説明

画像形成装置

【課題】簡易な排出部の構成で、高画質を維持しつつ、排出積載性をより向上させた画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着装置(像加熱手段)13と排出ローラ対20を同一の駆動源により駆動し、排出ローラ対に通しローラを採用した装置において、OHT、樹脂フィルムといった加熱によって軟化しやすい記録材や、小サイズ記録材のように、端部の蹴り出し部材で蹴り出すことができない記録材を排出する際には、定着装置13を通過した後に、排出部速度を増速させることで、排出積載能力を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート等の記録媒体(記録材、転写材)に画像を形成する機能を備えた、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置としてのレーザービーム・プリンタ(以下、LBPという)等においては、画像形成部によって画像形成された記録材は、排出ローラとこれに弾性部材の弾力により圧接されている押圧ローラにより狭持されて排出トレイ上に排出されている。
【0003】
この種の排出部をそなえた一般的なLBPの一例を図3により説明する。
【0004】
同図において、画像形成装置の装置本体内には、感光ドラム102(画像形成部)を含むプロセスユニット101が配設されており、上記感光ドラム102には、レーザースキャナ106からのレーザーが照射されて静電潜像が形成される。
【0005】
上記プロセスユニット101は、感光ドラム102を帯電する一次帯電器103、現像器104、クリーニング装置105等を含んでいる。給送トレイ114上の記録材Pは、1枚ずつ給送され、レジストローラ116により所定のタイミングで感光ドラム102へ搬送される。
【0006】
転写ローラ107により感光ドラム102に押圧されてトナー像を転写された後の記録材Pは、像加熱装置としての定着器113によりトナー像を定着され、排出部120を経由して、画像形成装置外へ排出される。図示の例では、装置本体と一体の排出トレイ118上へ排出されている。
【0007】
排出部120より、記録材Pを安定して画像形成装置外へ排出する機構については、特許文献1〜4に詳述されている。
【0008】
特許文献1に記載された構成においては、上記排出部120は、図4に示すように、矢印方向に回転自在の排出ローラ120aと、同ローラの周面に不図示の付勢手段により圧接されている押圧ローラ120bとから構成されている。そして、上記押圧ローラ120bは排出ローラ120aに同期して駆動されるか、または排出ローラ120aに従動して回転される。
【0009】
押圧ローラ120bは、その両端部または両端部近傍に複数の突起部120cが所定の間隔をもってそれぞれ配設されている。上記の排出される記録材Pは、その後端部押圧ローラ120bの突起部120cに係合して、突起部120cにより蹴りだされる状態で排出トレイ118上へ排出される。
【0010】
押圧ローラ120bの形状については、様々な提案がなされている。例えば、特許文献1では、押圧ローラの左右で突起の位相を異ならせる構成が提案されており、特許文献2では、突起ではなく溝を設けることで、記録材Pをけりだす構成が提案されている。また、特許文献3のように、回転方向に対して突起形状を非対称に構成したものや、特許文献4のように、蹴り出しのためのローラに対向物を設けない構成等が提案されている。
【0011】
一方、特許文献5〜8においては、記録材Pが定着器113を通過した後に、排出部120の搬送速度を増速することにより、記録材Pが排出部120を通過した際の慣性によ
って安定して排出する構成が提案されている。
【特許文献1】特開平5−39156号公報
【特許文献2】特許第3187493号公報
【特許文献3】特公平7−17295号公報
【特許文献4】特開平5−221570号公報
【特許文献5】特開平4−237075号公報
【特許文献6】特開平9−202503号公報
【特許文献7】特開昭64−44474号公報
【特許文献8】特開平10−226447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、排出ローラ120aに対向する押圧ローラ120bに蹴り出しのための突起120c等を設けた構成においては、突起部120cの痕が、記録材P上に画像不良や、記録材Pの変形として残ってしまうことが懸念される。
【0013】
特許文献4のように、蹴り出し用突起120cを有するローラに対向物が無い場合においても、定着により加熱された状態で軟化している記録材においては、突起によって容易に変形してしまうことから、記録材Pの変形は避け難い。このような記録材としては、OHT(オーバーヘッドプロジェクタ用透明シート)や樹脂フィルム等を例示することができる。
