説明

画像形成装置

【課題】裏打ち部材110の振動に起因する画質劣化を従来よりも抑えることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数の張架ローラによって張架されながら無端移動せしめられる第1中間転写ベルト8と、第1該ベルト部材のおもて面にトナー像を形成する図示しない可視像形成手段と、無端移動する第1中間転写ベルト8の裏面に摺擦する裏打ち部材110と、裏打ち部材110をベルト幅方向の両端部で支持するユニット前側板130及びユニット後側板131とを備える画像形成装置において、裏打ち部材110におけるベルト部材幅方向の全領域のうち、ユニット前側板130やユニット後側板131に固定されていない本体部110aに、補強部材111を固定した。そして、この補強部材111により、本体部110aにおけるベルトとの摺擦方向への撓みを阻害して、本体部110aの振動を抑えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状のベルト部材を無端移動せしめられながら、そのおもて面にトナー像等の可視像を形成する複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置においては、複数の張架部材によって張架されながら無端移動する中間転写ベルト等のベルト部材が大きく波打つと、画質劣化を引き起こしてしまう。例えば、トナー像を感光体等の像担持体から中間転写ベルトに転写するための1次転写ニップや、中間転写ベルトから記録紙に2次転写するための2次転写ニップの付近で、中間転写ベルトが波打ったとする。すると、その波打ちによる振動が転写ニップに伝搬して、トナー像に縦縞状の濃度ムラが発生してしまう。また例えば、中間転写ベルトに形成した基準パッチ像に対するトナー付着量を反射型フォトセンサによって検知し、その検知結果に基づいてトナー濃度や現像バイアス等の作像条件を調整する方式の画像形成装置において、ベルトの波打ちが起こったとする。すると、その波打ちによる振動が中間転写ベルトにおける反射型フォトセンサの被検知箇所に伝搬して、基準パッチ像に対するトナー付着量の検知精度を悪化させる。そして、作像条件の調整不良を引き起こして、画質を劣化させてしまう。
【0003】
そこで、特許文献1に記載の画像形成装置では、中間転写ベルトのループ内側に裏板を固定し、それを無端移動するベルト部材の裏面に摺擦せしめることで、ベルト部材の波打ちを抑えるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−5247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らは実験により、中間転写ベルトの裏面に裏板等の摺擦部材を摺擦せしめるだけでは、中間転写ベルトの振動に起因する画質劣化を十分に抑えることができないことを見出した。具体的には、一般に、中間転写ベルトの裏面に摺擦する裏板等の摺擦部材は、ベルトを張架する張架ローラと同様に、ベルト幅方向の両端部だけがベルトユニット側板に固定されており、中央部は側板間に架け渡された状態になっている。このような摺擦部材は、その中央部をベルトとの摩擦によってベルト移動方向に微妙に撓ませた後、自らの腰の強さがベルトとの摩擦力を上回った時点で、元の形状に復帰するという動作を繰り返す。この繰り返しにより、中間転写ベルトに摺擦する摺擦部材の中央部はベルト移動方向に振動する。そして、この振動が中間転写ベルトの転写ニップや反射型フォトセンサによる被検知箇所に伝搬する。高画質化が進められる近年においては、かかる振動によって僅かな画質劣化が起こっただけでも、所望の画質を得ることが困難になるおそれがある。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、裏板などの摺擦部材の振動に起因する画質劣化を従来よりも抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の張架部材によって張架されながら無端移動せしめられる無端状のベルト部材と、該ベルト部材のおもて面に可視像を形成する可視像形成手段と、無端移動する該ベルト部材の裏面に摺擦する摺擦部材と、該摺擦部材をベルト部材幅方向の複数箇所で支持する支持体とを備える画像形成装置において、上記摺擦部材として、ベルト部材幅方向の全領域のうち、上記支持体に固定されていない非固定領域を、上記支持体に固定されている固定領域よりも摺擦方向に撓み難いものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、複数の張架部材によって張架されながら無端移動せしめられる無端状のベルト部材と、該ベルト部材のおもて面に可視像を形成する可視像形成手段と、無端移動する該ベルト部材の裏面に摺擦する摺擦部材と、該摺擦部材をベルト部材幅方向の複数箇所で支持する支持体とを備える画像形成装置において、上記摺擦部材におけるベルト部材幅方向の全領域のうち、上記支持体に固定されていない非固定領域の摺擦方向への撓みを阻害する撓み阻害手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、上記撓み阻害手段として、上記非固定領域に固定されて該非固定領域を補強する補強部材を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2の画像形成装置において、上記摺擦部材を、上記ベルト部材の周方向の全領域のうち、水平方向に延びる水平張架領域の裏面に摺擦させるように配設し、且つ、上記撓み阻害手段として、上記摺擦部材よりも比重の高い材料からなる重り部材を用い、該重り部材を上記非固定領域に固定したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の画像形成装置であって、上記摺擦部材のベルト部材幅方向の全領域のうち、上記重り部材が固定されている領域の重量と、該重り部材の重量との和を、該全領域のうちの該重り部材が固定されていない領域の重量で除算した値が、1.8以上であることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかの画像形成装置において、上記摺擦部材における上記非固定領域のうち、該摺擦部材における互いに隣り合う2つの固定領域の間の中央領域を該固定領域よりも摺擦方向に撓み難くするか、あるいは、該中央領域の上記摺擦方向への撓みを上記撓み阻害手段によって阻害するか、したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、上記摺擦部材として、フッ素樹脂又はポリアセタール樹脂からなるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、上記摺擦部材として、基体における少なくとも上記ベルト部材との摺擦面に、該基体よりも摩擦係数の小さな材料からなる表面層を設けたものