説明

画像形成装置、該装置の電力制御方法、プログラム、及び記憶媒体

【課題】供給すべき電力量を適切に制御することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置としての複写機100は、定着装置のヒータに対して通電することによりヒータの表面温度を調節するヒータ制御部12と、定着装置のヒータの消費電力に応じてヒータ制御部12へ供給すべき電力量を制御する電力供給部22と、他の複写機との間で通信を行う通信制御部40とを備える。複写機100は、初期化動作時に、同時に起動された他の複写機が存在する場合には、ヒータの温度調節を段階的に実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、該装置の電力制御方法、プログラム、及び記憶媒体に関し、特に、電源投入時の消費電力が電源投入後の消費電力よりも大きいデバイスを備える画像形成装置、該装置の電力制御方法、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機は、記録紙表面上に転写したトナー画像を記録紙に定着させる定着装置を備える。定着装置は、ヒータを備え、該ヒータの熱により定着を行う。
【0003】
複写機にAC電源を投入すると、初期化動作(イニシャライズ)が行われ、この際に、初期設定動作と共に定着装置のヒータに対する通電が行われる。このとき、ヒータの表面温度が定着に必要な定着温度近傍で安定するまでの時間、即ちウォームアップタイムを減少させるために、ヒータには、目標定着温度で安定している時に比較して非常に大きい電力、例えば1.1kWを短時間の間に亘って供給しなければならない。
【0004】
また、大量のコピーを迅速に行いたい時に、2台の複写機を連結してジョブを割り振り出力するシステムが考えられている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平09−284443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単一のAC電源に接続された複数台の複写機にAC電源を同時に投入した場合、例えば単一のACコンセントに接続されている複数台の複写機の電源スイッチを同時にONにした場合、それらのヒータに対する通電が一斉に開始される。この結果、複数台の複写機での合計消費電力が、AC電源が供給可能な最大電力量(許容値)を超えて、ブレーカが作動する場合がある。また、場合によっては、この時の突入電流(ラッシュ電流)の重なりによって他の複写機が誤動作し、無駄な電力を消費することがある。
【0006】
本発明の目的は、供給すべき電力量を適切に制御することができる画像形成装置、該装置の電力制御方法、プログラム、及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、電源投入時の消費電力が電源投入後の消費電力よりも大きいデバイスを備える画像形成装置において、前記電源に接続された他の画像形成装置の起動に関する起動情報を当該他の画像形成装置から受信するための通信手段と、前記起動情報に基づいて前記デバイスに対する通電を制御する通電制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の画像形成装置の電力制御方法は、それぞれ定着器を有する第1及び第2の画像形成装置が共通の電源に接続された画像形成システムの電力制御方法であって、前記第1の画像形成装置が前記第2の画像形成装置の起動に関する起動情報を前記第2の画像形成装置から受信するための通信ステップと、前記起動情報に基づいて前記第1の画像形成装置の定着器に対する通電を制御する通電制御ステップとを有することを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のプログラムは、それぞれ定着器を有する第1及び第2の画像形成装置が共通の電源に接続された画像形成システムの電力制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記第1の画像形成装置が第2の画像形成装置の起動に関する起動情報を前記第2の画像形成装置から受信するための通信モジュールと、前記起動情報に基づいて前記第1の画像形成装置の定着器に対する通電を制御する通電制御モジュールとを備えることを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の記憶媒体は、上記プログラムを格納したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、他の画像形成装置から受信した電源投入の起動情報に基づいて電源投入時の消費電力が電源投入後の消費電力よりも大きいデバイスに対する通電を制御する。これにより、画像形成装置に供給すべき電力量を適切に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置としての複写機の構成を概略的に示すブロック図である。
