説明

画像形成装置

【課題】本発明は、予め設定された日時から一定期間のスリープモードを確実に実行することができ、消費電力を減少することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】予め設定された日時にスリープモードに遷移しこのスリープモードを一定期間継続する画像形成装置10において、印刷ジョブを入力する入力部12と、印刷ジョブの印刷を実行する印刷部18と、スリープモードの期間に重なる印刷ジョブをホールド印刷ジョブとして記憶する記憶部16と、記憶部16にホールド印刷ジョブを記憶させ、スリープモードの期間終了後に印刷部18において記憶部16に記憶されたホールド印刷ジョブの印刷を実行する制御部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に予め設定された日時にスリープモードに遷移しこのスリープモードを一定期間継続する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭内やオフィス内において、パーソナルコンピュータ等の外部端末にプリンタが接続され、ローカルエリアネットワーク(LAN:local area network)が構築されている。LANにおいては、複数の外部端末に対して1台のプリンタを共有し使用することができるので、プリンタを有効に活用することができる。また、単に印刷機能だけを備えたプリンタだけにとどまらず、最近ではファクシミリ機能やスキャナ機能を併せ持つ複合型のプリンタが使用されている。
【0003】
家庭内やオフィスに設置されるプリンタにはインクジェットプリンタが多く採用されている。インクジェットプリンタにおいては、高速印刷が可能でかつランニングコストが安く、モノクロ印刷やカラー印刷を大量に行うことができる特徴がある。
【0004】
LANにおいて、複数の外部端末のいずれかから印刷ジョブが送信され、この印刷ジョブがプリンタにおいて受信されると、プリンタはこの受信された印刷ジョブに従い印刷動作を実行する。プリンタにおいて、この印刷動作を実行する状態とは、主にコントローラ、パネル、インク循環システム等の大半の各部ユニットに電源が供給されるレディモードである。
【0005】
プリンタが常時レディモードに設定されていると、プリンタの消費電力は大幅に増大する。例えば、下記特許文献1には、印刷ジョブが一定時間受信されない場合、プリンタをスリープモード(省電力待機状態)に移行する技術が開示されている。スリープモードは、電源が切られていない状態であって無印刷動作状態であり、コントローラ等の大半の各部ユニットには電源を供給していないので、プリンタの消費電力を大幅に減少可能である。複数の外部端末とプリンタとによって構築されるLANにおいて、プリンタは、何時、どの外部端末から印刷ジョブを受信するかわからないので、スリープモードの機能を有するプリンタは消費電力の軽減に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−278104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のLANに組み込まれるプリンタにおいては、以下の点について配慮がなされていなかった。LANに組み込まれる外部端末数やプリンタ数が増大するに従い、全体の電力消費量は増大する傾向にある。そこで、電気料金が高い時間帯にプリンタの使用を制限し、又オフィスの組織の環境改善ルールに基づき例えば昼休み等の休憩中にプリンタの使用を制限し、プリンタの使用に伴う電力消費量を減少する試みがなされている。このような試みを実現するためには、予め設定された日時から一定期間(一定時間)、スリープモードに遷移させるスケジュール運転機能をプリンタに備えることが有効である。このスリープモードとは、ユーザが予め設定した日時に到達したとき、到達前にレディモードの場合は強制的にスリープモードに遷移し一定期間スリープモードを継続し、到達前にスリープモードの場合はそのままスリープモードを一定期間継続するモードである。通常のスリープモードは一定期間内に印刷ジョブの受信や操作がなかった場合に遷移するのに対して、スケジュール運転におけるスリープモードは、予め設定された日時から一定期間、強制的に遷移する点において異なる。
【0008】
ところが、予め設定された日時の直前に例えば数千頁〜数万頁に及ぶ大量の印刷ジョブを受信した場合又は受信中の場合や、大量の印刷ジョブの印刷中であって予め設定された日時に跨る場合には、ユーザが意図したタイミングにおいてスリープモードに入ることができない。結果的に、予め設定された日時を大幅に越えてからスリープモードに遷移するので、設定された日時からスリープモードに遷移するまでの消費電力が増大する。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。従って、本発明は、予め設定された日時から一定期間のスリープモードを確実に実行することができ、消費電力を減少することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の特徴は、予め設定された日時にスリープモードに遷移しこのスリープモードを一定期間継続する画像形成装置において、印刷ジョブを入力する入力部と、印刷ジョブの印刷を実行する印刷部と、スリープモードの期間に重なる印刷ジョブをホールド印刷ジョブとして記憶する記憶部と、記憶部にホールド印刷ジョブを記憶させ、スリープモードの期間終了後に印刷部において記憶部に記憶されたホールド印刷ジョブの印刷を実行する制御部とを備える。
【0011】
本発明の第2の特徴は、第1の特徴に係る画像形成装置において、制御部は、スリープモードに遷移するイベントを検知すると、印刷ジョブがスリープモードの期間と重なるか否かを判定し、スリープモードの期間に重なる印刷ジョブが存在するとき、そのスリープモードと重なる部分をホールド印刷ジョブとして記憶部に記憶させる制御を行う。
【0012】
本発明の第3の特徴は、第2の特徴に係る画像形成装置において、制御部は、記憶部に記憶された印刷ジョブのスリープモードと重なる部分のホールド印刷ジョブを印刷部において印刷する制御を行う。