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至8の何れかの画像形成装置において、上記摺擦部材として、上記ベルト部材との接触面に複数の起毛を有するものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1乃至9の何れかの画像形成装置において、上記ベルト部材のおもて面における光反射量を検知する光学センサと、これによる検知結果に基づいて所定の制御を実施する制御手段とを設けるとともに、上記摺擦部材を、該おもて面における該光学センサによる光反射量検知箇所の裏側のベルト裏面領域に摺擦させるように配設したことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項1乃至9の何れかの画像形成装置において、上記ベルト部材のおもて面に当接して転写ニップを形成するニップ形成体を設けるとともに、上記摺擦部材を該転写ニップの近傍に配設したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
これらの発明において、摺擦部材におけるベルト部材幅方向の全領域のうち、支持体に固定されている固定領域は、支持体によって動きが拘束されているため、ベルト部材と摺擦しても摺擦方向に撓むことがない。よって、摺擦に伴って振動することがない。これに対し、支持体に固定されていない非固定領域は、ベルト部材との摩擦に伴って摺擦方向に撓む。このため、ベルト部材との摺擦に伴って摺擦方向に振動する。
そこで、請求項1の発明や、その発明特定事項の全てを備える発明においては、摺擦部材の全領域のうち、ベルト部材との摺擦に伴って振動してしまう非固定領域が、固定領域よりも摺擦方向に撓み難くなっている。かかる構成では、摺擦部材として、非固定領域と固定領域とで摺擦方向への撓み易さが同等であるものを用いていた従来に比べて、ベルト部材との摺擦に伴う非固定領域の撓み量を小さくする。これにより、ベルト部材との摺擦に伴う摺擦部材の振動を抑えることで、振動に起因する画質劣化を従来よりも抑えることができる。
また、請求項2の発明や、その発明特定事項の全てを備える発明においては、ベルト部材との摺擦に伴って撓んでしまう摺擦部材の非固定領域の撓みを撓み阻害手段によって阻害することで、ベルト部材との摺擦に伴う摺擦部材の振動を抑える。そして、これにより、摺擦部材の振動に起因する画質劣化を従来よりも抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の第1実施形態について説明する。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタをその正面から示す概略構成図である。同図において、プリンタは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、M、C、Kと記す)のトナー像を形成するための4つのプロセスカートリッジ6Y,M,C,Kを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Yトナー像を生成するためのプロセスカートリッジ6Yを例にすると、図2に示すように、像担持体たるドラム状の感光体1Y、ドラムクリーニング装置2Y、除電装置3Y、帯電装置4Y、現像装置5Y等を備えている。
【0010】
感光体1Yは、アルミ製の円筒に、光導電性物質である有機半導体の表面層が被覆されている。アモルファスシリコン性の表面層が被覆されたものであってもよい。また、ドラム状ではなく、ベルト状のものであってもよい。
【0011】
帯電装置4Yは、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる感光体1Yの表面を一様帯電せしめる。一様帯電せしめられた感光体1Yの表面は、レーザー光Lによって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。このYの静電潜像は、Yトナーを用いる現像装置5YによってYトナー像に現像される。そして、後述の第1中間転写ベルト8上に1次転写される。
【0012】
ドラムクリーニング装置2Yは、中間転写工程を経た後の感光体1Y表面に残留したトナーを除去する。また、除電装置3Yは、クリーニング後の感光体1Yの残留電荷を除電する。この除電により、感光体1Yの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他のプロセスカートリッジ6M,C,Kにおいても、同様にして感光体1M,C,K上にM,C,Kトナー像が形成され、第1中間転写ベルト8上に重ね合わせて1次転写される。なお、現像装置(5Y等)は、トナーと磁性キャリアとを含有する2成分現像剤を用いるものでも、トナー粉体だけを用いるものでもよい。
【0013】
プロセスカートリッジ6Y,M,C,Kの図中下方には光書込ユニット7が配設されている。図示しない画像データ処理装置は、パーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報信号に基づいて、露光走査制御信号を生成して光書込ユニット7に送る。潜像形成手段たる光書込ユニット7は、この露光走査制御信号に基づいて発したレーザー光Lを、プロセスカートリッジ6Y,M,C,Kにおける感光体1Y,M,C,Kに照射する。この照射を受けて露光された感光体1Y,M,C,K上には、Y,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット7は、光源から発したレーザー光(L)を、モーターによって回転駆動したポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。かかる構成の光書込ユニット7に代えて、LEDアレイからのLED光を照射するものを採用しても良い。
【0014】
各感光体1Y,M,C,K上に形成されたY,M,C,K用の静電潜像は、プロセスカートリッジ6Y,M,C,K内の現像装置によってY,M,C,Kトナー像に現像された後、転写装置による転写工程を経る。この転写装置は、第1転写ユニット15と第2転写ユニット24とを有している。
【0015】
光書込ユニット7の下方には、第1紙カセット25と第2紙カセット26とが鉛直方向に重なるように配設されている。第1紙カセット25、第2紙カセット26は、記録体たる記録紙Pを複数枚重ねた記録紙束の状態で収容している。
【0016】
第1紙カセット25、第2紙カセット26の図中右側方には、給紙手段が配設されている。この給紙手段は、第1給紙ローラ28、第2給紙ローラ29、レジストローラ対31、給紙路32などから構成されている。第1給紙ローラ28、第2給紙ローラ29は、上記第1紙カセット25、第2紙カセット26内に収容されている記録紙束の一番上の記録紙Pに当接している。そして、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられることで、その一番上の記録紙Pを給紙路32に向けて送り出す。送り出された記録紙Pは、給紙路32の末端付近に配設されたレジストローラ対31のローラ間に挟まれる。
