説明

画像形成装置

【課題】定着処理後の用紙の定着ローラへの巻き付きを防止しつつ、定着ローラの冷却を抑制する。
【解決手段】画像形成装置100は、定着ローラ86と定着ローラ86から排出される用紙Pとの間にエアを噴出する用紙分離ファン90と、定着ローラ86と後段搬送ローラ24との間に設けられた用紙Pのループ量を検知する用紙ループセンサ40と、画像形成装置100全体の動作を制御する制御部50とを備える。制御部50は、用紙Pが定着ローラ86に挟持されたとき用紙分離ファン90を動作させてエアを用紙Pに噴出する。そして、用紙Pが後段搬送ローラ24に挟持され、用紙Pのループ量が予め設定された基準ループ量よりも小さくなった場合に、用紙分離ファン90の動作を停止させて用紙Pへのエアの噴出を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ローラから排出される用紙にエアを噴出することにより用紙を定着ローラから分離(剥離)させる用紙分離機能を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電子写真方式の画像形成装置は、用紙にトナー像を転写した後に、トナー像を用紙に熱融着して定着させる定着装置を備えている。定着装置は、ヒータが内蔵された加熱ローラ(定着ローラ)と、この加熱ローラに対向配置された加圧ローラとを備えている。この定着装置では、中間転写ベルト等を含む画像形成部によってトナー像が転写された用紙を、定着装置の加熱ローラと加圧ローラとの間のニップ部(両ローラの接触部)を通過させることで、用紙を両ローラによって圧接すると共に加熱してトナー像を用紙に熱融着(定着)させている。
【0003】
ところで、上述した定着処理においては、用紙に転写された溶融トナーが加熱ローラに接触するので、この接触によって用紙上の溶融トナーが加熱ローラに密着して用紙が加熱ローラに巻き付いてしまう場合がある。特に、斤量の小さい用紙ほど巻き付きが発生し易い。そのため、この巻き付きを防止するために、画像形成装置では、加熱ローラおよび加圧ローラから排出される用紙にエアを噴出することで、加熱ローラへの用紙の吸着を防止する用紙分離制御が行われている。
【0004】
ここで、このような用紙分離制御を行うと、用紙分離効果は得られるが、噴出した用紙分離用のエアが加熱ローラに当たることで、加熱ローラが冷却されてしまうという問題もあった。そのため、一定期間エアを噴出したらエアを停止させる制御を行う風量制御機能を備えた画像形成装置が提案されている。例えば、特許文献1には、定着ニップ部よりもシート搬送方向の下流側からシートと加熱ローラとの間に向けて圧縮空気を噴出することにより、シートを加熱ローラから剥離し、シートの先端が搬送ローラ対に接触した後、エア剥離装置からの圧縮空気の噴出を停止させる定着装置が提案されている。この定着装置によれば、用紙の剥離効果を低下させずに、圧縮空気による加熱ローラの冷却を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−17865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される定着装置では、以下のような問題がある。すなわち、用紙分離制御によって定着ローラから分離された用紙は、エア噴出の影響により加圧ローラ側にループを形成しながら、シート搬送方向の下流側に設けられた搬送ローラに搬送される。そして、用紙が後段の搬送ローラに挟持された時点でエア噴出が停止されると、用紙のループが加圧ローラ側から加熱ローラ側に移動する。つまり、エア噴出を停止したことで、用紙のトナー像が加熱ローラに接触し、用紙表面の溶融トナーが加熱ローラに密着して巻き付いてしまうという問題が発生する。図7は、用紙のループ量が加熱ローラ側に移動した場合を示している。この場合には、用紙の剥離性能が低下し、用紙上のトナー像やワックスの余熱分布が変わってしまい、画像ムラ等の原因となるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、定着処理後の用紙の定着ローラへの巻き付きを防止しつつ、定着ローラの冷却を抑制することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、用紙に転写されたトナー像を用紙に定着させる定着ローラを有する定着部と、定着部から排出された用紙に所定の風量でエアを噴出することで定着ローラから用紙を分離させる送風部と、定着部の用紙搬送方向の下流側に設けられた搬送ローラに用紙が到達した後、定着ローラと搬送ローラとの間における用紙のループ量を検知する検知部と、検知部により検知された用紙のループ量が予め設定された基準ループ量よりも小さい場合に送風部の駆動を停止させる制御部とを備えるものである。
