説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】 上成長のトラップ幅と下成長のトラップ幅を変えることができない。したがって、必要以上のトラップ幅を設定することになり、トラッピングの品質の低下を招くことになる。
【解決手段】 画像形成時の走査ラインの曲がりに応じた曲がり情報を設定し、注目画素と周辺画素からなる参照ウィンドウ内の画像データに基づいて、該注目画素の値を補正することで特定の画像の色の領域を変形する。かかる変形に用いる参照ウィンドウは曲がり情報と処理する画素の主走査位置に基づき前記参照ウィンドウを補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成時の走査ラインの曲がりに対して、トラップ幅を補正してトラッピング処理を行う画像処理装置及び当該装置におけるトラッピング処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のカラー画像形成装置(レーザプリンタ)における画像形成速度をより高速化するためにタンデム方式が多く採用されている。この方式では、色材(トナー)の種類数と同数の現像器及び感光ドラムを配置し、搬送ベルト或は記録シート上に順次異なる色の画像を転写してカラー画像を形成している。このようなタンデム方式のカラー画像形成装置では、それぞれ異なる色の画像が各色に対応する画像形成部で形成されるため、各色の画像間で色版ずれを生じることがある。この色版ずれにより、ある色の画像部分と別の色の画像部分の色の間に白い隙間が現れたり、ある色の画像部分と別の色画像部分の重なりにより特定の色が目立つ部分が現れることがある。
【0003】
また、色版ずれの要因の一つとして、潜像画像を作るためのレーザ光の偏向走査を行う偏向走査装置のレンズの不均一性や、レンズの取り付け位置ずれ、偏向走査装置の画像形成装置本体への組み付け位置ずれ等が考えられる。このような事態が発生すると、レーザ光の走査ラインに傾きや曲がりが生じる。また、その走査ラインの傾きや曲がりの程度が各色毎に異なるため、結果として色版ずれとなって表れることになる。
【0004】
このような色版ずれに対し、様々な対処法が提案されている。
【0005】
特許文献1では、偏向走査装置の組立工程で、光学センサを用いて、その偏向走査装置における走査ラインの曲がりの大きさを測定している。そして、その測定に基づいてレンズを機械的に回転させて走査ラインの曲がりを調整した後、レンズ等を接着剤で固定している。
【0006】
また特許文献2では、偏向走査装置をカラー画像形成装置本体へ組み付ける際に光学センサを用いて走査ラインの傾きの大きさを測定し、その傾きに応じて偏向走査装置を機械的に傾かせて走査ラインの傾きを調整している。こうして調整を行った後、その偏向走査装置をカラー画像形成装置本体へ組み込んで固定している。
【0007】
特許文献1、または特許文献2のように機械的な調整や組立時の調整工程が必要な対処方法のほかに、色が異なる2つの隣接するオブジェクトの境目に多少重なり合う箇所(以下、「トラップ」という。)を設けるトラッピング技術が広く知られている。
【0008】
また、最適なトラッピングを行うためには、白い隙間が大きく表れる位置ではトラップ幅を大きく設定し、色が重なり合う位置ではトラップ幅を小さく設定することが必要となる。
【0009】
適切なトラッピング処理として、特許文献3では、予め用紙を複数に分割した分割領域毎に発生する版ずれ量を取得し、分割領域毎に版ずれ量に基づいたトラップ特性データを取得している。そして、その取得したトラップ特性データで示されるトラップ幅をトラッピングに適用している。
【特許文献1】特開2002−116394号公報
【特許文献2】特開2003−241131号公報
【特許文献3】特開2007−221226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、レーザ光の傾きや曲がりは各色によって異なる。ある色の版のレーザの曲がりに対し、トラッピングを行う色のレーザの曲がりによって、上成長でトラッピングを行う場合と、下成長トラッピングを行う場合とでは、必要となるトラップ幅が異なることがある。ここで、上成長のトラッピングとは、ある色のトナーが載る領域に対して、隣接する別の色のトナーが載る領域が副走査方向に重なるようにトナーの載る領域を拡大することを指す。また、副走査方向と逆の方向に重なるようにをトナーの載る領域を拡大することを下成長トラッピングと呼ぶ。例えば、図6に示すように、ある色のレーザ曲がりを基準として、トラッピングを行う隣接する別の色のレーザが主走査方向に進むにつれて副走査方向(下方向)に曲がっている。このとき、図7で示すように、主走査方向(右方向)に向かって、上成長の必要なトラップ幅は白抜けを防止できず小さくなり、下成長の必要なトラップ幅は必要以上に大きくなる。なおこの場合、図7(A)の濃い部分は、基準のレーザで像形成され、図7(A)の濃い部分をはさむ画像部分は別の色のレーザで像形成されている。
