説明

画像形成装置および画像形成条件の調整方法

【課題】 ハーフトーン処理済みの画像データが入力されたとしても、好適に画像形成条件を調整する。
【解決手段】 入力された画像データに予め施されているハーフトーン処理と実質的に同等のハーフトーン処理を適用してパッチ像を形成する。また、形成されたパッチ像の濃度を検出し、検出された濃度に応じて画像形成条件を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において形成される画像の品質を安定させることは非常に重要である。一般に、電子写真方式の画像形成装置では、画像形成処理中の各部(例:色材の電荷保持量など)の変動や、設置環境(例:温度と湿度など)の変動に依存して、画像の形成濃度(例:色材量など)が不安定となる。また、感光体の感度の変動や、転写体の環境による変化によっても、画像の形成濃度が不安定となる。
【0003】
ところで、形成される画像を安定化させる手法として、現像条件を制御する方式(特許文献1)と、画像データを変更する方式(特許文献2)とが主流となっている。
【0004】
現像条件を制御する方式では、まず、感光体または転写体の上にパッチ像が形成される。次に、形成されたパッチ像のトナー濃度が検出される。そして、検出されたトナー濃度に応じて、現像器内の磁性粉とトナーとの割合が制御される。
【0005】
画像データを変更する方式でも、同様に、形成されたパッチ像のトナー濃度が検出される。そして、検出されたトナー濃度に応じて、γLUT(ガンマルックアップテーブル)の内容が変更される。γLUTは、画像データを1次元変換するためのテーブルである。入力されたデータ(主に0から255)をどのような出力値で出力させるか(こちらも0〜255)を、このγLUTによって決定することができる。
【特許文献1】特開平09−319270号公報
【特許文献2】特開2003−228201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現像条件を制御する方式は、制御対象が現像条件であるため、応答性に課題がある。つまり変動が収まるまでの時間が比較的長くなってしまうという欠点がある。
【0007】
画像データを変更する方式は、現像条件を制御する方式と比較すると、制御の応答性の観点では有利である。この方式では、パッチ像の検出結果のフィードバック対象がγLUTだからである。なお、この方式では、γLUTを用いた画像データの変更処理が先に実行され、その後でハーフトーン処理が実行されなければならない。
【0008】
しかしながら、近年、ハーフトーン処理済み画像データが画像形成装置に入力されることが多くなりつつある。1Bit Tiffに代表されるハーフトーン処理済み画像データは、2値(すなわち、0と255)のデータしか有していない。従って、これらのデータを、γLUTを用いて処理したとしても、0は0、255は255に変換されるに過ぎない。よって、ハーフトーン処理済み画像が入力されてしまうと、もはや、パッチ像に基づいてγLUTを変更する方式は無意味となってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、このような課題および他の課題の少なくとも1つを解決することを目的とする。なお、他の課題については明細書の全体を通して理解できよう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、入力された画像データに予め施されているハーフトーン処理の処理内容を判別し、判別された処理内容に従ったハーフトーン処理を適用してパッチ像を形成する。そして、形成されたパッチ像の濃度を検出し、検出された濃度に応じて画像形成条件を調整する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、入力された画像データに予め施されているハーフトーン処理と実質的に同等のハーフトーン処理を適用してパッチ像が形成される。また、形成されたパッチ像の濃度が検出され、検出された濃度に応じて画像形成条件が調整される。これによって、ハーフトーン処理済みの画像データが入力されたとしても、好適に画像形成条件を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る幾つかの実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、実施形態に係る画像形成装置の例示的な構成を示す図である。ここでは、画像形成装置の一例として、電子写真方式のカラーレーザービームプリンタ100を取り上げる。
【0014】
プリンタ100は、いわゆるロータリ型の画像形成ステーションを採用している。なお、本発明は、タンデム型の画像形成ステーションに対しても同様に適用できることはいうまでもない。タンデム型の画像形成ステーションは、一般に、並列に配置された複数の画像形成ユニットと、中間転写ベルトとによって構成される。なお、タンデム型の画像形成ステーションの構成は、当業者に知られているので詳細な説明は省略する。