【0009】
本発明において、制御部は、定着ローラに用紙が挟持されたとき、所定の風量にてエアを噴出させるように送風部を制御し、定着ローラから排出される用紙にエアを噴出させることで用紙の定着ローラへの巻き付きの防止している。そして、後段の搬送ローラに用紙が到達した後、定着ローラと搬送ローラとの間における用紙のループ量を検知し、この検知により得られたループ量が予め設定された基準ループ量よりも小さい場合に、送風部の駆動を停止させてエア噴出を停止させる。ここで、基準ループ量とは、エアの噴出を停止させた場合でも用紙が定着ローラに巻き付かない用紙のループ量を意味している。そのため、この時点でエア噴出を停止したとしても、用紙の定着ローラへの巻き付きは発生しないので、用紙の巻き付け量を制御しつつ、定着ローラの冷却の抑制を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、用紙が後段の搬送ローラに到達したときに、定着ローラと搬送ローラとの間における用紙のループ量を検知し、この検知結果に基づいて用紙分離風量を制御するので、用紙の定着ローラへの巻き付けを防止しつつ、分離エアによる定着ローラの冷却を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成例を示す図である。
【図2】画像形成装置のブロック構成例を示す図である。
【図3】画像形成装置の用紙分離制御時における制御部の動作例を示すフローチャートである。
【図4】(A)〜(D)は、画像形成装置の用紙分離制御時における用紙の状態例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置の用紙分離制御時における制御部の動作例を示すフローチャートである。
【図6】(A)〜(F)は、画像形成装置の用紙分離制御時における用紙の状態例を示す図である。
【図7】従来における定着ローラから排出される用紙の巻き付きの状態例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。
<1.第1の実施の形態>
[画像形成装置の概略構成例]
本発明に係る画像形成装置100は、用紙Pが定着ローラ86に挟持されたときに用紙Pにエアを噴出し、後段搬送ローラ24に挟持されたら用紙Pのループ量を検知し、この用紙Pのループ量が予め設定された基準ループ量以下である場合にエア噴出を停止させることで、用紙Pの定着ローラ86への巻き付きを防止すると共に分離エアによる定着ローラ86の冷却を抑制するものである。
【0013】
図1は、本発明に係る画像形成装置100の構成の一例を示している。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上拡張されており、実際の比率と異なる場合がある。図1に示すように、画像形成装置100は、タンデム型の画像形成装置と称されるものであり、自動原稿搬送部101と装置本体部102とを備えている。自動原稿搬送部101は、装置本体部102の上部に取り付けられ、搬送台上にセットされた用紙Mを搬送ローラ等により装置本体部102の画像読取部110に送り出す。
【0014】
装置本体部102は、画像読取部110と画像形成部60と中間転写ベルト8と定着装置80と用紙分離ファン90とを有している。画像読取部110は、原稿台上に載置された原稿を走査露装置の光学系により走査露光し、CCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサにより走査した原稿の画像を光電変換して画像情報信号を生成する。画像情報信号は、図示しない画像処理部によりアナログ処理、アナログ/ディジタル(以下A/Dという)変換処理、シューディング補正、画像圧縮処理等行われた後に、画像形成部60に出力される。
【0015】
