説明

画像形成装置およびその制御方法

【課題】 網点により画像を形成する際に、トナー消費量を低減しつつ、高画質な画像を形成する。
【解決手段】 電子写真方式により画像を形成する画像形成装置であって、画像形成に使用される記録材の消費量を低減する節約モードを設定する設定手段と、入力された画像データに対して、閾値マトリクスを用いてハーフトーン処理するハーフトーン処理手段と、前記設定手段により前記節約モードが設定された場合、前記ハーフトーン処理された画像データにおいて、形成する網点の中心部の画素値が小さくなるように閾値マトリクスに対応する領域内の点灯画素の一部を変更する変更手段と、前記変更手段から得られる画像データに基づいて画像を形成する画像形成手段と、前記設定手段により前記節約モードが設定されるか否かに応じて、前記画像形成における定着条件を制御する定着制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式により画像を形成するための画像形成装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式により画像形成を行う画像形成装置は、一般に、像担持体としての感光体ドラムと、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、および定着手段、を有する。電子写真方式は、良好な画質品位を有する画像を容易に形成できることから、複写機、プリンタ、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に広く利用されている。
近年、画像形成装置はその普及に伴い、さらなる高付加価値化が要求されている。その1つとして、記録材(トナー)の消費量の低減が挙げられる。
そこで特許文献1には、形成する網点内部の一部の画素を非点灯画素にすることで、網点の輪郭形状を崩さずに網点内部のトナー膜厚を薄くする技術が記載されている。これにより、画像の濃度低下を抑制しつつ、トナー消費量を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−270927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、記録媒体に記録材を定着させる際の定着条件については考慮されていない。そのため、トナー消費量を低減しつつ、高画質な画像を形成することができない場合が起こり得るという問題がある。
そこで本発明は、網点により画像を形成する際に、トナー消費量を低減しつつ、高画質な画像を形成することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、電子写真方式により画像を形成する画像形成装置であって、画像形成に使用される記録材の消費量を低減する節約モードを設定する設定手段と、入力された画像データに対して、閾値マトリクスを用いてハーフトーン処理するハーフトーン処理手段と、前記設定手段により前記節約モードが設定された場合、前記ハーフトーン処理された画像データにおいて、形成する網点の中心部の画素値が小さくなるように閾値マトリクスに対応する領域内の点灯画素の一部を変更する変更手段と、前記変更手段から得られる画像データに基づいて画像を形成する画像形成手段と、前記設定手段により前記節約モードが設定されるか否かに応じて、前記画像形成における定着条件を制御する定着制御手段とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、画像の濃度低下を抑制しつつ、トナー消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】画像処理装置及び画像形成装置の構成例を示すブロック図
【図2】タンデム型の画像形成部2000の構成を示す例
【図3】タンデム型の画像形成部2000の構成を示す例
【図4】プリンタドライバUIの一例
【図5】プリンタドライバの動作を示すフローチャート
【図6】ハーフトーン処理部の処理を示すフローチャート
【図7】ハーフトーン処理部における多値画像データの分割例
【図8】ハーフトーン処理部に保持する閾値マトリクスの例
【図9】ハーフトーン処理部における多値画像データのハーフトーン処理例
【図10】各濃度域のハーフトーン画像の点灯画素削減例
【図11】ハーフトーン画像の点灯画素1ドット削減例
【図12】記録媒体上に転写された網点トナー像の断面模式図
【図13】記録媒体上に定着された網点トナー像の断面模式図
