説明

画像形成装置および画像処理方法

【課題】インデックス処理とマスク処理を夫々独立して実行する場合であっても、ドット配置パターンとマスクパターンの位置関係を崩すことなく、単位画素に対する記録制御が可能な画像記録システム及び画像処理方法を提供する。
【解決手段】インデックス開始位置コマンド901を発信し、マスク処理を実行する際には、受信したインデックス処理開始位置の先頭ラスタにマスクパターンの先頭を一致させるようにマスクパターンを配置する。これにより、互いに関連付けて作成されているドット配置パターンとマスクパターンの位置関係を崩すことなく、単位画素に対する記録制御を確実に実行することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、特に擬似中間調表現のためのドットの記録を、マルチパス記録によって行う画像記録システムおよび画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
擬似中間調再現によって所望の濃度を記録媒体に表現することが出来るインクジェット記録装置では、近年、高解像度化および小液滴化が推進され、そのための画像処理では、なるべく構成を簡略且つ高速に行うための工夫がなされている。例えば、比較的低解像度の画素が有するオリジナル画像の多値(256階調)の濃度データを、より低レベルの多値(17階調)の濃度データに量子化し、その後様々な処理を施した後に、記録装置で記録可能な解像度に合った2値の濃度データに変換する。
【0003】
低解像度の多値(17階調)データを高解像度の2値データに変換する方法としては、インデックス処理というデータ処理方法が知られている。インデックス処理では、例えば図4に示すような、予め用意された複数のドット配置パターンの中から、多値データの値に応じて1つを選択することにより、1つの多値データを複数の2値データに変換する。このようなインデックス処理の結果、実際にドットを記録する画素(1)、ドットを記録しない画素(0)が決定され、擬似中間調によって所望の濃度を記録媒体に表現することが出来る。
【0004】
インデックス処理によってドットの記録が決定された記録媒体上の画素には、記録ヘッドの主走査によって実際のドットが記録されるが、この際インクジェット記録装置では、画像の一様性を高めるために、マルチパス記録方法を採用することが多い。マルチパス記録方法とは、記録ヘッドが1回の主走査で記録可能な複数のドットを、複数の主走査に分割して記録する方法である。この際、記録ヘッドが1回の主走査を行う際に記録を許容する画素(1)と許容しない画素(0)を予め定めた例えば図5に示すようなマスクパターンを利用する。そして、この様なマスクパターンが定める各画素の記録の許容(1)/非許容(0)と、インデックス処理によって決定された記録(1)/非記録(0)との間で論理積演算を行うことにより、各主走査で記録ヘッドが実際に記録するデータが決定する。
【0005】
このような、インデックス処理とマスク処理を併用する記録システムにおいては、これら2つの処理に互いに関連性を持たせることによって、様々な記録制御を行う方法が提案されている。例えば特許文献1では、設定された記録モード(マスクパターン)に応じてドット配置パターンを異ならせることにより、高速記録モードでのサテライトを目立たせないようにする構成が開示されている。また、特許文献2では、ドット配置パターンとマスクパターンとを関連付けて用意しておくことにより、複数種類のインクを用いて記録を行うインクジェット記録装置において、同一画像領域に対するインクの付与順序を制御する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−168202号公報
【特許文献2】特開2008−173969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような特許文献1や特許文献2の効果を得る為には、互いに関連付けて用意したドット配置パターンとマスクパターンの位置関係が約束(固定)されていることが要される。すなわち、例えば特許文献2において、ドット配置パターンとマスクパターンの位置関係にずれが生じると、1つのドット配置パターンで構成される単位画素に対するインクの付与順序を制御することが出来なくなってしまう。
【0008】
しかしながら、近年では、ドット配置パターンやマスクパターン夫々の規模が主走査方向および副走査方向共に拡大され、且つその内容も複雑になって来ている。そのため、インデックス処理を行いつつラスタデータを作成するラスタ画像処理と、マルチパス記録のために行うマスク処理とが、夫々独立のジョブとして構成されていることも多く、両者の位置関係が必ずしも固定されていない状況も発生する。
【0009】
以下そのような状況を詳しく説明する。例えば、ラスタ画像処理では、インデックス処理によって2値データを生成しこれを圧縮する作業を行う。また、アプリケーションで作製した画像データを検索し、画像の空欄部分に相当する分だけ記録媒体を副走査方向へ移動(ラインフィード)させるためのコマンドを生成したりする。そして、圧縮された記録用のデータと副走査方向移動させるためのコマンドとを、整列させることにより、記録装置に転送可能な印刷ジョブデータを作成する。
【0010】
一方、印刷ジョブデータを受信した記録装置は、圧縮された記録用データを伸張して記録のための2値データを再生し、このデータに対してマスクパターンを用いてマルチパス記録を行う。また、副走査移動のコマンドに従って、記録媒体を指定された量だけ副走査方向に搬送(ラインフィード)する。
【0011】
このとき、指定される副走査方向の移動量は、必ずしもマスクパターンやドット配置パターンの副走査方向の大きさ、或いは記録ヘッドに配列する記録素子の数に対応しているわけではない。よって、副走査方向の移動量によっては、副走査方向移動のコマンドの後に配列する2値データの開始位置が、記録装置で用意されたマスクパターンに対してずれてしまうことがある。
【0012】
図15(a)〜(c)は、このような副走査方向の移動に起因する、ドット配置パターンとマスクパターンのずれの状態を説明するための模式図である。
【0013】