画像形成部60は、電子写真方式により画像を形成するものであり、イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成ユニット10Yと、マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成ユニット10Mと、シアン(C)色の画像を形成する画像形成ユニット10Cと、黒(K)色の画像を形成する画像形成ユニット10Kとを有している。この例では、それぞれ共通する機能名称、例えば、符号10の後ろに形成する色を示すY,M,C,Kを付して表記する。
【0016】
画像形成ユニット10Yは、感光体ドラム1Yと、その周囲に配置される帯電部2Y、露光部(光書込み部)3Y、現像部4Yおよびクリーニング部6Yを有している。画像形成ユニット10Mは、感光体ドラム1Mと、その周囲に配置される帯電部2M、露光部3M、現像部4Mおよびクリーニング部6Mを有している。画像形成ユニット10Cは、感光体ドラム1Cと、その周囲に配置される帯電部2C、露光部3C、現像部4Cおよびクリーニング部6Cを有している。画像形成ユニット10Kは、感光体ドラム1Kと、その周囲に配置される帯電部2K、露光部3K、現像部4Kおよびクリーニング部6Kを有している。
【0017】
画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kにおけるそれぞれの感光体ドラム(像担持体)1Y,1M,1C,1K、帯電部2Y,2M,2C,2K、露光部3Y,3M,3C,3K、現像部4Y,4M,4C,4K、クリーニング部6Y,6M,6C,6Kは、それぞれ共通する内容の構成である。以下、特に、区別が必要な場合を除き、Y,M,C,Kを付さずに表記することとする。
【0018】
帯電部2は、感光体ドラム1の表面をほぼ一様に帯電する。露光部3は、例えばポリゴンミラー方式のレーザ露光走査装置により構成され、画像情報信号に基づいて感光体ドラム1上をレーザ光により走査して静電潜像を形成する。現像部4は、感光体ドラム1上に形成された静電潜像をトナーにより現像する。これにより、感光体ドラム1上に可視画像であるトナー像が形成される。中間転写ベルト8は、複数のローラにより張架されると共に走行可能に支持されている。一次転写ローラが動作すると、中間転写ベルト8が走行し、中間転写ベルト8の画像転写位置に各感光体ドラム1に形成されたトナー像が転写される(一次転写)。
【0019】
給紙部20は、A3やA4等の各用紙サイズが収容された複数の給紙トレイ20A,20B,20Cを有している。各給紙トレイ20A,20B,20Cから搬送ローラ21,22等によって搬送された用紙Pは、ループ作成ローラ42を経由して搬送方向下流側に設けられたレジストローラ30に搬送される。なお、給紙トレイの数は3つに限定されるものではない。また、必要に応じて大容量の用紙Pを収容することが可能な大容量給紙装置を単数または複数設置させても良い。
【0020】
レジストローラ30は、一対の駆動ローラ32および従動ローラ34を有し、ループ作成ローラ42によって用紙Pの先端が突き当てられることでループを形成して用紙Pの斜行を補正する。また、レジストローラ30は、用紙検知部70の検知結果に基づいて、用紙Pをニップして用紙幅方向D2に揺動させることにより用紙Pの片寄りを補正する(レジスト揺動補正)。
【0021】
レジスト補正が終了すると、用紙Pは所定のタイミングで二次転写部36に搬送される。二次転写部36では、中間転写ベルト8の画像形成位置に転写されたカラー画像が、給紙部20から搬送されてくる用紙Pの表面に一括転写される(2次転写)。2次転写された用紙Pは、定着装置80に搬送される。
【0022】
定着装置80は、二次転写部36よりも用紙搬送方向の下流側に設けられ、二次転写部36でトナー像が転写された用紙Pに加圧、加熱処理を行うことにより用紙P表面のトナー像を用紙Pに定着させる。定着装置80により定着処理された用紙Pは、定着装置80よりも用紙搬送方向の下流側に設けられた後段搬送ローラ24を経由して排紙トレイ25上に排出される。
【0023】
用紙分離ファン90は、定着ローラ86の用紙搬送方向の下流側に設置され、用紙ループセンサ40で検知された用紙Pのループ量に応じて定着ローラ86から排出される用紙Pと加熱ローラ82との間にエアを送風する。これにより、用紙Pの加熱ローラ82への巻き付けが防止される。なお、用紙分離ファン90の詳細については後述する。
【0024】
また、画像形成装置100は、両面印刷等を行うための用紙反転部27を備えている。両面印刷モードが設定されている場合には、定着装置80により定着処理された用紙Pを用紙反転部27に導いた後に表裏を反転させて再度二次転写部36に搬送(スイッチバック搬送)し、用紙Pの裏面側にカラー画像等を形成する。