【図14】画像処理装置及び画像形成装置の構成例を示すブロック図
【図15】PWM処理の説明図
【図16】ハーフトーン処理部の処理を示すフローチャート
【図17】各濃度域のハーフトーン画像の点灯画素レベル低減例
【図18】定着部211の構成を表す断面模式図
【図19】実施例3による処理結果の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明を好適な実施例に従って詳細に説明する。なお、以下の実施例において示す構成は一例にすぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0009】
[実施例1]
図1は本実施例1に適用可能な画像形成装置の構成例を示すブロック図である。
【0010】
本実施例に係る画像形成装置は、プリンタドライバ10とプリンタエンジン20を有する。プリンタドライバ10は、画像信号に対して画像処理条件に応じて画像処理を行う。プリンタエンジン20は、画像信号に基づき制御されたプロセス条件に応じて電子写真方式により出力画像を形成する。より詳しくは、感光体、誘電体等の像担持体上に静電潜像を形成し、この静電潜像を現像器によって現像する。現像された記録材を記録媒体上に転写し、転写された記録材を定着器により記録媒体に定着して画像を形成する。本発明は、このような構成と同じ若しくは同等の構成を有している画像形成装置であれば、適用することができる。また、プリンタエンジン20が画像を形成する記録媒体は、コート紙、普通紙等の印刷用紙が考えられるが、これに限定されるものではない。
【0011】
ここでは、アプリケーション1で作成した画像データを、プリンタドライバUI(ユーザーインターフェース)10を介してプリンタドライバ11に入力し、プリンタドライバ11を経由してプリンタエンジン20で出力するものとする。
【0012】
アプリケーション1は、図示しないハードディスクドライブ、コンピュータ、サーバ、ネットワークなどとのインターフェースを有し、プリンタドライバ11に画像データを入力する。なお、本実施例では画像データとして、R(赤)G(緑)B(青)画像が入力された場合の例を説明する。
【0013】
プリンタドライバUI10は、ユーザがトナー節約モードのオンオフを選択するためのトナー節約モード選択部101を有している。トナー節約モード選択部101において取得されたトナー節約モードは、プリンタドライバ11に画像データとともに通知される。
【0014】
プリンタドライバ11は、内部にトナー節約モード判別部111と、色変換処理部112と、ハーフトーン処理部113と、ハーフトーン画像データ記憶部114とを備えている。
【0015】
ここで、プリンタドライバ11は機能を実現するソフトウェア(プログラム)に相当する。このソフトウェア(プログラム)は、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のプロセッサ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する。
【0016】
プリンタドライバ11の処理の詳細について説明する。トナー節約モード判別部111は、画像データとともに外部から受け取ったトナー節約モードに従い、トナー節約モードを実行するか否かを判別する。
【0017】
色変換処理部112は、RGB画像データを、プリンタエンジン20が利用可能であるトナー色に対応した、例えばC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)などの複数色の色分解後画像データ(以下、多値画像データと呼ぶ)に変換する。このような色変換処理に当たっては、RGBのデータをデバイスに非依存である空間(例えばL*a*b*色空間やXYZ色空間)に変換した後に、CMYK各色の多値画像データに変換するといった色空間の変換処理方法が採られる。変換されたCMYK各色の多値画像データは例えば256階調の階調値を有している。なお、入力画像データはRGBデータに限られない。例えば直接CMYK各色に対応する画像データを入力することも可能であり、その場合には色変換処理を行わなくてもよい。
【0018】
ハーフトーン処理部113は、ドットのオン/オフのみで画像を形成する画像形成装置において、多階調データの階調値を擬似的に表現する為のハーフトーン処理を、各色の画像データに対して実行する。生成された2値の信号から成るハーフトーン画像データは、ハーフトーン画像データ記憶部114に格納される。
【0019】
