説明

画像形成装置、画像形成方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】LEDチップのつなぎ目の部分に縦スジが見えない高画質な印刷出力を得る。
【解決手段】移動量算出部301は、LEDチップ間の間隔と、閾値が設定されていないマトリクスの位置情報を取得し、主走査方向の移動量を計算する。開始位置決定部302は、マトリクスの位置を移動量だけ移動させた上で、乱数発生部303から発生される乱数に応じて左右に変動させた位置を網点の成長開始位置として決定する。閾値パターン格納部305には、成長開始位置が異なる複数の閾値パターンを予め保持しておき、選択部304は求めた開始位置に対応した閾値パターンを読み出し、ディザマトリクス設定部306は、選択された閾値パターンをマトリクスに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高画質の画像を形成する画像形成装置、画像形成方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(発光ダイオード)素子を光源として用いた電子写真方式の画像形成装置においては、数百個のLED素子からなるチップを千鳥上に配置した光源により、露光を行う。このとき、光量や発光位置のばらつきにより画質が劣化するため、網点を不規則に配置し、ばらつきが認識されないようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1では、非周期的な閾値配列を持つディザをもち、かつ2次元平面の出力精度が相対的に低い方向にドットが優先的に連なって成長するような閾値配列を設定することにより、出力装置の出力精度に起因したスジムラによる画質低下を防止している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の技術では、LEDチップ同士のつなぎ目の部分にハイライトの網点がかかると、チップ間の間隔が場所毎に異なるので濃度が安定せず、期待している濃度とは異なってしまい、たとえ網点がランダムに構成されても縦スジが見えてしまうという画質上の問題があった。
【0005】
また、チップ上のLED素子は半導体プロセスにより生成されるためその位置精度が高い。これに対してLEDチップ同士のつなぎ目におけるチップ間の間隔(ずれ)は、チップの基板への接着により精度が決まることから、位置精度が悪いため、その部分に網点が重なると、トナーによる網点の形成が不安定となり、それが縦スジ(白スジあるいは黒スジ)として見えてしまうという問題がある。逆に、網点が重ならない場合にも、そのチップ間の間隔(ずれ)が白スジとして見えてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、LEDチップ同士のつなぎ目の部分に縦スジが見えない高画質な印刷出力が得られる画像形成装置、画像形成方法、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発光素子を所定方向に配列して構成したチップに対応して、前記チップの両端間に合わせて、閾値が設定されていない所定形状のマトリクスを配置し、前記マトリクスにおける網点の成長開始位置を変位させた閾値マトリクスを生成する制御手段を備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、LEDチップの両端間に合わせて閾値マトリクスを配置し、チップ間の間隔に応じて閾値マトリクスの網点の成長開始点を変位させているので、LEDチップ同士のつなぎ目における濃度安定性が向上し、縦スジを見えなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明が適用される画像形成装置の構成例を示す。
【図2】LEDアレイユニットの構成と本発明により形成される網点を示す。
【図3】本発明の実施例の構成を示す。
【図4】網点の成長開始位置を主走査方向に変動させる、本発明の処理を説明する図である。
【図5】LcとLfの差であるf(x)の特性を示す。
【図6】本発明の実施例の処理フローチャートを示す。
【図7】図6のステップS401の処理を説明する図である。
【図8】成長開始位置が異なる閾値パターン例を示す。
【図9】選択された閾値パターンを平行四辺形のマトリクスに割り当てた例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態について図面により詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1(a)は、本発明が適用される画像形成装置の構成を示す。画像形成装置100には、ワークステーションやパーソナルコンピュータなどの情報処理装置120が接続され、画像形成装置100は情報処理装置120から送られる情報に基づいて画像を印刷する。
