説明

画像形成装置

【課題】トナーをフレア状態に維持することができずにトナー担持体外周面に付着してしまうことに起因する画像濃度ムラ等の不具合を軽減する。
【解決手段】内側電極及び外側電極を備えたトナー担持ローラ41における絶縁性の外周面にトナーを担持させ、内側電極及び外側電極に対して互いに異なる電圧を印加することにより、内側電極及び外側電極それぞれに対向するトナー担持ローラ外周面部分でトナーをホッピングさせるための電界(フレア電界)をトナー担持ローラ外周面の外側に形成する現像装置において、トナー担持ローラの外周面に対して最も強く当接するトナー供給ローラ42を有し、フレア電界よりも強い電界強度でトナー担持ローラにおける外周面に担持されるトナーをホッピングさせるための補助電界を、トナー供給領域に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー担持体の外周面に担持されたトナーを現像領域内に送り込むことで潜像を現像して得られる画像を最終的に記録材上に転移させて画像を形成する、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに異なる電圧が印加される複数の電極を備えたトナー担持体を有する現像装置が知られている。
例えば、トナー担持体上のトナーを感光体等の潜像担持体に直接接触させないで、トナーを潜像担持体上の潜像に供給して現像を行う現像装置がある。そして、この現像装置の一例としては、トナー担持体上のトナーをクラウド化させることによってトナーを潜像担持体上に供給する方式を採用するものがある。この方式に使用されるトナー担持体は、外周面に沿って複数種類の電極が所定のピッチで配置され、その複数種類の電極の外周面側を保護層で覆ったものである。この複数種類の電極に対し、時間的に変化する互いに異なる電圧をそれぞれ印加して、時間的に変化する電界を互いに近接する複数種類の電極間に形成すると、この電界(以下「フレア電界」という。)によりトナー担持体上のトナーを互いに近接する複数種類の電極間で飛翔(ホッピング)させることができる(このようにトナーが飛翔する現象を、以下「フレア」と呼ぶ。)。これにより、トナー担持体の外周面近傍の空間でトナーがクラウド化した状況となる。
【0003】
特許文献1には、フレア電界を形成するための2種類の電極がローラ状のトナー担持体における同心円上に設けられている現像装置が開示されている。この現像装置で使用するトナー担持体は、2種類の櫛歯状の電極を、互いの櫛歯部分が相手の櫛歯部分の間に入り込むように外周面に沿って配置したものである。そして、各種類の電極に上述した電圧をそれぞれ印加することにより、櫛歯部分間でトナーを飛翔させ、フレア状態を実現することができる。
【0004】
また、特許文献2には、フレア電界を形成するために3種類の電極を備えたローラ状のトナー担持体が開示されている。このトナー担持体は、3種類の電極のうちの2種類の電極は同心円上に設けられているが、残りの1種類の電極は上記2種類の電極よりも外周面側に配置されている。このトナー担持体を用いた現像装置でも、各種類の電極に互いに位相が異なる3相の電圧をそれぞれ印加することにより、各種電極間でトナーを飛翔させ、フレア状態を実現することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トナーがトナー担持体の外周面に付着することなくフレア状態となるためには、トナー担持体の外周面上において、互いに近接する複数種類の電極間に形成されるフレア電界によりトナーが受けるトナー担持体の外周面から離れる方向への力F1と、トナーとトナー担持体の外周面との間の付着力F2との大小関係が重要となってくる。詳しくは、フレア電界によりトナーが受けるトナー担持体外周面から離れる方向への力の最大値F1MAXが、常に、トナーとトナー担持体の外周面との間の付着力F2よりも大きければ、トナーを安定してフレア状態に維持することができる。しかし、付着力F2は、主に非静電的付着力が支配的であるため、トナー担持体外周面の表面状態によって大きく左右される。トナー担持体の外周面には、経時使用によりトナーの添加物やワックスあるいはトナー母体等が付着あるいは固着する場合がある。このような場合、その付着部分あるいは固着部分では付着力F2が大きくなってしまい、その付着力F2がフレア電界による力の最大値F1MAXを上回る事態が生じ得る。
【0006】
詳しく説明すると、一般に、トナー担持体の外周面に対しては何らかの当接部材(トナー供給部材、トナー量規制部材、シール部材等)が当接しているため、その当接箇所を通過する際にはトナーが強制的にトナー担持体外周面へ押しつけられることになる。このようにトナーが押しつけられることにより生じる付着力F2は、ホッピングしているトナーがトナー担持体外周面に瞬間的に着地したときに生じる付着力F2よりも大きいものとなる。そのため、当接箇所で押しつけて付着したトナーをホッピングさせ始めるためには、トナーのフレア状態を維持し続ける場合よりも、大きなフレア電界が必要となる。トナー担持体外周面が初期状態のままであれば、トナーが強制的に押しつけられたときの付着力F2は、フレア電界による力の最大値F1MAXよりも十分に小さいので、トナー担持体外周面上に一旦は付着したトナーであっても、フレア電界の作用を受けてホッピングし始めることができる。しかし、経時使用によりトナー添加物等が付着あるいは固着している状態となっていると、その付着力F2はフレア電界による力の最大値F1MAXを上回って、フレア電界の作用を受けてもトナーがホッピングを開始することができないおそれがある。
【0007】
このように付着力F2がフレア電界による力の最大値F1MAXを上回る事態が生じると、トナーがトナー担持体外周面上に付着したままの状態で維持されることになる。その結果、このような状態のトナーが現像領域へ送り込まれると、フレア状態となっているトナーとの間の現像効率の差によって現像ムラが生じ、画像濃度ムラを発生させる原因となるといった問題が生じる。
【0008】
なお、経時使用によりトナー担持体外周面の表面状態がトナー添加物等の付着状態あるいは固着状態となってもその付着力F2が最大値F1MAXを下回るほどの強いフレア電界が形成できれば、トナーを安定してフレア状態に維持することが可能である。しかし、そのような強いフレア電界を形成するためには、トナー担持体上の複数種類の電極に対して相応の大きなバイアスを印加する必要が生じるため、電極間の絶縁性の確保が困難である。電極間の絶縁性が維持できなくなると、電極間リークが生じ、フレア電界自体が形成できなくなるので、フレア電界だけでトナーを経時的に安定してフレア状態に維持することは難しい。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、トナーをフレア状態に維持することができずにトナー担持体外周面に付着してしまうことに起因する画像濃度ムラ等の不具合を軽減できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、潜像担持体と、互いに異なる電圧が印加される複数種類の電極部材を備えたトナー担持体における外周面にトナーを担持させ、該複数種類の電極部材に対して互いに異なる電圧を印加することにより、該複数種類の電極部材それぞれに対向するトナー担持体外周面部分で上記トナーをホッピングさせるための電界を該トナー担持体外周面の外側に形成し、該トナー担持体の外周面を移動させることにより現像領域内にホッピングした状態のトナーを送り込み、上記潜像担持体上の潜像にトナーを供給して該潜像を現像する現像装置とを有し、該潜像を現像して得られる画像を最終的に記録材上に転移させて、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、上記現像装置は、上記トナー担持体の外周面に対して当接する当接部材を有し、上記電界よりも強い電界強度で上記トナー担持体における外周面に担持されるトナーをホッピングさせるための補助電界を、該トナー担持体の外周面周回軌道上の一部分に形成する補助電界形成手段を有することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記補助電界を、上記当接部材が当接する当接領域から現像領域までの間又は該当接領域内に形成することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記現像装置は、現像領域を通過したトナーを上記トナー担持体外周面から回収するトナー回収部材を有し、上記補助電界を、現像領域から上記トナー回収部材がトナーを回収する回収領域までの間又は該回収領域内に形成することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記補助電界形成手段は、上記一部分に対してトナー担持体外周面外側から対向する位置に配置されていることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の画像形成装置において、上記補助電界形成手段は、上記トナー担持体の外周面に接触する補助電界形成部材と、該補助電界形成部材と該トナー担持体の外周面との間に上記補助電界が形成されるような電圧を、該補助電界形成部材に印加する電圧供給手段とを含み、