【0014】
本実施の形態では、複写機100は複写機100’と機械的に連結され、かつ複写機100’と通信可能に構成されている。複写機100’の構成及び構成要素は、以下に説明する複写機100の構成及び構成要素と同様であるので、数字部分が同じ符号を付し、「’」をつけて区別し、それらの説明を省略する。
【0015】
図1において、複写機100は、記録部11と、ヒータ制御部12と、記録制御部13と、電源入力部21と、電力制御部23と、CPU31と、ROM32と、RAM33と、不揮発性メモリ34と、通信制御部40と、内部バス50とを備える。CPU31は、内部バス50を介して、ROM32、RAM33、不揮発性メモリ34、記録制御部13、電力制御部23、及び通信制御部40と接続されている。
【0016】
記録部11は、記録制御部13の制御に基づき、記録紙上への画像形成を行う。具体的には、トナー画像を形成し、形成したトナー画像を記録紙表面上に転写し、定着装置のヒータ(不図示)を用いて転写したトナー画像を記録紙に熱定着させる。
【0017】
ヒータ制御部12は、記録制御部13の制御に基づき、定着装置のヒータに対して通電を行うことにより、ヒータを加熱して、ヒータの表面温度を定着に必要な定着温度にまで上昇させる温度調節を行う。
【0018】
電源入力部21は、電力制御部23の制御に基づき、AC電源(不図示)から供給されたAC電力を複写機100の各部に入力(供給)する。電源入力部21は、定着装置のヒータの消費電力に応じてヒータ制御部12へ供給すべき電力量を制御する電力供給部22を含む。
【0019】
CPU31は、複写機100全体を管理する中央演算装置である。ROM32には、複写機100を動作させるためのソフトウェアが格納されている。不揮発性メモリ34には、CPU31やROM32の固有情報や識別情報などが格納されている。RAM33には、ヒータに対する通電に関する通電情報などの上記固有情報及び識別情報以外の情報が格納される。
【0020】
通信制御部40は、他の複写機、例えば複写機100’との間で通信を行う。具体的には、図1に示すように、複写機100の通信制御部40及び電力制御部23は、複写機100’の通信制御部40’及び電力制御部23’との間で通信を行う(通信手段)。この通信により、複写機100は、複写機100’の起動に関する起動情報などを受信してこれをRAM33に格納する。
【0021】
図2は、図1の複写機100の電源投入時に実行される初期化動作を示すフローチャートである。なお、初期化動作では、主として、ヒータを通電により加熱しその表面温度を定着に必要な定着温度にまで上昇させる温度調節動作が行われる。この際、各種回路の初期設定動作なども実行されるがその説明を省略する。
【0022】
図2において、まず、複写機100は、電源スイッチのONなどによりAC電源が投入されるのを待機し、AC電源が投入されたときは(ステップS100でYES)、複写機100を起動して初期化動作を開始する。また、このとき、複写機100が接続されているAC電源と同じAC電源に接続された少なくとも1つの複写機のうち、同時に起動された他の複写機、例えば複写機100’(以下、「複写機B」という)が存在するか否かを判別する(ステップS101)。同時に起動された複写機Bが存在するときは、当該複写機Bから、複写機Bの初期化動作を複写機100の初期化動作よりも優先的に行う旨のマスタ宣言を受信したか否かを判別する(ステップS102)。
【0023】
ステップS102の判別の結果、複写機Bによるマスタ宣言がないときは、複写機100は、マスタ宣言フラグをONにセットする(ステップS103)。これにより、複写機100の初期化動作を複写機Bの初期化動作よりも優先的に行う旨のマスタ宣言を行う(マスタ設定手段)。このマスタ宣言は起動中の複写機Bにも送信され、これにより、複写機Bのマスタ宣言フラグのONが禁止される。したがって、この場合、複写機Bは複写機100のスレーブとして機能する。
【0024】
続くステップS104では、ヒータ制御部12は、ヒータ通電情報を示すヒータ通電フラグをONにセットすることにより、ヒータの温度調節を開始する。また、このとき、ヒータの表面温度を段階的に上昇させるために予め設定された複数の目標温度の中から、現在のヒータの表面温度よりも高い目標温度を選択する(ステップS105)。なお、ヒータの表面温度は、ヒータの表面温度をリアルタイムで測定する温度センサ(温度測定手段)により測定される。