図15(a)は、ラスタ画像処理が、4×4画素のドット配置パターンを用いながら、その途中に副走査方向の移動を指示する場合の、ドット配置パターンとマスクパターンの配置の様子を示す図である。231〜234のそれぞれは、4×4画素領域のドット配置パターンの画素領域を示し、インデックス処理によって変換された2値データで表されている。235は、ドット配置パターン233とドット配置パターン234の間に指示される副走査移動を示している。これら、231〜235は、ラスタ画像処理において指示される。
【0014】
一方、236は、記録装置が用意するマスクパターンを示している。マスクパターン236は、ドット配置パターンと関連付けるためにこれと等しい大きさの4×4画素を単位とし、この単位が記録ヘッドの記録幅に相当する分だけ連続配置する構成になっている。ここでは記録素子の数が16画素である記録ヘッドを用いる場合を示し、241は記録ヘッドの1回の主走査によって記録可能な領域を示している。記録装置が行うマスク処理では、図のように、マスクパターン236の先頭が最初のドット配置パターン231の先頭と一致するように配置される。
【0015】
このように、連続配置された2値データの途中に記録ヘッドの記録幅を超える副走査方向の移動の指示235が含まれると、移動後のドット配置パターン234においても、次の主走査におけるマスクパターン236と、その先頭を一致させることが出来る。よって、4×4画素を単位とするドット配置パターンとマスクパターンの位置関係にずれが生じることはない。
【0016】
これに対し、図15(b)は、ラスタ画像処理が、連続するドット配置パターンの途中に、記録ヘッドの記録幅を超えない量(ここでは2画素分)の副走査方向の移動を指示した場合のドット配置パターンとマスクパターンの配置の様子を示す図である。このように、連続配置された2値データの途中に2画素分の副走査方向の移動の指示235が含まれると、ドット配置パターン234は、マスクパターン236を構成する4×4画素に対し2画素分ずれた位置に配置されてしまう。そして、このままの状態で記録を行うと、単位領域に対するインクの付与順序などを制御することが出来なくなってしまう。
【0017】
更に図15(c)は、ラスタ画像処理プログラムが、ヌルラスタが検出された場合には、これを2値データではなく副走査方向への移動として指示する場合のドット配置パターンとマスクパターンの配置の様子を示す図である。この場合には、ドット配置パターン237の一部を構成するラスタであっても、そのラスタ2371がヌルであれば、副走査方向への移動量としてカウントされてしまい、マスクパターン236との間にずれが生じてしまう。すなわち、ドット配置パターン237以降のドット配置パターンで、単位領域に対するインクの付与順序などを制御することが出来なくなってしまう。
【0018】
以上説明したような現象は、いずれもラスタ画像処理が生成したドット配置パターンの位置についての情報を、記録装置側に正確に提供していなかったことに起因する。
【0019】
本発明はこのような問題点を解決するために成されたものである。従ってその目的とする所は、インデックス処理とマスク処理を夫々独立して実行する場合であっても、ドット配置パターンとマスクパターンの位置関係を崩すことなく、単位画素に対する記録制御が可能な画像記録システム及び画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そのために本発明は、原画像の画像データに従って印刷ジョブデータを作成するホスト装置と、前記印刷ジョブデータに従った記録ヘッドの主走査と該主走査と交差する方向に記録媒体を搬送する搬送動作を繰り返すことによって記録媒体に画像を記録する記録装置、から構成される画像記録システムであって、前記ホスト装置は、前記画像データから得られる多値の濃度データを有する単位画素を、ドットの記録/非記録を定める2値データを有する複数の記録画素に変換するインデックス処理を実行する手段と、前記インデックス処理を開始したラスタの位置を通知するインデックス開始位置コマンドを作成する手段と、前記2値データをラスタごとに圧縮して圧縮データを作成する手段と、前記原画像の画像データの前記副走査方向の空欄部分に応じて、副走査方向移動コマンドを作成する手段と、前記インデックス開始位置コマンドと前記圧縮データおよび前記副走査方向移動コマンドを用いて前記印刷ジョブデータを作成する手段と、を備え、前記記録装置は、前記印刷ジョブデータを受信し、前記インデックス開始位置コマンドに従って、ドットの記録の許容あるいは非許容を前記記録画素ごとに定めるマスクパターンを配置する手段と、前記圧縮データを伸張する手段と、前記副走査方向移動コマンドに従って、記録媒体を副走査方向に搬送するための搬送コマンドを作成する搬送コマンド生成手段と、を備えることを特徴とする。
【0021】
また、ホスト装置が原画像の画像データに従って印刷ジョブデータを作成し、該印刷ジョブデータを受信した記録装置が前記印刷ジョブデータに従った記録ヘッドの主走査と該主走査と交差する方向に記録媒体を搬送する搬送動作を繰り返すことによって記録媒体に画像を記録するための画像処理方法であって、前記画像データから得られる多値の濃度データを有する単位画素を、ドットの記録/非記録を定める2値データを有する複数の記録画素に変換するインデックス処理を実行する工程と、前記インデックス処理を開始したラスタの位置を通知するインデックス開始位置コマンドを作成する工程と、前記2値データをラスタごとに圧縮して圧縮データを作成する工程と、前記原画像の画像データの前記副走査方向の空欄部分に応じて、副走査方向移動コマンドを作成する工程と、前記インデックス開始位置コマンドと前記圧縮データおよび前記副走査方向移動コマンドを用いて前記印刷ジョブデータを作成する工程と、を前記ホスト装置に実行させ、前記印刷ジョブデータを受信する工程と、前記インデックス開始位置コマンドに従って、ドットの記録の許容あるいは非許容を前記記録画素ごとに定めるマスクパターンを配置する工程と、前記圧縮データを伸張する工程と、前記副走査方向移動コマンドに従って、記録媒体を副走査方向に搬送するための搬送コマンドを作成する工程と、を前記記録装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、インデックス処理とマスク処理を異なるプログラムで実行する構成であっても、ドット配置パターンとマスクパターンの位置関係が崩れることがなく、単位画素に対する記録制御を確実に行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に適用可能な画像記録システムの構成を説明するための図である。
