説明

画像形成装置

【課題】
中間転写ベルトの微少な凹凸に入り込んでしまっていたトナー粒子、紙粉等をこのクリーニング可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】
中間転写ベルト70のベルトクリーニングブレード86の上流側には、中間転写ベルト70にキャリア液塗布機構90及び振動印加部材10が設けられており、二次転写ユニット80で二次転写が行われた後の中間転写ベルト70上に、キャリア液塗布機構90によりキャリア液が塗布された上で、振動印加部材10で超音波振動が印加されることにより、中間転写ベルトの微少な凹凸に入り込んだトナー粒子等がキャリア液に拡散する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンオイル、鉱物油又は食用油等からなるキャリア液にトナーを分散させた液体トナーにより感光体上に形成された静電潜像を現像する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンオイル、鉱物油又は食用油等からなるキャリア液にトナーを分散させた高粘度の液体トナーを用いた液体現像方式の電子写真装置が知られている。乾式のトナー粒子の粒径が5〜10μmであるのに対して、このような液体現像方式の電子写真で用いるトナー粒子の粒径は、0.1〜3μmと小さく、弾性を有する中間転写体を用いるような場合は、その凹部に入り込んでしまうことがある。液体現像方式の電子写真装置では、このように凹部に入り込んでしまったトナー粒子をクリーニングすることが一つの技術的な課題として挙げられる。図12に、弾性を有する中間転写体表面101の微少な凹部に、キャリア液103と共に、粒径の小さなトナー粒子102や紙粉などの汚れが入り込んでしまった様子が示されている。
【0003】
このような技術的課題を解決するための手段として特許文献1(特開2001−109346号公報)には、キャリア液にトナーが分散されてなる液体現像剤により現像された顕像を担持する像担持体と、該像担持体上の顕像が被転写体に転写された後の像担持体表面から残留液体現像剤を除去して該表面をクリーニングするクリーニング部材とを備えた湿式画像形成装置において、上記クリーニング部材を、上記像担持体表面の上記残留液体現像剤中のトナーに対して、該表面と該トナーとの付着力より大きい付着力を有する部材で構成し、該クリーニング部材を、該トナーが付着した該表面と接触するように配置したことを特徴とする湿式画像形成装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−109346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されているような湿式画像形成装置においては、クリーニング部材とトナーとの付着力をより大きくするために、クリーニング部材に粘着剤を塗布しているが、このような粘着剤が像担持体表面側に移動してしまい、この粘着剤が像担持体表面上でトナー粒子を吸着してしまい、画質劣化の原因となることがある。
【0005】
そこで、粘着剤を用いないクリーニング部材として、ゴム製(例えばウレタンゴム)のブレード等を用いることも考えられるが、特許文献1の公知例にもあるように像担持体表面の凹部に入り込んでしまったトナーは、ゴム製ブレードを単に像担持体表面に押し当てただけでは、回収が非常に困難である。そして、回収されずに像担持体表面に残留したトナー粒子は、像担持体に徐々に蓄積していき、部分的な転写不良を引き越し、画質悪化の原因となる。特に用紙への転写性を良好とするために、像担持体として、低硬度の弾性層を設けた転写ベルトを用いる場合では、その表面をトナーの粒径に対して十分に平滑に保つことが難しいため、この課題が顕著である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためのもので、請求項1に係る発明は、キャリア液にトナーを分散した液体トナーにより感光体上に形成された静電潜像を現像する現像手段と、該感光体上に現像された像を中間転写媒体に転写する一次転写手段と、該中間転写媒体に転写された像を記録媒体に転写する二次転写手段と、該記録媒体に転写された像を加熱加圧し該記録媒体上に定着する定着手段と、該中間転写媒体をクリーニングする中間転写媒体クリーニング手段と、を有する画像形成装置において、該中間転写媒体にキャリア液を塗布するキャリア液塗布機構と、該中間転写媒体に振動を印加する振動印加部材とを設けたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、該感光体を該キャリア液塗布機構として利用することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の画像形成装置において、該感光体を該キャリア液塗布機構として利用するのは、印刷開始前の予備ランニング中であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に係る発明によれば、中間転写媒体にキャリア液を塗布した上で中間転写媒体に振動を印加するので、中間転写媒体の微少な凹凸に入り込んでしまっていたトナー粒子や紙粉などの汚れを、キャリア液へと拡散することができ、中間転写媒体クリーニング手段で除去することができる。