説明

画像形成装置

【課題】
転写前のトナーを帯電させることに起因する放電生成物の生成が抑制された画像形成装置を提供する。
【解決手段】
帯電したトナー像を保持する像保持体30と、像保持体30に保持されたトナー像を追加帯電させる帯電器70と、電圧の印加を受けて、帯電器による追加帯電を受けたトナー像を被転写体に転写する転写器50と、帯電器70によるトナー像に向けた追加帯電量を、このトナー像の、追加帯電前の帯電量に応じて制御する第1の制御部1Aとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、感光体ドラム上にトナー像を形成する画像形成手段と、感光体ドラム上のトナー像を、転写電界を付与して記録材上に転写する転写ブラシとを備えた画像形成装置が示されている。この画像形成装置では、感光体ドラム上に形成したテストパッチについて、転写ブラシに流れた電流量が検知され、検知された電流量に基づいて、以降に感光体ドラム上に形成されるトナー像の帯電量と転写電界が制御される。
【0003】
また、特許文献2には、現像と転写との間の位置でトナーの電荷量を増加させる電荷印加手段を備えた画像形成装置が示されている。また、特許文献3および特許文献4にも、トナーに電荷を与える装置を備えた画像形成装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−107947号公報
【特許文献2】特開平9−6148号公報
【特許文献3】特開2005−62349号公報
【特許文献4】特開2008−139597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、転写前のトナーを帯電させることに起因する放電生成物の生成が抑制された画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る画像形成装置は、
帯電したトナー像を保持する像保持体と、
上記像保持体に保持されたトナー像を追加帯電させる帯電器と、
電圧の印加を受けて、上記帯電器による追加帯電を受けたトナー像を被転写体に転写する転写器と、
上記帯電器によるトナー像に向けた追加帯電量を、このトナー像の、追加帯電前の帯電量に応じて制御する第1の制御部とを有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る画像形成装置は、上記被転写体の電気抵抗値を検出する検出器と、
上記検出器により検出された被転写体の電気抵抗値に応じて上記転写器への印加電圧を制御する第2の制御部とをさらに有することを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る画像形成装置は、各色トナー像の形成を受ける複数の感光体と、周回しながらこの複数の感光体から順次に、この複数の感光体上の各色トナー像の転写を受ける中間転写体とを有し、
上記像保持体が、上記複数の感光体のうちの上記中間転写体の移動方向最下流に配置された感光体であって、
上記転写器が、上記中間転写体上のトナー像の被転写体への転写を担う転写器であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る画像形成装置は、
電位の基準となる筐体を有し、
上記帯電器が、放電線と、上記筐体との間が抵抗値可変な電気抵抗を介して接続されたシールドとを有するコロトロンであって、
上記第1の制御部が、上記電気抵抗の抵抗値を調整することによって、トナーに向けた追加帯電量を制御するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る画像形成装置によれば、第1の制御部がない場合と比較して、転写前のトナーを帯電させることに起因する放電生成物の生成が抑制される。
【0011】
請求項2に係る画像形成装置によれば、本構成を有さない場合に比べて、用紙の電気抵抗の違いに起因するトナー像の転写不良が抑制される。
【0012】
請求項3に係る画像形成装置によれば、本構成を有さない場合に比べて、トナー像の、最下流に配置された感光体による部分の転写不良が抑制される。
【0013】
請求項4に係る画像形成装置によれば、本構成を有していない場合と比較して、放電量のムラが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の画像形成装置の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す追加帯電部および帯電量検出部を示す図である。
【図3】図1に示す画像形成装置における動作を説明するフローチャートである。
【図4】第2実施形態に係る追加帯電部を示す図である。
【図5】第2実施形態の画像形成装置における動作を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の第3実施形態に係る追加帯電部を示す図である。
【図7】第3実施形態の画像形成装置における動作を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の第4実施形態に係る追加帯電部の概略構成図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る追加帯電部の概略構成図である。
【図10】本発明の第6実施形態である画像形成装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の画像形成装置の第1実施形態を示す構成図である。
【0017】
図1に示す画像形成装置1は、画像形成部10Y,10M,10C,10Kと、露光器20と、中間転写ベルト30と、制御部1Aとを備えている。画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)および、ブラック(K)の各色毎に画像形成部10Y,10M,10C,10Kを並列的に配置してなるタンデム型のカラープリンタであり、単色の画像をプリントすることができるほか、4色のトナー像からなるフルカラーの画像をプリントすることができる。画像形成部10Y,10M,10C,10Kは、各色のトナー像を形成する。
【0018】
