素の種類もしくは自家蛍光させる生体組織の種類によって適宜決定される。
【0057】
また、光源装置2は、光ケーブルLCを介して硬性鏡撮像装置10に光学的に接続されている。
【0058】
次に、本実施形態の硬性鏡システムの作用について説明する。
【0059】
まず、光ケーブルLCが接続された硬質挿入部30およびケーブル5が撮像ユニット20に取り付けられた後、光源装置2および撮像ユニット20および画像処理装置3の電源が投入され、これらが駆動される。
【0060】
次に、操作者により硬質挿入部30が体腔内に挿入され、硬質挿入部30の先端が被観察部の近傍に設置される。
【0061】
そして、光源装置2の通常光源40から射出された通常光L1が、集光レンズ42、ダイクロイックミラー43および光ケーブルLCを介して硬質挿入部30に入射され、硬質挿入部30の照射窓30dから被観察部に照射される。一方、光源装置2のLD光源44から射出された励起光L2が、集光レンズ46、ミラー47、ダイクロイックミラー43および光ケーブルLCを介して硬質挿入部30に入射され、硬質挿入部30の照射窓30dから被観察部に通常光と同時に照射される。なお、同時に照射するとは、必ずしも照射期間が完全に一致している必要はなく、少なくとも一部の照射期間が重複していればよい。
【0062】
そして、通常光L1の照射によって被観察部から反射された反射光に基づく通常像が撮像されるとともに、励起光L2の照射によって被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像が通常像と同時に撮像される。なお、被観察部には、予めICGが投与されており、このICGから発せられる蛍光を撮像するものとする。
【0063】
より具体的には、通常像の撮像の際には、通常光L1の照射によって被観察部から反射された反射光に基づく通常像L3が挿入部材30bの先端30Yから入射し、挿入部材30b内のレンズ群により導光されて撮像ユニット20に向けて射出される。
【0064】
撮像ユニット20に入射された通常像L3は、ダイクロイックプリズム21により撮像素子26に向けて直角方向に反射され、第2結像光学系25により撮像素子26の撮像面上に結像され、撮像素子26によって所定間隔を空けて順次撮像される。
【0065】
撮像素子26から順次出力された通常画像信号は、撮像制御ユニット27においてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介して画像処理装置3に順次出力される。
【0066】
一方、蛍光像の撮像の際には、励起光の照射によって被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像L4が挿入部材30bの先端30Yから入射し、挿入部材30b内のレンズ群により導光されて撮像ユニット20に向けて射出される。
【0067】
撮像ユニット20に入射された蛍光像L4は、ダイクロイックプリズム21および励起光カットフィルタ22を通過した後、第1結像光学系23により高感度撮像素子24の撮像面上に結像され、高感度撮像素子24によって所定間隔を空けて撮像される。
【0068】
高感度撮像素子24から順次出力された蛍光画像信号は、撮像制御ユニット27においてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介して画像処理装置3に順次出力される。
【0069】
次に、上記のようにして撮像ユニット20において撮像された通常画像信号および蛍光画像信号に基づいて通常画像、蛍光画像および経時変化画像を表示する作用について説明する。
【0070】
まず、通常画像および蛍光画像を表示する作用について説明する。画像処理装置3に入力された通常画像信号は、通常画像入力コントローラ31において一時的に記憶された後、メモリ34に格納される。そして、メモリ34から読み出された1フレーム毎の通常画像信号は、画像処理部33の通常画像処理部50において階調補正処理およびシャープネス補正処理が施された後、ビデオ出力部35に順次出力される。
【0071】
