説明

画像表示装置、欠陥検出方法及び短絡事故の修復方法

【課題】本発明は、画像表示装置、欠陥検出方法及び短絡事故の修復方法に関し、例えば有機EL素子によるアクティブマトリックス型の画像表示装置に適用して、短絡事故の検出精度を従来に比して向上する。
【解決手段】本発明は、交差する部位を除いて、信号線DTL及び走査線DSLの配線パターンを同一層に作成するようにして、交差する部位の上層側及び下層側の配線パターンDSL及びDTLにそれぞれスリットSL1及び開口SL2を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、欠陥検出方法及び短絡事故の修復方法に関し、例えば有機EL(Electro Luminescence)素子によるアクティブマトリックス型の画像表示装置、この画像表示装置の製造工程に適用することができる。本発明は、交差する部位を除いて、信号線及び走査線の配線パターンを同一層に作成するようにして、交差する部位の上層側及び下層側の配線パターンにそれぞれスリット及び開口を作成することにより、短絡事故の検出精度を従来に比して向上することができるようにする。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子を用いたアクティブマトリックス型の画像表示装置の開発が盛んになっている。ここで有機EL素子を用いた画像表示装置は、電界の印加により発光する有機薄膜の発光現象を利用した画像表示装置である。有機EL素子は、10〔V〕以下の印加電圧で駆動することができる。従ってこの種の画像表示装置は、消費電力を低減することができる。また有機EL素子は、自発光素子である。従ってこの種の画像表示装置は、バックライト装置を必要とせず、軽量化、薄型化することができる。さらに有機EL素子は、応答速度が数μ秒程度と速い特徴がある。従ってこの種の画像表示装置は、動画像表示時に残像が殆ど発生しない特徴がある。
【0003】
具体的に、有機EL素子を用いたアクティブマトリックス型の画像表示装置は、有機EL素子と有機EL素子を駆動する駆動回路とによる画素回路をマトリックス状に配置して表示部が形成される。この種の画像表示装置は、表示部に設けられた信号線及び走査線をそれぞれ介して、表示部の周囲に配置した信号線駆動回路及び走査線駆動回路により各画素回路を駆動して所望の画像を表示する。
【0004】
この有機EL素子を用いた画像表示装置に関して、特開2007−310311号公報には、2つのトランジスタを用いて画素回路を構成する方法が開示されている。従ってこの特開2007−310311号公報に開示の方法によれば、画像表示装置の構成を簡略化することができる。またこの特開2007−310311号公報には、有機EL素子を駆動する駆動トランジスタのしきい値電圧のばらつき、移動度のばらつき、有機EL素子の特性の経時変化による画質劣化を防止する構成が開示されている。
【特許文献1】特開2007−310311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこの種の画像表示装置の製造工程は、例えばレーザービームを用いたトリミングにより短絡事故の発生した部位をリペアーし、歩留りを向上している。このような短絡事故の検出精度を従来に比して向上することができれば、歩留りを一段と向上することができると考えられる。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、短絡事故の検出精度を従来に比して向上することができる画像表示装置、欠陥検出方法、この欠陥検出方法を用いた短絡事故の修復方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため請求項1の発明は、画素回路をマトリックス状に配置して所望の画像を表示する画像表示装置に適用して、前記画素回路は、信号線及び走査線の配線パターンが交差する部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンが異なる層に作成され、前記信号線及び走査線の配線パターンが交差しない部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンが同一層に作成され、前記交差する部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンのうちの上層側の配線パターンに、前記信号線及び走査線の配線パターンのうちの下層側の配線パターンを横切る形状のスリットが形成され、前記下層側の配線パターンに開口が作成される。
【0008】
また請求項5の発明は、画素回路をマトリックス状に配置して所望の画像を表示する画像表示装置における欠陥検出方法に適用して、前記画素回路は、信号線及び走査線の配線パターンが交差する部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンが異なる層に作成され、前記信号線及び走査線の配線パターンが交差しない部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンが同一層に作成され、前記交差する部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンのうちの上層側の配線パターンに、前記信号線及び走査線の配線パターンのうちの下層側の配線パターンを横切る形状のスリットが形成され、前記下層側の配線パターンに開口が作成され、前記欠陥検出方法は、前記開口の有無を判定して、前記同一層に作成された前記信号線及び走査線の配線パターンの短絡事故を検出する欠陥検出のステップを有するようにする。
【0009】
