説明

画像形成装置

【課題】現像容器が傾斜することによって現像剤の排出量の変動を抑制し、現像剤溢れの発生を抑える現像装置を提供する。
【解決手段】現像装置は、現像剤を収容する現像容器41と、現像容器41内の現像剤を攪拌、搬送する攪拌搬送部材42,43,48bと、を有し、現像容器41は、外に排出する現像剤排出口48aを有する画像形成装置において、現像容器41の傾きを検知する傾斜角度検知センサ600と、現像に用いられるトナーの消費量を算出するトナー消費量算出手段と、を有し、傾斜角度検知センサ600により、現像剤排出口48aが下になる方向に傾いていると判断した場合には、ホッパーから現像剤を補給し、傾斜角度検知センサ600により、現像剤排出口48aが上になる方向に傾いていると判断した場合には、スクリュー42、43、48bの回転速度を上げることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、FAX等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置では、現像装置への現像剤の補給を行うことにより帯電性能の劣化を抑制出来るようにした装置が提案されている。この種の装置として、特許文献1のようなACR構成が提案されている。この構成では、現像装置内に新しい現像剤の補給装置を設け、この補給装置による新しい現像剤の補給よって過剰になった現像装置内の現像剤を、現像装置の壁面に設けられた現像剤排出口よりオーバーフローして排出させて回収する。
【0003】
このような装置では、新しい現像剤の補給と、現像剤の排出とが逐次繰り返されることによって、現像装置内の劣化現像剤は、新たに供給されるトナー及びキャリアに置換される。これにより現像装置内の現像剤の現像特性、帯電特性を維持して、画質の低下を抑制できる。また、現像剤の交換頻度を少なくすることができる。
【0004】
また、二成分現像剤を用いたACR構成の現像装置において、現像容器が傾斜して現像剤が過剰に排出されて現像剤が所定の量よりも少なくなると、長手濃度ムラやスクリューピッチムラ等の画像不良が発生する。一方、現像容器が傾斜して現像剤が排出されにくくなり、現像剤が所定の量よりも多くなると、スクリューロック、現像剤溢れが発生する。このような現像容器が傾斜することによって現像容器内の現像剤の排出量が変動することを防止するために、特許文献2、3のような構成が提案されている。
【0005】
特許文献2では、排出口近傍の溜まり部内の現像剤搬送部材の単位時間辺りの搬送量を他の部分より小さくしている。これにより、現像容器が傾いていても現像剤が過剰に排出されることを防止している。
【0006】
特許文献3では、並設された複数の短冊状の電極を設け、キャリアを選択的に搬送する進行波電界を発生して、キャリアを排出口へと搬送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−100471号公報
【特許文献2】特開2009−192701号公報
【特許文献3】特開2007−322970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2では、現像容器とスクリューのクリアランス部から流入する現像剤を規制できず、現像剤の過剰な排出を抑えることができないことがあった。また、現像剤が所定の量よりも多くなることによるスクリューロック、現像剤溢れを抑制できない。
【0009】
特許文献3では、進行波電界を発生させるための追加部材によるコストアップ、装置の大型化という課題がある。
【0010】
そこで本発明は、装置が大型化することなく、低コストで、現像容器が傾斜することによって現像容器内の現像剤の排出量の変動を抑制し、長手濃度ムラやスクリューピッチムラ等の画像不良や、スクリューロックの発生を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、静電潜像を担持する像担持体と、トナーとキャリアとを備える現像剤を用いて前記像担持体に担持された静電潜像を現像する現像手段と、を有し、前記現像手段は、現像剤を収容する現像容器と、前記現像容器内の現像剤を攪拌、搬送する攪拌搬送部材と、を有し、前記現像容器は、前記現像容器内の現像剤を前記現像容器外に排出する現像剤排出口を有する画像形成装置において、前記現