説明

画像形成装置

【課題】 定着液を用いてトナー像を定着させる消費電力の低い湿式定着の画像形成装置において、定着液の塗布むらひいてはそれに伴う画像むらの発生を防止し、高画質画像を長期間にわたって安定的に形成するとともに、定着液による装置内の汚染をも防止する。
【解決手段】 トナー像形成手段2、トナー像担持手段21を含む中間転写手段3、定着液付与手段4、転写定着手段5、記録媒体供給手段6および排出手段7を含む画像形成装置1において、定着液付与手段4が塗布ローラ30と、塗布ローラ30をトナー像担持手段21に対して離接させる離接手段と、塗布ローラ30のトナー像担持手段21に対する離接状態を検知する離接検知手段と、塗布ローラ30を回転駆動させる回転駆動手段と、離接手段および回転駆動手段を制御する制御手段とを含むように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどに多く採用される電子写真方式の画像形成装置においては、表面に光導電性物質を含む感光層を形成した感光体を用い、感光体表面に電荷を付与して均一に帯電させた後、種々の作像プロセスにて画像情報に対応する静電潜像を形成し、この静電潜像を、現像手段から供給されかつトナーを含む現像剤により現像してトナー像とし、このトナー像を紙などの記録媒体に直接転写するかまたは中間転写媒体に一旦転写した後、さらに記録媒体に転写する。そして、記録媒体に転写されるトナー像を記録媒体上に定着させるためには、加熱手段を含む定着ローラなどを用いる熱定着方式の定着手段によって記録媒体を加熱および加圧するのが一般的である。しかし、近年、地球温暖化対策として省エネルギー化が志向されており、電子写真方式の画像形成装置においても、トナー像を記録媒体に定着させる際の消費電力の低減が求められる。また、熱定着方式では、装置内部で加熱手段が用いられるため、装置内部が高温になるので、構成部材の耐熱性を高める必要があり、材料コストが増大する。また、熱定着方式では、定着部分が所定の温度まで上昇しないと定着を行えないので、所定の温度に達するまでの時間すなわちウォームアップ時間が長くなる傾向にある。さらに、熱定着方式では、多色トナー像の記録媒体への定着が、単色トナー像の定着に比べて時間を要するという問題がある。したがって、多色トナー像の定着時間の短縮化が要望される。
【0003】
このような要望に鑑み、水と、水に溶解または分散できかつトナーを軟化または膨潤させる作用を有する液体とを含む定着液を用いる湿式定着方式が提案されている。この方式では、定着液の付与により軟化または膨潤状態にしたトナー像を記録媒体に付着させ、加圧することによって、トナー像を記録媒体に定着させている。湿式定着方式は、熱定着方式に比べて消費電力が非常に少ないので、省エネルギーという観点からは有用な方式である。また、多色トナー像の定着を行う際も、多量の熱量を必要としないので、熱定着方式に比べて定着時間を短縮できる。したがって、湿式定着方式の実用化に向けて種々の改良が行われている。たとえば、記録上に転写されたトナー像を加圧してトナー像の記録紙への付着力を増大させる予備定着手段と、インクジェットヘッド、ミスト発生ヘッドなどを用いて、記録紙上のトナー像が付着した領域のみに定着液を付与し、トナーを軟化または膨潤させる定着液付与手段と、定着液の付与によって軟化または膨潤したトナー像を加熱加圧により記録紙に定着させる定着手段とを含む画像形成装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1の技術では、定着手段による本定着の前に、定着液の付与によってトナー像を軟化または膨潤させるので、定着手段における加熱温度を一般的な熱定着温度よりも低い70〜100℃程度に下げることができる。また、形成しようとする画像の印字率が低い場合には、加熱を実行せずに、電力消費量の低減化を図る。この画像形成装置では、トナー像が付着した領域のみに定着液を直接付与する構成を採る。トナー像が付着した領域は、全てがトナーによって隠蔽されているのではなく、トナーが付着しない部分も存在する。トナーが付着しない部分に付与された定着液は、速やかに記録紙内部に浸透して記録紙にしわ、カールなどを発生させる原因になる。特にこの画像形成装置では、定着手段における定着温度が比較的低く、定着液の水分が蒸発し難いので、しわ、カールなどの発生が顕著である。
【0004】
また、トナー像形成手段と、トナー像形成手段によって形成されたトナー像を表面に担持して回転駆動する中間転写ベルトと、中間転写ベルト上の未定着トナー像に定着液を接触付与するローラ状塗布部材と、中間転写ベルト上のトナー像を記録紙へ転写定着させる転写定着手段とを含み、中間転写ベルト上のトナー像に定着液を接触付与し、トナー像を構成するトナーを膨潤・軟化させてトナー像を記録紙へ転写定着させる画像形成装置が知られている。この画像形成装置では、特許文献1と同様に消費電力の低減化を図るために、定着液の付与および転写定着時の加熱温度の低下を必須とする。したがって、中間転写ベルト上のトナーが付着しない部分に付与された定着液が、転写定着時に記録紙に浸透して記録紙にしわ、カールなどを発生させるという湿式定着における欠点は解消されない。また、トナー像形成手段と、中間転写ベルトと、中間転写ベルトを加熱する加熱手段と、ローラ状塗布部材と、転写定着手段とを含み、加熱状態にある中間転写ベルト上のトナー像に定着液を接触付与し、トナーを膨潤・軟化させるとともに、トナーが付着しない部分に付与された定着液の水分を蒸発させ、記録紙への転写定着時に記録紙にしわ、カールなどが発生するのを防止する画像形成装置も知られている。この画像形成装置では、塗布部材が加熱状態にある中間転写ベルトに常時接触する。さらに、一般に使用される定着液は揮発性が高い。このため、塗布部材表面の定着液量が不均一になり、定着液をトナー像に均一に塗布できない。この結果、定着液の塗布むらひいては形成された画像に画像むらが発生する。
【0005】
また、鉛直方向の下部に開口部を有し、定着液を貯留する定着液槽と、定着液槽の内部に設けられ、その一部が開口部から下方に向けて突出して開口部を塞ぎ、定着液中に浸漬し、回転自在に支持され、表面に定着液を保持するための溝が形成されたローラ状部材である塗布部材と、塗布部材の開口部から下方に突出して露出する部分を開閉するシャッタ手段とを含む定着装置が提案されている(たとえば、特許文献2、特に図7参照)。この定着装置においては、シャッタ手段を開放して露出させた塗布部材によって、定着装置の下方に配置されるトナー像担持記録紙に定着液を接触塗布し、定着液を塗布しない場合は、シャッタ手段を閉鎖して塗布部材の露出部分を隠蔽する構成を採る。また、塗布部材表面の余分な定着液は、塗布部材と定着液槽の開口部の端部との接触によって除去され、塗布部材表面の溝部分のみに定着液が残るので、必要量以上の定着液を記録紙に付与しない構成を採る。この定着装置において、シャッタ手段を閉鎖すると、シャッタ手段と塗布部材とが接触した状態にあるので、塗布部材が回転駆動することはできない。記録紙が定着液の下方に搬送され、シャッタ手段が開放されて定着液を付与する直前に、塗布部材の回転駆動が開始されるので、塗布部材表面の溝に定着液が均一に行き渡らない。その結果、記録紙に定着液の塗布むらが発生し、画像むらだけでなく、定着不良による画像欠陥が生じるおそれがある。また、塗布部材に形成される溝は一定の寸法を有し、常に一定量の定着液を付与できるだけなので、形成しようとする画像の印字率が変化すると、定着液付与量が不足して定着不良を生じるかまたは定着液付与量が多くなりすぎ、定着液による画像流れ、しわ、カールなどの発生を避け得ない。たとえば、塗布部材の回転数を制御することによって印字率の変化に対応しようとしても、塗布部材と定着液槽開口部の端部とが常に摺動する構成を採るので、長期的な耐用性に問題がある。また、シャッタ手段を開放または閉鎖する際に塗布部材と接触するので、塗布部材表面を傷付けることによっても、定着液の塗布むらが発生するおそれがある。また、シャッタ部材の塗布部材との接触面に定着液が付着し、シャッタ部材の開放時に定着液が画像形成装置内部に飛散するおそれがある。シャッタ部材が下方から塗布部材を隠蔽する構成を採るので、シャッタ部材と定着液槽または塗布部材との隙間から定着液が漏出して画像形成装置内部を汚染するおそれがある。さらに特許文献1には、シャッタ手段を開閉する手段、定着液槽および塗布部材の長手方向端部に対応するシャッタ手段の長手方向端部の構成などについての具体的な記載がないので、特許文献1の発明を実施するのが困難である。
【0006】
【特許文献1】特開2004−294847号公報
【特許文献2】特開2004−333866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、定着液の塗布むらひいてはそれに伴う画像むらの発生が防止され、高画質画像を安定的に形成でき、定着液による装置内の汚染がなく、消費電力の低い湿式定着方式を採る画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
トナー像を形成するトナー像形成手段と、未定着トナー像を担持して回転駆動するトナー像担持手段と、トナーを記録媒体に定着させる作用を有する揮発性定着液をトナー像担持手段上の未定着トナー像に付与する定着液付与手段と、トナー像担持手段上の未定着トナー像を記録媒体に転写定着する転写定着手段とを含む画像形成装置において、
定着液付与手段は、
回転駆動可能に設けられてトナー像担持手段上の未定着トナー像に揮発性定着液を付与する塗布部材を含む塗布手段と、
塗布部材がトナー像担持手段に対して離接可能になるように塗布手段を支持する離接手段と、
トナー像担持手段に対する塗布部材の接触または離隔の状態を検知する離接検知手段と、
塗布部材をその軸心回りに回転駆動させる回転駆動手段と、
離接手段による塗布部材のトナー像担持手段への接触または離隔および回転駆動手段による塗布部材の回転を制御する制御手段とを含むことを特徴とする画像形成装置である。
【0009】
また本発明の画像形成装置は、
塗布手段が、
トナー像担持手段の鉛直方向下方に、塗布部材がトナー像担持手段のトナー像担持面を臨むように設けられることを特徴とする。
【0010】
さらに本発明の画像形成装置は、
制御手段が、
塗布部材をトナー像担持手段に接触させるに際し、接触の前に、回転駆動手段によって塗布部材を少なくとも1回転させることを特徴とする。
【0011】
さらに本発明の画像形成装置は、
制御手段が、
塗布部材をトナー像担持手段に接触させるに際し、接触の前に、回転駆動手段によって塗布部材を0.5〜10秒間回転させることを特徴とする。
【0012】
さらに本発明の画像形成装置は、
塗布部材によるトナー像担持手段への揮発性定着液の付与位置よりも、トナー像担持手段の回転駆動方向上流側に設けられ、トナー像担持手段を加熱する加熱手段を含み、
制御手段が、
加熱手段によるトナー像担持手段の加熱を制御するとともに、
加熱手段によってトナー像担持手段が加熱される間は、トナー像担持手段に対して離隔状態にある塗布部材を回転駆動手段によって回転させることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明の画像形成装置は、
塗布部材によるトナー像担持手段への揮発性定着液の付与位置よりも、トナー像担持手段の回転駆動方向上流側に設けられ、トナー像担持手段を加熱する加熱手段と、
トナー像担持手段の温度を検知する温度検知手段とを含み、
塗布部材によってトナー像担持手段に付与される揮発性定着液が少なくとも2種の有機溶剤と水とを含み、
制御手段が、
加熱手段によるトナー像担持手段の加熱を制御するとともに、
温度検知手段による検知結果に応じて、トナー像担持手段に対して離隔状態にある塗布部材を回転駆動手段によって回転させることを特徴とする。
【0014】
さらに本発明の画像形成装置は、
制御手段が、
温度検知手段による、トナー像担持手段の温度が揮発性定着液に含まれる少なくとも2種の有機溶剤が有する沸点のうちの最も低い沸点よりも高い温度であるとの検知結果に応じて、トナー像担持手段に対して離隔状態にある塗布部材を回転駆動手段によって回転させることを特徴とする。
【0015】
さらに本発明の画像形成装置は、
トナー像担持手段と塗布部材との間に、塗布部材に接触するかまたは接触しないように設けられ、
トナー像担持手段と塗布部材との間の空間にトナー像担持手段と塗布部材とを遮断するように配置される遮断位置と、トナー像担持手段と塗布部材とが対向できるように配置される開放位置との間を移動可能に支持される断熱性保護部材と、
断熱性保護部材を遮断位置と開放位置との間で移動させる保護部材移動手段とを含むことを特徴とする。
【0016】
さらに本発明の画像形成装置は、
断熱性保護部材が、
塗布部材に接触するように設けられ、
少なくとも塗布部材に接触する面が塗布部材の表面硬度よりも低い硬度を有する材料によって構成されることを特徴とする。
【0017】
さらに本発明の画像形成装置は、
断熱性保護部材が、
少なくとも塗布部材に接触する面が揮発性定着液に対して60度以上の接触角度を有する材料によって構成されることを特徴とする。
【0018】
さらに本発明の画像形成装置は、
断熱性保護部材が、
可撓性フィルムであることを特徴とする。
【0019】
さらに本発明の画像形成装置は、
断熱性保護部材が、
少なくともその周縁部に設けられ、定着液を保持する定着液保持部を含むことを特徴とする。
【0020】
さらに本発明の画像形成装置は、
定着液保持部が、
揮発性定着液を吸着保持できる多孔質材料を含むことを特徴とする。
【0021】
さらに本発明の画像形成装置は、
多孔質材料が、
内部に連続気泡を有するスポンジであることを特徴とする。
【0022】
さらに本発明の画像形成装置は、
塗布手段が、
トナー像担持手段を臨んで開口部が形成され、その内部空間に定着液を貯留する定着液溜と、
定着液溜の内部に、少なくとも一部が開口部を介してトナー像担持手段を臨むように設けられ、回転駆動自在に支持される塗布部材とを含み、
トナー像担持手段と定着液溜との間に設けられ、
定着液溜の開口部を閉鎖して定着液溜の内部空間を閉空間とするように配置される遮断位置と、トナー像担持手段と塗布部材とが定着液溜の開口部を介して直接対向することができるように配置される開放位置との間を移動可能に支持される断熱性保護部材と、
断熱性保護部材を遮断位置と開放位置との間で移動させる保護部材移動手段とを含むことを特徴とする。
【0023】
さらに本発明の画像形成装置は、
制御手段が、
断熱性保護部材によってトナー像担持手段に対して遮断される塗布部材を、回転駆動手段によって回転駆動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、トナー像形成手段と、トナー像担持手段と、定着液付与手段と、転写定着手段とを含み、揮発性定着液(以後特に断らない限り単に「定着液」と称す)を用いてトナー像を記録媒体に定着させる湿式定着方式の画像形成装置であって、定着液付与手段が、トナー像担持手段上のトナー像に定着液を付与する塗布部材を含む塗布手段と、塗布部材がトナー像担持手段に対して離接可能になるように塗布手段を支持する離接手段と、塗布部材がトナー像担持手段に対して離隔状態または接触状態のいずれにあるかを検知する離接検知手段と、塗布部材を回転させる回転駆動手段と、制御手段とを含む画像形成装置が提供される。
【0025】
本発明の画像形成装置は、たとえば、次のような効果を有する。イ)制御手段は、離接手段による塗布部材のトナー像担持手段に対する離隔または接触を制御し、さらに回転駆動手段による塗布部材の回転駆動を制御する。したがって、必要な時にだけ塗布部材をトナー像担持手段に接触させて定着液を付与できるので、定着液の消費量を必要最小限に抑え得る。ロ)形成しようとする画像の印字率に応じて、制御手段によって回転駆動手段を制御し、塗布部材の回転数を上下させて調整すれば、印字率の変化にも対応でき、印字率の異なる画像でも何ら支障なく連続形成が可能である。ハ)離接手段によっても、形成しようとする画像の印字率への対応が可能である。塗布部材のトナー像担持手段に対する接触圧を離接手段によって調整すれば、当該印字率に最適量の定着液を付与できる。ニ)前記ロ)、ハ)などの構成によって、定着液付与量を最適化できるので、定着液消費量は一層少なくなる。ホ)後述するように、トナー像担持手段に対して離隔状態にある塗布部材をトナー像担持手段に接触させて定着液の付与を開始しようとする前に、制御手段によって回転駆動手段を制御して塗布部材を少なくとも1回転させれば、塗布部材表面に定着液が均一に行き渡る。したがって、画像形成の初期から長期間にわたって定着液の塗布むらひいては画像むらが発生するのが防止され、安定的に高画質画像を形成できる。ヘ)形成しようとする画像の印字率などに応じて、トナー像担持手段に接触させる前の、回転駆動手段による塗布部材の回転回数を制御し、塗布部材表面の定着液量を調整すれば、画像形成の初期から最適量の定着液を付与できる。ト)本発明の画像形成装置は、トナーを記録紙に定着させる主たる手段として定着液を用いるので、電力消費量は少ない。また、揮発性の定着液を用いることによって、出力後の定着像が短時間で乾燥し、次の印刷物が接触しても定着液が付着して該印刷物を汚染することがないので、スループットを高め得る。
【0026】
本発明によれば、トナー像担持手段の鉛直方向下方に、塗布部材がトナー像担持手段のトナー像担持面を臨むように塗布手段を設けることによって、定着液は重力によって塗布手段の最下部に貯留されることになる。したがって、塗布手段を構成する部材のシール状態が不充分でも、特許文献2の定着装置のような定着液の漏出が発生し難くなり、画像形成装置内部が定着液によって汚染されるのを防止できる。また、トナー像担持手段と定着液とが間隔を空けて配置された状態になるので、後述のようにトナー像担持手段を加熱する加熱手段を設けても定着液の液温がほとんど上昇せず、定着液の変質が防止され、定着液の揮発による定着液消費量の増加が抑制される。
【0027】
本発明によれば、制御手段が、トナー像担持手段に対して離隔状態にある塗布部材を離接手段によってトナー像担持手段に接触させるに際し、接触の前に、塗布部材を少なくとも1回転、好ましくは0.5〜10秒間回転させるように回転駆動手段を制御する構成を採る。塗布部材がトナー像担持手段から離隔し、塗布部材の回転が停止される状態では、定着液は揮発性なので、特に塗布部材表面の定着液が揮発し、液量、定着液中の有効成分濃度などが変化し易い。この状態で塗布部材をトナー像担持手段上に接触させて定着液の付与を開始すると、塗布むらひいては画像むらを発生する。したがって、前述の構成を採ることによって、塗布部材表面に保持される定着液量、定着液中の有効成分濃度などが均一化され、画像形成の初期から画像むらを発生することなく、安定的に高画質画像を形成できる。
【0028】
本発明によれば、塗布部材によるトナー像担持手段への定着液付与位置よりも、トナー像担持手段の回転駆動方向上流側に設けられ、トナー像担持手段を加熱する加熱手段をさらに含む本発明の画像形成装置において、制御手段が、加熱手段によるトナー像担持手段の加熱を制御するとともに、トナー像担持手段が加熱手段によって加熱される間は、トナー像担持手段に対して離隔状態にある塗布部材を回転駆動手段によって回転させるように制御する。すなわち、トナー像担持手段が加熱されると、トナー像担持手段から離隔する塗布部材の表面でも、輻射熱によって定着液の揮発による液量、有効成分濃度の変化が起こり得る。また、塗布部材の回転が停止しているので、塗布部材の一部のみが局所的に加熱され、その状態で画像形成が再開されると、局所的に加熱された部分による定着液付与量が変化して塗布むらが発生し易くなる。そこで前述の構成を採ることによって、塗布部材表面の定着液量、有効成分濃度などを均一化し、また塗布部材が局所的に加熱されるのを防止できる。