また請求項6の発明は、画素回路をマトリックス状に配置して所望の画像を表示する画像表示装置における短絡事故の修復方法に適用して、前記画素回路は、信号線及び走査線の配線パターンが交差する部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンが異なる層に作成され、前記信号線及び走査線の配線パターンが交差しない部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンが同一層に作成され、前記交差する部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンのうちの上層側の配線パターンに、前記信号線及び走査線の配線パターンのうちの下層側の配線パターンを横切る形状のスリットが形成され、前記下層側の配線パターンに開口が作成され、前記短絡事故の修復方法は、前記開口の有無を判定して、前記同一層に作成された前記信号線及び走査線の配線パターンの短絡事故を検出する欠陥検出のステップと、前記欠陥検出のステップで、前記同一層に作成された前記信号線及び走査線の配線パターンの短絡事故が検出されると、前記スリットの両端からのトリミングにより前記上層側の配線パターンを部分的に切断するトリミングステップとを有するようにする。
【0010】
請求項1、請求項5、又は請求項6の構成により、信号線及び走査線の配線パターンが交差する部位では、信号線及び走査線の配線パターンを異なる層に作成し、信号線及び走査線の配線パターンが交差しない部位では、信号線及び走査線の配線パターンを同一層に作成すれば、信号線及び走査線の双方を同一層で配線し得ない部位でのみ、信号線及び走査線を異なる層により配置することができる。従ってこの同一層にシート抵抗の小さい配線パターン層を適用して、走査線及び信号線のインピーダンスを小さくすることができる。
【0011】
しかしながらこのようにすると、信号線及び走査線が同一層に形成されることになり、信号線及び走査線間で短絡事故が発生し易くなる。この短絡事故は、短絡事故を構成する異物、エッチング不良の部位等が信号線及び走査線の配線パターンから飛び出している場合は、簡易に検出することができる。しかしながらこれら異物等が信号線及び走査線の配線パターンと重なり合っている部位については、検出することが困難になる。また信号線と走査線とが交差する部位では、これら信号線及び走査線が積層されていることから、短絡事故を検出し得たとしても、トリミングにより短絡事故を修復することが困難になる。
【0012】
そこで請求項1の構成では、信号線及び走査線の配線パターンのうちの上層側の配線パターンに下層側の配線パターンを横切る形状のスリットを形成することにより、このスリットを使用して上層側の配線パターンを部分的に切断して短絡事故を修復できるようにする。また下層側の配線パターンに開口を作成し、この開口の有無の判定により、配線パターンの幅以下の大きさによる短絡事故についても検出できるようにし、短絡事故の検出精度を向上する。
【0013】
また請求項5の構成では、信号線及び走査線の配線パターンのうちの上層側の配線パターンに下層側の配線パターンを横切る形状のスリットを形成することにより、このスリットを使用して上層側の配線パターンを部分的に切断して短絡事故を修復できるようにする。また下層側の配線パターンに開口を作成し、この開口の有無の判定により、配線パターンの幅以下の大きさによる短絡事故についても検出できるようにし、短絡事故の検出精度を向上する。またこの開口の有無の判定により、向上した検出精度により短絡事故を検出する。
【0014】
また請求項6の構成では、さらに上層側の配線パターンに設けたスリットを利用して、検出した短絡事故を修復する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、短絡事故の検出精度を従来に比して向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施例を詳述する。
【実施例1】
【0017】
(1)実施例の構成
(1−1)全体構成(図2〜図13)
図2は、この実施例の画像表示装置を示すブロック図である。この画像表示装置1は、ガラス等の絶縁基板に表示部2が作成される。画像表示装置1は、この表示部2の周囲に信号線駆動回路3及び走査線駆動回路4が作成される。
【0018】
ここで表示部2は、画素回路(PXCL)5をマトリックス状に配置して形成される。信号線駆動回路3は、表示部2に設けられた信号線DTLに信号線用の駆動信号Ssigを出力する。より具体的に、信号線駆動回路3は、水平セレクタ(HSEL)3Aにより、ラスタ走査順に入力される画像データD1を順次ラッチして画像データD1を信号線DTLに振り分けた後、それぞれディジタルアナログ変換処理する。信号線駆動回路3は、このディジタルアナログ変換結果を処理して駆動信号Ssigを生成する。これにより画像表示装置1は、例えばいわゆる線順次により各画素回路5の階調を設定する。
【0019】
走査線駆動回路4は、表示部2に設けられた書込信号用の走査線WSL及び電源用の走査線DSLにそれぞれ書込信号WS及び駆動信号DSを出力する。ここで書込信号WSは、各画素回路5に設けられた書込トランジスタをオンオフ制御する信号である。また駆動信号DSは、各画素回路5に設けられた駆動トランジスタのドレイン電圧を制御する信号である。走査線駆動回路4は、それぞれライトスキャン回路(WSCN)4A及びドライブスキャン回路(DSCN)4Bにおいて、所定のサンプリングパルスSPをクロックCKで処理して書込信号WS及び駆動信号DSを生成する。
【0020】
図3は、画素回路5の構成を詳細に示す接続図である。図3との対比により図4に示すように、表示部2は、この図3に示す画素回路5をマトリックス状に配置して作成される。画素回路5は、有機EL素子8のカソードが所定の電源Vssに接続され、有機EL素子8のアノードが駆動トランジスタTr2のソースに接続される。なお駆動トランジスタTr2は、例えばTFTによるNチャンネル型トランジスタである。画素回路5は、この駆動トランジスタTr2のドレインが電源用の走査線DSLに接続され、この走査線DSLに走査線駆動回路4から電源用の駆動信号DSが供給される。これらにより画素回路5は、ソースフォロワ回路構成の駆動トランジスタTr2を用いて有機EL素子8を電流駆動する。
【0021】
画素回路5は、この駆動トランジスタTr2のゲート及びソース間に保持容量Csが設けられ、書込信号WSによりこの保持容量Csのゲート側端電圧が駆動信号Ssigの電圧に設定される。その結果、画素回路5は、駆動信号Ssigに応じたゲートソース間電圧Vgsにより駆動トランジスタTr2で有機EL素子8を電流駆動する。なおここでこの図3において、容量Celは、有機EL素子8の浮遊容量である。また以下において、容量Celは、保持容量Csに比して十分に容量が大きいものとし、駆動トランジスタTr2のゲートノードの寄生容量は、保持容量Csに対して十分に小さいものとする。
