説明

画像形成装置

【課題】画素単位で縦横に配列された画素電極を有する像保持体を用いて画像形成を行うに際し、画素電極を用いない方式に比べ、良好な画質を得ると共に長期に亘る画質の安定化を図る。
【解決手段】移動可能な支持体1a及びこの支持体1aに支持されて且つ画素単位で縦横に配列された画素電極1bを有する像保持体1と、画素電極1b夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで像保持体1に潜像を形成する潜像形成手段2と、この潜像形成手段2にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段3と、画素電極1b夫々に、画像の濃度情報に基づいた3段階以上の転写電圧を印加することで現像手段3にて現像されたトナー像に対し転写媒体5に転写する転写電界を作用させる転写手段4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機やプリンタ等の画像形成装置で用いられる画像形成方式として電子写真方式が用いられる。これは、コロナ放電器や帯電ロール等の帯電器によって帯電された感光体に対して、レーザやLEDアレイを用いて光イメージを照射することで静電潜像を形成し、この形成された静電潜像に対し帯電したトナーを用いて現像することで可視像化するようにしたものである。そして、このように電子写真方式を利用した画像形成装置は、オンデマンド性に優れ、普通紙への画像形成が可能なことから、オフィスを中心に広く普及している。
【0003】
一方、電子写真方式での環境影響への配慮などから、マトリクス状に電極を配列し、帯電器を使用しない方式の画像形成装置が提案されている(特許文献1〜4参照)。特許文献1では、薄膜トランジスタ(TFT)をマトリクス状に形成すると共に蓄積容量を夫々のTFTに設け、蓄積容量での電荷蓄積効果により安定した現像を行うようにした方式の画像形成装置が提案されている。また、特許文献2では、スイッチング素子をマトリクス状に構成し、レーザ照射することで、画素毎に発生する表面電位を変化させるようにした方式の画像形成装置が提案されている。更に、特許文献3では、マトリクス状に配列したスイッチング素子毎に二層分割された蓄積容量を持たせ、画像部/非画像部の電位を調整した構成が提案されている。そして、特許文献4では、マトリクス状に配列したスイッチング素子を使って画素毎の潜像を形成する方式の画像形成装置が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3233463号公報(実施例、図4)
【特許文献2】特開2002−326382号公報(実施の形態1、図1)
【特許文献3】特開2003−32440号公報(発明の実施の形態、図1)
【特許文献4】特開2004−219635号公報(実施の形態1、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、画素単位で縦横に配列された画素電極を有する像保持体を用いて画像形成を行うに際し、画素電極を用いない方式に比べ、良好な画質を得ると共に長期に亘る画質の安定化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、移動可能な支持体及びこの支持体に支持されて且つ画素単位で縦横に配列された画素電極を有する像保持体と、前記画素電極夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで前記像保持体に潜像を形成する潜像形成手段と、この潜像形成手段にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段と、前記画素電極夫々に、画像の濃度情報に基づいた3段階以上の転写電圧を印加することで前記現像手段にて現像されたトナー像に対し転写媒体に転写する転写電界を作用させる転写手段と、を備える画像形成装置である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る画像形成装置において、前記転写手段は、前記トナー像のうち画像濃度の高い領域である高濃度領域に作用する転写電界が画像濃度の低い領域である低濃度領域に作用する転写電界より大きくなるように転写電圧を印加した画像形成装置である。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る画像形成装置において、前記転写手段は、前記トナー像のうち画像濃度の高い領域である高濃度領域と画像濃度の低い領域である低濃度領域とが隣接する場合には、低濃度領域の高濃度領域に隣接する境界部に作用する転写電界がそれ以外の低濃度領域よりも大きくなるように転写電圧を印加した画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、画素単位で縦横に配列された画素電極を有する像保持体を用いて画像形成を行うに際し、画素電極を用いない方式に比べ、良好な画質が得られると共に長期に亘る画質の安定化を図ることが可能になる。更に、本発明によれば、画素電極毎の画像の濃度情報に適合した転写電圧を印加することができるようになり、より画質の向上がなされた画像を転写媒体上に形成することができるようになる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、高濃度領域に作用する転写電界を低濃度領域より大きくすることができ、付着トナー量の多い高濃度領域からも有効に転写させることで転写後の画像再現性が向上するようになる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、高濃度領域と低濃度領域との境界における画像抜けを防ぐことができ、画質向上を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を具現化する実施の形態モデルに係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図2】(a)は実施の形態モデルの工程ブロック図であり、(b)は工程の模式図を示す。
【図3】実施の形態1に係る画像形成装置を示す説明図である。
【図4】実施の形態1の像保持体を示す斜視図である。
【図5】(a)(b)は実施の形態1の像保持体の内部構造を示す説明図である。
【図6】実施の形態1の画素構造を示す説明図であり、(a)は画素群、(b)は一つの画素、(c)は画素間の接続の様子を示す。
【図7】実施の形態1の像保持体のマトリクスパネルの構成を示す説明図である。
【図8】実施の形態1の画素電極駆動装置を示す説明図である。
【図9】実施の形態1における階調方式を示す説明図である。
【図10】実施の形態1の具体例として潜像電圧の作用を示す説明図であり、(a)は画像信号が階調変換された信号、(b)は潜像電圧設定のための生成信号として潜像制御信号生成部にて生成された制御信号、(c)は設定された潜像電圧が画素電極に割り当てられた様子を示す。
【図11】転写電圧の作用を示す説明図であり、(a)は転写電圧設定のための生成信号として転写制御信号生成部にて生成された制御信号、(b)は転写電圧波形を示す。
【図12】(a)〜(e)は画像形成工程での作用を示す説明図である。
【図13】(a)は実施の形態1の転写時のトナー飛散を防ぐ電位分布を示し、(b)は比較モデルでの電位分布を示す説明図である。
【図14】(a)は実施の形態1の転写時の転写電界を示し、(b)は比較モデルでの転写電界を示す説明図である。
【図15】実施の形態1の転写時の特徴抽出を行った場合の転写状態を示し、(a)は転写時のフロー、(b)は転写時の転写電界を示す説明図である。
【図16】実施の形態1の清掃時の特徴抽出を行った場合の清掃状態を示し、(a)は清掃時のフロー、(b)は清掃時の清掃電界を示す説明図である。
【図17】転写時の変形形態1を示し、(a)は転写時のフロー、(b)は転写時の転写電界を示す説明図である。
【図18】転写時の変形形態2を示し、(a)は転写時のフロー、(b)は転写時の転写電界を示す説明図である。
【図19】転写時の変形形態3を示し、(a)は転写時のフロー、(b)は転写時の転写電界を示す説明図である。
【図20】清掃時の変形形態を示し、(a)は清掃時のフロー、(b)は清掃時の清掃電界を示す説明図である。
【図21】画素電極駆動装置の変形例を示す説明図である。