【0029】
本発明によれば、前記と同様の加熱手段とともに、トナー像担持手段の温度を検知する温度検知手段を含む本発明の画像形成装置において、少なくとも2種の有機溶剤と水とを含む定着液を用い、制御手段が、加熱手段の制御とともに、温度検知手段の検知結果に応じて、トナー像担持手段に対して離隔状態にある塗布部材を回転させるように回転駆動手段を制御する。これによって、塗布部材表面の定着液の均一性が保持され、塗布部材が局所的に加熱されるのを防止できるので、画像形成がいつ再開されても形成初期から画像むらのない高画質画像を形成できる。
【0030】
本発明によれば、前記と同様の加熱手段および温度検知手段を含み、少なくとも2種の有機溶剤と水とを含む定着液を用いる本発明の画像形成装置において、トナー像担持手段の温度が定着液中の少なくとも2種の有機溶剤が有する沸点の中でも、最も低い沸点よりも高いという温度検知手段の検知結果に応じて、トナー像担持手段に対して離隔状態にある塗布部材を回転させるように回転駆動手段を制御する。塗布部材が加熱されているトナー像担持手段に離隔しつつ対向すると、輻射熱によって定着液の成分が揮発する。特に、トナー定着用の有効成分として2種以上の有機溶剤を含む場合は、沸点の低い方から順番に揮発するので、定着液中の構成成分の比率が変化する。この状態で定着液を接触付与すると、塗布むら、定着不良、画質変化などが発生するのを避け得ない。そこで、トナー像担持手段の温度が定着液中の有機溶剤の沸点における最も低い沸点よりも高いという温度検知結果に応じて、塗布部材を回転させて表面の定着液量、定着液組成などを均一化し、さらに塗布部材の局所的な加熱を防ぐことによって、画像形成の再開時期に関係なく、設定どおりの高画質画像を形成できる。
【0031】
本発明によれば、トナー像担持手段と塗布部材の間に、塗布部材に接触または非接触で、断熱性保護部材が設けられる。断熱性保護部材は、トナー像担持手段と塗布部材とを遮断する遮断位置と、トナー像担持手段と塗布部材とが直接対向できる開放位置との間を移動可能に支持され、断熱性保護部材の移動は保護部材移動手段によって行われる。このように構成することによって、トナー像担持手段が加熱状態にあっても、輻射熱による塗布部材表面の定着液量、有効成分濃度、成分構成比などを一定にかつ均一に保持でき、定着液の塗布むらに起因する画像むらの発生を防止できる。また、断熱性保護部材が塗布部材と非接触の場合には、断熱性保護部材の移動動作時に塗布部材の表面を損傷させることを防止できる。これによって、塗布部材上の定着液層を均一に保つことができ、定着液の塗布むらひいては画像むらの発生が防止され、長期間にわたり高品位な画像を安定して得ることができる。
【0032】
本発明によれば、塗布部材に接触するように設けられる断熱性保護部材において、少なくとも塗布部材に接触する面が、塗布部材の表面硬度よりも低い硬度を有する材料で形成することによって、断熱性保護部材を遮断位置と開放位置との間で移動させても、塗布部材表面を損傷させることがなく、遮断位置において塗布部材表面に変形痕が残ることもない。したがって、画像形成が再開されても、塗布部材表面の損傷、変形痕などによって塗布むらが生じるのを防止できる。さらに、遮断位置では塗布部材に接触してトナー像担持手段からの輻射熱を遮断するので、定着液の蒸発が防止され、定着液の不要な消費を低減化できる。
【0033】
本発明によれば、塗布部材に接触するように設けられる断熱性保護部材において、少なくとも塗布部材に接触する面が、定着液に対して60度以上の接触角を有する材料で構成することによって、定着液が断熱性保護部材の塗布部材との接触面の端部に滲出して外部に漏出するのを防止できる。また、断熱性保護部材の塗布部材との接触面に定着液が付着するのが防止されるので、断熱性保護部材が遮断位置から開放位置に移動する際に、定着液が断熱性保護部材から垂れ落ちて画像形成装置内部を汚染することがない。
【0034】
本発明によれば、断熱性保護部材として可撓性フィルムを用いることによって、断熱性保護部材を遮断位置と開放位置との間で移動させても、塗布部材表面を損傷させることがなく、遮断位置において塗布部材表面に変形痕が残ることもない。また、塗布部材への密着が可能なので、定着液の揮発を一層防止でき、定着液の不要な消費を低減化できる。また、断熱性保護部材の厚みを薄くできるので、トナー像担持手段と塗布部材との離隔距離を短縮化できる。
【0035】
本発明によれば、断熱性保護部材の少なくとも周縁部に、定着液を保持する定着液保持部を設けることによって、定着液が断熱性保護部材の塗布部材との接触面の端部に滲出して外部に漏出するのを防止できる。また、断熱性保護部材の塗布部材との接触面に定着液が付着しても、定着液保持部によって定着液が保持されるので、断熱性保護部材から定着液が垂れ落ちて画像形成装置内部を汚染することがない。
【0036】
本発明によれば、断熱性保護部材の少なくとも周縁部に設けられる定着液保持部を多孔質材料で形成することによって、多孔質材料が定着液を多量に吸収保持できるので、断熱性保護部材からの定着液の液垂れを充分に防止できる。
【0037】
本発明によれば、断熱性保護部材の少なくとも周縁部に設けられる定着液保持部を形成する多孔質材料として、内部に連続気泡を有するスポンジを用いることによって、多量の定着液を保持できるとともに、塗布部材表面にスポンジ屑などを付着させて塗布部材表面の定着液層を不均一にすることがないので、それに起因する塗布むらの発生もない。たとえば、単独気泡のスポンジを用いると定着液の吸収保持量が低い。フェルト様繊維から構成される材料を用いると、塗布部材表面に糸屑を付着させ、塗布部材表面の定着液層を不均一にし、塗布むらを発生させる。
【0038】
本発明によれば、塗布手段が、開口部を有する定着液溜と、定着液溜の内部に設けられ、少なくとも一部が開口部を介してトナー像担持手段を臨むように設けられ、回転駆動自在に支持される塗布部材と、トナー像担持手段と定着液溜との間に設けられる断熱性保護部材であって、定着液溜の開口部を閉鎖して定着液溜の内部空間を閉空間にする遮断位置と、トナー像担持手段と定着液溜とが直接対向し得る開放位置との間を移動可能に支持される断熱性保護部材と、断熱性保護部材を遮断位置と開放位置との間で移動させる保護部材移動手段とを含むように構成することによって、定着液の付与を行わない時には、定着液溜を密閉することができるので、定着液の蒸発を防止できる。これによって、定着液の不要な消費を防止すると同時に、蒸気圧の異なる構成成分を含む定着液において組成比率が変化することを防止できる。
【0039】
本発明によれば、制御手段が、断熱性保護部材によってトナー像担持手段から遮断状態にある塗布部材を回転させるように回転駆動手段を制御するように構成する。すなわち、塗布部材が回転せずに停止した状態では、塗布部材表面の定着液が重力により流動して、局所的に定着液の溜まりを形成することがある。断熱性保護部材が存在しない状態で塗布部材を回転させると、溜まった定着液が飛散、滴下するおそれがある。閉鎖状態で塗布部材を回転させることによって、画像形成再開時の塗布部材の回転によって定着液が飛散および滴下し、画像形成装置内部を汚染するのを防止できる。
【0040】
また、断熱性保護部材が設けられても、長時間放置されると、塗布部材表面の定着液の構成成分が局所的に変化する場合がある。これに対し、画像形成装置の電源投入直後、前回の画像形成終了から所定時間を経過した後に塗布部材を回転させることによって、塗布部材表面の定着液の局所的な変質を解消できる。これによって、塗布部材上の定着液層を均一に保持でき、定着液の塗布むらに起因する画像むらを防止して、長期間にわたり高品位な画像を安定して得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図1は、本発明の実施の第1形態である画像形成装置1の構成を模式式に示す断面図である。図2は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述のトナー像形成手段2)の構成を拡大して示す断面図である。図3は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述の定着液付与手段4)の構成を拡大して示す断面図である。
【0042】
画像形成装置1は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色のトナー像を順次重ね合わせて転写するタンデム構成の電子写真方式の画像形成装置である。画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、中間転写手段3と、定着液付与手段4と、転写定着手段5と、記録媒体供給手段6と、排出手段7とを含んで構成される。
【0043】
トナー像形成手段2は、作像ユニット10y,10m,10c,10bを含んで構成される。作像ユニット10y,10m,10c,10bは、後述する中間転写ベルト21の回転駆動方向(副走査方向)、すなわち矢符28の方向の上流側からこの順番に一列に配置され、各色のデジタル信号(以後単に「画像情報」と称す)に対応する静電潜像を形成し、該静電潜像を現像して各色のトナー像を形成する。詳しくは、作像ユニット10yはイエローの画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10mはマゼンタの画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10cはシアンの画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10bはブラックの画像情報に対応するトナー像を形成する。作像ユニット10yは、感光体ドラム11yと、帯電ローラ12yと、光走査ユニット13yと、現像装置14yと、ドラムクリーナ15yとを含んで構成される。
【0044】
感光体ドラム11yは、図示しない駆動手段によって、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない円筒状、円柱状またはシート状導電性基体、好ましくは円筒状導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含んで構成される。感光体ドラム11yにはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、導電性基体であるアルミニウム素管と、該アルミニウム素管の表面に形成される有機感光層とを含み、接地電位(GND)に接続される直径30mmの感光体ドラムが挙げられる。有機感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む樹脂層である電荷発生層と、電荷輸送物質を含む樹脂層である電荷輸送層とを積層して形成される。また、有機感光層は、1つの樹脂層に電荷発生物質と電荷輸送層とを含有するものでもよい。有機感光層の層厚は、たとえば、20μmである。また、感光体ドラムと有機感光層との間に下地層を設けてもよい。有機感光層の表面に保護層を設けてもよい。有機感光層以外にも、酸化亜鉛、セレン、アモルファスシリコンなどから構成される無機感光層を用いてもよい。本実施の形態では、感光体ドラム11yは、時計周りの方向に周速度200mm/sで回転駆動する。
【0045】
帯電ローラ12yは、感光体ドラム11yの表面を所定の極性および電位に帯電させるローラ状部材である。帯電ローラ12yには図示しない電源が接続され、該電源から電圧の印加を受けて放電することによって、感光体ドラム11y表面を帯電させる。本実施の形態では、帯電ローラ12yに−1200Vの電圧が印加され、感光体ドラム11y表面は−600Vに帯電する。帯電ローラ12yに代えて、ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、スコロトロンなどのコロナ帯電器などを使用できる。光走査ユニット13は、帯電ローラ12yによって帯電された感光体ドラム11yの表面に、イエローの画像情報に対応するレーザ光13yを照射し、感光体ドラム11yの表面にイエローの画像情報に対応する静電潜像を形成する。レーザ光13yの光源には、半導体レーザなどが用いられる。本実施の形態では、−600Vに帯電した感光体ドラム11y表面を露光することによって、露光電位−70Vの静電潜像が形成される。
【0046】
現像装置14yは、現像ローラ16yと、現像ブレード17yと、トナー貯留容器18yと、攪拌ローラ19y,20yとを含んで構成される。現像ローラ16yは、トナー貯留容器18yの感光体ドラム11yを臨んで形成される開口部52yから一部が外方に向けて突出し、感光体ドラム11yとの間に空隙を有して離隔しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられ、図示しない固定磁極を内包するローラ状部材であり、感光体ドラム11y表面の静電潜像にイエロートナー8yを供給する。本実施の形態では、現像ローラ16yと感光体ドラム11yとの間の空隙長さは0.5mmである。また、現像ローラ16yは、感光体ドラム11yとの最近接部(現像ニップ部)において、感光体ドラム11yの回転駆動方向と同じ方向に回転駆動する。したがって、軸線回りの回転駆動方向は、現像ローラ16yと感光体ドラム11yとでは逆方向になる。本実施の形態では、現像ローラ16yの周速度は、感光体ドラム11yの周速度の1.5倍の300mm/sである。また、現像ローラ16yには図示しない電源が接続され、感光体ドラム11y表面の静電潜像にイエロートナー8yを供給するために、該電源から現像ローラ16yに直流電圧が印加される。本実施の形態では、現像ローラ16yには現像電位として−240Vの直流電圧が印加される。現像ブレード17yは、一端がトナー貯留容器18yに支持され、他端が現像ローラ16yとの間に空隙を有して離隔するように設けられる板状部材であり、現像ローラ16y表面のイエロートナー層を均一化(層規制)する。トナー貯留容器18yは前述のように感光体ドラム11yを臨む面に開口部52yが形成され、内部空間を有する容器状部材であり、その内部空間に現像ローラ16yと攪拌ローラ19y,20yとを内蔵し、かつイエロートナー8yを貯留する。トナー貯留容器18yには、イエロートナー8yの消費状況に応じて、図示しないトナーカートリッジからイエロートナーが補給される。本実施の形態では、イエロートナー8yは磁性キャリアと混合された2成分現像剤の形態で用いられるけれども、それに限定されず、イエロートナー8yのみを含む1成分現像剤の形態で用いることもできる。攪拌ローラ19y,20yは、トナー貯留容器18yの内部空間において互いに空隙を有して離隔しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。攪拌ローラ19yは、現像ローラ16yを臨み、現像ローラ16yとの間に空隙を有して離隔するように設けられる。攪拌ローラ19y,20yは、その回転駆動によって、図示しないトナーカートリッジからトナー貯留容器18y内に補給されるイエロートナー8yと、予めトナー貯留容器18y内に充填されている磁性キャリアとを混合して現像ローラ16yの周辺に送給する。本実施の形態では、感光体ドラム11y、現像ローラ16y、現像ブレード17yおよび攪拌ローラ19y,20yがそれぞれ離隔するように設けられるけれども、それに限定されず、感光体ドラム11yと現像ローラ16y、現像ローラ16yと現像ブレード17y、現像ローラ16yと攪拌ローラ19yおよび攪拌ローラ19yと攪拌ローラ20yとがそれぞれ圧接するように設けられる1成分現像方式の構成を採用することもできる。現像装置17yによれば、トナー貯留容器18y内のイエロートナー8yが攪拌ローラ19y,20yによって現像ローラ16yの周辺に送給され、現像ローラ16yの表面に付着してトナー層が形成され、このトナー層は現像ブレード17yによって層厚を均一化された後、この均一化されたトナー層を構成するトナーが電位差などを利用して感光体ドラム11y表面の静電潜像にほぼ選択的に供給され、イエローの画像情報に基づくトナー像が形成される。ドラムクリーナ15yは、後述のように、感光体ドラム11y表面のイエロートナー像を中間転写ベルト21に転写した後に、感光体ドラム11y表面に残留するイエロートナーを除去、回収する。
【0047】
作像ユニット10yによれば、帯電ローラ12yの放電によって帯電状態にある感光体ドラム11y表面に、光走査ユニット13からイエローの画像情報に対応する信号光13yを照射して静電潜像を形成し、該静電潜像には現像装置14yから電位差によってイエロートナー8yが供給されて該静電潜像が現像され、イエロートナー像が形成される。このイエロートナー像は、後述のように、感光体ドラム11y表面に圧接して矢符28の方向に回転駆動する中間転写ベルト21に転写される。感光体ドラム11y表面に残留するイエロートナー8yはドラムクリーナ15yによって除去され、回収される。作像ユニット10m,10c,10bは、マゼンタトナー8m、シアントナー8cまたはブラックトナー8bを使用する以外は、作像ユニット10yに類似の構造を有するので、同一の参照符号を付し、さらに各参照符号の末尾にマゼンタを示す「m」、シアンを示す「c」およびブラックを示す「b」を付し、説明を省略する。
【0048】
トナー8y,8m,8c,8b(以後特に断らない限り「トナー8」と総称することがある)は、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有する。結着樹脂としては、後述する定着液9によって軟化または膨潤する樹脂であれば特に制限されず、たとえば、ポリスチレン、スチレンの置換体の単独重合体、スチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。これらの結着樹脂の中でも、カラートナー用としては、保存性、耐久性、定着液9による軟化または膨潤制御などの観点から、軟化点100〜150℃、ガラス転移点50〜90℃の結着樹脂が好ましく、前記の軟化点およびガラス転移点を有するポリエステルが特に好ましい。ポリエステルは入手容易な有機溶剤によって軟化または膨潤し易く、軟化または膨潤状態で透明になる。したがって、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー像が重ね合わされた多色トナー像を定着液9によって定着すると、結着樹脂であるポリエステル自体は透明化するので、減法混色によって充分な発色が得られる。また、熱定着用トナーに含まれる結着樹脂よりも軟化点および硬度の高い樹脂を用いても、定着液9による定着が可能である。軟化点および硬度の高い樹脂を用いれば、現像の際の負荷による劣化が防止され、長期にわたって高画質画像が得られる。また軟化点および硬度の高い樹脂は熱定着では充分に定着および発色しないけれども、定着液9の付与によって化学的にトナーを膨潤・軟化させる場合には、高画質画像が得られる。本実施の形態では、ガラス転移点90℃、軟化点120℃のポリエステルを用いる。着色剤としては、従来から電子写真方式の画像形成に用いられるトナー用顔料および染料を使用できる。その中でも、定着液9の付与による滲みの発生を防止するために、定着液9に溶解しない顔料が好ましい。顔料としては、たとえば、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料などの有機系顔料、カーボンブラック、酸化チタン、モリブデンレッド、クロムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ベルリンブルーなどの無機系顔料、アルミニウム粉などの金属粉などが挙げられる。顔料は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。離型剤としては、たとえば、ワックスを使用できる。ワックスとしてはこの分野で常用されるものを使用でき、その中でも、定着液9によって軟化または膨潤するものが好ましい。その具体例としては、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。本実施の形態では、軟化点が70℃で、トナー8の結着樹脂よりも軟化点が低い低分子ポリエチレンワックスを用いる。結着樹脂よりも軟化点が低いワックスは加熱によって容易に軟化する。このため、結着樹脂ひいてはトナーの軟化点よりも低い温度下でも、トナー同士およびトナーのトナー担持体、記録媒体Pへの付着力が増加する。したがって、定着液9の付与時に、トナー流れ、トナーの凝集などが発生するのを防止できる。さらに、ワックスが軟化することによって、ワックスの存在箇所からトナー粒子内部に定着液9が浸透し易くなる。このため、定着液9の付与時にトナー全体が短時間で膨潤軟化するので、記録媒体Pへの転写定着時に充分な定着強度が得られると同時に、トナー像の重ね合わせによって良好な発色が得られる。トナー8は、結着樹脂、着色剤および離型剤のほかに、帯電制御剤、流動性向上剤、定着促進剤、導電材などの一般的なトナー添加剤の1種または2種以上を含有することができる。
