説明

画像形成装置

【課題】ユーザが手差し給紙の給紙作業に慣れていなくても手差し給紙の給紙動作を適切に行える画像形成装置を提供する。
【解決手段】手差しセンサにより用紙有りが検出された後に、レジストローラの回転を禁止させ、レジストローラの回転を禁止させてから第1禁止時間T1が経過した時点でレジストローラを回転させるように制御し、用紙がレジストローラにより適切に搬送されていない場合、第1禁止時間T1よりも長い第2禁止時間T3に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より画像形成装置として、ユーザにより手差し開口からレジストローラに手差しされた用紙を画像形成部に供給する手差し給紙機能を備えたものが知られている。手差し供給では、用紙が手差しされレジストセンサが用紙の先端を検出すると、レジストローラの回転が所定時間停止される。レジストローラの回転が停止している間に用紙がレジストローラによる巻き込み位置に突き当てられると、用紙の斜行が補正される。そして、レジストローラの回転が停止されてから所定時間経過した後に、レジストローラの回転が再開されることにより用紙が画像形成部に供給される。例えば、特許文献1に記載された画像形成装置では、レジストローラの回転禁止時間を設定することが記載されており、用紙の厚さが厚かったりサイズが小さかったりして用紙のたわみが小さく、用紙の差し込みに要する時間が短いと予想される場合には、当該回転禁止時間を短めに設定するとよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−286079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置では、今までとは異なるたわみ具合の用紙を用いた手差し給紙をユーザが行うときなど、ユーザが手差し給紙の給紙作業に慣れていないと、レジストローラの回転禁止時間内に用紙を巻き込み位置に適切に突き当てられず、手差し給紙の給紙動作が適切に行われないことがある。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ユーザが手差し給紙の給紙作業に慣れていなくても手差し給紙の給紙動作が適切に行われる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1記載の画像形成装置は、用紙に画像を形成する画像形成部と、手差し開口部から挿入される用紙の有無を検出する第1センサと、前記用紙の搬送方向において前記第1センサよりも下流側に配置され、前記手差し開口部から挿入される用紙を前記画像形成部に搬送するレジストローラと、前記第1センサにより用紙有りが検出されてから第1禁止時間が経過した時点で前記レジストローラを回転させるように制御する制御部と、前記レジストローラにより用紙が適切に搬送されたか否かを判断する判断部と、前記判断部により前記用紙が適切に搬送されていないと判断された場合、前記第1禁止時間を前記第1禁止時間よりも長い第2禁止時間に変更する変更部とを備える。
【0007】
請求項1記載の画像形成装置によれば、手差し開口部から挿入された用紙がレジストローラにより適切に搬送されていないと判断された場合、第1センサにより用紙有りが検出されてからレジストローラの回転が開始されるまでの時間が長く変更される。手差し給紙が行われる際に、レジストローラにより用紙が適切に搬送されていない場合、ユーザが手差し給紙の給紙作業に慣れていないために手差し給紙の給紙動作が適切に行われなかったことが予想される。ユーザが手差し給紙の給紙作業に慣れていない場合を予測し、レジストローラの回転禁止時間を自動的に長く設定することができる。ユーザにとって手差し給紙の給紙作業時間を長く確保できる。したがって、ユーザが手差し給紙の給紙作業に慣れていなくても手差し給紙の給紙動作を適切に行える。
【0008】
また、請求項2記載の画像形成装置は、前記変更部は、前記第2禁止時間に変更した後に、前記判断部により前記用紙の次に搬送される第2用紙が適切に搬送されていると判断され、かつ、第2用紙の次に搬送される第3用紙が、前記判断部により前記第3用紙が適切に搬送されていると判断された場合、前記第2禁止時間から前記第1禁止時間に変更する。
【0009】
請求項2記載の画像形成装置によれば、手差し開口部から挿入された第2用紙が適切に搬送されていると判断され、かつ、次に搬送される第3用紙が適切に搬送されていると判断された場合、長い第2禁止時間が短い第1禁止時間に変更される。連続して用紙が適切に搬送されていると判断された場合に、ユーザが手差し給紙の給紙作業に慣れていると予想されるので、レジストローラの回転禁止時間を初期設定の時間に変更する。したがって、手差し給紙の給紙作業の慣れを予測し、より効率よく手差し給紙の給紙動作ができる。
【0010】
また、請求項3記載の画像形成装置は、前記判断部は、前記第1禁止時間が経過するまでに前記第1センサにより用紙無しが検出された場合、前記レジストローラにより用紙が適切に搬送されていないと判断する。
【0011】
請求項3記載の画像形成装置によれば、第1禁止時間が経過するまでに第1センサにより用紙無しが検出された場合、レジストローラにより用紙が適切に搬送されていないと判断する。つまり、手差し用紙の給紙動作が開始される前に手差し用紙が引き抜かれるなどして手差し用紙が挿入されていない状態となる。用紙がレジストローラから引き抜かれる場合、ユーザが手差し給紙の給紙作業に慣れていないと予測される。したがって、用紙がレジストローラから引き抜かれた場合に、ユーザが手差し給紙の給紙作業に慣れていないと予測できる。
【0012】
また、請求項4記載の画像形成装置は、前記用紙の搬送方向において前記レジストローラよりも下流側に配置され、用紙の有無を検出する第2センサを備え、前記判断部は、前記第2センサにより用紙毎に検出される、用紙有りが検出されている時間に所定時間以上の変動があった場合、前記用紙が適切に搬送されていないと判断する。
【0013】
請求項4記載の画像形成装置によれば、用紙の搬送方向においてレジストローラよりも下流側に配置された第2センサにより、用紙毎に検出される、用紙有りが検出されている時間に所定時間以上の変動がない場合、用紙が適切に搬送されていると判断し、用紙有りが検出されている時間に所定時間以上の変動がある場合、用紙が適切に搬送されていないと判断する。用紙が斜行してレジストローラにより搬送されると、用紙がレジストローラを通過した後に第2センサを通過する時間にばらつきが生じる。このばらつきが検出されると、用紙が斜行して搬送されているため、用紙が適切に搬送されていないと判断できる。
【0014】
また、請求項5記載の画像形成装置は、前記変更部は、前記第2禁止時間に変更した後に、前記判断部により前記用紙の次に搬送される第2用紙に画像が1回形成されると、前記第1禁止時間に変更する。