【図22】実施の形態2に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図23】比較モデルとしての通常の画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図24】実施例1の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
先ず、本発明が適用される実施の形態モデルの概要を説明する。
【0014】
◎実施の形態モデルの概要
図1は本発明を具現化する実施の形態モデルに係る画像形成装置の概要を示すものである。同図において、画像形成装置は、移動可能な支持体1a及びこの支持体1aに支持されて且つ画素単位で縦横に配列された画素電極1bを有する像保持体1と、画素電極1b夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで像保持体1に潜像を形成する潜像形成手段2と、この潜像形成手段2にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段3と、画素電極1b夫々に、画像の濃度情報に基づいた3段階以上の転写電圧を印加することで現像手段3にて現像されたトナー像に対し転写媒体5に転写する転写電界を作用させる転写手段4とを備えている。
【0015】
ここで、支持体1aは、画素電極1b等を支持できる移動可能なものであればその形状は特に限定されないが、装置を小型化する観点からすれば、回転可能な態様が好適である。また、画素電極1bは画素単位で縦横に配列されていればよく、画素電極1bの数量は特に限定されないが、通常の画像が形成できる解像度を実現できる程度になっていることが好ましい。更に、潜像形成手段2は、像保持体1の画素電極1b夫々に、形成すべき画像の画像信号に基づいた潜像を形成できるものであればよい。そして、転写手段4の転写方式は、コロトロン等の像保持体1に非接触なタイプであってもよいし、転写ロール等の接触するタイプであってもよいが、画素電極1b毎に転写動作を制御する観点からすれば、転写ロールを使用することが好適である。そして、転写手段4によって像保持体1上のトナー像が転写される転写媒体5としては中間転写体の態様であってもよいし、記録材の態様であっても差し支えない。
【0016】
次に、本実施の形態モデルの理解を深める上で、比較モデルとして電子写真方式において通常用いられる方式について説明する。
図23に示すように、この比較モデルでは、帯電装置を用いて帯電された感光体(像保持体に相当)を露光装置からのレーザ照射等によって露光して静電潜像を形成した後、この静電潜像に対し現像装置を用いてトナーで現像することで可視像化するようにしたものである。このような方式では、感光体上の潜像電位や画素位置が回転する感光体やその感光体を帯電装置によって帯電することでばらつき易く、このようなばらつきがあると、濃度むら、色むら、すじ等の視認される画質劣化が生じ易くなる。また、このようなばらつきは、現像時のトナーの飛び散りやかぶりをも生じ易くなる。更に、感光体上のトナー像を転写媒体(例えば中間転写体や記録材)に転写しようとすると、転写時の転写装置による転写電界が感光体と転写装置との間に画一的にしか加えられないため、転写媒体上に転写されるべきトナー量が適正に転写されなかったり、不要な転写を生じるようにもなる。
【0017】
そして、このような方式での経時的な変化に目を転じると、帯電装置がトナーによって汚染され、所望の帯電がなされなくなったり、帯電装置の放電(帯電装置自体の放電や、感光体との間隙による放電)による放電生成物の発生が感光体を変質させたり、更には感光体上の清掃性能を低下させるようにもなる。このような事態に対し感光体上の清掃性能低下を抑えるため、清掃部材を感光体に強く接触させるようにすると、却って感光体や清掃部材の劣化を早める虞もある。
【0018】
一方、本実施の形態モデルでは、図1のように、像保持体1として画素毎に縦横に配列された画素電極1bを設け、特に、この画素電極1b夫々に画像信号に基づいた潜像を形成する潜像形成手段2と、画素電極1b夫々に画像信号に基づいた転写電圧を印加する転写手段4を設けたので、画素電極1b毎に所望の潜像形成がなされ、また、所望の転写がなされるようになる。
【0019】
そして、転写媒体5上に形成される画像の画質を向上させる観点からすれば、図2(a)(b)に示すように、転写手段4に印加すべき転写電圧が調整可能な転写電圧調整手段6を備え、この転写電圧調整手段6は、画像信号から画像の特徴を抽出する特徴抽出部7と、この特徴抽出部7にて抽出された画像の特徴に基づいて転写電圧を決定するための転写制御信号を生成する転写制御信号生成手段8と、この転写制御信号生成手段8によって決定された転写電圧を設定する転写電圧設定手段9とを有することが好ましい。ここで、「画像の特徴」とは、最終的に画像が形成される記録材(転写媒体5が記録材であってもよい)上の画像の特徴を意味する趣旨であり、例えば、高濃度領域/低濃度領域、画像部領域/背景部領域、線画像領域/ベタ画像領域などが挙げられる。尚、図2(a)は画像形成装置の工程ブロック図であり、(b)はその工程での模式図を示している。
【0020】
更に、このような画像に対する画像再現性を向上させる観点からすれば、特徴抽出部7は、画像濃度が高い領域である高濃度領域又は画像濃度が低い領域である低濃度領域かを抽出し、転写制御信号生成手段8は、特徴抽出部7の抽出結果に基づいて高濃度領域に作用する転写電界が低濃度領域に作用する転写電界より大きくなるように転写制御信号を生成することが好ましい。更にまた、高濃度領域と低濃度領域との境界に着目すれば、転写制御信号生成手段8は、高濃度領域と低濃度領域とが隣接する場合には低濃度領域の高濃度領域に隣接する境界部に作用する転写電界がそれ以外の低濃度領域よりも大きくなるように転写制御信号を生成することが好ましい。
【0021】
また、画像再現性を向上させる他の観点からすれば、特徴抽出部7は、画像部以外の背景部である背景部領域か否かを抽出し、転写制御信号生成手段8は、特徴抽出部7の抽出結果に基づいて背景部領域に作用する転写電界の方向が画像部領域に作用する転写電界と異なる方向になるように転写制御信号を生成することが好ましい。
更に、ゴースト画像の発生を抑える観点からすれば、特徴抽出部7は、画像部以外の背景部である背景部領域か否かを抽出し、転写制御信号生成手段8は、特徴抽出部7の判別結果に基づいて背景部領域に作用する転写電界が略ゼロになるように転写制御信号を生成することが好ましい。
【0022】
また、線画像やベタ画像が含まれる画像での画質を向上させる観点から、特徴抽出部7は、線画像が形成される線画像領域又はベタ画像が形成されるベタ画像領域かを抽出し、転写制御信号生成手段8は、特徴抽出部7の抽出結果に基づいて線画像領域に作用する転写電界がベタ画像領域に作用する転写電界より大きくなるように転写制御信号を生成することが好ましい。
【0023】
そして、本発明に関連する関連発明を具現化する第二の実施の形態モデルに係る画像形成装置としては、図1に示すように、移動可能な支持体1a及びこの支持体1aに支持されて且つ画素単位で縦横に配列された画素電極1bを有する像保持体1と、画素電極1b夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで像保持体1に潜像を形成する潜像形成手段2と、この潜像形成手段2にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段3と、画素電極1b夫々に画像信号に基づいた転写電圧を印加することで現像手段3にて現像されたトナー像に対し転写媒体5に転写する転写電界を作用させる転写手段4と、画素電極1b夫々に画像信号に基づいた清掃電圧を印加することで転写を終えた像保持体1表面に対し当該表面を清掃する清掃電界を作用させる清掃手段10とを備えている。
【0024】
また、本発明に関連する関連発明を具現化する第三の実施の形態モデルに係る画像形成装置としては次のようになっている。すなわち、移動可能な支持体1a及びこの支持体1aに支持されて且つ画素単位で縦横に配列された画素電極1bを有する像保持体1と、画素電極1b夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで像保持体1に潜像を形成する潜像形成手段2と、この潜像形成手段2にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段3と、像保持体1との間で転写電界を作用させ且つ現像手段3にて現像された像保持体1上のトナー像を転写媒体5に転写する転写手段4と、画素電極1b夫々に画像信号に基づいた清掃電圧を印加することで転写を終えた像保持体1表面に対し当該表面を清掃する清掃電界を作用させる清掃手段10とを備えている。