4つの画像形成部10Y,10M,10C,10Kは、ほぼ同様の構成を有しているため、これらを代表してイエローに対応する画像形成部10Yを取り上げて説明する。画像形成部10Yは、感光体11Yと、帯電器12Yと、現像器14Yと、1次転写器15Yと、感光体クリーナ16Yとを備えている。感光体11Yは円筒状の周面を有する。感光体11Yは、周面に形成される像を保持して、円筒の軸周りである矢印a方向に回転する。帯電器12Yは、感光体11Yの周面を帯電させる。現像器14Yは、感光体11Y周面を露光後に帯電トナーで現像する装置であり、帯電トナーを感光体11Y周面に搬送する現像ロール141を有している。本実施形態の現像器14Yでは、典型的には平均粒径が2.5μm以上4.5μm以下の小粒径トナーを用いることで高精細化が図られている。
【0019】
1次転写器15Yは、感光体11Yの周面に形成されたトナー像を中間転写ベルト30に転写する。1次転写器15Yは、感光体11Yとの間に中間転写ベルト30を挟んで回転するロールである。1次転写器15Yには、図示しない電源装置によって感光体11Yに対し、トナーの帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。1次転写器15Yは、感光体11Yおよび中間転写ベルト30に転写電界を付与することで、感光体11Y上のトナーを中間転写ベルト30上に転写する。感光体クリーナ16Yは、転写後に感光体11Yの周面を清掃する。
【0020】
露光器20は、外部から供給される画像信号に基づくレーザ光を発光し、レーザ光で画像形成部10Y,10M,10C,10Kの感光体を走査して露光する。
【0021】
中間転写ベルト30は、ベルト支持ロール31,32,33,34によって支持された無端の帯状部材であり、画像形成部10Y〜10Kを経由する経路に沿って矢印bに示す方向に循環移動する。中間転写ベルト30は、各色の画像形成部10Y〜10Kからトナー像が転写され、このトナー像を保持する。
【0022】
また、画像形成装置1には、2次転写器50と、定着装置60と、ベルトクリーナ38と、トナー濃度計測部41と、環境条件センサ45と、帯電量検出部90と、追加帯電部70と、用紙搬送部80と、用紙収容器Cも備えられている。
【0023】
2次転写器50は、ベルト支持ロール31〜34の1つであるバックアップロール33との間に中間転写ベルト30および用紙を挟んで回転するロールである。電源装置51によって、2次転写器50には、バックアップロール33に対しトナーの帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。2次転写器50は、中間転写ベルト30および用紙に転写電界を付与することで、中間転写ベルト30上のトナー像を用紙上に転写する。電源装置51がバックアップロール33に印加する電圧の電圧値は、制御部1Aによって制御されている。
【0024】
追加帯電部70は、中間転写ベルト30上に保持されたトナー像を追加帯電させることで、2次転写器50における転写を促進する。
【0025】
帯電量検出部90は、中間転写ベルト30上に保持されたトナー像の、追加帯電部70による追加帯電前の帯電量を検出する。追加帯電部70による追加帯電量は、制御部1Aによって、トナーの追加帯電前における帯電量に応じて制御される。追加帯電部70および帯電量検出部90については後述する。
【0026】
ベルトクリーナ38は、2次転写器50による転写後における中間転写ベルト30を清掃する。ベルトクリーナ38は、中間転写ベルト30にブレードを接触させて中間転写ベルト30上のトナーを掻き取ることで、中間転写ベルト30の周面を清掃する。
【0027】
トナー濃度計測部41は、画像形成部10Y,10M,10C,10Kによって、形成されるトナー像の濃度を検知する。画像形成部10Y,10M,10C,10Kによって、濃度調整用のトナー像(テストパッチ像)が形成される場合には、このテストパッチ像の濃度を検出する。トナー濃度計測部41は、図示はしないが、中間転写ベルト30に向けて光を照射する発光部と発光部の光が中間転写ベルト30およびトナー像で反射した光を検知する光センサとを有する。環境条件センサ45は、画像形成装置1の環境条件を検知する。環境条件センサ45は、例えば、湿度センサであり、湿度情報を制御部1Aに供給する。
【0028】
定着装置60は、加熱ロール61および加圧ロール62を備えており、2次転写器50によって定着前のトナー像が形成された用紙を挟んで通過させることによりトナー像を加熱・加圧することで用紙上に定着させる。
【0029】
用紙搬送部80は、用紙Pを用紙収容器Cから取り出し、2次転写器50および定着装置60を経由する用紙搬送経路rに沿って搬送する。用紙搬送部80は、用紙収容器Cに収容された用紙を取り出すピックアップロール81、用紙を搬送する搬送ロール82,83、用紙を2次転写器50に搬送するレジストレーションロール84、用紙を外部に排出する排出ロール86を備えている。
【0030】
搬送ロール82には、搬送される用紙の電気抵抗を測定する抵抗検出器42が接続されている。より詳細には、搬送ロール82のそれぞれの周面には、用紙に接触する電極が配置されており、抵抗検出器42は、搬送ロール82が挟んだ用紙の厚み方向における電気抵抗を測定する。抵抗検出器42によって測定された電気抵抗値を表すデータは制御部1Aに供給される。制御部1Aは、測定された電気抵抗値に応じて、2次転写器50に印加する電圧を制御する。
【0031】
ここで、中間転写ベルト30が本発明にいう像保持体の一例に相当し、追加帯電部70が本発明にいう帯電部の一例に相当する。また、抵抗検出器42が本発明にいう検出器の一例に相当し、2次転写器50本発明にいう転写器の一例に相当する。
【0032】
[画像形成装置の基本動作]
図1に示す画像形成装置1の基本動作を説明すると、イエローの画像形成部10Yでは、感光体11Yが矢印a方向に回転駆動され、感光体11Yの周面に帯電器12Yによって電荷が付与される。このことは、イエロー以外の色に対応する画像形成部10M,10C,10Kでも同様である。露光器20は、画像形成部10M,10C,10Kの感光体に、画像信号中の各色に対応するデータに応じた露光光を照射する。代表としてイエロー(Y)について説明すると、露光器20は、外部から供給される画像信号のうちのイエローに対応する画像信号に基づく露光光を感光体11Yの周面に照射することで、感光体11Yの周面に静電潜像を形成する。現像器14Yにはトナーが収容されており、現像器14Yはトナーを帯電させ、静電潜像に付着させることでトナー像を形成する。感光体11Yは、周面に形成されたイエローのトナー像を保持して回転する。感光体11Yの周面に形成されたトナー像は、感光体11Y周面と中間転写ベルト30との間に1次転写器15Yが付与した転写用のバイアス電位によって中間転写ベルト30に転写される。転写後、感光体11Yに残留したトナーは、感光体クリーナ16Yによって除去される。
