説明

画像形成装置

【課題】記録ヘッドのノズル面をキャップで密封してチューブポンプによって吸引を行うことで負圧を発生させてノズルから吸引を行うために、増粘インク及び気泡排出性が低く、インク排出量が多く、吸引中の脈動による圧力変動が生じる。
【解決手段】液滴を吐出するヘッド101のノズル面204をキャッピングするキャップ62と、キャップ62に吸引経路65を介して接続された負圧発生室67と、キャップ62と負圧発生室67との間の経路65を開閉する圧力開閉弁66と、負圧発生室67内を負圧状態にする負圧発生用の吸引ポンプ63と、圧力開閉弁66を閉じた状態で吸引ポンプ63を作動させ、負圧発生室67を負圧状態にした後に圧力開閉弁66を開く制御をする制御手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0004】
このような画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)においては、記録ヘッドは、インクをノズルから用紙に吐出させて記録を行なう関係上、ノズルからの溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などにより吐出不良の状態となり、記録不良を起こすという問題を抱えていることから、記録ヘッドの性能を維持回復する維持回復機構を備えている。
【0005】
例えば、記録ヘッドのノズルを密封するキャップ(キャッピング手段、キャップ部材などとも称する。)を備え、装置の非稼動時には記録ヘッドのキャッピングを行うことで、ノズル内のインクの乾燥、増粘を抑えることができるようにしている。また、記録動作の前後やその最中において、記録動作に寄与しないインク滴の吐出を行い、ノズル内で乾燥、増粘したインクを排出して、吐出性能の回復や維持を図るようにしている。
【0006】
このようなノズルの吐出性維持のための画像形成に寄与しないインク滴の吐出は予備吐出或いは空吐出と称され、専用の空吐出受けに吐出し、あるいは、キャップに対して吐出することが行われる。
【0007】
従来の維持回復機構にあっては、キャップに接続したチューブと、このチューブに吸引力を発生させるチューブポンプからなる吸引ポンプを備えるものが一般的である。
【特許文献1】特開2008−023781号公報
【0008】
なお、特許文献2にはインク貯留部から記録ヘッドにインクを供給するインク供給経路に、インク供給経路を開閉するバルブユニットが配置され、バルブユニットを閉弁した状態で吸引ポンプを駆動し、キャッピング手段の内部空間に負圧を蓄積した状態でバルブユニットを開弁させるように制御するものが記載されている。
【特許文献2】特許第3978956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したチューブポンプはチューブの変形を利用して吸引力を発生させる構成であるため、吸引キャップ内の圧力変化は、吸引ポンプ駆動開始時から徐々に高まるため、記録ヘッド内部の気泡排出性に有効である高負圧での吸引を行うには、圧力が立ち上がるまで時間がかかり、時間がかかるためにインク排出量(廃棄するインク量)が増大してしまうという課題がある。
【0010】
また、吸引時にチューブポンプ特有の脈動があり、連続的に安定した圧力をかけることができず、増粘インク及び気泡の排出性が低下してしまうという課題もある。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、記録ヘッドの維持回復動作において増粘インク及び気泡排出性を向上し、インク排出量を減少し、更に吸引中の脈動による圧力変動のない吸引を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップ部材と、
前記キャップ部材に吸引経路を介して接続された負圧発生室と、
前記キャップ部材と前記負圧発生室との間の経路を開閉する開閉手段と、
前記負圧発生室内を負圧状態にする負圧発生用ポンプと、
前記開閉手段を閉じた状態で前記負圧発生用ポンプを作動させ、前記負圧発生室を負圧状態にした後に前記開閉手段を開く制御をする制御手段と、
を備えている構成とした。
【0013】
ここで、前記記録ヘッドにインクを供給するインクタンクを有し、このインクタンクには大気に開放する大気開放手段が備えられ、前記負圧発生室を負圧状態にした後に前記開閉手段を開くときに前記大気開放手段で前記インクタンクを大気開放する構成とできる。
【0014】
また、前記負圧発生室を負圧状態にした後に前記開閉手段を開くときに前記記録ヘッド側を正圧にする構成とできる。
【0015】
また、前記負圧発生室は弾性変形可能なチューブ部材で形成されている構成とできる。
【0016】
また、前記負圧発生室は蛇腹状部材で形成されている構成とできる。
【0017】