上記トナー担持体の外周面に接触する該補助電界形成部材の接触面を、トナーとの摩擦によってトナーに対して正規帯電極性の電荷を与える材料で形成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項4又は5の画像形成装置において、上記補助電界形成手段は、上記トナー担持体の外周面に対向配置され、表面にトナーを担持した状態で表面移動して、その表面上のトナーを該トナー担持体の外周面へ供給するトナー供給部材と、該トナー供給部材の表面と該トナー担持体の外周面との間に上記補助電界が形成されるような電圧を、該トナー供給部材に印加する電圧供給手段とを含むことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記補助電界形成手段は、上記トナー担持体の外周面に担持されたトナーの現像領域へ搬送される量を規制するトナー量規制部材と、該トナー量規制部材と該トナー担持体の外周面との間に上記補助電界が形成されるような電圧を、該トナー量規制部材に印加する電圧供給手段とを含むことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記トナー担持体の外周面を、トナーとの摩擦によってトナーに対して正規帯電極性の電荷を与える材料で形成したことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記トナー担持体は、上記複数種類の電極部材をトナー担持体外周面法線方向で互いに異なる位置に配置し、該複数種類の電極部材間に絶縁層を介在させた構成を有することを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記現像装置を複数設け、各現像装置により互いに異なる色のトナーで各色に対応する潜像をそれぞれ現像し、これにより得られる各色画像が互いに重なり合ったカラー画像を形成する構成を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、トナー担持体に備わった複数種類の電極により形成されるフレア電界よりも強い電界強度でトナー担持体外周面上のトナーをホッピングさせる補助電界を、トナー担持体の外周面周回軌道上の一部分に形成することができる。これにより、当接部材によりトナー担持体外周面に押し付けられてフレア電界だけではホッピングさせ始めることができなくなったトナーであっても、そのトナーが上記一部分を通過する際に、フレア電界よりも強い補助電界の作用でホッピングさせ始めることができる。そして、フレア状態であるトナーがトナー担持体外周面に着地するときの付着力は、当接部材により押し付けられてトナー担持体外周面に付着したトナーの付着力よりも小さい。したがって、フレア電界だけではホッピングさせ始めることができなくなったトナーであっても、補助電界によりホッピングし始めれば、補助電界よりも弱いフレア電界でもフレア状態を維持することが可能となる。よって、上記一部分でホッピングを開始したトナーは、当該一部分を通過した後もホッピングし続けることができる。その結果、本発明によれば、トナーがトナー担持体外周面に付着してしまうことに起因する画像濃度ムラ等の不具合を軽減することができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】同画像形成装置における現像装置を示す概略構成図である。
【図3】同現像装置のトナー担持ローラの電極配置を説明するためにトナー担持ローラを回転軸に対して直交する方向から見たときの模式図である。
【図4】同トナー担持ローラを、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
【図5】同トナー担持ローラの内側電極及び外側電極にそれぞれ印加する内側電圧と外側電圧の一例を示すグラフである。
【図6】内側電極及び外側電極へ印加する内側電圧と外側電圧の他の例を示すグラフである。
【図7】内側電極及び外側電極へ印加する内側電圧と外側電圧の更に他の例を示すグラフである。
【図8】内側電極及び外側電極への給電構成を、ローラ軸に沿って切断したときの模式図である。
【図9】同給電構成を模式的に示す斜視図である。
【図10】変形例1におけるトナー担持ローラを、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
【図11】同トナー担持ローラにおける電気力線の概略を図示した説明図である。
【図12】変形例2におけるトナー担持ローラを、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
【図13】同トナー担持ローラにおける電気力線の概略を図示した説明図である。
【図14】同トナー担持ローラにおける外側電極層をトナー担持ローラの外周面側から見たときの模式図である。
【図15】変形例3におけるトナー担持ローラを、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
【図16】同トナー担持ローラにおける外側電極層をトナー担持ローラの外周面側から見たときの模式図である。
【図17】(a)〜(c)はトナー担持ローラの製造手順を示す説明図である。
【図18】変形例4におけるトナー担持ローラを、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
【図19】同トナー担持ローラにおける外側電極層をトナー担持ローラの外周面側から見たときの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を電子写真方式の画像形成装置に適用した一実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係る画像形成装置の構成及び動作について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の主要部を示す概略構成図である。
この画像形成装置は、複数の現像装置を有し、潜像担持体としてのベルト状の感光体1上に各色のトナー像を重ねて多色画像を形成する画像形成装置である。ベルト状の感光体1は、水平方向よりも鉛直方向にスペースをとる縦長の姿勢で複数のローラに張架しながら、図示しない駆動部により図中時計回り方向に回転駆動される。この感光体1における図中左側の張架面(以下「左側張架面」という。)はほぼ鉛直方向に延在する姿勢になっている。
【0014】
感光体1の左側張架面の図中左側方には、感光体1と対向するよう、複数色、例えばマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)の画像をそれぞれ形成するための複数の画像形成手段として4つのプロセスユニット6M,6C,6Y,6Kが鉛直方向に並ぶように配設されている。これら4つのプロセスユニット6M,6C,6Y,6Kは、それぞれ、現像装置4M,4C,4Y,4Kと、感光体1を一様帯電せしめる帯電装置2M,2C,2Y,2Kと、図示しない除電器とを1つのユニットとして図示しない共通の保持体に保持している。そして、画像形成装置の筺体に対して現像装置4M,4C,4Y,4K、帯電装置2M,2C,2Y,2K及び除電器がそれぞれ一体的にプロセスユニット6M,6C,6Y,6Kとして着脱され、ユーザーによる交換が可能となっている。
【0015】
プロセスユニット6M,6C,6Y,6Kにおける帯電装置2M,C,Y,Kと現像装置4M,4C,4Y,4Kとの間から、図示しない潜像形成手段としての光書込装置による各色の露光ビーム3M,3C,3Y,3Kが感光体1へ照射される。また、本画像形成装置は、さらに、図示しない転写手段、クリーニング手段、給紙装置、定着装置などを備えている。
【0016】
感光体1は、図1中矢印方向に回転駆動され、マゼンタのプロセスユニット6Mでマゼンタの帯電装置2Mにより一様に帯電されて、次いで図示しない光書込装置によりマゼンタの画像データで変調された露光ビーム3Mによって露光されることで静電潜像が形成される。この静電潜像がマゼンタの現像装置4Mにより現像されてマゼンタのトナー像となる。その後、感光体1は図示しない除電器により除電される。
次いで、感光体1は、シアンのプロセスユニット6Cで、シアンの帯電装置2Cにより一様に帯電された後、図示しない光書込装置によりシアンの画像データで変調された露光ビーム3Cによって露光されることでシアンの静電潜像が形成される。この静電潜像がシアンの現像装置4Cにより現像されて上記マゼンタのトナー像と重なるシアンのトナー像となる。その後、感光体1は図示しない除電器により除電される。
さらに、感光体1は、イエローのプロセスユニット6Yで、イエローの帯電装置2Yにより一様に帯電された後、図示しない光書込装置によりイエローの画像データで変調された露光ビーム3Yによって露光されることでイエローの静電潜像が形成される。この静電潜像がイエローの現像装置4Yにより現像されて上記マゼンタのトナー像及び上記シアンのトナー像と重なるイエローのトナー像となる。その後、感光体1は図示しない除電器により除電される。