【0025】
[画像形成装置のブロック構成例]
図2は、画像形成装置100のブロック構成例を示している。まず、ブロック構成を説明する前に、定着装置80および後段搬送ローラ24について説明する。図2に示すように、定着装置80は、ヒータが内蔵された加熱ローラ82と、この加熱ローラ82に対向して配置された加圧ローラ84とを有している。加熱ローラ82および加圧ローラ84のそれぞれは、例えば、芯金と、芯金の外周面を覆う弾性層と、弾性層の外周面を覆う離型層とからなる3層構造で構成されている。本例では、加熱ローラ82と加圧ローラ84とを総称して定着ローラ86と呼ぶ。
【0026】
後段搬送ローラ24は、例えば、後段搬送ローラ24と定着ローラ86との間のシート搬送距離が、画像形成装置100で使用される全ての用紙Pの搬送方向における長さよりも短くなるような位置に配置される。これにより、用紙Pが後段搬送ローラ24に挟持された時点では、用紙Pの後端が定着ローラ86のニップ部から排出されておらず、用紙Pのいずれかの部位が定着ローラ86に挟持されることになる。
【0027】
続けて、画像形成装置100のブロック構成例について説明する。画像形成装置100は、図2に示すように、画像形成装置100の全体の動作を制御する制御部50を備えている。制御部50は、例えばCPU(Central Processing Unit)52を有しており、図示しないメモリに格納された所定のプログラムを読み出し、読み出したプログラムを実行することで画像形成処理や用紙分離制御等を行う。制御部50には、用紙ループセンサ40と定着駆動モータ88と用紙分離ファン90と記憶部54と操作表示部56とがそれぞれ電気的に接続されている。
【0028】
操作表示部56は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等からなる位置入力装置と液晶ディスプレイや有機EL等からなる表示装置とが組合されたタッチパネルから構成され、ユーザの入力操作に基づく入力情報を検知して操作信号を制御部50に供給する。例えば、操作表示部56は、画像形成の各種条件を受け付けたり、用紙分離風量制御の設定の有無を受け付ける。
【0029】
記憶部54は、例えば半導体メモリやHDD(Hard Disk Drive)等から構成されている。用紙ループセンサ40に例えば測距センサを用いた場合には、測距センサで検知された用紙Pと測距センサとの間の距離(ループ量)が、用紙Pの加熱ローラ82への巻き付きが発生しないループ量であるか否かを判断するときに用いる基準ループ量等の情報が記憶される。
【0030】
用紙ループセンサ40は、検知部の一例であり、例えばアクチュエータ(圧力センサ)や測距センサ等から構成され、定着装置80と後段搬送ローラ24との間の搬送経路の下方(加圧ローラ84)側に設置されている。より具体的には、用紙ループセンサ40は、エアの噴出を停止させた場合でも用紙Pが加熱ローラ82に巻き付かないループ量となるときの用紙Pのループ部位に接触可能な位置に設置されている。本例では、このループ量を基準ループ量と呼ぶ。この用紙ループセンサ40は、用紙分離制御時におけるエア噴出の影響によって形成される用紙Pのループ量を検知し、この検知により得られた検知信号を制御部50に供給する。用紙ループセンサ40がアクチュエータの場合には用紙Pが接触したか否かを示すオン/オフ信号を操作信号として制御部50に供給し、測距センサの場合には測距センサと用紙Pのループ部位との間の距離を示す操作信号を制御部50に供給する。
【0031】
用紙分離ファン90は、定着装置80と後段搬送ローラ24との間の搬送経路の加熱ローラ82側上方であって、エア噴出口が加熱ローラ82と排出される用紙Pとの間を向くようにして設置されている。エアを効率的に用紙Pと加熱ローラ82との間に送風するために、送風部から噴出されたエアをダクト等の案内管を経由させて用紙Pにエアを当てるように構成しても良い。この用紙分離ファン90は、モータ92を有している。モータ92は、例えばステッピングモータ等から構成され、制御部50から供給される駆動信号に基づいて駆動し、用紙分離ファン90を動作させる。これにより、用紙分離ファン90からエアが噴出され、加熱ローラ82と用紙Pとの間にエアが吹き付けられ、用紙Pの加熱ローラ82への巻き付きが防止される。なお、用紙分離ファン90およびモータ92は、送風部の一例を構成している。