像容器の傾きを検知する傾斜検知手段と、前記現像手段による現像に用いられるトナーの消費量を算出するトナー消費量算出手段と、を有し、前記傾斜検知手段により、前記現像剤排出口が下になる方向に傾いていると判断した場合には、補給容器から現像剤を補給し、前記傾斜検知手段により、前記現像剤排出口が上になる方向に傾いていると判断した場合には、前記攪拌搬送部材の回転速度を上げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置が大型化することなく、低コストで、現像容器が傾斜することによって現像容器内の現像剤の排出量の変動を抑制し、長手濃度ムラやスクリューピッチムラ等の画像不良や、スクリューロック、現像剤溢れの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の画像形成装置の構成図である。
【図2】(a)本実施形態に係る現像装置の長手方向における断面図である。(b)本実施形態に係る現像装置の短手方向における断面図である。
【図3】(a)現像室よりも攪拌室が相対的に低くなる方向に傾いた状態における現像装置の断面図である。(b)現像剤排出口側の開口部が他の開口部相対的に低くなる方向に傾いた状態における現像装置の断面図である。
【図4】(a)現像装置が図3(b)のように傾いた際の傾斜検知手段によって検知された傾斜角度と、無補給で現像装置を駆動させた時の現像装置内の現像剤量の推移を示す図である。(b)現像剤が減少する方向の傾斜角度に対する各画像比率での現像装置内から排出される現像剤量の推移を示す図である。
【図5】(a)現像剤が減少する方向の傾斜角度と必要トナー消費量の関係を示す図である。(b)本実施形態に係る画像形成装置の制御部のブロック図である。
【図6】本実施形態におけるトナー吐き出し制御のフローチャートである。
【図7】(a)現像室よりも攪拌室が相対的に高くなる方向に傾いた状態における現像装置の断面図である。(b)現像剤排出口側の開口部が他の開口部相対的に高くなる方向に傾いた状態における現像装置の断面図である。
【図8】(a)現像装置が図7(b)のように傾いた際の傾斜角度に対する各画像比率での現像装置内から排出される現像剤の排出量の推移を示す図である。(b)は本実施形態における現像剤が増加する方向の傾斜角度と搬送スクリューの必要回転速度の関係を示す図である。
【図9】本実施形態における厚紙などを通紙する際に生産性が低下した時の現像剤が増加する方向の傾斜角度と搬送スクリューの必要回転速度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る画像形成装置の実施形態について、図を用いて説明する。図1は本実施形態の画像形成装置の構成図である。図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成する画像形成部PY、PM、PC、PBKを有している。
【0015】
画像形成部PY〜PBKにおいて、感光体ドラム(像担持体)1Y〜1BKは、帯電器2Y〜2Bkにより帯電され、露光装置3により画像情報に応じたレーザー光を照射され、静電潜像が形成される。感光体ドラム1Y〜1BKに形成された静電潜像は、現像装置(現像手段)4Y〜4BKにより各色のトナーを用いてトナー像として現像される。
【0016】
現像されたトナー像は、1次転写部材52Y〜52Bkにより中間転写ベルト51に重ねて1次転写される。1次転写後に感光体ドラム1Y〜1BKに残った転写残トナーは、クリーニング装置7Y〜7BKにより除去される。クリーニングされた感光体ドラム1Y〜1BKは、除電装置8Y〜8BKにより除電されて次の画像形成に備える。
【0017】
一方、カセット9に収容されたシートSは、ピックアップローラ、搬送ローラ、レジストローラにより、2次転写ローラ53と中間転写ベルト51とのニップ部(2次転写部)に搬送され、トナー像を2次転写される。トナー像を2次転写されたシートSは、定着装置6によって加熱、加圧されてトナー像を定着され、排出トレイ10へ排出される。2次転写後に中間転写ベルト51に残留したトナー等の付着物は、中間転写ベルトクリーナ54によって除去される。
【0018】
(現像装置4)
図2(a)は本実施形態に係る現像装置4の長手方向における断面図である。図2(b)は本実施形態に係る現像装置4の短手方向における断面図である。