最後に感光体1は、ブラックのプロセスユニット6Kで、ブラックの帯電装置2Kにより一様に帯電された後、図示しない光書込装置によりブラックの画像データで変調された露光ビーム3Kによって露光されることでブラックの静電潜像が形成される。この静電潜像がブラックの現像装置4Kにより現像されて、上記マゼンタのトナー像、上記シアンのトナー像及び上記イエローのトナー像と重なるブラックのトナー像となることでフルカラー画像が形成される。
【0017】
一方、給紙装置(不図示)から記録紙等の記録材が給送され、この記録材には、転写バイアスが印加される転写手段としての転写ローラにより感光体1上のフルカラー画像が転写される。フルカラー画像が転写された記録材は、定着装置(不図示)によりフルカラー画像が定着され、外部へ排出される。感光体1は、フルカラー画像転写後にクリーニング手段(不図示)により残留トナー等が除去される。
【0018】
このような構成の画像形成装置では、同一の感光体1上に4色の書き込みを行うので、4つの感光体を用いて各感光体上のトナー像を転写により重ね合わせる一般的なタンデム方式の画像形成装置と比較すると、各トナー像間における位置ズレがほとんど発生せず、高画質のフルカラー画像を得ることができる。
なお、本発明は、一般的なタンデム方式の画像形成装置に適用することはできるし、他の画像形成装置にも適用できる。
【0019】
次に、本実施形態の画像形成装置に採用される現像装置について説明する。
なお、現像装置4M,4C,4Y,4Kは、収容されるトナーが異なる以外は、同じ構成、動作であるので、以下添え字M,C,Y,Kを省略して説明を行う。
【0020】
図2は、本実施形態に係る現像装置4の概略構成図である。
現像装置4は、トナー担持体としてのトナー担持ローラ41と、トナー担持ローラ41へトナーを供給するトナー供給部材としてのトナー供給ローラ42と、トナーの層厚を規制するトナー規制部材としての規制ブレード43と、入口シール44と、図中時計回り方向に回転駆動される第1搬送スクリュー45と、図中反時計回りに回転駆動される第2搬送スクリュー46とを有している。第2搬送スクリュー46は、その回転駆動によってトナーを図中手前側から図中奥側へと搬送する。図中奥側の端部付近まで搬送されたトナーは、第1搬送スクリュー45側へ進入し、今度は第1搬送スクリュー45の回転駆動によって図中奥側から図中手前側へと搬送される。第1搬送スクリュー45により搬送されている途中のトナーの一部は、トナー供給ローラ42側へと移動し、トナー供給ローラ42の表面に担持される。トナー供給ローラ42の表面に担持されたトナーは、図中反時計回り方向のトナー供給ローラ42の回転駆動に伴って、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面との接触位置(以下「トナー供給領域」という。)へと搬送される。
【0021】
このトナー供給領域では、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面とが互いに逆方向(カウンター方向)へ移動している。したがって、トナー供給領域へと搬送されてきたトナー供給ローラ42上のトナーは、トナー担持ローラ41の外周面に擦りつけられ、トナー担持ローラ41の外周面へと移動する。このとき、トナーは、トナー担持ローラ41の外周面との摩擦により正規極性(本実施形態ではマイナス極性)側に帯電する。
【0022】
トナーが供給されたトナー担持ローラ41は、現像装置4のケーシングに設けられた開口から外周面の一部を露出させている。この露出箇所は、感光体1に対して数十〜数百[μm]の間隙を介して対向している。このようにトナー担持ローラ41と感光体1とが対向している領域が、本画像形成装置における現像領域となっている。
【0023】
トナー担持ローラ41の表面上に供給されたトナーは、後述する理由により、トナー担持ローラ41の表面上でホッピングしながら、トナー担持ローラ41の回転に伴って、トナー供給領域から現像位置に向けて搬送される。現像領域まで搬送されたトナーは、トナー担持ローラ41と感光体1上の静電潜像との間の現像電界によって、感光体表面上の静電潜像部分に付着し、これにより現像が行われる。現像に寄与しなかったトナーは、ホッピングしながらトナー担持ローラ41の回転によってさらに搬送され、トナー供給領域へと運ばれる。そして、トナー供給領域へ進入する際に、トナー供給ローラ42によりトナー担持ローラ41上から掻き取られることで、現像装置4のケーシング内部に戻され、再利用される。
【0024】
次に、本実施形態におけるトナー担持ローラ41の具体的構成について説明する。
図3は、本実施形態におけるトナー担持ローラ41の電極配置を説明するためにトナー担持ローラ41を回転軸に対して直交する方向から見たときの模式図である。なお、説明の都合上、表面層56や絶縁層55は図示していない。
図4は、本実施形態におけるトナー担持ローラ41を、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
本実施形態のトナー担持ローラ41は、中空状のローラ部材で構成されており、その最内周に位置する最内周電極部材又は内周側電極部材としての内側電極53aと、最外周側に位置していて内側電極53aへ印加される電圧(内側電圧)とは異なる電圧(外側電圧)が印加される最外周電極部材としての櫛歯状の外側電極54aとを備えている。また、内側電極53aと外側電極54aとの間にはこれらの間を絶縁するための絶縁層55が設けられている。また、外側電極54aの外周面側を覆う表面層56も設けられている。すなわち、本実施形態のトナー担持ローラ41は、内周側から順に、内側電極53a、絶縁層55、外側電極54a、表面層56の4層構造となっている。
【0025】
内側電極53aは、トナー担持ローラ41の基体としても機能しており、SUSやアルミニウム等の導電性材料を円筒状に成型した金属ローラである。このほか、内側電極53aの構成としては、ポリアセタール(POM)やポリカーボネート(PC)等からなる樹脂ローラの表面にアルミニウムや銅などの金属層等からなる導電層を形成したものが挙げられる。この導電層の形成方法としては、金属メッキ、蒸着等により形成する方法や、ローラ表面に金属膜を接着する方法などが考えられる。
【0026】
内側電極53aの外周面側は絶縁層55に覆われている。本実施形態において、この絶縁層55は、ポリカーボネートやアルキッドメラミン等で形成されている。また、本実施形態において、絶縁層55の厚みは、3[μm]以上50[μm]以下の範囲内が好ましい。3[μm]よりも小さくなると、内側電極53aと外側電極54aとの間の絶縁性が十分に保てなくなり、内側電極53aと外側電極54aとの間でリークが発生してしまう可能性が高くなる。一方、50[μm]よりも大きくなると、内側電極53aと外側電極54aとの間で作られる電界が表面層56よりも外側に形成されにくくなり、表面層56の外側に強いフレア電界(外部電界)を形成することが困難となる。本実施形態では、メラミン樹脂からなる絶縁層55の厚みを20[μm]としている。絶縁層55はスプレー法やディップ法等によって内側電極53a上に均一な膜厚で形成することができる。
【0027】
絶縁層55の上には外側電極54aが形成される。本実施形態において、この外側電極54aは、アルミニウム、銅、銀などの金属で形成されている。櫛歯状の外側電極54aの形成方法としては、種々の方法が考えられる。例えば、絶縁層55の上にメッキや蒸着によって金属膜を形成し、フォトレジスト・エッチングによって櫛歯状の電極を形成するという方法が挙げられる。また、インクジェット方式やスクリーン印刷によって導電ペーストを絶縁層55の上に付着させて櫛歯状の電極を形成するという方法も考えられる。
【0028】
外側電極54a及び絶縁層55の外周面側は、絶縁性の表面層56により覆われている。トナーは、表面層56上でホッピングを繰り返す際、この表面層56との接触摩擦によって帯電する。トナーに正規帯電極性(本実施形態ではマイナス極性)を与えるため、本実施形態では、表面層56の材料として、シリコーン、ナイロン(登録商標)、ウレタン、アルキッドメラミン、ポリカーボネート等が使用される。本実施形態ではポリカーボネートを採用している。また、表面層56は、外側電極54aを保護する役割も持ち合わせているので、表面層56の膜厚としては、3[μm]以上40[μm]以下の範囲内が好ましい。3[μm]よりも小さいと、経時使用による膜削れ等で外側電極54aが露出し、トナー担持ローラ41上に担持されたトナーやトナー担持ローラ41に接触するその他の部材を通じてリークしてしまうおそれがある。一方、40[μm]よりも大きいと、内側電極53aと外側電極54aとの間で作られる電界が表面層56よりも外側に形成されにくくなり、表面層56の外側に強いフレア電界を形成することが困難となる。本実施形態では、表面層の膜厚は20[μm]としている。表面層56は、絶縁層55と同様にスプレー法やディッピング法等によって形成することができる。
【0029】
本実施形態では、内側電極53aと外側電極54aとの間で作られる電界、より詳しくは、内側電極53aの外側電極54aとは対向していない部分(外側電極54aの櫛歯間に位置する内側電極53aの部分)と外側電極54aの櫛歯部分との間で作られる電界が、表面層56の外側に形成されることで、トナー担持ローラ41上のトナーをホッピングさせ、これによりトナーをクラウド化させる。このとき、トナー担持ローラ41上のトナーは、内側電極53aに絶縁層55を介して対向した表面層部分と、これに隣接する外側電極54aに対向した表面層部分との間を、飛翔しながら往復移動するように、ホッピングすることになる。