【0025】
ここで、第二の態様や第三の態様の画像形成装置における清掃手段10としては画素電極1b夫々に画像信号に応じた清掃電圧を印加できるものであれば特に限定されず、また、転写後の像保持体1上の残留物(残留トナー等)を取り除く清掃部材10aの形状も、ロール部材を用いる態様、ブラシ部材を用いる態様、ブレードを用いる態様のいずれであっても差し支えない。
更に、図2(a)(b)に示すように、清掃手段10に印加すべき清掃電圧が調整可能な清掃電圧調整手段11を備え、この清掃電圧調整手段11は、トナーを画素電極1bから引き剥がす方向に画素電極1b夫々に対して印加する清掃電圧を決定するための清掃制御信号を生成する清掃制御信号生成手段13と、この清掃制御信号生成手段13によって決定された清掃電圧を設定する清掃電圧設定手段14とを有することが好ましく、これによれば、像保持体1側へのトナー付着を抑えられ、清掃部材10aによるトナー除去が一層やり易くなる。
そして、像保持体1表面の清掃効果を一層高める観点からすれば、清掃手段10に印加すべき清掃電圧が調整可能な清掃電圧調整手段11を備え、この清掃電圧調整手段11は、画像信号から画像の特徴を抽出する特徴抽出部12と、この特徴抽出部12にて抽出された画像の特徴に基づいて清掃電圧を決定するための清掃制御信号を生成する清掃制御信号生成手段13と、この清掃制御信号生成手段13によって決定された清掃電圧を設定する清掃電圧設定手段14とを有することが好ましい。尚、清掃電圧調整手段11の特徴抽出部12として、上述の転写電圧調整手段6の特徴抽出部7を兼用するようにしても差し支えない。
【0026】
また、このような画像部における像保持体1上の残留物をより良好に清掃除去する観点からすれば、特徴抽出部12は、画像濃度が高い領域である高濃度領域又は画像濃度が低い領域である低濃度領域かを抽出し、清掃制御信号生成手段13は、特徴抽出部12の抽出結果に基づいて高濃度領域に作用する清掃電界が低濃度領域に作用する清掃電界より大きくなるように清掃制御信号を生成することが好ましい。
更に、極性が反転したトナーを清掃除去する観点からすれば、特徴抽出部12は、画像部以外の背景部である背景部領域か否かを抽出し、清掃制御信号生成手段13は、特徴抽出部12の抽出結果に基づいて背景部領域に作用する清掃電界の方向が画像部領域に作用する清掃電界と異なる方向になるように清掃制御信号を生成することが好ましい。
【0027】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
◎実施の形態1
図3は、上述の実施の形態モデルが適用された画像形成装置の実施の形態1を示す。同図において、本実施の形態の画像形成装置は、所謂タンデム型のカラー画像形成装置であり、装置筐体15内に例えば電子写真方式にて各色成分(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK))の各色トナー像が形成される像保持体20(20a〜20d)を略垂直方向に並列配置すると共に、これらの像保持体20に対向して循環回転する転写媒体としての中間転写ベルト50を略垂直方向に架け渡し、この中間転写ベルト50上で像保持体20上の各色トナー像を多重化するようにしたものである。
【0028】
像保持体20の周囲には、像保持体20上に形成された静電潜像をトナーにて現像して可視像化する現像器41や、像保持体20上の残留トナーを清掃する清掃部材42が設けられ、また、像保持体20と中間転写ベルト50を挟んで対向する位置には、現像された像保持体20上のトナー像を中間転写ベルト50に転写する転写器43が設けられている。尚、符号41aは現像器41内にて像保持体20に直接トナーを供給する現像ロールを示している。
一方、中間転写ベルト50は、複数の張架ロール51〜53(本例では3個)に張架され、例えば張架ロール51を駆動ロールとして循環回転するようになっており、また、中間転写ベルト50の表面側には、張架ロール53と中間転写ベルト50を挟んで対向する位置に二次転写器60を設け、中間転写ベルト50上で多重化された多重トナー像を後述する記録材供給部70から供給された記録材に一括転写するようになっている。尚、このとき、二次転写器60は張架ロール53をバックアップロールとして、両者の間に所定の二次転写バイアスが印加されるようになっている。
【0029】
そして、装置筐体15内の下方には、記録材を供給する記録材供給部70が設けられ、例えば供給容器71内に収容された記録材が、供給ロール72及び捌き機構73にて1枚毎に下流側の記録材搬送路74に向かって供給されるようになっている。
また、本実施の形態における記録材搬送系は次のようになっている。すなわち、記録材供給部70から記録材搬送路74に供給された記録材が、下流側に配置されたレジストロール75にて一旦位置決めされた後、所定のタイミングで下流側の二次転写器60側に搬送される。その後、二次転写器60と張架ロール53との対向部位である二次転写部位にて中間転写ベルト50上の多重トナー像が記録材に一括転写され、定着器76にてトナー像が定着された後、排出ロール77から装置筐体15の一部で構成される記録材排出受け16に排出されるようになる。尚、記録材搬送路74には、記録材を搬送するための搬送部材(例えば搬送ロール等)が適宜設けられていることは云うまでもない。
【0030】
次に、本実施の形態の像保持体20について詳述する。
図4に示すように、本実施の形態における像保持体20は、回転可能な支持体である剛体ドラム21上に、フィルム上に多数の画素が所謂マトリクス状に形成されたマトリクスパネル30を巻き付けて固定支持したものとなっている。マトリクスパネル30は、例えば耐熱性PET(ポリエステル樹脂)フィルムに対し、所謂IC製造プロセス等で用いられる薄膜技術を利用して作製したもので、画素が縦横にマトリクス状に配列されたものとなっている。そして、このようにマトリクス状に配列された画素は、例えば剛体ドラム21の回転軸方向に沿った方向をデータライン(主走査方向)とし、回転方向に沿った方向を走査ライン(副走査方向)としている。そのため、マトリクスパネル30のデータライン及び走査ラインには、各画素に接続される複数のデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32が適宜数設けられ、これらのドライバ31,32への入力線は更にまとめられて本数を少なくした段階でマトリクスパネル30を通して、剛体ドラム21の内面側にまで配線されるようになっている。
【0031】
剛体ドラム21は、その外周面の一部に回転軸方向に沿った溝21aが設けられる一方、剛体ドラム21の軸中心部には、マトリクスパネル30と外部との電気的接続を行うための所謂スリップリング24が設けられ、剛体ドラム21は固定されたスリップリング24の周りを回転するようになっている。
そして、剛体ドラム21の内周面側には、図5(a)及び(b)に示すように、適宜数の端子22が略剛体ドラム21の回転軸方向に沿って設けられ、これらの端子22は夫々マトリクスパネル30のデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32へと接続されている。更に、これらの端子22には、回転軸中心方向で且つ夫々の端部が互いに離間する方向に延びるスライダ23が端子22に接続される形で設けられ、このスライダ23の凹部にスリップリング24の集電環24aが装着されるようになっている。尚、スリップリング24の集電環24a部位は、両側の絶縁環24bより径が小さくなっており、剛体ドラム21の回転によってもスライダ23がその対向する集電環24aに常時接触した状態を保つようになっている。尚、剛体ドラム21の溝21aは、例えばシールテープにて塞がれており、像保持体20が回転する際の気流の抵抗が低減されると共に、現像時のトナーの影響も防ぐようになっている。
【0032】
