説明

画像形成装置

【課題】ヘッドタンクを大型化することなく気泡排出性を高めることのできる画像形成装置の提供。
【解決手段】バッファタンク90は、ヘッドタンクの液体収容部202に流路901を介して通じるバッファ室902を形成するタンクケース900と、タンクケース900内に移動可能に設けられ、バッファ室902の一部の壁面を形成する壁部材903と、壁部材903がバッファ室902の容量が増加する方向に移動するときに逆方向に復元力を作用させるばね904とを有し、ばね904のばね定数は、ヘッドタンク内の負圧発生用のばねのばね定数よりも大きくすることで、加圧供給時にヘッドタンク内を加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてのインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
このような画像形成装置において、記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクを備え、装置本体側に着脱自在(交換可能)に装着されるメインタンクであるインクカートリッジからヘッドタンクに供給チューブなどを介して液体を供給する方式のものが知られている。
【0004】
ところで、液体吐出ヘッドにあっては、ヘッド内に気泡が流入すると吐出する液滴の吐出方向が曲がり、あるいは、所要量の液滴を吐出できず、また吐出そのものが不可能になるなどの吐出不良が発生する。
【0005】
そこで、ヘッドの性能を維持回復するために、例えば、ヘッドのノズル面を吸引手段が接続された吸引キャップで密閉して、ノズルから液体を吸引排出させる吸引方式、あるいは、ヘッドに加圧した液体を供給してノズルから排出させる加圧方式、これらを併用した吸引加圧方式などによって、ヘッド内の気泡やその他の異物をノズルから液体とともに排出させることが行われている。
【0006】
従来、例えば、ヘッドにバッファタンク(ヘッドタンク)を介して接続されたインクタンク(メインタンク)を加圧する加圧ポンプと、吸引ポンプが接続された吸引キャップを備え、加圧ポンプによる加圧と吸引ポンプによる吸引を行うことでヘッドから液体を排出させるものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−70353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ヘッドタンクとして、液体を収容する液体収容部の一部の壁面を形成する撓むことが可能なフィルム状部材と、フィルム状部材が液体残量の減少によって撓む方向とは逆方向に復元力を作用させるばねと、を含む負圧発生手段を有する構成を採用した場合、ヘッドタンク内を加圧しようとすると、ばねの自由長を長くする必要があり、ヘッドタンクが大型化するという課題がある。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ヘッドタンクを大型化することなく気泡排出性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容する交換可能なメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクに前記液体を送液する送液手段と、
吸引手段が接続され、前記記録ヘッドのノズル面を密封する吸引キャップと、
前記ヘッドタンクに接続された、前記ヘッドタンクより容量の小さなバッファタンクと、を備え、
前記ヘッドタンクは、
前記液体を収容する液体収容部の一部の壁面を形成する撓むことが可能なフィルム状部材と、前記フィルム状部材が液体残量の減少によって撓む方向とは逆方向に復元力を作用させるばねと、を含む負圧発生手段を有し、
前記バッファタンクは、
前記ヘッドタンクの液体収容部に流路を介して通じるバッファ室を形成するタンクケースと、
前記タンクケース内に移動可能に設けられ、前記バッファ室の一部の壁面を形成する壁部材と、
前記壁部材が前記バッファ室の容量が増加する方向に移動するときに逆方向に復元力を作用させるばねと、を有し、
前記バッファタンクのばねのばね定数は、前記ヘッドタンクのばねのばね定数よりも大きく、
前記ヘッドタンクが大気圧又は負圧であるときには前記バッファタンクは前記ヘッドタンク内を加圧せず、前記ヘッドタンク内に前記液体が加圧供給されたときに前記バッファタンクが前記ヘッドタンク内を加圧する
ことを特徴とする画像形成装置。
構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る画像形成装置によれば、ヘッドタンクを大型化することなく気泡排出性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例の機構部を説明する側面説明図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】ヘッドタンクの一例を示す模式的平面説明図である。
【図4】同じく図3の模式的正面説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるインク供給排出系の説明に供する模式的説明図である。