【0015】
発光部(スキャナ部)101は、光源、ポリゴンミラーなどにより構成される。光源(例:レーザーダイオードやLEDなど)からの出力光102は、印刷データに基づいて得られる色成分毎の画像データにより変調されている。ポリゴンミラーによって感光ドラム103を走査することで静電潜像が形成される。感光ドラム103は、図示しない駆動モータの駆動力が伝達され、画像形成動作に応じて反時計回り方向に回転する。
【0016】
この静電潜像が色材(例:トナーなどの現像剤)により現像されると、可視画像(トナー像)が得られる。ロータリ現像器104は、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の現像を行う3個のカラー現像器を備えている。ロータリ現像器104が回転することで、感光ドラム103へと転写されるトナーを選択することができる。この例では、黒色の現像器105は、ロータリ現像器104とは別体で設けられている。
【0017】
感光ドラム103上に形成された可視画像は、順次、中間転写体106へと多重転写される。こうしてカラー可視画像が形成される。
【0018】
用紙カセット107に積載されている転写材(用紙など)Pは、複数のローラを含む給紙部108によって転写部109へと搬送される。カラー可視画像は、転写部109において、転写材Pへと転写される。さらに、定着部110において、転写材Pにカラー可視画像が定着される。
【0019】
濃度検出センサ111は、中間転写体106に形成される可視画像の濃度(色材量)を検出するセンサである。詳細な構成については後述する。
【0020】
図2は、実施形態に係るコントローラ部の例示的なブロック図である。CPU201は、コントローラ部200の各部を統括的に制御する制御回路である。ROM202は、制御プログラムなどを記憶するための不揮発性の記憶部である。RAM203は、CPU201のワークエリアとして機能する揮発性の記憶部である。HDD(ハードディスクドライブ装置)204は、種々のデータを記憶する大容量の記憶部である。
【0021】
インターフェース部205は、PC(パーソナルコンピュータ)や他のコントローラなどから送信されてきた印刷対象データ(例:ページ記述言語(PDL)により記述されたデータなど)、PDF形式やTiff形式などの画像データを入力する。ハーフトーン判別部206は、入力された画像データに予めハーフトーン処理がなされているか否かを判別したり、また、ハーフトーン処理の内容を判別したりする。
【0022】
RIP(Raster Image Processor)部207は、入力された画像データをビットマップ画像等に変換する(ラスタ処理)。色変換部208は、入力された画像データの色空間を変換する。例えば、RGB、L*a*b*などの色空間を、プリンタ部の色空間であるCMYK等に変換する。
【0023】
なお、ラスタ処理および色変換された画像データは、プリンタインターフェース制御部210を介してエンジン制御部(図3)へと送信される。なお、この画像データとともに、後述する周波数情報を加味したパッチ像のデータが送信されてもよい。このパッチ像のデータは、例えば、ハーフトーン判別部206によりハーフトーン処理済みと判別された場合に生成される。
【0024】
表示部209は、液晶表示装置などの表示回路である。例えば、プリンタ100のステータス状態、コントローラ200のステータス状態などを表示する。なお、表示部209を、タッチパネル方式の操作部としてもよい。
【0025】
図3は、実施形態に係るエンジン制御部とプリンタエンジン部の例示的なブロック図である。プリンタ100は、コントローラ部200、エンジン制御部300およびプリンタエンジン部350とに区分される。エンジン制御部300は、主に次のようなユニットを備えている。ビデオインターフェース301は、コントローラ部200と接続するためのインターフェース回路である。メイン制御部310は、例えば、メイン制御CPU311、画像処理ゲートアレイ312および画像形成部313を備えている。
【0026】
メイン制御CPU311は、プリンタ部の各部を統括的に制御するとともに、サブCPUとしてのメカ制御CPU320を制御する制御回路である。画像処理ゲートアレイ312は、インターフェース301により受信された画像データにγ補正等を施す画像処理回路である。画像形成部313は、レーザーの露光量や発光時間を制御する。メカ制御CPU320は、駆動部351と、センサ部352、給紙制御部353、及び高圧制御部354などをそれぞれ制御する。
【0027】
駆動部351は、モータ、クラッチ、ファン等である。センサ部352は、転写材Pの位置検出センサ等である。給紙制御部353は、転写材Pの供給を制御する。高圧制御部354は、感光ドラム103の帯電量や転写ローラの転写バイアスなどを制御する。
【0028】
