説明

画像形成装置用高分子部材及びその製造方法

【課題】機械的特性に優れ、機械的特性に優れ、画像形成装置中の他の部材を汚染させにくく、劣化が生じにくい画像形成装置用高分子部材及び画像形成装置用高分子部材の製造方法を提供する。
【解決手段】5質量%以上のエチレンオキシドを末端に有し、且つ0.050meq/g以下の不飽和度のポリエーテルポリオールを含有する、質量平均分子量4000以上10000以下のポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、発泡剤と、130℃以下の沸点を有するアミン触媒(C)とを反応させてポリウレタンフォームを得る工程を有する画像形成装置用高分子部材の製造方法であって、該ポリウレタンフォームは、該アミン触媒(C)の沸点以上140℃以下で乾燥処理されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置用高分子部材及び画像形成装置用高分子部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術の進歩に伴い、乾式電子写真装置等の画像形成装置には、帯電用、現像用、転写用、トナー供給用、クリーニング用などに供される部品の部材として、ポリウレタンフォームからなる部材が注目されている。なかでも、ポリウレタンフォームは、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ、クリーニングローラなどの弾性を有する画像形成装置用部材等の形態で用いられている。
【0003】
これらポリウレタンフォームからなる部材の多くは、金型内で製造することができ、例えばこの部材がトナー供給ローラである場合、次のような方法で製造される。まず、ポリイソシアネート、ポリオール、水、触媒を混合攪拌し、トナー供給ローラ成形型内に注入する。これを型内で発泡させ、ついで成形物を脱型することによりトナー供給ローラを製造することができる。
【0004】
特許文献1は、低硬度で、且つ高温高湿環境下においても圧縮永久歪の小さいポリウレタンフォームからなる表面層を有するトナー供給ローラを得る方法のひとつを開示する。つまり、総不飽和度が0.050meq/g以下で、質量平均分子量が4500〜8000であるポリエーテルポリオールをポリオール成分として用いることを開示する。
【0005】
ここで用いられる触媒としては、これまで有機金属触媒や第三級アミン触媒が用いられており、既に第三級アミン触媒がポリウレタン製造用の優れた触媒となることは広く知られている。第三級アミン化合物の中で、工業的に利用されているポリウレタン用触媒として、以下の化合物が挙げられる。
【0006】
トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン
N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン
N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノエチル)ピペラジン
トリエチルアミン
【0007】
これらの第三級アミン触媒を用いてポリウレタンを製造した場合、製品から飛散するアミン触媒がカートリッジ中のトナーを汚染し画像不具合を生じるなど様々な問題を抱えていた。
【0008】
これらの問題を解決するため、二次キュア処理を行い、アミン触媒を予め揮発(削減)させることが知られている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、アミン触媒は一般に高沸点であり、高温で、或いは長時間乾燥処理を行うと、ウレタンを酸化劣化させるため、ウレタンの黄変や劣化が生じ問題になる場合があった。また、二次キュアによって完全に除去することは不可能であった。
【0009】
また、イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性アミン触媒を用いることも知られている(例えば特許文献3参照)。しかしながら、この反応性アミン触媒は、イソシアネートと反応しポリウレタンフォーム中に残存するため、製品から飛散しトナーを汚染することは極めて少ないが、ポリウレタンを劣化させる(逆反応)ことが一般的に知られている。従って、前記反応性アミンを使用して製造したウレタンフォームは、(長期)耐久性に劣る場合があった。
【特許文献1】特開2004−037630号公報
【特許文献2】特開2003−156930号公報
【特許文献3】特開2003−020318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題を鑑みてなされたものであり、機械的特性に優れ、画像形成装置中の他の部材を汚染させにくく、劣化が生じにくい画像形成装置用高分子部材及び画像形成装置用高分子部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による画像形成装置用高分子部材の製造方法は、