【0032】
定着駆動モータ88は、例えばステッピングモータ等により構成され、加圧ローラ84に接続されている。定着駆動モータ88は、制御部50から供給される駆動信号に基づいて駆動し、定着装置80の加圧ローラ84を回転駆動させる。これにより、図示しない定着ベルト等が従動回転され、用紙Pが加熱、加圧処理されながら搬送される。
【0033】
[画像形成装置の動作例]
次に、本発明に係る画像形成装置100の制御部50の動作の一例について説明する。なお、以下では、用紙ループセンサ40としてアクチュエータを用いた場合について説明する。図3は、定着装置80から排出される用紙Pの定着ローラ86への巻き付きを防止する際の制御部50の用紙分離制御時の一例を示すフローチャートである。図4は、用紙分離風量制御の動作例を説明するための図である。
【0034】
ステップS100で制御部50は、画像形成部60により用紙Pに印刷が行われているか否かを判断する。制御部50は、印刷ジョブが実行されているか否かを確認し、印刷が行われていると判断した場合にはステップS110に進み、印刷が行われていないと判断した場合には印刷が開始されたか否かの監視を継続して行う。
【0035】
ステップS110で制御部50は、定着ローラ86に用紙Pが挟持されているか否かを判断する。例えば、制御部50は、印刷ジョブ開始時のタイミング信号や定着ローラ86の搬送方向Dの上流側に設けられた各種センサ(例えばレジストセンサ等)の検知タイミングを基準として、定着ローラ86までの搬送距離および用紙Pの搬送速度等から用紙Pの定着ローラ86への到達時間を予測し、この予測した到達時間によるタイマ制御により定着ローラ86に用紙Pが挟持されたか否かを判断することができる。また、定着ローラ86の搬入口にセンサを設け、このセンサにより用紙Pが検知されたか否かにより定着ローラ86に用紙Pが挟持されたか否かを判断しても良い。制御部50は、定着ローラ86に用紙Pが挟持されていると判断した場合にはステップS120に進み、定着ローラ86に用紙Pが挟持されていないと判断した場合には定着ローラ86に用紙Pが挟持されたか否かの監視を継続して行う。
【0036】
定着ローラ86が用紙Pに挟持されたと判断すると(図4(A))、ステップS120で制御部50は、モータ92を駆動して用紙分離ファン90を動作させる。このとき、制御部50は、用紙分離ファン90から噴出されるエアの風量が例えば最大となるようにモータ92を駆動制御して用紙分離ファン90を動作させる。これにより、定着ローラ86から排出された用紙Pの表面(トナー像側)にエアが噴出される。エアが噴出された用紙Pは、加熱ローラ82から分離されると共に、その噴出されたエアにより加圧ローラ84側にループする(図4(B))。用紙Pが加圧ローラ84側にループすると、用紙Pの裏面が用紙ループセンサ40に接触して用紙ループセンサ40がオンとなる。
【0037】
ステップS130で制御部50は、後段搬送ローラ24に用紙Pが挟持されたか否かを判断する。例えば、制御部50は、ステップS110で説明したように、タイミング信号や各種センサの検知タイミング、用紙Pの挟持タイミング等を基準として、用紙Pの搬送速度と定着ローラ86および後段搬送ローラ24間の距離等から用紙Pの後段搬送ローラ24への到達時間を予測し、この予測した到達時間によるタイマ制御により、用紙Pが後段搬送ローラ24に持挟されたか否かを判断する。また、後段搬送ローラ24の搬送方向Dの上流側近傍にセンサを設け、このセンサの用紙Pの検知結果に基づいて用紙Pが後段搬送ローラ24に挟持されたか否かを判断しても良い。制御部50は、後段搬送ローラ24に用紙Pが挟持されたと判断された場合にはステップS140に進み、後段搬送ローラ24に用紙Pが挟持されていないと判断された場合には用紙Pが後段搬送ローラ24に搬送されるまで継続して監視する。
【0038】
用紙Pが後段搬送ローラ24に挟持された場合(図4(C))、ステップS140で制御部50は、用紙ループセンサ40がオフになったか否かを判断する。つまり、予め設定された基準ループ量よりも用紙Pのループ量が小さくなったか否かを判断する。これは、後段搬送ローラ24は定着ローラ86よりも回転速度が速くなるように設定されているので、用紙Pが後段搬送ローラ24に挟持されると徐々にループ量は小さくなり、用紙Pが用紙ループセンサ40と非接触状態となるからである。制御部50は、用紙ループセンサ40がオフになったと判断した場合には、ステップS150に進む。