【0019】
図2(a)、図2(b)に示すように、現像装置4は、現像容器41を有し、現像容器内に、現像スリーブ(現像剤担持手段)44、規制ブレード46を有している。現像容器41の感光体ドラム1に対向した現像領域に相当する位置には開口部があり、この開口部に現像スリーブ44が感光体ドラム1方向に一部露出するように回転可能に配設されている。
【0020】
現像容器41の内部は、その略中央部が紙面に垂直方向に延在する隔壁41cによって現像室41aと攪拌室41bに水平に区画されている。トナーとキャリアを含む2成分現像剤は、現像室41a及び攪拌室41bに収容されている。
【0021】
現像室41aの底部には、第1の搬送スクリュー(第1の攪拌搬送部材)42が現像スリーブ44の軸方向に沿ってほぼ平行に配置されている。第1の搬送スクリュー42は、図2(b)中の反時計回り方向(矢印方向)に回転して現像室41a内の現像剤を軸線方向に沿って一方向に搬送する。
【0022】
攪拌室41bの底部には、第2の搬送スクリュー(第2の攪拌搬送部材)43が第1の搬送スクリュー42とほぼ平行に配置されている。第2の搬送スクリュー43は、第1の搬送スクリュー42と反対方向(図2(b)中の時計回り)に回転して攪拌室41b内の現像剤を第1の搬送スクリュー42と反対方向に搬送する。このように、スクリュー42、43の回転による搬送によって、現像剤が隔壁41cの両端部の開口部(連通部)41d、41eを通じて現像室41aと攪拌室41bとの間で循環される。
【0023】
また、ホッパー(補給容器)20Y〜20BK(図1参照)から攪拌室41bに設けられた補給口に、トナーとキャリアが混合された補給現像剤を供給している。一方、攪拌室41bに設けられた現像剤排出口48aから現像容器外へ余剰現像剤が排出されている。排出された余剰現像剤は、余剰現像剤格納室48内の現像剤搬送部材48bによって、回収ボックス(不図示)に搬送される。
【0024】
本実施形態では、現像スリーブ44の直径は20mm、感光体ドラム1の直径は80mm、現像スリーブ44と感光体ドラム1との最近接領域を約300μmの距離とする。これにより、現像領域に搬送した現像剤を感光体ドラム1と接触させた状態で、現像が行なえるように設定されている。
【0025】
現像スリーブ44はアルミニウムやステンレスのような非磁性材料で構成され、その内部には磁界手段であるマグネットローラ45が非回転状態で設置されている。マグネットローラ45は、磁極S1、S2、N1、N2、N3を有している。
【0026】
現像スリーブ44は、現像時に図2(b)中の時計方向に回転し、規制ブレード46による磁気ブラシの穂切りによって層厚を規制された2成分現像剤を担持する。そして、現像剤を感光体ドラム1と対向した現像領域に搬送し、感光体ドラム1上に形成された静電潜像に現像剤を供給して潜像を現像する。
【0027】
(傾斜角度検知センサ600)
図2(b)に示すように、現像装置4は、傾斜角度検知センサ(傾斜検知手段)600を有している。センサ600は、現像装置4(現像容器41)の傾斜角度を検知する。センサ600としては、特定の軸方向の水平に対する傾斜角度を検知したり、360°全方向において水平に対する傾斜角度を検知して、検知した傾斜角度に係る電気信号を出力する種々の方式、形態のセンサを用いることができる。本実施形態では、センサ600として、JEWELL社製LCF2000の傾き検知センサを用いた。
【0028】
図5(b)に示すように、センサ600は、現像装置4のCPU81に接続されている。そして、センサ600は、画像形成装置100の電源オンの間は常に稼動している。これによって、現像装置4の傾斜角度を常時検知している。
【0029】
(トナー消費量算出手段)
図5(b)に示すように、画像形成装置100は、リーダー部201、トナー消費量算出手段(画像信号処理回路202、ビデオカウンタ203)を有している。トナー消費量算出手段は、以下の動作により、現像装置4による現像に用いられるトナーの消費量を算出する。
【0030】
被複写原稿Dは、リーダー部201よって投影される。リーダー部201は、原稿像を多数の画素部に分解し、各画素の濃度に対応した光電変換信号を出力する。リーダー部201からの出力は、画像信号処理回路202に伝達される。
【0031】