5質量%以上のエチレンオキシドを末端に有し、且つ0.050meq/g以下の不飽和度のポリエーテルポリオールを含有する、質量平均分子量4000以上10000以下のポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、発泡剤と、130℃以下の沸点を有するアミン触媒(C)とを反応させてポリウレタンフォームを得る工程を有する画像形成装置用高分子部材の製造方法であって、該ポリウレタンフォームは、該アミン触媒(C)の沸点以上140℃以下で乾燥処理されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
高温高湿下における圧縮永久歪に優れ、製造に用いた触媒の蒸散や移行の少なく、且つ黄変や劣化の少ない画像形成装置用高分子部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明による画像形成装置用高分子部材は、ポリウレタンフォームからなるものであって、このポリウレタンフォームは、所要の各成分を含むポリウレタンフォーム形成材料を攪拌混合し、発泡硬化させることにより得られる。このポリウレタンフォーム形成材料は、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、発泡剤及びアミン触媒(C)からなるものであり、アミン触媒(C)は、130℃以下の沸点を有する。
【0014】
更に、上述のポリウレタンフォームに、アミン触媒(C)の沸点以上140℃以下の乾燥処理を行うことで、ポリウレタンフォームの製造に使用したアミン触媒(C)が製品から飛散することを大幅に削減できる。その結果、この触媒がカートリッジ中のトナーを汚染し画像不具合を生じることが少なくなる。
【0015】
(ポリオール(A))
本発明に使用されるポリオール(A)は、質量平均分子量4000以上10000以下で、エチレンオキシドを末端に5質量%以上含有し、総不飽和度が0.050meq/g以下であるポリエーテルポリオールを有する。ポリオール(A)に含まれるポリエーテルポリオールは、一種類でも、二種以上を組み合せてもよい。
【0016】
上述のポリエーテルポリオールは、末端にエチレンオキシドを有する共重合体であり、エチレンオキシドの含有量は、5質量%以上である。好ましいエチレンオキシドの含有量は、10質量%以上である。エチレンオキシドを末端に有することで、ウレタンフォームを形成する反応性を確保でき、型内成形が可能となる。末端のエチレンオキシドの含有量が5質量%未満であると、樹脂化反応が低下するため、本発明の金型成形には適さない。
【0017】
本発明におけるポリエーテルポリオールは、グリセリン、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の開始剤にプロピレンオキサイドとエチレンオキシドを付加重合させたものなどが挙げられる。また、ポリエーテルポリオールとしては、活性水素を2個以上有する化合物の一種又は複数種を開始剤として、下記のモノマーの一種又は複数種を公知の方法により付加して製造したものであってもよい。このモノマーとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アミレンオキシド、グリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。また、上述の活性水素を2個以上有する化合物としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、また、シュークローズ、グルコース等のシュガー系アルコール、ビスフェノールA、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等が挙げられる。付加させるエチレンオキシドの量は、ポリエーテルポリオールプレポリマー中のエチレンオキシド含有量、目的とする共重合体のエチレンオキシド含有量や質量平均分子量等を考慮して、適宜設定すればよい。
【0018】
ポリエーテルポリオールの総不飽和度は、0.050meq/g以下であり、好ましくは、0.035meq/g以下である。0.050meq/gより大きくなると、圧縮永久歪率が悪くなる傾向がある。なお、総不飽和度とは、JIS K−1557記載の方法により測定されるものである。
【0019】
一般にポリエーテルポリオール中には、通常、数%から数十%のモノオール成分を含有する。モノオール成分の含有量は、ポリエーテルポリオールの総不飽和度に比例する。つまり、ポリエーテルポリオールの総不飽和度の値が小さいほど、モノオール成分の含有量が低くなる。総不飽和度が小さなポリエーテルポリオールは、ポリイソシアネートと反応してポリウレタンフォームになった際、網目構造が均一になりやすく、このため、高温高湿環境下での圧縮永久歪性が良くなると考えられる。また、このようなモノオール成分が少ないポリエーテルポリオールを用いた場合、イソシアネートの添加比率(イソシアネートインデックス=NCO基数/活性水素基数×100)を小さくすることが出来る。この理由としては、モノオール成分が少ないポリエーテルポリオールでは、網目構造に不均一化するモノオール成分とイソシアネートの反応が少ないため、イソシアネートインデックスを小さくすることができる。イソシアネートインデックスを小さくすることにより、より低硬度化が可能となる。しかしながら、イソシアネートインデックスが60よりも小さいと樹脂化が不十分になり、画像形成装置用高分子部材の成形性が極端に悪くなる。また、イソシアネートインデックスが120よりも大きいと硬度が高くなる。
