説明

画像形成装置

【課題】本発明の目的は、低コスト、さらには簡易な作業で、確実かつ安定して像担持体と転写部材との圧接を解除又は低減し、装置本体を輸送・運搬した際に像担持体とこれに圧接する転写部材の不具合を防止し、且つユーザビリティを向上させることである。
【解決手段】感光体22と、転写バネ62の力により感光体22に圧接される転写ローラ24とを有する画像形成装置であって、転写ローラ24は、感光体22に圧接された状態である第一の位置と、感光体22への圧接が解除又は低減された状態である第二の位置とに移動可能であり、転写ローラ24は、前記第一の位置から前記第二の位置への移動により前記第二の位置に係止され、感光体22の駆動力により前記係止状態が解除され、転写バネ62の力により前記第二の位置から前記第一の位置へ移動することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体とこの像担持体に圧接され像担持体上の画像を記録材に転写する転写部材を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真画像形成プロセスを用いて記録材に画像を形成する電子写真画像形成装置においては、まず露光装置により電子写真感光体(以下、感光体)上に静電潜像が形成される。次に感光体上の静電潜像が現像手段により現像される。その後、現像された画像が感光体に圧接する転写部材により記録材に転写される。このため、電子写真画像形成装置においては、通常使用時は転写部材は常に感光体に圧接した状態となっている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−327293号公報
【特許文献2】特開平11−24452号公報
【特許文献3】特開2003−76117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、感光体と転写部材が圧接した状態で前記画像形成装置を運搬する場合、その運搬中に、転写部材の永久変形、転写部材と感光体間のこすれ、転写部材の軟化材や架橋材等による感光体の汚染等が発生する可能性がある。そこで、これらの不具合を防止するために、以下のような技術が開示されている。
【0005】
例えば、感光体及び感光体に作用するプロセス手段を一体的にカートリッジ化して、このカートリッジを装置本体に着脱可能とするカートリッジ方式が採用されているものがある。このような画像形成装置においては、運搬するにあたって梱包の際に、一般的に装置本体にカートリッジを装着せずに、装置本体とカートリッジを別々に梱包する場合が多い。この場合、感光体を有するカートリッジが装置本体とは別個に梱包されるため、前述の不具合は防止できる。しかしながら、別個に梱包されたカートリッジは、装置本体とともに一つの梱包箱内に梱包された状態で運搬されるため、梱包箱が大きくなり、輸送・運搬コストが高くなる。
【0006】
ここで、特許文献1には、画像形成部から搬送されたシートを収容するシート収容空間に、トナーカートリッジを梱包した状態で挿入配置した画像形成装置の梱包具について開示されている。しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、画像形成装置のシート収容空間に、梱包したトナーカートリッジを挿入配置できるだけの大きなスペースが必要であり、これらをまとめて梱包できる梱包具は必然的に大きくなる。すなわち、画像形成装置のシート収容空間にトナーカートリッジを挿入配置する構成であっても、別個に梱包したトナーカートリッジは装置本体とともに一つの梱包具内に梱包されるため、前述した場合と同様に個装箱が大きくなり、輸送・運搬コストが高くなる。
【0007】
また、特許文献2には、転写ローラのローラ軸にワンウェイクラッチを介してカムを設け、感光体が逆回転したときにその動きによってカムを回転させ、そのカムを感光体に係合させて転写ローラを感光体から離間させる構成が開示されている。しかしながら、上記特許文献2に開示された技術では、逆回転制御やワンウェイクラッチを使用することでコストが高くなる。また、カムを感光体に当接させることで離間させるため、運搬時等の物流環境下では感光体へダメージを与える可能性がある。
【0008】
