説明

画像形成装置

【課題】 定着液を用いる湿式定着方式の画像形成装置において、定着液をトナー像に付与する際の定着液の流動によるトナー像乱れ、トナー量の多いトナー像の記録媒体への定着不足などが起こるのを防止し、長期間にわたって安定的に高画質品位の画像を得るとともに、定着液の消費量を減らす。
【解決手段】 トナー像形成手段2と、中間転写ベルト21を含む中間転写手段3と、中間転写媒体加熱手段4と、定着液付与手段5と、転写定着手段6と、記録媒体供給手段7と、排出手段8とを含む画像形成装置1において、中間転写ベルト21上のトナー像に回転下に圧接して定着液35を付与する塗布ローラ32が、その表面を、弾性変形可能でかつ定着液35を保持できる多孔質層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどに汎用される、電子写真方式の画像形成装置においては、表面に光導電性物質を含む感光層を形成した感光体を用い、感光体表面に電荷を付与して均一に帯電させた後、種々の作像プロセスにて画像情報に対応する静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを含む現像剤を現像手段から供給して現像することによりトナー像とし、このトナー像を直接または中間転写媒体を介して紙などの記録媒体に転写し、記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に定着させることによって、記録媒体上に画像が形成される。
【0003】
トナー像の記録媒体への定着には、トナー像を加熱する熱定着方式、トナーを軟化および/または膨潤させる定着液をトナー像に付与する湿式定着方式などが知られる。このうち、湿式定着方式では、定着液の付与により軟化および/または膨潤状態にしたトナー像を記録媒体に付着させ、加圧することによって、トナー像を記録媒体に定着させる。湿式定着方式は、熱定着方式に比べて消費電力が非常に少ないという利点を有し、多くの提案がなされている。
【0004】
たとえば、トナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段により形成されるトナー像を担持する中間転写媒体と、トナーを溶解または膨潤させる定着液を、中間転写媒体のトナー像担持領域に定着液塗布ローラにより接触塗布する定着液塗布手段と、定着液塗布手段により溶解または膨潤されるトナー像を記録媒体上に転写する転写手段とを含む画像形成装置が提案される(たとえば、特許文献1参照)。この画像形成装置においては、定着液とトナーとの親和性を利用して、接触塗布される定着液は、中間転写媒体のトナー像担持領域におけるトナー付着部分である画像部のみに付与され、トナーが付着しない非画像部には付与されないように構成される。これによって、定着液の消費量が削減される。
【0005】
しかしながら、特許文献2の画像形成装置によれば、中間転写媒体と定着液塗布ローラとの間隔が一定であるために、中間転写媒体のトナー像担持部分と定着液塗布ローラ表面とが会合すると、定着液塗布ローラ表面に付着する定着液がトナー像により押し退けられ、トナー像を溶解または膨潤させるのに充分な量の定着液をトナー像に付与できないという問題がある。これは、色の異なるトナー像を複数重ねて滅法混色によりカラー画像を形成する場合に、トナー像が嵩高になるので、特に顕著になる。
【0006】
また、水を吸収して軟化するトナーからなるトナー像を、疎水性材料からなる中間転写媒体に担持させ、このトナー像を担持した中間転写媒体に、中間転写媒体に圧接して設けられるスキージーローラ(塗布ローラ)で水を付与してトナー像に選択的に水を付与して軟化させ、軟化したトナー像を記録媒体に圧力転写する方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。この方法では、スキージーローラにより中間転写媒体に水を付与すると、中間転写媒体は疎水性材料からなるので、中間転写媒体上に水が存在せず、トナー像のみが水に濡れた状態になる。しかしながら、中間転写媒体上のトナー像にスキージーローラにより付与される水は、中間転写媒体とスキージーローラとのニップ部(接触部)において圧搾され、ニップ部の入り口でメニスカスを形成して滞留するとともに、余剰分はスキージーローラに再付着して戻されるので、ニップ部入り口で激しい水流が発生し、トナー像を構成するトナー同士の結合力が非常に弱いことも相俟って、トナー像のドットが流れてトナー像に乱れを生じ、所望の画像が形成されないという欠点が生じる。また、トナー像のドットが部分的につぶれ、画像劣化を生じることもある。さらに、スキージーローラにトナーが付着し、画像劣化および画像汚染の原因になることもある。
【0007】
【特許文献1】特開2004−109747号公報
【特許文献2】特開昭58−40570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、定着液の流動によるトナー像乱れ、トナー量の多いトナー像の記録媒体への定着不足などの不具合が起こらない湿式定着方式の画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、結着樹脂を含み帯電可能なトナーからなるトナー像を形成するトナー像形成手段と、表面が平滑で、その表面にトナー像を担持して回転駆動する中間転写媒体を含む中間転写手段と、トナー像を軟化させる作用を有する定着液を中間転写媒体上のトナー像に接触下に塗布する定着液付与手段と、定着液を付与されて軟化したトナー像を記録媒体に転写する転写手段とを含む画像形成装置において、
定着液付与手段は、
少なくとも表面に弾性変形可能であって、定着液を保持する多孔質層を有しかつその軸線回りに回転駆動可能に設けられる塗布部材を含み、
塗布部材を中間転写媒体のトナー像担持面に圧接した状態で回転させながら、塗布部材の多孔質層に保持される定着液をトナー像担持面に接触塗布することを特徴とする画像形成装置である。
【0010】
また本発明の画像形成装置は、前述の塗布部材が、
多孔質層と、
多孔質層の内層として設けられ、多孔質層よりも層厚が大きくかつ定着液の浸透および保持が可能な定着液保持層とを含むことを特徴とする。
【0011】
また本発明の画像形成装置は、前述の塗布部材が、
定着液を保持貯蔵する定着液貯蔵層と、
定着液貯蔵層の表面に弾性変形可能に設けられ、定着液の浸透および保持が可能な材料からなる浸透制御層と、
浸透制御層の表面に弾性変形可能に設けられ、定着液を保持する多孔質層とを含み、ローラ形状に形成されることを特徴とする。
【0012】
さらに本発明の画像形成装置は、前述の多孔質層が、空孔径0.1μm〜2μm(0.1μm以上、2μm以下)、空孔率60%〜90%(60%以上、90%以下)および層厚10μm〜200μm(10μm以上、200μm以下)であることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明の画像形成装置は、多孔質層の定着液に対する接触角が、中間転写媒体の表面の定着液に対する接触角より小さく、かつトナー表面の定着液に対する接触角よりも大きいことを特徴とする。
【0014】
さらに本発明の画像形成装置は、前述の定着液付与手段が、さらに、塗布部材を中間転写媒体に圧接する圧接手段を含み、
圧接手段は、塗布部材の多孔質層に保持される定着液が、塗布部材と中間転写媒体のトナー像担持面との圧接部を通過可能な押圧力で塗布部材を中間転写媒体に圧接することを特徴とする。
【0015】
さらに本発明の画像形成装置は、前述の圧接手段が塗布部材を中間転写媒体に圧接する押圧力が、線圧で0.05N/cm〜1.0N/cm(0.05N/cm以上、1.0N/cm以下)であることを特徴とする。
【0016】
さらに本発明の画像形成装置は、前述の定着液付与手段が、
塗布部材とともに、
さらに定着液を収容する定着液収容手段と、
定着液収容手段に収容される定着液を塗布部材の外周面に供給する定着液供給手段と、
塗布部材の外周面に当接するように設けられ、塗布部材の多孔質層に保持される定着液量を調整する定着液規制手段とを含むことを特徴とする。
【0017】
さらに本発明の画像形成装置は、トナーに含まれる結着樹脂の弾性率が、塗布部材表面の弾性率より大きいことを特徴とする。
【0018】
また本発明の画像形成装置は、結着樹脂を含み帯電可能なトナーからなるトナー像を形成するトナー像形成手段と、表面が平滑でその表面にトナー像を担持し、一定の電位に保持されて回転駆動する中間転写媒体を含む中間転写手段と、トナー像を軟化させる作用を有する定着液を中間転写媒体上のトナー像に非接触下に塗布する定着液付与手段と、定着液を付与されて軟化したトナー像を記録媒体に転写する転写手段とを含む画像形成装置において、
定着液付与手段は、
定着液を霧状の液滴にする定着液霧化手段と、
定着液霧化手段より形成される定着液の液滴をトナーの帯電極性と逆の極性に帯電させる定着液帯電手段と、
帯電状態にある定着液の液滴を中間転写媒体上のトナー像およびその近傍に供給する液滴供給手段とを含むことを特徴とする画像形成装置である。
【0019】
さらに本発明の画像形成装置は、前述の定着液霧化手段が、トナーの平均粒径と同じまたはそれよりも小さい径を有する定着液の液滴を形成することを特徴とする。
【0020】
さらに本発明の画像形成装置は、定着液付与手段よりも中間転写媒体の回転駆動方向の上流側に設けられる中間転写媒体加熱手段を含み、
中間転写媒体加熱手段は、
中間転写媒体上のトナー像を、トナーに含まれる結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱することを特徴とする。
【0021】
さらに本発明の画像形成装置は、定着液付与手段よりも中間転写媒体の回転駆動方向の上流側に設けられる中間転写媒体加熱手段を含み、
中間転写媒体加熱手段は、
結着樹脂とともに結着樹脂よりも軟化点の低いワックスを含むトナーからなり、中間転写媒体上に担持されるトナー像を、ワックスの軟化点以上の温度に加熱することを特徴とする。
【0022】
さらに本発明の画像形成装置は、トナー画像形成手段によって結着樹脂を含み帯電可能な複数色のトナーからなるトナー像をそれぞれ形成し、中間転写媒体上で複数色のトナー像を重ね合わせる減法混色によりカラー画像を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、トナー像形成手段と、中間転写媒体を含む中間転写手段と、中間転写媒体上のトナー像に定着液を接触下に塗布する定着液付与手段と、転写手段とを含む画像形成装置において、少なくとも表面に弾性変形可能かつ定着液の保持が可能な多孔質層を有する塗布部材を、中間転写媒体のトナー像担持面に圧接して回転させながら、多孔質層に保持される定着液をトナー像担持面に接触塗布する構成を有する湿式定着方式の画像形成装置が提供される。
【0024】
塗布部材における多孔質層中には、定着液を保持し得る空孔が多数存在する。多孔質層に保持される定着液は、塗布部材と中間転写媒体とのニップ部(圧接部)のような、多孔質層に対して外部から掛かる圧力が大きい部分では多孔質層中に留まり、トナー像との接触部分のような、外部から掛かる圧力が小さい部分では多孔質層から浸み出す。したがって、塗布部材と中間転写媒体とのニップ部(圧接部)のような外部から圧力が掛かる部分では、定着液は多孔質層中に存在するので、塗布部材と中間転写部材とのニップ部の入り口で定着液がメニスカスを形成して滞留することがほとんどなく、トナー像を乱す原因になる定着液の流れが発生し難い。
【0025】
また、多孔質層から浸み出す定着液量は、多孔質層が接触する中間転写媒体の部位の表面積に応じて変化する。トナー像は微細なトナー粒子が集合して形成されるので、巨視的な面積当たりの表面積が大きい。表面積が大きな部位では、定着液が多く浸み出して巨視的な面積当たりの定着液付与量が大きくなる。さらに、異なる色の複数のトナー像が積層されてカラートナー像が形成される場合には、トナー像が複数積層される分だけ表面積はさらに大きくなり、それに伴って定着液付与量も一層増大する。一方中間転写媒体のトナーが付着しない部分は平滑であるため、巨視的な面積当たりの表面積が小さい。表面積が小さい部位では、多孔質層からの定着液の浸み出し量が少なく、定着液付与量が小さくなる。さらに、多孔質層は弾性変形可能に構成され、トナー像の凹凸に倣って多孔質層が変形するので、トナー量が部分的に異なりトナー像表面に部分的な高低が生じても、低い部分にも定着液を均一に付与できる。また、中間転写媒体上にトナー像が局所的に担持される場合でも、多孔質層がそれに応じて変形し、トナー像に定着液が付与される。このため、トナー像が担持される画像部には定着液が多く付与され、トナー像が担持されない非画像部では定着液付与量が少なくなり、結果的に画像部のみにほぼ選択的に定着液が付与される。
【0026】
このようにして、本発明の画像形成装置を用いれば、高品位で高精細な画像を長期にわたって安定的に形成できる。
【0027】
本発明によれば、多孔質層と、多孔質層の内層として設けられ、多孔質層よりも層厚が大きくかつ定着液の浸透および保持が可能な定着液保持層とを含む塗布部材を用いることによって、多孔質層が保持する定着液量が少なくても、中間転写媒体上のトナー像に充分量の定着液を付与できる。すなわち、前記のような定着液保持層を設ければ、多孔質層を膜厚の小さい多孔質膜で形成できるので、たとえば、表層のみを高価で微細な多孔質膜と、内部を安価なフェルト、連続発泡ゴムなどからなる部材で構成すれば、トナー像への定着液の付与性を低下させることなく、塗布部材を安価に製造できる。 本発明によれば、定着液貯留層と、定着液貯留層の表面に設けられる浸透制御層と、浸透制御層の表面に設けられる多孔質層とを含み、ローラ形状に形成される塗布部材を用いることによって、塗布部材をカートリッジ方式とし、塗布部材の交換により定着液を補充できる。これにより、液状物である定着液が塗布部材内部の閉空間のみにしか存在しないので、画像形成装置内部で定着液が溢れるかまたは飛散することがない。
【0028】