【0030】
トナーを安定してクラウド化させるためには、相応する大きさのフレア電界を形成することが重要となるが、このような大きなフレア電界を形成するためには内側電極53aと外側電極54aとの間に大きな電位差を形成する必要がある。しかし、このような大きな電位差を安定して形成するためには、内側電極53aと外側電極54aとの間を安定かつ有効に絶縁し、リークを防止することが重要である。
【0031】
ここで、フレア電界を形成するための2種類の電極をそれぞれ櫛歯状に形成して同心円上に配置し、互いの櫛歯部分が相手の櫛歯間に入り込むように構成した場合、その櫛歯状電極の形成品質が悪いと、2種類の電極間の絶縁性が著しく低下し、リークが起きやすい。具体的には、例えば、エッチングで電極形成する場合には除去すべき金属膜の一部が残存していたり、インクジェット法やスクリーン印刷法で電極形成する場合には電極間に導電ペーストが付着してしまったりする事態が起こり得る。このような事態が生じると、2種類の電極間でリークが起きやすいなり、適正なフレア電界を形成することができなくなる。また、この構成においては、ローラの樹脂表面上に櫛歯状電極を高い品質で形成したとしても、2種類の櫛歯状電極を形成した後にその外周面側を絶縁材で覆うことにより電極間に絶縁材を充填して電極間の絶縁性を得るため、電極間にはローラの樹脂表面と絶縁材との界面が形成され、この界面を通じたリークが生じやすく、比較的大きな電圧を印加すると電極間の絶縁性が著しく低下する。
【0032】
本実施形態によれば、内側電極53aの上に絶縁層55を設け、その絶縁層上に櫛歯状の外側電極54aを形成した構成であるため、これらの電極間にリークの原因となり得るような界面は存在しない。また、トナー担持ローラ41の製造段階において、リークの原因となり得る導電材が電極間に介在する可能性も非常に少なくできる。したがって、本実施形態によれば、内側電極53aと外側電極54aとの間を安定かつ有効に絶縁することができ、比較的大きな電圧を印加する場合でもリークを効果的に防止することができる。
なお、本発明は、フレア電界を形成するための2種類の電極をそれぞれ櫛歯状に形成して同心円上に配置し、互いの櫛歯部分が相手の櫛歯間に入り込むように構成した例においても適用可能である。
【0033】
また、本実施形態において、外側電極54aの電極幅(各櫛歯部分の幅)は、10[μm]以上120[μm]以下であるのが好ましい。10[μm]よりも小さいと、細すぎて電極が途中で断線してしまうおそれがある。一方、120[μm]より大きいと、外側電極54aの被給電部54bからの距離が遠い箇所の電圧が低くなり、その箇所でトナーを安定かつ有効にホッピングさせることが困難となる。本実施形態の被給電部54bは、図3に示すように、トナー担持ローラ41の外周面上における軸方向両端に設けられている。よって、本実施形態では、外側電極54aの電極幅が120[μm]より大きいと、トナー担持ローラ41の軸方向中央部におけるフレア電界が軸方向両端部のフレア電界よりも相対的に低くなり、軸方向中央部に担持されているトナーを安定かつ有効にホッピングさせることが困難となる。
【0034】
また、本実施形態では、外側電極54aの電極ピッチ(櫛歯部分間の距離)は、電極幅と同じか広いのが好ましい。電極幅よりも小さいと、内側電極53aからの電気力線の多くが表面層56の外側に出る前に外側電極54aへ収束してしまい、表面層56の外側に形成されるフレア電界が弱くなってしまうからである。一方、電極ピッチが大きいと、電極間中央のフレア電界が弱くなってしまう。本実施形態において、電極ピッチは、電極幅以上であって電極幅の5倍以下の範囲内であるのが好ましい。
本実施形態では、電極幅及び電極ピッチをいずれも80[μm]に設定している。
【0035】
また、本実施形態では、外側電極54aの電極ピッチを、トナー担持ローラ41の周方向にわたって一定となるように設定されている。電極ピッチを一定とすることで、内側電極53aと外側電極54aとの間で作られるフレア電界がトナー担持ローラ41上の周方向にわたってほぼ均一となる。よって、現像位置で周方向に均一なトナーのホッピングを実現することが可能となり、均一な現像が可能となる。
【0036】
次に、内側電極53a及び外側電極54aに印加する電圧について説明する。
トナー担持ローラ41上の内側電極53a及び外側電極54aには、それぞれパルス電源51A,51Bから第1電圧である内側電圧及び第2電圧である外側電圧が印加される。パルス電源51A,51Bが印加する内側電圧及び外側電圧は、矩形波が最も適している。ただし、これに限らず、例えばサイン波で三角波でもよい。また、本実施形態では、フレア用電極を形成するための電極が内側電極53a及び外側電極54aの2相構成であり、各電極53a,54aには互いに位相差πをもった電圧がそれぞれ印加される。
【0037】
図5は、内側電極53a及び外側電極54aにそれぞれ印加する内側電圧と外側電圧の一例を示すグラフである。
本実施形態において、各電圧は矩形波であり、内側電極53aと外側電極54aにそれぞれ印加される内側電圧と外側電圧は、互いに位相がπだけズレた同じ大きさ(ピークトゥピーク電圧Vpp)の電圧である。よって、内側電極53aと外側電極54aとの間には、常にVppだけの電位差が生じる。この電位差によって電極間に電界が発生し、この電界のうち表面層56の外側に形成されるフレア電界によって表面層56上をトナーがホッピングする。本実施形態において、Vppは100[V]以上2000[V]以下の範囲内であるのが好ましい。Vppが100[V]より小さいと、十分なフレア電界を表面層56上に形成できず、トナーを安定してホッピングさせるのが困難となる。一方、Vppが2000[V]より大きいと、経時使用により電極間でリークが発生する可能性が高くなる。本実施形態では、Vppを500[V]に設定している。
また、本実施形態において、内側電圧と外側電圧の中心値V0は、画像部電位(静電潜像部分の電位)と非画像部電位(地肌部分の電位)との間に設定され、現像条件によって適宜変動する。
【0038】
本実施形態において、内側電圧と外側電圧の周波数fは、0.1[kHz]以上10[kHz]以下であるのが好ましい。0.1[kHz]より小さいと、トナーのホッピングが現像速度に追いつかなくなるおそれがある。一方、10[kHz]より大きいと、トナーの移動が電界の切り替わりに追従できなくなり、トナーを安定してホッピングさせるのが困難となる。本実施形態では、周波数fを500[Hz]に設定している。
【0039】
図6は、内側電極53a及び外側電極54aへ印加する内側電圧と外側電圧の他の例を示すグラフである。
この例では、内側電極53aについては、図5に示したものと同様の内側電圧が印加されるが、外側電極54aについては、直流電圧が印加される。この場合、電極間の電位差はVpp/2となる。よって、この例におけるVppの好適な範囲は、200[V]以上4000[V]以下である。この例によれば、内側電極53aと外側電極54aとの位相差を考慮する必要がなく、電源コストが安くなる。
【0040】
図7は、内側電極53a及び外側電極54aへ印加する内側電圧と外側電圧の更に他の例を示すグラフである。
この例では、外側電極54aについては、図5に示したものと同様の内側電圧が印加されるが、内側電極53aについては、直流電圧が印加される。この場合も、電極間の電位差はVpp/2となる。よって、この例におけるVppの好適な範囲は、200[V]以上4000[V]以下である。この例も、内側電極53aと外側電極54aとの位相差を考慮する必要がなく、電源コストが安くなる。
【0041】
図8は、本実施形態における内側電極53a及び外側電極54aへの給電構成を、ローラ軸に沿って切断したときの模式図である。
図9は、同給電構成を模式的に示す斜視図である。
本実施形態における内側電極53a及び外側電極54aへの給電構成において、内側電極53aは、トナー担持ローラ41のローラ軸と一体化されており、そのローラ軸端面が被給電部53bとなる。ローラ軸端面で構成される被給電部53bには、パルス電源51Aに接続された給電ブラシ57が当接している。一方、トナー担持ローラ41の外周面両端部分には表面層56が設けられておらず、トナー担持ローラ41の外周面における外側電極54aの両端部分は露出しており、この露出面が被給電部54bとなる。その露出面で構成される被給電部54bには、パルス電源51Bに接続された給電コロ58が当接している。この給電コロ58は、回転自在に支持されており、トナー担持ローラ41の回転に伴い、被給電部54bに当接したまま連れ回り回転する。
【0042】
なお、本実施形態では、外側電極54aに外側電圧を印加するための給電コロ58が2つ設けられているが、1つであっても3つ以上であってもよい。外側電極54aに外側電圧を印加するための給電コロが複数あれば、一部の給電コロで接触不良による給電不良が生じても、他の給電コロにより給電を行うことができるので、安定した給電を行うことが可能となる。
【0043】