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る発明によれば、わざわざキャリア液塗布機構を設けることなく、中間転写媒体にキャリア液を塗布することができる。
【0011】
また、本発明の請求項3に係る発明によれば、印刷開始前の予備ランニング中にクリーニング動作が行えるので、クリーニング動作に続いて印刷を開始することで無駄にベルトを回す必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置を構成する主要構成要素を示した図である。現像ユニット50Y、50M、50C、50Kは、画像形成装置の下部に配置されており、中間転写ベルト70、二次転写ユニット80は、画像形成装置の上部に配置されている。
【0013】
中間転写ベルト70は、ベルト駆動ローラ82、85に張架されたエンドレスのベルトであり、感光体20Y、20M、20C、20Kと当接しながら回転駆動される。中間転写ベルト70、一次転写バックアップローラ61Y、61M、61C、61K及び感光体20Y、20M、20C、20Kとで構成された一次転写ユニット60Y、60M、60C、60Kにより、中間転写ベルト70上に4色の液体トナーが順次重ねて転写され、フルカラー液体トナー像が形成される。
【0014】
二次転写ユニット80は、二次転写ローラ81、ベルト駆動ローラ82、二次転写ローラブレード83、二次転写ローラクリーニング液回収部84から成っており、中間転写ベルト70上に形成された単色液体トナー像やフルカラー液体トナー像を用紙、フィルム、布等の媒体に転写するための装置である。
【0015】
不図示の定着ユニットは、用紙等の媒体上に転写された単色液体トナー像やフルカラー液体トナー像を用紙等の媒体に融着させて永久像とするための装置である。
【0016】
本発明においては、中間転写ベルト70のベルト駆動ローラ85上流側に、振動印加部材10及びキャリア液塗布機構90が設けられている。また、二次転写後の中間転写ベルト70上に残留したキャリア液、トナー粒子をクリーニングするために、ベルトクリーニングブレード86がベルト駆動ローラ85に巻きかけられた中間転写ベルト70上に当接している。ベルトクリーニング液回収部87は、ベルトクリーニングブレード86が掻き落としたキャリア液、トナー粒子を回収するための機構である。
【0017】
現像ユニット50Y、50M、50C、50Kは、それぞれ、イエロー(Y)液体トナー、マゼンタ(M)液体トナー、シアン(C)液体トナー、ブラック(K)液体トナーで潜像を現像する機能を有している。イエロー(Y)液体トナー、マゼンタ(M)液体トナー、シアン(C)液体トナー、ブラック(K)の各液体トナーは、キャリア液に各色のトナーを分散させたものが用いられる。
【0018】
現像ユニット50Y、50M、50C、50Kは、概略、各液体トナーを貯蔵する現像トナー容器53Y、53M、53C、53K、これら現像トナー容器から各色液体トナーを現像ローラ54Y、54M、54C、54Kに供給するトナー供給ローラ51Y、51M、51C、51K、感光体20Y、20M、20C、20Kを帯電する帯電器30Y、30M、30C、30K、帯電された感光体に静電潜像を形成する不図示の露光ユニット(露光ユニットの光路は、40Y、40M、40C、40K)から成る。
【0019】
現像ユニット50Y、50M、50C、50Kの構成は同様であるので、以下、現像ユニット50Kについて説明する。
【0020】
図1に示すように、感光体20Kの回転方向に沿って、主に帯電ユニット30K、露光ユニット、一次転写ユニット60Kが配されている。感光体20Kは、円筒状の基材とその外周面に形成された感光層を有し、中心軸を中心に回転可能であり、本実施の形態においては、時計回りに回転する。
【0021】
帯電ユニット30Kは、感光体20Kを帯電するための装置である。不図示の露光ユニットからは、光路40Kでレーザを照射することによって帯電された感光体20K上に潜像を形成する。露光ユニットは、半導体レーザ、ポリゴンミラー、F−θレンズ等を有しており、入力された画像信号に基づいて、変調されたレーザを帯電された感光体20K上に照射する。
【0022】