【0033】
中間転写ベルト30は、支持ロール31〜34に架け渡され、矢印b方向に巡回移動している。イエロー以外の色の画像形成部10M,10C,10Kは、イエローの画像形成部10Yと同様にしてそれぞれの色のトナー像を形成し、中間転写ベルト30に、画像形成部10Yで転写されたトナー像に重ねて、それぞれの色のトナー像を転写していく。中間転写ベルト30は、転写されたトナー像を保持して移動する。帯電量検出部90は、中間転写ベルト30上に転写されたトナー像の帯電量を検出する。追加帯電部70は、制御部1Aの制御に応じて中間転写ベルト30上のトナー像を追加帯電させる。
【0034】
一方、用紙収容器C内の用紙Pは、ピックアップロール81によって取り出され、搬送ロール82,83、およびレジストレーションロール84によって用紙搬送経路rを2次転写器50に向かう矢印c方向に搬送される。用紙Pは、搬送ロール82に挟まれた際に、抵抗検出器42によって電気抵抗が測定される。用紙Pは、レジストレーションロール84によって、中間転写ベルト30上にトナー像が転写されていくタイミングに合わせて、2次転写器50に送り込まれる。2次転写器50は、電源装置51から供給された電圧によって中間転写ベルト30と用紙との間に転写用のバイアス電位を与え、中間転写ベルト30のトナー像を用紙に転写する。2次転写器50によって、トナー像が転写された用紙は定着装置60に搬送され、用紙上に転写されたトナー像が定着される。このようにして、画像が形成された用紙は排出ロール86によって排出台1Cの上に排出される。この一方、2次転写器50による転写後、中間転写ベルト30に残留したトナーは、ベルトクリーナ38によって除去される。
【0035】
画像形成部10Y,10M,10C,10Kでは、画像データによらない、濃度調整用のトナー像(テストパッチ像)も形成される。テストパッチ像は、トナー濃度の調整にあたって目標となる濃度と比較するためのトナー像である。パッチ像は、画像形成部10Y,10M,10C,10Kおよび露光器20によって形成され、中間転写ベルト30に転写される。トナー濃度計測部41は、中間転写ベルト30に形成されたパッチ像の濃度を検出し、制御部1Aは、トナー濃度計測部41で検出した濃度に基づいて、露光器20の露光量を調整する。中間転写ベルト30上のパッチ像は、2次転写器50で用紙に転写されることなくベルトクリーナ38によって除去される。
【0036】
[第1実施形態における追加帯電部および帯電量検出部]
図2は、図1に示す追加帯電部および帯電量検出部を示す図である。
【0037】
本実施形態における追加帯電部70は、中間転写ベルト30を挟んで回転する一対の帯電ロール71,72および電源装置73を備えている。帯電ロール71,72はいずれも、中間転写ベルト30の全幅(図2の紙面と交わる方向)に亘って延びている。一方の帯電ロール71は、電源装置73が接続された電荷付与電極ロールとして機能する。この帯電ロール71に対し、中間転写ベルト30を挟んで反対側に配置された他方の帯電ロール72は、接地(グラウンド)電位に接続されており、対向電極ロールとして機能する。帯電ロール71,72の双方を中間転写ベルト30に接触させ、帯電させる構成では、例えばコロトロン等の非接触の帯電方式に比べて、トナーの飛散が少ない。
【0038】
帯電ロール71,72はいずれも、電源装置73からの電圧によって、中間転写ベルト30上のトナー像に電荷を付与する程度の導電性を有する材料で形成されている。より具体的には、対向電極ロールである帯電ロール72は、金属材料からなる円筒状の芯金721と、芯金721の外周面に形成された弾性層722とを有する。芯金721の材料は、例えば、ステンレスまたはアルミニウムである。弾性層722は、アスカーC硬度が20°以上60°以下の硬度を有する。このため、帯電ロール72は、中間転写ベルト30に押し付けられることで中間転写ベルト30の形状に沿って弾性変形し、中間転写ベルト30の幅全体に亘って面接触する。したがって、帯電のムラが抑えられる。弾性層722の材料は、例えば、導電性を有する発泡ゴムである。発泡ゴムは、例えば、EPDM系発泡ゴムまたは発泡ウレタンゴムである。導電性を有するゴム材料として、例えば、エピクロルヒドリンゴム、カーボン粒子が分散されたEPDMゴム、イオン導電機能を有するNBR、およびウレタンゴムからなるいずれかの材料が採用され得る。
【0039】
本実施形態では、電源装置73が接続された帯電ロール71も、対向電極ロールである帯電ロール72と同じ構成を有する。すなわち、帯電ロール72と同じ材料からなる芯金711と弾性層712とを有する。帯電ロール71には、電源装置73から、トナーの帯電極性と同じ極性の電圧、すなわち、2次転写器50の電圧とは逆極性の電圧が供給される。帯電ロール71に供給された電圧によって、帯電ロール71から中間転写ベルト30およびトナーに放電が生じ、中間転写ベルト30上のトナーが追加帯電される。電源装置73が供給する電圧は、制御部1Aによって制御される。
【0040】
帯電量検出部90は、中間転写ベルト30に近接して配置されたプローブ91と、プローブ91に接続された表面電位計92とを備えている。プローブ91は、中間転写ベルト30の全幅に亘って延びた金属製の薄板である。プローブ91としては、中間転写ベルト30の全幅に亘って並び、互いに接続された複数の金属製針も採用され得る。プローブ91は、中間転写ベルト30の移動方向bにおける、追加帯電部70よりも上流に配置されており、中間転写ベルト30の、トナー像が保持される面に近接して配置されている。
【0041】
表面電位計92は、プローブ91の電位を測定することで、中間転写ベルト30上の、追加帯電部70による追加帯電前のトナー像の帯電量を測定する。表面電位計92によって測定されたトナー像の帯電量を表すデータは制御部1Aに供給される。制御部1Aは、測定されたトナー像の帯電量に応じて、電源装置73が帯電ロール71に供給する電圧を制御する。
【0042】
図1に示す画像形成部10Y〜10Kでトナー像が形成される際には、現像器(例えばY色では現像器14Y)内で帯電されたトナーは、クーロン力によって、感光体11Y〜11Kに付着する。帯電したトナーは、この後、中間転写ベルト30に転写される。2次転写器50では、中間転写ベルト30および用紙に転写電界が付与されることで、帯電したトナーがクーロン力によって用紙に転写される。
【0043】