【0013】
本発明の第4の特徴は、第2又は第3の特徴に係る画像形成装置においては、制御部は、ホールド印刷ジョブが非認証印刷ジョブである場合に、このホールド印刷ジョブを認証印刷ジョブに切り替え、認証が行われた認証印刷ジョブを印刷部において印刷する制御を行う。
【0014】
本発明の第5の特徴は、第2乃至第4の特徴のいずれかに係る画像形成装置において、制御部は、スリープモードの期間内において入力部に早急を要する印刷ジョブが入力され早急に復帰するイベントを検知すると、一定時間内においてレディモードに遷移し印刷部において早急を要する印刷ジョブの印刷を実行する制御を行う。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の特徴に係る画像形成装置によれば、スリープモードの期間に重なる印刷ジョブをホールド印刷ジョブとして記憶し、スリープモードの期間終了後にホールド印刷ジョブを印刷することができるので、予め設定した日時から一定期間スリープモードに確実に遷移することができ、この期間の消費電力を確実に減少することができる。
【0016】
本発明の第2の特徴に係る画像形成装置によれば、スリープモードに遷移するイベントを検知したときに印刷ジョブとスリープモードの期間との重なりを判定し、印刷ジョブの重なる部分をホールド印刷ジョブとして記憶部に記憶させているので、印刷ジョブの既に処理がなされた部分を記憶部に記憶することがなくなる。従って、記憶部に無駄な既に処理がなされた印刷ジョブを記憶する必要がなく、画像形成装置の消費電力を減少することができるとともに、記憶部の記憶容量を小さくすることができ、画像形成装置の小型化を実現することができる。
【0017】
本発明の第3の特徴に係る画像形成装置によれば、記憶部に記憶された既に処理がなされた部分を除くホールド印刷ジョブを印刷するので、重複した無駄な印刷がなくなり、消費電力を更に減少することができるとともに、用紙の無駄がなくなる。
【0018】
本発明の第4の特徴に係る画像形成装置によれば、第2又は第3の特徴に係る画像形成装置により得られる効果に加えて、非認証印刷ジョブでないホールド印刷ジョブを認証印刷ジョブに切り替え、印刷には認証を必要としたので、スリープモードの期間終了後に印刷結果(印刷媒体)が第三者に見られる等の不具合を無くし、機密性を確保することができる。
【0019】
本発明の第5の特徴に係る画像形成装置によれば、第2乃至第4の特徴に係る画像形成装置により得られる効果に加えて、スリープモードの遷移並びに継続に伴い消費電力を減少することができるとともに、早急を要する印刷ジョブの印刷にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1に係る画像処理システムに組み込まれる画像形成装置の構成図である。
【図2】実施例1に係る画像形成装置においてスケジュール運転のスリープモードに遷移する制御方法を説明するフローチャート図である。
【図3】実施例1に係る画像形成装置においてスケジュール運転のスリープモードから復帰する制御方法を説明するフローチャート図である。
【図4】実施例1に係る画像形成装置においてスリープモードに遷移するときの印刷ジョブの情報内容並びにホールド印刷ジョブの情報内容を示す図である。
【図5】実施例1に係る画像形成装置においてスケジュール運転のスリープモードのタイムチャートである。
【図6】実施例1に係る画像形成装置においてスリープモードに遷移するときの印刷ジョブの情報内容並びにホールド印刷ジョブの情報内容を示す図である。
【図7】本発明の実施例2に係る画像形成装置においてスケジュール運転のスリープモードに遷移する制御方法を説明するフローチャート図である。
【図8】実施例2に係る画像形成装置においてスケジュール運転のスリープモードから復帰する制御方法を説明するフローチャート図である。
【図9】本発明の実施例3に係る画像形成装置においてスケジュール運転のスリープモードから遷移する制御方法を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。
【0022】
また、以下に示す実施例はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0023】
(実施例1)
本発明の実施例1は、画像形成装置としてインク循環システムを有する複合型インクジェットプリンタを用い、複数の外部端末がLANによって接続された画像処理システムに組み込まれた画像形成装置に本発明を適用した例を説明するものである。なお、画像形成装置をこの複合型インクジェットプリンタに限定するものではなく、非複合型インクジェットプリンタ、レーザプリンタ、熱転写プリンタ等の各種プリンタに本発明を適用することができる。
【0024】
[画像処理システムの構成]
図1に示すように、実施例1に係る画像処理システム1は、画像形成装置10及び外部端末20を備え、これら画像形成装置10及び外部端末20を通信経路3によって接続している。画像形成装置10はここではインク循環システムを有する複合型カラーインクジェットプリンタである。外部端末20は複数の外部端末21、22、23、…を有し、これらには少なくともデスクトップ型パーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(PDA:personal digital assistance)等が含まれる。外部端末20は、画像データを作成し、又は画像データを保持し(記憶し)、この画像データを印刷ジョブとして画像形成装置10に送信可能な機能を少なくとも有する。
【0025】
通信経路3は、例えばオフィス内、複数のオフィス間、オフィスと家庭との間、オフィスと外出先との間等において、外部端末20と画像形成装置10との間を接続するデータ転送経路である。この通信経路3には、有線LAN、無線LAN、インターネット、電話回線、光ケーブル、USB(universal serial bus)ケーブル、SCSI(small computer system interface)規格に基づく例えばIEEE1394ケーブル等の少なくともいずれか1つのデータ転送経路が含まれる。