なお、ハーフトーン処理の前段階においては、入力画像データの解像度を出力解像度に変換する解像度変換処理、CMY3色の重なりからなるグレー成分を減らしてKで置き換える下色除去処理、彩度や明るさを修正するガンマ補正処理などの所定の画像処理が施される。これら各処理自体の詳細については、従来のものと同様であるため説明を割愛する。
【0020】
プリンタエンジン20は、画像形成部2000、画像形成制御部2001を有し、画像形成部2000の各種構成要素は、CPU、RAM、ROM等の画像形成制御部2001によって制御される。また、画像形成制御部2001内のROMには、本発明の各種処理を実行するためのプログラムが記憶されており、CPUは、そのプログラムに基づいて各種処理を実行する。
【0021】
次に、画像形成部2000の構成の一例について説明する。図2は1ドラム型、図3はタンデム型の画像形成部20の一例を示している。図中、201はレーザダイオード、202はポリゴンミラー、203は感光ドラム、204は露光器、205は帯電器、206は現像器、208は一次転写機、212は感光ドラムクリーナである。1ドラム型の場合は、複数色の現像器で、レーザダイオード、ポリゴンミラー、感光ドラム、露光器、帯電器、一次転写機、感光ドラムクリーナを共有している。一方、タンデム型の場合には、複数色の現像器ごとにそれぞれの機構を有している。また、207は中間転写ベルト、209は二次転写機、210は記録媒体、211は定着器、213は中間転写ベルトクリーナである。
【0022】
まず、図2に示した1ドラム型の場合の動作の一例を説明する。画像記録部20は、プリンタドライバ11で生成されるハーフトーン画像データを、ハーフトーン画像データ記憶部114から読み出し画像記録処理を行う。レーザダイオード201は、ハーフトーン画像データを受けてレーザ光を放射する。放射されたレーザ光は、ポリゴンミラー202、fθレンズ(不図示)を経て、矢印方向に回転している像担持体である感光ドラム203上に露光走査される。これにより感光ドラム203上には静電潜像が形成される。
【0023】
感光ドラム203は、露光器204で均一に除電された後、帯電器205により均一に帯電される。その後、先のレーザ光の露光走査を受けて、感光ドラム203上には、印刷画像に応じた静電潜像が形成される。そして、この静電潜像は、現像部206から供給されるトナーによって可視画像(トナー像)として現像される。
【0024】
現像されたトナー像は、複数のローラ間に加張されて無端駆動される中間転写ベルト207上に、一次転写器208の作用によって転写される。
【0025】
この動作を、現像部206において使用する各色の現像器(シアントナー現像器206C、マゼンタトナー現像器206M、イエロートナー現像器207Y、ブラックトナー現像器206K)を切り換えながら複数回繰り返す。そして、中間転写ベルト207上に順次転写された複数色からなるトナー像は、二次転写器209により記録媒体210に転写される。記録媒体210は搬送され、定着器211を通り、トナー像を記録媒体210上に定着させる。そして記録媒体210は排出される。
【0026】
また、感光ドラム203上に残った残留トナーは、クリーナ212で掻き落とされ、回収される。また、転写材210が分離された後、残留している中間転写ベルト207上の残留トナーは、ブレード等のクリーナ213によって掻き落とされる
次に、図3に示したタンデム型の場合の動作の一例を説明する。各色の感光ドラム203(C、M、Y、K)上にトナーなどの記録材によって現像された画像が形成されるまでの動作は1ドラム型と同様である。各色感光ドラム上に現像されたトナー像は、中間転写ベルト207上に、各色の一次転写器208(C、M、Y、K)の作用によって順次転写され、重ね合わされてゆく。
【0027】
各色のトナー画像が転写されて重ね合わされた後、二次転写器209により記録媒体210に転写される。記録媒体210は搬送され、定着器211を通り、トナー像を記録媒体210上に定着させる。そして記録媒体210は排出される。
【0028】
なお、本実施例では感光ドラム上に現像したトナー像を中間転写ベルト207上に一次転写し、複数色を重ね合わせた後、記録媒体に二次転写する方式の例を示した。しかしこれに限るものではなく、中間転写体を用いないで記録媒体を静電ベルトに吸着させて、記録媒体に感光ドラムから直接トナー像を転写する方式の画像形成装置に対しても有効である。
【0029】
また、本実施例ではCMYK4色の記録材を有した画像形成部の例を示したが、本発明は、CMYK4色に限られるものではなく、特色の記録材や、5種類以上の記録材を有する画像形成装置に対しても有効である。