そのため、マトリクスパネル30と外部との信号の伝達は、スリップリング24の集電環24aに対応してスリップリング24内に配線されたリード線25から、集電環24a及びスライダ23を介してマトリクスパネル30との間で行われるようになり、剛体ドラム21が回転しても、マトリクスパネル30との信号の伝達が適切に行えるようになっている。尚、剛体ドラム21の回転方法は、特に限定されず、例えば剛体ドラム21の外周面端部側を回転ロールに圧接させて回転させるようにしてもよいし、スリップリング24の挿入側とは異なる側で剛体ドラム21自体を回転させる回転軸を備えるようにしても差し支えない。
【0033】
次に、マトリクスパネル30の画素について説明する。
本実施の形態のマトリクスパネル30は、図6(a)に示すように、縦横に画素が配列されており、各画素は、(b)に示すように、所謂アクティブマトリクス方式で構成され、スイッチング素子として例えばTFT(Thin Film Transistor)33を用い、その他画素電極34、蓄積容量35及び配線(ソース線、ゲート線等)が夫々形成されている。各画素及び画素間の結線は、データライン毎にTFT33のソースが結線されるソース線、走査ライン毎にTFT33のゲートが結線されるゲート線としてまとめられている。また、TFT33のドレインには画素電極34と蓄積容量35が並列に接続され、蓄積容量35の一方は走査ライン毎にまとめられ(図示せず)、(c)のような等価回路を呈するように構成されている。
【0034】
マトリクスパネル30は、このように各画素を多数並べた構成のため、そのドライブ方式は次のように行われる。
つまり、マトリクスパネル30は、図7に示すように、データライン及び走査ライン毎に所定数の画素がまとめられ、TFT33のソース側がデータライン毎に夫々データ用ドライバ31へ接続される一方、TFT33のゲート側が走査ライン毎に夫々走査用ドライバ32に接続されており、データ用ドライバ31及び走査用ドライバ32は、画像形成装置内に設けられた画素電極駆動装置80によって駆動されるようになっている。そのため、これらのデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32を駆動することで、所定の画素に所定の電圧が印加できるようになる。データ用ドライバ31としては、例えばサンプルホールド付きのシフトレジスタ、ラッチ、バッファ等で構成され、走査用ドライバ32としては、例えばカウンタ、ラッチ、バッファ等で構成される。尚、図7では、画素電極34は省略しているが、TFT33と蓄積容量35との間に接続された画素電極34が設けられていることは云うまでもない。
【0035】
一方、画素電極駆動装置80は、図8に示すように、画像信号に基づく電圧信号や制御信号をマトリクスパネル30のデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32に伝達するようになっている。画素電極駆動装置80内には、画像信号に基づいて画素電極34に印加する各種電圧(具体的には潜像電圧、転写電圧、清掃電圧)を生成するための各制御信号を生成する制御部90と、これらの生成された各制御信号から画素電極34夫々に印加する電圧を設定する駆動部110とで構成されている。
制御部90は、画像信号から少なくとも1画像分の画像データを記憶するメモリ部91、画像信号に基づく潜像電圧を制御する潜像制御部92、画像信号に基づく転写電圧を制御する転写制御部95、画像信号に基づく清掃電圧を制御する清掃制御部98、各種のタイミング制御を行うタイミングコントローラ101等で構成されている。
【0036】
潜像制御部92は、メモリ部91からの画像データを階調変換する階調変換部93と、階調変換されたデータから画素電極34毎の潜像電圧レベルを決定するための潜像制御信号を生成する潜像制御信号生成部94とで構成されている。また、転写制御部95は、メモリ部91からの画像データから画像の特徴を抽出する特徴抽出部96と、特徴抽出部96にて抽出された結果に基づいて画素電極34毎の転写電圧レベルを決定するための転写制御信号を生成する転写制御信号生成部97とで構成されている。更に、清掃制御部98は、メモリ部91からの画像データから画像の特徴を抽出する特徴抽出部99と、特徴抽出部99にて抽出された結果に基づいて画素電極34毎の清掃電圧レベルを決定するための清掃制御信号を生成する清掃制御信号生成部100とで構成されている。
【0037】
一方、駆動部110は、制御部90からの各制御信号に基づいて画素電極34に印加する各電圧(具体的には潜像電圧、転写電圧、清掃電圧)を設定するようになっており、潜像電圧設定部111、転写電圧設定部113、清掃電圧設定部115と、これらのタイミングを制御するタイミングコントローラ118が設けられている。また、潜像電圧設定部111には、多種の潜像電圧が供給できるように複数の電圧源を備えた潜像電圧用電源112が接続され、潜像制御信号生成部94からの信号に基づいて電圧波形が生成されるようになる。更に、転写電圧設定部113には、転写電圧用電源114が接続され、清掃電圧設定部115には、清掃電圧用電源116が接続されている。ここで、転写電圧用電源114としては、主として潜像電圧と逆極性が用いられ、一部潜像電圧と同極性の電圧も含まれている。また、清掃電圧用電源116としては、転写電圧用電源114と同様に、主として潜像電圧と逆極性の電圧が用いられ、一部潜像電圧と同極性の電圧も含まれている。
【0038】
そして、更に駆動部110には、潜像電圧設定部111、転写電圧設定部113、清掃電圧設定部115によって設定された各種電圧のうち、マトリクスパネル30のデータ用ドライバ31に選択的に伝達するために、切替部117が設けられ、この切替部117によって、データ用ドライバ31には潜像電圧、転写電圧及び清掃電圧のうち、1種のものが伝達されるようになる。
また、駆動部110からは、マトリクスパネル30の走査用ドライバ32にも制御信号が伝達されている。
【0039】
本例では、転写制御部95及び清掃制御部98に夫々特徴抽出部96,99を設ける態様を示したが、例えば転写制御部95の特徴抽出部96からの抽出結果を清掃制御部98でも兼用するために、この特徴抽出部96から直接清掃制御信号生成部100に導くようにしても差し支えない。また、特徴抽出部96,99には、メモリ部91からの画像データを入力するようにしたが、これに限定されず、例えば階調変換部93からの階調変換されたデータを特徴抽出部96,99に入力するようにしてもよい。
【0040】
以上のように、画素電極駆動装置80を経由して、マトリクスパネル30内の画素電極34夫々に対し所定の電圧を与えることができ、潜像の形成、転写、清掃の各工程が画素電極34毎に異なる電圧を印加して行われることで、各工程における画素電極34と対向部材との間に作用する夫々の電界の広がりも抑えられ、良好な画像形成がなされるようになる。つまり、潜像の形成によって形成された潜像を現像する際の画素電極34と現像ロール41aとの間、転写する際の画素電極34と転写器43との間、清掃する際の画素電極34と清掃部材42との間に作用する電界の広がりが抑えられるようになる。また、潜像電圧が階調変換されたものとなっているため、現像時に画素電極34上に付着するトナー量が異なり、より画質のよい画像を形成することができるようになる。
【0041】
本実施の形態では、階調変換部93にて画素電極34夫々に画像信号に基づく潜像電圧を形成することが容易になされるが、このことを、図9に基づいて説明する。今、画像信号(画像データ)の濃度に対し、例えば3段階の閾値(図中、A,B,Cで示す)を設け、C以下であれば電圧を0とし、Cを超えB以下であればV/3、Bを超えA以下であれば2V/3、Aを超えればVとするようにすれば、4階調の潜像が形成されるようになる。
【0042】
次に、このように、4段階に分類された画像データを画素電極34に印加するための方式について図10を基に説明する。
今、階調変換された信号が、図10(a)のような信号であり、データラインの主走査方向に沿って「…a,b,c,d……b,a,d,c…」の画像が得られたものとすると、潜像制御信号生成部94では、例えば(b)に示すように、a,b,c,dに合わせて二値化されたデータを生成する。つまり、「…00011011……01001110…」のようなデータ信号が生成される。そして、この生成信号から、潜像電圧設定部111では、「00」〜「11」までに対応する電圧を潜像電圧用電源112から夫々選択することで、4段階の潜像電圧波形が設定される。このように設定された潜像電圧波形をデータ用ドライバ31に伝達し、走査用ドライバ32にタイミング制御用の制御信号を伝達することで、図10(c)に示すように、画素電極34毎に濃度の異なる画像が形成されるようになる。
