説明

画像検査方法および画像検査装置

【課題】マニュアルでの補正や多大な処理時間を必要とせず、ビデオ撮影装置の位置およびビデオ撮影装置の位置と撮影対象物までの距離から求められる撮影している画角の座標を、撮影画像のフレームと同期させてビデオ撮影装置の記録チャンネルに記録する。
【解決手段】走行する車両からビデオ撮影装置でコンクリート構造物の表面劣化を検査する方法において、ビデオ撮影装置の位置およびビデオ撮影装置の位置と撮影対象物までの距離から求められる撮影している画角の座標を、撮影画像のフレームと同期させてビデオ撮影装置の記録チャンネルに記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオを活用した画像検査方法および画像検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の劣化現象が社会的に大きな問題となっており、こうした劣化を簡易に、かつ効率的に調査する技術が求められている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
従来、ひび割れなどの分布図は写真やビデオなどを用いるものの、基本的には目視による調査が一般的であった。
【0003】
また、最近ではデジタル画像を用いて、ひび割れを抽出し易く処理することにより、目視のひび割れ調査を支援するソフトなどが開発されてきており、実際の調査に活用されはじめている。
このほか、コンクリート表層部から内部にかけての欠陥情報を得るために、コンクリート表面の温度分布測定や、レーダなどを利用したコンクリート内部の検査が行われる場合がある。
【0004】
こうしたコンクリートの劣化診断をより効率的に実施するためには、コンクリート構造物の調査範囲全般の正面図や展開図のような検査結果を連続して合成した画像やグラフが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−108796号公報
【特許文献2】特開平11−174997号公報
【特許文献3】特開平11−258980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の画像診断の一般的な方法は、測定対象を目視観察するか、測定対象を撮影し、その撮影画像を処理して、劣化部分を抽出する方法が取られている。
また、測定範囲が広く展開図のような合成画像を得る場合には、マニュアルで合成するのが一般的である。
デジタルビデオやハイビジョンなどのような高解像度ビデオを利用して検査対象を撮影して画像診断を行う場合、撮影終了後にビデオを再生し、目的とする画像をキャプチャすることになる。
【0007】
通常のビデオシステムでは、1秒間に30フレームの画像が記録されており、長時間記録された画像から特定の画像を抽出するには、これまで多大な時間を要していた。
特に、撮影結果から合成してマップのような結果を得ようとする場合、時間によってビデオの撮影位置や撮影角度が異なるため、撮影結果から特定の最適な画像を得ることは困難で、膨大な処理時間が必要となる。
【0008】
一方、展開図のような検査結果の連続合成像を得るためには、被検査面を連続的かつ同じ測定間隔で測定し、その結果を再構築する必要がある。
一般的な方法としては、走行車両に測定装置を取り付け、走行しながら一方向のデータを取得し、これを繰り返し行う方法や、あるいは複数台の測定装置を走行車両に取り付け、一度に広い範囲の測定を一方向で行う方法が考えられる。
【0009】
しかし、前者の方法は、検査を何度も行う必要があったり、後者の方法では必要以上の検査機器が必要となったりして、効率的でない点が認められる。
これに対して、走行車両上に検査機器を移動できるような走査装置を搭載し、2軸方向に検査する方法が考えられる。
しかし、単純に測定機器を独立した速度で往復運動させて走査する場合、走行する車両の速度が一定でないと、得られる結果に粗密ができることになる。
【0010】
すなわち、車両の走行速度が速い場合には、測定位置の間隔が大きくなり、測定していない区間が現れたりする可能性がある。
逆に、車両速度が遅くなると、測定装置は同じ場所近傍のデータばかり計測することになり、得られた結果が無駄になる場合がある。
一方、多量の画像や検査結果を合成してマップのような結果を得ようとする場合、単純な往復運動の走査装置では、各画像毎に走行方向の位置座標と走査方向の位置座標が異なることになり、全体画像や検査結果の合成結果を得るために膨大な処理時間が必要となる。
【0011】