【0011】
上記特許文献3に記載された方法では、領域毎に取得した版ずれ情報に基づき、その領域内で検索された色境界において一様のトラップ幅によってトラッピングを行っているため、上成長のトラップ幅と下成長のトラップ幅を変えることができない。したがって、必要以上のトラップ幅を設定することになり、トラッピングの品質の低下を招くことになる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、複数のトナーを用いて画像形成する画像形成装置であって、
画像形成時のレーザによる走査ラインの曲がりに応じた曲がり情報を設定する設定手段と、
注目画素と周辺画素からなる参照ウィンドウ内の画像データに基づいて、該注目画素の値を補正することで特定の画像の色の領域を変形する画像変形処理手段と、
前記曲がり情報と前記画像変形処理手段が処理する画素の主走査位置に基づき前記参照ウィンドウを補正する参照ウィンドウ補正手段とを有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、参照ウィンドウを走査ラインの曲がりに応じて、上下のトラッピング幅を自動的に補正する画像処理装置および画像処理方法を提供することができる。これにより、版ずれによる白ぬけやトナーの不要な重なりを防ぐことができ、印刷画像の品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。尚、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係るカラー画像形成装置(多機能装置)100の構成を説明するブロック図である。
【0016】
この画像形成装置100は、例えば、複数種類の機能を実現する複合機である多機能処理装置(MFP:Multi Function Peripheral)で実現される。またこの画像形成装置100は、ネットワークI/F107を介してネットワークに接続され、このネットワークを利用して、ネットワークに接続された外部機器との間で画像データや各種情報をやりとりすることができる。
【0017】
図1において、原稿台とオートドキュメントフィーダ(ADF)を含む画像読取部104は、原稿台上の束状或は1枚の原稿画像を光源で照射し、その原稿からの反射像をレンズで固体撮像素子(不図示)に結像する。これにより画像読取部104は、その固体撮像素子からラスタ状の画像信号を基に、所定密度(例えば、600dpi)のページ単位のラスタ画像を得ることができる。尚、本実施の形態では画像読取部104で読み取られる原稿として、紙文書を例に挙げて説明するが、紙以外の記録媒体(例えば、OHPシート、フィルム等の透過原稿、布等)等の印刷物を画像読取部104の読取対象としても良い。
【0018】
また画像形成装置100は、画像読取部104で読み取った画像信号に対応する画像を印刷部106で記録媒体に印刷する複写機能を有する。特に、原稿を1部複写する場合には、この画像信号をデータ処理部101で画像処理して印刷データを生成し、これを印刷部106に出力して記録媒体に印刷させる。一方、原稿を複数部複写する場合には、HD等の記憶部105に一旦、印刷データを記憶させた後、これを指定された部数分繰り返し印刷部106に出力して記録媒体上に印刷させる。尚、印刷部106を用いる各種印刷制御は、プリンタコントローラ108によって実現される。印刷部106は、この実施の形態では、例えばタンデム方式のレーザプリンタのプリンタエンジンを含むものとする。
【0019】
図13は、電子写真方式のレーザプリンタの一例である中間転写体28を採用したタンデム方式の上記印刷部106の断面図である。図13を用いて、電子写真方式のカラー画像形成装置における印刷部106の動作を説明する。印刷部106は、プリンタコントローラ108が処理した記録データに応じた露光時間に応じて露光光を駆動し、感光ドラムすなわち像担持体上に静電潜像を形成して、この静電潜像を現像して各色成分の単色トナー像を形成する。この単色トナー像を中間転写体28上で重ね合わせて多色トナー像を形成し、この多色トナー像を印刷媒体11へ転写してその多色トナー像を熱定着させる。中間転写体も像担持体である。帯電部は、Y,M,C,Kの色毎に感光体22Y,22M,22C,22Kを帯電させるための4個の注入帯電器23Y,23M,23C,23Kを備え、各注入帯電器にはスリーブ23YS,23MS,23CS,23KSを備えている。