【0049】
トナー8は、着色剤、離型剤などを結着樹脂に分散して粉砕する粉砕法、着色剤、離型剤、結着樹脂のモノマーなどを均一に混合した後、結着樹脂のモノマーを重合させる重合法などの公知の方法に従って製造できる。トナー8の体積平均粒径は特に制限はないけれども、好ましくは2〜7μmである。このような小粒径トナーを用いると、トナー像の単位面積当りのトナー表面積が大きくなり、定着液9との接触面積が増加するので、トナー8を短時間で記録媒体Pに定着させ得る。また、定着液9を速やかに乾燥させ得るので、記録媒体Pにしわ、カールなどを発生させることがない。また、トナー8の粒径が小さいほど、重量は同じ場合でも記録媒体Pに対する被覆率が向上するので、付着量を減らして高画質画像を形成できる。すなわち、トナー消費量の低減化と高画質化とを両立できる。本実施の形態では、トナー8としては、着色剤含有量がトナー全量の12重量%、ワックス含有量がトナー全量の7%重量%および残部が結着樹脂であり、体積平均粒径6μmおよび定着液9に対する接触角47度の負帯電性の絶縁性非磁性トナーを用いる。このトナーを用いて所定の画像濃度(X−Rite社製310による反射濃度測定値が1.4)を得るには、単位面積当たり5g/mのトナー量が必要である。
【0050】
中間転写手段3は、中間転写ベルト21と、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bと、支持ローラ23,24,25と、ベルトクリーナ27、温度検知手段29とを含んで構成される。中間転写ベルト21は、支持ローラ23,24,25によって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状のトナー像担持手段であり、感光体ドラム11y,11m,11c,11bとほぼ同じ周速度で矢符28の方向に回転する。中間転写ベルト21としては、定着液9がその内部に浸透しない構成であれば特に制限されないけれども、たとえば、フィルム状基材と、フィルム状基材の表面に形成される弾性樹脂層と、弾性樹脂層の表面に形成されるフッ素樹脂含有被覆層とを含む積層体が挙げられる。被覆層表面がトナー像担持面21aになる。フィルム状基材には、たとえば、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂材料、フッ素ゴムなどのゴム材料をフィルム状に成形したものを使用できる。フッ素樹脂被覆層は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)、これらの混合物などのフッ素樹脂を含んで構成される。フィルム状基材、弾性樹脂層およびフッ素樹脂含有被覆層の1または2以上には、中間転写ベルト21としての電気抵抗値を調整するために、導電材が配合されてもよい。導電材としては、たとえば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、グラファイトカーボンなどが挙げられる。中間転写ベルト21はベルト形態に限定されず、たとえば、ドラム形態に形成することもできる。本実施の形態では、厚さ100μmのポリイミドフィルム表面に、厚さ300μmのシリコーンゴム層と、PTFEおよびPFAを8:2(重量比)の割合で含むフッ素樹脂組成物からなり、定着液9に対する接触角が70度である厚さ20μmのフッ素樹脂含有被覆層と順次を形成した積層体を、ベルト状の中間転写ベルト21として使用する。このように、定着液9を浸透しない材料を用いて中間転写ベルト21を構成すれば、付与される定着液9の大部分をトナー8の表面に付着させ得る。これによって、定着液9の記録媒体Pへの浸透によるしわ、カールなどの発生を防止できるとともに、定着液9の消費量の低減化を図り得る。中間転写ベルト21のトナー像担持面21aは、その回転方向(矢符28の方向)上流側から、感光体ドラム11y,11m,11c,11bにこの順番で圧接する。中間転写ベルト21の感光体ドラム11y,11m,11c,11bに圧接する位置が、各色トナー像の中間転写ベルト21への転写位置(中間転写ニップ部)である。
【0051】
中間転写ローラ22y,22m,22c,22bは、それぞれ、中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11y,11m,11c,11bに対向してトナー像担持面21aの反対面に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。中間転写ローラ22y,22m,22c,22bには、たとえば、金属製軸体と、該金属製軸体の表面に被覆される導電性層とを含むローラ状部材が用いられる。軸体は、たとえば、ステンレス鋼などの金属から形成される。軸体の直径は特に制限されないけれども、好ましくは8〜10mmである。導電性層は中間転写ベルト21に高電圧を均一に印加するためのものであり、たとえば、導電性弾性体から形成される。導電性弾性体としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、発泡EPDM、発泡ウレタンなどのマトリックス中にカーボンブラックなどの導電材を分散させた導電性弾性体が挙げられる。中間転写ローラ22y,22m,22c,22bには、感光体ドラム11y,11m,11c,11bの表面に形成されるトナー像を中間転写ベルト21上に転写するために、トナーの帯電極性とは逆極性の中間転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム11y,11m,11c,11bに形成されるイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト21のトナー像担持面21aにおける中間転写ニップ部に順次重ね合わさって転写され、多色トナー像が形成される。ただし、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの一部のみの画像情報が入力される場合は、作像ユニット10y,10m,10c,10bのうち、入力される画像情報の色に対応する作像ユニットのみにおいてトナー像が形成される。
【0052】
支持ローラ23,24,25は、図示しない駆動手段によって軸心回りに回転駆動可能に設けられ、中間転写ベルト21を張架して矢符28の方向に回転駆動させる。支持ローラ23,24,25には、たとえば、直径30mmおよび肉厚1mmのアルミニウム製パイプ状ローラが用いられる。支持ローラ23は、その内部に加熱手段26が設けられ、加熱ローラとしても機能する。加熱手段26は、支持ローラ23よりも中間転写ベルト21の回転駆動方向下流側に配置される温度検知手段29による中間転写ベルト21の温度検知結果に応じて、画像形成装置1の全動作を制御する制御手段であるCPUによって制御される。制御の詳細については後述する。加熱手段26によって、トナー像を、該像を構成するトナー8に含まれる結着樹脂のガラス転移点以上に加熱するのが好ましい。これによって、結着樹脂が軟化し、トナー8同士およびトナー8と中間転写ベルト21との付着力が増加するので、塗布ローラ30によって定着液9を付与する際に、トナー8が塗布ローラ30にオフセットすること、トナー像が乱れることなどを防止できる。したがって、塗布ローラ30による定着液9のトナー像への接触付与を容易に実行できる。本実施の形態では、ガラス転移点が90℃である結着樹脂を含むトナー8を用い、中間転写ベルト21の温度がトナー8に含まれる結着樹脂のガラス転移点よりも高い100℃に保持されるように制御される。このように制御すれば、中間転写ベルト21上のトナー像は支持ローラ23の表面を通過する際に、中間転写ベルト21とほぼ同じ温度に加熱される。また、後述の塗布ローラ30によって定着液9が接触付与される場合に、定着液9の付与による中間転写ベルト21およびトナー像の温度低下を補う熱量がその場で補充され、トナー像を構成するトナーの膨潤・軟化が一層円滑に進行する。また、加熱手段26は中間転写ベルト21の回転駆動時のみに動作するように制御される。加熱手段26は、定着液9によるトナー像の定着を補助し、定着液9の消費量のさらなる低減化を目的として設けられるので、トナー像を熱定着するほどの発熱量を必要としない。したがって、加熱手段26を設けても、画像形成装置1の電力消費量は一般的な熱定着方式の画像形成装置の電力消費量よりも大幅に少ない。加熱手段26には、たとえば、ハロゲンランプなどが用いられる。支持ローラ24は電気的に接地され、後述の転写定着手段において転写定着のためのバックアップローラとしての機能をも有する。支持ローラ25は、中間転写ベルト21に張力を付与するテンションローラとして機能する。
【0053】
ベルトクリーナ27は、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上のトナー像を後述の転写定着手段5において記録媒体Pに転写した後、トナー像担持面21aに残存するトナーを除去する部材である。ベルトクリーナ27は、クリーニングブレード27aと、トナー容器27bとを含んで構成される。クリーニングブレード27aは、中間転写ベルト21を介して支持ローラ25に対向しかつ図示しない加圧手段によってトナー像担持面21aに圧接するように設けられ、トナー像担持面21a上の残存トナー、紙粉などを掻き取る板状部材である。クリーニングブレード27aには、たとえば、ウレタンゴムなどのゴム材料からなるブレードを使用できる。トナー容器27bは、クリーニングブレード27aによって掻き取られた残存トナー、オフセットトナー、紙粉などを貯留する。
【0054】
温度検知手段29は、中間転写ベルト21の温度を検知する。温度検知手段29による検知結果は、画像形成装置1の全動作を制御する図示しないCPUに送られる。CPUは記憶部と演算部と制御部とを有し、温度検知手段29による検知結果は記憶部に入力される。記憶部には、トナー8に含まれる結着樹脂および離型剤の軟化点などの物性データに基づく中間転写ベルト21の制御温度が予め入力されている。CPUは演算部において、温度検知手段29による検知結果と中間転写ベルト21の制御温度とを比較する。CPUは、検知結果が制御温度よりも低いという演算結果に応じて制御部から加熱手段26に制御信号を送り、中間転写ベルト21の温度を上昇させる制御を行う。検知結果が制御温度よりも高いという検知結果に応じて、制御部から加熱手段26に制御信号を送り、加熱手段26による加熱を停止する制御を行う。本実施の形態では、温度検知手段29には温度センサが用いられる。中間転写手段3によれば、感光体ドラム11y,11m,11c,11b上に形成される各色トナー像が、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aの中間転写ニップ部に重ね合わされて転写され、トナー像が形成される。このトナー像が定着液付与手段4によって定着液9の付与を受け、次いで転写定着手段5によって記録媒体Pへ転写された後、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上に残留するトナーなどがベルトクリーナ27によって除去され、トナー像担持面21aには引き続きトナー像が転写される。
【0055】
定着液付与手段4は、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上に担持されるトナー像に、該トナー像を軟化および/または膨潤させる定着液9を接触下で付与するものである。定着液9を接触付与するという構成を採ることによって、非画像部に付着するかぶりトナーにも定着液9を付与でき、かぶりトナーをも定着できる。したがって、かぶりトナーが手、衣服などに付着するのを防止できる。かぶりトナーは微量なので、記録媒体Pに定着させても画像には実質的な影響は及ぼさない。定着液付与手段4は、支持ローラ23よりも中間転写ベルト21の回転駆動方向下流側において、中間転写ベルト21の鉛直方向下方にトナー像担持面21aを臨むように設けられて、塗布ローラ30と、定着液溜35と、開閉扉38と、ガイド溝39,40と、押圧ばね41と、偏心カム42と、離接検知手段43と、中間ギア46と、駆動ギア47とを含んで構成される。
【0056】
塗布ローラ30は、定着液溜35の中間転写ベルト21を臨む面に形成される開口部35cからその一部が外方に向けて突出し、中間転写ベルト21に対して離接可能に設けられるローラ状部材であり、芯金31と、芯金31の表面に形成される浸透制御層32と、浸透制御層32の表面に形成される多孔質層33とを含んで構成される。芯金31の長手方向両端には図示しないフランジが設けられ、フランジと一体の回転軸が定着液溜35内に設けられる図示しない軸受けにて支持されることによって、塗布ローラ30は定着液溜35によって回転可能に支持される。芯金31には、この分野で常用される芯金が使用できる。本実施の形態では、外径30mm、肉厚0.5mmのアルミニウム製芯金を使用する。また芯金31には、定着液9を通過させる貫通孔である通過孔31aが複数個形成される。本実施の形態では、径0.1mmの通過孔31aが、芯金31の円周方向に等角度で16箇所、軸方向には半位相ずらして5mm間隔形成される。芯金31の内部には定着液9が保持および貯蔵される。したがって、芯金31は塗布ローラ30の剛性を高めるとともに、定着液貯蔵層としても機能する。芯金31の内部に貯蔵される定着液9は、揮発性を有する。本発明では、20℃における蒸気圧を揮発性の目安とする。すなわち、定着液9は、20℃における蒸気圧が好ましくは0.005MPa以上であり、さらに好ましくは0.005〜0.28MPaである。このように構成することによって、定着液9が短時間で揮発するので、定着後のトナー像の乾燥が速い。たとえば、毎分40枚のスループットで画像形成した記録媒体を連続出力しても、相前後して出力される記録媒体において、後に出力される記録媒体に前に出力される記録媒体からトナー像および定着液9が付着することはない。なお、0.028MPaを超えると、定着液9の乾燥が速くなり過ぎて、定着液9のトナー像に対する付与を安定的に実施することが困難になる。また、付与動作中も塗布ローラ30表面から揮発するので、定着液9の消費量を増大させる。前記のような範囲の蒸気圧を有する定着液9を用いることによって、画像形成装置1における単位時間当たりの出力枚数を増加させ得る。また、定着液9の消費量ひいては定着液9の画像形成装置1への供給頻度を低減化できる。また、画像形成装置1内に定着液9の貯蔵タンクを設ける場合は、貯蔵タンクを小型化できる。また、定着液9は水溶液であり、粘度が低いので、トナー8同士の間、トナー8と中間転写ベルト21との接触面に容易に浸透する。このため、トナー8が膨潤軟化させる成分がトナー8同士の界面およびトナー8と中間転写ベルト21との接触面に運ばれ、瞬時にトナー8を膨潤・軟化させ得る。また、中間転写ベルト21が加熱手段26によって加熱されているので、中間転写ベルト21上のトナー像に付与された定着液9は、トナー像を構成するトナー8を膨潤・軟化させた後、短時間で乾燥する。
【0057】
定着液9としては、トナー8に含まれる結着樹脂、離型剤などを膨潤・軟化させ得る液状成分をいずれも使用でき、その中でも1または2種以上の有機溶剤と水とを含むものが好ましい。ここで有機溶剤としては、結着樹脂、離型剤などを膨潤・軟化させることができかつ水に溶解または分散可能なものを使用でき、たとえば、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、フェノール、ベンジルアルコール、メチルベンジルアルコールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトンなど)、エーテル類(メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテルン、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、オクチルフェニルエーテルなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、オレイン酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、コハク酸ジブチル、フタル酸ジエチル、酒石酸ジエチル、パルミチン酸エチル、ジオクチルフタレートなど)が挙げられる。これらの中でも、エーテル類およびエステル類が好ましく、エステル類が最も好ましい。これらの有機溶剤はポリエステルを初めとするトナー8の結着樹脂を膨潤軟化させる作用に優れる。有機溶剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。定着液9中の水の含有量は、好ましくは定着液9全量の20〜95重量%、さらに好ましくは30〜90重量%である。また定着液9中の有機溶剤の含有量は、好ましくは定着液9全量の5〜80重量%以上、さらに好ましくは10〜70重量%である。これらの含有比率はトナー8の結着樹脂を膨潤、軟化させるに好適である。水の含有量が95重量%を超えると、トナー8の膨潤、軟化作用が低下し、充分な定着強度が得られない。水の含有量が20重量%未満では、定着液9のトナー像に対する浸透性が低下し、記録媒体P上にトナー量の多い未定着トナー像が転写されている場合に、トナー像表面のトナーのみが膨潤軟化し、記録媒体Pとの接触面のトナーが膨潤・軟化しないので、トナー像を充分な定着強度で記録媒体Pに定着させることができない。定着液9は、水および有機溶剤のほかに、界面活性剤を含有できる。界面活性剤は、たとえば、有機溶剤の定着液9中での分散性を保持し、トナー8と定着液9との濡れ性を向上させる。界面活性剤としては、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩などの高級アルコール硫酸エステル塩、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸金属塩、脂肪酸誘導体硫酸エステル塩、リン酸エステルなどの陰イオン(アニオン)界面活性剤、四級アンモニウム塩、複素環アミンなどの陽イオン(カチオン)界面活性剤、アミノ酸エステル、アミノ酸などの両性イオン(ノニオン)界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。界面活性剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。また、定着液9は分散助剤を含有できる。分散助剤としては、たとえば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、モノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのカップリング剤が挙げられる。