また、前記記録ヘッドの維持回復動作を行う前に前記開閉手段を閉じて前記負圧発生室を負圧状態にしておく構成とできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る画像形成装置によれば、記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップ部材と、キャップ部材に吸引経路を介して接続された負圧発生室と、キャップ部材と負圧発生室との間の経路を開閉する開閉手段と、負圧発生室内を負圧状態にする負圧発生用ポンプと、開閉手段を閉じた状態で負圧発生用ポンプを作動させ、負圧発生室を負圧状態にした後に開閉手段を開く制御をする制御手段とを備えているので、キャップ部材内の負圧を短時間で高めて吸引を開始することができ、増粘インク及び気泡排出性が向上し、更にインク排出量も減少し、更に吸引中の脈動による圧力変動のない吸引を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する概略構成図、図2は同装置の模式的平面説明図である。
【0020】
この画像形成装置はライン型画像形成装置であり、装置本体1と、用紙Pを積載し給紙する給紙トレイ2と、印刷された用紙Pを排紙積載する排紙トレイ3と、用紙Pを給紙トレイ2から排紙トレイ3まで搬送する搬送ユニット4と、搬送ユニット4によって搬送される用紙Pに液滴を吐出し印字するヘッドモジュール51を含む画像形成ユニット5と、印刷終了後又は所要のタイミングで画像形成ユニット5の各記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構であるクリーニング装置6と、クリーニング装置6を開閉する搬送ガイド部7と、画像形成ユニット5のヘッドモジュール51にインクを供給するインクタンクユニット8と、インクタンクユニット8にインクを供給するメインタンクユニット9とを備えている。
【0021】
装置本体1は、図示しない前後側板及びステーなどで構成されており、給紙トレイ2上に積載されている用紙Pは、分離ローラ21及び給紙ローラ22によって1枚ずつ搬送ユニット4に給紙される。
【0022】
搬送ユニット4は、搬送駆動ローラ41aと搬送従動ローラ41bと、これらのローラ41a、41b間に掛け回された無端状の搬送ベルト43とを備えている。この搬送ベルト43の表面には複数の図示しない穴が形成されており、搬送ベルト43の下部には用紙Pを吸引する吸引ファン44が配置されている。また、搬送駆動ローラ41a、搬送従動ローラ41b上部には、それぞれ搬送ガイドローラ42a、42bが図示しないガイドに保持されて、自重にてベルト43に当接している。
【0023】
搬送ベルト43は、搬送駆動ローラ41aが図示しないモータにより回転されることで周回移動し、用紙Pは搬送ベルト43上に吸引ファン44により吸い付けられ、搬送ベルト43の周回移動によって搬送される。なお、搬送従動ローラ41b、搬送ガイドローラ42a、42bは搬送ベルト43に従動して回転する。
【0024】
搬送ユニット4の上部には用紙Pに印字する液滴を吐出する複数のヘッドモジュール51で構成される画像形成ユニット5が矢示A方向(及び逆方向)に移動可能に配置されている。この画像形成ユニット5は、維持回復動作時(クリーニング時)にはクリーニング装置6上方まで移動され、画像形成時には図1の位置に戻される。
【0025】
画像形成ユニット5は、液滴を吐出する複数のノズルを配列したノズル列を二列有する複数のヘッドを一列に配列したヘッドモジュール51a、51b、51c、51dが、用紙搬送方向に沿って並べてラインベース部材52に取付けられて配置されている。ここでは、ヘッドモジュール51a、51bの2つのノズル列の一方でイエロー(Y)の液滴を、他方でマゼンタ(M)の液滴を吐出し、また、ヘッドモジュール51c、51dの2つのノズル列の一方でシアン(C)の液滴を、他方でブラック(K)の液滴を吐出する。
【0026】
つまり、この画像形成ユニット5は、同じ色の液滴を吐出する2つのヘッドモジュール51が用紙搬送方向に並べて配置され、2つのヘッドモジュール51で用紙幅相当の1列分のノズル列が構成されている構成としている。
【0027】
この画像形成ユニット5の上流側にはインクタンクユニット8のインクタンク81(図示の都合上1つのインクタンクのみ符号を付している。)が配置され、供給チューブ82を介して各ヘッドモジュールユニット51に供給され、インクタンク81とヘッドモジュール51との水頭差によりヘッドモジュール51の各ヘッドに対する負圧が形成される。このインクタンクユニット8は画像形成ユニット5とともに矢示A方向に移動可能に配置されている。なお、インクタンク81からヘッドモジュール51に対する供給チューブ82は分かり易くするためヘッドモジュール51の上方から接続して状態で図示しているが、後述するように、ヘッドモジュール51の長手方向(用紙搬送方向と直交する方向)の端部に接続される。
【0028】