【0020】
像担持体すなわち感光体(感光ドラム)22Y,22M,22C,22Kは、駆動モータにより画像形成動作に応じて反時計周り方向に回転される。露光部であるスキャナ部414Y,414M,414C,414Kは感光体22Y,22M,22C,22Kを露光光で照射し、感光体22Y,22M,22C,22Kの表面を選択的に露光する。この結果、静電潜像が感光体表面に形成される。現像部である現像器26Y,26M,26C,26Kは、静電潜像を可視化するために、Y,M,C,Kの色毎のトナー現像を行う。各現像器には、スリーブ26YS,26MS,26CS,26KSが設けられている。なお、各々の現像器26は脱着が可能である。スキャナ部は、レーザビームの幅や強度によって各画素の階調表現が可能である。
【0021】
転写部である一次転写ローラ27Y,27M,27C,27Kは、時計回りに回転する中間転写体28を感光体22Y,22M,22C,22Kに押圧して、感光体上のトナー像を中間転写体28へと転写する。一次転写ローラ27に適当なバイアス電圧を印加すると共に感光体22の回転速度と中間転写体28の回転速度に差をつけることにより、効率良く単色トナー像を中間転写体28上に転写する。これを一次転写という。
【0022】
ステーション(各色成分の画像形成部をこう呼ぶこともある。)毎の単色トナー像が合成された多色トナー像は、中間転写体28の回転に伴い二次転写ローラ29まで搬送される。その中間転写体28上の多色トナー像が、給紙トレイ21から二次転写ローラ29へ狭持搬送された印刷媒体11上に転写される。この二次転写ローラ29には、適当なバイアス電圧が印加され、静電的にトナー像が転写される。これを二次転写という。二次転写ローラ29は、記録媒体11上に多色トナー像を転写している間、29aの位置で印刷媒体11に当接し、印字処理後は29bの位置に離間する。
【0023】
定着部31は、印刷媒体11に転写された多色トナー像を印刷媒体11に溶融定着させるために、印刷媒体11を加熱する定着ローラ32と記録媒体11を定着ローラ32に圧接させるための加圧ローラ33を備えている。定着ローラ32と加圧ローラ33は中空状に形成され、内部にそれぞれヒータ34、35が内蔵されている。定着部31は、多色トナー像を保持した印刷媒体11を定着ローラ32と加圧ローラ33により搬送するとともに、熱および圧力を加え、トナーを印刷媒体11に定着させる。
【0024】
トナー定着後の印刷媒体11は、その後図示しない排出ローラによって図示しない排紙トレイに排出して画像形成動作を終了する。クリーニング部30は、中間転写体28上に残ったトナーをクリーニングする。中間転写体28上に形成された4色の多色トナー像を記録媒体11に転写した後に残った廃トナーは、クリーナ容器に蓄えられる。このようにタンデム方式のレーザカラープリンタでは、各色成分毎に印字部415及びスキャナ部414を含む画像形成部を有している。画像形成装置100への操作者の指示は、画像形成装置100に装備された操作部103から行われ、これら一連の動作はデータ処理部101内の制御部(図2のCPU208)で制御される。また、操作部103における入力状態の表示及び処理中の画像データの表示等は表示部102に表示される。尚、この画像形成装置100では、後述する各種処理を実行するための各種操作及び表示をユーザに提供するユーザインタフェースを、表示部102及び操作部103によって実現している。
【0025】
次に、プリンタコントローラ108の詳細構成について図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るプリンタコントローラ108の詳細構成を示すブロック図である。
【0026】
このプリンタコントローラ108はホストI/F部202を有する。このホストI/F部202には、データ処理部101から送出された印刷データや、この画像形成装置100の動作を指示する設定を入力する入力バッファ(不図示)が設けられている。またホストI/F部202には、データ処理部101へ送出する信号や機器情報データを含む出力データを一時的に保持する出力バッファ(不図示)が設けられている。またホストI/F部202は、データ処理部101との間で送受信される信号や通信パケットの入出力部を構成するとともに、データ処理部101との間の通信制御を行う。
【0027】
ホストI/F部202を介して入力された印刷データは、画像データ発生部203に与えられる。ここで、入力される印刷データは、例えば、PDL(ページ記述言語)データで構成される。画像データ発生部203は、予め定められている解析部により、入力された印刷データの解析(例えば、PDL解析処理)を行う。そして、その解析結果から中間言語を生成し、更に画像処理部205が処理可能なビットマップデータを生成する。
