説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】 画像品質評価用画像を視認しやすくすることで画像品質の良否を簡単に判断することができる画像形成装置および画像形成方法を提供する。
【解決手段】 記録材であるシートの片面Saに、画質確認の対象とするトナー色での画質評価用画像Iaを形成する。これに先立って、シートの反対面Sbの画質評価用画像に対応する位置には、画質評価用画像Iaの外縁よりも広がった背景用画像Ibを形成しておく。このように、画質評価用画像Iaの背面に予めトナーを付着させておくことによって、画質評価用画像Iaに生じうる画像欠陥はより高い頻度で現れることとなり、画質評価が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トナーを使用して画像を形成する画像形成装置において、画像品質を評価するための画像を形成する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機およびファクシミリ装置などトナーを使用して画像を形成する画像形成装置では、装置を使用するにつれて、例えば装置の劣化やトナーの残量低下など装置の状態変化に起因する画像品質の劣化が発生する。このような場合に直ちに画像の形成を禁止すればさらなる画像品質の劣化は防止される。しかし、画像品質が多少劣化した状態であっても、ユーザは引き続き画像形成を行いたい場合もある。このような要求に応えるため、例えば、特許文献1に記載の印刷装置では、トナー残量が第1所定値を下回ったときには、印刷物がかすれる可能性がある旨のメッセージを表示することでユーザに対し警告を行いつつ、少なくとも現在処理途中の印刷ジョブデータについては、ユーザの操作に応じて印刷物として出力できるようにしている。こうしてユーザの上記要求に応えることを可能とし、ユーザにとっての利便性を高めることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−196628号公報(例えば、段落0033)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像品質の劣化がどの程度まで許容されるかは、ユーザの意向により、また画像の種類により異なる。したがって、最終的にはユーザが画像品質の良否を判断することができるのが望ましい。これを可能とするために、例えば、画像品質評価用の適宜のテストパターンを紙などの記録材上に形成し出力することが考えられる。しかしながら、専門的知識を持たない一般ユーザにとっては、目視による画像品質の評価作業は必ずしも容易でない。そこで、画像品質評価用として出力される画像のパターンを工夫することで、専門的知識を持たなくても簡単に画像品質の良否を評価できるような技術を確立することが望まれるが、このような技術についてはこれまで十分に検討されていなかった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、画像品質評価用画像を視認しやすくすることで画像品質の良否を簡単に判断することができる画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、記録材の両面に画像を形成可能な画像形成装置において、上記目的を達成するため、トナーを貯留するトナー貯留手段と、前記トナー貯留手段に貯留されたトナーを使用して前記記録材上に画像を形成する像形成手段とを備え、前記像形成手段は、前記記録材の主面のうち第1面に所定の背景用画像を形成し、次いで前記記録材の前記第1面とは反対の第2面のうち前記背景用画像に対応する位置に、画像品質を評価するための画質評価用画像を形成することを特徴としている。
【0007】
また、この発明は、記録材の両面に画像を形成可能な画像形成装置における画像形成方法であって、上記目的を達成するため、前記記録材の主面のうち第1面に所定の背景用画像を形成する背景用画像形成工程と、前記背景用画像を形成された前記記録材の前記第1面とは反対の第2面のうち前記背景用画像に対応する位置に、画像品質を評価するための画質評価用画像を形成する画質評価用画像形成工程とを有することを特徴としている。
【0008】
この種の画像形成装置では、記録材の両面に画像を形成する場合、先に画像を形成される記録材の第1面よりも、後から画像を形成される第2面において記録材へのトナーの転写効率が低下する。したがって、画質を低下させる原因となるかすれや濃度ムラなどの画像欠陥は、記録材の第2面においてより発生しやすい。このため、第1面に形成された画像によって画質の評価を行った場合、第2面において発生しうる画像欠陥を見落としてしまうおそれがある。そこで、この発明では、先に画像を形成される第1面に予め背景用画像を形成しておき、画像欠陥をより生じやすい第2面に画質評価用画像を形成する。こうすることで、画質評価用画像に生じうる画像欠陥の視認しやすさ(視認性)を向上させることができ、画像品質の良否判断を容易にすることができる。