【0039】
用紙ループセンサ40がオフになったと判断すると(図4(D))、ステップS150で制御部50は、モータ92の駆動を停止することで用紙分離ファン90の動作を停止させる。これにより、用紙Pや加熱ローラ82へのエアの噴出が停止するので、エアの噴出による加熱ローラ82の冷却が防止される。このとき、用紙Pのループ量は、基準ループ量以下となっているので、用紙Pの加熱ローラ82への巻き付けのおそれもない。本発明に係る用紙分離制御では、このような一連の動作が繰り返し実行される。
【0040】
なお、用紙ループセンサ40として測距センサを用いた場合、制御部50は、用紙Pが後段搬送ローラ24に挟持されたとき、用紙Pのループ部位と測距センサとの間の距離情報を取得する。そして、制御部50は、この距離情報から用紙Pのループ量を算出すると共に記憶部54から基準ループ量を読み出し、算出(測定)したループ量が記憶部54から読み出した基準ループ量以下であるか否かを判断する。算出したループ量が基準ループ量以下である場合には、用紙Pのループ量が加熱ローラ82に用紙Pが巻き付かないループ量であると判断し、モータ92の駆動を停止して用紙分離ファン90の動作を停止させる。なお、距離情報をループ量に変換したが基準ループ量を用紙Pと測距センサとの間の距離で設定すれば、変換処理を省略することができる。
【0041】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、定着処理が行われた用紙Pの先端が後段搬送ローラ24に到達した後も、用紙Pのループ量が基準ループ量よりも大きい場合には用紙分離ファン90からエアを送風するので、用紙Pの加熱ローラ82への巻き付きを確実に防止できる。また、用紙Pのループ量が基準ループ量よりも小さくなった場合には用紙分離ファン90の動作を停止させるので、用紙Pの加熱ローラ82への巻き付きを防止しつつ、加熱ローラ82(定着ローラ86)の冷却を抑制することができる。よって、用紙P上のトナーやワックス等の予熱分布が変わることによる、画像ムラ等の発生を防止することができる。
【0042】
<2.第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、用紙分離ファン90のエアの風量を用紙Pのループ量に応じて可変制御している点において上記第1の実施の形態で説明した用紙分離ファン90の風量制御と相違している。なお、その他の画像形成装置100の構成は、上記第1の実施の形態と同様であるため、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0043】
[画像形成装置の構成例]
第2の実施の形態に係る画像形成装置100の構成例を図2を参照して説明する。図2に示すように、画像形成装置100は、定着装置80と後段搬送ローラ24との間の搬送経路の下方(加圧ローラ84)側に設けられた第1の用紙ループセンサ40Aおよび第2の用紙ループセンサ40B(点線)を備えている。
【0044】
第1の用紙ループセンサ40Aは、上記第1の実施の形態の用紙ループセンサ40と同様のものであり、例えばアクチュエータや測距センサ等から構成され、エアの噴出を停止させた場合でも用紙Pが加熱ローラ82に巻き付かないループ量となるときの用紙Pのループ部位に接触可能な位置に設置されている。本例では、この第1の用紙ループセンサ40Aの位置における用紙Pのループ量を第1の基準ループ量と呼ぶ。したがって、用紙Pのループ量が第1の基準ループ量以下となれば、用紙Pの加熱ローラ82への巻き付きは発生しないことを意味している。
【0045】
第2の用紙ループセンサ40Bは、上記第1の実施の形態と同様に、例えばアクチュエータや測距センサ等から構成され、第1の用紙ループセンサ40Aの位置よりも若干下方の位置に設置されている。言い換えれば、第1の用紙ループセンサ40Aの位置における用紙Pのループ量よりもループ量が若干大きくなる位置に設置されている。本例では、この第2の用紙ループセンサ40Bの位置における用紙Pのループ量を第2の基準ループ量と呼ぶ。用紙Pのループ量が第2の基準ループ量以下となれば、ループ量が小さくなってきているので、用紙Pの加熱ローラ82への巻き付き発生の可能性が低くなっていることを意味している。
【0046】
[画像形成装置の動作例]