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、マニュアルでの補正や多大な処理時間を必要とせず、ビデオ撮影装置の位置およびビデオ撮影装置の位置と撮影対象物までの距離から求められる撮影している画角の座標を、撮影画像のフレームと同期させてビデオ撮影装置の記録チャンネルに記録することを可能とした画像検査方法および画像検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、走行する車両からビデオ撮影装置でコンクリート構造物の表面劣化を検査する方法において、前記ビデオ撮影装置の位置および前記ビデオ撮影装置の位置と撮影対象物までの距離から求められる撮影している画角の座標を、撮影画像のフレームと同期させて前記ビデオ撮影装置の記録チャンネルに記録することを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の画像検査方法において、前記位置情報は、前記車両に取り付けられた距離計または速度計で求められることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の画像検査方法において、前記位置情報は、予め設置した基準点に対する距離を求めることで求められることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3の何れか1項記載の画像検査方法において、前記ビデオ撮影装置は、前記車両の走行速度と連動して、測定時間間隔を任意に調整できるように前記車両に取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、走行自在な車両に、ビデオ撮影装置と、前記ビデオ撮影装置を走査する走査装置と、前記ビデオ撮影装置と対象物との距離を検出する対象物距離検出器と、前記ビデオ撮影装置の位置を検出する位置検出器と、前記車両の速度検出器と、前記位置検出器と前記速度検出器とからの情報に基づいて前記車両と前記走査装置とを制御する位置コントローラと、前記ビデオ撮影装置からの情報を記録するビデオ記録装置と、前記対象物距離検出器、前記位置検出器、前記速度検出器および前記位置コントローラからの情報を記録する位置情報記録装置とを搭載し、前記車両を走行させながら前記走査装置により前記ビデオ撮影装置を走査し、測定対象面の画像を撮像し、前記ビデオ記録装置に格納し、撮影時の前記ビデオ撮影装置と測定対象面までの距離を前記対象物距離検出器で検出し、前記位置情報記録装置に記録し、撮影時の前記ビデオ撮影装置の位置を前記位置検出器で検出し、前記位置情報記録装置に記録し、前記車両の速度を前記速度検出器で検出し、前記位置情報記録装置に記録し、前記ビデオ撮影装置の位置と撮影対象物までの距離から求められる撮影している画角の座標を求めるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明は、コンクリート部材の欠陥を診断する画像記録装置に、撮影位置情報などを同時に記録させることにより、長時間記録された画像から特定の画像の抽出や、撮影結果から測定対象の全体画像を再合成する場合の処理時間の大幅な短縮を図るものである。
通常のビデオシステムでは、1秒間に30フレームの画像が記録されており、長時間記録された画像から特定の画像を抽出するには、目視で結果を確認し、マニュアルで実施するためこれまで多大な時間を要していた。
【0016】
また、撮影結果から合成してマップのような結果を得ようとする場合、マップ合成に最適な画像をキャプチャしてから画像合成をする必要があるが、ビデオの撮影位置や撮影角度が時間によって変化するため、ビデオの記録から目視によって特定の画像を抽出することは困難で、膨大な処理時間が必要となる。
こうした問題を解決するためには、特定時間の撮影画像の範囲を測定記録しておくことが必要となるが、一般的には測定範囲を撮影機材で直接記録することは困難なため、従来は別途手作業で記録するにとどまっていた。
【0017】
この問題を解決するため、本発明ではビデオ撮影装置の位置情報と撮影対象物までの距離情報の両者を測定しておき、この両情報からレンズ特性を考慮して撮影画角範囲を定めるものとし、撮影時の撮影位置と撮影対象までの距離の測定値、あるいは求めた撮影画角範囲をビデオ撮影装置の記録チャンネルに記録することとした。
【0018】
一般にビデオ撮影装置では1秒間に30フレームの画像を取得している(インターレースの場合は、半分づつの解像度の画像を1秒間に60コマ取得)。
ビデオ撮影装置の位置情報などは個々の撮影画像フレームと対応した値が必要となるため、位置情報および撮影対象までの距離情報の測定は1秒間に30ないし60回のタイミング、あるいはそれ以上で実施する必要がある。
【0019】
こうして取得したデータを(望ましくはデジタルデータとして)、撮影フレームと対応したタイミングでビデオの記録チャンネル等に記録する。
記録チャンネルは専用のチャンネルが望ましいが、一般的な音声チャンネルや、同期可能な別のレコーダを活用することも可能である。
【0020】
