説明

画像形成装置

【課題】ポリゴンミラーの回転位相差を基準回転位相差に一致させる調整に失敗する虞を低減する。
【解決手段】画像形成装置に、各画像形成ユニットに備えられる回転多面鏡のうち基準とされた回転多面鏡の回転位相に対する他の回転多面鏡の回転位相差をBD信号を用いて検出する位相差検出部と、位相差検出部により検出された回転位相差が予め定められた基準回転位相差と一致しない場合、当該一致しないと判断された回転位相差の回転多面鏡を回転駆動させる駆動部の駆動周波数を予め定められた補正量分変更し、当該変更された駆動周波数の駆動クロック信号によって所定のクロック数分当該駆動部を駆動させる位相補正処理を行う補正制御部と、位相補正処理後、回転位相差が基準回転位相差と一致しない場合は、予め定められた補正量を予め定められた規定量減少して、再び位相補正処理を行わせる補正量調整部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、感光体ドラムの表面にレーザーを照射して露光を行うレーザー照射技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、感光体ドラムの表面にトナー画像を形成する画像形成ユニットが複数の色毎に備えられ、各画像形成ユニットが記録紙を搬送する搬送ベルト上に記録紙の搬送方向に沿って配設され、その搬送方向に搬送される記録紙に対して、各色のトナー画像を多重転写する、所謂タンデム方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
この種の画像形成装置においては、各画像形成ユニットが、レーザー照射部から出力されるレーザー光を回転駆動される回転多面鏡の各反射面でそれぞれ反射させることによって、感光体ドラムの表面を露光させ、感光体ドラム表面に静電潜像を形成する構成を有している。
【0004】
そして、各画像形成ユニットによって感光体ドラムに形成された各色のトナー画像を記録紙上で位置ずれを起さないようにして多重転写させるために、感光体ドラムの表面に形成する潜像の書き出し位置を調整すべく、所定の画像形成ユニットにおける回転多面鏡と他の画像形成ユニットにおける回転多面鏡とが所定の位相差をもって回転するように、他の回転多面鏡の動作を制御する技術が知られている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、基準クロック発生器と、複数の回転多面鏡で偏向されたレーザービームを受光して発生する複数のビーム検出信号の時間的ずれ量を基準クロックをカウントして測定する位相差測定回路と、測定した複数のカウント値を記憶する複数のレジスタと、記憶されたカウント値に対応した時間分のワンショットパルスを発生させるパルス発生回路と、基準クロックを所定比で分周した分周信号を回転多面鏡回転のモーター用クロックとして出力する分周回路と、全体を制御する制御部とを有し、制御部は、パルス発生回路からのワンショットパルスを分周回路に入力させ、ワンショットパルスの有効期間中は分周回路の動作を一時的に停止させ、モーター用クロックの位相を基準クロックの精度で独立に制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−043313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術を適用して、所定の画像形成ユニットにおける回転多面鏡と他の画像形成ユニットにおける回転多面鏡との位相差が、所定の位相差に対して大きな差異を有する場合に、ワンショットパルスを用いて当該位相差が所定の位相差になるように調整すると、ワンショットパルスで当該大きな差異に相当する長期間分周回路の動作を停止させている間に位相差が変動する虞があり、これによって、当該位相差の調整に失敗する虞があった。
