画像形成装置
【課題】透明トナー層を記録シートに定着させる際の有色トナー像の変形を抑える。
【解決手段】電子写真プロセスによって中間転写ベルト8上に形成したフルカラートナー像を記録シートに転写し、定着装置20によってフルカラートナー像を定着せしめた後の記録シートにおける任意の領域に、透明トナー層形成ユニット100によって透明トナー層を形成する構成において、透明トナー層形成ユニット100が、圧力可塑性の樹脂を主成分とする透明トナーからなる透明トナー層を形成するものであり、且つ、透明トナー層を記録シートに定着せしめる定着手段が、透明トナー層を加熱することなく加圧する加圧定着ローラ対195である。
【解決手段】電子写真プロセスによって中間転写ベルト8上に形成したフルカラートナー像を記録シートに転写し、定着装置20によってフルカラートナー像を定着せしめた後の記録シートにおける任意の領域に、透明トナー層形成ユニット100によって透明トナー層を形成する構成において、透明トナー層形成ユニット100が、圧力可塑性の樹脂を主成分とする透明トナーからなる透明トナー層を形成するものであり、且つ、透明トナー層を記録シートに定着せしめる定着手段が、透明トナー層を加熱することなく加圧する加圧定着ローラ対195である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙などの記録部材の表面に対して、有色トナー像に加えて、透明トナーからなる透明トナー層を形成する構成を備える複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、特許文献1や特許文献2に記載のものが知られている。これらの画像形成装置は何れも、次のようにして画像を形成するものである。即ち、電子写真プロセスによってカラートナー像を形成した後の記録紙を加熱定着装置に送って記録紙にカラートナー像を定着させた後、電子写真プロセスによってカラートナー像の上に透明トナー層を形成する。そして、記録紙を再び加熱定着装置に送って、透明トナー層を記録紙に定着させる。このようにしてカラートナー像の上に透明トナー層を形成することで、光沢のある画像を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、透明トナー層を加熱定着させる際にカラートナーの再軟化によってカラートナー像を変形させてしまうという不具合があった。また、電子写真プロセスによってカラートナー像を形成する構成に代えて、インクジェット方式によってカラーインク像を形成する構成を採用したとしても、カラーインク像を変形させてしまうおそれがある。透明トナー層を加熱定着させる際にインク中の水分を急激に蒸発させることにより、記録紙のインク画像部に顕著な皺を発生させてしまうからである。
【0004】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、透明トナー層を記録部材に定着させる際の有色像の変形を抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、記録部材に有色像を形成する有色像形成手段と、前記記録部材の全面又は一部に透明トナーからなる透明トナー層を形成する透明トナー層形成手段と、前記透明トナー層が形成された前記記録部材に対して透明トナー層の定着処理を施す定着手段とを備える画像形成装置であって、前記透明トナー層形成手段が、圧力可塑性の樹脂を主成分とする透明トナーからなる透明トナー層を形成するものであり、且つ、前記定着手段が、前記透明トナー層を加熱することなく加圧して前記記録部材に定着せしめる加圧定着手段であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、透明トナー層を記録部材に定着させる際に、記録部材を加熱しないので、加熱による有色トナーの再軟化によって有色トナー像を変形させてしまったり、加熱によるインクからの急激な水分蒸発で記録部材のインク画像部に顕著な皺を発生させたりすることがない。よって、透明トナー層を記録部材に定着させる際の有色像の変形を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】同プリンタのY用の作像ユニットと、その周囲とを示す拡大構成図。
【図3】同プリンタの層形成部のホッピングユニット内に配設されたトナー担持スリーブを示す斜視図
【図4】同このトナー担持スリーブを示す横断面図。
【図5】同トナー担持スリーブの円筒部を平面的に展開した平面展開図。
【図6】同トナー担持スリーブのA相電極に印加されるA相ホッピング用周期パルス電圧、及びB相電極に印加されるB相ホッピング用周期パルス電圧の波形を示すグラフ。
【図7】同層形成部の一部とその周囲とを示す拡大構成図。
【図8】同層形成部の飛翔制御電極に印加される記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの関係を示すグラフ。
【図9】同層形成部の回路基板を対向電極側から示す平面図。
【図10】同回路基板をトナー担持スリーブ側から示す平面図。
【図11】記録オン電圧Vc−onが印加された状態の同飛翔制御電極と、その周囲とを示す拡大模式図。
【図12】記録オフ電圧Vc−offが印加された状態の同飛翔制御電極と、その周囲とを示す拡大模式図。
【図13】同トナー担持スリーブの表面上におけるトナー担持量m/A[mg/cm2]と、担持されているトナーによる電位上昇量Vtとの関係を示すグラフ。
【図14】同トナー担持量m/Aと、飛翔制御電極や共通電極に対するトナー付着量[mg/cm2]との関係を示すグラフ。
【図15】同層形成部のホッピングユニットを拡大して示す拡大構成図。
【図16】本発明者らのテストプリントによって得られたプリント紙を示す模式図。
【図17】第1変形例に係るプリンタの透明トナー層形成ユニットの回路基板を対向電極側から示す平面図。
【図18】同回路基板をトナー担持スリーブ側から示す平面図。
【図19】第2変形例に係るプリンタの透明トナー層形成ユニットのトナー担持スリーブを示す横断面図。
【図20】同トナー担持スリーブの円筒部131を平面的に展開した平面展開図。
【図21】同トナー担持スリーブの各相の電極に印加されるパルス電圧の波形を示すグラフ。
【図22】第3変形例に係るプリンタの透明トナー層形成ユニットのホッピングユニットを、回路基板とともに拡大して示す拡大構成図。
【図23】第4変形例に係るプリンタを示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタを示す概略構成図である。同図において、このプリンタは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、M、C、Kと記す)のトナー像を生成するための4つの作像ユニットを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Yトナー像を生成するためのY用の作像ユニットを例にすると、これは図2に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体1Y、ドラムクリーニング装置2Y、除電装置(不図示)、帯電装置4Y、現像器5Y等を備えている。有色トナー像形成手段の一部として機能する作像ユニットは、プリンタ本体に脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。
【0009】
帯電装置4Yは、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる感光体1Yの表面を一様帯電せしめる。一様帯電せしめられた感光体1Yの表面は、レーザ光Lによって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。このYの静電潜像は、Yトナーと磁性キャリアとを含有するY現像剤を用いる現像器5YによってYトナー像に現像される。そして、後述する中間転写ベルト8上に中間転写される。ドラムクリーニング装置2Yは、中間転写工程を経た後の感光体1Y表面に残留したトナーを除去する。また、上記除電装置は、クリーニング後の感光体1Yの残留電荷を除電する。この除電により、感光体1Yの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他色の作像ユニットにおいても、同様にして感光体(1M,C,K)上に(M,C,K)トナー像が形成されて、中間転写ベルト8上に中間転写される。
【0010】
現像器5Yは、そのケーシングの開口から一部露出させるように配設された現像ロール5aYを有している。また、互いに平行配設された2つの搬送スクリュウ5fY、ドクターブレード5bY、トナー濃度センサ5gYなども有している。
【0011】
現像器5Yのケーシング内には、磁性キャリアとYトナーとを含む図示しないY現像剤が収容されている。このY現像剤は2つの搬送スクリュウ5fYによって撹拌搬送されながら摩擦帯電せしめられた後、現像ロール5aYの表面に担持される。そして、ドクターブレード5bYによってその層厚が規制されてからY用の感光体1Yに対向する現像領域に搬送され、ここで感光体1Y上の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体1Y上にYトナー像が形成される。現像器5Yにおいて、現像によってYトナーを消費したY現像剤は、現像ロール5aYの回転に伴ってケーシング内に戻される。
【0012】
2つの搬送スクリュウ5fYの間には仕切壁が設けられている。この仕切壁により、現像ロール5aYや図中右側の搬送スクリュウ5fY等を収容する第1供給部5cYと、図中左側の搬送スクリュウ5fYを収容する第2供給部5dYとがケーシング内で分かれている。図中右側の搬送スクリュウ5fYは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられ、第1供給部5cY内のY現像剤を図中手前側から奥側へと搬送しながら現像ロール5aYに供給する。図中右側の搬送スクリュウ5fYによって第1供給部5cYの端部付近まで搬送されたY現像剤は、上記仕切壁に設けられた図示しない開口部を通って第2供給部5dY内に進入する。そして、第2供給部5dY内において、図中左側の搬送スクリュウ5fYは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられ、第1供給部5cYから送られてくるY現像剤を図中右側の搬送スクリュウ5fYとは逆方向に搬送する。図中左側の搬送スクリュウ5fYによって第2供給部5dYの端部付近まで搬送されたY現像剤は、上記仕切壁に設けられたもう一方の開口部(図示せず)を通って第1供給部5cY内に戻る。
【0013】
透磁率センサからなる上述のトナー濃度センサ5gYは、第2供給部5dYの底壁に設けられ、その上を通過するY現像剤の透磁率に応じた値の電圧を出力する。トナーと磁性キャリアとを含有する二成分現像剤の透磁率は、トナー濃度と良好な相関を示すため、トナー濃度センサ5gYはYトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。この出力電圧の値は、図示しない制御部に送られる。この制御部は、トナー濃度センサ5gYからの出力電圧の目標値であるY用Vtrefを格納したRAMを備えている。このRAM内には、他の現像器に搭載された図示しないトナー濃度センサからの出力電圧の目標値であるM用Vtref、C用Vtref、K用Vtrefのデータも格納されている。Y用Vtrefは、後述するY用のトナー搬送装置の駆動制御に用いられる。具体的には、上記制御部は、トナー濃度センサ5gYからの出力電圧の値をY用Vtrefに近づけるように、図示しないY用のトナー搬送装置を駆動制御して第2供給部5dY内にYトナーを補給させる。この補給により、現像器5Y内のY現像剤中のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他のプロセスユニットの現像器についても、M,C,K用のトナー搬送装置を用いた同様のトナー補給制御が実施される。
【0014】
先に示した図1において、各色の作像ユニットの図中下方には、光書込装置7が配設されている。潜像形成手段たる光書込装置7は、画像情報に基づいて発したレーザ光Lを、作像ユニット6Y,M,C,Kにおけるそれぞれの感光体に照射して露光する。この露光により、感光体1Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込装置7は、光源から発したレーザ光(L)を、モータによって回転駆動したポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。
【0015】
光書込装置7の図中下側には、紙収容カセット26、これらに組み込まれた給紙ローラ27など有する紙収容手段が配設されている。紙収容カセット26は、シート状の記録体たる記録紙Pを複数枚重ねて収納しており、それぞれの一番上の記録紙Pには給紙ローラ27を当接させている。給紙ローラ27が図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転せしめられると、一番上の記録紙Pが給紙路40に向けて送り出される。
【0016】
この給紙路40の末端付近には、レジストローラ対28が配設されている。レジストローラ対28は、記録紙Pを挟み込むべく両ローラを回転させるが、挟み込んですぐに回転を一旦停止させる。そして、記録紙Pを適切なタイミングで後述の2次転写ニップに向けて送り出す。
【0017】
作像ユニット6Y,M,C,Kの図中上方には、中間転写ベルト8を張架しながら無端移動せしめる転写ユニット15が配設されている。転写手段たる転写ユニット15は、中間転写ベルト8の他、2次転写バイアスローラ19、クリーニング装置10などを備えている。また、4つの1次転写バイアスローラ9Y,M,C,K、2次転写バックアップローラ12、クリーニングバックアップローラ13、テンションローラ14なども備えている。中間転写ベルト8は、これら7つのローラに張架されながら、少なくとも何れか1つのローラの回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。1次転写バイアスローラ9Y,M,C,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト8を感光体1Y,M,C,Kとの間に挟み込んでそれぞれ1次転写ニップを形成している。これらは中間転写ベルト8の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する方式のものである。1次転写バイアスローラ9Y,M,C,Kを除くローラは、全て電気的に接地されている。中間転写ベルト8は、その無端移動に伴ってY,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、感光体1Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト8上に4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0018】
2次転写バックアップローラ12は、2次転写ローラ19との間に中間転写ベルト8を挟み込んで2次転写ニップを形成している。中間転写ベルト8上に形成された可視像たる4色トナー像は、この2次転写ニップで記録紙Pに転写される。そして、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト8には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、クリーニング装置10によってクリーニングされる。2次転写ニップで4色トナー像が一括2次転写された記録紙Pは、転写後搬送路41を経由して加熱定着装置20に送られる。
【0019】
加熱定着装置20は、内部にハロゲンランプ等の発熱源を有する定着ローラ20aと、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ20bとによって定着ニップを形成している。加熱定着装置20内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ20aに密着させるようにして、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
【0020】
加熱定着装置20内でフルカラー画像が定着せしめられた記録紙Pは、加熱定着装置20から定着後搬送路42に送られた後、排紙ローラ対21のローラ間に挟み込まれる。そして、機外に排出された後、後述する透明トナー層形成ユニット100に送り込まれる。この透明トナー層形成ユニット100は、記録紙Pの表面に形成されたトナー像の上に、透明トナー層を形成して定着させるものである。片面プリントモードが選択されている場合には、記録紙Pの第1面にフルカラー画像が定着せしめられた後、透明トナー層形成ユニット100により、記録紙Pの第1面のフルカラー画像の上に、透明トナー層が形成及び定着される。そして、透明トナー層形成ユニット100から排出されて、プリンタ本体筺体の上部に形成されたスタック部50a上にスタックされる。
【0021】
一方、両面プリントモードが選択され、且つ、記録紙Pの第1面だけにフルカラー画像が定着せしめられた状態の場合、透明トナー層形成ユニット100は、第1面のフルカラー画像の上に透明トナー層を定着させた記録紙Pを、スタック部50aに排出しないで、プリンタ本体内に逆搬送する。逆搬送された記録紙Pは、逆回転する排紙ローラ対21から反転搬送路43内に送り込まれる。反転搬送路74は、鉛直方向上側から下側に向けて湾曲しながら延在する形状になっており、路内に第1反転搬送ローラ対22、第2反転搬送ローラ対23、第3反転搬送ローラ対24を有している。記録紙Pは、これらローラ対のニップを順次通過しながら搬送されることで、その上下を反転させる。上下反転後の記録紙Pは、上述の給紙路40に戻された後、再び2次転写ニップに至る。そして、今度は、画像非担持面を中間転写ベルト8に密着させながら2次転写ニップに進入して、その第2面に中間転写ベルト上の4色トナー像が一括2次転写される。このようにして第2面にもフルカラー画像が形成された記録紙Pは、転写後搬送路41、加熱定着装置20、定着後搬送路42、排紙ローラ対21を順次経由して、機外の透明トナー層形成ユニット100に送り込まれる。そして、第2面のフルカラー画像の上にも透明トナー層が定着された後、透明トナー層形成ユニット100から排出されてプリンタ本体上部のスタック部50aにスタックされる。
【0022】
転写ユニット15と、これよりも上方にあるスタック部50aとの間には、ボトル支持部31が配設されている。このボトル支持部31は、Y,M,C,Kトナーを収容するトナー収容部たるトナーボトル32Y,M,C,Kを搭載している。トナーボトル32Y,M,C,Kは、互いに水平よりも少し傾斜した角度で並ぶように配設され、Y、M、C、Kという順で配設位置が高くなっている。トナーボトル32Y,M,C,K内のY,M,C,Kトナーは、それぞれ後述するトナー搬送装置により、作像ユニット6Y,M,C,Kの現像器に適宜補給される。これらのトナーボトル32Y,M,C,Kは、作像ユニット6Y,M,C,Kとは独立してプリンタ本体に脱着可能である。
【0023】
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
透明トナー層形成ユニット100は、受入ローラ対101と、層形成部190と、加圧定着ローラ対195と、排出ローラ対196とを有している。そして、層形成部190は、ホッピングユニット120と、回路基板110と、対向電極板104とを有している。プリンタ本体の排紙ローラ対21によってプリンタ本体から排出された記録紙Pは、透明トナー層形成ユニット100内に受け入れられた後、受入ローラ対101のローラ間に挟み込まれる。そして、受入ローラ対101の回転駆動によってユニット内部に向けて送り込まれる。この際、記録紙Pは、層形成部190内を通過する。具体的には、層形成部190は、対向電極板104と、これの真下に配設された回路基板110とを、所定の間隙を介して対向させている。記録紙Pは、透明トナー層の形成対象となる面を下に向けた状態で、受入ローラ対101による搬送で前述の間隙を通過する。この際、下方に向けた面の全域のうち、フルカラー画像が形成されている領域に、透明トナー層が形成される。
【0024】
図3は、層形成部190のホッピングユニット(図1の120)内に配設されたトナー担持スリーブ130を示す斜視図である。また、図4は、このトナー担持スリーブ130を示す横断面図である。また、図5は、トナー担持スリーブ130の円筒部131を平面的に展開した平面展開図である。図3に示されるように、トナー担持スリーブ130は、円筒部131、これの軸線方向の両端面にそれぞれ接続されたフランジ136,138、それぞれのフランジの中心から突出する軸部材137,139などを有している。円筒部131の周面には、ローラ軸線方向に延在する形状の複数の電極133が、周方向(回転方向)に所定のピッチで並ぶように形成されている。これら電極のうち、周方向において1個おきに並んでいるもの同士は、互いに同じ電位状態にされる電気的に同相の電極になっている。具体的には、円筒部131の周面には、図4や図5に示されるように、第1ホッピング電極たるA相電極133aと、第2ホッピング電極たるB相電極133bとが周方向に交互に並ぶように配設されている。A相電極133aは、円筒部131の軸線方向の一端まで延在しており、円筒部131の一端には金属製のフランジ136が接続されている(図3を参照)。このフランジ136により、複数のA相電極133aが互いに電気的に導通している。また、B相電極133bは、円筒部131の軸線方向の他端まで延在しており、円筒部131の他端には金属製のフランジ138が接続されている。このフランジ138により、複数のB相電極133bが互いに電気的に導通している。
【0025】
図3において、トナー担持スリーブ130は、後述する透明トナーを自らの表面上に担持するものであり、軸線方向の両端の軸部材137,139がそれぞれ回転自在に支持されながら回転駆動される。そして、図示のように、図中左側のフランジ136には、搬送制御部191によってA相ホッピング用周期パルス電圧が印加される。この印加は、フランジ136に摺擦する図示しない摺擦電極を介して行われる。フランジ136に印加されたA相ホッピング用周期パルス電圧は、複数のA相電極133aにそれぞれ導かれる。また、図中右側のフランジ138には、搬送制御部191によってB相ホッピング用周期パルス電圧が印加される。この印加は、フランジ138に摺擦する図示しない摺擦電極を介して行われる。フランジ138に印加されたB相ホッピング用周期パルス電圧は、複数のB相電極133bにそれぞれ導かれる。
【0026】
図6は、A相電極133aに印加されるA相ホッピング用周期パルス電圧、及びB相電極133bに印加されるB相ホッピング用周期パルス電圧の波形を示すグラフである。A相ホッピング用周期パルス電圧と、B相ホッピング用周期パルス電圧とは、図示のように互いに逆位相になっており、単位時間あたりにおける平均電位は互いに同じである。それぞれのホッピング用周期パルス電圧の波形における中心位置で水平方向に延在している線が、この平均電位を示している。これにより、A相電極133aやB相電極133bは、平均的に透明トナーとは逆極性の電位を帯びる。このようなホッピング用周期パルス電圧がそれぞれの電極に印加されると、トナー担持スリーブ130における円筒部131の表面上に担持されている透明トナーのトナー粒子が、A相電極133a上とB相電極133b上との間を往復移動するように繰り返しホッピングする。これにより、トナー担持スリーブ130の表面上には、透明トナーのクラウドが形成される。
【0027】
A相ホッピング用周期パルス電圧やB相ホッピング用周期パルス電圧としては、周波数が0.5〜7[kHz]でピークツウピーク電圧が±60〜±300Vである周期パルス電圧に、平均電位調整のためのDC電圧(トナーとは逆極性)を重畳したものを例示することができる。なお、図示のような矩形波状の周期パルス電圧では、極性が瞬時に切り替わるため、トナーに対して大きな静電力を付与することが可能である。但し、サイン波状のパルス電圧や三角波状のパルス電圧を採用してもよい。また、A相電極133aとB相電極133bとのうち、一方に対して周波数fの矩形波状のホッピング用周期パルス電圧を印加する一方で、もう一方に対して前記パルス電圧の平均電位となる直流電圧を印加しても、互いに逆位相のホッピング用周期パルス電圧を採用する場合と同様に、トナー粒子をホッピングさせることが可能である。
【0028】
円筒部131の周面におけるA相電極133a上とB相電極133bとの間をホッピングで往復移動しているトナー粒子は、トナー担持スリーブ130の回転駆動に伴って、回路基板110(図1参照)に対向する層形成領域まで搬送される。そして、その層形成領域にて、その放物線状のホッピング軌道の頂点付近に達して回路基板110の近傍に至ると、必要に応じて回路基板110の後述する図示しない貫通孔内に取り込まれて、記録紙P上の透明トナー層の形成に寄与する。