一方、記録されたビデオ撮影装置と測定対象物までの距離を用いることにより、撮影画像の範囲を以下のように計算によって求めることが可能である。
例えば、ビデオ撮影装置の撮影画角が、距離1mで縦40cm、横60cmとなるレンズを用いた場合、画角は距離に比例して大きくなるので、距離2mでの、画角は、縦40cm×2m/1m=80cm、横60cm×2m/1m=120cmとなる。
この情報が高速に求められる場合には、本情報を上記のビデオ撮影装置の記録チャンネルに画像フレームと同期させて記録してもよい。
【0021】
また、トンネル構造物のように測定面が曲率を持つ場合、あるいはビデオ撮影装置が測定対称面に角度を持って撮影される場合には、画角の座標は必ずしも長方形とはならないが、このような場合に、画角の曲率や角度補正によって、撮影画像の四角の座標を求める必要がある。
撮影画像の画角四点の座標は、距離計を用いて画角の四角までの距離を測定し、その距離から求める。目標とした測定撮影画像と同期して記録されてもよいし、記録されたデータから後で計算されてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ビデオ撮影装置の位置およびビデオ撮影装置の位置と撮影対象物までの距離から求められる撮影している画角の座標を、撮影画像のフレームと同期させてビデオ撮影装置の記録チャンネルに記録することを可能としたので、マニュアルでの補正や多大な処理時間が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る画像検査方法に用いられる画像検査装置を示す説明図である。
【図2】図1の画像検査装置のブロック図である。
【図3】図1の画像検査装置による画像検査方法を示す説明図である。
【図4】図1の画像検査装置をトンネルによる画像検査方法を示す説明図である。 (a)トンネルの縦断面図である。(b)トンネルの側面図である。(c)ビデオ撮影装置の走査方向と画像検査装置の走行方向との関係を示す展開図である。
【図5】図1の画像検査装置をトンネルによる画像検査方法を示す説明図である。 (a)トンネルの縦断面図である。(b)トンネルの側面図である。
【図6】図1の画像検査装置をトンネルによる画像検査方法を示す説明図である。 (a)ビデオ撮影装置により撮影された1枚の画像の取込を示す説明図である。(b)(a)で取り込まれた画像を貼り付けた状態を示す展開図である。
【図7】図1の画像検査装置の画角を求める説明図である。
【図8】図1の画像検査装置の画角を求める説明図である。
【図9】本発明に係る画像検査方法を示す説明図である。
【図10】図9による記録データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1〜図3は、本発明に係る画像検査方法に用いられる画像検査装置を示す。
本実施形態に使用される画像検査装置1は、走行自在な車両2上に、ビデオ撮影装置3と、ビデオ撮影装置3を走査する走査装置4と、ビデオ撮影装置3と対象物との距離を検出する対象物距離検出器5と、ビデオ撮影装置3の位置を検出する位置検出器6と、車両の速度検出器7と、位置検出器6と速度検出器7とからの情報に基づいて車両2と走査装置4を制御する位置コントローラ8と、ビデオ撮影装置3からの情報を記録するビデオ記録装置9と、対象物距離検出器5、位置検出器6、速度検出器7および位置コントローラ8からの情報を記録する位置情報記録装置10と、ビデオ記録装置9と位置情報記録装置10とに連絡する画像キャプチャシステム11と、位置情報記録装置10に連絡する展開画像位置演算装置12と、画像キャプチャシステム11からの画像と展開画像位置演算装置12からの位置情報をマッピングするマッピング装置13とを搭載している。
【0025】
このように構成された画像検査装置1によれば、車両2を走行させながら走査装置4によりビデオ撮影装置3を走査し、測定対象面の画像を撮像し、ビデオ記録装置9に格納することができるとともに、撮影時のビデオ撮影装置3と測定対象面までの距離を対象物距離検出器5で検出し、位置情報記録装置10に記録し、撮影時のビデオ撮影装置3の位置を位置検出器6で検出し、位置情報記録装置10に記録し、車両2の速度を速度検出器7で検出し、位置情報記録装置10に記録することができる。
【0026】
従って、ビデオ記録装置9に記録された画像を画像キャプチャシステム11を操作してキャプチャするとともに、展開画像位置演算装置12を操作してその画像の位置情報を位置情報記録装置10中の位置情報から抽出し、画像キャプチャシステム11に該当する画像を指示し、画像マッピング装置13に位置情報を送出する。
これによって、画像マッピング装置13では、画像キャプチャシステム11からの画像に位置情報記録装置10中の位置情報を重ね合わせてマッピング処理を行う。
【0027】
次に、図4〜図6により、この画像検査装置1を用いたトンネル20の検査方法を説明する。