【0008】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ポリゴンミラーの回転位相差を基準回転位相差に一致させる調整に失敗する虞を低減することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像形成装置は、光源から出力されるレーザー光を感光体に向けて反射する反射面を複数備え、回転動作を行うことで前記反射面を用いて前記レーザー光を感光体の表面上で主走査方向に走査する回転多面鏡と、前記回転多面鏡を予め定められた駆動周波数で回転駆動させる駆動部と、前記回転多面鏡により走査されるレーザー光を予め定められた位置で受光してBD信号を出力するBDセンサとを備える画像形成ユニットが、装置本体内で所定の方向に複数配列され、その配列方向に移動する記録紙に対して前記各画像形成ユニットによりトナー画像を多重転写する画像形成装置であって、前記各画像形成ユニットに備えられる回転多面鏡のうち、基準として設定された回転多面鏡の回転位相に対する他の回転多面鏡の回転位相差を前記BD信号を用いて検出する位相差検出部と、前記位相差検出部により検出された回転位相差が予め定められた基準回転位相差と一致しない場合は、当該一致しないと判断された回転位相差の回転多面鏡を回転駆動させる駆動部の駆動周波数を予め定められた補正量分変更し、当該変更された駆動周波数の駆動クロック信号によって、所定のクロック数分だけ当該駆動部を駆動させる位相補正処理を行う補正制御部と、前記補正制御部によって前記位相補正処理が行われた後、前記位相差検出部により検出された回転位相差が前記基準回転位相差と一致しない場合は、前記予め定められた補正量を予め定められた規定量減少して、再び、前記補正制御部に前記位相補正処理を行わせる補正量調整部と、を備える。
【0010】
この構成によれば、位相補正処理によって、予め定められた補正量分だけ変更された駆動周波数の駆動クロック信号によって所定のクロック数分だけ駆動部が駆動された後、回転位相差が基準回転位相差と一致しない場合であっても、予め定められた補正量が予め定められた規定量減少されて、再び位相補正処理が行われる。つまり、駆動周波数を次第に小さく変化させながら、回転位相差が基準回転位相差と一致するまで、繰り返して位相補正処理が行われる。このため、回転位相差を基準回転位相差に一致させる調整に失敗する虞を低減することができる。
【0011】
また、前記所定のクロック数は、前記予め定められた駆動周波数による1周期の期間と、前記予め定められた駆動周波数を前記予め定められた補正量分だけ変更した後の駆動周波数による1周期の期間と、の時間差によって、前記回転位相差と前記基準回転位相差との位相差を除算した結果によって定められることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、理論上は位相補正処理を一回行うことによって、回転位相差を基準回転位相差に一致させることができる。このため、他の方法で規定クロック数を定めた場合に比して、位相補正処理を繰り返し行う回数を低減することができ、回転位相差を基準回転位相差に一致させる調整に係る時間を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリゴンミラーの回転位相差を基準回転位相差に一致させる調整に失敗する虞を低減することができる画像形成装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例としてのタンデム型カラープリンタの構成の一例を示す全体断面図。
【図2】画像形成ユニットの拡大断面図。
【図3】光走査装置の構成の一例を示す説明図。
【図4】ポリゴンミラーの回転制御系の構成の一例を示す説明図。
【図5】回転位相差が適切な状態及び不適切な状態において、それぞれ、感光体ドラムの表面上にレーザー光が照射される位置の位置関係の一例を示す図。
【図6】ポリゴンミラーの回転位相差の補正制御の一例を示すフローチャート。
【図7】(a)は、基準とするポリゴンミラーの回転位相に対する他のポリゴンミラーの回転位相の位相差が基準回転位相差である場合における、他のポリゴンミラーに対応するBD信号及び駆動クロック信号の一例を示し、(b)は、基準とするポリゴンミラーの回転位相に対する他のポリゴンミラーの回転位相の位相差が基準回転位相差ではない場合における、他のポリゴンミラーに対応するBD信号及び駆動クロック信号の一例を示し、(c)は、(b)の状態にあった他のポリゴンミラーに対応する駆動クロック信号を変更する処理の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る画像形成装置の一例としてのタンデム型カラープリンタを図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に示すように、カラープリンタ1には、用紙の搬送経路における下流側(図中の左方向)から、マゼンタM、シアンC、イエローY、ブラックBの各色のトナーに応じた4つの画像形成ユニット7M、7C、7Y、7Bが、用紙搬送ベルト8上に並べて配置されている。