【0012】
画像が形成されるべき用紙は本体トレイ101にセットされ、トレイ101から給紙ローラ102により用紙の搬送が開始される。給紙ローラ102による用紙の搬送に先立って、感光体(感光体ドラム)104が回転し、感光体104の表面は、クリーニングブレード111によってクリーニングされ、次いで帯電ローラ110により一様に帯電される。ここに、LEDアレイユニット109から、画像信号に従って変調された光が露光されることにより潜像を形成し、現像ローラ112により現像されてトナーが付着し、これとタイミングを取って給紙ローラ102から用紙が給紙される。給紙ローラ102から給紙された用紙は、感光体ドラム104と転写ローラ103とに挟まれて搬送され、これと同時に用紙にはトナー像が転写される。転写され残った感光体ドラム104上のトナーは、再び、クリーニングブレード111で掻き落とされる。クリーニングブレード111の手前には、トナー濃度センサ105が設けられており、トナー濃度センサ105によって感光体ドラム104上に形成されたトナー像の濃度を測定することができる。また、トナー像が載った用紙は搬送経路にしたがって、定着ユニット107に搬送され、定着ユニット107においてトナー像は用紙上に定着される。印刷された用紙は、最後に排紙ローラ106を通って、記録面を下にしてページ順に排出される。
【0013】
現像ローラ112に供給されるトナーおよび現像剤は、使用に先立って、攪拌スクリュー108によって、トナーと現像剤が攪拌されて供給される。なお、トナーは図示しないトナーカートリッジからエアーポンプによってこの攪拌部に搬送される。搬送は、トナーが薄くなったことを検知した後、一定時間のエアーポンプによる補給によって行なわれる。これら一連のシーケンス制御は、制御ボード114のCPUによって行なわれる。
【0014】
本実施例では、LEDアレイユニット109の光露光と感光体ドラム104の回転により、露光位置の解像度としては、感光体の回転軸と平行な方向(主走査)と、それに垂直な方向(副走査)のそれぞれについて、1200dpi、2400dpiの解像度で露光する。このLEDアレイユニット109には、画像処理制御部113が接続されており、画像処理制御部113では、情報処理装置120からの画像コマンドなどを処理し、あるいは内部に保持した評価チャート(テストパターン)信号などを発生させる。
【0015】
情報処理装置120から送られてくる画像コマンドは、プリンタ記述言語と呼ばれる言語で、実際には画像信号が圧縮されていて、これをいったん元の8ビットの画像信号に戻す。戻された画像信号をディザ法によって二値化した信号により、あるいは、濃度パターン法によって二値化した信号により、LEDアレイユニット109を駆動して、画像を形成する。
【0016】
本実施例のように、LEDアレイユニットが1ビット(二値)画像の入力の場合では、上記したような二値化となるが、2ビットや3ビットが扱えるならば、少値のディザ法が行なわれる。
【0017】
図1(b)〜(d)は、ディザ法により画像が1ビット(二値)の信号に変換する方法を説明する図である。
【0018】
入力の8ビットの画像信号(b)はディザマトリックス(c)に設定されている閾値と、入力画像の画素ごとに比較することにより、ディザ処理が行われ、二値化された信号(d)を得る。ディザマトリックス(c)は、ドット集中型のマトリックスであり、本発明ではこのタイプのマトリックスを用いる。
【0019】
図2は、LEDアレイユニットの構成と本発明により形成される網点を示す。図2は、画像形成装置に使用される光源、LEDアレイユニットの構成を説明するために、感光体側から見た図である。LEDアレイユニットは、基板203上に複数のLED素子(光源)201からなるLEDチップ202を複数個千鳥状に配置して、感光体の幅一杯に露光できるように配置されている。
【0020】
図2の例では、5個のLEDチップ202を千鳥状に配置しているが、実際のLEDアレイユニットでは、1つのLEDチップに搭載されているLED素子は384画素分であり、このようなLEDチップを千鳥状に40チップ配置することによりLEDアレイユニットが構成されている。LED素子の画素間ピッチは1200dpiである。本実施例では、図の横方向(感光体の回転軸と平行な方向)を主走査方向とし、縦方向を副走査方向とする。
【0021】
前述したように、LEDチップ上のLED素子は半導体プロセスにより作成されるためその位置精度は高い。これに比べて、各LEDチップ同士のつなぎ目におけるチップ間の間隔(ずれ)は、チップの基板への接着により精度が決まることから、位置精度が悪くなる。そのため、その部分に網点がかかると、トナーによる網点の形成が不安定となり、それが縦スジ(白スジあるいは黒スジ)として見えてしまい、逆に、網点がかからない場合にも、そのチップ間の間隔(ずれ)が白スジとして見えてしまうという問題があることは前述した通りである。