【0026】
画像形成装置10は複数の外部端末21、22、23、…に共用され使用される。ここでは1つの画像形成装置10を例示しているが、画像形成装置10は1台に限定されるものではなく、複数の外部端末21等に対して2台以上の画像形成装置10が共用されてもよい。
【0027】
[画像形成装置の構成]
実施例1に係る画像形成装置10は予め設定された日時にスリープモードに遷移しこのスリープモードを一定期間(一定時間)継続するスケジュール運転機能を有する。スケジュール運転機能は、例えば電気料金が高い時間帯に画像形成装置10の使用を制限し、又オフィスの組織の環境改善ルールに基づき例えば昼休み等の休憩中に画像形成装置10の使用を制限し、電力消費を減少するために自動的にかつ強制的にスリープモードに遷移する機能である。
【0028】
ここで、予め設定された日時とは、予めユーザが意図して設定した日時であり、スリープモードの開始タイミングである。例えば、ユーザが昼休みの12時からの画像形成装置10の印刷処理を制限したい場合、この12時が予め設定された日時に該当する。スリープモードへの遷移には、少なくとも印刷可能であるレディモードからスリープモードへの遷移、スリープモードからスリープモードへの遷移(継続)のいずれも含まれる。スリープモードの一定期間とは、予めユーザが意図して設定した一定期間(一定時間)であり、スリープモードの開始日時(スリープモードの遷移のタイミング)からスリープモードの終了の日時(スリープモードからの復帰のタイミング)までの期間である。例えば、ユーザが昼休みから1時間の一定期間を設定した場合、前述の例によれば12時から13時までの期間に該当する。
【0029】
画像形成装置10は、同図1に示すように、主電源スイッチ101と、電源ユニット102と、パネルユニット11と、入力部(入出力通信処理部)12と、制御部(印刷制御部)13と、メカニカル駆動ユニット14と、搬送部141と、インク循環システム142と、記憶部16と、展開部17と、印刷部(印刷エンジン部)18とを備えている。実施例1に係る画像形成装置10は、複合型インクジェットプリンタであるので、更にスキャナユニット151と、ファクシミリユニット152とを備えている。
【0030】
画像形成装置10の主電源スイッチ101には商用電源が接続され、この主電源スイッチ101は画像形成装置10の全体の電源のON、OFFを行うスイッチである。詳細には、主電源スイッチ101は、画像形成装置10をOFF状態からスタンバイモードに遷移し、又OFF状態以外(例えばスタンバイモード、スリープモード、レディモード等)からOFF状態に遷移するためのスイッチである。電源ユニット102は、主電源スイッチ101を通して供給される電源の調節を行い、この調節された電源をパネルユニット11、制御部13、メカニカル駆動ユニット14、印刷部18等の各ユニットに供給する。
【0031】
パネルユニット11は、ユーザが直接画像形成装置10を操作し、例えば印刷、複写等の印刷動作又はスキャナユニット151やファクシミリユニット152を利用した画像読み取り動作を行うための操作制御部である。パネルユニット11には、図示しないが、例えば動作状態等を表示する表示部、操作を行うタッチパネル、キー、ボタン等が組み込まれている。実施例1に係る画像形成装置10においては、ユーザがパネルユニット11を操作し、スケジュール運転に必要な情報、例えば少なくともスリープモードの設定日時及び一定期間の設定が行われる。また、画像形成装置10を管理する権限を持つユーザにおいては、外部端末20を用い通信経路3を通して画像形成装置10のスケジュール運転に必要な情報を設定することができる。この情報の設定には、例えば管理者ID及びパスワードを用いた認証機能が使用される。
【0032】
ここで、実施例1において、OFF状態とは、主電源スイッチ101がOFFの状態であって、各ユニットのすべてに電力が供給されていない状態である。スタンバイモードとは、主電源スイッチ101をOFFからONに操作した状態であって、電源ユニット102及びパネルユニット11にのみ電力が供給される状態である。また、スタンバイモードにおいては、パネルユニット11の表示部の表示はOFF状態にある。
【0033】
スリープモードとは、主電源スイッチ101及び図示しない電源キーがON状態(電源が切られていない状態)であって、無印刷動作状態(印刷処理が行われない状態)である。このスリープモードは、予め設定された一定時間なんらかの操作が無い場合、或いは予め設定された一定時間印刷ジョブが受信されない場合等に、自動的に遷移する省電力待機状態(電力削減状態)である。スリープモードは省電力待機状態に遷移する点において通常のスリープモードと同様であるが、スケジュール運転における強制的なスリープモードはその遷移開始の日時を予め設定しかつ復帰の日時を予め設定している点において異なっている。
【0034】
ローパワーモードとは、パネルユニット11の表示部の表示はOFF状態(例えば、液晶型表示部の場合にはバックライトがOFF状態)であり、電力消費が大きいメカニカル駆動ユニット14、搬送部141、インク循環システム142、印刷部18等の動作を実行しない状態である。レディモードとは、画像形成装置10の制御部13を含む大半のユニットに電力が供給された状態であって、即座に印刷ジョブに従って印刷動作が実行可能な状態である。
【0035】
画像形成装置10において、入力部12は、通信経路3に接続され、この通信経路3を通して外部端末20に接続されている。入力部12は、外部端末20から送信される、利用者認識機能を構築する上で必要なユーザID及びユーザパスワード、用紙等に印刷される画像情報を含む印刷ジョブ等の情報(電子データ)を受信する。また、入力部12は、外部端末20において作成された画像情報等の電子データを記憶した可搬性記憶装置、例えばUSBメモリ、IC(integrated circuits)カード、SD(secure digital)カード等の差込スロットを備え、これらの可搬性記憶装置から電子データを取り込む機能を備えてもよい。実施例1に係る画像形成装置10の入力部12は情報を受信するだけでなく情報を送信することもでき、入力部12は例えばログイン状態にある外部端末20に印刷状態を示す情報等を送信する。