【0022】
すなわち画素回路5は、書込信号WSによりオンオフ動作する書込トランジスタTr1を介して、駆動トランジスタTr2のゲートが信号線DTLに接続される。なおここで書込トランジスタTr1は、例えばTFTによるNチャンネル型トランジスタである。ここで信号線駆動回路3は、階調設定用電圧Vsig及びしきい値電圧の補正用電圧Voを所定のタイミングで切り換えて駆動信号Ssigを出力する。ここでしきい値電圧補正用の固定電圧Voは、駆動トランジスタTr2のしきい値電圧のばらつき補正に使用する固定電圧である。また階調設定用電圧Vsigは、有機EL素子8の発光輝度を指示する電圧であり、階調電圧Vinにしきい値電圧補正用の固定電圧Voを加算した電圧である。また階調電圧Vinは、有機EL素子8の発光輝度に対応する電圧である。階調電圧Vinは、水平セレクタ(HSEL)3Aにおいて、ラスタ走査順に入力される画像データD1を順次ラッチして各信号線DTLに振り分けた後、それぞれディジタルアナログ変換処理して信号線DTL毎に生成される。
【0023】
画素回路5は、図5に示すように、有機EL素子8を発光させる発光期間の間、書込信号WSにより書込トランジスタTr1がオフ状態に設定される(図5(A))。また画素回路5は、発光期間の間、電源用の駆動信号DSによって駆動トランジスタTr2に電源電圧VccHが供給される(図5(B))。これにより画素回路5は、図6に示すように、発光期間の間、保持容量Csの端子間電圧である駆動トランジスタTr2のゲートソース間電圧Vgs(図5(D)及び(E))に応じた駆動電流Idsで有機EL素子8を発光させる。
【0024】
画素回路5は、発光期間が終了する時点t0で、電源用の駆動信号DSが所定の固定電圧VccLに立ち下げられる(図5(B))。ここでこの固定電圧VccLは、駆動トランジスタTr2のドレインをソースとして機能させるのに十分に低い電圧であって、かつ有機EL素子8のカソード電圧Vssより低い電圧である。
【0025】
これにより画素回路5は、図7に示すように、駆動トランジスタTr2を介して、保持容量Csの有機EL素子8側端の蓄積電荷が走査線DSLに流出する。その結果、画素回路5は、駆動トランジスタTr2のソース電圧Vsが電圧VccLに立ち下がり(図5(E))、有機EL素子8が発光を停止する。また画素回路5は、このソース電圧Vsの立ち下がりに連動して、駆動トランジスタTr2のゲート電圧Vgが低下する(図5(D))。
【0026】
画素回路5は、続く所定の時点t1で、書込信号WSにより書込トランジスタTr1がオン状態に切り換えられ(図5(A))、駆動トランジスタTr2のゲート電圧Vgが信号線DTLに設定されたしきい値電圧補正用の固定電圧Voに設定される(図5(C)及び(D))。これにより画素回路5は、図8に示すように、駆動トランジスタTr2のゲートソース間電圧Vgsが電圧Vo−VccLに設定される。ここで画素回路5は、電圧Vo、VccLの設定により、この電圧Vo−VccLが駆動トランジスタTr2のしきい値電圧Vthより大きな電圧に設定される。
【0027】
その後、画素回路5は、時点t2で駆動信号DSにより駆動トランジスタTr2のドレイン電圧が電源電圧VccHに立ち上げられる(図5(B))。これにより画素回路5は、駆動トランジスタTr2を介して保持容量Csの有機EL素子8側端に電源VccHから充電電流Idsが流入する。その結果、画素回路5は、保持容量Csの有機EL素子8側端の電圧Vsが徐々に上昇する。なおこの場合、画素回路5において、駆動トランジスタTr2を介して有機EL素子8に流入する電流Idsは、有機EL素子8の容量Celと保持容量Csの充電にのみ使用され、その結果、有機EL素子8を発光させることなく、単に駆動トランジスタTr2のソース電圧Vsのみが上昇することになる。
【0028】
ここで画素回路5は、保持容量Csの端子間電圧が駆動トランジスタTr2のしきい値電圧Vthとなると、駆動トランジスタTr2を介した充電電流Idsの流入が停止することになる。従ってこの場合、この駆動トランジスタTr2のソース電圧Vsの上昇は、保持容量Csの両端電位差が駆動トランジスタTr2のしきい値電圧Vthとなると、停止することになる。これにより画素回路5は、駆動トランジスタTr2を介して保持容量Csの端子間電圧を放電させ、図9に示すように、保持容量Csの端子間電圧を駆動トランジスタTr2のしきい値電圧Vthに設定する。
【0029】
画素回路5は、保持容量Csの端子間電圧を駆動トランジスタTr2のしきい値電圧Vthに設定するのに十分な時間が経過して時点t3になると、図10に示すように、書込信号WSにより書込トランジスタTr1がオフ状態に切り換えられる(図5(A))。続いて図11に示すように、信号線DTLの電圧が階調設定用電圧Vsig(=Vin+Vo)に設定される。
【0030】
画素回路5は、続く時点t4で書込トランジスタTr1がオン状態に設定される(図5(A))。これにより画素回路5は、図12に示すように、駆動トランジスタTr2のゲート電圧Vgが階調設定用電圧Vsigに設定され、駆動トランジスタTr2のゲートソース間電圧Vgsは、階調電圧Vinに駆動トランジスタTr2のしきい値電圧Vthを加算した電圧に設定される。これにより画素回路5は、駆動トランジスタTr2のしきい値電圧Vthのばらつきを有効に回避して有機EL素子8を駆動することができ、有機EL素子8の発光輝度のばらつきによる画質劣化を防止することができる。
【0031】
画素回路5は、この駆動トランジスタTr2のゲート電圧Vgを階調設定用電圧Vsigに設定する際に、駆動トランジスタTr2のドレイン電圧を電源電圧VccHに保持した状態で、一定期間の間、駆動トランジスタTr2のゲートが信号線DTLに接続される。これにより画素回路5は、併せて駆動トランジスタTr2の移動度μのばらつきが補正される。
【0032】
すなわち保持容量Csの端子間電圧を駆動トランジスタTr2のしきい値電圧Vthに設定した状態で、書込トランジスタTr1をオン状態に設定して駆動トランジスタTr2のゲートを信号線DTLに接続した場合、駆動トランジスタTr2のゲート電圧Vgは、固定電圧Voから徐々に上昇して階調設定用電圧Vsigに設定される。
【0033】