【0028】
具体的には、印刷データの解析とその解析による中間言語情報の作成を行うとともに、その中間言語情報の作成と並行してラスタライズ処理を行う。このラスタライズ処理では、印刷データに含まれる表示色RGB(加法混色)から印刷部106が処理可能なYMCK(減法混色)への変換が含まれる。またこの処理には、印刷データに含まれる文字コードから予め格納されているビットパターン、アウトラインフォント等のフォントデータへの変換等の処理が含まれる。その後、ラスタライズ処理では、ページ単位或はバンド単位でビットマップデータを作成し、画像処理部205において印刷処理が可能なビットマップデータを生成する。こうして作成されたビットマップデータは画像メモリ204に格納される。次に画像メモリ204から読み出されたビットマップデータに対して、画像処理部205で、画像を変形する処理や、ディザパターンを用いる擬似階調処理を施し、印刷部106において印刷処理が可能なハーフトーンデータを生成する。生成されたハーフトーン画像データは画像メモリ部204に格納される。ここでは例えば、画像を変形する処理としてトラッピング処理が行われる。
【0029】
画像メモリ204から読み出されたハーフトーンデータは、エンジンI/F部206を介してビデオ信号として印刷部106に転送される。エンジンI/F部206は、印刷部106へ転送する記録データ(ビデオ信号)を一時的に保持する出力バッファ(不図示)と、印刷部106から送出された信号を一時的に保持する入力バッファ(不図示)とが設けられている。またエンジンI/F部206は、印刷部106との間で送受信される信号の入出力部を構成するとともに、印刷部106との間の通信制御をも司っている。
【0030】
また操作部103におけるユーザの操作入力によって出力されるモード設定に関する指示等の各種指示は、操作部I/F部201を介して入力される。この操作部I/F部201は、操作部103とCPU208との間のインタフェースを構成する。CPU208は、操作部103もしくはデータ処理部101から指示されたモードに応じて、上述の各部に対する制御を行う。この制御はROM209に格納されている制御プログラムに基づいて実行される。このROM209に格納されている制御プログラムは、システムクロックによってタスクと称されるロードモジュール単位に時分割制御を行うためのOSを含んでいる。またこの制御プログラムには、このOSによって機能単位に実行制御される複数のロードモジュールが含まれる。CPU208による演算処理の作業領域としては、RAM210が使用される。CPU208を含む各部は、システムバス207に接続されている。このシステムバス207は、アドレスバスとデータバス及び制御信号バスとを有している。
【0031】
次に、画像処理部205の詳細構成について図3を用いて説明する。
【0032】
図3は、本発明の実施の形態に係るプリンタコントローラ108の画像処理部205の構成を示すブロック図である。
【0033】
レジスタ部303は、複数のレジスタ(不図示)で構成される。画像処理部205に対するCPU208からの設定は、CPU208がレジスタ部303の各レジスタに適切な値を書き込むことで行なわれる。
【0034】
画像メモリ部204から読み出されたビットマップデータを、画像変形処理部301は、レジスタ部303の各レジスタに基づき、版毎に画像の形状を変える処理を行う。尚、この画像変形処理に必要となる各色(CMYK)のレーザ光の走査ラインの曲がり情報は、RAM210もしくはROM209に格納されておりCPU208の制御のもと読み出し、利用ができる。次に画像変形処理部301で処理されたビットマップデータを用いて、その他画像処理部302において、例えば、ガンマ補正処理、ディザパターンを用いる擬似階調処理を施すことにより、ハーフトーンデータを生成する。画像処理部205において生成したハーフトーンデータは、システムバス207を介して画像メモリ部204へ送り出す。
【0035】
次に、露光手段の取り付け位置精度に起因した、レーザ光の傾きや曲がりによる画像の品質の低下に関して、図4、図5、図6、図7を参照して説明する。
【0036】
図4(A),(B),(C),(D),(E)、(F),(G)は、画像変形処理を説明する図である。
【0037】
図4(A)は画像変形処理を行う前の1ページ分のビットマップデータを示す図であり、図4(B)は、図4(A)のビットマップデータの分版した画像を示す図である。図4(C),図4(D)はそれぞれ図4(A)、図4(B)の一部を拡大して示す図である。
【0038】