また、本実施形態のように、トナー担持ローラ41の外周面に外側電極54aの一部分を露出させ、その露出部分を被給電部54bとして、これに給電コロ58を当接させて給電する方式を採用する場合、その被給電部54bは、トナー担持ローラ41上における現像幅(感光体上において静電潜像が形成され得る領域と対向し得る領域幅)よりも軸方向外側に位置することが望まれる。なぜなら、被給電部54bが現像幅内に位置すると、トナー担持ローラ41と被給電部54bとの間で押しつぶされたトナーが現像に寄与することになり、その部分で現像不良が発生するからである。より好ましくは、被給電部54bは、トナー担持ローラ41上におけるトナー供給幅(トナー供給ローラ42からトナーが供給される領域幅)よりも軸方向外側に位置することが望まれる。なぜなら、被給電部54bがトナー供給幅内に位置すると、トナー担持ローラ41と被給電部54bとの間に多量のトナーが介在し、給電不良が起きやすくなるからである。本実施形態では、被給電部54bがトナー担持ローラ41上におけるトナー供給幅よりも軸方向外側に位置するように構成している。更に、本実施形態では、トナー供給幅内のトナーが被給電部54bに付着しないように、ローラ両端部に位置する各被給電部54bの軸方向中央側に図示しないトナーシールが設けられている。
【0044】
なお、本実施形態では、給電部材として、被給電部54bに連れ回り回転する給電コロ58を用いているが、これに限らず、例えば、導電性ブラシや導電性板バネなどを用いてもよい。なお、導電性ブラシや、導電性板バネなどのように被給電部54bに対して摺動する給電部材を用いる場合、被給電部54bとの接点部分の摩耗を抑制するために導電性グリスなど充填するとよい。
また、本実施形態では、内側電極53aの被給電部がローラ軸端面である場合について説明したが、これに限らず、例えばローラ軸の周面やローラ本体部の端面を被給電部としてもよい。
【0045】
次に、トナー担持ローラ41に対するトナーの供給構成について説明する。
トナー供給領域では、当接部材としてのトナー供給ローラ42により、トナーをトナー担持ローラ41の外周面へ擦りつけることにより、トナーを摩擦帯電させつつ、トナー担持ローラ41上にトナー供給する。この擦りつけによりトナーは大きなストレスを受けることになるので、経時使用によりトナーの添加物やワックスあるいはトナー母体等がトナー担持ローラ41の外周面に付着あるいは固着する場合がある。トナーは、トナー供給領域において最も大きい押し付け力を受けるので、このトナー供給領域でのトナーとトナー担持ローラ外周面との付着力は最大となる。このとき、そのトナー担持ローラ外周面にトナー添加物等が付着していると、トナーとトナー担持ローラ外周面との付着力はより大きいものとなる。その結果、そのトナー担持体外周面が初期状態のままであれば、フレア電界だけでホッピングを開始させることができたところ、経時使用によりフレア電界だけではホッピングを開始させることができない事態が起こり得る。
【0046】
そこで、本実施形態においては、図2に示すように、補助電界形成部材としてのトナー供給ローラ42に対して電圧供給手段としての電源47を接続し、フレア電界よりも強い電界強度でトナー担持ローラ41の外周面に担持されるトナーをホッピングさせるための補助電界を形成する補助電界形成手段を設けている。本実施形態において、電源47は、トナー担持ローラ41上の内側電極53aへ内側電圧を印加するパルス電源51Aである。すなわち、トナー供給ローラ42には、トナー担持ローラ41上の内側電極53aに印加される内側電圧と同じ電圧が印加されている。これにより、トナー担持ローラ41の外周面上においては、トナー供給ローラ42に印加された電圧によって、トナー供給領域並びにそのトナー担持ローラ表面移動方向上流側及び下流側に形成される電界(補助電界)は、フレア電界と重畳して、フレア電界だけの場合よりも大きな電界強度をもつ。これにより、フレア電界だけではホッピングを開始させることができなかったトナーであっても、ホッピングを開始させることができるようになる。そして、一旦ホッピングが開始すれば、フレア電界だけでもホッピングを持続させることができるので、トナーのフレア状態が維持される。
【0047】
なお、本実施形態では、トナー供給ローラ42に印加する電圧を内側電圧と同じとし、トナー供給ローラ42の電源47としてパルス電源51Aを利用する場合について説明したが、トナー供給ローラ42に印加する電圧を外側電圧と同じとし、トナー供給ローラ42の電源47としてパルス電源51Bを利用してもよいし、専用の電源を用いてもよい。いずれにしても、フレア電界よりも強い電界強度でトナーをホッピングさせることができる補助電界を、トナー担持ローラ41の外周面とトナー供給ローラ42の表面との間に形成できればよい。
【0048】
また、本実施形態では、補助電界をトナー担持ローラ41の外周面とトナー供給ローラ42の表面との間に形成する場合について説明したが、トナー担持ローラ41の外周面に対向する他の部材とトナー担持ローラ41の外周面との間に補助電界を形成するようにしてもよい。この場合、当該他の部材に電圧を印加することになる。特に、規制ブレード43のような既存の部材に電圧を印加して補助電界を形成するようにすれば、新たな補助電界形成部材を配置する必要がなくなり、有利である。
【0049】
〔実験例〕
次に、上記実施形態における画像形成装置を用いて行った実験例について説明する。
本実験例においては、以下に示す3つの実施例と1つの比較例について、経時的にフレア状態が維持できているかどうかを確認する実験を行った。トナー担持ローラ41上においてフレア状態を維持できていないトナーが存在すると、これが画像濃度ムラとなって表れる。そこで、本実験では、画像面積率が5%であるテスト画像を10000枚連続プリントした後、ハーフトーン画像を出力して、画像濃度ムラの有無を目視により10段階評価(0.5刻み、5点満点)した。この評価において、得点が高いほど画像濃度ムラが少なく、経時的にフレア状態が維持できているということになる。
【0050】
本実験例における主な前提条件は次のとおりである。
・感光体径φ:60[mm]
・感光体線速:300[mm/s]
・トナー担持ローラ径φ:16[mm]
・トナー担持ローラ線速:300[mm/s]
・トナー担持ローラ回転方向:感光体回転方向に対して連れ回り方向
・現像ギャップ:300[μm]
・トナー供給ローラ径φ:14[mm]
・トナー供給ローラ線速:195[mm/s]
・トナー供給ローラ回転方向:トナー担持ローラ回転方向に対してカウンター方向
・トナー供給ローラ材料:ウレタンスポンジ
・トナー供給ローラのトナー担持ローラへの食込量:1.5[mm]
・規制ブレード材料:りん青銅
・規制ブレードの当接圧:6[gf/cm]
【0051】
本実験例において、内側電極53aに印加される内側電圧V1及び外側電極54aに印加される外側電圧V2は、その外形は図5に示したようなもので、いずれも、中心値V0が−300V、Vppが500V(−50V、−550V)、周波数fが1kHzであり、位相が互いにπだけズレている。
【0052】
実施例1は、トナー供給ローラ42に対して電圧を印加してトナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面との間に補助電界を形成する例である。トナー供給ローラ42に印加される電圧は、内側電圧V1と同じである。
実施例2は、規制ブレード43に対して電圧を印加して規制ブレード43とトナー担持ローラ41の外周面との間に補助電界を形成する例である。規制ブレード43に印加される電圧は、内側電圧V1と同じである。
実施例3は、トナー供給ローラ42及び規制ブレード43の両方に対して電圧を印加してトナー供給ローラ42及び規制ブレード43とトナー担持ローラ41の外周面との間にそれぞれ補助電界を形成する例である。トナー供給ローラ42及び規制ブレード43に印加される電圧は、いずれも内側電圧V1と同じである。
比較例は、トナー供給ローラ42にも規制ブレード43にも電圧を印加せず、トナー担持ローラ41の外周面には補助電界を形成しない例である。
【0053】
本実験例においては、実施例1がランク4と評価され、実施例2がランク4と評価され、実施例3がランク4.5と評価され、比較例がランク3と評価された。
本実験例によれば、補助電界を形成しない比較例に比べて、実施例1及び2のようにトナー担持ローラ41の外周面周回軌道上の1箇所(トナー供給領域やトナー規制領域)に補助電界を形成すれば、画像濃度ムラの向上が見られることが確認された。
また、トナー担持ローラ41の外周面周回軌道上の1箇所ではなく2箇所(トナー供給領域及びトナー規制領域)に補助電界を形成すれば、更に画像濃度ムラの向上が見られることも確認された。
【0054】
〔変形例1〕
次に、外側電極54aの変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。
通常、各外側電極54a上の大部分のトナーが、フレア電界により、各外側電極54aにそれぞれ隣接する2つの外側電極間部分(外側電極54aとは対向していない内側電極53aが対向する部分。以下「内側電極対向部」という。)のいずれかへ移動でき、かつ、各内側電極対向部上の大部分のトナーが、フレア電界により、各内側電極対向部にそれぞれ隣接する2つの外側電極54a上のいずれかへ移動できるように、フレア電界の強さに応じて、外側電極54aの幅(トナー担持ローラ表面移動方向長さ)や内側電極対向部の幅を設定する。
