画像形成装置
【課題】未定着状態の画像部の周辺に未定着状態の不正使用防止のための追跡パターンを形成する画像形成部を有し、高画質で安定した画像を形成する。
【解決手段】低解像度の選択的熱源による加熱においては、画像部f周辺のみにイエロートナー等による追跡パターンpを形成する。この追跡パターンpの形成は、省エネルギーの観点から好ましい。またそれだけでなく、このような追跡パターンpの形成は、定着上二次転写方式だけでなく、解像度の低い選択的な加熱を行う定着方式全般に有効である。すなわち追跡パターンpを犯罪使用防止に使用する場合でも、追跡パターンpが画像部fの周辺のみに形成されているので、選択的加熱の効果が高まり、省エネルギーと犯罪使用防止を両立できる。
【解決手段】低解像度の選択的熱源による加熱においては、画像部f周辺のみにイエロートナー等による追跡パターンpを形成する。この追跡パターンpの形成は、省エネルギーの観点から好ましい。またそれだけでなく、このような追跡パターンpの形成は、定着上二次転写方式だけでなく、解像度の低い選択的な加熱を行う定着方式全般に有効である。すなわち追跡パターンpを犯罪使用防止に使用する場合でも、追跡パターンpが画像部fの周辺のみに形成されているので、選択的加熱の効果が高まり、省エネルギーと犯罪使用防止を両立できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複写機、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で採用する定着装置としては、紙等の記録媒体上に転写した未定着トナーを記録媒体とともに挟持搬送し、加熱することで記録媒体に定着させるものが一般に知られている。特に感光体等の像担持体から中間転写ベルト等の中間転写体を介し、さらに記録媒体へ転写するものが知られている。このような画像形成装置における各転写工程では、転写された画像の品質は未定着画像の搬送速度差による画像ズレや記録媒体の湿度や厚み、表面粗さ等に転写の安定性が影響されることが知られている。
【0003】
そこで、中間転写体上のトナーを直接記録媒体に加熱、加圧することで転写と同時に定着する技術が提案されている。例えば、中間転写体を内周面に張化した加熱部材により内周面から接触加熱することで、トナーを加熱している技術がある(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
また本願発明者の知るところでは、中間転写体上でトナーを加熱するのではなく、中間転写体からさらに定着部材上に転写した後、トナーを外部から加熱する定着上二次転写方式も提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが前記特許文献に開示されている技術では、中間転写体の内周面から回転搬送された中間転写体を随時加熱部材との接触部で加熱することで中間転写体上のトナーを加熱することで、中間転写体を介してトナーを加熱しているために、中間転写体の全域が高温となり、現像部である像担持体と接触するまでに冷却する時間が必要になる。このような冷却効果を得るためには中間転写体の周長を長くする必要があり、これは装置の大型化につながる。また冷却効果を得るために冷却部材を追加する場合には、部品コストの増大となる。さらに、中間転写体を所定の温度に加熱するための時間が必要になることは、装置の立ち上がり時間の増加となる。
【0006】
また、搬送される中間転写体を随時加熱することになり、転写する複数の記録媒体の間も加熱することになるが、このエネルギーは省エネルギーには不利となる。そして高温に加熱された加熱部材及び中間転写体からの放熱は、画像形成装置の機内温度を上昇させることになり、像担持体にトナーの融着等の原因による不良画像の発生が懸念される。
【0007】
また定着上二次転写方式においても、トナーの無い非画像部の定着部材がトナーのある部分より強く加熱され、中間転写体への接触時に中間転写体を加熱してしまうという点がある。中間転写体の温度上昇がわずかなため、定着への転写と、次に感光体から中間転写体への転写が行われるまでとの間にトナーや感光体にダメージを与えるような事態は発生しないが、わずかな温度上昇でもこのエネルギー分が累積すれば大きな損失となってしまう。
【0008】
前記の課題を解決するために、未定着画像部のみを選択的に加熱することで中間転写体や定着部材及び機内温度の上昇を抑制し、高画質で安定した画像を提供することを目的とした技術が提案されているが、トナーを加熱するために非接触な加熱手段が中心とならざるを得ない。そのため、輻射エネルギーを吸収しやすくするために赤外線吸収剤を含んだトナーの使用などが必要であり、鮮やかな色彩や色再現範囲に制約が出ることがある。またこの技術では接触加熱による選択的加熱、例えば定着ローラに加熱体が接触して加熱することも考えられるが、この場合は定着ローラの表面が摩耗し易いという問題が生じてしまう。
【0009】
本発明はこれらの問題を解決するため、トナーや中間転写体及び定着体のみを加熱するのではなく、記録媒体側の画像対応部を選択的に加熱する技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像形成装置のうち請求項1に係るものは、未定着状態の画像部を形成する画像形成部と、前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部を加熱する加熱手段とを具備し、
前記画像形成部は、前記未定着状態の画像部の周辺に未定着状態の不正使用防止のための追跡パターンを形成する画像形成部であり、
前記加熱手段は、前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部および前記未定着状態の追跡パターンを加熱する加熱手段であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係るものは、請求項1記載の画像形成装置において、前記加熱手段は、前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部が転写される転写体と接触して加熱する加熱手段であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係るものは、請求項1の画像形成装置において、前記加熱手段は、前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部に対応する部位に位置する記録媒体と接触して加熱する加熱手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る中間転写装置、定着装置及び画像形成装置は、未定着画像部のみを選択的に加熱することで中間転写体や定着部材及び機内温度の上昇を抑制し、高画質で安定した画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る画像形成装置の実施例1を示す概略図(A)と平面部分図(B)
【図2】光エネルギーの照射時における中間転写体1の温度分布イメージを示す図
【図3】実施例1をモノクロ画像を出力する画像形成装置に適用した例を示す概略図
【図4】実施例1でレーザ光源に代えてフラッシュランプを用いた変形例を示す要部断面図
【図5】本発明に係る画像形成装置の実施例2を示す概略図
【図6】本発明に係る画像形成装置の実施例3を示す概略図
【図7】本発明に係る画像形成装置の実施例4を示す概略図
【図8】実施例4の変形例を示す要部断面図
【図9】本発明に係る画像形成装置の実施例5を示す概略図
【図10】本発明に係る画像形成装置の実施例6を示す概略図
【図11】本発明に係る画像形成装置の実施例7を示す概略図
【図12】本発明に係る画像形成装置の実施例8を示す概略図
【図13】選択的に加熱可能な他の手段を示す図
【図14】選択的に加熱可能なさらに他の手段を示す図
【図15】本発明に係る画像形成装置の実施例9を示す概略図(A)と平面部分図(B)
【図16】実施例9でレーザ光の照射部位を示す断面図
【図17】本発明に係る画像形成装置の実施例10を示す概略図
【図18】本発明に係る画像形成装置の実施例11を示す概略図
【図19】本発明に係る画像形成装置の実施例12を示す概略図
【図20】追跡パターンを示す図
【図21】赤外線吸収剤の構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図に示す実施例を参照して説明する。なお以下では本発明の実施例を複数説明するが、実施例2以降については、実施例1と共通する構成、転写、定着工程、作用、効果については説明を省略する。また本発明はトナーや中間転写体及び定着部材を加熱するのではなく記録媒体側の画像対応部を選択的に加熱するが、トナーや中間転写体及び定着部材を加熱しないと限定するものではない。またカラー画像を形成する画像形成装置を例として説明するが、本発明は形成する画像がモノクロ画像のものをも含む。また中間転写装置、定着装置及び画像形成装置は、それぞれが単独の装置として構成されているもの、他の装置や手段等と組み合わせてユニットとして構成されているもの等々種々の形態のものとして構成でき、図示の形態のものには限定されない。
【実施例】
【0016】
<実施例1>
図1は本発明に係る画像形成装置の実施例1を示す概略図(A)と平面部分図(B)である。図中1は中間転写体で、駆動ローラ2と定着ローラ3に周回可能に張架した無端ベルト状のものであり、この中間転写体1と対向する位置にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)という4色のトナー像を形成する4つの像担持体7・・・からなる作像ユニット10が配設してある。
【0017】
現像に使用するトナーには帯電した粉体または液体を用いるが、本実施例では、例えばトナー軟化点温度が100℃で、結着樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を用いたシャープメルト性を有するものであり、Bk以外のトナーは赤外線吸収剤を含有させたものとする。トナーをシャームメルト化(低融点)し、軟化温度が低温化すれば、小さいエネルギーでトナー6を軟化させることができるので、転写、定着の高速化を図れる。
【0018】
作像ユニット10の像担持体7は、表面に静電潜像を形成するもので、図示を省略するが該各像担持体7の周囲には、像担持体7の表面を一様に帯電させる帯電装置、像担持体7の表面に像光を照射して潜像を形成する露光装置、像担持体7上に形成した潜像にトナーを選択的に転移させてトナー像(未定着画像)を形成する現像装置という潜像形成プロセス手段を配置するとともに、像担持体7に対向して像担持体7上のトナー像を中間転写体1上に転写する転写ローラ8を設けてある。なお、転写ローラ8には図示しないバイアス回路により、トナー6が移動するのに必要な電圧を印加する。