また、プリンタエンジン部350は、定着ユニット110、駆動部351、第1のセンサ部352、給紙制御部353、帯高圧制御部354および第2のセンサ部355などを含む。なお、第2のセンサ部355は、温度センサ、湿度センサ、トナー残量検知センサなどである。
【0029】
図4は、実施形態に係る濃度検出センサの一例を示す図である。濃度検出センサ111は、第2のセンサ部355に含まれているものとする。濃度検出センサ111は、LED(発光ダイオード)等の発光部400と、PD(フォトディテクタ)等の受光部401で構成される。発光部400から中間転写体106に照射された光Ioは、中間転写体106の表面で反射する。反射光Irは、受光部401で受光され、受光部401から受光光量406が出力される。
【0030】
受光部401で計測された反射光Ioの光量は、LED光量制御部403でモニタされる。さらに、LED光量制御部403は、反射光Ioの光量をメイン制御CPU311に通知する。メイン制御CPU311は、照射光Ioの発光強度405と、反射光Irの受光光量406(測定値)に基づいて、パッチ像の濃度を算出する。
【0031】
この濃度検出センサ111は、形成される画像の色調を安定化させるための制御に使用される。すなわち、濃度検出センサ111は、中間転写体106上に試験的に形成されたパッチ像を検知する。
【0032】
安定化制御の代表例は、Dmax制御とハーフトーン制御である(特開平7−92385号参照)。いわゆる、Dmax制御では、まず、露光量、現像電圧および帯電電圧を変えながら、複数の色材画像を試験的に作成する。作成された各色材画像の濃度が計測され、計測値に基づいて、各色の目標濃度に対応した露光量、現像電圧および帯電電圧値が算出される。
【0033】
一方、ハーフトーン制御では、例えば、Dmax制御で算出された露光量、現像電圧、帯電電圧値が使用される。また、スクリーンなどのハーフトーン処理を行った数段階の色材画像が試験的に作成される。作成された色材画像の濃度が測定され、測定された濃度に基づいて、γLUT(ガンマルックアップテーブル)が作成される。γLUTは、入力信号に対する出力結果が目標濃度特性を満たすように入出力の関係を補正するためのテーブルである。このγLUTは、画像処理GA312に保存され、次の画像形成の際に使用される。
【0034】
ところで、ユーザのPCや他のサーバーなどにおいて予め網点処理された1BitTiffなどの画像データが、プリンタ100に入力されることがある。本実施形態によれば、画像処理GA312は、このようなハーフトーン処理済みの画像データには、さらなるハーフトーン処理を実行せずに画像形成を実行する。上述したように、ハーフトーン処理済みの画像データについては、γLUTに反映できない。
【0035】
そこで、本実施形態では、コントローラ200に備えられるハーフトーン判別部206が、入力された画像データに予め施されているハーフトーン処理の処理内容を判別し、判別された処理内容に従ったハーフトーン処理を適用してパッチ像を形成する。そして、形成されたパッチ像の濃度を検出し、検出された濃度に応じて画像形成条件を調整する。
【0036】
<判別処理の詳細>
図5は、実施形態に係るハーフトーン判別部の例示的なブロック図である。判定部501は、インターフェース部205を通じて入力された画像データに予めハーフトーン処理が施されているか否かを判定する。処理内容特定部502は、例えば、画像データの周波数情報に基づいて、画像データに施されているハーフトーン処理の内容を特定する。FFT部503は、画像データを2次元フーリエ変換することで周波数情報を取得する。なお、FFT部503に代えて、後述のラベリング部を採用してもよい。パッチ生成部504は、特定された処理内容に従ったハーフトーン処理を適用してパッチ像のデータを生成する。パッチ像は、最終的に像担持体(中間転写体106)上に色材像として可視化される。
【0037】
判定部501は、画像データに付随するタグを参照することで、イメージデータ(写真、ビットマップ系)か、テキストデータか、あるいは線画などのグラフィックデータかを判別する。例えば、PDLコードを参照すれば、何れのデータであるかを簡単に判別できる。コントローラ部200が、TiffやBitmapなどの画像データを直接入力できる場合には、ファイルの拡張子やヘッダー情報等により、何れのデータであるかを判別できる。
【0038】
このように、ビットマップ画像の有無を判断すれば、処理速度を向上させることができる。すなわち、ビットマップ画像を含まない入力データについては、周波数解析を行う必要がない。よって、処理に時間のかかる周波数解析を省略できれば、画像形成処理の全体の処理速度が向上することとなる。
【0039】
さらに、判定部501は、画像データに予めハーフトーン処理が施されているか否かを判定する。また、処理内容特定部502は、画像データの周波数特性を取得する。処理内容特定部502は、例えば、2次元FFT(高速フーリエ変換)を用いて、入力された画像の周波数解析を実行する。これにより、ハーフトーンパターンを検出することができる。2次元FFTに関しては、当業者に知られているので、詳細な説明を省略する。