【0058】
芯金31の表面に形成される浸透制御層32は、芯金31の通過孔31aを通して供給される定着液9が浸透制御層32の外側に形成される多孔質層33に過剰に供給されるのを防止するために、定着液9の浸透および保持が可能でかつ弾性変形が可能な材料によって形成される。浸透制御層32は定着液9の保持貯蔵する芯金31に接するので、充分な定着液9の供給を受けることができる。浸透制御層32は、その中に存在する微細な空孔中に定着液9を保持し、この空孔は塗布ローラ30の接触相手の表面状態に応じて多孔質層33とともに弾性変形する。接触相手の表面状態が比較的平滑である場合には弾性変形の度合が少なく、弾性変形によって空孔中から押出される定着液9の量は少なく、巨視的な面積当りの定着液9の付与量が小さくなる。一方、凹凸の大きい多色トナー像に接触すると空孔の弾性変形の度合が大きくなり、多量の定着液9が押出されるので、巨視的な面積当りの定着液9の付与量が大きくなる。このようにして、浸透制御層32によって定着液9の付与量が制御される。浸透制御層32には、たとえば、フェルト、ゴムの連続気泡体(スポンジ)などが用いられる。本実施の形態では、厚さ5mmのフェルトが用いられる。また本実施の形態では、浸透制御層32の弾性体としての指標になるヤング率は3MPaであり、トナー8に比べて1/100以下である。また、浸透制御層32を構成するスポンジなどの連続発泡ゴム、フェルトなどは、定着液9を保持する機能を有するので、多孔質層33の層厚を小さくして多孔質層33の定着液9保持量が少なくても、中間転写ベルト21上のトナー像に充分量の定着液9を付与できる。したがって、高価な多孔質膜からなる多孔質層33を薄くし、内部の浸透制御層32を安価な連続発泡ゴム、フェルトなどで構成することによって、塗布ローラ30の製造コストを低下させ得る。
【0059】
多孔質層33は、浸透制御層32から供給される定着液9を中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上のトナー像に接触付与する。多孔質層33は定着液9を保持できる微細な空孔を多数含み、その表面近傍に存在する定着液9の量が多い時は定着液9を吸収し、定着液9の量が少ない時は定着液9を放出する特性を持つ。したがって、塗布ローラ32と中間転写ベルト21とのニップ部入り口で定着液9がメニスカスを形成して滞留するのを防止できる。その結果、定着液9の流動によるトナー像の乱れが発生せず、高品位で高精細な画像が得られる。多孔質層33の材料としては、弾性変形および多孔質化が可能な材料であれば特に制限されず使用でき、たとえば、PTFE、ポリウレタン、ポリイミドなどが挙げられる。多孔質層33の材料、空孔径、空孔率などは、定着液9の組成に応じて適宜選択できる。本実施の形態では、PTFEからなる厚さ50μmの多孔質層33が設けられ、該多孔質層33における空孔径は0.5μm、空孔率は80%である。また、本実施の形態では、多孔質層33の定着液9に対する接触角は65°である。多孔質層33の空孔径は特に制限はないけれども、好ましくは0.1〜2μmである。0.1μm未満では、定着液9の透過量が不充分になり、トナー像におけるトナー量が多い部分で定着強度が不足する。2μmを超えると、トナー粒子8が空孔に嵌り込んで強固に付着し、多孔質層33を目詰まりさせる。また、多孔質層33の空孔率も特に制限はないけれども、好ましくは60〜90%である。60%未満では、定着液9の保持量と透過量とが不足し、トナー像におけるトナー量が多い部分で定着強度が不足する。90%を超える、多孔質層33を復元可能な弾性変形層として形成することが困難になる。また、多孔質層33の層厚も特に制限はないけれども、好ましくは10〜200μmである。10μm未満では、多孔質層として形成することが困難であり、200μmを超えると、定着液9の透過量が不足し、トナー像におけるトナー量が多い部分で定着強度が不足する。多孔質層33は、定着液9に対する接触角が中間転写ベルト21のトナー像担持面21aの定着液9に対する接触角より小さくなるように構成するのが好ましい。これによって、多孔質層33と中間転写ベルト21とが接触するときに、定着液9が中間転写ベルト21よりも多孔質層33に優先的に付着する。このため、中間転写ベルト21上のトナーが付着しない非画像部に多孔質層33から付与される定着液9の量を低減化し得る。これによって、定着液9の消費量を低減化でき、定着液9の補充回数を減らすことができる。多孔質層33と中間転写ベルト21との接触角の差は好ましくは5度以上である。多孔質層33は、定着液9に対する接触角がトナー8の定着液9に対する接触角よりも大きくなるように構成するのが好ましい。これによって、多孔質層33とトナー像とが接触するときに、定着液9が多孔質層33よりもトナー像に付着しやすい。このため、画像部であるトナー像に多孔質層33から定着液9を充分に付与できる。その結果、面積当たりのトナー量が多い部分のトナー像も充分な定着強度で定着できる。多孔質層33と定着液9との接触角の差は好ましくは10度以上である。
【0060】
塗布ローラ30の長手方向の一端部には、塗布ローラギア34が設けられる。塗布ローラギア34は、後述する中間ギア46および駆動ギア47とともに、塗布部材である塗布ローラ30の回転駆動手段を構成する。塗布ローラギア34は、中間ギア46に噛合して回転可能に設けられる。
【0061】
塗布ローラギア34の回転によって、塗布ローラ30が回転駆動する。前述のような構成を有する塗布ローラ30は、中間転写ベルト21に対して一定の押圧力で軽く圧接するように構成するのが好ましい。これによって、大面積でトナー量の多いベタ画像が中間転写ベルト21と塗布ローラ30との圧接部(定着液ニップ部)に入っても、塗布ローラ30と中間転写ベルト21との間隔が大きくなり、塗布ローラ30表面の定着液9の層が定着液ニップ部を通過できる。その結果、塗布ローラ30は定着液9の薄層を介して中間転写ベルト21に圧接し、定着液9をトナー像に充分に付与できる。また、定着液ニップ部の入り口で定着液9が大きなメニスカスを形成して滞留することがない。したがって、定着液9とトナー像とが接触した状態で定着液9の大きな流動が発生せず、トナー像を乱すことがなく、高品位で高精細な画像が得られる。塗布ローラ30をローラ状部材の形態に構成することによって、塗布ローラ30の内部に閉空間を形成でき、定着液9の保持が容易になる。また、塗布ローラ30はカートリッジ形式に構成することができる。これによって、塗布ローラ30の内部に定着液9が全て消費されても、塗布ローラ30を交換することで、定着液9を補充できる。このため、定着液9を液体として取り扱う必要がなく、定着液9が飛散して画像形成装置1の内部を汚染することがない。
【0062】
塗布ローラ30の中間転写ベルト21に対する押圧力は、前述のような作用が発揮される押圧力であれば特に制限はないけれども、好ましくは線圧で0.05〜1.0N/cmである。0.05N/cm未満では、塗布ローラ30と中間転写ベルト21との接触状態が不安定になり、中間転写ベルト21上のトナー像に定着液9を均一に付与できない。また、塗布ローラ30が中間転写ベルト21の微妙な凹凸、トナー像の凹凸に倣って弾性変形できなくなり、トナー像の凹所に定着液9を充分に付与できない。このため、定着液9の塗布むらひいては定着むらが発生し、定着ムラに伴う光沢むら、色むらなどが生じる。1.0N/cmを超えると、塗布ローラ30と中間転写ベルト21とが圧接して回転する状態で、塗布ローラ30表面の定着液9が定着液ニップ部を通過できなくなる。このため、定着液ニップ部入り口で定着液9がスクイーズしてメニスカスを形成し、余剰の定着液9が塗布ローラ9の回転方向上流側へ逆流する。その結果、定着液ニップ部の入り口で定着液9が激しく流動し、それによってトナー像が乱される。本実施の形態では、塗布ローラ30の中間転写ベルト21に対する押圧力は、0.1N/cmであり、塗布ローラ30は中間転写ベルト21の回転に従動して回転する。
【0063】
また、塗布ローラ30表面が弾性材料で構成されるので、トナー像の凹凸に倣って、塗布ローラ30表面が弾性変形する。このため、トナー像が存在する部分では、定着液9の薄層を介して塗布ローラ30がトナー像に圧接する。これによって、トナー量が部分的に異なっても、トナー像の高い部分にも低い部分にも定着液9を均一に付与できる。トナー量が部分的に大きく変化する多色トナー像でも均一に定着でき、高品位画像が得られる。塗布ローラ30の弾性率はトナー8の弾性率よりも小さい方が好ましく、トナー8の弾性率の1/10以下がさらに好ましく、1/100以下が特に好ましい。なお、2色以上のトナー像を重ね合わせた多色トナー像では、トナー量の多い箇所と少ない箇所が微細に入り交じって分布すると共に、トナー像全体としてのトナー量が多くなる。たとえば、単色のトナー像の低濃度部分と、3色のトナー像を重ね合わせた多色トナー像における高濃度部分とでは、トナー層の厚み(高さ)が3倍以上になることがある。このため、トナー量に応じた量の定着液9を付与するには、弾性を有する塗布ローラ30を一定の押圧力で接触させることが特に重要である。
【0064】
図4は、塗布ローラ30による中間転写ベルト21上のトナー像への定着液9の付与を模式的に示す図面である。塗布ローラ30が中間転写ベルト21上に担持されるトナー像(画像部)に接触すると、塗布ローラ30の浸透制御層32および多孔質層33が弾性変形を起こして凹む。トナー8の集合体であるトナー像には多くの隙間が存在し、巨視的な面積当たりの表面積が大きいので、多孔質膜32から多量の定着液9が浸み出し、トナー粒子8の周囲の隙間を満たし、トナー粒子8を膨潤・軟化させる。一方、中間転写ベルト21におけるトナー像が担持されない平滑な部分(非画像部)では、浸透制御層32および多孔質層33の弾性変形も起こらず、巨視的な面積当たりの表面積も小さく、多孔質層33からの定着液9の浸み出し量も少ないので、画像部のみに選択的に定着液9が付与され、中間転写ベルト21の定着液9による汚染などが防止され、定着液9の使用量の低減化を図り得る。また、トナー像におけるトナーが積層されて面積当たりのトナー量が多い部分は、面積当たりの表面積も大きくなるので、定着液9の付与量が多くなる。これによって、面積当たりのトナー量に応じて、定着液9の付与量を制御でき、画像部と非画像部で面積当たりの付与量を変化させる定着液9の塗り分けが可能になる。弾性変形可能な多孔質層33が定着液9を保持し、トナー像の凹凸に倣って、塗布ローラ30の表面が変形する。このため、トナー量が部分的に異なっても、トナー像の高さの低い部分にも定着液9を付与できる。これによって、多色トナー像のようにトナー付着量が部分的に大きく変化するトナー像でも均一に定着でき、高品位画像が得られる。また、浸透制御層32および多孔質層33が弾性変形することによって、空孔中の定着液9が押し出される。平滑な中間転写ベルト21上にトナーが部分的に付着する場合、トナーに接触する部分の多孔質層33は局所的に変形する。これによって、トナーが付着する部分すなわちトナー像が存在する部分に多量の定着液9付与できる。また、定着液9を介して塗布ローラ30とトナー像とが接触するので、トナー像が塗布ローラ30に直接接触しにくい。これによって、トナーの塗布ローラ30へ付着するのが防止できる。
【0065】
定着液溜35は中間転写ベルト21を臨む側面35bに開口部35cが形成され、塗布ローラ30をその内部に回転可能に支持しながら収容する容器状部材である。また、定着液溜35の長手方向の両端部において、鉛直方向上部における側面35bの近傍には、ピボット36,37が設けられる。ピボット36,37は、開閉扉38の定着液溜35に対向する側面に設けられるU字形のガイド溝39,40に摺動可能に挿入される。ピボット36,37がガイド溝39,40を摺動することによって定着液溜35が矢符49の方向に移動し、塗布ローラ30が中間転写ベルト21に接触し得る動作位置に着脱される。ピボット36,37がガイド溝39,40の先端に位置するときに、塗布ローラ30が中間転写ベルト21に接触し得る位置にある。定着液溜35は、着脱自在なカートリッジ方式に形成され、塗布ローラ30内部の定着液がなくなったことを図示しないセンサが検知し、その検知結果がCPUに入力され、CPUがその検知結果に応じて図示しない操作パネル上に定着液溜35の交換時期が来たことを表示する。それに基づいて、定着液溜35を交換する。このように構成することによって、定着液9が画像形成装置1の内部に飛散または漏出する可能性が極めて少なくなり、定着液9による内部の汚染が防止される。
【0066】
開閉扉38は、画像形成装置1の側面1aに、矢符51の方向に開閉自在に設けられる。これにより、定着液溜35の交換が容易である。また、その定着液溜35を臨む側面には前述のガイド溝39,40が設けられ、押圧ばね41の一端が支持される。押圧ばね41の他端は定着液溜35の開閉扉38を臨む側面に支持される。開閉扉34を閉じると、押圧ばね41が定着液溜35の下方を押圧する。このとき、定着液溜35がピボット36,37を中心に回転可能に支持されることになる。これによって、定着液溜35内の塗布ローラ30が中間転写ベルト21に所定の押圧力で圧接される。圧接の押圧力は、押圧ばね41の種類の変更などによって調整できる。押圧ばね41には、たとえば、コイルばね、板ばね、ねじりばねなどを使用できる。この構成によって、塗布ローラ30が中間転写ベルト21に対して所定の軽い押圧力で圧接される。
【0067】
偏心カム42は塗布ローラ30の中間転写ベルト21に対する離接手段として機能し、図示しない駆動手段によって、回転軸42xを中心にして矢符42aの方向(水平方向)に回転駆動可能に支持され、定着液溜35の中間転写ベルト21に臨む側面35bの鉛直方向下部に当接するように設けられる。偏心カム42は、その回転駆動によって、定着液溜35の鉛直方向下部を矢符48の方向に移動させ、塗布ローラ30の中間転写ベルト21に対する離接を行う。図3には、偏心カム42の短径部と定着液溜35の側面35bとが空隙を有して対向し、塗布ローラ30が中間転写ベルト21に圧接する状態が示される。この状態から、偏心カム42が矢符42aの方向に半回転して偏心カム42の長径部と側面35bが対向すると、偏心カム42は定着液溜35を開閉扉38に向けて押圧する。定着液溜35は偏心カム42による押圧を受け、ピボット36,37を中心にして回転し、塗布ローラ30は中間転写ベルト21から離反する。偏心カム42の回転駆動を制御するためには、まず、塗布ローラ30が現状において中間転写ベルト21に接触するかまたは離隔するかを検知することが必要である。離接検知手段43は、中間転写ベルト21に対して塗布ローラ30が接触するかまたは離隔するかを検知するものであり、導通部材44と導通センサ45とを含んで構成される。導通部材44は、偏心カム42の短辺部が側面35aと対向する時に、偏心カム42の長辺部と接触するように設けられる導電性板状部材である。導通センサ45は、偏心カム42の回転軸42xおよび導通部材44に電気的に接続され、偏心カム42と導通部材44との間に流れる電流の有無を検知する。すなわち、偏心カム42の短径部が側面35aに対向し、偏心カム42と定着液溜35とが離隔しかつ塗布ローラ30が中間転写ベルト21に接触する時は、偏心カム42の長径部と導通部材44とが接触することによって、導通センサ45は電流値を検知する。さらに、検知する電流値によって偏心カム42の回転位置が特定される。一方、偏心カム42の長径部が側面35aに接触し、偏心カム42の短径部と導通部材44とが対向して離隔しかつ塗布ローラ30が中間転写ベルト21に対して離隔する時は、導通センサ45は電流値を検知しない。導通センサ45による検知結果は、画像形成装置1の全動作を制御する図示しないCPUに入力され、CPUは導通センサ45による検知結果によって、中間転写ベルト21に対して塗布ローラ30が接触状態または離隔状態のいずれにあるかを認識する。CPUは、中間転写ベルト21に対して塗布ローラ30が接触状態または離隔状態のいずれにあるかを認識した上で、温度検知手段29、図示しないトナー像検知手段などによる検知結果に応じて、偏心カム42の回転駆動を制御する。温度検知手段29は、後述のように、中間転写ベルト21の温度を検知する。また、トナー像検知手段は、定着液ニップ部よりも中間転写ベルト21の回転駆動方向上流側のトナー像担持面21a近傍に設けられ、トナー像担持面21a上にトナー像が存在するか否かを検知する。トナー像検知手段には光センサなどが用いられる。CPUは記憶部と演算部(判定部)と制御部とを含む。記憶部は、温度検知手段29、図示しないトナー像検知手段などによる検知結果、定着液9の主溶媒の沸点、トナー8の軟化点、ガラス転移点などの物性データが入力される。演算部は、記憶部に入力される検知結果と記憶部に予め入力される物性データとを比較する。制御部は、演算部における演算結果に応じて、偏心カム42を回転駆動させる図示しない駆動手段に制御信号を出力し、偏心カム42の回転角度などを制御する。たとえば、トナー8および定着液9に関する物性データと、温度検知手段29による検知結果から、定着液9の付与量を増加させる場合には、偏心カム42の長径部の最先端部分が側面35aに接触するように、偏心カム42の駆動手段に制御信号を送って偏心カム42の回転角度を調整し、塗布ローラ30の中間転写ベルト21に対する当接圧を高める。また、塗布ローラ30が中間転写ベルト21に対して離隔状態にあり、トナー像検知手段が定着液ニップ部の中間転写ベルト21の回転駆動方向上流側において、中間転写ベルト21上にトナー像を検知する場合には、CPUは偏心カム42の駆動手段に制御信号を送り、偏心カム42の短径部と側面35aとが離隔して対向するように、偏心カム42を回転させる。さらに、塗布ローラ30が中間転写ベルト21に対して接触状態にあり、トナー像検知手段が所定時間トナー像を検知しない場合には、偏心カム42の長径部と側面35aとが接触して対向するように、偏心カム42を回転させる。
【0068】