【0019】
中間転写体1は、無端ベルト状の基材の表面にトナーとの離型性のよい表面層を形成したものであり、内側に配置した駆動ローラ2を図示しない駆動部により回転駆動し、その回転によって周回図中に示す矢印方向に周回移動するようになっている。この中間転写体1には耐熱性が必要であり、例えばポリアミドの基材に離型性のよいPFAフッ素樹脂を10μmの厚さで被覆して透過性部材としたもの使用する。
【0020】
定着ローラ3は、表面層に高反射部材を有し、駆動ローラ2の駆動による中間転写体1の回転に従動して回転するようになっている。この定着ローラ3に対向して中間転写体1を押圧するように押圧ローラ9を配してあり、この押圧ローラ9と中間転写体1との圧接部に図示しない搬送経路を介して記録媒体Pを送り込み、中間転写体1上のトナー6を記録媒体Pに転写するようになっている。なお中間転写体1上のトナーは通常は層状になっていることが多いが、以下では特に必要がなければ単にトナーと言う。
【0021】
図中4はレーザ光源で、トナー加熱源として定着ローラ3の上方に配置してあり、記録媒体Pの搬送方向と直交する定着ローラ3の幅方向(軸方向)でトナー6(未定着画像である)と同期して選択的に加熱する。またレーザ光源4の射出するレーザ光Lは、定着ローラ3の回転上流側で定着ローラ3と中間転写体1とが接触する位置で、中間転写体1上を選択的に照射する。このレーザ光Lは、像担持体7に照射する図示しない露光部の情報を用い、この情報から中間転写体1の所定の範囲内に未定着画像がある場合には照射し、無い場合は照射しないという判定を図示しない画像形成装置の制御部で行い、その判定結果から記録媒体Pの先端位置から中間転写体1に転写された未定着画像の位置と同期させて照射する方法をとっている。これにより、中間転写体1全体の温度を高温にすることがなく、中間転写体1の耐久性及び画像形成装置内部の昇温による現像部の熱による融着やトナーブロッキングを防止して、安定した画像を出力することができる。
【0022】
レーザ光Lのスポット径は、上記した所定の範囲を満足する範囲とする。例えば600dpiの潜像記録画素に対して、それより範囲が大きくなる72dpiで照射を行うものとする。すなわち画像形成装置の画像を記録するための手段における最小解像度より大きい範囲で中間転写体1を複数に分割して加熱するので、トナー6が乗っている領域と加熱位置精度のばらつきを吸収でき、安定した加熱が可能である。より小さい範囲を光エネルギーで照射、加熱するほうが中間転写体1の昇温を防止できるが、トナー位置と加熱位置の精度が重要になり、位置精度を考慮すると潜像記録画素よりスポット径を大きくしたほうが確実に未定着画像を照射できる。図2は光エネルギーの照射時における中間転写体1の温度分布イメージを示す図である。なお図中4aはレーザ、4bはポリゴンミラーで、図示しないレンズ等を用いて定着ローラ3の軸方向に沿って走査してレーザ光Lを照射する。
【0023】
図中11はクリーナで、中間転写体1と記録媒体Pとの圧接部の回転方向下流側に配置してあり、記録媒体Pに転写されず中間転写体1上に残ったトナーを回収するために中間転写体1に接触している。
【0024】
記録媒体Pへのトナー6の転写及び定着動作を説明すると、中間転写体1上でレーザ光Lを照射されたトナー6は、加熱されて軟化した後、記録媒体Pと挟持搬送されつつ押圧ローラ9の加圧によって記録媒体Pの繊維間に浸透し、記録媒体Pに圧接され、転写される。その後、離型性の良い中間転写体1から記録媒体Pが剥離して転写が完了する。このときトナー6の熱は記録媒体Pに吸収され、温度低下による固化で記録媒体P上に定着する。記録媒体Pは、その後図示しない経路を経て装置外へ排出される。
【0025】
このような動作を行うため、加熱したトナー6の温度が低下しない時間、すなわち記録媒体Pと接触するまでの時間を可能な限り短くできるように、転写位置近傍位置で中間転写体1上のトナー6にレーザ光Lを照射することが好ましい。また、レーザ光Lを照射する範囲は、各像担持体7へ潜像を形成する位置精度や中間転写体1に各色の像担持体7から像を転写する位置精度等のばらつきを考慮した照射範囲にすることで、さらに余分な加熱を回避することができ、中間転写体1の昇温を有効に防止し、トナー以外の範囲を加熱する不要なエネルギーを低減できる。なお中間転写体1上にある未定着のトナー6を光学センサーにより読み取り、レーザ光Lを照射する範囲を判定してもよい。
【0026】
トナー6を有する範囲に照射したレーザ光Lはトナー6で吸収され、トナー6を加熱するが、それ以外の範囲に照射したレーザ光Lは中間転写体1を直接に照射することになり、既述のように中間転写体1が透明材で形成してあるため、これを透過して定着ローラ3を照射することになる。定着ローラ3は中間転写体1と従動回転しているので固定位置を照射せず、固定位置照射による偏在的温度上昇は生じない。また、レーザ光Lは定着ローラ3の表面層に設けた高反射部材により再度中間転写体1方向に反射し、トナー6を中間転写体1の内側から照射することになる。なお、中間転写体1は透過性部材にすると、照射されたレーザ光Lの光エネルギーの吸収率が低いので、中間転写体1の昇温防止に有効である。いずれにしても、中間転写体1上の未定着画像面と非接触加熱しているので、トナー状態を破壊することがなく、画質が安定する。しかもトナー6の表面温度を先行して上昇させ、下側の中間転写体1からの加熱を低温化でき、より中間転写体1の昇温を防止できる。
【0027】
このようなレーザ光Lの経路となることにより、中間転写体1を透過したレーザ光Lによって画像形成装置内の他の装置、部材を照射することがなく、照射による加熱破壊を防止できるとともに、中間転写体1上のトナー6の加熱を表裏から行うことが可能でエネルギーを有効に使用することができる。さらに裏面から反射したレーザ光Lの経路に対応する個所に反射板あるいは反射部を設けて再々度反射させる構成としてもよい。
【0028】
なお上記実施例では中間転写体1との摺動抵抗を軽減するため回転であるローラに掛け回す構造としたが、中間転写体1を支持する部材は記録媒体Pと均一に接触できる部材であればよく、図示の例には限定されない。また透過したレーザ光Lを他の部材へ照射することを防止する部材、例えば白地の部材で構成し、光エネルギーを乱反射させてエネルギーを拡散させても有効である。
【0029】
ところで、通常はBkトナーは光吸収性に優れているので加熱に有利であるが、Y、M、C等のカラートナーは光吸収性が劣る。したがってBk以外のトナーに赤外線吸収剤を含有させ、レーザ光Lの照射エネルギーの吸収効率を向上させて加熱に有利とすることが好ましい。すなわちトナー6の周りの中間転写体1の昇温速度が速くなり、効率よくトナー温度を上昇させることが可能となり、したがって転写、定着の高速化が可能となる。またこの選択加熱の効果により、中間転写体1全体の温度を高温にすることがないカラー画像形成装置を実現できる。また、結晶性ポリエステルを含有させることで軟化点温度を低温にし、シャープメルト化して短時間の照射エネルギーで加熱することができるようにすることも好ましい。
【0030】
カラートナーに赤外線吸収剤を含有させない場合は、中間転写体1に光吸収性の良い部材を用いることが有効となる。光吸収性がよいので加熱速度が向上し、中間転写1上のトナー6の周囲がすばやく加熱され、この熱がトナー6に伝搬して効率よく加熱することが可能となる。この場合、トナー6の存在する範囲を選択的に加熱するので、中間転写体1全体の昇温を防止し得るが、上記実施例の手段を採用すれば記録速度の高速化に対応可能となるのでより好ましい。そして、この理由から光吸収性に有利なBkのみのモノクロ画像を出力する画像形成装置(例えば図3参照)では、中間転写体1を透明にすることが中間転写体1の昇温防止に有効である。また本実施例では加熱源としてレーザ光源4を使用したが、中間転写体1上にトナー6が存在する範囲を選択的に加熱可能な他の手段を用いてもよいことはもちろんである。例えば規則的に配列した複数のランプ、ヒータ等の手段でもよい。図4はレーザ光源4に代えてフラッシュランプ12を用いた変形例を示す要部断面図である。
【0031】
<実施例2>
図5は本発明に係る画像形成装置の実施例2を示す概略図である。本実施例の中間転写体21は、円筒状のガラス基体上に薄層のPFAフッ素樹脂を例えば10μm被覆し、透明としたもので、図示しない駆動源により回転駆動するようになっている。また先の実施例1と同様の作像ユニット10及び像担持体7及び転写ローラ8を中間転写体21の周囲に同様に配置してあり、押圧ローラ9と中間転写体21との圧接部に図示しない搬送経路を介して記録媒体Pを送り込み、中間転写体21上のトナー6を記録媒体Pに転写するようになっている。
【0032】
レーザ光源4は、中間転写体21の内周に設けてあり、内側からレーザ光Lを照射するよう配置してあり、レーザ光源4から照射するレーザ光Lは、中間転写体21の回転方向上流側で押圧ローラ9との接触部近傍(転写、定着部)を選択的に照射するようになっている。
【0033】
本実施例の加熱方法及び動作を説明する。中間転写体1の内周面からレーザ光Lを上述した所定の位置で照射し、透過性部材からなる中間転写体21を透過させてトナー6を照射し、トナーを加熱する。またトナー6の周囲で透過したレーザ光Lが記録媒体Pを照射し、記録媒体Pの表層もまた加熱される(図中斜線部H)。レーザ光Lの照射位置は、中間転写体21が記録媒体Pと接触する位置の近傍でかつ接触位置よりも中間転写体21の回転方向で上流側に位置するので、記録媒体Pへの照射位置は未定着画像部とほぼ重なる位置となる。記録媒体Pのレーザ光Lで照射した部位は、その後、中間転写体21と押圧ローラ9で挟まれる位置(ニップ部)に至り、軟化したトナーが押圧ローラ9の加圧で記録媒体Pの繊維間へ浸透し、定着される。
【0034】
この過程についても実施例1と同様であるが、本実施例ではトナー6を下層側すなわち中間転写体21側から加熱し、軟化させるので、中間転写体21との接着力が低下し、記録媒体Pへ転写しやすくなる。また、トナー6と接触する記録媒体Pの該当個所も上述のように加熱するのでトナー6の急激な冷却を防止できる。
【0035】