図4(E)は、分版した画像に対するトラッピング処理を説明するための図である。まず分版したM版に対して、注目画素が設定された閾値以下の値で、かつ他の版、ここではK版の注目画素位置において指定された閾値以上の値であるかを判断する。その結果、注目画素が図4の(E)の位置かどうか判断できる。次にM版の注目画素を中心とした参照ウィンドウ内に指定された閾値以上の値の画素が存在するかどうかを探索する。このように参照ウィンドウ内を探索した結果、該当する画素が探索されなかった場合、この注目画素に対するトラッピング処理を終了し、注目画素を主走査方向に隣接する画素に移動する。該当する画素が探索された場合、画像の色の境界であると判定し、探索された画素のうち最も小さい値を注目画素に与える。その後注目画素を主走査方向に隣接する画素に移動する。注目画素を順次移動させながらこの処理を繰り返すことで注目画素を中心とした参照ウィンドウの幅分のトラッピング処理が可能となる。図5(A)、(B)はM版に対してK版が版ずれを起こした例を示す図である。このようにトラッピング処理をビットマップデータに施すことにより、版ずれを起こしたときにも、色と色の間に白い隙間が見えることを少なくすることが出来る。尚、注目画素は必ずしも参照ウィンドウの中心でなくてもよく、参照ウィンドウ内に含まれていれば良い。
【0039】
次に、図6は、レーザ光の走査ラインの曲がりを説明する図である。図において、横軸は走査ラインの主走査方向を示し、縦軸は副走査方向を示している。本来印刷すべき走査ラインは直線である。
【0040】
図7は、このようなレーザ光の走査ラインの曲がりの生じたプリンタエンジンにより印刷された画像を示す図である。図7(A)ではM版のレーザ走査が図6で示すように曲がっていた場合の、印刷画像を示す図である。図7(B),(C)は図7(A)の一部を拡大して示す図である。本来印刷すべき走査ラインに対しM版のレーザ走査曲がりの影響により、本来生じないはずのM版とK版の重なりが図7(B)で示すように大きくなり、また図7(C)ではトラッピング処理を施したにも関わらず白く隙間が生じることになる。図8はこの走査ラインの曲がりにあわせて、トラッピング幅を変えている様子を示している。
【0041】
具体的には、トラッピングを施す版の走査レーザの曲がり状況が+(プラス)方向になっている部分では、色の境界の上端方向のトラッピング、すなわち上成長のトラッピング幅を大きくする。さらに、色の境界の下端方向のトラッピング、すなわち下成長、のトラップピング幅を小さくする。−(マイナス)方向になっている部分では上成長のトラッピングの幅を小さくし、下成長のトラッピングの幅を大きくする。ここで、+(プラス)方向とは、副走査方向、すなわち印刷画像の下端方向を指し、−(マイナス)方向とは、副走査方向とは逆の方向、すなわち印刷画像の上端方向を指す。図9(A)、(B)、(C)は、このように走査ラインの曲がりにあわせて、トラッピング幅を変えることにより、露光走査の曲がりが生じたプリンタエンジンにおいても適切なトラッピング結果を得ることができる様子を示す図である。
【0042】
本実施の形態に係る画像変形処理部301は、トラッピング幅を走査ラインの曲がりに合わせて変えるために、参照ウィンドウの大きさを補正する。
【0043】
次に本発明の実施の形態に係る画像変形処理部301の処理について、図10、図11、図12を参照して説明する。
【0044】
図10は、本発明の実施の形態1に係る画像変形処理部301に走査ラインの曲がりを指定する方法を説明するための図である。ここではビットマップデータの1ラインを副走査方向に1ライン分曲がっている主走査位置で分割して考える。以下、この分割された一つをセグメントと呼ぶこととする。尚、以下の説明において、セグメント長、各セグメントが基準ラインに対して何ラインのずれ量かを示す曲がり情報RegSegPos等の英字で示す名称は、レジスタ部303のレジスタ名を示している。前述のようにCPU208は、これらの各レジスタに値を書き込むことにより、画像変形処理部301に対して処理内容を指示する。
【0045】
セグメントの長さを設定するレジスタ群RegSegLen[i]を画像処理部205のレジスタ部303に設ける。各セグメントが基準ラインに対するずれ量を指示するレジスタ群RegSegPos[i]を必要な数だけ設ける。尚、変数iは、何番目のセグメントであるかを示す。また、ここでは、レーザの曲がりが主走査位置に応じて、何ライン分副走査方向にずれているかの基準となる基準ラインをレーザ曲がりの+方向の最大値と−方向の最大値との中間点としている。ブラックオーバプリント等、特定の色に対して他の色のみがトラッピングを行う場合、この基準ラインをK版のレーザ曲がりとしてもよい。
【0046】