【0014】
そこで、図5に示すように、記録材Pの画像領域より広い幅を持つ押圧ローラ120dに、蹴り出し用部材120eを設けることにより、記録材Pの画像領域における記録材Pの変形や、画像不良が起き難い構成とした排出部120構成も実施されている。
【0015】
特に、排出ローラの幅も、押圧ローラ120d同様、記録材Pの画像領域より幅広の構成とした通しローラ120fを使用することによって、排出ローラ120a痕(ローラマーク)も防止することができ、画像不良の起き難い構成とすることができる。これは、画像領域内で、排出ローラ120aが記録材Pに接触する領域と、排出ローラ120dが記録材Pに接触しない領域とで、記録材Pの熱の奪われ方が異なることによるものである。
【0016】
以下、記録材Pの画像領域より幅広の接触面をもつローラを「通しローラ」と呼ぶこととする。
【0017】
通しローラを用いた排出部120構成においては、画像不良は起き難いものの、蹴り出しのための突起120eは、通紙可能な最大幅から画像余白分だけ内側に入った箇所より内側に設けることが出来ず、蹴り出しの能力が、特許文献1〜4の構成に比べて劣る。
【0018】
また、通紙可能な最大幅より幅の狭い記録材Pを通紙された場合、蹴り出しのための突起120eが機能せず、十分な排出性能が得られない場合があった。
【0019】
十分な排出性能が得られない場合には、記録材P後端が排出部120から完全に排出されず、二枚目以降の記録材P排出の妨げとなり、ジャム等が発生する可能性がある。
【0020】
また、特許文献5〜8に記載されている構成においては、装置が複雑化・大型化してしまうことが懸念される。
【0021】
特許文献5,6および8記載の構成においては、排出部120の駆動を、定着器113と別に取る必要があり、駆動機構が複雑化し、余分なコストがかかるうえ、装置の小型化
に対して不利となる。
【0022】
特許文献7記載の構成においては、転写装置107と定着器113の間にセンサを設ける必要がある。このため、転写〜定着間の搬送路が長くなり、装置の小型化に際して不利になると共に、小サイズの記録材P通紙の際に、記録材Pを搬送するためのベルト機構等を設ける必要があり、装置が大型化、複雑化してしまう。
【0023】
このように、装置が大型化・複雑化することを防止するためには、定着器113と排出部120の駆動を同一の駆動源から取り、さらに定着器113と排出部120の距離を比較的近づけることが必要となる。
【0024】
しかしながら、上記のような構成をとった場合には、スループット(一分間に通紙できる枚数)が著しく制約を受けることが懸念される。これは、記録材Pの種類に関わらず、全てのモードにおいて、記録材Pが排出部120を完全に通過するまでは、次の記録材Pが定着器113に突入することが出来ず、必要以上に記録材Pの通紙間隔が増してしまうためである。
【0025】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、簡易な排出部の構成で、高画質を維持しつつ、排出積載性をより向上させた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
像担持体上に形成された静電潜像を現像して得られたトナー像が転写された記録材を搬送しながら、トナー像を加熱する像加熱手段と、
前記像加熱手段によりトナー像が加熱された前記記録材を排出する排出手段と、
を備えた画像形成装置において、
前記像加熱手段及び前記排出手段は、同一の駆動源により駆動されるものであって、
前記駆動源を制御して前記像加熱手段及び前記排出手段の記録材搬送速度を変更する制御手段を備え、
前記制御手段は、搬送される記録材が予め設定されている記録材である場合、記録材後端が前記像加熱手段を通過後、前記像加熱手段通過時よりも記録材搬送速度が大きくなるように前記駆動源を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、簡易な排出部の構成で、高画質を維持しつつ、排出積載性をより向上させた画像形成装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の実施例1に係る画像形成装置Aを示す概略断面図である。本実施例に係る画像形成装置Aは、電子写真画像形成プロセスを利用した、カラー画像形成装置である。
【0030】
画像形成装置Aは、イエロー色の画像を形成する画像形成部1a、マゼンタ色の画像を
形成する画像形成部1b、シアン色の画像を形成する画像形成部1c、及びブラック色の画像を形成する画像形成部1dの4つの画像形成部(画像形成ユニット)を備えている。これらの4つの画像形成部1a,1b,1c,1d(以下、1a〜1dという場合もある)は一定の間隔をおいて一列に配置されている。
【0031】