画像信号処理回路202は、画素ごとに、その画素の濃度に対応した出力レベルを有する画素画像信号を形成する。このとき、画像信号処理回路202の出力信号のレベルが画素ごとにカウントされ、ビデオカウンタ203で積算される。画素毎の出力信号のレベルが積算されたビデオカウント値Vは、原稿Dの画像を1枚形成するために現像装置4で消費されるトナー量に対応している。また、ビデオカウント値Vは、画像形成領域の全面に最大濃度レベルの画像を形成した場合のトナー消費量(既知)に対する、実際の画像形成におけるトナー消費量の比率(%)、即ち、画像比率(%)に対応する。
【0032】
ビデオカウント値Vは、1枚の画像形成を行うごとに積算されてビデオカウント積算値V(n)が計算される。そして、この積算信号、即ち、ビデオカウント積算値V(n)は、制御手段としてのCPU81に入力されると共に、記憶手段としてのRAM55に記憶される。ビデオカウント積算値V(n)は、各画像形成部PY〜PKごとに求められ、RAM55に記憶される。画像形成部PY〜PKに関するビデオカウント積算値を、それぞれV1(n)、V2(n)、V3(n)、V4(n)とする。このビデオカウント積算値V1(n)〜V4(n)は、上記画像比率を、1枚の画像形成を行うごとに積算した値(画像比率積算値:%)に対応する。
【0033】
(現像剤が減少する方向に現像容器が傾いた場合)
ここで、現像容器41内の現像剤が減少する方向(現像剤排出口48aが下になる方向)に現像容器41が傾いた時の現像剤の流れについて説明する。図3(a)は現像室41aよりも攪拌室41bが相対的に低くなる方向に傾いた状態における現像装置4の断面図である。図3(b)は開口部41eよりも開口部41dが相対的に低くなる方向に傾いた状態における現像装置4の断面図である。
【0034】
図3(a)に示すように、現像室41aよりも攪拌室41bが相対的に低くなる方向に現像容器41が傾くと、現像剤排出口48aが配置されている壁面側に現像剤が偏る。このため、現像容器41が傾いていない場合に比べて、現像剤が現像剤排出口48aから多く排出されてしまう。
【0035】
図3(b)に示すように、開口部41eよりも開口部41dが相対的に低くなる方向に現像容器41が傾くと、現像剤排出口48aが配置されている側、即ち開口部41dの方向に現像剤が偏る。このため、現像容器41が傾いていない場合に比べて、現像剤が現像剤排出口48aから多く排出されてしまう。
【0036】
よって、図3(a)、図3(b)のように現像装置4が傾くと、現像剤が現像剤排出口48aから多く排出され、現像装置内の現像剤が減少してしまう。そして、現像剤が減少しすぎてしまうと、長手濃度ムラやスクリューピッチムラなどの画像不良が発生してしまう。
【0037】
そこで、本実施形態では、センサ600により現像装置4の傾きを検知し、その検知結果に応じてホッパー20Y〜20BKから現像剤の補給を行っている。しかし、補給する現像剤のトナー濃度(トナーの含有率)は、現像容器41内の現像剤(排出された現像剤)のトナー濃度よりも高い。例えば、現像容器41内の現像剤のトナーとキャリアの比が10:90であり、補給される現像剤のトナーとキャリアの比が90:10となっている。なお、本発明はかかる比率に限定されるものではなく、ホッパー20Y〜20BK内の現像剤中のキャリアの含有率がトナーの含有率よりも少なく設定されていればよい。
【0038】
このため、単純に現像剤排出口48aから排出された分だけ現像剤を補給した場合には、現像容器41内のトナー濃度が高くなる。これにより、かぶりやトナー飛散の悪化、長手濃度ムラなどの画像不良が発生する。したがって、現像容器41内のトナー濃度を一定に保つために、所定のトナー量(必要トナー消費量)を消費する必要がある。
【0039】
図4(a)は現像装置4が図3(b)のように傾いた際のセンサ600によって検知された傾斜角度と、無補給で現像装置4を駆動させた時の現像装置内の現像剤量の推移を示す図である。図4(b)は現像剤が減少する方向の傾斜角度に対する各画像比率での現像装置内から排出される現像剤量の推移を示す図である。図5(a)は現像剤が減少する方向の傾斜角度と必要トナー消費量の関係を示す図である。
【0040】
図5(a)に示すような情報がテーブルデータとして、CPU81内に格納されている。CPU81は、センサ600によって検知された傾斜角度に応じて、必要トナー消費量に達するようにトナーを消費させ、その消費量に応じて現像剤を補給するように画像形成装置100を制御している。