現像ユニット50Kは、感光体20K上に形成された潜像を、ブラック(K)液体トナーを用いて現像するための装置である。現像ユニット50Kの詳細については後述する。
【0023】
一次転写ユニット60Kは、感光体20Kに形成されたブラック液体トナー像を中間転写ベルト70に転写するための装置である。
【0024】
図2は、現像ユニット50Kの主要構成要素を示した断面図である。図2において、現像トナー容器53Kは、感光体20Kに形成された潜像を現像するための、トナー及びキャリア液からなる液体トナーを収容する。現像トナー容器53Kに収容されている液体トナーは、従来一般的に使用されている、Isopar(商標:エクソン)をキャリアとした低濃度(1〜2wt%程度)かつ低粘度の、常温で揮発性を有する揮発性液体トナーではなく、高濃度かつ高粘度の、常温で不揮発性を有する不揮発性液体トナーである。すなわち、本実施の形態に係る液体トナーは、熱可塑性樹脂中へ顔料等の着色剤を分散させた平均粒径1.3μmの固形子を、有機溶媒、シリコンオイル、鉱物油又は食用油等の液体溶媒中へ分散剤とともに添加し、トナー固形分濃度を約25%とした高粘度(30〜10000mPa・s程度)の液体トナーである。
【0025】
現像トナー容器53Kからは、トナー供給ローラ51Kにより、現像ローラ54Kへと液体トナーが供給される。トナー供給ローラ51Kは、円筒状の部材であり、図2の示すように時計回りに回転し、表面に微細且つ一様に螺旋状の溝を形成したアニロックローラである。溝の寸法は、溝ピッチが約130μm、溝深さが約30μmである。
【0026】
トナー規制ブレード52Kは、トナー供給ローラ51Kの表面に当接するウレタンゴム等からなるゴム部と、該ゴム部を支持する金属等の板で構成され、トナー供給ローラ51Kに残存する液体トナーを掻き落として除去する。
【0027】
現像ローラ54Kは、幅約320mmの円筒状の部材であり、中心軸を中心に図2に示すように反時計回りに回転する。該現像ローラ54Kは鉄等金属製の内芯の外周部に、導電性ウレタンゴム等の弾性体と樹脂層やゴム層を備えたものである。現像ローラ54Kには、現像ローラブレード58K、及び現像ローラクリーニング液回収部59Kが設けられている。この現像ローラブレード58Kは現像ローラ54Kの表面に当接するゴム等で構成され、現像ローラ54Kに残存する液体トナーを掻き落として除去するためのものである。現像ローラクリーニング液回収部59Kは現像ローラブレード58Kが掻き落とした液体トナーを貯留するタンク等の容器である。
【0028】
均しローラ55Kは、円筒状の部材であり、中心軸を中心に回転し、金属ローラの表層に導電性の樹脂層やゴム層を備えた構造をしており、その回転方向は、図2に示すように、現像ローラ54Kと反対方向の時計回りである。均しローラは、現像ローラ54K表面の帯電バイアスを増加させる手段を有する。均しローラブレード56Kは均しローラ55Kの表面に当接するゴム等で構成され、均しローラ55Kに残存する液体トナーを掻き落として除去するためのものである。均しローラクリーニング液回収部57Kは均しローラブレード56Kが掻き落とした液体トナーを貯留するタンク等の容器である。
【0029】
感光体20Kは、現像ローラ54Kの幅約320mmより広く、外周面に感光層が形成された円筒状の部材であり、中心軸を中心に図2に示すように時計回りで回転する。該感光体20Kの感光層は、有機感光体又はアモルファスシリコン感光体等で構成される。
【0030】
感光体20Kの周囲には、感光体ブレード21K、感光体クリーニング液回収部22Kが配されている。感光体ブレード21Kは、感光体20Kの表面に当接され、ゴム製で、感光体20Kに残存する液体トナーを掻き落として除去する。感光体クリーニング液回収部22Kは、感光体ブレード21Kが掻き落とした液体トナーを貯留するタンク等の容器である。
【0031】
帯電器30Kは、感光体20Kと現像ローラ54Kとのニップ部上流に設けられている。帯電器30Kは、図示しない電源装置から液体トナー帯電極性と同極性のバイアスを印可され、感光体20Kを帯電させる、このように帯電された感光体20K上には、不図示の露光ユニットから、レーザ光が照射されることによって、潜像が形成される。形成された潜像は、現像ローラ54Kにより現像され、一次転写ユニット60Kにおいて、中間転写ベルト70へと転写される。
【0032】
次に本発明の画像形成装置の動作について説明する。引き続き、現像ユニットに関しては、4つの現像ユニットのうち現像ユニット50Kを例にとり説明する。
【0033】