ここで画素回路5は、この駆動トランジスタTr2のゲート電圧Vgの立ち上がりに要する書込時定数が、駆動トランジスタTr2によるソース電圧Vsの立ち上がりに要する時定数に比して短くなるように設定される。
【0034】
この場合、書込トランジスタTr1がオン動作すると、駆動トランジスタTr2のゲート電圧Vgは、速やかに階調設定用電圧Vsig(Vo+Vin)に立ち上がることになる。このゲート電圧Vgの立ち上がり時、有機EL素子8の容量Celが保持容量Csに比して十分に大きければ、駆動トランジスタTr2のソース電圧Vsは変動しないことになる。
【0035】
しかしながら駆動トランジスタTr2のゲートソース間電圧Vgsがしきい値電圧Vthより増大すると、駆動トランジスタTr2を介して電源VccHから電流Idsが流入し、駆動トランジスタTr2のソース電圧Vsが徐々に上昇することになる。その結果、画素回路5は、保持容量Csの端子間電圧が駆動トランジスタTr2により放電し、ゲートソース間電圧Vgsの上昇速度が低下することになる。
【0036】
この端子間電圧の放電速度は、駆動トランジスタTr2の能力に応じて変化する。より具体的には、駆動トランジスタTr2の移動度μが大きい場合程、放電速度は、早くなる。
【0037】
その結果、画素回路5は、移動度μが大きい駆動トランジスタTr2程、保持容量Csの端子間電圧が低下するように設定され、移動度のばらつきによる発光輝度のばらつきが補正される。なおこの移動度μの補正に係る端子間電圧の低下分を図5、図12及び図13ではΔVで示す。
【0038】
画素回路5は、この移動度の補正期間が経過すると、時点t5で書込信号WSが立ち下げられる。その結果、画素回路5は、発光期間が開始し、図13に示すように、保持容量Csの端子間電圧に応じた駆動電流Idsにより有機EL素子8を発光させる。なお画素回路5は、発光期間が開始すると、いわゆるブートストラップ回路により駆動トランジスタTr2のゲート電圧Vg及びソース電圧Vsが上昇する。図13におけるVelは、この上昇分の電圧である。
【0039】
これらにより画素回路5は、時点t0から時点t1までの駆動トランジスタTr2のゲート電圧を電圧VccLに立ち下げている期間で、駆動トランジスタTr2のしきい値電圧を補正する処理の準備を実行する。また続く時点t2から時点t3までの期間で、保持容量Csの端子間電圧を駆動トランジスタTr2のしきい値電圧Vthに設定して、駆動トランジスタTr2のしきい値電圧を補正する。また時点t4から時点t5までの期間で、駆動トランジスタTr2の移動度を補正すると共に、階調設定用電圧Vsigをサンプリングする。
【0040】
(1−2)画素回路のレイアウト(図1)
図1は、画素回路5における配線パターンのレイアウトを示す平面図である。この画像表示装置1は、この図1に示すレイアウトによる画素回路5が繰り返し配置されて表示部2が作成される。なおこの図1は、有機EL素子8のアノード電極から上層の部材を除去して基板側を見て示す平面図である。この図1では、各層の配線パターンをそれぞれハッチングの相違により示す。またこの図1においては、円形の印により層間のコンタクトを示す。またこの円形の印の内側にコンタクト先の配線パターンに割り当てたハッチングを設け、層間の接続関係を示す。
【0041】
画素回路5は、例えばガラスによる絶縁基板上に配線パターン材料層を堆積した後、この配線パターン材料層をエッチング処理して第1配線が作成される。画素回路5は、続いてゲート酸化膜が作成された後、ポリシリコン膜による中間配線層が作成される。
【0042】
画素回路5は、ほぼ中央の領域において、これら第1配線及び中間配線層が局所的に対向するように作成され、この局所的に対向する部位により保持容量Csが作成される。画素回路5は、続いてチャンネル保護層等が作成された後、不純物のドープにより書込トランジスタTr1及び駆動トランジスタTr2が作成される。
【0043】
画素回路5は、続いて配線パターン材料層を堆積した後、この配線パターン材料層をエッチング処理して第2配線が作成される。
【0044】
画素回路5は、続いて欠陥検出の処理が実行され、続いて欠陥箇所が修復される。また画素回路5は、続いて所定膜厚により平坦化膜が作成された後、有機EL素子8のアノード電極が作成される。その後、画素回路5は、有機EL素子8の材料膜、カソード電極、保護膜が順次作成された後、封止用の透明基板が配置されて作成される。
【0045】
この実施例において、画素回路5は、上下方向に延長する信号線DTLが、画素回路5の左端側に作成される。また画素回路5は、水平方向に延長する電源用の走査線DSL及び書込信号用の走査線WSLがそれぞれ画素回路5の上下に作成される。
【0046】
ここでこの種の画像表示装置1では、第2配線の抵抗値が第1配線に比して格段に小さい特徴がある。具体的に第1配線は、第2配線に対してシート抵抗値が50倍程度である。またこの実施例の画像表示装置1では、信号線DTL、走査線DSL、WSLのインピーダンスを低くする必要があり、特に電源用の走査線DSLは、インピーダンスを小さくする必要がある。
【0047】
そこで画素回路5は、第2配線により電源用の走査線DSL及び書込信号用の走査線WSLが作成される。また電源用の走査線DSLが書込信号用の走査線WSLに比して幅広に作成される。また画素回路5は、可能な限り第2配線により信号線DTLが作成される。具体的に、画素回路5は、走査線DSL及びWSLと交差する部位に限って、第1配線により信号線DTLが作成され、残りの信号線DTLが第2配線により作成される。またその結果、信号線DTLは、走査線DSL及びWSLと交差する部位を間に挟んで、第1配線及び第2配線を接続するコンタクトがそれぞれ設けられる。
【0048】
また画素回路5は、信号線DTLと電源用の走査線DSLとが交差する部位の上層側の配線パターンに、下層側の配線パターンを横切る形状のスリットSL1が形成される。より具体的に、画素回路5は、信号線DTLと電源用の走査線DSLとが交差する部位の電源用の走査線DSLに、信号線DTLを横切る形状のスリットSL1が設けられる。画素回路5は、電源用の走査線DSLの上下端部に、それぞれスリットSL1が設けられる。ここでスリットSL1は、レーザービームを用いたトリミングに充分なように、両端が信号線DTLの両側端部より飛び出すように作成される。なおここでスリットSL1は、レーザービームを用いたトリミングに好適なように、両端を幅広に作成するようにしてもよい。