【0009】
ここで、互いに異なる複数のトナー色それぞれに対応した複数のトナー貯留手段を備える画像形成装置においては、例えば、前記複数のトナー色のうち一のトナー色で前記画質評価用画像を形成するとともに、該画質評価用画像とは異なる色で前記背景用画像を形成するようにしてもよい。この場合において、背景用画像については、必ずしも1つのトナー色による単色画像とする必要はなく、2以上のトナー色による混色画像としてもよい。
【0010】
本願発明者の知見によれば、第2面における転写効率の低下は、トナー画像を転写されるべき記録材の第2面の反対面である第1面に付着したトナーが転写を阻害することによって起こると考えられる。また、その阻害の程度についてトナー色による明らかな差異は認められない。したがって、背景用画像をどの色で形成しても本発明の効果を同様に得ることができる。しかしながら、画質評価用画像と同色とした場合には、特にある程度の光透過性を有している記録材が用いられたときに背面の画像が透けて見えることとなり、画質評価用画像の視認性を妨げてしまう。これを防止するためには、背景用画像と画質評価用画像とは異なる色とするのが好ましい。
【0011】
このとき、背景用画像を画質評価用画像よりも視認しやすい色(例えばより光吸収率の高いトナー色)で形成すれば、背景用画像が画質評価用画像の背面からの光を遮る効果を奏するので、特に視認しにくいトナー色の画質評価用画像についてその視認性を向上させることができる。また、画質評価用画像を背景用画像よりも視認しやすい色で形成した場合には、背景用画像の色が画質評価用画像の視認性に及ぼす影響が少なくなる。このことは、特にもともと視認しやすいトナー色(例えばブラック色)については好都合である。
【0012】
なお、背景用画像を形成することによって一定量のトナーを消費してしまう。そこで、背景用画像を形成するためのトナー色としては、例えば、前記画質評価用画像を形成するトナー色とは異なるトナー色のうち、トナー残量が最も多いトナー色を用いるようにしてもよい。こうすることで、残量が少なくなった色のトナーの浪費が防止される。また、画質評価用画像の色に応じて背景用画像の色を定める上記例のように、画質評価用画像を形成するトナー色とは異なる複数トナー色のうちの一部から背景用画像のトナー色を選択する場合には、その候補となるトナー色の中でトナー残量が最も多いものを使用するようにしてもよい。
【0013】
また、前記背景用画像は、前記記録材の前記第1面のうち、後に第1面に形成する前記画質評価用画像に対応する領域の全体を覆うように形成するのが好ましい。というのは、画質評価用画像の内部でその背面に背景用画像がある部分とない部分とが混在していたのでは画像品質の確認が難しくなるからである。
【0014】
また、前記画質評価用画像および前記背景用画像の形成は、前記トナー貯留手段に貯留されたトナー残量が所定の基準値以下であるときに、必要に応じてなされるのが好ましい。トナー残量が低下してくると、かすれや濃度ムラなどの画像欠陥が生じやすくなるから、このような場合に、上記のように記録材上に画質評価用画像および背景用画像を形成し、それによって画像品質の確認を行うようにすれば、その後に形成される画像の品質をより的確に予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1はこの発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナー(現像剤)を重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像信号がメインコントローラ11に与えられると、このメインコントローラ11からの指令に応じてエンジンコントローラ10に設けられたCPU101がエンジン部EG各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、シートSに画像信号に対応する画像を形成する。
【0016】
このエンジン部EGでは、感光体22が図1の矢印方向D1に回転自在に設けられている。また、この感光体22の周りにその回転方向D1に沿って、帯電ユニット23、ロータリー現像ユニット4およびクリーニング部25がそれぞれ配置されている。帯電ユニット23は所定の帯電バイアスを印加されており、感光体22の外周面を所定の表面電位に均一に帯電させる。クリーニング部25は一次転写後に感光体22の表面に残留付着したトナーを除去し、内部に設けられた廃トナータンクに回収する。これらの感光体22、帯電ユニット23およびクリーニング部25は一体的に感光体カートリッジ2を構成しており、この感光体カートリッジ2は一体として装置本体に対し着脱自在となっている。