なお記録媒体Pとの接触でトナー6の急激な冷却が起こった場合、記録媒体Pの繊維内へ浸透することなく固化し、記録媒体Pとの結着力が得られず、結局は記録媒体Pへ転写しないという不具合が発生する可能性がある。これを回避するためにはトナー6の加熱温度を十分高温にするか、または接触面の加圧力を高くして繊維間に押し込む動作が必要になる。本実施例のように、記録媒体Pのトナーの転写位置に相当する位置も加熱すると、記録媒体Pの繊維間に軟化したトナーが浸透しやすく、定着性能が向上する。したがって、トナー温度をあまり高温にする必要がないので、中間転写体21の昇温を防止することになり、光エネルギーを有効に使用することになる。また、押圧ローラ9の圧力は低圧で済み、中間転写体21には剛性を必要としないので、さらに薄肉化が可能となる。したがって光エネルギーの透過損失が低減でき、投入するエネルギーを低減させ、また熱容量や部品コストの低減を有効に行える。
【0036】
<実施例3>
図6は本発明に係る画像形成装置の実施例3を示す概略図である。本実施例の構成は実施例2とほぼ同様であるので相違部分を説明する。本実施例は、ハロゲンランプ30を記録媒体Pの搬送方向で中間転写体21と記録媒体Pと接触しない位置に配置し、軸方向に最大記録幅以上に照射するようにしている。反射板32はハロゲンランプ30に対し反射光が押圧ローラ9と中間転写体1の接触する方向になるように配置してある。
【0037】
本実施例では、記録媒体Pが搬送されて所定位置に達した時、その通過に合わせてハロゲンランプ30から光を照射するとともに、中間転写体21上の未定着画像、すなわちトナー6が所定位置に達した時にレーザ光Lを選択的に照射し、トナー6を加熱する。ハロゲンランプ30とレーザ光を照射することで中間転写体21のトナー6の下層側と上層側から加熱し、また記録媒体Pの表層も均一に加熱する(図中の斜線部H)。これにより記録媒体Pと加熱されたトナー6の接触時の急激な冷却をいっそう効果的に防止する。また記録媒体Pと接触するトナー6の上層面も加熱しているので記録媒体Pの繊維間へのトナー6の浸透もいっそう図られ、定着性能が向上する。さらに本実施例でも、押圧ローラ9の圧力は低圧で済み、中間転写体21には剛性を必要としないので、さらに薄肉化が可能となり、したがって光エネルギーの透過損失が低減でき、投入エネルギーの低減となり、熱容量や部品コストの低減を有効に行える。
【0038】
また、トナー6が所定位置に搬送されてからハロゲンランプ30を照射するので、記録媒体Pに相当する長さのみの加熱となる。したがって、中間転写体21は常に加熱されることはない。また、中間転写体21に透過性部材を使用しているので、中間転写体21の昇温を抑制でき、さらに光を照射した部位では転写、定着部位で記録媒体Pとの接触で熱容量の大きい記録媒体Pに吸熱、冷却されるので、中間転写体21の温度増加をさらに抑制できる。また、トナー6の上層部はランプハロゲンランプ30で加熱され、トナー下層部のレーザ光による加熱で、上下層を加熱するので短時間加熱が可能となり、記録速度の高速化に対応できる。
【0039】
なお、中間転写体21のトナー6を転写した後の部位が、像担持体7へ搬送されるまでの間に、該部位に積極的に熱容量の大きい部材に接触させたり、装置本体内の風路等を通す冷却風によって冷却したりするとより効果的である。
【0040】
<実施例4>
図7は本発明に係る画像形成装置の実施例4を示す概略図である。本実施例は、中間転写体1に光透過性部材を使用した場合、レーザ光源4による加熱域に対し中間転写体1の非加熱方向に対応する位置に保護部材22、23を配し、中間転写体1を透過した光による他の部品の熱損傷を防止している。
【0041】
保護部材22、23に乱反射部材を用いれば、透過した光を受ける部位で乱反射させることで光エネルギーを小さくし、さらに効果的に熱損傷を防止できる。また、保護部材22、23に光反射部材を用いれば、光反射部材からの反射光が再度トナー6を照射することになり、中間転写体1を透過した光エネルギーを損失することなく有効に利用できる。しかも、中間転写体1を透過した光で、中間転写体1のトナーが乗っていない非画像部側(図の例では内側)から光エネルギーを照射できるので、透過光は記録媒体Pを照射することが可能となる。これが画像部と対応した記録媒体上を加熱することができ、記録媒体温度とトナー温度の差を小さくするので、記録媒体と接触した時の急激な冷却を防止することで記録媒体の繊維間に浸透しやすくなるので、定着性に有利となる。
【0042】
図8は実施例4の変形例を示す要部断面図である。本例は、湾曲した反射板24を用いており、反射光を反射板24の湾曲で効率よく中間転写体1の所要部位に再入射させることができるようになっている。
【0043】
<実施例5>
図9は本発明に係る画像形成装置の実施例5を示す概略図である。本実施例は、実施例1とほぼ同様の構成を有するが、定着ローラ3内にハロゲンランプ13を設けて、中間転写体1を両面から加熱できるようにしてある。またハロゲンランプ13で中間転写体1上の未定着画像であるトナー6に同期して定着ローラ3の軸方向で全体的に加熱する構成となっている。この例では、中間転写体1を周長方向で全体に対して加熱しないので、昇温を抑制でき、また中間転写体1上のトナー6を選択的かつ中間転写体1の両面から加熱するので、中間転写体1全体の加熱温度を低温化することが可能となる。
【0044】
<実施例6>
図10は本発明に係る画像形成装置の実施例6を示す概略図である。本実施例も、実施例1とほぼ同様の構成を有するが、中間転写体1の移動方向で定着ローラ3よりも後流側に冷却用のローラ14を設け、中間転写体1の温度を早期に低下させ得るようにして、さらに記録速度の高速化に対応できるようにしている。なおこの実施例のような冷却ローラを上述した他の実施例でも設けることができる。
【0045】
<実施例7>
図11は本発明に係る画像形成装置の実施例7を示す概略図である。本実施例は定着上二次転写方式と称されるもので、中間転写体1上でトナー6を加熱するのではなく、中間転写体1からさらに定着ローラ3上にトナー6を転写した後、定着ローラ3上のトナー6をレーザ光源4等の選択的非接触熱源で外部から加熱するものである。定着ローラ3の定着ニップ部に近接し、定着ローラ3の回転方向上流側で加熱しているので、加熱されたトナー6からの放熱時間をごく短くすることができ、温度低下を非常に効率的に防止できる。なお、中間転写体1は、駆動ローラ2と、一対の二次転写ローラ3a、3bの間に掛け回してあり、二次転写ローラ3a、3bとこれに中間転写体1を挟んで接する定着ローラ3との間でトナー6の二次転写を行う。
【0046】
本実施例での記録媒体Pへのトナー6の転写、定着は、所定領域内で未定着画像が無い部分に対する加熱量を未定着画像がある部分に比べて小さくする制御を行う点で上述した実施例と同様であり、定着ローラ3上でレーザ光Lを照射してトナー6を加熱、軟化させ、その後、記録媒体Pと挟持搬送することで押圧ローラ9の加圧により記録媒体Pの繊維間にトナー6を浸透、圧接させ、定着するというものになる。なお、転写ローラ8による一次転写、二次転写ローラ3a、3bによる二次転写は図示しないバイアス回路により、トナーが移動するに必要な電圧を印加する。
【0047】
<実施例8>
図12は本発明に係る画像形成装置の実施例8を示す概略図である。本実施例も定着上二次転写方式のもので、中間転写体1上のトナー6と接触する選択的熱源としてサーマルヘッド15を用いた例を示す。接触熱源では未定着のトナー6を加熱することは困難であるが、定着上二次転写方式においては二次転写ローラ3a、3bにより定着ローラ3へ二次転写する前に、定着ローラ3のトナー画像が転写されるべき位置を予め選択的に加熱することが可能である。定着ローラ3が加熱された位置が接触する中間転写体1の位置にはトナー6が必ず存在するので、中間転写体1は高温の定着ローラ3に接することなく、中間転写体1の温度上昇がほとんど生じないためである。
【0048】
なお以上説明してきた実施例7、8においては、加熱源としてはトナー6が存在する範囲を選択的に加熱可能な他の手段を用いることができる。例えば図13に示すように、フィラメント16・・・を有する複数のヒータ17を選択的熱源とし、スイッチング回路18で画像位置に同期して各ヒータ17のオンオフを行い、選択的加熱を行うようにしてもよい。
【0049】
また図14に示すように、複数の誘導加熱コイル16aを選択的熱源とし、高周波スイッチング回路18aで画像位置に同期して各誘導加熱コイル16aのオンオフを行い、選択的加熱を行うこともできる。定着ローラ3が表層近くに導電層を有しているので、導電層を誘導電流により加熱できる。誘導加熱コイル16aは、定着ローラ3の内部配置、外部配置のいずれでも可能である。また複数の配線をスイッチングしても良いが、誘導加熱コイル16a毎に共振周波数が異なるようコンデンサなどでインピーダンスを調整し、周波数切り替えで各誘導加熱コイル16aのスイッチングを行うことも可能である(例えば特開2003−017237号公報参照)。
【0050】
<実施例9>
図15は本発明に係る画像形成装置の実施例9を示す概略図(A)と平面部分図(B)、図16は本実施例におけるレーザ光の照射形態を示す断面図である。基本的な構成は図1に示す実施例1と同様であるので説明を省略するが、以下の点で異なっている。
【0051】
本実施例では選択的非接触熱源の一例であるレーザ光源4を、加熱源として定着ローラ3の上方に配置してあり、記録媒体Pの搬送方向と直交する定着ローラ3の幅方向(軸方向)でトナー6(未定着画像である)と同期して記録媒体Pの所要部位を選択的に加熱するようになっている。
【0052】
詳細には、レーザ光源4の射出するレーザ光Lを、定着ローラ3の回転上流側(記録媒体Pの搬送方向上流側)でかつ定着ローラ3と中間転写体1とが接触する位置のできるだけ近傍で、記録媒体Pにその表面側から選択的に照射する。図16に照射部位を符号Aで示す。このレーザ光Lの照射は、像担持体7に照射する図示しない露光部の情報を用い、この情報から中間転写体1の所定の範囲内に未定着画像がある場合には照射し、未定着画像が無い場合には照射しないという判定を図示しない画像形成装置の制御部で行い、その判定結果から記録媒体Pの先端位置から中間転写体1に転写された未定着画像の位置と同期させて行う。すなわち、像担持体7の露光における主走査方向、副走査方向ともに同期させて照射する。これにより、中間転写体1全体の温度を高温にすることがなく、中間転写体1の耐久性及び画像形成装置内部の昇温による現像部の熱による融着やトナーブロッキングを防止して、安定した画像を出力することができる。また加熱位置を、定着ローラ3と中間転写体1とが接触する位置の近傍でかつ定着ローラ3の回転方向上流側としているので、加熱された記録媒体Pからの放熱時間をごく短くすることができ、温度低下を非常に効率的に防止できる。
【0053】