【0055】
ここで、外側電極54aの幅及び内側電極対向部の幅が均等であり(厳密には製造誤差による多少の不均等が生じている。)、内側電極53a及び外側電極54aそれぞれが均等な電位となるのであれば、トナー担持ローラ41上でムラの少ないフレア電界が形成できる。このような場合、トナー担持ローラ41上でホッピングするトナーに他の外力が作用しない限り、トナー担持ローラ41上のトナーは、内側電極53a及び外側電極54aが対向する外周面全域にわたってほぼ均一に分散した状態で、ホッピングすることができる。
しかし、内側電極53a及び外側電極54aそれぞれが均等な電位にならず、それぞれの電極53a,54a内で例えばトナー担持ローラ41の表面移動方向に製造誤差による電位勾配が生じるなどにより、トナー担持ローラ41の表面移動方向において偏ったフレア電界が形成される場合が生じ得る。この場合、トナー担持ローラ41上でホッピングするトナーは、その電位勾配に応じて外側電極54a及び内側電極対向部をホッピングしながら渡り歩くように、トナー担持ローラ41の表面移動方向に偏るように移動する。その結果、トナー担持ローラ41上でトナーが大きく偏在し、トナー担持ローラ41上にトナー量の大きなムラ(低周波のムラ)が生じてしまう。
また、トナー担持ローラ41の表面近傍に生じる気流などがトナーに作用して、トナーをトナー担持ローラ41の表面移動方向方向上流側又は下流側へ移動させる外力が発生する場合もある。例えばトナー担持ローラ41の表面移動方向方向下流側への外力が発生した場合、フレア電界と外力の作用を受けて、トナー担持ローラ41上でホッピングするトナーの多くがホッピング時にトナー担持ローラ表面移動方向方向下流側へ移動する。そのため、多くのトナーが外側電極54a及び内側電極対向部をホッピングしながらトナー担持ローラ表面移動方向方向下流側へ渡り歩くように、トナー担持ローラ41の表面移動方向に偏るように移動する。その結果、トナー担持ローラ41上でトナーが大きく偏在し、トナー担持ローラ41上にトナー量の大きなムラ(低周波のムラ)が生じてしまう。
上記のようなムラは、画像濃度ムラを引き起こす原因となる。
【0056】
図10は、本変形例1におけるトナー担持ローラ41を、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
図11は、電気力線の概略を図示した説明図である。
本変形例1において、外側電極54aの幅Xは均等となるように製造されるが、内側電極対向部の幅は、トナー担持ローラ41の表面移動方向において短い幅Y1と長い幅Y2とが交互に存在するように製造されている。内側電極対向部の幅において、短い幅Y1と長い幅Y2との差(Y2−Y1)は、内側電極対向部の幅を均等に製造しようとするときの製造誤差の範囲を超える差である。このような構成においては、電位勾配や気流などが原因でトナーをトナー担持ローラ表面移動方向方向上流側又は下流側へ移動させる力が発生した場合でも、以下に説明するように、トナー担持ローラ41上でトナーが大きく偏在することを抑制できる。
【0057】
すなわち、上記のような力が発生すると、トナー担持ローラ41上でホッピングするトナーの多くが、その力の向きにトナー担持ローラ表面移動方向に沿って移動しようとする。ここで、1つの外側電極54aに着目したとき、図11に示すように、これに隣接する2つの内側電極対向部との間で作られる各フレア電界(表面層56の外側に形成される電界)の強さは、その内側電極対向部の幅によって相対的に変わってくる。すなわち、短い幅Y1の内側電極対向部との間に形成されるフレア電界よりも、長い幅Y2の内側電極対向部との間に形成されるフレア電界の方が強くなる。そして、長い幅Y2の内側電極対向部との間に形成されるフレア電界は、内側電極53a及び外側電極54aに印加される電圧が同じであれば、内側電極対向部の幅を均等とした場合に比べて強い電界となる。したがって、上記のような力が発生した場合でも、外側電極54a上からその力の方向に隣接する長い幅Y2の内側電極対向部へホッピングした多くのトナーを、再び元の外側電極54a上へ戻すことが可能となる。その結果、外側電極54a上からその力の方向に隣接する長い幅Y2の内側電極対向部へ移動したトナーのうち、更にその力の方向に隣接する外側電極54aへ渡り歩くことが少なくなる。
【0058】
このように、本変形例1においては、長い幅Y2の内側電極対向部が、上記のような力の作用を受けてその力の向きに移動しようとするトナーの移動を妨げる障壁の役割を果たし、トナー担持ローラ41上でトナーが大きく偏在することを抑制できる。よって、トナー担持ローラ41上にトナー量の大きなムラ(低周波のムラ)が生じるのを抑制でき、画像濃度ムラを抑制できる。
なお、本変形例1においては、短い幅Y1の内側電極対向部とこれに隣接する外側電極54aとの間付近に存在するトナーの量よりも、長い幅Y2の内側電極対向部とこれに隣接する外側電極54aとの間付近に存在するトナーの量の方が多くなるので、微視的にみればトナー担持ローラ41上でトナー量のムラが生じる。しかし、このようなムラはその周期が非常に短い高周波のムラであるため、画像濃度に影響が出にくく、画像濃度に影響が出たとしても人間が感知できるようなムラにはならないので、実質的に画質に影響しない。
【0059】
本変形例1において、内側電極対向部の長い幅Y2は、内側電極対向部の短い幅Y1の2倍〜5倍に設定するのが好ましい。2倍未満の場合、長い幅Y2の内側電極対向部との間に形成されるフレア電界を十分に強い電界とすることができず、上記障壁としての役割を十分に果たすことができず、画像濃度ムラの抑制効果が低いものとなってしまう。一方、5倍を越える場合、その長い幅Y2の内側電極対向部の中央部に存在するトナーが隣接する外側電極54a上に移動できず、トナーを効率的にクラウド化させることが困難となる。なお、内側電極対向部の短い幅Y1は、外側電極54aの電極幅と同程度とするのが好ましい。
本変形例1においては、外側電極54aの電極幅を40[μm]、内側電極対向部の短い幅Y1を40[μm]、内側電極対向部の長い幅Y2を120[μm]に設定している。
【0060】
なお、本変形例1においては、外側電極54aの幅Xを均等とし、内側電極対向部の幅を不均等とする場合について説明したが、逆に、外側電極54aの幅Xを不均等とし、内側電極対向部の幅を均等とする場合でも、同様の効果が得られる。
また、本変形例1においては、内側電極対向部の幅を、トナー担持ローラ41の表面移動方向において短い幅Y1と長い幅Y2とが交互に存在するように不均等としているが、不均等の方法は限られない。例えば、短い幅Y1が2つ以上続いた後に1つの長い幅Y2が存在するというように不均等としてもよい。また、幅の種類が3種類以上となるようにしてもよい。
【0061】
〔変形例2〕
次に、外側電極54aの他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
図12は、本変形例2におけるトナー担持ローラ41を、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
図13は、電気力線の概略を図示した説明図である。
本変形例2においては、内側電極53aの外周面側に絶縁層55を設けた後、その絶縁層55の全体に、アルミニウム、銅、銀などを主成分とした外側電極層を設ける。この外側電極層は、アルミニウム、銅、銀などに絶縁性粒子54cを分散させたもので、その金属部分が外側電極54aとなる。絶縁性粒子54cの平均粒径は、外側電極層の層厚よりも大きい。これにより、図13に示すように、内側電極53aからの電気力線が絶縁性粒子54cを通じて表面層56の外側へ出るようになり、表面層56の外側にフレア電界を効率よく形成できる。絶縁性粒子54cとしては、ポリエステル、エポキシ等の樹脂やガラスビーズなどの電気的絶縁物が挙げられる。また、絶縁層55上に外側電極層を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、絶縁性粒子54cを分散させた導電ペーストをスクリーン印刷によって絶縁層55の上に直接形成する方法が挙げられる。外側電極層の層厚は、数[μm]〜数十[μm]が望ましい。本変形例2では5[μm]に設定している。
【0062】
図14は、外側電極層をトナー担持ローラ41の外周面側から見たときの模式図である。
本変形例2においては、外側電極層全体に対する絶縁性粒子54cの体積比率を変化させることで、形成される外側電極54aの表面積を制御することができ、フレア電界の強さが制御可能である。本変形例2においては、外側電極層全体に対する絶縁性粒子54cの体積比率が0.2以上0.8以下の範囲内であれば、トナーを十分にクラウド化させることができる。外側電極層全体に対する絶縁性粒子54cの体積比率が0.8よりも大きい場合には、外側電極層の大半を絶縁性粒子54cが占めることによって、フロート電極が多数存在してしまう。すなわち、外側電極層へ印加された電圧は、絶縁性粒子54cによって分断されていない外側電極54aを通じて外側電極層全体に行き渡ることになるが、外側電極層の大半を絶縁性粒子54cが占めると、外側電極54aの多くの部分が絶縁性粒子54cにより分断されて電気的にフロート状態になる。なお、外側電極層全体に対する絶縁性粒子54cの体積比率が0.8以下であってもフロート電極は存在する可能性はあるが、少数ならばフレア電界の形成に大きな影響はない。一方、外側電極層全体に対する絶縁性粒子54cの体積比率が0.2よりも小さい場合には、内側電極53aからの電気力線の多くが表面層56の外側に出る前に外側電極54aへ収束してしまい、表面層56の外側に形成されるフレア電界が弱くなってしまう。本変形例2では、外側電極層全体に対する絶縁性粒子54cの体積比率を0.4に設定している。