【0043】
尚、階調数については特に限定されず、実用上問題ない範囲であればよく、また、階調を行わずに単に二値化された潜像電圧とするようにしてもよいことは云うまでもない。また、ここでは、画像信号に基づく潜像電圧を印加する方法としてアクティブマトリクス方式で用いられる階調方式、すなわち、電圧振幅を所定の階調数とした電圧階調方式を示したが、例えばフレームレートで階調表示を行うフレームレート階調方式を用いるようにすることもできることは云うまでもない。
【0044】
ここで、画像信号に基づく転写電圧について説明する。
今、図10のような潜像が形成され、特徴抽出部96にて低濃度領域と高濃度領域との抽出がなされる場合を想定し、仮に、図10(a)に示す「a」レベルがゼロ、「b」レベルが低濃度領域、「c」及び「d」レベルが高濃度領域として抽出されるものとすると、転写制御信号生成部97では、例えば図11(a)に示すように、a,b,c,dに対応する二値化されたデータを生成する。つまり、「…00011010……01001010…」のようなデータ信号が生成される。そして、この生成信号から、転写電圧設定部113では、「00」、「01」、「10」に対応する電圧を転写電圧用電源114から夫々選択することで、図11(b)に示すような3段階の転写電圧用波形(ここでは例えば0V、−XV、−YVとして表している)が設定されるようになる。このように設定された波形をデータ用ドライバ31に伝達することで画素電極34毎に所望の転写電圧を印加することができ、画素電極34と転写器43との間での転写電界を好適にすることができるようになる。このことは、画素電極34に付着したトナー量に合わせた転写電界を作用させることが容易になされることを意味する。尚、清掃時にも転写時と同様の動作が行われる。
【0045】
次に、本実施の形態における画素電極34夫々の駆動方式について図6(c)を用いて説明する。つまり、画素電極34を動作させるには、TFT33の走査ライン側に接続されたゲートにON電圧を印加すると、TFT33のソース−ドレイン間が導通状態となり、ソース電圧と等価になるまで蓄積容量35が充電される。この充電された電荷が静電潜像を形成する潜像電圧になる。また、その状態でゲートにOFF電圧が印加され、ソース−ドレイン間が遮断されても蓄積容量35の蓄積容量によって潜像電圧はそのまま保持されるため、以降にソース電圧が変化してもゲートにON電圧が印加されない限り潜像電圧はそのまま保持されるようになる。
【0046】
そのため、各画素のTFT33のソース側へ画像濃度に相当する信号電圧を印加すると共に、ゲート側へON電圧を印加することにより、データライン1ライン分の静電潜像が形成されるようになる。そして、ON電圧を印加するゲートを像保持体20の回転方向と逆方向に順次移動(走査)し、データラインに新たな信号電圧を印加することにより、二次元の潜像が形成されるようになる。
【0047】
本実施の形態では、像保持体20に形成された静電潜像に対し、像保持体20と現像器41との対向領域である現像領域にて、現像器41の現像ロール41aと潜像電圧が印加された画素電極34との間に加わる現像バイアスによって、像保持体20表面には画素毎に潜像電圧に応じたトナー付着が行われるようになり、静電潜像が現像されて可視像化されたトナー像が得られるようになる。このとき、現像器41としては、公知の一成分現像方式あるいは二成分現像方式のいずれを用いても差し支えない。
【0048】
そして、現像領域を通過し転写器43と対向する転写領域に達すると、画素電極34に対し静電潜像形成時と同様に、画像信号に基づく転写電圧(現像電界と逆方向の電界が加わる方向)が夫々印加され、画素電極34と転写器43との間に作用する転写電界によって像保持体20上のトナー像は記録材に転写される。このとき、転写器43としてはコロトロン等のコロナ放電器を使用するようにしてもよいが、画素毎の転写電界を精細に制御するには図3に示すように、中間転写ベルト50裏面に接触するタイプの転写ロール43が好ましい。また、転写ロール43に電圧を印加するようにしてもよいが、単に接地するようにしてもよい。
【0049】
特に、本実施の形態では、図8に示したように、特徴抽出部96にて、低濃度領域と高濃度領域とを抽出し、転写制御信号生成部97では高濃度領域に作用する転写電界が低濃度領域に作用する転写電界より大きくなるように画素電極34の電位を設定するようになっている。そのため、像保持体20から中間転写ベルト50に転写されるトナー量は、トナー量が多い高濃度領域もトナー量が少ない低濃度領域も、単位トナー量当たりの転写電界を同じような電界強度にすることができ、トナー量が多い部位ではトナーを多く転写される一方、トナー量が少ない部位ではそのまま転写されるようになり、中間転写ベルト50上に形成されるトナー像の再現性として良好なものが得られるようになる。
【0050】
そして、このように、夫々の像保持体20から中間転写ベルト50に順次転写されて多重化されたトナー像は、中間転写ベルト50と二次転写器60との対向領域である二次転写部位にて記録材供給部70から供給された記録材上に一括転写され、多重化トナー像が一括転写された記録材は定着器76によって定着された後、排出ロール77から記録材排出受け16に排出されるようになる。
【0051】
更に、本実施の形態では、トナー像が中間転写ベルト50に転写された後に像保持体20上に残留するトナーは、転写領域より下流側の像保持体20と清掃部材42との対向領域で、画素電極34に画像信号に基づく清掃電圧を印加することにより、清掃部材42側に静電吸引され、像保持体20上の清掃を行うことができるようになる。清掃部材42としては、導電性又は半導電性のロール状、あるいはブラシ状、ブレード状等公知の部材を使用するようにすればよく、更には、清掃部材42へ電圧を印加するようにしてもよいし、接地するだけでもよい。
【0052】
特に、本実施の形態では、図8に示すように、清掃制御部98でも転写制御部95と同様の制御を行うようになっており、清掃制御部98の特徴抽出部99にて、低濃度領域と高濃度領域とを抽出し、清掃制御信号生成部100では高濃度領域に作用する清掃電界が低濃度領域に作用する清掃電界より大きくなるように画素電極34に印加する清掃電圧を設定するようになっている。そのため、像保持体20上の残留トナーが、現像によって付着トナー量が多い部分(高濃度領域に相当する)で多く残ることがあっても、清掃時に残留トナー量が多い高濃度領域もトナー量が少ない低濃度領域も、単位トナー量当たりの清掃電界を同じような電界強度にすることができ、トナー量が多い部位では多く吸引される一方、トナー量が少ない部位ではそのまま吸引されるようになり、像保持体20上の清掃効果が向上するようになる。
【0053】
ここで、本実施の形態における画像形成工程の概要について、図12を基に詳細に説明する。尚、ここでは、負帯電トナーを用いた例を示し、併せて図23の感光体を用いた比較モデルによる工程との対比も適宜加えるようにする。
−潜像形成−
図12(a)に示すように、本例の潜像電圧は、像保持体の画素毎に画像信号に基づく電圧(ここではV、2V/3、V/3の3段階を示す)が印加されることから、隣接する画素電極間での影響を受け難い。一方、比較モデルでは、感光体を一旦マイナスに大きく均一帯電した後に画像部の帯電電位を光減衰させることでプラス方向に持ってくるようにするため、画素間の境界が不明瞭となり易く、画素での電位も画素全域に亘って均一とは言い難い。更に、本例では、像保持体の回転むらを気にする必要がないのに対し、比較モデルでは感光体の回転むらがそのまま形成される画像の濃淡の縞模様(バンディング)に至る虞がある。更にまた、本例では画素間での電圧の差異を容易に実現できるために画像濃度を変化させ易いのに対し、比較モデルでは困難となる。
【0054】
−現像−
図12(b)に示すように、現像工程自体は、本例も比較例も同じであるが、本例では、形成された潜像電位の差により、画素毎に付着する付着トナー量が変化するようになり、画像の濃淡を表し易く、また、現像電界が夫々の画素と現像ロールとの間に集中し易いために画像のシャープさが増すようになるのに対し、比較モデルでは、画素毎の濃淡は困難であり、現像電界も広がり易いために画像のシャープさも低下するようになる。