【図6】同実施形態のバッファタンクの一例を示す模式的説明図である。
【図7】同装置の制御部を説明する概略ブロック説明図である。
【図8】同実施形態における気泡排出動作の制御の説明に供するフロー図である。
【図9】同実施形態におけるヘッド配置の他の第1例を説明する模式的説明図である。
【図10】同じく他の第2例を説明する模式的説明図である。
【図11】同実施形態の送液ポンプの一例を説明する模式的説明図である。
【図12】本発明の第2実施形態におけるインク供給排出系の第1例の説明に供する模式的説明図である。
【図13】同じくインク供給排出系の第2例の説明に供する模式的説明図である。
【図14】同実施形態における気泡排出動作の制御の説明に供するフロー図である。
【図15】本発明の第3実施形態におけるインク供給排出系の説明に供する模式的説明図である。
【図16】同実施形態におけるヘッドタンクの液面検知を説明する模式的説明図である。
【図17】同実施形態における気泡排出動作の制御の説明に供するフロー図である。
【図18】同実施形態におけるヘッド配置及びバッファタンク配置の他の第1例の説明に供する模式的説明図である。
【図19】同じく他の第2例の説明に供する模式的説明図である。
【図20】本発明の第4実施形態におけるヘッドタンクの説明に供する模式的平面説明図である。
【図21】本発明の第5実施形態におけるインク供給排出系の説明に供する模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
【0014】
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、後述する主走査モータによってタイミングベルトを介してキャリッジ主走査方向に移動走査する。
【0015】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0016】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0017】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のメインタンクであるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0018】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0019】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0020】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、後述する副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0021】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0022】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0023】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0024】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0025】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0026】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0027】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0028】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0029】
次に、ヘッドタンク35の一例について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドタンクの1つのヘッド分の模式的上面説明図、図4は同ヘッドタンクの1つのヘッド分の模式的正面説明図である。
【0030】
ヘッドタンク35は、液体を保持するための一側部が開口した液体収容部202を形成するタンクケース201を有し、このタンクケース201の開口部は撓むことが可能なフィルム状部材203で密閉している。タンクケース201内には、弾性部材としてのばね204を配置し、フィルム状部材203が液体残量の減少に従って撓む方向とは逆方向に復元力を作用させている。これにより、タンクケース201内の液体残量が減少することによって負圧が発生する負圧発生手段を構成している。
【0031】
また、タンクケース201の外側には、変位部材である検知フィラ205が一端部を軸206に揺れ動くことが可能に支持された状態で設けられている。この検知フィラ205は、フィルム状部材203に接着などで固定され、図示しないばねによってタンクケース201側に向けて勢いを付されている。