現像トナー容器53K中の液体トナーは、トナー固形分濃度25%で、トナー粒子は平均粒径1.3μmでプラスの電荷を有する。この液体トナーは、トナー供給ローラ51Kが回転することによって、現像トナー容器53Kから汲み上げられる。トナー規制ブレード52Kは、トナー供給ローラ51Kの表面に当接し、トナー供給ローラ51Kの表面に形成された溝内の現像液を残しその他の余分な現像液を掻き取って、現像ローラ54Kに供給する液体トナー量を規制する。このような規制によって、現像ローラ54Kへ塗布される液体トナーの膜厚が約6μmとなるように定量化される。トナー規制ブレード52Kに掻き取られた液体トナーは重力によって現像トナー容器53Kに落下し戻される。トナー規制ブレード52Kに掻き取られなかった液体トナーは、トナー供給ローラ51Kの表面の凹凸の溝内に収容されており、現像ローラ54Kに圧接することで、現像ローラ54Kの表面に塗布される。
【0034】
トナー供給ローラ51Kによって液体トナーを塗布された現像ローラ54Kは、トナー供給ローラ51Kとのニップ部下流で均しローラ55Kに当接する。現像ローラ54Kには約+400Vのバイアスが印可されており、均しローラ55Kには、現像ローラ8より高く、液体トナーの帯電極性と同極性のバイアスが印可される。本実施形態では、均しローラ55Kには、約+600Vのバイアスが印可されている。このため現像ローラ54K上の液体トナー中のトナー粒子は均しローラ55Kとのニップを通過する際に、現像ローラ54K側へ移動する。これによりトナー粒子同士が緩やかに結合され膜化された状態となり、感光体での現像の際、トナー粒子は、現像ローラ54Kから感光体20Kへの移動がすばやくなり、画像濃度が向上する。
【0035】
感光体20Kはアモルファスシリコン製であり、現像ローラ54Kとのニップ部上流でコロナ帯電器30Kのワイヤに約+5.5kVを印可することにより表面を約+600Vに帯電させられた後、露光ユニットにより画像部の電位が+25Vとなるように潜像が形成される。現像ローラ54Kと感光体20Kとの間に形成される現像ニップ部では、現像ローラ54Kに印加されているバイアス+400Vと感光体20K上の潜像(画像部+25V、非画像部+600V)で形成される電界に従い、選択的にトナー粒子が感光体20K上の画像部へと移動する。これにより、感光体20K上に画像が形成される。キャリア液は電界の影響を受けないため、現像ローラ54Kと感光体20Kとの現像ニップ部出口で分離して、現像ローラ54Kと感光体20Kとの両方に付着する。
【0036】
現像ニップ部を通過した感光体20Kは、中間転写ベルト70とのニップ部を通過し、一次転写が行われる。一次転写バックアップローラ61Kには、トナー粒子の帯電特性と逆極性の約−200Vが印可されており、感光体20K上のトナーは中間転写ベルト70に一次転写され、感光体20Kにはキャリア液のみが残る。感光体20K上に残ったキャリア液は、一次転写部下流の感光体ブレード21Kにより掻き取られ、感光体クリーニング液回収部22Kで回収される。
【0037】
一次転写が行われた後の中間転写ベルト70は次に二次転写ユニット80へと進み、中間転写ベルト70と二次転写ローラ81のニップ部に進入する。二次転写ユニット80において、二次転写ローラ81には−1000Vが、また、ベルト駆動ローラ82は0Vに保たれるようにアースに接続されており、これにより中間転写ベルト70上のトナー粒子の層は用紙等の媒体に転写される。
【0038】
用紙等の媒体に転写されたトナー画像は、次に不図示の定着ユニットにおいて、媒体上に転写された単色液体トナー像やフルカラー液体トナー像を融着にさせて永久像とする。
【0039】
次に、二次転写ユニット80における中間転写ベルト70と二次転写ローラ81のニップ部を通過した中間転写ベルト70は、ベルト駆動ローラ85上流側に設けられたキャリア液塗布機構90の方へと向かう。
【0040】
図3に、本発明のキャリア液塗布機構90の詳細構成を示す。キャリア液塗布機構90は、中間転写ベルト70に当接してキャリア液を塗布するキャリア液塗布ローラ91及びキャリア液塗布バックアップローラ92、及びキャリア液を溜めておくキャリア液貯蔵部96、キャリア液貯蔵部96からキャリア液塗布ローラ91にキャリア液を供給するキャリア液供給ローラ93、94からなる。
【0041】
通常状態では、キャリア液塗布ローラ91は、中間転写ベルト70から離間させているが、中間転写ベルト70のクリーニングを行う際に中間転写ベルト70に当接させてキャリア液を塗布する。中間転写ベルト70へのキャリア液の塗布量は、キャリア液の厚さで2μm〜20μm程度とする。これは、2μm以下のキャリア液量では、キャリア液の量が少なすぎて、ベルトに付着した汚れが拡散しにくく、また、20μm以上のキャリア液量では、キャリア液中への汚れの拡散効果は上がらず、キャリア液の無駄遣いとなってしまうことに依る。本実施の形態では、中間転写ベルト70へのキャリア液の塗布量は、キャリア液の厚さで5μmとした。
【0042】