【図2】本発明に適用可能な画像記録システムを説明するブロック図である。
【図3】実施例における、画像処理を説明するブロック図である。
【図4】本発明に適用可能なインデックス処理の、ドット配置パターンを説明する図である。
【図5】実施例で使用するマスクパターンを示す図である。
【図6】実施例における印刷ジョブデータを作成する工程を説明するフローチャートである。
【図7】本発明に適用可能な記録装置の制御部における、記録動作のコマンド作成工程を説明するフローチャートである。
【図8】アプリケーションで作成した画像例に対する実施例の処理を説明するための図である。
【図9】アプリケーションで作成した画像例に対する処理を説明するための図である。
【図10】アプリケーションで作成した画像例に対する処理を説明するための図である。
【図11】実施例における画像記録システム構成を説明するブロック図である。
【図12】実施例におけるマスクDMAの動作を説明する模式図である。
【図13】実施例における記録動作のコマンド作成工程を説明するフローチャートである。
【図14】実施例における、マスクパターンの配置状態を説明する図である。
【図15】副走査方向の移動に起因する、ドット配置パターンとマスクパターンのずれの状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施例1)
以下、図を用いて本発明の画像形成装置について説明する。
【0025】
図1は、本発明に適用可能な画像記録システムの構成を説明するための図である。本実施例では、ホスト装置1008で作成した画像を、ネットワークLAN1007を介して記録装置1001に供給し、記録装置1001にて画像を出力する。画像を作製するアプリケーションやラスタ画像処理はホスト装置1008で実行され、マスク処理以降の記録制御は記録装置1001で実行される。
【0026】
記録装置1001は、大判のインクジェトプリンタである。LANケーブル1007を介して記録装置1001に記録開始コマンドが入力されると、ロール紙ユニット1004に巻きつけられたロール紙1002は、装置内を副走査方向に搬送する。記録ヘッド1003は、副走査方向に配列する記録素子列が、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの夫々に対応して主走査方向に並列配置されており、主走査方向に移動しながら搬送される記録媒体1002に対し記録信号に応じてインクを吐出する。記録ヘッド1003のこのような主走査と、当該主走査とは交差する方向への記録媒体1002の搬送動作を間欠的に繰り返すことにより、記録媒体1002に段階的に画像が形成されて行く。なお、本実施例では、8パスのマルチパス記録を行うものとする。記録が終了した部分の記録媒体1002は、排紙部1005へと搬送され不図示のカッターにて切断される。ユーザは、操作部1006において、記録に関わる様々な指示を行うことが出来る。
【0027】
図2は、上記画像記録システムの制御の構成を説明するためのブロック図である。ホスト装置で作製された印刷ジョブデータは、LANケーブル1007を介して記録装置の外部I/F部2007にて受信される。受信した印刷ジョブデータは、制御部2001によってストレージ2012にファイルとして保存される。
【0028】
制御部2001は、記録装置1001全体の制御を行う機構であり、CPU2002、ROM 2003、RAM 2004、不揮発メモリ2005、画像処理回路2006等を備えている。CPU2002は、ROM2003に格納されたプログラムに従って、RAM2004をワークエリアとして各種処理を実行する。RAM2004には、このようなワークエリア以外に、外部から受信した印刷ジョブデータや画像データを格納するためのデータメモリ領域も確保されている。不揮発性メモリ2005には、記録中の記録媒体の種類や記録モード等、時々で変化する設定項目が、電力供給から独立して不揮発に記憶される。画像処理回路2006は、受信した画像データを画素毎に処理して、記録ヘッド1003に送信するための2値画像データを生成する。
【0029】
メカ制御部2009は、記録装置1001内に配置された様々な機構を機能させるための駆動部である。メカ制御部2009は、例えば、ロール紙1002を装置内に給送したり搬送したりするための給搬送駆動部、ロール紙を切断するためのカッター駆動部、記録ヘッド1003を搭載したキャリッジを主走査方向に移動させるキャリッジ駆動部等で構成されている。ヘッドドライバ2010は、制御部2001から受信した記録信号に応じて、記録ヘッド1003を駆動して、インクを吐出させる。
【0030】
マスクRAMは、マルチパス記録を実行する際に使用するマスクパターンを一時的に記憶するためのRAMである。制御部2001が作成した2値の画像データは、マスクRAM2011に記憶されているマスクパターンとの間で論理積演算が実行され、その結果が記録データとしてヘッドドライバ2010に供給される。
【0031】
図3は、本実施例の画像記録システムにおける、画像処理の主たる工程を説明するためのブロック図である。ホスト装置1008にインストールされているプリンタドライバ30は、アプリケーション20で作成された画像を受け取り、まず色変換処理31を実行する。色変換処理31では、300dpiで8bit(256階調)のRGB画像データを、300dpiで8bit(256階調)のCMYK濃度データに変換する。次に、多値量子化処理32では、多値誤差拡散処理等を行うことにより、300dpiで8bit(256階調)のCMYK濃度データを、300dpiで4bit(17階調)のCMYK濃度データデータに量子化する。その後、ラスタ画像処理33により、インデックス処理33a、ラスタデータ圧縮処理33b、印刷ジョブデータ作成処理33cが実行される。
【0032】