【0017】
そして、この帯電ユニット23によって帯電された感光体22の外周面に向けて露光ユニット6から光ビームLが照射される。この露光ユニット6は、外部装置から与えられた画像信号に応じて光ビームLを感光体22上に露光して画像信号に対応する静電潜像を形成する。
【0018】
こうして形成された静電潜像は現像ユニット4によってトナー現像される。すなわち、この実施形態では、現像ユニット4は、図1紙面に直交する回転軸中心に回転自在に設けられた支持フレーム40、支持フレーム40に対して着脱自在のカートリッジとして構成されてそれぞれの色のトナーを内蔵するイエロー用の現像器4Y、シアン用の現像器4C、マゼンタ用の現像器4M、およびブラック用の現像器4Kを備えている。この現像ユニット4は、エンジンコントローラ10により制御されている。そして、このエンジンコントローラ10からの制御指令に基づいて、現像ユニット4が回転駆動されるとともにこれらの現像器4Y、4C、4M、4Kが選択的に感光体22と当接してまたは所定のギャップを隔てて対向する所定の現像位置に位置決めされると、当該現像器に設けられて選択された色のトナーを担持する現像ローラ44が感光体22に対し対向配置され、その対向位置において現像ローラ44から感光体22の表面にトナーを付与する。これによって、感光体22上の静電潜像が選択トナー色で顕像化される。
【0019】
上記のようにして現像ユニット4で現像されたトナー像は、一次転写領域TR1で転写ユニット7の中間転写ベルト71上に一次転写される。転写ユニット7は、複数のローラ72〜75に掛け渡された中間転写ベルト71と、ローラ73を回転駆動することで中間転写ベルト71を所定の回転方向D2に回転させる駆動部(図示省略)とを備えている。そして、カラー画像をシートSに転写する場合には、感光体22上に形成される各色のトナー像を中間転写ベルト71上に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、カセット8から1枚ずつ取り出され搬送経路Fに沿って二次転写領域TR2まで搬送されてくるシートS上にカラー画像を二次転写する。
【0020】
このとき、中間転写ベルト71上の画像をシートS上の所定位置に正しく転写するため、二次転写領域TR2にシートSを送り込むタイミングが管理されている。具体的には、搬送経路F上において二次転写領域TR2の手前側にゲートローラ81が設けられており、中間転写ベルト71の周回移動のタイミングに合わせてゲートローラ81が回転することにより、シートSが所定のタイミングで二次転写領域TR2に送り込まれる。
【0021】
また、こうしてカラー画像が形成されたシートSは定着ユニット9によりトナー像を定着され、排出前ローラ82および排出ローラ83を経由して装置本体の上面部に設けられた排出トレイ部89に搬送される。また、シートSの両面に画像を形成する場合には、上記のようにして片面に画像を形成されたシートSの後端部が排出前ローラ82後方の反転位置PRまで搬送されてきた時点で排出ローラ83の回転方向を反転し、これによりシートSは反転搬送経路FRに沿って矢印D3方向に搬送される。そして、ゲートローラ81の手前で再び搬送経路Fに乗せられるが、このとき、二次転写領域TR2において中間転写ベルト71と当接し画像を転写されるシートSの面は、先に画像が転写された面とは反対の面である。このようにして、シートSの両面に画像を形成することができる。
【0022】
また、ローラ75の近傍には、クリーナ76が配置されている。このクリーナ76は図示を省略する電磁クラッチによってローラ75に対して近接・離間移動可能となっている。そして、ローラ75側に移動した状態でクリーナ76のブレードがローラ75に掛け渡された中間転写ベルト71の表面に当接し、二次転写後に中間転写ベルト71の外周面に残留付着しているトナーを除去する。
【0023】
また、この装置1では、図2に示すように、メインコントローラ11のCPU111により制御される表示部12を備えている。この表示部12は、例えば液晶ディスプレイにより構成され、CPU111からの制御指令に応じて、ユーザへの操作案内や画像形成動作の進行状況、さらに装置の異常発生やいずれかのユニットの交換時期などを知らせるための所定のメッセージを表示する。
【0024】
なお、図2において、符号113はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像を記憶するためにメインコントローラ11に設けられた画像メモリである。また、符号106はCPU101が実行する演算プログラムやエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶するためのROM、また符号107はCPU101における演算結果やその他のデータを一時的に記憶するRAMである。
【0025】