【0030】
次に、プリンタドライバUI10の一例を、図4を用いて説明する。
【0031】
図4は、プリンタドライバUIの一例を示す図である。
【0032】
画面100はプリンタドライバUI10における印刷設定画面を示している。
【0033】
領域101はトナー節約モード選択部であり、従来と比較してトナー消費量を低減する「トナー節約モード」を実行するか否かを選択するためのラジオボタン1011及び1012を有している。ラジオボタン1011はトナー節約モードを実行するモードを選択するためのコントロールボタンである。ラジオボタン1012はトナー節約モードを実行しないモードを選択するためのコントロールボタンである。
【0034】
領域102は印刷ボタンであり、印刷設定画面100で選択された印刷条件に基づいて印刷の実行を指示するためのコントロールボタンである。印刷ボタンが押下されると、プリンタドライバ11に画像データとともにトナー節約モードを実行するか否かを通知する。
【0035】
領域103はキャンセルボタンであり、印刷設定画面100で選択された印刷条件を取り消すためのコントロールボタンである。
【0036】
なお、本実施例で示すプリンタドライバUI10における印刷設定画面100はあくまでも一例であり、同様の機能を有していれば、その他の構成であっても問題はない。
【0037】
また、トナー節約モードは画像形成部が具備する不図示の操作パネルにおいて、直接選択することも可能である。
【0038】
次に、プリンタドライバ11の動作の具体例について図5のフローチャートを参照して説明する。
【0039】
プリンタドライバ11に画像データとともにトナー節約モードが通知されると、S1000において、トナー節約モードの設定内容が判別される。この判別結果に従って各部の処理が変更される。
【0040】
S1000においてトナー節約モードの判別結果がオフの場合には、通常モードの画像形成処理を行う。この場合には、S1011において画像形成制御部2001に対して定着器211における定着工程の温度は定着温度F_TEMP1に設定される。温度F_TEMP1は通常の画像形成処理に設定される温度である。また、S1012において、画像データに対して色変換処理を行う。さらに、S1013において通常のハーフトーン処理を行い、ハーフトーン画像データを生成する。通常のハーフトーン処理は、網点内部に中空を作らない。S1004にて生成されたハーフトーン画像データを、ハーフトーン画像データ記憶部114に記録する。この条件で画像形成を行うことで、通常モード時の画像が形成される。
【0041】
一方、S1000においてトナー節約モードオンが判別された場合には、トナー節約モードの画像形成処理を行う。この場合には、S1021において画像形成制御部2001に対して定着器211の温度が定着温度F_TEMP2として設定される。定着温度F_TEMP2は、通常時よりも高温である。すなわち、トナー節約モードオフの場合の定着温度はF_TEMP1、トナー節約モードオフの場合の定着温度はF_TEMP2であり、これらの関係はF_TEMP1<F_TEMP2となる。また、S1022において、画像データに対して色変換処理を行う。さらに、S1023において網点内部に中空のあるハーフトーン処理を行い、ハーフトーン画像データを生成する。なお、S1023におけるハーフトーン処理の詳細は後述する。S1004にて生成されたハーフトーン画像データを、ハーフトーン画像データ記憶部114に記録する。この条件で画像形成を行うことで、トナー節約モード時の画像が形成される。
【0042】
なお、トナー節約モード時に変更する定着条件として、本実施例では定着器211における定着温度を制御する例を示したが、その他の定着制御を変更する方法でもよい。例えば、プロセススピードの変更や、定着処理を複数回行う等によって定着時間を長くしたり、定着器211が記録媒体210に与える定着圧力を高くしたりしても、同様の効果を得ることができる。
【0043】
次に、トナー節約モードの判別結果がオンの場合の、ハーフトーン処理部113の処理の一例を図6のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