レーザ光Lのスポット径は、先の実施例と同様に、前記した所定部位Aを満足する範囲とする。例えば600dpiの潜像記録画素に対して、それより範囲が大きくなる72dpiで照射を行うものとする。すなわち画像形成装置の画像を記録するための手段における最小解像度より大きい範囲で記録媒体P表面上の照射部位Aを複数に分割して加熱するので、トナー6が乗っている領域と加熱位置精度のばらつきを吸収でき、安定した加熱が可能である。より小さい範囲を光エネルギーで照射、加熱するほうが中間転写体1の昇温を防止できるが、トナー位置と加熱位置の精度が重要になり、位置精度を考慮すると潜像記録画素よりスポット径を大きくしたほうが確実に所要部位Aを照射できる。またそれによって部位Aに近付いているトナー6をも照射して加熱することができる。
【0054】
記録媒体Pへのトナー6の転写及び定着動作を説明する。トナー6は、レーザ光Lを照射された加熱された記録媒体Pの照射部位Aと接触して加熱される。もちろん、レーザ光Lの照射を直接受けることもあるので、それによっても加熱される。そして加熱されることによって軟化した後、記録媒体Pと挟持搬送されつつ押圧ローラ9の加圧によって記録媒体Pの繊維間に浸透し、記録媒体Pに圧接され、転写される。
【0055】
このような動作を行うため、加熱された記録媒体の部位Aの温度が低下しない時間、すなわちトナー6と接触するまでの時間を可能な限り短く(例えば10〜100ミリ秒)できるように、既述のように転写位置近傍位置で記録媒体Pにレーザ光Lを照射することが好ましい。また、レーザ光Lを照射する範囲は、各像担持体7へ潜像を形成する位置精度や中間転写体1に各色の像担持体7から像を転写する位置精度等のばらつきを考慮した照射範囲にすることで、さらに余分な加熱を回避することができ、中間転写体1の昇温を有効に防止し、照射部位A以外の範囲を加熱する不要なエネルギーを低減できる。なお中間転写体1上にある未定着のトナー6を光学センサーにより読み取り、レーザ光Lを照射する範囲を判定してもよい。
【0056】
トナー6を有する範囲に照射したレーザ光Lはトナー6で吸収され、トナー6を加熱するが、それ以外の範囲に照射したレーザ光Lは記録媒体Pを直接に照射することになる。ただし、中間転写体1側に漏れたレーザ光Lは、既述のように中間転写体1が透明材で形成してあるため、これを透過して定着ローラ3を照射することになる。定着ローラ3は中間転写体1と従動回転しているので固定位置を照射せず、固定位置照射による偏在的温度上昇は生じない。また、レーザ光Lは定着ローラ3の表面層に設けた高反射部材により再度中間転写体1方向に反射し、トナー6を中間転写体1の内側から照射することになる。なお、中間転写体1は透過性部材にすると、照射されたレーザ光Lの光エネルギーの吸収率が低いので、中間転写体1の昇温防止に有効である。いずれにしても、中間転写体1上の未定着画像面と非接触加熱しているので、トナー状態を破壊することがなく、画質が安定する。しかもトナー6の表面温度を先行して上昇させ、下側の中間転写体1からの加熱を低温化でき、より中間転写体1の昇温を防止できる。
【0057】
<実施例10>
図17は本発明に係る画像形成装置の実施例10を示す概略図である。この実施例は、実施例9における加熱源であるレーザ光を、記録媒体Pと接触あるいはごく近接する抵抗発熱体、例えば周知のサーマルヘッド15としたものである。なお本願発明者等の行った実験では、サーマルヘッドを用いる場合でも、トナー6の転写位置に可能な限り近い位置で加熱することが、熱効率で優れる結果となった。これは、トナー6が定着する記録媒体Pの表面あるいは界面の温度が低下することなく、トナー6が記録媒体Pに押圧されるためであると考えられる。
【0058】
なお実施例9の非接触熱源とは異なり、サーマルヘッド15等の接触熱源では未定着のトナー6を直接加熱することは困難であるが、記録媒体Pのトナー画像が転写されるべき位置を予め選択的に加熱することで採用が可能である。
【0059】
<実施例11>
図18は本発明に係る画像形成装置の実施例11を示す概略図である。本実施例は定着上二次転写方式と称される方式に関するもので、中間転写体1上のトナー6が中間転写体1からさらに定着ローラ3上に転写させ、定着ローラ3上のトナー6を記録媒体Pに転写するものである。この例でも、実施例1と同様に、レーザ光源Lを加熱源として定着ローラ3の上方に配置し、記録媒体Pの搬送方向と直交する定着ローラ3の幅方向で未定着画像であるトナー6と同期して選択的に加熱する。詳細には、実施例1と同様に、レーザ光源4の射出するレーザ光Lを、定着ローラ3の回転上流側(記録媒体Pの搬送方向上流側)でかつ定着ローラ3と中間転写体1とが接触する位置、すなわち定着ニップ部のできるだけ近傍で、記録媒体Pにその表面側から選択的に照射する。加熱位置を、定着ローラ3の定着ニップ部に近接しかつ定着ローラ3の回転方向上流側としているので、加熱された記録媒体Pからの放熱時間をごく短くすることができ、温度低下を非常に効率的に防止できる。なお、中間転写体1は、駆動ローラ2と、一対の二次転写ローラ3a、3bの間に掛け回してあり、二次転写ローラ3a、3bとこれに中間転写体1を挟んで接する定着ローラ3との間でトナー6の二次転写を行う。
【0060】
本実施例での記録媒体Pへのトナー6の転写、定着は、所定領域内で未定着画像が無い部分に対する加熱量を未定着画像がある部分に比べて小さくする制御を行う点で上述した実施例と同様であり、定着ローラ3のニップ部近傍でレーザ光Lを照射してトナー6を加熱、軟化させ、その後、記録媒体Pと挟持搬送することで押圧ローラ9の加圧により記録媒体Pの繊維間にトナー6を浸透、圧接させ、定着するというものになる。なお、転写ローラ8による一次転写、二次転写ローラ3a、3bによる二次転写は図示しないバイアス回路により、トナーが移動するのに必要な電圧を印加する。また、記録媒体Pのトナー画像が転写されるべき位置を予め選択的に加熱することで、中間転写体1が高温の定着ローラ3に接することをなくせ、中間転写体1の温度上昇がほとんど生じないようにすることができる。
【0061】
<実施例12>
図19は本発明に係る画像形成装置の実施例12を示す概略図である。本実施例も定着上二次転写方式に係るもので、記録媒体Pと接触する選択的熱源として、実施例2と同様に抵抗発熱体としてサーマルヘッド15を用いている。その他の構成、動作については実施例2、3と共通するので説明は省略する。
【0062】
なお加熱源としては、トナー6の存在と対応する範囲で記録媒体Pを選択的に加熱可能な他の手段を用いることができ、図示の例のようなレーザ光源やサーマルヘッド等に限定されることはない。例えばフィラメントを有する複数のヒータを選択的熱源とし、スイッチング回路で画像位置に同期して各ヒータのオンオフを行い、選択的加熱を行うようにしてもよい。
【0063】
またなお、以上説明してきた実施例はいずれも定着部材として定着ローラを用いているが、本発明は定着部材としてベルト材を用いた構成とすることもできる。
【0064】
また、選択的熱源と非画像部も含め全体を加熱する全体熱源を併用することは重要である。例えば、レーザは10〜20%程度の熱変換効率しか無い場合もあり、ハロゲンヒータ、誘導加熱などは70〜80%の熱変換効率が見込まれる。両者の配分率でトータルの電力を決定することが好ましい。また、トナーは軟化するに必要な熱エネルギーが必要で、このエネルギーは両者の和が必要に達
するようにしなくてはならない。これらから、画像比率が低い画像形成装置では熱変換効率が低くとも選択的熱源のエネルギー配分を増やし、画像比率が高い画像形成装置では全体加熱熱源の比率を増やすことが省エネルギーにつながる。
【0065】
またさらには、記録媒体Pの一面側からの加熱だけなく、対応部位での他面側からの加熱を併用しても良い。
【0066】
図20は追跡パターンを示す図である。図中fは画像部、pはイエロートナー等による追跡パターンを示す。従来は非画像部も追跡パターンが形成されることが多かった(図20A)。これは、従来の画像形成装置が全面加熱を前提としているためである。低解像度の選択的熱源による加熱においては、画像部周辺のみに追跡パターンpを形成する(図20B)ことが省エネルギーの観点から好ましい。この点は、定着上二次転写方式のみならず、解像度の低い選択的な加熱を行う定着方式全般に有効である。すなわち追跡パターンpを犯罪使用防止に使用する場合でも、追跡パターンpが画像部周辺のみに形成されているので、選択的加熱の効果が高まり、省エネルギーと犯罪使用防止を両立できる。なお、偽造防止のための追跡パターンを印刷可能にする技術は、例えば特開2002−010057号公報に開示されている。
【0067】
図21は、赤外線吸収剤の化学構造を示す図である。図示の構造の赤外線吸収剤は、例えば特開2002−357927号公報に開示されている。なお、式中R1〜R8はベンゼン環またはナフタレン環に付加している置換基であり、水素、ハロゲン原子、炭素数1〜18までの飽和または不飽和炭化水素基、炭素数1〜13までの酸素及び/または窒素含有炭化水素基、Mは水素2原子または2個の水素原子、2価の金属、3〜4価の金属誘導体を示す。
【符号の説明】
【0068】
1:中間転写体
2:駆動ローラ
3:定着ローラ
3a:二次転写ローラ
4:レーザ光源
6:トナー
7:像担持体
8:転写ローラ
9:押圧ローラ
10:作像ユニット
11:クリーナ
13:ハロゲンランプ
15:サーマルヘッド
16:フィラメント
16a:誘導加熱コイル
17:ヒータ
18:スイッチング回路
18a:高周波スイッチング回路
21:中間転写体
22:保護部材
24:反射板
30:ハロゲンランプ
32:反射板
A:レーザ光の照射部
L:レーザ光
P:記録媒体
f:画像部
p:追跡パターン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特許第3042414号公報
【特許文献2】特開平07−225524号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は複写機、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で採用する定着装置としては、紙等の記録媒体上に転写した未定着トナーを記録媒体とともに挟持搬送し、加熱することで記録媒体に定着させるものが一般に知られている。特に感光体等の像担持体から中間転写ベルト等の中間転写体を介し、さらに記録媒体へ転写するものが知られている。このような画像形成装置における各転写工程では、転写された画像の品質は未定着画像の搬送速度差による画像ズレや記録媒体の湿度や厚み、表面粗さ等に転写の安定性が影響されることが知られている。
【0003】