さらに、符号200はトナー消費量を求めるためのトナーカウンタである。このトナーカウンタ200は、画像形成動作の実行に伴って消費されるトナーの量を各トナー色毎に計算し記憶する。トナー消費量の計算方法は任意であり種々の公知技術を適用することができる。例えば、外部装置から入力された画像信号を解析して各トナー色ごとのトナードットの形成個数をカウントし、そのカウント値からトナー消費量を計算することができる。
【0026】
そして、CPU101は、トナーカウンタ200により求められた各色ごとのトナー消費量を各現像器4Y等に貯留されたトナー量の初期値から減算することにより、各時点における現像器内のトナー残量を把握する。そして、必要に応じて、各色ごとのトナー残量やトナー切れの発生などをユーザに知らせるためのメッセージを表示部12に表示させる。
【0027】
具体的には、いずれかの現像器におけるトナー残量が所定の基準値以下となった場合には、当該トナー色について現像器を交換すべき時期が近づいていることを示すメッセージを表示(以下、「ニアエンド表示」という)する。この場合の基準値は、トナー残量がこの基準値にまで低下した状態で画像形成を行っても所定の画像品質が維持されるような値に設定される。ニアエンド表示を行うことにより、トナー切れによる著しい画質劣化が生じる前に新たな現像器を用意するための時間的余裕がユーザに与えられる。
【0028】
トナー残量がさらに低下し画像品質の劣化が大きいと想定されるレベルに達すると、CPU101は、当該現像器の交換を促すメッセージを表示し(以下、「エンド表示」という)、以後の画像形成動作を禁止する。こうすることで、画像品質の著しく劣る画像が形成されるのを防止する。ただし、トナーをできるだけ使い切りたいユーザや、画質の劣化を許容して画像を形成したいユーザの要求に応えるため、ユーザの操作によってこの禁止を解除することができるようにしてもよい。
【0029】
ニアエンド表示がなされてからエンド表示がなされるまでの間は、トナー残量の低下に伴い画像の品質劣化を生じる可能性が次第に高くなる。このような画質劣化がどの程度まで許容されるかは、ユーザの要望によって、また形成する画像の種類によって異なる。したがって、どのタイミングで現像器を交換すべきかについてトナー残量から一義的に求めることは困難である。そこで、この実施形態では、ニアエンド表示がなされて以降、ユーザからの要求があった場合には、所定パターンの画像を含むステータスシートを出力し、ユーザに画質の確認を行わせる。
【0030】
図3はステータスシートの一例を示す図である。より詳しくは、図3(a)はステータスシートの斜視図であり、図3(b)はステータスシートの断面図である。このステータスシートSSは、エンジン部EGが記録材であるシートSの両面に所定の画像を形成することにより作成される。具体的には、シートSの一方面Saに、画質評価用画像Iaが形成される。また、シートSの他方面Sbには、背景用画像Ibが形成される。このように、ステータスシートSSは、シートSの両面に所定パターンの画像を形成することによって作成される。
【0031】
前記したように、この画像形成装置1では、シートSの一方面にまず画像を形成し、次いでシートSを反転しもう一方の面に画像を形成することによってシートS両面への画像形成を行う。以下では、シートS両面のうち最初に画像を形成される面を第1面、後から画像を形成される方の面を第2面と称することとする。この画像形成装置1では、上記したステータスシートSSを作成する場合、シートSの第1面に背景用画像Ibを、第2面に画質評価用画像Iaを形成する。つまり、この実施形態では、画質評価用画像Iaを形成されるステータスシートSSの一方面Saが後から画像を形成される第2面であり、背景用画像Ibを形成される方の面Sbが先に画像を形成される第1面である。このようにする理由について以下説明する。
【0032】
この種の画像形成装置では、中間転写ベルト71からシートSにトナー像を転写するときに、シートSの背面(トナー像を転写する転写面とは反対の面)に既に画像が形成されていると転写効率が低下するという性質を有している。これは、シート背面に付着した絶縁物であるトナーが転写面へのトナー転写を阻害するためと考えられる。すなわち、この種の画像形成装置においては、第1面よりも第2面において転写効率が低くなる。この結果、特にニアエンド表示後においては、トナー残量の低下やその劣化と上記した転写効率の低下とに起因して顕著な画像欠陥を生じやすい。
【0033】
ここで、ステータスシートSSは、実際に形成した画像が、装置の状態によってどの程度の品質劣化を生じているかを確認するために作成されるものである。すなわち、画質評価用画像Iaは装置の状態を反映したものである必要がある。したがって、装置の状態が画像欠陥を生じるおそれがあるようなものである場合には、そのことが画質評価用画像Iaに確実に現れるようにしなければ、画質評価用画像を形成する意義が薄れてしまう。