【0017】
レジストローラ対31は、記録紙Pを挟み込むべく両ローラを互いに順方向に回転駆動させているが、記録紙Pを挟み込むとすぐに両ローラの回転を一旦停止させる。そして、適切なタイミングで両ローラの回転を再開して記録紙Pを後述の2次転写ニップに向けて送り出す。
【0018】
転写装置の第1転写ユニット15は、水平方向に並ぶように配設された4つのプロセスカートリッジ6Y,M,C,Kの上方に配設されている。そして、ベルト部材たる第1中間転写ベルト8、4つの1次転写ローラ9Y,M,C,K、第1クリーニング装置10、駆動ローラ11、2次転写バックアップローラ12、テンションローラ13、ニップ上流ローラ14などを有している。無端状の第1中間転写ベルト8は、これらローラに張架されながら、駆動ローラ11の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。
【0019】
4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kは、このように無端移動せしめられる第1中間転写ベルト8を感光体1Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。この挟み込みにより、第1中間転写ベルト8のおもて面と、感光体1Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ9Y,M,C,Kには、図示しない電源により、トナーとは逆極性(例えばプラス)の1次転写バイアスが印加されている。この印加により、Y,M,C,K用の1次転写ニップには、それぞれ感光体上のトナー像を第1中間転写ベルト8に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。なお、バイアス印加方式の4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kに代えて、電極から放電させるチャージャ方式のものを用いてもよい。
【0020】
第1中間転写ベルト8は、伸びの少ないフッ素樹脂、PVDF(Poly Vunyli Dene Chloride)、ポリイミド樹脂などからなるベース層、これのおもて面側に被覆されたフッ素系樹脂などからなる表面平滑性に優れたコート層、などからなる多層構造になっている。そして、その無端移動に伴ってY,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過していく。各1次転写ニップでは、感光体1Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像がニップ圧や1次転写電界の作用によって第1中間転写ベルト8に重ね合わせて1次転写される。これにより、第1中間転写ベルト8上に4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0021】
第1中間転写ベルト8を張架している2次転写バックアップローラ12は、後述の第2中間転写ベルト16に食い込む位置に配設されている。このような食い込み配置により、第1中間転写ベルト8のおもて面と、ベルト部材たる第2中間転写ベルト16のおもて面とが互いに当接する2次転写ニップが形成されている。
【0022】
第1中間転写ベルト8上に形成された可視像たる4色トナー像は、第1中間転写ベルト8の無端移動に伴って、2次転写ニップに進入する。そして、この2次転写ニップにて、第2中間転写ベルト16あるいは記録紙Pに2次転写される。
【0023】
2次転写ニップを通過した後の第1中間転写ベルト8のおもて面には、第2中間転写ベルト16あるいは記録紙Pに2次転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、第1クリーニング装置10によってクリーニングされる。具体的には、2次転写ニップを通過した後の第1中間転写ベルト8は、そのループ外面(おもて面)側に当接するように配設された第1クリーニング装置10と、そのループ内面側に配設されたテンションローラ13との間に挟まれる。そして、おもて面上の転写残トナーが第1クリーニング装置10に機械的あるいは静電的に回収されてクリーニングされる。
【0024】
転写装置の第2転写ユニット24は、第1転写ユニット15の図中右側方に配設されており、無端状の第2中間転写ベルト16、第2クリーニング装置18、転写チャージャ23などを備えている。また、2次転写ローラ17、ニップ拡張ローラ19、テンションローラ20、駆動ローラ21なども備えている。第2中間転写ベルト16は、これら4つのローラに張架されながら、駆動ローラ21の回転駆動によって図中時計回りに無端移動せしめられる。
【0025】
第2転写ユニット24の2次転写ローラ17には、図示しない電源によってトナーと反対極性(例えばプラス極性)の2次転写バイアスが印加される。この印加により、2次転写ニップ内には、第1中間転写ベルト8上の4色トナー像を第2中間転写ベルト16に向けて静電移動させる2次転写電界が形成されている。
【0026】
給紙手段のレジストローラ対31は、ローラ間に挟み込んだ記録紙Pを、2次転写ニップ内で第1中間転写ベルト8上の4色トナー像に密着させ得るタイミングで送り出す。但し、この4色トナー像が、記録紙Pの第1面(後述のスタック部40上で上を向く面)に転写されるべき第1トナー像である場合には、記録紙Pを送り出さない。よって、この場合には、第1中間転写ベルト8上の第1トナー像が、2次転写ニップ内で第2中間転写ベルト16のおもて面に2次転写される。これに対し、第1中間転写ベルト8上の4色トナー像が記録紙Pの第2面(スタック部40上で下を向く面)に転写されるべき第2トナー像である場合には、レジストローラ対31は、この第2トナー像に同期させ得るタイミングで記録紙Pを送り出す。よって、この場合には、第2トナー像が2次転写ニップで記録紙Pの第2面に2次転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。このとき、先に第2中間転写ベルト16上に2次転写された第1トナー像が、2次転写ニップで記録紙Pの第1面に密着せしめられながら、2次転写バイアスの作用によってベルト側に引き寄せられる。記録紙Pの第1面に密着しているが、そこに3次転写されるわけではない。
【0027】
2次転写ニップの出口では、第1中間転写ベルト8が記録紙Pから離間し、記録紙Pが第2中間転写ベルト16の表面だけに保持されて搬送されるようになる。そして、第2中間転写ベルト16の無端移動に伴って、後述する3次転写部に送られる。
【0028】