中間ギア46および駆動ギア47は、塗布ローラ30の塗布ローラギア34とともに、塗布ローラ30をその軸心回りに回転駆動させる回転駆動手段を構成する。中間ギア46はピボット36,37と同軸に設けられ、一方で塗布ローラギア34と噛合し、他方で駆動ギア47と噛合し、駆動ギア47の回転駆動を塗布ローラギア34に伝達して塗布ローラ30を回転駆動させる。駆動ギア47は、中間ギア46と噛合しかつ図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられる。中間ギア46と同軸に設けられるピボット36,37は定着液溜35の回転中心であり、定着液溜35が偏心カム42によって回転されても、塗布ローラギア34、中間ギア46および駆動ギア47の中心間距離は変化しない。したがって、塗布ローラ30が中間転写ベルト21に対して接触状態または離隔状態のいずれにあっても、塗布ローラ30を回転駆動させることが可能になる。本実施の形態では、この回転駆動手段による塗布ローラ30の回転周速度を、中間転写ベルト21に当接して回転する画像形成時の塗布ローラ30の回転周速度よりも遅く設定する。さらに、塗布ローラギア34に図示しないワンウェイクラッチを設け、塗布ローラ30が中間転写ベルト21に対して接触状態にある場合には、中間転写ベルト21の回転周速度と等速で従動回転するように構成してもよい。これによって、塗布ローラ30と中間転写ベルト21との回転周速度の違いに起因して、中間転写ベルト21上のトナー像が乱れるのを防止できる。このように構成することによって、塗布ローラ30を中間転写ベルト21に対して離接可能に設け、かつ塗布ローラ30の中間転写ベルト21への接触または離隔に関係なく、塗布ローラ30を回転駆動させ得る。
【0069】
本実施の形態では、塗布ローラ30が中間転写ベルト21に対して離隔し、かつ塗布ローラ30の回転駆動が停止した状態において、塗布ローラ30を中間転写ベルト21に接触させる際、接触の前に、塗布ローラ30を回転させるのが好ましい。塗布ローラ30の回転回数は少なくとも1回転であり、好ましくは塗布ローラ30を0.5〜10秒間回転させればよい。塗布ローラ30の内部では、定着液9が鉛直方向下部に集まるので、塗布ローラ30の下部表面の多孔質層33は定着液9を多量に含み、上部表面の多孔質層33は定着液9の含有量が少ない。このままの状態で定着液9のトナー像への付与を行うと、中間転写ベルト21上で定着液9の塗布むらが生じ、定着画像に光沢むら、濃度むらなどが発生して画像品位が低下する。したがって、中間転写ベルト21への接触前に、塗布ローラ30を少なくとも1回転させれば、塗布ローラ30表面の多孔質層33における定着液9の含有量を均一化できる。これによって、中間転写ベルト21上での塗布むらの発生を防止し、均一で高品位な画像を形成できる。なお、この目的のためには、塗布ローラ30を少なくとも半回転させればよいけれども、一層の均一化を図る上で1回以上回転させることが望ましい。塗布ローラ30の回転は、図示しないCPUによって制御される。たとえば、画像形成装置1の上面に設けられる図示しない操作パネルから画像形成動作開始命令がCPUに入力されると、CPUは、まず、離接検知手段43による検知結果から塗布ローラ30が中間転写ベルト21に対して接触状態または離隔状態のいずれにあるかを認識する。離隔状態にあることを認識すれば、駆動ギア47を回転駆動させる図示しない駆動手段に制御信号を送り、駆動ギア47を回転させることによって、塗布ローラ30を回転させる。その後、CPUは偏心カム42を回転駆動させて塗布ローラ30を中間転写ベルト21に接触させる。
【0070】
本実施の形態では、塗布ローラ30が中間転写ベルト21に対して離隔状態にある場合でも、支持ローラ23内の加熱手段26によって中間転写ベルト21が加熱される間は、塗布ローラ30を回転駆動させるのが好ましい。塗布ローラ30の回転は、図示しないCPUによって制御される。CPUは、加熱手段26が加熱動作を実行するための制御信号を送るので、加熱手段26が動作中であることを認識できる。また、CPUは離接検知手段43による検知結果によって、塗布ローラ30が中間転写ベルト21に対して離隔状態にあることを認識できる。この場合に、CPUが駆動ギア47を回転させることによって、塗布ローラ30を回転させ得る。このように構成すれば、中間転写ベルト21からの輻射熱によって、塗布ローラ30表面の中間転写ベルト21を臨む部分のみが加熱され、この部分における定着液9の含有量が他の部分に比べて著しく減少するのを防止でき、高品位画像を安定的に形成できる。中間転写ベルト30からの輻射熱による加熱作用はあまり強くないので、このように構成すれば、塗布ローラ30表面の局所的な定着液9の含有量の不均一を解消できる。なお、塗布ローラ30表面の定着液9の含有量が部分的に大きく減少すると、前述のように、中間転写ベルト21への接触の前に塗布ローラ30の回転を行っても定着液9の不均一が解消されず、定着液9の塗布むらひいては定着画像の濃度むら、光沢むらなどが発生し、画像品位が低下する。
【0071】
本実施の形態では、塗布ローラ30が中間転写ベルト21に対して離隔し、支持ローラ23内の加熱手段26によって中間転写ベルト21が加熱され、かつ定着液9が2種またはそれ以上の有機溶剤を含む場合にも、塗布ローラ30を回転駆動させるのが好ましい。このとき、CPUは、温度検知手段29および離隔検知手段43による検知結果に応じて、塗布ローラ30を回転駆動させる。たとえば、塗布ローラ30が中間転写ベルト21に対して離隔状態にあるという離接検知手段43による検知結果および中間転写ベルト21の温度が、定着液9に含まれる2種以上の有機溶剤の有する沸点のうちの最も低い沸点よりも高い温度であるという温度検知手段29による検知結果に応じて、CPUは駆動ギア47を回転駆動させる図示しない駆動手段に制御信号を送り、駆動ギア47ひいては塗布ローラ30を回転駆動させる。このように構成すれば、定着液9が2種以上の有機溶剤を含む場合に、1種の有機溶剤が中間転写ベルト21からの輻射熱によって揮発して定着液9の組成が変化し、定着不良、画像濃度低下、画像品位低下などが発生すること、定着液9中の有機溶剤の揮発によって塗布ローラ30表面における定着液9の含有量が局所的に変化し、このような塗布ローラ30によって定着液の付与を行うと、塗布むらひいては画像むらが発生することが防止される。
【0072】
定着液付与手段4によれば、画像形成を行う場合のみに、塗布ローラ30を少なくとも1回転させた後に中間転写ベルト21に接触させ、中間転写ベルト21上のトナー像に定着液9を接触付与し、トナー像を構成するトナー8を膨潤・軟化させる。その際、支持ローラ23内に設けられる加熱手段26によって、中間転写ベルト21を100℃前後の大きな電力消費を伴わない温度に加熱し、定着液9によるトナーの膨潤軟化を補助する。画像形成を行わない場合は、塗布ローラ30を中間転写ベルト21から離隔する。その状態で必要に応じて塗布ローラ30を回転駆動させ、塗布ローラ30表面の定着液9の分布が不均一になるのを防止する。これによって、次回の定着液9の付与に際し、塗布むらなどが生じるのを防止できる。さらに、定着液9の付与によって膨潤・軟化した中間転写ベルト21上のトナー像は、中間転写ベルト21の回転駆動によって転写定着手段5に搬送される。転写定着手段5は、支持ローラ24と、転写定着ローラ55とを含んで構成される。
【0073】
転写定着ローラ55は、中間転写ベルト21を介して支持ローラ24に圧接し、かつ軸線方向に回転駆動可能に設けられ、主に加圧ローラとして機能するローラ状部材である。転写定着ローラ55にはこの分野で常用されるものを使用できるけれども、本実施の形態では、外径が30mmで、芯金と、芯金表面に設けられる弾性層として厚さ3mmで硬度50度(JIS−A)のシリコーンゴム層と、シリコーンゴム層表面に設けられる表層としての厚さ20μmのPFA層とを含むローラ状部材が用いられる。また、本実施の形態では、転写定着ローラ55は8N/cmの線圧で中間転写ベルト21を介して支持ローラ24に圧接され、電圧は印加されない。支持ローラ24と転写定着ローラ55との圧接部(転写定着ニップ部)に、膨潤・軟化状態にあるトナー像が搬送されると、それに同期して、後述する記録媒体供給手段6から記録媒体Pが送給され、中間転写ベルト21上のトナー像が記録媒体Pの表面に押圧されて転写され、定着される。中間転写ベルト21表面にフッ素樹脂層が形成される場合は、中間転写ベルト21とトナー像との付着力が低いので、トナー像はほぼ全量が記録媒体Pに転写される。また、中間転写ベルト21がゴム層を有する場合は、トナー像担持面21aが記録媒体Pの凹凸に倣って変形し、記録媒体Pの凹部にもトナー像を接触させ得るので、均一な転写定着像が得られる。また、記録媒体Pがセルロース繊維を含むものである場合、トナー像が記録媒体Pに押圧されると、トナー像がセルロース繊維に強く入り込むと同時にトナー8同士が融合するので、記録媒体P上のトナー像は表面が平滑になる。これによって、減法混色による良好な発色と、表面の平滑性による高い光沢とを併せ持つ高品位カラー画像が得られる。また、中間転写ベルト21が定着液9を浸透しない材料によって形成され、さらにトナー像のみに定着液9をほぼ選択的に付与する構成を採るので、定着液9の記録媒体Pへの浸透を防止し、記録媒体Pにしわ、カールなどが発生するのを防止するとともに、定着液9の使用量を低減化できる。また、定着液9を付与するための塗布ローラ30と記録媒体Pとが直接接触しない構成を採るので、記録媒体Pがセルロース繊維を含むものである場合に、セルロース繊維などの紙粉が塗布ローラ30表面に付着することに起因する目詰まりが発生しない。したがって、目詰まりによる定着液9の塗布むらが生じることがなく、高品位画像が長期にわたって安定的に得られる。転写定着手段5によれば、膨潤・軟化状態のトナー像が記録媒体Pに押圧によって転写定着される。
【0074】
記録媒体供給手段6は、記録媒体Pを貯留する記録媒体カセット56と、記録媒体Pを搬送路に1枚ずつ送給するピックアップローラ57と、中間転写ベルト21上のトナー像が転写定着ニップ部に搬送されるのに同期して、該ニップ部に記録媒体Pを送給する1対のレジストローラ58,59とを含んで構成される。記録媒体供給手段6によれば、記録媒体カセット56内に貯留される記録媒体Pが、ピックアップローラ57により1枚ずつ搬送路に送給され、さらに、レジストローラ58,59によって、転写定着ニップ部に送給される。
【0075】
排出手段7は、搬送ベルト60と、駆動ローラ61と、テンションローラ62と、排紙ローラ63とを含んで構成される。搬送ベルト60は、駆動ローラ61とテンションローラ62との間に張架されてループ状の搬送経路を形成する無端ベルトであり、転写定着手段6により画像が形成された記録媒体Pを排紙ローラ63に搬送する。搬送ベルト60には、たとえば、導電剤を添加して導電性を付与した厚さ100μmのポリイミドフィルムの少なくとも記録媒体搬送面に、PTFEからなる厚さ10μmの被覆層を設けたものを使用できる。駆動ローラ61は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に設けられる。駆動ローラ61には、たとえば、アルミニウムなどの金属からなる中空ローラを使用できる。テンションローラ62は、搬送ベルト60が弛まないように、搬送ベルト60に所定の張力を付与する。テンションローラ62には、たとえば、金属製軸体と、金属製軸体の表面に形成される被覆層とを含んで構成される。また、金属製軸体のみからなるものでもよい。金属製軸体の材料には、たとえば、ステンレス鋼が使用され、被覆層の材料にはたとえばフッ素ゴムが使用される。排紙ローラ63は、搬送ベルト60により搬送される記録媒体Pを画像形成装置1の外部側面に設けられる排紙トレイ64に排出する部材であり、互いに圧接するように設けられる1対のローラを含んで構成され、各ローラはそれぞれの軸線方向に回転駆動可能に支持される。
【0076】
画像形成装置1によれば、トナー像形成手段2により、トナー像担持体である中間転写ベルト21上に形成されるトナー像に、定着液付与手段4による定着液9の接触付与が施され、トナー像を膨潤・軟化させ、これを転写定着手段5により記録媒体Pに転写定着して画像を形成し、排紙トレイ64に排出する。本実施の形態では、塗布ローラ30の内部に定着液貯蔵層を設け、塗布ローラ30自体をカートリッジ方式に形成し、塗布ローラ30の交換によって定着液9を補充する構成を採るけれども、それに限定されない。たとえば、画像形成装置1の内部に図示しない定着液貯留タンクおよび定着液貯留タンクから塗布ローラ30に定着液9を補給する図示しない定着液補給手段を設け、定着液9の消費状況に応じて、塗布ローラ30における定着液9の液面高さが一定になるように、定着液貯留タンクから塗布ローラ30に定着液9を補給する構成を採ってもよい。定着液補給手段は、たとえば、塗布ローラ30と定着液貯留タンクとを接続する図示しない配管と、配管上に設けられる図示しない送液ポンプとを含んで構成される。このように、定着液9の貯蔵手段を塗布ローラ66の外部に設けることによって、定着液9を大量の貯蔵することが可能となり、定着液9の補充回数を低減することができる。
【0077】
本実施の形態では、図3に示す定着液付与手段4を用いるけれども、それに限定されず、別形態の定着液付与手段を用いることができる。図5は、別形態の定着液付与手段65の構成を模式的に示す断面図である。図6は、中間転写ベルト21の方向から見た定着液付与手段65の正面図である。図7は、図6に示す定着液付与手段65の切断面線VII−VIIにおける断面図である。なお、図7において、塗布ローラ66の芯金、定着液保持層および多孔質層ならびに定着液溜35の側壁の一部については図示を省略する。図8は、図6に示す定着液付与手段65の長手方向の部分断面図である。定着液付与手段65は、定着液付与手段4に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付し、説明を省略する。定着液付与手段65は、塗布ローラ66と、供給ローラ70と、規制ローラ71と、第1のシール部材72と、第2のシール部材73と、断熱性保護部材74と、定着液溜35と、ピボット36,37と、開閉扉38と、ガイド溝39,40と、押圧ばね41と、偏心カム42と、離接検知手段43とを含んで構成される。
【0078】
塗布ローラ66は、その一部が、定着液溜35の中間転写ベルト21を臨む面35bに形成される開口部35cを介して中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに対向し、中間転写ベルト21に対して離接可能に設けられるローラ状部材であり、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上のトナー像に定着液9を付与する。また、塗布ローラ66は芯金67の長手方向両端に設けられる図示しないフランジと一体の回転軸66dを有する。回転軸66dの両端は、定着液溜35と一体形成され、定着液溜35内に設けられる軸受け部66bによって支持される。これによって、塗布ローラ66は定着液溜35によって矢符66aの方向に回転駆動可能に支持される。また、塗布ローラ66の回転軸66dの一端は、軸受け部66bを貫通して定着液溜35の長手方向の外方に突出し、その端部には塗布ローラ30と同様に塗布ローラギア66cが設けられる。塗布ローラギア66cは、塗布ローラ30と同様に、図示しない中間ギアに噛合され、さらに中間ギアは図示しない駆動ギアに噛合される。塗布ローラギア66c、中間ギアおよび駆動ギアは、駆動ギアを回転駆動可能に支持する図示しない駆動手段とともに、塗布ローラ66をその軸心回りに回転駆動させる回転駆動手段を構成する。塗布ローラ66は、芯金67と、芯金67の表面に設けられる定着液保持層68と、定着液保持層68の表面に設けられる多孔質層69とを含む。芯金67には、ステンレス鋼、アルミニウムなどの金属を用いて製造されるこの分野で常用される芯金が使用できる。本実施の形態では、外径14mmのアルミニウム製芯金を使用する。定着液保持層68は、供給ローラ70から供給される定着液9を、多孔質層69を介して受け取って保持し、多孔質層69の定着液9の保持量が減少するのに応じて多孔質層69に定着液9を供給する。定着液保持層68は一般に定着液保持能力の高い材料で構成されるので、多孔質層69の層厚が薄く、その定着液保持能力が低くても、定着液保持層68中に十分量の定着液9を保持できる。定着液保持層68には、フェルト、連続発泡ゴムなどの吸液性および弾性を有する材料が用いられる。定着液保持層68を設けることによって、多孔質層69が保持する定着液9が少なくても、塗布ローラ66全体として定着液9を充分に保持できるので、中間転写ベルト21上のトナー像に充分量の定着液9を付与できる。このため、多孔質層69を、後述するように、薄い多孔質膜で形成できる。すなわち、表層のみを高価で微細な多孔質膜とし、内部を安価なフェルト、連続発泡ゴムなどの部材で構成できる。多孔質層69は、その内部に多数の微細な空孔を有し、該空孔中に供給ローラ70から供給される定着液9の一部を保持し、残余の定着液9を定着液保持層68に供給する。多孔質層69に保持される定着液9は、塗布ローラ66と中間転写ベルト21との定着液ニップ部において中間転写ベルト21上のトナー像に付与される。本実施の形態では、径14mmの芯金67の表面に、定着液保持層68として厚さ3mmのフェルト層(弾性率3MPa)を積層して外径20mmのローラを得、このフェルト層の表面に多孔質層69として厚さ0.1mmのウレタン樹脂製多孔質膜を積層してなる塗布ローラ66が用いられる。また、本実施の形態では、塗布ローラ66が中間転写ベルト21に対して接触する場合、塗布ローラ66の中間転写ベルト21に対する押圧力は線圧で0.5N/cmである。また、本実施の形態では、塗布ローラ66が中間転写ベルト21に対して接触する場合、塗布ローラ66は中間転写ベルト21の表面速度と等速で回転する。
【0079】
供給ローラ70は、その一部が定着液溜35の内部空間の下部に貯留される定着液9に浸漬し、他の一部が塗布ローラ66に圧接し、かつ図示しない駆動手段によって矢符70aの方向に回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。供給ローラ70の回転駆動によって供給ローラ70の表面に定着液9が付着し、この定着液9が供給ローラ70と塗布ローラ66との圧接部において、塗布ローラ66の表面に供給される。このように、定着液9を塗布ローラ66の外周面に供給する構成を採ることによって、塗布ローラ66の内部に定着液9を保持貯留する必要がなくなり、塗布ローラ66を小型化できる。供給ローラ70には、たとえば、芯金の表面に樹脂発泡体層を積層したローラ部材が用いられる本実施の形態では、直径10mmの芯金表面に、厚さ5mmのウレタン樹脂の連続気泡発泡体を積層したスポンジローラが用いられる。また、本実施の形態では、供給ローラ70によって塗布ローラ66に定着液9を供給するけれども、供給ローラ70を設けることなく、塗布ローラ66の一部を常に定着液9中に浸漬させ、塗布ローラ66に定着液9を直接供給する構成を採ることができる。この場合には、供給ローラ70を設けないので、構成を簡素化しかつ製造コストを削減できる。規制ローラ71は、塗布ローラ66に圧接しかつ矢符71aの方向に回転駆動可能に設けられ、塗布ローラ66表層の多孔質層69における定着液9の保持量を適量に調整するローラ部材である。規制ローラ71には、たとえば、金属製ローラが用いられる。本実施の形態では、規制ローラ71として、外径12mmのステンレス鋼製ローラを用いる。規制ローラ71を設けることによって、塗布ローラ66の表面に定着液9が過剰に付着し、塗布ローラ66と中間転写ベルト21との定着液ニップ部入り口において、定着液9がメニスカスを形成し、定着液9の流動が発生し、トナー像を乱すことが防止されるので、高品位で高精細な画像が得られる。
【0080】