【0040】
図6は、2次元FFT解析の結果を表す概念図である。横軸は、水平周波数を示し、縦軸は、垂直周波数を示している。(a)〜(b)は、代表的なハーフトーンパターンを示している。また、(a)〜(b)のハーフトーンパターンに対応する2次元FFTの解析結果にも(a)〜(b)参照符号を付している。なお、縦軸および横軸ともに原点から離れるほど周波数が高くなる。周波数が高いということは、ハーフトーン処理では、線数が高くなることを意味する。
【0041】
また、2次元FFT解析によって、スクリーン角度を判別できる。図6の(d)が示すように、原点から45度の方向にピークが来る場合、斜めラインのパターン(d)となる。図6についてはラインを用いて説明を行っている。しかしながら、あるピークと原点とを結ぶ直線と90°をなす方向にも同じようなピークが存在する場合、ハーフトーンの成長方法は、ドット成長方法となる。
【0042】
このように、周波数解析によって、ハーフトーンの処理内容(例えば、線数、角度、成長方法(ライン成長またはドット成長)を判別できる。
【0043】
図7Aは、200lpiの実画像を示している。また、図7Bは、200lpiの実画像を2次元FFT変換して得られた振幅特性を表す濃淡画像を示している。また、図7Cは、人物の目の周辺部の実画像を示している。また、図7Dは、人物の目の周辺部の実画像を2次元FFT変換して得られた振幅特性を表す濃淡画像を示している。
【0044】
図7Bの周波数解析結果は、200lpiの実画像(図7A)に周期的なパターンが含まれていることを示している。水平周波数の軸上に2つのピークが存在するからである。また、図7Dを見ると、人物画像(図7C)については、中心以外にピークが存在しないことがわかる。よって、これらの特性を活用し、ハーフトーンのパターンを判別することできる。
【0045】
本実施形態によれば、判定部501は、最も振幅の高い部分であるピークを抽出する。図7Bにおいて、点線の円で囲まれた部分がピークである。抽出されたピークの位置と、中心からの距離とを用いて、実際の周波数である線数を算出できることはいうまでもない。
【0046】
<パッチ生成>
次にパッチ生成方法について説明する。ハーフトーン判別部206のパッチ生成部504は、特定されたハーフトーン処理の内容に、実質的に同内容のハーフトーン処理を適用した中間調のパッチ像を生成する。例えば、入力された画像データの後ろに、パッチ像のデータが追加され、エンジン制御部300に出力される。
【0047】
図8は、基本解像度、線数、および角度の関係を示す図である。本実施形態によれば、一例として、基本解像度を2400dpiとしている。ここで、基本解像度は、プリンタエンジン部における書き込み解像度を意味する。なお、2400dpiとした理由は、処理速度と画像品質のトータルバランスがよいからである。
【0048】
図8において、主走査画素周期と副走査画素周期は、それぞれドットの周期を表している。すなわち、周波数解析結果において、主走査方向にX画素、副走査方向にY画素離れたところに次のドットがくるときの線数(LPI<Line/Inch>)と角度が、図8に示したテーブルから取得できる。例えば、主走査方向に8画素、副走査方向に10画素離れたところに次のドットがくるときの線数は、197線であることが図8のテーブルからわかる。このテーブルは、例えば、ROM202またはHDD204に記憶しておくことで、ハーフトーン判別部206から参照できる。
【0049】
パッチ生成部504は、図8のテーブルを参照して得られた情報に基づいて、例えば、2cm×2cmサイズの四角パッチを生成する。パッチは、例えば、塗りつぶした部分の面積率が30%程度となるよう生成する。なお、全てぬりつぶした状態を100%とすることはいうまでもない。
【0050】
面積率を30%とした理由は、濃度変動が同じであれば、高濃度部よりも、ハイライト部や中間調部の方が目立つからである。また、実験機で検証したところ、面積率30%は、濃度特性が不安定な領域であるとわかったからである。なお、必ずしも面積率を30%にする必要はない。現像器のサイズ、方式、色材特性になどにより、面積率は好適に変更されるべきだからである。ただし、目の視感度を考慮すれば、20%ないし80%の面積率が妥当であろう。
【0051】
次に、面積率が30%となるように塗りつぶされたパッチの生成方法を説明する。もちろん、面積率は他の値であってもよい。
【0052】
パッチ生成部504は、特定部502により特定された処理内容(スクリーン線数、角度、および成長方法)に基づいて、ディザマトリクスを生成する。ディザマトリクスは、入力された画像データをどのような網点で再現するかを表す一種の変換行列である。より詳しく述べると、線数によってドットの間隔が決定される。また、角度によって網点配列(周期パターン)が決定される。この時点でディザマトリクスの外形を決定できる。そして成長方法(つまりドット成長かライン成長か)によって、ディザマトリクス内の塗りつぶし順番が決定される。このような作業を経て最終的に網点パターンが生成される。
