説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】記録材上に転写したトナー像を加熱することで該トナー像を記録材上に永久定着させる画像形成装置および画像形成方法において、定着動作において記録材から放出される水蒸気の問題を解決するとともに、装置のエネルギー効率を高める。
【解決手段】定着ユニット13の上部に、通気孔1931aを有するダクト形成部材1931、1932により取り囲まれてなる上部ダクト191を設ける。上部ダクト191の内部を流れる暖められた空気は通気ダクトおよび排気ファンにより予熱ユニット192へ案内され、中空の予熱部材1921、1922の内部を通って装置外に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録材上に転写したトナー像を加熱することで該トナー像を記録材上に永久定着させる画像形成装置および画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタおよびファクシミリ装置などトナーを使用して記録材上に画像を形成する画像形成装置においては、トナー像を転写された記録材を加熱することによってトナー像を記録材上に永久定着している。このような装置においては、定着動作によって生じる廃熱が問題となる。例えば、定着後の高温によって装置を構成する部材を傷めたり、温められた記録材から放出される水蒸気が装置内部に滞留し、記録材に水滴が付着して画像欠陥を生じたり、装置内部に結露を生じて記録材のスムーズな搬送を阻害したりすることがある。
【0003】
このような問題に関して、例えば特許文献1に記載の画像形成装置においては、外気が排紙口から取り込まれ排紙経路を逆行して流れるように排気流通経路および排気ファンを設けることにより、排紙経路を構成する部品が高温となるのを防止して安価な部品の使用を可能としている。
【0004】
【特許文献1】特許第2555278号公報(図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術によれば、排紙経路を構成する部品が高温となるのを防止することはできるが、上記した記録材から発生する水蒸気の問題を解消することはできない。また、廃熱を単に外部へ放出するだけであるため、消費電力に対するエネルギー効率の向上にはつながらない。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、記録材上に転写したトナー像を加熱することで該トナー像を記録材上に永久定着させる画像形成装置および画像形成方法において、定着動作において記録材から放出される水蒸気の問題を解決するとともに、装置のエネルギー効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するため、トナー像を形成し、所定の転写位置で記録材に転写する画像形成手段と、所定の定着位置で、前記記録材上に転写された前記トナー像を加熱して前記記録材に定着させる定着手段と、前記転写位置から前記定着位置に至る経路を含む搬送経路に沿って前記記録材を搬送する搬送手段と、前記搬送経路上において前記転写位置よりも前方の予熱位置で、該予熱位置を通過する記録材を予熱する予熱手段と、前記定着手段の廃熱を前記予熱手段に伝達する伝熱手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる画像形成方法は、上記目的を達成するため、所定の搬送経路に沿って記録材を搬送するとともに、前記搬送経路上の転写位置で前記記録材にトナー像を転写し、前記搬送経路上において前記転写位置よりも後方の定着位置で定着手段により前記トナー像を加熱して前記記録材上に定着させ、しかも、前記定着手段の廃熱を前記搬送経路上において前記転写位置よりも前方の予熱位置へ伝達し、その熱により、前記予熱位置を通過する記録材を予熱することを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、予熱されることによって記録材に含まれる水分の一部が事前に水蒸気として放出されるので、定着位置における記録材からの水蒸気の放出が抑えられる。そのため、定着位置の周辺で結露を生じたり、記録材を詰まらせたりするなどの問題が抑制される。また、予熱には定着により生じた廃熱を利用することと併せて、記録材を予熱しておくことによって定着に必要な熱量を抑えることができるため、エネルギー効率を向上させることができる。
【0010】
上記のように構成された画像形成装置において、前記定着手段は、所定の定着温度に昇温され前記記録材および該記録材上のトナー像に熱を与える加熱部材と、前記加熱部材を前記定着温度に昇温させる発熱部材とを備えるように構成されてもよい。このように構成された画像形成装置では、記録材が予熱されているため、記録材を予熱しない場合と比べて加熱部材の熱容量を小さくしたり発熱部材の発熱量を小さくすることが可能となり、消費電力の低減を図ることができる。
【0011】
より具体的な装置の構成としては、例えば、前記伝熱手段は、前記定着手段の廃熱により暖められた空気を前記予熱手段に送り込むする送気部を備える一方、前記予熱手段は、前記送気部によって送られてきた空気に接触することで温められるとともに、前記予熱位置において前記記録材に当接することで該記録材を予熱する予熱部材を備えるように構成されてもよい。こうすることで、定着手段からの廃熱が予熱手段に輸送されて、記録材を効率よく予熱することができる。
【0012】