【0017】
各画像形成ユニット7M、7C、7Y、7Bは、それぞれ、図2に示すように、像担持体としての感光体ドラム4と、感光体ドラム4の周囲に配置された帯電器5、光走査装置6、現像スリーブ3aを備える現像装置3、転写ローラ9及びクリーニング機構20を備えている。
【0018】
各画像形成ユニット7M、7C、7Y、7Bの各感光体ドラム4と各転写ローラ9とにより一繋がりの用紙搬送ベルト8が狭持され、この用紙搬送ベルト8上を、給紙機構12から用紙搬送路13を経由して供給される記録紙が搬送される。この記録紙上に順次各画像形成ユニット7B、7Y、7C、7Mでトナー画像の多重転写が行われた後、定着部14によるトナー画像の定着処理によりカラー画像が形成され、用紙搬送路15を経由して排出部16へ排出される。
【0019】
クリーニング機構20は、感光体ドラム4上の残留トナー等を除去するためのものであり、感光体ドラム4の表面を清掃するためのクリーニングローラ21及びクリーニングブレード22、感光体ドラム4の表面から除去されたトナーを画像形成ユニット7M、7C、7Y、7B外に排出するためのクリーニングスパイラル23及びケーシング25を備えている。
【0020】
クリーニングローラ21は、ウレタンフォーム等の弾性体からなり、感光体ドラム4に対向する位置に配設されている。このクリーニングローラ21は、感光体ドラム4によるトナー像転写位置(転写ローラ9との対向位置)の下流側で感光体ドラム4の表面に摺擦するように配置され、感光体ドラム4の回転方向(図2矢印方向)の順方向に回転自在に設けられている。
【0021】
クリーニングブレード22は、ウレタンゴム部材等の材質からなる板状体の部材であり、その一端部がクリーニングローラ21よりも更に下流側で感光体ドラム4に摺擦するように配置され、クリーニングローラ21による清掃後に感光体ドラム4の表面に残留するトナーを掻き取るために設けられている。
【0022】
スパイラル23には回転軸の周囲に螺旋形状の羽根が形成されている。スパイラル23は、感光体ドラム4の表面から除去されたクリーニングトナー(廃トナー)を、クリーニング機構20の前側板に設けられたトナー排出口を通じて排出する方向に回転制御されている。
【0023】
各画像形成ユニット7M、7C、7Y、7Bは、それぞれ、例えば図3に示すような光走査装置6を備えている。光走査装置6は、レーザー照射部(光源)31、コリメータレンズ32、プリズム33、ポリゴンミラー(回転多面鏡)34、f−θレンズ35、ポリゴンモーター(駆動部)36及びビームディテク卜センサ(以下、BD(Beam Detect)センサ)37を備えている。
【0024】
レーザー照射部31は、レーザーダイオード(LD)等のレーザー光源を備えている。レーザー光源から出力されるレーザー光は、コリメータレンズ32及びプリズム33等により平行光に変換される。この平行光は、図略の反射ミラーによってポリゴンミラー34に向けて反射され、ポリゴンモーター36の駆動により回転しているポリゴンミラー34に入射する。
【0025】
ポリゴンミラー34は、レーザー照射部31から出力されるレーザー光を感光体ドラム4に向けて反射させる反射面を複数有し(例えば図3においては8面有している)、レーザー照射部31から照射されるレーザー光がポリゴンミラー34の異なる反射面により感光体ドラム4に向けて反射される。
【0026】
ポリゴンミラー34により感光体ドラム4に向けて反射されたレーザー光は、f−θレンズ35によって感光体ドラム4の表面上に、所定の径を有するスポット状に結像される。ポリゴンミラー34は、例えば図3の矢印方向にポリゴンモーター36により一定速度で回転駆動されることによって、レーザー光を各反射面で反射させるとともに、感光体ドラム4の回転軸方向(主走査方向、図3の矢印A方向)に走査させ、感光体ドラム4表面上の電荷を除去させる。
【0027】