インデックス処理33aでは、300dpiで4bit(17階調)のCMYK濃度データを、1200dpiで1bit(2階調)のCMYKの2値データに変換する。ラスタデータ圧縮処理33bでは、インデックス処理33aで作成された2値データをラスタ毎に圧縮する。印刷ジョブデータ作成処理33cでは、原画像の空白部分を検索して副走査方向移動コマンドを生成し、これを得られた圧縮データと組み合わせ、更に記録制御に関する様々な情報をヘッダ部分に付加する等して、印刷ジョブデータを作製する。そして、プリンタドライバ30は、このように作成された印刷ジョブデータを記録装置1001に転送する。
【0033】
印刷ジョブデータを受け取った記録装置1001は、圧縮されたラスタデータに対する伸張処理34を行い、復元されたラスタデータに対してマスク処理35を行う。これにより、各記録走査で記録すべき記録データが得られる。制御部2001は、このように作成された記録データと受信した副走査方向移動コマンド、及び印刷ジョブデータのヘッダ部分に付加されている情報に従って、記録動作を実行する。
【0034】
図4は、本実施例のインデックス処理33aで参照されるドット配置パターンを説明するための図である。左側に示すのは、インデックス処理33aに入力される17値の濃度データであり、右側に示すのは、夫々の濃度データに対応して変換されるドット配置パターンである。本実施例のインデックス処理33aでは、300dpiの17値の濃度データが1200dpiの2値データに変換されるので、17値の濃度データ夫々には記録(黒)/非記録(白)が定められた4×4画素のドット配置パターンが対応付けられている。以後、本明細書において、このようにインデックス処理に入力される画素(300dpi)を単位画素、インデックス処理後に記録/非記録が定められる画素(1200dpi)を記録画素として区別する。
【0035】
なお、本実施例では、同じ濃度データに対して、横方向に示す16種類のドット配置パターンを用意している。そして、同じ濃度値を有する単位画素が連続した場合であっても、記録画素のレベルでは記録(黒)の配置が偏らないように、複数のドット配置パターンが主走査方向に代わる代わる変換されるようにしている。ここでは1色分のドット配置パターンを示したが、互いに異なるドット配置パターンがインク色に応じて別々に用意されていてもよい。
【0036】
図5は、本実施例のマスク処理36で使用するマスクパターンの例を示す図である。本実施例で使用する記録ヘッド1003は副走査方向に1280個の記録素子が配列しており、マスクパターンは、記録素子夫々に対応する主走査方向に配列する複数の記録画素の記録の許容(黒)あるいは非許容(白)を定めている。
【0037】
ここでは、8パスのマルチパス記録を行う場合のマスクパターンを示している。8パスのマルチパス記録の場合、記録ヘッドに配列する1280個の記録素子は、160個ずつの8個の領域に分割して考えることが出来、分割領域の夫々には互いに補完関係のあるマスクパターンが宛がわれる。即ち、領域1にはマスクパターンAが、領域2にはマスクパターンBが、・・・領域8にはマスクパターンHが夫々宛がわれ、これらマスクパターンA〜Hは互いに補完関係を有している。記録媒体は、記録ヘッド1003による主走査が1回行われるたびに、1つ分の領域に相当する距離だけ矢印の方向に搬送される。これにより記録媒体の単位領域には、領域1〜領域8による8回の主走査によって、段階的に画像が記録される。
【0038】
本実施例のマスクパターンは、特許文献2の様に、インデックス処理で参照されるドット配置パターンと関連付けて作成されているので、マスクパターン自体も4×4の記録画素(太線で囲った大きさ)を単位とした大きさになっている。そして、インデックス処理によって変換された4×4記録画素のドット配置パターンが、マスクパターンの4×4記録画素の単位と一致することにより、個々の単位画素におけるインクの記録順序を制御するなど、特許文献2に記載の効果を実現することが可能となる。なお、ここでは1色分のマスクパターンを示したが、互いに異なるマスクパターンがインク色に応じて別々に用意されていてもよい。
【0039】
図6は、本実施例のラスタ画像処理33における1ページ分の処理の印刷ジョブデータを作成する工程を説明するためのフローチャートである。ラスタ画像処理33では、まず、ステップS51において、アプリケーションで作成された原画像を検索することにより、ページ頭に空白領域が存在するか否かを判断する。空白領域がありと判断した場合は、ステップS52に進み、空白領域に応じた量の搬送動作を実行させるべく副走査方向移動コマンドを作成する。一方、空白領域が存在しないと判断した場合は、ステップS53に進む。
【0040】
ステップS53では、原画像における最初の単位画素の行位置を検出し、その先頭ラスタの位置をインデックス開始位置として通知するコマンドを作成する。続くステップS54において、注目する行の単位画素に対するインデックス処理を実行する。すなわち、図4に示すドット配置パターンを参照することにより、注目する一行に配列する各単位画素が有する17値のデータを、4×4記録画素に対応する2値データに変換する。これにより、4ラスタ分のラスタデータが生成される。
【0041】
ステップS55では、処理対象となるラスタの位置を設定する。ステップS54のインデックス処理の直後にこのステップ55に来た場合は、対象となるラスタはインデックス処理された4ラスタのうち先頭のラスタとなる。その後、ステップS56にて、設定されたラスタの2値データを圧縮し、1ラスタ分の圧縮データを作成する。
【0042】
ステップS57では、現在処理中のラスタが、ステップS54でインデックス処理されたラスタのうち最後のラスタであるか否かを確認する。4×4記録画素のインデックス処理を行う本実施例では、4ラスタ目が最後のラスタとなる。そして、現在処理中のラスタが最後のラスタでない場合には、ステップS55に戻り、処理対象となるラスタを次のラスタに移す。一方、現在処理中のラスタが最後のラスタであると判断した場合はステップS58に進む。
【0043】
ステップS58では、まだインデックス処理を行っていない次の行に画像データが存在するか否かを判断する。ここで、次の行に画像データが存在しないと判断した場合は、ステップS59へ進み、画像データが存在する行までの距離に相当する副走査移動コマンドを作成する。そして、次に画像データが存在する行を検索しこれを注目行とする。一方、ステップS58において次の行に画像データが存在すると判断した場合は、当該次の行を注目行としてステップS60へ進む。
【0044】