この場合において、定着手段近傍の温められた空気が、予熱位置において記録材に直接接触しないようにするのがより好ましい。というのは、定着手段近傍の空気は記録材から放出された水蒸気を含んで高湿となっている場合があり、このような空気を予熱位置において記録材に接触させると却って記録材に水分を与えることになるからである。これを解消するためには、例えば、前記予熱部材の内部を中空に構成し、前記送気部によって送られてきた空気が前記予熱部材の内部を通過するようにすることができる。こうすることで、送られてきた空気の持つ熱を効率よく予熱部材に移すことができるとともに、水蒸気を含む空気が記録材に直接触れないようにすることができる。
【0013】
ここで、前記搬送手段は、前記搬送経路上において前記転写位置よりも前方の給送位置で、前記記録材を前記転写位置に向けて送り込む給送部材を備えており、前記予熱位置は、前記搬送経路上において前記給送位置よりも前方に設けられていてもよい。予熱部材から記録材へ効率よく熱を伝えるためには比較的高い当接圧をもって記録材と予熱部材とを当接させる必要がある。これにより搬送のスムーズさが低下する。予熱位置を給送位置よりも後方とすると、記録材を予熱位置に向かって押し込む形となるため、必要なタイミングで記録材を転写位置に送り込むことができなくなったり、記録材のジャムを発生するおそれがある。これに対して、予熱位置を給送位置よりも前方とした場合には、予熱位置を通過した記録材を給送部材により引っ張る形となるため、記録材の搬送をよりスムーズに行うことができる。
【0014】
さらに、前記搬送手段は、前記定着位置を通過した記録材を反転搬送経路に沿って搬送し前記給送位置の手前で前記搬送経路に戻す反転搬送を実行可能に構成され、しかも、前記反転搬送経路は、前記給送位置と前記予熱位置との間で前記搬送経路に合流するように構成されてもよい。定着位置を通過した記録材は既に温められているため、再度予熱する必要は必ずしもない。また、搬送経路および反転搬送経路を搬送されてきたことにより記録材がカールを生じジャムが発生しやすくなるため、必要以上に予熱部材と当接させることは好ましくない。そこで、反転搬送経路が給送位置と予熱位置との間で搬送経路に合流するようにすれば、このような問題は生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態の内部構造を示す側面図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示す図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリなどを有するメインコントローラMCに与えられると、このメインコントローラMCがエンジンコントローラECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラECがエンジン部EGなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0016】
この画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラMCやエンジンコントローラECを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ステーション2Y,2M,2C,2K、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、定着ユニット13およびシート搬送ユニット70が配設されている。
【0017】
この画像形成装置は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図1においては図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0018】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モータに接続され所定の方向に所定速度で回転駆動される。また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、露光ユニット29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0019】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラを備えている。この帯電ローラは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接しており、感光体ドラム21の回転動作に伴って従動回転する。また、この帯電ローラは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0020】
露光ユニット29は、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に向けて光を照射して該表面に静電潜像を形成する。
【0021】
現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラ251を有する。そして、現像ローラ251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラ251に印加される現像バイアスによって、現像ローラ251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラ251から感光体ドラム21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0022】
現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向に搬送された後、後に詳述する転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する一次転写位置において転写ベルト81に一次転写される。