【0036】
制御部13は、パネルユニット11、入力部12、メカニカル駆動ユニット14、スキャナユニット151、ファクシミリユニット152、記憶部16、展開部17、印刷部18等の大半の各ユニットに接続され、これらの各ユニットの制御を司る。更に、実施例1に係る制御部13はスケジュール運転制御部131を有する。このスケジュール運転制御部131は画像形成装置10のスケジュール運転の制御を行う。特に、スケジュール運転制御部131は、ユーザがパネルユニット11等を通じてスリープモードの開始日時を設定するとそのスケジュールに従いスリープモードに遷移する制御を行い、スリープモードからの復帰日時を設定するとそのスケジュールに従いスリープモードから一定期間経過後に復帰する制御を行う。スケジュール運転制御部131は、専用回路によるハードウエアを用いて構築してもよいし、制御部13に含まれる中央演算処理ユニット(CPU)とそれにより実行される記憶装置に格納されたプログラムとを用いて構築してもよい。
【0037】
また、制御部13は利用者認識部132を備えている。利用者認識部132は、入力部12を通して入力される外部端末20のユーザID及びユーザパスワードを認識し、認識されない外部端末20に対する画像形成装置10の使用を制限する。利用者認識部132は、ここでは少なくとも制御部13の図示しないデータベースや読出専用記憶装置(ROM:read only memory)に記憶されたソフトウエアと、同様に制御部13に組み込まれこのソフトウエアを実行するCPUとを備えて構築されている。また、利用者認識部132は、制御部13に組み込まれ、少なくともソフトウエアを記憶する記憶装置とこのソフトウエアを実行するCPUとを有する専用回路(ハードウエア)によって構築されていてもよい。
【0038】
制御部13は、更にメカニカル駆動ユニット14の駆動制御、記憶部16への情報の書き込み制御及び記憶部16からの情報の読み出し制御、展開部17の動作制御、印刷部18の印刷動作の制御等を行う。メカニカル駆動ユニット14は、搬送部141に接続されその制御を行い、インク循環システム142に接続されその制御を行う。
【0039】
搬送部141は図示しない搬送ローラの駆動モータ、用紙等の記録媒体の吸引装置等を備え、これらはメカニカル駆動ユニット14によって駆動されている。インク循環システム142は、インクボトルからプリントヘッドにインクを供給し、印刷に使用されない余剰のインクをプリントヘッドからインクボトルに回収し、インクの循環を行う。このインクの循環にはインク循環経路が使用され、このインク循環経路にはインクの循環を行う循環ポンプ、経路内の圧力を調整する圧力調整器、インクの温度を調整する加熱器及び冷却器等の装置が配設されている。インク循環システム142は、ブラックインク、カラーインクであるシアンインク、マゼンダインク、イエローインクのそれぞれを独立に循環させるインク循環経路を備えている。
【0040】
記憶部16には例えば大記憶容量を有するハードディスクが使用されている。記憶部16は、実施例1において、入力部12を通して受信された印刷ジョブを記憶する印刷ジョブ記憶部161と、スリープモードに遷移するときにこのスリープモードの一定期間内に印刷がなされないホールド印刷ジョブを記憶するホールド印刷ジョブ記憶部162とを備えている。記憶部16は、その構成を詳細に示していないが、印刷ジョブ記憶部161、ホールド印刷ジョブ記憶部162のそれぞれ割り当てた2台以上の記憶装置(ここではハードディスク)によって構築してもよいし、1台の記憶装置に印刷ジョブ記憶部161、ホールド印刷ジョブ記憶部162のそれぞれを割り当ててもよい。
【0041】
展開部17は、制御部13からの制御に基づき、記憶部16の印刷ジョブ記憶部161に格納(記憶)された印刷ジョブ又はホールド印刷ジョブ記憶部162に格納(記憶)されたホールド印刷ジョブを読み出し、印刷部18において印刷処理を実行することができる印刷情報に展開する。例えば、展開部17は、印刷ジョブ又はホールド印刷ジョブの画像情報に基づき画素毎に画素値に対応づけたビットマップに展開し、印刷情報を生成する。
【0042】
印刷部18は、制御部13からの制御に基づき図示しないプリントヘッドのインク吐出動作を制御し、展開部17において生成された印刷情報に従って記録媒体に印刷を行う。
【0043】
また、スキャナユニット151は、用紙等に印刷された画像を画像情報として制御部13の図示しないデータベース又は記録部16に取り込む機能を有する。ファクシミリユニット152は、スキャナユニット151によって取り込まれた画像情報を通信経路3又は図示しない電話回線を利用して送信する、或いは外部ファクシミリからの画像情報を受信する機能を有する。
【0044】
実施例1に係る画像形成装置10においては、メカニカル駆動ユニット14、搬送部141、インク循環システム142、印刷部18、スキャナユニット151等のメカニカル動作を行うユニットの稼働に伴い消費電力が増大する。従って、通常のスリープモード及びスケジュール運転における強制的なスリープモードは、これらのユニットを一時的に停止状態にすることによって電力消費が大幅に減少可能である。
【0045】
[画像形成装置の制御方法]
(1)スリープモードの遷移方法
実施例1に係る画像形成装置10において、スケジュール運転のスリープモードに遷移する制御方法は図2に示す通りである。
【0046】
まず最初に、画像形成装置10のスケジュール運転の日程が画像形成装置10のスケジュール運転に対して管理権限のある管理者(ユーザ)によって予め設定される(S1)。ここでは、例えば、オフィスにおいて仕事が開始される午前8時から仕事が終了する午後6時までの間において、環境改善ルールの一貫として省電力化を図るために、午前12から午後1時までの間、午後3時から午後3時30分までの間は印刷を実行しない強制的なスリープモードの期間としての設定が行われる。管理者は、画像形成装置10のパネルユニット11の操作部を直接操作し、又は外部端末20から画像形成装置10を通信経路3を経由して操作し、スケジュール運転の日程を調整する。このとき、制御部13の利用者認識部132から指示される利用者認証処理に従い、管理者又は外部端末20と画像形成装置10との間においてユーザID及びユーザパスワードに基づく認証が行われる。