【0029】
なお、図4に示されるように、円筒部131の表面には、絶縁材料からなる表面保護層134が設けられている。この表面保護層134により、トナー粒子とA相電極133aやB相電極133bとの直接接触を回避することで、電極からトナー粒子への電荷注入の発生を回避している。
【0030】
円筒部131の円筒状の基材132としては、ガラス基板、樹脂基板、セラミックス基板等の絶縁性材料からなる基板、アルミ等の導電性材料からなる基板にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルム等の変形可能な材料からなる基板などを用いることができる。
【0031】
A相電極133aやB相電極133bについては、次のようにして作成した。即ち、基板132としては、樹脂やセラミックスなどの絶縁性材料からなるもの、アルミなどの導電性材料からなる基材にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなるものなどを用いることができる。このような基板132の表面上にAl、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜1[μm]の厚みで成膜してから、これをフォトリソグラフィー技術等によって所要の電極形状にパターン化して各電極を得た。導電性材料からなる膜を、メッキ等によって電極形状にパターン加工してもよい。
【0032】
表面保護層134としては、例えばSiO2、TiO2、TiN、Ta2O5などを厚さ0.5〜2[μm]で成膜して形成している。ポリカーボネート、ポリイミド、メチルメタアクリレート等の有機材料を0.5〜2μm厚に薄膜印刷塗布して加熱硬化したものでもよい。
【0033】
図7は、層形成部190の一部とその周囲とを示す拡大構成図である。トナー担持体としてのトナー担持スリーブ130は、表面上のトナー粒子をA相電極とB相電極との間でホッピングさせて透明トナーのクラウドを形成しながら、図中反時計回り方向に回転駆動する。このトナー担持スリーブ130の上方には回路基板110が配設されており、スリーブとの間に距離dのギャップを介在させている。回路基板110の上方では、記録紙Pが図中矢印A方向に搬送されており、その上方には対向電極板104が記録紙Pと回路基板110とを介してトナー担持スリーブ130に対向している。
【0034】
回路基板110は、絶縁性基板111を具備している。また、絶縁性基板111に形成された複数の貫通孔114と、それぞれの貫通孔114に個別に対応する複数の飛翔制御電極112と、貫通孔114や飛翔制御電極112を避けた領域の殆どに渡って延在する共通電極118とを具備している。
【0035】
図8は、孔近傍電極としての飛翔制御電極112に印加される記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの関係を示すグラフである。また、図9は、回路基板110を対向電極側から示す平面図である。また、図10は、回路基板110をトナー担持スリーブ側から示す平面図である。
【0036】
図7では、便宜上、貫通孔114と飛翔制御電極112との組合せを1つしか示していなかったが、図9、図10に示されるように、回路基板110には、その組合せが複数形成されている。飛翔制御電極112は、そのリング形状のループ内側に1つの貫通孔114を位置させるように形成されている。複数の飛翔制御電極112には、それぞれ金属からなる図示しないリード部113が繋がっており、これらリード部は互いに絶縁を維持する状態で、後述する記録制御部(図7の128)に接続されている。
【0037】
図10において、リング状の飛翔制御電極112の電極幅は10〜100[μm]である。リング状の飛翔制御電極112の内側に形成された貫通孔114の径は、形成するドットの径に応じて決定されるが、直径φで30〜150[μm]程度である。リング状の飛翔制御電極112の外側には、電極の形成されていないリング状の領域が20〜50[μm]の幅で形成されたおり、その更に外側には、共通電極118が形成されている。この共通電極118に対しては、図示しない共通電源によって直流電圧からなる共通バイアスVgが印加される。
【0038】
回路基板110は、例えば次のようにして製造されたものである。即ち、厚さ30〜100[μm]の絶縁性基板111は、ポリイミド、PET、PEN、PES等の絶縁性フィルムからなる。この絶縁性基板111の表面に、厚さ0.2〜1[μm]程度の金属蒸着膜(例えばアルミ蒸着膜)を形成する。次に、フォトリソグラフィー技術に用いるフォトレジストをスピンナで塗布後、プリベーク及びマスク露光を行う。そして、フォトレジストの加熱硬化を進めた後、アルミニウムエッチング液によってアルミニウム蒸着膜を個々の電極やリードの形状にパターンニングする。フィルムの裏面にも電極パターンが必要な場合には、同様のパターンニングを行う。貫通孔114については、電極パターン形成後にパンチ加工、レーザー加工、スパッタエッチング加工等のドライエッチング加工などによって形成する。
【0039】
図7に示されるように、搬送制御部191は、トナー担持スリーブ130のA相電極やB相電極に対し、図6に示されるA相ホッピング用周期パルス電圧やB相用周期パルス電圧を印加して、スリーブ表面上のトナー粒子を電極間でホッピングさせる。それら周期パルス電圧は、何れもデューティ比が50%になっているので、ピークツウピーク電圧Vppの中心電位が、スリーブ表面上での平均電位Vsとなる。
【0040】
一方、回路基板110の飛翔制御電極112は記録制御部128に接続されている。この記録制御部128は、回路基板110の複数の飛翔制御電極112に対する、記録オン電圧Vc−onや記録オフ電圧Vc−off(図8参照)の印加をそれぞれ個別に入切することができる。図8に示される記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの間の点線は、上述したA相ホッピング電圧とB相ホッピング電圧との平均電位Vsを示している。つまり、ホッピング電圧の平均電位Vsは、飛翔制御電極112に印加される記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの間の値になっている。より詳しく説明すると、記録オン電圧Vc−onは、スリーブの平均電位Vsよりも、トナーの帯電極性とは逆極性側に大きな値になっている。これにより、複数の飛翔制御電極112のうち、記録オン電圧Vc−onが印加されたものは、その上方に位置しているスリーブ表面上のホッピングトナーを自らに向けて引き寄せるようになる。これに対し、記録オフ電圧Vc−offは、スリーブの平均電位Vsよりも、トナーの帯電極性側に大きな値になっている。これにより、複数の飛翔制御電極112Yのうち、記録オフ電圧Vc−offが印加されたものは、その上方に位置しているスリーブ表面上のホッピングトナーを自らと反発させるようになる。
【0041】
回路基板110と記録紙Pとを介してトナー担持スリーブ130に対向している対向電極板104には、対向電源116によって対向バイアスVpが印加されている。この対向バイアスVpは、透明トナーの帯電極性とは逆極性であり、且つ上述した記録オン電圧Vc−onよりも、トナーとは逆極性側に大きな値になっている。
【0042】
図11は、記録オン電圧Vc−onが印加された状態の飛翔制御電極112と、その周囲とを示す拡大模式図である。また、図12は、記録オフ電圧Vc−offが印加された状態の飛翔制御電極112と、その周囲とを示す拡大模式図である。それぞれの図に示される電気力線は、電極周りの電気力線の様子を所定のアルゴリズムで分析するシミュレーションプログラムによって求められたものである。
【0043】
回路基板110における貫通孔114の直径はφ100[μm]であり、リング状の飛翔制御電極112の幅は30[μm]である。また、飛翔制御電極112と、共通電極118との間の間隙は、50[μm]である。飛翔制御電極112に印加される、トナーTが貫通孔114を通過可能な状態(ON状態)にする記録オン電圧Vc−onは+50[V]であり、トナーTが貫通孔114を通過不可能な状態(OFF状態)、言い換えれば、トナーTが貫通孔114を通過するのを阻止する状態の場合の記録オフ電圧Vc−offは−125[V]である。また、共通電極118に印加される共通バイアスVgは−125[V]である。この−125[V]の絶対値は、図示しないトナー担持スリーブのA相電極やB相電極に印加されるパルス電圧の平均電位Vsの絶対値よりも大きいため、トナー担持スリーブ上でホッピングしたトナー粒子が共通電極118に付着してしまうことはない。シミュレーションでは、前記パルス電圧として、DC成分を含まないピークツウピーク電圧Vpp=150[V]のものを印加する場合を前提としている。この場合、平均電位Vsは0[V]である。なお、トナー担持スリーブと回路基板110との間隙dは0.3[mm]である。
【0044】
図示しない対向電極板に印加される対向バイアスVpは、回路基板110と対向電極板104との間隔にもよるが、例えば+200[V]〜+1500[V]のDC電圧である。図示の例では、同間隔を0.3[mm]としてDC+600[V]の対向バイアスVpを対向電極板に印加し、マイナス極性に帯電したトナーTを対向電極板に引き寄せる電位勾配としている。
【0045】
飛翔制御電極112に対して記録オン電圧Vc−onが印加されると、図11に示されるように、図示しない対向電極板から出る電気力線のうち、貫通孔114を通る電気力線の多くが、貫通孔114を通過した後、放物線状に広がりながら逆方向に方向転換して、−125[V]の共通バイアスVgが印加される共通電極118に至る。スリーブ上でホッピングしているトナーは、この電気力線に沿って貫通孔114を通過して図示しない対向電極板上の記録紙表面にドット状に付着する。
【0046】
一方、飛翔制御電極112に対して記録オフ電圧Vc−offが印加されると、図12に示されるように、図示しない対向電極板から延びる電気力線が、貫通孔114に進入した後、飛翔制御電極112の位置で留まっている。この状態では、トナー担持スリーブの表面上でホッピングしているトナーTが、貫通孔114内に進入することはない。
【0047】
なお、トナー担持スリーブのA相電極やB相電極に印加されるパルス電圧として、ピークツウピーク電圧Vpp=300[V]の繰り返しパルス電圧に対して−50[]の直流電圧を重畳したものを印加すると、その平均電位Vsは−50[V]となる。この場合、回路基板110の飛翔制御電極112に対する記録オン電圧Vc−onを0[V]に設定しても、「Vc−on>Vs」という関係が成立するので、記録オン電圧Vc−onとして0[V]を採用することが可能になる。記録オフ電圧Vc−offについては、−175[V]程度に設定すればよい。これにより、記録オン電圧Vc−on、記録オフ電圧Vc−offのそれぞれについて、平均電位Vsとの間に、シミュレーション条件と同じ電位差(50V、125V)を生起せしめることになるので、シミュレーションと同様の条件を得ることができる。しかも、記録オン電圧Vc−onを0[V]にしている分だけ、記録オン電圧Vc−onや記録オフ電圧Vc−offの入切を行うドライバ回路の構成を簡素化して低コスト化を図ることができる。
【0048】
以下、+100、−100などといった極性付きの値について、プラス極性の場合には絶対値が大きくなるほど極性付きの値が大きくなり、マイナス極性の場合には絶対値が大きくなるほど極性付きの値が小さくなるという考え方を適用するものとする。マイナス帯電性のトナーを用いる場合、貫通孔114に対してホッピング中のトナーを進入させるためには、
「対向バイアスVp>記録オン電圧Vc−on>平均電位Vs>共通バイアスVg」という条件を具備させればよい。
【0049】
一方、貫通孔114に対してトナーを進入させない状態を維持するためには、
「平均電位Vs>共通バイアスVg」且つ「平均電位Vs>記録オフ電圧Vc−off」という条件を具備させればよい。
【0050】
なお、高速印刷を実現するためにトナー担持スリーブ表面上における単位面積あたりのトナー担持量を比較的多く設定したり、帯電量Q/Mの比較的大きいトナーを用いたりする場合には、帯電したトナーによるスリーブ表面の電位上昇量Vtも考慮して、各種の電位を設定することが望ましい。具体的には、トナー担持スリーブ130の表面上におけるトナー担持量m/A[mg/cm2]と、担持されているトナーによる電位上昇量Vtとの関係は、図13に示すようになる。同図では、トナーとしてマイナス帯電性を用いた場合の電位上昇量Vtの例を示している。図示のように、位面積あたりのトナー担持量m/Aが増加するに従って、トナーによる電位上昇量Vtが増加する(絶対値が大きくなる)。トナーをホッピングさせずにスリーブ表面に付着させている状態(付着状態)と、トナーをホッピングさせてクラウドを形成している状態(クラウド状態)とで比較すると、後者の方が、前者よりも電位上昇量Vtが大きくなる。トナー粒子がスリーブ表面よりも上方の空間に存在している方が、個々のトナー粒子の周囲に対する結合静電容量が小さくなるので、スリーブ表面上の電位の上昇量がより大きくなるからである。
【0051】
図14は、スリーブ表面におけるトナー担持量m/Aと、飛翔制御電極112や共通電極118に対するトナー付着量[mg/cm2]との関係を示すグラフである。図示のように、スリーブ表面上のトナー担持量m/Aが比較的少ない場合には、飛翔制御電極112や共通電極118に対するトナー付着は発生しない。ところが、トナー担持量m/Aがある程度大きくなると、飛翔制御電極112や共通電極118に対するトナー付着が発生し始める。トナー担持量m/Aが多くなるほど、各電極に対するトナー付着量が多くなる。本発明者らの実験によれば、トナー担持量m/Aが0.9[mg/cm2]まで増加した場合、トナーによる電位上昇量Vtが−80[V]になって、飛翔制御電極112に対するトナー付着が発生し始めた。これは次に説明する理由によるものと考えられる。即ち、トナーによるマイナス側への電位上昇により、スリーブ表面上における実質的な平均電位が平均電位Vsよりもマイナス側に大きくシフトしたことで、スリーブ表面上の平均電位と、共通バイアスVgとの電位差が小さくなる。すると、共通電極118から貫通孔114内を経て対向電極板104に達する電気力線の数が減り、その分、共通電極118から、記録オン電圧Vc−onが印加される飛翔制御電極112に至る電気力線の数が増える。そして、後者の電気力線に沿って飛翔したトナーが飛翔制御電極112に付着してしまうと考えられる。
【0052】
また、本発明者らの実験によれば、スリーブ表面上のトナー担持量m/Aが1.2[mg/cm2]を超えると、スリーブ表面上の電位上昇量Vtが−120[V]以上に達し、共通電極118に対するトナー付着も発生し始めた。これは次に説明する理由によるものと考えられる。即ち、トナーによるマイナス側への電位上昇により、スリーブ表面上の実質的な平均電位と共通バイアスVgとの電位差が小さくなったことで、ホッピングしたトナー粒子の一部がスリーブ表面に向けて十分な静電気力で引き戻されずに、ホッピングの惰性によって共通電極118に付着したと考えられる。
【0053】
飛翔制御電極112や共通電極118に対するトナー付着については、トナーを除去するための何らかのクリーニング対策を施すことで、対処することは可能であるが、コストアップを引き起こしてしまう。
【0054】
そこで、トナー担持量m/Aを比較的多く設定したり、帯電量Q/Mの比較的大きいトナーを用いたりする場合には、各電圧の条件を次のように設定することが望ましい。即ち、マイナス帯電性のトナーを用いる場合、貫通孔114に対してホッピング中のトナーを進入させるためには、
「対向バイアスVp>記録オン電圧Vc−on>(平均電位Vs+電位上昇量Vt)>共通バイアスVg」という条件を具備させればよい。
【0055】
一方、貫通孔114に対してトナーを進入させない状態を維持するためには、
「(平均電位Vs+電位上昇量Vt)>共通バイアスVg」、
且つ「(平均電位Vs+電位上昇量Vt)>記録オフ電圧Vc−off」という条件を具備させればよい。
【0056】
なお、トナーがクラウド状態にあるときの電位上昇量Vtについては、次のようにして測定することが可能である。即ち、トナーを担持していない状態のトナー担持スリーブのA相電極やB相電極にパルス電圧を印加する。この状態で、トナーホッピング高さよりも大きな間隙をあけてスリーブ表面に対向させている表面電位計により、スリーブの表面電位を測定する。次に、スリーブ表面に対して、所望のトナー担持量m/Aになるまでトナーを供給しながら、スリーブ表面上でトナーをホッピングさせる。そして、所望のトナー担持量m/Aになった時点における表面電位を表面電位計によって測定し、この測定結果から先の測定結果を差し引く。
【0057】
図15は、ホッピングユニット120を拡大して示す拡大構成図である。トナー担持スリーブ130は、ホッピングユニット120のケーシング141内に収容されている。ホッピングユニット120は、トナー担持スリーブ130の他に、第1剤収容部148、第2剤収容部146、磁気ブラシ部などを有している。
【0058】
第1剤収容部148は、図中時計回り方向に回転駆動される第1搬送スクリュウ149を、図示しない磁性キャリアと透明トナーとを混合した混合剤とともに収容している。また、第2剤収容部146は、図中反時計回りに回転駆動される第2搬送スクリュウ147を、混合剤とともに収容している。これら剤収容部は、互いに仕切壁によって仕切られているが、一部が互いに連通口を介して連通している。
【0059】
第1搬送スクリュウ149は、その回転駆動によって第1収容部148Yの混合剤を回転撹拌しながら、図紙面に直交する方向における手前側から奥側へと搬送する。このとき、搬送途中の混合剤は、第1収容部148の側壁に固定されたトナー濃度センサ150によってトナー濃度が検知される。そして、図中奥側の端部付近まで搬送された混合剤は、仕切壁の連通口を経て、第2収容部146内に進入する。
【0060】
第2収容部146は、後述するトナー供給ロール142を収容する磁気ブラシ形成部に連通しており、第2搬送スクリュウ147とトナー供給ロール142とは所定の間隙を介して互いに軸線方向を平行にする姿勢で対向している。第2収容部146内の第2搬送スクリュウ147は、その回転駆動によって第2収容部146内の混合剤を回転撹拌しながら、図中奥側から手前側へと搬送する。この過程において、第2搬送スクリュウ147によって搬送される混合剤の一部は、磁気ブラシ部のトナー供給ロール142に供給される。
【0061】
トナー供給ロール142は、回転可能な筒状のトナー供給スリーブ143と、スリーブ内側にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラ144とを有している。回転可能なトナー供給スリーブ143は、アルミなどの導電性且つ非磁性の材料からなる。また、マグネットローラ144は、図示のように、回転方向に並ぶ複数の磁極(図中11時の位置から反時計回り方向に順にS極、N極、S極、N極、S極、N極)を具備している。トナー供給ロール142に供給された混合剤は、マグネットローラ144の発する磁力により、トナー供給スリーブ143の表面に吸着して磁気ブラシを形成する。そして、トナー供給スリーブ143の図中反時計回り方向の回転駆動に伴って、後述するトナー供給領域を通過した後、トナー供給スリーブ143の表面から離脱して再び第2収容部146内に戻される。その後、第2搬送スクリュウ147によって図中手前側の端部付近まで搬送された混合剤は、仕切壁の連通口を経て第1収容部148内に戻される。
【0062】
上述したトナー濃度センサ150は、透磁率センサからなる。このトナー濃度センサ150による混合剤の透磁率の検知結果は、電圧信号として図示しないトナー補給制御部に送られる。混合剤の透磁率は、混合剤の透明トナー濃度と相関を示すため、トナー濃度センサ50Yは透明トナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。
【0063】
図示しないトナー補給制御部はデータ記憶手段としてのRAM(Random Access Memory)を備えており、この中にトナー濃度センサ150からの出力電圧の目標値を格納している。そして、トナー濃度センサ150からの出力電圧値と、RAM内の前記目標値とを比較して、比較結果に応じた時間だけ図示しない透明トナー供給装置を駆動させる。この駆動により、透明トナーのトナー消費によって透明トナー濃度を低下させた混合剤に対し、第1収容部148内で適量の透明トナーが供給される。このため、第2収容部146内の混合剤の透明トナー濃度が所定の範囲内に維持される。
【0064】
トナー供給スリーブ143の表面に汲み上げられた混合剤は、トナー供給スリーブ143の回転に伴って図中反時計回り方向に回転する。そして、自らの先端をトナー供給スリーブ143の表面に対して所定の間隙を介して対向させている規制部材145との対向位置である担持量規制位置に進入する。このとき、規制部材145とスリーブ表面との間隙を通過することで、スリーブ表面上における担持量が規制される。
【0065】
トナー供給スリーブ143の上方では、トナー担持体たるトナー担持スリーブ130がトナー供給スリーブ143表面と所定の間隙を介して対向しながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動されている。トナー供給スリーブ143の回転に伴って上述の担持量規制位置を通過した混合剤は、トナー担持スリーブ130との接触位置であるトナー供給領域に進入して、磁気ブラシ先端を摺擦せしめながら移動する。この摺擦や、トナー供給スリーブ143とトナー担持スリーブ130との電位差などにより、磁気ブラシ中のトナーがトナー担持スリーブ130の表面上に供給される。なお、トナー供給スリーブ143には、スリーブ電源155により、可変可能なバイアスが印加される。トナー供給スリーブ143からトナー担持スリーブ130へのトナー供給を行うときには、スリーブ電源155により、トナー供給スリーブ143に対してトナー供給バイアスが印加される。これにより、トナー供給スリーブ143とトナー担持スリーブ130との間に、透明トナーを前者から後者に移動させる電界が形成される。トナー供給バイアスは、透明トナーの帯電極性と同極性の直流電圧でもよいし、かかる直流電圧に交流電圧を重畳したものでもよい。
【0066】
トナー供給領域を通過したトナー供給スリーブ143上の磁気ブラシ(混合剤)は、スリーブの回転に伴って第2収容部146との対向位置まで搬送される。この対向位置の付近には、マグネットローラ144に磁極が設けられておらず、混合剤をスリーブ表面に引き付ける磁力が作用していないため、混合剤はスリーブ表面から離脱して第2収容部146内に戻る。なお、マグネットローラ144として、6つの磁極を有するものの代わりに、6つを超える磁極を有するものを用いてもよい。
【0067】
トナー供給スリーブ143から供給されたトナーを担持するトナー担持スリーブ130は、ケーシング141に設けられた開口から周面の一部を露出させている。この露出箇所は、回路基板110に対向している。
【0068】
トナー担持スリーブ130の表面上に供給された透明トナーのトナー粒子は、トナー担持スリーブ130の表面上でホッピングしてクラウドを形成しながら、トナー担持スリーブ130の回転に伴って、トナー供給領域から回路基板110との対向領域に向けて搬送される。そして、回路基板110との対向領域において、必要に応じて回路基板110の貫通孔内に取り込まれて、透明ドットの記録に寄与する。層形成部190は、記録紙Pの全域のうち、任意の領域だけに透明ドットを記録することで、透明ドットの集合からなる透明トナー層を形成する。
【0069】
かかる構成の層形成部190においては、トナー担持体の表面に付着させているトナー粒子を回路基板の画像孔内に取り込むものとは異なり、トナー担持スリーブの表面上でホッピングさせているトナー粒子を回路基板の貫通孔に取り込んでいる。これにより、回路基板の飛翔制御電極に対する印加電圧を制御する記録制御部の低コスト化を図ることができる。具体的には、複数の飛翔制御電極に対する記録オン電圧Vc−onや記録オフ電圧Vc−offの入切については、専用のICによって個別に行う必要がある。このICの数は、相当数に及ぶ。例えば、600[dpi]の解像度で透明ドットを記録する仕様では、前述のICを4960個設ける必要がある。一般に、ICは、その耐電圧が高くなるほどチップ面積を必要とするため高価になる。直接記録方式では、いかに制御電圧を下げるかが、記録制御部の低コスト化を図る上で重要な要素となる。ところが、一般的な直接記録方式では、ICとして、少なくとも500[V]以上の耐電圧のものを用いる必要がある。これは次に説明する理由による。即ち、トナー粒子とトナー担持体とには、鏡像力、ファンデルワールス力、液架橋力などによって互いに引き付け合うような付着力が作用しており、これに打ち勝つだけの電界をつくり出すには、少なくとも絶対値が500[V]以上であるバイアスを孔近傍電極に印加しなければならないのである。これに対し、実施形態に係るプリンタの透明トナー層形成ユニット100においては、トナー担持スリーブ130の表面上でトナーをホッピングさせることで、スリーブ表面と透明トナーとの付着力をなくしているので、数十[V]程度のバイアスを孔近傍電極に印加すれば、記録のオンオフを制御することが可能である。つまり、上述のICとして、100[V]程度の耐電圧のものでよいのである。