第2転写ユニット24の3次転写部では、第2中間転写ベルト16における駆動ローラ21への掛け回し箇所に対し、転写チャージャ23が所定の間隙を介して対向している。第2中間転写ベルト16上の記録紙Pは、この転写チャージャ23によって第2面側にトナーと反対極性(例えばプラス極性)の電荷が付与される。この電荷の付与により、記録紙Pの第1面と第2中間転写ベルト16との間に挟まれていた第1トナー像が記録紙Pの第1面に3次転写されてフルカラー画像になる。なお、1次転写バイアスや2次転写バイアスが印加される部材として、ローラ(9,17)ではなく、ブラシなど他の形状のものを用いてもよい。また、転写バイアスを部材に印加する静電転写方式ではなく、非接触放電式を採用してもよい。
【0029】
両面にトナー像が転写された記録紙Pは、第2中間転写ベルト16から分離されて後述の定着装置35に送られる。
【0030】
3次転写部を通過した後の第2中間転写ベルト16は、駆動ローラ21と第2クリーニング装置18との間に挟み込まれて、表面の転写残トナーが機械的又は静電的にクリーニングされる。この第2クリーニング装置18が第2中間転写ベルト16に常に当接していると、第2中間転写ベルト16上に2次転写された第1トナー像もクリーニングしてしまうことになる。そこで、第2クリーニング装置18は、図示しない揺動機構によって揺動軸18aを中心に図中矢印方向に揺動せしめられることで、第2中間転写ベルト16に接離するようになっている。そして、少なくともそのクリーニング位置を第1トナー像が通過する間は、第2中間転写ベルト16から離間して、第1トナー像のクリーニングを回避する。
【0031】
第2転写ユニット24の図中上方には、定着手段たる定着装置35が配設されている。この定着装置35は、互いに順方向に回転しながら当接して定着ニップを形成する2つの定着ローラ35a,bを有している。これら定着ローラ35a,bは、何れも図示しないハロゲンランプ等の発熱手段を有しており、定着ニップに挟み込んだ記録紙Pを両面から加熱する。この加熱により、記録紙Pの両面にそれぞれ形成されたフルカラー画像が記録紙Pに定着せしめられる。定着後の記録紙Pは、反転ガイド部材36に沿って反転せしめられた後、排紙ローラ対37を経て機外へと排出される。そして、プリンタ本体の筺体の上面に形成されたスタック部40にスタックされる。
【0032】
2つの定着ローラ35a,bは、それぞれ図示しない温度検知手段によって表面温度が検知される。この温度検知手段は、検知結果を図示しない定着温度制御回路に送信する。定着温度制御回路は、温度検知手段から送られてくる表面温度の検知結果に基づいて、定着ローラ35a,bの上記発熱手段に対する電源供給をON/OFF制御して、定着ローラ35a,bの表面温度を一定範囲(目標範囲)に維持する。
【0033】
以上のようにして、本プリンタは、フルカラー画像の定着処理を行う定着装置35に送られる前の記録紙Pに対して、転写装置によってその両面にフルカラー画像の前駆体である4色トナー像を転写する。そして、このことにより、記録紙Pの両面に対してワンパス方式での画像形成を行うことができる。
【0034】
上述の第1トナー像は上述の第2トナー像に先行して形成される。そして、2次転写ニップで第1中間転写ベルト8から第2中間転写ベルト16に2次転写された後、上記3次転写部で記録紙の第1面に3次転写される。この第1面とは、上記スタック部40で上方を向く面である。よって、スタック部40にスタックされる記録紙Pは、先行して形成された第1トナー像を上に向け、且つその後に形成された第2トナー像を上に向けた状態で順次スタックされていく。本プリンタは、このようにスタックされていく記録紙Pの頁番号を小さい方から順に揃えるべく、奇数、偶数と連続する2つの頁番号の画像について、頁番号の大きい方を先に第1トナー像として形成する。例えば1頁目の画像に先行して2頁目の画像を第1トナー像として形成するのである。そうすると、数頁にわたる原稿を連続して出力しても、スタック部40において、頁番号を下から順に揃えることが可能になる。但し、記録紙Pの第2面だけに画像を形成する片面プリントモードを実行する際には、頁番号の小さい画像から順に形成していき、それぞれ記録紙Pの第2面に2次転写せしめる。このことにより、片面プリントモードにおいても、スタック部40で頁番号を下から順に揃えることができる。
【0035】
4つの感光体1Y,M,C,Kにおいて、第2トナー像用として形成される各色のトナー像は非鏡像(以下、正像という)として形成される。これは、形成された各色のトナー像が、1次転写、2次転写という2回の転写工程を経て記録紙Pに至る過程で鏡像、正像という順に変化するからである。各感光体上で正像として形成されることで、記録紙Pの第2面においても正像になるのである。これに対し、第1トナー像用として形成される各色のトナー像は、3次転写まで行われるため、第2トナー像よりも転写工程が1回多くなる。よって、各感光体上で鏡像として形成される。これにより、転写毎に正像、鏡像、正像という順に変化して、記録紙Pの第1面において正像となることができる。
【0036】
上述の第1転写ユニット15の図中上方には、ボトル収容器54が配設されている。このボトル収容器54内には、各プロセスカートリッジ(6Y,M,C,K)内の現像装置に補給するためのトナーを内包するトナーボトルBY,BM,BC,BKが収められている。
【0037】
図3は、4つのプロセスカートリッジ6Y,M,C,Kと、転写装置の第1転写ユニット15とを示す拡大構成図である。第1転写ユニット15の第1中間転写ベルト8のループ内側であって、駆動ローラ11の近傍には、裏打ち部材110が配設されている。この裏打ち部材110は、駆動ローラ11による張架位置を通過した直後の第1中間転写ベルト8の裏面に対して、その幅方向の全領域に摺擦するようにベルトループ内側に固定されている。
【0038】
以上の基本的な構成を備える本プリンタでは、各プロセスユニット6Y,M,C,K、光書込ユニット、転写装置などの組み合わせが、ベルト部材たる第1中間転写ベルト8や第2中間転写ベルト16のおもて面に可視像たるトナー像を形成する可視像形成手段として機能している。
【0039】
第1中間転写ベルト8のループ外側には、光学センサユニット120が第1中間転写ベルト8のおもて面と所定の間隙を介して対向するように配設されている。第1中間転写ベルト8のおもて面の全領域のうち、裏打ち部材110に裏打ちされる領域は、この光学センサユニット120による被検知領域となっている。具体的には、光学センサユニット120は、図示しない複数の発光素子と、図示しない複数の受光素子とを有しており、発光素子から発した光を第1中間転写ベルト8のおもて面における裏打ち部材110による裏打ち領域である被検知領域に照射する。この被検知領域で反射した光は、光学センサユニット120の受光素子によって受光され、受光素子はその受光量に応じた値の電圧を図示しない制御部に出力する。第1中間転写ベルト8の被検知領域における反射光量は、その被検知領域における単位面積あたりのトナー付着量と相関関係を示す。よって、受光素子による受光量は、被検知領域におけるトナー付着量を表していることになる。
【0040】