さらに、特許文献3には、帯電ローラの両端部の軸部と感光体の間にスペーサを取り付け、感光体の回転に帯電ローラが従動してスペーサが回転し、スペーサが感光体に当接することで帯電ローラが感光体から離間する構成が開示されている。しかしながら、上記特許文献3に開示された技術では、離間時のスペーサの回転止めは感光体とスペーサの摩擦で行っており、運搬時等の物流環境では不安定である。また、スペーサを感光体に当接させることで離間させるため、運搬時等の物流環境下では感光体へ不具合を与える可能性がある。さらには帯電ローラを離間状態にするために感光体に対して作業する必要があり、その作業時に感光体へ不具合を与える可能性がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、低コスト、さらには簡易な作業で、確実かつ安定して像担持体と転写部材との圧接を解除又は低減し、装置本体を輸送・運搬した際に像担持体とこれに圧接する転写部材の不具合を防止し、且つユーザビリティを向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目標を達成するための本発明の代表的な構成は、像担持体と、弾性部材の力により前記像担持体に圧接され前記像担持体上の画像を記録材に転写する転写部材と、を有する画像形成装置であって、前記転写部材は、前記像担持体に圧接された状態である第一の位置と、前記像担持体への圧接が解除又は低減された状態である第二の位置と、に移動可能であり、前記転写部材は、前記第一の位置から前記第二の位置への移動により前記第二の位置に係止され、画像形成装置本体又は前記像担持体の駆動力により前記係止状態が解除され、前記弾性部材の力により前記第二の位置から前記第一の位置へ移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低コストかつ簡易な作業により、像担持体と転写部材の圧接解除又は低減が確実に行え、且つ輸送・運搬時においても前記圧接解除又は低減状態が安定している。また、前記圧接が解除又は低減された像担持体と転写部材との圧接解除又は低減状態の解除は、装置本体又は像担持体の駆動により自動的に行われ、像担持体と転写部材は圧接状態へ復帰する。この結果、像担持体と転写部材が圧接した状態で装置本体を輸送・運搬した際に生ずる不具合(転写部材の永久変形、転写部材と像担持体間のこすれ、転写部材の軟化材や架橋材等による像担持体の汚染等)が発生するのを防止することができる。また、ユーザビリティーを良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1から図8を用いて、第1実施形態に係る画像形成装置について詳しく説明する。なお、本実施形態では、画像形成装置として、プロセスカートリッジが着脱可能なレーザービームプリンタを例示している。
【0014】
図1は感光体に転写部材が圧接した状態の転写部の概略構成を示す断面図である。図2は感光体と転写部材が離間した状態の転写部の概略構成を示す断面図である。図3は離間解除動作を示す転写部の概略構成を示す断面図である。図4は装置本体の感光体を取り外した状態の転写部の概略構成を示す断面図である。なお、図1から図4において、(a)図はギアをピッチ円で示した図、(b)図は係止部近傍を断面で表した図である。図5は図1(a)に示す転写部の模式斜視図、図6は図1(b)に示す転写部の模式斜視図である。図7は電子写真画像形成装置の概略構成を示す断面図である。図8はプロセスカートリッジの概略構成を示す断面図である。
【0015】
(電子写真画像形成装置の全体構成)
まず、図7及び図8を用いて、記録シート等の記録材Sの流れに沿って画像形成装置全体の概略的な構成を説明する。図7に示すように、装置本体Eは電子写真方式によって画像を形成するものであり、給送搬送手段1によって記録材Sを画像形成手段2へ搬送してトナー像を転写し、その記録材Sを定着手段3へ搬送してトナー定着したあと、排出部へと排出するものである。具体的には、装置下部に記録材Sを積載収納するカセット11が装填されている。給送搬送手段1を構成するカセット11内に積載収納されている記録材Sが、反時計回り方向に回転する給送ローラ12によって最上位の記録材から順に繰り出され、搬送ローラ対13,14により画像形成手段2に送られる。
【0016】
画像形成手段2の近傍には記録材の通過を検知するセンサレバー15、フォトインタラプタ16が設けられており、記録材Sの通過を検知する。この記録材Sの通過を検知した後、所定時間経過後にレーザースキャナ21によって、画像情報に応じたレーザー光が時計回り方向に回転している像担持体としての感光体22上に照射され、感光体22上には静電潜像が形成される。この静電潜像はプロセスカートリッジP内の現像部にてトナー現像される。感光体22上に形成されたトナー画像は、転写部において転写部材としての転写ローラ24により未定着画像として記録材Sに転写される。未定着画像を担持した記録材Sは、定着手段3に送られ、定着手段3にて定着処理がなされる。定着手段3を通過して定着処理を終えた記録材Sは排出搬送ローラ対33により搬送され、装置上部の排出部に排出される。
【0017】
なお、図7において、4は装置の電源部および装置を制御する制御基板を有する電装部である。
【0018】