【0070】
先に図1に示した透明トナー層形成ユニット100内において、層形成部190によって透明トナー層が形成された記録紙Pは、層形成部190の対向電極板104と回路基板110との間隙から排出された後、加圧定着ローラ対195のローラ間に挟み込まれる。加圧ローラ対195は、固定ローラ195aと、これに向けて付勢される加圧ローラ195bとの当接によって形成している加圧定着ニップに記録紙Pを挟み込むことで、記録紙Pの表面に形成された透明トナー層を所定の加圧力で加圧する。透明トナー層は、圧力可塑性の樹脂を主成分とする透明トナーによって形成されたものであるため、加圧ローラ対195によって加圧されることで、軟化して記録紙Pの表面に定着する。
【0071】
このように、本プリンタにおいては、透明トナー層を記録紙Pに定着させる際に、記録紙Pを加熱しないので、加熱によるY,M,C,Kトナーの再軟化によってフルカラー画像を変形させてしまうことがない。よって、透明トナー層を記録紙Pに定着させる際のフルカラー画像の変形を抑えることができる。なお、インクジェット方式の画像形成装置に本発明を適用した場合には、透明トナー層を記録紙に定着させる際に、記録紙を加熱しないことで、インクからの急激な水分蒸発で記録紙のインク画像部に顕著な皺の発生を回避する。これにより、透明トナー層を記録紙に定着させる際のカラーインク像の変形を抑えることができる。
【0072】
加圧定着ローラ対195の加圧ローラ195bは、0.5〜10[MPa]の圧力で固定ローラ195aに当接するように付勢されている。これにより、両ローラ間に挟み込まれた記録紙P上の透明トナー層は、0.5〜10[MPa]の圧力で加圧される。一般に、圧力可塑性の樹脂は、0.5[MPa]の圧力で軟化するので、0.5以上の[MPa]の圧力で透明トナー層を加圧することで、透明トナー層を確実に軟化せしめて記録紙Pに定着させることができる。また、圧力を高めすぎると、透明トナー層中の透明トナーの粘性を過剰に高めて、加圧ローラ195bや固定ローラ195aへの透明トナーのオフセットを発生させ易くなる。加圧力を10[MPa]以下に留めることで、透明トナーの加圧定着ローラ対195へのオフセットを低減することができる。
【0073】
本プリンタにおいては、加熱定着手段たる加熱定着装置20によってフルカラー画像が加熱定着せしめられた後の記録紙Pに対して、透明トナー層の形成と、透明トナー層の加圧定着処理とを施すように、層形成部190と加圧定着ローラ対195とを配設している。このような配設により、フルカラー画像の上に、透明トナー層を重ねて定着することが可能になるので、フルカラー画像の上の透明トナー層によってフルカラー画像の光沢性を高めることができる。
【0074】
本プリンタは、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてくるプリント命令信号を受信する情報取得手段としてのLANポートやUSBポートなどを有している。LANポートやUSBポートによって受信したプリント命令信号には、記録紙Pにフルカラー画像を形成するための周知のページ記述言語(PDL)の他、記録紙Pの全域のうち、どの領域に対して透明トナー層を形成するのかを示す透明層形成領域情報が含まれている。LANポート等からプリント命令信号を受けとったメイン制御部は、その透明形成領域情報に基づいて、透明トナー層形成ユニット100内の各機器の駆動を制御する。これにより、記録紙Pの全域のうち、透明層形成領域情報によって示される領域だけに透明トナー層を形成する。これにより、記録紙Pの全域のうち、フルカラー画像が形成されている領域だけに、透明トナー層を形成することができる。
【0075】
次に、圧力可塑性の透明トナーについて説明する。
実施形態に係るプリンタの透明トナー層形成ユニット100にセットする透明トナーの樹脂としては、ミクロ相分離構造を有するものが好ましく、ブロック共重合体あるいはコアシェル構造の樹脂であることがより好ましい。性質の異なる二種以上の高分子が共有結合でつながって構成されているブロック共重合体における何れかの高分子がガラス転移温度の高いハードセグメントからなり、他の高分子の何れかがガラス温度あるいは融点のより低いソフトセグメントからなることが好ましい。コアシェル構造の樹脂の場合には、コア又はシェルの何れか一方がガラス転移温度の高いハードセグメントならなり、他方がガラス転移温度あるいは融点が低いソフトセグメントからなることが好ましい。このような樹脂は、圧力可塑性を有しており、所定以上の圧力が加えられることにより、一時的に流動性が発現するので、紙繊維などに対して圧力のみによる定着処理を施すことが可能である。このような様な構造の樹脂としては、重縮合機構により重縮合させた樹脂、あるいはエチレン性不飽和単量体をラジカル重合機構により重合させた樹脂を用いることができる。樹脂を重縮合反応によって重縮合させる方法としては、例えば、「重縮合」(化学同人、1971年刊)、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社編、1988年刊)等に記載の従来から公知の方法を用いることができる。エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、又は、組み合わせて用いることもできる。かかる方法による樹脂としては、ポリエステル樹脂を例示することが可能である。
【0076】
エチレン性不飽和単量体をラジカル重合反応によって重合させる場合には、リビングアニオン重合法によってブロック共重合体を得ることができる。また、コアシェル構造を有する樹脂を得る場合には、2ステージフィード法と呼ばれる単量体を段階的に重合系へ供給する方法にてコア成分高分子とシェル成分高分子とでガラス転移温度の異なるナノサイズのコアシェル樹脂粒子を合成することができる。なお、ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計(DSC)を用いて−80〜140[℃]の範囲において毎分10[℃]の昇温速度で、ASTM D3418−82に規定された方法で測定した値を意味する。ハードセグメント成分相のガラス転移温度Tgは、45〜120[℃]の範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜110[℃]の範囲である。ソフトセグメント成分相のガラス転移温度Tgは、前述したハードセグメント成分相のガラス転移温度Tgよりも20[℃]以上低いことが好ましい。圧力刺激による樹脂の流動性を効率よく出現させることを考慮すると、30[℃]以上低いことがより好ましい。
【0077】
ブロック共重合体や、重縮合反応によって得られたポリエステル樹脂については、回転剪断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル、圧力吐出型分散機(ゴーリンホモジナイザー、ゴーリン社製)など、各種の機械的高剪断力によって水系媒体に分散させる剪断乳化法、樹脂を有機溶剤に溶解した後、水系媒体を添加し転相させる転相乳化法、ブロック共重合体又はその前駆体(リビング末端低分子量体又はブロック)を少量のエチレン性不飽和化合物と混合し、剪断乳化や転相乳化後、ミニエマルション重合、懸濁重合によりブロック共重合体の樹脂粒子分散液に調合する手法など、既存の分散法を利用してナノサイズコアシェル粒子の場合と同様に、樹脂粒子分散液にすることができる。例えば、得られた樹脂分散液を用い、必要に応じて離型剤含有分散液を適量配合したものに対して、乳化凝集法を施すことで、トナー粒子を製造することができる。
【0078】
トナー粒子の製造方法においては、前述した樹脂粒子分散液中の樹脂粒子、離型剤粒子及びその他の添加した粒子を凝集させる既知の凝集法を用いて凝集させることにより、粒径分布を調整することが可能である。具体的には、樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液とを混合し、さらに凝集剤を添加してヘテロ凝集を生じさせることにより所望の径の凝集粒子を形成する。その後、配合した分散液の系を樹脂粒子のガラス転移温度以上、又は、融点以上の温度に加熱して、前述した凝集粒子を融合し、洗浄、乾燥することによりトナー粒子が得られる。この時、加熱温度条件を選択することでトナー形状を不定形から球形まで制御することも可能である。
【0079】
重縮合反応によって得るポリエステル樹脂としては、非結晶性ポリエステル樹脂や、結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。多価カルボン酸や、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸等の重縮合性単量体を用いた直接エステル化反応、エステル交換反応等により重縮合を行うことで製造することが可能である。重縮合の際には、重縮合を促進するために、重縮合触媒を併用することが好ましい。前記多価カルボン酸としては、脂肪族、脂環族、芳香族の多価カルボン酸、それらのアルキルエステル、酸無水物及び酸ハロゲン化物などが挙げられる。また、前記多価アルコールとしては、多価アルコールや、それらのエステル化合物が挙げられる。なお、多価カルボン酸のアルキルエステルは、低級アルキルエステルであることが好ましい。前記低級アルキルエステルは、エステルのアルコキシ部分の炭素数が1〜8となるアルキルエステルである。具体的には、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル及びイソブチルエステル等を挙げることができる。
【0080】
前記多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシ基を2個含有する化合物である。例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸等を挙げることができる。また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等を挙げることができる。これらの多価カルボン酸は、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を併用することもできる。
【0081】
前記多価アルコール(ポリオール)は、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノキシアルコールフルオレン(ビスフェノキシエタノールフルオレン)等を挙げることができる。また、ジオール以外のポリオールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等を挙げることができる。これらの多価アルコール(ポリオール)は、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を併用することもできる。
【0082】
前記エチレン性不飽和化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、親水性基及びエチレン性不飽和結合を有する単量体であってもよい。例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;イソプレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン類などや、β−カルボキシエチルアクリレート等を例示することができる。これらの単量体からなる単独重合体、又はこれらを2種以上共重合して得られる共重合体、さらにはこれらの混合物を使用することができる。
【0083】
前記親水性基としては、極性基が挙げられる。より詳しくは、カルボキシ基、スルホ基、ホスホニル基等の酸性極性基、アミノ基等の塩基性極性基、アミド基、ヒドロキシ基、シアノ基、ホルミル基等の中性極性基等などである。これらの中では、特に酸性極性基が好適である。酸性極性基及びエチレン性不飽和結合を有する単量体が、樹脂粒子表面にある特定の範囲で存在することにより、樹脂粒子に凝集性を付与し、樹脂粒子のトナー化が可能となり、さらにトナーに十分な帯電性を与えることができるからである。酸性極性基としては、カルボキシ基や、スルホ基が挙げられる。これらの酸性極性基を有する単量体としては、例えば、カルボキシ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物、スルホ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物などを挙げることができる。
【0084】
上述したカルボキシ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステルを挙げることができる。これらの単量体の1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0085】
エチレン性不飽和化合物の重合体として、ガラス転移温度Tgが40℃以上であるものを用いる場合には、その中でも、ランダム共重合体を用いることが好ましい。また、親水性基を有するエチレン性不飽和化合物をモノマー単位として含有する樹脂が好ましく、親水性基を有するエチレン性不飽和化合物を共重合比で0.1〜10[mol%]含有することが好ましい。この範囲内であると、水系媒体中でのトナー粒子の製造工程において、ガラス転移温度Tgが40℃以上の樹脂でトナーのシェル層を容易に形成することが可能になる。ガラス転移温度Tgが40℃以上のエチレン性不飽和化合物の重合体や、ポリエステル樹脂などの重縮合樹脂については、トナーに含まれる全結着樹脂の50重量%以下となるように使用することが好ましく、5〜20重量%がより好ましい。この範囲内であると、トナー耐久性が向上し、安定した透明トナー層を形成することができる。
【0086】
トナー粒子に含有させる離型剤としては、例えば、各種エステルワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類や、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物系・石油系ワックス、及びそれらの変性物などが挙げられる。これらのワックス類は、室温付近では、トルエンなど溶剤にはほとんど溶解しないか、溶解しても極めて微量である。これらのワックス類を、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに、強い剪断付与能力を有するホモジナイザーや圧力吐出型分散機(ゴーリンホモジナイザー、ゴーリン社製)で粒子状に分散させ、サブミクロン以下の粒子の分散液が作製される。また、これらの離型剤は、トナー構成固体分総重量に対して5〜25重量%の範囲で添加することが、オイルレス定着システムにおける定着画像の剥離性を確保する上で好ましい。なお、得られた離型剤粒子分散液の粒径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−920)で測定することが可能である。
【0087】
トナー粒子に離型剤を含有させるときには、トナーの樹脂粒子、離型剤粒子を凝集させた後に、さらに樹脂粒子分散液を追加して凝集粒子表面に樹脂粒子を付着させることが帯電性や耐久性を向上させる観点から好ましい。
【0088】
なお、重合、樹脂粒子製造、樹脂粒子分散、離型剤分散、樹脂凝集、凝集安定化などの際に、界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤としては、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤などを例示することができる。また、ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用してもよい。樹脂粒子の分散のため手段としては回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものを例示することができる。
【0089】
本発明者らは、これまで説明した圧力可塑性の透明トナーのいくつかの例として、以下のようなものを試作した。
まず、セパラブルフラスコ中に、300重量部のイオン交換水と、1.5重量部のTTAB(テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、シグマ社製)とを投入し、20分間、窒素置換を行った後、撹拌しながら65[℃]まで昇温させた。そして、40重量部のn−ブチルアクリレートモノマーを加えた後、さらに20分間撹拌を行った。その後、0.5重量部の重合開始剤V−50(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、和光純薬工業(株)製)を10重量部のイオン交換水に溶解した後、フラスコ中に投入した。そして、65[℃]の温度環境下に3時間おいた。その後、61重量部のスチレンモノマーと、9重量部のn−ブチルアクリレートモノマーと、2重量部のアクリル酸と、0.8重量部のドデカンチオールとを、0.5重量部のTTABを溶解した100重量部のイオン交換水に混合して乳化せしめた後、得られた乳化液を2時間かけて定量ポンプによってフラスコ中に連続的に投入した。その後、70[℃]まで昇温させた後、70[℃]の条件に2時間おいて、重合反応を完了させた。これにより、重量平均分子量Mw=25,000、平均粒子径=150[nm]、固形分量=25重量%のコアシェル型の樹脂粒子分散液を得た。以下、この樹脂粒子分散液を、「第1樹脂粒子分散液」という。この「第1樹脂粒子分散液」を40[℃]で風乾して樹脂粒子を抽出した。そして、得られた樹脂粒子について、−80[℃]から140[℃]の温度範囲でDSC解析を行ったところ、−50[℃]付近にポリブチルアクリレートによるガラス転移が観測された。また、60[℃]付近にスチレン−ブチルアクリレート−アクリル酸共重合体からなると考えられる共重合体による樹脂のガラス転移が観測された。
【0090】
次に、離型剤粒子分散液を調合した。具体的には、800重量部のイオン交換水に2重量部のアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンR)と、215重量部のカルナバワックスとを混合し、混合液を100[℃]まで加熱した後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)で15分間処理して、乳化を促進した。その後、100[℃]の温度下でゴーリンホモジナイザーによって処理して、乳化を更に促進した。これにより粒子の中心径が230[nm]、融点が83[℃]、固形分量が21.5[%]である離型剤粒子分散液を得た。以下、この離型剤粒子分散液を「第1離型剤粒子分散液」という。
【0091】
次に、トナー粒子を製造した。具体的には、168重量部(うち、樹脂成分は42重量部)の「第1樹脂粒子分散液」と、80重量部(うち、離型剤成分は17.2重量部)の「第1離型剤粒子分散液」と、0.15重量部のポリ塩化アルミニウムと、300重量部のイオン交換水とを、丸型ステンレス製フラスコに投入して混合した。そして、混合液中の樹脂粒子や離型剤粒子をホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)によって分散させた後、加熱用オイルバスによって分散液を撹拌しながら42[℃]まで加熱して、42℃の温度下に60分間おいた。その後、フラスコに84重量部(うち、樹脂成分は21重量部)の「第1樹脂粒子分散液」を追加投入して緩やかに撹拌した。そして、0.5[モル/リットル]の水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを6.0に調整した後、撹拌を継続しながら95[℃]まで加熱した。そして、5.5以上のpHを維持するために必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液を追加滴下しながら、95℃の条件に3時間おいた。その後、冷却、濾過、イオン交換水による洗浄を行った後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。そして、40℃のイオン交換水中に再分散し、15分、300[rpm]で撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した後、真空乾燥を12時間行って透明トナー粒子を得た。以下、この透明トナー粒子を「第1透明トナー粒子」という。「第1透明トナー粒子」の粒径をコールターカウンターで測定したところ、その体積平均粒径は5.8[μm]であった。
【0092】
次いで、トナー・キャリア混合剤を製造した。具体的には、50重量部の「第1透明トナー粒子」と、1.5重量部の疎水性シリカ(キャボット社製、TS720)とを、サンプルミルで混合して透明トナー粉末を得た。また、100重量部のシリコーン樹脂溶液(KR50、信越化学社製)と、3重量部のカーボンブラック(BP2000、キャボット社製)と、100重量部のトルエンとを、ホモミキサーで30分間分散させて被覆層形成溶液を得た。この被覆層形成溶液(203重量部)と、1000重量部の球状フェライトキャリア(平均粒子径50μm)とを用い、流動床型塗布装置により、球状フェライトキャリア粒子表面に被覆層を形成した磁性粒子からなる磁性キャリアを製造した。次に、90重量部の前記透明トナー粉末と、910重量部の前記磁性キャリアとをボールミルに入れて30分間攪拌して、トナー・キャリア混合剤を得た。以下、このトナ0・キャリア混合剤を「第1混合剤」という。
【0093】
次に、これまで説明した樹脂粒子分散液とは異なる樹脂粒子分散液を製造した。具体的には、175重量部の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と、320重量部のビスフェノールA 2モルエチレンオキサイド付加物と、0.5重量部のドデシルベンゼンスルホン酸とを混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、120[℃]の窒素雰囲気下に12時間おいて重縮合反応させて、均一透明なポリエステル樹脂を得た。以下、このポリエステル樹脂を「第1ポリエステル」という。「第1ポリエステル」の重量平均分子量をGPCによって測定したところ、14,000であった。また、「第1ポリエステル」のガラス転移温度TgをDSCによって測定したところ54[℃]であった。
【0094】
0.36重量部のドデシルベンゼンスルホン酸と、80重量部の1,6−ヘキサンジオールと、115重量部のセバシン酸とを混合した後、撹拌機を備えたリアクターに投入した。そして、90[℃]の窒素雰囲気下に5時間おいて重縮合反応させて、均一透明ポリエステル樹脂を得た。GPCによる重量平均分子量は8,000、DSCによるTgは−52℃であった。以下、このポリエステル樹脂を「第2ポリエステル」という。
【0095】
100重量部の「第1ポリエステル」と、100重量部の「第2ポリエステル」とを、フラスコ内に投入して撹拌機付きのリアクターにセットした。そして、120[℃]の温度下で30分間の溶解、混合を行った後、95[℃]に加熱した、800重量部のイオン交換水と、1.0重量部のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムと、1.0重量部の1N NaOH水溶液とを溶解した95[℃]の中和用水溶液をフラスコ中に投入した。フラスコ内の液を、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)に5分間かけて乳化させた後、さらに超音波バス内で10分振とうした後、室温水にてフラスコを冷却した。このようにして、固形分量が20重量%である樹脂粒子分散液を得た。以下、この樹脂粒子分散液を「第2樹脂粒子分散液」という。「第2樹脂粒子分散液」の中心径は250[nm]であった。
【0096】
次に、トナー粒子を製造した。具体的には、210重量部(うち、樹脂成分は42重量部)の「第2樹脂粒子分散液」と、40重量部(うち、離型剤成分は8.6重量部)の「第1離型剤粒子分散液」と、0.15重量部のポリ塩化アルミニウムと、300重量部のイオン交換水とを、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)によって十分に混合・分散した。そして、加熱用オイルバスでフラスコ中の分散液を撹拌しながら、42[℃]まで加熱し、42[℃]の温度下に60分間おいた後、更に105重量部(うち、樹脂成分は21重量部)の「第2樹脂粒子分散液」を追加して緩やかに撹拌した。その後、0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを6.0に調整した後、撹拌を継続しながら95[℃]まで加熱した。95[℃]に昇温せしめるまでの間、5.0以上のpHを維持するために、必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液を追加滴下した。その後、95[℃]の温度環境下に3時間おいた後、冷却、濾過、イオン交換水による洗浄を行ってから、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。そして、40[℃]のイオン交換水3リットル中に再分散し、15分、300[rpm]で撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返した後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、更に真空乾燥を12時間行ってトナー粒子を得た。以下、このトナー粒子を「第2トナー粒子」という。「第2トナー粒子」の粒径をコールターカウンターで測定したところ、その体積平均粒径は4.9[μm]であった。