【0015】
請求項5記載の画像形成装置によれば、画像が形成された後に変更するので手差し用紙の給紙動作が適切に行われたことが分かる。したがって、手差し用紙の給紙作業に慣れていないユーザによって1回であっても適切に手差し給紙の給紙動作が行われたら、レジストローラの回転禁止時間を元の初期設定に変更できる。不慣れなユーザだからといってレジストローラの回転禁止時間が継続して長くなり、手差し給紙の給紙動作に時間が必要以上にかかることを防止できる。
【0016】
また、請求項6記載の画像形成装置は、前記変更部は、前記判断部により前記用紙に画像が適切に搬送されていないと判断された後に、前記用紙の次に搬送される第2用紙が、前記判断部により適切に搬送されていないと判断された場合、前記第2禁止時間に変更する。
【0017】
請求項6記載の画像形成装置によれば、手差し開口部から挿入された用紙が適切に搬送されていないと判断された後に、次に搬送される第2用紙が適切に搬送されていないと判断された場合、第2禁止時間に変更される。連続して用紙が適切に搬送されていないと判断された場合に、ユーザが手差し給紙の給紙作業に慣れていない可能性が高いと予想される。このときにレジストローラの回転禁止時間を第1禁止時間よりも長い第2禁止時間に変更する。手差し給紙の給紙作業に慣れているユーザにとって、単に1度手差し給紙の給紙動作が適切に行われなかったとしても、レジストローラの回転禁止時間が長い時間に変更されない。したがって、ユーザが手差し給紙の給紙作業に慣れていない場合を確実に予測し、手差し給紙の給紙動作が適切に行われる。
【0018】
また、請求項7記載の画像形成装置は、前記変更部は、前記判断部により前記用紙が適切に搬送されていると判断され、かつ、前記用紙の次に搬送される第2用紙が適切に搬送されていると判断された場合、前記第1禁止時間よりも短い第3禁止時間に変更する。
【0019】
請求項7記載の画像形成装置によれば、手差し開口部から挿入される用紙が適切に搬送されていると判断され、かつ、次に搬送される第2用紙が適切に搬送されていると判断された場合、レジストローラの回転禁止時間が第1禁止時間よりも短い第3禁止時間に変更される。用紙が適切に搬送されていると連続して判断された場合、ユーザが手差し給紙の給紙作業に慣れていると予想されるので、回転禁止時間を短い時間に変更する。したがって、手差し給紙の給紙作業の慣れを予測し、より早く手差し給紙の給紙動作が行われる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ユーザが手差し給紙の給紙作業に慣れていなくても手差し給紙の給紙動作が適切に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の画像形成装置としてのレーザプリンタを示す要部側断面図である。
【図2】レーザプリンタの電気的構成を概念的に示すブロック図である。
【図3】手差し給紙機構の簡易図である。
【図4a】手差しセンサの構成を表す正面図である。
【図4b】レジ後センサの構成を表す正面図である。
【図5】手差し給紙プログラムの処理を示すフローチャートである。
【図6】レジストローラの回転禁止時間設定プログラムの処理を示すフローチャートである。
【図7】用紙引き抜き監視プログラムの処理を示すフローチャートである。
【図8】印刷成功判断プログラムの処理を示すフローチャートである。
【図9】手差し給紙が連続して成功した場合の手差しセンサ、レジ後センサ、メインモータ、及び、ソレノイドの動作を示すタイミングチャートである。
【図10】用紙の引き込み後に用紙が引き抜かれた場合の手差しセンサ、レジ後センサ、メインモータ、及び、ソレノイド動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施形態]
次に本発明の一実施形態を図1から図10を参照して説明する。
【0023】
(レーザプリンタの全体構成)
図1は、本発明の画像形成装置としてのレーザプリンタを示す要部側断面図である。このレーザプリンタ1は、装置本体として本体ケーシング2を備え、その本体ケーシング2内に用紙3を給紙するための給紙部4や、給紙された用紙3に画像を形成するための画像形成部5などを備えている。なお、以下の説明においては、図1の右側を前方とし、左側を後方とする。本実施形態のレーザプリンタ1は、本発明の画像形成装置の一例である。
【0024】
(1)本体ケーシング
本体ケーシング2の前面には、フロントカバー7が開閉可能に形成され、後述するプロセスカートリッジ26を着脱するための着脱口6が、フロントカバー7が開けられることによって形成される。フロントカバー7の下部には、用紙3を手差しにより内部に挿入するための手差し開口部8が形成されている。また、本体ケーシング2の上面には、画像形成後の用紙3が積載される排紙トレイ9が設けられている。
【0025】
(2)給紙部
給紙部4は、本体ケーシング2内の底部に設けられ複数枚の用紙3が積層状に積載される給紙トレイ11と、給紙トレイ11の前端上部に設けられるピックアップローラ12と、ピックアップローラ12の前側上方に設けられる給紙ローラ13と、給紙ローラ13の後側上方に設けられるレジストローラ14A,14Bなどを備えており、給紙トレイ11に積載される用紙3や手差し開口部8から挿入される用紙3を画像形成部5に供給する。
【0026】
給紙トレイ11は、前方へ引き出し可能に設けられており、その前側の底部に揺動可能な用紙押圧板16を備えている。この用紙押圧板16は、給紙トレイ11の前端部に回動可能に設けられたレバー17からの付勢力により、その前端部が持ち上げられ、それによりその上面に積載された用紙3がピックアップローラ12に対して押圧される。
【0027】
給紙ローラ13の下部には、給紙ローラ13に対して弾力的に当接する分離パッド18が設けられている。用紙押圧板16上の用紙3がピックアップローラ12に対して押圧された状態で、ピックアップローラ12が駆動されると、その用紙3は給紙ローラ13と分離パッド18との間に向けて送り出される。そして、その用紙3が、給紙ローラ13の回転によって、給紙ローラ13と分離パッド18との間に挟まれたときに、最上位の一枚のみが他から分離されて用紙3の搬送方向下流側へ搬送される。
【0028】
給紙ローラ13の周囲には、分離パッド18の搬送方向下流側に、ピンチローラ19と紙粉取りローラ20とが、それぞれ給紙ローラ13に圧接した状態で設けられている。分離パッド18よりも搬送方向において下流側に搬送された用紙3は、給紙ローラ13とピンチローラ19との間を通り、紙粉取りローラ20によって、紙粉が取り除かれた後、レジストローラ14A,14Bに向けて搬送される。
【0029】