各画像形成部1a,1b,1c,1dには、それぞれ像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムという)2a,2b,2c,2d(以下、2a〜2dという場合もある)が設置されている。各感光ドラム2a〜2dの周囲には、帯電器3a,3b,3c,3d、現像装置4a,4b,4c,4d、ドラムクリーニング装置5a,5b,5c,5dがそれぞれ設置されている。そして、帯電器3と現像装置4間の上方には露光装置6a,6b,6c,6dがそれぞれ設置されている。ここで、帯電器3a,3b,3c,3d、現像装置4a,4b,4c,4d、ドラムクリーニング装置5a,5b,5c,5dは、以下、帯電器3a〜3d、現像装置4a〜4d、ドラムクリーニング装置5a〜5dという。また、露光装置6a,6b,6c,6dは、露光装置6a〜6dという。
【0032】
各現像装置4a,4b,4c,4dには、それぞれイエロートナー,マゼンタトナー,シアントナー,ブラックトナーが収納されている。
【0033】
各感光ドラム2a〜2dは、負帯電のOPC感光体でアルミニウム製のドラム基体上に光導電層を有しており、駆動装置(不図示)によって矢印方向(時計回り)に所定のプロセススピードで回転駆動される。
【0034】
帯電手段としての帯電器3a〜3dは、帯電バイアス電源(不図示)から印加される帯電バイアスによって各感光ドラム2a〜2d表面を負極性の所定電位に均一に帯電する。
【0035】
現像装置4a〜4dは、それぞれ感光ドラム2a〜2d上に形成される各静電潜像に各色のトナーを付着させてトナー像として現像(可視像化)する。現像装置4a〜4dによる現像方法としては、例えばトナー粒子に対して磁性キャリアを混合したものを現像剤として用いて磁気力によって搬送し、各感光ドラム2a〜2dに対して接触状態で現像する2成分接触現像法を用いることができる。
【0036】
転写手段としての転写ローラ7a,7b,7c,7d(以下、7a〜7dという場合もある)は弾性部材で構成されており、各転写のニップ部にて無端ベルト状の記録材搬送ベルト(以下、転写ベルトという)8を介して各感光ドラム2a〜2dに当接している。
【0037】
尚、ここでは転写手段として、転写ローラ7を使用したが、トナー像を記録材に転写する際に高圧が印加され、かつ転写ベルト8に対して当接する転写ブレードとしてもよい。
【0038】
ドラムクリーニング装置5a〜5dは、感光ドラム2a〜2d表面にそれぞれ残った転写残トナーを除去して回収する。
【0039】
露光装置6a〜6dは、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザ光がレーザ出力部(不図示)から出力され、高速回転するポリゴンミラー(不図示)等を介して各感光ドラム2a〜2d表面を露光する。このことにより、各帯電器3a〜3dで帯電された各感光ドラム2a〜2d表面に画像情報に応じた各色の静電潜像を形成する。
【0040】
転写ベルト8は、駆動ローラ9、テンションローラ10間に張架されており、駆動ローラ9の駆動によって矢印方向(反時計回り)に回転(移動)される。転写ベルト8は、ポ
リカーボネート、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルム等のような誘電体樹脂によって構成されている。
【0041】
また、転写ベルト8の記録材搬送方向の下流側には、熱源を内包する定着フィルム11と加圧ローラ12を有する像加熱手段(定着手段)としての定着装置13が設置されている。
【0042】
次に、画像形成装置Aによる画像形成動作について説明する。
【0043】
画像形成開始信号が発せられると、所定のプロセススピードで回転駆動される各画像形成部1a〜1dの各感光ドラム2a〜2dは、それぞれ帯電器3a〜3dによって一様に負極性に帯電される。そして、露光装置6a〜6dは、出力画像の画像信号をレーザ出力部(不図示)にて光信号にそれぞれ変換し、変換された光信号であるレーザ光は帯電された各感光ドラム2a〜2d上をそれぞれ走査露光して静電潜像を形成する。
【0044】
そして、先ず感光ドラム2a上に形成された静電潜像に、感光ドラム2aの帯電極性(負極性)と同極性の現像バイアスが印加された現像装置4aによりイエローのトナーを付着させて、トナー像として可視像化する。
【0045】
そして、感光ドラム2a上のトナー像先端が感光ドラム2aと転写ローラ7a間の転写部に移動されるタイミングに合わせて、給送カセット14から記録材搬送ガイド15を通して給送される記録材(用紙)Pがレジストローラ16により転写部Taに搬送される。
【0046】
そして、転写部に搬送された記録材Pに、転写バイアス(トナーと逆極性(正極性))が印加された転写ローラ7aによりイエローのトナー像が記録材P上に転写される。
【0047】