【0097】
次いで、トナー・キャリア混合剤を製造した。具体的には、50重量部の「第2トナー粒子」に対し、1.5重量部の疎水性シリカ(キャボット社製、TS720)を添加した後、両者をサンプルミルで混合してトナー粉末を得た。以下、このトナー粉末を「第2トナー粉末」という。また、100重量部のシリコーン樹脂溶液(KR50、信越化学社製)と、3重量部のカーボンブラック(BP2000、キャボット社製)と、100重量部のトルエンとをホモミキサーで30分間撹拌して被覆層形成溶液を得た。この被覆層形成液(203重量部)と、1000重量部の球状フェライトキャリア(平均粒子径50μm)とを用い、流動床型塗布装置により、球状フェライトキャリア表面に被覆層を形成したキャリア粒子を製造した。以下、このキャリア粒子を「第2キャリア粒子」という。90重量部の「第2トナー粉末」と、910重量部の「第2キャリア粒子」とをボールミルに入れて30分間攪拌して、トナー・キャリア混合剤を得た。以下、このトナー・キャリア混合剤を「第2混合剤」という。
【0098】
なお、樹脂粒子の重量平均分子量Mwや数平均分子量Mnについては、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィ(GPC)を用いて、次のようにして測定した。即ち、温度40℃において、溶媒(テトラヒドロフラン)を1.2[ml/分]の流速で流しながら、濃度0.2[g/20ml]の樹脂粒子分散液を試料重量として3mg注入した。分子量の測定にあたっては、試料中の樹脂粒子の分子量が数種の単分散ポリスチレン標準試料によって作製された検量線の分子量の対数とカウント数とが直線となる範囲内に包含される測定条件で行う。測定結果の信頼性については、同様の測定条件において、NBS706ポリスチレン標準試料の重量平均分子量Mwが28.8×104程度、数平均分子量Mnが13.7×104程度になることを確認することによって確かめることができる。GPCのカラムとしては、TSK−GEL、GMH(東ソー(株)製)等を用いる。
【0099】
樹脂のガラス転移温度Tgについては、示差走査熱量計DSC/RDC220(セイコーインスツルメント社製)を用いて測定した。また、樹脂粒子分散液中における樹脂粒子の粒子径については、レーザー回析式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−920)を使用して測定した。また、トナー粒子やキャリア粒子の粒径については、コールターマルチサイザーII型(ベックマン・コールター社製)を使用して測定した。
【0100】
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
[実施例実験]
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリンタ試験機を試作した。そして、このプリンタ試験機の透明トナー層形成ユニットに、混合剤として「第1混合剤」をセットして、テスト画像をプリントした。テスト画像としては、Mベタトナー像とYベタトナー像との重ね合わせによる赤ベタトナー像、及び文字トナー像を具備するものを採用した。そして、図16に示されるように、テスト画像における赤ベタトナー像の全域のうち、一部の領域だけに透明トナー層を重ねて形成した。その後、文字トナー像のつぶれによる文字視認性について評価した。すると、文字トナー像につぶれは認められず、文字を良好に判読することができた。
【0101】
[比較例実験]
次に、本発明を適用していない構成を採用した場合の比較例実験を行った。この比較例実験では、従来と同様の熱定着方式の透明トナーをトナー層形成ユニットにセットした。そして、赤ベタトナー像の領域の一部にトナー層形成ユニットによって透明トナー層を形成した記録シートを、手動で定着装置に再搬送して、透明トナー層を記録シートに熱定着させた。このようにして得られたテスト画像における文字トナー像のつぶれによる文字視認性について評価した。すると、文字トナー像につぶれが認められ、つぶれによって文字の視認性が悪化した。文字トナー像を定着装置に2回通したことにより、文字トナー像のトナーを過剰に軟化させて文字のつぶれを発生させてしまったからである。
【0102】
なお、実施形態に係るプリンタは、有色像として有色トナー像を形成するものであるが、有色像として有色インク像を形成するものでは、次のようにして、文字インク像の視認性を悪化させると考えられる。即ち、ベタインク画像の上に形成した透明トナー層を定着させるために記録シートを定着装置に通した際に、インクを急激に蒸発させることにより、記録シートのインク付着部に皺を発生させて、文字インク像の視認性を悪化させてしまうと考えられる。
【0103】
本発明者らは、上述した実施例実験と比較例実験とにおいてそれぞれ、赤ベタトナー像における透明トナー層を形成している領域(以下、透明層領域という)の光沢度と、透明トナー層を形成していない領域(以下、無垢領域という)の光沢度とを測定した。光沢度については、鏡面光沢度計(測定角度60°)によって測定した。この結果を、文字の視認性の結果とともに次の表1に示す。
【表1】
【0104】
実施例実験では、無垢領域の光沢度が20(JIS−Z8741 鏡面光沢度−測定方法)であったのに対し、透明層領域の光沢度は45もあった。つまり、透明トナー層を形成した領域だけ、光沢度を高めることができている。印刷の分野では、画像の一部だけ光沢性を高めたいことがある。例えば写真画像部の光沢性を高める一方で、グラフ画像部や図表画像部では光沢を抑えて見やすくしたいなどといった要望である。実施形態に係るプリンタでは、光沢性を高めたい画像領域だけに透明トナー層を形成することで、光沢性を高めたくない画像領域の光沢性を抑えることができる。
【0105】
一方、比較例実験では、無垢領域の光沢度が40もあり、透明層領域の光沢度(50)と大差ない結果となってしまった。有色像として有色トナー像を形成する場合には、定着装置による加熱時間が長くなるほど、有色トナー像の光沢性が高まる。比較実験では、無垢領域も透明層領域と同様に、定着装置に2回通していることから、定着装置に1回だけ通す場合に比べて(実施形態実験の無垢領域)、無垢領域の光沢性を高めてしまう。このように、光沢性の向上のために透明トナー層を形成した透明層領域だけでなく、光沢性を高めたくない無垢領域の光沢性も高めてしまうことから、意図的に光沢差をつけた画像を形成することができない。
【0106】
実施形態に係るプリンタのように、有色像として有色トナー像を形成するものにおいては、透明トナー層を定着させる際の有色トナー像の変形を抑えることができることに加えて、透明層領域と無垢領域とに光沢差をつけることが可能になるという効果も得ることができる。
【0107】
次に、実施形態に係るプリンタの一部の構成を変更した各変形例に係るプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
[第1変形例]
図17は、第1変形例に係るプリンタの透明トナー層形成ユニットの回路基板110を対向電極側から示す平面図である。また、図18は、回路基板110をトナー担持スリーブ側から示す平面図である。第1変形例においては、図18に示されるように、共通電極118を、リング状の飛翔制御電極112の周囲にだけ設け、それぞれの共通電極118をリードによって導通させている。かかる構成では、実施形態に比べて、共通電極118の面積を低減して、電極材料を節約することができる。
【0108】
[第2変形例]
図19は、第2変形例に係るプリンタの透明トナー層形成ユニットのトナー担持スリーブ130を示す横断面図である。また、図20は、トナー担持スリーブ130の円筒部131を平面的に展開した平面展開図である。第2変形例に係るプリンタのトナー担持スリーブ130は、A相電極133aと、B相電極133bとの他に、C相電極133cを具備している。トナー担持スリーブ130の周方向に沿って、A相、B相、C相、A相、B相、C相・・・というように、それらの3つの電極が1組となった電極組が繰り返し並んでいる。それぞれの電極には、図21に示されるように互いに位相ズレしたパルス電圧が印加される。すると、トナー担持スリーブ130の表面上で、透明トナーのトナー粒子が、A相電極133aの真上からB相電極133bの真上へ、B相電極133bの真上からC相電極133cの真上へ、C相電極133cの真上からA相電極133aの真上へ、と順に移動する。これにより、トナー担持スリーブ130の表面上に形成されたクラウド中の透明トナー粒子は、スリーブの周面に沿って周回移動する。この周回移動により、トナー担持スリーブ130を回転駆動しなくても、透明トナー粒子を回路基板110との対向領域に搬送することができる。
【0109】
そこで、第2変形例においては、トナー担持スリーブ130を回転不能に構成している。かかる構成では、トナー担持スリーブ130を回転駆動する場合に比べて、構成の簡素化を図って、低コスト化を実現することができる。なお、長期間の使用に伴って、各電極の上にトナーの外添剤等微細な粒子が堆積してしまう場合には、画像形成の時間以外にクリーニングを行うクリーニング手段を設けるとよい。クリーニング動作のときだけ、トナー担持スリーブ130の表面に回転ブラシやブレート等のクリーニング部材を接触させたり、吸引ノズルによって吸引を行ったりする構成のものを例示することができる。クリーニング動作の際に、各相の電極に印加するパルス電圧としては、プリント動作時と同様に互いに位相ずれしたものであって、DC成分を具備し、周波数=0.5KHz〜7KHz、ピークツウピーク=120〜600[V]のものを例示することができる。
【0110】
[第3変形例]
図22は、第3変形例に係るプリンタの透明トナー層形成ユニットのホッピングユニット120を、回路基板110とともに拡大して示す拡大構成図である。このホッピングユニット120は、透明トナーと磁性キャリアとを混合した混合剤を収容する代わりに、透明トナーだけを収容している。トナー収容部内に収容している透明トナーを、回転するトナー供給ローラ152の弾性材料からなるローラ部と、これに当接しながら回転する帯電ローラ153との間に挟み込むことで、透明トナーの摩擦帯電を助長しながら、その透明トナーをトナー供給ローラ152表面で汲み上げる。汲み上げられた透明トナーは、トナー供給ローラ152に当接している規制部材151によって層厚が規制された後、トナー供給ローラ152の回転に伴ってトナー担持スリーブ130との対向領域まで搬送される。
【0111】
プリントジョブ時には、トナー供給ローラ152に対して、供給電源159によって供給バイアスが印加される。この供給バイアスは、トナー担持スリーブ130のA相電極やB相電極に印加されるパルス電圧の平均電位Vsよりも、透明トナーの帯電極性とは逆極性側に大きな値のバイアスである。よって、トナー供給ローラ152と、トナー担持スリーブ130との間には、透明トナーをトナー供給ローラ152側からスリーブ側に移動させる電界が形成される。トナー供給ローラ152の表面上の透明トナーは、その電界の作用によってローラ表面からスリーブ表面に転移する。トナー担持スリーブ130の表面上では、既に説明したように、透明トナーのホッピングによるクラウドが形成される。クラウドを形成している透明トナーの一部は、回路基板110の貫通孔内に取り込まれて透明ドットの記録に寄与する。
【0112】
回路基板110との対向領域で回路基板110の貫通孔内に取り込まれなかった透明トナーは、トナー担持スリーブ130の回転に伴ってケーシング内に至った後、図示しない回収手段によってトナー担持スリーブ130の表面から回収される。回収された透明トナーは再びトナー収容部される。
【0113】
[第4変形例]
図23は、第4変形例に係るプリンタを示す概略構成図である。実施形態に係るプリンタでは、プリンタ筐体内において、記録紙Pを鉛直方向に沿って下方から上方に搬送しながら、記録紙Pに対して中間転写ベルト8上の4色重ね合わせトナー像を2次転写するようになっていた。これに対し、第4変形例に係るプリンタでは、プリンタ筐体内において、記録紙Pを水平方向に沿って図中左側から右側に搬送しながら、記録紙Pに対して中間転写ベルト8上の4色重ね合わせトナー像を2次転写するようになっている。このような2次転写を可能にするように、各色の感光体(1Y,M,C,K)を具備する各色の作像ユニットは、中間転写ベルト8の上方に配設されている。
【0114】
透明トナー層形成ユニット100は、層形成部190と加圧定着ローラ対195との間に、予備加熱ヒーター197を有している。この予備加熱ヒーター197は、層形成部190によって記録紙P上に形成された透明トナー層を、輻射によって予備加熱するものである。輻射の代わりに、接触熱伝導や熱風吹き付けによって透明トナー層を予備加熱してもよい。予備加熱ヒーター197による透明トナー層の加熱温度は、加熱定着装置20による加熱温度よりも低い温度である。予備加熱ヒーター197により、加圧前の透明トナー層を予備加熱することで、加圧定着ローラ対195による透明トナー層の加圧定着を助長することができる。予備加熱温度は、加熱定着装置20よりも低い温度であるので、従来装置のように2度の加熱定着を行う場合に比べて、予備加熱時の画像の変形を抑えることが可能である。
【0115】
これまで、電子写真プロセスによって画像を形成するプリンタについて説明してきたが、インクジェット方式のなど、電子写真プロセスとは異なる方式によって画像を形成する画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。
【0116】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、記録紙P等の記録部材にフルカラー画像等の有色像を形成する有色像形成手段(例えば作像ユニット)と、前記記録部材の全面又は一部に透明トナーからなる透明トナー層を形成する透明トナー層形成ユニット100等の透明トナー層形成手段と、前記透明トナー層が形成された前記記録部材に対して透明トナー層の定着処理を施す定着手段とを備える画像形成装置であって、前記透明トナー層形成手段が、圧力可塑性の樹脂を主成分とする透明トナーからなる透明トナー層を形成するものであり、且つ、前記定着手段が、前記透明トナー層を加熱することなく加圧して前記記録部材に定着せしめる加圧定着ローラ対195等の加圧定着手段であることを特徴とするものである。
【0117】
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記透明トナー層を前記記録部材に定着せしめる際に、前記記録部材を0.5〜10[MPa]の圧力で加圧するように、前記加圧定着手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成においては、既に説明したように、0.5以上の[MPa]の圧力で透明トナー層を加圧することで、透明トナー層を確実に軟化せしめて記録部材に定着させることができる。また、加圧力を10[MPa]以下に留めることで、透明トナーの加圧定着手段へのオフセットを低減することができる。
【0118】
[態様C]
態様Cは、態様A又はBにおいて、前記有色像形成手段として、有色トナーによって有色トナー像を形成する有色トナー像形成手段を用い、前記有色トナー像形成手段によって有色トナー像が形成された記録部材を加熱して前記有色トナー像を前記記録部材に定着せしめる加熱定着装置20等の加熱定着手段を設け、且つ、前記加熱定着手段によって前記有色トナー像が加熱定着せしめられた後の記録部材に対して、前記透明トナー層の形成と、前記透明トナー層の加圧定着処理とを施すように、前記透明トナー層形成手段と前記加圧定着手段とを配設したことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、有色トナー像の上に、透明トナー層を重ねて定着することが可能になるので、有色トナー像の上の透明トナー層によって有色トナー像の光沢性を高めることができる。
【0119】
[態様D]
態様Dは、態様A〜Cの何れかにおいて、記録部材の表面の全域のうち、どの領域に対して前記透明トナー層を形成するのかを示す透明層形成領域情報を取得するLANポート等の情報取得手段を設けるとともに、前記情報取得手段によって取得された前記透明層形成領域情報によって示される領域だけに対して前記透明トナー層を形成する処理を実施するように、前記透明トナー層形成手段の駆動を制御するメイン制御部等の層形成制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、記録部材の全域のうち、有色トナー像が形成されている領域だけに透明トナー層を形成して、全域に透明トナー層を形成する場合に比べて低コスト化を図ることができる。
【0120】
[態様E]
態様Eは、態様Dにおいて、透明トナー層形成手段が、板状の基体を厚み方向に貫通する貫通孔(例えば貫通孔114)、及び前記貫通孔の近傍に設けられた孔近傍電極(例えば飛翔制御電極112)の組合せからなる孔−電極組を複数具備する基板(例えば回路基板110)と、前記基板に対向する自らの表面に担持した透明トナーの粒子を、前記表面に沿って並ぶ複数のホッピング電極の間でホッピングさせることで前記表面上に浮遊トナー層を形成するトナー担持体(例えばトナー担持スリーブ130)と、ホッピング用周期パルス電圧を前記複数のホッピング電極に印加して、透明トナーの粒子をホッピングさせるための電界をホッピング電極間に形成するホッピング電圧印加手段(例えば搬送制御部191)と、前記基板における前記トナー担持体との対向面とは反対側の面に対して所定の間隙を介して対向する対向電極(例えば対向電極板104)と、前記基板における複数の貫通孔のうち、前記透明層形成領域情報によって示される領域に対応する位置にある貫通孔と前記組合せをなしている孔近傍電極に対し、ドットを記録するための記録オン電圧を印加にする一方で、複数の貫通孔のうち、前記領域に対応しない位置にある貫通孔と前記組合せをなしている孔近傍電極に対し、ドットを記録しないための記録オフ電圧を印加する記録電圧印加手段(例えば記録制御部128)とを有し、且つ、複数の孔近傍電極のうち、前記記録オン電圧を印加した孔近傍電極の近傍の貫通孔に対して前記浮遊トナー層中の透明トナーを通した後、該透明トナーを前記対向電極上の記録部材に付着させることで、前記記録部材に透明トナー層を形成するもの(例えば層形成部190)であることを特徴とするものである。かかる構成では、記録部材やこれに定着している有色トナー像に対して、非接触で透明トナー層を形成することで、接触して透明トナー層を形成するものとは異なり、接触による有色トナー像の乱れを回避することができる。
【0121】
[態様F]
態様Fは、態様A〜Eにおいて、前記透明トナー層形成手段と、前記加圧定着手段とを共通の保持体(例えば透明トナー層形成ユニットケーシング)に保持させて、画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能にしたことを特徴とするものである。かかる構成では、透明トナー層形成手段と、加圧定着手段とを一体的に交換することで、メンテナンス性を向上させることができる。
【0122】
[態様G]
態様Gは、態様Cにおいて、前記加熱定着手段による加熱温度よりも低い加熱温度で前記記録部材を補助的に加熱する補助加熱ヒーター197等の補助加熱手段を、前記透明トナー層形成手段と前記加圧定着手段との間に設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、予備加熱手段により、加圧前の透明トナー層を予備加熱することで、加圧定着手段による透明トナー層の加圧定着を助長することができる。
【符号の説明】
【0123】
7:光書込装置(有色像形成手段の一部)
15:転写ユニット(有色像形成手段の一部)
20:加熱定着装置(加熱定着手段)
100:透明トナー層形成ユニット
104:対向電極板(対向電極)
110:回路基板(基板)
112:飛翔制御電極(孔近傍電極)
114:貫通孔
128:記録制御部(記録電圧印加手段)
130:トナー担持スリーブ(トナー担持体)
190:層形成部(透明トナー層形成手段)
191:搬送制御部(ホッピング電圧印加手段)
195:加圧定着ローラ対(加圧定着手段)
197:予備加熱ヒータ(予備加熱手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0124】
【特許文献1】特開2008−145453号公報
【特許文献2】特開2010−95341号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙などの記録部材の表面に対して、有色トナー像に加えて、透明トナーからなる透明トナー層を形成する構成を備える複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、特許文献1や特許文献2に記載のものが知られている。これらの画像形成装置は何れも、次のようにして画像を形成するものである。即ち、電子写真プロセスによってカラートナー像を形成した後の記録紙を加熱定着装置に送って記録紙にカラートナー像を定着させた後、電子写真プロセスによってカラートナー像の上に透明トナー層を形成する。そして、記録紙を再び加熱定着装置に送って、透明トナー層を記録紙に定着させる。このようにしてカラートナー像の上に透明トナー層を形成することで、光沢のある画像を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、透明トナー層を加熱定着させる際にカラートナーの再軟化によってカラートナー像を変形させてしまうという不具合があった。また、電子写真プロセスによってカラートナー像を形成する構成に代えて、インクジェット方式によってカラーインク像を形成する構成を採用したとしても、カラーインク像を変形させてしまうおそれがある。透明トナー層を加熱定着させる際にインク中の水分を急激に蒸発させることにより、記録紙のインク画像部に顕著な皺を発生させてしまうからである。
【0004】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、透明トナー層を記録部材に定着させる際の有色像の変形を抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、記録部材に有色像を形成する有色像形成手段と、前記記録部材の全面又は一部に透明トナーからなる透明トナー層を形成する透明トナー層形成手段と、前記透明トナー層が形成された前記記録部材に対して透明トナー層の定着処理を施す定着手段とを備える画像形成装置であって、前記透明トナー層形成手段が、圧力可塑性の樹脂を主成分とする透明トナーからなる透明トナー層を形成するものであり、且つ、前記定着手段が、前記透明トナー層を加熱することなく加圧して前記記録部材に定着せしめる加圧定着手段であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、透明トナー層を記録部材に定着させる際に、記録部材を加熱しないので、加熱による有色トナーの再軟化によって有色トナー像を変形させてしまったり、加熱によるインクからの急激な水分蒸発で記録部材のインク画像部に顕著な皺を発生させたりすることがない。よって、透明トナー層を記録部材に定着させる際の有色像の変形を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】同プリンタのY用の作像ユニットと、その周囲とを示す拡大構成図。
【図3】同プリンタの層形成部のホッピングユニット内に配設されたトナー担持スリーブを示す斜視図
【図4】同このトナー担持スリーブを示す横断面図。
【図5】同トナー担持スリーブの円筒部を平面的に展開した平面展開図。
【図6】同トナー担持スリーブのA相電極に印加されるA相ホッピング用周期パルス電圧、及びB相電極に印加されるB相ホッピング用周期パルス電圧の波形を示すグラフ。
【図7】同層形成部の一部とその周囲とを示す拡大構成図。
【図8】同層形成部の飛翔制御電極に印加される記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの関係を示すグラフ。
【図9】同層形成部の回路基板を対向電極側から示す平面図。
【図10】同回路基板をトナー担持スリーブ側から示す平面図。
【図11】記録オン電圧Vc−onが印加された状態の同飛翔制御電極と、その周囲とを示す拡大模式図。