記録材Sの表裏両面記録時について説明する。記録材Sの両面に記録を行う場合には、前記定着手段3を通過して表面側に画像記録された記録材Sを排出搬送ローラ対33の逆転駆動および搬送ローラ31によりスイッチバック搬送する。更に前記記録材Sを搬送ローラ対41,42により再び画像形成手段2に搬送する。そして前述と同様に記録材Sの裏面側に画像記録を行った後に排出される。
【0019】
手差し給送部5から給送を行う場合には、手差しトレイ51を開放し、手差しトレイ51上に記録材Sを積載する。この手差しトレイ51に積載された記録材Sが時計回り方向に回転する手差し給送ローラ52によって最上位の記録材から順に繰り出され、搬送ローラ対14により画像形成手段2に送られる。なお、53はトレイ52上の記録材Sの有無を検知する記録材検知センサである。画像形成手段2に送られた後は前述と同様のため省略する。
【0020】
プロセスカートリッジPは感光体22を回転し、その表面を帯電手段である帯電ローラ23への電圧印加によって一様に帯電する。電圧印加は装置本体側の電装部4より帯電接点(不図示)を介しプロセスカートリッジ側の帯電接点(不図示)、帯電ローラ23へと給電される。次いでレーザスキャナ21からの画像情報に応じたレーザー光を感光体22へ照射して潜像を形成する。そしてこの潜像をトナーを用いて現像手段によって現像する。
【0021】
さらに説明すると、帯電ローラ23は感光体22に接触して設けられており、感光体22に帯電を行う。この帯電ローラ23は、感光体22に従動回転する。また、現像手段は、感光体22の現像領域へトナーを供給する現像ローラ25を用いて、感光体22に形成された潜像を現像する。転写ローラ24によってトナー像を記録材Sに転写した後の感光体22は、クリーニング手段であるクリーニングブレード27によって感光体22上に残留したトナーを除去した後、次の画像形成プロセスに供される。
【0022】
ドラムシャッタ28はプロセスカートリッジPの非装着時には感光体22保護のために閉じた状態であり、装置本体Eに装着されると図7に示すように開いた状態となる。
【0023】
図8に示すようにプロセスカートリッジPは、感光体22、帯電ローラ23、クリーニングブレード27等を有する感光体ユニットCと、現像ローラ25、トナー収容部29等を有する現像ユニットDとを一体的にカートリッジ化したものである。
【0024】
また、プロセスカートリッジPはユーザによって装置本体Eに着脱可能に装着することができる。本実施形態に係る画像形成装置では、後で詳しく説明するが、プロセスカートリッジPが装置本体Eに装着された状態で個装箱に梱包され、エンドユーザーのところまで輸送・運搬される。
【0025】
(転写部の構成および基本動作)
次に、図1から図6を用いて、上記画像形成装置における転写部の構成および基本動作について説明する。
【0026】
図1から図6に示すように、転写ローラ24はローラ部24aとその両端部に軸部24bを有し、それら軸部24bが軸受60にそれぞれ回転可能に支持されている。軸受60は装置本体Eの軸受支持部61に支持され、弾性部材としての転写バネ62により感光体22に向けて付勢されている。図4に示すように、プロセスカートリッジPが装着されていない状態(感光体22が装置本体Eから取り外されている状態)において、軸受突起部60aは軸受支持部61の突き当て部61aに突き当たることにより外れることはない。また、軸受60はU字形状であり、プロセスカートリッジPが装着されていない状態で転写ローラ24は容易に交換可能な構成である。また、図6に示すように、軸カバー63は転写ローラ24の軸部24bに取り付けられており、紙紛等が軸部24bと軸受60の間に入り込むことを防止している。
【0027】
前記転写ローラ24は、感光体22に圧接された状態である第一の位置(図1に示す位置)と、感光体22から離間された状態である第二の位置(図2に示す位置)と、に移動可能となっている。ここでは、第二の位置として、転写ローラ24が感光体22から離間した位置を例示しているが、これに限定されるものではなく、転写ローラ24の第二の位置は感光体22への圧接が解除又は低減された状態であっても良い。
【0028】
そして、前記転写ローラ24は、前記第一の位置から前記第二の位置への移動により前記第二の位置に係止されるようになっている。また前記転写ローラ24は、装置本体又は感光体の駆動力により前記係止状態が解除され、前記転写バネ62の力により前記第二の位置から前記第一の位置へ移動(復帰)するようになっている。これらについては後で詳しく説明する。
【0029】
軸受60および軸カバー63を係止する離間レバー64は、装置本体Eの離間レバー支持部65に回転可能に支持され、弾性部材(不図示)により転写ローラ24に向けて(図4の矢印D方向)付勢されている。この離間レバー64は、前記転写ローラ24を前記第二の位置に係止するための係止部材である。前記離間レバー64は、通常使用状態においては、図1(b)及び図4(b)に示すように、離間レバー突き当て部64aが軸受60の突起部60bの端部に突き当たる状態となる。