図11は、本発明の実施の形態1に係る参照ウィンドウの大きさの補正を説明するための図であり、図12は、本発明の実施の形態1に係る画像変形処理部301の処理を示すフローチャートである。尚、以下の説明では、説明を簡単にするために各データなどの名称を各対応するレジスタ名で代用する。
【0047】
まずステップS100で、CPU208の指示により画像メモリ204からビットマップデータが画像変形処理部301に入力されると、各処理ラインでの初期化を行う。まず、トラッピング処理した画素数を示す主走査位置ポインタx_cntを「0」で初期化する。さらに参照すべきレジスタ群を選択するための変数i(index)を「0」で初期化する。ステップS101では、前述したトラッピング処理に必要となる参照ウィンドウの大きさを初期化する。尚、初期化する参照ウィンドウ幅は、予めきめられた値としても決定してもよいし、またレジスタ部303に存在するレジスタ値(不図示)によって決定してもよい。
【0048】
次に、ステップS102に進み、基準ラインに対するずれ量RegSegPos[i]を参照し、曲がり情報が基準ラインに対してどの方向にずれているかを判定し、参照ウィンドウを更新する処理に移行する。判定結果が−(マイナス)の場合は、ステップS103へ移行し、注目画素を中心とした参照ウィンドウの幅を上端方向へRegSegPos[i]分大きくし、下端方向はRegSegPos[i]分小さく更新する。判定結果が+(プラス)の場合は、ステップS104へ移行し、注目画素を中心とした参照ウィンドウの幅を上端方向へRegSegPos[i]分小さくし、下端方向はRegSegPos[i]分大きく更新する。−でも+でもない場合は、所定の参照ウィンドウ幅を更新せずステップS105へ移行する。尚、ステップS102、S103で更新する幅をRegSegPos[i]に重み付けをし、例えばRegSegPos[i]が+2のときに1つ分の幅を更新する、というようにしても良い。
【0049】
ステップS105では、前述したトラッピング処理を行う。ここで、使用する参照ウィンドウは図11(C−i),(C−ii),(C−iii)で示されるような形となる。従って、例えば図11(C−i)のように処理の注目画素に対して、上端方向に大きく更新された参照ウィンドウを使用するとき、上端方向に周辺画素の閾値以上の値が探索される可能性が高くなり、結果として下成長のトラッピング幅が大きくなる。
【0050】
次にステップS105において、1画素分トラッピング処理が完了したので、S106において主走査位置ポインタx_cntを1加算して更新する。次に更新した主走査位置ポインタx_cntとRegSegLen[i]を比較し、一致しなかった場合は、ステップS105へ移行し、同じ大きさの参照ウィンドウを用いて次の画素のトラッピング処理を行う。一致した場合、次のステップS108へ移行し、主走査位置ポインタを0に初期化する。さらにレジスタ変数iを1加算して更新する。次にステップS109において、1ラインの処理が完了しているかを判定し、まだ完了していない場合は、ステップS101へ移行する。このようにすることで、1セグメントの長さ毎に参照ウィンドウの大きさをレーザの走査曲がりに応じて更新することができる。次にステップS110において、1ページ処理、すなわち1ページの全ラインを処理を完了したかを判定し、完了していない場合は、ステップS101へ移行し、次のラインの処理を行う。
【0051】
以上のように、画像変形処理部301は、上記処理により、特定の画像の色の領域の変形を1ページ分のビットマップデータに対し処理を施す。
【0052】
そして、この特定の画像の色に応じた画像を走査するレーザの取り付けに応じた曲がり情報に従い、変形(トラッピング)を行なうための参照ウィンドウ補正をする。その結果得られるトラッピング領域により、レーザの取り付けにともなう画像の歪みを補償して、白抜けや無駄な画像の重なりの発生を抑止できる。
【0053】
以上説明したように本実施の形態1によれば、各色毎に走査ラインの曲がりが発生している場合でも、レーザ曲がり情報を得ることで主走査位置に応じてトラッピングの上成長幅と下成長幅を調整にすることができる。従来では上下左右に予め設定された値のトラッピング幅に基づいてトラッピング処理を行っていたため、レーザの曲がりのあるプリンタエンジンにおいては、白く隙間が生じたり不要なトナーの重なりが多く生じたとする。その結果、印刷品質の低下を招いていた。一方、本実施例の処理を行うことによりレーザ曲がりに応じたトラッピング処理を行うことができるため、図9で示すようにトラッピング処理では版ずれによる白ぬけやトナーの不要な重なりを防ぐことができる。
【0054】