【図12】記録オフ電圧Vc−offが印加された状態の同飛翔制御電極と、その周囲とを示す拡大模式図。
【図13】同トナー担持スリーブの表面上におけるトナー担持量m/A[mg/cm2]と、担持されているトナーによる電位上昇量Vtとの関係を示すグラフ。
【図14】同トナー担持量m/Aと、飛翔制御電極や共通電極に対するトナー付着量[mg/cm2]との関係を示すグラフ。
【図15】同層形成部のホッピングユニットを拡大して示す拡大構成図。
【図16】本発明者らのテストプリントによって得られたプリント紙を示す模式図。
【図17】第1変形例に係るプリンタの透明トナー層形成ユニットの回路基板を対向電極側から示す平面図。
【図18】同回路基板をトナー担持スリーブ側から示す平面図。
【図19】第2変形例に係るプリンタの透明トナー層形成ユニットのトナー担持スリーブを示す横断面図。
【図20】同トナー担持スリーブの円筒部131を平面的に展開した平面展開図。
【図21】同トナー担持スリーブの各相の電極に印加されるパルス電圧の波形を示すグラフ。
【図22】第3変形例に係るプリンタの透明トナー層形成ユニットのホッピングユニットを、回路基板とともに拡大して示す拡大構成図。
【図23】第4変形例に係るプリンタを示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタを示す概略構成図である。同図において、このプリンタは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、M、C、Kと記す)のトナー像を生成するための4つの作像ユニットを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Yトナー像を生成するためのY用の作像ユニットを例にすると、これは図2に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体1Y、ドラムクリーニング装置2Y、除電装置(不図示)、帯電装置4Y、現像器5Y等を備えている。有色トナー像形成手段の一部として機能する作像ユニットは、プリンタ本体に脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。
【0009】
帯電装置4Yは、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる感光体1Yの表面を一様帯電せしめる。一様帯電せしめられた感光体1Yの表面は、レーザ光Lによって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。このYの静電潜像は、Yトナーと磁性キャリアとを含有するY現像剤を用いる現像器5YによってYトナー像に現像される。そして、後述する中間転写ベルト8上に中間転写される。ドラムクリーニング装置2Yは、中間転写工程を経た後の感光体1Y表面に残留したトナーを除去する。また、上記除電装置は、クリーニング後の感光体1Yの残留電荷を除電する。この除電により、感光体1Yの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他色の作像ユニットにおいても、同様にして感光体(1M,C,K)上に(M,C,K)トナー像が形成されて、中間転写ベルト8上に中間転写される。
【0010】
現像器5Yは、そのケーシングの開口から一部露出させるように配設された現像ロール5aYを有している。また、互いに平行配設された2つの搬送スクリュウ5fY、ドクターブレード5bY、トナー濃度センサ5gYなども有している。
【0011】
現像器5Yのケーシング内には、磁性キャリアとYトナーとを含む図示しないY現像剤が収容されている。このY現像剤は2つの搬送スクリュウ5fYによって撹拌搬送されながら摩擦帯電せしめられた後、現像ロール5aYの表面に担持される。そして、ドクターブレード5bYによってその層厚が規制されてからY用の感光体1Yに対向する現像領域に搬送され、ここで感光体1Y上の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体1Y上にYトナー像が形成される。現像器5Yにおいて、現像によってYトナーを消費したY現像剤は、現像ロール5aYの回転に伴ってケーシング内に戻される。
【0012】
2つの搬送スクリュウ5fYの間には仕切壁が設けられている。この仕切壁により、現像ロール5aYや図中右側の搬送スクリュウ5fY等を収容する第1供給部5cYと、図中左側の搬送スクリュウ5fYを収容する第2供給部5dYとがケーシング内で分かれている。図中右側の搬送スクリュウ5fYは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられ、第1供給部5cY内のY現像剤を図中手前側から奥側へと搬送しながら現像ロール5aYに供給する。図中右側の搬送スクリュウ5fYによって第1供給部5cYの端部付近まで搬送されたY現像剤は、上記仕切壁に設けられた図示しない開口部を通って第2供給部5dY内に進入する。そして、第2供給部5dY内において、図中左側の搬送スクリュウ5fYは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられ、第1供給部5cYから送られてくるY現像剤を図中右側の搬送スクリュウ5fYとは逆方向に搬送する。図中左側の搬送スクリュウ5fYによって第2供給部5dYの端部付近まで搬送されたY現像剤は、上記仕切壁に設けられたもう一方の開口部(図示せず)を通って第1供給部5cY内に戻る。
【0013】
透磁率センサからなる上述のトナー濃度センサ5gYは、第2供給部5dYの底壁に設けられ、その上を通過するY現像剤の透磁率に応じた値の電圧を出力する。トナーと磁性キャリアとを含有する二成分現像剤の透磁率は、トナー濃度と良好な相関を示すため、トナー濃度センサ5gYはYトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。この出力電圧の値は、図示しない制御部に送られる。この制御部は、トナー濃度センサ5gYからの出力電圧の目標値であるY用Vtrefを格納したRAMを備えている。このRAM内には、他の現像器に搭載された図示しないトナー濃度センサからの出力電圧の目標値であるM用Vtref、C用Vtref、K用Vtrefのデータも格納されている。Y用Vtrefは、後述するY用のトナー搬送装置の駆動制御に用いられる。具体的には、上記制御部は、トナー濃度センサ5gYからの出力電圧の値をY用Vtrefに近づけるように、図示しないY用のトナー搬送装置を駆動制御して第2供給部5dY内にYトナーを補給させる。この補給により、現像器5Y内のY現像剤中のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他のプロセスユニットの現像器についても、M,C,K用のトナー搬送装置を用いた同様のトナー補給制御が実施される。
【0014】
先に示した図1において、各色の作像ユニットの図中下方には、光書込装置7が配設されている。潜像形成手段たる光書込装置7は、画像情報に基づいて発したレーザ光Lを、作像ユニット6Y,M,C,Kにおけるそれぞれの感光体に照射して露光する。この露光により、感光体1Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込装置7は、光源から発したレーザ光(L)を、モータによって回転駆動したポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。
【0015】
光書込装置7の図中下側には、紙収容カセット26、これらに組み込まれた給紙ローラ27など有する紙収容手段が配設されている。紙収容カセット26は、シート状の記録体たる記録紙Pを複数枚重ねて収納しており、それぞれの一番上の記録紙Pには給紙ローラ27を当接させている。給紙ローラ27が図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転せしめられると、一番上の記録紙Pが給紙路40に向けて送り出される。
【0016】
この給紙路40の末端付近には、レジストローラ対28が配設されている。レジストローラ対28は、記録紙Pを挟み込むべく両ローラを回転させるが、挟み込んですぐに回転を一旦停止させる。そして、記録紙Pを適切なタイミングで後述の2次転写ニップに向けて送り出す。
【0017】
作像ユニット6Y,M,C,Kの図中上方には、中間転写ベルト8を張架しながら無端移動せしめる転写ユニット15が配設されている。転写手段たる転写ユニット15は、中間転写ベルト8の他、2次転写バイアスローラ19、クリーニング装置10などを備えている。また、4つの1次転写バイアスローラ9Y,M,C,K、2次転写バックアップローラ12、クリーニングバックアップローラ13、テンションローラ14なども備えている。中間転写ベルト8は、これら7つのローラに張架されながら、少なくとも何れか1つのローラの回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。1次転写バイアスローラ9Y,M,C,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト8を感光体1Y,M,C,Kとの間に挟み込んでそれぞれ1次転写ニップを形成している。これらは中間転写ベルト8の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する方式のものである。1次転写バイアスローラ9Y,M,C,Kを除くローラは、全て電気的に接地されている。中間転写ベルト8は、その無端移動に伴ってY,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、感光体1Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト8上に4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0018】
2次転写バックアップローラ12は、2次転写ローラ19との間に中間転写ベルト8を挟み込んで2次転写ニップを形成している。中間転写ベルト8上に形成された可視像たる4色トナー像は、この2次転写ニップで記録紙Pに転写される。そして、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト8には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、クリーニング装置10によってクリーニングされる。2次転写ニップで4色トナー像が一括2次転写された記録紙Pは、転写後搬送路41を経由して加熱定着装置20に送られる。
【0019】
加熱定着装置20は、内部にハロゲンランプ等の発熱源を有する定着ローラ20aと、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ20bとによって定着ニップを形成している。加熱定着装置20内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ20aに密着させるようにして、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
【0020】
加熱定着装置20内でフルカラー画像が定着せしめられた記録紙Pは、加熱定着装置20から定着後搬送路42に送られた後、排紙ローラ対21のローラ間に挟み込まれる。そして、機外に排出された後、後述する透明トナー層形成ユニット100に送り込まれる。この透明トナー層形成ユニット100は、記録紙Pの表面に形成されたトナー像の上に、透明トナー層を形成して定着させるものである。片面プリントモードが選択されている場合には、記録紙Pの第1面にフルカラー画像が定着せしめられた後、透明トナー層形成ユニット100により、記録紙Pの第1面のフルカラー画像の上に、透明トナー層が形成及び定着される。そして、透明トナー層形成ユニット100から排出されて、プリンタ本体筺体の上部に形成されたスタック部50a上にスタックされる。
【0021】
一方、両面プリントモードが選択され、且つ、記録紙Pの第1面だけにフルカラー画像が定着せしめられた状態の場合、透明トナー層形成ユニット100は、第1面のフルカラー画像の上に透明トナー層を定着させた記録紙Pを、スタック部50aに排出しないで、プリンタ本体内に逆搬送する。逆搬送された記録紙Pは、逆回転する排紙ローラ対21から反転搬送路43内に送り込まれる。反転搬送路74は、鉛直方向上側から下側に向けて湾曲しながら延在する形状になっており、路内に第1反転搬送ローラ対22、第2反転搬送ローラ対23、第3反転搬送ローラ対24を有している。記録紙Pは、これらローラ対のニップを順次通過しながら搬送されることで、その上下を反転させる。上下反転後の記録紙Pは、上述の給紙路40に戻された後、再び2次転写ニップに至る。そして、今度は、画像非担持面を中間転写ベルト8に密着させながら2次転写ニップに進入して、その第2面に中間転写ベルト上の4色トナー像が一括2次転写される。このようにして第2面にもフルカラー画像が形成された記録紙Pは、転写後搬送路41、加熱定着装置20、定着後搬送路42、排紙ローラ対21を順次経由して、機外の透明トナー層形成ユニット100に送り込まれる。そして、第2面のフルカラー画像の上にも透明トナー層が定着された後、透明トナー層形成ユニット100から排出されてプリンタ本体上部のスタック部50aにスタックされる。
【0022】
転写ユニット15と、これよりも上方にあるスタック部50aとの間には、ボトル支持部31が配設されている。このボトル支持部31は、Y,M,C,Kトナーを収容するトナー収容部たるトナーボトル32Y,M,C,Kを搭載している。トナーボトル32Y,M,C,Kは、互いに水平よりも少し傾斜した角度で並ぶように配設され、Y、M、C、Kという順で配設位置が高くなっている。トナーボトル32Y,M,C,K内のY,M,C,Kトナーは、それぞれ後述するトナー搬送装置により、作像ユニット6Y,M,C,Kの現像器に適宜補給される。これらのトナーボトル32Y,M,C,Kは、作像ユニット6Y,M,C,Kとは独立してプリンタ本体に脱着可能である。
【0023】
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
透明トナー層形成ユニット100は、受入ローラ対101と、層形成部190と、加圧定着ローラ対195と、排出ローラ対196とを有している。そして、層形成部190は、ホッピングユニット120と、回路基板110と、対向電極板104とを有している。プリンタ本体の排紙ローラ対21によってプリンタ本体から排出された記録紙Pは、透明トナー層形成ユニット100内に受け入れられた後、受入ローラ対101のローラ間に挟み込まれる。そして、受入ローラ対101の回転駆動によってユニット内部に向けて送り込まれる。この際、記録紙Pは、層形成部190内を通過する。具体的には、層形成部190は、対向電極板104と、これの真下に配設された回路基板110とを、所定の間隙を介して対向させている。記録紙Pは、透明トナー層の形成対象となる面を下に向けた状態で、受入ローラ対101による搬送で前述の間隙を通過する。この際、下方に向けた面の全域のうち、フルカラー画像が形成されている領域に、透明トナー層が形成される。
【0024】
図3は、層形成部190のホッピングユニット(図1の120)内に配設されたトナー担持スリーブ130を示す斜視図である。また、図4は、このトナー担持スリーブ130を示す横断面図である。また、図5は、トナー担持スリーブ130の円筒部131を平面的に展開した平面展開図である。図3に示されるように、トナー担持スリーブ130は、円筒部131、これの軸線方向の両端面にそれぞれ接続されたフランジ136,138、それぞれのフランジの中心から突出する軸部材137,139などを有している。円筒部131の周面には、ローラ軸線方向に延在する形状の複数の電極133が、周方向(回転方向)に所定のピッチで並ぶように形成されている。これら電極のうち、周方向において1個おきに並んでいるもの同士は、互いに同じ電位状態にされる電気的に同相の電極になっている。具体的には、円筒部131の周面には、図4や図5に示されるように、第1ホッピング電極たるA相電極133aと、第2ホッピング電極たるB相電極133bとが周方向に交互に並ぶように配設されている。A相電極133aは、円筒部131の軸線方向の一端まで延在しており、円筒部131の一端には金属製のフランジ136が接続されている(図3を参照)。このフランジ136により、複数のA相電極133aが互いに電気的に導通している。また、B相電極133bは、円筒部131の軸線方向の他端まで延在しており、円筒部131の他端には金属製のフランジ138が接続されている。このフランジ138により、複数のB相電極133bが互いに電気的に導通している。
【0025】
図3において、トナー担持スリーブ130は、後述する透明トナーを自らの表面上に担持するものであり、軸線方向の両端の軸部材137,139がそれぞれ回転自在に支持されながら回転駆動される。そして、図示のように、図中左側のフランジ136には、搬送制御部191によってA相ホッピング用周期パルス電圧が印加される。この印加は、フランジ136に摺擦する図示しない摺擦電極を介して行われる。フランジ136に印加されたA相ホッピング用周期パルス電圧は、複数のA相電極133aにそれぞれ導かれる。また、図中右側のフランジ138には、搬送制御部191によってB相ホッピング用周期パルス電圧が印加される。この印加は、フランジ138に摺擦する図示しない摺擦電極を介して行われる。フランジ138に印加されたB相ホッピング用周期パルス電圧は、複数のB相電極133bにそれぞれ導かれる。
【0026】
図6は、A相電極133aに印加されるA相ホッピング用周期パルス電圧、及びB相電極133bに印加されるB相ホッピング用周期パルス電圧の波形を示すグラフである。A相ホッピング用周期パルス電圧と、B相ホッピング用周期パルス電圧とは、図示のように互いに逆位相になっており、単位時間あたりにおける平均電位は互いに同じである。それぞれのホッピング用周期パルス電圧の波形における中心位置で水平方向に延在している線が、この平均電位を示している。これにより、A相電極133aやB相電極133bは、平均的に透明トナーとは逆極性の電位を帯びる。このようなホッピング用周期パルス電圧がそれぞれの電極に印加されると、トナー担持スリーブ130における円筒部131の表面上に担持されている透明トナーのトナー粒子が、A相電極133a上とB相電極133b上との間を往復移動するように繰り返しホッピングする。これにより、トナー担持スリーブ130の表面上には、透明トナーのクラウドが形成される。
【0027】
A相ホッピング用周期パルス電圧やB相ホッピング用周期パルス電圧としては、周波数が0.5〜7[kHz]でピークツウピーク電圧が±60〜±300Vである周期パルス電圧に、平均電位調整のためのDC電圧(トナーとは逆極性)を重畳したものを例示することができる。なお、図示のような矩形波状の周期パルス電圧では、極性が瞬時に切り替わるため、トナーに対して大きな静電力を付与することが可能である。但し、サイン波状のパルス電圧や三角波状のパルス電圧を採用してもよい。また、A相電極133aとB相電極133bとのうち、一方に対して周波数fの矩形波状のホッピング用周期パルス電圧を印加する一方で、もう一方に対して前記パルス電圧の平均電位となる直流電圧を印加しても、互いに逆位相のホッピング用周期パルス電圧を採用する場合と同様に、トナー粒子をホッピングさせることが可能である。
【0028】
円筒部131の周面におけるA相電極133a上とB相電極133bとの間をホッピングで往復移動しているトナー粒子は、トナー担持スリーブ130の回転駆動に伴って、回路基板110(図1参照)に対向する層形成領域まで搬送される。そして、その層形成領域にて、その放物線状のホッピング軌道の頂点付近に達して回路基板110の近傍に至ると、必要に応じて回路基板110の後述する図示しない貫通孔内に取り込まれて、記録紙P上の透明トナー層の形成に寄与する。
【0029】
なお、図4に示されるように、円筒部131の表面には、絶縁材料からなる表面保護層134が設けられている。この表面保護層134により、トナー粒子とA相電極133aやB相電極133bとの直接接触を回避することで、電極からトナー粒子への電荷注入の発生を回避している。
【0030】
円筒部131の円筒状の基材132としては、ガラス基板、樹脂基板、セラミックス基板等の絶縁性材料からなる基板、アルミ等の導電性材料からなる基板にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルム等の変形可能な材料からなる基板などを用いることができる。
【0031】
A相電極133aやB相電極133bについては、次のようにして作成した。即ち、基板132としては、樹脂やセラミックスなどの絶縁性材料からなるもの、アルミなどの導電性材料からなる基材にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなるものなどを用いることができる。このような基板132の表面上にAl、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜1[μm]の厚みで成膜してから、これをフォトリソグラフィー技術等によって所要の電極形状にパターン化して各電極を得た。導電性材料からなる膜を、メッキ等によって電極形状にパターン加工してもよい。
【0032】
表面保護層134としては、例えばSiO2、TiO2、TiN、Ta2O5などを厚さ0.5〜2[μm]で成膜して形成している。ポリカーボネート、ポリイミド、メチルメタアクリレート等の有機材料を0.5〜2μm厚に薄膜印刷塗布して加熱硬化したものでもよい。
【0033】
図7は、層形成部190の一部とその周囲とを示す拡大構成図である。トナー担持体としてのトナー担持スリーブ130は、表面上のトナー粒子をA相電極とB相電極との間でホッピングさせて透明トナーのクラウドを形成しながら、図中反時計回り方向に回転駆動する。このトナー担持スリーブ130の上方には回路基板110が配設されており、スリーブとの間に距離dのギャップを介在させている。回路基板110の上方では、記録紙Pが図中矢印A方向に搬送されており、その上方には対向電極板104が記録紙Pと回路基板110とを介してトナー担持スリーブ130に対向している。
【0034】
回路基板110は、絶縁性基板111を具備している。また、絶縁性基板111に形成された複数の貫通孔114と、それぞれの貫通孔114に個別に対応する複数の飛翔制御電極112と、貫通孔114や飛翔制御電極112を避けた領域の殆どに渡って延在する共通電極118とを具備している。
【0035】
図8は、孔近傍電極としての飛翔制御電極112に印加される記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの関係を示すグラフである。また、図9は、回路基板110を対向電極側から示す平面図である。また、図10は、回路基板110をトナー担持スリーブ側から示す平面図である。
【0036】
図7では、便宜上、貫通孔114と飛翔制御電極112との組合せを1つしか示していなかったが、図9、図10に示されるように、回路基板110には、その組合せが複数形成されている。飛翔制御電極112は、そのリング形状のループ内側に1つの貫通孔114を位置させるように形成されている。複数の飛翔制御電極112には、それぞれ金属からなる図示しないリード部113が繋がっており、これらリード部は互いに絶縁を維持する状態で、後述する記録制御部(図7の128)に接続されている。
【0037】
図10において、リング状の飛翔制御電極112の電極幅は10〜100[μm]である。リング状の飛翔制御電極112の内側に形成された貫通孔114の径は、形成するドットの径に応じて決定されるが、直径φで30〜150[μm]程度である。リング状の飛翔制御電極112の外側には、電極の形成されていないリング状の領域が20〜50[μm]の幅で形成されたおり、その更に外側には、共通電極118が形成されている。この共通電極118に対しては、図示しない共通電源によって直流電圧からなる共通バイアスVgが印加される。
【0038】
回路基板110は、例えば次のようにして製造されたものである。即ち、厚さ30〜100[μm]の絶縁性基板111は、ポリイミド、PET、PEN、PES等の絶縁性フィルムからなる。この絶縁性基板111の表面に、厚さ0.2〜1[μm]程度の金属蒸着膜(例えばアルミ蒸着膜)を形成する。次に、フォトリソグラフィー技術に用いるフォトレジストをスピンナで塗布後、プリベーク及びマスク露光を行う。そして、フォトレジストの加熱硬化を進めた後、アルミニウムエッチング液によってアルミニウム蒸着膜を個々の電極やリードの形状にパターンニングする。フィルムの裏面にも電極パターンが必要な場合には、同様のパターンニングを行う。貫通孔114については、電極パターン形成後にパンチ加工、レーザー加工、スパッタエッチング加工等のドライエッチング加工などによって形成する。
【0039】