【0063】
本変形例2によれば、外側電極54aの広さが不均等となり、また絶縁性粒子54cの粒子間距離(上記変形例1における内側電極対向部の幅に相当)も不均等となる。その結果、上記変形例1と同様に、トナー担持ローラ41上に局部的に強いフレア電界を分散形成することができる。これにより、電位勾配や気流などが原因でトナーを特定方向へ移動させる力が発生した場合であっても、トナー担持ローラ41上でトナーが大きく偏在することを抑制できる。しかも、上記変形例1では、トナー担持ローラ41の表面移動方向に沿った方向への力にしか対応できないが、本変形例2によれば、トナー担持ローラ41の軸方向に沿った方向など、他の方向の力にも対応できる点で、上記変形例1よりも有利である。
【0064】
〔変形例3〕
次に、外側電極54aの更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例3」という。)について説明する。
図15は、本変形例3におけるトナー担持ローラ41を、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
図16は、外側電極層をトナー担持ローラ41の外周面側から見たときの模式図である。
本変形例3においても、上記変形例2と同様に、内側電極53aの外周面側に絶縁層55を設けた後(図17(a))、その絶縁層55の全体に外側電極層を設ける。ただし、本変形例3における外側電極層は、導電性ウレタン樹脂54aと絶縁性のメラミン樹脂54dとからなる層である。具体的には、導電性ウレタン樹脂発泡原料を調整し、これを成形型に注入して加熱硬化発泡させた後(図17(b))、発泡により形成されたセル(穴)にメラミン樹脂をローラコータを用いて塗工する(図17(c))。これにより、絶縁層55上に導電性ウレタン樹脂54aと絶縁性のメラミン樹脂54dとがランダムに分散した状態の外側電極層が形成される。なお、この導電性ウレタン樹脂部分54aが外側電極となる。また、メラミン樹脂に代えて、ウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ベークライト、ポリカーボネート、PET、POM、PPEなども使用可能である。外側電極層の層厚は、0.01[mm]以上0.3[mm]以下の範囲内が好ましい。0.01[mm]未満では成形型の精度が問題となるし、0.3[mm]よりも大きいと発泡によって生じる空気層が外側電極層内に閉じ込められてしまうためである。本変形例3では外側電極層の層厚を0.1[mm]に設定した。なお、発泡後のセル径に関しては、上記変形例2における絶縁性粒子54cの場合と同様に、外側電極層の層厚以上とする必要がある。
【0065】
本変形例3においても、導電性ウレタン樹脂54a(外側電極)の広さが不均等となり、またメラミン樹脂部分54d(上記変形例1における内側電極対向部に相当)の広さも不均等となる。その結果、上記変形例1や上記変形例2と同様に、トナー担持ローラ41上に局部的に強いフレア電界を分散形成することができる。これにより、電位勾配や気流などが原因でトナーを特定方向へ移動させる力が発生した場合であっても、トナー担持ローラ41上でトナーが大きく偏在することを抑制できる。しかも、上記変形例2と同様、トナー担持ローラ41の軸方向に沿った方向など、他の方向の力にも対応できる点で、上記変形例1よりも有利である。
【0066】
〔変形例4〕
次に、外側電極54aの更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例4」という。)について説明する。
図18は、本変形例4におけるトナー担持ローラ41を、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
図19は、外側電極層をトナー担持ローラ41の外周面側から見たときの模式図である。
本変形例4においても、上記変形例2や上記変形例3と同様に、内側電極53aの外周面側に絶縁層55を設けた後、その絶縁層55の全体に外側電極層を設ける。ただし、本変形例4における外側電極層は、樹脂バインダー54e中に金属フィラー54aを分散させた層である。金属フィラー54aは互いに融着した状態となっている。具体的には、樹脂バインダー中に金属フィラーが分散したペースト材料を絶縁層55上にスプレーにより塗工することで、絶縁層55上に金属フィラー54aが樹脂バインダー54e中にランダムに分散した状態の外側電極層が形成される。なお、この金属フィラー部分が外側電極となる。絶縁層55上に塗工するペースト材料は、有機樹脂溶液に、金、銀、白金、パラジウム、鉛、タングステン、ニッケル等の1種以上からなる金属粒子をフィラーとして分散させたものであれば利用可能である。また、金属フィラー54aとしては、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化けい素、酸化ほう素、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化チタン等の金属酸化物を用いてもよい。バインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などがよい。また、溶剤としては、イソプロピルアルコールなどが使用される。増粘剤として、セルロースなどを含有させてもよい。上記ペースト材料中のバインダー樹脂54eの量は、40%〜60%が良い。あまり多いと金属フィラーが融着しないので電気抵抗が大きくなり過ぎてしまうし、少なすぎるとバインダー樹脂54eの占有面積が狭くなりすぎて、表面層56の外側に形成されるフレア電界が弱くなってしまう。本変形例4では、50%に設定した。外側電極層の層厚は、上記変形例3と同様、0.01[mm]以上0.3[mm]以下の範囲内が好ましい。本変形例4では、外側電極層の層厚を0.1[mm]に設定した。
【0067】
本変形例4においても、金属フィラー54a(外側電極)の広さが不均等となり、また樹脂バインダー54e(上記変形例1における内側電極対向部に相当)の広さも不均等となる。その結果、上記変形例1〜8と同様に、トナー担持ローラ41上に局部的に強いフレア電界を分散形成することができる。これにより、電位勾配や気流などが原因でトナーを特定方向へ移動させる力が発生した場合であっても、トナー担持ローラ41上でトナーが大きく偏在することを抑制できる。しかも、上記変形例2や上記変形例3と同様、トナー担持ローラ41の軸方向に沿った方向など、他の方向の力にも対応できる点で、上記変形例1よりも有利である。
【0068】
なお、上記変形例2〜4において、絶縁性の材料部分と導電性の材料部分とを逆にした構成であっても、同様の効果が得られる。
【0069】
以上、本実施形態(各変形例を含む。以下同じ。)に係る画像形成装置は、潜像担持体としての感光体1と、互いに異なる電圧が印加される複数種類の電極部材である内側電極53a及び外側電極54aを備えたトナー担持体としてのトナー担持ローラ41における絶縁性の外周面にトナーを担持させ、内側電極53a及び外側電極54aに対して互いに異なる電圧(内側電圧及び外側電圧)を印加することにより、内側電極53a及び外側電極54aそれぞれに対向するトナー担持ローラ外周面部分でトナーをホッピングさせるための電界(フレア電界)をトナー担持ローラ外周面の外側に形成し、トナー担持ローラ41の外周面を移動させることにより現像領域内にホッピングした状態のトナーを送り込み、感光体1上の静電潜像にトナーを供給して静電潜像を現像する現像装置4M,4C,4Y,4Kとを有し、静電潜像を現像して得られる画像を最終的に記録材上に転移させて記録材上に画像を形成する画像形成装置である。この画像形成装置の現像装置4M,4C,4Y,4Kは、トナー担持ローラ41の外周面に対して最も強く当接する当接部材としてのトナー供給ローラ42を有し、フレア電界よりも強い電界強度でトナー担持ローラ41における外周面に担持されるトナーをホッピングさせるための補助電界を、トナー担持ローラ41の外周面周回軌道上の一部分であるトナー供給領域やトナー規制領域に形成する補助電界形成手段を有する。これにより、トナー供給ローラ42等によりトナー担持ローラ外周面に押し付けられてフレア電界だけではホッピングさせ始めることができなくなったトナーであっても、そのトナーがトナー供給領域を通過する際、より詳しくはトナー供給領域内又はトナー供給領域を抜け出した直後に、フレア電界よりも強い補助電界の作用でホッピングさせ始めることができる。そして、補助電界によりホッピングし始めれば、補助電界よりも弱いフレア電界だけでもフレア状態を維持することが可能となる。よって、トナーがトナー担持ローラ外周面に付着してしまうことに起因する画像濃度ムラ等の不具合を軽減することができる。