【0034】
そこで、この実施形態では、両面画像形成時の上記性質、つまり第2面において第1面において転写効率が低下するという性質を利用して画質評価用画像Iaに装置の状態が的確に反映されるようにしている。すなわち、ステータスシートSSの第1面Sbに予め背景用画像Ibを形成しておき、第2面Saの背景用画像Ibに対応する位置に画質評価用画像Iaを形成する。こうすることによって、画質評価用画像Iaは、シートSの一方面Saのうちその背面にトナーが付着した領域に形成されることとなる。このため、画質評価用画像Iaには、装置の劣化に伴う画質劣化がより視認しやすい状態で現れることとなり、ユーザは容易にその画像品質の良否を評価することが可能となる。
【0035】
また、画質劣化の起こりにくい状態で背景用画像Ibを形成することによって、背景用画像Ibに画像欠陥が生じるおそれは軽減されるので、背景用画像Ibのかすれや濃度ムラによって画質評価用画像Iaの視認性が阻害されるのを未然に防止することも可能となる。
【0036】
次に、画質評価用画像Iaおよび背景用画像Ibの画像パターンについてより詳しく説明する。画質評価用画像Iaは、ユーザが画質を確認したいトナー色、つまりニアエンド表示がなされたトナー色で形成される単色画像である。また、トナー残量不足に起因する画像のかすれや濃度ムラ等の画像欠陥を見つけやすくするため、ベタ画像あるいは比較的高い階調レベルでのハーフトーン画像など、実質的に均一な画像パターンで、かつ目視により画質を確認するのに十分な面積を有するものであることが望ましい。
【0037】
このように形成された画質評価用画像Iaについて、専門的な知識を持たない一般ユーザでは画質の良否を判断することが難しい場合がある。例えば、白紙上に形成されたイエロー単色画像では、イエロー色がもともと目につきにくい色であるため、画質評価用画像Iaに多少のかすれやムラなどの画像欠陥が生じていたとしても、十分な訓練をしていないユーザにはそれを発見するのは容易でない。
【0038】
本願発明者の知見によれば、このようにもともと視認しにくいトナー色については、より視認しやすい色、例えばブラック色で背景用画像Ibを形成することにより視認性を向上させることが可能である。これは、背景用画像によってシート背面での光の反射や透過が抑えられ、画質評価用画像IaとシートSとのコントラストが高くなるためと考えられる。また、白色のシートSに対しては、ブラック色が最も視認しやすく、次いでシアン、マゼンタの順に視認性が低下し、イエロー色が最も視認しにくい。すなわち、明るい色、淡い色ほど視認しにくい。したがって、例えばイエロー色による画質評価用画像Iaに対しては、他の3色のいずれも背景用画像として適していると言えるが、その中でも光の吸収率が最も高いブラック色が特に効果的である。
【0039】
また、本願発明者の知見によれば、種々の色毎のトナーの分光反射特性と、当該トナー色の視認しやすさとの間に一定の相関性がある。すなわち、可視帯域内の比較的広い範囲で光の反射率が高いトナーでは、その反射特性が白紙の特性に近いため視認しにくくなる傾向がある。これに対して、反射率の高い範囲が比較的狭い、または反射率が低いトナーではより視認性が高い。本実施形態において使用する4色のトナーの中では、イエローが可視帯域内において最も反射率が高く、かつ広範囲にわたって反射率が高い。したがって、4色の中ではイエローが最も視認しにくい。次いでマゼンタ、シアン、ブラックの順に反射率は低くなり、その一方で視認性は順に高くなっている。
【0040】
一方、ブラック色などもともと視認性の比較的高いトナー色については、背景用画像Ibの色は画質評価用画像Iaの視認性に大きな影響を及ぼさない。また、第2面における転写効率の低下の程度は、第1面に付着したトナーの色によって大きな差は生じない。この点では背景用画像Ibの色を任意としてよいが、画質評価用画像Iaのトナー色よりも視認性の低い色とするのがより好ましい。こうすることによって、背景用画像Ibの色が画質評価用画像Iaの視認性に及ぼす影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0041】
また、背景用画像Ibは、図3(a)および図3(b)に示すように、シートSを画質評価用画像Ia側から透かして見たときに、画質評価用画像Iaの外縁を完全に覆うような形状、大きさに形成されることが望ましい。また、その画像パターンは、ベタ画像や階調レベル一定のハーフトーン画像など実質的に均一なものであることが望ましい。
【0042】
なお、画質評価用画像Iaについては、特定のトナー色における画質を確認する必要から単色画像とすることが望ましいが、背景用画像Ibについてはこのような制約はない。すなわち、画質評価用画像Iaの視認を妨げるような色やパターンでない限り、背景用画像Ibは2以上のトナー色を混色したものであってもよい。