画像検査装置1は、トンネル20内に載置され、トンネル20の内壁20aをビデ撮影装置3により撮影し、表面劣化を検査する。ここで、ビデオ装置3は、図1の走査装置4により車両2に対して垂直方向に上下動するようにしてあるが、後述するように、検査装置であるビデオ撮影装置3は、走行自在な車両2上で、例えば、図4、図5に示すように、上下左右方向に動くことができるように構成されている。
【0028】
トンネル20の測定面は、曲率を持つており、下記のようにして計算によりビデオ撮影装置3の位置を求めることができる。
トンネル20の内壁20aの座標は、下記の(1)式として表される。
2+ z2 = (2.5)2 ………(1)
一方、ビデオ撮影装置3が撮影できる範囲を示す画角線zは、下記の(2)式として表される。
z = ay +1.0 ………(2)
ここで、中心部y=0のとき、画角が100×56cm(16:9)とすると、
a=5.277 (画角:21.461度)となる。
【0029】
ビデオ撮影装置3の走査位置を示す任意のYi の値に対し、画角線zは下記の(2)’として表される。
z = ±5.277(y−Yi ) +1.0 ………(2)’
(1)、(2)式の連立方程式を解くことにより、交点が求められる。すなわち、下記の(3)式および(4)式より中心部yを求めることができる。
[±5.277(y−Yi ) +1.0]2 + y2 = (2.5)2 … ……(3)
28.8457y2 +(−55.69134Yi+10.5338)y +(27.8457Yi2 −10.5538Yi−5.25)=0 ………(4)
【0030】
また、各yの値に対する、画角線zの値は求めた値を、(1)式、(2)式に代入することにより求められる。
一方、上記の値と走行方向(x方向)の値が得られれば、撮影時の画角は座標を基に、y=0の位置からの周長を求めることにより計算される。
また、トンネル20の内壁20aを展開した時の座標は、A点から求めた交点までの周長を求めることにより計算される。
【0031】
走行方向に関しては、ビデオ撮影装置3から内壁20aまでのz方向の距離に対して、撮影範囲が線形に比例して広がるので、標準画角幅を距離値に応じて補正すればよい。
一般のトンネル断面は半円でない場合もあるが、トンネルの幾何学的な断面形状とビデオ撮影装置の位置関係が明らかであれば、基本的には同様な数学的手法により計算することが可能である。
一方、撮影された全画像からマッピングに必要な特定の画像のみを利用するためには、ビデオ撮影装置3のx方向(横方向)およびy方向(横方向)の移動距離が、撮影画角のx、y方向の画角サイズを超えない範囲で1枚の画像を取り込めば良いことになる。
【0032】
よって、1枚目の画像の中心位置を(x1、y1)、画角をw:hとすると、マッピングに利用する2枚目の画像は、中心位置(x2、y2)がx2<x1+wまたはy2<y1+hの範囲で、最大の値となる位置の画像をキャプチャすればよい。
実際には記録された画像の位置情報(x2、y2)を呼び出し、x2>x1+wまたは、y2>y1+hとなった直前の画像を自動的にキャプチャし、全体のマッピング画像の(x2、y2)の位置に貼り付ければよい(図6)。
【0033】
同様な作業を走査範囲全域に渡って繰り返し、新しい画像をオーバーレイすることにより、全体像が得られる(図3参照)。
以上のように、測定された位置情報と測定対象面までの距離をもとに、検査対象の全体像を再合成するために必要な最低限の撮影フレームを算出することが可能であるので、より効率的な画像検査が可能となる。
【0034】
また、本実施形態によれば、ビデオを活用した画像診断システムにおいて、測定面の展開図のような合成画像を撮影終了後に合理的かつ簡易に得ることができる。
ビデオ撮影による診断において、撮影対象物の撮影範囲と位置情報を同時に測定し、この撮影範囲と位置情報を同時に記録することにより、ビデオから特定の画像のみを取り込み、測定対象とする大きな撮影範囲の画像を容易に再合成することができる。
【0035】
さて、本実施形態では、走行する車両2からビデオ撮影装置3でトンネル(コンクリート構造物)20の表面劣化を検査するシステムにおいて、ビデオ撮影装置3で撮影している範囲内の任意の位置情報(例えば、撮影範囲の中心点)をビデオ撮影装置3の走査装置4に取り付けた位置検出器6から求めるとともに、ビデオ撮影装置3で撮影しているフレーム毎の範囲を、ビデオ撮影装置3に取り付けたビデオ撮影装置3からトンネル20の内壁20a(撮影対象物)までの距離情報から求め、画像キャプチャシステム11において撮影画像フレームと同期させて記録することができる。
【0036】
そのために、図7に示すように、撮影画角の範囲は、ビデオ撮影装置3に取り付けた対象物距離検出器15により、撮影範囲の四隅の距離を測定することにより求められる。