さらに、インクタンク81の上流側にはメインタンクユニット9が配置され、メインタンク91から供給チューブ92を介してインクがインクタンク81に供給される。
【0029】
搬送ユニット4の下流側には用紙Pを排紙トレイ3に排紙する搬送ガイド部7が設けられている。搬送ガイド部7にて案内されて搬送される用紙Pは排紙トレイ3に排紙される。排紙トレイ3は、用紙Pの幅方向を規制する対のサイドフェンス31と用紙Pの先端を規制するエンドフェンス32を備えている。
【0030】
維持回復機構(クリーニング装置)6は、画像形成ユニット5の各ヘッドモジュール51に対応して、4列分のクリーニング手段61a〜61dが配置され、1つのクリーニング手段61はヘッドモジュール51の各ヘッドに対応するキャップ部材62及び図示しないがワイパ部材などで構成されている。なお、各クリーニング手段61のキャップ部材62は各列毎に独立して上下動させることができる構成としている。さらに、クリーニング手段61の下方には、キャップ部材62でヘッドモジュール51のノズル面をキャッピングした状態でノズルからインクを吸引するための吸引ポンプ63a〜63dが配置されている。
【0031】
また、この画像形成装置においては、印刷終了後、液滴を吐出するヘッドモジュール51の各ヘッドのノズル面をクリーニング手段61でキャッピングした状態でノズルからインクを吸引する場合、あるいは、ヘッドモジュール51の各ヘッドのノズル面に付着したインクをワイピング部材で清掃する場合は、図1にも示すように、印刷停止後、搬送ユニット4全体が搬送従動ローラ41bを支点に矢印B方向に回動し、画像形成ユニット5との間の空間を画像形成時よりも大きくすることで、画像形成ユニット5の移動スペースを確保するようにしている。このとき、クリーニング装置6上部に配置されている搬送ガイド部7も支点71にて矢印C方向上方に回動され、クリーニング装置6の上方が開放される。
【0032】
そして、搬送ユニット4と搬送ガイド部7がそれぞれ解放(解除)された後に、画像形成ユニット5が用紙通紙方向(矢示A方向)に移動し、クリーニング装置6上方で停止され、クリーニング手段61が上昇して各ヘッドモジュール51のクリーニング動作(維持回復動作)に移行する。
【0033】
次に、ヘッドモジュールの詳細について図3ないし図9を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドモジュールの斜視説明図、図4は同ヘッドモジュールの板バネ部材及びベース部材を除いた正面説明図、図5は同ヘッドモジュールの側面概略模式的説明図、図6は同ヘッドモジュールの1つのヘッドの底面説明図である。
【0034】
1つのヘッドモジュール51は、液滴を吐出する複数(ここでは5個の例で示している。)のヘッド101を一列にベース部材102上に並べて配置し、これら複数のヘッド101上にヘッド配列方向に沿って複数のヘッド101にインクを分配して供給する共通流路105を形成する液体供給部材である分岐部材(共通流路部材)104が配置され、分岐部材104とベース部材102との間に架けた板バネ部材103によってヘッド101が分岐部材104側に付勢されて一体化されている。
【0035】
ヘッド101は、例えば図9に示すように、液滴を吐出する複数のノズル201を配列したノズル列201A、201Bを有するノズル面204を有している。ヘッド101は、これに限るものではなく、3列以上のノズル列を有するものを用いることもできる。
【0036】
分岐部材104は、内部に共通液室105を有し、各ヘッド101のノズル列201A、201Bに異なる色を供給するため、内部で分岐部材長手方向に沿う図示しない隔壁部にて2つの共通液室105に分けられており、2つの共通液室105に異なる色のインクを供給するため、サブタンク81からのインクが供給されるインク供給ポート106a、106bをヘッド配列方向に端部に設け、また、共通液室105の天面105aを斜めに傾斜させて形成し、天面105aの最も高い部分に空気抜き部(大気連通路)107a、107bを形成している。
【0037】
また、分岐部材104は、共通流路105となる凹部を有する本体104aと、本体104aの開口を両側から閉じる側壁部材104b、104bで構成されている。
【0038】
板バネ部材103は、分岐部材104の外天面に当接する架橋部103aと、ベース部材102を係止する係止部103bとを有し、弾性復元力でベース部材102を介してヘッド101を分岐部材104側に押し付ける方向(図5の矢示方向)に付勢して保持している。この板バネ部材103は分岐部材104の上面に設けた係合ピン104cに係合され、また、1つのヘッド101に対して2つの板バネ部材103が設けられている。
【0039】
次に、この画像形成装置に適用した本発明の第1実施形態について図7を参照して説明する。なお、図7は同実施形態の説明に供する模式的説明図である。