【0025】
その後、ステップS106では、ヒータ制御部12は、電力供給部22から供給された例えば1.1kWの電力を用いてヒータに対する通電を行い、ヒータの表面温度を上昇させる。続いて、ヒータの表面温度がステップS104で選択した目標温度に到達したか否かを判別する(ステップS107)。
【0026】
ヒータの表面温度が目標温度に到達するまではステップS106のヒータ通電処理を継続的に実行し、ヒータの表面温度が目標温度に到達したときは(ステップS107でYES)、ヒータ制御部12は、一時的に、ヒータ通電フラグをOFFにセットする(ステップS108)。
【0027】
続くステップS109では、マスタとスレーブを交代すべきか否かを判別する。交代すべきと判別したときは、マスタとスレーブを交代し(ステップS110)、ステップS109に戻る。具体的には、マスタからスレーブに交代した複写機100は、スレーブからマスタへ交代した複写機Bが上記ステップS104〜S108と同様のヒータ通電処理を行う時間の間待機する。複写機Bがヒータ通電処理を完了すると、複写機100はマスタに戻る。
【0028】
ステップS109の判別の結果、マスタとスレーブを交代する必要がないと判別したときは、ヒータの表面温度が定着温度に到達したか否かを判別することにより、ヒータの温度調節が完了したか否かを判別する(ステップS111)。ヒータの温度調節が完了していないときは、上記ステップS104〜S108のヒータ通電処理を行うべくステップS104に戻り、一方、ヒータの表面温度調節が完了したときは、本処理を終了する。なお、本処理を終了する前に、起動中の複写機Bが温度調節を完了するのを待機してもよく、これにより、複写機100及び複写機Bの双方の初期化動作を確実に完了することができる。
【0029】
なお、ステップS102の判別の結果、複写機Bからマスタ宣言を受信したときは、複写機100は複写機Bのスレーブとして機能する。この場合、複写機100は、複写機Bが上記ステップS108の処理に応じて一時的にヒータ通電フラグをOFFにセットするのを待機する。その後、複写機Bのヒータ通電フラグがOFFにセットされたことをトリガとして、マスタとスレーブが交代され(ステップS112でYES)、複写機100はステップS104〜S108と同様のヒータ通電処理を行う。
【0030】
また、ステップS101の判別の結果、複写機Bが起動されないとき、又は起動する必要がないときは、複写機100は、ステップS103〜S111で温度調節処理を実行して、本処理を終了する。この場合、好ましくは、ステップS109,S110の処理がスキップ又は省略される。また、この場合、ステップS103の処理をスキップしてマスタ宣言を省略してもよい。一方、複写機100がヒータの温度調節中に複写機Bが起動されたときに複写機Bに対して容易にマスタ宣言を通知することができる。さらに、この場合、ステップS105において目標温度として定着温度を設定することにより、ヒータ通電処理を段階的に行うことなく、ヒータの温度調節を迅速に完了させることが好ましい。
【0031】
図2の処理によれば、ステップS104〜S111の温度調節処理が段階的に即ち断続的に実行される(通電制御手段)。換言すれば、単一のAC電源に接続された2台の複写機はマスタとスレーブとを交代しながらヒータ通電処理を交互に実行する。これにより、マスタ及びスレーブ間でヒータの温度調節に関する処理時間が交互となるように温度調整処置が時分割される。この結果、2台の複写機が同時に起動されても、各複写機に供給すべきAC電源からの電力量を適切に制御することができる。具体的には、消費電力が、AC電源が供給可能な最大電力量を示す許容値、例えば2.0kWを超えて、ブレーカが作動することを確実に防止することができる。また、突入電流の重なりによって他の複写機が誤動作し、無駄な電力を消費することを確実に防止することができる。
【0032】
なお、図2の説明において、スレーブとして機能する複写機Bは、複写機100’の1台であるとしたが、1台に限られることはなく、2台以上であってもよい。
【0033】
図3(a)は、単一のAC電源に接続されている3つの複写機A,B,Cがそれぞれ図2の処理を実行した場合におけるヒータへの電力供給のタイミングチャートである。
【0034】