図7に示されるように、搬送制御部191は、トナー担持スリーブ130のA相電極やB相電極に対し、図6に示されるA相ホッピング用周期パルス電圧やB相用周期パルス電圧を印加して、スリーブ表面上のトナー粒子を電極間でホッピングさせる。それら周期パルス電圧は、何れもデューティ比が50%になっているので、ピークツウピーク電圧Vppの中心電位が、スリーブ表面上での平均電位Vsとなる。
【0040】
一方、回路基板110の飛翔制御電極112は記録制御部128に接続されている。この記録制御部128は、回路基板110の複数の飛翔制御電極112に対する、記録オン電圧Vc−onや記録オフ電圧Vc−off(図8参照)の印加をそれぞれ個別に入切することができる。図8に示される記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの間の点線は、上述したA相ホッピング電圧とB相ホッピング電圧との平均電位Vsを示している。つまり、ホッピング電圧の平均電位Vsは、飛翔制御電極112に印加される記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの間の値になっている。より詳しく説明すると、記録オン電圧Vc−onは、スリーブの平均電位Vsよりも、トナーの帯電極性とは逆極性側に大きな値になっている。これにより、複数の飛翔制御電極112のうち、記録オン電圧Vc−onが印加されたものは、その上方に位置しているスリーブ表面上のホッピングトナーを自らに向けて引き寄せるようになる。これに対し、記録オフ電圧Vc−offは、スリーブの平均電位Vsよりも、トナーの帯電極性側に大きな値になっている。これにより、複数の飛翔制御電極112Yのうち、記録オフ電圧Vc−offが印加されたものは、その上方に位置しているスリーブ表面上のホッピングトナーを自らと反発させるようになる。
【0041】
回路基板110と記録紙Pとを介してトナー担持スリーブ130に対向している対向電極板104には、対向電源116によって対向バイアスVpが印加されている。この対向バイアスVpは、透明トナーの帯電極性とは逆極性であり、且つ上述した記録オン電圧Vc−onよりも、トナーとは逆極性側に大きな値になっている。
【0042】
図11は、記録オン電圧Vc−onが印加された状態の飛翔制御電極112と、その周囲とを示す拡大模式図である。また、図12は、記録オフ電圧Vc−offが印加された状態の飛翔制御電極112と、その周囲とを示す拡大模式図である。それぞれの図に示される電気力線は、電極周りの電気力線の様子を所定のアルゴリズムで分析するシミュレーションプログラムによって求められたものである。
【0043】
回路基板110における貫通孔114の直径はφ100[μm]であり、リング状の飛翔制御電極112の幅は30[μm]である。また、飛翔制御電極112と、共通電極118との間の間隙は、50[μm]である。飛翔制御電極112に印加される、トナーTが貫通孔114を通過可能な状態(ON状態)にする記録オン電圧Vc−onは+50[V]であり、トナーTが貫通孔114を通過不可能な状態(OFF状態)、言い換えれば、トナーTが貫通孔114を通過するのを阻止する状態の場合の記録オフ電圧Vc−offは−125[V]である。また、共通電極118に印加される共通バイアスVgは−125[V]である。この−125[V]の絶対値は、図示しないトナー担持スリーブのA相電極やB相電極に印加されるパルス電圧の平均電位Vsの絶対値よりも大きいため、トナー担持スリーブ上でホッピングしたトナー粒子が共通電極118に付着してしまうことはない。シミュレーションでは、前記パルス電圧として、DC成分を含まないピークツウピーク電圧Vpp=150[V]のものを印加する場合を前提としている。この場合、平均電位Vsは0[V]である。なお、トナー担持スリーブと回路基板110との間隙dは0.3[mm]である。
【0044】
図示しない対向電極板に印加される対向バイアスVpは、回路基板110と対向電極板104との間隔にもよるが、例えば+200[V]〜+1500[V]のDC電圧である。図示の例では、同間隔を0.3[mm]としてDC+600[V]の対向バイアスVpを対向電極板に印加し、マイナス極性に帯電したトナーTを対向電極板に引き寄せる電位勾配としている。
【0045】
飛翔制御電極112に対して記録オン電圧Vc−onが印加されると、図11に示されるように、図示しない対向電極板から出る電気力線のうち、貫通孔114を通る電気力線の多くが、貫通孔114を通過した後、放物線状に広がりながら逆方向に方向転換して、−125[V]の共通バイアスVgが印加される共通電極118に至る。スリーブ上でホッピングしているトナーは、この電気力線に沿って貫通孔114を通過して図示しない対向電極板上の記録紙表面にドット状に付着する。
【0046】
一方、飛翔制御電極112に対して記録オフ電圧Vc−offが印加されると、図12に示されるように、図示しない対向電極板から延びる電気力線が、貫通孔114に進入した後、飛翔制御電極112の位置で留まっている。この状態では、トナー担持スリーブの表面上でホッピングしているトナーTが、貫通孔114内に進入することはない。
【0047】
なお、トナー担持スリーブのA相電極やB相電極に印加されるパルス電圧として、ピークツウピーク電圧Vpp=300[V]の繰り返しパルス電圧に対して−50[]の直流電圧を重畳したものを印加すると、その平均電位Vsは−50[V]となる。この場合、回路基板110の飛翔制御電極112に対する記録オン電圧Vc−onを0[V]に設定しても、「Vc−on>Vs」という関係が成立するので、記録オン電圧Vc−onとして0[V]を採用することが可能になる。記録オフ電圧Vc−offについては、−175[V]程度に設定すればよい。これにより、記録オン電圧Vc−on、記録オフ電圧Vc−offのそれぞれについて、平均電位Vsとの間に、シミュレーション条件と同じ電位差(50V、125V)を生起せしめることになるので、シミュレーションと同様の条件を得ることができる。しかも、記録オン電圧Vc−onを0[V]にしている分だけ、記録オン電圧Vc−onや記録オフ電圧Vc−offの入切を行うドライバ回路の構成を簡素化して低コスト化を図ることができる。
【0048】
以下、+100、−100などといった極性付きの値について、プラス極性の場合には絶対値が大きくなるほど極性付きの値が大きくなり、マイナス極性の場合には絶対値が大きくなるほど極性付きの値が小さくなるという考え方を適用するものとする。マイナス帯電性のトナーを用いる場合、貫通孔114に対してホッピング中のトナーを進入させるためには、
「対向バイアスVp>記録オン電圧Vc−on>平均電位Vs>共通バイアスVg」という条件を具備させればよい。
【0049】
一方、貫通孔114に対してトナーを進入させない状態を維持するためには、
「平均電位Vs>共通バイアスVg」且つ「平均電位Vs>記録オフ電圧Vc−off」という条件を具備させればよい。
【0050】
なお、高速印刷を実現するためにトナー担持スリーブ表面上における単位面積あたりのトナー担持量を比較的多く設定したり、帯電量Q/Mの比較的大きいトナーを用いたりする場合には、帯電したトナーによるスリーブ表面の電位上昇量Vtも考慮して、各種の電位を設定することが望ましい。具体的には、トナー担持スリーブ130の表面上におけるトナー担持量m/A[mg/cm2]と、担持されているトナーによる電位上昇量Vtとの関係は、図13に示すようになる。同図では、トナーとしてマイナス帯電性を用いた場合の電位上昇量Vtの例を示している。図示のように、位面積あたりのトナー担持量m/Aが増加するに従って、トナーによる電位上昇量Vtが増加する(絶対値が大きくなる)。トナーをホッピングさせずにスリーブ表面に付着させている状態(付着状態)と、トナーをホッピングさせてクラウドを形成している状態(クラウド状態)とで比較すると、後者の方が、前者よりも電位上昇量Vtが大きくなる。トナー粒子がスリーブ表面よりも上方の空間に存在している方が、個々のトナー粒子の周囲に対する結合静電容量が小さくなるので、スリーブ表面上の電位の上昇量がより大きくなるからである。
【0051】
図14は、スリーブ表面におけるトナー担持量m/Aと、飛翔制御電極112や共通電極118に対するトナー付着量[mg/cm2]との関係を示すグラフである。図示のように、スリーブ表面上のトナー担持量m/Aが比較的少ない場合には、飛翔制御電極112や共通電極118に対するトナー付着は発生しない。ところが、トナー担持量m/Aがある程度大きくなると、飛翔制御電極112や共通電極118に対するトナー付着が発生し始める。トナー担持量m/Aが多くなるほど、各電極に対するトナー付着量が多くなる。本発明者らの実験によれば、トナー担持量m/Aが0.9[mg/cm2]まで増加した場合、トナーによる電位上昇量Vtが−80[V]になって、飛翔制御電極112に対するトナー付着が発生し始めた。これは次に説明する理由によるものと考えられる。即ち、トナーによるマイナス側への電位上昇により、スリーブ表面上における実質的な平均電位が平均電位Vsよりもマイナス側に大きくシフトしたことで、スリーブ表面上の平均電位と、共通バイアスVgとの電位差が小さくなる。すると、共通電極118から貫通孔114内を経て対向電極板104に達する電気力線の数が減り、その分、共通電極118から、記録オン電圧Vc−onが印加される飛翔制御電極112に至る電気力線の数が増える。そして、後者の電気力線に沿って飛翔したトナーが飛翔制御電極112に付着してしまうと考えられる。
【0052】
また、本発明者らの実験によれば、スリーブ表面上のトナー担持量m/Aが1.2[mg/cm2]を超えると、スリーブ表面上の電位上昇量Vtが−120[V]以上に達し、共通電極118に対するトナー付着も発生し始めた。これは次に説明する理由によるものと考えられる。即ち、トナーによるマイナス側への電位上昇により、スリーブ表面上の実質的な平均電位と共通バイアスVgとの電位差が小さくなったことで、ホッピングしたトナー粒子の一部がスリーブ表面に向けて十分な静電気力で引き戻されずに、ホッピングの惰性によって共通電極118に付着したと考えられる。
【0053】
飛翔制御電極112や共通電極118に対するトナー付着については、トナーを除去するための何らかのクリーニング対策を施すことで、対処することは可能であるが、コストアップを引き起こしてしまう。
【0054】
そこで、トナー担持量m/Aを比較的多く設定したり、帯電量Q/Mの比較的大きいトナーを用いたりする場合には、各電圧の条件を次のように設定することが望ましい。即ち、マイナス帯電性のトナーを用いる場合、貫通孔114に対してホッピング中のトナーを進入させるためには、
「対向バイアスVp>記録オン電圧Vc−on>(平均電位Vs+電位上昇量Vt)>共通バイアスVg」という条件を具備させればよい。
【0055】
一方、貫通孔114に対してトナーを進入させない状態を維持するためには、
「(平均電位Vs+電位上昇量Vt)>共通バイアスVg」、
且つ「(平均電位Vs+電位上昇量Vt)>記録オフ電圧Vc−off」という条件を具備させればよい。
【0056】
なお、トナーがクラウド状態にあるときの電位上昇量Vtについては、次のようにして測定することが可能である。即ち、トナーを担持していない状態のトナー担持スリーブのA相電極やB相電極にパルス電圧を印加する。この状態で、トナーホッピング高さよりも大きな間隙をあけてスリーブ表面に対向させている表面電位計により、スリーブの表面電位を測定する。次に、スリーブ表面に対して、所望のトナー担持量m/Aになるまでトナーを供給しながら、スリーブ表面上でトナーをホッピングさせる。そして、所望のトナー担持量m/Aになった時点における表面電位を表面電位計によって測定し、この測定結果から先の測定結果を差し引く。
【0057】
図15は、ホッピングユニット120を拡大して示す拡大構成図である。トナー担持スリーブ130は、ホッピングユニット120のケーシング141内に収容されている。ホッピングユニット120は、トナー担持スリーブ130の他に、第1剤収容部148、第2剤収容部146、磁気ブラシ部などを有している。
【0058】
第1剤収容部148は、図中時計回り方向に回転駆動される第1搬送スクリュウ149を、図示しない磁性キャリアと透明トナーとを混合した混合剤とともに収容している。また、第2剤収容部146は、図中反時計回りに回転駆動される第2搬送スクリュウ147を、混合剤とともに収容している。これら剤収容部は、互いに仕切壁によって仕切られているが、一部が互いに連通口を介して連通している。
【0059】
第1搬送スクリュウ149は、その回転駆動によって第1収容部148Yの混合剤を回転撹拌しながら、図紙面に直交する方向における手前側から奥側へと搬送する。このとき、搬送途中の混合剤は、第1収容部148の側壁に固定されたトナー濃度センサ150によってトナー濃度が検知される。そして、図中奥側の端部付近まで搬送された混合剤は、仕切壁の連通口を経て、第2収容部146内に進入する。
【0060】
第2収容部146は、後述するトナー供給ロール142を収容する磁気ブラシ形成部に連通しており、第2搬送スクリュウ147とトナー供給ロール142とは所定の間隙を介して互いに軸線方向を平行にする姿勢で対向している。第2収容部146内の第2搬送スクリュウ147は、その回転駆動によって第2収容部146内の混合剤を回転撹拌しながら、図中奥側から手前側へと搬送する。この過程において、第2搬送スクリュウ147によって搬送される混合剤の一部は、磁気ブラシ部のトナー供給ロール142に供給される。
【0061】
トナー供給ロール142は、回転可能な筒状のトナー供給スリーブ143と、スリーブ内側にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラ144とを有している。回転可能なトナー供給スリーブ143は、アルミなどの導電性且つ非磁性の材料からなる。また、マグネットローラ144は、図示のように、回転方向に並ぶ複数の磁極(図中11時の位置から反時計回り方向に順にS極、N極、S極、N極、S極、N極)を具備している。トナー供給ロール142に供給された混合剤は、マグネットローラ144の発する磁力により、トナー供給スリーブ143の表面に吸着して磁気ブラシを形成する。そして、トナー供給スリーブ143の図中反時計回り方向の回転駆動に伴って、後述するトナー供給領域を通過した後、トナー供給スリーブ143の表面から離脱して再び第2収容部146内に戻される。その後、第2搬送スクリュウ147によって図中手前側の端部付近まで搬送された混合剤は、仕切壁の連通口を経て第1収容部148内に戻される。
【0062】
上述したトナー濃度センサ150は、透磁率センサからなる。このトナー濃度センサ150による混合剤の透磁率の検知結果は、電圧信号として図示しないトナー補給制御部に送られる。混合剤の透磁率は、混合剤の透明トナー濃度と相関を示すため、トナー濃度センサ50Yは透明トナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。
【0063】
図示しないトナー補給制御部はデータ記憶手段としてのRAM(Random Access Memory)を備えており、この中にトナー濃度センサ150からの出力電圧の目標値を格納している。そして、トナー濃度センサ150からの出力電圧値と、RAM内の前記目標値とを比較して、比較結果に応じた時間だけ図示しない透明トナー供給装置を駆動させる。この駆動により、透明トナーのトナー消費によって透明トナー濃度を低下させた混合剤に対し、第1収容部148内で適量の透明トナーが供給される。このため、第2収容部146内の混合剤の透明トナー濃度が所定の範囲内に維持される。
【0064】
トナー供給スリーブ143の表面に汲み上げられた混合剤は、トナー供給スリーブ143の回転に伴って図中反時計回り方向に回転する。そして、自らの先端をトナー供給スリーブ143の表面に対して所定の間隙を介して対向させている規制部材145との対向位置である担持量規制位置に進入する。このとき、規制部材145とスリーブ表面との間隙を通過することで、スリーブ表面上における担持量が規制される。
【0065】
トナー供給スリーブ143の上方では、トナー担持体たるトナー担持スリーブ130がトナー供給スリーブ143表面と所定の間隙を介して対向しながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動されている。トナー供給スリーブ143の回転に伴って上述の担持量規制位置を通過した混合剤は、トナー担持スリーブ130との接触位置であるトナー供給領域に進入して、磁気ブラシ先端を摺擦せしめながら移動する。この摺擦や、トナー供給スリーブ143とトナー担持スリーブ130との電位差などにより、磁気ブラシ中のトナーがトナー担持スリーブ130の表面上に供給される。なお、トナー供給スリーブ143には、スリーブ電源155により、可変可能なバイアスが印加される。トナー供給スリーブ143からトナー担持スリーブ130へのトナー供給を行うときには、スリーブ電源155により、トナー供給スリーブ143に対してトナー供給バイアスが印加される。これにより、トナー供給スリーブ143とトナー担持スリーブ130との間に、透明トナーを前者から後者に移動させる電界が形成される。トナー供給バイアスは、透明トナーの帯電極性と同極性の直流電圧でもよいし、かかる直流電圧に交流電圧を重畳したものでもよい。
【0066】
トナー供給領域を通過したトナー供給スリーブ143上の磁気ブラシ(混合剤)は、スリーブの回転に伴って第2収容部146との対向位置まで搬送される。この対向位置の付近には、マグネットローラ144に磁極が設けられておらず、混合剤をスリーブ表面に引き付ける磁力が作用していないため、混合剤はスリーブ表面から離脱して第2収容部146内に戻る。なお、マグネットローラ144として、6つの磁極を有するものの代わりに、6つを超える磁極を有するものを用いてもよい。
【0067】
トナー供給スリーブ143から供給されたトナーを担持するトナー担持スリーブ130は、ケーシング141に設けられた開口から周面の一部を露出させている。この露出箇所は、回路基板110に対向している。
【0068】
トナー担持スリーブ130の表面上に供給された透明トナーのトナー粒子は、トナー担持スリーブ130の表面上でホッピングしてクラウドを形成しながら、トナー担持スリーブ130の回転に伴って、トナー供給領域から回路基板110との対向領域に向けて搬送される。そして、回路基板110との対向領域において、必要に応じて回路基板110の貫通孔内に取り込まれて、透明ドットの記録に寄与する。層形成部190は、記録紙Pの全域のうち、任意の領域だけに透明ドットを記録することで、透明ドットの集合からなる透明トナー層を形成する。
【0069】
かかる構成の層形成部190においては、トナー担持体の表面に付着させているトナー粒子を回路基板の画像孔内に取り込むものとは異なり、トナー担持スリーブの表面上でホッピングさせているトナー粒子を回路基板の貫通孔に取り込んでいる。これにより、回路基板の飛翔制御電極に対する印加電圧を制御する記録制御部の低コスト化を図ることができる。具体的には、複数の飛翔制御電極に対する記録オン電圧Vc−onや記録オフ電圧Vc−offの入切については、専用のICによって個別に行う必要がある。このICの数は、相当数に及ぶ。例えば、600[dpi]の解像度で透明ドットを記録する仕様では、前述のICを4960個設ける必要がある。一般に、ICは、その耐電圧が高くなるほどチップ面積を必要とするため高価になる。直接記録方式では、いかに制御電圧を下げるかが、記録制御部の低コスト化を図る上で重要な要素となる。ところが、一般的な直接記録方式では、ICとして、少なくとも500[V]以上の耐電圧のものを用いる必要がある。これは次に説明する理由による。即ち、トナー粒子とトナー担持体とには、鏡像力、ファンデルワールス力、液架橋力などによって互いに引き付け合うような付着力が作用しており、これに打ち勝つだけの電界をつくり出すには、少なくとも絶対値が500[V]以上であるバイアスを孔近傍電極に印加しなければならないのである。これに対し、実施形態に係るプリンタの透明トナー層形成ユニット100においては、トナー担持スリーブ130の表面上でトナーをホッピングさせることで、スリーブ表面と透明トナーとの付着力をなくしているので、数十[V]程度のバイアスを孔近傍電極に印加すれば、記録のオンオフを制御することが可能である。つまり、上述のICとして、100[V]程度の耐電圧のものでよいのである。
【0070】
先に図1に示した透明トナー層形成ユニット100内において、層形成部190によって透明トナー層が形成された記録紙Pは、層形成部190の対向電極板104と回路基板110との間隙から排出された後、加圧定着ローラ対195のローラ間に挟み込まれる。加圧ローラ対195は、固定ローラ195aと、これに向けて付勢される加圧ローラ195bとの当接によって形成している加圧定着ニップに記録紙Pを挟み込むことで、記録紙Pの表面に形成された透明トナー層を所定の加圧力で加圧する。透明トナー層は、圧力可塑性の樹脂を主成分とする透明トナーによって形成されたものであるため、加圧ローラ対195によって加圧されることで、軟化して記録紙Pの表面に定着する。
【0071】
このように、本プリンタにおいては、透明トナー層を記録紙Pに定着させる際に、記録紙Pを加熱しないので、加熱によるY,M,C,Kトナーの再軟化によってフルカラー画像を変形させてしまうことがない。よって、透明トナー層を記録紙Pに定着させる際のフルカラー画像の変形を抑えることができる。なお、インクジェット方式の画像形成装置に本発明を適用した場合には、透明トナー層を記録紙に定着させる際に、記録紙を加熱しないことで、インクからの急激な水分蒸発で記録紙のインク画像部に顕著な皺の発生を回避する。これにより、透明トナー層を記録紙に定着させる際のカラーインク像の変形を抑えることができる。
【0072】
加圧定着ローラ対195の加圧ローラ195bは、0.5〜10[MPa]の圧力で固定ローラ195aに当接するように付勢されている。これにより、両ローラ間に挟み込まれた記録紙P上の透明トナー層は、0.5〜10[MPa]の圧力で加圧される。一般に、圧力可塑性の樹脂は、0.5[MPa]の圧力で軟化するので、0.5以上の[MPa]の圧力で透明トナー層を加圧することで、透明トナー層を確実に軟化せしめて記録紙Pに定着させることができる。また、圧力を高めすぎると、透明トナー層中の透明トナーの粘性を過剰に高めて、加圧ローラ195bや固定ローラ195aへの透明トナーのオフセットを発生させ易くなる。加圧力を10[MPa]以下に留めることで、透明トナーの加圧定着ローラ対195へのオフセットを低減することができる。
【0073】
本プリンタにおいては、加熱定着手段たる加熱定着装置20によってフルカラー画像が加熱定着せしめられた後の記録紙Pに対して、透明トナー層の形成と、透明トナー層の加圧定着処理とを施すように、層形成部190と加圧定着ローラ対195とを配設している。このような配設により、フルカラー画像の上に、透明トナー層を重ねて定着することが可能になるので、フルカラー画像の上の透明トナー層によってフルカラー画像の光沢性を高めることができる。
【0074】
本プリンタは、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてくるプリント命令信号を受信する情報取得手段としてのLANポートやUSBポートなどを有している。LANポートやUSBポートによって受信したプリント命令信号には、記録紙Pにフルカラー画像を形成するための周知のページ記述言語(PDL)の他、記録紙Pの全域のうち、どの領域に対して透明トナー層を形成するのかを示す透明層形成領域情報が含まれている。LANポート等からプリント命令信号を受けとったメイン制御部は、その透明形成領域情報に基づいて、透明トナー層形成ユニット100内の各機器の駆動を制御する。これにより、記録紙Pの全域のうち、透明層形成領域情報によって示される領域だけに透明トナー層を形成する。これにより、記録紙Pの全域のうち、フルカラー画像が形成されている領域だけに、透明トナー層を形成することができる。
【0075】
次に、圧力可塑性の透明トナーについて説明する。
実施形態に係るプリンタの透明トナー層形成ユニット100にセットする透明トナーの樹脂としては、ミクロ相分離構造を有するものが好ましく、ブロック共重合体あるいはコアシェル構造の樹脂であることがより好ましい。性質の異なる二種以上の高分子が共有結合でつながって構成されているブロック共重合体における何れかの高分子がガラス転移温度の高いハードセグメントからなり、他の高分子の何れかがガラス温度あるいは融点のより低いソフトセグメントからなることが好ましい。コアシェル構造の樹脂の場合には、コア又はシェルの何れか一方がガラス転移温度の高いハードセグメントならなり、他方がガラス転移温度あるいは融点が低いソフトセグメントからなることが好ましい。このような樹脂は、圧力可塑性を有しており、所定以上の圧力が加えられることにより、一時的に流動性が発現するので、紙繊維などに対して圧力のみによる定着処理を施すことが可能である。このような様な構造の樹脂としては、重縮合機構により重縮合させた樹脂、あるいはエチレン性不飽和単量体をラジカル重合機構により重合させた樹脂を用いることができる。樹脂を重縮合反応によって重縮合させる方法としては、例えば、「重縮合」(化学同人、1971年刊)、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社編、1988年刊)等に記載の従来から公知の方法を用いることができる。エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、又は、組み合わせて用いることもできる。かかる方法による樹脂としては、ポリエステル樹脂を例示することが可能である。