BDセンサ37は、例えばフォトダイオードを用いて構成され、感光体ドラム4に対してトナー画像を形成するための光線走査(以下、画像の書き出し動作という)を行うタイミングを調整するために用いられる。図3に示す矢印方向に回転するポリゴンミラー34によって反射されたレーザー光が、f−θレンズ35を透過してBDセンサ37に入射すると、BDセンサ37から検出信号が出力される。このBDセンサ37の検出信号は、後述する画像書き出しタイミング調整部433に入力されて、感光体ドラム4表面上で走査されるレーザー光の画像書き出しタイミングの調整に用いられる。
【0028】
また、各光走査装置6には、共通の制御部43が電気的に接続されている。制御部43は、基準発振器41から出力される基準クロック信号によって動作タイミングをとり、当該動作タイミングで画像書き出しタイミング調整を行い、画像メモリ42から出力される書込対象画像の画像信号に基づいてレーザー照射部31を駆動制御する。
【0029】
制御部43は、図略のCPU(Central Processing Unit:中央演算処理部)に、そのCPUの動作を規定するプログラムを格納するRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、並びに一時的にデータを保管するRAM等の記憶部などの周辺装置を備え、図略の操作部で受け付けられた指示情報や、カラープリンタ1の各所に設けられているセンサからの検出信号に応じて、該カラープリンタ1の全体制御を行う。
【0030】
また、制御部43は、LD駆動制御部431、描画部432、及び画像書き出しタイミング調整部433として機能する。
【0031】
描画部432は、画像メモリ42から出力される書込対象画像の画像信号に基づきLD駆動制御部431の駆動を開始させる。LD駆動制御部431は、描画部432からの指示に基づいて、レーザー照射部31を駆動制御する。画像書き出しタイミング調整部433は、BDセンサ37から出力されたBD信号に基づいて、感光体ドラム4の表面上を走査させる画像書き出しタイミングを調整し、描画部432に出力する。
【0032】
図4は、ポリゴンミラー34の回転制御系の構成の一例を示す図である。尚、以下の説明においては、マゼンタM、シアンC、イエローY、ブラックBの各色の光走査装置6のポリゴンミラー34を、それぞれ、「34M」、「34C」、「34Y」,「34B」と表記する。また、マゼンタM、シアンC、イエローY、ブラックBの各色の光走査装置6のポリゴンモーター36を、それぞれ、「36M」、「36C」、「36Y」、「36B」と表記する。
【0033】
制御部43は、ポリゴンモーター36M、36C、36Y、36Bの動作制御に関連して、モーター駆動制御部435、位相差検出部436、位相差判断部437、補正制御部438、及び、補正量調整部439として機能する。
【0034】
モーター駆動制御部435は、基準発振器41(図3)から出力される基準クロック信号を分周して、予め定められた周波数の駆動クロック信号を生成し、当該駆動クロック信号を用いてポリゴンモーター36M、36C、36Y、36Bを予め定められた回転速度で回転駆動させる。
【0035】
また、モーター駆動制御部435は、後述する補正制御部438からの指示の下、駆動クロック信号の周波数(駆動周波数)を変更することによって、ポリゴンモーター36M、36C、36Y、36Bの回転速度を変更し、これによって、ポリゴンミラー34M、34C、34Y、34Bの回転速度を変更する。
【0036】
位相差検出部436は、画像書き出し中(描画中)ではない場合に、BDセンサ37から出力されたBD信号に基づいて、例えば、ある特定のポリゴンミラー34(例えば、ポリゴンミラー34B)の回転位相を基準として、当該基準とする回転位相に対する他のポリゴンミラー(例えば、ポリゴンミラー34C,34M,34Y)の回転位相差を検出する。
【0037】
例えば、各レーザー照射部31から出力されたレーザー光の感光体ドラム4の表面での照射位置が、あるタイミングにおいて図5に示す位置A,B,C,Dであるものとする。この場合、各レーザー光によるBDセンサ37の出力信号の出力タイミングは、各位置A,B,C,Dの主走査方向における位置ずれ量に相当する時間差だけ、それぞれずれることとなる。当該時間差は、各ポリゴンミラー34の回転位相差に相当することから、位相差検出部436は、BDセンサ37から出力される信号の出力タイミングを用いて、各画像形成ユニット7M、7C、7Y、7Bにおける各ポリゴンミラー34C,34M,34Yの回転位相差を検出する。
【0038】