なお本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェイス機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。また本発明の目的は、前述の実施形態の機能を実現するプログラムコードを記録した記録媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体およびプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0055】
また、本発明には、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた場合についても、本発明は適用される。その場合、書き込まれたプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態に係るカラー画像形成装置(多機能装置)の構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るプリンタコントローラの詳細構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るプリンタコントローラの画像処理部の詳細構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係るトラッピング処理を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態に係るトラッピング処理を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態に係るレーザ光の曲がりに関する説明をするための図である。
【図7】本発明の実施形態に係るレーザ光の曲がりに対するトラッピングの補正を説明をするための図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係るトラッピング処理の結果を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係るトラッピング処理の結果を説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係るレーザ光の曲がり情報を指定する方法を説明するための図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係るトラッピング処理に使用する参照ウィンドウの補正を説明するための図である。
【図12】本発明の実施の形態1に係るトラッピング処理の動作フローを説明するための図である。
【図13】本実施例の電子写真方式のレーザプリンタの一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトナーを用いて画像形成する画像形成装置であって、
画像形成時のレーザによる走査ラインの曲がりに応じた曲がり情報を設定する設定手段と、
注目画素と周辺画素からなる参照ウィンドウ内の画像データに基づいて、該注目画素の値を補正することで特定の画像の色の領域を変形する画像変形処理手段と、
前記曲がり情報と前記画像変形処理手段が処理する画素の主走査位置に基づき前記参照ウィンドウを補正する参照ウィンドウ補正手段とを有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成装置は、ブラックオーバプリントまたはトラッピングを行うことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記曲がり情報は、走査ラインを複数のセグメントに分割した場合の、各セグメントが画像変形処理の基準のラインに対して上或いは下にずれたラインを示す情報であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
複数のトナーを用いて画像形成する画像形成方法であって、
画像形成時のレーザによる走査ラインの曲がりに応じた曲がり情報を設定し、
注目画素と周辺画素からなる参照ウィンドウ内の画像データに基づいて、該注目画素の値を補正することで特定の画像の色の領域を変形し、
前記曲がり情報と前記画像の色の領域の変形処理で処理される画素の主走査位置に基づき前記参照ウィンドウを補正する
ことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−5825(P2010−5825A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165076(P2008−165076)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】