そこで、中間転写体上のトナーを直接記録媒体に加熱、加圧することで転写と同時に定着する技術が提案されている。例えば、中間転写体を内周面に張化した加熱部材により内周面から接触加熱することで、トナーを加熱している技術がある(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
また本願発明者の知るところでは、中間転写体上でトナーを加熱するのではなく、中間転写体からさらに定着部材上に転写した後、トナーを外部から加熱する定着上二次転写方式も提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが前記特許文献に開示されている技術では、中間転写体の内周面から回転搬送された中間転写体を随時加熱部材との接触部で加熱することで中間転写体上のトナーを加熱することで、中間転写体を介してトナーを加熱しているために、中間転写体の全域が高温となり、現像部である像担持体と接触するまでに冷却する時間が必要になる。このような冷却効果を得るためには中間転写体の周長を長くする必要があり、これは装置の大型化につながる。また冷却効果を得るために冷却部材を追加する場合には、部品コストの増大となる。さらに、中間転写体を所定の温度に加熱するための時間が必要になることは、装置の立ち上がり時間の増加となる。
【0006】
また、搬送される中間転写体を随時加熱することになり、転写する複数の記録媒体の間も加熱することになるが、このエネルギーは省エネルギーには不利となる。そして高温に加熱された加熱部材及び中間転写体からの放熱は、画像形成装置の機内温度を上昇させることになり、像担持体にトナーの融着等の原因による不良画像の発生が懸念される。
【0007】
また定着上二次転写方式においても、トナーの無い非画像部の定着部材がトナーのある部分より強く加熱され、中間転写体への接触時に中間転写体を加熱してしまうという点がある。中間転写体の温度上昇がわずかなため、定着への転写と、次に感光体から中間転写体への転写が行われるまでとの間にトナーや感光体にダメージを与えるような事態は発生しないが、わずかな温度上昇でもこのエネルギー分が累積すれば大きな損失となってしまう。
【0008】
前記の課題を解決するために、未定着画像部のみを選択的に加熱することで中間転写体や定着部材及び機内温度の上昇を抑制し、高画質で安定した画像を提供することを目的とした技術が提案されているが、トナーを加熱するために非接触な加熱手段が中心とならざるを得ない。そのため、輻射エネルギーを吸収しやすくするために赤外線吸収剤を含んだトナーの使用などが必要であり、鮮やかな色彩や色再現範囲に制約が出ることがある。またこの技術では接触加熱による選択的加熱、例えば定着ローラに加熱体が接触して加熱することも考えられるが、この場合は定着ローラの表面が摩耗し易いという問題が生じてしまう。
【0009】
本発明はこれらの問題を解決するため、トナーや中間転写体及び定着体のみを加熱するのではなく、記録媒体側の画像対応部を選択的に加熱する技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像形成装置のうち請求項1に係るものは、未定着状態の画像部を形成する画像形成部と、前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部を加熱する加熱手段とを具備し、
前記画像形成部は、前記未定着状態の画像部の周辺に未定着状態の不正使用防止のための追跡パターンを形成する画像形成部であり、
前記加熱手段は、前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部および前記未定着状態の追跡パターンを加熱する加熱手段であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係るものは、請求項1記載の画像形成装置において、前記加熱手段は、前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部が転写される転写体と接触して加熱する加熱手段であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係るものは、請求項1の画像形成装置において、前記加熱手段は、前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部に対応する部位に位置する記録媒体と接触して加熱する加熱手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る中間転写装置、定着装置及び画像形成装置は、未定着画像部のみを選択的に加熱することで中間転写体や定着部材及び機内温度の上昇を抑制し、高画質で安定した画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る画像形成装置の実施例1を示す概略図(A)と平面部分図(B)
【図2】光エネルギーの照射時における中間転写体1の温度分布イメージを示す図
【図3】実施例1をモノクロ画像を出力する画像形成装置に適用した例を示す概略図
【図4】実施例1でレーザ光源に代えてフラッシュランプを用いた変形例を示す要部断面図
【図5】本発明に係る画像形成装置の実施例2を示す概略図
【図6】本発明に係る画像形成装置の実施例3を示す概略図
【図7】本発明に係る画像形成装置の実施例4を示す概略図
【図8】実施例4の変形例を示す要部断面図
【図9】本発明に係る画像形成装置の実施例5を示す概略図
【図10】本発明に係る画像形成装置の実施例6を示す概略図
【図11】本発明に係る画像形成装置の実施例7を示す概略図
【図12】本発明に係る画像形成装置の実施例8を示す概略図
【図13】選択的に加熱可能な他の手段を示す図
【図14】選択的に加熱可能なさらに他の手段を示す図
【図15】本発明に係る画像形成装置の実施例9を示す概略図(A)と平面部分図(B)
【図16】実施例9でレーザ光の照射部位を示す断面図
【図17】本発明に係る画像形成装置の実施例10を示す概略図
【図18】本発明に係る画像形成装置の実施例11を示す概略図
【図19】本発明に係る画像形成装置の実施例12を示す概略図
【図20】追跡パターンを示す図
【図21】赤外線吸収剤の構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図に示す実施例を参照して説明する。なお以下では本発明の実施例を複数説明するが、実施例2以降については、実施例1と共通する構成、転写、定着工程、作用、効果については説明を省略する。また本発明はトナーや中間転写体及び定着部材を加熱するのではなく記録媒体側の画像対応部を選択的に加熱するが、トナーや中間転写体及び定着部材を加熱しないと限定するものではない。またカラー画像を形成する画像形成装置を例として説明するが、本発明は形成する画像がモノクロ画像のものをも含む。また中間転写装置、定着装置及び画像形成装置は、それぞれが単独の装置として構成されているもの、他の装置や手段等と組み合わせてユニットとして構成されているもの等々種々の形態のものとして構成でき、図示の形態のものには限定されない。
【実施例】
【0016】
<実施例1>
図1は本発明に係る画像形成装置の実施例1を示す概略図(A)と平面部分図(B)である。図中1は中間転写体で、駆動ローラ2と定着ローラ3に周回可能に張架した無端ベルト状のものであり、この中間転写体1と対向する位置にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)という4色のトナー像を形成する4つの像担持体7・・・からなる作像ユニット10が配設してある。
【0017】
現像に使用するトナーには帯電した粉体または液体を用いるが、本実施例では、例えばトナー軟化点温度が100℃で、結着樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を用いたシャープメルト性を有するものであり、Bk以外のトナーは赤外線吸収剤を含有させたものとする。トナーをシャームメルト化(低融点)し、軟化温度が低温化すれば、小さいエネルギーでトナー6を軟化させることができるので、転写、定着の高速化を図れる。
【0018】
作像ユニット10の像担持体7は、表面に静電潜像を形成するもので、図示を省略するが該各像担持体7の周囲には、像担持体7の表面を一様に帯電させる帯電装置、像担持体7の表面に像光を照射して潜像を形成する露光装置、像担持体7上に形成した潜像にトナーを選択的に転移させてトナー像(未定着画像)を形成する現像装置という潜像形成プロセス手段を配置するとともに、像担持体7に対向して像担持体7上のトナー像を中間転写体1上に転写する転写ローラ8を設けてある。なお、転写ローラ8には図示しないバイアス回路により、トナー6が移動するのに必要な電圧を印加する。
【0019】
中間転写体1は、無端ベルト状の基材の表面にトナーとの離型性のよい表面層を形成したものであり、内側に配置した駆動ローラ2を図示しない駆動部により回転駆動し、その回転によって周回図中に示す矢印方向に周回移動するようになっている。この中間転写体1には耐熱性が必要であり、例えばポリアミドの基材に離型性のよいPFAフッ素樹脂を10μmの厚さで被覆して透過性部材としたもの使用する。
【0020】
定着ローラ3は、表面層に高反射部材を有し、駆動ローラ2の駆動による中間転写体1の回転に従動して回転するようになっている。この定着ローラ3に対向して中間転写体1を押圧するように押圧ローラ9を配してあり、この押圧ローラ9と中間転写体1との圧接部に図示しない搬送経路を介して記録媒体Pを送り込み、中間転写体1上のトナー6を記録媒体Pに転写するようになっている。なお中間転写体1上のトナーは通常は層状になっていることが多いが、以下では特に必要がなければ単にトナーと言う。
【0021】
図中4はレーザ光源で、トナー加熱源として定着ローラ3の上方に配置してあり、記録媒体Pの搬送方向と直交する定着ローラ3の幅方向(軸方向)でトナー6(未定着画像である)と同期して選択的に加熱する。またレーザ光源4の射出するレーザ光Lは、定着ローラ3の回転上流側で定着ローラ3と中間転写体1とが接触する位置で、中間転写体1上を選択的に照射する。このレーザ光Lは、像担持体7に照射する図示しない露光部の情報を用い、この情報から中間転写体1の所定の範囲内に未定着画像がある場合には照射し、無い場合は照射しないという判定を図示しない画像形成装置の制御部で行い、その判定結果から記録媒体Pの先端位置から中間転写体1に転写された未定着画像の位置と同期させて照射する方法をとっている。これにより、中間転写体1全体の温度を高温にすることがなく、中間転写体1の耐久性及び画像形成装置内部の昇温による現像部の熱による融着やトナーブロッキングを防止して、安定した画像を出力することができる。