ここで、トナーの帯電量および転写電界の大きさが、トナーの完全な転写に要する大きさに満たない部分のトナーは、2次転写器50において用紙にトナーが転写されず、画像欠陥が生じるおそれがある。また、本実施形態の画像形成装置で使用するトナーは、平均粒径が2.5μm以上4.5μm以下であり、この範囲よりも大きな粒径を有するトナーに比べ、トナー粒子当たりの帯電量が小さい。また、本実施形態に係るトナーは、大きな粒径を有するトナーに比べ、粒子同士が付着しやすい。このため、トナーが中間転写ベルト30上に残留し、画像欠陥が生じる可能性がより高い。また、2次転写器50における電圧も、電圧過多に伴う放電による放電生成物を抑える程度に抑えられる。
【0044】
画像形成装置1では、追加帯電部70によって、2次転写器50で転写される前の中間転写ベルト30に保持されたトナー像が、追加帯電される。つまり、トナーは、追加帯電前と同極性で、より大きな帯電量に帯電される。このため、2次転写器50で転写電界によって用紙に転写されるトナーが増加し、画像欠陥が低減する。
【0045】
しかし、追加帯電部70によって、中間転写ベルト30に放電を生じさせると、中間転写ベルト30上には放電に伴う放電生成物が生成される。中間転写ベルト30上の放電生成物の一部は、ベルトクリーナ38(図1参照)によって除去されるが、残りは中間転写ベルト30上に付着して電気特性の変動をきたし、画像欠陥の原因となる。
【0046】
画像形成装置1では、追加帯電部70によるトナー像に向けた追加帯電量を、トナー像の、追加帯電前の帯電量に応じて制御することで、制御を実施しない場合に比べ、トナーを追加帯電させることで生成される放電生成物が低減する。
【0047】
[第1実施形態における制御動作]
図3は、図1に示す画像形成装置における動作を説明するフローチャートである。
【0048】
画像形成装置1の各部は、制御部1Aの制御に基づいて動作する。図1および図2も合わせて参照しながら、画像形成装置1の各部の動作を説明する。
【0049】
制御部1Aは、画像形成装置1の外部からの画像データの入力を待ち(ステップS11)、画像データが供給されてくると(ステップS11でY)、画像形成部10Y〜10Kに、画像データに応じたトナー像を形成させる(ステップS12)。また、ステップS12では、用紙搬送部80に、用紙Pの搬送を開始させる。
【0050】
次に、制御部1Aは、画像形成部10Y〜10Kで形成され、中間転写ベルト30に転写されたトナー像の帯電量を測定する(ステップS12)。具体的には、制御部1Aは、中間転写ベルト30上のトナー像が帯電量検出部90のプローブ91の位置を通過する期間に、表面電位計92に中間転写ベルト30の電位を測定させ、トナー像における平均の電位を求める。求めた電位によって、トナー像の帯電量が得られる。
【0051】
次に、制御部1Aは、追加帯電部70に追加帯電を行わせる(ステップS14)。具体的には、中間転写ベルト30上のトナー像が追加帯電部70の位置を通過する期間中、電源装置73に帯電ロール71への電圧を供給させる。
【0052】
ここで、制御部1Aは、上記ステップS12で得られたトナー像の帯電量が大きいほど、追加帯電部70における追加帯電量を小さくし、逆に、ステップS12で得られたトナー像の帯電量が小さいほど、追加帯電部70における追加帯電量を大きくする。具体的には、制御部1Aは、上記ステップS12で得られた平均の電位が大きいほど、電源装置73が帯電ロール71に供給する電圧を低くする。なお、本明細書における電圧の高低は、電圧の絶対値の高低を意味する。例えば、「電圧を低くする」ことは、電圧を「0V」に近づけることを意味する。帯電ロール71の電圧が低下することで、中間転写ベルト30上のトナー像に追加で帯電される帯電量は減少する。
【0053】
中間転写ベルト30上のトナー像のもともとの帯電量が相対的に大きい場合には、トナー像の多くが2次転写器50で用紙に転写されるため、画像の欠陥が少ない。このような場合に、本実施形態の画像形成装置1では、追加帯電量が小さくなるため、追加帯電量による放電生成物の生成が減少する。また、中間転写ベルト30上のトナー像の帯電量が相対的に小さい場合には、追加帯電量が大きくなり、トナー像が2次転写器50で用紙に転写されるのに十分な帯電量に帯電される。このようにして、画像の欠陥が抑えられ、かつ、放電生成物の生成が減少する。
【0054】
次に、制御部1Aは、搬送ロール82で搬送される用紙Pの電気抵抗を測定する(ステップS16)。具体的には、制御部1Aは、搬送ロール82に挟まれた用紙Pの電気抵抗を抵抗検出器42に測定させる。
【0055】
次に、制御部1Aは、2次転写器50に転写電圧を印加して、トナー像を用紙に転写させる(ステップS16)。このとき制御部1Aは、ステップS15で測定された電気抵抗が大きいほど、2次転写器50に大きな転写電圧を印加し、逆に、測定された電気抵抗が小さいほど、2次転写器50に小さな転写電圧を印加する。
【0056】
例えば、用紙Pが厚手の用紙である場合には、薄手の用紙に比べて、用紙Pの厚み方向における電気抵抗が大きい。このため、2次転写器50で印加される電圧によって、トナー像が位置する、用紙Pと中間転写ベルト30に挟まれた空間における電界が小さい。本実施形態の画像形成装置1では、用紙の電気抵抗が大きいほど大きな転写電圧が印加される。したがって、トナー像の転写を促進され、画像欠陥が減少する。また、用紙の電気抵抗が小さいほど、小さな転写電圧が印加されることで、転写のための電界が得られ、かつ、2次転写器50による放電生成物の生成が減少する。
【0057】
最後に、制御部1Aは、定着装置60に用紙P上のトナー像を定着させる(ステップS17)。
【0058】
ここで、ステップS13およびステップS14の処理を行う制御部1Aが、本発明にいう第2の制御部の一例に相当し、ステップS15およびステップS16の処理を行う制御部1Aが、本発明にいう第2の制御部の一例に相当する。
【0059】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明にあたっては、これまで説明してきた実施形態における各要素と同一の要素には同一の符号を付けて示し、前述の実施形態との相違点について説明する。
【0060】
図4は、第2実施形態に係る追加帯電部を示す図である。
【0061】
第2実施形態の画像形成装置は、図1および図2に示す第1実施形態の画像形成装置に対し、帯電量検出部90が取り除かれたことが異なる。本実施形態に係る追加帯電部70は、図2に示す追加帯電部70と同様の構成を有する。
【0062】
第2実施形態の画像形成装置において、制御部1Aは、表面電位計に電位を計測させず、画像データに基づいてトナー像の帯電量を推定する。