【0030】
また、図5に示すように、離間状態を解除するための解除部66aを有する解除レバー66が転写ローラ24と共に回転するように転写ローラ24の軸部24bに固定されている。この転写ローラ24に設けられた解除レバー66は、転写ローラ24を前記第二の位置に係止している前記離間レバー64の係止状態を解除するための係止解除部材である。
【0031】
プロセスカートリッジPが装置本体Eに装着されると、感光体22が転写ローラ24上方よりローラ部24aを押し下げる。この結果、図1に示すように、軸受突起部60aは突き当て部61aから離れ、転写ローラ24は転写バネ62により所定圧で感光体22に付勢される。この時、感光体22とのニップ部にある転写ローラ24のローラ部24aは感光体22の外周形状に沿ってたわむ。
【0032】
感光体22には感光体ギア(像担持体ギア)26が、転写ローラ24には転写ギア67がそれぞれ駆動伝達可能に固定されている。なお、前述したように、図1から図4において前記ギア26,67はピッチ円で表示している。プロセスカートリッジPが装置本体Eに装着されると、感光体ギア26と転写ギア67が噛合し、装置本体Eからの動力が感光体22から転写ローラ24へ伝達可能な状態となる。この状態で感光体22が回転することにより転写ローラ24が回転し、感光体22上の現像画像を記録材Sへ転写しつつ該記録材Sの搬送が行われる。この時、転写ローラ24に固定されている解除レバー66の解除部66aは転写ローラ24と共に回転するが、図1(a)に示すように離間レバー解除面64cには当たらない。
【0033】
装置本体Eの製造時、作業者はプロセスカートリッジPを装着する前に、非常に簡易な転写ローラ24の離間作業を行う。なお、この転写ローラ24の離間作業については後述する。この転写ローラ24の離間作業を行った後、プロセスカートリッジPを装置本体Eに装着する。この時、感光体22と転写ローラ24は前述の離間作業により確実かつ安定した離間状態となっており、この状態で個装箱に梱包され、様々な経路で運搬・輸送される。このように装置本体E内にプロセスカートリッジPを装着した状態で個装箱に梱包されるため、個装箱は小さく、運搬・輸送効率も上がる。そして、ユーザは開梱、設置を行った後に装置本体を動作させる。この時、転写ローラ24の離間状態は解除され、通常動作が可能となる。ユーザは特別な作業を全く行うことなく、転写ローラ24は画像形成可能な状態となる。ここで、転写ローラの離間動作、及び離間解除動作について詳しく説明する。
【0034】
(離間動作)
まず、プロセスカートリッジPを装着した状態において装置本体Eの転写ローラ24とプロセスカートリッジPの感光体22を接触させないようにするための、転写ローラ24の離間動作および作業について説明する。
【0035】
作業者は装置本体EにプロセスカートリッジPを装着する前に、転写ローラ24の離間作業を行う。軸カバー63の上部を図4(b)の矢印A方向へ転写バネ62の付勢力に抗して押し下げることで、転写ローラ24、軸受60、軸カバー63、解除レバー66、転写ギア65は感光体22から離間する方向へ移動する。この時、図2(b)に示すように、離間レバー64の突き当て部64aは軸受60の突起部60bの端部から外れ、離間レバー64は弾性部材(不図示)の付勢力により図2(b)の矢印D方向へ回転移動する。転写バネ62の付勢力に抗して、離間レバー64の係止部64bが軸カバー63の突起部63aを押さえることで、転写ローラ24の離間状態を維持する。すなわち、転写ローラ24は、感光体22から離間された状態である第二の位置への移動により、離間レバー64が係止位置(図2に示す位置)に移動して前記第二の位置に係止された状態となる。
【0036】
また前記離間レバー64の突き当て部64aは軸受60の突起部60bと若干のクリアランスを持って軸受60を係止できるように構成されている。このため、転写バネ62の付勢力によって軸カバー63が撓んだ場合においても、解除レバー64により軸受60を係止することで転写ローラ24の離間状態を維持することができる。
【0037】
この離間作業時に解除レバー66の解除部66aが離間レバー64の解除面64cに当接する位置の場合には、離間レバー解除面64cにより解除レバー解除部66aが押されて転写ローラ24が回転するため、転写ローラ24を確実に離間状態に維持できる。すなわち、離間レバー64を係止解除位置に移動させるように該離間レバー64に作用する解除部66aを有する解除レバー66は、転写ローラ24と共に回転する回転体である。このため、前記解除部66aが、前記転写ローラ24の前記第一の位置から前記第二の位置へ移動を妨げることはない。