給紙トレイ11からレジストローラ14A,14Bへ向かう搬送路と、手差し開口部8からレジストローラ14A,14Bへ向かう搬送路とは、給紙ローラ13の上方で合流している。この合流箇所付近には、用紙3の有無を検出する手差しセンサ21が設けられている。本実施形態の手差しセンサ21は、本発明の第1センサの一例である。
【0030】
手差し開口部8に用紙3が挿入されて用紙3が画像形成部5に給紙される機構について図3を用いて説明する。図3は、手差し給紙機構の簡易図である。手差し開口部8より挿入された用紙3がレジストローラ14Aにより搬送されると、用紙3は、手差しセンサ21、レジストローラ14A,14B、レジ後センサ22、感光体ドラム31及び転写ローラ34の順に通過する。図3に示すように、手差しセンサ21の下流側に、レジストローラ14A,14Bが配置されている。レジストローラ14A,14Bは、後述するメインモータ60により回転駆動されるレジストローラ14Aと、そのレジストローラ14Aの上側に圧接して従動回転するレジストローラ14Bとからなる。レジストローラ14Aの回転駆動は、後述するソレノイド61により、その回転駆動が伝達及び遮断される。レジストローラ14A,14Bの下流側には、用紙3の有無を検出するレジ後センサ22が設けられている。さらに、レジ後センサ22の下流側には、後述する画像形成部5が有する感光体ドラム31と転写ローラ34とが対向して配置されている。レジストローラ14A,14Bにより搬送される用紙3が、この感光体ドラム31と転写ローラ34との間の転写位置を通過するときに、感光体ドラム31上のトナー像が用紙3上に転写される。本実施形態のレジ後センサ22は、本発明の第2センサの一例である。
【0031】
手差しセンサ21について図4aを用いて説明する。図4aは、手差しセンサの構成を表す正面図であり、用紙3が手差し挿入される前の初期状態を表している。手差しセンサ21は、用紙搬送路を通過する用紙3との接触状態に応じて回動するアクチュエータ23と、アクチュエータ23の回動状態を検出するフォトインタラプタ24とを有して構成される。フォトインタラプタ24は、光を照射する発光ダイオード24Aとその光を受光するフォトトランジスタ24Bとを有している。発光ダイオード24Aとフォトトランジスタ24Bとは、所定の間隔をもって対向して配置され、発光ダイオード24Aからフォトトランジスタ24Bへの光が後述するアクチュエータ23の回転軸23Bの軸線と平行になるように設けられている。発光ダイオード24Aから照射された光がアクチュエータ23によって遮られ、フォトトランジスタ24Bへの光が遮光される。
【0032】
アクチュエータ23は、用紙搬送路を通過する用紙3が接触することで回動する回動体23Aと、回動体23Aに接続され、回動体23Aの回動に伴って回転する回転軸23Bと、回転軸23Bに接続され、回転軸23Bの軸方向と直交する方向に延び、フォトトランジスタ24Bが受光する光を遮る位置に回動する遮光板23Cとを有している。回動体23Aは、用紙3と回動体23Aが接触していない時の初期位置と用紙3が手差しセンサ21を通過している時の回動位置とを往復する。遮光板23Cは、回転軸23Bの回転に対応してその回転方向に往復運動を行う。用紙3が手差しセンサ21を通過し終え、用紙3と回動体23Aとが接触しない状態になると、アクチュエータ23は図示しないバネなどの付勢力により再び元の位置に戻る。遮光板23Cも回転軸23Bの回転に合わせて元の位置に戻る。
【0033】
用紙3が手差しセンサ21を通過している期間は、回動体23Aが回動されて遮光板23Cに遮られていた光がフォトトランジスタ24Bによって受光される。フォトトランジスタ24Bによって光が受光されると、手差しセンサ21は、オン状態となる。オン状態は、手差しセンサ21が用紙3有りを検出している状態である。用紙3の後端が手差しセンサ21を通過すると、回動体23Aが元の位置に回動されて戻り、フォトトランジスタ24Bへの光が遮光板23Cによって遮られる。フォトトランジスタ24Bへの光が遮られると、手差しセンサ21は、オフ状態となる。オフ状態は、手差しセンサ21が用紙3無しを検出している状態である。
【0034】
レジ後センサ22について図4bを用いて説明する。図4bは、レジ後センサの構成を表す正面図であり、用紙3の搬送が開始される前の状態を表している。レジ後センサ22は、用紙搬送路を通過する用紙3との接触状態に応じて回動するアクチュエータ63と、アクチュエータ63の回動状態を検出するフォトインタラプタ64とを有して構成される。フォトインタラプタ64は、光を照射する発光ダイオード64Aとその光を受光するフォトトランジスタ64Bとを有している。発光ダイオード64Aとフォトトランジスタ64Bとは、所定の間隔をもって対向して配置され、発光ダイオード64Aからフォトトランジスタ64Bへの光が後述する回転軸63Bの軸線と平行になるように設けられている。発光ダイオード64Aから照射された光がアクチュエータ63によって遮られることで、フォトトランジスタ64Bへの光が遮光される。
【0035】
アクチュエータ63は、用紙搬送路を通過する用紙3が接触することで回動する回動体63Aと、回動体63Aに接続され、回動体63Aの回動に伴って回転する回転軸63Bと、回転軸63Bに接続され、回転軸63Bの軸方向と直交する方向に延び、フォトトランジスタ64Bが光を受光する位置に回動する遮光板63Cとを有している。回動体63Aは、用紙3と回動体63Aが接触していない時の初期位置と用紙3がレジ後センサ22を通過している時の回動位置とを往復する。遮光板63Cは、回転軸63Bの回転に対応してその回転方向に往復運動を行う。用紙3の後端がレジ後センサ22を通過し、用紙3と回動体63Aとの接触状態が接触しない状態になると、アクチュエータ63はバネなどの付勢力により再び元の位置に戻る。遮光板63Cも回転軸63Bの回転に合わせて元の位置に戻る。
【0036】
用紙3がレジ後センサ22を通過している期間は、回動体63Aが回動されてフォトトランジスタ64Bにより光が受光される。フォトトランジスタ64Bによって光が受光されると、レジ後センサ22は、オン状態となる。オン状態は、レジ後センサ22が用紙3有りを検出している状態である。用紙3の後端がレジ後センサ22を通過すると、回動体63Aが元の位置に回動されて戻り、フォトトランジスタ64Bへの光を遮光板63Cが遮る。フォトトランジスタ64Bへの光が遮られると、レジ後センサ22は、オフ状態となる。オフ状態は、レジ後センサ22が用紙3無しを検出している状態である。
【0037】
(3)画像形成部
画像形成部5は、スキャナ部25、プロセスカートリッジ26、定着部27などを備えて構成されている。
【0038】
(a)スキャナ部
スキャナ部25は、本体ケーシング2内の上部に設けられ、図示しないレーザ光源から発光される画像データに基づいたレーザ光を、回転駆動されるポリゴンミラー29や、図示しない複数のレンズ及び反射鏡を介して、感光体ドラム31の表面に照射する。
【0039】
(b)プロセスカートリッジ