測定対象物が平面の場合における撮影画角の範囲は、図8に示すように、ビデオ撮影装置3に取り付けたビデオ撮影装置3からトンネル20の内壁20a(撮影対象物)までの距離情報をもとに、レンズの持つ撮影距離と撮影範囲の関係から求められる。
【0037】
つまり、ビデオ撮影装置3が測定対象物に対し平行か、一定の角度で置かれており、測定対象物までの距離が、ビデオ撮影装置3の位置情報から自動的に定まる場合には、ビデオ撮影装置3の位置情報から撮影範囲を計算して求めることができる。
なお、撮影画角の範囲の値は、例えば、30×60cm〜100×200cm程度の範囲に入るものであればよい。
【0038】
ところで、ひび割れの点検システムにおいて、ビデオ画像情報からひび割れの分布図やトンネル壁面の展開写真が最終的なアウトプットになるが、ビデオ撮影装置3を走査移動させて撮影したビデオ画像から、マニュアルで任意の画像を取り出して全体を合成することは多大な労力と時間を費やすことになる。
本実施形態では、ビデオ撮影装置3の位置情報と、ビデオ撮影装置3からトンネル20の内壁20a(撮影対象物)までの距離(あるいは撮影画角の四隅までの距離)を測定し、この情報を画像と同期させて記録させておく。撮影したビデオ画像一コマ毎の撮影範囲の展開座標は、記録した位置情報から求めることができる。
【0039】
この座標情報に基づいて再構成するために必要最低限の画像フレームを選び、ビデオ撮影装置3から必要な画像フレームのみをキャプチャする。キャプチャした画像は撮影位置によって若干ひずんでいるが、展開座標位置が求められているので、この座標に情報に従って画像の大きさを調整し、座標位置にはめ込めば全体の展開画像の再構成が容易に行える。
【0040】
本実施形態により撮影画像からトンネル壁面の展開図の再構築が可能となる。ひび割れ抽出のために画像処理した画像についても展開座標を用いることにより、全体画像の再構成が容易になり、ひび割れ分布図の作成も可能となる(図9)。図10に再合成されたマッピング画像の一部を示す。
一方、本実施形態における画像検査装置1としては、例えば、図1に示すように、検査装置であるビデオ撮影装置3を走行自在な車両2上で、走行車両の速度と連動した設定条件で測定するとともに、走行速度に応じて任意の方向、パターンで走査できるようにしたものが適用できる。
【0041】
本実施形態では、トンネル20(コンクリート部材)の欠陥を診断する検査装置であるビデオ撮影装置3を、走行する車両2に搭載する際に、ビデオ撮影装置3を走行する車両2の速度と連動させて、走査移動させることにより、より正確で合理的な検査結果を得ようとするものである。
一般に、車両を一定速度に保って持続走行させることは、非常に困難である。特に、コンクリート構造物を検査する目的で、車両を走行させる場合、検査区間のみ、正確に速度を調整することは難しい。また、トンネル20のように連続区間が長い場合や、その区間内にカーブなどがある場合は、特にその傾向が強くなる。このため、一定時間間隔でデータを取り込む方式の測定器やビデオなどの画像検査装置を走行台車に搭載してコンクリート構造物を検査する場合、走行速度が遅くなると必要以上にデータ量が蓄積され、データ処理時に負担が大きくなる。また、走行速度が速い場合には測定機器の設定条件によっては、測定面を全てカバーしきれない場合が生ずる。
【0042】
このため、速度の変化があると、測定後、展開図のような測定結果の連続合成像を得ることが困難になる。
こうした問題を解決するために、本実施形態では、走行速度が遅くなった場合には、測定機器の測定間隔を長くするように調整し、また、逆に走行速度が早くなった場合には、測定機器の測定間隔を短くできるように調整可能なシステムとした。
【0043】
一方、コンクリート構造物の壁面やトンネル内壁の検査のように、比較的広い範囲を走行しながら検査するためには、ビデオ撮影装置3を車両2上で走査することにより、より広い検査範囲をカバーすることが望まれる。単純な往復運動を繰り返す走査装置4を車両2上に搭載した場合、走行する速度によって、走査領域が異なることになる。走査速度4に対して、走行速度が速いと、測定できない範囲が出ることになる。また、走行速度が遅くなると狭い範囲に対し、必要以上にデータを取ることとなり、データ処理時に負担が大きくなる。
【0044】
また、こうして取得した測定結果を合成してマップのような結果を得ようとする場合、各走行位置における測定結果の粗密が大きく、必要以上の結果を合成することになり、膨大な処理時間が必要となるばかりでなく、部分的に測定データが不足する範囲がでる可能性がある。
こうした問題を解決するためには、走行速度に応じて走査速度を調整する必要がある。走査速度と走行速度の間には以下の関係があり、この関係がある一定値以下になるように調整することにより、走行速度による乱れがない測定結果が得られることになる。
【0045】
Vs≧2・Vc(L−ly)/lx ………(5)