【0038】
また、前述の離間状態において感光体ギア26と転写ギア67のピッチ間隔は広がるが、ギア26,67は噛合した状態である。このように転写ローラ24の位相によらず容易且つ確実に転写ローラ24の離間作業を行うことができる。
【0039】
上述のように、非常に安価な構成および簡易な作業で感光体22と転写ローラ24を確実に離間させることができる。また、装置の輸送・運搬時においても前記離間状態が安定している。この結果、輸送・運搬中に転写ローラ24の永久変形、転写ローラ24と感光体22間のこすれ、転写ローラ24の軟化材や架橋材等による感光体22の汚染等が発生することはない。また、離間状態を維持するために感光体22を利用していないため、感光体22の長手方向(軸方向)の長さを短くすることが可能となり、装置本体Eを小型化することができる。
【0040】
(離間解除動作)
上述の離間作業を終了した後、プロセスカートリッジPを装置本体Eに装着して梱包、輸送される。そして、ユーザが装置本体Eを動作させることで転写ローラ24の離間状態は解除され、通常動作が可能となる。この時の離間解除動作について説明する。
【0041】
装置本体Eの動作が開始されると、装置本体Eにより感光体22が駆動される。この時、図2及び図3に示すように感光体ギア26、転写ギア67を介して転写ローラ24、解除レバー66が矢印B方向に回転する。解除レバー66の解除部66aは離間レバー64の解除面64cを押すことで離間レバー64を図3(a)の矢印C方向へ移動させる。そして、図3(b)に示すように、離間レバー64の係止部64bが軸カバー63の突起部63aから離れる。また、離間レバー64の突き当て部64aは軸受60の突起部60bからも離れ、図1(b)に示すように離間レバー突き当て部64aが軸受突起部60bの端部に突き当たる状態となる。この結果、転写ローラ24は軸受60が転写バネ62により感光体22に向けて付勢されて移動し、図1(b)に示す通常使用位置となる。すなわち、転写ローラ24は、感光体22からの駆動力により解除レバー66が駆動されて前記離間レバー64による係止状態が解除され、転写バネ62の力により感光体22に圧接された状態である第一の位置へ復帰する。
【0042】
このようにユーザは特別な作業を全く行うことなく、装置本体Eを動作させるだけで自動的に転写ローラ24の離間状態が解除され、感光体22と転写ローラ24は圧接状態へ復帰し、通常使用が可能となる。この結果、前述した不具合(転写ローラの永久変形、転写ローラと感光体間のこすれ、転写ローラの軟化材や架橋材等による感光体の汚染等)が発生するのを防止できるだけでなく、ユーザビリティーを良くすることができる。
【0043】
なお、本実施形態において、感光体22をプロセスカートリッジPが有する構成を例示したが、感光体22を画像形成装置本体Eが有する構成であっても同じ効果を得ることができるのは明らかである。
【0044】
また、転写ローラ24への駆動伝達は感光体22が有する感光体ギア26を用いて行う構成としたが、感光体22と転写ローラ24が圧接することによって従動する構成であっても同じ効果を得ることができるのは明らかである。
【0045】
〔第2実施形態〕
図9から図11を用いて、第2実施形態に係る画像形成装置について詳しく説明する。なお、本実施形態において、前述した第1実施形態と同等の機能を有する部材には同一符号を付し、その詳しい説明は前述した第1実施形態の説明を援用するものとする。以下、本実施形態の特徴部分についてのみ説明する。
【0046】
図9は装置本体の転写部の概略構成を示す断面図であり、(a)図は装置本体の感光体を取り外した状態の転写部の概略構成を示す断面図、(b)図は感光体に転写部材が圧接した状態の転写部の概略構成を示す断面図である。図10は離間解除動作を示す転写部の概略構成を示す断面図である。図11は図9(b)に示す転写部の模式斜視図である。
【0047】
(転写部の構成および基本動作)
次に、図9から図11を用いて、本実施形態に係る画像形成装置における転写部の構成および基本動作について説明する。
【0048】
図9から図11に示すように、転写部材124は、感光体22と圧接する転写パット部124a、本体部124b、さらに両端部に軸部124cを有する。本体部124bが装置本体Eの転写部材支持部(不図示)に感光体22との圧接方向に移動可能に支持されている。本体部124bは弾性部材としての転写バネ162により感光体22に向けて付勢されている。図9(a)に示すように、プロセスカートリッジPが装着されていない状態(感光体22が装置本体Eから取り外されている状態)において、転写部材124は装置本体Eの突き当て部(不図示)に突き当たることにより外れることはない。
【0049】