第1のシール部材72は、一端が規制ローラ71表面に圧接し、他端が定着液溜35に支持されるように設けられる板状部材であり、規制ローラ71表面の定着液9を回収する。具体的には、第1のシール部材72により規制ローラ71表面から除去される定着液9は、第1のシール部材72を伝って、定着液溜35内の下部に設けられる定着液貯留部に落下する。本実施の形態では、第1のシール部材72として、厚さ40μmのウレタンゴム製シートが用いられる。第2のシール部材73は、一端が塗布ローラ66表面に圧接し、他端が定着液溜35に支持されるように設けられる板状部材であり、塗布ローラ66表面の定着液9を掻き取って定着液溜35下部の定着液貯留部に落下させることによって、定着液9を回収する。その作用は、第1のシール部材72と同様である。本実施の形態では、第2のシール部材73にも、厚さ40μmのウレタンゴム製シートが用いられる。第1のシール部材72および第2のシール部材73は、塗布ローラ66および規制ローラ71との連係によって定着液溜35内に閉空間を形成し、定着液9の揮発、揮発した定着液9の定着液溜35外部への漏出などを防止できる。
【0081】
断熱性保護部材74は、中間転写ベルト21と定着液溜35との間に設けられ、図示しない保護部材移動手段によって移動可能に支持される板状部材である。断熱性保護部材74は、その長手方向の長さおよび長手方向に垂直な方向の長さ(幅)が、それぞれ、定着液溜35における開口部35cの長手方向の長さおよび長手方向に垂直な方向の長さ(幅)よりも大きくなるように形成される。また、断熱性保護部材74は、保護部材移動手段によって、定着液溜35の開口部35cを完全に閉鎖して定着液溜35の内部空間を閉空間とするように配置される遮断位置と、中間転写ベルト21と塗布ローラ66とが開口部35cを介して直接対向し得るように配置される開放位置との間を移動する。断熱性保護部材74が開放位置にある時、離接手段43によって塗布ローラ66が中間転写ベルト21表面に接触してトナー像に定着液9を付与する。断熱性保護部材74は、基材層75と断熱層76とを積層してなる板状部材である。断熱性保護部材74は、遮断位置において、その厚み方向の一方の面すなわち基材層75の表面が中間転写ベルト21を臨み、他方の面すなわち断熱層76の表面の一部が定着液溜35の開口部35cを介して塗布ローラ66を臨み、塗布ローラ66との間に空隙を有して離隔し、一部が定着液溜35の側面35bに接するように設けられる。また、断熱性保護部材74は、遮断位置と開放位置との間を移動するときにも、断熱層76表面と塗布ローラ66表面とが接触することがないように設けられる。これによって、断熱性保護部材74の移動時に、断熱性保護部材74と塗布ローラ66とが接触し、塗布ローラ66表面に傷、摩耗などを発生させることがない。また、断熱性保護部材74と塗布ローラ66とが接触しないので、断熱性保護部材74に定着液9が付着しない。その結果、定着液9が断熱性保護部材74を伝って定着液溜35の外部に漏出し、画像形成装置の内部を汚染することがない。
【0082】
基材層75は、断熱性保護部材74に機械的強度を付与し、断熱性保護部材74の形状を長期にわたって保持するために形成される。基材層75には、耐薬品性、耐有機溶剤性などに優れる樹脂材料を好ましく使用できる。このような樹脂材料としては、たとえば、PTFEなどのフッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などが挙げられる。断熱層76には、定着液溜35を構成する材料よりも断熱性の高い材料が好ましい。定着液溜35の構成材料には一般的にABS(スチレン・アクリルニトリル・ブタジエン)樹脂や高密度ポリエチレン、エポキシ樹脂などが用いられるので、それよりも断熱性の高い材料としては、シリコーンゴムなどが挙げられる。シリコーンゴムは単独気泡または連続気泡の発泡体である発泡シリコーンスポンジの形態で用いてもよい。図6〜8に示すように、断熱性保護部材74が遮断位置にあるとき、断熱性保護部材74が定着液溜35の側面35bとがその間に空隙を有することなく接触する。また、定着液付与手段65の長手方向における両端部では、定着液溜35と一体で形成される軸受け部66bと断熱性保護部材74とがその間に空隙を有することなく接触する。したがって、断熱性保護部材74が遮断位置にある時、定着液溜35の開口部35cは断熱性保護部材74によって完全に塞がれ、定着液溜35の内部空間は閉空間になる。これによって、塗布ローラ66の表面近傍に存在する定着液9の蒸気を含む空気が拡散し、塗布ローラ66表面からさらに定着液9が揮発するのを防止できる。また、断熱性保護部材74が遮断位置にあるとき、中間転写ベルト21と塗布ローラ66との間に断熱性保護部材74が存在し、断熱性保護部材74によって塗布ローラ66表面が加熱されて定着液9の含有量が不均一になるのを防止できる。したがって、中間転写ベルト21上のトナー像に定着液9を付与するために、塗布ローラ66を中間転写ベルト21に接触させる前に、塗布ローラ66を少なくとも1回、好ましくは0.5〜10秒間回転させることによって、塗布ローラ66表面の定着液9の不均一な分布が容易に解消される。その結果、定着液9の塗布むら、それに基因する濃度むら、光沢むらなどの発生が防止され、画像濃度が高く光沢が均一な高品位画像を長期にわたって安定的に形成できる。本実施の形態では、断熱性保護部材74を基材層75と断熱層76との多層構造としたけれども、それに限定されず、断熱層76のみの単層構造としてもよい。このとき、断熱層76を構成する材料としては、機械的強度が高く、形状安定性に優れるものが好ましい。このような材料としては、たとえば、多孔質またはハニカム構造の樹脂、金属などが挙げられる。
【0083】
図9は、保護部材移動手段80の構成を模式的に示す側面図である。保護部材移動手段80は、断熱性保護部材74を開放位置と遮断位置との間で移動可能に支持する。同図は遮断位置での状態を示す。保護部材移動手段80は、ガイド部材81と、第1のピン82と、開閉アーム83と、第2のピン84と、揺動アーム85と、第3のピン86と、第1のギア87と、第2のギア88とを含んで構成される。第1のピン82と第2のピン84は回転自在であるが、第3のピン86および揺動アーム85は第2のギア88に固定され、第1のギア77の矢符90方向への回転に伴って矢符91の方向に回転移動する。ガイド部材81は、断熱性保護部材74の基材層75表面における長手方向の両端部に接するように立設され、断熱性保護部材74の移動方向を矢符92の方向に規制する。断熱性保護部材74は、定着液溜35とガイド部材81と間に挟持されることによって、矢符92の方向のみに移動する。第1のピン82は、開閉アーム83の一方の端部を、断熱性保護部材74の短手方向側面端部に回動自在に固定する。開閉アーム83は、一端が第1のピン82によって断熱性保護部材74に回動自在に支持され、他端が第2のピン84によって揺動アーム85に回動自在に連結される。開閉アーム83は、揺動アーム85からの応力を受けて第1のピン82および第2のピン84を支点にして揺動し、断熱性保護部材74を矢符92の方向に移動させる。第2のピン84は、開閉アーム83と揺動アーム85とを回動自在に連結する。揺動アーム85は、第2のギア88の回転に応じて回転し、第2のギア88の回転を開閉アーム83の回転を介して断熱性保護部材74の矢符92方向の移動に変換する。第2のギア88は、第1のギア87に噛合するように設けられ、第1のギア87の回転駆動を揺動アーム85に伝達する。第1のギア87は、第2のギア88に噛合するように設けられ、かつ画像形成装置内に回転駆動可能に支持される。第1のギア87は、図示しない駆動手段によって、時計回りおよび反時計回りのいずれにも回転駆動する。保護部材移動手段80によれば、第1のギア87の矢符89方向への回転を第2のギア88、第3のピン86、揺動アーム85および第2のピン84を介して開閉アーム83に伝達し、断熱性保護部材74を矢符92の方向に反復移動させる。保護部材移動手段80の制御は、画像形成装置の全動作を制御するCPUによって行われる。画像形成動作の実施中では、断熱性保護部材74は開放位置にある。CPUは、画像形成動作が終了した後、離接手段である偏心カム42によって塗布ローラ66を中間転写ベルト21から離反させ、離接検知手段43によって塗布ローラ66が中間転写ベルト21に対して離隔状態にあることを検知すると、第1のギア87を回転駆動させる駆動手段に制御信号を送り、第1のギア87を所定の回転方向に回転させる。それによって、断熱性保護部材74が開放位置から遮断位置に移動し、定着液溜35内に閉空間が形成される。一方、待機中の状態では、断熱性保護部材74は遮断位置にある。待機中から画像形成動作を実施するに際しては、CPUはまず第1のギア87を回転駆動させる駆動手段に制御信号を送り、第1のギア87を回転させる。このとき第1のギア87の回転は、断熱性保護部材74を開放位置から遮断位置に移動させる時とは反対方向である。これによって、断熱性保護部材74は遮断位置から開放位置に移動する。
【0084】
定着液溜35は、カートリッジ方式に形成され、画像形成装置に対して着脱自在に設けられる。したがって、定着液溜35内の定着液9が消費された段階で、新しい定着液溜35と取り替えられる。また、カートリッジ方式に限定されない。たとえば、画像形成装置の内部に図示しない定着液貯留タンクおよび定着液貯留タンクから定着液溜35に定着液9を補給する図示しない定着液補給手段を設け、定着液9の消費状況に応じて、定着液溜35における定着液9の液面高さが一定になるように、定着液貯留タンクから定着液溜35に定着液9を補給する構成を採ってもよい。定着液補給手段は、たとえば、定着液溜35と定着液貯留タンクとを接続する図示しない配管と、配管上に設けられる図示しない送液ポンプとを含む。この構成によって、定着液9の画像形成装置内部での大量貯蔵、定着液9の補充回数の低減などを図り得る。
【0085】
定着液付与手段65によれば、定着液溜35内に設けられる塗布ローラ66は、待機時には断熱性保護部材74が遮断位置にあることによって中間転写ベルト21からの輻射熱に晒されることがなく、画像形成時には断熱性保護部材74が開放位置にあることによって中間転写ベルト21に接触してトナー像に定着液9を付与できる。本実施の形態では、断熱性保護部材74が遮断位置にあり、画像形成動作を開始する前に、塗布ローラ66を少なくとも1回、好ましくは0.5〜10秒の間回転させるのが好ましい。塗布ローラ66の回転は、塗布ローラギア66cと、図示しない中間ギアと、図示しない駆動ギアと、駆動ギアを回転駆動可能に支持する図示しない駆動手段とを含んで構成される回転駆動手段によって行われる。この回転駆動手段は画像形成装置1における回転駆動手段と同様である。また、回転駆動手段の制御も画像形成装置1と同様にしてCPUによって行われる。塗布ローラ66の表面には供給ローラ70および規制ローラ71が当接するので、この当接部分における定着液量が他の部分と異なることが多い。このため、待機中の回転停止状態から直ぐに定着液9の付与を行うと、中間転写ベルト21上で定着液9の塗布むらが発生し、定着画像に濃度むら、光沢むらなどが生じるおそれがある。したがって、画像形成動作の開始前すなわち塗布ローラ66を中間転写ベルト21に接触させる前に塗布ローラ66を少なくとも1回転させることによって、塗布ローラ66表面における定着液9の分布の不均一性を解消でき、定着液9をむらなく付与でき、濃度、光沢などが均一な高品位画像を長期にわたって安定的に形成できる。また、本実施の形態では、断熱性保護部材74が遮断位置にあり、画像形成を行わない待機時においても、塗布ローラ66を回転させるのが好ましい。このとき、塗布ローラ66の回転は待機の間中継続して行ってもよいけれども、好ましくは所定の時間間隔を開けて、所定回数回転させるのが好ましい。時間間隔および回転回数は、定着液9に含まれる有機溶剤の種類、待機時間の長さに応じて、塗布ローラ66表面における定着液9の不均一な分布が解消可能な範囲から適宜選択される。この構成を採ることによって、塗布ローラ66は、常にその表面における定着液9の分布がほぼ均一になる。塗布ローラ66表面で定着液9の不均一な分布あったとしてもそれは極めて軽微である。したがって、画像形成動作の開始前に少なくとも1回、好ましくは0.5〜10秒の回転を行えば、塗布ローラ66表面の定着液9の分布は均一になる。この塗布ローラ66を中間転写ベルト21に接触させれば、トナー像に均一に定着液9を付与できる。また、本実施の形態では、定着液9が2種以上の有機溶剤を含む場合には、温度検知手段による中間転写ベルト21の温度検知結果に応じて、塗布ローラ66を回転させることも可能である。なお、前述したように、断熱性保護部材74の断熱層76の表面と、塗布ローラ66とが接触しないように断熱性保護部材74と塗布ローラ66とが設けられるので、塗布ローラ66を回転させても、塗布ローラ66の表面の損傷、摩耗などを発生させることがない。したがって、断熱性保護部材74が遮断位置にあるときには、定着液9の揮発それに伴う塗布ローラ66表面の乾燥を抑制した状態で、塗布ローラ66を継続的に回転させることができる。さらに、待機時には定着液溜35が閉空間になっているので、蒸気圧の関係から、定着液35の揮発が確実に防止され、定着液9の無駄な消費を低減化することができる。
【0086】
本実施の形態では、断熱性保護部材74を用いるけれども、それに限定されず、図16および図17に示す断熱性保護部材120を用いることもできる。図16は断熱性保護部材120の構成を模式的に示す平面図である。図17は、図16に示す断熱性保護部材120の断面図である。断熱性保護部材120は、断熱性保護部材74に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。断熱性保護部材120は、断熱層121の周縁部に設けられる定着液保持部122bを有することを特徴とする。断熱層121は、断熱膜122aと、断熱膜122aの周縁部に設けられる定着液保持部122bとを含んで構成される。断熱膜122aは断熱性保護部材74における断熱層76と同じ材料で構成される。定着液保持部122bは、吸液性と吸収した液体をその内部に保持する液体保持性とを有する材料によって構成される。このような材料には、たとえば、フェルトなどの多孔質材料が挙げられる。断熱膜122aと定着液保持部122bとは、たとえば、接着剤などによって接着されている。断熱層121は、その寸法が基材層75よりも一回り大きくなるように形成されるのが好ましい。断熱性保護部材120を用いることによって、定着液溜35内部の定着液9が断熱層121に付着することがあっても、断熱層121の周縁部に設けられた定着液保持部122bに吸収保持されるので、定着液9が定着液溜35の外部に漏出し、画像形成装置1の内部を汚染することが一層防止される。
【0087】
図10は、本発明の実施の第2形態である画像形成装置95の構成を模式的に示す断面図である。図11は、図10に示す画像形成装置95の要部(定着液付与手段96および転写定着手段97)の構成を模式的に示す断面図である。図12は、塗布ローラ99による転写定着ローラ112上のトナー像への定着液9の付与を模式的に示す図面である。図13は、転写定着ローラ112の方向から見た定着液付与手段96の正面図である。図14は、図13に示す定着液付与手段96の切断面線XIV−XIVにおける断面図である。図15は、図13に示す定着液付与手段96の長手方向の部分断面図である。画像形成装置95は画像形成装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。画像形成装置95は、画像形成装置1に比べて、中間転写手段3a、定着液付与手段96、転写定着手段97、記録媒体供給手段6aおよび排出手段98が異なることを特徴とする。さらに具体的には、画像形成装置95は、中間転写手段3aに含まれる中間転写ベルト21から記録媒体Pに直接トナー像を転写定着するのではなく、中間転写ベルト21と記録媒体Pとの間にトナー像担持手段でもある転写定着ローラ112を介在させ、定着液付与手段96によって、転写定着ローラ112表面に担持されるトナー像に加熱下に定着液9を接触付与することを特徴とする。画像形成装置95では、転写定着ローラ112上でトナー像に定着液9を付与するので、中間転写ベルト21に定着液9が付着しない。また、転写定着ローラ112上でトナー像を加熱するので、中間転写ベルト21の温度が上昇し難い。このため、トナー像形成手段2を構成する各部材の温度上昇、該各部材への定着液9の付着などによって、トナー像形成過程中でトナー8の変質を防止でき、長期間にわたり安定して高品位な画像が得られる。また、画像形成装置95は、定着液付与手段96が断熱性保護部材102を有することをも特徴とする。
【0088】
中間転写手段3aは、中間転写ベルト21と、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bと、支持ローラ23a,25と、ベルトクリーナ27とを含んで構成される。中間転写手段3aでは、中間転写ベルト21の回転駆動方向(矢符28の方向)において中間転写ローラ22bの下流には、その内部に加熱手段を有しない支持ローラ23aが配置される。すなわち、中間転写手段3aでは、中間転写ベルト21およびトナー像を加熱しない構成であり、したがって温度センサを設けても設けなくてもよい。また、中間転写ベルト21は画像形成装置1における3点支持に代えて、支持ローラ23a,25により2点支持される。なお、本実施の形態では、中間転写ベルト21には、ポリイミド製基材の表面にフッ素樹脂層を積層したものを用いる。
【0089】
定着液付与手段96は、塗布ローラ99と、供給ローラ100と、規制ローラ101と、断熱性保護部材102と、定着液溜105と、ピボット106と、弾性部材107と、偏心カム108とを含んで構成される。また、定着液付与手段96は、発熱体である転写定着ローラ112よりも下方に設けられる。これによって、転写定着ローラ112の輻射熱による塗布ローラ99、定着液9などの温度上昇を緩和し、定着液9の揮発を抑制することができる。
【0090】
塗布ローラ99は、その一部が、定着液溜105の転写定着ローラ112を臨む面に形成される開口部105cから上方に向けて突出し、転写定着ローラ112表面に対して離接可能に設けられるローラ状部材であり、転写定着ローラ112上のトナー像に定着液9を付与する。また、本実施の形態では、塗布ローラ99は定着液溜105内に貯留される定着液9とは全く接触しないように設けられる。また、塗布ローラ99は、図13および図14から明らかなように、図示しない芯金の長手方向両端部に設けられる図示しないフランジと一体の回転軸99aを有する。回転軸99aの両端は、定着液溜105と一体成形されて定着液溜35の内に設けられる軸受け部105dによって支持される。これによって、塗布ローラ99は、定着液溜105によって軸心回りに回転駆動可能に支持される。また、塗布ローラ99の回転軸の一端は、軸受け部105dを貫通して定着液溜35の長手方向の外方に突出し、その端部には塗布ローラ30と同様に塗布ローラギア99bが設けられる。塗布ローラギア99bは、図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられる図示しない駆動ギアと、駆動ギアに噛合しかつピボット106と同軸上に設けられる中間ギアと、該中間ギアと塗布ローラギア99bとの間に設けられる複数の他の中間ギアとともに、回転駆動手段を構成する。回転駆動手段によって、塗布ローラ99は矢符99cの方向に回転駆動する。
【0091】