【0041】
これによって、現像装置内の現像剤量を長手濃度ムラやスクリューピッチムラなどの画像不良が発生する量以下にならないようにしている。また、トナー濃度が高くなって、かぶりやトナー飛散の悪化、長手濃度ムラなどの画像不良が発生することも抑制できる。
【0042】
出力物の画像比率(トナー消費量算出手段の算出結果)が検知された傾斜角度に応じて算出された値よりも大きい場合には、それ以上トナーを消費する必要はない。一方、出力物の画像比率が傾斜角度に応じて算出された値よりも小さい場合には、画像形成部PY〜PKのそれぞれにおいて、画像形成動作時以外の所定のタイミングで、現像装置4から感光体ドラム1へ積極的にトナーを吐き出すトナー吐き出し動作を行う。
【0043】
本実施形態では、現像装置4から吐き出されたトナーは、中間転写ベルト51上に1次転写される。一方、2次転写ローラ53には2次転写バイアスと逆極性の電圧(負極性)が印加されることで、中間転写ベルト51上のトナーは2次転写ローラ53側には2次転写されずに、2次転写部N2を通過する。その後、中間転写ベルト51上の吐き出されたトナーは、中間転写ベルトクリーナ54により回収される。
【0044】
また、吐き出しトナー量は、トナー吐き出し動作において像担持体に形成するトナー像の濃度を上げる、或いはそのトナー像の形成時間を長くする(トナー像の面積を大きくする)ことなどによって、多くすることができる。
【0045】
画像形成時以外の所定のタイミングは、前回転時、後回転時、或いは、紙間に設定されるか、それだけではトナー消費量が十分でない場合にはダウンタイムを設けてトナー吐き出し動作を行う。前回転時は、中間転写ベルト51に転写して出力する画像を形成する画像形成動作の前に、感光体ドラム1を含む画像形成要素を駆動する準備動作の期間である。後回転時は、中間転写ベルト51に転写して出力する画像を形成する画像形成動作の後に、感光体ドラム1を含む画像形成要素を駆動する準備動作の期間である。紙間は、複数の中間転写ベルト51に対する連続した画像形成動作中における、連続する中間転写ベルト51間に相当する期間である。
【0046】
図6は本実施形態におけるトナー吐き出し制御のフローチャートである。図6に示すように、画像形成装置100の動作が開始されると、前回のトナー吐き出しタイミングからの画像形成枚数がカウントされる(S1)。本実施形態では、画像形成枚数は、カウンタとして機能するCPU81でカウントされる。そして、CPU81は、このカウント値が所定枚数nになった時に(S2)、以下のように、各ビデオカウント積算値V1(n)〜V4(n)に基づいて、各画像形成部PY〜PKにおいてトナー吐き出し動作を実行するか否かを判断する。
【0047】
CPU81は、各画像形成部PY〜PK毎に記憶されたビデオカウント積算値V1(n)〜V4(n)と、画像形成枚数nとに基づいて、画像1枚当りに換算した平均画像比率(%)(トナー消費量算出手段の算出結果)を算出する。ここで、上述のように、ビデオカウント積算値V1(n)〜V4(n)は、所定枚数nの画像形成における画像比率積算値(%)に対応する。ここでは、便宜的に、各画像形成部PY〜PKについての平均画像比率(%)を、それぞれV1(n)/n、V2(n)/n、V3(n)/n、V4(n)/nとして表す。
【0048】
次いで、CPU81は、各画像形成部PY〜PKに関し、それぞれの平均画像比率V1(n)/n〜V4(n)/nと、センサ600の検知結果と、から算出された所定量の必要トナー吐出し量値α1、α2、α3、α4(%)とを比較する。そして、各平均画像比率V1(n)/n〜V4(n)/nが、必要トナー吐出し量値α1〜α4(%)より小さいときに、トナー吐き出し動作を実行することを決定する(S3〜S6)。
【0049】
トナー吐き出し動作を実行すると判断した際には、CPU81は、各画像形成部PY〜PKについて、平均画像比率が、対応する必要トナー吐出し量値α1〜α4と同等になるように、現像装置4から感光体ドラム1に吐き出すトナー量を算出する(S7)。そして、CPU81は、算出された吐き出しトナー量に応じて、トナー吐き出し動作を実行させる(S8)。
【0050】