本プリンタは、図示しない電源スイッチが投入された直後、省エネモードからの立ち上がり直後、及び所定枚数のプリントアウトを行う毎に、それぞれプロセスコントロール処理と呼ばれる処理を行うようになっている。なお、省エネモードとは、図示しないパーソナルコンピュータから送られてくるプリント命令信号などの画像形成命令が所定時間以上なされない場合に、定着装置(35)の発熱手段に対する電力供給を停止した状態で、画像形成命令を待機するモードである。
【0041】
プロセスコントロール処理においては、まず、光学センサユニット120を校正する。具体的には、光学センサユニット120の発光素子による発光をOFFにした状態での受光素子からの出力電圧値をVsgとして検知する。図示しない制御部のROMには、高濃度黒ベタトナー像を検知した場合における受光素子からの飽和出力電圧値であるVs0が予め記憶されている。このVs0を前述のVsgから減算した値が所定値(例えば1.5V)になるように、発光素子の発光量が調整される。この調整により、光学センサユニット120が校正される。
【0042】
センサの校正が終わると、次に、プロッタ立ち上げ動作が行われる。このプロッタ立ち上げ動作では、各駆動モーターが起動された後、予め定められた帯電バイアス、現像バイアス、転写バイアスの立ち上げが行われる。
【0043】
プロッタ立ち上げ動作が行われると、次に、階調パターン検知処理が行われる。この階調パターン検知処理では、まず、互いにトナー付着量が異なる17個の基準トナー像からなるK階調パターン像がY用の感光体1Y上に形成された後、第1中間転写ベルト8上に転写される。このとき、K階調パターン像内の各基準トナー像に対するトナー付着量については、現像ポテンシャルの違いによって調整される。現像ポテンシャルとは、感光体1Y上の静電潜像と、現像装置の現像ローラの表面電位(現像バイアスVB)との電位差のことである。また、現像ポテンシャルは、感光体1Yに対する光書込強度の違いによって調整される。K階調パターン像内における各基準トナー像用の静電潜像は、現像に先立って図示しない電位センサによってその電位が検知され、その検知結果は制御部に出力される。また、K階調パターン像内の各基準トナー像に対する単位面積あたりのトナー付着量は、光学センサユニット120によって検知される。制御部は、電位センサからの出力信号と、現像バイアスVBとに基づいて、各基準トナー像を現像する際の現像ポテンシャルを算出する。また、光学センサユニット120からの出力信号に基づいて、各基準トナー像に対するトナー付着量を算出する。そして、各基準トナー像に対するトナー付着量と、各基準トナー像にそれぞれ対応する現像ポテンシャルとの関係を示す近似直線式を演算する。この近似直線式は、可視像形成手段の作像能力を示している。よって、制御部は、階調パターン検知処理を実施することで、作像性能を測定していることになる。
【0044】
制御部は、上述の近似直線式を得たら、それに基づいて、狙いのトナー付着量を得るのに最適な現像ポテンシャルを特定した後、ROM内に予め記憶しているデータテーブルに基づいて、その現像ポテンシャルにマッチした感光ベルト一様帯電電位VL、現像バイアスVB、光書込強度VDを特定する。そして、特定結果を、不揮発性情報記憶手段たるNVRAMに記憶する。このような階調パターン検知処理を、M,C,Kについても実施する。
【0045】
以上のようにしてプロセスコントロール処理を実施した後、画像情報信号に基づくプリントジョブを行う際には、各色についての感光体一様帯電電位VL、現像バイアスVB、光書込強度VDを、それぞれ、プロセスコントロール処理時にNVRAM内に記憶したデータと同じ値に設定する。これにより、環境(温度や湿度)やトナー特性(流動性や嵩密度等)の変動に起因する画像濃度や階調再現性の変動を抑えて、高品質の画像を長期に渡って安定して形成することができる。
【0046】
本プリンタのようなプロセスコントロール処理を行うものでは、第1中間転写ベルト8における被検知領域がベルトの無端移動に伴って波打ってしまうと、その波打ちによって受光素子による受光量が変化してしまう。そして、これにより、各基準トナー像に対するトナー付着量の検知精度が悪化して、可視像形成手段の作像性能を精度良く検知することが困難になってしまう。そこで、本プリンタにおいては、上述のように、第1中間転写ベルト8における被検知領域の裏側に、裏打ち部材110を摺擦させることで被検知領域にテンションをもたせて、被検知領域の波打ちを抑えている。
【0047】
ところが、本発明者らは実験により、第1中間転写ベルト8の被検知領域の裏側に摺擦部材たる裏打ち部材110を摺擦せしめるだけでは、トナー付着量の検知精度の悪化に起因する画質劣化を十分に抑えることができないことを見出した。具体的には、第1中間転写ベルト8の裏面に摺擦する裏打ち部材110は、第1中間転写ベルト8の無端移動に伴って振動することがあり、この振動が中間転写ベルト8の被検知領域に伝搬して、トナー付着量の検知精度を悪化させることがある。
【0048】
図4は、従来の裏打ち部材110を、第1転写ユニット(15)のユニット前側板130及びユニット後側板131とともに鉛直方向上側から示す拡大平面図である。同図におけるユニット前側板130とユニット後側板131とは、図示しない第1中間転写ベルト(8)のベルト幅方向に所定の距離をおいて並んでいる。そして、第1中間転写ベルト(8)を張架する各種のローラをそれぞれローラ軸線方向の端部において回転自在に支持している。裏打ち部材110のベルト幅方向の両端部はそれぞれ、ユニット前側板130やユニット後側板131に設けられた切り欠き部に嵌合せしめられている。この嵌合により、裏打ち部材110がベルト幅方向の両端部においてユニット前側板130、ユニット後側板131に固定されている。裏打ち部材110におけるユニット前側板130とユニット後側板131との間の架け渡し箇所は、ベルト幅方向における長さが第1中間転写ベルト(8)の幅よりも大きくなっており、第1中間転写ベルト(8)に対してその幅方向の全域に渡って接触する。
【0049】
図示しない第1中間転写ベルト(8)が無端移動すると、ベルトにおける裏打ち部材110との当接箇所は、図5に示すように矢印X1方向に移動する。そして、第1中間転写ベルト(8)の裏面に摺擦する裏打ち部材110は、ベルトとの摩擦によって矢印X1方向に引っ張られ、そのベルト幅方向における中央部が矢印X1方向に撓む。このようにして撓んだ裏打ち部材110は、自らの腰の強さによって矢印X1方向への撓みを復元させようとする力(以下、復元力という)を発揮する。この復元力が裏打ち部材110と第1中間転写ベルト(8)との摩擦力を上回ると、裏打ち部材110の中央部は図中矢印X2に示すように、撓み方向とは逆方向に変形して撓みを復元させ、更に、元の状態よりも矢印X2方向に少し撓む。その後、ベルトとの摩擦に伴って再び矢印X1方向に撓んでいく。このような撓みと復元とを繰り返すことにより、裏打ち部材110、とりわけ、その中央部は、矢印X1−X2方向に振動する。なお、このような裏打ち部材110の振動は、画質劣化を引き起こす他に、騒音を増大させるという問題も引き起こす。