位相差判断部437は、位相差検出部436により検出された位相差が予め定められた位相差と一致するか否か、つまり、位相差検出部436により検出された位相差が適切であるか否かを判断する。
【0039】
例えば、位相差判断部437は、あるタイミングにおけるレーザー光の感光体ドラム4の表面での照射位置が図5に示す位置A,B,C,Dの位置関係になっている場合における、各ポリゴンミラー34C,34M,34Yの回転位相差を、適切な回転位相差(基準回転位相差)とし、位相差検出部436により検出された回転位相差が当該基準回転位相差となっているときには、適切であると判断する。
【0040】
一方、位相差判断部437は、位相差検出部436により検出された回転位相差が上記の基準回転位相差となっておらず、例えば、あるタイミングにおけるレーザー光の感光体ドラム4の表面での照射位置が図5に示す位置A,Ba,Ca,Daの位置関係になっているときには、不適切であると判断する。尚、位相差検出部436により検出された回転位相差が不適切な状態となる要因としては、例えば、ポリゴンモーター36C、36M、36Y、36Bに供給する電圧の変動や電気ノイズ或いは振動等が考えられる。
【0041】
補正制御部438は、位相差判断部437によって、位相差検出部436により検出させた回転位相差が不適切な状態であると判断されたときに、例えばポリゴンミラー34Bの回転位相を基準として他のポリゴンミラー34C,34M,34Yの回転位相を変更すべく、ポリゴンモーター36C,36M,36Yの駆動を制御する駆動クロック信号の周波数(ポリゴンモーター36C,36M,36Yの駆動周波数)を変更し、当該変更後の駆動周波数の駆動クロック信号でポリゴンモーター36C,36M,36Yをそれぞれ駆動する指示を示す制御信号を、モーター駆動制御部435に出力する。当該駆動周波数の変更は、ポリゴンミラー34Bの回転位相に対する他のポリゴンミラー34C,34M,34Yの回転位相差が上記の基準回転位相差となるように調整するものである。
【0042】
具体的には、補正制御部438は、回転位相差が不適切な状態であると判断されたポリゴンミラー34C,34M,34Yを回転駆動するポリゴンモーター36C,36M,36Yの駆動周波数を、予め定められた補正量(位相補正量)分だけ変更し、又は、後述の補正量調整部439によって予め定められた規定量分だけ減少された位置補正量分だけ変更し、当該変更された駆動周波数の駆動クロック信号によって、所定のクロック数分だけ、当該ポリゴンモーター36C,36M,36Yを駆動させる位相補正処理を行う。補正制御部438による位相補正処理の詳細については後述する。
【0043】
補正量調整部439は、予め定められた補正量を用いて補正制御部438に位相補正処理を行わせた後、位相差検出部436により検出された回転位相差が上記の基準回転位相差と一致しない場合は、予め定められた補正量を予め定められた規定量減少させた後の補正量を用いて、再び、補正制御部438に位相補正処理を行わせる。
【0044】
以下では、ポリゴンミラー34の回転位相差の補正制御の流れについて説明する。尚、具体例として、ポリゴンミラー34Bの回転位相を基準とした場合における、当該基準とする回転位相に対するポリゴンミラー34Cの回転位相差の補正制御について説明する。
【0045】
また、図7(a)に示すように、ポリゴンミラー34Cで反射されたレーザー光を受光したBDセンサ37から出力されたBD信号が、ポリゴンミラー34Bで反射されたレーザー光を受光したBDセンサ37から出力されたBD信号よりも、時間差Tだけ遅いタイミングで出力されるときに、レーザー光の感光体ドラム4の表面での照射位置が図5に示す位置A,Bの位置関係になるものとする。つまり、当該時間差Tが、ポリゴンミラー34Bの回転位相を基準とした場合における、ポリゴンミラー34Cに対応する基準回転位相差Tであるものとして説明する。
【0046】
ここで、ポリゴンミラー34Cの回転位相差が基準回転位相差Tとなるときの、ポリゴンミラー34Cを駆動するポリゴンモーター36Cの駆動周波数fは、例えば100Hzであるものとし、当該駆動周波数fの駆動クロック信号の1周期t(=1/f)は、例えば10ms(=1000ms/100Hz)であるものとして説明する。
【0047】