図3(a)に示す例では、それぞれ図1に示す複写機100と同様に構成された3つの複写機A,B,Cが、それぞれ図2の処理を実行することにより、最初は複写機Aはマスタとして、複写機B,Cはスレーブとして機能している。その後、マスタとなる複写機が入れ替わる。図3(a)に示すように、各複写機のヒータに電力を供給するタイミングやヒータへの電力供給時間が重複することがない。換言すれば、各複写機のヒータへの電力供給が時分割されているので、これらの複写機が同時に起動された場合であってもヒータに対する通電が一斉に開始されることがない。したがって、スレーブとして機能する複写機が複数台であっても、各複写機は、図2の処理による効果を確実に奏することができる。なお、各複写機は、スレーブとして機能する時間であっても、ヒータの温度調節動作以外の動作として、初期設定動作などを行ってもよい。
【0035】
また、複写機A,B,Cが初期化動作を行う条件が同一である場合には、複写機A,B,Cは時分割の最小時間単位の分だけずれて初期化動作を完了する。このとき、ユーザは、複数の複写機への電力供給が時分割されていること、即ち一部の複写機では少なくともヒータに電力を供給しないように制御している時間があることを視認することがない。したがって、ユーザは複写機への電力供給に失敗したと誤認することがないので、ユーザの使い勝手を損なうことをなくすことができる。
【0036】
なお、図3(a)に示す例では、時分割された各複写機への電力供給時間がほぼ等しいが、図3(b)に示すように異なってもよいのはいうまでもない。電力供給時間は、ヒータの表面温度が図2のステップS105で設定される目標温度に到達するまでの時間や、処理開始時のヒータの表面温度に依存するからである。さらに、これを利用して、例えば各複写機に予め設定される複数の目標温度の間隔の大きさを変更することにより、時分割される電力供給時間に重みをつけてもよい。これにより、複数の複写機のうち、電力供給時間に重みをつけた複写機の初期化動作を迅速に行うことができる。
【0037】
図4は、図1の複写機100がスタンバイ状態から通常動作状態に復帰するときに実行されるヒータ加熱処理を示すフローチャートである。ここで、スタンバイ状態とは、画像形成動作が画像形成を行っておらず、定着器の目標温度を上記の定着温度よりも低くしている状態のことである。また、通常動作状態とは、定着器の温度が定着温度に達していて(前後数度の差分を含む)、直ちに像形成を行える状態或いは定着器の温度を定着温度に向けて加熱している状態のことである。本処理は、複写機100がスタンバイ状態から通常動作状態に復帰するために起動されたときに実行される。なお、複写機100がスタンバイ状態にある間は、ヒータが予熱された状態にある。したがって、複写機100が本処理を行うときは、初期化動作を行うときに比較してヒータの消費電力が小さく、例えば0.3kWであり、ヒータの表面温度は、初期化動作時よりも低消費電力且つ短時間で定着温度に到達する。
【0038】
図4において、複写機100は、スタンバイ状態にある間に、他の複写機、例えば複写機100’(以下、「複写機B」という)と通信を行っている。このとき、複写機100は、複写機Bに対して、そのヒータ加熱処理を複写機100のヒータ加熱処理よりも優先的に行う旨を規定する優先選択がユーザによりなされているか否かを判別する(ステップS201)。
【0039】
ステップS201の判別の結果、複写機Bに対して優先選択がなされていないときは、複写機100をスレーブに設定する(ステップS210)。ステップS201の判別の結果、複写機Bに対して優先選択がなされているときは、複写機100をマスタに設定すると共に、複写機Bをスレーブに設定する(ステップS203)(マスタ設定手段)。
【0040】
また、複写機100は、スタンバイ状態にある間に、通常動作状態に復帰可能な状態であるか否かをチェックしておくと共に、複写機Bがスタンバイ状態から通常動作状態に復帰可能な状態であるか否かをチェックしておくことが好ましい。
【0041】
その後、ステップS204では、複写機100が複写機Bの起動と同時期に起動されたか否か、即ち複写機100及び複写機Bの双方に対して起動指示がなされたか否かを判別する。起動指示がなされるまでは待機し、起動指示がなされると、マスタに設定されている複写機100は、ヒータ通電フラグをONにセットする(ステップS205)。その後、予熱された状態にあるヒータに対する通電を開始する(ステップS206)。続いて、ヒータの温度調節が完了するまでヒータ加熱処理を継続し、ヒータの温度調節が完了したときは(ステップS207でYES)、ヒータ通電フラグをOFFにセットし(ステップS208)、本処理を終了する。なお、マスタである複写機100のヒータ通電フラグがOFFにセットされると、スレーブである複写機Bの温度調節が実行される(ステップS209)。