【0063】
図5は、第2実施形態の画像形成装置における動作を説明するフローチャートである。
【0064】
本実施形態では、ステップS213における平均像密度算出と、ステップS214における追加帯電の動作が、図3を参照して説明した第1実施形態の動作と異なる。以降、図4および図5を参照して説明する。
【0065】
平均像密度算出(ステップS213)の処理では、ステップS12のトナー像形成で形成したトナー像の平均像密度を算出する。中間転写ベルト30上で用紙1枚の画像に対応する画像領域中には、トナーが存在する部分とトナーが存在しない部分(すなわちトナー像が用紙に転写された場合に用紙の色が見える部分)がある。平均像密度は、上記画像領域中におけるトナーが存在する部分が占める割合である。トナー像の帯電量は、トナー像を構成するトナー(粒子)の帯電量の総量に相当する。したがって、平均像密度は、トナー像の帯電量を表す指標として用いることができる。制御部1Aは、画像データから、画像形成部10Y〜10Kに形成させた画像の平均像密度を算出することで、トナー像の帯電量を推定する。
【0066】
次に、制御部1Aは、追加帯電部70に追加帯電を行わせる(ステップS214)。ここで、制御部1Aは、トナー像の帯電量が大きいほど、追加帯電部70における追加帯電量を小さくする。具体的には、ステップS213で算出した平均像密度の値が大きいほど、追加帯電部70における追加帯電量を小さくする。
【0067】
本実施形態の画像形成装置1では、平均像密度から、中間転写ベルト30上のトナー像の帯電量が大きいと判断される場合には追加帯電量が小さくなるため、追加帯電量による放電生成物の生成が減少する。
【0068】
カラー画像を形成する場合、平均像密度は各色のトナーごとに得られる。本実施形態におけるタンデム型の画像形成装置では、各色毎の画像形成部10Y,10M,10C,10Kが並列的に配置されている。単色で見た場合に、中間転写ベルト30の移動方向における上流に配置された画像形成部で形成されたトナー像は、下流に配置された画像形成部で形成されたトナー像に比べ、像密度が互いに等しい条件でも、トナー像の帯電量が大きいという傾向を有する。この理由は、例えば、最上流に配置された黄色の画像形成部10Yで形成されたトナー像は、画像形成部10Yの1次転写器15Yによって中間転写ベルト30に転写された後、下流に配置された残りの画像形成部10M,10C,10Kにおける1次転写器を経由するうちに、帯電量が追加されることが考えられる。これに対し、最下流に配置された黒色の画像形成部10Kで形成されたトナー像は、他の画像形成部10Y〜10Cで形成されたトナー像に比べて帯電量が小さく2次転写器50で転写されにくい傾向を有する。
【0069】
そこで、制御部1Aは、最下流の画像形成部10Kのみでトナー像を形成する場合すなわち用紙にモノクロの画像を形成する場合のみ平均像密度に応じた追加帯電量で追加帯電部70に帯電を行わせる。この一方で、制御部1Aは、最下流の画像形成部10Kよりも上流に配置された画像形成部10Y〜10Cでもトナー像を形成する場合すなわちカラー画像を形成する場合には、転写に十分なトナー帯電量があると判断し、追加帯電部70による帯電は停止する。
【0070】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の第3実施形態の説明にあたっては、これまで説明してきた実施形態における各要素と同一の要素には同一の符号を付けて示し、前述の実施形態との相違点について説明する。
【0071】
図6は、本発明の第3実施形態に係る追加帯電部を示す図である。
【0072】
本実施形態における画像形成装置の追加帯電部370は、図4に示す第2実施形態の追加帯電部70に対し、電荷付与電極ロールである帯電ロール71の代わりに、非接触帯電器371および可変抵抗器374を備えた点が異なる。非接触帯電器371はコロトロンであり、放電を担う放電線3711とシールド3712とを備えている。放電線3711は、中間転写ベルト30の全幅に亘って延びた金属製のワイヤである。シールド3712は、金属製の板状部材であり中間転写ベルト30に向かって開口した部分を除いて放電線3711を取り囲んでいる。なお、本実施形態において、対向電極である帯電ロール72は、中間転写ベルト30の張力に抗してに押し当てられており、中間転写ベルト30からの反力によって弾性変形している。
【0073】
放電線3711には、電源装置73が接続されており、電源装置73から電圧が供給される。電源装置73は制御部1Aから電圧の印加または印加停止の制御を受ける。シールド3712は、可変抵抗器374を介して接地電位に接続されている。仮に、シールド3712が直接接地電位に接続されている場合には、長く延びた放電線3711のうち、コロナ放電が開始する(起点放電)の位置に放電量が集中し放電ムラが生じる。シールド3712が抵抗を介して接地電位に接続されることで、放電ムラが減少する。可変抵抗器374は制御部1Aの制御によって抵抗値が変化する。本実施形態における非接触帯電器371の帯電量は、可変抵抗器374の抵抗値を利用することで調整される。可変抵抗器374の抵抗値が小さいほど、非接触帯電器371の放電線3711から放電される電荷の多くがシールド3712に取り込まれるため、中間転写ベルト30上のトナー像に向けた放電量が少ない。つまり非接触帯電器371によるトナー像の追加帯電量が少ない。この逆に、可変抵抗器374の抵抗値が大きいほど、中間転写ベルト30上のトナー像に向けた放電量が多い。また、コロトロンである非接触帯電器371は、放電に起因した放電生成物や汚れがシールド3712に付着・蓄積することで、放電線3711とシールド3712との間の抵抗値が逓増する。
【0074】
図7は、第3実施形態の画像形成装置における動作を説明するフローチャートである。
【0075】
本実施形態では、ステップS310における環境条件検知の動作と、ステップS314における追加帯電の動作と、ステップS321以降におけるパッチ形成の動作が、図5を参照して説明した第2実施形態の動作と異なる。以降、図6および図7の双方を参照して説明する。
【0076】
ステップS310における環境条件検知において、制御部1Aは、画像形成装置1(図1参照)の環境条件を検知する。より詳細には、制御部1Aは、環境条件センサ45を介して湿度のデータを得る。
【0077】