【0022】
図2の点線204で囲まれた部分の拡大図において、1つのLEDチップ202に対応したディザマトリクス(閾値マトリクス)206の配置例を示す。図2の例では、幅LのLEDチップ202に対応して主走査方向に4個のディザマトリクス206が配置され、各ディザマトリクス206の形状は平行四辺形をしている。すなわち、ディザマトリクス206の区切り目(左右の端)が、LEDチップ202の両端と合致するように構成する。そして、各平行四辺形のおよそ中心から網点が成長するようにディザマトリクスを作成する。
【0023】
そして、ディザマトリクス206に配置されるハイライト領域の網点207が、LEDチップ202間のずれ205に応じて主走査方向に変動(左右に揺らぐ)するように制御し、図2に示すようにハイライト領域の網点207を配置208する。これは、規則的に整列させると、LEDチップ間のずれ205が認識されてしまうからである。
【0024】
LEDチップ内のLED素子は1個の半導体であり、LED素子間の位置関係は比較的正確に配置することができるが、それぞれのLEDチップ間の間隔(ずれ)205は、接着プロセスにより決まるので、このずれ205を0にすることはできない。そのため、網点の成長開始位置(閾値1)を主走査方向に変動させないと、LEDチップ間のずれが出力画像に縦スジとして残ることになる。
【0025】
本発明では、上記したように、ディザマトリクス206の配置構成をLEDチップのつなぎ目に合わせ、網点の成長開始位置を主走査方向に変動させるようなディザマトリクスを生成することにより、チップ間の間隔(ずれ)を認識できなくする。
【0026】
図3は、本発明の実施例の構成を示す。本発明の画像処理制御部113は、移動量算出部301、開始位置決定部302、乱数発生部303、選択部304、閾値パターン格納部305、ディザマトリクス設定部306から構成されている。
【0027】
図4は、網点の成長開始位置を主走査方向に変動させる、本発明の処理を説明する図である。
【0028】
図4(a)において、LEDチップ202aとLEDチップ202bとのずれ量をh、LEDチップ202bとLEDチップ202cとのずれ量をkとし、LEDチップ202bの左端とディザマトリクス206の左端の座標を0とし、LEDチップ202bの長さをLとし、LEDチップ202bの右端に、ディザマトリクス206の右端を合わせる。
【0029】
Lcは、平行四辺形のディザマトリクス206の中心位置であり、中心位置の座標をxとする。Lfは、Lcからずれ量に応じたfだけ左にシフトした網点の成長開始位置である。
【0030】
さらに、図4(b)に示すように、網点の成長開始位置Lfを中心に、乱数を用いて左右に配置させる。すなわち、Lfを中心として図4(b)のような分布(発生頻度)を持つ乱数を利用して、成長開始位置を左右に変動(振れ幅は左右に3画素(±3))させる。
【0031】
LcとLfの差fは、数1により算出する。
【0032】
【数1】

【0033】
図5は、1つのLEDチップについて、f(x)をグラフ化した図を示す。LEDチップの中央部ではf(x)が必ず0になるようにする。そして、x<L/2にあるマトリクスでは、LfをLcから左に移動させ、x≧L/2にあるマトリクスでは、LfをLcから右に移動させる。また、その移動量は、図5に示すように、マトリクスの中心位置がチップの両端に近いほど移動量が多くなる。
【0034】
図6は、本発明の実施例の処理フローチャートを示す。以下、図6を用いて、1つのLEDチップに対応したディザマトリクスの作成処理を説明する。
【0035】
ステップS401において、移動量算出部301は、LEDチップの両端のずれ量h、kと、平行四辺形のマトリクス209の位置情報xを取得する(図7)。図7において、平行四辺形のマトリクス209は、閾値が設定されていないマトリクスであり、以下の処理によって所定の閾値が設定される。ずれ量は、両端のLEDチップの製造時に測定されるデータである。また、位置情報は、LEDチップに対応した主走査方向の座標情報である。
【0036】
ステップS402において、移動量算出部301は、数1を用いて、主走査方向の移動量f(x)を計算する。
【0037】
ステップS403において、開始位置決定部302は、開始位置の主走査方向をランダムにするために、乱数発生部303から発生される、図4(b)のような乱数を用いて閾値1(成長開始位置)の開始位置を決定する。
【0038】