前記転写部材124は、前述した実施形態と同様に、感光体22に圧接された状態である第一の位置(図1に示す位置)と、感光体22から離間された状態である第二の位置(図2に示す位置)と、に移動可能となっている。ここでも、第二の位置として、転写部材124が感光体22から離間した位置を例示しているが、これに限定されるものではなく、転写部材124の第二の位置は感光体22への圧接が解除又は低減された状態であっても良い。
【0050】
そして、前記転写部材124は、前記第一の位置から前記第二の位置への移動により前記第二の位置に係止されるようになっている。また前記転写部材124は、装置本体又は感光体の駆動力により前記係止状態が解除され、前記転写バネ162の力により前記第二の位置から前記第一の位置へ移動(復帰)するようになっている。これらについては後で詳しく説明する。
【0051】
転写部材124を離間状態で係止する離間レバー164は、装置本体Eの離間レバー支持部(不図示)に図9(a)の矢印B方向へ移動可能に支持され、弾性部材167により転写部材124に向けて付勢されている。この離間レバー164は、前記転写部材124を前記第二の位置に係止するための係止部材である。前記離間レバー164は、通常使用状態においては、図9(b)に示すように、離間レバー164の先端部が解除レバー166に突き当たる状態となる。
【0052】
また、図10に示すように、離間状態を解除するための解除部166aを有する解除レバー166は解除ギア165と共に回転するように転写部材124の軸部124cに回転自在に支持されている。この転写部材124に設けられた解除レバー166は、転写部材124を前記第二の位置に係止している前記離間レバー164の係止状態を解除するための係止解除部材である。
【0053】
プロセスカートリッジPが装置本体Eに装着されると、感光体22が転写部材124の上方より転写パット部124aを押し下げる。この結果、図9(b)に示すように、転写部材124は装置本体Eの突き当て部(不図示)から離れ、転写バネ162により所定圧で感光体22に付勢される。
【0054】
また、プロセスカートリッジPが装置本体に装着されると、感光体22は装置本体Eから動力が伝達され回転する。この状態で感光体22が回転し転写部材124と記録材Sを狭持することにより、感光体22上の現像画像を記録材Sへ転写しつつ該記録材Sの搬送が行われる。この時、図9(b)に示すように、転写部材124が有する解除ギア(転写ギア)165と装置本体Eが有するアイドラギア(本体側ギア)168は噛合しておらず、解除レバー166は回転しない。
【0055】
装置本体Eの製造時、作業者はプロセスカートリッジPを装着する前に、非常に簡易な転写部材124の離間作業を行う。なお、この転写部材124の離間作業については後述する。この転写部材124の離間作業を行った後、プロセスカートリッジPを装置本体Eに装着する。この時、感光体22と転写部材124は前述の離間作業により確実かつ安定した離間状態となっており、この状態で個装箱に梱包され、様々な経路で運搬・輸送される。このように装置本体E内にプロセスカートリッジPを装着した状態で個装箱に梱包されるため、個装箱は小さく、運搬・輸送効率も上がる。ユーザは開梱、設置を行った後に装置本体を動作させる。この時、転写部材124の離間状態は解除され、通常動作が可能となる。ユーザは特別な作業を全く行うことなく、転写部材124は画像形成可能な状態となる。ここで、転写部材の離間動作、及び離間解除動作について詳しく説明する。
【0056】
(離間動作)
まず、プロセスカートリッジPを装着した状態において装置本体Eの転写部材124とプロセスカートリッジPの感光体22を接触させないようにするための、転写部材124の離間動作および作業について説明する。
【0057】
作業者は装置本体EにプロセスカートリッジPを装着する前に、転写部材124の離間作業を行う。転写部材124の上部を図9(a)の矢印A方向へ転写バネ162の付勢力に抗して押し下げることで、転写部材124、解除レバー166、解除ギア165は感光体22から離間する方向へ移動する。この時、図10(a)に示すように、離間レバー164の先端は解除レバー166から外れ、離間レバー164は弾性部材167の付勢力により図9(a)の矢印B方向へ移動する。そして、図10(a)に示すように、転写バネ162の付勢力に抗して、離間レバー164の係止部164aが解除レバー166を押さえることで、転写部材124の離間状態を維持する。すなわち、転写部材124は、感光体22から離間された状態である第二の位置への移動により、離間レバー164が係止位置(図10(a)に示す位置)に移動して前記第二の位置に係止された状態となる。
【0058】