色変換処理部112で生成された多値画像データが、ハーフトーン処理部113に入力されると、S2001において、多値画像データは閾値マトリクスサイズ毎に分割される。図7は、ハーフトーン処理部に用いられる閾値マトリクスのサイズが4×4である場合の、多値画像データの分割例を示している。S2002において分割された領域内の各画素の階調値と各画素に対応する閾値マトリクスにおける閾値とを画素毎に比較する。閾値より画素値が大きければ点灯画素を出力し、閾値以下であれば非点灯画素を出力する。図8に、閾値マトリクスの一例を示す。また、図7で示した多値画像データに対して、図8で示した閾値マトリクスを用いてハーフトーン処理をしたハーフトーン画像データを図9に示す。なお、ここでは8ビット階調画像の2値化の例を示したが、これに入力画像は8ビットに限定されるものではない。
【0045】
次に、S2003において、ハーフトーン処理したハーフトーン画像データから、点灯画素数Xをブロック毎にカウントする。その後、点灯画素数Xはハーフトーン処理部113に保持している遷移閾値(T1、T2)と比較される。
【0046】
点灯画素数Xが遷移閾値T1よりも小さい、つまりX<T1の場合、ハーフトーン処理後の画像に対して何も処理をしない。
【0047】
点灯画素数Xが遷移閾値T2以上、つまりT2<=Xの場合、同様にハーフトーン処理後の画像に対して何も処理をしない。
【0048】
点灯画素数Xが遷移閾値T1以上であり、かつ遷移閾値T2よりも小さい、つまりT1<=X<T2の場合、S2004においてハーフトーン処理後の網点に対して網点中心の点灯画素を1ドット削減する。つまり、網点内部の点灯画素を非点灯画素に変更する。
【0049】
図10に、T1を6、T2を12とした場合の、図9に示すハーフトーン画像データに対する点灯画素削減処理の結果を示す。
【0050】
図7(A)の入力画像データのように、点灯画素数が少ない(X<T1)低濃度域の微小な網点に関しては、図10(A)のように点灯画素の削減を行わない。つまり低濃度領域において形成される微小な網点には、中空が形成されない。これは低濃度領域における微小な網点が、点灯画素が少なくなりすぎてドットの再現が不安定になることを防ぐためである。
【0051】
また、図7(B)の入力画像データのように、T1<=X<T2となる中間濃度域の網点に関して、図10(B)のように点灯画素を削減する。つまり中濃度領域においては、網点の中心部に非点灯画素ができ、中空のある網点となる。これにより、網点の輪郭形状を崩さずに中空が形成されるが、光学的ドットゲインの影響により濃度低下は抑制される。したがって、濃度低下を招くことなく、網点部分のトナー消費量を低減することができる。
【0052】
また、点灯画素数が多い高濃度域(T2<=X)における網点に関しては、図10(C)のように点灯画素の削減を行わない。これにより、最大濃度時にすべての画素を点灯画素とすることができる。
【0053】
なお、低濃度域側のドット削減開始点を与える遷移閾値T1は、網点の外郭を点灯画素に維持しながら、その内部に非点灯画素を配置できるよう設定される。一方、高濃度域側のドット削減開始点を与える遷移閾値T2は、中間濃度域でのみ網点内部に非点灯画素を配置するために設定される。ただし、これらの閾値設定に限らない。例えば、遷移閾値T2を与えずに遷移閾値T1以上の範囲を網点内部に非点灯画素を配置する処理としてもよいし、遷移閾値T1およびT2を与えずにすべての範囲で網点内部に非点灯画素を配置する処理としてもよい。
【0054】
また、網点に中空を形成する際の点灯画素削減ドット数に関しては、1ドットに限られるものではなく削減ドット数を2ドット以上にしてもよい。このとき削減するドット数の設定には、印刷後の画像濃度が、所望の濃度となるように画像濃度域ごとに適宜設定することが望ましい。
【0055】
また、複数の画像濃度域の境界を示す3つ以上の遷移閾値を保持しておき、ハーフトーン点灯画素数と遷移閾値とを比較した結果に応じて、複数の画像濃度域ごとに点灯画素削減ドット数を変更する処理としてもよい。
【0056】
また、点灯画素削減ドットは、網点に中空を形成するために、ハーフトーン処理部113に保持している閾値マトリクスの閾値の小さい順、つまり網点の点灯順に削減することが望ましい。
【0057】
また、点灯画素の削減ドット数は1つの網点範囲内で達成されていれば良い。たとえば網点内部のドット削減数をn+1ドットとし、網点の外郭部をnドット点灯画素に変更する処理としてもよい。図11に、図9(B)の中間濃度のハーフトーン画像データを、網点の外郭部を1ドット点灯し、網点内部ドットを2ドット削減した例を示している。これにより、閾値マトリクス領域内では、点灯画素が1つだけ減ったことになるので、濃度低下を抑制しながら効率よく濃度を保つことができる。
【0058】