イエローのトナー像が転写された記録材Pは、転写ベルト8によって画像形成部1bに移動される。
【0048】
そして、画像形成部1bと転写ローラ7bによって構成された転写部においても、上述した転写部と同様にして感光ドラム2bに形成されたマゼンタのトナー像が、記録材P上のイエローのトナー像上に重ね合わせて、転写される。
【0049】
以下、同様にして記録材P上に重畳転写されたイエロー、マゼンタのトナー像上に、画像形成部1c,1dの感光ドラム2c,2dで形成されたシアン、ブラックのトナー像を各転写部にて順次重ね合わせて、フルカラーのトナー像を記録材P上に形成する。
【0050】
フルカラーのトナー像が形成された記録材Pは定着装置13に搬送されて、定着フィルム11と加圧ローラ12間の定着ニップでフルカラーのトナー像を加熱、加圧して記録材P表面に熱定着した後に排出される。
【0051】
排出部において記録材Pは、排出角度規制コロ17によって、排出角度を規制されつつ、定着装置13と同一駆動源(駆動手段)により駆動される排出手段としての排出ローラ対20によって排出トレイ18上に排出され、一連の画像形成動作を終了する。
【0052】
定着ニップ部と、排出角度規制コロ17の間には、排出センサ(検出手段)22が設けられており、記録材Pの先端と後端を検知することができる。排出センサからの情報は、制御手段としての制御部21に送られ、制御部21は、駆動手段を制御することにより定着装置13と排出ローラ対20の駆動速度を制御している。これにより、定着装置13と排出ローラ対20により搬送される記録材の搬送速度が制御されることとなる。
【0053】
上記した画像を感光ドラムから記録材に転写した際において、各感光ドラム2a〜2d上に残留している転写残トナーは、各ドラムクリーニング装置5a〜5dによってそれぞれ除去されて回収される。
【0054】
本実施例における画像形成装置においては、普通紙(A4サイズやUSレターサイズといった、一般的なサイズの通常のコピー用紙)の通紙モード時に比べて、OHTや樹脂フィルム通紙時の定着装置13を駆動する速度を遅く設定している。これは、OHTや樹脂フィルムは普通紙に比べて熱容量が大きく、定着するためにより大きな熱量が必要であることと、特に、カラー画像形成装置におけるOHTにおいては、トナーを十分溶融させ、高い透過性を得る必要があるためである。
【0055】
本実施例においては、普通紙を通紙(搬送)する際の駆動速度(通常時記録材搬送速度)に対して、40%の速度で駆動している。さらに、OHTを通紙する際は、通紙の際に定着フィルム11や加圧ローラ12から奪われる熱量が大きいため、定着フィルム11や加圧ローラ12に十分蓄熱する必要がある。このため、記録材Pの通紙間隔を通常より広く取り、一分あたりの通紙枚数を少なくする制御(スループットダウン)が行われている。スループットダウンは、画像形成動作を制御する制御手段(本実施例では制御部21)が、給送カセット14から画像形成部1aに向けて記録材を給送するタイミングを制御することにより行われる。
【0056】
同様に、小サイズ記録材Pの通紙時には、定着装置13の中央部のみ通紙により定着フィルム11や加圧ローラ12の熱が奪われ、定着装置13端部は継続して加熱されることとなる。このため、普通紙の通紙時と同様のスループットで通紙を続けると、定着装置13端部が過熱により損傷を受ける可能性がある。
【0057】
特に、定着装置13の駆動速度が速い場合は、定着ニップを記録材Pが通過する時間が短くなるため、ニップ部の温度をより高温にする必要があり、中央部と端部の温度差が大きくなることが知られている。
【0058】
このため、本実施例では、小サイズ記録材Pの通紙時においても、スループットダウン制御が行われている。これは、定着装置13の駆動速度を、通常時(通常時記録材搬送速度)よりも遅くするとともに、記録材Pの通紙間隔を通常より広く取るものである。そして、定着装置13において中央部と端部の温度差が均一化されるまで、通紙を行わず定着装置13を回転させ、中央部と端部の温度差がある程度均一になった後に、次の記録材Pを通紙するものである。本実施例においては、定着速度は普通紙を通紙する際の速度に対して80%の速度で制御されている。
【0059】
ここで、小サイズ記録材Pとは、一般的に、画像形成装置の最大通紙幅(A4・USレターサイズ)より幅の狭い、B5サイズ等の記録材をいう。なお、幅とは、記録材の面上において記録材搬送方向に直交する幅方向の長さをいうものである。
【0060】
制御部21は、排出センサ22が記録材Pの先端を検知してから、所定時間経過後(記録材Pが定着ニップを通過した後)に、定着モータの速度を増速する。本実施例においては、普通紙を定着する際の定着速度まで増速する。すなわち、小サイズ記録材については125%の増速、OHTについては250%の増速となる。
【0061】