そして、ビデオ出力部35は、入力された通常画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、1フレーム毎の表示制御信号をモニタ4に順次出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて通常画像を表示する。
【0072】
また、画像処理装置3に入力された蛍光画像信号は、蛍光画像入力コントローラ32において一時的に記憶された後、メモリ34に格納される。そして、メモリ34から読み出された1フレーム毎の蛍光画像信号は、画像処理部33の蛍光画像処理部54において所定の画像処理が施された後、ビデオ出力部35に順次出力される。
【0073】
そして、ビデオ出力部35は、入力された蛍光画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、1フレーム毎の表示制御信号をモニタ4に順次出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて蛍光画像を表示する。
【0074】
次に、過去蛍光画像信号と現在蛍光画像信号に基づいて経時変化画像を表示する作用について説明する。
【0075】
本実施形態の硬性鏡システムは、上述したように被観察部のリンパ管中を流れるICGの蛍光を撮像するものである。そして、被観察部に投入されたICGが時間経過とともにどのような向きに流れているかを観察することは、癌の摘出手術などで切除する必要があるセンチネルリンパを発見する上で非常に重要なことである。また、リンパ管中を流れるICGが時間経過とともにどのように流れているかを観察することはこれからの研究材料としても非常に注目されるものである。
【0076】
そこで、本実施形態の硬性鏡システムにおいては、過去に撮像された蛍光画像信号と現在撮像されている蛍光画像信号とに基づいて、時間の経過とともにリンパ管中を流れているICGの経時変化を示す経時変化画像を生成する。
【0077】
そして、さらに、過去の蛍光画像信号を用いる場合、過去の蛍光画像信号を撮像したときの被観察部の形態と現在の蛍光画像信号を撮像したときの被観察部の形態とが拍動によって異なる形態となっている場合があり、このような場合に過去の蛍光画像信号と現在の蛍光画像信号とをそのまま用いたのではリンパ管の画像にずれが生じて適切な経時変化画像を生成することができない。
【0078】
そこで、本実施形態の硬性鏡システムにおいては、上記のようなリンパ管画像のずれが生じないように過去の蛍光画像信号に動き補正を施すようにしている。
【0079】
以下に、過去の蛍光画像信号に動き補正を施した後、経時変化画像を生成する作用について、図6を参照しながらより詳細に説明する。
【0080】
まず、上述したように、過去通常画像取得部52と過去蛍光画像取得部56には、撮像ユニット20において所定間隔を空けて時系列に撮像された多数の通常画像信号と蛍光画像信号とがそれぞれ記憶されている。
【0081】
そして、図6に示すように、過去蛍光画像取得部56に記憶された多数の過去の蛍光画像信号のうちの、上述した第1の過去蛍光画像信号IF(1)と第2の過去蛍光画像信号IF(2)とを取得する(S10)。
【0082】
一方、過去通常画像取得部52に記憶された多数の過去の通常画像信号のうち、S10で選択した第1の過去蛍光画像信号IF(1)および第2の過去蛍光画像信号IF(2)とそれぞれ同じ時点において撮像された2つの通常画像信号を、上述した第1の過去通常画像信号IV(1)および第2の過去通常画像信号IV(2)として取得する(図6のS12)。
【0083】
そして、上記のようにして取得した第1の過去通常画像信号IV(1)および第2の過去通常画像信号IV(2)と、現在通常画像取得部51において取得された現在通常画像信号IV(now)とが動き特徴量取得部53に入力される。そして、動き特徴量取得部53において、第1の過去通常画像信号IV(1)と現在通常画像信号とに基づいて、被観察部の第1の動き特徴量が算出されるとともに、第2の過去通常画像信号IV(2)と現在通常画像信号とに基づいて、被観察部の第2の動き特徴量が算出される(図6のS14)。