ここで、Vs:走査速度
Vc:走行速度
L:走査範囲
lx:測定装置の走行方向測定範囲の長さ
ly:測定装置の走査方向測定範囲の長さ
【0046】
また、さらに検査結果を合成して測定領域全体の展開図のような結果を得ようとする場合、単純な往復運動を行う走査装置では、合成する測定結果毎に、走行方向(x方向)および走査方向(y方向)の位置情報が異なることになるため、結果の合成に精度の高い補正と多大な処理時間が必要とされる。
この問題を解決するために、走査装置4を走行速度を相殺するような速度で、かつ特定のパターンで移動させることにより、検査結果を合成時に適した測定面での測定範囲の進行パターンを得ることが可能になる。
【0047】
本実施形態により、検査装置4を車両2に搭載してコンクリート構造物などを比較的広範囲にわたって検査する場合、車両2の速度の変動に拘わらず、測定範囲全般に対して、より合理的で正確なピッチで測定結果を得ることが可能となる。
その結果、測定範囲全般にわたって検査結果を合成して測定領域全体の展開図のような結果を得る場合、より合理的に測定結果が得られるので、精度の高い補正や多大な処理時間を必要とせず、測定結果を合成することが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 画像検査装置
2 車両
3 ビデオ撮影装置
4 走査装置
5 対象物距離検出器
6 位置検出器
7 速度検出器
8 位置コントローラ
9 ビデオ記録装置
10 位置情報記録装置
11 画像キャプチャシステム
12 展開画像位置演算装置
13 マッピング装置
15 対象物距離検出器
20 トンネル
20a 内壁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する車両からビデオ撮影装置でコンクリート構造物の表面劣化を検査する方法において、
前記ビデオ撮影装置の位置および前記ビデオ撮影装置の位置と撮影対象物までの距離から求められる撮影している画角の座標を、撮影画像のフレームと同期させて前記ビデオ撮影装置の記録チャンネルに記録する
ことを特徴とする画像検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の画像検査方法において、
前記位置情報は、前記車両に取り付けられた距離計または速度計で求められる
ことを特徴とする画像検査方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の画像検査方法において、
前記位置情報は、予め設置した基準点に対する距離を求めることで求められる
ことを特徴とする画像検査方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項記載の画像検査方法において、
前記ビデオ撮影装置は、前記車両の走行速度と連動して、測定時間間隔を任意に調整できるように前記車両に取り付けられている
ことを特徴とする画像検査方法。
【請求項5】
走行自在な車両に、
ビデオ撮影装置と、
前記ビデオ撮影装置を走査する走査装置と、
前記ビデオ撮影装置と対象物との距離を検出する対象物距離検出器と、
前記ビデオ撮影装置の位置を検出する位置検出器と、
前記車両の速度検出器と、
前記位置検出器と前記速度検出器とからの情報に基づいて前記車両と前記走査装置とを制御する位置コントローラと、
前記ビデオ撮影装置からの情報を記録するビデオ記録装置と、
前記対象物距離検出器、前記位置検出器、前記速度検出器および前記位置コントローラからの情報を記録する位置情報記録装置と
を搭載し、
前記車両を走行させながら前記走査装置により前記ビデオ撮影装置を走査し、測定対象面の画像を撮像し、前記ビデオ記録装置に格納し、撮影時の前記ビデオ撮影装置と測定対象面までの距離を前記対象物距離検出器で検出し、前記位置情報記録装置に記録し、撮影時の前記ビデオ撮影装置の位置を前記位置検出器で検出し、前記位置情報記録装置に記録し、前記車両の速度を前記速度検出器で検出し、前記位置情報記録装置に記録し、前記ビデオ撮影装置の位置と撮影対象物までの距離から求められる撮影している画角の座標を求めるように構成されている
ことを特徴とする画像検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−97639(P2011−97639A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6821(P2011−6821)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【分割の表示】特願2001−302649(P2001−302649)の分割
【原出願日】平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】