【0049】
また画素回路5は、これら信号線DTL及び電源用の走査線DSLの下層側の配線パターンに開口が作成される。この実施例では、この開口に、信号線DTL及び走査線DSLが交差する部位から下層側の配線パターンに沿って延長するスリットSL2が適用される。従って画素回路5は、信号線DTLの第2配線の電源用の走査線DSL側端と、電源用の走査線DSLとの間、信号線DTLの第1配線にスリットSL2が設けられる。ここでこのスリットSL2は、信号線DTLの線幅をほぼ2等分するように、信号線DTLの中央に作成される。
【0050】
(1−3)欠陥検出処理及び修復処理(図14〜図20)
ここでこの実施例の画像表示装置1の製造工程では、欠陥検出処理により配線パターン間の短絡事故を検出する。また続く修復処理において、検出された短絡事故を修復する。
【0051】
ここでこの製造工程は、表示部2に設けられた各画素回路5を順次撮像手段により撮像し、その撮像結果を画像解析して欠陥を検出する。より具体的に、この製造工程は、所定の判定基準用の撮像結果と、各画素回路5を撮像して得られる撮像結果とを比較し、信号線DTLに作成したスリットSL1の有無、スリットSL1の形状の異常等を検出して短絡事故を検出する。
【0052】
ここで図14は、落射光で画素回路5を撮像した撮像結果を示す平面図である。この図14では、高輝度部分を白色により示し、低輝度部分を黒色により示す。ここで第1配線、第2配線、中間配線は、反射率が大きい。従って落射光で画素回路5を撮影した場合、信号線DTL、走査線DSL、WSL等は、高い輝度で撮影される。これに対してこれら第1配線、第2配線、中間配線が設けられていない箇所は、透過光量が大きくなる。従って第1配線、第2配線、中間配線が設けられていない箇所は、落射光で撮影した場合、低い輝度で撮影される。従って何ら短絡事故が発生していない場合の撮像結果は、図14に示すように、スリットSL1、SL2、信号線DTL、走査線DSL、WSLを見て取ることができる。
【0053】
これに対して短絡事故を発生させるエッチング不良、異物等は、第1配線、第2配線、中間配線と同様に、反射率が大きい。これにより図1及び図14との対比により図15において符号Aにより示すように、短絡事故を生じる恐れのあるエッチング不良が発生している場合、又は異物が付着している場合、該当箇所が高い輝度で撮影されることになる。これによりこの実施例では、図14に示す何ら短絡事故が発生していない場合の撮像結果を事前に取得して判定基準用の撮像結果に設定する。またこの判定基準用の撮像結果との比較により、エッチング不良、異物の付着を検出する。またこの検出結果から短絡事故を検出する。
【0054】
より具体的に、この製造工程では、図16において符号Bにより示すように、例えば信号線DTL以外の部位で、隣接する画素回路5の書込信号用の走査線WSLと、当該画素回路5の電源用の走査線DSLとの間の隙間が部分的に高い輝度で撮影され、この高い輝度で撮影された部位で走査線WSL及びDSLが接続されている場合、当該部位において、走査線WSL及びDSL間で短絡事故が発生していると判定する。
【0055】
また図16において符号Cにより示すように、信号線DTLの部位で、隣接する画素回路5の書込信号用の走査線WSLと、当該画素回路5の電源用の走査線DSLとの間の隙間が部分的に高い輝度で撮影され、この部分的に高い輝度で撮影されている部位が信号線DTLの幅より大きい場合、当該部位において、走査線WSL及びDSL間で短絡事故が発生していると判定する。
【0056】
これに対して図15(B)に示すように、スリットSL2を検出できない場合、さらにはスリットSL2が変形して撮影される場合、図15(A)において符号Aにより示すように、スリットSL2の部位にエッチング不良が発生し、さらには異物が付着していることになる。従ってこの場合、当該スリットSL2の部位において、信号線DTL及び走査線DSL間で短絡事故が発生していると判定する。
【0057】
このようにして短絡事故を検出すると、この製造工程では、短絡事故が発生した部位に応じて修復処理を実行する。
【0058】
すなわち図16において符号Bにより示したように、隣接する画素回路5の書込信号用の走査線WSLと、当該画素回路5の電源用の走査線DSLとの間の短絡事故が、信号線DTLの部位以外で検出された場合、図17において符号Bにより示すように、短絡した部位をレーザービームの照射によりトリミングし、短絡事故を修復する。
【0059】
これに対して図16において符号Cにより示したように、信号線DTLの部位で、隣接する画素回路5の書込信号用の走査線WSLと、当該画素回路5の電源用の走査線DSLとの間で短絡事故が検出された場合、図17において符号Cにより示すように、スリットSL1を利用して短絡した部位を電源用の走査線DSLから切り離し、短絡事故を修復する。
【0060】
これに対して図15により示すように、スリットSL2の部位において、信号線DTL及び走査線DSL間で短絡事故が発生している場合、同様に、図17において符号Aにより示すように、スリットSL1を利用して短絡した部位を電源用の走査線DSLから切り離し、短絡事故を修復する。
【0061】
(2)実施例の動作(図1〜図17)
以上の構成において、この画像表示装置1では、信号線駆動回路3において、順次入力される画像データD1が表示部2の信号線DTLに振り分けられた後(図2及び図3)、ディジタルアナログ変換処理される。これにより画像表示装置1では、信号線DTLに接続された各画素回路の階調を指示する階調電圧Vinが信号線DTL毎に作成される。画像表示装置1では、走査線駆動回路4による表示部の駆動により、表示部2を構成する各画素回路5に例えば線順次によりこの階調電圧Vinが設定される。また各画素回路5では、この階調電圧Vinに応じた駆動トランジスタTr2による駆動によりそれぞれ有機EL素子8が発光する(図4)。これにより画像表示装置1では、画像データD1に応じた画像を表示部2で表示することができる。
【0062】
より具体的に、画素回路5においては、ソースフォロワ回路構成の駆動トランジスタTr2により有機EL素子8が電流駆動される。画素回路5においては、この駆動トランジスタTr2のゲート、ソース間に設けられた保持容量Csのゲート側端の電圧が階調電圧Vinに応じた電圧Vsigに設定される。これにより画像表示装置1では、画像データD1に応じた発光輝度により有機EL素子8を発光させて所望の画像を表示する。