【0084】
以下、動き特徴量の算出方法について、図7のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0085】
まず、上述したように、動き特徴量取得部53において、第1の過去通常画像信号IV(1)と現在通常画像信号IV(now)が取得される(図7のS30)。そして、カラー画像信号である第1の過去通常画像信号IV(1)と現在通常画像信号IV(now)に対して、グレー画像処理が施されてグレー画像信号に変換される(図7のS32)。
【0086】
次に、グレー画像信号である1の過去通常画像信号IV(1)と現在通常画像信号IV(now)に対して、コントラスト強調処理が施される(図7のS34)。このようにグレー画像処理およびコントラスト強調処理を施すのは、後述する特徴点抽出処理において特徴点を抽出しやすくするためである。
【0087】
そして、次に、コントラスト強調処理の施された第1の過去通常画像信号IV(1)と現在通常画像信号IV(now)に対して多重解像度画像生成処理が施され、それぞれの通常画像信号について、種々の解像度の通常画像信号が生成される(図7のS36)。なお、以下、第1の過去通常画像信号IV(1)に基づいて生成された種々の解像度の通常画像信号を第1の多重解像度画像信号IV(1)1〜mとし、現在通常画像信号IV(now)に基づいて生成された種々の解像度の通常画像信号を現在多重解像度信号IV(now)1〜nとする。このように多重解像度画像生成処理を行うのは、後述する特徴点抽出処理において、荒い解像度の多重解像度画像信号を用いて大まかな特徴点を抽出し、細かい解像度の多重解像度画像信号を用いて細かい特徴点を抽出するためである。
【0088】
そして、上記のようにして生成された第1の多重解像度画像信号IV(1)1〜m,現在多重解像度信号IV(now)1〜nに対して、ノイズ除去のための平滑化処理が施される(図7のS38)。
【0089】
次に、平滑化処理の施された第1の多重解像度画像信号IV(1)1〜m,現在多重解像度信号IV(now)1〜nに対して特徴点抽出処理が施され、各多重解像度画像信号について特徴点が抽出される(図7のS40)。
【0090】
特徴点抽出処理としては、たとえば、Hessain手法やHarris手法を用いた、いわゆるコーナー抽出法を用いることができる。または、DOG(Difference of Gaussian)やHOG(Histograms of Oriented Gradients)を用いて特徴点を抽出するようにしてもよい。これらの特徴点抽出の手法については公知であるので詳細な説明は省略する。図8に、特徴点抽出処理によって特徴点が抽出された多重解像度画像の1つの例を示す。
【0091】
そして、次に、第1の過去通常画像信号IV(1)について抽出された特徴点と、現在通常画像信号IV(now)について抽出された特徴点と対して、マッチング演算処理が施される(図7のS42)。マッチング演算処理とは、第1の過去通常画像信号IV(1)の特徴点と現在通常画像信号IV(now)とで対応する特徴点の組を検出する演算処理である。
【0092】
具体的には、たとえば、一方の通常画像信号における所定の特徴点と、他方の通常画像信号における全ての特徴点間のユークリッド距離をそれぞれ演算し、そのユークリッド距離が最小となる2つの特徴点を対応する特徴点の組として検出するようにすればよい。図9に、第1の過去通常画像信号IV(1)と現在通常画像信号IV(now)との間で対応する特徴点を直線で示した模式図を示す。
【0093】
そして、上記のマッチング演算処理の結果に基づいて、第1の過去通常画像信号IV(1)の各特徴点から現在通常画像信号IV(now)の対応する特徴点までの方向を示す動きベクトルが動き特徴量として算出される(図7のS44)。
【0094】
上記のようにして第1の過去通常画像信号IV(1)と現在通常画像信号IV(now)とに基づいて、被観察部の第1の動き特徴量が算出される。そして、上記と同様にして、第2の過去通常画像信号IV(2)と現在通常画像信号IV(now)とに基づいて、被観察部の第2の動き特徴量も算出される。