【0043】
また、ステータスシートSSには、これ以外に任意の画像を含めて出力するようにしてもよい。例えば、製品ロゴマークのほか、装置各部の寿命に関する情報や動作条件の設定値、画像形成枚数などの各種情報を、画質評価用画像Iaおよび背景用画像Ibとともに出力することによって、ユーザまたはサービスマンによるメンテナンス作業の効率化を図ることができる。また、その時点における各現像器のトナー残量を出力するようにすれば、ユーザは現像器の交換時期をより的確に把握することができるようになる。
【0044】
図4はステータスシートの作成手順を示すフローチャートである。また、図5は画質評価用画像および背景用画像のトナー色を示す図である。ステップS1では、画質確認の対象となるトナー色、すなわちニアエンド表示がなされたトナー色を除くトナー色の中から背景用画像のトナー色を選択する。ここで、背景用画像のトナー色の候補は図5に示すとおりである。すなわち、画質確認の対象となるトナー色(確認対象トナー色)が比較的視認性の低いイエローであるとき、背景用画像Ibの色をより視認しやすい色であるマゼンタ、シアン、ブラックのいずれかとすることで、画質評価用画像Iaの視認性向上を図る。また、比較的視認しやすいトナー色であるマゼンタ、シアン、ブラックが確認対象トナー色であるときは、背景用画像をより視認しにくい色であるイエロー色とすることで、画質評価用画像Iaの視認性を妨げないようにする。
【0045】
背景用候補トナー色が複数ある場合に、いずれを背景用トナー色とするかについて説明する。確認対象トナー色がイエローである場合、背景用画像としては、光の吸収率が高いブラック色が最も効果的である。したがって、確認対象トナー色がイエローであれば自動的に背景用トナー色をブラックとするのが最も簡単な方法である。しかしながら、他の色を背景用トナー色とした方がよい場合もある。例えば、ブラック色のトナー残量が僅かとなっている場合には、他のトナー色で背景用画像を形成する方がよい。というのは、背景用画像を形成しトナーを消費することによってトナー切れを生じてしまう可能性があり、また背景用画像自体が画像欠陥を生じた場合には背景用画像としての役割を果たさなくなるからである。このことから、背景用候補トナー色の中で、現像器内のトナー残量が最も多いものを背景用トナー色とするようにしてもよい。こうすることで、背景用画像を形成することによるトナー切れの発生や、背景用画像自体に画像欠陥を生じてしまうことが未然に防止される。
【0046】
また、次のようにすることもできる。すなわち、ブラックトナーが十分な残量を有している場合、例えばブラック色についてニアエンド表示に至っていない場合には、トナー残量の多少によらずブラック色を背景用トナー色とする。一方、ブラックトナーの残量が少なくなりエンド表示が近い場合には、他の背景用候補トナー色のうち最も視認性の高い色(または最もトナー残量が多い色)を背景用トナー色とする。さらに別の方法としては、ブラックトナーの残量が少ない場合には、ブラック色と他のトナー色との混色による背景用画像を形成することで、ブラックトナーの消費量を低減するようにしてもよい。
【0047】
また、確認対象トナー色が複数ある場合には、それらの全てについて図5の関係を満たすように背景用トナー色を選択するのが好ましい。例えば、ブラックおよびシアン色についてニアエンド表示がなされている場合には、これら2色が確認対象トナー色であり、この場合の背景用トナー色はイエロー色である。
【0048】
一方、確認対象トナー色が例えばイエローおよびマゼンタである場合のように、共通の背景用候補トナー色がない場合には次のようにすることができる。第1に、各確認対象トナー色ごとに、それぞれに応じた色の背景用画像を個別に設ける方法がある。このようにすれば、いずれの確認対象トナー色についても最も視認性の良好な状態で画質の確認が可能である。第2に、複数の確認対象トナー色に対して背景用画像を一色とする方法がある。この場合には、結果的に図5の条件を満たさなくなる確認対象トナー色が生じることとなり視認性向上の効果はやや低下するが、背景用トナー色を一色にすることによって背景用画像を形成する工程が簡単となり処理時間の短縮を図ることができる。
【0049】
図4に戻ってステータスシートの作成手順の説明を続ける。続くステップS2では、エンジン部EGが画像形成動作を実行し、こうして選択された背景用トナー色で背景用画像Ibをカセット8から取り出されたシートSの一方面(第1面)に形成する。引き続いて、シートSのもう一方の面(第2面)に、確認対象トナー色で画質評価用画像Iaを形成する(ステップS3)。
【0050】