本実施形態では、トナー吐き出し動作においては、先ず、通常の画像形成動作と同様に帯電ローラ2によって感光体ドラム1を帯電させる。その後、各画像形成部PY〜PKについて、平均画像比率が必要トナー吐出し量値α1〜α4と同等となるように、露光装置3により感光体ドラム1上に静電像を形成する。そして、この静電像を現像装置4で現像することにより、現像装置4から感光体ドラム1上にトナーを吐き出す。
【0051】
ここで、本実施形態では、平均画像比率を算出するための所定枚数nは200枚である。また、本実施形態では、必要トナー吐出し量値α1〜α4は、それぞれ画像形成部PY〜PKにおけるトナー吐き出し動作を実行するか否かを決定するための平均画像比率の閾値と同じである。
【0052】
トナーを吐き出すことで現像装置4内のトナー濃度が低下するが、吐き出した量に相当するトナーが、トナーホッパー20から補給される(S9)。上述のようなトナー吐き出し動作が終了すると、カウンタはリセット(S10)され、通常の画像形成動作が行われる(S11)。
【0053】
なお、本実施形態における上述のトナー吐き出し動作は、紙間において行うものとした。しかし、トナー吐き出し動作は、非画像形成時に行なう構成であればよく、画像形成動作の前回転や後回転時、またはダウンタイムを設けて行っても構わない。また、このようなトナー吐き出し動作は、全ての画像形成部PY〜PKで同時に行う必要は無く、各画像形成部PY〜PKで異なるタイミングで行っても構わない。
【0054】
以上より、現像剤が減少する方向に現像装置4が傾いた場合において、長手濃度ムラやスクリューピッチムラなどの画像不良が発生することを抑制できる。
【0055】
なお、現像装置の構成に関して、本実施形態は、現像室41aと攪拌室41bは水平に配置されるが、現像室41aと攪拌室41bが上下に配置された現像装置、或いは、その他の形態の現像装置においても、本発明は適用可能である。
【0056】
(現像剤が増加する方向に現像容器が傾いた場合)
ここで、現像容器41内の現像剤が減少する方向(現像剤排出口48aが上になる方向)に現像容器41が傾いた時の現像剤の流れについて説明する。図7(a)は現像室41aよりも攪拌室41bが相対的に高くなる方向に傾いた状態における現像装置4の断面図である。図7(b)は開口部41eよりも開口部41dが相対的に高くなる方向に傾いた状態における現像装置4の断面図である。
【0057】
図7(a)に示すように、現像室41aよりも攪拌室41bが相対的に高くなる方向に現像容器41が傾くと、攪拌室41b内の現像剤は、現像剤排出口48aが配置されている壁面の反対側の隔壁41c側に偏る。このため、現像容器41が傾いていない場合に比べて、現像剤排出口48aから排出される現像剤が少なくなる。
【0058】
図7(b)に示すように、開口部41eよりも開口部41dが相対的に高くなる方向に現像容器41が傾くと、現像剤排出口48aが配置されている側の反対側、即ち開口部41eの方向に現像剤が偏る。このため、現像容器41が傾いていない場合に比べて、現像剤排出口48aから排出される現像剤が少なくなる。
【0059】
よって、図7(a)、図7(b)のように現像装置4が傾くと、現像剤排出口48aから排出される現像剤が少なくなり、現像装置内の現像剤が増加してしまう。そして、現像剤が増加しすぎてしまうと、スクリューロックや剤溢れなどが発生してしまう。
【0060】
そこで、本実施形態では、現像装置4の傾きを検知し、その検知結果に応じて、現像剤を減少させるためにスクリュー42、43の回転速度を変更している。すなわち、現像剤が増加する方向に傾斜している場合には、スクリュー42、43の回転速度を上げて、現像剤の現像剤排出口48aを通過する量(排出量)を増やして、現像容器41内の現像剤を減らしている。
【0061】
図8(a)は現像装置4が図7(b)のように傾いた際の傾斜角度に対する各画像比率での現像装置内から排出される現像剤の排出量の推移を示す図である。図8(b)は本実施形態における現像剤が増加する方向の傾斜角度とスクリュー42、43の必要回転速度の関係を示す図である。
【0062】
図8(b)に示すような情報がテーブルデータとして、CPU81内に格納されている。CPU81は、センサ600によって検知された傾斜角度に応じて、現像装置内の現像剤の量がある一定以上にならないようにするため、スクリュー42、43の回転速度を必要回転速度に変更するように画像形成装置100を制御している。これにより、スクリューロックや現像剤溢れの発生を抑制している。