【0095】
図6に戻り、次に、動き特徴量取得部53において取得された第1の動き特徴量および第2の動き特徴量は、動き補正部57に出力される。そして、動き補正部57は、入力された第1の動き特徴量に基づいて、第1の過去蛍光画像信号IF(1)に対して動き補正処理を施すとともに、入力された第2の動き特徴量に基づいて、第2の過去蛍光画像信号IF(2)に対して動き補正処理を施す(図6のS16)。
【0096】
具体的には、まず、図10に示すように、第1の過去蛍光画像信号IF(1)を所定の大きさの矩形領域に区分するとともに、第1の過去蛍光画像信号IF(1)に対し第1の過去通常画像信号IV(1)の各特徴点とその動きベクトルとを対応づける。そして、各矩形領域のコーナーG近傍に存在する特徴点Dの中で最も評価値の高い特徴点Dの動きベクトルに基づいて各矩形領域を変形することによって第1の過去蛍光画像信号IF(1)を変形する。図11に、変形後の矩形領域およびそのコーナーG’の一例を示す。第2の過去蛍光画像信号IF(2)についても上記と同様して動き補正処理が施される。
【0097】
そして、上記のようにして取得された動き補正処理の施された第1の蛍光画像信号IF(1)(以下、「第3の過去蛍光画像信号IF(1)’」という)および第2の蛍光画像信号IF(2)(以下、「第4の過去蛍光画像信号IF(2)’」という)と、現在蛍光画像信号IF(now)が、画像処理部33のリンパ管抽出部58(図5参照)に入力される。そして、リンパ管抽出部58において各蛍光画像信号に対してリンパ管抽出処理が施される(図6のS18,S20)。
【0098】
リンパ管抽出処理は、線分抽出処理を行うことによって行われる。本実施形態においては、エッジ検出とそのエッジ検出によって検出したエッジから孤立点を除去することによって線分抽出処理を行う。エッジ検出方法としては、たとえば、1次微分を用いたキャニー法を用いることができる。図12に、キャニー法によるエッジ検出を用いた線分抽出処理を説明するためのフローチャートを示す。
【0099】
図12に示すように、まず、現在蛍光画像信号IF(now)と第3の過去蛍光画像信号IF(1)’と第4の過去蛍光画像信号IF(2)’のそれぞれに対し、DOG(Derivative of Gaussian)フィルタを用いたフィルタ処理が施される(図12のS50〜S54)。このDOGフィルタを用いたフィルタ処理は、ノイズを減らすためのガウシアンフィルタ処理(平滑化処理)と濃度勾配を検出するためのx,y方向の1次微分フィルタ処理とを組み合わせた処理である。
【0100】
そして、フィルタ処理済の現在蛍光画像信号IF(now)と第3の蛍光画像信号IF(1)’と第4の過去蛍光画像信号IF(2)’のそれぞれについて、濃度勾配の大きさと方向が計算される(図12のS56)。そして、濃度勾配の極大点を抽出し、それ以外の非極大点を除去する(図12のS58)。
【0101】
そして、その極大点と所定の閾値とを比較し、所定の閾値以上の極大点をエッジとして検出する(図12のS60)。さらに、極大点であり所定の閾値以上であるが、連続したエッジを構成していない孤立点を除去する処理を行う(図12のS62)。孤立点の除去処理は、血管としては適当でない孤立点をエッジ検出結果から除去するための処理で、具体的には、検出された各エッジの長さをチェックすることによって孤立点を検出する。
【0102】
なお、エッジ検出のアルゴリズムは、上記に限らず、ノイズを減らすためのガウシアンフィルタ処理と2次微分処理とを行ってエッジを抽出するラプラシアンフィルタを組み合わせたLOG(Laplace of Gaussian)フィルタを用いてエッジ検出を行うようにしてもよい。
【0103】
また、本実施形態においては、エッジ検出を用いた線分抽出処理を行うことによってリンパ管抽出を行うようにしたが、これに限らず、リンパ管部分を抽出する処理であれば、たとえば、色相や輝度を用いた処理など如何なる処理を用いてもよい。
【0104】