また、保持貯蔵層と多孔質層との間に浸透制御層が介在し、多孔質層への定着液の過剰な供給が防止されるので、塗布部材の表面に過剰な定着液が浸み出して、塗布部材と中間転写媒体とのニップ部の入り口で定着液がメニスカスを形成するのが一層防止される。したがって、定着液とトナー像とが接触した状態で定着液の流動が発生せず、トナー像を乱さないので、高品位で高精細な画像が得られる。さらに、保持貯蔵層に接する浸透制御層から多孔質層へ定着液が安定的に供給されるので、トナー量の多いベタ画像を連続して出力しても、該ベタ画像にその定着に必要充分量の定着液が付与され、常に高品位で高精細な定着画像が得られる。
【0029】
本発明によれば、塗布部材における多孔質層の空孔径を0.1〜2μm、空孔率を60〜90%、および層厚を10〜200μmにすることによって、前述の効果が最大限に発揮される。空孔径が0.1μm未満では、トナー像への定着液の付与量が不充分になり、トナー量が多い部分で定着強度が不足し、一方2μmを超えると、トナー粒子が空孔に嵌り込んで強固に付着し、多孔質膜を目詰まりさせる。空孔率が60%未満では、定着液の保持量とトナー像への付与量とが不充分になり、トナー量が多い部分で定着強度が不足し、一方90%を超えると、形状復元性および弾性を有する多孔質層としての形成が困難である。厚さが10μm未満では、多孔質層として形成するのが困難であり、一方200μmを超えると、定着液のトナー像への付与量が不充分になるため、トナー量が多い部分で定着強度が不足する。
【0030】
本発明によれば、多孔質層の定着液に対する接触角が、中間転写媒体表面の定着液に対する接触角よりも小さくすることによって、多孔質層と中間転写媒体とが接触する際に、定着液が中間転写媒体よりも多孔質層に付着し易くなる。その結果、トナー像が付着しない非画像部の中間転写媒体に多孔質層から定着液が付与されるのをできる限り減少させることができ、ひいては定着液の使用量および補充回数を低減できる。また、多孔質層の定着液に対する接触角が、トナーの定着液に対する接触角よりも大きくすることによって、多孔質層とトナー像とが接触する際に、定着液が多孔質層よりもトナー像に付着し易くなる。その結果、トナー像が付着する画像部にトナー量に応じて充分量の定着液を付与できる。
【0031】
本発明によれば、定着液付与手段がさらに圧接手段を含み、圧接手段によって、塗布部材の多孔質層に保持される定着液が、塗布部材と中間転写媒体とのニップ部(圧接部)を通過可能なように塗布部材を中間転写媒体に圧接する。この構成により、塗布部材に保持される定着液は必ず塗布部材と中間転写媒体とのニップ部を通過するので、塗布部材は定着液の薄層を介して中間転写媒体に一定の押圧力で圧接することになる。その結果、大面積でトナー量の多いトナー像(ベタ画像)がニップ部に進入し、それによって塗布部材と中間転写媒体との間隔が大きくなっても、トナー像に充分量の定着液を付与できる。また、塗布部材と中間転写媒体とのニップ部入り口において、定着液がメニスカスを形成して滞留するのがさらに防止され、高品位で高精細な画像のより一層の安定的な形成が可能になる。さらに、定着液の薄層を介して塗布部材とトナー像とが接触し、トナー像が塗布部材に直接接触しないので、トナーの塗布部材への付着が防止される。
【0032】
本発明によれば、圧接部材による塗布部材の中間転写媒体への圧接押圧力を線圧で0.05〜1.0N/cmとすることによって、前述の効果が際立って発揮される。0.05N/cm未満では、塗布部材と中間転写媒体との接触状態が不安定になり、定着液が中間転写媒体上のトナー像に均一に塗布できない場合がある。さらに、中間転写媒体の微妙な凹凸およびトナー像の凹凸に倣って塗布部材が弾性変形できず、トナー像の凹部に充分量の定着液を付与できず、定着液の塗布むらひいては定着画像における光沢むら、色むらなどが発生するおそれがある。また1.0N/cmを超えると、塗布部材表面の定着液が塗布部材と中間転写媒体とニップ部を通過できず、該ニップ部で定着液をスクイーズし、定着液がニップ部入り口でメニスカスを形成し、余剰の定着液が塗布部材の回転方向上流側へ戻り、。ニップ部入り口で定着液が激しく流動し、トナー像が乱される可能性がある。
【0033】
本発明によれば、塗布部材と、定着液収容手段と、定着液供給手段と、定着液規制手段とを含む定着液付与手段を用い、塗布部材の外周面に定着液を付与する構成を採ることによって、塗布部材の内部に定着液を保持する必要がないので、塗布部材の小型化が可能になる。また、定着液収容手段を塗布部材の外部に設けることによって、定着液の大量貯蔵が可能になり、定着液の補充回数を少なくできる。また、定着液規制手段にて塗布部材表面の定着液量を調整することによって、塗布部材表面に過剰量の定着液が付着し、塗布部材と中間転写媒体とのニップ部入り口で定着液がメニスカスを形成するのを防止でき、定着液とトナー像とが接触した状態で定着液の流動が発生せず、トナー像を乱さないので、高品位で高精細な画像が得られる。 本発明によれば、トナーに含まれる結着樹脂の弾性率を塗布部材表面の弾性率よりも大きくすることによって、塗布部材表面がトナー像の凹凸に倣って確実に弾性変形できる。その結果、トナー量が多い部分でも、またトナー量の多い部分に囲まれるトナー量の少ない部分でも、トナー像の相対的な高さに関係なく定着液を均一に付与でき、高品位な定着画像が得られる。
【0034】
本発明によれば、トナー像形成手段と、中間転写媒体を含む中間転写手段と、定着液付与手段と、転写手段とを含む画像形成装置において、定着液霧化手段と、定着液帯電手段と、液滴供給手段とを含む定着液付与手段を採用し、定着液を液滴化し、定着液の液滴をトナー像と逆極性に帯電させ、トナー像の近傍に供給することによって、トナー像のみにトナー像のトナー量に応じて選択的に定着液を付与でき、中間転写媒体には定着液がほとんど付着しないので、定着液の使用量を減らし、定着液の補充回数を低減できる。
【0035】
本発明によれば、定着液霧化手段が、トナーの平均粒径と同じかまたはそれよりも小さい径を有する定着液の液滴を形成するように構成することによって、トナー像に定着液の液滴が付着する際に、トナー粒子が凝集するのを抑制でき、均一で高品位な定着画像が得られる。定着液の液滴がトナーの平均粒径よりも大きいと、トナー像に定着液の液滴が付着する瞬間にその周囲のトナー粒子を凝集させ、トナー像に目視でも確認できるほどのむらが生じる。
【0036】
本発明によれば、本発明の画像形成装置が定着液付与手段よりも中間転写媒体の回転駆動方向の上流側に中間転写媒体加熱手段を含み、中間転写媒体加熱手段により、中間転写媒体上のトナー像をトナーに含まれる結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱する構成を採ることによって、トナー中の結着樹脂が適度に軟化し、中間転写媒体とトナー粒子との付着力が増加する。その結果、トナー粒子の塗布部材への付着、定着液を付与する際のトナー像の乱れなどを一層防止できる。したがって、塗布部材を用いる場合には特に好適である。
【0037】
本発明によれば、本発明の画像形成装置が定着液付与手段よりも中間転写媒体の回転駆動方向の上流側に中間転写媒体加熱手段を含み、結着樹脂とともに結着樹脂よりも軟化点の低いワックスを含むトナーを用い、中間転写媒体加熱手段により、中間転写媒体上のトナー像をトナーに含まれるワックスの軟化点以上の温度に加熱する構成を採ることによって、トナー中のワックスが適度に軟化し、中間転写媒体とトナー粒子との付着力が増加する。その結果、トナー粒子の塗布部材への付着、定着液を付与する際のトナー像の乱れなどを一層防止できる。したがって、塗布部材を用いる場合には特に好適である。また、トナー粒子中のワックスが軟化することにより、定着液がトナー粒子の内部にまで進入し、短時間でトナーを記録媒体への転写に適する軟化状態にすることができる。その結果、定着液を付与してから記録媒体へ転写するまでの時間を短縮化でき、定着液の付与位置と記録紙への転写位置との間隔を短く設定でき、装置を小型化が容易である。
【0038】
本発明によれば、前述の画像形成装置において、中間転写媒体上で複数色のトナー像を重ね合わせる滅法混色によりカラー画像を形成すると、トナー量に応じて必要充分量の定着液が付与されるので、高品位なカラー定着画像が形成できる。このように、本発明の画像形成装置は、特にカラー画像の形成に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は、本発明の実施の第1形態である画像形成装置1の構成を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述のトナー像形成手段2)の構成を拡大して示す断面図である。図3は、図1に示す画像形成装置1の要部(主に定着液付与手段5)の構成を拡大して示す断面図である。なお、画像形成装置1は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色のトナー像を順次重ね合わせて転写する、いわゆるタンデム構成の画像形成装置である。
【0040】
画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、中間転写手段3と、中間転写媒体加熱手段4と、定着液付与手段5と、転写定着手段6と、記録媒体供給手段7と、排出手段8とを含んで構成される。
【0041】
トナー像形成手段2は、作像ユニット10y,10m,10c,10bを含み、これらは、各色相の画像情報に対応する静電潜像を形成し、該静電潜像を現像して各色のトナー像を形成するものである。すなわち、作像ユニット10yはイエロー色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10mはマゼンタ色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10cはシアン色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10bはブラック色の画像情報に対応するトナー像を形成する。
【0042】
作像ユニット10yは、感光体ドラム11yと、帯電ローラ12yと、光走査ユニット13と、現像装置14yと、ドラムクリーナ15yとを含んで構成される。
【0043】
感光体ドラム11yは、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない円筒状、円柱状または薄膜シート状(好ましくは円筒状)の導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含んで構成される。感光体ドラム11yには、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、導電性基体であるアルミニウム素管と、アルミニウム素管の表面に形成される有機感光層とを含む、GND電位に接続される直径30mmの感光体ドラムが挙げられる。有機感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層して形成される。有機感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質とを1つの層に含むものであってもよい。有機感光層の層厚は、たとえば、20μmである。また有機感光層と導電性基体との間に下地層を設けてもよい。さらに、有機感光層の表面に保護層を設けてもよい。有機感光層に代えて、酸化亜鉛、セレン、アモルファスシリコンなどからなる感光層を使用できる。感光体ドラム11yは、時計周りの方向に、たとえば、周速度100mm/sで回転駆動する。
【0044】
帯電ローラ12yは、感光体ドラム11yの表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電ローラ12yに代えて、ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、スコロトロンといったコロナ帯電器などが使用できる。本実施の形態では、感光体ドラム11yは帯電ローラ12yによって−600Vに帯電される。
【0045】
光走査ユニット13は、帯電状態になる感光体ドラム11yの表面にイエロー色の画像情報に対応するレーザ光13yを照射し、感光体ドラム11yの表面に、イエロー色の画像情報に対応する静電潜像を形成する。レーザ光13yの光源には、半導体レーザなどが用いられる。本実施の形態では、露光電位−70Vの静電潜像が形成される。
【0046】
現像装置14yは、感光体ドラム11y表面に圧接し、図示しない固定磁極を内包しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられ、イエロー色トナー16yを感光体ドラム11y表面の静電潜像に供給する現像ローラ17yと、現像ローラ17yの表面に当接するように設けられ、現像ローラ17y表面のイエロー色トナー層を均一化(層規制)する現像ブレード18yと、イエロー色トナー16yを貯留するトナー貯留容器19yと、トナー貯留容器19yの内部に、互いに圧接しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられる攪拌ローラ20a,20bであって、攪拌ローラ20aが現像ローラ17yの表面に圧接しかつ現像ローラ17y表面にイエロー色トナー16yを供給する攪拌ローラ20a,20bとを含んで構成される。現像ローラ17yは、感光体ドラム11yに圧接(接触)する現像ニップ部において、感光体ドラム11yの回転駆動方向と同じ方向に回転駆動する。したがって、軸線回りの回転駆動方向としては、逆方向になる。本実施の形態では、現像ローラ17yの周速度は、たとえば、感光体ドラム11yの周速度に対して1.5倍の150mm/sである。また本実施の形態では、現像ローラ11yには、現像電位として−240Vの直流電圧が印加される。トナー貯留容器19y中のイエロー色トナー16yは、攪拌ローラ20a,20bによって図示しない磁性キャリアと混合された後、現像ローラ17y表面に供給され、現像ブレード18yにより層厚を均一化された後、電位差などを利用して感光体ドラム11y表面の静電潜像にほぼ選択的に供給され、イエロー色の画像情報に対応するトナー像が形成される。
【0047】