【0020】
ポリエーテルポリオールの質量平均分子量は、4000以上10000以下であり、好ましくは、4000〜8000である。質量平均分子量が10000を越えると、粘度が高くなり、取扱いや注型、イソシアネートとの均一な混合が困難になる。質量平均分子量が4000より小さいと、硬度が高くなる。
【0021】
また、ポリエーテルポリオールは、水酸基価20〜85mgKOH/g、かつ水酸基の平均数が2.0〜4.0であることが好ましい。水酸基価16mgKOH/gよりも小さい、若しくは水酸基の平均数が2.0よりも小さいと、トナー供給ローラが高温高湿環境下での圧縮永久歪が悪くなる傾向がある。また、水酸基価が84mgKOH/gよりも大きい、若しくは水酸基の平均数が4.0よりも大きいと、トナー供給ローラの硬度が高くなる傾向がある。また、水酸基価は25〜50mgKOH/gであることがより好ましい。なお、上記水酸基価はJIS K−1557記載の方法で測定したものである。
【0022】
(ポリイソシアネート(B))
本発明に使用されるポリイソシアネート(B)は、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと記す)及びその誘導体を有する。特に、MDIは、ポリオールとの反応(ウレタン化)に優れるため、モールド成形において良好な成形性を示す。特に、整泡剤を必要としない系においては、MDI及びその誘導体を含有する必要がある。
【0023】
また、ポリイソシアネート(B)は、MDI及びその誘導体のほか、従来公知の各種ポリイソシアネートの中から適宜選択してものを有していてもよい。このポリイソシアネートの例としては、以下の化合物又はその誘導体が挙げられる。
【0024】
トリレンジイソシアネート(以下、TDIと記す)などの芳香族ポリイソシアネート
ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート
イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート
【0025】
MDI及びその誘導体は、ポリイソシアネート(B)100質量部に対して、3質量部以上80質量部以下含有するのが好ましい。
【0026】
MDIの誘導体としては、例えば、多核体、ポリオールなどで変性したウレタン変性物、ウレチジオン形成による二量体などが挙げられる。また、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物などが挙げられる。これらのポリイソシアネートの中で、ポリイソシアネートの主成分としてMDIとTDI及びその誘導体から得られた画像形成装置は、低硬度化、湿熱耐久性を向上するので好適である。
【0027】
本発明において、MDIやTDIなどの芳香族ポリイソシアネート及びその誘導体を単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。また、所望により、本発明の目的が損なわれない範囲で、MDIやTDIなどの芳香族ポリイソシアネート及びその誘導体とともに、以下の化合物又はその誘導体を併用してもよい。
【0028】
ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート
イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート
【0029】
ポリイソシアネートのイソシアネート基の平均数は、2以上であることが好ましい。ポリイソシアネートのイソシアネート基の平均数がこれらの範囲内にあることによって、低硬度で優れた圧縮永久歪性を有するポリウレタンフォームを得ることができる。
【0030】
画像形成装置用高分子部材製造用の組成物中のこれらポリイソシアネートの配合量としては、特に制限は無いが、NCOインデックスが60〜120になるように配合することが好ましい。すなわち、NCOインデックスが60以上120以下であると、ポリウレタン骨格が十分に形成され、脱型時に破断など生じないばかりでなく、画像形成装置の硬度が低下しない。画像形成装置用高分子部材を例えばトナー供給ローラとして用いる場合、NCOインデックスを上述の範囲内とすることで、トナー供給や掻き取りなどのトナー供給ローラ性能を十分に発揮することができる。
【0031】
なお、NCOインデックスとは、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数を、ポリオール、架橋剤、発泡剤等の水酸基やアミノ基等のイソシアネート基と反応する活性水素の総数で除した値とする。即ち、イソシアネート基と反応する活性水素数とポリイソシアネート中のイソシアネート基が化学量論的に等しい場合にそのNCOインデックスは100となる。
【0032】
(アミン触媒(C))
本発明に使用するアミン触媒(C)は、ポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、発泡剤とからポリウレタンフォームを生成させ得る沸点130℃以下の化合物であれば、特に制限はない。例えば、上記一般式(1)で例示したN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンや、上記一般式(2)で例示したN−メチルモルホリン等を挙げることができる。