上記のようにしてリンパ管抽出処理を行うことによって、現在蛍光画像信号IF(now)と第3の過去蛍光画像信号IF(1)’と第4の過去蛍光画像信号IF(2)’のそれぞれについて現在リンパ管蛍光画像信号、第1の過去リンパ管蛍光画像信号および第2の過去リンパ管蛍光画像信号が生成される。
【0105】
そして、次に、リンパ管抽出部58において生成された現在リンパ管蛍光画像信号、第1の過去リンパ管蛍光画像信号および第2の過去リンパ管蛍光画像信号が、経時変化画像生成部59に入力される。そして、経時変化画像生成部59においては、図13に示すように、現在リンパ管蛍光画像信号に対して、第1の過去リンパ管蛍光画像信号と第2の過去リンパ管蛍光画像信号とが重ね合わされ、第1の過去リンパ管蛍光画像信号IF(1)”と、第2の過去リンパ管蛍光画像信号における第1の過去リンパ管蛍光画像信号IF(1)”からの経時変化部IF(2)”と、現在リンパ管蛍光画像信号における第2の過去リンパ管蛍光画像信号からの経時変化部IF(n)”とが互いに異なる色となるような経時変化画像信号が生成される(図6のS24)。
【0106】
そして、経時変化画像生成部59において生成された経時変化画像信号は、ビデオ出力部35に出力される。
【0107】
そして、ビデオ出力部35は、入力された経時変化画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて、図13に示すような経時変化画像を表示する。
【0108】
このような経時変化画像を表示することによって、リンパ管内のICGがどちらの方向に向かって流れているのかを判別することができる。
【0109】
なお、上記実施形態において、ビデオ出力部35が、経時変化画像を現在蛍光画像に重ね合わせた画像を生成し、その画像をさらに現在通常画像に重ね合わせた画像を生成するようにしてもよい。なお、経時変化画像を重ね合わせる対象の画像は、現在蛍光画像および現在通常画像に限らず、同時に撮像された過去蛍光画像と過去通常画像であってもよい。
【0110】
また、上記実施形態においては、第1の過去リンパ管蛍光画像信号IF(1)”と、経時変化部IF(2)”と、経時変化部IF(n)”との色を変えることによって区別するようにしたが、これに限らず、たとえば、実線、破線、一点鎖線など互い異なる線種とすることによって区別するようにしてもよい。また、たとえば、全てフレームの蛍光画像信号に応じた経時変化部をそれぞれ表示させる場合には、グラデーション表示するようにしてもよい。
【0111】
また、第1の過去リンパ管蛍光画像信号IF(1)”と、経時変化部IF(2)”と、経時変化部IF(n)”とが、図14に示すような関係となっている場合には、第1の過去リンパ管蛍光画像信号IF(1)”と経時変化部IF(2)”との分岐点を検出し、第1の過去リンパ管蛍光画像信号IF(1)”の分岐点以降の色を経時変化部IF(n)”と同じ色にすることによって、図13に示すようにリンパ管の分岐点が明確となるような経時変化画像信号を生成するようにしてもよい。
【0112】
分岐点の検出方法としては、たとえば、図15(A)に示すように、2つの端部の組み合わせ毎に、線分の端部を始点に線分のつながりを追跡し、塗りつぶした画像を作成する。そして、図15(A)で示されるような画像を作成した後、これらを重ね合わせ画像を生成すれば、図15(B)に示すように、線分が合流し重なった領域は重なりあった色で表現することができ、分岐点を明確にすることができる。
【0113】
また、たとえば、図16に示すように、各経時変化部に対して、その撮像された時間に応じて番号を付して表示するようにしてもよい。なお、図16におけるCは癌、LNはリンパ節、SLNはセンチネルリンパ節を表しており、図16に示す白丸印に注射によってICGを投入した際の経時変化を示している。
【0114】
また、上記実施形態においては、動き特徴量を取得する際、過去通常画像信号と現在通常画像信号とを用いるようにしたが、これに限らず、過去蛍光画像信号と現在蛍光画像信号とを用いて動き特徴量を取得するようにしてもよい。動き特徴量の算出方法については、上記と同様である。ただし、通常画像信号の方がカラー画像信号であるため蛍光画像信号に比べると特徴点の抽出精度が高く、より望ましい。
【0115】