図6に示すように、例えば、画像の書き出しが終了する都度等の所定の時期に、制御部43によって、ポリゴンミラー34Cの回転位相差の補正制御が開始されると、位相差検出部436は、ポリゴンミラー34B及びポリゴンミラー34Cで反射されたレーザー光を受光したBDセンサ37から出力されたBD信号を用いて、ポリゴンミラー34Bの回転位相に対するポリゴンミラー34Cの回転位相差の検出を行う(S1)。
【0048】
具体的には、位相差検出部436は、ステップS1において、例えば図7(b)に示すように、ポリゴンミラー34Bの回転位相に対するポリゴンミラー34Cの回転位相差Tdを検出する。図中においては、ポリゴンミラー34Cで反射されたレーザー光を受光したBDセンサ37から出力されたBD信号が、ポリゴンミラー34Bで反射されたレーザー光を受光したBDセンサ37から出力されたBD信号よりも、時間差(T+ΔT)だけ遅いタイミングで出力されている。つまり、ポリゴンミラー34Cの回転位相差Tdは、基準回転位相差Tよりも、更に時間差ΔT分だけ遅れていることを示している。
【0049】
次に、位相差判断部437は、位相差検出部436により検出された回転位相差Tdが、予め定められた基準回転位相差Tと一致するか否かを判断することによって、位相差検出部436により検出された位相差が適切であるか否かを判断する(S2)。当該具体例では、位相差判断部437は、位相差検出部436により検出された回転位相差Td(=T+ΔT)が基準回転位相差Tと一致しないため、当該回転位相差Tdは適切ではないと判断する(S2;NO)。
【0050】
尚、ステップS2における判断結果、位相差判断部437によって、回転位相差が予め定められた基準回転位相差と一致するものと判断され、つまり、位相差検出部436により検出された回転位相差が適切であると判断された場合には(S2;YES)、制御部43は、ポリゴンミラー34の回転位相差の補正制御を終了する。
【0051】
ステップS2において、位相差判断部437によって、回転位相差Tdが予め定められた基準回転位相差Tと一致しないものと判断され、つまり、位相差検出部436により検出された回転位相差が適切ではないと判断されると(S2;NO)、補正制御部438は、ポリゴンミラー34Cを回転駆動するポリゴンモーター36Cの駆動周波数を予め定められた位相補正量分だけ変更する(S3)。
【0052】
例えば、予め定められた位相補正量Pは、ポリゴンモーター36Cの駆動クロック信号の1周期の期間tを100%として、当該1周期の期間tを減少させる量をパーセンテージで示したものとする。
【0053】
この場合、図7(c)に示すように、補正制御部438は、ステップS3において、ポリゴンモーター36Cの駆動クロック信号の1周期tを位相補正量P分だけ減少させ、つまり、駆動クロック信号の1周期が(1−P)×tである周波数f/(1−P)の駆動クロック信号(補正駆動クロック信号)で、ポリゴンモーター36Cを駆動する指示を示す制御信号を、モーター駆動制御部435に出力する。尚、ここで、×は掛け算(乗算)を示し、/は割り算(除算)を示している。
【0054】
図6に戻り、次に、補正制御部438は、ステップS3において、予め定められた位相補正量分だけ変更した補正駆動クロック信号のクロック数をカウントし(S4)、当該カウントしたクロック数が所定のクロック数に到達しない間は(S5;NO)、ステップS4を実行して、補正駆動クロック信号のクロック数のカウントを継続し、当該カウントしたクロック数が、所定のクロック数に到達すると(S5;YES)、駆動周波数をステップS3による変更前の駆動周波数に戻して、ポリゴンミラー34Cを回転駆動するポリゴンモーター36Cを駆動する指示を示す制御信号を、モーター駆動制御部435に出力する(S6)。
【0055】
例えば、図7(c)に示すように、ステップS4においてカウントされたクロック数が1の時点では、1周期が(1−P)×tである補正駆動クロック信号によって、ポリゴンモーター36Cが1クロック分だけ駆動され、これによって、回転位相差が(P×t)分だけ短縮される。
【0056】
つまり、回転位相差Td(=T+ΔT)と基準回転位相差Tの位相差ΔT分だけ回転位相差を短縮させるためには、回転位相差Tdと基準回転位相差Tの位相差ΔTを補正駆動クロック信号1クロック分で短縮可能な位相差(P×t)で除算した結果のΔT/(P×t)で表されるクロック数分だけ、1周期が(1−P)×tである補正駆動クロック信号によって、ポリゴンモーター36Cを駆動すればよい。
【0057】