ドラムクリーナ15yは、後述するように、感光体ドラム11y表面のイエロー色トナー像が中間転写ベルト21に転写された後に、該表面に残存するイエロー色トナーを除去、回収する。
【0048】
作像ユニット10yによれば、感光体ドラム11yをその軸線回りに回転駆動させながら、まず帯電ローラ12yにより感光体ドラム11yの表面をたとえば−600Vに帯電する。次に、帯電状態にある感光体ドラム11yの表面に、光走査ユニット13からイエロー色の画像情報に対応する信号光を照射し、イエロー色の画像情報に対応する露光電位−70Vの静電潜像を形成する。次いで、感光体ドラム11yの表面に、現像ローラ16y表面に担持されるイエロー色トナー層が接触する。現像ローラ16yには現像電位として−240Vの直流電圧が印加されており、電位差により、静電潜像にイエロー色トナー16yが付着して現像され、感光体ドラム11yの表面にイエロー色のトナー像が形成される。このイエロー色トナー像は、後述するように、感光体ドラム11yの表面に接する中間転写ベルト21に中間転写される。感光体ドラム11yの表面に残留するイエロー色トナー16yはドラムクリーナ15yにより除去され、回収される。以後、同様のイエロー色トナー像形成動作が繰り返し実行される。
【0049】
作像ユニット10m,10c,10bは、それぞれマゼンタ色トナー16m、シアン色トナー16cまたはブラック色トナー16bを使用する以外は、作像ユニット10yに類似の構造を有するので、同一の参照符号を付し、さらに各参照符号の末尾に、マゼンタ色を示す「m」、シアン色を示す「c」またはブラック色を示す「b」を付し、説明を省略する。なお、作像ユニット10y,10m,10c,10bは、中間転写ベルト21の移動方向(副操作方向)、すなわち矢符30の方向の上流側からこの順番で一列に配列される。
【0050】
なお、各色トナー16y,16m,16c,16bは、結着樹脂、着色剤および必要に応じて離型剤を含有する。なお、以後特に断らない限り、各色トナー16y,16m,16c,16bをトナー16と総称する。
【0051】
結着樹脂としては、後述する定着液35により軟化および/または膨潤する樹脂であれば特に制限されず、たとえば、ポリスチレン、スチレンの置換体の単独重合体、スチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。結着樹脂は単独または2種以上の組合せで使用できる。これらの中でも、トナー16自体の保存性、耐久性、定着液35の付与によるトナー16の軟化および/または膨潤制御などの点から、軟化点が100〜150℃、ガラス転移点が50〜80℃およびヤング率が0.5〜5GPaである樹脂が好ましく、ポリエステルが特に好ましい。ポリエステルは、入手容易で安価な有機溶剤によって容易に膨潤および/または軟化して透明になる。これによって、異なる単色のトナー像を複数重ね合わせたカラートナー像を記録媒体に定着させると、減法混色により充分な発色が得られる。また、前記の軟化点範囲の樹脂よりも軟化点(または分子量)の高い樹脂を用いると、現像時の負荷によるトナー16の劣化が防止され、長期間にわたって安定した現像トナー像ひいては高水準で安定した画像が得られる。
【0052】
着色剤としては、従来から電子写真方式の画像形成技術において用いられるトナー用顔料および染料を使用できるけれども、定着液35による滲みを防止するために、定着液35に溶解しない顔料が好ましく、ニグロシン染料などの染料は好ましくない。顔料の具体例としては、たとえば、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料などの有機系顔料、カーボンブラック、酸化チタン、モリブデンレッド、クロムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ベルリンブルーなどの無機系顔料、アルミニウム粉などの金属粉などが挙げられる。
【0053】
離型剤としては、後述する定着液35により軟化および/または膨潤するものであれば特に制限されず、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックスなどのワックス類が挙げられる。これらのワックスの中から、使用する結着樹脂に応じて、該結着樹脂よりもガラス転移点の低いワックスを用いるのが好ましい。ガラス転移点が結着樹脂よりも低いワックスは加熱により容易に軟化するので、トナー16自体の軟化点よりも低温でも、トナー16同士の結合力およびトナー16のトナー像担持体、記録媒体などへの付着力が増加するので、定着液付与時にトナー16の流れ、凝集などが発生するのを減少させることができる。さらに、ワックスの軟化により、トナー粒子におけるワックスの存在部分からトナー粒子内部に定着液35が浸透するので、定着液35の付与後、短時間でトナー16全体が軟化および/または膨潤する。その結果、記録媒体への転写定着時に、充分な定着強度が得られるとともに、トナー像の重ね合わせにより充分な発色を得ることができる。
【0054】
トナー16は、必要に応じて、帯電制御剤、流動性向上剤、定着促進剤、導電剤などの一般的なトナー用添加剤の1種または2種以上を含むことができる。
【0055】
トナー16の体積平均粒径は、特に制限されないけれども、好ましくは2〜7μmである。このような小粒径トナーを用いると、単位重量当りのトナー16の表面積が大きくなり、定着液35との接触面積が増加して定着し易くなる。これによって、定着液35の使用量の低減化を図り得るとともに、トナー像の記録媒体への定着および定着後の乾燥を短時間で実施できる。また、トナー16の体積平均粒径が小さいほど、記録媒体9に対する被覆率が高くなるので、低付着量での高画質化およびトナー16の消費量の低減化を達成でき、ひいては定着液35の消費量のさらなる低減化を達成できる。
【0056】
トナー16の体積平均粒径が2μm未満では、トナー16の流動性が低下し、現像動作の際に、トナー16の供給、攪拌および帯電が不充分になり、トナー16量の不足、逆極トナーの増加などが起こり、高画質の画像が得られないおそれがある。一方、体積平均粒径が7μmを超えると、トナー粒子の中心まで軟化および/または膨潤し難い大粒径のトナー粒子が多くなるので、画像の記録媒体への定着性が低下するとともに、画像の発色が悪くなり、特にOPフィルムへの定着の場合には、画像が暗くなる。
【0057】
トナー16自体の軟化点およびガラス転移点は特に制限されないけれども、軟化点が100〜150℃、ガラス転移点が50〜100℃であることが好ましい。このような軟化点の高いトナーは、現像時の負荷に対する耐久性は高いけれども、熱定着方式では充分に定着および発色しない。ところが、本発明では、定着液35を用いて化学的にトナー16を膨潤・軟化させるので、定着および発色が充分で、高品位な画像が得られる。
【0058】
トナー16は、公知の方法に従って製造できる。たとえば、結着樹脂に着色剤、離型剤などを分散して粉砕する方法、結着樹脂のモノマー溶液中に着色剤、離型剤などを分散させ、その後結着樹脂のモノマーを重合させる方法などが挙げられる。いずれの方法においても、トナー16の表面積を大きくするために、トナー16の形状が球形よりも不定形になるように調整するのが好ましい。これによって、定着液35と接触し易くなるので、定着液35の使用量を減らし、トナー像の定着および乾燥を短時間で実施できる。
【0059】
本実施の形態で用いられる各色トナー16y,16m,16c,16bは、顔料以外は次に示す同じ構成を有する。このトナーは結着樹脂、着色剤および離型剤を含み、体積平均粒径6μm、顔料含有量がトナー全量の12重量%、離型剤としてのワックス含有量がトナー全量の7重量%および残部が結着樹脂である、負帯電性の絶縁性非磁性トナーである。結着樹脂は、ガラス転移点60℃、軟化点120℃およびヤング率2GPaのポリエステルである。ワックスは、軟化点70℃の低分子ポリエチレンワックスである。このトナーを用いて、所定の画像濃度(X−Rite社製310による反射濃度測定値が1.4)を得るのに必要な単位面積当りのトナー量は5g/mである。さらに、定着液35に対する接触角は47°である。
【0060】
中間転写手段3は、中間転写ベルト21と、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bと、支持ローラ26,27,28と、ベルトクリーナ29と、温度センサ31とを含んで構成される。
【0061】
中間転写ベルト21はトナー像担持体であり、支持ローラ26,27,28との間に張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルトであり、感光体ドラム11y,11m,11c,11bとほぼ同じ速度で矢符30の方向に回転する。中間転写ベルト21としてはこの分野で常用されるものの中から、定着液35を浸透させない材質のものを選択して使用する。中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリイミドなどの合成樹脂の1種または2種以上を含むものが好ましい。本実施の形態では、厚さ100μmのポリイミド製基材表面に、1)厚さ300μmのシリコーンゴム層、ならびに2)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)を8:2(重量比)で混合したフッ素樹脂組成物からなる厚さ20μmの表面コート層をこの順番で積層したものを用いる。なお、ポリイミド製基材および表面コート層には、中間転写ベルトとしての電気抵抗値を調整するために、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、グラファイトカーボンなどの導電材を配合できる。なお、中間転写ベルト21の定着液35に対する接触角は、後述する塗布ローラ32における多孔質層36に対する接触角よりも大きくなるように、それぞれの材料を選択するのが好ましい。これによって、中間転写ベルト21上のトナー像が担持されない非画像部には定着液35が付着し難くなり、中間転写ベルト21の定着液35による汚染などが防止され、定着液35の使用量も減らすことができる。本実施の形態では、中間転写ベルト21の定着液35に対する接触角は70°である。
【0062】
中間転写ベルト21のトナー像担持面21aは、感光体ドラム11y,11m,11c,11bにこの順番で圧接する。中間転写ベルト21の感光体ドラム11y,11m,11c,11bに圧接する位置が、各色相のトナー像の中間転写位置である。トナー像担持体である中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11y,11m,11c,11bに対向する位置に、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bが配置される。
【0063】
中間転写ローラ22y,22m,22c,22bは、それぞれ、中間転写ベルト21におけるトナー像担持面21aの反対面に圧接し、かつ図示しない駆動手段によりその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、たとえば、金属製軸体と、該金属製軸体の表面に被覆される導電性層とを含んで構成される。軸体は、たとえば、ステンレス鋼などの金属により形成される。軸体の直径は特に制限されないけれども、好ましくは8〜10mmである。導電性層は、導電性弾性体などにより形成される。導電性弾性体としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、カーボンブラックなどの導電材を含むEPDM、発泡EPDM、発泡ウレタンなどが挙げられる。導電性層によって、中間転写ベルト21に高電圧が均一に印下される。
【0064】
中間転写ローラ22y,22m,22c,22bには、感光体ドラム11y,11m,11c,11bの表面に形成されるトナー像を中間転写ベルト21上に転写するために、トナーの帯電極性とは逆極性の中間転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム11y,11m,11c,11bに形成されるイエロー色、マゼンタ色、シアン色およびブラック色の各色相のトナー像が中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに順次重ね合わさって転写され、多色トナー像が形成される。
【0065】
支持ローラ26,27,28には、たとえば、直径30mmで、肉厚が1mmのアルミニウム製円筒体が用いられる。加熱支持ローラ26は、図示しない駆動手段によりその軸線方向に回転駆動可能に支持され、その内部に中間転写媒体加熱手段4が設けられる。中間転写媒体加熱手段4は、トナー像の中間転写ベルト21に対する付着力およびトナー像を構成するトナー同士の結合力を高める作用を有する。中間転写媒体加熱手段4には、たとえば、ハロゲンランプなどの加熱ヒータが使用される。支持ローラ27は、中間転写ベルト21を介して後述する転写定着ローラ44に圧接するバックアップローラとしても機能することから、電気的に接地される。支持ローラ28は、中間転写ベルト21に張力を付与するテンションローラである。
【0066】
ベルトクリーナ29は、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上のトナー像を後述の転写定着手段6において記録媒体9に転写した後に、トナー像担持面21a上に残存するトナーを除去する部材であり、中間転写ベルト21を介して支持ローラ28に対向するように設けられ、図示しない加圧手段により、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに圧接し、トナー像担持面21a上の残存トナーなどを掻き取るクリーニングブレード29aと、クリーニングブレード29aに掻き取られるトナーなどを貯留するトナー貯留容器29bとを含んで構成される。クリーニングブレード29aには、たとえば、弾性を有するゴム材料(たとえば、ウレタンゴム)などからなるブレードを使用できる。
【0067】