【0022】
レーザ光Lのスポット径は、上記した所定の範囲を満足する範囲とする。例えば600dpiの潜像記録画素に対して、それより範囲が大きくなる72dpiで照射を行うものとする。すなわち画像形成装置の画像を記録するための手段における最小解像度より大きい範囲で中間転写体1を複数に分割して加熱するので、トナー6が乗っている領域と加熱位置精度のばらつきを吸収でき、安定した加熱が可能である。より小さい範囲を光エネルギーで照射、加熱するほうが中間転写体1の昇温を防止できるが、トナー位置と加熱位置の精度が重要になり、位置精度を考慮すると潜像記録画素よりスポット径を大きくしたほうが確実に未定着画像を照射できる。図2は光エネルギーの照射時における中間転写体1の温度分布イメージを示す図である。なお図中4aはレーザ、4bはポリゴンミラーで、図示しないレンズ等を用いて定着ローラ3の軸方向に沿って走査してレーザ光Lを照射する。
【0023】
図中11はクリーナで、中間転写体1と記録媒体Pとの圧接部の回転方向下流側に配置してあり、記録媒体Pに転写されず中間転写体1上に残ったトナーを回収するために中間転写体1に接触している。
【0024】
記録媒体Pへのトナー6の転写及び定着動作を説明すると、中間転写体1上でレーザ光Lを照射されたトナー6は、加熱されて軟化した後、記録媒体Pと挟持搬送されつつ押圧ローラ9の加圧によって記録媒体Pの繊維間に浸透し、記録媒体Pに圧接され、転写される。その後、離型性の良い中間転写体1から記録媒体Pが剥離して転写が完了する。このときトナー6の熱は記録媒体Pに吸収され、温度低下による固化で記録媒体P上に定着する。記録媒体Pは、その後図示しない経路を経て装置外へ排出される。
【0025】
このような動作を行うため、加熱したトナー6の温度が低下しない時間、すなわち記録媒体Pと接触するまでの時間を可能な限り短くできるように、転写位置近傍位置で中間転写体1上のトナー6にレーザ光Lを照射することが好ましい。また、レーザ光Lを照射する範囲は、各像担持体7へ潜像を形成する位置精度や中間転写体1に各色の像担持体7から像を転写する位置精度等のばらつきを考慮した照射範囲にすることで、さらに余分な加熱を回避することができ、中間転写体1の昇温を有効に防止し、トナー以外の範囲を加熱する不要なエネルギーを低減できる。なお中間転写体1上にある未定着のトナー6を光学センサーにより読み取り、レーザ光Lを照射する範囲を判定してもよい。
【0026】
トナー6を有する範囲に照射したレーザ光Lはトナー6で吸収され、トナー6を加熱するが、それ以外の範囲に照射したレーザ光Lは中間転写体1を直接に照射することになり、既述のように中間転写体1が透明材で形成してあるため、これを透過して定着ローラ3を照射することになる。定着ローラ3は中間転写体1と従動回転しているので固定位置を照射せず、固定位置照射による偏在的温度上昇は生じない。また、レーザ光Lは定着ローラ3の表面層に設けた高反射部材により再度中間転写体1方向に反射し、トナー6を中間転写体1の内側から照射することになる。なお、中間転写体1は透過性部材にすると、照射されたレーザ光Lの光エネルギーの吸収率が低いので、中間転写体1の昇温防止に有効である。いずれにしても、中間転写体1上の未定着画像面と非接触加熱しているので、トナー状態を破壊することがなく、画質が安定する。しかもトナー6の表面温度を先行して上昇させ、下側の中間転写体1からの加熱を低温化でき、より中間転写体1の昇温を防止できる。
【0027】
このようなレーザ光Lの経路となることにより、中間転写体1を透過したレーザ光Lによって画像形成装置内の他の装置、部材を照射することがなく、照射による加熱破壊を防止できるとともに、中間転写体1上のトナー6の加熱を表裏から行うことが可能でエネルギーを有効に使用することができる。さらに裏面から反射したレーザ光Lの経路に対応する個所に反射板あるいは反射部を設けて再々度反射させる構成としてもよい。
【0028】
なお上記実施例では中間転写体1との摺動抵抗を軽減するため回転であるローラに掛け回す構造としたが、中間転写体1を支持する部材は記録媒体Pと均一に接触できる部材であればよく、図示の例には限定されない。また透過したレーザ光Lを他の部材へ照射することを防止する部材、例えば白地の部材で構成し、光エネルギーを乱反射させてエネルギーを拡散させても有効である。
【0029】
ところで、通常はBkトナーは光吸収性に優れているので加熱に有利であるが、Y、M、C等のカラートナーは光吸収性が劣る。したがってBk以外のトナーに赤外線吸収剤を含有させ、レーザ光Lの照射エネルギーの吸収効率を向上させて加熱に有利とすることが好ましい。すなわちトナー6の周りの中間転写体1の昇温速度が速くなり、効率よくトナー温度を上昇させることが可能となり、したがって転写、定着の高速化が可能となる。またこの選択加熱の効果により、中間転写体1全体の温度を高温にすることがないカラー画像形成装置を実現できる。また、結晶性ポリエステルを含有させることで軟化点温度を低温にし、シャープメルト化して短時間の照射エネルギーで加熱することができるようにすることも好ましい。
【0030】
カラートナーに赤外線吸収剤を含有させない場合は、中間転写体1に光吸収性の良い部材を用いることが有効となる。光吸収性がよいので加熱速度が向上し、中間転写1上のトナー6の周囲がすばやく加熱され、この熱がトナー6に伝搬して効率よく加熱することが可能となる。この場合、トナー6の存在する範囲を選択的に加熱するので、中間転写体1全体の昇温を防止し得るが、上記実施例の手段を採用すれば記録速度の高速化に対応可能となるのでより好ましい。そして、この理由から光吸収性に有利なBkのみのモノクロ画像を出力する画像形成装置(例えば図3参照)では、中間転写体1を透明にすることが中間転写体1の昇温防止に有効である。また本実施例では加熱源としてレーザ光源4を使用したが、中間転写体1上にトナー6が存在する範囲を選択的に加熱可能な他の手段を用いてもよいことはもちろんである。例えば規則的に配列した複数のランプ、ヒータ等の手段でもよい。図4はレーザ光源4に代えてフラッシュランプ12を用いた変形例を示す要部断面図である。
【0031】
<実施例2>
図5は本発明に係る画像形成装置の実施例2を示す概略図である。本実施例の中間転写体21は、円筒状のガラス基体上に薄層のPFAフッ素樹脂を例えば10μm被覆し、透明としたもので、図示しない駆動源により回転駆動するようになっている。また先の実施例1と同様の作像ユニット10及び像担持体7及び転写ローラ8を中間転写体21の周囲に同様に配置してあり、押圧ローラ9と中間転写体21との圧接部に図示しない搬送経路を介して記録媒体Pを送り込み、中間転写体21上のトナー6を記録媒体Pに転写するようになっている。
【0032】
レーザ光源4は、中間転写体21の内周に設けてあり、内側からレーザ光Lを照射するよう配置してあり、レーザ光源4から照射するレーザ光Lは、中間転写体21の回転方向上流側で押圧ローラ9との接触部近傍(転写、定着部)を選択的に照射するようになっている。
【0033】
本実施例の加熱方法及び動作を説明する。中間転写体1の内周面からレーザ光Lを上述した所定の位置で照射し、透過性部材からなる中間転写体21を透過させてトナー6を照射し、トナーを加熱する。またトナー6の周囲で透過したレーザ光Lが記録媒体Pを照射し、記録媒体Pの表層もまた加熱される(図中斜線部H)。レーザ光Lの照射位置は、中間転写体21が記録媒体Pと接触する位置の近傍でかつ接触位置よりも中間転写体21の回転方向で上流側に位置するので、記録媒体Pへの照射位置は未定着画像部とほぼ重なる位置となる。記録媒体Pのレーザ光Lで照射した部位は、その後、中間転写体21と押圧ローラ9で挟まれる位置(ニップ部)に至り、軟化したトナーが押圧ローラ9の加圧で記録媒体Pの繊維間へ浸透し、定着される。
【0034】
この過程についても実施例1と同様であるが、本実施例ではトナー6を下層側すなわち中間転写体21側から加熱し、軟化させるので、中間転写体21との接着力が低下し、記録媒体Pへ転写しやすくなる。また、トナー6と接触する記録媒体Pの該当個所も上述のように加熱するのでトナー6の急激な冷却を防止できる。
【0035】
なお記録媒体Pとの接触でトナー6の急激な冷却が起こった場合、記録媒体Pの繊維内へ浸透することなく固化し、記録媒体Pとの結着力が得られず、結局は記録媒体Pへ転写しないという不具合が発生する可能性がある。これを回避するためにはトナー6の加熱温度を十分高温にするか、または接触面の加圧力を高くして繊維間に押し込む動作が必要になる。本実施例のように、記録媒体Pのトナーの転写位置に相当する位置も加熱すると、記録媒体Pの繊維間に軟化したトナーが浸透しやすく、定着性能が向上する。したがって、トナー温度をあまり高温にする必要がないので、中間転写体21の昇温を防止することになり、光エネルギーを有効に使用することになる。また、押圧ローラ9の圧力は低圧で済み、中間転写体21には剛性を必要としないので、さらに薄肉化が可能となる。したがって光エネルギーの透過損失が低減でき、投入するエネルギーを低減させ、また熱容量や部品コストの低減を有効に行える。
【0036】
<実施例3>
図6は本発明に係る画像形成装置の実施例3を示す概略図である。本実施例の構成は実施例2とほぼ同様であるので相違部分を説明する。本実施例は、ハロゲンランプ30を記録媒体Pの搬送方向で中間転写体21と記録媒体Pと接触しない位置に配置し、軸方向に最大記録幅以上に照射するようにしている。反射板32はハロゲンランプ30に対し反射光が押圧ローラ9と中間転写体1の接触する方向になるように配置してある。
【0037】
本実施例では、記録媒体Pが搬送されて所定位置に達した時、その通過に合わせてハロゲンランプ30から光を照射するとともに、中間転写体21上の未定着画像、すなわちトナー6が所定位置に達した時にレーザ光Lを選択的に照射し、トナー6を加熱する。ハロゲンランプ30とレーザ光を照射することで中間転写体21のトナー6の下層側と上層側から加熱し、また記録媒体Pの表層も均一に加熱する(図中の斜線部H)。これにより記録媒体Pと加熱されたトナー6の接触時の急激な冷却をいっそう効果的に防止する。また記録媒体Pと接触するトナー6の上層面も加熱しているので記録媒体Pの繊維間へのトナー6の浸透もいっそう図られ、定着性能が向上する。さらに本実施例でも、押圧ローラ9の圧力は低圧で済み、中間転写体21には剛性を必要としないので、さらに薄肉化が可能となり、したがって光エネルギーの透過損失が低減でき、投入エネルギーの低減となり、熱容量や部品コストの低減を有効に行える。
【0038】