インクタンク81からインク供給路82(及びここでは図示を省略する分岐部材104)を介して記録ヘッドとしてのヘッド101にインク300が供給され、インクタンク81とヘッド101との水頭差によりヘッド101に対する負圧が形成される。また、インクタンク81には内部を大気に開放する大気開放通路84と、この大気開放通路84を開閉する大気開放弁85が設けられている。
【0040】
そして、ヘッド101のノズル面204をキャッピングするキャップ62と、キャップ62内のインクの廃液を排出する排出経路及び吸引経路を兼ねた吸引チューブ65と、吸引チューブ65を開閉する開閉手段としての圧力開閉弁66と、圧力開閉弁66よりも下流側に設けられた負圧発生室67と、負圧発生室67より下流側に設けられたチューブポンプで構成した負圧発生用ポンプとしての吸引ポンプ63とを備え、吸引チューブ65の他端部から排出される廃液301は廃液タンク69に排出される。
【0041】
この実施形態における制御に係わる部分について図8のブロック説明図を参照して説明する。
この制御部は、この画像形成装置全体の制御を司る本発明に係る制御手段を兼ねるマイクロコンピュータで構成した主制御部501を備えている。主制御部501は、外部の情報処理装置などから転送される画像データ及び各種コマンド情報に基づいて用紙に画像を形成するために、ヘッド制御回路502に印刷用データを送出する。
【0042】
ヘッド制御回路502は、主制御部501からの受領する印刷データ信号に基づいて、ヘッド101の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成し、このデータの転送及び転送の確定などに必要な各種信号などをヘッドモジュール51に含まれるヘッドドライバに転送するとともに、駆動波形データ格納手段である記憶部、駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器や電流増幅器等で構成される駆動波形生成部、ヘッドドライバに与える駆動波形を選択する選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバに出力して、ヘッド101を駆動制御する。
【0043】
また、主制御部501は、ドライバ503を介して、キャップ62を含むクリーニング手段61を昇降させるモータ504、吸引ポンプ63を駆動するモータ505、開閉弁66を開閉するソレノイド506を駆動制御する。なお、主制御部501は給紙や搬送、画像形成ユニット5の移動等に係わる制御も行うが図示を省略している。
【0044】
次に、この実施形態における維持回復制御について図9のフロー図を参照して説明する。
ヘッド101のノズル201からインクをキャップ62内に吸引排出するヘッド吸引を含む維持回復動作を行うときには、キャップ62を上昇させてヘッド101のノズル面をキャッピングし、圧力開閉弁66を閉じて、吸引ポンプ63を作動させる。これによって、負圧発生室67内が負圧状態になるので、吸引ポンプ63を所定時間(所定量)駆動して負圧発生室67を所要の負圧状態にした後、インクタンク81の大気開放弁85を開いてヘッド101側を正圧にし、圧力開閉弁66を開いて、キャップ62と負圧発生室67との間の経路を開放する。
【0045】
そうすると、ヘッド101のノズル面204とキャップ62との間で形成される密閉空間は負圧発生室67の負圧によって短時間で高い負圧状態になり、ヘッド101のノズル102からインクがキャップ62内に吸引排出される。
【0046】
このように、キャップ62の排出経路65を圧力開閉弁66で閉じておき、吸引ポンプ63によって負圧発生室67を負圧状態にした後、圧力開閉弁66を開くことで、ヘッド101のノズル面204をキャッピングしているキャップ62内は短時間で大きな負圧になる。
【0047】
つまり、図10に示すように、キャップ62にチューブ65を介してそのまま吸引ポンプ(チューブポンプ)63を接続し、吸引ポンプ63を駆動してキャップ62内を負圧にする場合、吸引ポンプ63による負圧の立ち上がりは緩やかで、更に脈動も発生する。これに対して、吸引ポンプ63によって負圧発生室67を負圧状態にした後圧力開閉弁66を開くことでキャップ62内を負圧にする場合、キャップ62内の負圧を一気に高めることができる。
【0048】
これにより、ヘッド101のノズル201から大きな負圧力でインクが吸引されるので、増粘インクや気泡の排出性が向上し、また、短時間で吸引を行うことができてインク排出量が減少する。さらに、吸引ポンプにチューブポンプを使用しても吸引中の脈動による圧力変動を防止できて、圧力変動のない吸引を行うことができる。
【0049】
次に、本発明の第2実施形態について図11及び図12を参照して説明する。なお、図11は同実施形態の説明に供する模式的説明図、図12は同じく作用説明に供する模式的説明図である。