温度センサ31は、中間転写ベルト21の温度を検知するために、中間転写ベルト21の回転方向、すなわち矢符30の方向において、加熱支持ローラ26の下流側の位置に、中間転写ベルト21に接するかまたは近接するように設けられる。温度センサ31による検知結果は、画像形成装置1の全動作を制御する図示しないCPUに格納され、CPUは格納される検知結果に基づいて、中間転写媒体加熱手段4に制御信号を送って中間転写ベルト21の加熱を制御し、中間転写ベルト21の表面温度を制御する。本実施の形態では、中間転写ベルト21の表面温度は65℃に加熱され保持される。この加熱温度は、本実施の形態で使用されるトナー16に含まれる結着樹脂のガラス転移点(60℃)よりも高い温度である。トナー像をトナー16中の結着樹脂のガラス転移点以上に加熱すると、結着樹脂が軟化し、トナー16同士および中間転写ベルト21とトナー16との付着力が増加する。その結果、後述の定着液付与手段5において、トナー16が塗布ローラ32に付着すること、定着液35の付与によりトナー像が乱れることなどを一層確実に防止でき、塗布ローラ32による定着液35の接触塗布を容易に実施できる。
【0068】
中間転写手段3によれば、感光体ドラム11y,11m,11c,11b上に形成される各色のトナー像が、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aの所定位置に重ね合わせて転写されて多色トナー像が形成され、中間転写ベルト21が加熱支持ローラ26上を通過し、中間転写ベルト21上のトナー像は中間転写ベルト21とほぼ同じ温度に加熱されるのと同時に定着液付与手段5により定着液35を付与される。
【0069】
本実施の形態では、加熱支持ローラ26による中間転写ベルト21の加熱温度を65℃とするけれども、加熱温度は、トナー16中に含まれる成分に応じて適宜変更できる。たとえば、トナー16が軟化点70℃のワックスを含む場合は加熱温度を75℃とし、中間転写ベルト21と塗布ローラ32とのニップ部における中間転写ベルト21およびトナー像の温度が、トナー中のワックスの軟化点よりも高い温度となるよう設定してもよい。
【0070】
このように構成することによって、定着液35を塗布する直前にトナー16内のワックスが軟化し、トナー16同士およびトナー16と中間転写ベルト21との付着力がさらに増加し、定着液35塗布時のトナー像の乱れ、トナー16の塗布ローラ32への付着などをさらに防止できる。また、定着液35の塗布による中間転写ベルト21およびトナー像の温度低下を補う熱量をその場で供給できるので、塗布直後の中間転写ベルト21、トナー像および定着液35の温度低下を防止できる、定着液35を速やかに拡散および浸透させ得る。さらに、トナー粒子中のワックスが軟化することによって、定着液35がトナー粒子内部まで浸透する。その結果、トナー16の膨潤・軟化が瞬時に広範囲に生じる。これにより、トナー像を後述の転写定着手段6において記録媒体9に押圧する時に、記録媒体9への充分な定着強度が得られる。さらに、塗布後の定着液35の温度が上昇させるので、塗布後に定着液35を短時間で乾燥させ得る。これにより、画像形成装置の単位時間当たりの出力枚数であるスループットをさらに向上できる。また、トナー16が瞬時に膨潤・軟化することによって、定着液35の付与から記録媒体9への転写までの時間を短縮化できるので、定着液35の付与位置と記録媒体9への転写位置との間隔を短く設定でき、装置を小型化に寄与できる。
【0071】
定着液付与手段5は、中間転写ベルト21上に担持されるトナー像に、該トナー像を軟化および/または膨潤させる定着液35を接触下で付与するものである。
【0072】
定着液付与手段5は、塗布ローラ32と、ケーシング33と、開閉扉34と、ピボット39と、ガイド溝40と、押圧ばね42とを含んで構成される。
【0073】
塗布ローラ32は、ローラ形状に形成され、芯金36と、芯金36の表面に形成される浸透制御層37と、浸透制御層37の表面に形成される多孔質層38とを含んで構成され、芯金35の長手方向の両端に設けられる図示しないフランジと一体の回転軸を、ケーシング33内に設けられる図示しない軸受けにより回転可能に支持され、中間転写ベルト21の回転に従動して回転する。
【0074】
また、塗布ローラ32は、その表面の多孔質層38が中間転写ベルト21を介して加熱支持ローラ26に軽く圧接するように設けられる。この構成により、中間転写ベルト21と塗布ローラ32とのニップ部に、大面積でトナー量の多いベタ画像が入っても、押圧力があまり高くないので、ベタ画像によって塗布ローラ32が押し上げられて塗布ローラ32と中間転写ベルト21との間隔が大きくなり、塗布ローラ32表面の定着液35の薄層がトナー像とともにニップ部を通過し、その際にトナー像に充分に付与される。また、ニップ部で定着液35が大きなメニスカスを形成して滞留することがないので、トナー像の乱れが発生せず、高品位で高精細な画像が得られる。さらに、定着液35を介して塗布ローラ32とトナー16とが接触するので、トナー16の塗布ローラ32への付着が防止される。
【0075】
塗布ローラ32の中間転写ベルト21に対する押圧力は、好ましくは、線圧で0.05〜1.0N/cmである。0.05N/cm未満では、塗布ローラ32と中間転写ベルト21との接触状況が不安定になり、定着液35をトナー像へ均一に付与できない。さらに、中間転写ローラ21の微妙な凹凸およびトナー像の凹凸に倣って、塗布ローラ32が充分に弾性変形しないので、トナー像の凹部に定着液35を付与するのが不充分になる。その結果、定着液35の塗布むら、それに起因する定着むら、光沢むら、色むらなどが発生する。1.0N/cmを超えると、塗布ローラ32と中間転写ベルト21とが圧接下に回転する状態で、塗布ローラ32表面の定着液35がニップ部を通過できない。その結果、ニップ部で定着液35をスクイーズし、定着液35がニップ部入り口でメニスカスを形成し、余剰の定着液35が、塗布ローラ32の回転方向上流側へ戻り、ニップ部入り口で液が激しく流動し、トナー像に乱れが発生する。なお、色の異なる複数の単色トナー像を重ね合わせてカラー画像を得る場合には、トナーの絶対量が多くなるとともに、トナーが多く付着する箇所と少なく付着する箇所とが微細に入り交じって分布する。たとえば、3色のトナー像を重ね合わせると、高濃度部分では単色のトナー像よりも3倍以上の高さになる。このため、一定の押圧力で接触しかつ弾性を有する塗布ローラ32によりトナー量に応じて定着液35を付与することが特に重要である。本実施の形態では、塗布ローラ32の加熱支持ローラ26に対する押圧力は0.1N/cmである。
【0076】
塗布ローラ32としての弾性率は、トナー16の弾性率よりも小さいのが望ましく、好ましくはトナー16の弾性率の1/10以下、さらに好ましくは1/100以下である。
【0077】
塗布ローラ32に含まれる芯金36には、この分野で常用される芯金が使用できる。本実施の形態では、外径30mm、肉厚0.5mmのアルミニウム製芯金を使用する。また芯金36には、定着液35を通過させる通過孔36aが複数個設けられる。本実施の形態では、径0.1mmの通過孔36aが、芯金36の円周方向に等角度で16箇所、軸方向には半位相ずらして5mm間隔で設けられる。芯金36の内部には定着液35が保持および貯蔵される。したがって、芯金36は塗布ローラ32の剛性を高めるという本来の機能とともに、定着液貯蔵層としても機能する。
【0078】
浸透制御層37は、芯金36の通過孔36aを通して供給される定着液35が多孔質層38に過剰に供給されるのを防止するために、定着液35の浸透および保持が可能でかつ弾性変形が可能に設けられる。浸透制御層37は定着液35の保持貯蔵する芯金36に接するので、充分な定着液35の供給を受けることができる。浸透制御層37は、その中に存在する微細な空孔中に定着液35を保持することができ、浸透制御層37の外層である多孔質層38がトナーの集合体であるトナー像などの表面積の大きい物体に接触すると、多孔質層38から該物体に多量の定着液35が付与され、多孔質層38の定着液35の保持量が減少するのに伴って、多孔質層38に定着液35を供給する。また、多孔質層38が、平滑な中間転写ベルト21上に部分的に担持されるトナー像のような凹凸の変化が大きい物体に接触する場合は、浸透制御層37は多孔質層38とともに弾性変形し、多孔質層38による局所的な定着液35の付与を助けるように多孔質層38に定着液35を補給する。さらに、浸透制御層37の存在によって芯金36内部の定着液35が多孔質層38に直接接触しないので、塗布ローラ32表面に過剰な定着液35が漏出し、塗布ローラ32と中間転写ベルト21とのニップ部入り口で定着液35がメニスカスを形成するのを防止できる。したがって、定着液35の流動によるトナー像の乱れが発生せず、高品位で高精細な画像が得られる。浸透制御層37には、たとえば、フェルト、ゴムの連続気泡体(スポンジ)などが用いられる。本実施の形態では、厚さ5mmのフェルトが用いられる。また本実施の形態では、浸透制御層37の弾性体としての指標になるヤング率は3MPaであり、トナー16に比べて1/100以下である。
【0079】
多孔質層38は中間転写ベルト21に圧接し、浸透制御層37から適度に供給される定着液35を中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上のトナー像に接触下に付与する。多孔質層38は、浸透制御層37と同様に、その中に存在する微細な空孔中に定着液35を保持することができ、接触する物体の表面状態に応じて定着液35の付与量を変化させることができる。トナー像のように表面積が大きい物体に接触すると、多孔質層38から定着液35が多量に浸み出し、巨視的な面積当たりの付与量が大きくなる。一方、中間転写ベルト21のトナー像を担持しない表面のように表面積が小さい物体に接触すると、定着液35の浸み出し量が相対的に少なくなり、巨視的な面積当たりの付与量が小さくなる。また、凹凸の変化が大きい部分では局所的に弾性変形を起こし、その部分に定着液35の必要充分量を供給できる。したがって、トナー像の凹凸(高低)に関係なく、トナー像全体に均一に定着液35を付与できる。多孔質層38中の定着液35がトナー像に付与され、多孔質層38中の定着液35の保持量が減少しても、浸透制御層37から直ちに定着液35が補給されるので、トナー量の多いベタ画像を連続して出力しても、高品位の定着画像が安定的に得られる。なお、多孔質層38は、定着液35のトナー像への付与という機能とともに、多孔質層38の表面近傍に定着液35が多量に存在する場合には、定着液35を吸収する機能をも発揮する。
【0080】
多孔質層38の材料としては、弾性変形および多孔質化が可能な材料であれば特に制限されず使用でき、たとえば、PTFE、ポリウレタン、ポリイミドなどが挙げられる。本実施の形態では、PTFEからなる厚さ50μmの多孔質層38が設けられ、該層38における空孔の径が0.5μm、空孔率が80%である。また、本実施の形態では、多孔質層38の定着液33に対する接触角は65°である。
【0081】
多孔質層38における空孔径は好ましくは0.1〜2μmである。0.1μm未満では、定着液35の浸出量が不充分になり、トナー量が多い部分で定着強度が不足する。一方2μmを超えると、トナー粒子が空孔に嵌り込み、多孔質層38を目詰まりさせる。また、空孔率は好ましくは60〜90%である。60%未満では、定着液35の保持量と浸出量とがともに不足し、トナー量が多い部分で定着強度が不足する。90%を超えると、復元する弾性を有する多孔質層として形成が困難である。さらに層厚は好ましくは10〜200μmである。10μm未満では、多孔質層としての形成が困難であり、一方200μmを超えると、定着液の浸出量が不充分になり、トナー量が多い部分で定着強度が不足する。なお、多孔質層38の層厚は、浸透制御層37の層厚よりも小さく形成するのが好ましい。浸透制御層37の材料として用いられるフェルト、スポンジなどには、定着液35を保持する定着液保持層としての機能がある。したがって、多孔質層の層厚を小さくすることによって定着液35の保持量が減少しても、浸透制御層37に充分量の定着液35が保持され、多孔質層38に定着液35が順次供給されるので、定着液35のトナー像への付与は支障なく実行される。これによって、多孔質層に用いられる高価な多孔質膜の使用量を減らし、浸透制御層37をフェルト、連続発泡ゴム(スポンジ)などの安価な部材で構成し、塗布ローラ32の製造コストの低減化を図り得る。
【0082】
多孔質層38の定着液35に対する接触角が、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aの定着液35に対する接触角より小さくなるように構成するのが好ましい。これによって、多孔質層38と中間転写ベルト21とが接触するときに、定着液35が中間転写ベルト21よりも多孔質層38に付着しやすくなり、中間転写ベルト21の非画像部に付与される定着液35の量を低減化でき、ひいては定着液35の使用量および補充回数を低減できる。この両者の接触角の差は5度以上が望ましい。
【0083】
また、多孔質層38の定着液35に対する接触角が、トナー16表面の定着液35に対する接触角よりも大きくなるように構成するのが好ましい。これによって、多孔質層38とトナー像とが接触するときに、定着液35が多孔質層38よりもトナー像に付着しやすくなり、画像部であるトナー像に多孔質層38から定着液35を充分に付与でき、面積当たりのトナー量が多いトナー像であっても確実に定着できる。この両者の接触角の差は10度以上が望ましい。 前述のような構成を有する塗布ローラ32を用いれば、塗布ローラ32と中間転写ベルト21とのニップ部入り口で定着液35がメニスカスを形成して滞留することがない。このため、トナー像と定着液35とが接触した状態で、定着液35の流れが発生せず、トナー像の乱れがないので、高品位で高精細な画像を安定的に形成できる。また、塗布部材をローラ形状にすることによって、塗布部材の内部に閉空間を形成でき、該閉空間を利用すれば、定着液の保持が容易である。
【0084】