【0047】
画像形成装置10が稼働中、すなわちスタンバイモード、ローパワーモード、レディモードのいずれかの状態にあり、外部端末20から印刷ジョブが受信されれば、画像形成装置10はレディモードに遷移し又はレディモードを維持して印刷処理を行う(S2)。
【0048】
ここで、画像形成装置10の制御部13において、スケジュール運転中、内蔵されたタイマー機能に基づき、管理者が予め設定した日時、つまり午前12時又は午後3時に到達すると、スケジュール運転におけるスリープモードに遷移するイベントが発生し、このイベントが検知される(S3)。
【0049】
イベントが検知されると、既に受信された印刷ジョブの印刷中であるか否かが判定される(S4)。印刷ジョブが印刷中であると判定された場合、制御部13は印刷ジョブの印刷を中断する。更に、制御部13は、スリープモードの期間に重複する印刷ジョブの印刷処理がなされていない残りの印刷ジョブをホールド印刷ジョブに切り替え、記憶部16のホールド印刷ジョブ記憶部162に格納する(S5)。
【0050】
図4(A)はスリープモードの設定日時に到達したときに印刷処理中にある印刷ジョブの情報を示す。図4(A)に示す印刷ジョブの情報は、印刷ジョブ状態が「印刷中」、印刷ジョブ種別が「プリント」、印刷する原稿枚数が「10枚」、印刷済み枚数が「4枚」、再印刷可否が「可/否」である。この再印刷可否のおいて「可」の場合には、図4(B)に示す、再印刷が無い場合の新たな印刷ジョブが生成され、再印刷可否のおいて「否」の場合には、図4(C)に示す、再印刷が有る場合の新たな印刷ジョブが生成される。図4(B)、図4(C)はいずれもスリープモードの設定日時に到達したときの印刷ジョブの印刷処理状態とそれに対して生成されるホールド印刷ジョブの情報とを示す。
【0051】
図4(B)に示すように、再印刷が無い場合、スリープモードの設定日時に到達したときに印刷ジョブの情報は、印刷ジョブ状態が「中断終了」、印刷ジョブ種別が「プリント」、印刷する原稿枚数が「4枚」、印刷済み枚数が「4枚」、再印刷可否が「否」である。再印刷可否が「否」の場合には、既に印刷ジョブの一部が印刷されているので、この印刷ジョブの一部については再印刷を行わない。このとき生成されるホールド印刷ジョブの情報は、印刷ジョブ状態が「待機中」、印刷ジョブ種別が「ホールド(復帰後印刷)」、印刷する原稿枚数が「6枚」、印刷済み枚数が「0枚」、再印刷可否が「否」である。ホールド印刷ジョブは、スリープモードに遷移したときに印刷ジョブを分割し、この印刷ジョブの分割されたスリープモード期間に重複する部分を用いて生成される。このホールド印刷ジョブの情報はホールド印刷ジョブ記憶部162に格納される。スリープモードの設定日時に到達する前の印刷ジョブの一部は格納せずに、印刷ジョブの分割されたスリープモード期間に重複する部分をホールド印刷ジョブ記憶部162に格納するようにしているので、ホールド印刷ジョブ記憶部162の記憶容量を減少することができる。ホールド印刷ジョブにおいて再印刷可否が「否」であるので、このホールド印刷ジョブの印刷が終了した後にはこのホールド印刷ジョブの再印刷は行わない。
【0052】
また、図4(C)に示すように、再印刷が有る場合、スリープモードの設定日時に到達したときに印刷ジョブの情報は、印刷ジョブ状態が「中断終了」、印刷ジョブ種別が「プリント」、印刷する原稿枚数が「10枚」、印刷済み枚数が「4枚」、再印刷可否が「可」である。再印刷可否が「可」の場合には、既に印刷ジョブの一部が印刷されていても、この印刷ジョブの一部については再印刷を行う。このとき生成されるホールド印刷ジョブの情報は、印刷ジョブ状態が「待機中」、印刷ジョブ種別が「ホールド(復帰後印刷)」、印刷する原稿枚数が「6枚」、印刷済み枚数が「0枚」、再印刷可否が「否」である。ホールド印刷ジョブにおいて再印刷可否が「否」であるので、このホールド印刷ジョブの印刷が終了した後にはこのホールド印刷ジョブの再印刷は行わない。スリープモードに遷移したときの印刷ジョブは分割せずに、そのままの印刷ジョブがホールド印刷ジョブとしてホールド印刷ジョブ記憶部162に格納される。
【0053】
図5(A)は画像形成装置10のスケジュール運転においてスリープモード期間並びにその前後のモード状態を示すタイムチャート、図5(C)は比較例に係るタイムチャートである。図5(C)に示す場合に比べて図5(A)に示すように、画像形成装置10は、スケジュール運転において設定した日時に即座にスリープモードに遷移することができ、スリープモードの設定期間を確実に継続することができるので、消費電力を大幅に減少することができる。
【0054】
次に、イベントが検知されたときに、印刷ジョブが受信中であるか否かが判定される(S6)。ステップS4において、印刷ジョブが印刷中でないと判定された場合も同様である。印刷ジョブが受信中であると判定された場合、引き続き、受信中の印刷ジョブが印刷ジョブであるか否かが判定される(S7)。印刷ジョブであると判定された場合、制御部13は印刷ジョブの印刷を中断する。更に、制御部13は、スリープモードの期間に重複する受信中の印刷ジョブをホールド印刷ジョブに切り替えて受信する(S8)。
【0055】
受信中の印刷ジョブに対して、印刷ジョブの全頁が終了したか否かが判定される(S9)。全頁の受信が完了していない場合には、全頁の受信が完了するまで、印刷ジョブの受信が行われる。印刷ジョブから切り替えられたホールド印刷ジョブの情報は記憶部16のホールド印刷ジョブ記憶部162に逐次格納される。また、ステップS7において、印刷ジョブでないジョブが受信された場合も、同様の処理が行われる。
【0056】
図6(A)はスリープモードの設定日時に到達したときに受信された印刷ジョブの情報を示す。図6(A)に示す印刷ジョブの情報は、印刷ジョブ状態が「受信中及び印刷中」、印刷ジョブ種別が「プリント」、印刷する原稿枚数が「不明」、印刷済み枚数が「4枚」、再印刷可否が「否」である。