【0050】
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
図6は、本プリンタにおける裏打ち部材110を第1転写ユニット(15)のユニット前側板130及びユニット後側板131とともに鉛直方向上側から示す拡大平面図である。裏打ち部材110のベルト幅方向の両端部はそれぞれ、中央側の本体部110aよりも細い固定部110bとなっており、ユニット前側板130やユニット後側板131に設けられた図示しない貫通開口に嵌合せしめられている。この嵌合により、裏打ち部材110がベルト幅方向の両端の固定領域である固定部110bにおいてユニット前側板130、ユニット後側板131に固定されている。裏打ち部材110の本体部110aは、ベルト幅方向における長さが第1中間転写ベルト(8)の幅よりも大きくなっており、第1中間転写ベルト(8)に対してその幅方向の全域に渡って接触する。
【0051】
裏打ち部材110のベルト幅方向における全領域のうち、支持体たるユニット前側板130やユニット後側板131に固定されていない非固定領域である本体部110aは、ユニット前側板130やユニット後側板131に固定される固定領域である固定部110bよりも太くなっている。これにより、本体部110aは、固定部110bに比べて摺擦方向に撓み難くなっている。かかる構成では、裏打ち部材110のベルト幅方向の全領域において、摺擦方向の撓み易さを同じにしていた従来に比べて、第1中間転写ベルト(8)との摺擦に伴う裏打ち部材110(とりわけ中央部)の撓み量を小さくする。そして、これにより、第1中間転写ベルト(8)との摺擦に伴う裏打ち部材110の振動を抑えることで、振動に起因する画質劣化を従来よりも抑えることができる。
【0052】
なお、本体部110aを固定部110bよりも太くすることで、本体部110aを固定部110bよりも摺擦方向に撓み難くした例について説明したが、他の方法によって本体部110aを固定部110bよりも撓み難くしてもよい。例えば、本体部110aと固定部110bとで互いに太さを同じにしても、本体部110aを固定部110bよりも高剛性の材料で構成することにより、本体部110aを固定部110bよりも摺擦方向に撓み難くすることが可能である。
【0053】
次に、本発明を適用したプリンタの第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態に係るプリンタの構成は、以下に特筆しない限り、第1実施形態に係るプリンタと同様である。
【0054】
図7は、本プリンタにおける裏打ち部材110と、その周囲構成とを示す拡大分解斜視図である。同図において、裏打ち部材110の本体部110aにおけるベルト幅方向の中央には、補強部材111がネジ止め固定されている。ユニット前側板130やユニット後側板131に固定されない非固定領域である本体部110aに補強部材111を固定して本体部110aを補強することで、第1中間転写ベルト8との摺擦に伴う本体部110aの摺擦方向への撓みを阻害する。そして、これにより、図8に示すように、裏打ち部材110の本体部110aの振動を抑えて、その振動に起因する画質劣化を従来よりも抑えることができる。
【0055】
本プリンタにおいては、先に図3に示した第1実施形態に係るプリンタの構成と同様に、裏打ち部材110を、第1中間転写ベルト8の周方向の全領域のうち、水平方向に延びる水平張架領域の裏面に摺擦させるように配設している。かかる構成では、裏打ち部材110に対して、重力が第1中間転写ベルト8との摺擦方向と直交する面方向に作用する。そして、図7に示した裏打ち部材110の本体部110aに対して、その自重や補強部材111の重さによる応力が摺擦方向と直交する面方向に作用するため、本体部110aをその自重や補強部材111の重さによってベルトとの摺擦方向に撓ませることがない。かかる構成のもとで、本プリンタにおいては補強部材111として、裏打ち部材110よりも比重の高い材料からなるものを用いている。より詳しくは、裏打ち部材110として、プラスチック材料からなるものを用いる一方で、補強部材111として、プラスチックよりも比重の高い金属材料からなるものを用いている。このような補強部材111を用いることで、補強部材111に対し、ベルトとの摺擦方向と直交する方向に大きな応力を付与する。このような応力を付与すると、補強部材111の固定による補強を行ってもまだ僅かに発生してしまう裏打ち部材110の本体部110aの撓みを、補強部材111の重みによる重力方向の応力によって低減することができる。これにより、補強部材111として、裏打ち部材110よりも比重の小さい材料からなるものを用いる場合に比べて、本体部110aの振動をより抑えることができる。
【0056】
本発明者らは、図7に示した構成を具備するプリンタ試験機と、4種類の裏打補強ユニットとを用意した。裏打ち補強ユニットとは、裏打ち部材110と補強部材111との組み合わせのことである。用意した4種類の裏打ち補強ユニットは、互いに補強領域重量M1と、非補強領域重量M2との比が互いに異なっている。なお、補強領域重量M1とは、裏打ち部材110におけるベルト幅方向の全領域のうち、補強部材111が固定されている領域の重量と、重り部材たる補強部材111の重量とを加算した値である。また、非補強領域重量M2とは、裏打ち部材110におけるベルト幅方向の全領域のうち、補強部材111が固定されていない領域の重量のことである。
【0057】
本発明者らは、上述のプリンタ試験機に搭載する裏打ち補強ユニットを上述の4種類のもので順次交換しながら、裏打ち部材110の振動抑制効果を調べて、×、△、○の3段階で評価する実験を行った。×という評価は、裏打ち部材110の振動によるトナー付着量の検知精度の悪化が許容範囲を超えるレベルであることを示す。また、△という評価は、裏打ち部材110の振動によってトナー付着量の検知精度が僅かに悪化するものの、その悪化の度合いが問題ないレベルであることを示す。また、○という評価は、裏打ち部材110の振動によるトナー付着量の検知精度の悪化が認められないレベルであることを示す。この実験の結果を次の表1に示す。
【表1】

【0058】
表1に示すように、補強領域重量M1を非補強領域重量M2で除算した値が1.8以上であれば、裏打ち部材110の振動抑制効果を○という評価にすることができる。そこで、本プリンタにおいては、裏打ち補強ユニットとして、補強領域重量M1を非補強領域重量M2で除算した値が1.8以上であるものを用いている。
【0059】