記録材P後端が排出ローラ対20を通過した後に、制御部21は、定着装置13の駆動速度を、通常の速度に戻す。通常の定着速度に戻した後、次の記録材Pを定着する準備ができた後に、次の記録材Pが定着ニップに突入するよう、制御部21によって定着装置1
3は制御される。
【0062】
上記の構成により、排出部を抜ける際の、記録材の後端残り、およびそれに伴うジャムが防止できる。
【0063】
以上説明したように、本実施例によれば、定着器と排出部を同一駆動源により駆動する簡易な構成で、画質を向上するために通しローラを採用した場合においても、排出部での速度制御を行うことで、排出積載性を満足する装置を得ることが可能となる。
【0064】
また、OHT、樹脂フィルム、小サイズ記録材、といった、特に排出時の増速が必要な特殊な記録材においては、定着時のスループットを落とす制御が既に組み込まれていることが多い。すなわち、OHT、樹脂フィルム通紙時には、記録材の熱容量が大きいため、記録材通紙間隔を延長することによって、定着装置にある程度蓄熱する必要があるため、普通紙を通紙する場合に比べてスループットを落とすのが通例である。また、小サイズの記録材においては、定着時に中央部のみ、記録材によって定着装置の熱が奪われ、定着装置端部が昇温する現象を防止するため、スループットを落とす制御を行う必要がある。
【0065】
そのため、本実施例を採用することにより、普通紙通紙時の画像形成装置のパフォーマンスを全く落とさずに、多様な種類のメディアで良好な排出積載性を得ることが可能となる。
【0066】
本実施例においては、像加熱手段として、未定着のトナー像を加熱定着する定着装置を用いたが、あくまで像加熱装置の一例であり、これに制限を受けるものではない。例えば、定着されたトナー像をさらに加熱・平滑化することにより光沢度を向上する、いわゆるグロスフィニッシャ等を像加熱装置として用いても構わない。
【0067】
本実施例においては、OHT通紙時の定着速度は、普通紙の40%、小サイズ紙通紙時の定着速度は普通紙の80%としたが、無論定着速度はこれに限定されるものではない。また、増速する際の速度も、本実施例においては普通紙通紙時の速度と同じ速度としたが、これに限らず、普通紙通紙時の速度より早い速度まで増速してもよく、十分な排出積載性が得られる範囲で変更可能である。
【0068】
特に、OHTや樹脂フィルム等の記録材を通紙する場合は、普通紙通紙時の速度より早い速度まで増速することによって、よりよい排出積載性を得ることが出来る。これは、樹脂フィルム等は、定着で与えられる熱により、軟化するため、普通紙に比べて排出時点での記録材の「こし」が小さい場合が多いからである。
【0069】
また、小サイズ記録材に関しては、普通紙の場合と異なり、排出部端部に存在する蹴り出し部材による蹴り出し効果が得られないため、普通紙に比べて、排出積載性の面で不利となることが多い。したがって、普通紙通紙時の速度より早い速度まで増速することは、小サイズ紙通紙時においても有効である。
【0070】
また、上記制御は、通紙される記録材が、予め設定されている(所定の)記録材である場合に実行されるものである。通紙される記録材が、予め設定されている記録材(本実施例では、OHT、樹脂フィルム、小サイズ記録材)であるかどうかは、次のようにして判断することができる。例えば、記録材の種類をユーザに選択させる選択手段(例えば、選択ボタン)を装置本体に設け、予め設定されているOHT、樹脂フィルム、小サイズ記録材に対応するモードをユーザが選択した場合に、予め設定されている記録材が通紙されると判断するとよい。また、記録材の種類を検出する検出手段を設け、通紙される記録材がOHT、樹脂フィルム、または小サイズ記録材であることを検出した場合に、予め設定さ
れている記録材が通紙されていると判断するとよい。
【0071】
また、排出ローラ対20は、排出ローラ20aと、排出ローラ20aの周面に不図示の付勢手段により圧接されている押圧ローラ20bとを少なくとも一対備えるものであればよい。そして、排出ローラ20a及び押圧ローラ20bのうち少なくともいずれか一方は、記録材の画像領域より幅広の接触面をもつ(画像領域全域に対して接触する)通しローラであるとよい。
【0072】
また、本実施例では制御部21は画像形成装置Aの画像形成動作の制御を行うものとして説明したが、定着装置13と排出ローラ対20との駆動制御を行う制御手段として、画像形成動作の制御を行う制御手段とは別に設けられるものであってもよい。
【実施例2】
【0073】
本発明の実施例2に係る画像形成装置は、上述した実施例1に係る画像形成装置Aに対し、記録材が定着ニップを通過した後に定着および排出部の搬送速度を切り替える際に、徐々にスピードアップを行うよう制御を行っている点が異なる。図2は、本実施例における速度増加の方法を説明するための図である。