【0076】
エチレン性不飽和単量体をラジカル重合反応によって重合させる場合には、リビングアニオン重合法によってブロック共重合体を得ることができる。また、コアシェル構造を有する樹脂を得る場合には、2ステージフィード法と呼ばれる単量体を段階的に重合系へ供給する方法にてコア成分高分子とシェル成分高分子とでガラス転移温度の異なるナノサイズのコアシェル樹脂粒子を合成することができる。なお、ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計(DSC)を用いて−80〜140[℃]の範囲において毎分10[℃]の昇温速度で、ASTM D3418−82に規定された方法で測定した値を意味する。ハードセグメント成分相のガラス転移温度Tgは、45〜120[℃]の範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜110[℃]の範囲である。ソフトセグメント成分相のガラス転移温度Tgは、前述したハードセグメント成分相のガラス転移温度Tgよりも20[℃]以上低いことが好ましい。圧力刺激による樹脂の流動性を効率よく出現させることを考慮すると、30[℃]以上低いことがより好ましい。
【0077】
ブロック共重合体や、重縮合反応によって得られたポリエステル樹脂については、回転剪断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル、圧力吐出型分散機(ゴーリンホモジナイザー、ゴーリン社製)など、各種の機械的高剪断力によって水系媒体に分散させる剪断乳化法、樹脂を有機溶剤に溶解した後、水系媒体を添加し転相させる転相乳化法、ブロック共重合体又はその前駆体(リビング末端低分子量体又はブロック)を少量のエチレン性不飽和化合物と混合し、剪断乳化や転相乳化後、ミニエマルション重合、懸濁重合によりブロック共重合体の樹脂粒子分散液に調合する手法など、既存の分散法を利用してナノサイズコアシェル粒子の場合と同様に、樹脂粒子分散液にすることができる。例えば、得られた樹脂分散液を用い、必要に応じて離型剤含有分散液を適量配合したものに対して、乳化凝集法を施すことで、トナー粒子を製造することができる。
【0078】
トナー粒子の製造方法においては、前述した樹脂粒子分散液中の樹脂粒子、離型剤粒子及びその他の添加した粒子を凝集させる既知の凝集法を用いて凝集させることにより、粒径分布を調整することが可能である。具体的には、樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液とを混合し、さらに凝集剤を添加してヘテロ凝集を生じさせることにより所望の径の凝集粒子を形成する。その後、配合した分散液の系を樹脂粒子のガラス転移温度以上、又は、融点以上の温度に加熱して、前述した凝集粒子を融合し、洗浄、乾燥することによりトナー粒子が得られる。この時、加熱温度条件を選択することでトナー形状を不定形から球形まで制御することも可能である。
【0079】
重縮合反応によって得るポリエステル樹脂としては、非結晶性ポリエステル樹脂や、結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。多価カルボン酸や、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸等の重縮合性単量体を用いた直接エステル化反応、エステル交換反応等により重縮合を行うことで製造することが可能である。重縮合の際には、重縮合を促進するために、重縮合触媒を併用することが好ましい。前記多価カルボン酸としては、脂肪族、脂環族、芳香族の多価カルボン酸、それらのアルキルエステル、酸無水物及び酸ハロゲン化物などが挙げられる。また、前記多価アルコールとしては、多価アルコールや、それらのエステル化合物が挙げられる。なお、多価カルボン酸のアルキルエステルは、低級アルキルエステルであることが好ましい。前記低級アルキルエステルは、エステルのアルコキシ部分の炭素数が1〜8となるアルキルエステルである。具体的には、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル及びイソブチルエステル等を挙げることができる。
【0080】
前記多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシ基を2個含有する化合物である。例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸等を挙げることができる。また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等を挙げることができる。これらの多価カルボン酸は、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を併用することもできる。
【0081】
前記多価アルコール(ポリオール)は、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノキシアルコールフルオレン(ビスフェノキシエタノールフルオレン)等を挙げることができる。また、ジオール以外のポリオールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等を挙げることができる。これらの多価アルコール(ポリオール)は、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を併用することもできる。
【0082】
前記エチレン性不飽和化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、親水性基及びエチレン性不飽和結合を有する単量体であってもよい。例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;イソプレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン類などや、β−カルボキシエチルアクリレート等を例示することができる。これらの単量体からなる単独重合体、又はこれらを2種以上共重合して得られる共重合体、さらにはこれらの混合物を使用することができる。
【0083】
前記親水性基としては、極性基が挙げられる。より詳しくは、カルボキシ基、スルホ基、ホスホニル基等の酸性極性基、アミノ基等の塩基性極性基、アミド基、ヒドロキシ基、シアノ基、ホルミル基等の中性極性基等などである。これらの中では、特に酸性極性基が好適である。酸性極性基及びエチレン性不飽和結合を有する単量体が、樹脂粒子表面にある特定の範囲で存在することにより、樹脂粒子に凝集性を付与し、樹脂粒子のトナー化が可能となり、さらにトナーに十分な帯電性を与えることができるからである。酸性極性基としては、カルボキシ基や、スルホ基が挙げられる。これらの酸性極性基を有する単量体としては、例えば、カルボキシ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物、スルホ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物などを挙げることができる。
【0084】
上述したカルボキシ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステルを挙げることができる。これらの単量体の1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0085】
エチレン性不飽和化合物の重合体として、ガラス転移温度Tgが40℃以上であるものを用いる場合には、その中でも、ランダム共重合体を用いることが好ましい。また、親水性基を有するエチレン性不飽和化合物をモノマー単位として含有する樹脂が好ましく、親水性基を有するエチレン性不飽和化合物を共重合比で0.1〜10[mol%]含有することが好ましい。この範囲内であると、水系媒体中でのトナー粒子の製造工程において、ガラス転移温度Tgが40℃以上の樹脂でトナーのシェル層を容易に形成することが可能になる。ガラス転移温度Tgが40℃以上のエチレン性不飽和化合物の重合体や、ポリエステル樹脂などの重縮合樹脂については、トナーに含まれる全結着樹脂の50重量%以下となるように使用することが好ましく、5〜20重量%がより好ましい。この範囲内であると、トナー耐久性が向上し、安定した透明トナー層を形成することができる。
【0086】
トナー粒子に含有させる離型剤としては、例えば、各種エステルワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類や、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物系・石油系ワックス、及びそれらの変性物などが挙げられる。これらのワックス類は、室温付近では、トルエンなど溶剤にはほとんど溶解しないか、溶解しても極めて微量である。これらのワックス類を、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに、強い剪断付与能力を有するホモジナイザーや圧力吐出型分散機(ゴーリンホモジナイザー、ゴーリン社製)で粒子状に分散させ、サブミクロン以下の粒子の分散液が作製される。また、これらの離型剤は、トナー構成固体分総重量に対して5〜25重量%の範囲で添加することが、オイルレス定着システムにおける定着画像の剥離性を確保する上で好ましい。なお、得られた離型剤粒子分散液の粒径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−920)で測定することが可能である。
【0087】
トナー粒子に離型剤を含有させるときには、トナーの樹脂粒子、離型剤粒子を凝集させた後に、さらに樹脂粒子分散液を追加して凝集粒子表面に樹脂粒子を付着させることが帯電性や耐久性を向上させる観点から好ましい。
【0088】
なお、重合、樹脂粒子製造、樹脂粒子分散、離型剤分散、樹脂凝集、凝集安定化などの際に、界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤としては、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤などを例示することができる。また、ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用してもよい。樹脂粒子の分散のため手段としては回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものを例示することができる。
【0089】
本発明者らは、これまで説明した圧力可塑性の透明トナーのいくつかの例として、以下のようなものを試作した。
まず、セパラブルフラスコ中に、300重量部のイオン交換水と、1.5重量部のTTAB(テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、シグマ社製)とを投入し、20分間、窒素置換を行った後、撹拌しながら65[℃]まで昇温させた。そして、40重量部のn−ブチルアクリレートモノマーを加えた後、さらに20分間撹拌を行った。その後、0.5重量部の重合開始剤V−50(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、和光純薬工業(株)製)を10重量部のイオン交換水に溶解した後、フラスコ中に投入した。そして、65[℃]の温度環境下に3時間おいた。その後、61重量部のスチレンモノマーと、9重量部のn−ブチルアクリレートモノマーと、2重量部のアクリル酸と、0.8重量部のドデカンチオールとを、0.5重量部のTTABを溶解した100重量部のイオン交換水に混合して乳化せしめた後、得られた乳化液を2時間かけて定量ポンプによってフラスコ中に連続的に投入した。その後、70[℃]まで昇温させた後、70[℃]の条件に2時間おいて、重合反応を完了させた。これにより、重量平均分子量Mw=25,000、平均粒子径=150[nm]、固形分量=25重量%のコアシェル型の樹脂粒子分散液を得た。以下、この樹脂粒子分散液を、「第1樹脂粒子分散液」という。この「第1樹脂粒子分散液」を40[℃]で風乾して樹脂粒子を抽出した。そして、得られた樹脂粒子について、−80[℃]から140[℃]の温度範囲でDSC解析を行ったところ、−50[℃]付近にポリブチルアクリレートによるガラス転移が観測された。また、60[℃]付近にスチレン−ブチルアクリレート−アクリル酸共重合体からなると考えられる共重合体による樹脂のガラス転移が観測された。
【0090】
次に、離型剤粒子分散液を調合した。具体的には、800重量部のイオン交換水に2重量部のアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンR)と、215重量部のカルナバワックスとを混合し、混合液を100[℃]まで加熱した後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)で15分間処理して、乳化を促進した。その後、100[℃]の温度下でゴーリンホモジナイザーによって処理して、乳化を更に促進した。これにより粒子の中心径が230[nm]、融点が83[℃]、固形分量が21.5[%]である離型剤粒子分散液を得た。以下、この離型剤粒子分散液を「第1離型剤粒子分散液」という。
【0091】
次に、トナー粒子を製造した。具体的には、168重量部(うち、樹脂成分は42重量部)の「第1樹脂粒子分散液」と、80重量部(うち、離型剤成分は17.2重量部)の「第1離型剤粒子分散液」と、0.15重量部のポリ塩化アルミニウムと、300重量部のイオン交換水とを、丸型ステンレス製フラスコに投入して混合した。そして、混合液中の樹脂粒子や離型剤粒子をホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)によって分散させた後、加熱用オイルバスによって分散液を撹拌しながら42[℃]まで加熱して、42℃の温度下に60分間おいた。その後、フラスコに84重量部(うち、樹脂成分は21重量部)の「第1樹脂粒子分散液」を追加投入して緩やかに撹拌した。そして、0.5[モル/リットル]の水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを6.0に調整した後、撹拌を継続しながら95[℃]まで加熱した。そして、5.5以上のpHを維持するために必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液を追加滴下しながら、95℃の条件に3時間おいた。その後、冷却、濾過、イオン交換水による洗浄を行った後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。そして、40℃のイオン交換水中に再分散し、15分、300[rpm]で撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した後、真空乾燥を12時間行って透明トナー粒子を得た。以下、この透明トナー粒子を「第1透明トナー粒子」という。「第1透明トナー粒子」の粒径をコールターカウンターで測定したところ、その体積平均粒径は5.8[μm]であった。
【0092】
次いで、トナー・キャリア混合剤を製造した。具体的には、50重量部の「第1透明トナー粒子」と、1.5重量部の疎水性シリカ(キャボット社製、TS720)とを、サンプルミルで混合して透明トナー粉末を得た。また、100重量部のシリコーン樹脂溶液(KR50、信越化学社製)と、3重量部のカーボンブラック(BP2000、キャボット社製)と、100重量部のトルエンとを、ホモミキサーで30分間分散させて被覆層形成溶液を得た。この被覆層形成溶液(203重量部)と、1000重量部の球状フェライトキャリア(平均粒子径50μm)とを用い、流動床型塗布装置により、球状フェライトキャリア粒子表面に被覆層を形成した磁性粒子からなる磁性キャリアを製造した。次に、90重量部の前記透明トナー粉末と、910重量部の前記磁性キャリアとをボールミルに入れて30分間攪拌して、トナー・キャリア混合剤を得た。以下、このトナ0・キャリア混合剤を「第1混合剤」という。
【0093】
次に、これまで説明した樹脂粒子分散液とは異なる樹脂粒子分散液を製造した。具体的には、175重量部の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と、320重量部のビスフェノールA 2モルエチレンオキサイド付加物と、0.5重量部のドデシルベンゼンスルホン酸とを混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、120[℃]の窒素雰囲気下に12時間おいて重縮合反応させて、均一透明なポリエステル樹脂を得た。以下、このポリエステル樹脂を「第1ポリエステル」という。「第1ポリエステル」の重量平均分子量をGPCによって測定したところ、14,000であった。また、「第1ポリエステル」のガラス転移温度TgをDSCによって測定したところ54[℃]であった。
【0094】
0.36重量部のドデシルベンゼンスルホン酸と、80重量部の1,6−ヘキサンジオールと、115重量部のセバシン酸とを混合した後、撹拌機を備えたリアクターに投入した。そして、90[℃]の窒素雰囲気下に5時間おいて重縮合反応させて、均一透明ポリエステル樹脂を得た。GPCによる重量平均分子量は8,000、DSCによるTgは−52℃であった。以下、このポリエステル樹脂を「第2ポリエステル」という。
【0095】
100重量部の「第1ポリエステル」と、100重量部の「第2ポリエステル」とを、フラスコ内に投入して撹拌機付きのリアクターにセットした。そして、120[℃]の温度下で30分間の溶解、混合を行った後、95[℃]に加熱した、800重量部のイオン交換水と、1.0重量部のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムと、1.0重量部の1N NaOH水溶液とを溶解した95[℃]の中和用水溶液をフラスコ中に投入した。フラスコ内の液を、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)に5分間かけて乳化させた後、さらに超音波バス内で10分振とうした後、室温水にてフラスコを冷却した。このようにして、固形分量が20重量%である樹脂粒子分散液を得た。以下、この樹脂粒子分散液を「第2樹脂粒子分散液」という。「第2樹脂粒子分散液」の中心径は250[nm]であった。
【0096】
次に、トナー粒子を製造した。具体的には、210重量部(うち、樹脂成分は42重量部)の「第2樹脂粒子分散液」と、40重量部(うち、離型剤成分は8.6重量部)の「第1離型剤粒子分散液」と、0.15重量部のポリ塩化アルミニウムと、300重量部のイオン交換水とを、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)によって十分に混合・分散した。そして、加熱用オイルバスでフラスコ中の分散液を撹拌しながら、42[℃]まで加熱し、42[℃]の温度下に60分間おいた後、更に105重量部(うち、樹脂成分は21重量部)の「第2樹脂粒子分散液」を追加して緩やかに撹拌した。その後、0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを6.0に調整した後、撹拌を継続しながら95[℃]まで加熱した。95[℃]に昇温せしめるまでの間、5.0以上のpHを維持するために、必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液を追加滴下した。その後、95[℃]の温度環境下に3時間おいた後、冷却、濾過、イオン交換水による洗浄を行ってから、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。そして、40[℃]のイオン交換水3リットル中に再分散し、15分、300[rpm]で撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返した後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、更に真空乾燥を12時間行ってトナー粒子を得た。以下、このトナー粒子を「第2トナー粒子」という。「第2トナー粒子」の粒径をコールターカウンターで測定したところ、その体積平均粒径は4.9[μm]であった。
【0097】
次いで、トナー・キャリア混合剤を製造した。具体的には、50重量部の「第2トナー粒子」に対し、1.5重量部の疎水性シリカ(キャボット社製、TS720)を添加した後、両者をサンプルミルで混合してトナー粉末を得た。以下、このトナー粉末を「第2トナー粉末」という。また、100重量部のシリコーン樹脂溶液(KR50、信越化学社製)と、3重量部のカーボンブラック(BP2000、キャボット社製)と、100重量部のトルエンとをホモミキサーで30分間撹拌して被覆層形成溶液を得た。この被覆層形成液(203重量部)と、1000重量部の球状フェライトキャリア(平均粒子径50μm)とを用い、流動床型塗布装置により、球状フェライトキャリア表面に被覆層を形成したキャリア粒子を製造した。以下、このキャリア粒子を「第2キャリア粒子」という。90重量部の「第2トナー粉末」と、910重量部の「第2キャリア粒子」とをボールミルに入れて30分間攪拌して、トナー・キャリア混合剤を得た。以下、このトナー・キャリア混合剤を「第2混合剤」という。
【0098】
なお、樹脂粒子の重量平均分子量Mwや数平均分子量Mnについては、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィ(GPC)を用いて、次のようにして測定した。即ち、温度40℃において、溶媒(テトラヒドロフラン)を1.2[ml/分]の流速で流しながら、濃度0.2[g/20ml]の樹脂粒子分散液を試料重量として3mg注入した。分子量の測定にあたっては、試料中の樹脂粒子の分子量が数種の単分散ポリスチレン標準試料によって作製された検量線の分子量の対数とカウント数とが直線となる範囲内に包含される測定条件で行う。測定結果の信頼性については、同様の測定条件において、NBS706ポリスチレン標準試料の重量平均分子量Mwが28.8×104程度、数平均分子量Mnが13.7×104程度になることを確認することによって確かめることができる。GPCのカラムとしては、TSK−GEL、GMH(東ソー(株)製)等を用いる。
【0099】
樹脂のガラス転移温度Tgについては、示差走査熱量計DSC/RDC220(セイコーインスツルメント社製)を用いて測定した。また、樹脂粒子分散液中における樹脂粒子の粒子径については、レーザー回析式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−920)を使用して測定した。また、トナー粒子やキャリア粒子の粒径については、コールターマルチサイザーII型(ベックマン・コールター社製)を使用して測定した。
【0100】
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
[実施例実験]
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリンタ試験機を試作した。そして、このプリンタ試験機の透明トナー層形成ユニットに、混合剤として「第1混合剤」をセットして、テスト画像をプリントした。テスト画像としては、Mベタトナー像とYベタトナー像との重ね合わせによる赤ベタトナー像、及び文字トナー像を具備するものを採用した。そして、図16に示されるように、テスト画像における赤ベタトナー像の全域のうち、一部の領域だけに透明トナー層を重ねて形成した。その後、文字トナー像のつぶれによる文字視認性について評価した。すると、文字トナー像につぶれは認められず、文字を良好に判読することができた。
【0101】
[比較例実験]
次に、本発明を適用していない構成を採用した場合の比較例実験を行った。この比較例実験では、従来と同様の熱定着方式の透明トナーをトナー層形成ユニットにセットした。そして、赤ベタトナー像の領域の一部にトナー層形成ユニットによって透明トナー層を形成した記録シートを、手動で定着装置に再搬送して、透明トナー層を記録シートに熱定着させた。このようにして得られたテスト画像における文字トナー像のつぶれによる文字視認性について評価した。すると、文字トナー像につぶれが認められ、つぶれによって文字の視認性が悪化した。文字トナー像を定着装置に2回通したことにより、文字トナー像のトナーを過剰に軟化させて文字のつぶれを発生させてしまったからである。
【0102】