先に示した図7において、補強部材111は、裏打ち部材110の非固定領域である本体部110aのベルト幅方向の全領域のうち、裏打ち部材110における互いに隣り合う2つの固定領域である両端部の固定部110bの中央領域に固定されている。本体部110aの摺擦方向の撓み量は、図8に示したように、2つの固定部110bの間の中央領域で最も大きくなる。即ち、本体部110aの摺擦方向の振幅は、前述の中央領域で最も大きくなる。本プリンタでは、このように振幅が最も大きくなる中央領域に補強部材111を固定して、その中央領域の振動を抑えることで、本体部110aの非中央領域に補強部材111を固定する場合に比べて、本体部110aの振動を抑えている。なお、なお、裏打ち部材110としては、ベルト幅方向の長さが350[mm]であるものを用いている。このような裏打ち部材110の本体部110aにおける中央領域だけに補強部材111を固定することで、本体部110aの全領域に補強部材を固定する場合に比べて、30[%]の軽量化を図ることができた。
【0060】
次に、本第2実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各実施例装置について説明する。
[第1実施例装置]
本第1実施例装置では、裏打ち部材110として、本体部110aがフッ素樹脂又はポリアセタール樹脂からなるものを用いている。フッ素樹脂やポリアセタール樹脂は、摩擦係数の非常に小さな物質として知られている。かかるフッ素樹脂又はポリアセタール樹脂からなる裏打ち部材110を用いることで、ゴムなどの摩擦係数の比較的大きな材料からなる裏打ち部材110を用いる場合に比べて、裏打ち部材110との摺擦に伴う第1中間転写ベルト8の裏面の粗面化を抑える。そして、これにより、第1中間転写ベルト8の裏面の経時的な粗面化による裏打ち部材110の振動の経時的な増大化を抑えることができる。
【0061】
[第2実施例装置]
本第2実施例装置では、裏打ち部材110として、本体部110aの樹脂等からなる基体における少なくとも第1中間転写ベルト8との摺擦面(図7における上面)に、基体よりも摩擦係数の小さな材料からなる表面層を設けたものを用いている。これにより、裏打ち部材110として、本体部110aの無垢の基体表面を第1中間転写ベルト8に摺擦させるようにしたものを用いる場合に比べて、第1中間転写ベルト8の裏面の経時的な粗面化による裏打ち部材110の振動の経時的な増大化を抑えることができる。
【0062】
[第3実施例装置]
本第3実施例装置では、裏打ち部材110として、本体部110aにおける第1中間転写ベルト8との摺擦面に、複数の起毛を立設せしめたものを用いている。複数の起毛を立設せしめた面をベルトに摺擦せしめることで、ベルト裏面に対する異物の掻き取り効果を高めて、第1中間転写ベルト8の裏面を良好にクリーニングすることが可能になる。なお、起毛間に異物を補足し、その補足量を経時的に増加させていくことで、本体部110aとベルトとの摩擦力を経時的に上昇させるおそれがあるが、その摩擦力の増大に伴う振動量の増加については、補強部材111による振動抑制効果によって問題ないレベルに留めることが可能である。
【0063】
[第4実施例装置]
本第4実施例装置では、先に図7に示した裏打ち補強ユニットと同様のものを、先に図1に示した第2転写ユニット24にも設けている。この裏打ち補強ユニットは、第2中間転写ベルト16のループ内側における2次転写ニップ近傍に配設されている。ここで言う「近傍」とは、具体的には、ベルト移動方向における2次転写ニップの前後でそれぞれ第2中間転写ベルト16を張架する2つの張架ローラ(2次転写ローラ17、ニップ拡張ローラ19)の間のことである。かかる構成では、第2中間転写ベルト16のループ内側に設けた裏打ち補強ユニットにより、2次転写ニップ近傍での第2中間転写ベルト16の波打ちや振動(摺擦方向の振動)を抑えることで、それらによる2次転写性能の悪化を抑えることができる。
【0064】
以上、第2実施形態に係るプリンタにおいては、裏打ち部材110の摺擦方向への撓みを阻害する撓み阻害手段として、裏打ち部材110のベルト幅方向の全領域のうち、支持体たるユニット前側板130やユニット後側板131に固定されていない非固定領域である本体部110aに対して固定されて本体部110aを補強する補強部材111を用いている。かかる構成では、裏打ち部材110として、従来のものを用い、それに補強部材111を固定するだけで、ベルトとの摺擦に伴う裏打ち部材110の振動を抑えることができる。
【0065】
また、第2実施形態に係るプリンタにおいては、摺擦部材たる裏打ち部材110を、第1中間転写ベルト8の周方向の全領域のうち、水平方向に延びる水平張架領域の裏面に摺擦させるように配設し、且つ、撓み阻害手段たる補強部材111として、裏打ち部材110よりも比重の高い材料からなる重り部材として機能するものを用い、それを非固定領域たる本体部110aに固定している。かかる構成では、上述した理由により、補強部材111として、裏打ち部材110よりも比重の小さい材料からなるものを用いる場合に比べて、本体部110aの振動をより抑えることができる。
【0066】
また、第2実施形態に係るプリンタにおいては、裏打ち部材110のベルト部材幅方向の全領域のうち、重り部材たる補強部材111が固定されている領域の重量と、補強部材111の重量との和である補強領域重量M1を、全領域のうちの補強部材111が固定されていない領域の重量である非補強領域重量M2で除算した値が、1.8以上であるものを用いている。かかる構成では、上述した理由により、補強部材111による裏打ち部材110の振動抑制効果を○という評価にすることができる。
【0067】
また、第2実施形態に係るプリンタにおいては、裏打ち部材110の非固定領域である本体部110aのうち、裏打ち部材110における互いに隣り合う2つの固定領域である2つの固定部110bの間の中央領域について、その摺擦方向への撓みを補強部材111によって阻害している。かかる構成では、本体部110aの非中央領域に補強部材111を固定して本体部110aの撓みを阻害する場合に比べて、本体部110aの振動を抑えることができる。
【0068】
また、第1実施例装置においては、裏打ち部材110として、フッ素樹脂又はポリアセタール樹脂からなるものを用いているので、上述した理由により、ゴムなどの摩擦係数の比較的大きな材料からなるものを用いる場合に比べて、第1中間転写ベルト8の裏面の経時的な粗面化による裏打ち部材110の振動の経時的な増大化を抑えることができる。
【0069】
また、第2実施例装置においては、裏打ち部材110として、本体部110a基体における少なくとも第1中間転写ベルト8との摺擦面に、基体よりも摩擦係数の小さな材料からなる表面層を設けたものを用いているので、上述した理由により、本体部110aの無垢の基体表面を第1中間転写ベルト8に摺擦させるようにしたものを用いる場合に比べて、第1中間転写ベルト8の裏面の経時的な粗面化による裏打ち部材110の振動の経時的な増大化を抑えることができる。
【0070】
また、第3実施例装置においては、裏打ち部材110として、第1中間転写ベルト8との接触面に複数の起毛を有するものを用いているので、ベルト裏面に対する異物の掻き取り効果を高めて、第1中間転写ベルト8の裏面を良好にクリーニングすることができる。
【0071】