ステップS60では、注目行が本ページ内に位置するか否かを確認する。注目行が本ページ内に位置すると確認した場合は、注目行のインデックス処理を行うために、ステップS53に戻る。一方、注目行が本ページ内に位置しないと判断した場合は、本ページにおける処理を終了する。
【0045】
図7は、本実施例の記録装置1001の制御部2001が、1ページ分の印刷ジョブデータに従って、記録動作を行うためのコマンドを作成する工程を説明するためのフローチャートである。制御部2001は、受け取った印刷ジョブデータをストレージ2012に確保しつつ、このジョブデータに記憶されたデータを先頭から検索して、各種コマンドや画像データの展開を行う。
【0046】
まず、ステップS61において、制御部2001は印刷ジョブデータの先頭が副走査方向移動コマンドであるか否かを判断する。副走査方向移動コマンドであると判断した場合は、ステップS62に進み、当該コマンドに従って、メカ制御部2009に実行させるための搬送コマンド生成を行う。ここで展開する。副走査方向移動コマンドは、図6のフローチャートにおけるステップS52で生成された副走査方向移動コマンドに相当する。
【0047】
ステップS63では、印刷ジョブデータの次のデータがインデックス開始位置コマンドであるか否かを判断する。インデックス開始位置コマンドであると判断した場合はステップS64に進み、インデックス開始位置が設定されたラスタ位置にマスクパターンの先頭を一致させるように、マスクパターン(記録ヘッドの位置)を配置する。ここで展開するインデックス開始位置コマンドは、図6のステップS53で生成されたインデックス開始位置コマンドに相当する。一方、ステップ63で、次のデータがインデックス開始位置コマンドではないと判断した場合は、ステップS65へジャンプする。
【0048】
ステップS65では次のデータが圧縮されたラスタデータであるのか、あるいは副走査方向移動コマンドであるのかを判断する。ラスタデータであると判断した場合はステップS66へ進み、圧縮されたデータを伸張し1ラスタ分のラスタデータを復元する。一方、次のデータが副走査方向移動コマンドであると判断した場合はステップS67へ進む。
【0049】
ステップS67では、副走査方向移動コマンドから移動量を取得し、移動先のラスタ位置がステップS64で設定したマスクパターンの分割領域からはみ出すか否かを判断する。はみ出すと判断した場合はステップS68に進み、上記移動量に従ってメカ制御部2009に実行させるための搬送コマンド生成を行う。このときの搬送は正方向搬送すなわちラインフィードとなる。一方、移動先のラスタ位置がステップS64で設定したマスクパターンの分割領域からはみ出さないと判断した場合は、ステップS69に進む。ステップS69では、移動先のラスタ位置がマスクパターンの分割領域の先頭に位置するように、メカ制御部2009に実行させるための搬送コマンド生成を行う。結果的にこのときの搬送コマンドは、バックフィードを指示するためのコマンドになる。なお、ステップS67〜ステップS69で展開するコマンドデータは、図6のフローチャートにおけるステップS59で生成された副走査方向移動コマンドに相当する。
【0050】
続くステップS70では、上記ステップS65〜S69で展開したコマンドデータが、印刷ジョブデータの最後のコマンドデータであるか否かを判断する。そして、まだ処理すべきコマンドデータが残っていると判断した場合はステップS63に戻り、次のコマンドデータのための処理を開始する。一方、もう処理すべきコマンドデータは残っていないと判断した場合は、本処理を終了する。
【0051】
図8(a)〜(d)は、アプリケーションで作成した画像例と、この画像に対して本実施例の処理を施した場合の、画像の変換状態の様子を説明するための図である。
【0052】
図8(a)は、ホスト装置のアプリケーションで作成した画像の一例を示している。ここでは、ページの先頭に位置する画像領域701とページの後端に位置する画像領域702が、1358ラスタに相当する空欄704を隔てて配置されている状態を示している。画像領域701および702のそれぞれは、300dpiの解像度で配列する複数の単位画素703で構成され、個々の単位画素は0〜16の17値の階調値を有している。本例では、画像領域701も画像領域702も副走査方向に30行分の単位画素を有しているものとする。
【0053】
図8(b)は、同図(a)で示した画像に対し本実施例のラスタ画像処理でインデックス処理を行った結果を示す図である。図4に示したドット配置パターンを参照することにより、それぞれの単位画素703は、4×4記録画素で構成されるドット配置パターン705に変換される。これにより、300dpiの単位画素で構成されていた画像領域701および702は、1200dpiの記録画素で構成される120ラスタの画像領域に変換される。この際、画像領域701のインデックス開始位置はページ内の先頭ラスタとなり、画像領域702のインデックス開始位置は先頭から1478(=120+1358)番目のラスタとなる。
【0054】
図8(c)は、同図(b)で示したインデックス処理後の画像を用いて本実施例のラスタ画像処理が作成した印刷ジョブデータの構成を説明するための模式図である。図8(b)で示したインデックス展開や当該ジョブデータの作成は、図6で示したフローチャートに従って徐々に行われていく。なお、印刷ジョブデータの先頭には、マルチパス数や記録媒体のサイズや種類など記録制御に係る様々な情報が、ヘッダとして付加されているのが通常であるが、ここではヘッダ部分を取り除いて示している。
【0055】
まず、本例の場合、印刷ジョブデータの先頭には、画像領域701のインデックス開始位置を通知するインデックス開始位置コマンド901が記載されている。これは、図6で示したフローチャートのステップS53で作成されたコマンドに相当する。本例では、ページ先頭に空欄部分が存在しないので、このように印刷ジョブデータの先頭がインデックス開始位置コマンド901になっている。しかし、もし空欄部分が存在した場合には、その幅に相当する副走査方向移動コマンドがステップS52で作成され、印刷ジョブデータの先頭に記載される。
【0056】
インデックス処理開始位置コマンド901に続く領域902には、画像領域701に含まれるラスタデータが、先頭ラスタから順番に記載されている。この際各ラスタデータは、ステップS66で圧縮された状態で記載されている。