また、本実施形態によれば、補助電界が、トナー供給ローラ42が当接するトナー供給領域(当接領域)から現像領域までの間又はその当接領域内に形成される。これにより、トナー供給領域で押し付けられることでトナー担持ローラ41の外周面に付着することとなったトナーを、現像領域へ搬送される前に、ホッピングさせ始めることができるので、画像濃度ムラ等の不具合が軽減される。
なお、本実施形態において、現像領域を通過したトナーはトナー回収部材としても機能するトナー供給ローラ42によってトナー担持ローラ外周面から回収される。よって、現像領域からトナー供給領域(回収領域)までの間又はそのトナー供給領域に補助電界を形成できれば、トナー供給ローラ42は、トナー担持ローラ外周面に付着したトナーではなく、これよりも付着力が低いフレア状態のトナーを、トナー担持ローラ外周面から回収することができる。その結果、トナー担持ローラ外周面からのトナー回収効率が高まり、トナー担持体外周面にトナー添加物等が付着あるいは固着することが抑制される。よって、フレア電界だけではホッピングさせ始めることができなくなるトナーの量を少なくでき、この場合も画像濃度ムラ等の不具合が軽減される。
また、本実施形態によれば、トナー供給ローラ42のように、トナー担持体外周面外側から対向する位置に配置されている部材を用いて補助電界を形成することで、効率よく補助電界を形成できる。
また、本実施形態においては、トナー担持ローラ41の外周面に接触するトナー供給ローラ42の表面(接触面)を、トナーとの摩擦によってトナーに対して正規帯電極性の電荷を与える材料で形成している。これにより、トナーの摩擦帯電効率が高まり、安定してフレア状態にするのに必要なトナー帯電量を安定して確保することができる。
また、本実施形態における補助電界形成手段は、トナー担持ローラ41の外周面に対向配置され、表面にトナーを担持した状態で表面移動して、その表面上のトナーをトナー担持ローラ41の外周面へ供給するトナー供給部材としてのトナー供給ローラ42と、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ42の外周面との間に補助電界が形成されるような電圧をトナー供給ローラ42に印加する電圧供給手段としての電源47とを含んでいる。これにより、トナー担持ローラ41へ供給されたトナーに対してすぐにホッピングを開始させ、フレア状態とすることができる。フレア状態になったトナーは、トナー担持ローラ41の外周面との接触(摩擦)を繰り返すので、これによる摩擦帯電により帯電量を上昇させることができる。よって、トナー担持ローラ41へ供給されたトナーに対してすぐにホッピングを開始させることで、現像領域までにトナーを十分に帯電させることが可能となる。
なお、補助電界形成手段は、トナー担持ローラ41の外周面に担持されたトナーの現像領域へ搬送される量を規制するトナー量規制部材としての規制ブレード43と、規制ブレード43とトナー担持ローラ41の外周面との間に補助電界が形成されるような電圧を規制ブレード43に印加する電圧供給手段とを含むものであってもよい。
また、本実施形態においては、トナー担持ローラ41の外周面を、トナーとの摩擦によってトナーに対して正規帯電極性の電荷を与える絶縁性材料で形成している。したがって、トナーの摩擦帯電効率が高まり、安定してフレア状態にするのに必要なトナー帯電量をより安定して確保することができる。
また、本実施形態によれば、トナー担持ローラ41の構成として、内側電極53a及び外側電極54aをトナー担持ローラ外周面法線方向に平行な方向で互いに異なる位置に配置し、これらの電極間に絶縁層55を介在させた構成を採用している。これにより、トナー担持ローラ41上に設けられる電極53a,54aが絶縁層55で互いに分断されるため、これらの電極間をつなぐような界面が存在したり、これらの電極間にトナーが介在したりするようなことがない。よって、トナー担持ローラ41上に設けられる電極53a,54a間で界面やトナーを通じたリークが生じることがなく、安定したフレア電界の形成が可能となる。
【符号の説明】
【0070】
4M,4C,4Y,4K 現像装置
41 トナー担持ローラ
42 トナー供給ローラ
43 規制ブレード
47 電源
51A,51B パルス電源
53a 内側電極
53b 被給電部
54a 外側電極
54b 被給電部
54c 絶縁性粒子
55 絶縁層
56 表層
57 給電ブラシ
58 給電コロ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【特許文献1】特開2007−133388号公報
【特許文献2】特開2008−116599号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体と、
互いに異なる電圧が印加される複数種類の電極部材を備えたトナー担持体における外周面にトナーを担持させ、該複数種類の電極部材に対して互いに異なる電圧を印加することにより、該複数種類の電極部材それぞれに対向するトナー担持体外周面部分で上記トナーをホッピングさせるための電界を該トナー担持体外周面の外側に形成し、該トナー担持体の外周面を移動させることにより現像領域内にホッピングした状態のトナーを送り込み、上記潜像担持体上の潜像にトナーを供給して該潜像を現像する現像装置とを有し、
該潜像を現像して得られる画像を最終的に記録材上に転移させて、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
上記現像装置は、上記トナー担持体の外周面に対して当接する当接部材を有し、
上記電界よりも強い電界強度で上記トナー担持体における外周面に担持されるトナーをホッピングさせるための補助電界を、該トナー担持体の外周面周回軌道上の一部分に形成する補助電界形成手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記補助電界を、上記当接部材が当接する当接領域から現像領域までの間又は該当接領域内に形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1の画像形成装置において、
上記現像装置は、現像領域を通過したトナーを上記トナー担持体外周面から回収するトナー回収部材を有し、
上記補助電界を、現像領域から上記トナー回収部材がトナーを回収する回収領域までの間又は該回収領域内に形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記補助電界形成手段は、上記一部分に対してトナー担持体外周面外側から対向する位置に配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置において、
上記補助電界形成手段は、上記トナー担持体の外周面に接触する補助電界形成部材と、該補助電界形成部材と該トナー担持体の外周面との間に上記補助電界が形成されるような電圧を、該補助電界形成部材に印加する電圧供給手段とを含み、
上記トナー担持体の外周面に接触する該補助電界形成部材の接触面を、トナーとの摩擦によってトナーに対して正規帯電極性の電荷を与える材料で形成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4又は5の画像形成装置において、
上記補助電界形成手段は、上記トナー担持体の外周面に対向配置され、表面にトナーを担持した状態で表面移動して、その表面上のトナーを該トナー担持体の外周面へ供給するトナー供給部材と、該トナー供給部材の表面と該トナー担持体の外周面との間に上記補助電界が形成されるような電圧を、該トナー供給部材に印加する電圧供給手段とを含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記補助電界形成手段は、上記トナー担持体の外周面に担持されたトナーの現像領域へ搬送される量を規制するトナー量規制部材と、該トナー量規制部材と該トナー担持体の外周面との間に上記補助電界が形成されるような電圧を、該トナー量規制部材に印加する電圧供給手段とを含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記トナー担持体の外周面を、トナーとの摩擦によってトナーに対して正規帯電極性の電荷を与える材料で形成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記トナー担持体は、上記複数種類の電極部材をトナー担持体外周面法線方向で互いに異なる位置に配置し、該複数種類の電極部材間に絶縁層を介在させた構成を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記現像装置を複数設け、各現像装置により互いに異なる色のトナーで各色に対応する潜像をそれぞれ現像し、これにより得られる各色画像が互いに重なり合ったカラー画像を形成する構成を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−191209(P2010−191209A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35755(P2009−35755)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】