また、第2実施形態に係るプリンタにおいては、第1中間転写ベルト8のおもて面における光反射量を検知する光学センサユニット120と、これによる検知結果に基づいて所定の制御であるプロセスコントロール処理を実施する制御手段としての制御部とを設けている。そして、裏打ち部材110を、第1中間転写ベルト8における光学センサユニット120による光反射量検知箇所である被検知領域の裏側のベルト裏面領域に摺擦させるように配設している。かかる構成では、第1中間転写ベルト8の被検知領域の振動によるトナー付着量の悪化を抑えて、その悪化による画質劣化を抑えることができる。
【0072】
また、第4実施例装置においては、ベルト部材たる第2中間転写ベルト16のおもて面に当接して2次転写ニップを形成するニップ形成体としての第1中間転写ベルト8を設けるとともに、裏打ち部材を第2中間転写ベルト16のループ内側における2次転写ニップの近傍に配設している。かかる構成では、2次転写ニップ近傍での第2中間転写ベルト16の波打ちや振動(摺擦方向の振動)を抑えることで、それらによる2次転写性能の悪化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】同プリンタにおけるY用のプロセスカートリッジを示す拡大構成図。
【図3】同プリンタにおける4つのプロセスカートリッジと、転写装置の第1転写ユニットとを示す拡大構成図。
【図4】従来の裏打ち部材を、第1転写ユニットのユニット前側板及びユニット後側板とともに鉛直方向上側から示す拡大平面図。
【図5】振動する同裏打ち部材を示す模式図。
【図6】第1実施形態に係るプリンタにおける裏打ち部材を第1転写ユニットのユニット前側板及びユニット後側板とともに鉛直方向上側から示す拡大平面図。
【図7】同裏打ち部材と、その周囲構成とを示す拡大分解斜視図。
【図8】補強部材によって振動が抑えられている状態の同裏打ち部材を示す模式図。
【符号の説明】
【0074】
6Y,M,C,K:プロセスカートリッジ(可視像形成手段の一部)
7:光書込ユニット(可視像形成手段の一部)
8:第1中間転写ベルト(ベルト部材)
15:第1転写ユニット(可視像形成手段の一部)
16:第2中間転写ベルト(ベルト部材)
24:第2転写ユニット(可視像形成手段の一部)
110:裏打ち部材(摺擦部材)
110a:本体部(非固定領域)
110b:固定部(固定領域)
111:補強部材(撓み阻害手段、重り部材)
120:光学センサユニット
130:ユニット前側板(支持体)
131:ユニット後側板(支持体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の張架部材によって張架されながら無端移動せしめられる無端状のベルト部材と、該ベルト部材のおもて面に可視像を形成する可視像形成手段と、無端移動する該ベルト部材の裏面に摺擦する摺擦部材と、該摺擦部材をベルト部材幅方向の複数箇所で支持する支持体とを備える画像形成装置において、
上記摺擦部材として、ベルト部材幅方向の全領域のうち、上記支持体に固定されていない非固定領域を、上記支持体に固定されている固定領域よりも摺擦方向に撓み難いものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
複数の張架部材によって張架されながら無端移動せしめられる無端状のベルト部材と、該ベルト部材のおもて面に可視像を形成する可視像形成手段と、無端移動する該ベルト部材の裏面に摺擦する摺擦部材と、該摺擦部材をベルト部材幅方向の複数箇所で支持する支持体とを備える画像形成装置において、
上記摺擦部材におけるベルト部材幅方向の全領域のうち、上記支持体に固定されていない非固定領域の摺擦方向への撓みを阻害する撓み阻害手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
上記撓み阻害手段として、上記非固定領域に固定されて該非固定領域を補強する補強部材を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2の画像形成装置において、
上記摺擦部材を、上記ベルト部材の周方向の全領域のうち、水平方向に延びる水平張架領域の裏面に摺擦させるように配設し、且つ、上記撓み阻害手段として、上記摺擦部材よりも比重の高い材料からなる重り部材を用い、該重り部材を上記非固定領域に固定したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置であって、
上記摺擦部材のベルト部材幅方向の全領域のうち、上記重り部材が固定されている領域の重量と、該重り部材の重量との和を、該全領域のうちの該重り部材が固定されていない領域の重量で除算した値が、1.8以上であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかの画像形成装置において、
上記摺擦部材における上記非固定領域のうち、該摺擦部材における互いに隣り合う2つの固定領域の間の中央領域を該固定領域よりも摺擦方向に撓み難くするか、あるいは、該中央領域の上記摺擦方向への撓みを上記撓み阻害手段によって阻害するか、したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、
上記摺擦部材として、フッ素樹脂又はポリアセタール樹脂からなるものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、
上記摺擦部材として、基体における少なくとも上記ベルト部材との摺擦面に、該基体よりも摩擦係数の小さな材料からなる表面層を設けたものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかの画像形成装置において、
上記摺擦部材として、上記ベルト部材との接触面に複数の起毛を有するものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかの画像形成装置において、
上記ベルト部材のおもて面における光反射量を検知する光学センサと、これによる検知結果に基づいて所定の制御を実施する制御手段とを設けるとともに、上記摺擦部材を、該おもて面における該光学センサによる光反射量検知箇所の裏側のベルト裏面領域に摺擦させるように配設したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1乃至9の何れかの画像形成装置において、
上記ベルト部材のおもて面に当接して転写ニップを形成するニップ形成体を設けるとともに、上記摺擦部材を該転写ニップの近傍に配設したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−187867(P2007−187867A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5777(P2006−5777)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】