【0057】
画像領域701の圧縮ラスタデータ902に続く領域には、ステップS59で作成された副走査方向移動コマンド903が記載されている。すなわち、本例の場合には1538ラスタ分の副走査方向移動コマンドが記載されている。
【0058】
続く領域には、画像領域702のインデックス開始位置のラスタ位置を通知するインデックス開始位置コマンド904が記載されている。このコマンドも、画像領域701と同様にステップS53で作成される。副走査方向移動コマンド903を挟んでインデックスの開始位置を通知する当コマンドにおいては、再度図8(b)を参照するに、先頭に位置する画像領域701の120ラスタと副走査方向移動の1358ラスタを加算した1478ラスタを、通知する内容となる。
【0059】
画像領域702に対するインデックス処理開始位置コマンド904に続く領域905には、画像領域702に含まれるラスタデータの圧縮データが、先頭ラスタから順番に記載されている。
【0060】
図8(d)は、同図(c)のように構成された印刷ジョブデータを受信した記録装置の制御部2001が、当該印刷ジョブデータを展開してマスク処理のために所定のマスクパターンを配置させる状態を示す図である。図8(d)で示した印刷ジョブデータの展開やマスクパターンの配置は、制御部2001が図7で示したフローチャートに従って行う。
【0061】
制御部2001は、図8(c)に示す印刷処理データを先頭から検索し、先頭コマンドがインデックス開始位置コマンド901であることを確認すると、その開始位置の先頭ラスタに所定のマスクパターンの先頭の記録画素を一致させるように配置する。すなわち、本例の場合は、ページ先頭のラスタにマスクパターンの先頭の記録画素を一致させるように、図5で示したマスクパターンを配置する。図8(d)では、画像領域701に対して宛がったマスクパターン領域を801として示している。図4で示すドット配置パターンの先頭の記録画素の位置と、図5で示すマスクパターンの先頭の記録画素の位置が、同じ先頭ラスタ803で一致しているのが判る。
【0062】
画像領域702については、画像領域702のインデックス開始位置コマンド904で設定されたラスタ(1475番目のラスタ)に、マスクパターンの先頭の記録画素を一致させるように、図5で示したマスクパターンを配置する。図8(d)では、画像領域702に対して宛がったマスクパターン領域を802として示している。図4で示すドット配置パターンの先頭の記録画素の位置と、図5で示すマスクパターンの先頭の記録画素の位置が、1478番目のラスタ804で一致しているのが判る。
【0063】
制御部2001は、インデックス開始位置コマンド901の次に記載されている画像領域701の圧縮ラスタデータ902をラスタごとに伸張し、マスクパターン領域801と同じ領域に画像領域701を復元する。また、インデックス開始位置コマンド904の次に記載されている画像領域702の圧縮ラスタデータ905をラスタごとに伸張し、マスクパターン領域802と同じ領域に画像領域702を復元する。このように復元されたラスタデータと配置されたマスクパターンとの間で、記録画素毎に論理積演算を行うことにより、個々の記録走査で実際に吐出を行う記録画素の位置が確定する。そして、このようにして記録が行われた画像においては、互いに関連付けて作成されているドット配置パターンとマスクパターンの位置関係が崩れることがないので、単位画素におけるインクの記録順序を一定に保つなどの制御を確実に行うことが出来る。
【0064】
図9(a)〜(d)は、アプリケーションで作成した別の画像例についての、本実施例における処理の様子を説明するための図である。ここでは、ページの先頭に位置する画像領域101とこれに続く画像領域102との間に、30ラスタに相当する空欄103が存在している。本例においても、画像領域101と画像領域102は副走査方向に30行分の単位画素を有している。
【0065】
この場合、図9(c)で示す副走査方向移動コマンド203には、30ラスタ分の移動が指示されている。また、画像領域102のインデックス開始位置のラスタ位置を通知するコマンド204には、画像領域101の120ラスタと副走査方向移動の30ラスタを加算した150ラスタ目が指示されている。
【0066】
このような画像に対し記録動作を行う場合、画像領域101と画像領域102のインデックス開始位置は、記録ヘッドの同じ分割領域に配置される。すなわち、画像領域101と画像領域102の先頭部分は、記録ヘッドの同じ主走査で記録可能な位置にある。しかしながら、図5で示すような本実施例のマスクパターンを使用すると、30ラスタ分の空欄によって、画像領域102の先頭とマスクパターンの4×4画素の先頭にずれが生じてしまう。
【0067】
よって、本実施例では、このような画像領域とマスクパターンのずれを含んだ状態での記録を回避するために、画像領域101と画像領域102を異なる主走査で記録する。具体的には、図9(d)を参照するに、記録ヘッドは矢印503で示す位置に分割領域の1つを合わせた状態の主走査で、画像領域101に対する記録は行うが、画像領域102に対する記録は行わない。そして、画像領域101に対する記録が完了した後に、画像領域102のインデックス開始位置コマンド204を利用して、記録媒体のバックフィードを行い(ステップS70)、記録ヘッドの分割領域の先頭を、画像領域102の先頭ラスタ501に一致させる。その後、記録ヘッドは矢印504で示す位置において画像領域102のための主走査を実行する。このようにすれば、画像領域101および画像領域102のどちらにおいても、ドット配置パターンとマスクパターンの位置関係が崩れることはなく、個々の単位画素におけるインクの記録順序を制御することが可能となる。
【0068】
図10(a)〜(d)は、アプリケーションで作成した更に別の画像例についての、本実施例における処理の様子を説明するための図である。ここでは、ページの先頭に位置する画像領域301とこれに続く画像領域302との間に、40ラスタに相当する空欄303が存在している。本例においても、画像領域301と画像領域302は副走査方向に30行分の単位画素を有している。
【0069】