【0063】
しかしながらこれら画素回路5に適用される駆動トランジスタTr2は、しきい値電圧Vthのばらつきが大きい欠点がある。その結果、画像表示装置1では、単に保持容量Csのゲート側端電圧を階調電圧Vinに応じた電圧Vsigに設定したのでは、駆動トランジスタTr2のしきい値電圧Vthのばらつきにより有機EL素子8の発光輝度がばらつき、画質が劣化する。
【0064】
そこで画像表示装置1では、事前に、駆動信号DS及び書込信号WSによる駆動トランジスタTr2の制御等により、保持容量Csの端子間電圧が駆動トランジスタTr2のしきい値電圧Vthに設定される(図4〜図7)。その後、画像表示装置1では、保持容量Csの端子電圧が階調設定用電圧Vsig(Vin+Vo)に設定される(図11)。これにより画像表示装置1では、駆動トランジスタTr2のしきい値電圧Vthのばらつきによる画質劣化を防止することができる。また一定時間の間、駆動トランジスタTr2に電源を供給した状態で、駆動トランジスタTr2のゲート電圧を階調設定用電圧Vsigに保持することにより、駆動トランジスタTr2の移動度のばらつきによる画質劣化を防止することができる。
【0065】
これにより画像表示装置1は、例えば線順次による各画素回路5の階調を設定する際に、書込信号WSにより精度良く書込トランジスタTr1をオンオフ制御することが必要になる。また有機EL素子8の駆動電流が電源用の走査線DSLを介して供給されることから、この走査線DSLにおける電圧降下を充分に小さくする必要がある。これらにより画像表示装置1では、走査線DSL、WSLのインピーダンスを充分に小さくすることが必要になる。また信号線DTLについても、充分にインピーダンスを小さくすることが必要になる。
【0066】
これにより画像表示装置1では、層間絶縁膜等を間に挟んだ第1配線、中間配線、第2配線の積層により、画素回路5が作成される(図1)。またこれら第1配線、中間配線、第2配線のうちで、第2配線が最も抵抗値が低いことにより、書込信号WSの走査線WSL、電源用の走査線DSLが第2配線により作成される。また電源用の走査線DSLが書込信号WSの走査線WSLに比して幅広に作成される。これにより走査線WSL、電源用の走査線DSLについて、充分にインピーダンスを低減することができる。
【0067】
また信号線DTLは、走査線DSL、走査線WSLと交差する部位のみ、第1配線により配線するようにして、走査線DSL、走査線WSLと交差しない部位が第2配線により作成される。またさらに信号線DTLは、走査線WSLと交差する部位を間に挟んで、第1配線及び第2配線を接続するコンタクトが設けられる。これにより信号線DTLについても、充分にインピーダンスを低減することができる。
【0068】
ここで画像表示装置1では、高解像度化により画素回路5を高密度に配置することが必要になる。その結果、高解像度化により同一層に設けられた配線パターン間で、短絡事故が発生し易くなる。またこの実施例のように、信号線DTLを第1配線と第2配線とで配線する場合、第1配線の長さを短くすればする程、信号線DTLのインピーダンスを低下することができる。従って信号線DTLのインピーダンスの低下を目的に、第1配線の長さを短くすると、これによっても短絡事故が発生し易くなる。
【0069】
そこでこの画像表示装置1では、画素回路5を撮像し、撮像結果の画像解析により短絡事故が検出される。またこの検出結果に基づいて、レーザービームを用いたトリミング処理である修復処理により短絡事故が修復される。
【0070】
ここで図16において符号B及びCにより示すように、短絡事故を発生させるエッチング不良、異物の付着は、配線パターンと同一に撮影される。従って、図16において符号Bにより示すように、何ら配線パターンが積層されていない部位におけるエッチング不良、異物の付着にあっては、何ら配線パターンに工夫しない場合でも、簡易に検出することができ、これらによる短絡事故を簡易に検出することができる。
【0071】
しかしながら何ら配線パターンに工夫しない場合、第1配線の配線パターンと、エッチング不良の部位、付着した異物が重なり合っている場合には、図16において符号Cにより示すように、これらエッチング不良の部位、付着した異物が大きい場合しか短絡事故を検出することができなくなる。
【0072】
すなわち図18(A)は、信号線DTLにスリットSL2を設けない場合の画素回路のレイアウトを図1との対比により示す平面図である。また図18(B)は、図14との対比によりこの図18(A)に示す画素回路の撮像結果を示す平面図である。この図18に示す構成では、図19(A)において符号Dにより示すように、信号線DTLの線幅より大きい異物が付着した場合、さらにエッチング不良が信号線DTLの線幅より大きい場合、図19(B)に示すように、これら異物、エッチング不良が撮像結果より検出されることになる。従って短絡している部位がある程度大きい場合、短絡事故を検出することができる。
【0073】
しかしながらこれら異物、エッチング不良の部位が小さく、信号線DTLよりはみ出していない場合、撮像結果より短絡箇所を検出することが困難になる。その結果、この図18の例では、図15において符号Aにより示すような小さな短絡事故を検出できないことになる。
【0074】
そこでこの実施例では、信号線DTLにスリットSL2による開口が設けられ、この開口の有無、形状の変形により、信号線DTLと重なり合う部位における異物の付着、エッチング不良の部位が検出される。すなわちこの実施例のように、信号線DTLにスリットSL2を設ける場合には、何らスリットSL2を設けない場合には検出困難な大きさの異物が付着している場合、エッチング不良が発生している場合でも、これらを検出することができる。従って短絡事故の検出精度を向上することができる。
【0075】
すなわち図15に示す例では、スリットSL2を遮る程度の大きさの異物の付着、エッチング不良を検出することができる。またこれら異物の付着、エッチング不良の部位が、スリットを作成して残る信号線DTLの配線パターンと重なり合っている場合でも、図19について上述した場合の、約1/2の大きさの短絡事故を検出することができる。これによりこの実施例では、従来に比して格段的に短絡事故の検出精度を向上することができる。