キャリア液塗布ローラ91によりキャリア液を塗布された中間転写ベルト70背面から、振動印加部材10により超音波振動が印加される。このような振動印加部材10の一例として圧電セラミック素子11を用いる場合につき説明する。
【0043】
図4に振動印加部材10の一例として圧電セラミック素子11を用いたときの構成を示す。図4において、図の横方向が中間転写ベルト70の幅方向である。また、図4は、中間転写ベルト70側から振動印加部材10を見た様子を示している。このように、振動印加部材10は円柱状の圧電セラミック素子11をベルト幅方向に微小な間隔を空けて密に並べたものからなる。
【0044】
図5には、圧電セラミック素子11の取り付け構造を示す。振動印加部材10は、このような圧電セラミック素子11を、厚み1mmのステンレス板12に貼り付け、中間転写ベルト70に接触するように配置されている。ステンレス板12の両端部は図示されているようにL字状に曲げられており、L字先端部がベースプレート13に固定されている。
【0045】
圧電セラミック素子11は、図6に示されるように、直径d=10mm・厚みL=1mmの円盤状の単位圧電セラミックス素子を20枚積層したものからなる。
【0046】
このような圧電セラミック素子11を振動させる際の振動周波数は5kHz〜1MHzが好ましい。これは、振動数が低すぎると、中間転写ベルト70自体がびびってしまうため、圧電セラミック素子11が中間転写ベルト70に均一に当接しなくなってしまい、逆に振動数が高すぎると振動がこまか過ぎることとなり中間転写ベルト70上の凹部に入り込んでしまったトナー粒子が移動せずに、キャリア液への拡散が起こらなくなってしまうことに依る。また、圧電セラミック素子11の振動の振幅は、1μm〜20μmが好ましい。1μmの以下の振幅では、中間転写ベルト70上の凹部に入り込んでしまったトナー粒子がキャリア液へと拡散する効果が得られず、また20μm以上の振幅では、中間転写ベルト70自体の振動が大きくなり、圧電セラミック素子11と中間転写ベルト70との接触が不安定となるためである。本実施の形態では、圧電セラミック素子11の振動周波数が25kHzとなるように波形をコントロールして電圧を印加する。また、振動の振幅は8μmとなるようにした。中間転写ベルト70上のキャリア液が塗布された箇所が振動印加部材10に到達する前から、振動印加部材10でこの超音波振動を印加し始める。
【0047】
ここで、中間転写ベルト70は、80μmのポリイミド基材の上にウレタンゴム弾性層200μmで総厚みが280μmのものが用いられている。また、中間転写ベルト70は、表面粗さ2.9μm、体積抵抗8.2×109Ω・cm、比誘電率4.0である。
【0048】
発明が解決しようとする課題の欄にも記載したとおり、弾性を有する中間転写ベルト70を用いる場合は、トナー粒子が中間転写ベルト70の微少な凹部に入り込んでしまうことがある。このことを解決するために、本実施の形態においては、まず前述のキャリア液塗布機構90のキャリア液塗布ローラ91により、キャリア液を中間転写ベルト70上に塗布する。
【0049】
図7には、中間転写ベルト70の表面101にキャリア液が塗布されたときの様子を示す。図に示されるように、中間転写ベルト70の凹凸のうねりを超える程度、キャリア液103がキャリア液塗布ローラ91から供給される。
【0050】
このようにキャリア液が塗布された中間転写ベルト70は次に、振動印加部材10により前述の通りの振動が印加される。図8には、振動印加部材10で振動が印加されたときの中間転写ベルト70の表面101の様子を示す。前述のように振動印加部材10の圧電セラミック素子11が、振幅8μm、振動周波数25kHzで中間転写ベルト70を振動させるので、中間転写ベルト70の凹部に入り込んでしまっていたトナー粒子102は、キャリア液103中に拡散される。なお、このとき、トナー粒子102の他に、中間転写ベルト70の微少な凹凸に入り込んでしまっていた紙粉などのよごれもキャリア液103中に拡散される。
【0051】
このように振動印加部材10で、キャリア液103中に散乱されたトナー粒子102はキャリア液103と共に、ベルト駆動ローラ85部で中間転写ベルト70上に当接しているベルトクリーニングブレード86に掻き取られ、クリーニングされる。
【0052】
以上の通り、本発明によれば、二次転写ユニット80を通過した後の中間転写ベルト70上に、キャリア液塗布機構90でキャリア液が塗布され、中間転写ベルト70の微少な凹凸のうねりを溢れる程度にまでキャリア液103が供給された上で、振動印加部材10で超音波振動が印加される。この振動により、中間転写ベルト70の微少な凹凸に入り込んでしまっていたトナー粒子や紙粉などの汚れは、キャリア液103へと拡散される。この状態で、中間転写ベルト70はベルトクリーニングブレード86部に進入するので、中間転写ベルト70の微少な凹凸に入り込んでしまっていたトナー粒子、紙粉等をこのベルトクリーニングブレード86で除去することができる。