次に、本発明に係る画像形成装置100の制御部50の動作の一例について説明する。なお、以下では、用紙ループセンサ40としてアクチュエータを用いた場合について説明する。図5は、定着装置80から排出される用紙Pの定着ローラ86への巻き付きを防止する際の制御部50の風量制御の一例を示すフローチャートである。図6は、用紙分離風量制御の動作例を説明するための図である。
【0047】
ステップS200で制御部50は、画像形成部60により用紙Pに印刷が行われているか否かを判断する。制御部50は、印刷ジョブが実行されているか否かを確認し、印刷が行われていると判断した場合にはステップS210に進み、印刷が行われていないと判断した場合には印刷が開始されたか否かの監視を継続する。
【0048】
ステップS210で制御部50は、定着ローラ86に用紙Pが挟持されたか否かを判断する。定着ローラ86に用紙Pが挟持されたか否か判断は、上記第1の実施の形態で説明した判断手法と同様に、タイマ制御やセンサの検知結果等により判断できる。制御部50は、定着ローラ86に用紙Pが挟持されたと判断した場合にはステップS220に進み、定着ローラ86に用紙Pが挟持されていないと判断した場合には定着ローラ86に用紙Pが挟持されたか否かの監視を継続する。
【0049】
定着ローラ86が用紙Pに挟持されたと判断すると(図6(A))、ステップS220で制御部50は、モータ92を駆動して用紙分離ファン90を動作させる。このとき、制御部50は、用紙分離ファン90から噴出されるエアの風量が最大となるようにモータ92を駆動制御して用紙分離ファン90を動作させる。これにより、定着ローラ86から排出された用紙Pの表面(トナー像側)にエアが噴出される。エアが噴出された用紙Pは、加熱ローラ82から分離されると共に、エア噴出により加圧ローラ84側にループする(図6(B))。用紙Pが加圧ローラ84側にループすると、用紙Pの裏面が第1および第2の用紙ループセンサ40A,40Bにそれぞれ接触して第1および第2の用紙ループセンサ40A,40Bがオンとなる。
【0050】
ステップS230で制御部50は、後段搬送ローラ24に用紙Pが挟持されたか否かを判断する。後段搬送ローラ24に用紙Pが挟持されたか否かの判断は、上記第1の実施の形態で説明した判断手法と同様に、タイマ制御やセンサの検知結果等により判断できる。制御部50は、後段搬送ローラ24に用紙Pが挟持されたと判断された場合にはステップS240に進み(図6(C))、後段搬送ローラ24に用紙Pが挟持されていないと判断された場合には用紙Pが後段搬送ローラ24に搬送されるまで継続して監視を行う。
【0051】
ステップS240で制御部50は、第2の用紙ループセンサ40Bがオフになったか否かを判断する。つまり、予め設定された第2の基準ループ量よりも用紙Pのループ量が小さくなったか否かを判断する。これは、後段搬送ローラ24は定着ローラ86よりも回転速度が速くなるように設定されているので、用紙Pが後段搬送ローラ24に挟持されると徐々にループ量は小さくなり、用紙Pが第2の用紙ループセンサ40Bとは非接触となるからである。制御部50は、用紙Pのループ量が第2の基準ループ量よりも小さくなり、第2の用紙ループセンサ40Bがオフになったと判断した場合にはステップS250に進む。
【0052】
第2の用紙ループセンサ40Bがオフになった場合、ステップS250で制御部50は、用紙分離ファン90から噴出されるエアの風量が最大風量(S220)よりも小さくなるようにモータ92の駆動を可変制御する(図6(D))。これは、用紙Pのループ量が第2の基準ループ量よりも小さくなると、用紙Pが加熱ローラ82に巻き付く可能性が低くなるからである。また、用紙分離ファン90の風量を小さくすることで、加熱ローラ82の冷却も抑えることができるからである。なお、風量は、用紙サイズや斤量等に応じて最適な風量に設定することが好ましい。
【0053】
ステップS260で制御部50は、第1の用紙ループセンサ40Aがオフになったか否かを判断する。つまり、予め設定された第1の基準ループ量よりも用紙Pのループ量が小さくなったか否かを判断する。これは、上述したように、用紙Pのループ量は、後段搬送ローラ24の搬送制御により徐々に小さくなっていくからである。制御部50は、用紙Pのループ量が第1の基準ループ量よりも小さくなり、第1の用紙ループセンサ40Aがオフになったと判断した場合にはステップS270に進む。一方、第1の用紙ループセンサ40Aがオフになっていないと判断した場合には、まだ用紙Pの加熱ローラ82への巻き付きが発生する可能性があるものと判断して、エア風量を最大の状態のままとして第1の用紙ループセンサ40Aの出力を継続して監視する。