【0057】
図6(B)はスリープモードの設定日時に到達したときの印刷ジョブの印刷処理状態とそれに対して生成されるホールド印刷ジョブの情報とを示す。スリープモードの設定日時に到達したときに印刷ジョブの情報は、印刷ジョブ状態が「中断終了」、印刷ジョブ種別が「プリント」、印刷する原稿枚数が「4枚」、印刷済み枚数が「4枚」、再印刷可否が「否」である。このとき生成されるホールド印刷ジョブの情報は、印刷ジョブ状態が「受信中」、印刷ジョブ種別が「ホールド(復帰後印刷)」、印刷する原稿枚数が現時点において「不明」、印刷済み枚数が「0枚」、再印刷可否が「否」である。
【0058】
そして、図6(C)は印刷ジョブが全頁受信されたときの印刷ジョブとそれに対して生成されるホールド印刷ジョブの情報とを示す。スリープモードの設定日時に到達したときに印刷ジョブの情報は、印刷ジョブ状態が「中断終了」、印刷ジョブ種別が「プリント」、印刷する原稿枚数が「4枚」、印刷済み枚数が「4枚」、再印刷可否が「否」である。このとき生成されるホールド印刷ジョブの情報は、印刷ジョブ状態が「待機中」、印刷ジョブ種別が「ホールド(復帰後印刷)」、印刷する原稿枚数が「10枚」、印刷済み枚数が「0枚」、再印刷可否が「否」である。ホールド印刷ジョブは、スリープモードに遷移したときの印刷ジョブを分割せずに、そのままの印刷ジョブを用いて生成される。
【0059】
図5(B)は画像形成装置10のスケジュール運転においてスリープモード期間並びにその前後のモード状態を示すタイムチャートである。図5(A)に示す場合に比べて図5(B)に示すように、画像形成装置10においては、スケジュール運転の設定した日時から印刷ジョブの全頁の受信が終了するまでスリープモードに遷移することができないので、スリープモードの期間は多少短くなる。しかしながら、図5(C)に示すような印刷ジョブの印刷終了までに要する長時間ではなく、電子情報としての印刷ジョブの受信が完了するまでの短時間であるので、予め設定された日時に即座にスリープモードに遷移することができ、スリープモードの設定期間を確実に継続することができるので、消費電力を大幅に減少することができる。
【0060】
ステップS9において印刷ジョブの受信が全頁終了した後、画像形成装置10はスリープモードの遷移処理を行い(S10)、スリープモードへの遷移が行われる(S11)。
【0061】
(2)スリープモードの復帰方法
実施例1に係る画像形成装置10において、スケジュール運転のスリープモードから復帰する制御方法は図3に示す通りである。
【0062】
画像形成装置10の制御部13において、スケジュール運転中、内蔵されたタイマー機能に基づき、管理者が予め設定した日時、つまり午後1時又は午後3時30分に到達すると、スリープモードから復帰するイベントが発生し、このイベントが検知される(S21)。
【0063】
イベントが検知されると、画像形成装置10は、スリープモードからの復帰処理を行い(S22)、ローパワーモード又はレディモードのいずれかのアクティブ状態に遷移する。制御部13は、スリープモードに遷移したときにホールド印刷ジョブが存在したか否かの判定を行う(S23)。
【0064】
ホールド印刷ジョブが存在する場合、制御部13は、記憶部16のホールド印刷ジョブ記憶部162に格納されたホールド印刷ジョブを読み出し、展開部17に出力する。展開部17においてはホールド印刷ジョブから印刷情報が生成され、この印刷情報は印刷部18に出力される。印刷部18においては、印刷情報に従い記録媒体に印刷が行われる(S24)。この出力処理はホールド印刷ジョブ記憶部162に格納されたホールド印刷ジョブのすべてについて行われる。
【0065】
ホールド印刷ジョブの出力処理が完了すると、画像形成装置10はローパワーモード又はレディモードに遷移し、待機状態が維持される(S25)。
【0066】
[実施例1の特徴]
以上説明したように、実施例1に係る画像形成装置10においては、スリープモードの期間に重なる印刷ジョブをホールド印刷ジョブとして記憶し、スリープモードの期間終了後にホールド印刷ジョブを印刷することができるので、予め設定した日時から一定期間スリープモードに確実に遷移することができ、この期間の消費電力を確実に減少することができる。
【0067】
また、実施例1に係る画像形成装置10においては、スリープモードに遷移するイベントを検知したときに印刷ジョブとスリープモードの期間との重なりを判定し、印刷ジョブの重なる部分をホールド印刷ジョブとして記憶部16のホールド印刷ジョブ記憶部162に記憶させているので、印刷ジョブの既に処理がなされた部分を記憶部16に記憶することがなくなる。従って、記憶部16に無駄な既に処理がなされた印刷ジョブを記憶する必要がなく、画像形成装置10の消費電力を減少することができるとともに、記憶部16の記憶容量を小さくすることができ、画像形成装置10の小型化を実現することができる。
【0068】
また、実施例1に係る画像形成装置10によれば、記憶部16に記憶された既に処理がなされた部分を除くホールド印刷ジョブを印刷するので、重複した無駄な印刷がなくなり、消費電力を更に減少することができるとともに、記録媒体の無駄がなくなる。
【0069】
(実施例2)
本発明の実施例2は、前述の実施例1に係る画像形成装置10において、ホールド印刷ジョブの印刷出力(印刷物)に対して機密性を確保した例を説明するものである。前述の実施例1に係る画像形成装置10においては、スリープモードの期間が経過すると、ホールド印刷ジョブの印刷出力が自動的に行われることを前提としている。スリープモードの期間の経過後に即座にユーザが印刷出力を取りに行けない場合には、印刷出力が第三者に見られる可能性がある。実施例2に係る画像形成装置10においては、このような事態を防止することができる。
【0070】
[画像形成装置の制御方法]
(1)スリープモードの遷移方法