本例の場合、上記例と同様に画像領域302のためのインデックス開始位置コマンドを作成してもよい。しかし、40ラスタに相当する空欄303は4の倍数になっていることから、画像領域302のために新たに副走査方向移動コマンドを作成しなくても、画像領域302と画像領域301に合わせて配置したマスクパターンとの間でずれは生じない。よって、図10(c)では、画像領域302のための副走査方向移動コマンドを記載しない印刷ジョブデータの例を示している。図6で示したフローチャートでは、このように空欄のラスタ数が4の倍数であるか否かを判断する工程は特に設けてはいないが、このような判断を行うことにより、制御部2001におけるマスク処理をより簡略にすることが出来る。
【0070】
以上説明した様に本実施例によれば、画像領域ごとにインデックス開始位置を通知するコマンドを発信することにより、ドット配置パターンとマスクパターンの位置関係の崩れを回避し、単位画素におけるインクの記録順序の制御などを確実に行うことが可能となる。
【0071】
なお、使用するドット配置パターンによっては、例えば図10(b)のように、非記録画素ばかりが連続するラスタ305が存在する状況もありうる。このような場合、ラスタ画像処理プログラムによっては、実際の空欄部分303が40ラスタであるのにもかかわらず、非記録画素ばかりが連続するラスタ305も空欄部分に含めて判断し、副走査方向移動コマンドの移動量304に加えてしまう状況も考えられる。しかし、本実施例のように、インデックス開始位置の情報を正確に記録装置に伝える構成を有していれば、ドット配置パターンとマスクパターンの位置関係が崩れることを回避することが出来る。
【0072】
(実施例2)
実施例1では、図5に示したように、記録ヘッドの記録素子それぞれに対し固定された構成のマスクパターンを用いる記録装置を例に説明した。よって、図9(a)に示しように、2つの画像領域の間の距離が短くても、その距離がドット配置パターンの整数倍(4の倍数)になっていない場合には、2つの画像領域をバックフィードを介在した異なる主走査で記録を行った。
【0073】
これに対し、本実施例の記録装置では、記録素子のそれぞれに対し、記録走査ごとにマスクパターンを設定できる構成の記録装置を用いる。
【0074】
図11は、本実施例における画像記録システムの制御の構成を説明するためのブロック図である。元マスクRAM2013およびマスクDMA2014以外の構成は実施例1と同様であるので説明は省略する。元マスクRAM2013は、現行のジョブで使用するマスクパターンが、図5と同様の構成で一時的に格納されるメモリである。また、マスクDMA2014は、元マスクRAM2013に格納されているマスクパターンを基に、ダイレクトメモリアクセスしながら、マスクRAM2011にマスクパターンを作成する機能を有する。より具体的には、マスクDMA2014は、制御部2001の指示に従い、主走査ごとに、記録素子それぞれに対するマスクパターンを、元マスクRAM2013に格納されているマスクパターンの中から抜き出してマスクRAM内に書き換える作業を行う。
【0075】
図12は、マスクDMA2014が、元マスクRAM2013からマスクパターンを抜き出してマスクRAM2011にマスクデータを保存する動作を説明する模式図である。マスクDMAは、1ラスタ毎に元マスク2013からマスクRAM2011にマスクデータを転送することが出来る。図12の例では、元マスクRAM2013に格納されている先頭の120ラスタ分のマスクデータを、マスクRAM2011の1ラスタ目〜120ラスタ目と、151ラスタ目〜270ラスタ目に複写する様子を示している。120ラスタずつ設定された2つのマスクデータの間には30ラスタ分の隙間が生じ、この領域は全て記録が許容されない領域(0)に設定する。このように作成されたマスクパターンを使用すれば、図9(a)のように2つの画像領域の間の距離(30ラスタ)がドット配置パターンの整数倍(4の倍数)になっていなくても、2つの画像領域を同じ主走査で記録することが可能となる。
【0076】
図13は、本実施例の制御部2001が、1ページ分の印刷ジョブデータに従って、記録動作を行うためのコマンドを作成する工程を説明するためのフローチャートである。本図において、図7で示した実施例1のフローチャートと異なる点は、ステップS80である。本実施例では、移動先のラスタ位置がステップS64で設定したマスクパターンの分割領域からはみ出すか否かを判断する。移動先のラスタが現在のマスクパターンの分割領域からはみ出さないと判断した場合、移動先のラスタ以降に対応するマスクRAM2011内の領域に、非記録許容領域を設定する(ステップS80)。そして、移動先のラスタに元マスクRAMに格納されているマスクパターンの先頭が位置するように、マスクDMAにマスクRAM内のマスクパターンを設定させる(ステップS64)。このような本実施例の構成であれば、2つの画像領域を実施例1のように別々の主走査で記録する必要はなく、同じ主走査で記録することが可能となる。
【0077】
図14は、本実施例の制御部2001が、図9(c)に示す印刷ジョブデータを受信した際に作成するマスクパターンの配置状態を説明するための図である。本実施例では、記録ヘッドの分割領域が矢印505で示す位置にある時の主走査で、画像領域102に対する記録を同時に行うことが出来る。すなわち、画像領域101と画像領域102との間にバックフィードを必要とせず、両者を同じ主走査で連続的に記録することが出来る。更に、次の主走査については、ステップS64で設定したマスクパターンが連続するようにマスクRAM内のマスクパターンを設定することにより、記録ヘッドが矢印506で示す位置にて主走査を継続することが出来る。結果、実施例1に比べて、より短時間にページ内の記録を完了させることが可能となる。
【0078】
(その他の実施形態)
上記実施例では、特許文献2に倣い、図4のような記録(1)を示す記録画素の配置に偏りを有する、ドット配置パターンを使用する例で説明した。特許文献2では、このような偏りを有するドット配置パターンと偏りを有さないドット配置パターンを異なるインクで使用し、更に夫々のドット配置パターンとマスクパターンを関連付けることによって、2種類のインクの記録媒体に付与する順序を制御している。しかし、本発明は図4に示したような4×4記録画素を単位とするドット配置パターンに限定されるものではない。例えば、単位画素は、3×3記録画素や5×5記録画素のように、他の大きさで構成されていても、これら大きさを単位としてマスクパターンが構成されていればよい。また、ドット配置パターンとマスクパターンを関連付けることによって制御可能な項目についても、インクの付与順序に限るものではない。いかなる項目を制御するためであろうと、ドット配置パターンとマスクパターンとが単位画素を基準に関連付けて構成されていれば、これらの間にずれが起きることを回避することは要され、これを実現可能な本発明は有効に機能する。