【0023】
また、感光体ドラム21の回転方向において一次転写位置よりも下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで一次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0024】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラ82と、図1において駆動ローラ82の左側に配設される従動ローラ83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラに張架され駆動ローラ82の回転により所定方向へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0025】
いわゆるタンデム方式の画像形成装置であるこの画像形成装置では、感光体ドラム21から転写ベルト81にトナー像が一次転写される一次転写位置は各画像形成ステーションごとに異なった位置となる。すなわち、イエロー用画像形成ステーション2Y、マゼンタ用画像形成ステーション2M、シアン用画像形成ステーション2Cおよびブラック用画像形成ステーション2Kが転写ベルト81の移動方向に沿ってこの順番に配置されている。
【0026】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラ85Kの下流側で且つ駆動ローラ82の上流側に配設された下流ガイドローラ86を備える。この下流ガイドローラ86は、一次転写ローラ85Kが画像形成ステーション2Kの感光体ドラム21に当接して形成する一次転写位置での一次転写ローラ85Kとブラック用感光体ドラム21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0027】
給紙ユニット7は、シート状の記録材(以下、単に「シート」という)を積層保持可能である給紙カセット701と、シートを載置可能な手差しトレイ702とを備えている。給紙カセット701および手差しトレイ702にセットされたシートは、シート搬送ユニット70に設けられたピックアップローラ71または72の回転により一枚ずつ取り出され後述する搬送経路に向け給紙される。給紙カセット701および手差しトレイ702のいずれからシートを供給するかについてはユーザ設定により指定される。ピックアップローラ701または702により給紙されたシートは、シート搬送ユニット70に設けられたゲートローラ対74によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材76に沿って、駆動ローラ82と二次転写ローラ75とが当接する二次転写位置に給紙される。
【0028】
シート搬送ユニット70の構成部品である二次転写ローラ75は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラ駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材76により定着ユニット13へ案内され、定着ユニット13はシートに転写されたトナーを加熱・加圧してトナー像をシート上に永久定着する。定着ユニット13により定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0029】
また、シートの両面に画像を形成する場合には、上記のようにして片面に画像を形成されたシートの後端部が排出前ローラ77後方の反転位置まで搬送されてきた時点でシートを後述する反転搬送経路に送り込む。そして、反転搬送経路に沿って設けられシート搬送ユニット70を構成する搬送ローラ対78、79の回転によりゲートローラ対74の手前で再び元の搬送経路に乗せられるが、このとき、二次転写位置において転写ベルト81と当接し画像を転写されるシートの面は、先に画像が転写された面とは反対の面である。このようにして、シートの両面に画像を形成することができる。
【0030】
また、この装置では、ブレード対向ローラ83に対向してクリーナ部801が配設されている。クリーナ部801は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラ83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックスに回収される。
【0031】
この画像形成装置においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kは、それぞれ感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を有するカートリッジとして一体化されている。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラECと各カートリッジとの間でデータ通信が行われる。こうすることで、各カートリッジに関する情報がエンジンコントローラECに伝達されるとともに、各メモリ内の情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0032】
なお、図2においては、ローラやベルト等の各可動部を回転駆動したり離当接駆動するためのモータやクラッチ類など、機械的な駆動力を発生する構成を総称して、「メカ部」として記載している。
【0033】
図3はこの画像形成装置におけるシート搬送経路を示す図である。なお、図3においては、搬送経路を明りょうに示すために、シートの移動方向を誘導すべく搬送経路に沿って設けられた各シートガイド部材については記載を省略している。また、各部材の近傍に付した符号を伴わない矢印は、それぞれの部材の移動方向を示している。また、搬送経路FFおよびFRに沿って記した矢印は、それぞれの搬送経路におけるシート搬送方向を示している。