【0076】
これによりこの実施例では、この欠陥検出結果に基づいてレーザートリミングにより欠陥事故を修復する。しかしながら図16及び図17において符号Bにより示すように、他の配線パターンと積層されていない部位では、短絡事故の発生した部位をトリミングにより切断して簡易かつ確実に短絡事故を修復することができる。
【0077】
しかしながら図16及び図17において符号Cにより示すように、また図15において符号Aにより示すように、配線パターンが積層されている部位については、レーザートリミングにより他の配線パターンまでも切断することになる。従ってこの場合には、短絡事故を修復することが困難になる。そこでこの実施例では、電源用の走査線DSLに、スリットSL1が作成され、このスリットSL1を用いて短絡事故が発生した箇所を走査線DSLより切り離して短絡事故が修復される。これにより信号線DTL及び走査線DSLが交差する場合にあって、交差する部位で短絡事故が発生した場合でも、この短絡事故を修復して歩留りを向上することができる。
【0078】
(3)実施例の効果
以上の構成によれば、交差する部位を除いて、信号線及び走査線の配線パターンを同一層に作成するようにして、交差する部位の上層側及び下層側の配線パターンにそれぞれスリット及び開口を作成することにより、短絡事故の検出精度を従来に比して向上することができる。
【0079】
またこの開口が、交差する部位から下層側の配線パターンに沿って延長するスリットであることにより、信号線DTLのインピーダンスの増大を極力低減して短絡事故の検出精度を従来に比して向上することができる。
【0080】
また電源用の走査線にスリットを作成することにより、電源用の走査線と信号線との間の短絡事故、電源用の走査線と書込信号用の走査線との間の短絡事故を確実に修復することができる。
【実施例2】
【0081】
なお上述の実施例においては、電源用の走査線と信号線との短絡事故の検出用に、信号線に開口を設ける場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図20に示すように、走査線WSL及びDSL間の短絡事故の検出用に、これら走査線WSL及びDSL間の信号線DTLにスリットSL3による開口を設けてもよく、さらには走査線WSLと信号線DTLとの短絡事故の検出用に、信号線DTLにスリットSL4による開口を設けるようにしてもよい。
【0082】
また上述の実施例においては、スリットによる開口により信号線DTLを幅方向に2等分する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、スリットによる開口を2個以上設け、信号線DTLを幅方向に3等分以上に分割してもよい。
【0083】
また上述の実施例においては、スリットにより開口を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば矩形形状により開口を作成して配置する場合等、必要に応じて種々の形状により開口を作成して上述の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0084】
また上述の実施例においては、落射光により欠陥検出する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、透過光により欠陥検出する場合等にも広く適用することができる。
【0085】
また上述の実施例においては、第1配線に比して第2配線の抵抗値が低いことにより、第2配線を優先的に使用して信号線及び走査線を配置する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば第2配線に比して第1配線の抵抗値が低い場合には、第1配線を優先的に使用して信号線及び走査線を配置するようにしてもよく、この場合にも広く適用することができる。
【0086】
また上述の実施例においては、図3について上述した画素回路により画像表示装置を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、種々の画素回路により画像表示装置を構成する場合に広く適用することができる。
【0087】
具体的に、例えば、上述の実施例においては、駆動トランジスタのドレイン電圧の立ち下げにより、保持容量の有機EL素子側端電圧を立ち下げ、これにより保持容量の端子間電圧を駆動トランジスタのしきい値電圧以上の電圧に設定する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば別途、スイッチイングトランジスタを介して保持容量の有機EL素子側端を所定の固定電圧に接続し、これにより保持容量の端子間電圧を駆動トランジスタのしきい値電圧以上の電圧に設定する場合等にも広く適用することができる。
【0088】
またさらに例えば上述の実施例においては、信号線を介して駆動トランジスタのゲート電圧をしきい値電圧補正用の固定電圧に設定することにより、保持容量の端子間電圧を駆動トランジスタのしきい値電圧以上の電圧に設定する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば別途、スイッチイングトランジスタを介して駆動トランジスタのゲート電圧を固定電圧に設定し、これにより保持容量の端子間電圧を駆動トランジスタのしきい値電圧以上の電圧に設定する場合等にも広く適用することができる。
【0089】
また上述の実施例においては、本発明を有機EL素子による自発光素子の画像表示装置に適用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、各種の自発光素子による画像表示装置、さらには液晶等による画像表示装置に広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、例えば有機EL素子によるアクティブマトリックス型の画像表示装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施例1の画像表示装置に適用される画素回路のレイアウトを示す平面図である。
【図2】本発明の実施例1の画像表示装置を示すブロック図である。
【図3】図2の画像表示装置に適用される画素回路の構成を詳細に示す接続図である。