S2005においてディザ閾値マトリクスのサイズ毎に画像全体に対して処理を終了したか判断し、終了を判断すると生成した2値データを出力する。
【0059】
この処理は各色の多値画像データそれぞれに対して、別々に実行されるものである。つまり、本実施例の場合CMYKの各色多値画像データについてハーフトーン処理が行われることになる。なお、使用する閾値マトリクスについては各色同一のものを使用してもよいし、各色で異なるものを使用してもよい。
【0060】
以上のとおり本実施例では、トナー節約モードがオフの場合、通常の画像形成が行われる。一方、トナー節約モードがオンの場合、ハーフトーン処理部113において網点に中空のあるハーフトーン画像データが生成される。このハーフトーン画像データを用いて感光ドラム203上に静電潜像を生成し、現像部206から供給されるトナーによって現像し、トナー像が記録媒体210に転写されると、網点内部のトナー付着量が低減されたトナー像が形成される。図12に記録媒体上に転写された網点トナー像の断面模式図を示す。トナー節約モードの場合さらに、定着器211において従来よりも高温で定着することにより、網点外郭部のトナーの溶融度が高まり、網点内部の中空を埋める効果が高まる。図13(A)は従来温度で定着した場合の網点トナー像の断面模式図、図13(B)は従来よりも高温で定着した場合の網点トナー像の断面模式図を示す。高温で定着することで、網点中空部が周囲のトナーにより十分埋められているのがわかる。これにより、定着条件を考慮しない場合と比べて、点灯画素数削減ドット数を多く設定することができ、色材(トナー)を効率よく使うことができる。従って本実施例によれば、濃度の低下を抑制しつつトナー消費量を低減することができる。
【0061】
[実施例2]
上記実施例1では、網点の内部に中空ができるように、網点内部の点灯画素を非点灯画素に変更することで、トナー量を削減した。本実施例では、トナー消費量を低減する方法として、網点内部のトナー付着量が低下するように変調することを特徴とする。図14は、実施例2に適用可能な画像形成装置の構成例を示すブロック図である。実施例1に示した画像処理装置および画像形成装置と同様の構成については、同一の符号で示し、詳細な説明は省略する。
【0062】
プリンタドライバ11は、トナー節約モード判別部111と、色変換処理部112と、ハーフトーン処理部115とハーフトーン画像データ記憶部116と、PWM処理部117とを有する。
【0063】
PWM処理部117は、ハーフトーン画像データ記憶部116に格納されている多値のハーフトーン画像データに基づく多値画像信号と、所定周期の三角波信号との比較を行い、パルス幅変調されたレーザダイオード駆動信号を出力する。図15は多値画像信号のPWM処理部117が施すPWM処理の例を示す。これにより、多値ハーフトーン画像データのレベルに応じてトナー付着量を制御可能となる。
【0064】
図16は、実施例2におけるハーフトーン処理部115の処理を示すフローチャートである。
【0065】
ステップS2001からS2003までの処理は、実施例1におけるハーフトーン処理部113の処理と同等である。S2003においてハーフトーン画像データから、点灯画素数Xをカウントし、ハーフトーン処理部113に保持している遷移閾値(T1、T2)と比較される。
【0066】
点灯画素数Xが遷移閾値T1よりも小さい、つまりX<T1の場合、ハーフトーン処理後の画像に対して何も処理をしない。
【0067】
点灯画素数Xが遷移閾値T2以上、つまりT2<=Xの場合、同様にハーフトーン処理後の画像に対して何も処理をしない。
【0068】
点灯画素数Xが遷移閾値T1以上であり、かつ遷移閾値T2よりも小さい、つまりT1<=X<T2の場合、S2006においてハーフトーン処理後の網点に対して網点中心の1ドット点灯画素レベルを、50%に低減する。
【0069】
図17に、遷移閾値T1を6、遷移閾値T2を12とした場合の、図9に示すハーフトーン画像データに対する点灯画素レベル低減処理の結果を示す。
【0070】
T1<=X<T2である中間濃度域の網点に関して、図17(B)のように点灯画素レベルを低減することにより、網点の輪郭形状を崩さずに網点内部のトナー付着量を低減することができる。そのため、画質劣化を招くことなく、トナー消費量を低減することができる。
【0071】
また実施例2では、PWM処理を用いることにより、網点内部の濃度をより自由に調整することができる。
【0072】
[実施例3]