【0053】
図9は、生成されたディザマトリクスを使った30%までの塗りつぶし例を示す図である。ここでは、オフセット印刷の黒色(BK)についてよく使用される170線(LPI)かつ45度の網点パターンを一例として説明する。このような網点パターンは、図8のテーブルにおいて、ドット間隔が主走査方向で10画素、かつ副走査走査方向で10画素の網点パターンとして表現されている。また、ドット成長であるため、塗りつぶし順序は、ラウンドドット(基点を囲むような順序)である。パッチ生成部504は、ディザマトリクス内の画素数と塗りつぶした画素の数との比率が30%になった時点で成長を停止させる。このようにして生成されたパッチは、入力画像の後端に付け加えられて、エンジン制御部300に出力される。
【0054】
なお、線数と角度との組み合わせごとに、あらかじめディザマトリクスがどのようなものになるのかをROM202またはHDD204に記憶しておくことが望ましいだろう。予め登録しておけば、ディザマトリクスの算出処理を省略できるからである。
【0055】
また、塗りつぶしの順序は、基点に対して、ひし型、四角形、円形またはラインに近いパターンを描くような順序となる。従って、塗りつぶしのルールをコンピュータプログラム化して保存しておいてもよい。また、各塗りつぶしの順序に従ったディザパターンを、ROM202などに予め記憶しておいてもよい。
【0056】
<安定性制御>
図10は、実施形態に係る安定性制御に関する例示的なフローチャートである。ステップS1001において、ハーフトーン判別部206は、入力された画像データに予め施されているハーフトーン処理の処理内容を判別する。判別方法の具体例は、上述した通りである。例えば、ハーフトーン判別部206の処理内容特定部502は、スクリーン線数等を入力画像データの周波数解析することで特定する。
【0057】
ステップS1002において、ハーフトーン判別部206は、判別された処理内容に従ったハーフトーン処理を適用したパッチデータを生成する。例えば、処理内容特定部502により特定されたスクリーン線数等に応じて、30%のパッチデータを生成する。このパッチデータがエンジン制御部300に送出される。エンジン制御部300のCPU311は、パッチデータに基づいて、発光部101、現像部104、105、感光ドラム103および中間転写体106を制御し、中間転写体106上に色材によるパッチ像を形成する。
【0058】
ステップS1003において、CPU311は、センサ部335の濃度検出センサ111によってパッチ像の濃度を検出する。
【0059】
ステップS1004において、CPU311は、検出されたパッチ像の濃度に応じて画像形成条件(発光部101の露光量など)を調整する。調整された画像形成条件は、次の画像形成から有効に適用される。すなわち、CPU311は、1枚目に検出された濃度をメモリ等に記憶しておき、記憶されている濃度と、2枚目以降の画像形成ごとに検出される濃度との差分(濃度差)ΔDに応じて、次回の画像形成に用いられる画像形成条件を変更する。
【0060】
図11は、実施形態に係る濃度差と発光強度との関係を示す図である。ここでは、露光量を発光強度により制御するものとして説明する。この図から明らかなように、濃度差がプラスであれば、発光強度はマイナス方向に調整される。反対に、濃度差がマイナスであれば、発光強度はプラス方向に調整される。
【0061】
なお、パッチ像は、用紙サイズの外側に位置するよう中間転写体106上に配置されることが望ましい。なぜなら、パッチ像が転写材Pに転写されることを回避するためである。
【0062】
また、パッチ像は、各色材(例:C、M、Y、K)ごとに中間転写体106上に形成され、濃度検出センサ111によって検出される。各色材ごとのパッチ像は重ならないように形成されることは言うまでもない。
【0063】
以上説明したように本実施形態によれば、入力された画像データに予め施されているハーフトーン処理と実質的に同等のハーフトーン処理を適用してパッチ像が形成される。そして、このパッチ像の濃度に応じて画像形成条件が調整される。によって、ハーフトーン処理済みの画像データが入力されたとしても、好適に画像形成条件を調整することができる。
【0064】
ハーフトーン処理の内容は、例えば、入力画像データを周波数解析することで判明するスクリーン周波数、スクリーン角度またはドット成長方法の少なくとも1つの観点から特定することできる。
【0065】
周波数解析は、当業界において、よく知られている2次元フーリエ変換を用いることができるため、実現しやすい利点もある。
【0066】
但し、2次元フーリエ変換は、比較的に多くの処理時間を必要とするため、印刷対象のデータが画像データでないときは、2次元フーリエ変換の実行を省略することが望ましい。省略すれば、画像形成に関する処理時間の短縮につながることはいうまでもない。
【0067】
[第2の実施形態]
図12は、第2の実施形態に係る安定性制御に関するさらに詳細かつ例示的なフローチャートである。本実施形態では、安定性制御についてさらに詳細な例を説明する。