ステップS314の追加帯電において、制御部1Aは、第2実施形態におけるステップS214の処理と同様に、ステップS213で算出した平均像密度の値が大きいほど、追加帯電部70における追加帯電量を小さくする。追加帯電量は、可変抵抗器374の抵抗値を低下させることで小さくする。可変抵抗器374の抵抗値が低下すると、非接触帯電器371の放電線3711からシールド3712に流れる電荷量(電流)が増加し、放電線3711から中間転写ベルト30上のトナーに向けて放電される電荷量(電流)が減少する。したがって非接触帯電器371による追加帯電量が減少する。
【0078】
また、ステップS314の追加帯電において、制御部1Aは、平均像密度の値から求めた抵抗値に対し、最終的に可変抵抗器374に設定する抵抗値を、種々の条件に応じて調整する。より詳細には、制御部1Aは、環境条件、累積画像枚数、および中間転写ベルト30上に形成したテストパッチの濃度に応じて調整する。
【0079】
環境条件は、ステップS310の環境条件検知において、環境条件センサ45から得た湿度のデータである。非接触帯電器371はコロナ放電を利用するため、湿度が低下するほど、放電線3711における放電開始電圧が低下する。低い電圧で追加帯電がなされると、放電線3711での起点放電による放電のムラが生じ、追加帯電の電荷量分布の偏りが拡大する。これに対し、制御部1Aは、可変抵抗器374の抵抗値を低下させることで放電開始電圧を上昇させ、起点放電に起因する電荷量分布の偏りを少なくする。
【0080】
累積画像枚数は、画像形成装置1が形成した画像の枚数である。制御部1Aは、画像を形成した用紙の累計枚数を計数して利用する。非接触帯電器371は、使用時間が長時間化するに従い、放電生成物や汚れがシールド3712に蓄積し、放電線3711とシールド3712との間の抵抗値が増加する。このため、放電線3711からシールド3712に向けた電荷の放電が開始しにくくなる一方で、放電線3711から中間転写ベルト30上のトナーに向けた放電が開始しやすくなる。つまり、放電線3711における放電開始電圧が低下する。低い電圧で追加帯電がなされると、放電線3711での起点放電による放電のムラが生じ、追加帯電の電荷量分布の偏りが拡大する。これに対し、制御部1Aは、可変抵抗器374の抵抗値を低下させることで、放電開始電圧を上昇させ、起点放電に起因する電荷量分布の偏りを少なくする。
【0081】
テストパッチの濃度は、ステップS322,S323の処理で得られる、予め定められた規定の画像密度を有するテストパッチの濃度すなわち中間転写ベルト30上へのトナーの付着量である。ここで、ステップS322,S323の処理を先に説明する。用紙に画像を形成した後、制御部1Aは、予め定めた枚数(例えば50枚)の画像を形成した場合には(ステップS321でYes)、画像データによらない、規定の(例えば50%)画像密度を有するテストパッチを画像形成部10Y〜10Kに形成させる(ステップS322)。そして、制御部1Aは、トナー濃度計測部41(図1参照)9によって、中間転写ベルト30に形成されたテストパッチの濃度を測定する。テストパッチの濃度は、画像形成部10Y〜10Kにおけるトナー像形成の能力を表す。すなわち、規定の画像密度を有するテストパッチを形成しても、画像形成部10Y〜10Kの感光体、現像器、およびトナーの状態に応じて、中間転写ベルト30上に載るトナー像のトナー量は異なり、トナー像の帯電量が異なる。そこで、テストパッチの濃度が予め定めた基準より小さい場合には、制御部1Aは、可変抵抗器374の抵抗値を増加させることで、非接触帯電器371に向けた帯電量を増加させる。
【0082】
このようにして、ステップS314において制御部1Aは、平均像密度の値から抵抗値を求め、この抵抗値を、環境条件、累積画像枚数、および中間転写ベルト30上に形成したテストパッチの濃度に応じて調整し、可変抵抗器374に、調整した抵抗値を設定する。ここで、抵抗値の調整は、具体的には、平均像密度の値から求めた抵抗値に対し、湿度、累積画像枚数、テストパッチのそれぞれに対し、重みづけ係数を乗じた調整値を加算することで実行される。重みづけ係数は試験によって予め得る情報である。また、演算に限らず、実験から得られた上記条件の値と調整値との関係を対応づけて記憶しておき、調整時には、対応した調整値を読みだして設定する構成も採用され得る。
【0083】
[実施例]
(湿度変化)
ここで、第3実施形態で説明した構成において、湿度および累積画像枚数が異なる種々の条件下で可変抵抗器の抵抗値を変化させて画像形成を実施した例について説明する。
【0084】
まず、実施例1として、第3実施形態で説明した構成を有する画像形成装置を、湿度85%の環境下に置き、画像形成で用いていない新品(cycle0)の非接触帯電器371を用い、可変抵抗器374の抵抗値を1MΩに設定して、評価用の画像を形成させた。
【0085】
次に、比較例1として、実施例1の画像形成装置と同じ構成の画像形成装置を、湿度50%の低湿度環境下に置き、可変抵抗器374の抵抗値を1MΩに固定したまま、評価用の画像を形成させた。
【0086】
次に、実施例2として、実施例1の画像形成装置と同じ構成の画像形成装置を、湿度50%の低湿度環境下に置き、可変抵抗器374の抵抗値を0.5MΩに低下させて、評価用の画像を形成させた。
【0087】
(累積枚数変化)
次に、比較例2として、実施例1の画像形成装置と同じ構成の画像形成装置を、湿度85%の低湿度環境下に置き、可変抵抗器374の抵抗値を1MΩに固定したまま、10万枚の画像を形成させた(cycle数100k)後に、評価用の画像を形成させた。
【0088】
次に、実施例3として、実施例1の画像形成装置と同じ構成の画像形成装置を、湿度85%の低湿度環境下に置き、10万枚の画像を形成させた(cycle数100k)後に、可変抵抗器374の抵抗値を0.5MΩに低下させて、評価用の画像を形成させた。
【0089】
下の表1および表2に、各実施例および比較例の評価結果を示す。
【0090】
【表1】

【0091】
実施例1,2および比較例1のいずれにおいても、画像形成装置の画像品質基準に対して欠陥と判定される程度の欠陥は認められなかった(評価:「○」)。しかし、湿度の変化にも拘わらず抵抗値を固定した比較例1では、起点放電による帯電ムラに伴う微小な転写ムラが見られた。これに対し、可変抵抗器374の抵抗値を0.5MΩに低下させた実施例2では、帯電ムラに伴う微小な転写ムラも見られなかった。
【0092】
【表2】

【0093】