【0074】
急激な速度切り替えを行うと、速度切り替えのショックにより、記録材が排出トレイに引っかかり、そこを起点にして記録材の丸まりが発生するおそれがあった。
【0075】
本実施例の画像形成装置において、制御部21は、図2に示すように、約0.1秒あたり、普通紙通紙速度の10%の速度で、普通紙通紙時の速度になるまで連続的に定着装置13の速度を変化させている。すなわち、小サイズ紙通紙時は、0.2秒、OHT通紙時は、0.6秒の時間をかけて、増速を行っている。なお、普通紙通紙時の速度は、図2に示す速度100%に相当する。
【0076】
本実施例の構成を採用することにより、実施例1で説明した効果に加えて、速度切り替えの際にショックが生じることが無く、スムーズに排出部に記録材を積載することが可能となる。
【0077】
なお、本実施例においては、図2に示すように、連続的に速度を変化させているが、徐々に速度が変化するものであれば、これに限るものではない。例えば、複数の段階を経て速度が変化するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施例1における画像形成装置の概略断面図。
【図2】本発明の実施例2における速度増加の方法を示す図。
【図3】従来の画像形成装置の概略断面図。
【図4】従来の画像形成装置の排出ローラの概略図。
【図5】従来の画像形成装置における通しローラの概略図。
【符号の説明】
【0079】
1 画像形成ユニット
2 感光ドラム
3 帯電装置
4 現像装置
5 クリーニング装置
6 露光装置
7 転写装置
13 定着装置
17 排出角度規制コロ
18 排出トレイ
20 排出装置(排出ローラ対)
20a 排出ローラ
20b 押圧ローラ
21 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に形成された静電潜像を現像して得られたトナー像が転写された記録材を搬送しながら、トナー像を加熱する像加熱手段と、
前記像加熱手段によりトナー像が加熱された前記記録材を排出する排出手段と、
を備えた画像形成装置において、
前記像加熱手段及び前記排出手段は、同一の駆動源により駆動されるものであって、
前記駆動源を制御して前記像加熱手段及び前記排出手段の記録材搬送速度を変更する制御手段を備え、
前記制御手段は、搬送される記録材が予め設定されている記録材である場合、記録材後端が前記像加熱手段を通過後、前記像加熱手段通過時よりも記録材搬送速度が大きくなるように前記駆動源を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記像加熱手段通過時よりも記録材搬送速度が大きくなるように前記駆動源が制御される場合には、記録材の通紙間隔を広げることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記排出手段は、記録材を挟持して搬送する、排出ローラ及び前記排出ローラに圧接して設けられた押圧ローラを少なくとも一対備え、
前記排出ローラ及び前記押圧ローラのうち少なくともいずれか一方は、記録材搬送方向に直交する幅方向が通紙可能な最大幅である記録材のうち、画像が形成される画像領域全域に対して接触する通しローラであることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記像加熱手段通過時よりも記録材搬送速度が徐々に大きくなるように前記駆動源を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
搬送される記録材が予め設定されている記録材である場合、
通常通紙される記録材の搬送速度である通常時記録材搬送速度より小さくなるように前記駆動源を制御して前記像加熱手段により記録材を搬送させ、
前記記録材の後端が前記像加熱手段を通過後、記録材搬送速度が前記通常時記録材搬送速度と略同じか又は前記通常時記録材搬送速度より大きくなるように前記駆動源を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記予め設定されている記録材は、樹脂フィルム又は透明シートであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記予め設定されている記録材は、通常通紙される記録材よりも、搬送方向に直交する幅方向の長さが短い記録材であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−223774(P2007−223774A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48999(P2006−48999)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】