前述の実施例では、定着器211において従来よりも高温で定着することにより、トナーの溶融度を高めて網点内部のトナー付着量削減領域を埋めた。これにより、トナー消費量を低減する画像形成装置について説明した。
【0073】
一般的に用いられるローラ方式の定着部は、定着方向によってトナー溶融後の広がり方が異なる。そこで、本実施例では、定着方向によるトナーの広がり異方性を考慮したハーフトーン画像データの生成について説明する。
【0074】
図18は、本実施例における画像形成装置に備えられた定着部211の構成を表す断面模式図である。
【0075】
この定着部はローラ方式である。定着ローラ2111に加圧ローラ2112が図示しない加圧手段により圧接されている。定着ローラ2111及び加圧ローラ2112には、それぞれヒータ2113が内蔵されている。定着ローラ2111及び加圧ローラ2112の温度は、ヒータ2113への供給電力をそれぞれ制御することにより調整できる。また、図示しない加圧手段により、定着ローラ2111と加圧ローラ2112間の圧接力を変更できるように構成されている。
【0076】
また、定着ローラ2111及び加圧ローラ2112の表面に接触又は近接して、温度検知手段としてのサーミスタ2114が配置されている。サーミスタ2114の検知出力に基づいて、定着ローラ2111及び加圧ローラ2112の温度制御が行われる。未定着のトナー画像Tを担持する記録媒体Pが入口上ガイド2115と入口下ガイド2116との間の入口空間を経てニップ部Nに導入される。そしてこの記録媒体Pがニップ部Nで定着ローラ1表面と加圧ローラ2表面とにより挟持搬送され、この搬送過程で定着ローラ2111表面の熱とニップ部Nのニップ圧を受けることによって、トナー画像Tは転写シートP上に加熱定着される。さらにこの記録媒体Pの記録材搬送方向の先端が定着ローラ2111表面と接触している剥離爪2117に当たり定着ローラ2111表面から剥離される。これにより記録媒体Pは出口下ガイド2118を経て定着器から排出される。
【0077】
上記定着器において、未定着のトナー画像Tは定着ローラ2111と加圧ローラ2112通過時に、ニップ部Nのニップ圧を受けて押し潰される。このとき、網点外郭のトナー凸部は押し広げられて、周囲のトナーが少ない領域を埋める。網点外郭部のトナーが押し広げられることによる濃度低下よりも、周囲のトナーが少ない領域を埋めることによる濃度上昇の方が大きいため、定着後の画像濃度は上昇する。従って、同じ濃度を出すために必要となるトナー量は減少することになり、画像形成におけるトナー消費量を低減できる。
【0078】
さらに効果的にトナー消費量を削減するため、網点外郭部のトナーが押し広げられたときに、周囲のトナーが少ない領域を埋めやすい網点形状にすればよい。本実施例におけるローラ方式の定着器では、定着ニップNにおいて定着方向に大きい圧力が加わるため、網点外郭のトナー凸部は定着方向により押し広げられる。
【0079】
従って、網点内部の点灯画素を変更してトナー消費量を削減する方法として、定着方向に対して直交する角度方向に、より多くのトナー消費量削減画素ができるように、点灯画素を変更すればよい。
【0080】
本実施例では、ハーフトーン処理部に用いられる閾値マトリクスのサイズが8×8の場合の、トナー節約モード時のハーフトーン処理の例を示す。図19は、階調の異なる3つのハーフトーン画像データにおいて、網点内部ドットを定着方向に対して直交する角度方向により多くの削減した一例である。図19(a)は、網点内部の4ドットを削減し、網点外郭の3ドットを点灯した例である。図19(b)は、網点内部の8ドットを削減し、網点外郭の7ドットを点灯した例である。図19(c)は、網点内部の4ドットを削減し、網点外郭の3ドットを点灯した例である。それぞれ、定着方向に対して直交する角度方向に、より多くのトナー付着量削減画素を形成している。
【0081】
実施例1では、点灯画素削減ドットは、網点に中空を形成するために、ハーフトーン処理部113に保持している閾値マトリクスの閾値の小さい順、つまり網点の点灯順に削減した。しかし、本実施例では点灯画素削減ドットは網点の点灯順とは異なる順序で削減する。そのため、あらかじめ定着方向に対して直交する角度方向に、より多くのトナー付着量削減画素を形成するように削減順序を記憶しておき、点灯画素削減時には記憶された順序で削減される。
【0082】
定着方向に対して直交する角度方向に、より多くのトナー消費量削減画素を形成することにより、定着時に網点外郭のトナー凸部を押し広げて周囲を埋める領域を効率的に大きくすることができる。従って、同じ濃度を出すために必要となるトナー量は減少することになり、画像形成におけるトナー消費量を低減できる。