プロセスカートリッジ26は、スキャナ部25の下方において、本体ケーシング2に対して着脱自在に装着されている。このプロセスカートリッジ26は、フレーム30内に、像担持体としての感光体ドラム31、帯電手段としてのスコロトロン型帯電器32、現像カートリッジ33、転写手段としての転写ローラ34等を備えている。
【0040】
感光体ドラム31は、接地された金属製のドラム本体を備え、その表層をポリカーボネートなどからなる正帯電性の感光層で被覆することにより構成されている。スコロトロン型帯電器32は、タングステン等の図示しない帯電用ワイヤからコロナ放電を発生させることにより、感光体ドラム31の表面を一様に正極性に帯電させる。
【0041】
現像カートリッジ33は、後側が開放される箱状に形成され、フレーム30に対して着脱自在に装着されている。この現像カートリッジ33内には、トナー収容室36、供給ローラ37、現像ローラ38が設けられている。トナー収容室36内には、現像剤として、正帯電性の非磁性1成分のトナーが充填されている。トナー収容室36内には、トナーを撹拌するためのアジテータ40が設けられている。
【0042】
供給ローラ37は、金属製のローラ軸を導電性の発泡材料で被覆することにより構成されており、現像ローラ38は、金属製のローラ軸を導電性のゴム材料で被覆することにより構成されている。トナー収容室36から放出されたトナーは、供給ローラ37の回転により現像ローラ38に供給され、供給ローラ37と現像ローラ38との間で正に摩擦帯電される。さらに、現像ローラ38上に供給されたトナーは、現像ローラ38の回転に伴って、現像ローラ38の表面に圧接する図示しない層厚規制ブレードと現像ローラ38との間に進入し、ここでさらに摩擦帯電されて、一定厚さの薄層として現像ローラ38上に担持される。
【0043】
転写ローラ34は、金属製のローラ軸を、導電性のゴム材料からなるローラで被覆することにより構成されている。転写ローラ34には、転写時に転写バイアスが印加される。
【0044】
感光体ドラム31の表面は、まずスコロトロン型帯電器32により一様に正帯電され、その後、スキャナ部25からのレーザ光の高速走査により露光されて、用紙3に形成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。
【0045】
次いで、現像ローラ38の回転により、現像ローラ38上に担持され正帯電されているトナーが、感光体ドラム31に対向して接触するときに、感光体ドラム31の表面上に形成されている静電潜像に供給される。これにより、感光体ドラム31の静電潜像は、可視像化され、感光体ドラム31の表面には、露光部分にのみトナーが付着したトナー像が担持される。
【0046】
その後、各感光体ドラム31の表面上に担持されたトナー像は、用紙3が、感光体ドラム31と転写ローラ34との間の転写位置を通る間に、転写ローラ34に印加される負極性の転写バイアスによって、用紙3に転写される。こうしてトナー像が転写された用紙3は、次いで定着部27に搬送される。
【0047】
(c)定着部
定着部27は、ハロゲンランプ等の熱源を備えて回転駆動される加熱ローラ42と、加熱ローラ42を押圧するように対向配置された加圧ローラ43とを備えている。この定着器27では、トナー像を坦持した用紙3を、加熱ローラ42及び加圧ローラ43によって狭持搬送しながら加熱することにより、トナー像を用紙3に定着させる。そして、熱定着された用紙3は、本体ケーシング2の上部に設けられた排紙ローラ44へ搬送され、この排紙ローラ44により前述の排紙トレイ9上に排出される。
【0048】
(レーザプリンタの電気的構成)
次に、レーザプリンタ1の電気的構成について説明する。図2は、レーザプリンタ1の電気的構成を概念的に示すブロック図である。
【0049】
レーザプリンタ1は、CPU51、ROM52、RAM53、制御部54、ネットワークインターフェイス55、タイマ58等を備えて構成された制御装置56を備えている。ROM52には、レーザプリンタ1を制御するための各種制御プログラムや各種設定、初期値等が記憶されている。RAM53は、各種制御プログラムが読み出される作業領域として、あるいは印刷データを一時的に記憶する記憶領域として用いられる。タイマ58は、レジストローラ14Aの回転を禁止させている時間をカウントする。
【0050】
CPU51は、ROM52から読み出した後述する各制御プログラムに従って、その処理結果をRAM53に記憶させながら、制御部54を介してレーザプリンタ1の各構成要素を制御する。ROM52は、制御プログラムとして手差し給紙プログラム、用紙引き抜き監視プログラム、回転禁止時間設定プログラム、及び、印刷成功判断プログラム等を記憶している。これらの制御プログラムについては後述する。
【0051】
ネットワークインターフェイス55には、コンピュータ57などの外部機器が接続され、そのコンピュータ57から送信された印刷指令や印刷データ等を受信する。
【0052】
制御部54は、ASICからなり、メインモータ60や、既述の画像形成部5、手差しセンサ21、レジ後センサ22、さらにソレノイド61などのレーザプリンタ1の各構成要素と電気的に接続されている。制御部54は、各種制御プログラムに応じてレーザプリンタ1の各構成要素を制御する。
【0053】
メインモータ60は、前述したピックアップローラ12、給紙ローラ13、レジストローラ14A、現像ローラ38、感光体ドラム31、加熱ローラ42、排紙ローラ44等に図示しないギア機構を介して接続されており、それらを同期させつつ回転駆動する。ソレノイド61は、メインモータ60とレジストローラ14Aとの間のクラッチ機構として設けられ、オフ状態のときにはメインモータ60からレジストローラ14Aへ動力が伝達される状態となり、オン状態のときにはその動力伝達が遮断される状態となる。
【0054】
手差しセンサ21により用紙3有りが検出されると、手差しセンサ21はオン状態を制御部54に出力する。手差しセンサ21により用紙3無しが検出されると、手差しセンサ21はオフ状態を制御部54に出力する。同様にレジ後センサ22により用紙3有りが検出されると、レジ後センサ22はオン状態を制御部54に出力する。レジ後センサ22により用紙3無しが検出されると、レジ後センサ22はオフ状態を制御部54に出力する。
【0055】
(ソレノイドの動作)
次に手差し給紙動作時のソレノイドの動作について説明する。手差し給紙動作は、ユーザによって用紙3が手差し開口部8に挿入されて手差しセンサ21が用紙3を検出することにより開始される。手差しセンサ21が用紙3を検出してオン状態を出力すると、ソレノイド61は後述する回転禁止時間T1だけオン状態になる。この回転禁止時間T1だけメインモータ60からレジストローラ14Aへの動力伝達が遮断される。用紙3がレジストローラ14A,14Bに到達する前にレジストローラ14Aへの動力伝達が遮断されるので、挿入された用紙3がレジストローラ14A,14Bに突き当たる。用紙3がレジストローラ14A,14Bに突き当たることでたわみ、用紙3の挿入方向における斜行が補正される。回転禁止時間T1は後述する回転禁止時間設定プログラムにより設定される。回転禁止時間T1は用紙3の斜行補正が完了する予測時間であり、その時間が設定される。