【0032】
これにより、フィルム状部材203の動きに連動して検知フィラ205が変位するので、装置本体側に配置された光学センサからなるセンサ301によって検知フィラ205の変位量を検知することによりヘッドタンク35内のインク残量などを検知することができる。
【0033】
また、タンクケース201の上部には、インクカートリッジ10からインクを供給するための供給口部209があり、供給チューブ36に接続されている。また、タンクケース201の側部には、ヘッドタンク35内を大気に開放する大気開放機構207が設けられている。この大気開放機構207は、ヘッドタンク35内に連なって通じる大気開放路207aを開閉する弁体207b及びこの弁体207bを閉弁状態に勢いを付けるスプリング207cなどを備え、装置本体側の大気開放ソレノイド302によって弁体207bを押すことで開かれて、ヘッドタンク35内を大気開放状態(大気に連通した状態)する。
【0034】
また、ヘッドタンク35内のインク残量を検出するための電極ピン208aと208bが取り付けられている。インクは電導性を持っており、電極ピン208aと208bの所までインクが到達すると、電極ピン208aと208b間に電流が流れて両者の抵抗値が変化するため、インク液面高さが所定高さ以下になった、すなわち、ヘッドタンク35の空気量が所定量以上になった、或いは、ヘッドタンク35の液体残量が所定量以下になったことを検出することができる。
【0035】
次に、本発明の第1実施形態におけるインク供給排出系について図5を参照して説明する。
【0036】
まず、インクカートリッジ(メインタンク)10からヘッドタンク35に対するインク供給は、供給ポンプユニット24の送液手段である送液ポンプ241によって供給チューブ36を介して行なわれる。なお、送液ポンプ241は、チューブポンプなどで構成した可逆型ポンプであり、インクカートリッジ10からヘッドタンク35にインクを供給する送液動作と、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10にインクを戻す逆送動作とを行なえるようにしている。
【0037】
また、維持回復機構81は、前述したように記録ヘッド34のノズル面をキャッピングする吸引キャップ82aと、吸引キャップ82aに接続された吸引手段である吸引ポンプ812を有し、キャップ82aでキャッピングした状態で吸引ポンプ812を駆動することで吸引チューブ811を介してノズルからインクを吸引する(ヘッド吸引又はノズル吸引という。)ことによってヘッドタンク35内のインクを吸引することができる。なお、吸引された廃インクは廃液タンク100に排出される。
【0038】
また、装置本体側にはヘッドタンク35の大気開放機構207を開閉する大気開放ソレノイド302が配設され、この大気開放ソレノイド302を作動させることで大気開放機構207を開放することができる。さらに、装置本体側にはヘッドタンク35の検知フィラ205を検知する光学センサからなるセンサ301が設けられている。
【0039】
また、ヘッドタンク35には、ヘッドタンク35内の液体収容部202の底部側とのみ通じ、外気とは閉ざされている本発明におけるバッファタンク90が接続されている。
【0040】
ここで、バッファタンクの一例について図6を参照して説明する。なお、図6は同バッファタンクの模式的断面説明図である。
【0041】
バッファタンク90は、ヘッドタンク35の液体収容部202に流路901を介して通じるバッファ室902を形成するタンクケース900と、タンクケース900内に移動可能に設けられ、バッファ室902の一部の壁面を形成する壁部材903と、壁部材903がバッファ室902の容量が増加する方向に移動するときに逆方向に復元力を作用させるばね904と、バッファ室902内の圧力を検出する検出手段である圧力センサ905と、を有している。
【0042】
タンクケース900はヘッドタンク35のタンクケース201と一体に形成されることで、流路901及びバッファ室902は大気から遮断されている。また、流路901はヘッドタンク35の底部側で液体収容部202に通じている。
【0043】
このバッファタンク90のばね904のばね定数は、ヘッドタンク35内の負圧発生用のばね204のばね定数よりも大きくしている。
【0044】
このように構成したバッファタンク90は、ヘッドタンク35から流路901を介してバッファ室902内に液体(インク)が流入することで、壁部材903がバッファ室902の容積を大きくする方向(図6で矢印A方向)に移動するが、ばね904によって壁部材903は逆方向(矢印B方向)への力を受けて、バッファ室902の容積を元に戻そうとするように働く。
【0045】
ここで、ばね904のばね定数は、ヘッドタンク35のばね204のばね定数に比べ大きいため、ヘッドタンク35内の圧力が、大気圧とき、又は負圧のときには、ばね204が主に伸び縮みするため、ばね904は動作せず、バッファ室902の容積はほとんど変化しない。つまり、壁部材903はほとんど移動しない。
【0046】