そこで、補正制御部438は、ステップS5における所定のクロック数を、回転位相差Tdと基準回転位相差Tの位相差ΔTを補正駆動クロック信号1クロック分で短縮可能な位相差(P×t)で除算した結果のΔT/(P×t)として算出する。
【0058】
そして、補正制御部438は、ステップS4でカウントしたクロック数が、当該算出した所定のクロック数に到達すると、回転位相差が(P×t)×ΔT/(P×t)分だけ短縮されたものとして、つまり、回転位相差がΔT分だけ短縮されたものとして、ステップS6において、駆動周波数をステップS3による変更前の駆動周波数fに戻し、ポリゴンミラー34Cを回転駆動するポリゴンモーター36Cを駆動する指示を示す制御信号を、モーター駆動制御部435に出力する。
【0059】
図6に戻り、補正制御部438によって、ステップS6が行われ、ステップS3による変更前の駆動周波数に戻してポリゴンモーター36Cを駆動する指示を示す制御信号がモーター駆動制御部435に出力されると、補正量調整部439は、位相差検出部436に、ステップS1と同様にして、ポリゴンミラー34Bとポリゴンミラー34Cとの間の回転位相差の検出を行わせる(S7)。
【0060】
そして、補正制御部438は、ステップS7において位相差検出部436により検出されたポリゴンミラー34Bとポリゴンミラー34Cとの間の回転位相差が、予め定められた基準回転位相差Tと一致するか否かを位相差判断部437に判断させ、これによって、位相差検出部436により検出された位相差が適切であるか否かを判断させる(S8)。
【0061】
そして、ステップS8における判断結果、位相差判断部437によって、回転位相差が予め定められた基準回転位相差Tと一致しないものと判断され、つまり、回転位相差が適切ではないと判断されると(S8;NO)、補正量調整部439は、ステップS3において、補正制御部438がポリゴンモーター36Cの駆動周波数を変更する量である、予め定められた位相補正量Pを予め定められた規定量分減少し、当該減少した結果を新たな予め定められた位相補正量Pとして(S9)、補正制御部438に再びステップS3を実行させる。
【0062】
例えば、ステップS3における予め定められた位相補正量Pが、初期値として10%に定められており、当該補正制御の開始後最初のステップS3の実行後に行われたステップS8における判断結果、位相差判断部437によって、回転位相差が予め定められた基準回転位相差Tと一致しないものと判断されたものとする(S8;NO)。この場合、補正量調整部439は、予め定められた位相補正量P(10%)を、予め定められた規定量としての例えば位相補正量Pの4分の1の量分(2.5%)減少させ、当該減少した結果の位相補正量(7.5%)を新たな予め定められた位相補正量Pとして(S9)、補正制御部438にステップS3を実行させる。
【0063】
図6に戻り、一方、ステップS8における判断結果、位相差判断部437によって、回転位相差が予め定められた基準回転位相差Tと一致するものと判断され、つまり、回転位相差が適切であると判断されると(S8;YES)、制御部43は、ポリゴンミラー34の回転位相差の補正制御を終了する。
【0064】
このように、ステップS3からステップS5に示す処理(位相補正処理)によって、予め定められた補正量分だけ変更された駆動周波数の駆動クロック信号で、所定のクロック数分だけ、ポリゴンモーター36Cが駆動された後、ステップS8による判断結果、回転位相差が基準回転位相差Tと一致しない場合であっても、予め定められた補正量Pが予め定められた規定量減少されて、再び位相補正処理が行われる。
【0065】
つまり、駆動周波数を次第に小さく変化させながら、回転位相差が基準回転位相差Tと一致するまで、繰り返して位相補正処理が行われる。このため、回転位相差を基準回転位相差Tに一致させる調整に失敗する虞を低減することができる。
【0066】
また、上記のように、ステップS5における所定のクロック数を、回転位相差Td(=T+ΔT)と基準回転位相差Tの位相差ΔTを補正駆動クロック信号1クロック分で短縮可能な位相差(P×t)で除算した結果のΔT/(P×t)として算出すると、理論上はステップS3からステップS5の処理(位相補正処理)を一回行うことによって、回転位相差を基準回転位相差Tに一致させることができる。
【0067】