【図4】図3との対比により図2の表示部を示す接続図である。
【図5】図3の画素回路の動作の説明に供するタイムチャートである。
【図6】図5のタイムチャートの説明に供する接続図である。
【図7】図6の続きの説明に供する接続図である。
【図8】図7の続きの説明に供する接続図である。
【図9】図8の続きの説明に供する接続図である。
【図10】図9の続きの説明に供する接続図である。
【図11】図10の続きの説明に供する接続図である。
【図12】図11の続きの説明に供する接続図である。
【図13】図12の続きの説明に供する接続図である。
【図14】図1の画素回路の撮像結果を示す平面図である。
【図15】図1の画素回路における短絡事故の説明に供する平面図である。
【図16】図15とは異なる例による短絡事故の説明に供する平面図である。
【図17】短絡事故の修復の説明に供する平面図である。
【図18】開口を設けない場合の画素回路の説明に供する平面図である。
【図19】図18の例の場合の短絡事故の説明に供する平面図である。
【図20】本発明の他の実施例の画像表示装置に適用される画素回路のレイアウトを示す平面図である。
【符号の説明】
【0092】
1……画像表示装置、2……表示部、3……信号線駆動回路、4……走査線駆動回路、5……画素回路、Cs……保持容量、DTL……信号線、DSL、WSL……走査線、Tr1、Tr2……駆動トランジスタ、SL1〜SL5……スリット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素回路をマトリックス状に配置して所望の画像を表示する画像表示装置において、
前記画素回路は、
信号線及び走査線の配線パターンが交差する部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンが異なる層に作成され、
前記信号線及び走査線の配線パターンが交差しない部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンが同一層に作成され、
前記交差する部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンのうちの上層側の配線パターンに、前記信号線及び走査線の配線パターンのうちの下層側の配線パターンを横切る形状のスリットが形成され、
前記下層側の配線パターンに開口が作成された
画像表示装置。
【請求項2】
前記開口が、前記交差する部位から前記下層側の配線パターンに沿って延長するスリットである
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記走査線が、前記画素回路に電源を供給する電源用の走査線である
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記画素回路は、
自発光素子と、
前記電源用の走査線により供給される電源により前記自発光素子を駆動する駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲートソース間電圧を保持する保持容量と、
書込信号用の走査線を介して入力される書込信号により前記信号線を前記保持容量に接続する書込トランジスタであり、
前記保持容量の端子間電圧を前記駆動トランジスタのしきい値電圧に設定した後、
前記保持容量の端子電圧を前記書込トランジスタにより前記信号線の電圧に設定して前記自発光素子の発光輝度を設定する
請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
画素回路をマトリックス状に配置して所望の画像を表示する画像表示装置における欠陥検出方法において、
前記画素回路は、
信号線及び走査線の配線パターンが交差する部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンが異なる層に作成され、
前記信号線及び走査線の配線パターンが交差しない部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンが同一層に作成され、
前記交差する部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンのうちの上層側の配線パターンに、前記信号線及び走査線の配線パターンのうちの下層側の配線パターンを横切る形状のスリットが形成され、
前記下層側の配線パターンに開口が作成され、
前記欠陥検出方法は、
前記開口の有無を判定して、前記同一層に作成された前記信号線及び走査線の配線パターンの短絡事故を検出する欠陥検出のステップを有する
欠陥検出方法。
【請求項6】
画素回路をマトリックス状に配置して所望の画像を表示する画像表示装置における短絡事故の修復方法において、
前記画素回路は、
信号線及び走査線の配線パターンが交差する部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンが異なる層に作成され、
前記信号線及び走査線の配線パターンが交差しない部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンが同一層に作成され、
前記交差する部位では、前記信号線及び走査線の配線パターンのうちの上層側の配線パターンに、前記信号線及び走査線の配線パターンのうちの下層側の配線パターンを横切る形状のスリットが形成され、
前記下層側の配線パターンに開口が作成され、
前記短絡事故の修復方法は、
前記開口の有無を判定して、前記同一層に作成された前記信号線及び走査線の配線パターンの短絡事故を検出する欠陥検出のステップと、
前記欠陥検出のステップで、前記同一層に作成された前記信号線及び走査線の配線パターンの短絡事故が検出されると、前記スリットの両端からのトリミングにより前記上層側の配線パターンを部分的に切断するトリミングステップとを有する
短絡事故の修復方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−237040(P2009−237040A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80092(P2008−80092)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】