【0055】
−転写−
図12(c)及び(d)に示すように、本例では、画像信号に基づく電圧を画素に加えることで、像保持体と中間転写ベルトとの間に選択的な転写電界が形成されるようになり、像保持体上のトナーは中間転写ベルトに略そのまま転写されるようになる。一方、比較モデルでは、感光体と中間転写ベルトとの間に画素とは無関係に一様な電界が作用するようになり、その分、感光体上のトナーが中間転写ベルトに転写される際、広がり易くなる。
特に、本例では、潜像形成と同様の階調方式を利用することで、画素上のトナー付着量が異なってもそれに応じた転写電界を形成することができ、画像濃度に応じた転写を容易に実現することもできるようになる。
【0056】
本例のように、画素電極毎に転写電圧を変化させることができる利点としては、例えば転写される画像のシャープさを良好に保つことが挙げられる。図13(a)は、本例での転写時の電位分布をモデル化したもので、画像の周辺の像保持体電位をより深くすることで、図中白抜き矢印の太さで示すように、画像位置での転写電界より、画像周辺の転写電界を大きくすることができる。また、境界では、斜め方向に大きな電界が働くようになる。そのため、トナーには、矢印Aや矢印A’で示すように、内側にトナーを引っ張ろうとする比較的大きな力や、矢印Bや矢印B’で示すように、トナーを転写媒体側へ引っ張ろうとする大きな力が作用し、転写時のトナーは画像周辺への飛散が防止できるようになる。
【0057】
一方、(b)に示す比較モデルでは、画像位置の転写電界に対し、周辺の転写電界はトナーがない分若干大きくはなるが、(a)のように大きくすることができない。そのため、トナーを内側に引っ張ろうとする矢印Cや矢印C’の力は本例より小さく、また、画像周辺でのトナーが外側に広がろうとする矢印Dや矢印D’の力の傾斜は緩くなり、トナーの広がりを抑える作用が小さく、結果的にトナーの飛散を生じ易くなる。
このように、画素電極に対して印加する電圧を変化させることで、転写時の画像の広がりを抑えることができ、画像のシャープさも保つことができるようになる。
【0058】
また、画素電極を用いることで、次のようにすることも可能になる。
図14(a)は、本例での転写時の転写電界を表したもので、像保持体上には静電潜像に沿って付着したトナー量の異なる部分があり、これを転写する際、画像濃度(トナー付着量)に応じた転写電界を加えるようにしている。つまり、トナー付着量が多い部位では転写電界を大きく、トナー付着量が少ない部位では転写電界を小さくすることで、像保持体上の単位トナー量に対する転写電界をトナー付着量に関係なく略均一にすることができ、トナー付着量が多い部位ではトナーが多く転写される一方、トナー付着量が少ない部位ではトナーが少なく転写されるようになる。そのため、像保持体上の画像により忠実な画像を中間転写ベルト(転写媒体に相当)上に形成することができるようになる。
一方、比較モデルでは、図14(b)に示すように、感光体と転写媒体との間の転写電界はトナー付着量に関係なく感光体と転写媒体との間に作用するため、トナーの絶縁性が効いてトナー量の多い部位の方が却って転写電界が小さくなる。そのため、特にトナー量の多い部位からの転写が少なくなり、結果的に転写されるトナー量は感光体上に付着していたトナー付着量との相関が取れなくなるようにもなる。
【0059】
次に、清掃について説明する。
−清掃−
図12(e)に示すように、清掃時には、画像信号に基づく電圧を画素に印加することで、残留トナーが多い画素も、少ない画素も両者共に効率的な清掃が可能になる。一方、比較モデルでは、清掃部材に電圧を印加しても、感光体と清掃部材との間に一様な電界が形成されることから、残留トナーの多い部位での清掃性能が低下する虞がある。
【0060】
更に、本実施の形態では、転写並びに清掃について、画像の特徴に合わせた制御も併せて行っている。すなわち、図15(a)に示すように、転写時には、特徴抽出部(図8参照)にて、画像部が高濃度領域か低濃度領域かを抽出し、この抽出結果に基づいて高濃度領域に作用する転写電界を低濃度領域に作用する転写電界より大きくなるようにしている。つまり、結果的には高濃度領域の転写電界が低濃度領域の転写電界より大きくなるようにしている。そして、更に、高濃度領域と低濃度領域とが隣接する場合には、低濃度領域の境界部に作用する転写電界を他の部位より大きくするようにしている。つまり、(b)に示すように、高濃度領域と低濃度領域との境界では、低濃度領域側の境界部で転写電界を大きくする(図中では転写電界を中とした部位)ことで、高濃度領域も低濃度領域も均一に転写することができるようになる。
【0061】
この理由は、高濃度領域ではトナー量が多いため、単位面積当たりのトナー電荷量が多く、画素電極へ高電圧を印加して高転写電界を発生させる必要がある。しかし、このような高電圧を低濃度領域へ印加した場合、過剰な電界を発生することになり、例えば中間転写ベルトとの間でパッシェン放電を発生し、画像むらや濃度低下を引き起こすことにもなる。また、高濃度領域と低濃度領域とが隣接する部位では、低濃度領域側の境界部で転写時にトナーと中間転写ベルトとの間のギャップが発生し、この部位に加わる実効的な転写電界が小さくなる。そのため、低濃度領域を均一な電界強度とすると境界部での転写トナー量が減少するようにもなる。したがって、境界部での電界強度を大きくすることで、転写されるトナー量が低濃度領域全体で均一な方向に調整されるようになる。
【0062】
一方、像保持体上の残留トナーを清掃する清掃時は、図16に示すようになっている。すなわち、図16(a)(b)に示すように、清掃時には、特徴抽出部(図8参照)にて、画像が高濃度領域か低濃度領域かを抽出し、この抽出結果に基づいて高濃度領域に作用する清掃電界が低濃度領域に作用する清掃電界より大きくなるようにしている。こうすることにより、高濃度領域も、低濃度領域も均一に清掃できるようになる。つまり、清掃部材は、部材自身が帯電しないように導電性又は半導電性からなるため、高電界になるとトナーを帯電させ、清掃効率を低下させてしまうようにもなる。そのため、清掃可能な電界領域が狭く、転写後の残留トナーであるからトナー量が少ないにもかかわらず、このような制御が有効となる。
【0063】
以上のように、本実施の形態の画像形成装置によれば、像保持体20表面側にマトリックス状に画素電極34を設け、各画素電極34へ画像信号に基づく電圧を印加し、潜像形成、転写、清掃を行うようにしたので、画素の位置及び形状はそのまま画素電極34の位置及び形状になり、また、潜像電圧は画素電極34への印加電圧で決まるため、画素の位置、形状及び電位が一義的に決定され、濃度むら、色むら、すじ等の画像欠陥の発生が抑えられた高画質画像が得られるようになる。更に、画像の種類により、夫々の画像に適した転写電界等を選択できるため、転写むら、トナーの飛び散り、かぶりなどの発生を抑えることも可能になる。
また、このような方式では、帯電器を使用しないことから、帯電器自身がトナーに汚染され帯電不良を起こしたり、帯電器から発生する放電生成物が像保持体20表面を変質させたり、また、放電生成物により清掃性能を低下させたりすることがない。更に、画素電極34へ画像の種類に対応した清掃電圧を印加することにより、清掃効率を向上させ、像保持体20と清掃部材42との接触圧も小さくすることができ、像保持体20及び清掃部材42自体の損傷も軽減されるようになる。
【0064】
本実施の形態では、像保持体20から中間転写ベルト50への転写を行う画像形成装置を示したが、これに限られず、像保持体20から直接記録材上に転写するようにしても差し支えない。また、清掃部材42での清掃時に画素電極34夫々に清掃電圧を印加しないようにしてもよく、この場合、例えば像保持体20と清掃部材42との間に像保持体20上の残留トナーを清掃部材42側に静電吸引する方向の電界が加わるようにすればよい。
更に、清掃部材42による清掃時に画素電極34を利用し、画素電極34夫々に清掃電圧を印加する一方、転写時には画素電極34を利用せずに、像保持体20と転写器43との間に転写電界を印加して転写するようにすることもできる。
【0065】
また、マトリクスパネル30としては、その表面側に保護層として誘電体膜を形成するようにしてもよいし、円筒状の基材上に薄膜技術によるTFT33の形成等を行うようにしても差し支えない。