実施例1,3および比較例2のいずれにおいても、画像形成装置の画像品質基準に対して欠陥と判定される程度の欠陥は認められなかった(評価:「○」)。しかし、画像形成の累計枚数が10万枚(100k)であるにも拘わらず抵抗値を固定した比較例2では、起点放電による帯電ムラに伴う微小な転写ムラが見られた。これに対し、可変抵抗器374の抵抗値を0.5MΩに低下させた実施例3では、帯電ムラに伴う微小な転写ムラも見られなかった。
【0094】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下の第4実施形態の説明にあたっては、これまで説明してきた実施形態における各要素と同一の要素には同一の符号を付けて示し、前述の実施形態との相違点について説明する。
【0095】
図8は、本発明の第4実施形態に係る追加帯電部の概略構成図である。
【0096】
本実施形態における画像形成装置の追加帯電部470は、図6に示す第3実施形態の追加帯電部370が、非接触帯電器371およびその対向電極となる帯電ロール72を1組備えたのに対し、図8に示すに示すように、非接触帯電器471A,471Bおよび対向電極472A,472Bを2組備えている。非接触帯電器471A,471Bのそれぞれは、第3実施形態の非接触帯電器371と同様の構成を有している。また、対向電極472A,472Bは、第3実施形態で対向電極となる帯電ロール72と同様の構成を有している。
【0097】
第4実施形態に係る追加帯電部は、2つの非接触帯電器471Aを備えているため、1つの非接触帯電器に印加する電圧を低く設定できるため、電圧過多によるトナー像の飛び散りを防止することができる。
【0098】
なお、上記第4実施形態では、2つの非接触帯電器471A,471Aを備えた例が説明されている。しかし、本発明の画像形成装置は、これに限られるものではなく、3つ以上の帯電器を備えたものであってもよい。
【0099】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について説明する。以下の第5実施形態の説明にあたっては、これまで説明してきた実施形態における各要素と同一の要素には同一の符号を付けて示し、前述の実施形態との相違点について説明する。
【0100】
図9は、本発明の第5実施形態に係る追加帯電部の概略構成図である。図9のパート(A)は、追加帯電部570を、中間転写ベルト30の移動方向に見た断面模式図であり、図9のパート(B)は、追加帯電部570の非接触帯電器571を中間転写ベルト30の側から見た平面図である。
【0101】
図9に示す追加帯電部570は、非接触帯電器371および電源装置574の構成が図6に示す第3実施形態とは異なる。非接触帯電器371は、中間転写ベルト30の移動方向bと交わる幅方向Xに一列に配列された複数の電極板5712と、シールド3712とを備えている。電極板5712は、中間転写ベルト30の全幅に亘って配列されている。電極板5712のそれぞれは矩形状の金属板であり、短絡や空気絶縁破壊が生じない程度に互いに間隔をあけて配置されている。シールド5712は、金属製の板状部材であり中間転写ベルト30に向かって開口した部分を除いて電極板5712を取り囲んでいる。
【0102】
電源装置574は、電極板5712の数に対応する数の電源574aを備えている。電源574aは、電極板5712とそれぞれ接続されている。電源574aのそれぞれは、電極板5712に供給する電圧が、制御部1Aによって互いに独立に制御される。
【0103】
本実施形態に係る制御部1Aの動作は、図5のフローチャートを参照して説明した第2実施形態の動作における平均密度算出(ステップS213)と追加帯電(ステップS214)の動作に相当する動作が異なる。残りの動作は、図5のフローチャートに示すものと同様であるため、図5を流用して説明する。
【0104】
本実施形態に係る制御部1Aは、第2実施形態の動作における平均密度算出(ステップS213)の代わりに、中間転写ベルト30上に形成されたトナー像について、縦と横、つまり移動方向bと幅方向Xのそれぞれに複数に分割した分割領域ごとの密度算出を行う。具体的には、電極板5712の大きさに合わせて分割された分割領域のそれぞれにおける平均像密度を画像データに基づいて算出する。
【0105】
制御部1Aは、追加帯電において、まず、中間転写ベルト30上のトナー像の分割領域からなる1番目の列が電極板5712を通過するタイミングで、この列を構成する分割領域それぞれの平均像密度に応じた電圧を、各分割領域に対向する電極板5712に接続された電源574aに供給させる。電極板5712のそれぞれには、電源574aから、対向する分割領域の平均像密度に応じた電圧が供給されて放電する。具体的には、分割領域の平均像密度が小さいほど大きな電圧が供給される。したがって、電極板5712のそれぞれは分割領域を、供給された電圧に応じた帯電量で帯電する。すなわち、電極板5712のそれぞれは分割領域をこの平均像密度が小さいほど大きな帯電量で帯電する。
【0106】
制御部1Aは、トナー像の分割領域の2番目の列が電極板5712を通過するタイミングでは、その次の列をなす分割領域のそれぞれの平均像密度に応じた帯電量で、各分割領域を帯電させる。制御部1Aは、このようにしてすべての分割領域について、各分割領域の平均像密度に応じた帯電量で帯電させる。
【0107】
本実施形態では、いわゆるベタ部分と余白部分を有する画像のトナー像のような、トナー像の各領域で像密度が異なる場合でも、各領域の像密度に応じた追加の帯電がなされる。
【0108】
本実施形態では、電極板5712が一列に並んだ1次元の配列構成の例を説明したが、本発明にいう帯電器は、複数の電極板が2次元に配列されたものであってもよい。複数の電極板が2次元に配列された場合には、トナー像のうちの複数列の分割領域が一度に帯電される。
【0109】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について説明する。以下の第6実施形態の説明にあたっては、これまで説明してきた実施形態における各要素と同一の要素には同一の符号を付けて示し、前述の実施形態との相違点について説明する。
【0110】
図10は、本発明の第6実施形態である画像形成装置の概略構成図である。
【0111】
図10に示す画像形成装置6は、図1に示す画像形成装置1と比べて、中間転写ベルト30について追加帯電部70および帯電量検出部90は設けられていない。この代わりに、画像形成装置6は、中間転写ベルト30の移動方向b最下流に配置された黒(K)色用の画像形成部10Kに、追加帯電部670が備えられている。追加帯電部670は、4つの感光体11Y〜11Kのうち、中間転写ベルト30の移動方向b最下流に配置された黒色用の感光体11Kに形成された黒色のトナー像を追加帯電する。追加帯電部670は、K色の感光体11Kの回転に伴う表面の移動における移動方向において、1次転写器15Yよりも上流に配置されている。