なお、実施形態に係るプリンタは、有色像として有色トナー像を形成するものであるが、有色像として有色インク像を形成するものでは、次のようにして、文字インク像の視認性を悪化させると考えられる。即ち、ベタインク画像の上に形成した透明トナー層を定着させるために記録シートを定着装置に通した際に、インクを急激に蒸発させることにより、記録シートのインク付着部に皺を発生させて、文字インク像の視認性を悪化させてしまうと考えられる。
【0103】
本発明者らは、上述した実施例実験と比較例実験とにおいてそれぞれ、赤ベタトナー像における透明トナー層を形成している領域(以下、透明層領域という)の光沢度と、透明トナー層を形成していない領域(以下、無垢領域という)の光沢度とを測定した。光沢度については、鏡面光沢度計(測定角度60°)によって測定した。この結果を、文字の視認性の結果とともに次の表1に示す。
【表1】
【0104】
実施例実験では、無垢領域の光沢度が20(JIS−Z8741 鏡面光沢度−測定方法)であったのに対し、透明層領域の光沢度は45もあった。つまり、透明トナー層を形成した領域だけ、光沢度を高めることができている。印刷の分野では、画像の一部だけ光沢性を高めたいことがある。例えば写真画像部の光沢性を高める一方で、グラフ画像部や図表画像部では光沢を抑えて見やすくしたいなどといった要望である。実施形態に係るプリンタでは、光沢性を高めたい画像領域だけに透明トナー層を形成することで、光沢性を高めたくない画像領域の光沢性を抑えることができる。
【0105】
一方、比較例実験では、無垢領域の光沢度が40もあり、透明層領域の光沢度(50)と大差ない結果となってしまった。有色像として有色トナー像を形成する場合には、定着装置による加熱時間が長くなるほど、有色トナー像の光沢性が高まる。比較実験では、無垢領域も透明層領域と同様に、定着装置に2回通していることから、定着装置に1回だけ通す場合に比べて(実施形態実験の無垢領域)、無垢領域の光沢性を高めてしまう。このように、光沢性の向上のために透明トナー層を形成した透明層領域だけでなく、光沢性を高めたくない無垢領域の光沢性も高めてしまうことから、意図的に光沢差をつけた画像を形成することができない。
【0106】
実施形態に係るプリンタのように、有色像として有色トナー像を形成するものにおいては、透明トナー層を定着させる際の有色トナー像の変形を抑えることができることに加えて、透明層領域と無垢領域とに光沢差をつけることが可能になるという効果も得ることができる。
【0107】
次に、実施形態に係るプリンタの一部の構成を変更した各変形例に係るプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
[第1変形例]
図17は、第1変形例に係るプリンタの透明トナー層形成ユニットの回路基板110を対向電極側から示す平面図である。また、図18は、回路基板110をトナー担持スリーブ側から示す平面図である。第1変形例においては、図18に示されるように、共通電極118を、リング状の飛翔制御電極112の周囲にだけ設け、それぞれの共通電極118をリードによって導通させている。かかる構成では、実施形態に比べて、共通電極118の面積を低減して、電極材料を節約することができる。
【0108】
[第2変形例]
図19は、第2変形例に係るプリンタの透明トナー層形成ユニットのトナー担持スリーブ130を示す横断面図である。また、図20は、トナー担持スリーブ130の円筒部131を平面的に展開した平面展開図である。第2変形例に係るプリンタのトナー担持スリーブ130は、A相電極133aと、B相電極133bとの他に、C相電極133cを具備している。トナー担持スリーブ130の周方向に沿って、A相、B相、C相、A相、B相、C相・・・というように、それらの3つの電極が1組となった電極組が繰り返し並んでいる。それぞれの電極には、図21に示されるように互いに位相ズレしたパルス電圧が印加される。すると、トナー担持スリーブ130の表面上で、透明トナーのトナー粒子が、A相電極133aの真上からB相電極133bの真上へ、B相電極133bの真上からC相電極133cの真上へ、C相電極133cの真上からA相電極133aの真上へ、と順に移動する。これにより、トナー担持スリーブ130の表面上に形成されたクラウド中の透明トナー粒子は、スリーブの周面に沿って周回移動する。この周回移動により、トナー担持スリーブ130を回転駆動しなくても、透明トナー粒子を回路基板110との対向領域に搬送することができる。
【0109】
そこで、第2変形例においては、トナー担持スリーブ130を回転不能に構成している。かかる構成では、トナー担持スリーブ130を回転駆動する場合に比べて、構成の簡素化を図って、低コスト化を実現することができる。なお、長期間の使用に伴って、各電極の上にトナーの外添剤等微細な粒子が堆積してしまう場合には、画像形成の時間以外にクリーニングを行うクリーニング手段を設けるとよい。クリーニング動作のときだけ、トナー担持スリーブ130の表面に回転ブラシやブレート等のクリーニング部材を接触させたり、吸引ノズルによって吸引を行ったりする構成のものを例示することができる。クリーニング動作の際に、各相の電極に印加するパルス電圧としては、プリント動作時と同様に互いに位相ずれしたものであって、DC成分を具備し、周波数=0.5KHz〜7KHz、ピークツウピーク=120〜600[V]のものを例示することができる。
【0110】
[第3変形例]
図22は、第3変形例に係るプリンタの透明トナー層形成ユニットのホッピングユニット120を、回路基板110とともに拡大して示す拡大構成図である。このホッピングユニット120は、透明トナーと磁性キャリアとを混合した混合剤を収容する代わりに、透明トナーだけを収容している。トナー収容部内に収容している透明トナーを、回転するトナー供給ローラ152の弾性材料からなるローラ部と、これに当接しながら回転する帯電ローラ153との間に挟み込むことで、透明トナーの摩擦帯電を助長しながら、その透明トナーをトナー供給ローラ152表面で汲み上げる。汲み上げられた透明トナーは、トナー供給ローラ152に当接している規制部材151によって層厚が規制された後、トナー供給ローラ152の回転に伴ってトナー担持スリーブ130との対向領域まで搬送される。
【0111】
プリントジョブ時には、トナー供給ローラ152に対して、供給電源159によって供給バイアスが印加される。この供給バイアスは、トナー担持スリーブ130のA相電極やB相電極に印加されるパルス電圧の平均電位Vsよりも、透明トナーの帯電極性とは逆極性側に大きな値のバイアスである。よって、トナー供給ローラ152と、トナー担持スリーブ130との間には、透明トナーをトナー供給ローラ152側からスリーブ側に移動させる電界が形成される。トナー供給ローラ152の表面上の透明トナーは、その電界の作用によってローラ表面からスリーブ表面に転移する。トナー担持スリーブ130の表面上では、既に説明したように、透明トナーのホッピングによるクラウドが形成される。クラウドを形成している透明トナーの一部は、回路基板110の貫通孔内に取り込まれて透明ドットの記録に寄与する。
【0112】
回路基板110との対向領域で回路基板110の貫通孔内に取り込まれなかった透明トナーは、トナー担持スリーブ130の回転に伴ってケーシング内に至った後、図示しない回収手段によってトナー担持スリーブ130の表面から回収される。回収された透明トナーは再びトナー収容部される。
【0113】
[第4変形例]
図23は、第4変形例に係るプリンタを示す概略構成図である。実施形態に係るプリンタでは、プリンタ筐体内において、記録紙Pを鉛直方向に沿って下方から上方に搬送しながら、記録紙Pに対して中間転写ベルト8上の4色重ね合わせトナー像を2次転写するようになっていた。これに対し、第4変形例に係るプリンタでは、プリンタ筐体内において、記録紙Pを水平方向に沿って図中左側から右側に搬送しながら、記録紙Pに対して中間転写ベルト8上の4色重ね合わせトナー像を2次転写するようになっている。このような2次転写を可能にするように、各色の感光体(1Y,M,C,K)を具備する各色の作像ユニットは、中間転写ベルト8の上方に配設されている。
【0114】
透明トナー層形成ユニット100は、層形成部190と加圧定着ローラ対195との間に、予備加熱ヒーター197を有している。この予備加熱ヒーター197は、層形成部190によって記録紙P上に形成された透明トナー層を、輻射によって予備加熱するものである。輻射の代わりに、接触熱伝導や熱風吹き付けによって透明トナー層を予備加熱してもよい。予備加熱ヒーター197による透明トナー層の加熱温度は、加熱定着装置20による加熱温度よりも低い温度である。予備加熱ヒーター197により、加圧前の透明トナー層を予備加熱することで、加圧定着ローラ対195による透明トナー層の加圧定着を助長することができる。予備加熱温度は、加熱定着装置20よりも低い温度であるので、従来装置のように2度の加熱定着を行う場合に比べて、予備加熱時の画像の変形を抑えることが可能である。
【0115】
これまで、電子写真プロセスによって画像を形成するプリンタについて説明してきたが、インクジェット方式のなど、電子写真プロセスとは異なる方式によって画像を形成する画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。
【0116】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、記録紙P等の記録部材にフルカラー画像等の有色像を形成する有色像形成手段(例えば作像ユニット)と、前記記録部材の全面又は一部に透明トナーからなる透明トナー層を形成する透明トナー層形成ユニット100等の透明トナー層形成手段と、前記透明トナー層が形成された前記記録部材に対して透明トナー層の定着処理を施す定着手段とを備える画像形成装置であって、前記透明トナー層形成手段が、圧力可塑性の樹脂を主成分とする透明トナーからなる透明トナー層を形成するものであり、且つ、前記定着手段が、前記透明トナー層を加熱することなく加圧して前記記録部材に定着せしめる加圧定着ローラ対195等の加圧定着手段であることを特徴とするものである。
【0117】
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記透明トナー層を前記記録部材に定着せしめる際に、前記記録部材を0.5〜10[MPa]の圧力で加圧するように、前記加圧定着手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成においては、既に説明したように、0.5以上の[MPa]の圧力で透明トナー層を加圧することで、透明トナー層を確実に軟化せしめて記録部材に定着させることができる。また、加圧力を10[MPa]以下に留めることで、透明トナーの加圧定着手段へのオフセットを低減することができる。
【0118】
[態様C]
態様Cは、態様A又はBにおいて、前記有色像形成手段として、有色トナーによって有色トナー像を形成する有色トナー像形成手段を用い、前記有色トナー像形成手段によって有色トナー像が形成された記録部材を加熱して前記有色トナー像を前記記録部材に定着せしめる加熱定着装置20等の加熱定着手段を設け、且つ、前記加熱定着手段によって前記有色トナー像が加熱定着せしめられた後の記録部材に対して、前記透明トナー層の形成と、前記透明トナー層の加圧定着処理とを施すように、前記透明トナー層形成手段と前記加圧定着手段とを配設したことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、有色トナー像の上に、透明トナー層を重ねて定着することが可能になるので、有色トナー像の上の透明トナー層によって有色トナー像の光沢性を高めることができる。
【0119】
[態様D]
態様Dは、態様A〜Cの何れかにおいて、記録部材の表面の全域のうち、どの領域に対して前記透明トナー層を形成するのかを示す透明層形成領域情報を取得するLANポート等の情報取得手段を設けるとともに、前記情報取得手段によって取得された前記透明層形成領域情報によって示される領域だけに対して前記透明トナー層を形成する処理を実施するように、前記透明トナー層形成手段の駆動を制御するメイン制御部等の層形成制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、記録部材の全域のうち、有色トナー像が形成されている領域だけに透明トナー層を形成して、全域に透明トナー層を形成する場合に比べて低コスト化を図ることができる。
【0120】
[態様E]
態様Eは、態様Dにおいて、透明トナー層形成手段が、板状の基体を厚み方向に貫通する貫通孔(例えば貫通孔114)、及び前記貫通孔の近傍に設けられた孔近傍電極(例えば飛翔制御電極112)の組合せからなる孔−電極組を複数具備する基板(例えば回路基板110)と、前記基板に対向する自らの表面に担持した透明トナーの粒子を、前記表面に沿って並ぶ複数のホッピング電極の間でホッピングさせることで前記表面上に浮遊トナー層を形成するトナー担持体(例えばトナー担持スリーブ130)と、ホッピング用周期パルス電圧を前記複数のホッピング電極に印加して、透明トナーの粒子をホッピングさせるための電界をホッピング電極間に形成するホッピング電圧印加手段(例えば搬送制御部191)と、前記基板における前記トナー担持体との対向面とは反対側の面に対して所定の間隙を介して対向する対向電極(例えば対向電極板104)と、前記基板における複数の貫通孔のうち、前記透明層形成領域情報によって示される領域に対応する位置にある貫通孔と前記組合せをなしている孔近傍電極に対し、ドットを記録するための記録オン電圧を印加にする一方で、複数の貫通孔のうち、前記領域に対応しない位置にある貫通孔と前記組合せをなしている孔近傍電極に対し、ドットを記録しないための記録オフ電圧を印加する記録電圧印加手段(例えば記録制御部128)とを有し、且つ、複数の孔近傍電極のうち、前記記録オン電圧を印加した孔近傍電極の近傍の貫通孔に対して前記浮遊トナー層中の透明トナーを通した後、該透明トナーを前記対向電極上の記録部材に付着させることで、前記記録部材に透明トナー層を形成するもの(例えば層形成部190)であることを特徴とするものである。かかる構成では、記録部材やこれに定着している有色トナー像に対して、非接触で透明トナー層を形成することで、接触して透明トナー層を形成するものとは異なり、接触による有色トナー像の乱れを回避することができる。
【0121】
[態様F]
態様Fは、態様A〜Eにおいて、前記透明トナー層形成手段と、前記加圧定着手段とを共通の保持体(例えば透明トナー層形成ユニットケーシング)に保持させて、画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能にしたことを特徴とするものである。かかる構成では、透明トナー層形成手段と、加圧定着手段とを一体的に交換することで、メンテナンス性を向上させることができる。
【0122】
[態様G]
態様Gは、態様Cにおいて、前記加熱定着手段による加熱温度よりも低い加熱温度で前記記録部材を補助的に加熱する補助加熱ヒーター197等の補助加熱手段を、前記透明トナー層形成手段と前記加圧定着手段との間に設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、予備加熱手段により、加圧前の透明トナー層を予備加熱することで、加圧定着手段による透明トナー層の加圧定着を助長することができる。
【符号の説明】
【0123】
7:光書込装置(有色像形成手段の一部)
15:転写ユニット(有色像形成手段の一部)
20:加熱定着装置(加熱定着手段)
100:透明トナー層形成ユニット
104:対向電極板(対向電極)
110:回路基板(基板)
112:飛翔制御電極(孔近傍電極)
114:貫通孔
128:記録制御部(記録電圧印加手段)
130:トナー担持スリーブ(トナー担持体)
190:層形成部(透明トナー層形成手段)
191:搬送制御部(ホッピング電圧印加手段)
195:加圧定着ローラ対(加圧定着手段)
197:予備加熱ヒータ(予備加熱手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0124】
【特許文献1】特開2008−145453号公報
【特許文献2】特開2010−95341号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録部材に有色像を形成する有色像形成手段と、前記記録部材の全面又は一部に透明トナーからなる透明トナー層を形成する透明トナー層形成手段と、前記透明トナー層が形成された前記記録部材に対して透明トナー層の定着処理を施す定着手段とを備える画像形成装置であって、
前記透明トナー層形成手段が、圧力可塑性の樹脂を主成分とする透明トナーからなる透明トナー層を形成するものであり、
且つ、前記定着手段が、前記透明トナー層を加熱することなく加圧して前記記録部材に定着せしめる加圧定着手段であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記透明トナー層を前記記録部材に定着せしめる際に、前記記録部材を0.5〜10[MPa]の圧力で加圧するように、前記加圧定着手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
前記有色像形成手段として、有色トナーによって有色トナー像を形成する有色トナー像形成手段を用い、
前記有色トナー像形成手段によって有色トナー像が形成された記録部材を加熱して前記有色トナー像を前記記録部材に定着せしめる加熱定着手段を設け、
且つ、前記加熱定着手段によって前記有色トナー像が加熱定着せしめられた後の記録部材に対して、前記透明トナー層の形成と、前記透明トナー層の加圧定着処理とを施すように、前記透明トナー層形成手段と前記加圧定着手段とを配設したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの画像形成装置において、
記録部材の表面の全域のうち、どの領域に対して前記透明トナー層を形成するのかを示す透明層形成領域情報を取得する情報取得手段を設けるとともに、
前記情報取得手段によって取得された前記透明層形成領域情報によって示される領域だけに対して前記透明トナー層を形成する処理を実施するように、前記透明トナー層形成手段の駆動を制御する層形成制御手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置であって、
前記透明トナー層形成手段が、
板状の基体を厚み方向に貫通する貫通孔、及び前記貫通孔の近傍に設けられた孔近傍電極の組合せからなる孔−電極組を複数具備する基板と、
前記基板に対向する自らの表面に担持した透明トナーの粒子を、前記表面に沿って並ぶ複数のホッピング電極の間でホッピングさせることで前記表面上に浮遊トナー層を形成するトナー担持体と、
ホッピング用周期パルス電圧を前記複数のホッピング電極に印加して、透明トナーの粒子をホッピングさせるための電界をホッピング電極間に形成するホッピング電圧印加手段と、
前記基板における前記トナー担持体との対向面とは反対側の面に対して所定の間隙を介して対向する対向電極と、
前記基板における複数の貫通孔のうち、前記透明層形成領域情報によって示される領域に対応する位置にある貫通孔と前記組合せをなしている孔近傍電極に対し、ドットを記録するための記録オン電圧を印加にする一方で、複数の貫通孔のうち、前記領域に対応しない位置にある貫通孔と前記組合せをなしている孔近傍電極に対し、ドットを記録しないための記録オフ電圧を印加する記録電圧印加手段とを有し、
且つ、複数の孔近傍電極のうち、前記記録オン電圧を印加した孔近傍電極の近傍の貫通孔に対して前記浮遊トナー層中の透明トナーを通した後、該透明トナーを前記対向電極上の記録部材に付着させることで、前記記録部材に透明トナー層を形成するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかの画像形成装置において、
前記透明トナー層形成手段と、前記加圧定着手段とを共通の保持体に保持させて、画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能にしたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項3の画像形成装置において、
前記加熱定着手段による加熱温度よりも低い加熱温度で前記記録部材を補助的に加熱する補助加熱手段を、前記透明トナー層形成手段と前記加圧定着手段との間に設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
記録部材に有色像を形成する有色像形成手段と、前記記録部材の全面又は一部に透明トナーからなる透明トナー層を形成する透明トナー層形成手段と、前記透明トナー層が形成された前記記録部材に対して透明トナー層の定着処理を施す定着手段とを備える画像形成装置であって、
前記透明トナー層形成手段が、圧力可塑性の樹脂を主成分とする透明トナーからなる透明トナー層を形成するものであり、
且つ、前記定着手段が、前記透明トナー層を加熱することなく加圧して前記記録部材に定着せしめる加圧定着手段であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記透明トナー層を前記記録部材に定着せしめる際に、前記記録部材を0.5〜10[MPa]の圧力で加圧するように、前記加圧定着手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
前記有色像形成手段として、有色トナーによって有色トナー像を形成する有色トナー像形成手段を用い、
前記有色トナー像形成手段によって有色トナー像が形成された記録部材を加熱して前記有色トナー像を前記記録部材に定着せしめる加熱定着手段を設け、
且つ、前記加熱定着手段によって前記有色トナー像が加熱定着せしめられた後の記録部材に対して、前記透明トナー層の形成と、前記透明トナー層の加圧定着処理とを施すように、前記透明トナー層形成手段と前記加圧定着手段とを配設したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの画像形成装置において、
記録部材の表面の全域のうち、どの領域に対して前記透明トナー層を形成するのかを示す透明層形成領域情報を取得する情報取得手段を設けるとともに、
前記情報取得手段によって取得された前記透明層形成領域情報によって示される領域だけに対して前記透明トナー層を形成する処理を実施するように、前記透明トナー層形成手段の駆動を制御する層形成制御手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置であって、
前記透明トナー層形成手段が、
板状の基体を厚み方向に貫通する貫通孔、及び前記貫通孔の近傍に設けられた孔近傍電極の組合せからなる孔−電極組を複数具備する基板と、
前記基板に対向する自らの表面に担持した透明トナーの粒子を、前記表面に沿って並ぶ複数のホッピング電極の間でホッピングさせることで前記表面上に浮遊トナー層を形成するトナー担持体と、
ホッピング用周期パルス電圧を前記複数のホッピング電極に印加して、透明トナーの粒子をホッピングさせるための電界をホッピング電極間に形成するホッピング電圧印加手段と、
前記基板における前記トナー担持体との対向面とは反対側の面に対して所定の間隙を介して対向する対向電極と、
前記基板における複数の貫通孔のうち、前記透明層形成領域情報によって示される領域に対応する位置にある貫通孔と前記組合せをなしている孔近傍電極に対し、ドットを記録するための記録オン電圧を印加にする一方で、複数の貫通孔のうち、前記領域に対応しない位置にある貫通孔と前記組合せをなしている孔近傍電極に対し、ドットを記録しないための記録オフ電圧を印加する記録電圧印加手段とを有し、
且つ、複数の孔近傍電極のうち、前記記録オン電圧を印加した孔近傍電極の近傍の貫通孔に対して前記浮遊トナー層中の透明トナーを通した後、該透明トナーを前記対向電極上の記録部材に付着させることで、前記記録部材に透明トナー層を形成するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかの画像形成装置において、
前記透明トナー層形成手段と、前記加圧定着手段とを共通の保持体に保持させて、画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能にしたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項3の画像形成装置において、
前記加熱定着手段による加熱温度よりも低い加熱温度で前記記録部材を補助的に加熱する補助加熱手段を、前記透明トナー層形成手段と前記加圧定着手段との間に設けたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2013−44866(P2013−44866A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181447(P2011−181447)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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