【0033】
アミン触媒(C)は、上述の化合物の一種類を単独又は二種以上を有していてもよい。また、アミン触媒(C)の使用量は、前記ポリウレタンフォーム形成材料における全ポリオール100質量部に対し、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。これにより、アミン触媒の蒸散や移行の少ないポリウレタンフォームからなる画像形成装置用高分子部材が得られる。
【0034】
(発泡剤)
本発明に使用する発泡剤は、ポリウレタンフォームを生成させ得る発泡剤であれば、特に限定されず、例えば、水、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、メチレンクロライド、トリクロロフルオロメタン、二酸化炭素などが挙げられる。発泡剤として、これらの化合物を単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。発泡剤として水を用いる場合、その使用量は、使用するポリオール100質量部に対して0.5〜5.0質量部であることが好ましく、1.0〜3.0質量部がより好ましい。この「ポリオール100質量部」とするときのポリオールとは、ポリウレタンスポンジ層形成のために原料として使用した全てのポリオールを表す。例えば、本発明のポリウレタン発泡成形用の原料としてプレポリマーを使用した場合、プレポリマー製造のために使用したポリオールも上記ポリオールとして換算する。
【0035】
(整泡剤)
本発明において、画像形成装置用高分子部材は、整泡剤を使用して製造されてもよい。ここで用いられる整泡剤としては、ポリジメチルシロキサンとエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合物からの水溶性ポリエーテルシロキサンが挙げられる。また、スルホン化リシノール酸のナトリウム塩や、これらとポリシロキサン・ポリオキシアルキレンコポリマーとの混合物などが挙げられる。このうち、水溶性ポリエーテルシロキサンは、用途別に多岐にわたり使用されている。これらの整泡剤は単独で又は複数種を使用することができる。
【0036】
本発明のポリウレタンフォームのようなホットモールドフォームは、スラブフォームに比べてゲル化が速いこと、型にオーバーパックされることからフォームの通気性が低くなる傾向にある。このため、スラブフォーム用の整泡剤と基本的には類似しているが、やや整泡力が弱くフォームの通気性を高くする整泡剤が好ましい。また、高弾性フォームは系の粘度が高いことや反応性が高いことから、通常の軟質フォーム用整泡剤を使用すると泡の安定化が過剰となり、連通化度が低下してフォームの収縮を生じる場合がある。このため、整泡剤としては分子量の小さいコポリマーが用いることが好ましい。また、ポリエーテル鎖の代わりに有機官能基を付加した整泡剤を使用することが好ましい。
【0037】
(その他の助剤)
その他助剤として、必要に応じて、ポリマーポリオール(商品名:三井武田ケミカル)、架橋剤、難燃剤、着色剤、老化防止剤、酸化防止剤などを使用してもよい。
【0038】
助剤としてのポリマーポリオールとは、少なくとも一部をエチレン性不飽和単量体と重合させることにより変性したものなどが挙げられる。ポリウレタンフォームを製造する際、このポリマーポリオールを併用することによりフォームの湿熱耐久性を低下させることなく、通気性向上、硬度向上などを図ることができる。上述のエチレン性不飽和単量体は、特に限定されないが、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸メチル、塩化ビニリデンなどであり、これらの重合体は通常直径0.1〜10μmの微粒子状で分散されている。
【0039】
助剤としての架橋剤としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。これらを、単独、又は混合して使用してもよい。
【0040】
アルキレングリコール、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)などのジオール類
グリセリン、トリメチロールプロパン(TMP)などのトリオール類
ペンタエリスルトールなどのテトラオール類
エチレンジアミン(EDA)などのジアミン類
ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)などのアミノアルコール類
【0041】
本発明による画像形成装置用高分子部材は、画像形成装置において弾性特性を要求される部位に使用される部材であれば、種々適用可能である。なかでも、ローラ形状のものが好ましく、画像形成装置のトナー供給ローラとして特に好ましく用いられる。本発明の画像形成装置用高分子部材をトナー供給ローラとする場合、例えば次のようにして製造する。まず、従来公知の方法に従って、所定のトナー供給ローラ用成形型内に、棒状芯金を配置する。一方、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、発泡剤及びアミン触媒(C)を混合してポリウレタンフォーム・ローラ用組成物を調製する。そして、この組成物を上述の成形型に注入し、成形型を温度25〜80℃に加熱して発泡成形する。場合によっては、温度80〜250℃の加熱炉で反応を促進させてもよい。そして、成形物を成形型から取り出した後、アミン触媒の沸点以上140℃以下の乾燥処理を行うことにより、トナー供給ローラを得ることが出来る。