これに対し、ヘッドタンク35内にインクが加圧供給されると、バッファタンク90内にインクが流入することで、バッファ室902の容積が増加する方向に壁部材903が押され、ばね904の復元力が壁部材903に作用して逆方向に押し返される結果、ヘッドタンク35内のインクが加圧される。
【0047】
このとき、ヘッドタンク35の内圧はフィルム状部材203がすでに張っていて動かないため、フィルム状部材203の動き、すなわち、検知フィラ205の動きで圧力変化ないし容積変化を検知することができない。そこで、バッファタンク90のバッファ室902内の圧力を検知する圧力センサ905を設けて、ヘッドタンク90の内圧を検出できるようにしている。
【0048】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図7を参照して説明する。なお、同図は同制御部のブロック説明図である。
【0049】
この制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501に本発明における制御を実行させるプログラムを含むプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0050】
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81の維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510と、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511と、ヘッドタンク35の大気開放機構207を開閉する大気開放ソレノイド302を駆動するソレノイド駆動部512と、送液ポンプ241を駆動するポンプ駆動部516と、インクカートリッジ10に設けられて不揮発性メモリ(ここでは、EEPROM)521に対するデータの読み出し及び書き込みのための通信を行うカートリッジ通信部522などを備えている。
【0051】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0052】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0053】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0054】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0055】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド34を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0056】
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度、湿度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
【0057】
このI/O部513に入力されるセンサ群515には、前述したヘッドタンク35の検知フィラ205を検知するセンサ301、検知電極ピン208a、208bなどの信号、バッファタンク90の圧力センサ905の信号なども入力される。
【0058】
また、この制御部500は、時間を計測する計時手段520を備えている。
【0059】
次に、本発明の第1実施形態における気泡排出動作の制御について図8のフロー図を参照して説明する。
【0060】
この気泡排出動作(気泡抜き動作)では、液体供給動作及び吸引動作を行う。まず、記録ヘッド34のノズル面を吸引キャップ82aでキャッピング(密閉)する。これにより、この後ヘッドタンク35が加圧されたときにノズルから排出される廃液となるインクを吸引キャップ82a内で処理することができ、また、ノズル面を吸引キャップ82aで押さえることで、ノズル面が加圧されることによるノズル面の剥離を防止できる。
【0061】
その後、気泡抜きを開始し、送液ポンプ241を正転駆動して、ヘッドタンク35にインクを供給する。このとき、ヘッドタンク35の満タン位置よりもさらにインクを供給することで、ヘッドタンク35内にはインクが加圧供給される。
【0062】
これにより、ヘッドタンク35からバッファタンク90のバッファ室902内にインクが流れ込み、壁部材903がばね94で押されることで、バッファタンク90のバッファ室902及びヘッドタンク35内の液体収容部202内が加圧される。
【0063】
この場合、ヘッドタンク35内の圧力はバッファタンク90のバッファ室902内の圧力と等しく、バッファタンク90に設けた圧力センサ905によってモニタすることができる。
【0064】
そこで、圧力センサ905で検出されるヘッドタンク35の内圧(圧力値)が、予め設定した供給終了閾値(第1所定値)に達したか否かを判別する。そして、ヘッドタンク35の圧力値が供給終了閾値に達したときに、送液ポンプ241の動作を停止して、液体供給動作を終わる。この供給終了閾値は、記録ヘッド34を加圧することでノズルから排出されるインク流量が、吸引ポンプ812で吸引できるインク流量を超えないような条件に設定している。