ここでは、図示しないキャップ62に吸引経路165を介して接続した負圧発生室167と、キャップ62と負圧発生室167の間に配置されて吸引経路165を開閉する開閉手段としての圧力開閉弁166と、負圧発生室167に接続された排出経路168と、排出経路168を介して負圧発生室167内の空気を吸引して負圧発生室167を負圧状態にする真空ポンプ163とを備えている。負圧発生室167は容器本体167aと蓋部材167bとで密閉空間167cを形成したものである。
【0050】
このように構成したので、図11に示すように、圧力開閉弁166を閉じた状態で、圧力発生室167の容器内の空気171を真空ポンプ163で排出することで、図11に示すように、圧力発生室167の容器内は減圧された空気172となって負圧状態になる。このときの負圧は、約−70kPaから−100kPaまで上昇することが好ましい。
【0051】
その後、圧力開閉弁167を開放することで、キャップ62内が吸引されてノズルからインクが吸引排出される。このとき、吸引経路165を通じて圧力発生室167内に吸引されて溜まったインクの廃液は図示しない排液経路より排出する。
【0052】
次に、本発明の第3実施形態について図13ないし図15を参照して説明する。なお、図13は同実施形態の説明に供する模式的説明図、図14及び図15は同じく作用説明に供する模式的説明図である。
この実施形態は負圧発生室を弾性チューブで構成した例である。つまり、図示しないキャップ62に接続された弾性変形可能なチューブ(弾性チューブ)260の上流側に開閉手段である圧力開閉弁266を、圧力開閉弁266から所要の距離だけ離れた位置に吸引ポンプ263をそれぞれ配置し、圧力開閉弁266よりも上流側の弾性チューブ260の部分を吸引経路265とし、圧力開閉弁266と吸引ポンプ263との間の弾性チューブ260を負圧発生室267としている。また、弾性チューブ260は吸引ポンプ263より下流側では排出経路268を形成している。
【0053】
このように構成したので、図13に示すように圧力開閉弁266を閉じた状態で吸引ポンプ263を作動させることによって、図14に示すように、負圧発生室267内に残留しているインクの廃液301が排出されて弾性チューブ260が変形し、弾性チューブ260の負圧発生室267の部分内167aは高負圧まで上昇する。このときの負圧は、約−70kPaから−100kPaまで上昇することが好ましい。
【0054】
そこで、この状態から図15に示すように、圧力開閉弁266を開放すると、弾性チューブ260の負圧発生室267の部分が弾性復元力で元の形状に復元し、この復元によってキャップ62内が負圧になり、弾性チューブ267の体積変化分のインクの廃液302が吸引される。
【0055】
次に、本発明の第4実施形態について図16及び図17を参照して説明する。なお、図16は同実施形態の説明に供する模式的説明図、図17は同じく作用説明に供する模式的説明図である。
この実施形態は、負圧発生室を金属又は樹脂製のベローズ管(蛇腹状部材)で構成した例である。つまり、図示しないキャップ62に接続されたベローズ管360の上流側に開閉手段である圧力開閉弁366を設け、この圧力開閉弁366より下流側のベローズ部分を負圧発生室367として、負圧発生室367より下流側に吸引ポンプ363を配置し、吸引ポンプ363より下流側では排出経路368を形成している。
【0056】
このように構成したので、図16に示すように圧力開閉弁366を閉じた状態で吸引ポンプ363を作動させることによって、図17に示すように、ベローズ管360の負圧発生室367となるベローズ部分内に残留しているインクの廃液301が排出されて負圧発生室367となるベローズ部分が縮み負圧発生室367は高負圧まで上昇する。このときの負圧は、約−70kPaから−100kPaまで上昇することが好ましい。
【0057】
そこで、この状態から、圧力開閉弁366を開放すると、ベローズ管369の負圧発生室367となるベローズ部分がバネの復元力によって図16に示す元の形状に復元し、この復元によってキャップ62内が負圧になり、ベローズ管360の体積変化分のインクが吸引される。
【0058】
次に、上記各実施形態における負圧発生用ポンプの駆動(作動)及び圧力開閉弁の開閉動作の異なる例について図18及び図19を参照して説明する。なお、ここでは前記第1実施形態の例で説明する。
図18に示す例では、前述したように、圧力開閉弁66を閉じた状態(OFF状態)で、負圧発生用ポンプ63を所定時間オン状態にして負圧発生室67を負圧状態にする。その後、圧力開閉弁66を開く(ON状態にする)ことで、キャップ62内の負圧が例えば−0kPaから−90kPaまで急峻に上昇する。これにより、キャップ62内にインクが吸引排出される。
【0059】
これに対し、図19に示す例では、圧力開閉弁66を閉じた状態(OFF状態)で、負圧発生用ポンプ63をオン状態にして負圧発生室67を負圧状態にする。この負圧発生用ポンプ63の駆動を継続したまま、所定時間が経過した時から圧力開閉弁66を複数回開閉することで、キャップ62内の負圧が例えば−0kPaから−90kPaまで急峻に上昇して下降する変化が間欠的に複数回行われる。このように、連続的に急激な圧力変化を起こすことで、更なるヘッド内の気泡排出性を向上することができる。