また、上記実施形態においては、現在リンパ管蛍光画像信号に対して、第1の過去リンパ管蛍光画像信号と第2の過去リンパ管蛍光画像信号とを重ね合わせて経時変化画像を生成するようにしたが、第1の過去リンパ管蛍光画像信号に対して、第2の過去リンパ管蛍光画像信号の経時変化部を加算し、その加算された信号に対してさらに現在リンパ管蛍光画像信号の経時変化部を加算することによって経時変化画像信号を生成するようにしてもよい。このように経時変化部を順次加算して経時変化画像信号を生成することによって簡単な演算で経時変化画像信号を生成することができる。また、リアルタイムに順次更新さされる経時変化画像信号を生成することができる。
【0116】
また、図17に示すように、現在リンパ管蛍光画像信号と第2の過去リンパ管蛍光画像信号との差分画像信号を算出し、その差分画像信号と第2の過去リンパ管蛍光画像信号とを比較し、差分画像信号の両端部のうちの第2の過去リンパ管蛍光画像信号に連続しない方の端部に矢印を表示させるようにしてもよい。このように矢印を表示することによって、リンパが流れる方向を指し示すことができる。また、上記のような方法に限らず、オプティカルフロー法やブロックマッチング法などを用いて矢印の方向を推定するようにしてもよい。
【0117】
また、上記実施形態においては、第1の撮像系により蛍光画像を撮像するようにしたが、これに限らず、被観察部への特殊光の照射による被観察部の吸光特性に基づく画像を撮像するようにしてもよい。
【0118】
また、上記実施形態においては、リンパ管画像を抽出するようにしたが、これに限らず、たとえば、血管、胆管などのその他の管部分を表す画像を抽出するようにしてもよい。
【0119】
また、上記実施形態は、本発明の画像取得装置を硬性鏡システムに適用したものであるが、これに限らず、たとえば、軟性内視鏡装置を有するその他の内視鏡システムに適用してもよい。また、内視鏡システムに限らず、体内に挿入される挿入部を備えていない、いわゆるビデオカメラ型の医用画像撮像装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 硬性鏡システム
2 光源装置
3 画像処理装置
4 モニタ
10 硬性鏡撮像装置
20 撮像ユニット
24 高感度撮像素子
26 撮像素子
30 硬質挿入部
50 通常画像処理部
51 現在通常画像取得部
52 過去通常画像取得部
53 特徴量取得部
54 蛍光画像処理部
55 現在蛍光画像取得部
56 過去蛍光画像取得部
57 動き補正部
58 リンパ管抽出部
59 経時変化画像生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特殊光の被観察部への照射によって被観察部から発せられた光を受光して所定の間隔で撮像された複数の特殊画像を取得し、
該取得した複数の特殊画像のうちの少なくとも1つの過去の時点において撮像された過去特殊画像と前記過去の時点より後の時点において撮像された特殊画像との間の経時変化部の情報を取得し、前記過去特殊画像または前記後の時点に撮像された特殊画像と前記経時変化部の情報とに基づいて経時変化画像を取得することを特徴とする画像取得方法。
【請求項2】
特殊光を被観察部に照射する特殊光照射部と、
前記特殊光の照射によって被観察部から発せられた光を受光して複数の特殊画像を所定の間隔で撮像する撮像部と、
該撮像部によって取得された複数の特殊画像のうちの少なくとも1つの過去の時点において撮像された過去特殊画像と前記過去の時点より後の時点において撮像された特殊画像との間の経時変化部の情報を取得し、前記過去特殊画像または前記後の時点に撮像された特殊画像と前記経時変化部の情報とに基づいて経時変化画像を取得する経時変化画像取得部とを備えたことを特徴とする画像生成装置。
【請求項3】
通常光を前記被観察部に照射する通常光照射部を備え、
前記撮像部が、前記通常光の照射によって前記被観察部から反射された反射光を受光して複数の通常画像を所定の間隔で撮像するものであり、
前記複数の通常画像のうち前記少なくとも1つの過去の時点において撮像された過去通常画像と前記後の時点に撮像された通常画像との間の動きの変化を示す動き特徴量を取得する動き特徴量取得部と、