【0065】
次に、吸引ポンプ812を動作させて吸引キャップ82aとノズル面との間に形成されている密閉空間を負圧にすることでノズルからインクを吸引排出させるヘッド吸引を行い、ノズルからインクを吸引キャップ82a内に排出させる。
【0066】
ヘッド吸引を開始するとき、ヘッドタンク35内は正圧であり、吸引による気泡の膨張を防ぎ、気泡を収縮させ、記録ヘッド34内の流路を通りやすくすることができる。また、ヘッドタンク35内を正圧にしておくことで、インク吸引時の流速を高め、気泡を流そうとする力を大きくすることができるので気泡排出性が向上する。
【0067】
ここで、ヘッドタンク35内の圧力はヘッド吸引を行うにつれて下がる。
【0068】
そこで、圧力センサ905で検出されるヘッドタンク35の内圧(圧力値)が、予め設定した吸引終了閾値(第2所定値)に達したか否かを判別する。そして、ヘッドタンク35の圧力値が吸引終了閾値に達したときに、吸引ポンプ812の動作を停止して、吸引動作を終わる。この吸引終了閾値は、ヘッドタンク35が過負圧になり、気泡をノズルから吸い込んでしまわないような条件に設定している。
【0069】
そして、気泡抜き動作を終了し、負圧形成動作により、ヘッドタンク35内に正常な負圧を形成する。
【0070】
上述したように、気泡の除去を吸引動作だけで行うと、吸引によって気泡が膨張し、ヘッドのインク流路内に引っかかってしまうが、加圧を併用することで、気泡を収縮させ、流路内を通りやすくすることができる。また、ヘッドタンク内を正圧にしておくことで、ヘッド吸引時のインク流速を高め、気泡を流そうとする力を大きくすることができるので気泡排出性を向上することができる。
【0071】
ここで、ヘッドタンクへのインクの加圧供給は送液ポンプで行うことによって、別途、例えばメインタンクを加圧する加圧ポンプなどの気体の圧入装置が不要になる。
【0072】
しかしながら、上述したように、ヘッドタンクとして、撓むことが可能なフィルム状部材とばねの変形によって負圧を発生させる(ヘッドタンク内圧を制御する)構成を採用した場合、送液ポンプによるインク供給でヘッドタンク内を加圧しようとすると、ヘッドタンク内のばねを自由長よりも長くできるようにする必要があり、結果としてヘッドタンクが大きくなる。
【0073】
そこで、本実施形態においては、ヘッドタンク内の加圧を、送液ポンプによる送液と、ヘッドタンクに連結したバッファタンク(加圧用ユニット)によって行うようにしている。このバッファタンクは、バッファ室内の容積が増加する方向に壁部材が移動しようとするときに逆方向に復元力を作用させるばねを有していることで、バッファ室及びヘッドタンク内の液体収容部のインクに対して圧力を与えることができる。
【0074】
したがって、送液ポンプによってヘッドタンクの満タンよりも多くのインクが送液された場合には、インクがバッファタンクに流入し、バッファ室の容積が増加しようとするが、容積を元に戻そうとする力により、ヘッドタンク内が加圧される。
【0075】
このように、ヘッドタンクを大きくするのではなく、上述したようなバッファタンクを設けることで、ヘッドタンクを大型化することなくヘッドタンク内を加圧することができ、加圧と吸引による気泡排出性を向上することができる。
【0076】
次に、本発明の第1実施形態における記録ヘッドの配置の他の異なる例について図9及び図10を参照して説明する。
【0077】
まず、図9に示す第1例は、垂直方向に搬送される用紙に対して、液滴を水平方向に向けて吐出させる状態で記録ヘッド34を配置したものである。また、図10に示す第2例は、液滴を垂直方向上方に向けて吐出させる状態で記録ヘッド34を配置し、水平方向に搬送される用紙に下方から画像形成を行うようにしたものである。
【0078】
これらのヘッド配置であっても、上述した気泡抜き動作時に吸引キャップ82aでキャッピングすることで液垂れによるヘッドの汚れを防止できる。
【0079】
次に、本発明の第1実施形態で使用している送液ポンプ241について図11を参照して説明する。
【0080】
本実施形態では、送液ポンプ241として、流路を閉じない状態を有しないチューブポンプを使用している。この送液ポンプ241は、例えば、図11に示すように、軸710によって回転する回転部材711に設けられた複数(この例は3個)のコロ712を備え、回転部材711を回転することによってコロ712で供給チューブ36を扱くことで送液及び逆送を行うことができるチューブポンプであり、常にいずれかのコロ712が供給チューブ36を押圧して潰しているため、流路を閉じない状態を採ることができない。
【0081】
そのため、送液ポンプ241が停止しているときであっても、液体はポンプ241内を自由に流れることはできない。
【0082】
本実施形態では、送液ポンプ241の送液動作によってヘッドタンク35の加圧を行うが、送液動作を終え、ポンプ241が停止した後もポンプ241内の流路が閉じられているため、ポンプ241内をインクが逆流することはない。なお、このチューブポンプの替わりに、他の逆流しないポンプを用いても良い。