【0034】
ピックアップローラ71または72が選択的に回転することにより給紙カセット701または手差しトレイ702から取り出されたシートは、後述する予熱ユニット192を経て搬送経路FFに送り込まれる。そして、搬送経路FF上においてゲートローラ対74が設けられた給送位置GPにシート先端が送り込まれた後、シートはゲートローラ対74のニップに突き当てられていったん停止し、画像形成動作の進行に同期してゲートローラ74が回転開始すると、シートは給送位置GPから転写ベルト81上のトナー像を転写される転写位置TPに向け搬送される。この転写位置TPとは、先に説明した二次転写位置と同義である。
【0035】
こうしてトナー像を転写されたシートは定着ユニット13に設けられた加熱ローラ131および加圧ローラ132により形成された定着ニップに送り込まれる。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して所定の定着温度(例えば摂氏200度程度)に温度制御されるとともに回転自在な加熱ローラ131と、この加熱ローラ131を押圧付勢する加圧ローラ132とを有している。より詳しくは、加熱ローラ131は、内部にヒータ1312を備えた金属製パイプ1311の表面に、例えばシリコンゴム等の弾性および耐熱性を有する樹脂製の表面層1313を設けたローラである。ヒータ1312は例えばハロゲンヒータであり数百〜1000W程度の発熱量を有する。また、表面層1313は、弾性および耐熱性を有する樹脂により構成され、例えばシリコンゴム層の表面にPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などのフッ素樹脂をコーティングしたものを用いることができる。
【0036】
また、加圧ローラ132は、上記した加熱ローラ131の構成からヒータを取り除いた構成を有している。そして、加圧ローラ132の表面を加熱ローラ131の周面に押し付けることで、加熱ローラ131と加圧ローラ132とで形成する定着ニップが広くとれるように構成されている。トナー像を転写され転写位置TPから送出されたシートは、搬送経路FFに沿って搬送され、定着ニップが形成された定着位置FPを通って排出される。この際、定着位置FPにおいてトナーに熱と圧力が加えられてトナー像がシート上に定着される。
【0037】
定着ユニット13の上方には、図3の紙面に垂直な方向に沿って延設され、複数の通気孔1931aを有する上部ダクト形成部材1931と、ハウジング本体3の上面の一部を成すとともに上記上部ダクト形成部材1931の上面開口部を覆うように設けられたもう1つの上記ダクト形成部材1932とにより取り囲まれて形成された上部ダクト191が設けられている。定着ユニット13の上部の空気は、該定着ユニット13および定着後のシートから排出される廃熱により暖められ、対流によって、また以下に説明する排気ファンによる吸引によって、上部ダクト191の内部に流れ込む。同図において、破線で示した矢印は定着ユニット13上部での空気の流れを示している。
【0038】
図4はこの実施形態の画像形成装置を正面(図1の右方)から見た内部構造を示す図である。上部ダクト形成部材1931および1932により形成される上部ダクト191は、別のダクト形成部材1933、1934および1935によって取り囲まれる通気ダクト195と連通されている。また、該ダクト内には排気ファン194が設けられており、排気ファン194の回転により、上部ダクト191から通気ダクト195を通って同図の矢印に示すような気流が生じる。こうして流れる空気は、予熱ユニット192に設けられて内部を中空に形成された予熱部材1921等の内部を通って最終的にはハウジング本体3の側面に設けられた排気口31から装置外部へ排出される。
【0039】
予熱ユニット192は、図3に示すように、通気ダクト195を通って送り込まれる暖められた空気がその内部を通過するように構成された中空の金属製予熱部材1921、1922を備えている。これらの予熱部材1921、1922は、熱伝導性の高いアルミニウムや銅などの金属により形成されており、その内部にフィンが形成されて表面積が増大されている。このように中空の予熱部材1921、1922の内部を暖められた空気が通過することにより、これらの予熱部材1921、1922も温められる。
【0040】
これらの予熱部材1921、1922の近傍にはフィードローラ対1923が装着されている。フィードローラ対は、温められた予熱部材1921、1922およびその内部を通過する空気により温められている。ピックアップローラ71または72の回転により新たに搬送経路FFに送り込まれるシートは、これらの予熱部材1921、1922およびフィードローラ対1923に接触する予熱位置PPにおいてこれらの部材から熱を与えられ予熱される。
【0041】
なお、予熱位置PPは、ゲートローラ74が設けられた給送位置GPよりも、シート搬送方向において前方、すなわち上流側に設けられる。このようにする理由は次の通りである。定着前の予熱という観点からは、予熱位置PPは少なくとも定着位置FPの前方にあればよい。ただし、転写位置TPと定着位置FPとの間ではシート上のトナー像が未定着であるため、この範囲で予熱部材を当接させることは事実上不可能である。したがって、予熱位置PPについては転写位置TPよりも前方とすることが必要である。
【0042】
また、予熱部材の持つ熱をシートに効率よく伝えるためには、高い当接圧でシートと予熱部材やフィードローラ対とを当接させる必要がある。ここで、ゲートローラ74は画像形成動作の進行に同期させた適正なタイミングでシートを給送位置GPから転写位置TPに送り込むことでシート上へのトナー像の転写位置を制御している。したがって、給送位置GPと転写位置TPとの間に予熱位置PPを設けると、ゲートローラ74は予熱位置PPにむけてシートを送り込む形となり、予熱位置PPにおけるシート搬送速度が律速となって転写位置TPへシートが到達するタイミングが崩れてしまうおそれがある。