【0053】
なお、中間転写ベルト70に対して、キャリア液塗布機構90によりキャリア液を塗布するタイミング、及び、振動印加部材10により超音波振動を印加するタイミングは、任意に選定することができる。先の例では、キャリア液塗布機構90はクリーニング時のみ中間転写ベルト70に当接するように構成したが、キャリア液塗布機構90を常時中間転写ベルト70に当接させるようにして、中間転写ベルト70にキャリア液を常に供給させ続けるようにしておき、中間転写ベルト70が回転しているときには常に振動印加部材10を動作させる、常時クリーニングを行う方式とすることもできる。
【0054】
また、画像形成装置の印刷動作開始時や印刷動作終了時に中間転写ベルト70をクリーニングする特別なシーケンスを設ける、クリーニングシーケンスを採用して本発明のクリーニング方式を適用することもできる。
【0055】
キャリア液塗布機構90によるキャリア液を塗布する塗布時間も任意に設定することができるが、中間転写ベルト70一周分一度の本発明によるクリーニング動作で行うことが好ましい。これは、中間転写ベルト70上に未クリーニング部分ができてしまうことにより、クリーニング部分との差が紙上の画像に現れることを防止するためである。
【0056】
次に本発明の第2の実施の形態を図9を参照しつつ説明する。図9は、この実施の形態に係るキャリア液塗布機構90及び振動印加部材10の構成を示す図である。この実施の形態において、先の実施の形態から変更されている点は、キャリア液塗布機構90において、キャリア液塗布バックアップローラ92が設けられていない点と、振動印加部材10において振動部材保持部材14が採用されている点である。その他の構成は、先の実施の形態と変わるところはない。
【0057】
振動印加部材10、両端部がL字状に曲げられたステンレス板12を図9に示すような振動部材保持部材14に固定してある。ステンレス板12上に設けられている圧電セラミック素子11の寸法や配置は先の実施の形態と同様である。この振動部材保持部材14が、キャリア液塗布ローラ91のバックアップローラ的な役割を果たすことにより、キャリア液塗布ローラ91によりキャリア液を中間転写ベルト70に塗布しながら、振動印加部材10で超音波振動を印加できるような構成となっている。なお、通常は、キャリア液塗布ローラ91は離間させておき、クリーニング動作を行うときにのみ、キャリア液塗布ローラ91を中間転写ベルト70に当接させてキャリア液を塗布する。
【0058】
本実施の形態においても、中間転写ベルト70へのキャリア液の塗布量は、キャリア液の厚さで5μmとし、圧電セラミック素子11の超音波振動の振動周波数は25kHz、振動の振幅は8μmとなるようにした。
【0059】
この実施の形態によっても、二次転写ユニット80を通過した後の中間転写ベルト70上に、キャリア液塗布機構90でキャリア液が塗布され、中間転写ベルト70の微少な凹凸のうねりを溢れる程度にまでキャリア液103が供給された上で、振動印加部材10で超音波振動が印加される。この振動により、中間転写ベルト70の微少な凹凸に入り込んでしまっていたトナー粒子や紙粉などの汚れは、キャリア液103へと拡散される。この状態で、中間転写ベルト70はベルトクリーニングブレード86部に進入するので、中間転写ベルト70の微少な凹凸に入り込んでしまっていたトナー粒子、紙粉等をこのベルトクリーニングブレード86で除去することができる。
【0060】
なお、この実施の形態においても、中間転写ベルト70に対して、キャリア液塗布機構90によるキャリア液を塗布するタイミング、及び、振動印加部材10による超音波振動を印加するタイミングは、任意に選定することができる。また、キャリア液塗布機構90はクリーニング時のみ中間転写ベルト70に当接するように構成したが、キャリア液塗布機構90を常時中間転写ベルト70に当接させるようにして、中間転写ベルト70にキャリア液を常に供給させ続けるようにしておき、中間転写ベルト70が回転しているときには常に振動印加部材10を動作させる、常時クリーニングを行う方式とすることもできる。
【0061】
また、画像形成装置の印刷動作開始時や印刷動作終了時に中間転写ベルト70をクリーニングする特別なシーケンスを設ける、クリーニングシーケンスを採用して本実施の形態のクリーニング方式を適用することもできる。
【0062】
キャリア液塗布機構90によるキャリア液を塗布する塗布時間も任意に設定することができるが、中間転写ベルト70、1周分一度の本発明によるクリーニング動作で行うことが好ましい。これは、中間転写ベルト70上に未クリーニング部分ができてしまうことにより、クリーニング部分との差が紙上の画像に現れることを防止するためである。