図6は画質評価用画像および背景用画像の例を示す図である。なお、図6(a)〜図6(c)はいずれも、ステータスシートSS両面の画像パターンをその一方面Sa側から見た図であり、他方面Sb側の背景用画像の外縁を破線で示している。まず、確認対象トナー色が1色のみである場合には、図3に示すように、当該トナー色の画質評価用画像Iaに対して、これと対応するシートSの裏面位置に、背景用画像Ibを形成すればよい。これに対して、確認対象トナー色が2色以上である場合には、図6(a)に示すように、確認対象トナー色それぞれに対応する単色の画質評価用画像片からなる画質評価用画像Ia1と、これを覆うように背景用画像Ib1とを形成すればよい。この場合、各画像片は互いに接していてもよく、また離隔していてもよい。また、図6(b)に示すように、各確認対象トナー色ごとに個別に画質評価用画像Ia2およびIa3を形成するとともに、そのそれぞれに対応して背景用画像Ib2およびIb3を形成するようにしてもよい。この場合には、背景用画像Ib2およびIb3の色が同じである必要はない。すなわち、確認対象トナー色ごとに背景用画像の色を変える場合には図6(b)に示す画像パターンが好ましい。
【0051】
以上のように、この実施形態では、シートSの一面に画質評価用画像を形成したステータスシートSSを出力し、ユーザによる画質確認作業に供する。この場合において、シートSの一方面にまず背景用画像を形成し、次いで、もう一方の面の背景用画像に対応する位置に画質評価用画像を形成する。このように、先に画像を形成される方の面、つまり第1面に背景用画像を予め形成しておくことで、背景用画像に画像欠陥が生じるのを未然に防ぐことが可能となる。また、後に画像を形成される方の面は画像欠陥を生じやすいので、この面、つまり第2面に画質評価用画像を形成することで、画質評価用画像に生じうる画像欠陥をより発見しやすくなる。
【0052】
また、背景用画像を形成することによって画質評価用画像の視認性が向上し、画像品質の良否判断が容易になる。例えば、現像器内のトナー残量の低下に伴って生じうる画像のかすれや濃度ムラを的確に発見することができる。特に、視認性向上のためには、画質評価用画像とは異なる色で、また画質評価用画像の背面の全体を覆うように背景用画像を形成することが好ましい。例えば、白紙上に形成されたイエロートナー色の単色画像は視認しにくいため、一般ユーザにはその画質の評価が難しい。このような場合に、画質評価用画像とは反対面に、他の色で背景用画像を形成しておくことにより、画質評価用画像の視認性が向上し、画像品質の良否判断が容易になる。中でも、画質評価用画像より視認しやすい色を用いて背景用画像を形成したときにその効果が顕著となる。この点からは、光の吸収率が大きいブラック色が背景用トナー色として最も適している。
【0053】
これに対して、もともと視認性の高いトナー色で画質評価用画像を形成する場合には、背景用画像が視認性向上に寄与する程度は少ないため、背景用画像の色に対する制約はより緩やかである。したがって、画質評価用画像の視認性に影響を与えにくい、より視認しにくい色で画質評価用画像を形成するようにしてもよい。
【0054】
また、背景用画像に使用しうるトナー色が複数ある場合には、それらのうち最もトナー残量が多いものを使用するようにすれば、背景用画像に画像欠陥を生じたり、背景用画像を形成したことでトナー切れを起こしてしまうなどの問題を未然に防止することが可能となる。
【0055】
以上説明したように、この実施形態においては、各現像器4Y,4C,4M,4Kがそれぞれ本発明の「トナー貯留手段」として機能している。また、エンジン部EGが本発明の「像形成手段」として機能している。また、図4のフローチャートにおいては、ステップS2およびS3が、それぞれ本発明の「背景用画像形成工程」および「画質評価用画像形成工程」に相当している。
【0056】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、画質評価用画像としてベタ画像またはハーフトーン画像などのほぼ一様なパターンを有する画像を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、文字画像や細線画像などを画質評価用画像としてもよい。
【0057】
また、例えば、上記実施形態では、トナーカウンタ200によるトナー消費量算出結果からCPU101が各現像器のトナー残量を求め、トナー残量が所定値以下となった(つまりニアエンド表示がなされた)トナー色についてのみユーザの要求に応じて画質評価用画像を形成するようにしている。これ以外にも、例えば、トナー残量によらず、ユーザの要求があった場合にはいつでも画質評価用画像および背景用画像を含むステータスシートを出力するようにしてもよい。また、トナー残量の多少によらず全てのトナー色について画質評価用画像を形成するようにしてもよい。ただし、第2面における転写効率の低下はトナー残量が少なくなったときに特に強く現れるから、このような状況下で画質評価用画像(またはこれを含むステータスシート)を形成する際に本発明の効果は最も顕著なものとなる。