【0054】
ステップS270で制御部50は、第1の用紙ループセンサ40Aがオフになったと判断すると(図6(E))、モータ92の駆動を停止することで用紙分離ファン90の動作を停止させる。これにより、用紙Pや加熱ローラ82へのエアの噴出が停止するので(図6(E)および図6(F))、エアの噴出による加熱ローラ82の冷却が防止される。このとき、用紙Pのループ量は、第1の基準ループ量以下なので、用紙Pの加熱ローラ82への巻き付けのおそれもない。用紙分離風量制御では、このような一連の動作が繰り返し実行される。
【0055】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、用紙Pのループ量が巻き付きの可能性が低くなる第2の基準ループ量以下になった場合に、用紙分離ファン90からの風量を小さく制御するので、用紙Pの巻き付きを防止しつつ、加熱ローラ82の冷却を抑制することができる。また、用紙Pのループ量が用紙Pの巻き付きが発生しない第1の基準ループ量以下となった場合には、用紙分離ファン90の動作を停止するので、用紙Pの先端が後段搬送ローラ24に挟持された後においても用紙Pの加熱ローラ82への巻き付きを防止することができる。
【0056】
なお、用紙ループセンサとして測距センサを用いた場合には、1個の測距センサで用紙ループセンサを構成することができる。このようにセンサを構成する場合、第1の基準ループ量および第2の基準ループ量を予め記憶部54に記憶しておく。そして、用紙分離制御時において制御部50は、測距センサで検知された用紙Pのループ量が第2の基準ループ量以下でかつ第1の基準ループ量超の場合には、用紙分離ファン90からのエアの風量を「大」から「小」に切り替える。また、測距センサで検知された用紙Pのループ量が第1の基準ループ量以下の場合には、用紙分離ファン90の動作を停止させてエアの噴出を停止させる。
【0057】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、上記実施の形態では、送風部として用紙分離ファン90を用いたが、これに限定されることはなく、エアを送風することが可能な送風手段であれば適宜採用することができ、具体的には、エアポンプを用いて圧縮空気を送風させることもできる。
【符号の説明】
【0058】
24 後段搬送ローラ(搬送ローラ)
40 用紙ループセンサ(検知部)
40A 第1の用紙ループセンサ(検知部)
40B 第2の用紙ループセンサ(検知部)
50 制御部
80 定着装置(定着部)
86 定着ローラ
90 用紙分離ファン(送風部)
100 画像形成装置
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に転写されたトナー像を前記用紙に定着させる定着ローラを有する定着部と、
前記定着部から排出された前記用紙に所定の風量でエアを噴出することで前記定着ローラから前記用紙を分離させる送風部と、
前記定着部の用紙搬送方向の下流側に設けられた搬送ローラに前記用紙が到達した後、前記定着ローラと前記搬送ローラとの間における前記用紙のループ量を検知する検知部と、
前記検知部により検知された前記用紙のループ量が予め設定された基準ループ量よりも小さい場合に前記送風部の駆動を停止させる制御部と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記基準ループ量を第1の基準ループ量とし、当該第1の基準ループ量よりも前記用紙のループ量が大きいループ量を第2の基準ループ量としたとき、
前記用紙のループ量が、前記第2の基準ループ量より小さい場合に、前記所定の風量よりも小さい風量でエアが噴出されるように前記送風部を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記定着ローラに前記用紙が挟持されたとき、前記所定の風量にてエアが噴出されるように前記送風部を制御する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113884(P2013−113884A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257408(P2011−257408)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】