塗布ローラ99には、たとえば、芯金と、芯金の表面に弾性層とを含むローラ状部材が用いられる。弾性層を構成する材料としては、弾性を有しかつ定着液9に対して濡れ性を有する材料が用いられる。ここで、弾性を示す指標は、弾性層の厚み方向の弾性率である。弾性層の厚み方向の弾性率はトナー8またはトナー8に含まれる結着樹脂、離型剤などのトナー材料よりも小さいことが好ましく、トナー8またはトナー材料の1/10以下であることがさらに好ましく、トナー8またはトナー材料の1/100以下であることが特に好ましい。定着液9に対する濡れ性を示す指標は、定着液9の当該材料に対する接触角である。該接触角は、好ましくは50度以下である。このような特性を満たす材料としては、たとえば、アルミニウムなどの弾性を有する金属、親水性樹脂、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなどのゴム材料などが挙げられる。本実施の形態では、径12mmの芯金と、該芯金の表面に形成されるヤング率2MPaのエチレンプロピレンゴムからなる弾性層とを含む径20mmのローラ状部材を塗布ローラ99として用いる。塗布ローラ99の弾性層に用いられる材料は定着液9との親和性が高いので、定着液9を塗布ローラ99表面に薄い層として保持できる。このため、少量の定着液9を塗布ローラ99表面の広い範囲に均一な定着液9の薄層を形成できる。したがって、定着液9の消費量を低減化し得るとともに、過剰量の定着液9が塗布ローラ99表面に付与されることによって、定着液9が未定着のトナー像を押し流して画像を乱すことを防止できる。
【0092】
塗布ローラ99がその表面に弾性層を有するので、圧力を受けると弾性変形する。塗布ローラ99と転写定着ローラ112との圧接部においては、図12に示すように、転写定着ローラ112の表面のトナー像が存在する部分に圧接する塗布ローラ99表面はトナー像の凹凸に倣って弾性変形して凹む。トナー像は塗布ローラ99の表面によってトナー像が存在しない部分よりも高い圧力で加圧される。塗布ローラ99表面には定着液9の薄層が存在し、トナー像(画像部)にはトナー像がない部分(非画像部)よりも高い圧力で定着液9が接触する。このため、トナー像の凹凸に関係なく、トナー8が多く付着して高くなった部分にも、トナー8の付着量が少なくて低い部分にも定着液9を均一に付与でき、非画像部への付与量は少なくなる。凹凸の度合が顕著な多色トナー像に対しても定着液9を均一にかつ選択的に付与できる。一方、トナー像(画像部)は粉体であるトナー8が集合して形成されるので、巨視的な面積当りの表面積が大きい。数色のカラートナー像を重ねあわすことによって形成された多色トナー像のように、トナー量の多いトナー像では、巨視的な面積当りの表面積はさらに大きくなる。これに対し、転写定着ローラ112表面のトナー像が付着しない部分(非画像部)はほぼ平滑であり、巨視的な面積当りの表面積が小さい。したがって、画像部への定着液9の付与量は、非画像部への定着液9の付与量よりも遥かに大きくなる。これによって、面積当りのトナー量に応じて定着液9の付与量を制御することが可能になり、画像部と非画像部とで定着液9の付与量を変化させ得る。このようにして、トナー像のみに定着液9を付与することが可能になり、記録媒体Pに対する定着性に優れる高品位画像を長期にわたって安定的に形成できる。
【0093】
塗布ローラ99を転写定着ローラ112に圧接させる場合、塗布ローラ99の転写定着ローラ112に対する押圧力(線圧)は、好ましくは0.05〜1.0N/cmである。押圧力が0.05N/cm未満では、塗布ローラ99と転写定着ローラ112との接触状態が不安定になり、定着液9をトナー像に均一に付与できなくなる。さらに、塗布ローラ99の弾性変形が不充分になり、トナー像の凹所部分への定着液9の付与が不充分になるおそれがある。その結果、定着液9の塗布むらひいては光沢むら、濃度むら、色むらなどが生じる。一方、押圧力が1.0N/cmを超えると、塗布ローラ99と転写定着ローラ112との圧接部において、塗布ローラ99表面の定着液9が前記圧接部を通過し得なくなり、定着液9がスクイーズする。スクイーズした定着液9は前記圧接部の入り口でメニスカスを形成し、余剰の定着液9が、塗布ローラ99の回転方向上流側へもどる。このため、このニップ部の入り口で液が激しく流動することになり、トナー像が定着液の流動により乱される。本実施の形態では、塗布ローラ99が転写定着ローラ112に圧接する場合、転写定着ローラ112に対する押圧力は0.5N/cmである。また本実施の形態では、塗布ローラ99は転写定着ローラ112に圧接する場合、転写定着ローラ112の表面速度と等速で回転する。
【0094】
供給ローラ100は、塗布ローラ99に圧接しかつ少なくとも一部が定着液溜105内に貯留される定着液9に浸漬するように設けられるローラ状部材である。また供給ローラ100は、図示しない駆動手段によって矢符100aの方向に回転駆動可能に設けられる。本実施の形態では、供給ローラ100には、径10mmの芯金と、該芯金の表面に形成される厚さ5mmのウレタンの連続気泡発泡体層とを含むスポンジローラを用いる。供給ローラ100は矢符100a方向の回転駆動によって定着液9中に浸漬してその表面に定着液9を担持する。供給ローラ100表面に担持された定着液9は、塗布ローラ99と供給ローラ100との圧接部において、塗布ローラ99表面に付与される。規制ローラ101は、塗布ローラ99に圧接しかつ図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。規制ローラ101は、定着液溜105内に貯留される定着液9には接触しないように設けられる。規制ローラ101は、塗布ローラ99との圧接部において、塗布ローラ99表面における定着液9の担持量を適量に調整(または規制)し、均一な定着液9の薄層を形成する。本実施の形態では、規制ローラ101には、径12mmのステンレス鋼製ローラが用いられる。
【0095】
断熱性保護部材102は、定着液溜105と転写定着ローラ112との間に、開放位置と遮断位置との間を移動可能に設けられる。開放位置では、定着液溜105の転写定着ローラ112を臨む側面105bに形成される開口部105cから上方に向けて突出する塗布ローラ99と転写定着ローラ112とが、開口部105cを介して直接対向する。断熱性保護部材102が開放位置にあるとき、塗布ローラ99は転写定着ローラ112に対して接触し、転写定着ローラ112表面に担持されるトナー像に定着液9を付与する。断熱性保護部材102が遮断位置にある場合、断熱性保護部材102は定着液溜105と転写定着ローラ112との間において、定着液溜105の側面105bおよび該面の開口部105cから上方に向けて突出する塗布ローラ99の一部と接触して開口部105cを塞ぎ、一方、転写定着ローラ112とは離隔した状態にある。断熱性保護部材102は、定着液溜105および塗布ローラ99に接して上に設けられる。すなわち、断熱性保護部材102と定着液溜105内の定着液9との位置関係で言えば、断熱性保護部材102は、定着液9の上方に定着液9とは離隔して設けられる。さらに、定着液9は液状物であるので、断熱性保護部材102には重力の関係で付着することはない。さらに、断熱性保護部材102と定着液溜105の筐体との間に僅かな隙間が有っても、重力によって定着液9が定着液溜105から漏出することがない。断熱性保護部材102は、基材層103と、断熱層104とを積層してなる板状部材である。基材層103側の表面は転写定着ローラ112に離隔して対向し、断熱層104側の表面は定着液溜105の側面105bおよび塗布ローラ99の一部に接触する。基材層103は、合成樹脂によって形成される。シート形状を保持する形状安定性に優れる合成樹脂が好ましく、形状安定性に優れかつ断熱性保護部材102が当接される部材の表面形状に応じて変形する可撓性に優れた合成樹脂がさらに好ましい。断熱層104は、断熱性のほかに、弾性、撥液性および耐薬品性を有する材料により形成される。撥液性の目安は、定着液9に対する接触角が60度以上であることが好ましい。このような材料としては、たとえば、シリコーンゴム、PTFE、PFAなどのフッ素樹脂などが挙げられる。をコートして撥液性を向上させる構成も望ましい。断熱層104を前記のような特性を有する材料で形成することによって、塗布ローラ99の一部が定着液溜105の側面105bから突出していても、その形状に倣って断熱層104が弾性変形するので、塗布ローラ99の表面に密着し、開口部105cを完全に塞ぎ、定着液溜105内を閉空間にすることができる。その結果、塗布ローラ99表面からの定着液9の揮発を防止でき、定着液9の消費量の低減化を図り得る。また、断熱層104の方が変形するので、塗布ローラ99表面に当接痕が付くことがなく、塗布ローラ99表面における定着液量の不均一が生じることがない。また、断熱性保護部材102の移動は、塗布ローラ99との接触下に行われるけれども、断熱層104が前記のような材料で形成されるので、塗布ローラ99の表面を傷付けることがない。また、断熱層104が撥液性を有し、断熱層104の表面に定着液9が付着しないので、定着液9が断熱性保護部材102を伝って定着液溜105の外部に漏出し、画像形成装置95の内部を汚染することがない。断熱性保護部材92が開放位置にある場合でも、断熱層104の表面に定着液9が付着しないので、断熱性保護部材102から定着液9が落下して画像形成装置95の内部を汚染することがない。また、断熱層104が定着液9によって劣化することがない。本実施の形態では、断熱層104を形成する材料には、JIS−A10度のシリコーンゴムを用いる。図13〜15に示すように、断熱性保護部材102が遮断位置にあるとき、断熱性保護部材102が定着液溜105の側面105bおよび開口部105cから上方に向けて突出する塗布ローラ99の一部と接触する。また、定着液付与手段96の長手方向における両端部では、断熱性保護部材102の断熱層104が弾性変形することによって、定着液溜105と一体で形成される軸受け部105dと断熱性保護部材102とがその間に空隙を有することなく接触する。したがって、断熱性保護部材102が遮断位置にある時、定着液溜105の開口部105cは断熱性保護部材102によって完全に塞がれ、定着液溜105の内部空間は閉空間になる。これによって、塗布ローラ99の表面近傍に存在する定着液9の蒸気を含む空気が大気中拡散し、塗布ローラ99表面からさらに定着液9が揮発するのを防止できる。また、断熱性保護部材102が遮断位置にあるとき、転写定着ローラ112と塗布ローラ99との間に断熱性保護部材102が存在し、断熱性保護部材102によって塗布ローラ99表面が加熱されて定着液9の含有量が不均一になるのを防止できる。断熱性保護部材102を開放位置と遮断位置との間で移動させる保護部材移動手段としては、画像形成装置1における保護部材移動手段80と同様のものを使用できる。本実施の形態では、断熱性保護部材102として、基材層103と断熱層104との積層体である板状部材を用いるけれども、それに限定されず、単一の材料からなる板状部材も使用できる。単一材料からなる板状部材としては、合成樹脂製薄肉シートと、合成樹脂薄肉シートの周囲に設けられる金属製枠体とを含むものが挙げられる。具体的には、厚さ50μmのウレタンゴムシートの周囲に直径1mmの針金からなる枠体を設けてなる板状部材が挙げられる。このような板状部材を用いれば、合成樹脂製薄肉シートが変形することによって塗布ローラ99および定着液溜105に密着する。この構成によれば、板状部材を開閉させる際に合成樹脂製薄肉シートが塗布ローラ99表面に接触しても、合成樹脂製薄肉シートが柔軟に変形するので、塗布ローラ99表面を傷付けない。また、遮断位置にある時に塗布ローラ99を変形させないので、塗布ローラ99表面に圧接痕がつかない。また、断熱性保護部材102の薄肉化を達成できるので、塗布ローラ99と転写定着ローラ112との離間距離の狭小化を図り得る。また、塗布ローラ99表面と断熱性保護部材102とを密着させ得るので、塗布ローラ99表面からの定着液9の揮発を防止でき、定着液9の消費量の低減化を図り得る。なお、合成樹脂製薄肉シートとしては、塗布ローラ99よりも変形し易くかつ耐薬品性を有する合成樹脂材料からなるシートを使用でき、たとえば、ウレタンゴムシートなどが挙げられる。
【0096】
定着液溜105は内部空間を有する容器状部材であり、塗布ローラ99、供給ローラ100および規制ローラ101とともに、定着液9を収容する。定着液溜105には、配管110を介して定着液貯留タンク109が接続される。定着液貯留タンク109は、定着液9を貯留する大容量タンクである。配管110は定着液溜105と定着液貯留タンク109とを接続し、定着液貯留タンク109中の定着液9を定着液溜105に補給する。定着液9の補給は、定着液溜105における定着液9の消費状況に応じて、定着液溜105内における定着液9の液面高さが一定になるように行われる。また、定着液溜105の長手方向両端部にはピボット106が設けられ、ピボット106は定着液溜105を矢符106aの方向に回動自在に支持する。また、定着液溜105の側面105bに対向する側面には、一端が該側面に固定され、他端が画像形成装置95内部の図示しない支持部材に支持された弾性部材107が設けられる。弾性部材107は、定着液溜105を上方に押し上げる作用を有するものであればよく、たとえば、コイルばね、板ばね、やじりばねなどの押圧ばねを使用できる。さらに、定着液溜105の側面105bの上方には、塗布ローラ99の転写定着ローラ112に対する離接手段である偏心カム108が図示しない駆動手段により回転駆動可能に設けられる。偏心カム108は長径部が鉛直方向下方に位置する時に側面105bに当接し、定着液溜105を下方に押圧する。また、短径部が鉛直方向下方に位置する時、側面105bとの間に空隙を有して離隔する。偏心カム108の近傍には、図示しないけれども、画像形成装置1における離接検知手段43と同様の離接検知手段が設けられ、塗布ローラ99が転写定着ローラ112に接触しているかまたは離隔しているかを検知できる。ピボット106、弾性部材107および偏心カム108の協働によって、定着液付与手段96、特に定着液溜105を矢符105aの方向に上下動させ、塗布ローラ99の転写定着ローラ112に対する離接を実行できる。その制御機構は、画像形成装置1におけるのと同様である。
【0097】
定着液付与手段96によれば、画像形成時には、断熱性保護部材102を開放位置に移動させ、塗布ローラ99を転写定着ローラ112に接触させてトナー像に定着液9を付与し、画像形成を行わない待機時および電源OFF時には、塗布ローラ99を転写定着ローラ112に対して離隔させ、断熱性保護部材102を遮断位置に移動させ、定着液溜105内を閉空間とし、定着液9の揮発などを防止する。本実施の形態では、画像形成動作を開始するにあたり、断熱性保護部材102を開放位置に移動させた後から、塗布ローラ99を転写定着ローラ112に接触させる前の間で、塗布ローラ99を少なくとも1回、好ましくは0.5〜10秒の間回転させることができる。塗布ローラ99表面における定着液9の分布はもともと均一であるけれども、少なくとも1回の回転を行うことによって、定着液9の分布は一層均一になり、形成される画像のさらなる高品位化に寄与し得る。
【0098】
転写定着手段97は、転写定着ローラ112と、加圧ローラ114と、ローラクリーナ115と、温度検知手段116とを含んで構成される。転写定着ローラ112は、一方で中間転写ベルト21を介して支持ローラ26aに圧接し、他方で加圧ローラ114に圧接し、図示しない駆動手段によって矢符112aの方向に回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。また、転写定着ローラ112は、定着液付与手段96における断熱性保護部材102の転写定着ローラ112を臨む面と間隙を有して離隔するように設けられる。本実施の形態では、転写定着ローラ112には、厚さ1mmの炭素鋼からなる芯金と、該芯金の表面に形成される体積抵抗10〜10Ω・cmで厚さ8mmのシリコーンゴム層と、該シリコーンゴム層の表面に形成される厚さ20μmのPFA層とを含む径30mmのローラ状部材である。また本実施の形態では、転写定着ローラ112には、トナー像を構成するトナー8の帯電電位とは逆電位の+1kVの転写電圧が印加され、トナー8が静電的に引きつけられて中間転写ベルト21から転写定着ローラ112にトナーが転写されるように構成されている。転写定着ローラ112は、中間転写ベルト21から転写されたトナー像をその表面に担持して矢符112aの方向に回転駆動する。転写定着ローラ112の内部には、加熱手段113が設けられる。加熱手段113は、転写定着ローラ112を加熱する。内部に加熱手段113が設けられることによって、転写定着ローラ112の表面は、全周にわたって均一な温度に加熱される。加熱手段113には、ハロゲンランプなどが用いられる。本実施の形態では、ガラス転移点が90℃である結着樹脂を含むトナー8を用いるので、転写定着ローラ112の表面温度は100℃に保持される。トナー像をトナー8中の結着樹脂のガラス転移点以上に加熱すると、結着樹脂が軟化して、転写定着ローラ112とトナー8との付着力が増加する。これによって、トナー8が塗布ローラ99にオフセットすること、定着液9付与の際にトナー像が乱れることなどを防止でき、塗布ローラ99によって定着液9をトナー像の表面から接触塗布できる。また、転写定着ローラ112表面に転写されたトナー像に対して、塗布ローラ99から定着液9を接触付与すると、トナー像および転写定着ローラ112の温度低下が起こるけれども、転写定着ローラ112の表面がトナー8に含まれる結着樹脂のガラス転移温度よりも10℃高い温度に加熱されていることによって、温度低下を瞬時に補正し、トナー像を構成するトナー8の膨潤軟化を支障なく行うことができる。なお、転写定着ローラ112の加熱温度は、省エネルギーの観点から、トナー8中の結着樹脂のガラス転移点より10℃程度高い温度でよい。その程度の温度であれば、放熱による熱エネルギーの損失が小さく出来る。さらに、起動後の昇温時に必要なエネルギーが少ないので、短時間で所定の温度に達するため、ウォームアップ時間が短くできる。これにより、待機時間中の保温動作が不要になるので、装置全体としての省エネルギーを実現することができる。転写定着ローラ112の表面温度の制御機構については、後述する。
【0099】
加圧ローラ114は、転写定着ローラ112に圧接しかつ図示しない駆動手段によって矢符114aの方向に回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。本実施の形態では、加圧ローラ114には、芯金と、芯金の表面に形成される硬度50度(JIS−A)のシリコーンゴムからなる厚さ2mmの弾性層と、弾性層の表面に形成されるPFAからなる厚さ20μmの表層とを含む、外径40mmのローラが用いられる。本実施の形態では、加圧ローラ114は10N/cm(線圧)の押圧力で転写定着ローラ112に圧接する。ローラクリーナ115は、転写定着ローラ112上のトナー像を記録媒体Pに転写した後に、転写定着ローラ112上に残存するトナー8および/または定着液9を除去する部材であり、クリーニングブレード115aと貯留容器115bとを含む。クリーニングブレード115aは、図示しない加圧手段により転写定着ローラ112に圧接し、転写定着ローラ112上の残存トナー8などを掻き取る。貯留容器115bは、クリーニングブレード115aに掻き取られるトナー8、定着液9などを貯留する。温度検知手段116は、転写定着ローラ112の表面温度を検知するために、転写定着ローラ112の回転方向すなわち矢符112aの方向において、転写定着ローラ112と支持ローラ26aとのニップ部の上流側の位置に、転写定着ローラ112に接するかまたは近接するように設けられる。温度検知手段116には、温度センサなどが用いられる。温度検知手段116による検知結果は、画像形成装置95の全動作を制御する図示しないCPUに入力され、CPUは入力される検知結果に基づいて、加熱手段113に制御信号を送って転写定着ローラ112の加熱を制御し、転写定着ローラ112表面は全周にわたって均一な温度に加熱される。本実施の形態では、転写定着ローラ112の表面温度は、前述のように100℃に保持される。転写定着手段97によれば、中間転写ベルト21上のトナー像が、一定温度に加熱された転写定着ローラ112表面に静電的に転写され、定着液付与手段96によって定着液9の接触付与を受けて膨潤軟化し、転写定着ローラ112と加圧ローラ114との圧接部(転写定着ニップ部)において記録媒体Pに定着される。トナー像を記録媒体Pに転写した後に転写定着ローラ112表面に残留するトナー8、紙粉などはローラクリーナ115によって除去され、転写定着ローラ112表面には中間転写ベルト21から新たにトナー像が転写される。