【0058】
また、上記実施形態では、図3に示すように、ステータスシートSSの中央部に1組の画質評価用画像および背景用画像を形成しているが、これらを複数組形成するようにしてもよい。例えば、円筒形状を有する感光体22および現像ローラ44の偏心やたわみに起因してその軸方向に沿って画像の濃度ムラが生じやすいことに鑑みて、その軸方向の複数位置にそれぞれ画質評価用画像および背景用画像を形成するようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色のトナーを用いて画像を形成する装置に本発明を適用したものであるが、トナー色の種類および数については上記に限定されるものでなく任意である。また、本発明のようなロータリー現像方式の装置のみでなく、各トナー色に対応した現像器がシート搬送方向に沿って一列に並ぶように配置された、いわゆるタンデム方式の画像形成装置に対しても本発明を適用可能である。さらに、本発明は、上記実施形態のような電子写真方式の装置に限らず、トナーを使用した画像形成装置全般に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】ステータスシートの一例を示す図。
【図4】ステータスシートの作成手順を示すフローチャート。
【図5】画質評価用画像および背景用画像のトナー色を示す図。
【図6】画質評価用画像および背景用画像の例を示す図。
【符号の説明】
【0061】
4Y,4C,4M,4K…現像器(トナー貯留手段)、 22…感光体、 44…現像ローラ、 200…トナーカウンタ、 EG…エンジン部(像形成手段)、 Ia…画質評価用画像、 Ib…背景用画像、 S…シート(記録材)、 Sa…(シートSの)第2面、 Sb…(シートSの)第1面、 SS…ステータスシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材の両面に画像を形成可能な画像形成装置において、
トナーを貯留するトナー貯留手段と、
前記トナー貯留手段に貯留されたトナーを使用して前記記録材上に画像を形成する像形成手段と
を備え、
前記像形成手段は、前記記録材の主面のうち第1面に所定の背景用画像を形成し、次いで前記記録材の前記第1面とは反対の第2面のうち前記背景用画像に対応する位置に、画像品質を評価するための画質評価用画像を形成する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
互いに異なる複数のトナー色それぞれに対応した複数の前記トナー貯留手段を備え、
前記像形成手段は、前記複数のトナー色のうち一のトナー色で前記画質評価用画像を形成するとともに、該画質評価用画像とは異なる色で前記背景用画像を形成する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像形成手段は、前記画質評価用画像を形成するトナー色よりも視認しにくい色で前記背景用画像を形成する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像形成手段は、前記画質評価用画像を形成するトナー色とは異なるトナー色のうち、前記トナー貯留手段内のトナー残量が最も多いトナー色で前記背景用画像を形成する請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記像形成手段は、前記記録材の前記第1面のうち、前記画質評価用画像に対応する領域の全体を覆うように前記背景用画像を形成する請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像形成手段は、前記トナー貯留手段に貯留されたトナー残量が所定の基準値以下であるときに、必要に応じて、前記画質評価用画像および前記背景用画像を前記記録材上に形成する請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
記録材の両面に画像を形成可能な画像形成装置における画像形成方法であって、
前記記録材の主面のうち第1面に所定の背景用画像を形成する背景用画像形成工程と、
前記背景用画像を形成された前記記録材の前記第1面とは反対の第2面のうち前記背景用画像に対応する位置に、画像品質を評価するための画質評価用画像を形成する画質評価用画像形成工程と
を有することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−3557(P2006−3557A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178676(P2004−178676)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】