【0068】
ステップS1201において、コントローラ部200のCPU201は、インターフェース部205を通じて、PCや他のサーバーで作成された印刷対象データが入力されたか否かを判定する。印刷対象データが入力された場合は、ステップS1202に進む。
【0069】
ステップS1202において、CPU201は、ハーフトーン判別部206を用いて、入力されたデータにビットマップ画像が存在するかどうかを判定する。通常のテキストデータのみなど、ビットマップ画像が存在しない印刷対象データであれば、ステップS1220に進み、CPU201は、通常の画像形成処理を実行する。通常の画像形成処理とは、本実施形態に係る安定化制御(画像形成条件の調整)を省略した画像形成処理をいう。なお、通常の画像形成処理を実行する際には、CPU201は、従前のγLUT制御やDmax制御などの安定化制御を実行してもよい。
【0070】
一方、ビットマップの存在を検出した場合は、ステップS1203に進み、ハーフトーン部206は、上述の周波数解析を実行する。
【0071】
ステップS1204において、ハーフトーン部206は、周波数解析結果に基づいて、入力された画像データがハーフトーン処理済みの画像データであるか否かを判定する。ハーフトーン処理済みでなければ、ステップS1220に進み、CPU201は、通常の画像形成処理を実行する。
【0072】
一方、ハーフトーン処理済みであれば、ステップS1205に進み、ハーフトーン部206は、上述したように周波数解析の結果に基づいて、ハーフトーン処理の内容を特定する。
【0073】
ステップS1206において、ハーフトーン部206は、特定されたハーフトーン処理の内容に応じて、パッチデータを作成する。パッチデータは、パッチ像を得るためのデータである。このパッチデータは、印刷対象の画像データとともに、色変換部208において色変換処理等が施され、プリンタインターフェース制御部210からエンジン制御部300へと出力される。なお、パッチ像は、入力された画像の後端に追加されることになる。
【0074】
ステップS1207において、エンジン制御部300のCPU311は、ビデオインターフェース301を通じて受信した画像信号を画像処理GA312に送出する。画像処理GA312は、画像信号に所定の画像処理を実行し、その結果を画像形成部313に出力する。画像形成部313は、画像信号に応じてレーザーの発光強度を制御し、プリンタエンジン部350によって中間転写体106上に印刷対象の画像とパッチ像とを形成する。
【0075】
ステップS1208において、CPU311は、センサ部355に含まれる濃度検出センサ313を用いて、形成されたパッチ像の濃度(色材量)を検出する。
【0076】
ステップS1209において、検出されたパッチ像の濃度に応じて発光部101の発光強度を調整する。より具体的には、CPU311は、前回検出された濃度Dxをメモリ等から読み出し、今回検出された濃度との差分(濃度差)ΔDを算出する。この濃度差ΔDに応じて、次回の画像形成に用いられるレーザーの発光強度(LPW)を変更する。
【0077】
ステップS1210において、コントローラ部200のCPU201は、次の印刷対象データが存在するか否かを判定する。次の印刷対象データがなければ、CPU201は、本処理を終了する。一方、次のデータがあれば、CPU201は、ステップS1211に進み、次の印刷対象データが、今回の印刷対象データと同一か否かを判定する。例えば、同一の画像を複数枚印刷することを指示されている場合は、同一の印刷対象データであるとCPU201が判定する。
【0078】
以上説明したように本実施形態によれば、画像形成条件の1つである露光量を、レーザーの発光強度により調整することができる。
【0079】
また、入力された印刷対象データにビットマップ画像が含まれていなければ通常の画像形成動作を実行するため、処理速度の向上につながる。
【0080】
さらに、同一の画像データが連続して画像形成を実行する場合には、同一のパッチ像を用いて複数回にわたりパッチ像の濃度を検出することができるため、特に、形成される画像の濃度を安定化させることができる。
【0081】
[第3の実施形態]
第2の実施形態では、パッチ像の濃度に応じて、主に、レーザーの発光強度(LPW)を調整する例を説明した。通常、LPWを変更するためには、バイアスを変更する必要がある。そのため、レーザーの発光に関して、各色ごとにバイアスを切り替えると、切り替えの応答時間が処理速度を低下させるおそれがある。また、コストの増加を招くおそれもある。
【0082】
そこで、第3の実施形態では、レーザーに投入される画像信号のパルス幅を制御することで、レーザーの発光時間を調整する例を説明する。一般に、PWM(パルス幅変調)方式が発光部101に適用される。そのため、レーザーの発光時間の調整は、レーザーの発光強度の調整するよりも、比較的簡易に実現できる利点がある。
【0083】