【0042】
一方、ステップS201の判別の結果、複写機Bに対して優先選択がなされていたときは、複写機Bをマスタに設定すると共に、複写機100をスレーブに設定し(ステップS210)、起動指示がなされるのを待機する。その後、起動指示がなされたときは(ステップS211でYES)、ステップS209に進み、複写機100は、複写機Bがヒータの温度調節を完了した後に、ヒータの温度調節を実行し、そして、本処理を終了する。
【0043】
図4の処理によれば、複写機100は、スタンバイ状態から通常動作状態に復帰するために起動された際に、マスタである場合にはスレーブよりも優先的にヒータ加熱処理を実行してヒータの温度調節を完了する。この結果、優先選択した複写機100が迅速に起動されるので、ユーザの使い勝手を向上させることができる。
【0044】
また、図4のヒータ加熱処理では、複写機100は、ヒータ通電処理を図2の初期化動作のようにヒータ通電処理を段階的に行わない、即ち連続的にヒータ通電処理を行うので、より迅速にヒータの温度調節を完了することができる。
【0045】
なお、図4において、複写機100や複写機Bに対して優先選択がなされていない状態で、複写機100に対して起動指示がなされたときは、複写機100は、ステップS205〜S208と同様のヒータ加熱処理を実行するように構成されていることが好ましい。
【0046】
また、単一のAC電源に接続されている複数の複写機の起動状態(初期化動作中、スタンバイ状態、ヒータ加熱処理中)が異なる場合には、各複写機の起動状態に応じた重みを付けることにより、図3(b)に示すように、ヒータへの電力供給の時分割を行うことが好ましい。
【0047】
以下、本発明の実施の形態の変形例を説明する。
【0048】
図5は、図4の処理に代えて実行されるヒータ加熱処理のフローチャートである。本処理も、図4の処理と同様に、複写機100がスタンバイ状態から通常動作状態に復帰するために起動されたときに実行される。なお、本処理において、図4の処理と同様の処理についてはその説明を省略する。
【0049】
図5において、まず、複写機100は、スタンバイ状態から起動する通常動作状態に復帰するための起動指示がなされるのを待機している。その後、起動指示がなされた、即ち起動すべきと判別したときは(ステップS301でYES)、他の複写機、例えば複写機Bからマスタ宣言を受信したか否かを判別する(ステップS302)。ステップS302の判別の結果、複写機Bからマスタ宣言を受信していないときは、複写機100は複写機Bに対してマスタ宣言を行う(ステップS303)。これにより、複写機Bがスレーブに設定される(マスタ設定手段)。
【0050】
続くステップS304,S305,S307,S308では、図4のステップS205,S206,S207,S208と同様の処理を行い、本処理を終了する。
【0051】
ステップS305,S307の間のステップS306では、ステップS305におけるヒータ通電時の消費電力が、AC電源が供給可能な最大電力量を示す許容値よりも十分に小さいか否かを判別する。この判別は、具体的には、ヒータの消費電力とスレーブである複写機Bの消費電力の和を示す総電力消費量を算出し、この総電力消費量とAC電源の許容値とを比較することにより行う。
【0052】
ステップS306の判別の結果、総電力消費量がAC電源の許容値よりも小さいときは、消費電力情報を示す消費電力フラグにOKである旨をセットし、ステップS307に進む。このとき、複写機100は、消費電力フラグがOKを示す旨をスレーブである複写機Bに送信し、これに応じて複写機Bは、ステップS312においてヒータの温度調節を行う。一方、消費電力フラグがNGを示すときは、ステップS312をスキップして、ステップS305のヒータ通電処理を継続することによりヒータ加熱処理を行い、ステップS307に進む。なお、このとき、消費電力フラグがNGを示す旨をスレーブである複写機Bに送信することにより複写機Bにおけるヒータの温度調節を禁止することが好ましい。
【0053】
また、ステップS302の判別の結果、複写機Bからマスタ宣言を受信したときは、複写機100はスレーブに設定される(ステップS310)。上記ステップS306の判別の結果、マスタである複写機Bから消費電力フラグがOKを示す旨を受信するのを待機し、受信したときは(ステップS311)、スレーブにおけるヒータの温度調節をマスタにおけるヒータの温度調節と並列して実行し、ステップS307に進む。なお、消費電力フラグがOKを示す旨を、例えば予め設定された時間内に受信しなかった場合には、マスタにおけるヒータの温度調節が完了した後にスレーブにおけるヒータの温度調節を実行する。