また、トナー6が所定位置に搬送されてからハロゲンランプ30を照射するので、記録媒体Pに相当する長さのみの加熱となる。したがって、中間転写体21は常に加熱されることはない。また、中間転写体21に透過性部材を使用しているので、中間転写体21の昇温を抑制でき、さらに光を照射した部位では転写、定着部位で記録媒体Pとの接触で熱容量の大きい記録媒体Pに吸熱、冷却されるので、中間転写体21の温度増加をさらに抑制できる。また、トナー6の上層部はランプハロゲンランプ30で加熱され、トナー下層部のレーザ光による加熱で、上下層を加熱するので短時間加熱が可能となり、記録速度の高速化に対応できる。
【0039】
なお、中間転写体21のトナー6を転写した後の部位が、像担持体7へ搬送されるまでの間に、該部位に積極的に熱容量の大きい部材に接触させたり、装置本体内の風路等を通す冷却風によって冷却したりするとより効果的である。
【0040】
<実施例4>
図7は本発明に係る画像形成装置の実施例4を示す概略図である。本実施例は、中間転写体1に光透過性部材を使用した場合、レーザ光源4による加熱域に対し中間転写体1の非加熱方向に対応する位置に保護部材22、23を配し、中間転写体1を透過した光による他の部品の熱損傷を防止している。
【0041】
保護部材22、23に乱反射部材を用いれば、透過した光を受ける部位で乱反射させることで光エネルギーを小さくし、さらに効果的に熱損傷を防止できる。また、保護部材22、23に光反射部材を用いれば、光反射部材からの反射光が再度トナー6を照射することになり、中間転写体1を透過した光エネルギーを損失することなく有効に利用できる。しかも、中間転写体1を透過した光で、中間転写体1のトナーが乗っていない非画像部側(図の例では内側)から光エネルギーを照射できるので、透過光は記録媒体Pを照射することが可能となる。これが画像部と対応した記録媒体上を加熱することができ、記録媒体温度とトナー温度の差を小さくするので、記録媒体と接触した時の急激な冷却を防止することで記録媒体の繊維間に浸透しやすくなるので、定着性に有利となる。
【0042】
図8は実施例4の変形例を示す要部断面図である。本例は、湾曲した反射板24を用いており、反射光を反射板24の湾曲で効率よく中間転写体1の所要部位に再入射させることができるようになっている。
【0043】
<実施例5>
図9は本発明に係る画像形成装置の実施例5を示す概略図である。本実施例は、実施例1とほぼ同様の構成を有するが、定着ローラ3内にハロゲンランプ13を設けて、中間転写体1を両面から加熱できるようにしてある。またハロゲンランプ13で中間転写体1上の未定着画像であるトナー6に同期して定着ローラ3の軸方向で全体的に加熱する構成となっている。この例では、中間転写体1を周長方向で全体に対して加熱しないので、昇温を抑制でき、また中間転写体1上のトナー6を選択的かつ中間転写体1の両面から加熱するので、中間転写体1全体の加熱温度を低温化することが可能となる。
【0044】
<実施例6>
図10は本発明に係る画像形成装置の実施例6を示す概略図である。本実施例も、実施例1とほぼ同様の構成を有するが、中間転写体1の移動方向で定着ローラ3よりも後流側に冷却用のローラ14を設け、中間転写体1の温度を早期に低下させ得るようにして、さらに記録速度の高速化に対応できるようにしている。なおこの実施例のような冷却ローラを上述した他の実施例でも設けることができる。
【0045】
<実施例7>
図11は本発明に係る画像形成装置の実施例7を示す概略図である。本実施例は定着上二次転写方式と称されるもので、中間転写体1上でトナー6を加熱するのではなく、中間転写体1からさらに定着ローラ3上にトナー6を転写した後、定着ローラ3上のトナー6をレーザ光源4等の選択的非接触熱源で外部から加熱するものである。定着ローラ3の定着ニップ部に近接し、定着ローラ3の回転方向上流側で加熱しているので、加熱されたトナー6からの放熱時間をごく短くすることができ、温度低下を非常に効率的に防止できる。なお、中間転写体1は、駆動ローラ2と、一対の二次転写ローラ3a、3bの間に掛け回してあり、二次転写ローラ3a、3bとこれに中間転写体1を挟んで接する定着ローラ3との間でトナー6の二次転写を行う。
【0046】
本実施例での記録媒体Pへのトナー6の転写、定着は、所定領域内で未定着画像が無い部分に対する加熱量を未定着画像がある部分に比べて小さくする制御を行う点で上述した実施例と同様であり、定着ローラ3上でレーザ光Lを照射してトナー6を加熱、軟化させ、その後、記録媒体Pと挟持搬送することで押圧ローラ9の加圧により記録媒体Pの繊維間にトナー6を浸透、圧接させ、定着するというものになる。なお、転写ローラ8による一次転写、二次転写ローラ3a、3bによる二次転写は図示しないバイアス回路により、トナーが移動するに必要な電圧を印加する。
【0047】
<実施例8>
図12は本発明に係る画像形成装置の実施例8を示す概略図である。本実施例も定着上二次転写方式のもので、中間転写体1上のトナー6と接触する選択的熱源としてサーマルヘッド15を用いた例を示す。接触熱源では未定着のトナー6を加熱することは困難であるが、定着上二次転写方式においては二次転写ローラ3a、3bにより定着ローラ3へ二次転写する前に、定着ローラ3のトナー画像が転写されるべき位置を予め選択的に加熱することが可能である。定着ローラ3が加熱された位置が接触する中間転写体1の位置にはトナー6が必ず存在するので、中間転写体1は高温の定着ローラ3に接することなく、中間転写体1の温度上昇がほとんど生じないためである。
【0048】
なお以上説明してきた実施例7、8においては、加熱源としてはトナー6が存在する範囲を選択的に加熱可能な他の手段を用いることができる。例えば図13に示すように、フィラメント16・・・を有する複数のヒータ17を選択的熱源とし、スイッチング回路18で画像位置に同期して各ヒータ17のオンオフを行い、選択的加熱を行うようにしてもよい。
【0049】
また図14に示すように、複数の誘導加熱コイル16aを選択的熱源とし、高周波スイッチング回路18aで画像位置に同期して各誘導加熱コイル16aのオンオフを行い、選択的加熱を行うこともできる。定着ローラ3が表層近くに導電層を有しているので、導電層を誘導電流により加熱できる。誘導加熱コイル16aは、定着ローラ3の内部配置、外部配置のいずれでも可能である。また複数の配線をスイッチングしても良いが、誘導加熱コイル16a毎に共振周波数が異なるようコンデンサなどでインピーダンスを調整し、周波数切り替えで各誘導加熱コイル16aのスイッチングを行うことも可能である(例えば特開2003−017237号公報参照)。
【0050】
<実施例9>
図15は本発明に係る画像形成装置の実施例9を示す概略図(A)と平面部分図(B)、図16は本実施例におけるレーザ光の照射形態を示す断面図である。基本的な構成は図1に示す実施例1と同様であるので説明を省略するが、以下の点で異なっている。
【0051】
本実施例では選択的非接触熱源の一例であるレーザ光源4を、加熱源として定着ローラ3の上方に配置してあり、記録媒体Pの搬送方向と直交する定着ローラ3の幅方向(軸方向)でトナー6(未定着画像である)と同期して記録媒体Pの所要部位を選択的に加熱するようになっている。
【0052】
詳細には、レーザ光源4の射出するレーザ光Lを、定着ローラ3の回転上流側(記録媒体Pの搬送方向上流側)でかつ定着ローラ3と中間転写体1とが接触する位置のできるだけ近傍で、記録媒体Pにその表面側から選択的に照射する。図16に照射部位を符号Aで示す。このレーザ光Lの照射は、像担持体7に照射する図示しない露光部の情報を用い、この情報から中間転写体1の所定の範囲内に未定着画像がある場合には照射し、未定着画像が無い場合には照射しないという判定を図示しない画像形成装置の制御部で行い、その判定結果から記録媒体Pの先端位置から中間転写体1に転写された未定着画像の位置と同期させて行う。すなわち、像担持体7の露光における主走査方向、副走査方向ともに同期させて照射する。これにより、中間転写体1全体の温度を高温にすることがなく、中間転写体1の耐久性及び画像形成装置内部の昇温による現像部の熱による融着やトナーブロッキングを防止して、安定した画像を出力することができる。また加熱位置を、定着ローラ3と中間転写体1とが接触する位置の近傍でかつ定着ローラ3の回転方向上流側としているので、加熱された記録媒体Pからの放熱時間をごく短くすることができ、温度低下を非常に効率的に防止できる。
【0053】
レーザ光Lのスポット径は、先の実施例と同様に、前記した所定部位Aを満足する範囲とする。例えば600dpiの潜像記録画素に対して、それより範囲が大きくなる72dpiで照射を行うものとする。すなわち画像形成装置の画像を記録するための手段における最小解像度より大きい範囲で記録媒体P表面上の照射部位Aを複数に分割して加熱するので、トナー6が乗っている領域と加熱位置精度のばらつきを吸収でき、安定した加熱が可能である。より小さい範囲を光エネルギーで照射、加熱するほうが中間転写体1の昇温を防止できるが、トナー位置と加熱位置の精度が重要になり、位置精度を考慮すると潜像記録画素よりスポット径を大きくしたほうが確実に所要部位Aを照射できる。またそれによって部位Aに近付いているトナー6をも照射して加熱することができる。
【0054】
記録媒体Pへのトナー6の転写及び定着動作を説明する。トナー6は、レーザ光Lを照射された加熱された記録媒体Pの照射部位Aと接触して加熱される。もちろん、レーザ光Lの照射を直接受けることもあるので、それによっても加熱される。そして加熱されることによって軟化した後、記録媒体Pと挟持搬送されつつ押圧ローラ9の加圧によって記録媒体Pの繊維間に浸透し、記録媒体Pに圧接され、転写される。
【0055】
このような動作を行うため、加熱された記録媒体の部位Aの温度が低下しない時間、すなわちトナー6と接触するまでの時間を可能な限り短く(例えば10〜100ミリ秒)できるように、既述のように転写位置近傍位置で記録媒体Pにレーザ光Lを照射することが好ましい。また、レーザ光Lを照射する範囲は、各像担持体7へ潜像を形成する位置精度や中間転写体1に各色の像担持体7から像を転写する位置精度等のばらつきを考慮した照射範囲にすることで、さらに余分な加熱を回避することができ、中間転写体1の昇温を有効に防止し、照射部位A以外の範囲を加熱する不要なエネルギーを低減できる。なお中間転写体1上にある未定着のトナー6を光学センサーにより読み取り、レーザ光Lを照射する範囲を判定してもよい。
【0056】