【0042】
この製法によれば、アミン触媒の蒸散や移行の少なく、黄変や劣化の少ない画像形成装置用高分子部材を提供することが出来る。
【実施例】
【0043】
以下に、本発明の実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもない。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良等を加え得るものであることが理解されるべきである。
【0044】
(ポリエーテルポリオール)
各実施例に用いたポリエーテルポリオールの物性値を表1に示す。
【0045】
(実施例1乃至7及び比較例1乃至7)
次に、表2及び表3に示す組成のポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒及びその他助剤を、液温25℃に調整した。そして、これらをNCOインデックスが90となるように配合し、ミキシングチャンバー内で5秒攪拌した。その後、この混合物を、直径5mm、長さ290mmの金属製シャフトを挿入した内径16mmのパイプ状金型に、フォーム密度が0.10g/cmになるように注入し、60℃のオーブン中に20分間加熱することにより発泡硬化させた。脱型後所定温度で乾燥処理を1時間行い、トナー供給ローラを作製した。その後、下記の方法に従って、硬度、残留アミン、黄変などの得た成形品の特性及び画像評価を行った。
【0046】
【表1】


1)JIS K−1557記載の方法により測定。
2)JIS K−1557記載の方法により測定。
【0047】
【表2】


3)三井武田ケミカル(株)製ポリイソシアネート混和物
NCO=45%
MDI=20%含有
4)三井武田ケミカル(株)製ポリイソシアネート混和物
NCO=40%
MDI=50%含有
5)東ソー(株)製アミン触媒、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(沸点120℃)
6)日本乳化剤(株)製アミン触媒、N−メチルモルホリン(沸点117℃)
7)東レ・ダウコーニング(株)製整泡剤
8)キシダ化学(株)製ジエタノールアミン(特級)
【0048】
<硬度9)
図2(a)及び(b)に示す硬度測定計を用いて測定した。まず、上述の通り得たポリウレタンフォーム・ローラを、その両端の芯金部分において芯金支持部4に支持した。その後、そのポリウレタンフォーム層を50mm幅(厚さ:10mm)の板状押圧面を有する治具にて、10mm/minの速度で押圧し、1mm変位(圧縮)時の荷重(g)を硬度とした。その数値が大きくなるほど、ポリウレタンフォーム層の硬さが高い、すなわち硬いことを示している。また、測定ポイントは、図示の如く、周方向の90度毎に4ヶ所を測定した平均値である。硬度は、350g以下であることが好ましい。
【0049】
<圧縮永久歪率10)
図3(a)及び(b)に示される如く、トナー供給ローラ1を、その両端の芯金2に支持し、そのポリウレタンフォームからなる表面層3に、φ16mmのスリーブ5を当接し、1.5mm圧縮した状態で、温度40℃、湿度95%にて72時間放置した。その後、トナー供給ローラ1を取り出し、解放後30分経過した後の復元度合いを示したもので、以下の式に従って計算した。
【0050】
圧縮永久歪率Cs(%)=(t0−t1)/1.5×100
t0:1.5mm圧縮した場所の試験前の半径
t1:圧縮解放30分後の1.5mm圧縮した場所の半径
【0051】
なお、測定ポイントは、圧縮部分を軸方向に3ヶ所測定し、その平均値を求めた。圧縮永久歪率は、15%以下であることが好ましい。表中、○印は、圧縮永久歪率が15%以下であることを示し、×印は、圧縮永久歪率が15%超であることを示す。
【0052】
<残留アミン11)
上述の通り得た本発明によるトナー供給ローラのポリウレタンフォーム部から、サンプルとして約0.4gを採取し、このサンプルを150℃で20分加熱し揮発アミンを凝縮捕集し、その凝縮液を、ガスクロマトグラフィーで定性分析した。表中、○印は、検出されなかったことを示し(ノイズレベル)、×印は、検出されたことを示す。
【0053】
<黄変12)
上述の通り得たトナー供給ローラのウレタン部を、目視により黄変の観察を行った。表中、○印は、黄変が見られなかったことを示し、△印は、若干黄変が見られるが外観上問題がなかったことを示し、×印は、黄変が見られ外観上問題があったことを示す。
【0054】
<初期画像評価13)
作製したトナー供給ローラをフルカラーレーザービームプリンタ(キヤノン(株)製;LBP−2510)の各色カートリッジに組み込み、このカートリッジを取り付けたフルカラーレーザービームプリンタを評価に用いた。これを、1晩以上放置してから各色ハーフトーン画像を作像して目視評価を行った。表中、○印は、良好な画像、△印は、若干の欠点があるが良好な画像、×印は、不良な画像(色抜け、濃度ムラ有り)がそれぞれ得られたことを示す。なお、色抜けとは、イメージのあるところにトナーが供給されていないことをいい、濃度ムラとは、画像が不均一であることをいう。