実施例2に係る画像形成装置10において、スケジュール運転のスリープモードに遷移する制御方法は図7に示す通りである。基本的には、前述の実施例1に係る画像形成装置10の図2に示すスリープモードの遷移方法と同様であるが、実施例2に係るスリープモードの遷移方法において、ステップS9の後に、ホールド印刷ジョブに対して認証印刷ジョブに切り替えるか否かを判定する(S31)ステップと、認証印刷ジョブに切り替える場合にホールド印刷ジョブに対して認証情報付加処理を行う(S32)ステップとが追加される。
【0071】
ここで、実施例2において、認証印刷ジョブとは、スリープモードから復帰した後にホールド印刷ジョブを自動的に印刷出力せずに、ユーザの意図するタイミングにおいて印刷出力するための認証情報を付加したホールド印刷ジョブという意味において使用されている。つまり、画像形成装置10のホールド印刷ジョブ記憶部162に格納された認証印刷ジョブはユーザとの間において認証を行わないと印刷出力を行うことができない。また、非認証印刷ジョブとは、認証情報が付加されていないホールド印刷ジョブである。例えば、後述するように、ユーザがホールド印刷ジョブを認証印刷ジョブに切り替えないと判断した場合には、スリープモードから復帰した後に自動的に非認証印刷ジョブの印刷出力が行われる。なお、画像形成装置10に受信された印刷ジョブが既に認証情報を付加した認証印刷ジョブである場合には、この認証情報はスリープモードに遷移してもそのままホールド印刷ジョブに受け継がれる。
【0072】
詳細には、ステップS9の後、画像形成装置10は、印刷ジョブを送信した外部端末20(ユーザ)に対して、スリープモードの期間に重複する印刷ジョブが存在する(ホールド印刷ジョブが発生する)ことを知らせるとともに、ホールド印刷ジョブを認証印刷ジョブに切り替えるか否かの判定を求める(S31)。ホールド印刷ジョブを認証印刷ジョブに切り替える場合には、ホールド印刷ジョブに対して認証情報付加処理が行われる(S32)。
【0073】
具体的な制御方法は以下の通りである。画像形成装置10の制御部13において、スリープモードに遷移する日時と印刷中又は受信中の印刷ジョブとの関係からホールド印刷ジョブの発生が検知されると、このホールド印刷ジョブのホールド印刷ジョブIDを取得し、このホールド印刷ジョブIDは、印刷ジョブを送信した外部端末20のユーザIDとともにホールド印刷ジョブに対応付けられる。
【0074】
更に、制御部13は、外部端末20に対して、ホールド印刷ジョブを認証印刷ジョブに切り替え、スリープモードから復帰した後の印刷に認証を必要とするか否かを要求する。外部端末20(ユーザ)において、認証が必要であるとした場合には、その旨の応答を画像形成装置10に送信するとともに、認証に必要なパスワードを画像形成装置10に送信する。
【0075】
画像形成装置10の制御部13は、ホールド印刷ジョブに、ホールド印刷ジョブID及びユーザIDとともに、認証の要否、認証に必要なパスワード等の情報を付加する。この情報がホールド印刷ジョブに付加された認証印刷ジョブはホールド印刷ジョブ記憶部162に格納される。
【0076】
この後、ステップS9以降の処理が実行される。
【0077】
(2)スリープモードの復帰方法
実施例2に係る画像形成装置10において、スケジュール運転のスリープモードから復帰する制御方法は図8に示す通りである。基本的には、前述の実施例1に係る画像形成装置10の図3に示すスリープモードの復帰方法と同様であるが、実施例2に係るスリープモードの復帰方法においては、ステップS23の後に、ホールド印刷ジョブが認証印刷ジョブであるか否かを判定する(S33)ステップと、認証印刷ジョブに対して認証が行われたか否かを判定する(S34)ステップとが追加される。
【0078】
すなわち、ステップS23の後に、記憶部16のホールド印刷ジョブ記憶部162に格納されているホールド印刷ジョブが認証印刷ジョブであるか否かが判定される(S33)。認証印刷ジョブがない場合にはステップS24に移行する。
【0079】
認証印刷ジョブであると判定された場合、画像形成装置10の制御部13は、ホールド印刷ジョブ記憶部162に格納された認証印刷ジョブ(認証情報が付加されたホールド印刷ジョブ)のホールド印刷ジョブID、ユーザID等の情報から外部端末20(ユーザ)に対して、印刷を実行するか否かの要求をパスワードとともに送信する。外部端末20において、認証印刷ジョブの印刷を実行する場合にはパスワードを入力し、これらの情報を画像形成装置10に送信する。
【0080】
画像形成装置10の制御部13において、ホールド印刷ジョブ記憶部162に格納された認証印刷ジョブのホールド印刷ジョブID、ユーザID、外部端末20から送信された印刷の要否の情報、パスワード等の情報の整合性を判断し、認証がなされる(S34)。認証印刷ジョブに対して認証が行われると、この認証印刷ジョブに対して印刷出力処理が行われ、認証印刷ジョブがユーザの意図するタイミングにおいて印刷される(S24)。
【0081】
なお、実施例2において、認証印刷ジョブの認証は、外部端末20に接続し画像形成装置10によって行っているが、画像形成装置10のパネルユニット11の図示しないタッチパネル(操作画面)上で行うことも可能である。認証方法は、前述と同様に、認証印刷ジョブに付加されたパスワードをユーザがタッチパネルから入力することによって行える。
【0082】
また、実施例2においては、ホールド印刷ジョブを認証印刷ジョブに切り替えるか否かの判断をユーザが行われているが、すべてのホールド印刷ジョブを認証印刷ジョブに切り替え、認証した後に印刷を実行するようにしてもよい。
【0083】
[実施例2の特徴]
実施例2に係る画像形成装置10においては、ホールド印刷ジョブを認証印刷ジョブに切り替え、印刷には認証を必要としたので、スリープモードの期間終了後に印刷結果(印刷媒体)が第三者に見られる等の不具合を無くし、機密性を確保することができる。
【0084】
(実施例3)
本発明の実施例3は、前述の実施例1に係る画像形成装置10において、スリープモードの期間内に早急を要する印刷を行う例を説明するものである。前述の実施例1に係る画像形成装置10においては、スリープモードの期間は基本的に印刷を行わないようにしているが、実施例3に係る画像形成装置10は、イレギュラーとして早急を要する印刷を実施可能としたものである。
【0085】
[画像形成装置の制御方法:スリープモード期間中の復帰方法]