【0112】
本実施形態の追加帯電部670の具体的構成は、図4に示す構成と同様である。ただし、本実施形態の追加帯電部670では、対向電極としてのロール72と中間転写ベルト30の代わりに感光体11Kが配置される点が異なる。
【0113】
本実施形態における黒色用の感光体11Kが本発明にいう像保持体の一例に相当し、追加帯電部670が本発明にいう帯電部の一例に相当する。また、1次転写器15Kが本発明にいう転写器の一例に相当する。
【0114】
先に説明したように、移動方向bの最上流に配置された黄色の画像形成部10Yで形成されたトナー像は、画像形成部10Yの1次転写器15Yによって中間転写ベルト30に転写された後、下流に配置された画像形成部10M,10C,10Kの1次転写器を経由するうちに、帯電量が追加されると考えられる。これに対し、最下流に配置された黒色の画像形成部10Kで形成されたトナー像は、他の画像形成部10Y〜10Cで形成されたトナー像に比べて帯電量が小さく、2次転写器50で転写されにくい傾向を有する。
【0115】
本実施形態の画像形成装置6によれば、中間転写ベルト30に転写されたトナー像のうち最も帯電量が小さい黒色のトナー成分(あるいは黒色のモノクロプリントにおけるトナー像)に対し、追加帯電がなされる。したがって、転写に十分なトナー像に対し、不要な追加帯電が行われることが回避されるため、放電生成物の生成が減少する。
【0116】
なお、上述した第6実施形態では、本発明にいう帯電器の例として、図4に示す帯電ロール71によるものと同様の構成を有する追加帯電部670の例が説明されている。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、感光体に追加帯電する帯電器は、例えば、図6に示すコロトロンであってもよい。また帯電器は、図8に示すように複数備えられてもよく、さらに、図9に示すように複数の電極板を有する構成のものであってもよい。
【0117】
また、この他にも、上述した実施形態のそれぞれで説明した各要素は、他の実施形態においても組み合わせて適用され得る。例えば、図5を参照して説明した、環境条件やパッチ像に基づく帯電量の調整は、図2を参照して説明した帯電ロールを有する第1実施形態等にも適用され得る。また、図2を参照して説明した、プローブ91および表面電位計92によって帯電量を得る構成は、コロトロンを有する構成にも適用され得る。
【0118】
また、上述した第3実施形態では、追加帯電において、制御部1Aが、平均像密度の値から求めた抵抗値に対し、最終的に可変抵抗器374に設定する抵抗値を、環境条件、累積画像枚数、およびテストパッチの濃度に応じて調整する例が説明された。しかし、環境条件、累積画像枚数、およびテストパッチ濃度のいずれかまたはこれらの組合わせに応じて調整することは、第1実施形態、第2実施形態、および第4実施形態から第6実施形態のいずれにも適用され得る。
【0119】
本実施形態では、ステップS310における環境条件検知の動作と、ステップS314における追加帯電の動作と、ステップS321以降におけるパッチ形成の動作が、図5を参照して説明した第2実施形態の動作と異なる。以降、図6および図7の双方を参照して説明する。
【0120】
また、上述した実施形態では、画像形成装置の例としてタンデム型のカラープリンタが示されている。しかし、本発明にいう画像形成装置はこれに限られず、例えば、中間転写ベルトを有しないモノクロ専用プリンタであってもよい。
【0121】
また、上述した実施形態では、画像形成装置の例としてプリンタが示されている。しかし、本発明にいう画像形成装置はプリンタに限られず、例えば、複写機やファクシミリであってもよい。
【符号の説明】
【0122】
1,6 画像形成装置
10Y,10M,10C,10K 画像形成部
11K 感光体
15K 一次転写器
30 中間転写ベルト
41 トナー濃度計測部
42 抵抗検出器
45 環境条件センサ
50 二次転写器
51 電源装置
70,370,470,570,670 追加帯電部
71 帯電ロール
712 弾性層
371 非接触帯電器
374 可変抵抗器
371,471A,471B,571 非接触帯電器
472A,472B 対向電極
82 搬送ロール
90 帯電量検出部
91 プローブ
92 表面電位計


【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電したトナー像を保持する像保持体と、
前記像保持体に保持されたトナー像を追加帯電させる帯電器と、
電圧の印加を受けて、前記帯電器による追加帯電を受けたトナー像を被転写体に転写する転写器と、
前記帯電器によるトナー像に向けた追加帯電量を、該トナー像の、追加帯電前の帯電量に応じて制御する第1の制御部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記被転写体の電気抵抗値を検出する検出器と、
前記検出器により検出された被転写体の電気抵抗値に応じて前記転写器への印加電圧を制御する第2の制御部とをさらに有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
各色トナー像の形成を受ける複数の感光体と、周回しながら該複数の感光体から順次に、該複数の感光体上の各色トナー像の転写を受ける中間転写体とを有し、
前記像保持体が、前記複数の感光体のうちの前記中間転写体の移動方向最下流に配置された感光体であって、
前記転写器が、前記中間転写体上のトナー像の被転写体への転写を担う転写器であることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
電位の基準となる筐体を有し、
前記帯電器が、放電線と、前記筐体との間が抵抗値可変な電気抵抗を介して接続されたシールドとを有するコロトロンであって、
前記第1の制御部が、前記電気抵抗の抵抗値を調整することによって、トナーに向けた追加帯電量を制御するものであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−203178(P2012−203178A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67451(P2011−67451)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】