トナー6を有する範囲に照射したレーザ光Lはトナー6で吸収され、トナー6を加熱するが、それ以外の範囲に照射したレーザ光Lは記録媒体Pを直接に照射することになる。ただし、中間転写体1側に漏れたレーザ光Lは、既述のように中間転写体1が透明材で形成してあるため、これを透過して定着ローラ3を照射することになる。定着ローラ3は中間転写体1と従動回転しているので固定位置を照射せず、固定位置照射による偏在的温度上昇は生じない。また、レーザ光Lは定着ローラ3の表面層に設けた高反射部材により再度中間転写体1方向に反射し、トナー6を中間転写体1の内側から照射することになる。なお、中間転写体1は透過性部材にすると、照射されたレーザ光Lの光エネルギーの吸収率が低いので、中間転写体1の昇温防止に有効である。いずれにしても、中間転写体1上の未定着画像面と非接触加熱しているので、トナー状態を破壊することがなく、画質が安定する。しかもトナー6の表面温度を先行して上昇させ、下側の中間転写体1からの加熱を低温化でき、より中間転写体1の昇温を防止できる。
【0057】
<実施例10>
図17は本発明に係る画像形成装置の実施例10を示す概略図である。この実施例は、実施例9における加熱源であるレーザ光を、記録媒体Pと接触あるいはごく近接する抵抗発熱体、例えば周知のサーマルヘッド15としたものである。なお本願発明者等の行った実験では、サーマルヘッドを用いる場合でも、トナー6の転写位置に可能な限り近い位置で加熱することが、熱効率で優れる結果となった。これは、トナー6が定着する記録媒体Pの表面あるいは界面の温度が低下することなく、トナー6が記録媒体Pに押圧されるためであると考えられる。
【0058】
なお実施例9の非接触熱源とは異なり、サーマルヘッド15等の接触熱源では未定着のトナー6を直接加熱することは困難であるが、記録媒体Pのトナー画像が転写されるべき位置を予め選択的に加熱することで採用が可能である。
【0059】
<実施例11>
図18は本発明に係る画像形成装置の実施例11を示す概略図である。本実施例は定着上二次転写方式と称される方式に関するもので、中間転写体1上のトナー6が中間転写体1からさらに定着ローラ3上に転写させ、定着ローラ3上のトナー6を記録媒体Pに転写するものである。この例でも、実施例1と同様に、レーザ光源Lを加熱源として定着ローラ3の上方に配置し、記録媒体Pの搬送方向と直交する定着ローラ3の幅方向で未定着画像であるトナー6と同期して選択的に加熱する。詳細には、実施例1と同様に、レーザ光源4の射出するレーザ光Lを、定着ローラ3の回転上流側(記録媒体Pの搬送方向上流側)でかつ定着ローラ3と中間転写体1とが接触する位置、すなわち定着ニップ部のできるだけ近傍で、記録媒体Pにその表面側から選択的に照射する。加熱位置を、定着ローラ3の定着ニップ部に近接しかつ定着ローラ3の回転方向上流側としているので、加熱された記録媒体Pからの放熱時間をごく短くすることができ、温度低下を非常に効率的に防止できる。なお、中間転写体1は、駆動ローラ2と、一対の二次転写ローラ3a、3bの間に掛け回してあり、二次転写ローラ3a、3bとこれに中間転写体1を挟んで接する定着ローラ3との間でトナー6の二次転写を行う。
【0060】
本実施例での記録媒体Pへのトナー6の転写、定着は、所定領域内で未定着画像が無い部分に対する加熱量を未定着画像がある部分に比べて小さくする制御を行う点で上述した実施例と同様であり、定着ローラ3のニップ部近傍でレーザ光Lを照射してトナー6を加熱、軟化させ、その後、記録媒体Pと挟持搬送することで押圧ローラ9の加圧により記録媒体Pの繊維間にトナー6を浸透、圧接させ、定着するというものになる。なお、転写ローラ8による一次転写、二次転写ローラ3a、3bによる二次転写は図示しないバイアス回路により、トナーが移動するのに必要な電圧を印加する。また、記録媒体Pのトナー画像が転写されるべき位置を予め選択的に加熱することで、中間転写体1が高温の定着ローラ3に接することをなくせ、中間転写体1の温度上昇がほとんど生じないようにすることができる。
【0061】
<実施例12>
図19は本発明に係る画像形成装置の実施例12を示す概略図である。本実施例も定着上二次転写方式に係るもので、記録媒体Pと接触する選択的熱源として、実施例2と同様に抵抗発熱体としてサーマルヘッド15を用いている。その他の構成、動作については実施例2、3と共通するので説明は省略する。
【0062】
なお加熱源としては、トナー6の存在と対応する範囲で記録媒体Pを選択的に加熱可能な他の手段を用いることができ、図示の例のようなレーザ光源やサーマルヘッド等に限定されることはない。例えばフィラメントを有する複数のヒータを選択的熱源とし、スイッチング回路で画像位置に同期して各ヒータのオンオフを行い、選択的加熱を行うようにしてもよい。
【0063】
またなお、以上説明してきた実施例はいずれも定着部材として定着ローラを用いているが、本発明は定着部材としてベルト材を用いた構成とすることもできる。
【0064】
また、選択的熱源と非画像部も含め全体を加熱する全体熱源を併用することは重要である。例えば、レーザは10〜20%程度の熱変換効率しか無い場合もあり、ハロゲンヒータ、誘導加熱などは70〜80%の熱変換効率が見込まれる。両者の配分率でトータルの電力を決定することが好ましい。また、トナーは軟化するに必要な熱エネルギーが必要で、このエネルギーは両者の和が必要に達
するようにしなくてはならない。これらから、画像比率が低い画像形成装置では熱変換効率が低くとも選択的熱源のエネルギー配分を増やし、画像比率が高い画像形成装置では全体加熱熱源の比率を増やすことが省エネルギーにつながる。
【0065】
またさらには、記録媒体Pの一面側からの加熱だけなく、対応部位での他面側からの加熱を併用しても良い。
【0066】
図20は追跡パターンを示す図である。図中fは画像部、pはイエロートナー等による追跡パターンを示す。従来は非画像部も追跡パターンが形成されることが多かった(図20A)。これは、従来の画像形成装置が全面加熱を前提としているためである。低解像度の選択的熱源による加熱においては、画像部周辺のみに追跡パターンpを形成する(図20B)ことが省エネルギーの観点から好ましい。この点は、定着上二次転写方式のみならず、解像度の低い選択的な加熱を行う定着方式全般に有効である。すなわち追跡パターンpを犯罪使用防止に使用する場合でも、追跡パターンpが画像部周辺のみに形成されているので、選択的加熱の効果が高まり、省エネルギーと犯罪使用防止を両立できる。なお、偽造防止のための追跡パターンを印刷可能にする技術は、例えば特開2002−010057号公報に開示されている。
【0067】
図21は、赤外線吸収剤の化学構造を示す図である。図示の構造の赤外線吸収剤は、例えば特開2002−357927号公報に開示されている。なお、式中R1〜R8はベンゼン環またはナフタレン環に付加している置換基であり、水素、ハロゲン原子、炭素数1〜18までの飽和または不飽和炭化水素基、炭素数1〜13までの酸素及び/または窒素含有炭化水素基、Mは水素2原子または2個の水素原子、2価の金属、3〜4価の金属誘導体を示す。
【符号の説明】
【0068】
1:中間転写体
2:駆動ローラ
3:定着ローラ
3a:二次転写ローラ
4:レーザ光源
6:トナー
7:像担持体
8:転写ローラ
9:押圧ローラ
10:作像ユニット
11:クリーナ
13:ハロゲンランプ
15:サーマルヘッド
16:フィラメント
16a:誘導加熱コイル
17:ヒータ
18:スイッチング回路
18a:高周波スイッチング回路
21:中間転写体
22:保護部材
24:反射板
30:ハロゲンランプ
32:反射板
A:レーザ光の照射部
L:レーザ光
P:記録媒体
f:画像部
p:追跡パターン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特許第3042414号公報
【特許文献2】特開平07−225524号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着状態の画像部を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部を加熱する加熱手段と、
を具備し、
前記画像形成部は、前記未定着状態の画像部の周辺に未定着状態の不正使用防止のための追跡パターンを形成する画像形成部であり、
前記加熱手段は、前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部および前記未定着状態の追跡パターンを加熱する加熱手段であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部が転写される転写体と接触して加熱する加熱手段であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部に対応する部位に位置する記録媒体と接触して加熱する加熱手段であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項1】
未定着状態の画像部を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部を加熱する加熱手段と、
を具備し、
前記画像形成部は、前記未定着状態の画像部の周辺に未定着状態の不正使用防止のための追跡パターンを形成する画像形成部であり、
前記加熱手段は、前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部および前記未定着状態の追跡パターンを加熱する加熱手段であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部が転写される転写体と接触して加熱する加熱手段であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記画像形成部によって形成された前記未定着状態の画像部に対応する部位に位置する記録媒体と接触して加熱する加熱手段であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−49276(P2010−49276A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262263(P2009−262263)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【分割の表示】特願2004−78347(P2004−78347)の分割
【原出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【分割の表示】特願2004−78347(P2004−78347)の分割
【原出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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