PWM方式では、2値画像においてもドットを打つ部分の発光時間を変更することができるため、発光強度の制御と同様の効果が得られる。PWM方式は、特開2000−131890号公報に記載があるように、発光時間を制御することで中間階調の画素を形成する技術である。
【0084】
第3の実施形態に係る安定制御のフローチャートは、図12とほとんど同一であるため省略する。具体的には、ステップS1209の発光強度の変更処理が、発光時間の変更処理に変更される。
【0085】
本実施形態によれば、レーザーの発光時間を制御することで、露光量を調整できるため、第2の実施形態に比較し、さらに実現性が高い。すなわち、応答時間やコストの観点において、第3の実施形態は比較的に有利である。
【0086】
[第4の実施形態]
上述の実施形態では、ハーフ−トン処理の判別に、2次元フーリエ変換を採用していた。しかしながら、本発明は、2次元フーリエ変換による周波数解析にのみ限定されるわけではない。結果的に、ハーフ−トン処理の内容を判別できるのであれば、どのような手法を採用してもよいことはいうまでもない。
【0087】
ところで、上述の2次元フーリエ変換による周波数解析処理は、比較的に高速な演算速度が要求され、かつ、比較的に大きなメモリ容量が要求される。これらは、コストの増加を招くため好ましくない。
【0088】
そこで、第4の実施形態では、ハーフトーン処理の内容を判別するためのより簡易な手法(ラベリング手法)を提案する。
【0089】
ラベリング手法では、入力されたビットマップ画像において、連結画素には同一のラベルを付与していく手法である。例えば、同一レベルの白画素が2つ連結している場合は、これらの画素に同一のラベルを付与する。
【0090】
図13は、実施形態に係るラベリング手法の概念を示す図である。連結画素には同一のラベル「1」や「2」が付与されていることを理解できよう。
図14は、第4の実施形態に係るラベリング手法によるハーフトーン判別方法を示す例示的なフローチャートである。なお、本フローチャートに係る処理は、図10のステップS1001や、図12のステップS1203およびS1205に対応している。
【0091】
ステップS1401において、ハーフトーン判別部206のラベリング部503は、入力された画像データに含まれる連結画素にラベルを付与していく。
【0092】
ステップS1402において、ラベリング部503は、各ラベルの重心を算出する。重心座標の算出式の一例を以下に示す。
【0093】
【数1】

【0094】
ここで、(xi、yi)は、同一のラベルが付与された各画素の座標を示している。iは、0ないしn−1の自然数である。nは前画素数である。
【0095】
ステップS1403において、ラベリング部503は、算出された複数の重心間の距離(重心間隔)を算出する。
【0096】
ステップS1404において、処理内容特定部502は、算出された重心間隔に対応するハーフトーン処理の内容を、予め用意されたテーブルから特定する。このテーブルは、図8に示したテーブルと同様のものであり、重心間隔と対応するハーフトーン処理の内容(線数、角度など)が対応付けて管理されているものとする。
【0097】
以上説明したように本実施形態によれば、ラベリング手法を応用してハーフトーン処理の内容を特定するため、2次元フーリエ変換手法に比較し、本発明を簡易に実現できる。とりわけ、演算速度やメモリ容量などの必要条件が相対的に緩和されるため、コスト面で有利である。
【0098】
[第5の実施形態]
上述の実施形態では、主に、前回の検出濃度と今回の検出濃度との差ΔDが、0でない限り、画像処理条件を変更するものとして説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されることはない。
【0099】
図15は、実施形態に係る画像処理条件の調整に関するフローチャートである。本フローチャートは、上述したステップS1004やステップS1209に相当する。
【0100】
ステップS1501において、エンジン制御部300のCPU311は、濃度差ΔDと所定の許容範囲とを比較する。濃度差ΔDと所定の許容範囲内であれば、CPU311は、画像処理条件の調整を省略する。一方で、濃度差ΔDが所定の許容範囲を逸脱すれば、CPU311は、ステップS1502に進み、画像形成条件の調整処理を実行する。
【0101】
本実施形態に関して実験したところ、濃度差が10%を越えた場合に許容範囲を超えることがわかった。よって、10%以下は許容範囲であるため、画像形成条件を変更しないようにすればよい。
【0102】
ただし、10%という値は絶対的な数値ではない。なぜなら、色材の含有量、カバーリングパワー、分光反射率特性などに依存して、許容範囲となる濃度差は異なってしまうからである。よって、許容範囲は、機種ごとに実験等から決定しておくことが望ましいといえる。
【0103】
このように、濃度差が許容範囲を逸脱する場合に限り、画像処理条件を調整することで、無駄な調整処理を省略できる利点がある。
【0104】
[他の実施形態]