【0063】
次に本発明の第3の実施の形態を図10を参照しつつ説明する。図10は、本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置を構成する主要構成要素を示す図である。この実施の形態では、振動印加部材10としては、第1の実施の形態で説明したもの、又は第2の実施の形態で説明したもののいずれかと同じものを用いることができる。また、この実施の形態では、感光体20からキャリア液を中間転写ベルト70上に塗布する構成とすることにより、キャリア液塗布機構90を設けることを省略する。このとき、キャリア液を供給するための感光体20は、20Y、20M、20C、20Kのどの感光体を用いても構わないので、特に限定するような表記を避ける。このように第3の実施の形態では、感光体をキャリア液塗布機構として利用するので、キャリア液を塗布するための機構を別に設ける必要がない。
【0064】
また、この実施の形態においては、キャリア液が塗布された中間転写ベルト70上の箇所を、二次転写ユニット80を超えさせて、振動印加部材10に到達させねばならないので、二次転写ユニット80において、二次転写ローラ81を中間転写ベルト70上から、クリーニング動作時に離間させる構成が採用されている。
【0065】
すなわち、本発明の第3の実施の形態では、クリーニングの際の動作の概略は、まず、感光体20から白べた印刷を行うことによりキャリア液を中間転写ベルト70上に塗布する。次に、キャリア液が塗布された中間転写ベルト70は、ベルト駆動ローラ82の巻きかけ部を通過し、振動印加部材10に達し、これにより超音波振動が印加され、これまでみてきた実施の形態の場合と同様、中間転写ベルト70の凹部に入り込んでしまっていたトナー粒子102を、キャリア液103中に拡散させる。そして、このように振動印加部材10で、キャリア液103中に散乱されたトナー粒子102はキャリア液103と共に、ベルト駆動ローラ85部で中間転写ベルト70上に当接しているベルトクリーニングブレード86に掻き取られ、クリーニングされる。このように、本発明の第3の実施の形態では、キャリア液塗布機構90を特に設けることなく、本発明のクリーニング動作を行うことができるという効果を有する。
【0066】
以上のようなクリーニング動作を行うために、各部がどのように動作するかを示すクリーニングシーケンス図を図11に示す。このシーケンス図では、クリーニング動作を画像印刷開始前の予備ランニングとして行うことを想定している。このように画像印刷開始前の予備ランニング中にクリーニング動作を行えば、続いて印刷を開始することで無駄にベルトをまわすことなくクリーニングが行うことができる。
【0067】
以下、このクリーニングシーケンスについて説明する。まず、ベルト駆動ローラ82、85を回転させ始め、中間転写ベルト70の駆動を始める。(図11(e)参照)また、二次転写ローラ81は中間転写ベルト70から離間させておく。(図11(f)参照)このとき、同時に感光体20の帯電を開始する。(図11(a)参照)露光器は初期段階ではオフとなっているので、感光体20には潜像は形成されない。(図11(b)参照)
次に、感光体20帯電部の先端が現像ローラ54とのニップに達するタイミングで現像バイアスが印加される。(図11(c)参照)感光体20に潜像が全く形成されていないので、白べた印字となる。この結果、感光体20から中間転写ベルト70へとキャリア液が塗布されるような状態となる。この間、一次転写バイアスは印加されず、二次転写ローラ81は離間されている。(図11(d)(e)参照)
中間転写ベルト70に転写された白べた印字先端(キャリア液塗布先端部)が振動印加部材10に到達する直前に、振動印加部材10は超音波振動を印加し始める。振動印加部材10は、中間転写ベルト70一周分時間分印加された後に、停止する。(図11(g)参照)振動印加部材10は、振動周波数25kHz、振動振幅8μmの振動を中間転写ベルト70に印加し、キャリア液中にトナー粒子を拡散させる。このような状態となった中間転写ベルト70をベルトクリーニングブレードが掻き取ることによりクリーニング動作が完了する。クリーニング動作による効果は、これまでの実施の形態で説明してきたものと同様のものである。
【0068】
白べた印字を中間転写ベルト70一周分行った後に、通常の画像形成動作を開始する。(図11(b)参照)感光体20上に形成された画像先端が一次転写ユニットに到達する直前に、一次転写バイアスを印加する。(図11(d)参照)
中間転写ベルト70に転写された画像先端が二次転写ユニットに到達する直前に、二次転写ローラ81を中間転写ベルト70に当接させ、二次転写バイアスを印加する。以降は通常の画像形成動作となる。
【0069】