【0079】
また、上記実施例では、図1に示したような大判の記録媒体にも記録可能なインクジェット記録装置1001を例に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。記録方式は、電子写真方式でも、サーマルヘッド方式でも、昇華型でもよく、装置の形態は、デスクトップ型のカセット給紙や手差し給紙、さらには複数の給紙段を有する記録装置であってもよい。また、記録装置の機能だけでなく、スキャナやFAXと組み合わされた多機能型の複合機であっても構わない。また、図1では、ホスト装置1008と記録装置1001とがLANケーブル1007を介して接続される構成としたが、USBやIEEE1394、或いはes−ATA等のような、他の方式で接続される構成であっても、本発明は有効である。
【符号の説明】
【0080】
33 ラスタ画像処理
33a インデックス処理
33b ラスタデータ圧縮処理
33c 印刷ジョブデータ作成処理
34 ラスタデータ伸張処理
35 マスク処理
701 単位画素
705 ドット配置パターン
901 インデックス開始位置コマンド
902 圧縮データ
903 副走査方向移動コマンド
904 インデックス開始位置コマンド
905 圧縮データ
1001 記録装置
1006 記録ヘッド
1002 記録媒体
1008 ホスト装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像の画像データに従って印刷ジョブデータを作成するホスト装置と、前記印刷ジョブデータに従った記録ヘッドの主走査と該主走査と交差する方向に記録媒体を搬送する搬送動作を繰り返すことによって記録媒体に画像を記録する記録装置、から構成される画像記録システムであって、
前記ホスト装置は、
前記画像データから得られる多値の濃度データを有する単位画素を、ドットの記録/非記録を定める2値データを有する複数の記録画素に変換するインデックス処理を実行する手段と、
前記インデックス処理を開始したラスタの位置を通知するインデックス開始位置コマンドを作成する手段と、
前記2値データをラスタごとに圧縮して圧縮データを作成する手段と、
前記原画像の画像データの前記副走査方向の空欄部分に応じて、副走査方向移動コマンドを作成する手段と、
前記インデックス開始位置コマンドと前記圧縮データおよび前記副走査方向移動コマンドを用いて前記印刷ジョブデータを作成する手段と、
を備え、
前記記録装置は、
前記印刷ジョブデータを受信し、前記インデックス開始位置コマンドに従って、ドットの記録の許容あるいは非許容を前記記録画素ごとに定めるマスクパターンを配置する手段と、
前記圧縮データを伸張する手段と、
前記副走査方向移動コマンドに従って、記録媒体を副走査方向に搬送するための搬送コマンドを作成する搬送コマンド生成手段と、
を備えることを特徴とする画像記録システム。
【請求項2】
前記搬送コマンド生成手段は、前記副走査移動コマンドが指示する移動量に応じて前記記録媒体をバックフィードしたりラインフィードしたりするための搬送コマンドを作成することを特徴とする請求項1に記載の画像記録システム。
【請求項3】
前記記録装置は、前記インデックス開始位置コマンドによって指示されたラスタの位置に応じて、前記記録ヘッドを配置して前記主走査を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録システム。
【請求項4】
前記記録ヘッドは、前記インデックス開始位置コマンドによって指示されたラスタの位置に応じて、前記記録ヘッドに配置された複数の記録素子夫々に対応するマスクパターンを配置することを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録システム。
【請求項5】
前記記録ヘッドが1回の主走査で記録可能な記録媒体の領域を、前記マスクパターンに従った複数の主走査によって記録することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像記録システム。
【請求項6】
ホスト装置が原画像の画像データに従って印刷ジョブデータを作成し、該印刷ジョブデータを受信した記録装置が前記印刷ジョブデータに従った記録ヘッドの主走査と該主走査と交差する方向に記録媒体を搬送する搬送動作を繰り返すことによって記録媒体に画像を記録するための画像処理方法であって、
前記画像データから得られる多値の濃度データを有する単位画素を、ドットの記録/非記録を定める2値データを有する複数の記録画素に変換するインデックス処理を実行する工程と、
前記インデックス処理を開始したラスタの位置を通知するインデックス開始位置コマンドを作成する工程と、
前記2値データをラスタごとに圧縮して圧縮データを作成する工程と、
前記原画像の画像データの前記副走査方向の空欄部分に応じて、副走査方向移動コマンドを作成する工程と、
前記インデックス開始位置コマンドと前記圧縮データおよび前記副走査方向移動コマンドを用いて前記印刷ジョブデータを作成する工程と、
を前記ホスト装置に実行させ、
前記印刷ジョブデータを受信する工程と、
前記インデックス開始位置コマンドに従って、ドットの記録の許容あるいは非許容を前記記録画素ごとに定めるマスクパターンを配置する工程と、
前記圧縮データを伸張する工程と、
前記副走査方向移動コマンドに従って、記録媒体を副走査方向に搬送するための搬送コマンドを作成する工程と、
を前記記録装置に実行させることを特徴とする画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−136485(P2011−136485A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298152(P2009−298152)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】