【0056】
ソレノイド61は、設定された回転禁止時間T1が経過した時点でオン状態からオフ状態になる。ソレノイド61がオフ状態になると、レジストローラ14Aへ動力が伝達される状態になるので、斜行が補正された用紙3がレジストローラ14A,14Bにより引き込まれる。用紙3がレジストローラ14A,14Bにより引き込まれ、用紙3の先端がレジストローラ14A,14Bにより挟持された状態になるタイミングでソレノイド61がオフ状態からオン状態になる。用紙3の先端がレジストローラ14A,14Bにより挟持された状態で、用紙3への印刷開始指令が受け付けられ用紙3の給紙が可能になるまで、ソレノイド61がオン状態を維持する。用紙3の給紙が可能になると、ソレノイド61はオン状態からオフ状態になり、レジストローラ14Aへ動力が伝達され、用紙3の給紙が開始される。
【0057】
(手差し給紙動作)
次に手差し給紙動作について図3、図9を用いて説明する。図9は、手差し給紙が連続して成功した場合の手差しセンサ、レジ後センサ、メインモータ、及び、ソレノイド動作を示すタイミングチャートである。ユーザにより用紙3が手差し供給口8より挿入され、用紙3の先端が手差しセンサ21を通過すると、手差しセンサ21が用紙3有りを検出する。手差しセンサ21が用紙3有りを検出すると、レジストローラ14Aへの動力伝達が遮断されるので、挿入された用紙3がレジストローラ14A,14Bに突き当たる。ユーザは用紙3がレジストローラ14Aによって引き込まれるまで突き当てている。用紙3が引き込まれて、用紙3の先端がレジストローラ14A,14Bにより挟持されると、ユーザは用紙3を手差し給紙できる位置に配置したことになる。
【0058】
用紙3がレジストローラ14A,14Bにより挟持された後に、ユーザが外部のコンピュータ57を操作してレーザプリンタ1が印刷開始の指令を受信することで、用紙3の手差し給紙動作が開始される。用紙3が給紙されて用紙3の先端がレジ後センサ22を通過すると、レジ後センサ22は用紙3有りを検出する。そして、その検出タイミングに基づいて、スキャナ部25におけるレーザ光の出射タイミングが調整され、感光体ドラム31への露光が開始される。そして、用紙3が感光体ドラム31と転写ローラ34との間を通過するときに受信した印刷データの画像が用紙3上に転写される。
【0059】
(手差し給紙プログラム)
次に手差し開口部8から挿入された用紙3を給紙する手差し給紙プログラムについて図3、図5及び図9を用いて説明する。図5は、手差し給紙プログラムの処理を示すフローチャートである。手差し給紙プログラムは、手差し開口部8から挿入された用紙3に画像を形成するために、手差し給紙をするプログラムである。
【0060】
図5に示す手差し給紙プログラムは、レーザプリンタ1の電源が投入されると実行される。CPU51は、手差し給紙プログラムが実行されると、手差し開口部8から手差しにより挿入される用紙3の有無を手差しセンサ21により監視する(S10)。用紙3が手差し開口部8より挿入され、用紙3が検出された場合(S10:Yes)には、後述する回転禁止時間設定プログラムによりレジストローラ14A,14Bの回転禁止時間が設定される(S11)。回転禁止時間は、レジストローラ14A,14Bが用紙3の斜行を補正するために、手差しセンサ21により用紙3が検出されてから回転を禁止された停止状態のレジストローラ14A,14Bに用紙の先端が突き当てられ、用紙3にたわみが生じて用紙の斜行が補正されるのに必要な時間である。
【0061】
次に、タイマ58によりレジストローラ14Aの回転禁止時間の計測が開始される(S12)。そして、オフ状態のソレノイド61がオン状態となる(S13)。ソレノイド61がオン状態になると、レジストローラ14Aを駆動するために伝達されていたメインモータ60の動力が遮断され、レジストローラ14Aの回転が停止状態となる。停止状態のレジストローラ14A,14Bに挿入された用紙3の先端が突き当てられると、用紙3の斜行が補正される。
【0062】
また、ソレノイド61がオン状態になると、メインモータ60の駆動を開始する(S14)。これにより、メインモータ60は、停止状態から徐々に回転速度を上げ、所定速度に到達したところで定速回転になる。このメインモータ60の回転に伴って、給紙ローラ13、レジストローラ14A、感光体ドラム31等が回転駆動される。S14では、電源投入時等のメインモータ60が停止している状態から定速回転になる状態を説明したが、既にメインモータ60が定速回転している場合に、S14の処理が行われる場合は、メインモータ60の駆動を定速回転の状態で継続する。
【0063】
S12からタイマ58により計測されている回転禁止時間がS11で設定された回転禁止時間を越えると(S15:Yes)、ソレノイド61がオフ状態となるとともに(S16)、用紙3の引き込み時間の計測がタイマ58により開始される(S17)。ソレノイド61がオフ状態となると、メインモータ60の動力が再びレジストローラ14Aに伝達されることにより、レジストローラ14Aが回転する。レジストローラ14Aが回転すると、突き当てられている用紙3がレジストローラ14A,14Bに挟持され、本体ケーシング2内に引き込まれる。用紙3が引き込まれると、ユーザは用紙3から手を離す。ソレノイド61のオフ状態は、所定の用紙引き込み時間T2が経過するまで継続する(S18:No)。所定の用紙引き込み時間T2が経過すると(S18:Yes)、ソレノイド61がオン状態となる(S19)。ソレノイド61がオン状態になると、レジストローラ14A,14Bの回転が停止し、引き込まれた用紙3の先端は、レジ後センサ22よりも手前の位置で停止する。本実施形態の手差し給紙プログラム、メインモータ60、ソレノイド61、及び、制御部54は、本発明の制御部の一例である。
【0064】