このため、他の方法でステップS5における所定のクロック数を定めても構わないが、上記の方法でステップS5における所定のクロック数を定めた場合には、当該他の方法で所定のクロック数を定めた場合に比して、上記位相補正処理を繰り返し行う回数を低減することができ、回転位相差を基準回転位相差Tに一致させる調整に係る時間を低減することができる。
【0068】
尚、上記の説明においては、ポリゴンミラー34Bの回転位相を基準とした場合の、当該基準とする回転位相に対するポリゴンミラー34Cの回転位相差の補正制御について説明したが、これと同様にして、ポリゴンミラー34Bの回転位相を基準とした場合の、ポリゴンミラー34M,ポリゴンミラー34Yの回転位相差の補正制御も行われる。
【0069】
また、ポリゴンミラー34Bとは異なるポリゴンミラー34C,ポリゴンミラー34M,ポリゴンミラー34Yのうちの何れか一つの回転位相を基準にして、当該基準としたポリゴンミラー34と、当該基準としたポリゴンミラー34とは他のポリゴンミラー34との間の回転位相差を、上記と同様にして、補正制御するように構成してもよい。
【0070】
また、本発明は、上記実施形態の構成に限られず種々の変形が可能である。図1乃至図7に示した構成及び処理は、本発明に係る実施形態の例示に過ぎず、本発明を上記実施形態に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0071】
1 カラープリンタ(画像形成装置)
31 レーザー照射部(光源)
34、34B、34C、34M、34Y ポリゴンミラー(回転多面鏡)
36、36B、36C、36M、36Y ポリゴンモーター(駆動部)
37 BDセンサ
4 感光体ドラム(感光体)
43 制御部
435 モーター駆動制御部
436 位相差検出部
437 位相差判断部
438 補正制御部
439 補正量調整部
6 光走査装置
7B、7C、7M、7Y 画像形成ユニット
8 用紙搬送ベルト
9 転写ローラ
f 予め定められた駆動周波数
P 位相補正量(予め定められた補正量)
T 予め定められた基準回転位相差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出力されるレーザー光を感光体に向けて反射する反射面を複数備え、回転動作を行うことで前記反射面を用いて前記レーザー光を感光体の表面上で主走査方向に走査する回転多面鏡と、前記回転多面鏡を予め定められた駆動周波数で回転駆動させる駆動部と、前記回転多面鏡により走査されるレーザー光を予め定められた位置で受光してBD信号を出力するBDセンサとを備える画像形成ユニットが、装置本体内で所定の方向に複数配列され、その配列方向に移動する記録紙に対して前記各画像形成ユニットによりトナー画像を多重転写する画像形成装置であって、
前記各画像形成ユニットに備えられる回転多面鏡のうち、基準として設定された回転多面鏡の回転位相に対する他の回転多面鏡の回転位相差を前記BD信号を用いて検出する位相差検出部と、
前記位相差検出部により検出された回転位相差が予め定められた基準回転位相差と一致しない場合は、当該一致しないと判断された回転位相差の回転多面鏡を回転駆動させる駆動部の駆動周波数を予め定められた補正量分変更し、当該変更された駆動周波数の駆動クロック信号によって、所定のクロック数分だけ当該駆動部を駆動させる位相補正処理を行う補正制御部と、
前記補正制御部によって前記位相補正処理が行われた後、前記位相差検出部により検出された回転位相差が前記基準回転位相差と一致しない場合は、前記予め定められた補正量を予め定められた規定量減少して、再び、前記補正制御部に前記位相補正処理を行わせる補正量調整部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記所定のクロック数は、前記予め定められた駆動周波数による1周期の期間と、前記予め定められた駆動周波数を前記予め定められた補正量分だけ変更した後の駆動周波数による1周期の期間と、の時間差によって、前記回転位相差と前記基準回転位相差との位相差を除算した結果によって定められる請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−29669(P2013−29669A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165701(P2011−165701)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】