図4は、塗布ローラ32による中間転写ベルト21上のトナー像への定着液35の付与を説明する図面である。塗布ローラ32が中間転写ベルト21上に担持されるトナー16の集合体であるトナー像(画像部)に接触すると、塗布ローラ32の浸透制御層37および多孔質層38が弾性変形を起こして凹む。トナー粒子16の周囲には隙間が多く存在し、巨視的な面積当たりの表面積が大きいので、多孔質膜38から定着液35が浸み出し、トナー粒子16の周囲の隙間を満たし、トナー粒子16を膨潤・軟化する。一方、中間転写ベルト21におけるトナー像が担持されない平滑な部分(非画像部)では、浸透制御層37および多孔質層38の弾性変形も起こらず、巨視的な面積当たりの表面積も小さく、多孔質膜38からの定着液35の浸み出し量も少ないので、画像部のみに選択的に定着液35が付与され、中間転写ベルト21の定着液35による汚染などが防止され、定着液35の使用量の低減化を図り得る。
【0085】
塗布ローラ32によれば、芯金36内部に貯蔵される定着液35を通過孔36aから浸透制御層37に供給し、浸透制御層37では定着液35の多孔質層38への供給量を適切な範囲に制御し、多孔質層38は接触下に中間転写ベルト21上のトナー像に定着液35を付与する。なお、塗布ローラ32は、非画像部に付着するカブリトナーにも定着液35を付与するので、カブリトナーも記録媒体9に定着できる。これにより、カブリトナーが手、衣服などに付着して汚染することを防止できる。
【0086】
本実施の形態では、塗布ローラ32の内部の芯金36中に定着液35を充填し、塗布ローラ32の交換により定着液35を補充する構成とするけれども、それに限定されず、画像形成装置1の内部に別途定着液貯留タンクを設け、該タンクから塗布ローラ32に定着液35を補充する構成を採ってもよい。
【0087】
ケーシング33は、塗布ローラ32をその内部に回転可能に支持しながら収容し、加熱支持ローラ26に対向する側面33aには、中間転写ベルト21を介して塗布ローラ32と加熱支持ローラ26とを圧接させるための開口部33bが設けられる。また、ケーシング33の上部には、その長手方向の両端にピボット39a,39bが設けられる。ピボット39a,39bは、開閉扉34のケーシング33に対向する側面に設けられるU字形のガイド溝40a,40bに摺動可能に挿入される。ピボット39a,39bがガイド溝40a,40bを摺動することによってケーシング33が矢符41の方向に移動し、塗布ローラ32が中間転写ベルト21に接触する動作位置に着脱される。ピボット39a,39bがガイド溝40a,40bの先端に位置するときに、塗布ローラ32が動作位置にある。ケーシング33は、着脱自在なカートリッジ方式に形成され、塗布ローラ32内部の定着液がなくなったことを図示しないセンサが検知し、その検知結果をCPUに格納し、CPUはその検知結果に応じて図示しない操作パネル上にケーシング33の交換時期が来たことを表示する。それに基づいて、ケーシング33を交換する。このように構成することによって、定着液35が画像形成装置1の内部に飛散または漏出する可能性が極めて少なくなり、定着液35による内部の汚染が防止される。
【0088】
開閉扉34は、画像形成装置1の側面1aの一部に、矢符43の方向に開閉自在に設けられる。これにより、ケーシング33の交換が容易である。また、そのケーシング33に対向する側面には前述のガイド溝40a,40bおよび押圧ばね42が設けられる。開閉扉34を閉じると、押圧ばね42がケーシング33の下方を押圧する。このとき、ケーシング33がピボット39a,39bを中心に回転可能に支持されることになる。これによって、ケーシング33内の塗布ローラ32が中間転写ベルト21に所定の押圧力で圧接される。圧接の押圧力は、押圧ばね42の種類の変更などによって調整できる。押圧ばね42には、たとえば、コイルばね、板ばね、ねじりばねなどを使用できる。
【0089】
ここで使用される定着液35は、トナーを軟化および/または膨潤させる液状物であり、たとえば、水と補助溶剤とを含む組成物であり、中間転写ベルト21に浸透しない。補助溶剤とは水に溶解または分散可能な有機化合物である。補助溶剤の具体例としては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、フェノール、ベンジルアルコール、メチルベンジルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテルン、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、オクチルフェニルエーテルなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、オレイン酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、コハク酸ジブチル、フタル酸ジエチル、酒石酸ジエチル、パルミチン酸エチル、ジオクチルフタレートなどのエステル類などが挙げられる。これらの中でも、エーテル類及びエステル類が好ましく、エステル類が最も好ましい。これらの補助溶剤はトナー16の結着樹脂を膨潤軟化する作用に優れる。補助溶剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0090】
定着液35における補助溶剤の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは定着液35全量の5〜80重量%、さらに好ましくは10〜70重量%である。5重量%未満では、トナー16中の結着樹脂を膨潤・軟化させる作用が弱くなり、充分な定着強度が得られないおそれがある。一方80重量%を超えると、トナー像への浸透性が低下し、特にトナー量が多い場合に、トナー像表面のトナーのみが膨潤軟化するので、トナー像内部のトナーの記録媒体への定着が不充分になり、トナーの剥落などが起こるおそれがある。
【0091】
定着液35には、定着液35のトナー16に対する濡れ性の向上、補助溶剤の定着液35中での分散性の向上などを目的として、たとえば、界面活性剤、分散助剤などを添加できる。界面活性剤としては、たとえば、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩などの高級アルコール硫酸エステル塩、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸金属塩、脂肪酸誘導体硫酸エステル塩、リン酸エステルなどの陰イオン(アニオン)界面活性剤、四級アンモニウム塩、複素環アミンなどの陽イオン(カチオン)界面活性剤、アミノ酸エステル、アミノ酸などの両性イオン(ノニオン)界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。分散助剤としては、たとえば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、モノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのカップリング剤が挙げられる。
【0092】
定着液35は低粘性の水溶液であり、トナー16の粒子間、中間転写ベルト21とトナー16との間などに速やかに浸透し、定着液35に含まれ補助溶剤が瞬時にトナー16を膨潤・軟化させる。また、加熱支持ローラ26により加熱された中間転写ベルト21へ定着液35が付与されるので、トナー像を膨潤・軟化させた後は短時間で乾燥する。
【0093】
定着液付与手段5によれば、中間転写ベルト21上のトナー像が加熱支持ローラ26により中間転写ベルト21とほぼ同じ温度に加熱されるのと同時に、塗布ローラ32により定着液35を接触塗布し、トナー16を膨潤軟化させる。中間転写ベルト21上で膨潤軟化したトナー像は、中間転写ベルト21の回転駆動により転写定着手段6に運ばれる。なお、加熱支持ローラ26による加熱は、定着液35の塗布によるトナー像の温度低下を補正する意義をも有する。
【0094】
転写定着手段6は、支持ローラ27と、中間転写ベルト21を介して支持ローラ27に圧接し、かつ軸線方向に回転駆動可能に設けられる転写定着ローラ44を含んで構成される。転写定着ローラ44にはこの分野で常用されるものを使用できるけれども、本実施の形態では、外径が30mmで、芯金と、芯金表面に設けられる弾性層として厚さ3mmで硬度50度(JIS−A)のシリコーンゴム層と、シリコーンゴム層表面に設けられる表層としての厚さ20μmのPFA層とを含む積層体が用いられる。また、転写定着ローラ44は、たとえば、8N/cmの線圧で中間転写ベルト21を介して支持ローラ27に圧接するように配置され、電圧は印加されない。
【0095】
中間転写ベルト21上のトナー像は、加熱支持ローラ26内の中間転写媒体加熱手段4により加熱されかつ定着液付与手段5により定着液35を付与され、膨潤軟化状態になり、中間転写ベルト21の回転によって、支持ローラ27と転写定着ローラ44との圧接部に搬送され、それに同期して、後述する記録媒体供給手段7から記録媒体9が送給され、中間転写ベルト21上のトナー像が記録媒体9の表面に押圧により転写され、定着される。
【0096】
中間転写ベルト21表面にフッ素樹脂層が形成される場合は、トナー16との付着力が低いので、トナー像はほぼ全量が記録媒体9に転写される。また、中間転写ベルト21がゴム層を有する場合は、その表層が記録媒体9の凹凸に倣って変形し、記録媒体9の凹部にもトナー像を接触させ得るので、均一な転写定着像が得られる。
【0097】
また、中間転写ベルト21が定着液35を浸透しない材質で形成され、さらにトナー像のみに定着液35を選択的に付与する構成を採るので、定着液35の記録媒体9への浸透を防止し、記録媒体9にしわ、カールなどが発生するのを防止するとともに、定着液35の使用量を低減化できる。
【0098】
また、定着液35を付与するための塗布ローラ32と記録媒体9とが直接接触しない構成を採るので、記録媒体9が紙類である場合に、セルロース繊維などの紙粉が塗布ローラ32表面に付着することに起因する目詰まりが発生しない。したがって、目詰まりによる定着液35の塗布の不均一が生じることがなく、高品位画像が長期にわたって安定的に得られる。
【0099】
転写定着手段6において、トナー像は記録媒体9に押圧され、紙繊維内に強く入り込むと同時にトナー16の粒子同士が融合し、トナー像の表面が平滑になる。これにより、減法混色による発色性と表面の光沢性に優れた高品位なカラー画像が得られる。
【0100】
転写定着手段6によれば、中間転写媒体加熱手段4および定着液付与手段5により軟化および/または膨潤状態にあるトナー像が記録媒体9に押圧により転写定着される。
【0101】
記録媒体供給手段7は、記録媒体9を貯留する記録媒体カセット50と、記録媒体9を搬送路Pに1枚ずつ送給するピックアップローラ51と、中間転写ベルト21上のトナー像が転写定着ローラ44と支持ローラ27との圧接部に搬送されるのに同期して、該圧接部に記録媒体9を送給する1対のレジストローラ52a,52bとを含んで構成される。
【0102】
記録媒体供給手段7によれば、記録媒体カセット50内に貯留される記録媒体9が、ピックアップローラ51により1枚ずつ搬送路Pに送給され、さらに、レジストローラ52a,52bにより、転写定着ローラ44と支持ローラ27との圧接部に送給される。
【0103】
排出手段8は、搬送ベルト45と、駆動ローラ46と、テンションローラ47と、排紙ローラ48とを含んで構成される。
【0104】
搬送ベルト45は、駆動ローラ46とテンションローラ47との間に張架されてループ状の搬送経路を形成する無端ベルトであり、転写定着手段6により画像が形成された記録媒体9を排紙ローラ48に搬送する。搬送ベルト45には、たとえば、導電剤を添加して導電性を付与した厚さ100μmのポリイミドフィルムの少なくとも記録媒体搬送面45aに、PTFEからなる厚さ10μmの被覆層を設けたものを使用できる。
【0105】
駆動ローラ46は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に設けられる。駆動ローラ46には、たとえば、アルミニウムなどの金属からなる中空ローラを使用できる。
【0106】
テンションローラ47は、搬送ベルト45が弛まないように、搬送ベルト45に所定の張力を付与する。テンションローラ47には、たとえば、金属製軸体と、金属製軸体の表面に形成される被覆層とを含んで構成される。また、金属製軸体のみからなるものでもよい。金属製軸体の材料には、たとえば、ステンレス鋼が使用され、被覆層の材料にはたとえばフッ素ゴムが使用される。
【0107】
排紙ローラ48は、搬送ベルト45により搬送される記録媒体9を画像形成装置1の外部側面に設けられる排紙トレイ49に排出する部材であり、互いに圧接するように設けられる1対のローラを含んで構成され、各ローラはそれぞれの軸線方向に回転駆動可能に支持される。
【0108】
画像形成装置1によれば、トナー像形成手段2により、トナー像担持体である中間転写ベルト21上に形成されるトナー像に、中間転写媒体加熱手段4による加熱および定着液付与手段5による接触下での定着液35の付与が施され、トナー像を軟化および/または膨潤させ、これを転写定着手段6により記録媒体9に転写定着し、画像が形成される。
【0109】
図5は、本発明の実施の第2形態である画像形成装置55における要部の構成を概略的に示す断面図である。
【0110】
画像形成装置55は画像形成装置1に類似し、対応する部分は図示および説明を省略する。また、図5に示す部分のうち、画像形成装置1に対応する部分については同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0111】
画像形成装置55は、定着液付与手段56を有することを特徴とする。
定着液付与手段56は、図示しない駆動手段により矢符61の方向に回転駆動可能に支持され、中間転写ベルト21を介して加熱支持ローラ26に圧接するように設けられる塗布ローラ57と、図示しない駆動手段により矢符63の方向に回転駆動可能に支持され、塗布ローラ57に圧接するように設けられる定着液供給ローラ62と、図示しない駆動手段により矢符66の方向に回転駆動可能に支持され、塗布ローラ57に圧接するように設けられる定着液規制ローラ64と、定着液規制ローラ64表面に圧接するように設けられる第1のシール部材65と、塗布ローラ57表面に圧接するように設けられる第2のシール部材67と、塗布ローラ57、定着液供給ローラ62、定着液規制ローラ64、第1のシール部材65および第2のシール部材67をその内部に収容し、さらにその内部に定着液35を貯留するケーシング68とを含んで構成される。