実施例3に係る画像形成装置10において、スケジュール運転のスリープモード期間中にこのスリープモードから強制的に復帰する制御方法は図9に示す通りである。
【0086】
スリープモードの期間内に、外部端末20から画像形成装置10に早急に印刷を要する印刷ジョブが送信されると、画像形成装置10の制御部13はスリープモード期間中に強制的に復帰するイベントを検知する(S41)。早急に印刷を要求する旨の情報は外部端末20のプリンタドライバにおいて作成される印刷ジョブのページ記述言語(PDL)情報に付加される。外部端末20から画像形成装置10に印刷ジョブが送信されると、画像形成装置10においてPDL情報に付加された早急に印刷を要求する旨の情報がイベントとして検知される。このイベントが検知されると、画像形成装置10は、スリープモードからの復帰処理を行い(S42)、ローパワーモード又はレディモードのいずれかのアクティブ状態に遷移する。
【0087】
画像形成装置10は、早急に印刷を要する印刷ジョブを受信する待機状態に移行し(S44)、一定時間、早急に印刷を要する印刷ジョブを受け付ける(S45)。この印刷ジョブを受け付ける一定時間は、例えば制御部13に内蔵されたタイマーを用いて計測され、基本的にはスリープモードの期間よりも短い時間に設定されている。一定時間内に印刷ジョブが受信されると(S46)、この印刷ジョブは印刷される(S49)。
【0088】
一定時間が経過すると(S47)、早急な印刷を要する印刷ジョブの受信を受け付けなくなり、画像形成装置10は再びスリープモードに遷移し(S48)、この制御方法は終了する。
【0089】
なお、実施例3に係る画像形成装置10の制御方法においては、前述のステップS48のスリープモードに遷移した後に、例えば前述の図2に示す実施例1に係るスリープモードから復帰する制御方法のステップS21以降を実行するようにしてもよい。
【0090】
[実施例3の特徴]
実施例3に係る画像形成装置10においては、スリープモードの遷移並びに継続に伴い消費電力を減少することができるとともに、早急を要する印刷ジョブの印刷にも対応することができる。
【0091】
なお、実施例3に係る画像形成装置10においては、前述の実施例2に係る画像形成装置10にも適用することができる。
【0092】
(その他の実施例)
上記のように、本発明を実施例1乃至実施例3によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものでない。本発明は様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術に適用することができる。例えば、本発明は、前述の画像形成装置10の印刷ジョブに基づく印刷だけに限らず、スリープモードの機能が及ぶスキャナユニット151、ファクシミリユニット152の画像取り込み動作やその印刷動作についても同様に行われる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、予め設定された日時から一定期間のスリープモードを確実に実行することができ、消費電力を減少することができる画像形成装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1…画像処理システム、3…通信経路、10…画像形成装置、11…パネルユニット、12…入力部、13…制御部、131…スケジュール運転制御部、132…利用者認識部、14…メカニカル駆動ユニット、141…搬送部、142…インク循環システム、151…スキャナユニット、152…ファクシミリユニット、16…記憶部、161…印刷ジョブ記憶部、162…ホールド印刷ジョブ記憶部、17…展開部、18…印刷部、20、21−23…外部端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された日時にスリープモードに遷移しこのスリープモードを一定期間継続する画像形成装置において、
印刷ジョブを入力する入力部と、
前記印刷ジョブの印刷を実行する印刷部と、
前記スリープモードの期間に重なる前記印刷ジョブをホールド印刷ジョブとして記憶する記憶部と、
前記記憶部にホールド印刷ジョブを記憶させ、前記スリープモードの期間終了後に前記印刷部において前記記憶部に記憶された前記ホールド印刷ジョブの印刷を実行する制御部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記スリープモードに遷移するイベントを検知すると、前記印刷ジョブが前記スリープモードの期間と重なるか否かを判定し、前記スリープモードの期間に重なる前記印刷ジョブが存在するとき、そのスリープモードと重なる部分を前記ホールド印刷ジョブとして前記記憶部に記憶させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記印刷ジョブの前記スリープモードと重なる部分の前記ホールド印刷ジョブを前記印刷部において印刷する制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ホールド印刷ジョブが非認証印刷ジョブである場合に、このホールド印刷ジョブを認証印刷ジョブに切り替え、認証が行われた前記認証印刷ジョブを前記印刷部において印刷する制御を行うことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記スリープモードの期間内において前記入力部に早急を要する印刷ジョブが入力され早急に復帰するイベントを検知すると、一定時間内においてレディモードに遷移し前記印刷部において前記早急を要する印刷ジョブの印刷を実行する制御を行うことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−139902(P2012−139902A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293876(P2010−293876)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】