続いて、CPU51は、外部のコンピュータ57により送信された印刷データを受信すると(S20:Yes)、印刷を実行するために給紙動作を開始したか否か判断する(S21)。給紙動作が開始したと判断すると(S21:Yes)、ソレノイド61がオフ状態となり(S24)、レジストローラ14Aが回転する。レジストローラ14Aの回転により、レジ後センサ22よりも手前の位置で停止していた用紙3が画像形成部5に向かって搬送される。次に、給紙動作が終了したか否かが判断される(S25)。用紙3の後端がレジ後センサ22により検出されると、CPU51は、給紙動作が終了したと判断する(S25:Yes)。給紙動作が終了したと判断されると次に手差し印刷する印刷データがあるか否かが判断される(S26)。次の印刷データが無いと判断されると(S26:No)、印刷が終了した後にメインモータ60の駆動が停止され(S27)、この手差し給紙プログラムに沿った処理が終了する。次の印刷データがあると判断されると(S26:Yes)、用紙3の挿入を検出する状態となる。つまり手差しセンサ21がオン状態であるか否かが判断される(S28)。手差しセンサ21がオン状態でなければ(S28:No)、S26とS28との処理を繰り返し手差しセンサ21がオン状態になるまで用紙3の挿入を検出する状態となる。用紙3が挿入されて、手差しセンサ21がオン状態であると判断されると(S28:Yes)、S11の処理に戻る。
【0065】
S20で印刷データを受信しない場合(S20:No)、メインモータ60の駆動が停止され(S22)、ソレノイド61がオフ状態となって(S23)この手差し給紙プログラムが終了する。
【0066】
(回転禁止時間設定プログラム)
次に、用紙3の挿入具合に応じて、レジストローラ14Aの回転禁止時間を設定するための回転禁止時間設定プログラムについて説明する。S11では、回転禁止時間設定プログラムに沿って、図6に示す処理が行われる。図6は、レジストローラの回転禁止時間設定プログラムの処理を示すフローチャートである。本処理では、延長フラグ、又は、短縮フラグがRAM53に設定されているか否かが判断される。S30では、延長フラグが設定されているか否かが判断される。延長フラグが設定されている場合(S30:Yes)、第1禁止時間T1よりも長い第2禁止時間T3が回転禁止時間に用いられる(S33)。延長フラグが設定されていない場合(S30:No)、短縮フラグが設定されているか否かが判断される(S31)。短縮フラグが設定されていない場合(S31:No)、初期設定の第1禁止時間T1が用いられる(S32)。短縮フラグが設定されている場合(S31:Yes)、第1禁止時間T1よりも短い第3禁止時間T4が用いられる(S34)。本実施形態の第1禁止時間T1は、本発明の第1禁止時間の一例である。本実施形態の第2禁止時間T3は、本発明の第2禁止時間の一例である。本実施形態の第3禁止時間T4は、本発明の第3禁止時間の一例である。本実施形態の回転禁止時間設定プログラム、及び、S11は、本発明の変更部の一例である。
【0067】
(用紙引き抜き監視プログラム)
次に、手差し用紙が適切に給紙されたか否かを検出するための、手差し用紙が引き抜かれたか否かを監視する用紙引き抜き監視プログラムを説明する。図5に示す手差し給紙プログラムの実行と並列して図7に示す処理が実行される。図7は、用紙引き抜き監視プログラムの処理を示すフローチャートである。また、用紙引き抜き監視プログラムを図7、図9、及び図10を用いて説明する。図10は、用紙の引き込み後に用紙が引き抜かれた場合の手差しセンサ、レジ後センサ、メインモータ、及び、ソレノイド動作を示すタイミングチャートである。CPU51は、待機状態において、手差し開口部8から手差しにより挿入される用紙3の有無を手差しセンサ21により監視している(S10)。用紙3が検出された場合(S10:Yes)には、用紙引き抜き監視時間の計測がタイマ58により開始される(S40)。用紙の引き抜きは、ユーザによって、本体ケーシング2内に引き込まれた用紙3が用紙3の搬送方向の上流側に手差し開口部8から引き抜かれることにより発生する。ユーザは、引き込まれた用紙3に斜行ずれが発生した場合、用紙3を一度引き抜いた後に再度手差し開口部8に用紙3を挿入する。用紙3が引き抜かれたか否かを判断するために、手差しセンサ21により用紙3有りを検出してから用紙3無しを検出するまでの時間を計測し、給紙動作において意図しないタイミングで用紙3無しを検出した場合に用紙3が引き抜かれたと判断する。意図しないタイミングとは、用紙3が給紙されて、用紙3の後端が手差しセンサ21を通過するタイミングでないタイミングである。例えば、設定された回転禁止時間が経過する前のタイミングである。
【0068】
手差しセンサ21がオン状態からオフ状態になったと判断された場合(S41:Yes)、用紙3が本体ケーシング2内から引き抜かれたとして、S42の処理を実行する。用紙3が引き抜かれたとするため、並列して実行している図5の手差し給紙プログラムは実行している処理を停止させ、S10の処理から実行させる。S42では、計測している用紙引き抜き監視時間が所定時間を経過したか否かが判断される。所定時間とは、例えば、手差しセンサ21がオフ状態からオン状態になったと判断されてからレジストローラ14A,14Bにより用紙3の引き込み動作が終了するまでにかかる時間である。図5のS10からS19までにかかる時間に相当する。本実施形態のS42における所定時間は、本発明の第1禁止時間の一例である。引き抜き監視時間が所定時間を経過した場合(S42:Yes)、つまり、用紙3がレジストローラ14A,14Bにより引き込み完了後に比較的長い時間放置されてから引き抜かれた場合、延長フラグがクリアされ(S47)、処理は図7のS10に戻る。引き込み完了後に比較的長い時間放置されてから引き抜かれる場合としては、用紙3が手差し開口部8に挿入されて用紙3の引き込み動作が完了した後に、印刷データが受信されていない状態で用紙3が引き抜かれる場合である。印刷データが受信されないと、レジストローラ14A,14Bによる給紙動作が開始されないので、S42で引き抜き監視時間が所定時間を経過した場合、手差し用紙3への印刷が途中で中止されたとしてS47の処理が行われる。
【0069】
引き抜き監視時間が所定時間を経過していない場合(S42:No)、つまり、用紙3がレジストローラ14A,14Bにより引き込み完了後に比較的短い時間で引き抜かれた場合、再差し込み時間の計測がタイマ58により開始される(S43)。用紙3がレジストローラ14A,14Bにより引き込み完了後に比較的短い時間で引き抜かれた場合は、引き込みで用紙3が斜行しその斜行を修正するため、用紙3が再度挿入される可能性が高い。用紙3が再度挿入されたことを検出するために、S44では、手差しセンサ21がオフ状態からオン状態になったか否かが判断される。手差しセンサ21がオン状態になったと判断された場合、(S44:Yes)、つまり再度用紙3が挿入された場合、延長フラグがセットされ(S48)、短縮フラグがクリアされ(S49)、処理はS40に戻る。用紙3が再度挿入された場合、手差し用紙3への印刷が継続されるとして、S48の処理が行われる。用紙3が引き抜かれているので、用紙3の引き込み動作が正常に行われなかった可能性が高い。つまり、ユーザが用紙3の手差し給紙の給紙作業に慣れていないとし、回転禁止時間を延長させることで、適切に手差し給紙の給紙作業が行えるようにしている。回転禁止時間を延長させるので、短縮フラグをクリアする(S49)。
【0070】