【0083】
次に、本発明の第2実施形態の異なる例について図12及び図13を参照して説明する。なお、図12及び図13は同実施形態におけるインク供給排出系の模式的説明図である。
【0084】
本実施形態では、送液ポンプ241として、停止時に流路を閉じることができないポンプを用いている。そのため、ポンプ241を停止した時にはインクが自由に流れることができ、加圧後送液ポンプ241を停止すると、ヘッドタンク35からメインタンク10にインクが逆流するおそれがある。
【0085】
そこで、図12の第1例では、メインタンク10を上流側、ヘッドタンク35を下流側とするとき、送液ポンプ241の下流側に流路を開閉する電磁弁242を設け、制御部500によって電磁弁242を開閉制御することで、加圧後にヘッドタンク35からメインタンク10へ圧力が抜けないようにしている。
【0086】
また、図13の第2例では、メインタンク10を上流側、ヘッドタンク35を下流側とするとき、送液ポンプ241の上流側に流路を開閉する電磁弁243を設け、制御部500によって電磁弁242を開閉制御することで、加圧後にヘッドタンク35からメインタンク10へ圧力が抜けないようにしている。
【0087】
次に、本発明の第2実施形態における気泡排出動作の制御について図14のフロー図を参照して説明する。
【0088】
ここでは、前記図8で説明した第1実施形態の気泡排出動作の制御において、送液ポンプ241の動作を開始する前に、上述した電磁弁242又は243を開いてメインタンク10からヘッドタンク35への流路を開く処理を行う。また、送液ポンプ241の動作を停止した後に、上述した電磁弁242又は243を閉じてメインタンク10からヘッドタンク35への流路を閉じる処理を行う。その他は、図8と同様であるので説明を省略する。
【0089】
次に、本発明の第3実施形態について図15を参照して説明する。なお、図15は同実施形態におけるインク供給排出系の説明図である。
【0090】
まず、前記第1、第2実施形態では、バッファタンク90のバッファ室902がヘッドタンク35内の底部側に連なって通じるように配置している。これは、加圧時にバッファタンク90のバッファ室902内に空気が入ると、ヘッドタンク35内の空気容積が減ってしまい、液面が上がり、結果として大気開放機構207にインクが侵入するおそれがあることから、これを防止するためである。
【0091】
これに対し、本実施形態では、バッファタンク90のバッファ室902が流路901を介してヘッドタンク35の液体収容部202の上部側に連なって通じるように配置している。
【0092】
この場合、バッファタンク90のバッファ室902には空気又は液体がヘッドタンク35から侵入する。上述したとおり、加圧時にバッファタンク90内に空気が入ると、ヘッドタンク35内の空気容積が減ってしまい、液面が上がり、結果として大気開放機構207に液体が侵入するおそれがある。そのため、本実施形態では、以下で説明するような気泡排出動作の制御を行っている。
【0093】
まず、ヘッドタンク35の液面検出について図16を参照して説明する。
【0094】
前述したように、ヘッドタンク35には電極ピン208a、208bが設けられている。ここで、図16(a)に示すように、インク300が2つの電極ピン208a、208b(208で図示)に接触しているときには電流が流れて液面が検知され、図16(b)に示すように、インク300が2つの電極ピン208a、208b(208で図示)に接触していないときには電流が流れないので液面が検知されない。
【0095】
次に、本発明の第3実施形態における気泡排出動作の制御について図17のフロー図を参照して説明する。
【0096】
この気泡排出動作(気泡抜き動作)では、液体供給動作及び吸引動作、大気開放機構の開閉動作を行う。まず、記録ヘッド34のノズル面を吸引キャップ82aでキャッピング(密閉)する。
【0097】
その後、気泡抜きを開始し、大気開放機構207を開ける。大気開放機構207を開けることにより、負圧だったヘッドタンク35内に空気が入る。空気が入り、フィルム状部材203が負圧時よりも膨らむことで、液面が下がり、電極ピン208は液面を検知しなくなる。この状態で、大気開放機構207を閉じる。
【0098】
そして、送液ポンプ241を正転駆動して、ヘッドタンク35に液体供給を行う。このとき、ヘッドタンク35の満タン位置よりもさらに液体を供給する。
【0099】
これにより、ヘッドタンク35からバッファタンク90内に液体が流れ込み、壁部材903がばね94で押されることで、バッファ室902及びヘッドタンク35内の液体収容部202内が加圧される。
【0100】
このとき、電極ピン208が液面を検知したか否かの判別を行って、液面が上昇し、電極ピン208が液面を検知した場合には、その時点で送液ポンプ241を停止し、供給動作を停止することで、大気開放機構207への液体の侵入を未然に防止する。
【0101】
また、電極ピン208が液面を検知していないときには、前記実施形態と同様に、圧力センサ905で検出されるヘッドタンク35の内圧(圧力値)が、予め設定した供給終了閾値に達したか否かを判別する。そして、ヘッドタンク35の圧力値が供給終了閾値に達したときに、送液ポンプ241の動作を停止して、液体供給動作を終わる。