【0063】
本実施形態においては、傾斜角度が0°の時のスクリュー42、43の回転速度を250mm/secとなっている。そして、現像剤が増加する方向に傾斜した場合に、傾斜角度に応じてスクリュー42、43の回転速度を増加させ、現像装置4内の現像剤の現像剤排出口48aを通過する量(排出量)を調整している。
【0064】
図9は本実施形態における厚紙などを通紙する際に生産性が低下した時の現像剤が増加する方向の傾斜角度とスクリュー42、43の必要回転速度の関係を示す図である。本実施形態の画像形成装置100においては、坪量が大きいシートSや、光沢のあるコート紙と呼ばれるシートSなどの通紙を行う際、定着性を確保するために、生産性を落としている。生産性を落とすということは、画像形成装置全体の速度を落とすことであり、現像装置4も全体的に速度を落とすこととなる。即ち、現像装置4内の現像スリーブ44、スクリュー42、43の速度も低下する。
【0065】
このような場合を想定した図9に示す、スクリュー42、43の必要回転速度と傾斜角度の関係を示す情報を、テーブルデータとして、CPU81に格納させておく。これにより、厚紙等を通紙する場合でも、スクリューロックや現像剤溢れの発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0066】
D …被複写原稿
P …画像形成部
S …シート
1 …感光体ドラム(像担持体)
3 …露光装置
4 …現像装置(現像手段)
20 …ホッパー(補給容器)
41 …現像容器
41a …現像室
41b …攪拌室
41d、41e …開口部
42 …第1の搬送スクリュー(攪拌搬送部材)
43 …第2の搬送スクリュー(攪拌搬送部材)
44 …現像スリーブ
45 …マグネットローラ
46 …規制ブレード
48 …余剰現像剤格納室
48a …現像剤排出口
48b …現像剤搬送部材
51 …中間転写ベルト
55 …RAM
81 …CPU
100 …画像形成装置
201 …リーダー部
202 …画像信号処理回路(トナー消費量算出手段)
203 …ビデオカウンタ(トナー消費量算出手段)
600 …傾斜角度検知センサ(傾斜検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を担持する像担持体と、
トナーとキャリアとを備える現像剤を用いて前記像担持体に担持された静電潜像を現像する現像手段と、を有し、
前記現像手段は、現像剤を収容する現像容器と、前記現像容器内の現像剤を攪拌、搬送する攪拌搬送部材と、を有し、
前記現像容器は、前記現像容器内の現像剤を前記現像容器外に排出する現像剤排出口を有する画像形成装置において、
前記現像容器の傾きを検知する傾斜検知手段と、
前記現像手段による現像に用いられるトナーの消費量を算出するトナー消費量算出手段と、を有し、
前記傾斜検知手段により、前記現像剤排出口が下になる方向に傾いていると判断した場合には、補給容器から現像剤を補給し、
前記傾斜検知手段により、前記現像剤排出口が上になる方向に傾いていると判断した場合には、前記攪拌搬送部材の回転速度を上げることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記傾斜検知手段により、前記現像剤排出口が下になる方向に傾いていると判断した場合には、前記傾斜検知手段の検知結果と、前記トナー消費量算出手段の算出結果とに基づいて、非画像形成時に所定量のトナーを消費し、前記補給容器から消費したトナーに合わせて現像剤を補給して前記現像容器内の現像剤の量を調整することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記補給容器内の現像剤中のキャリアの含有率はトナーの含有率よりも少なく設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−20014(P2013−20014A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152082(P2011−152082)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】