本実施形態は、画像形成装置としてプリンタ100を一例として取り上げたが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、複写機、複合機およびファクシミリにおいても同様に本発明を適用できることは言うまでもない。
【0105】
また、上述の各フローチャートに係る処理をコンピュータプログラム(ファームウエアなど)として実現してもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の例示的な構成を示す図である。
【図2】実施形態に係るコントローラ部の例示的なブロック図である。
【図3】実施形態に係るエンジン制御部の例示的なブロック図である。
【図4】実施形態に係る濃度検出センサの一例を示す図である。
【図5】実施形態に係るハーフトーン判別部の例示的なブロック図である。
【図6】2次元FFT解析の結果を表す概念図である。
【図7A】200lpiの実画像を示している。
【図7B】200lpiの実画像を2次元FFT変換して得られた振幅特性を表す濃淡画像を示している。
【図7C】人物の目の周辺部の実画像を示している。
【図7D】図7Dは、人物の目の周辺部の実画像を2次元FFT変換して得られた振幅特性を表す濃淡画像を示している。
【図8】基本解像度、線数、および角度の関係を示す図である。
【図9】生成されたディザマトリクスを使った30%までの塗りつぶし例を示す図である。
【図10】実施形態に係る安定性制御に関する例示的なフローチャートである。
【図11】実施形態に係る濃度差と発光強度との関係を示す図である。
【図12】第2の実施形態に係る安定性制御に関するさらに詳細かつ例示的なフローチャートである。
【図13】実施形態に係るラベリング手法の概念を示す図である。
【図14】第4の実施形態に係るラベリング手法によるハーフトーン判別方法を示す例示的なフローチャートである。
【図15】実施形態に係る画像処理条件の調整に関するフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像データに予め施されているハーフトーン処理の処理内容を判別する判別手段と、
判別された前記処理内容に従ったハーフトーン処理を適用してパッチ像を形成する形成手段と、
形成された前記パッチ像の濃度を検出する検出手段と、
検出された前記パッチ像の濃度に応じて画像形成条件を調整する調整手段と
を含む、画像形成装置。
【請求項2】
前記判別手段は、スクリーン周波数、スクリーン角度またはドット成長方法の少なくとも1つの観点から前記ハーフトーン処理の処理内容を判別する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記判別手段は、前記画像データを2次元フーリエ変換することで取得される変換結果から前記ハーフトーン処理の処理内容を判別する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記判別手段は、印刷対象のデータが画像データでないときは、前記2次元フーリエ変換の実行を省略する、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記判別手段は、前記画像データにラベリング手法を適用することで取得される複数のラベルの重心間隔に基づいて前記ハーフトーン処理の処理内容を判別する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記調整手段は、
検出された複数の前記濃度間の差と所定の許容範囲とを比較する比較手段と、
前記差が所定の許容範囲を超える場合に、前記画像形成条件の1つである露光量を変更する変更手段と
を含む、請求項1ないし5の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記変更手段は、
前記パッチ像の形成に使用される光源の発光強度または発光時間の少なくとも1つを制御することで、前記露光量を変更する、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
入力された画像データに予め施されているハーフトーン処理の処理内容を判別するステップと、
判別された前記処理内容に従ったハーフトーン処理を適用してパッチ像を形成するステップと、
形成された前記パッチ像の濃度を検出するステップと、
検出された前記パッチ像の濃度に応じて画像形成条件を調整するステップと
を含む、画像形成条件の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図9】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−62286(P2007−62286A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254006(P2005−254006)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】