【0112】
塗布ローラ57は、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上のトナー像に接触下で定着液35を付与する部材であり、芯金58と、芯金58の表面に設けられる定着液保持層59と、定着液保持層59の表面に設けられる多孔質層60とを含む。
【0113】
定着液保持層59は、定着液供給ローラ62から供給される定着液35を、多孔質層60を介して受け取って保持し、多孔質層60の定着液35の保持量が減少するのに応じて多孔質層60に定着液35を供給する。定着液保持層59は、フェルト、連続発泡ゴムなどの吸液性および弾性を有する素材により構成される。定着液保持層59を設けることによって、多孔質層60が保持する定着液35が少なくても、塗布ローラ57全体として定着液35を充分に保持できるので、中間転写ベルト21上のトナー像に充分量の定着液35を付与できる。このため、多孔質層60を、後述するように、薄い多孔質膜で形成できる。すなわち、表層のみを高価で微細な多孔質膜とし、内部を安価なフェルト、連続発泡ゴムなどの部材で構成できる。
【0114】
多孔質層60は、その内部に多数の微細な空孔を有し、該空孔中に定着液供給ローラ62から供給される定着液35の一部を保持し、残余の定着液35を定着液保持層59に供給する。多孔質層60に保持される定着液35は、塗布ローラ57と中間転写ベルト21とのニップ部において中間転写ベルト21上のトナー像に付与される。多孔質層60の定着液35に対する接触角は好ましくは80度以下である。80度を超えると、定着液35が多孔質層60を透過し難くなり、定着液35を定着液保持層59へ供給することも、定着液35をトナー像に充分に付与することもできない。
【0115】
本実施の形態では、径14mmの芯金58表面に、定着液保持層59として厚さ3mmのフェルト層(弾性率3MPa)を積層して外径20mmのローラを得、このフェルト層の表面に多孔質層60として厚さ0.1mmのウレタン樹脂製多孔質膜を積層してなる塗布ローラ57が用いられる。また、塗布ローラ57の中間転写ベルト21への押圧力は、線圧で0.5N/cmである。また、塗布ローラ57は中間転写ベルト21の表面速度と等速で回転する。
【0116】
定着液供給ローラ62は、その一部が、ケーシング68内の下部に形成される定着液溜の定着液35中に浸漬するように設けられ、その矢符63方向への回転によりその表面に付着する定着液35を、塗布ローラ57との圧接部において塗布ローラ57表面に供給する。このように、定着液35を塗布ローラ57の外周面に供給する構成を採ることによって、塗布ローラ57の内部に定着液35を保持貯留する必要がなくなり、塗布ローラ57を小型化できる。定着液供給ローラ62には、たとえば、芯金の表面に樹脂発泡体層を積層したローラ部材が用いられる。本実施の形態では、直径10mmの芯金表面に、厚さ5mmのウレタン樹脂の連続気泡発泡体を積層したスポンジローラが用いられる。
【0117】
定着液規制ローラ64は、塗布ローラ57表層の多孔質層60における定着液35の保持量を適量に調整するローラ部材であり、たとえば、金属製ローラが用いられる。本実施の形態では、外径12mmのステンレス鋼製ローラが用いられる。定着液規制ローラ64を設けることによって、塗布ローラ57の表面に定着液35が過剰に付着し、塗布ローラ57と中間転写ベルト21とのニップ部入り口において、定着液35がメニスカスを形成し、定着液35の流動が発生し、トナー像を乱すことが防止されるので、高品位で高精細な画像が得られる。
【0118】
第1のシール部材65は、一端が定着液規制ローラ64表面に当接し、もう一端がケーシング68に支持されるように設けられる板状部材であり、定着液規制ローラ64表面の定着液35を回収する。具体的には、第1のシール部材65により定着液規制ローラ64表面から除去される定着液35は、第1のシール部材65を伝って、ケーシング68内の下部に設けられる定着液溜に落下する。それとともに、塗布ローラ57と定着液規制ローラ64と第2のシール部材67との連係によって、ケーシング68内に閉空間を形成し、定着液35の乾燥、ケーシング68外部への漏出などを防止する。
本実施の形態では、厚さ40μmのウレタンゴム製シートが用いられる。
【0119】
第2のシール部材67は、一端が塗布ローラ57表面に圧接し、もう一端がケーシング68に支持されるように設けられる板状部材であり、塗布ローラ57表面の定着液35を回収する。その作用は、第1のシール部材65と同様である。本実施の形態では、厚さ40μmのウレタンゴム製シートが用いられる。
【0120】
ケーシング68は、ケーシング33と同様に、中間転写ベルト21に対向する側面68aに開口部68bを有する。この開口部68bにおいて、塗布ローラ57の一部がケーシング68の外方に向けて突出し、中間転写ベルト21を介して加熱支持ローラ26に圧接する。また、ケーシング68内の下部には、定着液溜が形成され、定着液35が貯留される。なお、ケーシング68は、ケーシング33と同様に、その上部に、その長手方向の両端にピボット39a,39bが設けられる。ピボット39a,39bは、開閉扉34のケーシング56に対向する側面に設けられるU字形のガイド溝40a,40bに摺動可能に挿入される。さらに、ケーシング68は、開閉扉34に設けられる押圧ばね42による付勢を受け、それによって塗布ローラ57が中間転写ベルト21を介して加熱支持ローラ26に圧接される。この場合、ケーシング68は着脱自在に設けられ、定着液35がなくなった時点で交換可能である。
【0121】
定着液付与手段56によれば、塗布ローラ57は、定着液供給ローラ62からその多孔質層60に定着液35を供給され、さらに定着液規制ローラ64により多孔質層60中の定着液35の保持量を調整された後、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上のトナー像に定着液35を接触状態で付与する。
【0122】
本実施の形態では、ケーシング68はカートリッジ方式に形成されるけれども、それに限定されない。たとえば、画像形成装置55内に定着液35を収容する定着液タンクおよび定着液タンクからケーシング68に定着液35を補充する定着液補充手段を設け、ケーシング68の定着液溜における定着液35の液面高さが一定になるように、定着液35の消費量に応じて定着液タンクから定着液35を補充する構成を採ってもよい。このように、定着液35の貯蔵手段を塗布ローラ57の外部に設けることによって、定着液35を大量の貯蔵することが可能となり、定着液35の補充回数を低減することができる。
【0123】
また、本実施の形態では、定着液供給ローラ62を介して塗布ローラ57に供給するけれども、定着液供給ローラ62を設けることなく、塗布ローラ57の一部を常に定着液35中に浸漬させ、塗布ローラ57に定着液35を直接供給する構成を採ることができる。この場合には、定着液供給ローラ62を設けないので、構成の簡素化および製造コストの削減を達成することができる。
【0124】
図6は、本発明の実施の第3形態である画像形成装置70の構成を概略的に示す断面図である。図7は、図6に示す画像形成装置70の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【0125】
画像形成装置70は画像形成装置1に類似し、対応する部分は同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0126】
画像形成装置70は、画像形成装置1に比べて、中間転写手段3a、定着液付与手段71、転写定着手段72、記録媒体供給手段7aおよび排出手段73が異なることを特徴とする。さらに具体的には、画像形成装置70は、中間転写手段3aと転写定着手段72との間に、二次転写ローラ74を含む定着液付与手段71を介在させ、二次転写ローラ74表面でトナー像を加熱しながら定着液35を接触付与することを特徴とする。画像形成装置70では、中間転写ベルト21とは別の二次転写ローラ74上でトナー像に定着液35を付与するので、中間転写ベルト21に定着液35が付着しない。また、中間転写ベルト21とは別の二次転写ローラ74を加熱するので、中間転写ベルト21の温度が上昇しない。このため、感光体20などのトナー像形成手段2を構成する各部材の温度上昇、該各部材への定着液35の付着などによって、トナー像形成過程中でトナー16の変質を防止でき、長期間にわたり安定して高品位な画像が得られる。
【0127】
中間転写手段3aは、中間転写ベルト21と、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bと、支持ローラ26a,28と、ベルトクリーナ29とを含んで構成される。中間転写手段3aでは、中間転写ベルト21の回転駆動方向(矢符30の方向)において中間転写ローラ22bの下流には、その内部に加熱手段を有しない支持ローラ26aが配置される。すなわち、中間転写手段3aでは、中間転写ベルト21およびトナー像を加熱しない構成であり、したがって温度センサを設けても設けなくてもよい。また、中間転写ベルト21は画像形成装置1における3点支持に代えて、支持ローラ26a,28により2点支持される。なお、本実施の形態では、中間転写ベルト21には、厚さ100μmのポリイミド製基材表面に、PTFEおよびPFAを8:2(重量比)で混合したフッ素樹脂組成物からなる厚さ20μmの表面コート層を積層したものを用いる。
【0128】
定着液付与手段71は、図示しない駆動手段により矢符75の方向に回転駆動可能に支持されかつ中間転写ベルト21を介して支持ローラ26aに圧接するように設けられる二次転写ローラ74と、図示しない駆動手段により矢符77の方向に回転駆動可能に支持されかつ二次転写ローラ74に圧接するように設けられる塗布ローラ76と、図示しない駆動手段により矢符79の方向に回転駆動可能に支持されかつ塗布ローラ76に圧接するように設けられる定着液供給ローラ78と、図示しない駆動手段により矢符81の方向に回転駆動可能に支持されかつ塗布ローラ76に圧接するように設けられる定着液規制ローラ80と、塗布ローラ76、定着液供給ローラ78および定着液規制ローラ80を収容するケーシング82と、定着液タンク90と、定着液供給手段91と、二次転写ローラ74に圧接するように設けられるローラクリーナ87とを含む。
【0129】
二次転写ローラ74は、中間転写ベルト21から転写されるトナー像を加熱しながら、該トナー像に定着液35を付与し、記録媒体9への定着に適する程度にトナー像を膨潤・軟化させる。中間転写ベルト21上のトナー像は、たとえば、二次転写ローラ74と中間転写ベルト21との間に転写電界を印加することによって、静電的に二次転写ローラ74に転写される。二次転写ローラ74には、たとえば、芯金の表面に導電性弾性層を形成し、さらにその表面にフッ素樹脂などのトナー離型性に優れる材料からなる表面層を形成してなるローラ部材を使用できる。二次転写ローラ74の内部には、トナー像を加熱するための中間転写媒体加熱手段4が設けられる。中間転写媒体加熱手段4には、たとえば、ハロゲンランプなどの一般的なヒータが用いられる。二次転写ローラ74の加熱温度は、省エネルギーの観点から、出来る限り低いことが好ましい。二次転写ローラ74の温度が100℃以下であれば、放熱による熱エネルギーの損失を小さくできる。さらに、起動後の昇温時に必要なエネルギー量が少なく、短時間で所定の温度に達するので、ウォームアップ時間を短くできる。これにより、待機時間中の保温動作が不要になるので、装置全体としての省エネルギーを実現することが出来る。本実施の形態では、二次転写ローラ74には、トナー16の帯電電位と逆電位の+1kVの電圧を印加し、静電的にトナー16を引きつけて転写するよう構成する。本実施の形態では、炭素鋼からなる厚さ1mmの芯金表面に体積抵抗10−8〜10−9Ω・cmおよび厚さ3mmのシリコーンゴム層を設け、さらにその表面に厚さ20μmのPFA層を設けた積層構造を有し、外径30mmのローラ部材を二次転写ローラ74として用いる。
【0130】
塗布ローラ76は、二次転写ローラ74表面のトナー像に定着液35を接触付与する。塗布ローラ76が二次転写ローラ74表面に接触すると、塗布ローラ76の表面および表層に保持される定着液35が浸み出し、定着液35がトナー像に付与される。塗布ローラ76には、芯金の表面に、定着液35の含浸保持が可能かまたは定着液35に対する濡れ性を有する弾性材料からなる表面層を設けたローラ部材を好適に使用できる。該弾性材料としては、たとえば、アルミニウムなどの金属材料、親水性樹脂などの樹脂材料、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなどのゴム材料などが挙げられる。塗布ローラ76における半径方向の弾性材料の弾性率は、好ましくはトナー16の弾性率の1/10以下、さらに好ましくは1/100以下である。また、弾性材料の親液性を定着液35に対する接触角として示すと、好ましくは50度以下である。このような親液性の弾性材料は定着液35との親和性が高く、定着液35をその表面に薄層として保持できる。したがって、少量の定着液35を広い範囲に塗布でき、定着液35の消費量を低減すると共に、過剰な定着液35によるトナー像の乱れを防止できる。本実施の形態では、径12mmの芯金表面に、ヤング率2MPaのエチレンプロピレンゴムからなる弾性層を設けてなる径20mmのローラ部材が塗布ローラ76として用いられる。
【0131】