【0043】
以上より、予熱位置PPについては、ゲートローラ74によるシート給送が開始される給送位置GPよりもシート搬送方向において前方側に設けることが望ましい。また、こうすることにより、シートはゲートローラ74により引っ張られる形となり予熱位置PPと給送位置GPとの間でシートに張力が加わるので、シートを予熱部材1921、1923に密着させてより効率よく予熱することが可能となる。また、この実施形態では給紙源として給紙カセット701と手差しトレイ701との2種類があり、それぞれから給紙された記録材は同じ搬送経路FFに乗せられる。このように記録材の供給源が複数あり、それぞれを起点とする搬送経路が合流するように構成されている場合には、それらの合流点よりも後方に予熱位置PPが設けられることが望ましい。
【0044】
続いて、反転搬送経路FRについて検討する。反転搬送経路FRへ送り込まれたシートは、搬送ローラ対78、79によって搬送されて、合流位置MPにおいて元の搬送経路FFに戻される。この合流位置MPは、搬送経路FF上であってシート搬送方向において予熱位置PPよりも後方かつ転写位置TPよりも前方とされる。このようにする理由は次の通りである。反転搬送経路FRを搬送されるシートは直前に定着位置FPを通過してきたシートであり、既に温められているため改めて予熱することを要しない。また、搬送経路FFおよびFRを経由して搬送されてきたシートにはカールや反りなどの癖が付いている場合があり、このようなシートは搬送経路を構成する部材に引っかかって搬送不良を起こしやすい。必ずしも必要のない予熱位置PPへの通過を回避することにより、搬送不良が起きる可能性を低減することができる。
【0045】
次に、予熱の効果について説明する。本願発明者らの実験結果によれば、室温摂氏20度のとき、予熱ユニット192による予熱がなければ、シートの温度も20度であり、良好な定着特性を得るのに必要な加熱ローラ131の温度はおよそ摂氏190度以上であった。これに対し、予熱ユニット192によりシートを予熱した場合、良好な定着特性を得るのに必要な加熱ローラ131の温度は摂氏180度で済むことがわかった。このとき、予熱部材1921、1922の温度は約35度、予熱されたシートの温度は約30度であった。
【0046】
このように、シートを予熱することにより、定着ユニット13に設けられた加熱ローラ131の温度を低く設定することが可能となり、加熱ローラ131を昇温させるヒータ1312の消費電力を抑えることができる。これにより、装置の消費電力を低減することができる。また、予熱には定着によって生じた廃熱を利用しているため、予熱を行うために消費電力が増大することにはならず、装置のエネルギー効率を高めることができる。また、シートを予熱することにより、転写位置TPに到達するシートに含まれる水分が当初より低減されて、装置内部における結露やシートの搬送不良も抑えられる。
【0047】
また、定着ユニットや定着後のシートに触れることで暖められた空気を予熱位置PPにおいて直接シートに触れさせることは水蒸気低減という観点からは好ましくない。このような空気には、定着位置FPにおいてシートから放出された水蒸気が多く含まれ却ってシートに水分を与えてしまう可能性があるからである。これに対して、この実施形態では、吸熱により暖められた空気で予熱部材を温める構成として定着ユニット13周辺の空気が直接シートに触れないようにしているので、このような問題は生じない。
【0048】
以上のように、上記実施形態においては、定着ユニット13および定着後のシートにより暖められた空気を転写位置TPよりも手前の予熱位置PPに設けた予熱部材1921、1922の内部に通し、これにより予熱部材を温める。こうして温められた予熱部材とシートを当接させることにより、この実施形態ではシートを予熱する。こうすることで、シートに含まれる水分が事前に低減されて、水滴の付着による画像欠陥の発生、定着位置FP近傍における結露やシートの搬送不良を抑制することができる。また、定着により生じた廃熱を利用して予熱を行っているので、予熱のために余分な電力を消費することがなく、またシートを予熱しておくことで定着ユニットの温度を低めに設定することができるので、全体としての消費電力を小さくすることができ、しかもエネルギー効率が高い。
【0049】
以上説明したように、上記実施形態では、画像形成ステーション2Y、2M、2C、2Kおよび転写ベルトユニット8が一体として本発明の「画像形成手段」として機能している。また、定着ユニット13が本発明の「定着手段」として機能しており、加熱ローラ131およびヒータ1312がそれぞれ本発明の「加熱部材」および「発熱部材」に相当している。また、これらの実施形態では、シート搬送ユニット70が本発明の「搬送手段」として機能しており、ゲートローラ対74が本発明の「給送部材」に相当している。
【0050】
また、上記実施形態では、予熱ユニット192が本発明の「予熱手段」として機能しており、予熱部材1921、1922が本発明の「予熱部材」として機能している。また、上記実施形態では、上部ダクト形成部材1931、1932、ダクト形成部材1933〜1935および排気ファン194が一体として本発明の「伝熱手段」特に「送気部」として機能している。