【0054】
図5の処理によれば、単一のAC電源に接続されている複数の複写機がAC電源の許容値以下の範囲内でヒータ通電処理を行うので、ブレーカが作動することなくAC電源から供給されるAC電力の使用効率を最大限に向上させることができる。その結果、各複写機を迅速に起動させて、ユーザの使い勝手を向上させることができる。
【0055】
また、図5の処理によれば、マスタがヒータ通電処理を開始した後に、消費電力フラグがOKを示す旨をスレーブに送信するので、マスタのヒータに対する通電をスレーブよりも迅速に行うことができる。
【0056】
なお、上述した実施の形態及びその変形例では、本発明を複写機に適用したが、複写機に限られることはなく、定着動作にヒータを用いる画像形成装置であればいかなるものに適用してもよい。さらには、本発明は、電源投入時の消費電力が電源投入後の消費電力よりも大きいデバイスを備える電気機器にも適用することが可能である。
【0057】
また、本発明の目的は、上述した実施の形態及びその変形例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPUなど)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。
【0058】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上記実施の形態及びその変形例の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0059】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。又は、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
【0060】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施の形態及びその変形例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態及びその変形例の機能が実現される場合も含まれる。
【0061】
更に、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態及びその変形例の機能が実現される場合も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置としての複写機の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の複写機の電源投入時に実行される初期化動作を示すフローチャートである。
【図3】(a)は、単一のAC電源に接続されている3つの複写機がそれぞれ図2の処理を実行した場合におけるヒータへの電力供給のタイミングチャートであり、(b)は、(a)の変形例を示すタイミングチャートである。
【図4】図1の複写機がスタンバイ状態から通常動作状態に復帰するときに実行されるヒータ加熱処理を示すフローチャートである。
【図5】図4の処理に代えて実行されるヒータ加熱処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
12 ヒータ制御部
21 電源入力部
22 電力供給部
23 電力制御部
31 CPU
34 不揮発性メモリ
40 通信制御部
100,100’ 複写機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源投入時の消費電力が電源投入後の消費電力よりも大きいデバイスを備える画像形成装置において、前記電源に接続された他の画像形成装置の起動に関する起動情報を当該他の画像形成装置から受信するための通信手段と、前記起動情報に基づいて前記デバイスに対する通電を制御する通電制御手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記デバイスに対する通電を前記他の画像形成装置よりも優先的に行うべく前記画像形成装置をマスタに設定すると共に前記他の画像形成装置をスレーブに設定するマスタ設定手段を備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記通電制御手段は、前記他の画像形成装置が起動されているときは、前記デバイスに対する通電を断続的に行うように前記制御を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記デバイスの消費