この離間作業時に解除レバー166の解除部166aが離間レバー164の先端に当接する場合には、離間レバー164の先端により解除レバー解除部166aが押されて解除レバー166が回転するため、転写部材124を確実に離間状態に維持できる。すなわち、離間レバー164を係止解除位置に移動させるように該離間レバー164に作用する解除部166aを有する解除レバー66は、回転体である。このため、前記解除部166aが、前記転写部材124の前記第一の位置から前記第二の位置へ移動を妨げることはない。
【0059】
また、前述の離間状態において解除ギア165とアイドラギア168は噛合した状態である。このように解除レバー166の位相によらず容易且つ確実に転写部材124の離間作業を行うことができる。
【0060】
上述のように、非常に安価な構成および簡易な作業で感光体22と転写部材124を確実に離間させることができる。また、装置の輸送・運搬時においても前記離間状態が安定している。この結果、輸送・運搬中に転写部材124の永久変形、転写部材124と感光体22間のこすれ、転写部材124の軟化材や架橋材等による感光体22の汚染等が発生することはない。また、離間状態を維持するために感光体22を利用していないため、感光体22の長手方向(軸方向)の長さを小さくすることが可能となり、装置本体Eを小型化することができる。
【0061】
(離間解除動作)
上述の離間作業を終了した後、プロセスカートリッジPを装置本体Eに装着して梱包、輸送される。そして。ユーザが装置本体Eを動作させることで転写部材124の離間状態は解除され、通常動作が可能となる。この時の離間解除動作について説明する。
【0062】
装置本体Eの動作が開始されると、装置本体Eによりアイドラギア168が図10(b)の矢印方向に駆動される。装置本体Eが有するアイドラギア168より駆動伝達され、転写部材124が有する解除ギア165が回転することで、解除レバー166が図10(b)の矢印C方向に回転する。この解除レバー166の解除部166aが離間レバー164の先端を押すことで、離間レバー164が図10(b)の矢印D方向へ移動する。すると、離間レバー164の係止部164aが解除レバー166より離れる。この結果、転写部材124は転写バネ162により感光体22に向けて付勢されて移動し、図9(b)に示す通常使用位置となる。すなわち、転写部材124は、装置本体Eからの駆動力により解除レバー166が駆動されて前記離間レバー164による係止状態が解除され、転写バネ162の力により感光体22に圧接された状態である第一の位置へ復帰する。
【0063】
このようにユーザは特別な作業を全く行うことなく、装置本体Eを動作させるだけで自動的に転写部材124の離間状態が解除され、感光体22と転写部材124は圧接状態へ復帰し、通常使用が可能となる。この結果、前述した不具合(転写ローラの永久変形、転写ローラと感光体間のこすれ、転写ローラの軟化材や架橋材等による感光体の汚染等)が発生するのを防止できるだけでなく、ユーザビリティーを良くすることができる。
【0064】
なお、本実施形態において、感光体22をプロセスカートリッジPが有する構成を例示したが、感光体22を画像形成装置本体Eが有する構成であっても同じ効果を得ることができるのは明らかである。
【0065】
また、転写部材124はパッド式の構成を例示したが、回転自在なローラ構成とし感光体22と転写部材124が圧接することによって従動する構成であっても同じ効果を得ることができるのは明らかである。
【0066】
〔他の実施形態〕
前述した実施形態では、1つのプロセスカートリッジが着脱可能な画像形成装置を例示したが、このプロセスカートリッジの使用個数はこれに限定されるものではなく、複数のプロセスカートリッジが着脱可能な画像形成装置であっても本発明は有効である。
【0067】
また前述した実施形態では、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジとして、感光体と、該感光体に作用するプロセス手段としての帯電手段,現像手段,クリーニング手段を一体に有するプロセスカートリッジを例示した。本発明はこれに限定されるものではなく、感光体の他に、帯電手段、現像手段、クリーニング手段のうち、いずれか1つを一体に有するプロセスカートリッジであっても良い。
【0068】
更に前述した実施形態では、感光体を含むプロセスカートリッジが画像形成装置本体に対して着脱自在な構成を例示した。本発明はこれに限定されるものではなく、例えば各構成部材がそれぞれ組み込まれた画像形成装置、或いは各構成部材がそれぞれ着脱可能な画像形成装置であっても本発明は有効である。
【0069】
また前述した実施形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置において、像担持体とこれに圧接する転写部材とからなる転写部に、本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1実施形態に係る感光体に転写ローラが圧接した状態の転写部の概略構成を示す断面図