【0060】
なお、上記実施形態ではライン型画像形成装置に適用した例で説明しているが、シリアル型画像形成装置にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例の全体構成を説明する側面概略説明図である。
【図2】同じく要部平面説明図である。
【図3】ヘッドモジュールの斜視説明図である。
【図4】同ヘッドモジュールの板バネ部材及びベース部材を除いた正面説明図である。
【図5】同ヘッドモジュールの側面概略模式的説明図である。
【図6】同ヘッドモジュールの1つのヘッドの底面説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態の説明に供する模式的説明図である。
【図8】同実施形態の制御部の概要を示すブロック説明図である。
【図9】同じく維持回復制御の説明に供するフロー図である。
【図10】本発明に係る負圧発生室を使用した場合とチューブポンプを使用した場合のキャップ内負圧値の時間に対する変化を説明する説明図である。
【図11】本発明の第2実施形態の説明に供する模式的説明図である。
【図12】同じく作用説明に供する模式的説明図である。
【図13】本発明の第3実施形態の説明に供する模式的説明図である。
【図14】同じく作用説明に供する模式的説明図である。
【図15】同じく作用説明に供する模式的説明図である。
【図16】本発明の第4実施形態の説明に供する模式的説明図である。
【図17】同じく作用説明に供する模式的説明図である。
【図18】各実施形態における負圧発生用ポンプの駆動(作動)及び圧力開閉弁の開閉動作の一例の説明に供する説明図である。
【図19】各実施形態における負圧発生用ポンプの駆動(作動)及び圧力開閉弁の開閉動作の他の例の説明に供する説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1…装置本体
4…搬送ユニット(搬送部)
5…画像形成ユニット
6…クリーニング装置(維持回復機構)
7…搬送ガイド部
8…インクタンクユニット
9…メインタンクユニット
51…ヘッドモジュール
52…ラインヘッドベース部材
61…クリーニング手段
62…キャップ
63…吸引ポンプ
65…吸引経路
66…圧力開閉弁
67…負圧発生室
101…ヘッド
104…分岐部材
163…真空ポンプ
165…吸引経路
166…圧力開閉弁
167…負圧発生室
260…弾性チューブ
263…吸引ポンプ
265…吸引経路
266…圧力開閉弁
267…負圧発生室
360…ベローズ管
363…真空ポンプ
365…吸引経路
366…圧力開閉弁
367…負圧発生室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップ部材と、
前記キャップ部材に吸引経路を介して接続された負圧発生室と、
前記キャップ部材と前記負圧発生室との間の経路を開閉する開閉手段と、
前記負圧発生室内を負圧状態にする負圧発生用ポンプと、
前記開閉手段を閉じた状態で前記負圧発生用ポンプを作動させ、前記負圧発生室を負圧状態にした後に前記開閉手段を開く制御をする制御手段と、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載に画像形成装置において、前記記録ヘッドにインクを供給するインクタンクを有し、このインクタンクには大気に開放する大気開放手段が備えられ、前記負圧発生室を負圧状態にした後に前記開閉手段を開くときに前記大気開放手段で前記インクタンクを大気開放することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記負圧発生室を負圧状態にした後に前記開閉手段を開くときに前記記録ヘッド側を正圧にすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記負圧発生室は弾性変形可能なチューブ部材で形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記負圧発生室は蛇腹状部材で形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記記録ヘッドの維持回復動作を行う前に前記開閉手段を閉じて前記負圧発生室を負圧状態にしておくことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−292021(P2009−292021A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147298(P2008−147298)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】