S48で、延長フラグがセットされると、図6のS33で第1禁止時間T1よりも長い第2禁止時間T3が採用される。図10に示すように、ユーザ操作により用紙3が一度差し込まれてから引き抜かれたことを検出し、再度用紙3が差し込まれたことを検出すると、第2禁止時間T3が経過するまでソレノイドがオン状態となり、レジストローラ14Aの回転が禁止される。
【0071】
手差しセンサ21がオフ状態からオン状態になったと判断されない場合(S44:No)、つまり、用紙3が挿入されない場合S45で再差し込み時間が所定時間を経過した否かが判断される。再差し込み時間が所定時間を経過しない場合(S45:No)、S44に戻り、S44とS45の処理が繰り返されることで、再度用紙3の挿入を待つ。所定時間を経過しても再度用紙3が挿入されない場合(S45:Yes)、延長フラグがクリアされ(S46)、S10の処理を実行する。S45の所定時間とは、ユーザが用紙3を再挿入するのに要する時間であり、例えば2秒間である。S46では、用紙3がレジストローラ14Aによる給紙動作が開始される前に引き抜かれた状態で、用紙3の再差し込みが行われない状態であるので、手差し用紙3への印刷が途中で中止されたとして処理が行われる。
【0072】
S41で、手差しセンサ21がオン状態からオフ状態になったと判断されない場合(S41:No)、つまり、用紙3が本体ケーシング2内から引き抜かれていないとし、次にレジストローラ14Aによる給紙動作が開始されたか否かが判断される(S50)。S50のレジストローラ14Aによる給紙動作が開始されたか否かは、並列して実行している図5の手差し給紙プログラムにおけるS21での給紙が開始されたか否かにより判断される。給紙動作が開始されていない場合(S50:No)、S41の処理が繰り返される。給紙動作が開始されると(S50:Yes)、S51の処理を実行する。S51では、給紙動作が終了したか否かが判断される。給紙動作が終了したと判断されるまで(S51:No)S51が繰り返される。給紙動作が終了したと判断されると(S51:Yes)、S52の処理を実行する。
【0073】
S52では、印刷が成功したか否かが判断される。印刷が成功したか否かは、図8に示す印刷成功判断プログラムにより判断される。図8は、印刷成功判断プログラムの処理を示すフローチャートである。印刷成功判断プログラムについては後述する。印刷が成功したと判断された場合(S52:Yes)、給紙連続成功回数がインクリメントされる(S53)。給紙連続成功回数はRAM53に記憶される。給紙連続成功回数は、印刷が連続して1枚成功する毎にインクリメントされる。本実施形態のS52は、本発明の判断部の一例である。
【0074】
次にS54では、インクリメントされた給紙連続成功回数が所定回数N(例えば3回)以上か否かが判断される。インクリメントされた給紙連続成功回数が所定回数N以上である場合(S54:Yes)、手差し給紙の給紙作業に慣れているユーザによって用紙3が挿入されている可能性が高いため、延長フラグがクリアされる(S55)。この所定回数Nは、延長フラグをクリアするための条件である。給紙連続成功回数が所定回数N以上でない場合(S54:No)、又は、S55の処理を実行すると、給紙連続成功回数が所定回数M(例えば5回)以上か否かが判断される(S56)。給紙連続成功回数が所定回数M以上である場合(S56:Yes)、短縮フラグがセットされる(S57)。給紙連続成功回数が所定回数M以上でない場合(S56:No)、又は、S57の処理が実行されると、S10の処理に移る。所定回数Mは、短縮フラグをセットするための条件である。給紙連続成功回数が所定回数M以上である場合(S56:Yes)、ユーザが手差し給紙の給紙作業に慣れているとし、回転禁止時間を短縮することで給紙作業の時間を短縮することができ、給紙作業の効率を向上させることができる。
【0075】
S55で延長フラグがクリアされ、短縮フラグがセットされていない状態であると、図6に示す回転禁止設定プログラムにより回転禁止時間が図9に示すように第1禁止時間T1よりも長い第2禁止時間T2から第1禁止時間T1に設定される。また、S55で延長フラグがクリアされ、S57で短縮フラグがセットされると、図6に示す回転禁止時間設定プログラムにより回転禁止時間が図9に示すように第1禁止時間T1よりも短い第3禁止時間T4に設定される。つまり、第1禁止時間T1よりも早い第3禁止時間T4でレジストローラ14Aによる用紙3の引き込み動作が開始され、手差し給紙の給紙作業に慣れたユーザにとって効率の良い給紙作業を行うことができる。S52で、印刷に失敗したと判断されると(S52:No)、給紙連続成功回数がクリアされ(S58)、短縮フラグがクリアされ(S59)、S10の処理に移る。
【0076】
(印刷成功判断プログラム)
次に、手差し給紙された用紙3に印刷が正常に行われたか否かを判断する印刷成功判断プログラムについて図8を用いて説明する。図8に示す印刷成功判断プログラムは、図5のS19の実行と同時に実行される。印刷成功判断プログラムが実行されると、用紙3の先端がレジ後センサ22よりも手前の位置で停止している用紙3の再搬送が開始されたか否かが判断される(S60)。再搬送が開始されるまでS60を繰り返す(S60:No)。再搬送が行われたか否かは、図5のS24が行われたか否かにより判断される。つまり、レジストローラ14A,14Bにより給紙動作が開始され、ソレノイド61がオン状態からオフ状態になったか否かにより判断される。ソレノイド61がオン状態からオフ状態になったと判断されると、レジストローラ14A,14Bによって用紙3が搬送される。
【0077】
S61では、レジストローラ14A,14Bによって用紙3が再搬送されてから、用紙3がレジ後センサ22により検出されるまでの待ち時間t1[n]の計測が開始される。S62では、レジ後センサ22がオン状態になったか否かが判断される。レジ後センサ22がオン状態でないと判断された場合(S62:No)、S62が繰り返される。レジ後センサ22がオン状態になったと判断された場合(S62:Yes)、待ち時間t1[n]がRAM53に記憶される。待ち時間t1[n]は、図5の手差し給紙プログラムにより用紙3が正常に引き込まれていれば、用紙3が再搬送されてからレジ後センサ22によって検出されるまでの時間が所定の範囲に入る。
【0078】
次に、S63では、レジ後センサ22のオン状態が保持されている保持時間t2[n]の計測が開始される。保持時間t2[n]は、レジ後センサ22がオン状態になってからオフ状態になるまでの時間である。つまり、用紙3の先端がレジ後センサ22を通過してから用紙3の後端がレジ後センサ22を通過するまでの時間である。S65で、レジ後センサ22がオフ状態になったか否かが判断される。レジ後センサ22がオフ状態でないと判断された場合(S65:No)、S65が繰り返される。レジ後センサ22がオフ状態になったと判断された場合(S65:Yes)、保持時間t2[n]がRAM53に記憶される(S66)。