図8は、塗布ローラ76による二次転写ローラ74表面のトナー像への定着液35の付与を説明する断面図である。塗布ローラ76の表面は弾性材料で形成されるので、二次転写ローラ74表面の微細な凹凸およびトナー像の凹凸に倣って、塗布ローラ76の表面が変形し、塗布ローラ76が定着液35の薄層を介してトナー像に均一に圧接する。このとき、トナー像が存在しない部分(非画像部)は、二次転写ローラ74の平滑な表面であるから、巨視的な面積当たりの表面積が小さいので、塗布ローラ76からの定着液35の付与量が少ない。一方、トナー像が存在する部分(画像部)では、粉体であるトナー16が集合してトナー像が形成されることから、巨視的な面積当たりの表面積が非画像部よりも大きくなる。このため、非画像部よりも画像部の方が多量の定着液35を付与される。特に、カラートナー像のように単色トナー像を複数積層して面積当たりのトナー量が多い部分は、面積当たりの表面積がさらに大きくなるので、定着液35の付与量は一層多くなる。このような特性によって、画像部と非画像部とで定着液35の付与量を変化させ、画像部に定着液35を選択的に付与することが可能になる。また、画像部では、トナー量の部分的な変化に伴うトナー像の部分的な高低に関係なく、定着液35がトナー像全体に均一に付与される。したがって、カラートナー像のようにトナー量が部分的に大きく変化するトナー像、トナー量の多い部分に囲まれたトナー量の少ない部分があるトナー像などに対しても、定着液35をトナー像全体に均一に付与でき、高品位な定着画像が得られる。
【0132】
塗布ローラ76は、二次転写ローラ74に対して0.05〜1.0N/cm(線圧)の押圧力で圧接するのが好ましい。0.05N/cm未満では、塗布ローラ76と二次転写ローラ74との接触状態が不充分になり、二次転写ローラ74上のトナー像に定着液35を均一に塗布できないおそれがある。さらに、二次転写ローラ74表面の微細な凹凸およびトナー像の凹凸に倣う、塗布ローラ76の弾性変形が不充分になり、凹部のトナー像に充分量の定着液35を付与できない可能性がある。その結果、定着液35の塗布むらそれに起因する定着むら、さらには光沢むら、色むらなどが生じるおそれがある。一方1.0N/cmを超えると、塗布ローラ76と二次転写ローラ74とが圧接下に回転する状態で、塗布ローラ76表面の定着液35が、塗布ローラ76と二次転写ローラ74とのニップ部を通過できない可能性がある。通過できないと、該ニップ部で定着液35をスクイーズし、定着液35が該ニップ部入り口でメニスカスを形成し、余剰の定着液35が塗布ローラ76の回転方向上流側へ戻って定着液35が激しく流動し、トナー像の乱さが発生する。本実施の形態では、塗布ローラ76の二次転写ローラ74に対する押圧力は、線圧で0.5N/cmである。
【0133】
また、塗布ローラ76は、芯金の両端に設けられる不図示のフランジと一体化された回転軸が、ケーシング63に設けられる軸受けにより回転可能に支持される。
【0134】
塗布ローラ76は、その表面に定着液35を担持して二次転写ローラ74に圧接し、不図示の駆動手段により二次転写ローラ74の表面速度と等速で回転する。
【0135】
定着液供給ローラ78は、塗布ローラ76との圧接の際に、その表面に保持する定着液35を塗布ローラ76に供給する。定着液供給ローラ78は、その一部がケーシング82内の下部に設けられる定着液溜84に貯留される定着液35中に浸漬するように設けられ、その矢符77方向の回転駆動によってその表面に定着液35を付着させ、その定着液35を塗布ローラ76に供給する。定着液供給ローラ78には、たとえば、芯金の表面に多孔質層を設けてなるローラ部材を使用できる。本実施の形態では、直径10mmの芯金に、ウレタンの連続気泡発泡体からなる厚さ5mmの多孔質層を形成してなるスポンジローラを使用する。
【0136】
定着液規制ローラ80は、塗布ローラ76表面の定着液量を適量に調整するローラ部材である。定着液規制ローラ80によって、塗布ローラ76上に、層厚の均一な定着液35の薄層が形成される。定着液規制ローラ80には、たとえば、金属製中空ローラが用いられる。本実施の形態では、外径12mmのステンレス鋼製ローラが用いられる。
【0137】
ケーシング82は、中間転写ベルト21および二次転写ローラ75に対向する側面82aの二次転写ローラ74に近接する部分に開口部82bを有し、該開口部82bからケーシング82の外方に向けて、定着液供給ローラ78の一部が突出するように配置される。これによって、定着液供給ローラ78と二次転写ローラ74とを圧接配置できる。
【0138】
また、ケーシング82内の下部には、定着液35を貯留する定着液溜84が設けられる。定着液溜84の定着液面高さは、たとえば、定着液供給ローラ78の一部が定着液35中に浸漬しかつ塗布ローラ76が定着液35中に浸漬しない範囲で一定に保たれる。定着液35の液面高さを一定に保つためには、定着液35の消費量に応じて、定着液35を貯留保存する定着液タンク90から、定着液供給手段91を介して定着液35が供給される。
【0139】
また、定着液溜84の上部において、塗布ローラ76、定着液供給ローラ78および定着液規制ローラ80が一体化して配置され端部と反対の端部には、ピボット83がケーシング82の長手方向(紙面に垂直な方向)においてケーシング82を貫通するように設けられ、画像形成装置1の本体に回転可能に軸支される。これにより、ケーシング82はピボット83を中心にして回転可能に支持される。さらに、ケーシング82の底部82cには、ピボット83の設置位置とは対角線における逆方向に、画像形成装置1本体に支持され、ケーシング82を押圧する押圧ばね85が設けられる。ピボット83と押圧ばね85との作用により、塗布ローラ76は所定の低い押圧力で二次転写ローラ74に圧接される。押圧ばね85には、たとえば、コイルばね、板ばね、ねじりばねなどを使用できる。
【0140】
定着液タンク90は、定着液35を貯留・保存する。定着液タンク90は、たとえば、カートリッジ式に形成することができる。定着液タンク90中の定着液35がなくなった時点で、図示しないセンサがそれを検知し、その検知結果を図示しないCPUに格納する。CPUは検知結果に応じて図示しない操作パネルに制御信号を送り、操作パネル上に定着液タンク90の交換時期であることを表示する。
【0141】
定着液供給手段91は、不図示の駆動手段により、定着液タンク90内の定着液35をケーシング82の定着液溜84に供給する。ケーシング82内に設けられる図示しないセンサにより定着液溜84における定着液35液面高さを検知し、その検知結果を図示しないCPUに格納する。CPUは検知結果に応じて図示しない前記駆動手段に制御信号を送り、定着液溜84における定着液35の消費状況に応じて定着液35を定着液溜84に送給する。
【0142】
温度センサ86は、二次転写ローラ74の表面温度を検知するために、二次転写ローラ74の回転方向すなわち矢符75の方向において、二次転写ローラ74と支持ローラ26aとのニップ部の上流側の位置に、二次転写ローラ74に接するかまたは近接するように設けられる。温度センサ86による検知結果は、画像形成装置1の全動作を制御する図示しないCPUに格納され、CPUは格納される検知結果に基づいて、中間転写媒体加熱手段4に制御信号を送って二次転写ローラ74の加熱を制御し、二次転写ローラ74表面は全周にわたって均一な温度に加熱される。本実施の形態では、二次転写ローラ74の表面温度は、トナー16に含まれる結着樹脂のガラス転移点(60℃)よりも高い温度である65℃に加熱され保持される。これによって、結着樹脂が軟化して、二次転写ローラ74表面とトナー粒子16との付着力が適度に増加する。このため、塗布ローラ16による定着液35の接触付与の際に、トナー16が塗布ローラ76にオフセットするかまたはトナー像に乱れが生じることを防止できる。
【0143】
ローラクリーナ87は、二次転写ローラ74上のトナー像を後述の転写定着手段72において記録媒体9に転写した後に、二次転写ローラ74上に残存するトナー16および/または定着液35を除去する部材であり、図示しない加圧手段により二次転写ローラ74に圧接し、二次転写ローラ74上の残存トナー16などを掻き取るクリーニングブレード87aと、クリーニングブレード87aに掻き取られるトナー16、定着液35などを貯留する貯留容器87bとを含んで構成される。
【0144】
定着液付与手段71によれば、トナー像形成手段2において中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに形成されるトナー像を、転写電圧の印加により、二次転写ローラ74表面に静電的に転写する。二次転写ローラ74上のトナー像は、二次転写ローラ74に内蔵される中間転写媒体加熱手段4による均一な加熱を受け、さらに塗布ローラ76との接触により定着液35の付与を受け、記録媒体9への定着に適する程度まで膨潤・軟化する。このトナー像は、二次転写ローラ74の回転駆動により転写定着手段72に搬送される。転写定着手段72によるトナー像の記録媒体9への転写後に、二次転写ローラ74上に残存するトナー16、定着液35などはローラクリーナ87により除去され、二次転写ローラ74表面は清浄化され、再び中間転写媒体21からトナー像の転写を受ける。この工程が繰返し実行される。
【0145】
定着液付与手段71におけるように、トナー像の厚み方向における一方の面から加熱を行い、さらにもう一方の面から定着液35の付与を行うことによって、記録媒体9への転写定着に適する程度までトナー像が適度に膨潤・軟化し、加熱および定着液35の付与のいずれか一方だけを行うよりも、定着強度の高い画像を形成できる。
【0146】
転写定着手段72は、二次転写ローラ74と、図示しない駆動手段により回転駆動可能に支持され、二次転写ローラ74に圧接するように設けられる転写定着ローラ44とを含んで構成される。
【0147】
本実施の形態では、転写定着ローラ44として、芯金表面に硬度50度(JIS−A)のシリコーンゴムからなる厚さ2mmの弾性層を形成し、さらに該弾性層表面にPFAからなる厚さ20μmの表面層を形成した外径40mmのローラ部材が用いられる。また本実施の形態では、転写定着ローラ44の二次転写ローラ74に対する押圧力は、10N/cmである。
【0148】
転写定着手段72によれば、二次転写ローラ74表面で加熱されかつ定着液35の付与を受けて適度な膨潤・軟化状態にあるトナー像を、二次転写ローラ74の回転駆動により二次転写ローラ74と転写定着ローラ44との圧接部に搬送する。それに同期して記録媒体供給手段7から記録媒体9が搬送され、圧接部においてトナー像と記録媒体9とが重ね合わされ、転写定着ローラ44により加圧(押圧)され、トナー像が記録媒体9に転写定着される。
【0149】
トナー像が転写定着された記録媒体9は、排出手段73において、搬送ローラ92により搬送され、さらに排紙ローラ93により画像形成装置70外部に排出され、画像形成装置70の上面に設けられる排紙トレイ94に蓄積される。
【0150】
本実施の形態では、二次転写ローラ74の加熱温度を65℃とするけれども、加熱温度は、トナー16中に含まれる成分に応じて適宜変更できる。たとえば、トナー16が軟化点70℃のワックスを含む場合は加熱温度を75℃とし、二次転写ローラ74の表面温度が、トナー中のワックスの軟化点よりも高い温度となるよう設定してもよい。
【0151】
このように構成することによって、定着液35を塗布する直前にトナー16内のワックスが軟化し、トナー16同士およびトナー16と二次転写ローラ74との付着力がさらに増加し、定着液35塗布時のトナー像の乱れ、トナー16の塗布ローラ76への付着などをさらに防止できる。また、定着液35の塗布による二次転写ローラ74およびトナー像の温度低下を補う熱量をその場で供給できるので、塗布直後の二次転写ローラ74、トナー像および定着液35の温度低下を防止でき、定着液35を速やかに拡散および浸透させ得る。さらに、トナー粒子中のワックスが軟化することによって、定着液35がトナー粒子内部まで浸透する。その結果、トナー16の膨潤・軟化が瞬時に広範囲に生じる。これにより、トナー像を後述の転写定着手段72において記録媒体9に押圧する時に、記録媒体9への充分な定着強度が得られる。さらに、塗布後の定着液35の温度が上昇させるので、塗布後に定着液35を短時間で乾燥させ得る。これにより、画像形成装置の単位時間当たりの出力枚数であるスループットをさらに向上できる。また、トナー16が瞬時に膨潤・軟化することによって、定着液35の付与から記録媒体9への転写までの時間を短縮化できるので、定着液35の付与位置と記録媒体9への転写位置との間隔を短く設定でき、装置を小型化に寄与できる。
【0152】
図9は、本発明の実施の第4形態である画像形成装置95における要部の構成を概略的に示す断面図である。画像形成装置95は画像形成装置70に類似し、対応する部分は図示および説明を省略する。また、図9に示す部分のうち、画像形成装置70に対応する部分については同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0153】
画像形成装置95は、定着液付与手段96を有することを特徴とする。
定着液付与手段96は、二次転写ローラ74と、定着液霧化ユニット100と、温度センサ86と、ローラクリーナ87とを含んで構成される。
【0154】
定着液霧化ユニット100は、その開口部107が二次転写ローラ74の表面を臨むように設けられ、導電性材料で構成される定着液霧化ユニット本体101と、本体101の下部に設けられ、定着液35を貯留する定着液貯留部102と、定着液貯留部102に貯留される定着液35と接触または浸漬するように設けられる超音波振動子103と、定着液35を霧化するメッシュ104と、定着液35の霧化液滴を還流させる噴霧ダクト105と、噴霧ダクト105内に定着液35の霧化液滴の気流を発生させるファン106と、定着液35の霧化液滴を外方に向けて吐出する開口部107と、噴霧ダクト105を形成するための内部空間108と、本体101に電圧を印加する電源109とを含んで構成される。さらに、図示しないけれども、内部空間108の開口部107近傍にコロナチャージャーおよびファンを設け、定着液35の霧化液滴を開口部107から吐出することもできる。
【0155】