閾値パターン格納部305には、図8に示すように、成長開始位置が異なる複数の閾値マトリクスのパターン(PT1、PT2、PT3...)を予め保持しておき、ステップS404において、選択部304は、ステップS403で求めた開始位置に対応した閾値マトリクスのパターンを読み出す。図8では、一部の閾値(1〜4)のみを示し、他の閾値を図から省略している。ここでは、振れ幅が左右に3画素であるので、7種類の閾値マトリクスのパターンが保持されている。
【0039】
ステップS405において、ディザマトリクス設定部306は、選択された閾値マトリクスを当該平行四辺形のマトリクスに割り当てる(図9)。図9では一部の閾値(1〜8)のみを示し、他の閾値を図から省略している。閾値が設定されていない全ての平行四辺形のマトリクスに対して同様に処理し(ステップS406)、ディザマトリクスを作成する。作成されたディザマトリクスを用いて、図1(b)で説明したように入力画像を2値化し、2値化された信号に応じてLED素子を発光させ、画像を形成する。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、LEDチップ間のずれが縦スジとして見えないようにすることが可能となる。
【0041】
本発明は、前述した実施例の機能を実現するソフトウエアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。また、本発明の実施例の機能等を実現するためのプログラムは、ネットワークを介した通信によってサーバから提供されるものでも良い。
【符号の説明】
【0042】
301 移動量算出部
302 開始位置決定部
303 乱数発生部
304 選択部
305 閾値パターン格納部
306 ディザマトリクス設定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開2008−306754号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を所定方向に配列して構成したチップに対応して、前記チップの両端間に合わせて、閾値が設定されていない所定形状のマトリクスを配置し、前記マトリクスにおける網点の成長開始位置を変位させた閾値マトリクスを生成する制御手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記チップを千鳥状に配置構成したときのチップ同士のつなぎ目におけるチップ間の間隔と前記マトリクスが配置された第1の位置を基に、前記第1の位置を前記所定方向に移動させる移動量を算出する算出手段と、前記第1の位置を前記移動量だけ移動させた第2の位置を起点に、乱数に応じて左右に変動させた位置を網点の成長開始位置として決定する決定手段と、成長開始位置が異なる複数の閾値マトリクスを保持した保持手段と、前記保持手段を参照して、前記決定した成長開始位置に対応した閾値マトリクスを選択する選択手段と、前記選択された閾値マトリクスを前記第1の位置のマトリクスに設定する設定手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記移動量は、前記マトリクスの第1の位置が前記チップの両端に近いほど多くなることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記チップ間の間隔は、チップの製造時に測定されるデータであることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記マトリクスは平行四辺形の形状であり、前記閾値マトリクスはドット集中型のマトリクスであることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項6】
発光素子を所定方向に配列して構成したチップに対応して、前記チップの両端間に合わせて、閾値が設定されていない所定形状のマトリクスを配置し、前記マトリクスにおける網点の成長開始位置を変位させた閾値マトリクスを生成する制御工程を備えたことを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
請求項6記載の画像形成方法をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項8】
請求項6記載の画像形成方法をコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−240359(P2012−240359A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114569(P2011−114569)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】