【0079】
S67では、待ち時間t1[n]が所定の範囲であるか否かが判断される。所定の範囲とは、手差し給紙プログラムにより用紙3が正常に引き込まれたときに、用紙3が再搬送されてからレジ後センサ22によって検出されるまでに要する時間として許容される範囲である。所定の範囲を超えると手差し給紙プログラムにより用紙3が正常に引き込まれなかったと判断する。待ち時間t1[n]が所定の範囲でない場合(S67:No)、n枚目の印刷が失敗したと判断し(S72)、S60の処理に移る。待ち時間t1[n]が所定の範囲である場合(S67:Yes)、S68の処理を実行する。
【0080】
S68では、印刷枚数nが3枚以上であるか否かが判断される。印刷枚数nが3枚以上でなければ、n枚目の印刷は成功したと判断し(S73)、S60の処理に移る。印刷枚数nが3枚以上である場合(S68:Yes)、n枚目の保持時間t2[n]とn−1枚目の保持時間t2[n−1]との差が所定値以下であるか否かが判断される(S69)。所定値とは、n枚目とn−1枚目とで許容するばらつき具合により予め設定した値である。用紙3がレジ後センサ22を通過するのに要する時間は、用紙3の傾き角によって異なる。傾き角とは、用紙3が搬送される方向に対して用紙3が斜行している角度である。傾き角が大きければ、用紙3の斜行具合が大きくなり、用紙3がレジ後センサ22を通過するのに要する時間が長くなる。この傾き角を許容する値が所定値に設定されている。例えばn枚目とn−1枚目とで傾き角8度までを許容する値に設定された場合、A4サイズの用紙3を搬送速度120mm/sで算出すると、所定値は24msに設定される。
【0081】
n枚目の保持時間t2[n]とn−1枚目の保持時間t2[n−1]との差が所定値以下でない場合(S69:No)、n枚目の印刷が失敗したと判断し(S74)、S60の処理に移る。n枚目の保持時間t2[n]とn−1枚目の保持時間t2[n−1]との差が所定値以下である場合(S69:Yes)、n枚目の保持時間t2[n]とn−2枚目の保持時間t2[n−2]との差が所定値以下であるか否かが判断される(S70)。S70の所定値もS69の所定値と同じ値が用いられる。
【0082】
n枚目の保持時間t2[n]とn−2枚目の保持時間t2[n−2]との差が所定値以下でないと判断された場合(S70:No)、S74の処理に移る。n枚目の保持時間t2[n]とn−2枚目の保持時間t2[n−2]との差が所定値以下であると判断された場合(S70:Yes)、n枚目の印刷は成功したと判断し(S71)、S60の処理に移る。
【0083】
1枚前の保持時間t2[n−1]と2枚前の保持時間t2[n−2]とを用いることにより、用紙3が正常に引き込まれたか否かをより正確に判断することができ、手差し給紙の給紙作業が適切に行われたか否かが判断できる。
【0084】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0085】
本実施形態では、ソレノイド61を用いてレジストローラ14Aの回転駆動を制御したが、周知の電磁クラッチを用いて制御してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…レーザプリンタ
3…用紙
5…画像形成部
8…手差し開口部
14A,14B…レジストローラ
21…手差しセンサ
22…レジ後センサ
51…CPU
52…ROM
53…RAM
60…メインモータ
61…ソレノイド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に画像を形成する画像形成部と、
手差し開口部から挿入される用紙の有無を検出する第1センサと、
前記用紙の搬送方向において前記第1センサよりも下流側に配置され、前記手差し開口部から挿入される用紙を前記画像形成部に搬送するレジストローラと、
前記第1センサにより用紙有りが検出されてから第1禁止時間が経過した時点で前記レジストローラを回転させるように制御する制御部と、
前記レジストローラにより用紙が適切に搬送されたか否かを判断する判断部と、
前記判断部により前記用紙が適切に搬送されていないと判断された場合、前記第1禁止時間を前記第1禁止時間よりも長い第2禁止時間に変更する変更部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記変更部は、前記第2禁止時間に変更した後に、前記判断部により前記用紙の次に搬送される第2用紙が適切に搬送されていると判断され、かつ、第2用紙の次に搬送される第3用紙が、前記判断部により前記第3用紙が適切に搬送されていると判断された場合、前記第2禁止時間から前記第1禁止時間に変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において、
前記判断部は、前記第1禁止時間が経過するまでに前記第1センサにより用紙無しが検出された場合、前記レジストローラにより用紙が適切に搬送されていないと判断することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記用紙の搬送方向において前記レジストローラよりも下流側に配置され、用紙の有無を検出する第2センサを備え、
前記判断部は、前記第2センサにより用紙毎に検出される、用紙有りが検出されている時間に所定時間以上の変動があった場合、前記用紙が適切に搬送されていないと判断することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記変更部は、前記第2禁止時間に変更した後に、前記判断部により前記用紙の次に搬送される第2用紙に画像が1回形成されると、前記第1禁止時間に変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記変更部は、前記判断部により前記用紙に画像が適切に搬送されていないと判断された後に、前記用紙の次に搬送される第2用紙が、前記判断部により適切に搬送されていないと判断された場合、前記第2禁止時間に変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記変更部は、前記判断部により前記用紙が適切に搬送されていると判断され、かつ、前記用紙の次に搬送される第2用紙が適切に搬送されていると判断された場合、前記第1禁止時間よりも短い第3禁止時間に変更することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−32201(P2013−32201A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169004(P2011−169004)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】