そして、本実施の形態では、画素毎に蓄積容量35を備える方式を示したが、像保持体20と現像器41との対向領域の近傍で、画素電極に書き込む(ゲート側にON電圧を印加する)ようにすれば、蓄積容量35を備えていない場合でもTFT33自体の容量を利用することでトナー像を形成することは可能となる。
【0066】
また、本実施の形態では、像保持体20の数量を4個としたフルカラーの対応を示したが、像保持体20の数量はこれに限られず、例えば特色トナーや、透明トナーを適用するものを追加するようにしても差し支えない。更には、本実施の形態ではカラー対応の画像形成装置を説明したが、モノクロ対応の画像形成装置であってもよいことは云うまでもない。特に、本実施の形態では像保持体20を回転させる方式としたが、像保持体20を平板状に設け、像保持体20と現像器41あるいは転写器43の少なくとも一方を移動させるようにしてもよく、像保持体20が回転体の場合に比較して画像形成を繰り返す速度は低減される可能性があるものの、回転体と同様の画像を形成することができるようになる。尚、この場合、清掃部材42も現像器41あるいは転写器43同様、移動させるようにすればよい。
【0067】
そして、本実施の形態では、上述したように、特徴抽出部にて高濃度領域、低濃度領域を抽出する態様を示したが、転写時や清掃時に特徴抽出部にて次のような抽出を行うようにしてもよい。
例えば、図17(a)(b)は転写時の変形形態1を示すもので、(a)は転写時のフロー、(b)は転写時の転写電界を示している。つまり、特徴抽出部にて画像が画像部領域であるか背景部領域であるかを抽出し、背景部領域があれば、画像部領域に通常の転写電界を作用させると共に、背景部領域にトナー本来の極性と異なる極性に帯電されたトナー(逆極性トナー)の転写を防ぐ電界を作用させるようにしてもよい。
これは、背景部領域へのトナーのかぶり防止を目的とする。つまり、かぶりが問題となる場合の多くは、トナー(又は現像剤)の劣化や環境変動等によって、トナー(又は現像剤)中に逆極性トナーが発生し、この逆極性トナーが背景部領域へ付着することである。そのため、背景部領域への逆極性トナーの付着を防ぐような転写電界が作用するように画素電極への転写電圧を印加することで、かぶりの防止を行うことができるようになる。更には、このような電位構成とすることで、画像部領域と背景部領域との電位関係から、画像部領域のトナーを画像部領域に閉じこめる方向の電界が作用するようになり、トナーの飛び散りを防止することにも有効に作用するようになる。一方、比較モデルにあっては、背景部領域の感光体電位と転写電圧との関係は、逆極性トナーの転写を妨げる方向の電界が作用するが、トナーと中間転写ベルトとの付着力が高いため、かぶりを防止するには十分な電界とは言い難いものでしかなかった。
【0068】
また、図18(a)(b)は転写時の変形形態2を示すもので、(a)は転写時のフロー、(b)は転写時の転写電界を示している。つまり、特徴抽出部にて画像が画像部領域であるか背景部領域であるかを抽出し、背景部領域があれば、画像部領域に通常の転写電界を作用させると共に、背景部領域にはその転写電界が略ゼロになるようにしてもよい。
これは、転写時の転写電流により、中間転写ベルトを通して転写電流が像保持体を帯電させ、この帯電パターンが次の画像に影響するゴーストの発生を抑えるようにするものである。つまり、通常、画像部領域と背景部領域とでは、トナーの絶縁性が高いことにより、背景部領域の方が帯電され易くなる。そのため、背景部領域の画素電極に転写電界が略ゼロとなるような電圧を印加することで、背景部領域の帯電による影響を取り除くことができるようになる。一方、比較モデルでは、背景部領域も含む画像全体に転写電界が加わるため、このようなゴースト防止を行うことはできない。
【0069】
更に、図19(a)(b)は転写時の変形形態3を示すもので、(a)は転写時のフロー、(b)は転写時の転写電界を示している。つまり、特徴抽出部にて画像が線画像領域かベタ画像領域であるかを抽出し、線画像領域に作用する転写電界をベタ画像領域に作用する転写電界より大きくするようにしてもよい。
これは、線画像領域は像保持体への付着力が強いため転写が難しいが、線画像領域の転写電界がベタ画像領域の転写電界より大きくなるように画素電極へ高電圧を印加することで、線画像領域の転写率を向上させることができるようになり、画像としての細線再現性等を向上させることができるようになる。
【0070】
また、清掃時に適用する例としては、図20(a)(b)は清掃時の変形形態を示すもので、(a)は清掃時のフロー、(b)は清掃時の清掃電界を示している。つまり、特徴抽出部にて画像が画像部領域であるか背景部領域であるかを抽出し、背景部領域があれば、画像部領域に通常の清掃電界を作用させると共に、背景部領域にトナー本来の極性と異なる極性に帯電されたトナー(逆極性トナー)を清掃する方向の電界を作用させるようにしてもよい。
通常、背景部領域に付着するトナー(残留トナー)は逆極性に帯電していることが多いため、このように、背景部領域に逆方向の清掃電界を作用させるようにすれば、背景部領域を効果的に清掃することができるようになる。一方、比較モデルでは、清掃前に帯電器でトナーの帯電極性を揃える必要があったが、帯電器ではこのように帯電極性を揃える調整能力が低く、十分な清掃効率を得ることが困難であった。また、このような帯電器を設けること自体が、その大きさやコストの点から大きなマイナス要因ともなり、その普及を妨げていた。
【0071】
更に、画素電極を使用することで、このような電界を利用して清掃する(静電吸引)方式ではなく、機械力を利用した、例えばブレード方式とする場合にも効果的な清掃を行うことが可能である。この場合、画素電極に印加される清掃電圧極性をトナーと同一の極性とし、つまり、画像部領域は正極性、背景部領域は逆極性とし、画素電極に対しトナー電荷を反発させることにより、像保持体へのトナーの付着力を低減させるようにする。これにより、清掃効率を向上させると共に、像保持体と清掃部材との接触圧を弱めることができるため、像保持体及び清掃部材の磨耗を防止できるようになる。
【0072】
また、図21は、上述の実施の形態で述べた画素電極駆動装置80とは、一部異なる画素電極駆動装置80を示すもので、このような画素電極駆動装置80を用いるようにしても比較モデル(例えば図23に示す)に比べ、画質の向上を図ることができるようになる。
同図において、図8に示した画素電極駆動装置80と異なるのは、ここでは、特徴抽出部96,99を用いずに、単にメモリ部91からの画像データを二値化する二値化変換部102,103を転写制御部95及び清掃制御部98が備えている点にある。つまり、画素電極34に対し、転写時に転写電圧を「1」のレベルとするか、「0」のレベルとするか、あるいは、清掃時に清掃電圧を「1」のレベルとするか、「0」のレベルとするかの二者択一を行うようにしている。このようにしても、転写時や清掃時において、転写電界や清掃電界が、中間転写ベルト50と画素電極34の間、あるいは、清掃部材42と画素電極34の間に有効に作用し、良好な画像が形成されるようになる。
【0073】
◎実施の形態2
図22は、実施の形態2の画像形成装置の概略構成を示す。本実施の形態の画像形成装置は、実施の形態1の画像形成装置と異なり、一つの像保持体の周りに複数の現像器を設けたものとなっている。
【0074】
すなわち、実施の形態1の像保持体20と同様に、本実施の形態の像保持体200にもマトリクス状に構成された画素電極群が形成され、画素電極に信号電圧を印加することで静電潜像が形成できるようになっている。この像保持体200の周囲には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の各色に対応した現像器410(410a〜410d)が配設され、像保持体200に形成された静電潜像を各現像器410で現像してトナー像を形成するようになっている。また、像保持体200の周囲には、現像器410dと現像器410aとの間に像保持体200上に形成されたトナー像を記録材上に転写する転写器430が設けられ、更に、この転写器430と現像器410aとの間には清掃部材420が設けられている。
【0075】