以上、画像印刷開始前の予備ランニング中にクリーニングシーケンスを実施する例につき説明したが、このようにクリーニングシーケンスを画像印刷開始前に行う他に、印刷動作を行っていない間にクリーニングシーケンスを行ったり、印刷動作終了時に続けてクリーニングシーケンスを行ったりするように構成しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置を構成する主要構成要素を示す図である。
【図2】現像ユニットの主要構成要素を示した断面図である。
【図3】本発明のキャリア液塗布機構90の詳細構成を示す図である。
【図4】振動印加部材の一例として圧電セラミック素子を用いたときの構成を示す図である。
【図5】圧電セラミック素子の取り付け構造を示す図である。
【図6】圧電セラミック素子の寸法を示す図である。
【図7】中間転写ベルトの表面にキャリア液が塗布されたときの様子を示す図である。
【図8】振動印加部材で振動が印加されたときの中間転写ベルトの表面の様子を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るキャリア液塗布機及び構振動印加部材の構成を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置を構成する主要構成要素を示す図である。
【図11】クリーニング動作を行うために、各部がどのように動作するかを示すクリーニングシーケンス図である。
【図12】弾性を有する中間転写体の凹部にトナー粒子が入り込んでしまった様子を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
10・・・振動印加部材、11・・・圧電セラミック素子、12・・・ステンレス板、13・・・ベースプレート、14・・・振動部材保持部材
20Y、20M、20C、20K・・・感光体
21K・・・感光体ブレード、22K・・・感光体クリーニング液回収部
30Y、30M、30C、30K・・・コロナ帯電器
40Y、40M、40C、40K・・・露光ユニット光路
50Y、50M、50C、50K・・・現像ユニット
51Y、51M、51C、51K・・・トナー供給ローラ
53Y、53M、53C、53K・・・現像トナー容器
54Y、54M、54C、54K・・・現像ローラ
52K・・・トナー規制ブレード、55K・・・均しローラ、56K・・・均しローラブレード、57K・・・均しローラブレードクリーニング液回収部、58K・・・現像ローラブレード、59K・・・現像ローラクリーニング液回収部
60Y、60M、60C、60K・・・一次転写ユニット
61Y、61M、61C、61K・・・一次転写バックアップローラ
70・・・中間転写ベルト
80・・・二次転写ユニット、81・・・二次転写ローラ、82・・・ベルト駆動ローラ、83・・・二次転写ローラブレード、84・・・二次転写ローラクリーニング液回収部、85・・・ベルト駆動ローラ、86・・・ベルトクリーニングブレード、87・・・ベルトクリーニング液回収部
90・・・キャリア液塗布機構、91・・・キャリア液塗布ローラ、92・・・キャリア液塗布バックアップローラ、93、94・・・キャリア液供給ローラ、96・・・キャリア液貯蔵部
101・・・中間転写ベルト(中間転写体)表面、102・・・トナー粒子、103・・・キャリア液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア液にトナーを分散した液体トナーにより感光体上に形成された静電潜像を現像する現像手段と、
該感光体上に現像された像を中間転写媒体に転写する一次転写手段と、
該中間転写媒体に転写された像を記録媒体に転写する二次転写手段と、
該記録媒体に転写された像を加熱加圧し該記録媒体上に定着する定着手段と、
該中間転写媒体をクリーニングする中間転写媒体クリーニング手段と、
を有する画像形成装置において、
該中間転写媒体にキャリア液を塗布するキャリア液塗布機構と、該中間転写媒体に振動を印加する振動印加部材とを設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
該感光体を該キャリア液塗布機構として利用することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
該感光体を該キャリア液塗布機構として利用するのは、印刷開始前の予備ランニング中であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−108199(P2007−108199A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295900(P2005−295900)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】