【図2】第1実施形態に係る感光体と転写ローラが離間した状態の転写部の概略構成を示す断面図
【図3】第1実施形態に係る離間解除動作を示す転写部の概略構成を示す断面図
【図4】第1実施形態に係る装置本体の感光体を取り外した状態の転写部の概略構成を示す断面図
【図5】図1(a)に示す転写部の模式斜視図
【図6】図1(b)に示す転写部の模式斜視図
【図7】電子写真画像形成装置の概略構成を示す断面図
【図8】プロセスカートリッジの概略構成を示す断面図
【図9】(a)は第2実施形態に係る装置本体の感光体を取り外した状態の転写部の概略構成を示す断面図、(b)は第2実施形態に係る感光体に転写部材が圧接した状態の転写部の概略構成を示す断面図
【図10】第2実施形態に係る離間解除動作を示す転写部の概略構成を示す断面図
【図11】図9(b)に示す転写部の模式斜視図
【符号の説明】
【0071】
E …画像形成装置本体
P …プロセスカートリッジ
S …記録材
22 …感光体(像担持体)
24 …転写ローラ(転写部材)
24a …ローラ部
24b …軸部
26 …感光体ギア(像担持体ギア)
60 …軸受
60a,60b …軸受突起部
61 …軸受支持部
61a …突き当て部
62 …転写バネ(弾性部材)
63 …軸カバー
63a …突起部
64 …離間レバー(係止部材)
64a …離間レバー突き当て部
64b …係止部
65 …離間レバー支持部
66 …解除レバー(係止解除部材)
66a …解除レバー解除部
67 …転写ギア
124 …転写部材
124a …転写パット部
124b …本体部
124c …軸部
162 …転写バネ(弾性部材)
164 …離間レバー(係止部材)
164a …係止部
165 …解除ギア(転写ギア)
166 …解除レバー(係止解除部材)
166a …解除部
167 …弾性部材
168 …アイドラギア(本体側ギア)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、弾性部材の力により前記像担持体に圧接され前記像担持体上の画像を記録材に転写する転写部材と、を有する画像形成装置であって、
前記転写部材は、前記像担持体に圧接された状態である第一の位置と、前記像担持体への圧接が解除又は低減された状態である第二の位置と、に移動可能であり、
前記転写部材は、前記第一の位置から前記第二の位置への移動により前記第二の位置に係止され、画像形成装置本体又は前記像担持体の駆動力により前記係止状態が解除され、前記弾性部材の力により前記第二の位置から前記第一の位置へ移動することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写部材を前記第二の位置に係止するための係止部材と、前記転写部材に設けられ前記転写部材を前記第二の位置に係止している前記係止部材の係止状態を解除するための係止解除部材と、を有し、
前記転写部材の前記第一の位置から前記第二の位置への移動により前記係止部材が係止位置に移動して前記転写部材を前記第二の位置に係止し、前記装置本体又は前記像担持体の駆動力により前記係止解除部材が駆動されて前記係止部材による係止状態を解除し、前記弾性部材の力により前記転写部材が前記第二の位置から前記第一の位置へ移動することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写部材は転写ギアを有し、前記転写ギアは前記像担持体が有する像担持体ギアと噛合して前記像担持体から駆動力の伝達を受けることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写部材は転写ギアを有し、前記転写ギアは前記装置本体が有する本体側ギアと噛合して前記装置本体から駆動力の伝達を受けることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記係止解除部材は、前記係止部材を係止解除位置に移動させるように前記係止部材に作用する解除部を有する回転体であり、前記解除部は前記転写部材の前記第一の位置から前記第二の位置へ移動を妨げないことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体と前記像担持体に作用するプロセス手段を一体に有するプロセスカートリッジを着脱可能に有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−298545(P2007−298545A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123941(P2006−123941)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】