定着液霧化ユニット100によれば、定着液貯留部102に貯留される定着液35に、超音波振動子103により高周波(本実施の形態では2.4MHzの高周波)が印加され、その振動により、定着液35は3μm程度の液滴になって噴霧ダクト105中に飛散する。液滴の中には、径1mm以上の大きな液滴も存在する。これらの液滴がファン106によりメッシュ104(本実施の形態では0.5mmピッチのステンレス鋼製メッシュ)に導かれ、それを通過して、微細な霧状の液滴になる。この霧状液滴はファン106による気流に乗って噴霧ダクト105内を還流し、開口部107の近傍に到達する。ここで、本体101には電源109によって、二次転写ローラ74に対して電位差が生じ、霧状液滴が二次転写ローラ74上のトナー像の帯電極性とは逆極性である正極性に帯電するように電圧が印加される。本実施の形態では、+250Vの電位差が生じるように電圧が印加される。このように、霧状液滴はトナー像とは逆極性に帯電し、しかも開口部107と二次転写ローラ74とでは+250Vの電位差があるので、霧状液滴は、電界力により開口部107から二次転写ローラ74に向けて付勢される。二次転写ローラ74上のトナー像を含む領域に付着する。なお、非画像部への定着液35の付着量は、二次転写ローラ74と定着液霧化ユニット78との間の電位差を適宜調整することによって、制御できる。記録媒体9の厚さ、吸水度などの特性に応じて、前記電位差を適宜調整することもできる。
【0156】
一方、トナー像を形成するトナーは負極性に帯電するので、正極性に帯電する霧状液滴を引き寄せる。このため、トナー像が存在する画像部には、定着液35の付与量が非画像部よりも多くなるので、定着液35の画像部へのほぼ選択的な付与が可能になるとともに、定着液35の使用量を減らすことができる。
【0157】
なお、定着液35の霧化液滴の液滴径は、トナー16の平均粒径以下にするのが好ましい。これにより、定着液35の霧化液滴がトナー像に付着する瞬間に、トナーの流動、凝集などによってトナー像が乱れることを防止できる。さらに、液滴径が小さいと、電界力、電荷などにより液滴の進行経路を適宜変更できる。ここで、液滴径は、超音波振動子103の高周波出力、メッシュ104のピッチなどを適宜調整することによって、調整できる。定着液35の液滴が大きい場合には、液滴がトナー像に付着する瞬間に周囲のトナーを凝集させるために、均一なトナー像に微小なムラが生じる。霧化した定着液35の液滴の径がトナーの平均粒径よりも大きい場合には、凝集させるトナーが多くなり目視でもムラが確認できるほど顕著になる。これは、トナー粒子と液滴に含まれる液量の相対的な関係で規定されると考えられる。液量が大きい場合にはトナー粒子は押し流されるが、相対的にトナー粒子が大きければ、押し流されないと考えられる。すなわち、霧化手段により形成される定着液の微小液滴の径をトナーの平均粒径以下とすることにより、トナー像に定着液滴が付着するときのトナー粒子の凝集を抑制できるので、均一で高品位な定着画像が得られる。
【0158】
定着液霧化ユニット100の定着液貯留部102には、定着液35の消費状況に応じて定着液35量が一定になるように、定着液タンク90から定着液供給手段91を介して定着液35が補給される。
【0159】
本実施の形態では、定着液35を霧化するために、超音波振動子103が用いられるけれども、それに限定されず、高速の気流(たとえば空気流)により定着液35を噴霧する方式などの、周知の霧化方式を採用しても良い。
【0160】
本実施の形態では、二次転写ローラ74上の加熱状態にあるトナー像に、定着液35の霧化液滴を付与するけれども、それに限定されず、たとえば、記録媒体9上のトナー像に、定着液35の霧化液滴を付与しても良い。
【0161】
定着液付与手段96によれば、中間転写ベルト21上のトナー像を二次転写ローラ74に転写し、二次転写ローラ74上で加熱下にトナー像に定着液35を霧化液滴として付与してトナー16を軟化および/または膨潤させる。
【0162】
本発明の画像形成装置において、トナーを膨潤・軟化させる定着液35を用いるけれども、それに限定されず、公知の接着成分、粘着成分などを含む定着液を用いることもできる。接着成分の具体例としては、たとえば、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、SBRゴムなどの高分子エラストマーを主成分とするゴム系接着剤、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリル樹脂などの親水性合成樹脂を水中に分散させてなるエマルジョン接着剤などが挙げられる。この構成を採ることによって、トナーと記録媒体9との付着力が、トナーの膨潤・軟化だけではなく、接着成分または粘着成分によっても付与されるので、付着力を高め、トナー像の記録媒体8への定着強度を向上させ得る。さらに、定着液としては、従来からこの分野で使用されるものおよび知られるものをいずれも使用できる。
【0163】
本発明の画像形成装置において、中間転写ベルト、搬送ベルト、各ローラなどに用いられる材料、層構造、寸法などは、前述のものに限定されず、この電子写真方式の画像形成分野で常用されるものをそのまままたは適宜変更して用いることができる。
【0164】
また、ローラに代えて、ベルトなどの無端状部材を用いることもできる。さらに中間転写ベルト、搬送ベルトなどは無端状部材とされるけれども、ローラ形態にすることもできる。
【0165】
本発明の画像形成装置は、各実施の形態において、タンデム方式のカラー画像形成装置として示すけれども、それに限定されず、たとえば、中間転写ベルトが1回回転する毎に1色の画像を重ね合わせる、いわゆる4回転方式のカラー画像形成装置とすることもできる。また、カラー画像形成装置に限定されず、単色画像形成装置とすることもできる。
【0166】
このような本発明の画像形成装置は、たとえば、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの2種以上の複合機として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明の実施の第1形態である画像形成装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示す画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図4】塗布部材による中間転写媒体上のトナー像への定着液の付与を説明する図面である。
【図5】本発明の実施の第2形態である画像形成装置における要部の構成を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の第3形態である画像形成装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図7】図6に示す画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図8】塗布部材による中間転写媒体上のトナー像への定着液の付与を説明する断面図である。
【図9】本発明の実施の第4形態である画像形成装置における要部の構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0168】
1,55,70,95 画像形成装置
2 トナー像形成手段
3,3a 中間転写手段
4 中間転写媒体加熱手段
5,56,71,96 定着液付与手段
6,72 転写定着手段
7,7a 記録媒体供給手段
8,73 排出手段
9 記録媒体
10y,10m,10c,10b 作像ユニット
11y,11m,11c,11b 感光体ドラム
12y,12m,12c,12b 帯電ローラ
13 光走査ユニット
14y,14m,14c,14b 現像装置
15y,15m,15c,15b ドラムクリーナ
16 トナー
17y,17m,17c,17b 現像ローラ
18y,18m,18c,18b 現像ブレード
19y,19m,19c,19b トナー貯留容器
20a,20b 攪拌ローラ
21 中間転写ベルト
22y,22m,22c,22b 中間転写ローラ
26,27,28 支持ローラ
29 ベルトクリーナ
31,86 温度センサ
32,57,76 塗布ローラ
35 定着液
44 転写定着ローラ
45 搬送ベルト
46 駆動ローラ
47 テンションローラ
48,93 排紙ローラ
49,94 排紙トレイ
50 記録媒体カセット
51 ピックアップローラ
52a,52b レジストローラ
62,78 定着液供給ローラ
64,80 定着液規制ローラ
74 二次転写ローラ
87 ローラクリーナ
91 定着液供給手段
92 搬送ローラ
100 定着液霧化ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含み帯電可能なトナーからなるトナー像を形成するトナー像形成手段と、表面が平滑で、その表面にトナー像を担持して回転駆動する中間転写媒体を含む中間転写手段と、トナー像を軟化させる作用を有する定着液を中間転写媒体上のトナー像に接触下に塗布する定着液付与手段と、定着液を付与されて軟化したトナー像を記録媒体に転写する転写手段とを含む画像形成装置において、
定着液付与手段は、
少なくとも表面に弾性変形可能であって、定着液を保持する多孔質層を有しかつその軸線回りに回転駆動可能に設けられる塗布部材を含み、
塗布部材を中間転写媒体のトナー像担持面に圧接した状態で回転させながら、塗布部材の多孔質層に保持される定着液をトナー像担持面に接触塗布することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
塗布部材は、
多孔質層と、
多孔質層の内層として設けられ、多孔質層よりも層厚が大きくかつ定着液の浸透および保持が可能な定着液保持層とを含むことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
塗布部材は、
定着液を保持貯蔵する定着液貯蔵層と、
定着液貯蔵層の表面に弾性変形可能に設けられ、定着液の浸透および保持が可能な材料からなる浸透制御層と、
浸透制御層の表面に弾性変形可能に設けられ、定着液を保持する多孔質層とを含み、ローラ形状に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
多孔質層は、空孔径0.1μm〜2μm、空孔率60%〜90%および層厚10μm〜200μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
多孔質層の定着液に対する接触角は、中間転写媒体の表面の定着液に対する接触角より小さく、かつトナー表面の定着液に対する接触角よりも大きいことを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
定着液付与手段は、さらに、塗布部材を中間転写媒体に圧接する圧接手段を含み、
圧接手段は、塗布部材の多孔質層に保持される定着液が、塗布部材と中間転写媒体のトナー像担持面との圧接部を通過可能な押圧力で塗布部材を中間転写媒体に圧接することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項7】
圧接部材が塗布部材を中間転写媒体に圧接する押圧力は、線圧で0.05N/cm〜1.0N/cmであることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項8】
定着液付与手段は、
塗布部材とともに、
さらに定着液を収容する定着液収容手段と、
定着液収容手段に収容される定着液を塗布部材の外周面に供給する定着液供給手段と、
塗布部材の外周面に当接するように設けられ、塗布部材の多孔質層に保持される定着液量を調整する定着液規制手段とを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項9】
トナーに含まれる結着樹脂の弾性率は、塗布部材表面の弾性率より大きいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項10】
結着樹脂を含み帯電可能なトナーからなるトナー像を形成するトナー像形成手段と、表面が平滑でその表面にトナー像を担持し、一定の電位に保持されて回転駆動する中間転写媒体を含む中間転写手段と、トナー像を軟化させる作用を有する定着液を中間転写媒体上のトナー像に非接触下に塗布する定着液付与手段と、定着液を付与されて軟化したトナー像を記録媒体に転写する転写手段とを含む画像形成装置において、
定着液付与手段は、
定着液を霧状の液滴にする定着液霧化手段と、
定着液霧化手段より形成される定着液の液滴をトナーの帯電極性と逆の極性に帯電させる定着液帯電手段と、
帯電状態にある定着液の液滴を中間転写媒体上のトナー像およびその近傍に供給する液滴供給手段とを含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
定着液霧化手段は、
トナーの平均粒径と同じまたはそれよりも小さい径を有する定着液の液滴を形成することを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
【請求項12】
定着液付与手段よりも中間転写媒体の回転駆動方向の上流側に設けられる中間転写媒体加熱手段を含み、
中間転写媒体加熱手段は、
中間転写媒体上のトナー像を、トナーに含まれる結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項13】
定着液付与手段よりも中間転写媒体の回転駆動方向の上流側に設けられる中間転写媒体加熱手段を含み、
中間転写媒体加熱手段は、
結着樹脂とともに結着樹脂よりも軟化点の低いワックスを含むトナーからなり、中間転写媒体上に担持されるトナー像を、ワックスの軟化点以上の温度に加熱することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項14】
トナー画像形成手段によって結着樹脂を含み帯電可能な複数色のトナーからなるトナー像をそれぞれ形成し、中間転写媒体上で複数色のトナー像を重ね合わせる減法混色によりカラー画像を形成することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−293169(P2006−293169A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116067(P2005−116067)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】