【0083】
なお、上記各実施例に限らず、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施例の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のプロセッサ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式により画像を形成する画像形成装置であって、
画像形成に使用される記録材の消費量を低減する節約モードを設定する設定手段と、
入力された画像データに対して、閾値マトリクスを用いてハーフトーン処理するハーフトーン処理手段と、
前記設定手段により前記節約モードが設定された場合、前記ハーフトーン処理された画像データにおいて、形成する網点の中心部の画素値が小さくなるように閾値マトリクスに対応する領域内の点灯画素の一部を変更する変更手段と、
前記変更手段から得られる画像データに基づいて画像を形成する画像形成手段と、
前記設定手段により前記節約モードが設定されるか否かに応じて、前記画像形成における定着条件を制御する定着制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記変更手段は、前記領域内の点灯画素数が所定の範囲内である場合に、前記点灯画素の一部を変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記定着制御手段は、前記節約モードが設定されない場合に比べて、高い定着温度、長い定着時間、または大きい定着圧力の少なくとも1つを定着条件として制御することを特徴とする請求項1または請求項2の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記変更手段は、前記点灯画素の一部を非点灯画素に変更することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記変更手段は、前記点灯画素のうちNドットを非点灯画素に変更し、前記網点の外郭に(N−1)ドットの非点灯画素を点灯画素に変更することを特徴とする請求項1または請求項2の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
さらに、前記ハーフトーン処理された画像データに対してPWM処理をするPWM処理手段を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記点灯画素の一部の変更は、網点中心部である画素のうち、定着方向と直交する角度方向の画素に優先して変更することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
コンピュータに読み込み込ませ実行させることで、前記コンピュータを請求項1乃至7の何れか一項に記載された画像形成装置として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のコンピュータプログラムを記憶したことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項10】
電子写真方式により画像を形成する画像形成方法であって、
設定手段、ハーフトーン処理手段、変更手段、画像形成手段、定着制御手段とを有し、前記設定手段は、画像形成に使用される記録材の消費量を低減する節約モードを設定し、
前記ハーフトーン処理手段は、入力された画像データに対して、閾値マトリクスを用いてハーフトーン処理をし、
前記変更手段は、前記設定手段により前記節約モードが設定された場合、前記ハーフトーン処理された画像データにおいて、形成する網点の中心部の画素値が小さくなるように閾値マトリクスに対応する領域内の点灯画素の一部を変更し、
前記画像形成手段は、前記変更手段から得られる画像データに基づいて画像を形成し、前記定着制御手段は、前記設定手段により前記節約モードが設定されるか否かに応じて、前記画像形成における定着条件を制御することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−78119(P2013−78119A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202858(P2012−202858)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】