このような画像形成装置では、先ず、現像器410aの現像領域に達するまでに、像保持体200にはイエローの画像信号に応じた潜像が形成される。像保持体200上のこの静電潜像を現像器410aにて現像した後に、次の現像器410bの現像領域に達するまでに、マゼンタの画像信号に対応した潜像が形成されて、現像器410bにて現像される。同様にして、シアン及びブラックの潜像が形成されて現像され、結果的に、現像器410dを通過した像保持体200上には、各色トナー像が多重化されたトナー像が形成されるようになる。
【0076】
像保持体200上で多重化されたトナー像は、像保持体200と転写器430とが対向する転写部位にて、記録材上に転写される。このとき、現像器410dを通過した像保持体200の画素電極には、転写部位に達するまでに画像信号に対応した転写電圧が印加される一方、転写器430が接地され、両者間での転写電界によって良好な転写がなされるようになる。尚、このとき、画像信号に対応した転写電圧とは、多重化されたトナー像に応じた電圧となっていることは云うまでもない。
そして、転写を終えた像保持体200の画素電極には、清掃部材420に達するまでに画像信号に対応した清掃電圧が印加され、清掃部材420を接地することで、両者間に有効な清掃電界を発生させ、像保持体200上の残留トナーが清掃されるようになる。
【0077】
このように、像保持体200上で各色トナー像を多重化する方式は、構成部品を少なくすることができ、また、小型化や低コスト化にとっても有利な方式となっている。尚、ここでは、カラー対応の画像形成装置を説明したが、モノクロ対応の画像形成装置であってもよいことは云うまでもない。
【実施例】
【0078】
◎実施例1
本実施例は、本件の画像形成方式の有効性を確認するために、画像濃度が異なる場合の転写時の作用について評価したものである。通常、転写前の画像に、濃度が低い低濃度領域と濃度が高い高濃度領域とが混在する場合には、印加する転写電圧に対し、低濃度領域と高濃度領域とは夫々異なる転写率の変化傾向を示すようになる。
図24は、低濃度領域及び高濃度領域での印加される転写電圧と転写率との関係を示したもので、低濃度領域では、高濃度領域に比べ、同じ転写電圧では転写率が高い傾向を示している。しかしながら、両者の関係はある転写電圧を境に逆転し、高濃度領域の方が低濃度領域より転写率が大きくなる。つまり、低濃度領域を転写するには、転写電圧を小さくする必要があり、大きすぎると放電によって却って良好な転写がなされなくなり(放電マークが発生)、転写率も低下する(図中放電ぬけ領域)。また、小さすぎると、濃度むらの発生に繋がる(図中濃度むら領域)。一方、高濃度領域では、良好な転写を行うには転写電圧を大きくする必要があり、小さすぎると濃度むらが発生するようになる(図中濃度むら領域)。更に、低濃度領域と高濃度領域とに対し同じ転写電圧を印加するようにすると、カラー画像での色再現性も低下する傾向にある。
そのため、低濃度領域と高濃度領域とが混在する場合、両者の関係を満たす転写電圧を印加することは困難であった。
これに対し、本例では、画素毎に印加する転写電圧を異なるようにできることから、その画素に付着しているトナー量に合わせて転写を行うことができ、低濃度領域及び高濃度領域の再現性が大きく向上するようになる。尚、図中DMAは現像トナー量(Development Mass Area)の略である。
【0079】
◎比較例1
本例では像保持体を帯電させるための放電がないことから、比較例として図23の感光体を用いた比較モデルの構成を用い、放電による感光体の摩耗がどうなるのかを確認した。評価は、帯電ロールにAC電圧を印加し、その周波数とピーク電圧を変更して、所定時間経過した後の感光体自体の摩耗量を測定した。
結果は、AC電圧に対し比例して摩耗量が増加する傾向を示した。
このことから、AC電圧を大きくすることにより放電量が増加することで、その放電によって感光体表面が摩耗促進される傾向にあることが判明した。つまり、放電によって感光体摩耗が促進され、このことは感光体表面の粗面化を促進する結果となる。そのため、感光体に対するトナー付着力が大きく変化したり、清掃性が低下するようになり、結果的に得られる画質低下に繋がる傾向がある。
一方、本例では、このような帯電そのものを行わないことから、このような画質劣化を抑えることができるようになる。
【0080】
◎比較例2
次に、放電の発生量と感光体上に発生する放電生成物の量との関係を確認するために、比較例1と同様の構成を用い、放電を多く発生した条件(AC電圧を大)と、放電が少ない条件(AC電圧を小)としたときに、画像形成サイクルに対し、感光体表面に堆積する放電生成物の量をイオンクロマトグラフィーによるアンモニウムイオンの検出量として測定した。
結果は、放電が多い方が明らかにアンモニウムイオンの量が多くなる傾向が得られ、このことは、感光体表面に堆積する放電生成物の量が放電量に比例して多くなることを意味している。そして、このような放電生成物は、帯電時の均一帯電を阻害すると共に、吸湿による低抵抗化も起こすようになり、画像流れ等の画質欠陥を発生するようにもなる。
このような放電生成物に対しては、本例では、放電を気にする必要がないことから、像保持体への放電生成物の堆積をほぼ無視してもよいようになる。
【0081】
◎比較例3
更に、比較例1と同様の構成を用い、放電生成物により清掃部材としてブレードを用いたときの感光体とブレードとの摩擦力を感光体の回転トルクとして評価した。記録材として白紙を通紙し、帯電ロールに放電状態としてAC電圧を印加したものと、AC電圧をゼロとしたものとの比較を行った。
結果は、放電大では短時間のランニングでトルク(静トルク)が大きく増加する傾向を示したのに対し、放電小ではトルクの増加は小さく抑えられる傾向となることが判明した。このことから、放電により感光体表面が粗面化し、ブレードが引っ掛かり易くなってトルクが上昇するようになることが判明した。
したがって、本例のように、放電がない状態では、回転トルクも長期に亘って安定するため、例えばバンディング等の発生を抑えることができ、長期に亘って安定した画質を維持することができるようになる。
【符号の説明】
【0082】
1…像保持体,1a…支持体,1b…画素電極,2…潜像形成手段,3…現像手段,4…転写手段,5…転写媒体,6…転写電圧調整手段,7…特徴抽出部,8…転写制御信号生成手段,9…転写電圧設定手段,10…清掃手段,10a…清掃部材,11…清掃電圧調整手段,12…特徴抽出部,13…清掃制御信号生成手段,14…清掃電圧設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な支持体及びこの支持体に支持されて且つ画素単位で縦横に配列された画素電極を有する像保持体と、
前記画素電極夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで前記像保持体に潜像を形成する潜像形成手段と、
この潜像形成手段にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段と、
前記画素電極夫々に、画像の濃度情報に基づいた3段階以上の転写電圧を印加することで前記現像手段にて現像されたトナー像に対し転写媒体に転写する転写電界を作用させる転写手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記転写手段は、前記トナー像のうち画像濃度の高い領域である高濃度領域に作用する転写電界が画像濃度の低い領域である低濃度領域に作用する転写電界より大きくなるように転写電圧を印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記転写手段は、前記トナー像のうち画像濃度の高い領域である高濃度領域と画像濃度の低い領域である低濃度領域とが隣接する場合には、低濃度領域の高濃度領域に隣接する境界部に作用する転写電界がそれ以外の低濃度領域よりも大きくなるように転写電圧を印加することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−57955(P2013−57955A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235968(P2012−235968)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【分割の表示】特願2007−295833(P2007−295833)の分割
【原出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】