該動き特徴量取得部によって取得された動き特徴量に基づいて、該動き特徴量を取得するために用いた前記過去通常画像と同じ時点において撮像された前記過去特殊画像に対して動き補正処理を施す動き補正部とを備え、
前記経時変化画像取得部が、前記動き補正処理の施された過去特殊画像と前記後の時点に撮像された特殊画像との間の経時変化部の情報を取得し、前記動き補正処理の施された過去特殊画像または前記後の時点に撮像された特殊画像と前記経時変化部の情報とに基づいて経時変化画像を取得するものであることを特徴とする請求項2記載の画像取得装置。
【請求項4】
前記過去特殊画像と前記後の時点に撮像された特殊画像との間の動きの変化を示す動き特徴量をそれぞれ取得する動き特徴量取得部と、
該動き特徴量取得部によって取得された動き特徴量に基づいて、該動き特徴量を取得するために用いた前記過去特殊画像に対して動き補正処理を施す動き補正部とを備え、
前記経時変化画像取得部が、前記動き補正処理の施された過去特殊画像と前記後の時点に撮像された特殊画像との間の経時変化部の情報を取得し、前記動き補正処理の施された過去特殊画像または前記後の時点に撮像された特殊画像と前記経時変化部の情報とに基づいて経時変化画像を取得するものであることを特徴とする請求項2記載の画像取得装置。
【請求項5】
前記過去特殊画像と前記後の時点に撮像された特殊画像とから前記被観察部に含まれる管部分を表す管画像を抽出する管画像抽出部を備え、
前記経過変化画像取得部が、前記過去特殊画像の管画像と前記後の時点に撮像された特殊画像の管画像とに基づいて前記経時変化部の情報を取得し、前記過去特殊画像の管画像または前記後の時点に撮像された特殊画像の管画像と前記経時変化部の情報とに基づいて経時変化画像を取得するものであることを特徴とする請求項2項記載の画像取得装置。
【請求項6】
前記経時変化画像取得部が、前記少なくとも1つの過去特殊画像と前記経時変化部とが互いに異なる表示形態となるように前記経時変化画像を生成するものであることを特徴とする請求項2から5いずれか1項記載の画像取得装置。
【請求項7】
前記経時変化画像取得部が、前記少なくとも1つの過去特殊画像と前記経時変化部に対して互いに異なる色を割り当てるものであることを特徴とする請求項6記載の画像取得装置。
【請求項8】
前記経時変化画像取得部が、前記少なくとも1つの過去特殊画像と前記経時変化部とに対して互いに異なる線種を割り当てるものであることを特徴とする請求項6記載の画像取得装置。
【請求項9】
前記光照射部が、蛍光薬剤が投入された前記被観察部に対して、前記特殊光として励起光を照射するものであり、
前記撮像部が、前記励起光の照射によって前記被観察部から発せられた蛍光を受光して前記特殊画像として蛍光画像を取得するものであることを特徴とする請求項2から8いずれか1項記載の画像取得装置。
【請求項10】
前記経時変化画像取得部が、前記後の時点に撮像された特殊画像として最も直近に撮像された特殊画像を取得するものであることを特徴とする請求項2から9いずれか1項記載の画像取得装置。
【請求項11】
通常光を前記被観察部に照射する通常光照射部を備え、
前記撮像部が、前記通常光の照射によって前記被観察部から反射された反射光を受光して複数の通常画像を所定の間隔で撮像するものであり、
前記経時変化画像と、前記過去特殊画像または前記後の時点に撮像された特殊画像と、該過去特殊画像または前記後の時点に撮像された特殊画像と同時に撮像された前記通常画像とを重ね合わせた合成画像を生成する合成画像生成部を備えたことを特徴とする請求項2記載の画像取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−50617(P2012−50617A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195024(P2010−195024)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
【Fターム(参考)】