【0102】
次に、吸引ポンプ812を動作させてヘッド吸引を行い、ノズルから液体を吸引排出させる。
【0103】
ここで、ヘッドタンク35内の圧力はヘッド吸引を行うにつれて下がるので、圧力センサ905で検出されるヘッドタンク35の内圧(圧力値)が、予め設定した吸引終了閾値に達したか否かを判別する。そして、ヘッドタンク35の圧力値が吸引終了閾値に達したときに、吸引ポンプ812の動作を停止して、吸引動作を終わる。
【0104】
そして、気泡抜き動作を終了し、負圧形成動作により、ヘッドタンク35内に正常な負圧を形成する。
【0105】
次に、本実施形態におけるヘッド配置(滴吐出方向)とバッファタンクの設置位置について図18及び図19を参照して説明する。
【0106】
まず、図18に示すように、水平方向に向けて液滴を吐出するように記録ヘッド34を配置した場合、ヘッドタンク35内の気泡が、ヘッド34の上部にあるノズルに侵入してノズル抜け(吐出不良)を生じるおそれがある。仮に、バッファ室902に気泡が侵入すると、ヘッド吸引時にバッファタンク90の容積が縮まり、バッファ室902から気泡がヘッドタンク35内に入り、その気泡がヘッド34のノズルに侵入してノズル抜けの原因となる。
【0107】
したがって、前述した図9に示すように、バッファタンク90は、記録ヘッド34のノズル列の最も下側になるノズルよりも下に設置することで、気泡を侵入させないようにすることが好ましい。
【0108】
これに対し、レイアウト上の問題などで、ヘッドタンク35の下部にバッファタンク90を通じさせることができない場合は、図18に示すように、本実施形態のように、バッファタンク90のバッファ室902をヘッドタンク35の上部で液体収容部202に通じさせるとともに、バッファタンク90は、流路901が斜め下方向に向けて傾斜するように配置する。
【0109】
これにより、ヘッドタンク35の上部にバッファタンク90を通じさせる場合でも、ヘッドタンク35からバッファタンク90に気泡が侵入するおそれを低減することができる。
【0110】
次に、図19に示すように、垂直方向上方に向けて液滴を吐出するように記録ヘッド34を配置した場合、ヘッドタンク35内の気泡が、上方にあるヘッド34のノズルに侵入してノズル抜け(吐出不良)を生じるおそれがある。
【0111】
したがって、前述した図10に示すように、バッファタンク90は、記録ヘッド34のノズル列よりも下方に設置することで、気泡を侵入させないようにすることが好ましい。
【0112】
これに対し、レイアウト上の問題などで、ヘッドタンク35の下部にバッファタンク90を通じさせることができない場合は、図19に示すように、本実施形態のように、バッファタンク90のバッファ室902をヘッドタンク35の上部で液体収容部202に通じさせるとともに、バッファタンク90は、流路901が斜め下方向に向けて傾斜するように配置する。
【0113】
これにより、ヘッドタンク35の上部にバッファタンク90を通じさせる場合でも、ヘッドタンク35からバッファタンク90に気泡が侵入するおそれを低減することができる。
【0114】
次に、本発明の第4実施形態について図20を参照して説明する。なお、図20は同実施形態におけるバッファタンクの圧力検知方法の説明に供する説明図である。
【0115】
ここでは、バッファタンク90の壁部材903と連動するようにロッド部材906を設けている。このロッド部材906は壁部材903の動きと連動し、検知フィラ205を広げることができる。ヘッドタンク35が満タンになり、フィルム状部材203が張った状態からでも、バッファタンク90の壁部材903と連動して動く検知フィラ205の位置によって圧力を検知することができる。
【0116】
壁部材903はばね904によって液体流入によって動いた壁部材903の変位量にばね904のばね定数を乗じただけの力で押し戻されようとする。したがって、バッファタンク90の内圧、すなわちヘッドタンク35の内圧は検知フィラ205の変位に比例しているので、検知フィラ205の位置をセンサ301で検知することで圧力値を算出することができる。
【0117】
なお、ヘッドタンク35の向きは図の状態に限定されるものではなく、また、ロッド部材906の形状も特に限定されるものはない。さらに、壁部材と連動するフィラを新たに設け、既存の又は新規のセンサで読み取るようにすることもできる。
【0118】
次に、本発明の第5実施形態について図21を参照して説明する。なお、図21は同実施形態におけるインク供給排出系の説明図である。
【0119】
本実施形態は、加圧供給と吸引排出を並行して行う構成としている。
【0120】
ここでは、送液ポンプ241で送るインク流量をQ1、ノズル面からヘッドタンク35の正圧によって押し出されるインク流量をQ2、そして、吸引ポンプ812によって吸引するインク流量をQ3とし、送液ポンプ241でインク供給を行うと同時に、吸引ポンプ812でヘッド吸引を行うものとする。
【0121】