【0055】
<耐久画像評価14)
作製したトナー供給ローラをフルカラーレーザービームプリンタ(キヤノン(株)製;LBP−2510)の各色カートリッジに組み込み、このカートリッジを取り付けたフルカラーレーザービームプリンタを評価に用いた。これを用い、連続耐久試験用のテキストページを連続4000枚出力した。出力終了後1晩以上放置してから各色ベタ画像を作像して目視評価を行った。表中、○印は、良好な画像、△印は、若干の欠点があるが良好な画像、×印は、不良な画像(色抜け、濃度ムラ有り)がそれぞれ得られたことを示す。
【0056】
【表3】


15)三井武田ケミカル(株)製トルエンジイソシアネート
NCO=48%
MDI非含有
16)日本乳化剤(株)製アミン触媒、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル/ジプロピレングリコール=70/30溶液(沸点170℃)
17)日本乳化剤(株)製アミン触媒、トリエチレンジアミン/ジプロピレングリコール=33/67溶液(沸点約200℃)
【0057】
なお、上述の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)による公知の方法により得た値である。
【0058】
表2及び表3に見られるように、本発明のトナー供給ローラ(実施例1〜7)では、圧縮永久歪、残留アミン、黄変、及び画像評価に優れている。これに対し本発明から外れる比較例1〜7では、成形性が不安定で、圧縮永久歪、残留アミン、黄変、及び画像評価が悪化することがある。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ポリウレタンフォーム・ローラの説明図である。
【図2】ポリウレタンフォーム・ローラ(ポリウレタンフォーム層)の硬度の測定方法を示す説明図であって、(a)は平面説明図、(b)は側面説明図である。
【図3】圧縮永久歪率の測定装置であって、(a)は、その概略を示し、(b)は、横断面を示す。
【符号の説明】
【0060】
1 スキン層
2 芯金
3 ポリウレタンフォーム層
4 芯金支持部
5 スリーブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
5質量%以上のエチレンオキシドを末端に有し、且つ0.050meq/g以下の不飽和度のポリエーテルポリオールを含有する、質量平均分子量4000以上10000以下のポリオール(A)と、
ポリイソシアネート(B)と、
発泡剤と、
130℃以下の沸点を有するアミン触媒(C)とを反応させてポリウレタンフォームを得る工程を有する画像形成装置用高分子部材の製造方法であって、
該ポリウレタンフォームは、該アミン触媒(C)の沸点以上140℃以下で乾燥処理されることを特徴とする画像形成装置用高分子部材の製造方法。
【請求項2】
前記アミン触媒(C)の量は、前記ポリオール(A)100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下含有する、請求項1に記載の画像形成装置用高分子部材の製造方法。
【請求項3】
前記アミン触媒(C)は、下記一般式(1)又は(2)
【化1】


【化2】


で表されるアミン化合物を1種以上含有する、請求項1又は2に記載の画像形成装置用高分子部材の製造方法。
【請求項4】
前記ポリエーテルポリオールの水酸基の平均数は、2以上4以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置用高分子部材の製造方法。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート(B)は、該ポリイソシアネート(B)100質量部に対して、3質量部以上80質量部以下含有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置用高分子部材の製造方法。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート(B)は、トリレンジイソシアネート及びその誘導体を含有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置用高分子部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置用高分子部材の製造方法で得たことを特徴とする画像形成装置用高分子部材。
【請求項8】
当該画像形成装置用高分子部材は、トナー供給ローラであることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置用高分子部材。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−182498(P2007−182498A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1446(P2006−1446)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】