【0051】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態の定着ユニットは、いずれもローラ形状の加熱ローラ131と加圧ローラ132とを当接させることにより定着ニップを形成するようにしているが、これに代えて、複数のローラに掛け渡された加圧ベルトを加熱ローラに当接させることで定着ニップを形成する構造としてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、定着ユニット13上部の暖められた空気を予熱ユニット192に送り込むことで、定着ユニット13の廃熱を予熱に利用するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、定着ユニット13の近傍に金属板など熱伝導性の高い材料により形成された吸熱部材を設けるとともに、この吸熱部材に公知のヒートパイプの一方端を当接させ、さらにヒートパイプの他方端を予熱部材に当接させることにより、定着ユニット13近傍の熱を予熱位置PPへ移動させるようにしてもよい。
【0053】
さらに、上記実施形態では、YMCK4色のトナーを使用したタンデム方式のカラー画像形成装置に本発明が適用されているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、例えば1個の画像形成ステーションのみを有しモノクロ画像を形成する画像形成装置や、回転自在の現像ロータリーに複数の現像器を装着したロータリー現像方式の画像形成装置など色の種類や色数の異なる画像形成装置に対しても本発明を適用することができる。より一般的には、記録材上に転写したトナー像に熱を加えて定着させるように構成された画像形成装置全般に対し、本発明を好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態の内部構造を示す側面図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示す図。
【図3】この画像形成装置におけるシート搬送経路を示す図。
【図4】この実施形態の画像形成装置を正面から見た内部構造を示す図。
【符号の説明】
【0055】
2Y,2M,2C,2K…画像形成ステーション(画像形成手段)、 8…転写ベルトユニット(画像形成手段)、 13…定着ユニット(定着手段)、 131…加熱ローラ(加熱部材)、 70…シート搬送ユニット(搬送手段)、 74…ゲートローラ対(給送部材)、 192…予熱ユニット(予熱手段)、 194…排気ファン(送気部、伝熱手段)、 1312…ヒータ(発熱部材)、 1921,1922…予熱部材、 1931〜1935…ダクト形成部材(送気部、伝熱手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を形成し、所定の転写位置で記録材に転写する画像形成手段と、
所定の定着位置で、前記記録材上に転写された前記トナー像を加熱して前記記録材に定着させる定着手段と、
前記転写位置から前記定着位置に至る経路を含む搬送経路に沿って前記記録材を搬送する搬送手段と、
前記搬送経路上において前記転写位置よりも前方の予熱位置で、該予熱位置を通過する記録材を予熱する予熱手段と、
前記定着手段の廃熱を前記予熱手段に伝達する伝熱手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定着手段は、所定の定着温度に昇温され前記記録材および該記録材上のトナー像に熱を与える加熱部材と、前記加熱部材を前記定着温度に昇温させる発熱部材とを備える請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記伝熱手段は、前記定着手段の廃熱により暖められた空気を前記予熱手段に送り込むする送気部を備える一方、
前記予熱手段は、前記送気部によって送られてきた空気に接触することで温められるとともに、前記予熱位置において前記記録材に当接することで該記録材を予熱する予熱部材を備える請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記予熱部材の内部は中空になっており、前記送気部によって送られてきた空気が前記予熱部材の内部を通過するように構成された請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送手段は、前記搬送経路上において前記転写位置よりも前方の給送位置で、前記記録材を前記転写位置に向けて送り込む給送部材を備えており、
前記予熱位置は、前記搬送経路上において前記給送位置よりも前方に設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記搬送手段は、前記定着位置を通過した記録材を反転搬送経路に沿って搬送し前記給送位置の手前で前記搬送経路に戻す反転搬送を実行可能に構成され、しかも、前記反転搬送経路は、前記給送位置と前記予熱位置との間で前記搬送経路に合流するように構成されている請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
所定の搬送経路に沿って記録材を搬送するとともに、前記搬送経路上の転写位置で前記記録材にトナー像を転写し、前記搬送経路上において前記転写位置よりも後方の定着位置で定着手段により前記トナー像を加熱して前記記録材上に定着させ、しかも、
前記定着手段の廃熱を前記搬送経路上において前記転写位置よりも前方の予熱位置へ伝達し、その熱により、前記予熱位置を通過する記録材を予熱する
ことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−241793(P2008−241793A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78340(P2007−78340)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】