この場合、必ず、Q3≧Q2でなければ、いずれ吸引キャップ82aからインクが溢れてしまうことになる。一時的にQ3<Q2となっても、Q3≧Q2となるように、吸引ポンプ812の吸引量や、ヘッドタンク35内の圧力を制御する。
【0122】
次に、Q2≧Q1でなければ、ヘッドタンク35にインクが流入しすぎて、ヘッドタンク35の内圧が上がりすぎて、いずれ、流量Q2が流量Q3を超えることになる。一時的にQ2<Q1となっても、Q2≧Q1となるように、吸引ポンプ812の吸引量やヘッドタンク35内の圧力を制御する。
【0123】
上述した流量Q1ないしQ3は、直接流量を測定しても良いが、ポンプ241、814の駆動モータの回転数や、ヘッドタンク35の圧力、フィラ205の位置などから算出するようにしてもよい。
【0124】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0125】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0126】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0127】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0128】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0129】
10 インクカートリッジ(メインタンク)
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
35 ヘッドタンク
36 供給チューブ
81 維持回復機構
82a 吸引キャップ
90 バッファタンク
241 送液ポンプ
500 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容する交換可能なメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクに前記液体を送液する送液手段と、
吸引手段が接続され、前記記録ヘッドのノズル面を密封する吸引キャップと、
前記ヘッドタンクに接続された、前記ヘッドタンクより容量の小さなバッファタンクと、を備え、
前記ヘッドタンクは、
前記液体を収容する液体収容部の一部の壁面を形成する撓むことが可能なフィルム状部材と、前記フィルム状部材が液体残量の減少によって撓む方向とは逆方向に復元力を作用させるばねと、を含む負圧発生手段を有し、
前記バッファタンクは、
前記ヘッドタンクの液体収容部に流路を介して通じるバッファ室を形成するタンクケースと、
前記タンクケース内に移動可能に設けられ、前記バッファ室の一部の壁面を形成する壁部材と、
前記壁部材が前記バッファ室の容量が増加する方向に移動するときに逆方向に復元力を作用させるばねと、を有し、
前記バッファタンクのばねのばね定数は、前記ヘッドタンクのばねのばね定数よりも大きく、
前記ヘッドタンクが大気圧又は負圧であるときには前記バッファタンクは前記ヘッドタンク内を加圧せず、前記ヘッドタンク内に前記液体が加圧供給されたときに前記バッファタンクが前記ヘッドタンク内を加圧する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記バッファタンクの流路は、前記ヘッドタンクの底部側で前記液体収容部に通じていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記バッファタンクの流路は、前記ヘッドタンクの上部側で前記液体収容部に通じていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記バッファタンクの流路は、斜め下方に向けて傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記バッファタンク内の圧力を検出する検出手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドの維持回復動作を行うとき、前記送液ポンプで前記ヘッドタンクに前記液体を加圧供給し、前記吸引キャップで前記記録ヘッドのノズルから液体を吸引排出させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記加圧供給時に前記ヘッドタンク内の圧力が第1所定値以上になったときに加圧供給動作を停止し、前記吸引排出時に前記ヘッドタンク内の圧力が第2所定値以下になったときに吸引排出動作を停止することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記加圧供給と前記吸引排出を並行して行うことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−56483(P2013−56483A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196542(P2011−196542)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】