【0100】
記録媒体供給手段6aは、記録媒体Pを貯留する記録媒体カセット56と、記録媒体Pを搬送路に1枚ずつ送給するピックアップローラ57とを含んで構成される。記録媒体供給手段6aによれば、記録媒体カセット56内に貯留される記録媒体Pが、ピックアップローラ57により1枚ずつ転写定着ニップ部に送給される。排出手段98は、搬送ローラ117と、排紙ローラ118とを含んで構成される。排出手段98によれば、トナー像が転写定着された記録媒体Pは搬送ローラ117によって排紙ローラ118に向けて搬送され、さらに排紙ローラ118によって画像形成装置95外部に排出され、画像形成装置95の上面に設けられる排紙トレイ119上に蓄積される。画像形成装置95によれば、トナー像形成手段2によって中間転写ベルト21上に形成されたトナー像が転写定着ローラ112に転写され、定着液付与手段96によって定着液9を接触付与されて膨潤軟化した後、定着ニップ部において記録媒体Pに転写される。トナー像が転写された記録媒体Pは排出手段98によって排紙トレイ119に排出される。本実施の形態では、中間転写ベルト21とは別のトナー像担持体である転写定着ローラ112上でトナー像に定着液9を付与するので、中間転写ベルト21に定着液9が付着しない。また、中間転写ベルト21とは別の転写定着ローラ112を加熱するので、中間転写ベルト21の温度が上昇しない。この構成を採れば、トナー像形成手段2の構成部材の温度上昇、定着液9の付着などによって、トナー像形成過程でトナー8が変質するのを防止できるので、長期間にわたり安定して高品位画像を形成できる。また、加熱状態にあるトナー像担持手段上にトナー像を担持し、トナー像を構成するトナー8を加熱のみによって軟化溶融させる構成では、トナー像のトナー像担持手段に接触する面は軟化溶融が良好に進行するが、トナー像表面の軟化溶融は不充分になり、トナー像の記録媒体Pに対する付着力が不足するという欠点がある。これに対し、本実施の形態では、加熱状態にあるトナー像担持手段上にトナー像を担持するとともに、トナー像の表面に定着液9を接触付与する構成を採るので、トナー像全体を充分に膨潤軟化させることができ、トナー像の記録媒体Pに対する付着力を高めることができる。
【0101】
本実施の形態では、断熱性保護部材102を用いるけれども、それに限定されず、図18(a)および図18(b)に示す断熱性保護部材125を用いることもできる。図18(a)は断熱性保護部材125の構成を模式的に示す平面図である。図18(b)は、図18(a)に示す断熱性保護部材125の切断面線XVIIb−XVIIbにおける断面図である。断熱性保護部材125は断熱性保護部材102に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。断熱性保護部材125は、断熱層126の大部分が撥液性の低い材料で構成され、断熱層126の周縁部に定着液保持部126cが設けられることを特徴とする。断熱層126は、断熱層本体126aと、定着液保持部126cとを含む。断熱層本体126aは基材層103に積層され、基材層103と接触する面の反対側の面には塗布ローラ99の一部が接触する凹所126bが形成され、定着液溜105の側面105bおよび塗布ローラ99に接触する。断熱層本体126aは、断熱性保護部材102における断熱層104を構成する材料よりも撥液性が低くかつ表面硬度が同程度である材料で構成される。このような材料としては、たとえば、ブチルゴム、EPDMなどのゴム材料が挙げられる。定着液保持部126cは、断熱層本体126aの定着液溜側面105bおよび塗布ローラ99に接触する面の周縁部に設けられる。本実施の形態では、定着液保持部126cは、断熱性保護部材125の厚み方向の深さが1mmで、直径1mmの孔が1.5mmピッチで複数形成されたものであり、側面105bに接触するように設けられる。定着液保持部126cの断熱層126端部からの幅は3mmである。断熱層126の周縁部に径の小さい孔を設け、凹凸をつけ、断熱層126の周縁部の表面積を増大させることによって、該周縁部の液体保持性を向上させ、断熱層126の表面を伝って流れる定着液9が断熱性保護部材125を伝って画像形成装置95内部に漏出するのを防止する。なお、断熱層126の周縁部の表面積を増大させるには、孔を設ける方法だけに限定されず、たとえば、切削、成形などによって表面に溝、リブなどを形成する方法、研磨処理、ブラスト処理、化学処理などが挙げられる。撥液性の低い材料からなる断熱層を有する断熱性保護部材を用いると、断熱層表面に定着液9が付着して拡がり易く、断熱性保護部材が遮断位置にあって定着液溜内を閉空間にした状態でも、定着液9が断熱層表面に付着して流動することがある。また、定着液9が付着した断熱性保護部材を遮断位置から開放位置に移動させる際に、定着液9が落下して画像形成装置95内部を汚染し、電気回路に悪影響を及ぼすこともある。しかしながら、前述のような構成を採れば、定着液9が断熱層126の表面を伝って周縁部に達しても、そこで保持されるので、定着液9の漏出、落下などによる画像形成装置95内部の汚染が防止される。なお、定着液9には揮発性の高いものを使用するので、大量の定着液9を長時間にわたって保持する必要はなく、大容量の液体保持性を有する定着液保持部126cを設ける必要はない。定着液保持部116を設けることによって、断熱層本体126aを撥液性に優れた高価な材料ではなくて、安価な材料で構成できるので、断熱性保護部材125の汎用性を高めることができる。
【0102】
図19は別形態の断熱性保護部材を示す図面である。図19(a)は断熱性保護部材128の構成を模式的に示す平面図である。図19(b)は図19(a)に示す断熱性保護部材128の切断面線XVIIIb−XVIIIbにおける断面図である。断熱性保護部材128は断熱性保護部材102に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。断熱性保護部材128は、断熱層129が断熱層本体130aと定着液保持部130bとを含むことを特徴する。断熱層本体130aは、定着液溜105の側面105bおよび塗布ローラ99に接触する面に、塗布ローラ99と接触するための凹所129aが形成される。断熱層本体130aは、撥液性の高い材料で構成されてもよく、撥液性の比較的低いゴム材料で構成されてもよい。本実施の形態では、断熱性保護部材125における断熱層本体126aを構成するゴム材料を用いて断熱層本体130aを構成するのが好ましい。定着液保持部130bは、断熱層本体130aの周縁部に設けられ、多孔質材料からなる。多孔質材料としては、定着液9との濡れ性が高くかつ定着液9と接触し得る面積(表面積)の大きな材料が好ましい。このような多孔質材料の中でも、液体保持性、弾性、形状精度、加工性などに優れるものがさらに好ましい。多孔質材料の具体例としては、フェルト、内部に連続気泡を有する発泡体であるスポンジ材料などが挙げられる。フェルトはフェルトを構成する繊維が離脱することがないので、離脱した繊維が塗布ローラ99表面に付着して、塗布ローラ99表面において定着液量が不均一になることもない。本実施の形態では、定着液保持部130bはフェルトによって形成される。この構成を採ることによって、定着液9が断熱層本体130a表面を流過して断熱性保護部材128の周縁部に達しても、定着液保持部130bによって保持されるので、断熱性保護部材128からの液垂れひいては定着液9の画像形成装置95内部への漏出が防止される。
【0103】
本発明の画像形成装置において、トナーを膨潤・軟化させる定着液9として、1または2種の有機溶剤と水とを含むものを用いるけれども、それに限定されず、従来からトナー用定着液として知られるものをいずれも使用できる。また、公知の接着成分、粘着成分などを含む定着液も使用できる。接着成分の具体例としては、たとえば、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、SBRゴムなどの高分子エラストマーを主成分とするゴム系接着剤、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリル樹脂などの親水性合成樹脂を水中に分散させてなるエマルジョン接着剤などが挙げられる。この構成を採ることによって、トナーと記録媒体Pとの付着力が、トナーの膨潤・軟化だけではなく、接着成分または粘着成分によっても付与されるので、付着力を高め、トナー像の記録媒体Pへの定着強度を向上させ得る。さらに、定着液としては、従来からこの分野で使用されるものおよび知られるものをいずれも使用できる。本発明の画像形成装置において、中間転写ベルト、搬送ベルト、各ローラなどに用いられる材料、層構造、寸法などは、前述のものに限定されず、電子写真方式の画像形成分野で常用されるものをそのまままたは適宜変更して用いることができる。また、ローラに代えて、ベルトなどの無端状部材を用いることもできる。さらに中間転写ベルト、搬送ベルトなどは無端状部材とされるけれども、ローラ形態にすることもできる。本発明の画像形成装置は、各実施の形態において、タンデム方式のカラー画像形成装置として示すけれども、それに限定されず、たとえば、中間転写ベルトが1回回転する毎に1色の画像を重ね合わせる、いわゆる4回転方式のカラー画像形成装置とすることもできる。また、カラー画像形成装置に限定されず、単色画像形成装置とすることもできる。このような本発明の画像形成装置は、たとえば、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの2種以上の複合機として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施の第1形態である画像形成装置の構成を模式式に示す断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示す画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図4】塗布ローラによる中間転写ベルト上のトナー像への定着液の付与を模式的に示す図面である。
【図5】別形態の定着液付与手段の構成を模式的に示す断面図である。
【図6】図5に示す定着液付与手段の中間転写ベルトの方向から見た正面図である。
【図7】図6に示す定着液付与手段の切断面線VII−VIIにおける断面図である。
【図8】図6に示す定着液付与手段の長手方向の部分断面図である。
【図9】保護部材移動手段の構成を模式的に示す側面図である。
【図10】本発明の実施の第2形態である画像形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図11】図10に示す画像形成装置の要部の構成を模式的に示す断面図である。
【図12】塗布ローラによる転写定着ローラ上のトナー像への定着液の付与を模式的に示す図面である。
【図13】転写定着ローラの方向から見た定着液付与手段の正面図である。
【図14】図13に示す定着液付与手段の切断面線XIV−XIVにおける断面図である。
【図15】図13に示す定着液付与手段の長手方向の部分断面図である。
【図16】別形態の断熱性保護部材の構成を模式的に示す平面図である。
【図17】図16に示す断熱性保護部材の断面図である。
【図18】図18(a)は別形態の断熱性保護部材の構成を模式的に示す平面図である。図18(b)は、図18(a)に示す断熱性保護部材の切断面線XVIIb−XVIIbにおける断面図である。
【図19】図19(a)は別形態の断熱性保護部材の構成を模式的に示す平面図である。図19(b)は図19(a)に示す断熱性保護部材128の切断面線XVIIIb−XVIIIbにおける断面図である。
【符号の説明】
【0105】
1,85 画像形成装置
2 トナー像形成手段
3 中間転写手段
4,56,86 定着液付与手段
5 転写定着手段
6 記録媒体供給手段
7 排出手段
8 トナー像
9 定着液
21 中間転写ベルト
26 加熱手段
29,116 温度検知手段
30,66,99 塗布ローラ
35 定着液溜
42,108 偏心カム
43 離接検知手段
46 中間ギア
47 駆動ギア
65,102,120,125,128 断熱性保護部材
80 保護部材移動手段
97 転写定着手段
112 転写定着ローラ
114 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を形成するトナー像形成手段と、未定着トナー像を担持して回転駆動するトナー像担持手段と、トナーを記録媒体に定着させる作用を有する揮発性定着液をトナー像担持手段上の未定着トナー像に付与する定着液付与手段と、トナー像担持手段上の未定着トナー像を記録媒体に転写定着する転写定着手段とを含む画像形成装置において、
定着液付与手段は、
回転駆動可能に設けられてトナー像担持手段上の未定着トナー像に揮発性定着液を付与する塗布部材を含む塗布手段と、
塗布部材がトナー像担持手段に対して離接可能になるように塗布手段を支持する離接手段と、
トナー像担持手段に対する塗布部材の接触または離隔の状態を検知する離接検知手段と、
塗布部材をその軸心回りに回転駆動させる回転駆動手段と、
離接手段による塗布部材のトナー像担持手段への接触または離隔および回転駆動手段による塗布部材の回転を制御する制御手段とを含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
塗布手段は、
トナー像担持手段の鉛直方向下方に、塗布部材がトナー像担持手段のトナー像担持面を臨むように設けられることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
制御手段は、
塗布部材をトナー像担持手段に接触させるに際し、接触の前に、回転駆動手段によって塗布部材を少なくとも1回転させることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
制御手段は、
塗布部材をトナー像担持手段に接触させるに際し、接触の前に、回転駆動手段によって塗布部材を0.5〜10秒間回転させることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
塗布部材によるトナー像担持手段への揮発性定着液の付与位置よりも、トナー像担持手段の回転駆動方向上流側に設けられ、トナー像担持手段を加熱する加熱手段を含み、
制御手段は、
加熱手段によるトナー像担持手段の加熱を制御するとともに、
加熱手段によってトナー像担持手段が加熱される間は、トナー像担持手段に対して離隔状態にある塗布部材を回転駆動手段によって回転させることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項6】
塗布部材によるトナー像担持手段への揮発性定着液の付与位置よりも、トナー像担持手段の回転駆動方向上流側に設けられ、トナー像担持手段を加熱する加熱手段と、
トナー像担持手段の温度を検知する温度検知手段とを含み、
塗布部材によってトナー像担持手段に付与される揮発性定着液は少なくとも2種の有機溶剤と水とを含み、
制御手段は、
加熱手段によるトナー像担持手段の加熱を制御するとともに、
温度検知手段による検知結果に応じて、トナー像担持手段に対して離隔状態にある塗布部材を回転駆動手段によって回転させることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項7】
制御手段は、
温度検知手段による、トナー像担持手段の温度が揮発性定着液に含まれる少なくとも2種の有機溶剤が有する沸点のうちの最も低い沸点よりも高い温度であるとの検知結果に応じて、トナー像担持手段に対して離隔状態にある塗布部材を回転駆動手段によって回転させることを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
トナー像担持手段と塗布部材との間に、塗布部材に接触するかまたは接触しないように設けられ、
トナー像担持手段と塗布部材との間の空間にトナー像担持手段と塗布部材とを遮断するように配置される遮断位置と、トナー像担持手段と塗布部材とが対向できるように配置される開放位置との間を移動可能に支持される断熱性保護部材と、
断熱性保護部材を遮断位置と開放位置との間で移動させる保護部材移動手段とを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項9】
断熱性保護部材は、
塗布部材に接触するように設けられ、
少なくとも塗布部材に接触する面が塗布部材の表面硬度よりも低い硬度を有する材料によって構成されることを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
断熱性保護部材は、
少なくとも塗布部材に接触する面が揮発性定着液に対して60度以上の接触角度を有する材料によって構成されることを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
断熱性保護部材は、
可撓性フィルムであることを特徴とする請求項9または10記載の画像形成装置。
【請求項12】
断熱性保護部材は、
少なくともその周縁部に設けられ、定着液を保持する定着液保持部を含むことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項13】
定着液保持部は、
揮発性定着液を吸着保持できる多孔質材料を含むことを特徴とする請求項12記載の画像形成装置。
【請求項14】
多孔質材料は、
内部に連続気泡を有するスポンジであることを特徴とする請求項13記載の画像形成装置。
【請求項15】
塗布手段は、
トナー像担持手段を臨んで開口部が形成され、その内部空間に定着液を貯留する定着液溜と、
定着液溜の内部に、少なくとも一部が開口部を介してトナー像担持手段を臨むように設けられ、回転駆動自在に支持される塗布部材とを含み、
トナー像担持手段と定着液溜との間に設けられ、
定着液溜の開口部を閉鎖して定着液溜の内部空間を閉空間とするように配置される遮断位置と、トナー像担持手段と塗布部材とが定着液溜の開口部を介して直接対向することができるように配置される開放位置との間を移動可能に支持される断熱性保護部材と、
断熱性保護部材を遮断位置と開放位置との間で移動させる保護部材移動手段とを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項16】
制御手段は、
断熱性保護部材によってトナー像担持手段に対して遮断される塗布部材を、回転駆動手段によって回転駆動させることを特徴とする請求項8〜15のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−199124(P2007−199124A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14407(P2006−14407)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】