電力及び前記他の画像形成装置の消費電力の和を示す総電力消費量と、前記電源が供給可能な最大電力量とを比較する比較手段を備え、前記比較の結果、前記最大電力量が前記総電力消費量よりも大きいときは、前記通電制御手段は、前記デバイスに対する通電を連続的に行うことを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記デバイスはヒータから成り、前記ヒータの表面温度を設定する温度設定手段と、前記ヒータの表面温度を測定する温度測定手段とを備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記通信手段は、前記デバイスに対する通電に関する通電情報を前記他の画像形成装置に送信する送信手段を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記通信手段は、前記電源の投入時及び前記画像形成装置がスタンバイ状態から通常動作状態に復帰するときの少なくとも一方において前記通信を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
それぞれ定着器を有する第1及び第2の画像形成装置が共通の電源に接続された画像形成システムの電力制御方法であって、
前記第1の画像形成装置が前記第2の画像形成装置の起動に関する起動情報を前記第2の画像形成装置から受信するための通信ステップと、前記起動情報に基づいて前記第1の画像形成装置の定着器に対する通電を制御する通電制御ステップとを有することを特徴とする画像形成システムの電力制御方法。
【請求項9】
前記第1の画像形成装置の定着器に対する通電を前記第2の画像形成装置の定着器に対する通電よりも優先的に行うべく前記第1の画像形成装置をマスタに設定すると共に前記第2の画像形成装置をスレーブに設定するマスタ設定ステップを有することを特徴とする請求項8記載の電力制御方法。
【請求項10】
前記通電制御ステップでは、前記第2の画像形成装置が起動されているときは、前記第1の画像形成装置の定着器に対する通電を時分割で行うように前記制御を行うことを特徴とする請求項8又は9記載の電力制御方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の画像形成装置の消費電力の和を示す総電力消費量と、前記電源が供給可能な最大電力量とを比較する比較ステップを有し、前記比較の結果、前記最大電力量が前記総電力消費量よりも大きいときは、前記通電制御ステップでは、前記第1及び第2の画像形成装置のそれぞれの定着器に対する通電を連続的に行うことを特徴とする請求項8又は9記載の電力制御方法。
【請求項12】
前記定着器の目標温度を設定する温度設定ステップと、前記定着器の温度を測定する温度測定ステップとを有することを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の電力制御方法。
【請求項13】
前記通信ステップは、前記第1の画像形成装置の定着器に対する通電に関する通電情報を前記第2の画像形成装置に送信する送信ステップを含むことを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載の電力制御方法。
【請求項14】
前記通信ステップを、前記第1の画像形成装置の電源の投入時及び前記第1の画像形成装置がスタンバイ状態から通常動作状態に復帰するときに実行することを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1項に記載の電力制御方法。
【請求項15】
それぞれ定着器を有する第1及び第2の画像形成装置が共通の電源に接続された画像形成システムの電力制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記第1の画像形成装置が第2の画像形成装置の起動に関する起動情報を前記第2の画像形成装置から受信するための通信モジュールと、前記起動情報に基づいて前記第1の画像形成装置の定着器に対する通電を制御する通電制御モジュールとを備えることを特徴とするプログラム。
【請求項16】
請求項15記載のプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−145450(P2008−145450A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328747(P2006−328747)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】